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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-16
(45)【発行日】2025-06-24
(54)【発明の名称】記録装置および記録方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20250617BHJP
   B65H 43/00 20060101ALI20250617BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20250617BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B65H43/00
B41J2/21
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021125498
(22)【出願日】2021-07-30
(65)【公開番号】P2023020238
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2024-07-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】境原 瞬
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐也
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-014068(JP,A)
【文献】特開2007-130930(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0268034(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
B65H 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に搬送される媒体の第1面に対して液体を吐出する液体吐出部と、
前記液体吐出部よりも前記搬送方向の下流に設けられ、前記第1面に接触して回転するローラーと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記液体吐出部による前記液体の吐出を制御することにより、前記第1面に前記液体による第1パターンを形成し、かつ、前記ローラーが前記第1パターンに接触するときの前記ローラーの回転角度m°に対して前記ローラーの回転角度がm°+360°となるときに前記ローラーが接触する、前記第1面における特定位置に、前記第1パターンのための検出領域を形成し、
前記制御部は、濃度が異なる複数の前記第1パターンを前記搬送方向に交差する幅方向に並べて形成する、ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
搬送方向に搬送される媒体の第1面に対して液体を吐出する液体吐出部と、
前記液体吐出部よりも前記搬送方向の下流に設けられ、前記第1面に接触して回転するローラーと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記液体吐出部による前記液体の吐出を制御することにより、前記第1面に前記液体による第1パターンを形成し、かつ、前記ローラーが前記第1パターンに接触するときの前記ローラーの回転角度m°に対して前記ローラーの回転角度がm°+360°となるときに前記ローラーが接触する、前記第1面における特定位置に、前記第1パターンのための検出領域を形成し、
前記検出領域には、前記液体吐出部により前記第1パターンの色の補色に該当する色の第2パターンが形成される、ことを特徴とする記録装置。
【請求項3】
搬送方向に搬送される媒体の第1面に対して液体を吐出する液体吐出部と、
前記液体吐出部よりも前記搬送方向の下流に設けられ、前記第1面に接触して回転するローラーと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記液体吐出部による前記液体の吐出を制御することにより、前記第1面に前記液体による第1パターンを形成し、かつ、前記ローラーが前記第1パターンに接触するときの前記ローラーの回転角度m°に対して前記ローラーの回転角度がm°+360°となるときに前記ローラーが接触する、前記第1面における特定位置に、前記第1パターンのための検出領域を形成し、
前記液体吐出部は、前記液体として白インクを吐出可能であり、
前記制御部は、前記液体吐出部に前記白インクを吐出させることにより白画像を前記検出領域に形成する、ことを特徴とする記録装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記液体吐出部に、前記第1面のうち前記搬送方向に交差する幅方向において前記第1パターンを避けた領域へ、前記第1パターンの濃度の表示を記録させる、ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記媒体の前記搬送方向において前記ローラーの円周分の長さを有する領域に、前記円周を正の整数nで割った値を前記搬送方向の一パターンあたりの長さとする前記第1パターンであって濃度が異なる複数の前記第1パターンを、前記搬送方向に並べて形成し、かつ、複数の前記第1パターンのそれぞれに対応する複数の前記特定位置のそれぞれに、前記搬送方向の長さを前記第1パターンの長さに対応させた前記検出領域を形成する、ことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記整数nは奇数である、ことを特徴とする請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1パターンの濃度が前記搬送方向の下流から上流に向かって段階的に上がるように複数の前記第1パターンを形成する、ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の記録装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記液体吐出部による前記液体の吐出を制御することにより、前記第1面の前記搬送方向における最も上流の前記検出領域と最も上流の前記検出領域に次いで上流に位置する前記検出領域との間の領域に、第3パターンを形成する、ことを特徴とする請求項5請求項7のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項9】
搬送方向に搬送される媒体の第1面に対して液体を吐出する液体吐出部と、前記液体吐出部よりも前記搬送方向の下流に設けられ、前記第1面に接触して回転するローラーと、を備える記録装置による記録方法であって、
前記液体吐出部により、前記第1面に前記液体による第1パターンを形成し、かつ、前記ローラーが前記第1パターンに接触するときの前記ローラーの回転角度m°に対して前記ローラーの回転角度がm°+360°となるときに前記ローラーが接触する、前記第1面における特定位置に、前記第1パターンのための検出領域を形成する、パターン形成工程を備え
前記パターン形成工程では、濃度が異なる複数の前記第1パターンを前記搬送方向に交差する幅方向に並べて形成する、ことを特徴とする記録方法。
【請求項10】
搬送方向に搬送される媒体の第1面に対して液体を吐出する液体吐出部と、前記液体吐出部よりも前記搬送方向の下流に設けられ、前記第1面に接触して回転するローラーと、を備える記録装置による記録方法であって、
前記液体吐出部により、前記第1面に前記液体による第1パターンを形成し、かつ、前記ローラーが前記第1パターンに接触するときの前記ローラーの回転角度m°に対して前記ローラーの回転角度がm°+360°となるときに前記ローラーが接触する、前記第1面における特定位置に、前記第1パターンのための検出領域を形成する、パターン形成工程を備え
前記検出領域には、前記液体吐出部により前記第1パターンの色の補色に該当する色の第2パターンが形成される、ことを特徴とする、記録方法。
【請求項11】
搬送方向に搬送される媒体の第1面に対して液体を吐出する液体吐出部と、前記液体吐出部よりも前記搬送方向の下流に設けられ、前記第1面に接触して回転するローラーと、を備える記録装置による記録方法であって、
前記液体吐出部により、前記第1面に前記液体による第1パターンを形成し、かつ、前記ローラーが前記第1パターンに接触するときの前記ローラーの回転角度m°に対して前記ローラーの回転角度がm°+360°となるときに前記ローラーが接触する、前記第1面における特定位置に、前記第1パターンのための検出領域を形成する、パターン形成工程を備え
前記液体吐出部は、前記液体として白インクを吐出可能であり、
前記パターン形成工程では、前記液体吐出部に前記白インクを吐出させることにより白画像を前記検出領域に形成する、ことを特徴とする、記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体へ液体を吐出して記録を行う記録装置および、記録装置による記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
媒体へインクを吐出するインクジェットプリンターにおいて、インクを吐出するヘッドよりも搬送方向下流に、媒体に接しながら回転して媒体を更に下流へ搬送するローラーを備える構成が知られている。記録後の媒体にローラーが接すると、媒体上のインクの一部がローラーに付着し、ローラーに付着したインクが媒体に転写されて媒体が汚れるといった問題が生じ得る。
【0003】
なお、記録ヘッド及びプラテンの搬送方向下流に、排紙ローラー及び搬送拍車が配置された記録装置が開示されている(特許文献1参照)。文献1によれば、記録後のシートが排紙ローラーと搬送拍車との間で挟まれた状態で搬送方向に沿って搬送される。搬送拍車は、周囲に歯部が形成されているため、記録がなされたシートの面との接触面積が小さく、搬送のための回転体に付着したインクがシートへ転写されることがある程度抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014‐141027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ローラーへのインクの付着に起因する記録品質の低下を防ぐ必要がある。そのために、ローラーへのインク付着による記録結果への影響を検出するために役立つ技術が求められている。また、前記文献1の構成においては、拍車の歯部が媒体へ食い込んで生じる圧痕が記録品質に影響を及ぼす虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様として、記録装置は、搬送方向に搬送される媒体の第1面に対して液体を吐出する液体吐出部と、前記液体吐出部よりも前記搬送方向の下流に設けられ、前記第1面に接触して回転するローラーと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記液体吐出部による前記液体の吐出を制御することにより、前記第1面に前記液体による第1パターンを形成し、かつ、前記ローラーが前記第1パターンに接触するときの前記ローラーの回転角度m°に対して前記ローラーの回転角度がm°+360°となるときに前記ローラーが接触する、前記第1面における特定位置に、前記第1パターンのための検出領域を形成し、前記制御部は、濃度が異なる複数の前記第1パターンを前記搬送方向に交差する幅方向に並べて形成する
別の態様として、記録装置は、搬送方向に搬送される媒体の第1面に対して液体を吐出する液体吐出部と、前記液体吐出部よりも前記搬送方向の下流に設けられ、前記第1面に接触して回転するローラーと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記液体吐出部による前記液体の吐出を制御することにより、前記第1面に前記液体による第1パターンを形成し、かつ、前記ローラーが前記第1パターンに接触するときの前記ローラーの回転角度m°に対して前記ローラーの回転角度がm°+360°となるときに前記ローラーが接触する、前記第1面における特定位置に、前記第1パターンのための検出領域を形成し、前記検出領域には、前記液体吐出部により前記第1パターンの色の補色に該当する色の第2パターンが形成される。
別の態様として、記録装置は、搬送方向に搬送される媒体の第1面に対して液体を吐出する液体吐出部と、前記液体吐出部よりも前記搬送方向の下流に設けられ、前記第1面に接触して回転するローラーと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記液体吐出部による前記液体の吐出を制御することにより、前記第1面に前記液体による第1パターンを形成し、かつ、前記ローラーが前記第1パターンに接触するときの前記ローラーの回転角度m°に対して前記ローラーの回転角度がm°+360°となるときに前記ローラーが接触する、前記第1面における特定位置に、前記第1パターンのための検出領域を形成し、前記液体吐出部は、前記液体として白インクを吐出可能であり、前記制御部は、前記液体吐出部に前記白インクを吐出させることにより白画像を前記検出領域に形成する。
【0007】
別の態様として、搬送方向に搬送される媒体の第1面に対して液体を吐出する液体吐出部と、前記液体吐出部よりも前記搬送方向の下流に設けられ、前記第1面に接触して回転するローラーと、を備える記録装置による記録方法は、前記液体吐出部により、前記第1面に前記液体による第1パターンを形成し、かつ、前記ローラーが前記第1パターンに接触するときの前記ローラーの回転角度m°に対して前記ローラーの回転角度がm°+360°となるときに前記ローラーが接触する、前記第1面における特定位置に、前記第1パターンのための検出領域を形成する、パターン形成工程を備え、前記パターン形成工程では、濃度が異なる複数の前記第1パターンを前記搬送方向に交差する幅方向に並べて形成する
別の態様として、搬送方向に搬送される媒体の第1面に対して液体を吐出する液体吐出部と、前記液体吐出部よりも前記搬送方向の下流に設けられ、前記第1面に接触して回転するローラーと、を備える記録装置による記録方法は、前記液体吐出部により、前記第1面に前記液体による第1パターンを形成し、かつ、前記ローラーが前記第1パターンに接触するときの前記ローラーの回転角度m°に対して前記ローラーの回転角度がm°+360°となるときに前記ローラーが接触する、前記第1面における特定位置に、前記第1パターンのための検出領域を形成する、パターン形成工程を備え、前記検出領域には、前記液体吐出部により前記第1パターンの色の補色に該当する色の第2パターンが形成される。
別の態様として、搬送方向に搬送される媒体の第1面に対して液体を吐出する液体吐出部と、前記液体吐出部よりも前記搬送方向の下流に設けられ、前記第1面に接触して回転するローラーと、を備える記録装置による記録方法は、前記液体吐出部により、前記第1面に前記液体による第1パターンを形成し、かつ、前記ローラーが前記第1パターンに接触するときの前記ローラーの回転角度m°に対して前記ローラーの回転角度がm°+360°となるときに前記ローラーが接触する、前記第1面における特定位置に、前記第1パターンのための検出領域を形成する、パターン形成工程を備え、前記液体吐出部は、前記液体として白インクを吐出可能であり、前記パターン形成工程では、前記液体吐出部に前記白インクを吐出させることにより白画像を前記検出領域に形成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態にかかる装置構成を簡易的に示すブロック図。
図2】記録ヘッドと媒体との関係性等を幅方向からの視点により簡易的に示す図。
図3】記録ヘッドと媒体との関係性等を上方からの視点により簡易的に示す図。
図4】第1実施例の汚れ検出用パターンを示す図。
図5】第2実施例の汚れ検出用パターンを示す図。
図6】第3実施例の汚れ検出用パターンを示す図。
図7】第4実施例の汚れ検出用パターンを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、各図を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお各図は、本実施形態を説明するための例示に過ぎない。各図は例示であるため、比率や形状が正確でなかったり、互いに整合していなかったり、一部が省略されていたりする場合がある。
【0010】
1.装置の概略説明:
図1は、本実施形態にかかる記録装置10の構成を簡易的に示している。記録装置10は、制御部11、表示部13、操作受付部14、通信IF15、搬送部16、記録ヘッド17等を備える。IFはインターフェイスの略である。記録装置10により、記録方法が実現される。
【0011】
制御部11は、プロセッサーとしてのCPU11a、ROM11b、RAM11c等を有する一つ又は複数のICや、その他の不揮発性メモリー等を含んで構成される。制御部11では、プロセッサーつまりCPU11aが、ROM11bや、その他のメモリー等に保存されたプログラム12に従った演算処理を、RAM11c等をワークエリアとして用いて実行する。制御部11は、プログラム12に従うことにより、パターン形成部12a、打ち込み量設定部12b等の複数の機能を実現する。なお、プロセッサーは、一つのCPUに限られることなく、複数のCPUや、ASIC等のハードウェア回路により処理を行う構成としてもよいし、CPUとハードウェア回路とが協働して処理を行う構成としてもよい。
【0012】
表示部13は、視覚情報を表示するための手段であり、例えば、液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイ等により構成される。表示部13は、ディスプレイと、ディスプレイを駆動するための駆動回路とを含む構成であってもよい。操作受付部14は、ユーザーによる操作を受け付けるための手段であり、例えば、物理的なボタンや、タッチパネルや、マウスや、キーボード等によって実現される。むろん、タッチパネルは、表示部13の一機能として実現されるとしてもよい。表示部13および操作受付部14を含めて、記録装置の10の操作パネルと呼んでもよい。
【0013】
表示部13や操作受付部14は、記録装置10の構成の一部であってもよいが、記録装置10に対して外付けされた周辺機器であってもよい。
通信IF15は、記録装置10が公知の通信規格を含む所定の通信プロトコルに準拠して有線又は無線で外部と通信を実行するための一つまたは複数のIFの総称である。制御部11は、通信IF15を介して、例えば、不図示のパーソナルコンピューター、サーバー、スマートフォン、タブレット型端末等と通信可能である。
【0014】
搬送部16は、制御部11による制御下でシート状の媒体を所定の搬送方向に沿って搬送するための手段であり、回転して媒体を搬送するローラーや、ローラーを駆動するためのモーター等を備える。媒体は、代表的には用紙であるが、液体による記録が可能な媒体であれば紙以外の素材の媒体であってもよい。
【0015】
記録ヘッド17は不図示のノズルを複数有し、搬送部16が搬送する媒体へ、制御部11による制御下で各ノズルからインク等の液体を吐出する。記録ヘッド17は「液体吐出部」に該当する。記録ヘッド17を、液体吐出ヘッド、印刷ヘッド、印字ヘッド、インクジェットヘッド等と呼んでもよい。記録ヘッド17がノズルから吐出する液滴をドットとも呼ぶ。
【0016】
知られているように、記録装置10は、各ノズルが備える不図示の駆動素子への駆動信号の印加を記録用データに従って制御することで、各ノズルからドットを吐出させたり吐出させなかったりする。記録ヘッド17は、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)といった各色のインクや、これら色以外の色のインクや、インク以外の液体を吐出して記録を行うことができる。
【0017】
図2は、記録ヘッド17と媒体30との関係性等を搬送方向D1に交差する幅方向からの視点により簡易的に示している。ここで言う搬送方向D1と幅方向との交差とは、直交あるいはほぼ直交を意味する。搬送方向D1の上流、下流を、単に上流、下流と言う。後述の図3では、幅方向を、幅方向D2と示している。符号19は、媒体30の搬送経路の一部としてのプラテン19を指している。プラテン19は、搬送方向D1に沿って搬送される媒体30を下方から支持する。プラテン19と相対する上方の位置には、記録ヘッド17が支持されている。
【0018】
記録ヘッド17の上流には、第1ローラー16aおよび第2ローラー16bからなる第1ローラー対が配設されている。また、記録ヘッド17の下流には、第3ローラー16cおよび第4ローラー16dからなる第2ローラー対が配設されている。これらローラー対は、搬送部16の一部である。ローラー対は、対を構成するローラー間に媒体30を挟持した状態で回転することにより、媒体30を下流へ搬送する。搬送部16が有するローラーは図示したものに限定されない。
【0019】
プラテン19と相対する記録ヘッド17の下面は、複数のノズルが開口するノズル面18であり、プラテン19が支持する媒体30に対して、ノズル面18に開口する各ノズルからインクが吐出される。図2から解るように、媒体30の第1面30aと、第1面30aの裏面である第2面30bとのうち、ノズル面18と相対する第1面30aに対してインクが吐出されて記録が行われる。従って、図2の例では、第2ローラー対を構成する第3ローラー16cが「液体吐出部よりも下流に設けられて第1面30aに接触して回転するローラー」に該当する。
【0020】
図3は、記録ヘッド17と媒体30との関係性等を上方からの視点により簡易的に示している。図3では、プラテン19の記載は省略している。図1図2では記載していないが、図3の例では、記録ヘッド17はキャリッジ20に搭載されている。キャリッジ20は、モーターによる動力を受けて幅方向D2に沿って往復移動可能である。つまり、記録ヘッド17は、キャリッジ20と共に幅方向D2に沿って移動しながらインクを吐出することにより、媒体30の第1面30aへの記録を行う。制御部11は、キャリッジ20の移動に伴う記録ヘッド17からのインク吐出と、搬送部16による媒体30の一定距離の搬送とを交互に実行させることにより、媒体30への記録を実現する。
【0021】
ただし、記録ヘッド17がキャリッジ20により移動する構成は必須ではない。例えば、記録ヘッド17は、幅方向D2における媒体30の長さ(媒体幅)に亘る長さを有して固定されており、所定速度で下流へ搬送される媒体30へインクを吐出して記録を行う構成であってもよい。
【0022】
図3の例では、記録ヘッド17の上流に位置する第1ローラー16aは、幅方向D2に沿って複数設けられている。複数の第1ローラー16aの機能はいずれも同じであり、同期して回転すると解してよい。同様に、図3の例では、記録ヘッド17の下流に位置する第3ローラー16cは、幅方向D2に沿って複数設けられている。複数の第3ローラー16cの機能はいずれも同じであり、同期して回転する。図3では示していないが、当然、複数の第1ローラー16aに対応する媒体30の下方の各位置には、複数の第2ローラー16bが設けられている。同様に図3では示していないが、複数の第3ローラー16cに対応する媒体30の下方の各位置には、複数の第4ローラー16dが設けられている。
【0023】
記録装置10は、独立した1台のプリンターによって実現されるだけでなく、互いに通信可能に接続した複数の装置によって実現されてもよい。例えば、制御部11を含む情報処理装置と、搬送部16や記録ヘッド17を含むプリンターとを含むシステムによって、記録装置10が実現されるとしてもよい。記録装置10を、液体吐出装置、印刷装置、インクジェットプリンター等と呼んでもよい。
【0024】
2.パターン形成:
次に、本実施形態にかかるパターン形成工程の説明をする。パターン形成工程では、制御部11は、記録ヘッド17による液体の吐出を制御することにより、媒体30の第1面30aに液体による「第1パターン」を形成し、かつ、第3ローラー16cが第1パターンに接触するときの第3ローラー16cの回転角度m°に対して第3ローラー16cの回転角度がm°+360°となるときに第3ローラー16cが接触する、第1面30aにおける特定位置に、第1パターンのための「検出領域」を形成する。つまり、パターン形成工程では、第1面30aに少なくとも第1パターンおよび検出領域を形成する。
【0025】
ここで、「第3ローラー16cが第1パターンに接触するときの第3ローラー16cの回転角度m°に対して第3ローラー16cの回転角度がm°+360°となるときに第3ローラー16cが接触する特定位置」とは、第3ローラー16cが第1パターンに接触する状態から1回転したときに第3ローラー16cと接触する位置、と言い換えることができる。従って、回転角度m°が、何を基準としたどのような角度であるかは実施の上で重要ではない。また、ここで言うローラーの回転は、媒体30を下流へ搬送するための回転であるから、検出領域は、当該検出領域が対応する第1パターンよりも上流に位置する。
【0026】
第1パターンおよび検出領域を含むパターンを、以下では「汚れ検出用パターン」と称する。制御部11のパターン形成部12aは、記録ヘッド17や搬送部16を制御することにより、所定のメモリーに予め保存された汚れ検出用パターンの記録用データに基づいて、汚れ検出用パターンを媒体30の第1面30aへ記録する。
【0027】
第1実施例:
図4は、パターン形成工程により媒体30の第1面30aに記録された、第1実施例にかかる汚れ検出用パターン40を示している。図4では、媒体30と、方向D1,D2との対応関係も併せて示している。汚れ検出用パターン40では、複数の第1パターン31a,31b,31c,31d,31eが、搬送方向D1において互いの間を空けて並んで形成されている。第1パターン31a,31b,31c,31d,31eのそれぞれは、幅方向D2に長尺な矩形状のベタパターンであり、いずれも同じサイズと解してよい。ベタパターンとは、例えば、インクのドットが均等あるいはほぼ均等に配置されることにより一パターン内で濃淡が無いかあるいはほぼ無い状態とされたパターンと解してよい。
【0028】
搬送方向D1における第1パターンの長さはHとする。搬送方向D1において第1パターンと第1パターンとの間に確保する領域の搬送方向D1の長さも同じHとする。ここで、第3ローラー16cの円周をAとしたとき、第1実施例では、H=A/n、とする。
nは正の整数であり、好適には奇数である。第1実施例では、n=3としている。円周Aは製品の設計上既知であるため、パターン形成部12aは、円周Aの3分の1を長さHとして、汚れ検出用パターン40を媒体30へ記録する。
【0029】
媒体30上の搬送方向D1におけるH×3の距離が、第3ローラー16cの1回転分の距離に相当する。従って図4によれば、第1パターン31aを基準にすると、第1パターン31bに対して上流に隣接する領域が特定位置であり、この特定位置が、第1パターン31aのための検出領域32aとなる。つまり、第1パターン31aのインクが第3ローラー16cに付着すると、そのインクは第3ローラー16cが1回転して検出領域32aに転写されるため、検出領域32aの汚れを検出することで、第1パターン31aの濃度が記録品質上、適切であるか否かを判定できる。
【0030】
このように、第1パターンのための検出領域とは、当該第1パターンのインクの転写を検出するための領域である。
同様に、第1パターン31bを基準にすると、第1パターン31cに対して上流に隣接する領域が特定位置であり、この特定位置が第1パターン31bのための検出領域32bである。
第1パターン31cを基準にすると、第1パターン31dに対して上流に隣接する領域が特定位置であり、この特定位置が第1パターン31cのための検出領域32cである。
第1パターン31dを基準にすると、第1パターン31eに対して上流に隣接する領域が特定位置であり、この特定位置が第1パターン31dのための検出領域32dである。
第1パターン31eを基準にすると、上流側へH×3の距離にある領域が特定位置であり、この特定位置が第1パターン31eのための検出領域32eである。
【0031】
第1実施例によれば、検出領域32a,32b,32c,32d,32eは、記録ヘッド17により液体が吐出されない「非記録領域」である。非記録領域は、媒体30の面そのものであり「余白領域」とも言う。検出領域を余白領域とすることで、第1パターンのインクの転写の有無や程度が検出し易くなる。なお本実施形態では、第1パターン間に検出領域としての余白領域を確保することを、検出領域を形成する、とも言う。
図4では、検出領域32a,32b,32c,32d,32eのそれぞれを破線の枠で囲って見易く示しているが、実際の汚れ検出用パターン40において、このような枠は有ってもよいし無くてもよい。
【0032】
図4から解るように、複数の第1パターン31a,31b,31c,31d,31eは濃度がそれぞれ異なる。濃度が異なる複数の第1パターン31a,31b,31c,31d,31eを記録することで、どの程度の濃度であれば第3ローラー16cへのインク付着による汚れが生じないかを判定することができる。
【0033】
また図4から解るように、パターン形成部12aは、第1パターンの濃度が下流から上流に向かって段階的に上がるように複数の第1パターン31a,31b,31c,31d,31eを形成する。図4によれば、複数の第1パターン31a,31b,31c,31d,31eのうち、最も下流の第1パターン31aの濃度が最も低く、最も上流の第1パターン31eの濃度が最も高い。高濃度の第1パターンを低濃度の第1パターンよりも先に記録すると、高濃度の第1パターンから第3ローラー16cに付着したインクが、対応する検出領域に転写された後も第3ローラー16cに一部残り、他の第1パターンに関する汚れの検出に影響を及ぼす虞がある。そこで、このような弊害を避けるために、第1パターンの濃度が下流から上流に向かって段階的に上がるように複数の第1パターンを形成する。
【0034】
パターン形成部12aが汚れ検出用パターン40の記録に用いる記録用データは、当然、第1パターン31a,31b,31c,31d,31eのそれぞれについて異なる濃度を規定している。記録用データの状態では、一つの第1パターンは、同じ濃度の画素の集合領域として表現されている。記録用データを構成する各画素は、例えば、CMYK毎の階調値を有する。階調値は、例えば0~255の256階調で表現される値であり、0が濃度0%、255が濃度100%に相当する。従って、画素は、CMYKの階調値を足すと最大で400%の濃度を採り得る。
【0035】
第1実施例では、第1パターン31a,31b,31c,31d,31eはいずれも、CMYKインクを混色させて記録されるパターンである。よって、第1パターンの濃度とは、記録用データにおける第1パターンを構成する画素の濃度である。むろん、パターン形成部12aは、記録用データに対して、いわゆるハーフトーン処理等を施して画素毎かつインク色毎にドット吐出(ドットオン)またはドット非吐出(ドットオフ)を規定したデータに変換した上で記録ヘッド17に供して、記録ヘッド17に汚れ検出用パターン40を記録させる。
【0036】
パターン形成部12aは、複数の第1パターン31a,31b,31c,31d,31eの中に濃度を予め定められた最大値とした第1パターンを含めて、汚れ検出用パターン40を媒体30へ記録する。図4では、最も上流の第1パターン31eが、濃度が最大値の第1パターンに該当する。ここで言う、濃度の最大値とは、記録ヘッド17に実現させることが可能な濃度であって、媒体30におけるインクの滲み等の特性を考慮して設定された濃度である。上述の例のように記録ヘッド17がCMYKインクを混色させてカラー印刷可能であれば、記録用データの画素は最大で400%の濃度を採り得るが、ここで言う濃度の最大値は、これよりも低い値、例えば、300%や250%と言った値に設定されている。
【0037】
このような第1実施例によれば、パターン形成部12aは、媒体30の搬送方向D1において第3ローラー16cの円周分の長さを有する領域に、円周を正の整数nで割った値を搬送方向D1の一パターンあたりの長さHとする第1パターンであって濃度が異なる複数の第1パターンを、搬送方向D1に並べて形成する。例えば、第1パターン31aおよび第1パターン31bは、第1面30aにおける第3ローラー16cの円周分の長さを有する領域内に形成されている。かつ、パターン形成部12aは、複数の第1パターンのそれぞれに対応する複数の特定位置のそれぞれに、搬送方向D1の長さを第1パターンの長さHに対応させた検出領域を形成する。搬送方向D1の長さが第1パターンの長さHに対応するとは、搬送方向D1の長さが第1パターンの長さHと同じかほぼ同じという意味である。このように、第3ローラー16cの円周分の長さの領域に複数の第1パターンを配することで、汚れ検出用パターンをコンパクト化し、媒体消費の抑制や、パターンの読取時間の削減に寄与する。
【0038】
図4によれば、第1パターン31dのための検出領域32dおよび第1パターン31eのための検出領域32eは、最も上流の第1パターン31eよりも上流に位置し、第1パターンに挟まれていない。また、第1実施例では、第1パターンは余白領域である。そのため、ユーザーにとって、媒体30における検出領域32dおよび検出領域32eは、それらの位置を把握し辛い。このような事情に鑑みて、パターン形成部12aは、記録ヘッド17にインクを吐出させることにより、第1面30aの搬送方向D1における最も上流の検出領域32eと最も上流の検出領域32eに次いで上流に位置する検出領域32dとの間の領域に、第3パターン33を形成するとしてもよい。
【0039】
つまり、パターン形成部12aは、第3パターン33を含む汚れ検出用パターン40を媒体30の第1面30aに記録してもよい。図4では、第3パターン33と第1パターン31a,31b,31c,31d,31eとを識別できるように、便宜上、第3パターン33にハッチングを施して表している。第3パターン33が記録されることにより、ユーザーは、余白領域である検出領域32dや検出領域32eの位置を把握し易くなる。なお、第3パターン33は、ベタパターンである必要はなく、結果的に検出領域32dや検出領域32eの位置を解り易くする目印として機能すれば、色や模様や形状はどのようなものであってもよい。
【0040】
3.パターン形成工程後の処理:
パターン形成工程の後に、汚れ検出工程や打ち込み量設定工程が行われる。汚れ検出工程や打ち込み量設定工程について、簡単に説明する。
【0041】
汚れ検出工程では、記録装置10によって汚れ検出用パターンが記録された媒体30の第1面30aを読み取ることにより、インクの転写による汚れを検出する。記録装置10によって汚れ検出用パターンが記録された媒体30は、当然、記録ヘッド17による記録後に、搬送部16による搬送で排出された媒体30であり、第3ローラー16cへのインクの付着に起因して汚れが発生している可能性がある。汚れ検出工程は、人が目視で行う工程であってもよいし、スキャナーや測色器等の読取装置が介在して実行される工程であってもよい。汚れ検出工程では、例えば、ユーザーが目視で検出領域の汚れの程度を検出する。あるいは、汚れ検出工程では、例えば、スキャナーが媒体30の第1面30aを読み取り、読取データにおける検出領域の汚れの程度を所定のしきい値と比較する等して検出する。
【0042】
打ち込み量設定工程では、制御部11の打ち込み量設定部12bが、汚れ検出工程による検出結果を取得する。例えば、ユーザーが、操作受付部14を操作して検出結果を入力することにより、打ち込み量設定部12bが検出結果を取得する。あるいは、打ち込み量設定部12bは、記録装置10に接続されたスキャナー等から検出結果を取得する。あるいは、打ち込み量設定部12bは、スキャナー等から媒体30の第1面30aの読取データを入力し、読取データを解析して検出領域の汚れの程度を検出結果として取得してもよい。
【0043】
打ち込み量設定部12bは、取得した検出結果に応じて、インクの打ち込み量(吐出量)を設定する。打ち込み量設定部12bは、例えば、検出領域32a,32b,32cにはインクの汚れが無く、検出領域32d,32eにはインクの汚れが有る、という検出結果を得たとする。この場合、第1パターン31dの濃度以上の濃度を採用すると、第3ローラー16cへのインク付着に起因する汚れ等の記録品質の低下が起きる。そのため、打ち込み量設定部12bは、例えば、記録ヘッド17を駆動させる記録用データが採り得る濃度の上限を、第1パターン31cの濃度、あるいは第1パターン31cの濃度以上第1パターン31dの濃度未満にする設定を行い、以後、ユーザーが所望する各種画像の記録に際してこの設定を適用する。この結果、第3ローラー16cへのインク付着に起因する媒体のインクによる汚れを、無くすことができる。また、記録ヘッド17によるインクの打ち込み量の上限を、必要以上に低くしないで済むため、記録結果の発色性低下を抑制し、記録品質を保つことができる。
【0044】
4.その他の実施例:
第2実施例:
図5は、パターン形成工程により媒体30の第1面30aに記録された、第2実施例にかかる汚れ検出用パターン41を示している。第2実施例や、後述の第3、第4実施例では、各汚れ検出用パターン41,42,43について、第1実施例の汚れ検出用パターン40と違う点を説明する。
【0045】
検出領域は、非記録領域(余白領域)ではなく、インクを吐出して形成される第2パターンであってもよい。つまり、パターン形成部12aは、記録ヘッド17や搬送部16を制御することにより、汚れ検出用パターン41の記録用データに基づいて、第1パターンおよび第2パターンを含む汚れ検出用パターン41を第1面30aへ記録してもよい。図5の例では、第1パターン31aのための検出領域32aは、第2パターン34aである。同様に、第1パターン31bのための検出領域32bは第2パターン34bであり、第1パターン31cのための検出領域32cは第2パターン34cであり、第1パターン31dのための検出領域32dは第2パターン34dであり、第1パターン31eのための検出領域32eは第2パターン34eである。
【0046】
図5では、第1パターン31a,31b,31c,31d,31eと第2パターン34a,34b,34c,34d,34eとを識別できるように、第2パターン34a,34b,34c,34d,34eについて、便宜上、第3パターン33とは異なるハッチングを施して表している。検出領域は、第1パターンのインクの付着の有無や程度を検出するための領域であるから、第1パターン31a,31b,31c,31d,31eをどのような色で形成するにしても、パターン形成部12aは、第2パターン34a,34b,34c,34d,34eを、第1パターン31a,31b,31c,31d,31eとは異なる色で形成する。
【0047】
第1パターン31a,31b,31c,31d,31eのインクの付着が目立ち易いように、パターン形成部12aは、第2パターン34a,34b,34c,34d,34eを、例えば、第1パターン31a,31b,31c,31d,31eよりも濃度が低い色で形成してもよい。
また、第1パターン31a,31b,31c,31d,31eのインクの付着が目立ち易いように、パターン形成部12aは、第2パターン34a,34b,34c,34d,34eを、例えば、第1パターン31a,31b,31c,31d,31eの色の補色に該当する色で形成してもよい。
【0048】
媒体30が透明フィルムである場合、記録装置10は、透明フィルムに白インクで下地を形成し、この下地の上にCMYK等の他のカラーインクで記録を行う。そこで、パターン形成部12aは、記録ヘッド17に白インクを吐出させることにより、第2パターン34a,34b,34c,34d,34eを白インクで形成してもよい。つまり、検出領域を、第1実施例のように媒体30自体の色とするのではなく、白インクで形成した白画像とすることで、第1パターンからのインクの転写を、よりはっきりと確認できるようにしてもよい。むろん、媒体30が、透明フィルムであっても透明フィルムでなくても、検出領域を白インクによる白画像とすることができる。
なお、図5では示していないが、汚れ検出用パターン41は、汚れ検出用パターン40と同様に第3パターン33を含んでいてもよい。
【0049】
第3実施例:
図6は、パターン形成工程により媒体30の第1面30aに記録された、第3実施例にかかる汚れ検出用パターン42を示している。
第1パターンは、第3ローラー16cに接触させるために記録される。言い換えると、第3ローラー16cに接触しない位置に第1パターンを記録する必要は無い。図3に示したように、第3ローラー16cは、記録ヘッド17の下流位置で、幅方向D2に沿って間隔を空けて複数配設されている。
【0050】
そこで、パターン形成部12aは、記録ヘッド17を制御し、幅方向D2において第3ローラー16cが存在する複数の所定位置に対応して第1パターンが位置するように、汚れ検出用パターン42を第1面30aへ記録してもよい。汚れ検出用パターン42は、汚れ検出用パターン40と比較すると、第1パターン31a,31b,31c,31d,31eおよび検出領域32a,32b,32c,32d,32eのそれぞれが幅方向D2において第3ローラー16cが存在する複数の所定位置に対応して、間隔を空けて形成されている点で異なる。むろん、第3実施例においても、検出領域32a,32b,32c,32d,32eは、余白領域ではなく第2パターンであってもよい。このように、第1パターンを、幅方向D2において第3ローラー16cが存在する複数の所定位置に対応させて記録することで、汚れ検出用パターンの記録に際してインクの消費を抑制することができる。
【0051】
さらに、パターン形成部12aは、記録ヘッド17に、第1パターン31a,31b,31c,31d,31eの記録と共に、第1面30aのうち幅方向D2において第1パターン31a,31b,31c,31d,31eを避けた領域へ、第1パターン31a,31b,31c,31d,31eの濃度の表示を記録させるとしてもよい。幅方向D2において第1パターンを避けた領域とは、第1パターンを記録しない領域であって、幅方向D2において第1パターンに隣り合う領域である。
【0052】
図6の例では、幅方向D2において第1パターン31a,31b,31c,31d,31eを避けた領域に、第1パターン31a,31b,31c,31d,31e夫々の濃度が、例えば、100%、150%、200%、250%、300%といったように数字で記録されている。これら濃度は、汚れ検出用パターンの記録用データにおいて第1パターン31a,31b,31c,31d,31eそれぞれの濃度として規定されている値である。このような濃度が第1面30aに記録されることで、ユーザーは、第1パターンの濃度を、より直接的に認識することができる。
むろん、第1実施例や第2実施例においても、パターン形成部12aは、このような濃度の表示を第1パターンと共に第1面30aへ記録してもよい。
【0053】
第4実施例:
図7は、パターン形成工程により媒体30の第1面30aに記録された、第4実施例にかかる汚れ検出用パターン43を示している。
パターン形成部12aは、記録ヘッド17を制御し、濃度が異なる複数の第1パターンを幅方向D2に並べて形成してもよい。汚れ検出用パターン43によれば、第1パターン31a,31b,31cは、これまでの説明の通り搬送方向D1に沿って間を空けて並んでいるが、第1パターン31dは、幅方向D2に第1パターン31aと並び、第1パターン31eは、幅方向D2に第1パターン31bと並んでいる。汚れ検出用パターン43においても、第1パターン31dと第1パターン31dのための検出領域32dとの相対的な位置関係や、第1パターン31eと第1パターン31eのための検出領域32eとの相対的な位置関係は、これまでに説明した通りである。
【0054】
このように、濃度が異なる複数の第1パターンを幅方向D2に並べて形成することで、汚れ検出用パターンの記録に要する媒体30の消費を抑制することができる。むろん、第4実施例においても、パターン形成部12aは、検出領域32a,32b,32c,32d,32eを、余白領域ではなく第2パターンとしてもよいし、濃度の表示を第1パターンと共に第1面30aへ記録してもよい。
【0055】
5.まとめ:
このように本実施形態によれば、記録装置10は、搬送方向D1に搬送される媒体30の第1面30aに対して液体を吐出する液体吐出部と、液体吐出部よりも搬送方向D1の下流に設けられ、第1面30aに接触して回転するローラー(第3ローラー16c)と、制御部11と、を備える。制御部11は、液体吐出部による液体の吐出を制御することにより、第1面30aに液体による第1パターンを形成し、かつ、ローラーが第1パターンに接触するときのローラーの回転角度m°に対してローラーの回転角度がm°+360°となるときにローラーが接触する、第1面30aにおける特定位置に、第1パターンのための検出領域を形成する。
【0056】
前記構成によれば、第1パターンを形成するために第1面30aに吐出された液体がローラーに付着すると、その付着した液体が、ローラーが1回転したときに検出領域に転写される。そのため、検出領域の汚れを検出することで、ローラーへの液体の付着による記録結果への影響を検出することができる。また、この検出結果を利用することで、液体吐出部による液体の吐出量を適切な値に設定することが容易となる。また、検出領域の汚れを検出することで、そのような汚れが生じないように前記設定をすることができるため、前記文献1のように拍車の歯部が媒体へ食い込んで圧痕が生じるような構成を採用する必要が無くなる。
【0057】
また、本実施形態によれば、制御部11は、液体吐出部に、第1面30aのうち搬送方向D1に交差する幅方向D2において第1パターンを避けた領域へ、第1パターンの濃度の表示を記録させる、としてもよい。
前記構成によれば、幅方向D2において第1パターンに隣り合う領域を利用して、第1パターンの濃度の表示を記録することで、第1パターンの濃度をユーザーに認識させ易くすることができる。
なお、第1パターンの濃度の表示を記録するための領域は、基本的には余白領域の一部と解してよいが、例えば、濃度表示の文字を目立たせるために白インク等で下地を記録した領域であってもよい。
【0058】
また、本実施形態によれば、制御部11は、濃度が異なる複数の第1パターンを幅方向D2に並べて形成する、としてもよい。
前記構成によれば、濃度が異なる複数の第1パターンを搬送方向D1にのみ並べて形成する場合に比べて、複数の第1パターンをより小さい面積に記録することができ、媒体30の消費を抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、検出領域は、液体吐出部により液体が吐出されない非記録領域である、としてもよい。
前記構成によれば、検出領域を、非記録領域つまり余白領域とすることにより、検出領域の汚れを、より検出し易くすることができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、検出領域には、液体吐出部により第1パターンの色の補色に該当する色の第2パターンが形成される、としてもよい。
前記構成によれば、検出領域を、第1パターンの色の補色の第2パターンとすることにより、検出領域の汚れを、より検出し易くすることができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、制御部11は、媒体30の搬送方向D1においてローラーの円周A分の長さを有する領域に、円周Aを正の整数nで割った値を搬送方向D1の一パターンあたりの長さHとする第1パターンであって濃度が異なる複数の第1パターンを、搬送方向D1に並べて形成し、かつ、複数の第1パターンのそれぞれに対応する複数の特定位置のそれぞれに、搬送方向D1の長さを第1パターンの長さHに対応させた検出領域を形成する。
前記構成によれば、濃度が異なる複数の第1パターンを搬送方向D1に並べて形成する場合に、複数の第1パターンをより小さい面積に記録することができ、媒体30の消費を抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、整数nは奇数である、としてもよい。
整数nを、例えば、3や5といった奇数とすることで、媒体30の搬送方向D1においてローラーの円周A分の長さを有する領域に、第1パターンと検出領域とを交互に配置することができる。
【0063】
ただし、本実施形態の開示は、整数nを偶数とすることを否定しない。例えば、H=A/4とし、第1面30aにおいて、搬送方向D1の長さをHとした第1パターンを形成し、この第1パターンを基準とした特定位置に搬送方向D1の長さをHとした検出領域を形成するようにしてもよい。
【0064】
また、媒体30の搬送方向D1において円周A分の長さを有する領域に第1パターンを1つだけ形成する構成も考えられる。つまり、H=Aとし、第1面30aにおいて、搬送方向D1の長さをHとした第1パターンを形成し、この第1パターンを基準とした特定位置に搬送方向D1の長さをHとした検出領域を形成するようにしてもよい。
【0065】
また、本実施形態によれば、制御部11は、第1パターンの濃度が搬送方向D1の下流から上流に向かって段階的に上がるように複数の第1パターンを形成する、としてもよい。
前記構成によれば、高濃度の第1パターンからローラーに付着したインクが、対応する検出領域に転写された後も他の第1パターンや他の検出領域に転写されて汚れの検出に悪影響を及ぼすことを、回避することができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、制御部11は、複数の第1パターンの中に濃度を予め定められた最大値とした第1パターンを含める、としてもよい。
前記構成によれば、濃度を所定の最大値とした第1パターンを複数の第1パターンの中に含めることにより、当該最大値の濃度を記録に採用することが適切であるか否かを、検出領域の汚れから検証できるようになる。
【0067】
また、本実施形態によれば、制御部11は、液体吐出部による液体の吐出を制御することにより、第1面30aの搬送方向D1における最も上流の検出領域と最も上流の検出領域に次いで上流に位置する検出領域との間の領域に、第3パターン33を形成する、としてもよい。
前記構成によれば、ユーザーは、第3パターン33を目印にして、最も上流の検出領域や最も上流の検出領域に次いで上流に位置する検出領域の位置を、容易に認識することができる。
【0068】
また、本実施形態によれば、第1パターン31a,31b,31c,31d,31eはCMYKインクを混色させて記録されるパターンではなく、単色のインクで記録されるパターンとしてもよい。
前記構成によれば、単色のインクでの記録に際して、第3ローラー16cへのインク付着に起因する媒体のインクによる汚れを検出することができ、そのような汚れを無くすための設定をすることができる。
【0069】
本実施形態は、記録装置やシステムに限らず、装置やシステムが実行する方法や、方法をプロセッサーに実行させるプログラム12といった各種カテゴリーの発明を開示する。
例えば、搬送方向D1に搬送される媒体30の第1面30aに対して液体を吐出する液体吐出部と、液体吐出部よりも搬送方向D1の下流に設けられ、第1面30aに接触して回転するローラー(第3ローラー16c)と、を備える記録装置10による記録方法は、液体吐出部により、第1面30aに液体による第1パターンを形成し、かつ、ローラーが第1パターンに接触するときのローラーの回転角度m°に対してローラーの回転角度がm°+360°となるときにローラーが接触する、第1面30aにおける特定位置に、第1パターンのための検出領域を形成するパターン形成工程を備える。
【0070】
第1パターン、第2パターン、第3パターンといった各種パターンや検出領域の形状は、矩形以外の形状、例えば、円形や、楕円形や、その他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0071】
10…記録装置、11…制御部、12…プログラム、12a…パターン形成部、12b…打ち込み量設定部、13…表示部、14…操作受付部、15…通信IF、16…搬送部、16a…第1ローラー、16b…第2ローラー、16c…第3ローラー、16d…第4ローラー、17…記録ヘッド(液体吐出部)、19…プラテン、20…キャリッジ、30…媒体、30a…第1面、30b…第2面、31a,31b,31c,31d,31e…第1パターン、32a,32b,32c,32d,32e…検出領域、33…第3パターン、34a,34b,34c,34d,34e…第2パターン、40,41,42,43…汚れ検出用パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7