(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-16
(45)【発行日】2025-06-24
(54)【発明の名称】フェーズドアレイアンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 3/30 20060101AFI20250617BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20250617BHJP
H01L 23/373 20060101ALI20250617BHJP
H01L 23/473 20060101ALI20250617BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20250617BHJP
【FI】
H01Q3/30
H01L23/36 D
H01L23/36 M
H01L23/46 Z
H05K7/20 R
(21)【出願番号】P 2021093541
(22)【出願日】2021-06-03
【審査請求日】2024-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】原田 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】白井 靖朗
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 由佳理
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-103907(JP,U)
【文献】特開2020-036365(JP,A)
【文献】実開平03-097993(JP,U)
【文献】特開昭62-081098(JP,A)
【文献】特開2008-227054(JP,A)
【文献】特開昭58-199546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 3/30
H01L 23/36
H01L 23/373
H01L 23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントプレートと、
前記フロントプレートの一方の面を区画し、内部に熱媒体の流路を有するフレームと、
前記熱媒体の温度を調節する温度調節部と、
前記温度調節部で温度を調節された前記熱媒体を前記流路内に循環させる循環部と、
前記フレームで区画された空間に配置され、送信モジュールが搭載されたブロックと、
前記フレームと前記ブロックの間に配置され、
Ga、In、Sn、又は、Biを含む、導電性を有する熱伝導材料と、
前記熱伝導材料の拡がりを、前記フロントプレートに対向する方向に向けて規制する蓋部とを備え、
前記温度調節部は、
前記熱伝導材料の融点以上となるように前記熱媒体を加熱する
ことを特徴とするフェーズドアレイアンテナ。
【請求項2】
前記蓋部は、
前記フレームに対して着脱可能に設けられている
ことを特徴とする請求項
1に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項3】
前記蓋部は、
前記ブロックと前記フレームの間に前記熱伝導材料を充填するための開口を有する
ことを特徴とする請求項1
または2に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項4】
前記開口には、
前記ブロックと前記フレームの間に充填された前記熱伝導材料の流出を規制する規制部
材が設けられている
ことを特徴とする請求項
3に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェーズドアレイアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なフェーズドアレイアンテナは、素子アンテナ、給電回路、及び、送信モジュールなどの電子部品と、フロントプレート、及び、フレームなどのアンテナ筐体とを備えて構成されている。そして、従来から、フェーズドアレイアンテナが備える素子アンテナ、給電回路、送信モジュールなどの電子部品を規定の温度以下で安定して動作させるために、電子部品で発生した熱を冷媒に熱輸送して冷却する技術がある。
【0003】
特許文献1には、複数の送信モジュール21を搭載したブロック2を、内部に冷媒の流路を有するフロントプレート1に接触させることで、ブロック2内で発生した熱を冷媒に熱輸送することが記載されている。しかしながら、ブロック2の表面、及び/又は、フロントプレート1の表面には、微細な凹凸がある。この凹凸の隙間に存在する空気の熱伝導率は、ブロック2及びフロントプレート1の熱伝導率よりも小さい。そのため、凹凸の隙間に存在する空気は、ブロック2から冷媒への熱輸送の抵抗となる。このような、接触面における熱輸送の抵抗は、接触熱抵抗と呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、内部に冷媒の流路を有するフロントプレート1にブロック10を接触させただけでは、フロントプレート1とブロック10間の接触熱抵抗によって、ブロック10内で発生した熱を冷媒に熱輸送する効率が低下するという課題があった。
【0006】
この開示に係るフェーズドアレイアンテナは、フロントプレートと、前記フロントプレ
ートの一方の面を区画し、内部に熱媒体の流路を有するフレームと、前記熱媒体の温度を調節する温度調節部と、前記温度調節部で温度を調節された前記熱媒体を前記流路内に循環させる循環部と、前記フレームで区画された空間に配置され、送信モジュールが搭載されたブロックと、前記フレームと前記ブロックの間に配置され、Ga、In、Sn、又は、Biを含む、導電性を有する熱伝導材料と、前記熱伝導材料の拡がりを、前記フロントプレートに対向する方向に向けて規制する蓋部とを備え、前記温度調節部は、前記熱伝導材料の融点以上となるように前記熱媒体を加熱することを特徴とするものである 。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この開示に係るフェーズドアレイアンテナは、フロントプレートと、前記フロントプレートの一方の面を区画し、内部に熱媒体の流路を有するフレームと、前記フレームで区画された空間に配置され、送信モジュールが搭載されたブロックと、前記フレームと前記ブロックの間に配置され、導電性を有する熱伝導材料と、前記熱伝導材料の拡がりを、前記フロントプレートに対向する方向に向けて規制する蓋部とを備え、前記熱伝導材料は、融点が100℃未満である金属、又は、その合金であり、流動性を有した状態で前記フレームと前記ブロックの間に充填されたことを特徴とするものである 。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フレームとブロックとの間に存在する空気層の接触熱抵抗によって、ブロック内で発生した熱を熱媒体に熱輸送する効率の低下を抑制したフェーズドアレイアンテナを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係るフェーズドアレイアンテナの構成を示す図である。
【
図3】ブロック内で発生した熱の熱輸送経路を示す図である。
【
図4】
図2に示されたフレーム11のY1方向の断面図である。
【
図5】
図4に示されたフレーム11のZ1方向の断面図である。
【
図6】
図4に示されたフレーム11のX1方向の断面図である。
【
図7】ブロック13を取り付けた後の、
図4に示されたフレーム11のZ1方向の断面図である。
【
図8】ブロック13を取り付けたフレーム11のZ方向を示す図である。
【
図9】開口144を有する蓋部14を示す図である。
【
図10】ヒンジ146を有する蓋部14を示す図である。
【
図11】ブロック13をフレーム11に取り付ける工程のフロー図である。
【
図12】ブロック13をフレーム11から取り外す工程のフロー図である。
【
図14】
図13に示されたフレーム11aのY1方向の断面図である。
【
図15】
図14に示されたフレーム11aのX1方向の断面図である。
【
図16】
図14に示されたフレーム11aのZ1方向の断面図である。
【
図17】ブロック13を取り付けた後の、
図14に示されたフレーム11aのZ1方向の断面図である。
【
図18】フレーム11で区画された1つの空間に2つのブロック13を取り付けたフレーム11のZ方向を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係るフェーズドアレイアンテナを図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
・実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るフェーズドアレイアンテナ1の構成を示す図である。本明細書では、理解を容易にするため、フェーズドアレイアンテナ1の高さ方向(紙面の上方向)を+Y軸方向、幅方向(紙面の右方向)を+X軸方向、奥行方向(+Y軸方向と+X軸方向に垂直な方向)を+Z軸方向として説明する。
【0012】
フェーズドアレイアンテナ1は、フレーム11、フロントプレート12、ブロック13、シール部材15、熱伝導材料16、及び、蓋部14を備える。フロントプレート12の+Z軸方向の面には、複数のアンテナ素子を有する素子給電層が設けられる。また、フロントプレート12の一方の面(-Z軸方向の面)には、格子状に組まれたフレーム11が設けられる。ブロック13は、フレーム11で区画された空間に、矢印Aで示す方向(+Z軸方向)に沿って挿入されることで、フェーズドアレイアンテナ1に取り付けられる。ブロック13には、少なくとも送信モジュールを含む電子部品が搭載される。フレーム11とブロック13の間には、導電性を有する熱伝導材料16と、熱伝導材料16の拡がりを規制するシール部材15が設けられる。蓋部14は、シール部材142、及び、蓋141を有する。蓋部14のシール部材142は、熱伝導材料16の拡がりを、フロントプレート12に対向する方向に向けて規制する。蓋部14の蓋141は、例えば、ネジ143でネジ穴147に締め付けることでフレーム11に固定される。
【0013】
図2は、フレーム11の構成を示す図である。
フレーム11は、フロントプレート12の一方の面を区画し、内部に熱媒体の流路113(分配流路113a、温度調節流路113b、集合流路113c)を有する。
図2において、長破線で示された分配流路113aは、入口部115から流入した熱媒体114を温度調節流路113bに分配する。
図2において、一点鎖線で示された温度調節流路113bは、分配流路113aから分配された熱媒体114とブロック13の間で熱交間する。温度調節流路113bは、例えば、ブロック13から熱媒体114へと熱を移動させることで、ブロック13を冷却する。また、温度調節流路113bは、例えば、熱媒体114からブロック13へと熱を移動させることで、ブロック13とフレーム11間の熱伝導材料16を加熱してもよい。
図2において、二点鎖線で示された集合流路113cは、温度調節流路113bを経由した熱媒体114を集合させる。また、集合流路113cは、出口部116に通じている。入口部115と出口部116の間には、循環部117及び温度調節部118が設けられている。温度調節部118は、熱媒体114の温度を調節する。具体的には、温度調節部118は、熱媒体114を冷却及び/又は加熱する。また、温度調節部118は、熱伝導材料16の融点以上となるように熱媒体114を加熱する。循環部117は、温度を調節された熱媒体114を流路113内に循環させる。具体的には、循環部117は、図中の矢印に示すように、入口部115、分配流路113a、温度調節流路113b、集合流路113c、出口部116、及び、温度調節部118へと熱媒体114を循環させる。
【0014】
図3は、ブロック13内で発生した熱の熱輸送経路を示す図である。
ブロック13は、筐体131、送信モジュール132、及び、ヒートスプレッダ133を備える。送信モジュール132は、ヒートスプレッダ133の+Y軸方向の面に実装される。送信モジュール132は、少なくとも送信機能を備えていれば良く、送受信機能を兼ね備えてもよい。ヒートスプレッダ133は、Y軸方向の厚さ及びZ軸方向の厚さよりも、Y軸方向の厚さが薄い板状の形状を有する。また、ヒートスプレッダ133は、高熱伝導性の素材で形成されている。ヒートスプレッダ133の素材は、少なくとも、空気よりも伝導性が高ければよい。ヒートスプレッダ133の-Y軸方向の面は、筐体131の-Y軸方向の面を構成している。また、ヒートスプレッダ133の-Y軸方向の面は、熱伝導材料16、及び/又は、フレーム11に接触している。このような構成により、送信モジュール132で発生した熱は、ヒートスプレッダ133、熱伝導材料16、及び、フレーム11を介して、フレーム11内部の熱媒体へと熱輸送、即ち、排熱される。
【0015】
ブロック13は、1つの送信モジュール132だけでなく、複数の送信モジュール132を備えていても良い。また、ブロック13は、送信モジュール132だけでなく、給電回路などの電子部品を備えていてもよい。
【0016】
ところで、一般的に、ブロック13の表面(ヒートスプレッダ133の-Y軸方向の面)、及び/又は、フレーム11の表面には、微細な凹凸がある。この微細な凹凸の隙間に存在する空気の熱伝導率は、ブロック13及びフレーム11の熱伝導率よりも小さい。そのため、微細な凹凸の隙間に存在する空気は、ブロック13から熱媒体へ熱輸送する際の抵抗となる。このような、接触面における熱輸送の抵抗は、接触熱抵抗と呼ばれる。
【0017】
本開示においては、接触熱抵抗を低減するために、流動性を有する状態の熱伝導材料16をフレーム11とブロック13の間に充填する。流動性を有する状態の熱伝導材料16は、フレーム11とブロック13の間の微細な凹凸の隙間に侵入し、微細な凹凸の隙間に存在する空気の量を低減させる。熱伝導材料16は、空気よりも高い熱伝導率を有し、導電性をする材料である。熱伝導材料16は、例えば、ガリウム(融点29.76度、熱伝導率40W/mK)などの金属材料(以下、低融点金属と称する)である。また、熱伝導材料16は、例えば、ガリウム、インジウム、スズ、又は、ビスマスを2種類以上組み合わせた合金(融点100℃未満の合金;以下、低融点合金と称する)であってもよい。即ち、熱伝導材料16は、融点が100℃未満である低融点金属、又は、その低融点合金であればよい。このような構成により、ブロック13及びフレーム11の間の接触熱抵抗を低減することができる。
【0018】
熱伝導材料16は、ブロック13を着脱するときに流動性を有する状態であればよく、着脱するとき以外は流動性を有しない状態、即ち、固体の状態であってもよい。更に、熱伝導材料16は、ブロック13を着脱するときに、融解して流動性を有する温度(融点)以上となるまで加熱されてもよい。例えば、温度調節部118は、熱伝導材料16の融点以上となるまで熱媒体114を加熱してもよい。そして、循環部117は、加熱された熱媒体114を、入口部115、分配流路113a、温度調節流路113b、集合流路113c、及び、出口部116へと循環させてもよい。これにより、熱伝導材料16は、ブロック13を着脱するときに、流動性を有する状態を維持することができる。その結果、熱伝導材料16は、フレーム11とブロック13の間の微細な凹凸の隙間に侵入しやすくなり、微細な凹凸の隙間に存在する空気の量を低減すること、即ち、ブロック13及びフレーム11の間の接触熱抵抗を低減することが可能となる。また、熱伝導材料16は、フレーム11とブロック13を固着しないから、ブロック13を着脱する際の作業性の低下を抑制することが可能となる。ここで、熱伝導材料16の融点は、フェーズドアレイアンテナ1の非動作時の保証温度の範囲内であればよい。保証温度の範囲とは、ブロック13に搭載された電子部品等に悪影響を与えない温度範囲である。保証温度の範囲は、100℃未満であることが望ましく、設計段階で適宜定められればよい。ここで、熱伝導材料16は、融点が100℃未満である低融点金属、又は、その低融点合金であるから、融点まで加熱された状態でフレーム11とブロック13の間に充填されたとしても、ブロック13に搭載された電子部品等に悪影響を与えることがない。
【0019】
図4は、
図2に示されたフレーム11のY1方向の断面図である。
図5は、
図4に示されたフレーム11のZ1方向の断面図である。
図6は、
図4に示されたフレーム11のX1方向の断面図である。
フェーズドアレイアンテナ1は、流動性を有する熱伝導材料16の広がりを規制するシール部材15L、15D、15R(以降、夫々を区別して説明する必要のないときシール部材15と称する。)を備える。シール部材15は、横フレーム111とブロック13の間に介在し、横フレーム111とブロック13の間に充填された熱伝導材料16を囲むように配置される。シール部材15L、15Rは、横フレーム111と縦フレーム112の交差する領域に配置される。また、シール部材15Dは、横フレーム111とフロントプレート12が交差する領域に配置される。このような構成により、シール部材15は、或る区画に充填された熱伝導材料16が、或る区画の外に拡がることを規制することが可能となる。即ち、本開示の構成によれば、シール部材15を備えない場合と比較して、熱伝導材料16の流出に伴うブロック13の冷却性能の低下、及び、作業性の低下を抑制することができる。
【0020】
図7は、ブロック13を取り付けた後の、
図4に示されたフレーム11のX1方向の断面図である。
蓋部14の蓋141は、X軸方向の厚さ及びY軸方向の厚さよりも、Z軸方向の厚さが薄い板状の形状を有する。また、蓋部14の蓋141は、フレーム11、ブロック13、及び、熱伝導材料16にシール部材142を密着させる。蓋部14のシール部材142は、ブロック13とフレーム11(横フレーム111)間に充填された熱伝導材料16の拡がりを、フロントプレート12に対向する方向に向けて規制する。本開示の構成によれば、或る区画に充填された熱伝導材料16が、或る区画の外に拡がることを規制することが可能となる。即ち、本開示の構成によれば、蓋部14を備えない場合と比較して、熱伝導材料16の流出に伴うブロック13の冷却性能の低下、及び、作業性の低下を抑制することができる。
【0021】
図8は、ブロック13を取り付けた後のフレーム11のZ方向を示す図である。
蓋部14の蓋141は、ネジ143などの部材を用いてフレーム11に対して着脱可能に設けられている。本開示の構成によれば、着脱可能に蓋141が設けられていない場合と比較して、ブロック13とフレーム11の間の熱伝導材料16を充填、又は、除去しやすくなるという効果を奏する。
【0022】
ところで、
図8に示された蓋部14を用いた場合、熱伝導材料16を充填又は除去する際に、フレーム11から蓋部14を取り外す必要があり、作業者が煩わしさを感じることがある。そこで、蓋141は、ブロック13とフレーム11の間に熱伝導材料16を充填、又は、除去するための開口144を有していてもよい。
【0023】
図9は、開口144を有する蓋部14を示す図である。
開口144は、フェーズドアレイアンテナ1の外部と、ブロック13とフレーム11間の隙間とを連通する 。更に、開口144には、フェーズドアレイアンテナ1の外部に熱伝導材料16が流出することを規制する規制部材145が設けられていてもよい。規制部材145は、例えば、逆止弁のように熱伝導材料16の流れを一方向に規制する部材でもよいし、キャップのように熱伝導材料16の流れ自体を規制する部材でもよい。また、規制部材145は、例えば、内側(ブロック13側)からの圧力を受けると閉じ、外側からの圧力を受けると開くような機構を有していてもよい。本開示の構成によれば、蓋部14が開口144及び規制部材145を有しない場合と比較して、熱伝導材料16を充填又は除去しやすくなるから、作業性の低下を抑制することができる。
【0024】
ところで、
図8に示された蓋部14を用いた場合、蓋部14を着脱する際に、ネジ143を締め付けたり、緩めたりする必要があり、作業者が煩わしさを感じることがある。そこで、蓋部14は、蓋141を支持して、フレーム11に対して開閉可能とするヒンジ146を有していても良い。
【0025】
図10は、ヒンジ146を有する蓋部14を示す図である。
ヒンジ146は、蓋部14の-Y軸方向の端部と、フレーム11の-Z軸方向の端部を連結する。更に、ヒンジ146は、例えば、蓋部14を-Z軸方向に回動可能にフレーム11(横フレーム111)に設けられている。なお、ヒンジ146が固定される箇所は、蓋部14、及び、フレーム11のいずれの箇所であっても良く、少なくとも、蓋部14をフレーム11に対して回動可能に支持できる箇所であればよい。本開示の構成によれば、蓋部14がヒンジ146を有しない場合と比較して、蓋部14を着脱する必要がないから、作業性の低下を抑制することができる。
【0026】
次に、ブロック13をフレーム11に取り付ける際の工程について説明する。ここで、フロントプレート12、フレーム11、及び、ブロック13は、周知の技術によって、組み立てられたものとして説明は省略する。
【0027】
図11は、ブロック13をフレーム11に取り付ける工程のフロー図である。
横フレーム111と縦フレーム112の交差する領域、及び、横フレーム111とフロントプレート12が交差する領域(フレーム11の交差領域)にシール部材15を設ける(ステップST11)。
【0028】
フレーム11で区画された空間にブロック13を挿入する(ステップST12)。ブロック13は、ステップST11で設けられたシール部材15の+Y軸方向(上方)に配置される。更に、ブロック13は、+Y軸方向に位置するフレーム11との間にくさび機構などを挿入されることで、-Y軸方向に位置するフレーム11に押し当てられるように固定されてもよい。
【0029】
ステップST12で配置されたブロック13とフレーム11の間、且つ、ステップST11で配置されたシール部材15で囲まれた領域に、流動性を有する状態の熱伝導材料16を注入する(ステップST13)。熱伝導材料16は、例えば、注射器などを用いてブロック13とフレーム11の隙間に注入される。ここで、熱伝導材料16は、融解して流動性を有する温度(融点)以上となるまで加熱されてもよい。更に、温度調節部118は、熱伝導材料16の融点以上となるまで熱媒体114を加熱してもよい。そして、循環部117は、加熱された熱媒体114を、入口部115、分配流路113a、温度調節流路113b、集合流路113c、及び、出口部116へと循環させてもよい。
【0030】
ステップST12で配置されたブロック13、及び、フレーム11に密着する位置に蓋部14を配置する(ステップST14)。ここで、ステップST13とステップST14は、工程の順番を入れ替えても良い。この場合、開口144を有する蓋部14を採用し、熱伝導材料16は、開口144から注入してもよい。
【0031】
次に、ブロック13をフレーム11から取り外す際の工程の例について説明する。
図12は、ブロック13をフレーム11から取り外す工程のフロー図である。
【0032】
ブロック13とフレーム11の間の熱伝導材料16を、融解して流動性を有する温度(融点)以上となるまで加熱する(ステップST21)。ここで、循環部117は、温度調節部118で熱伝導材料16の融点以上となるまで加熱された熱媒体114を、入口部115、分配流路113a、温度調節流路113b、集合流路113c、及び、出口部116へと循環させてもよい。なお、ブロック13をフレーム11から取り外すときに、熱伝導材料16が流動性を有している場合、ステップST21は省略可能である。
【0033】
ブロック13とフレーム11の間で溶解した熱伝導材料16を除去する(ステップST22)。熱伝導材料16の除去は、例えば、フレーム11から蓋部14を取り外すことで実施してもよいし、蓋部14の開口144から注射器などで吸い取ることで実施してもよい。
【0034】
フレーム11で区画された空間から、
図1の矢印Aの反対方向にブロック13を引き出す(ステップST23)。
【0035】
本開示の構成によれば、流動性を有する状態の熱伝導材料16は、フレーム11とブロック13の間の微細な凹凸の隙間に侵入しやすくなるから、熱伝導材料16が流動性を有さない場合と比較して、微細な凹凸の隙間に存在する空気の量を低減させること、即ち、ブロック13及びフレーム11の間の接触熱抵抗を低減することが可能となる。また、流動性を有する状態の熱伝導材料16は、フレーム11とブロック13を固着しないから、熱伝導材料16が流動性を有さない場合と比較して、ブロック13を着脱する際の作業性の低下を抑制することが可能となる。
【0036】
・実施の形態2.
実施の形態1においては、温度調節流路113bは、横フレーム111だけに設けられていたが、縦フレーム112にも設けられていても良い。
図13は、フレーム11aの構成を示す図である。
フレーム11aは、フロントプレート12の一方の面を区画し、内部に熱媒体114の流路113(温度調節流路113b1,113b2、113b3)を有する。
図13において、長破線で示された温度調節流路113b1は、入口部115から流入した熱媒体114を温度調節流路113b2に分配する。また、温度調節流路113b1は、熱媒体114とブロック13の間で熱交間する。
図13において、一点鎖線で示された温度調節流路113b2は、温度調節流路113b1から分配された熱媒体114とブロック13の間で熱交間する。
図13において、二点鎖線で示された温度調節流路113b3は、熱媒体114とブロック13の間で熱交間する。また、温度調節流路113b3は、温度調節流路113b2を経由した熱媒体114を集合させる。また、温度調節流路113b3は、出口部116に通じている。入口部115と出口部116の間には、循環部117及び温度調節部118が設けられている。
【0037】
図14は、
図13に示されたフレーム11aのY1方向の断面図である。
図15は、
図14に示されたフレーム11aのX1方向の断面図である。
図16は、
図14に示されたフレーム11aのZ1方向の断面図である。
フェーズドアレイアンテナ1は、流動性を有する熱伝導材料16の広がりを規制するシール部材15L、15D、15R(以降、夫々を区別して説明する必要のない特はシール部材15と称する。)を備える。シール部材15L、15Rは、短手方向の断面がL字状の形状を有する。シール部材15L、15Rは、L字の一辺と他辺の接続部分を横フレーム111aと縦フレーム112aの交差する領域に配置される。そして、シール部材15Lの一辺を構成するシール部材15L1は横フレーム111aに、シール部材15Lの他辺を構成するシール部材15L2は縦フレーム112aに配置される。同様に、シール部材15Rの一辺を構成するシール部材15R1は横フレーム111aに、シール部材15Lの他辺を構成するシール部材15R2は縦フレーム112aに配置される。また、シール部材15Dは、シール部材15DM、15DL、15DRを有する。シール部材15DMは、横フレーム111aとフロントプレート12が交差する領域に配置される。シール部材15DL,15DRは、縦フレーム112aとフロントプレート12が交差する領域に配置される。シール部材15は、フレーム11aとブロック13の間に介在し、フレーム11aとブロック13の間に充填された熱伝導材料16を囲むように配置される。このような構成により、シール部材15は、或る区画に充填された熱伝導材料16が、或る区画の外に拡がることを規制することが可能となる。即ち、本実施の形態の構成によれば、シール部材15を備えない場合と比較して、熱伝導材料16の流出に伴うブロック13の冷却性能の低下、及び、作業性の低下を抑制することができる。
【0038】
図17は、ブロック13を取り付けた後の、
図14に示されたフレーム11aのZ1方向の断面図である。
本実施の形態においては、接触熱抵抗を低減するために、流動性を有する状態の熱伝導材料16を横フレーム111aとブロック13の間だけでなく、縦フレーム112aとブロック13の間にも充填する。これにより、ブロック13で発生した熱は、横フレーム111a内部の熱媒体だけでなく、縦フレーム112a内部の熱媒体にも熱輸送される。この構成を備えることで、実施の形態1の構成と比較して、より多くの熱媒体に熱輸送することが可能となるから、ブロック内で発生した熱を熱媒体に熱輸送する効率の低下を抑制することが可能となる。
【0039】
・実施の形態3.
実施の形態1、2においては、一つのブロック13が、フレーム11で区画された1つの空間に挿入されることで、フェーズドアレイアンテナ1に取り付けられていた。しかしながら、複数のブロック13が、フレーム11で区画された1つの空間に挿入されることで、フェーズドアレイアンテナ1に取り付けられてもよい。
【0040】
図18は、フレーム11で区画された1つの空間に2つのブロック13を取り付けたフレーム11のZ方向を示す図である。
ブロック13は、一点鎖線で示された温度調節流路113bにヒートスプレッダ133が対向するように配置される。従って、ブロック13aは、+Y軸方向の面にヒートスプレッダ133が配置され、ブロック13bは、-Y軸方向の面にヒートスプレッダ133が配置される。
【0041】
本実施の形態においては、実施の形態1の構成と比較して、ブロック13で発生した熱をより多くの熱媒体で熱輸送することが可能となるから、ブロック内で発生した熱を熱媒体に熱輸送する効率の低下を抑制することが可能となる。
【0042】
・その他の応用例
実施の形態1、2においては、ブロック13とフレーム11との間にシール部材15を配置した。これにより、ブロック13で発生した熱を熱輸送する距離が、シール部材15の厚みの分だけ増加し、増加分だけ熱輸送する効率が低下した。そこで、熱輸送効率の低下を抑制するために、シール部材15と接触するブロック13の面に、シール部材15の厚み未満の高さ及びシール部材15の幅と同じ幅分だけ凹ませた凹部を設けても良い。このような構成により、ブロック13で発生した熱を熱輸送する距離が、凹部の高さ分だけ短くなるから、その分だけ熱輸送する効率の低下を抑制することが可能となる。
【0043】
実施の形態1、2においては、フレーム11で区画された空間にブロック13を挿入する際に、フレーム11から蓋部14を取り外す又は回動させる必要があり、作業者が煩わしさを感じることがある。そこで、フレーム11で区画された空間のY軸方向の高さH1を、ブロック13のY軸方向の高さH2と、蓋部14のY軸方向の高さH3の合計よりも高くなるように構成してもよい(H1>H2+H3)。このような構成により、空間の+Y軸方向に配置されたフレーム11と蓋部14の間からブロック13を挿入することが可能となるから、作業者が煩わしさを低減することが可能となる。また、空間の-Y軸方向に配置されたフレーム11と蓋部14を一体構造とすることで、フェーズドアレイアンテナ1の構造を簡略化することが可能になる。
【0044】
上記では、フェーズドアレイアンテナを用いた場合について説明したが、これに限定されることはなく、実装された電子部品の冷却のために熱媒体が供給される電子機器に適用しても良い。また、熱媒体は液体でも、気体であっても良い。
【0045】
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 フェーズドアレイアンテナ、11 フレーム、111 横フレーム、112 縦フレーム、114 熱媒体、113 流路、12 フロントプレート、13 ブロック、131 筐体、132 送信モジュール、133 ヒートスプレッダ、14 蓋部、141 蓋、144 開口、142 シール部材、143 ネジ、144 開口、145 規制部材、147 ネジ穴、15 シール部材、16 熱伝導材料。