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  • 特許-シュート構造 図1
  • 特許-シュート構造 図2
  • 特許-シュート構造 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-16
(45)【発行日】2025-06-24
(54)【発明の名称】シュート構造
(51)【国際特許分類】
   B21K 27/00 20060101AFI20250617BHJP
【FI】
B21K27/00 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021190211
(22)【出願日】2021-11-24
(65)【公開番号】P2023077076
(43)【公開日】2023-06-05
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】速水 広一
【審査官】煤孫 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-107834(JP,A)
【文献】特開平06-320230(JP,A)
【文献】実開昭60-030117(JP,U)
【文献】実開平04-134237(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-2031890(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21K 27/00
B65G 11/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビレットを搬送するシュートと、
前記シュートから排出された前記ビレットを受けるエンドブロックと、を備え、
前記エンドブロックは、前記ビレットに接する側のエンドブロック主面において、下方側にテーパが設けられており、
前記テーパのテーパ面は、前記ビレットの端面と直交して前記ビレットの中心を通るビレット軸と、前記エンドブロック主面のうち前記テーパ面以外の部分と、が垂直となるように接触した状態において、前記ビレットと前記エンドブロックとの間に隙間が生じるように、前記テーパ面以外の部分に対して傾斜するように設けられており、
前記テーパは、前記ビレットの端面と前記テーパ面とのなす角が所定の角度となるように設けられている
シュート構造。
【請求項2】
前記所定の角度は、前記ビレット軸と前記エンドブロック主面との垂直度以上の角度である
請求項1に記載のシュート構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シュート構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鍛造品の製造において、所定の長さに切断されたビレットを用いることが知られている。ビレットは、圧延工程において製造された丸棒を切断機で所定の長さで切断することにより得ることができる。切断されたビレットは、コンベヤやシュートを用いて自動で搬送することができる。
【0003】
関連する技術として、特許文献1には、切断機から切断されたビレットを、パスラインが高いヒータに連続して搬送するビレット供給装置が開示されている。この供給装置では、長尺鋼材が切断機で切断されてビレットとなり、ビレット受けとシュートを経てチェーンコンベヤに送り込まれる。ビレットは、電磁誘導型リニヤモータの推力に助けられて上方に搬送されて、チェーンコンベヤのシュートから排出される。排出されたビレットは、ビレット搬送装置で所定の速度に制御されてヒータに送られて、ヒータとその電源装置とで所定の温度に加熱されて排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平08-099722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1が開示するビレット供給装置では、ビレットが排出されて落下するときの衝撃反発によって、ビレットが起き上がる方向に力が発生する。そのため、排出されたビレットの姿勢が安定しない。
【0006】
本開示は、このような問題点を解決するためになされたものであり、シュートから排出されるビレットの姿勢を安定させることが可能なシュート構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかるシュート構造は、
ビレットを搬送するシュートと、
前記シュートから排出された前記ビレットを受けるエンドブロックと、を備え、
前記エンドブロックは、前記ビレットに接する側の面において、下方側にテーパが設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本開示により、シュートから排出されるビレットの姿勢を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態にかかるシュート構造の斜視図である。
図2】実施形態にかかるシュート構造の断面図である。
図3】関連する技術にかかるシュート構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されている。説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0011】
まず、図1を用いて、本実施形態にかかるシュート構造100を説明する。図1は、本実施形態にかかるシュート構造100の斜視図である。なお、説明のため、図1においては後述するテーパTの図示を省略している。また、図1は、関連する技術にかかるシュート構造101の斜視図と同様である。シュート構造101については後述する。
【0012】
シュート構造100は、シュート10と、シュート10の下方に設けられるエンドブロック30と、を備えている。シュート構造100は、例えば、鍛造プレス設備においてビレット20を搬送する搬送装置の一部に設けられる。シュート構造100は、例えばチェーンコンベヤなどにより上方に搬送されたビレット20を受け取り、受け取ったビレット20を、シュート10を用いて下方へと搬送するものである。
【0013】
シュート構造100は、水平面に対し傾斜するように設けられている。水平面は、例えば、鍛造プレス設備が設置される工場などの床面と平行な面である。シュート10、エンドブロック30、及び取付台40は、水平面に対し所定の角度(例えば40°)に傾斜して設けられている。
【0014】
図1に示す右手系xyz座標は、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものであり、図面間で共通である。図1において、z軸方向はビレット20のビレット軸22と平行な方向を示している。ビレット軸22については後述する。
【0015】
xy平面は、エンドブロック30におけるシュート10側の端面であるエンドブロック主面31と平行な面である。ここでは、エンドブロック30が図1に示すような直方体形状であるものとする。x軸方向はエンドブロック30の短手方向を示しており、y軸方向はエンドブロック30の長手方向を示している。
【0016】
ビレット20は、圧延工程において製造された棒状の材料を、図示しない切断機において所定の長さで切断することにより得ることができる。ビレット20は、例えば円柱形状や角柱形状に形成されている。本実施形態では、円柱形状のビレット20を用いて説明を行う。
【0017】
ビレット20は、z軸正方向側から負方向側へとシュート10内を移動する。図1では、ビレット20が移動する方向を実線矢印で示している。ビレット20は、ビレット軸22を搬送方向として、シュート10により搬送される。ビレット軸22は、ビレット20の端面と直交し、ビレット中心25を通る直線である。ビレット中心25は、ビレット20の中心点である。ビレット中心25は、ビレット20の重心位置と一致し得る。
【0018】
ビレット20は、前の工程から搬送されてシュート10内に進入すると、z軸負方向に向かい、自重によりシュート10内を滑降する。ビレット20は、シュート10の終端から排出された後、シュート10の下方に設けられたエンドブロック30により受け止められる。ビレット20は、エンドブロック30からさらに搬送されて、次の工程へと移動する。
【0019】
ビレット20がシュート10から排出され、エンドブロック主面31とビレット20の下方側端面とが接しているとする。この状態において、ビレット20の端面はエンドブロック主面31と平行である。また、この状態において、ビレット軸22は、エンドブロック主面31と直交している。本実施形態では、ビレット軸22とエンドブロック主面31との垂直度は、所定の値となるように管理されているものとする。垂直度は、例えば0.5°以下である。
【0020】
シュート10は、その内部にビレット20を通過させることにより、ビレット20を上方から下方に搬送する中空の部材である。シュート10は、例えば、図示しないチェーンコンベヤと、図1に示すエンドブロック30とを繋ぐように設けられる。シュート10は、チェーンコンベヤ側の一端において、チェーンコンベヤにより搬送されたビレット20を受け、ビレット20をシュート10内に進入させる。シュート10は、シュート10内をビレット20の自重によって滑降させ、他端側からビレット20を排出する。
【0021】
エンドブロック30は、シュート10から排出されたビレット20を受ける。エンドブロック30は、例えば、直方体形状を有する金属部材などであってよい。これに限らず、エンドブロック30には、シュート10から排出されるビレット20を受けることが可能な種々の部材が用いられてよい。エンドブロック30は、ボルトなどの固定部材によって取付台40に固定されている。エンドブロック30には、図示しない搬送装置が接続されてよい。ビレット20は、当該搬送装置によって、エンドブロック30から次の工程へと搬送される。
【0022】
ここで、図3を用いて、本開示が解決しようとする課題について説明する。
図3は、関連する技術におけるシュート構造101の断面図である。シュート構造101の斜視図は、図1に示すシュート構造100の斜視図と同様である。図3は、図1に示すシュート構造101をy軸正方向に向かって見た図である。
【0023】
シュート10は、水平面Hに対し所定の角度θ1で傾斜するように設けられている。水平面Hは、上述したように工場などの床面と平行な面である。所定の角度θ1は、例えば40°である。ビレット20は、シュート内壁11に接しながら、シュート10内を滑るようにして移動する。
【0024】
ビレット20がシュート10から落下すると、ビレット20の端面はエンドブロック主面31と接触する。以下では、ビレット20の端面におけるエンドブロック主面31との接触位置を接触部28と称して説明する。接触部28は、ビレット20の落下状態に応じて変動し得る。例えば、ビレット軸22とエンドブロック主面31とが垂直となるようにビレット20が落下した場合、接触部28は、ビレット軸22とエンドブロック主面31との交点Pを含む領域となる。
【0025】
一方、ビレット軸22がエンドブロック主面31に対して傾斜した状態でビレット20が落下した場合、接触部28は、交点Pから離れた位置となり得る。例えば、図3に示すように、接触部28はビレット中心25より下方の位置となり得る。ここで、「ビレット中心25より下方」とは、接触部28が交点Pよりも下方となることを示している。このような場合、図3では、交点Pからx軸負方向側に示す実線部分に接触部28が含まれる。
【0026】
このように、ビレット中心25より下方でビレット20とエンドブロック主面31とが接触すると、ビレット20には、図中の破線矢印で示すように、落下の衝撃により反発する力F1が生じる。この場合、ビレット20には、図中の白抜き矢印に示すように、起き上がる力F2が働く。力F2は、床面とは反対側(x軸正方向側)の方向に向かう力である。ビレット20に起き上がる力F2が働くと、ビレット20の姿勢が安定しない。そのため、エンドブロック30に落下した後のビレット20の搬送に影響を及ぼすおそれがある。
【0027】
シュート10を用いたビレット20の搬送においては、上述したような問題が一定の確率において発生する。本開示は、このような課題を解決することを目的としている。
【0028】
続いて、図2を用いて、本実施形態にかかるシュート構造100について説明する。図2は、本実施形態にかかるシュート構造100の断面図である。図2は、図1に示すシュート構造100をy軸正方向に向かって見た図である。シュート10、ビレット20、及び取付台40の構成は、図3を用いて説明したシュート構造101と同様であるので、重複する内容については適宜説明を省略する。
【0029】
図2に示すように、シュート構造100において、エンドブロック30は、ビレット20に接する側のエンドブロック主面31において下方側にテーパTを有している。テーパTは、エンドブロック主面31が下方に向かって傾斜するように形成された状態を示している。
【0030】
テーパTは、接触部28がビレット中心25より上方となるように設けられる。ここで、「ビレット中心25より上方」とは、接触部28が交点Pよりも上方となることを示している。このような場合、図2では、交点Pからx軸正方向側に示す実線部分に接触部28が含まれる。
【0031】
以下では、エンドブロック主面31のうち、テーパ部分をテーパ面31T、テーパ面31T以外の部分をエンドブロック主面31aと称して説明を行う。ビレット20がシュート10から排出され、エンドブロック主面31aとビレット20の下方側端面とが接しているとする。この状態において、エンドブロック主面31aは、ビレット20の下方側端面と平行である。また、この状態において、エンドブロック主面31aは、ビレット軸22と直交する。
【0032】
テーパ面31Tは、ビレット軸22とエンドブロック主面31aとが垂直となるように接触した状態において、ビレット20とエンドブロック30との間に隙間が生じるように、エンドブロック主面31aに対して傾斜するように設けられる。
【0033】
例えば、図2に示すように、テーパTは、ビレット20の端面とテーパ面31Tとのなす角が所定の角度θ2となるように設けられる。ビレット20の端面は、図3の例と同様、ビレット軸22と直交する平面である。角度θ2は、ビレット20の垂直度以上の角度である。上述したように、本実施形態では、ビレット20の垂直度が0.5°以下となるように管理されているので、角度θ2は、0.5°以上の角度であればよい。角度θ2は、例えば5°である。
【0034】
ビレット20がシュート10から排出されると、図3に示す力F1と同様、図2の破線矢印で示すように、ビレット20には落下の衝撃により反発する力F11が生じる。しかしながら、本実施形態では、テーパTを設けることで、ビレット20の端面とテーパ面31Tとの間に角度θ2の隙間が生じる。これにより、ビレット軸22とエンドブロック主面31aとが垂直となるようにビレット20とエンドブロック30とが接触した状態において、テーパ面31Tはビレット20の端面とは接触しない。そのため、接触部28はビレット中心25より上方の位置となる。
【0035】
そして、ビレット20には、図中の白抜き矢印に示すように、シュート内壁11に押し付けられる力F12が働く。力F12は、床面側(x軸負方向側)に向かう力である。このような構成により、図3を用いて説明した、ビレット20がシュート10から起き上がる力F2の発生を抑制することができる。これにより、ビレット20の姿勢が安定する。
【0036】
なお、図2に示すテーパTの構成は一例であり、このような構成に限定されない。例えば図2において、テーパ面31Tは交点Pを起点として下方に傾斜するように設けられているが、これに限られない。テーパ面31Tは、交点Pより上方(x軸正方向側)を起点として傾斜するように設けられてもよい。
【0037】
以上説明したように、本実施形態にかかるシュート構造100では、シュート10から排出されるビレット20を受けるエンドブロック30において、エンドブロック主面31の下方側にテーパTが設けられている。テーパTは、ビレット20の端面とテーパ面31Tとのなす角が所定の角度となるように設けられている。所定の角度は、ビレット軸22とエンドブロック主面31との垂直度(例えば0.5°)以上の角度(例えば5°)である。
【0038】
このような構成により、ビレット中心25よりも下方でビレット20とエンドブロック30とが接触することを回避することができる。これにより、ビレット20にシュート10から起き上がる力が発生することを防止することができる。また、ビレット中心25よりも上方でビレット20とエンドブロック30とが接触するので、ビレット20とエンドブロック30との接触の際に、ビレット20がシュート内壁11に押し付けられる力が働く。
【0039】
したがって、本実施形態にかかるシュート構造100によれば、シュート10から排出されたときのビレット20の姿勢を安定させることができる。これにより、ビレット20を安定的に自動搬送することができる。
【0040】
なお、本開示は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
10 シュート
11 シュート内壁
20 ビレット
22 ビレット軸
25 ビレット中心
28 接触部
30 エンドブロック
31、31a エンドブロック主面
31T テーパ面
40 取付台
100、101 シュート構造
H 水平面
P 交点
T テーパ
図1
図2
図3