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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-16
(45)【発行日】2025-06-24
(54)【発明の名称】波長合分波器
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/293 20060101AFI20250617BHJP
   G02B 5/28 20060101ALI20250617BHJP
   G02B 1/11 20150101ALI20250617BHJP
   G02B 6/32 20060101ALI20250617BHJP
【FI】
G02B6/293 301
G02B5/28
G02B1/11
G02B6/32
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021192121
(22)【出願日】2021-11-26
(65)【公開番号】P2023078825
(43)【公開日】2023-06-07
【審査請求日】2024-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 正人
(72)【発明者】
【氏名】田澤 英久
(72)【発明者】
【氏名】山田 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】古川 将人
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06301407(US,B1)
【文献】特開2019-186551(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0220208(US,A1)
【文献】中国実用新案第202649522(CN,U)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0020075(KR,A)
【文献】米国特許第07072540(US,B1)
【文献】特開2013-161825(JP,A)
【文献】米国特許第07212343(US,B1)
【文献】LIN, Min-Ching et al.,“A 40-Gb/s Optical Module Using 4-Channel WDM TOSA for Access Network Applications”,2007 Proceedings 57th Electronic Components and Technology Conference,2007年05月29日,p. 728-733,DOI: 10.1109/ECTC.2007.373877
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/32
G02B 5/28
G02B 1/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光導波路、及び前記第1光導波路の端部と光学的に結合されたコリメートレンズを有する第1コリメータと、
第2光導波路、及び前記第2光導波路の端部と光学的に結合されたコリメートレンズをそれぞれ有するM個(Mは2以上の整数)の第2コリメータと、
互いに異なる透過波長帯域の光信号を透過し、それぞれの透過波長帯域を除く他の波長帯域の光信号を反射するM個の波長選択フィルタと、
前記M個の波長選択フィルタが載置された載置面を有するベースプレートと、
を備え、
前記第1コリメータと第1番目の前記第2コリメータとを結ぶ光路は、第1番目の前記波長選択フィルタを透過し、
第m番目(m=1,・・・,M-1)の前記波長選択フィルタと第(m+1)番目の前記第2コリメータとを結ぶ光路は、第(m+1)番目の前記波長選択フィルタを透過し、
前記M個の波長選択フィルタのそれぞれは、第1方向において互いに対向している第1主面及び第2主面、並びに前記第1主面と前記第2主面とを接続し前記載置面と対向している底面を含む光透過性の基板と、前記第1主面上に形成され、特定の透過波長帯域の光信号を透過し、前記特定の透過波長帯域を除く他の波長帯域の光信号を反射するように構成された多層膜と、を有し、接着剤の硬化物によって前記載置面に固定されており、
前記M個の波長選択フィルタのうち少なくとも一つの波長選択フィルタにおいて、前記接着剤の硬化物は、前記底面に接触し、かつ前記多層膜に非接触であ
前記基板は、前記第1方向と交差する第2方向において対向している第1側面及び第2側面を含み、
前記少なくとも一つの波長選択フィルタにおいて、前記接着剤の硬化物は、前記第1側面及び第2側面に接触している、波長合分波器。
【請求項2】
第1光導波路、及び前記第1光導波路の端部と光学的に結合されたコリメートレンズを有する第1コリメータと、
第2光導波路、及び前記第2光導波路の端部と光学的に結合されたコリメートレンズをそれぞれ有するM個(Mは2以上の整数)の第2コリメータと、
互いに異なる透過波長帯域の光信号を透過し、それぞれの透過波長帯域を除く他の波長帯域の光信号を反射するM個の波長選択フィルタと、
前記M個の波長選択フィルタが載置された載置面を有するベースプレートと、
を備え、
前記第1コリメータと第1番目の前記第2コリメータとを結ぶ光路は、第1番目の前記波長選択フィルタを透過し、
第m番目(m=1,・・・,M-1)の前記波長選択フィルタと第(m+1)番目の前記第2コリメータとを結ぶ光路は、第(m+1)番目の前記波長選択フィルタを透過し、
前記M個の波長選択フィルタのそれぞれは、第1方向において互いに対向している第1主面及び第2主面、並びに前記第1主面と前記第2主面とを接続し前記載置面と対向している底面を含む光透過性の基板と、前記第1主面上に形成され、特定の透過波長帯域の光信号を透過し、前記特定の透過波長帯域を除く他の波長帯域の光信号を反射するように構成された多層膜と、を有し、接着剤の硬化物によって前記載置面に固定されており、
前記M個の波長選択フィルタのうち少なくとも一つの波長選択フィルタにおいて、前記接着剤の硬化物は、前記底面に接触し、かつ前記多層膜に非接触であ
前記M個の前記波長選択フィルタのそれぞれは、前記第2主面上に形成され、前記第2主面における光信号の反射を防止するように構成された反射防止膜を有し、
前記少なくとも一つの波長選択フィルタにおいて、前記接着剤の硬化物は、前記反射防止膜における前記載置面に臨む表面に接触している、波長合分波器。
【請求項3】
前記第1主面は、前記多層膜が形成されていない露出領域を含み、
前記接着剤の硬化物は、前記露出領域に接触している、請求項1又は請求項2に記載の波長合分波器。
【請求項4】
前記第1主面は、前記第1方向において前記第2主面と対向している第1部分と、前記第1部分及び前記底面に対して傾斜して延在し、前記第1部分と前記底面とを接続している第2部分とを含み、
前記第2部分は、前記露出領域を含んでいる、請求項3に記載の波長合分波器。
【請求項5】
前記接着剤の硬化物における前記露出領域に接触している部分は、前記第1方向から見た場合に、前記第1主面の中心から300μm以上離れて位置している、請求項3又は請求項4に記載の波長合分波器。
【請求項6】
前記少なくとも一つの波長選択フィルタにおいて、前記接着剤の硬化物は、前記反射防止膜における前記第2主面とは反対側の表面に接触している、請求項に記載の波長合分波器。
【請求項7】
前記接着剤の硬化物における前記反射防止膜に接触している部分は、前記第1方向から見た場合に、前記第2主面の中心から300μm以上離れて位置している、請求項又は請求項に記載の波長合分波器。
【請求項8】
前記接着剤は、紫外線硬化樹脂を含む、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の波長合分波器。
【請求項9】
前記接着剤は、シリカからなるフィラーを含む、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の波長合分波器。
【請求項10】
前記接着剤の体積に対する前記フィラーの含有量は、50体積%以上である、請求項に記載の波長合分波器。
【請求項11】
前記底面と前記載置面との間隔は、50μm以上である、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の波長合分波器。
【請求項12】
前記ベースプレートの線膨張係数は、15.0×10-6(1/K)以下である、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の波長合分波器。
【請求項13】
第M番目の前記波長選択フィルタと光学的に結合された第3コリメータを更に備える、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の波長合分波器。
【請求項14】
前記ベースプレートの厚さ方向から見た場合に、所定方向に沿って延在している反射面を有する光学素子を更に備え、
前記M個の第2コリメータ及び前記M個の波長選択フィルタのそれぞれは、前記ベースプレートの厚さ方向から見た場合に、前記所定方向に沿って並んでおり、
前記第1コリメータと、前記M個の第2コリメータと、前記M個の波長選択フィルタとは、前記ベースプレートの厚さ方向から見た場合に、前記反射面に対して同じ側に位置しており、
前記反射面は、前記第1コリメータと第1番目の前記第2コリメータとを結ぶ光路の向き、及び第m番目(m=1,・・・,M-1)の前記波長選択フィルタと第(m+1)番目の前記第2コリメータとを結ぶ光路の向きを変更する、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の波長合分波器。
【請求項15】
奇数番目の前記波長選択フィルタは、偶数番目の前記波長選択フィルタと前記ベースプレートの厚さ方向における位置が異なっており、
前記ベースプレートは、奇数番目の前記波長選択フィルタと偶数番目の前記波長選択フィルタとの間に配置されている、請求項14に記載の波長合分波器。
【請求項16】
前記少なくとも一つの波長選択フィルタは、第1番目から第(M/2)番目までの波長選択フィルタの少なくともいずれかである、請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の波長合分波器。
【請求項17】
前記少なくとも一つの波長選択フィルタの個数は、(M/2)個以上である、請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の波長合分波器。
【請求項18】
前記ベースプレートは、前記M個の波長選択フィルタが載置された第1ベースプレートと、前記第1ベースプレートと別体であり前記第1コリメータ及び前記M個の第2コリメータが載置された第2ベースプレートとを有する、請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の波長合分波器。
【請求項19】
前記第1コリメータと、前記M個の第2コリメータと、前記M個の波長選択フィルタと、前記ベースプレートとが内部空間に収容された筐体を更に備え、
前記内部空間は密閉されている、請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の波長合分波器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、波長合分波器に関する。
【背景技術】
【0002】
波長多重方式の光通信システム等に用いられる波長合分波器が知られている(例えば、特許文献1,2及び非特許文献1を参照)。波長合分波器は、互いに波長が異なる複数の光信号を合波して波長多重光信号とし、又は、互いに波長が異なる複数の光信号を含む波長多重光信号を各光信号に分波する。
【0003】
波長合分波器は、光透過性の基板と、基板の表面上に形成され所定の透過波長帯域の光信号のみを透過する多層膜とをそれぞれ有する複数の波長選択フィルタを備えている。複数の波長選択フィルタは、例えばベースプレート上に2列に並べられ、配列方向における位置が列同士で互い違いになるように配置されている。例えば、波長が異なる複数の光信号が合波される場合、各光信号は、対応するコリメータから波長選択フィルタに入力され、その波長選択フィルタを透過した各光信号が、他の波長選択フィルタの多層膜において反射されながら他の光信号と合波される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第6515776号明細書
【文献】米国特許第7031610号明細書
【非特許文献】
【0005】
【文献】Honda, et al. “Diffraction-compensated free-space WDM add-Drop module withthin-film filters”, IEEE Photonics Technology Letters,Vol.15, No.1, p.69
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような波長合分波器では、各波長選択フィルタは例えば接着剤の硬化物によってベースプレートに固定されている。各波長選択フィルタがベースプレートに固定された状態で環境温度が変化すると、波長選択フィルタに入射する光信号に対する多層膜の傾きが変化することがある。具体的には、環境温度が室温(例えば25℃)と比べて低温となる場合には、多層膜はベースプレートから離れるように傾き、環境温度が室温と比べて高温となる場合には、多層膜はベースプレートに近づくように傾く。その結果、多層膜からの反射光の光路が当初の光路から変化し、波長選択フィルタによる挿入損失が増加する。
【0007】
本開示は、波長選択フィルタの環境温度が変化した際に生じる挿入損失の増加を抑制することできる波長合分波器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、一側面として、波長合分波器を提供する。この波長合分波器は、第1コリメータと、M個(Mは2以上の整数)の第2コリメータと、M個の波長選択フィルタと、ベースプレートと、を備える。第1コリメータは、第1光導波路、及び第1光導波路の端部と光学的に結合されたコリメートレンズを有する。M個の第2コリメータは、第2光導波路、及び第2光導波路の端部と光学的に結合されたコリメートレンズをそれぞれ有する。M個の波長選択フィルタは、互いに異なる透過波長帯域の光信号を透過し、それぞれの透過波長帯域を除く他の波長帯域の光信号を反射する。ベースプレートは、M個の波長選択フィルタが載置された載置面を有する。第1コリメータと第1番目の第2コリメータとを結ぶ光路は、第1番目の波長選択フィルタを透過する。第m番目(m=1,・・・,M-1)の波長選択フィルタと第(m+1)番目の第2コリメータとを結ぶ光路は、第(m+1)番目の波長選択フィルタを透過する。M個の波長選択フィルタのそれぞれは、光透過性の基板と、多層膜と、を有する。基板は、第1方向において互いに対向している第1主面及び第2主面、並びに第1主面と第2主面とを接続し載置面と対向している底面を含む。多層膜は、第1主面上に形成され、特定の透過波長帯域の光信号を透過し、特定の透過波長帯域を除く他の波長帯域の光信号を反射するように構成されている。M個の波長選択フィルタのそれぞれは、接着剤の硬化物によって載置面に固定されている。M個の波長選択フィルタのうち少なくとも一つの波長選択フィルタにおいて、接着剤の硬化物は、底面に接触し、かつ多層膜に非接触である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、波長選択フィルタの環境温度が変化した際に生じる挿入損失の増加を抑制することできる波長合分波器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態に係る波長合分波器の模式的な平面図である。
図2図2は、図1に示される波長合分波器の模式的な断面図である。
図3図3は、ベースプレート及び筐体の図示が省略された図1に示される波長合分波器の模式的な図である。
図4図4は、第1コリメータ及び第2コリメータの断面図である。
図5図5は、第1実施形態に係る波長選択フィルタを示す斜視図である。
図6図6は、第1実施形態に係る波長選択フィルタの断面図である。
図7図7は、波長選択フィルタが有する多層膜の透過波長帯域を示すグラフである。
図8図8は、互いに波長が異なるM個の光信号を合波する場合における波長合分波器の動作を示す図である。
図9図9は、互いに波長が異なるM個の光信号を分波する場合における波長合分波器の動作を示す図である。
図10図10は、第1実施形態の第1変形例に係る波長選択フィルタを示す斜視図である。
図11図11は、第1実施形態の第1変形例に係る波長選択フィルタを反射防止膜側から見た図である。
図12図12は、第1実施形態の第2変形例に係る波長選択フィルタを示す斜視図である。
図13図13は、第1実施形態の第3変形例に係る波長選択フィルタを示す斜視図である。
図14図14は、第2実施形態に係る波長選択フィルタを示す斜視図である。
図15図15は、第2実施形態に係る波長選択フィルタの断面図である。
図16図16は、第2実施形態に係る波長選択フィルタを多層膜側から見た図である。
図17図17は、第2実施形態の第1変形例に係る波長選択フィルタを示す斜視図である。
図18図18は、第2実施形態の第2変形例に係る波長選択フィルタを示す斜視図である。
図19図19は、第2実施形態の第3変形例に係る波長選択フィルタを示す斜視図である。
図20図20は、第2実施形態の第3変形例に係る波長選択フィルタの断面図である。
図21図21は、第3実施形態に係る波長合分波器の模式的な断面図である。
図22図22は、第4実施形態に係る波長合分波器の模式的な断面図である。
図23図23は、第5実施形態に係る波長合分波器の構成を示す模式的な図である。
図24図24は、第6実施形態に係る波長合分波器の模式的な平面図である。
図25図25は、図24に示される波長合分波器の模式的な断面図である。
図26図26は、波長選択フィルタに対する接合部材の接触態様を示す模式図である。
図27図27は、接合部材の接触態様と、多層膜の傾き角の変動量及び挿入損失の変動量との関係を示す図である。
図28図28は、従来の波長合分波器が備える波長選択フィルタを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。本開示の一実施形態に係る波長合分波器は、第1コリメータと、M個(Mは2以上の整数)の第2コリメータと、M個の波長選択フィルタと、ベースプレートと、を備える。第1コリメータは、第1光導波路、及び第1光導波路の端部と光学的に結合されたコリメートレンズを有する。M個の第2コリメータは、第2光導波路、及び第2光導波路の端部と光学的に結合されたコリメートレンズをそれぞれ有する。M個の波長選択フィルタは、互いに異なる透過波長帯域の光信号を透過し、それぞれの透過波長帯域を除く他の波長帯域の光信号を反射する。ベースプレートは、M個の波長選択フィルタが載置された載置面を有する。第1コリメータと第1番目の第2コリメータとを結ぶ光路は、第1番目の波長選択フィルタを透過する。第m番目(m=1,・・・,M-1)の波長選択フィルタと第(m+1)番目の第2コリメータとを結ぶ光路は、第(m+1)番目の波長選択フィルタを透過する。M個の波長選択フィルタのそれぞれは、光透過性の基板と、多層膜と、を有する。基板は、第1方向において互いに対向している第1主面及び第2主面、並びに第1主面と第2主面とを接続し載置面と対向している底面を含む。多層膜は、第1主面上に形成され、特定の透過波長帯域の光信号を透過し、特定の透過波長帯域を除く他の波長帯域の光信号を反射するように構成されている。M個の波長選択フィルタのそれぞれは、接着剤の硬化物によって載置面に固定されている。M個の波長選択フィルタのうち少なくとも一つの波長選択フィルタにおいて、接着剤の硬化物は、底面に接触し、かつ多層膜に非接触である。
【0012】
この波長合分波器では、M個の波長選択フィルタのうち少なくとも一つの波長選択フィルタにおいて、接着剤の硬化物が、波長選択フィルタの基板の底面に接触し、かつ多層膜に非接触である。接着剤の硬化物が多層膜に非接触であることにより、多層膜は接着剤の硬化物によってベースプレートの載置面に束縛されない。そのため、環境温度の変化によって基板の熱変形が起こった場合に多層膜に生じる応力が低減される。この結果、上記波長合分波器では、環境温度が変化した場合における多層膜の傾きが抑制される。よって、上記波長合分波器では、環境温度が変化した場合であっても波長選択フィルタにて反射される光信号の光路ずれが生じ難く、波長選択フィルタによる挿入損失の増加を抑制することができる。
【0013】
一実施形態として、基板は、第1方向と交差する第2方向において対向している第1側面及び第2側面を含んでいてもよい。上記少なくとも一つの波長選択フィルタにおいて、接着剤の硬化物は、第1側面及び第2側面に接触していてもよい。この実施形態によれば、接着剤の硬化物が基板の底面のみならず、基板の第1側面及び第2側面に接触しているため、波長選択フィルタと接着剤の硬化物との接触面積が増加し、波長選択フィルタが接着剤の硬化物によってベースプレートにより強固に固定される。そのため、例えば波長選択フィルタに対して物理的な外力が加えられた場合であっても、波長選択フィルタの位置及び向きのずれが生じ難く、波長選択フィルタによる挿入損失の増加を抑制することができる。
【0014】
一実施形態として、第1主面は、多層膜が形成されていない露出領域を含んでいてもよい。接着剤の硬化物は、露出領域に接触していてもよい。この実施形態において、第1主面は、第1方向において第2主面と対向している第1部分と、第1部分及び底面に対して傾斜して延在し、第1部分と底面とを接続している第2部分とを含んでいてもよい。第2部分は、露出領域を含んでいてもよい。この実施形態によれば、接着剤の硬化物が基板の底面のみならず、第1主面の一部に接触しているため、波長選択フィルタと接着剤の硬化物との接触面積が増加し、波長選択フィルタが接着剤の硬化物によってベースプレートにより強固に固定される。そのため、例えば波長選択フィルタに対して物理的な外力が加えられた場合であっても、波長選択フィルタの位置及び向きのずれが生じ難く、波長選択フィルタによる挿入損失の増加を抑制することができる。
【0015】
上記の実施形態において、接着剤の硬化物における露出領域に接触している部分は、第1方向から見た場合に、第1主面の中心から300μm以上離れて位置していてもよい。この実施形態によれば、接着剤の硬化物における露出領域に接触している部分が第1主面の中心からある程度離れて位置しているため、波長選択フィルタを通過する光信号が接着剤の硬化物によって遮られることを抑制することができる。
【0016】
一実施形態として、M個の波長選択フィルタのそれぞれは、第2主面上に形成され、第2主面における光信号の反射を防止するように構成された反射防止膜を有していてもよい。上記少なくとも一つの波長選択フィルタにおいて、接着剤の硬化物は、反射防止膜における載置面に臨む表面に接触していてもよい。この実施形態によれば、接着剤の硬化物が基板の底面のみならず、反射防止膜における載置面に臨む表面に接触しているため、波長選択フィルタと接着剤の硬化物との接触面積が増加し、波長選択フィルタが接着剤の硬化物によってベースプレートにより強固に固定される。そのため、例えば波長選択フィルタに対して物理的な外力が加えられた場合であっても、波長選択フィルタの位置及び向きのずれが生じ難く、波長選択フィルタによる挿入損失の増加を抑制することができる。
【0017】
一実施形態として、上記少なくとも一つの波長選択フィルタにおいて、接着剤の硬化物は、反射防止膜における第2主面とは反対側の表面に接触していてもよい。この実施形態によれば、接着剤の硬化物が基板の底面のみならず、反射防止膜における第2主面とは反対側の表面に接触しているため、波長選択フィルタと接着剤の硬化物との接触面積が増加し、波長選択フィルタが接着剤の硬化物によってベースプレートにより強固に固定される。そのため、例えば波長選択フィルタに対して物理的な外力が加えられた場合であっても、波長選択フィルタの位置及び向きのずれが生じ難く、波長選択フィルタによる挿入損失の増加を抑制することができる。
【0018】
上記の実施形態において、接着剤の硬化物における反射防止膜に接触している部分は、第1方向から見た場合に、第2主面の中心から300μm以上離れて位置していてもよい。この実施形態によれば、接着剤の硬化物における反射防止膜に接触している部分が第2主面の中心からある程度離れて位置しているため、波長選択フィルタを通過する光信号が接着剤の硬化物によって遮られることを抑制することができる。
【0019】
一実施形態として、接着剤は、紫外線硬化樹脂を含んでいてもよい。この実施形態によれば、接着剤に対して紫外線を照射することにより速やかに接着剤を硬化させることができる。したがって、接着剤を硬化する過程において、波長選択フィルタの位置及び向きのずれが生じ難く、波長選択フィルタによる挿入損失の増加を抑制することができる。
【0020】
一実施形態として、接着剤は、シリカからなるフィラーを含んでいてもよい。この実施形態によれば、シリカは線膨張係数が比較的小さい材料であるため、環境温度の変化による接着剤の硬化物の熱変形が抑制される。そのため、環境温度が変化した場合であっても、接着剤の硬化物によって固定された波長選択フィルタの位置及び向きのずれが生じ難く、波長選択フィルタによる挿入損失の増加を抑制することができる。
【0021】
上記の実施形態において、接着剤の体積に対するフィラーの含有量は、50体積%以上であってもよい。この実施形態によれば、環境温度の変化による接着剤の硬化物の熱変形が一層抑制される。そのため、環境温度が変化した場合における波長選択フィルタの位置及び向きのずれが一層生じ難く、波長選択フィルタによる挿入損失の増加を更に抑制することができる。
【0022】
一実施形態として、底面と載置面との間隔は、50μm以上であってもよい。この実施形態によれば、環境温度の変化によるベースプレートの熱変形の影響が波長選択フィルタへと及び難い。そのため、環境温度が変化した場合であっても、波長選択フィルタの位置及び向きのずれが生じ難く、波長選択フィルタによる挿入損失の増加を抑制することができる。
【0023】
一実施形態として、ベースプレートの線膨張係数は、15.0×10-6(1/K)以下であってもよい。この実施形態によれば、環境温度の変化によるベースプレートの熱変形が抑制される。そのため、環境温度が変化した場合であっても、ベースプレート上に配置された波長選択フィルタの位置及び向きのずれが生じ難く、波長選択フィルタによる挿入損失の増加を抑制することができる。
【0024】
一実施形態として、波長合分波器は、第M番目の波長選択フィルタと光学的に結合された第3コリメータを更に備えていてもよい。この実施形態によれば、第3コリメータをアップグレード用ポートとして用いることで、波長合分波器のチャネル数を必要に応じて増加させることができる。
【0025】
一実施形態として、ベースプレートの厚さ方向から見た場合に、所定方向に沿って延在している反射面を有する光学素子を更に備えていてもよい。M個の第2コリメータ及びM個の波長選択フィルタのそれぞれは、ベースプレートの厚さ方向から見た場合に、所定方向に沿って並んでいてもよい。第1コリメータと、M個の第2コリメータと、M個の波長選択フィルタとは、ベースプレートの厚さ方向から見た場合に、反射面に対して同じ側に位置していてもよい。反射面は、第1コリメータと第1番目の第2コリメータとを結ぶ光路の向き、及び第m番目(m=1,・・・,M-1)の波長選択フィルタと第(m+1)番目の第2コリメータとを結ぶ光路の向きを変更してもよい。この実施形態によれば、奇数番目の第2コリメータ及び波長選択フィルタと、偶数番目の第2コリメータ及び波長選択フィルタとが向かい合うように配置されている場合と比べて、波長合分波器の小型化を図ることができる。
【0026】
上記の実施形態において、奇数番目の波長選択フィルタは、偶数番目の波長選択フィルタとベースプレートの厚さ方向における位置が異なっていてもよい。ベースプレートは、奇数番目の波長選択フィルタと偶数番目の波長選択フィルタとの間に配置されていてもよい。この実施形態によれば、ベースプレートの厚さ方向から見た場合に、奇数番目の波長選択フィルタを、偶数番目の波長選択フィルタの一部と重なるように配置することができ、波長合分波器の小型化を一層図ることができる。
【0027】
一実施形態として、上記少なくとも一つの波長選択フィルタは、第1番目から第(M/2)番目までの波長選択フィルタの少なくともいずれかであってもよい。この実施形態によれば、波長選択フィルタによる挿入損失の増加を効果的に抑制することができる。
【0028】
一実施形態として、上記少なくとも一つの波長選択フィルタの個数は、(M/2)個以上であってもよい。この実施形態によれば、波長選択フィルタによる挿入損失の増加をより確実に抑制することができる。
【0029】
一実施形態として、ベースプレートは、M個の波長選択フィルタが載置された第1ベースプレートと、第1ベースプレートと別体であり第1コリメータ及びM個の第2コリメータが載置された第2ベースプレートとを有していてもよい。この実施形態によれば、波長選択フィルタが載置される第1ベースプレートと、第1コリメータ及び第2コリメータが載置される第2ベースプレートとを独立に設計することが可能となる。これにより、波長選択フィルタ、第1コリメータ及び第2コリメータの配置自由度を向上させることができる。
【0030】
一実施形態として、波長合分波器は、第1コリメータと、M個の第2コリメータと、M個の波長選択フィルタと、ベースプレートとが内部空間に収容された筐体を更に備えていてもよい。内部空間は密閉されていてもよい。この実施形態によれば、例えば内部空間に収容されたベースプレートの酸化が抑制され、波長合分波器の特性劣化を抑制することができる。
【0031】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示に係る波長合分波器の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0032】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る波長合分波器1の模式的な平面図である。図2は、図1に示される波長合分波器1の模式的な断面図である。図3は、ベースプレート50及び筐体70の図示が省略された波長合分波器1の模式的な図である。波長合分波器1は、例えば光通信システムにおいて用いられるMUX/DEMUXモジュールである。波長合分波器1は、互いに波長が異なるM個の光信号を合波して波長多重光信号を生成する機能、及び、互いに波長が異なるM個の光信号を含む波長多重光信号を個々の光信号に分波する機能の少なくとも一方の機能を有している。波長合分波器1は、第1コリメータ10と、M個の第2コリメータ20(1)~20(M)と、M個の波長選択フィルタ40(1)~40(M)と、ベースプレート50と、接合部材60と、筐体70と、を備えている。Mは2以上の任意の整数であり、本実施形態ではM=12である。
【0033】
図4は、第1コリメータ10及び第2コリメータ20(1)~20(M)の断面図である。第1コリメータ10は、光ファイバ11(第1光導波路)と、第1コリメートレンズ12と、フェルール13と、キャピラリ14と、を有している。
【0034】
光ファイバ11は、例えばガラス製のシングルモード光ファイバである。光ファイバ11は、光導波方向に延びるコアと、コアの周囲を覆うクラッドとを有する。フェルール13は、略円柱状に形成されている。フェルール13は、フェルール13の中心軸線と交差する第1端面13a及び第2端面13bと、第1端面13a及び第2端面13bを接続する円柱面である外周面13cとを有している。フェルール13は、光ファイバ11の先端に取り付けられている。フェルール13には、フェルール13の中心軸線に沿った貫通孔が形成されている。光ファイバ11は、フェルール13の貫通孔に挿通されている。フェルール13の中心軸線は、光ファイバ11の光軸AX1と一致している。光ファイバ11の端面は、第1端面13aにおいてフェルール13から露出しており、第1端面13aと共に研磨されて第1端面13aと面一である。光ファイバ11の端面、及び第1端面13aは、光ファイバ11の光軸AX1と垂直な仮想平面H1に対して傾斜している。仮想平面H1に対する第1端面13aの傾斜角は、例えば6°以上10°以下であってもよいし、8°であってもよい。第2端面13bには、光ファイバ11をフェルール13に固定するための接合部材15が配置されている。接合部材15は、樹脂製の接着剤の硬化物である。フェルール13は、例えば石英等のガラス、又はジルコニア等のセラミックにより形成されている。
【0035】
第1コリメートレンズ12は、略円柱状に形成されたレンズ部品であり、光ファイバ11と光学的に結合されている。第1コリメートレンズ12は、例えば石英等のガラスにより形成されている。第1コリメートレンズ12は、第1コリメートレンズ12の中心軸線と交差する第1端面12a及び第2端面12bと、第1端面12a及び第2端面12bを接続する円柱面である外周面12cとを有している。第1端面12aは球面であり、凸レンズとして機能する。第2端面12bは、光ファイバ11の端面と対向しており、当該端面と光学的に結合されている。第2端面12bは、仮想平面H1に対して傾斜している。仮想平面H1に対する第2端面12bの傾斜角は、例えば6°以上10°以下であってもよいし、8°であってもよい。本実施形態では、第2端面12bはフェルール13の第1端面13aと平行である。
【0036】
キャピラリ14は、第1コリメートレンズ12及びフェルール13を収容する略円筒状の部材である。キャピラリ14は、例えば石英等のガラス、又はSUS等の金属により形成されている。キャピラリ14の第1開口14aからは、第1コリメートレンズ12が挿入されている。キャピラリ14の第2開口14bからは、フェルール13が挿入されている。第1コリメートレンズ12の外周面12c、及びフェルール13の外周面13cは、キャピラリ14の内周面14cと接触している。光ファイバ11の端面と、第1コリメートレンズ12の第2端面12bとは、キャピラリ14の内部空間において互いに対向している。キャピラリ14は、光ファイバ11の光軸AX1と、第1コリメートレンズ12の中心軸線とが互いに一致するように、第1コリメートレンズ12及びフェルール13を保持している。
【0037】
第2コリメータ20(1)~20(M)は、上述した第1コリメータ10と同様の構成を有している。第2コリメータ20(1)~20(M)は、光ファイバ21(第2光導波路)と、第2コリメートレンズ22と、フェルール23と、キャピラリ24と、を有している。
【0038】
光ファイバ21は、上述した光ファイバ11と同様の構成を有している。フェルール23は、略円柱状に形成されている。フェルール23は、フェルール23の中心軸線と交差する平坦な第1端面23a及び第2端面23bと、第1端面23a及び第2端面23bを接続する円柱面である外周面23cとを有している。フェルール23は、光ファイバ21の先端に取り付けられている。フェルール23には、フェルール23の中心軸線に沿った貫通孔が形成されている。光ファイバ21は、フェルール23の貫通孔に挿通されている。フェルール23の中心軸線は、光ファイバ21の光軸AX1と一致している。光ファイバ21の端面は、第1端面23aにおいてフェルール23から露出しており、第1端面23aとともに研磨されて第1端面23aと面一である。光ファイバ21の端面、及び第1端面23aは、光ファイバ21の光軸AX1と垂直な仮想平面H1に対して傾斜している。仮想平面H1に対する第1端面23aの傾斜角は、例えば6°以上10°以下であってもよいし、8°であってもよい。第2端面23bには、光ファイバ21をフェルール23に固定するための接合部材25が配置されている。接合部材25は、樹脂製の接着剤の硬化物である。フェルール23は、例えば石英等のガラス、又はジルコニア等のセラミックにより形成されている。
【0039】
第2コリメートレンズ22は、略円柱状に形成されたレンズ部品であり、光ファイバ21と光学的に結合されている。第2コリメートレンズ22は、例えば石英等のガラスにより形成されている。第2コリメートレンズ22は、第2コリメートレンズ22の中心軸線と交差する第1端面22a及び第2端面22bと、第1端面22a及び第2端面22bを接続する円柱面である外周面22cとを有している。第1端面22aは球面であり、凸レンズとして機能する。第2端面22bは、光ファイバ21の端面と対向しており、当該端面と光学的に結合されている。第2端面22bは、仮想平面H1に対して傾斜している。仮想平面H1に対する第2端面22bの傾斜角は、例えば6°以上10°以下であってもよいし、8°であってもよい。本実施形態では、第2端面22bはフェルール23の第1端面23aと平行である。
【0040】
キャピラリ24は、第2コリメートレンズ22及びフェルール23を収容する略円筒状の部材である。キャピラリ24は、例えば石英等のガラス、SUS等の金属により形成されている。キャピラリ24の第1開口24aからは、第2コリメートレンズ22が挿入されている。キャピラリ24の第2開口24bからは、フェルール23が挿入されている。第2コリメートレンズ22の外周面22c、及びフェルール23の外周面23cは、キャピラリ24の内周面24cと接触している。光ファイバ21の端面と、第2コリメートレンズ22の第2端面22bとは、キャピラリ24の内部空間において互いに対向している。キャピラリ24は、光ファイバ21の光軸AX1と、第2コリメートレンズ22の中心軸線とが互いに一致するように、第2コリメートレンズ22及びフェルール23を保持している。
【0041】
図5は、波長選択フィルタ40(1)~40(M)を示す斜視図である。図6は、波長選択フィルタ40(1)~40(M)の断面図である。波長選択フィルタ40(1)~40(M)は、互いに異なる透過波長帯域の光信号を透過し、それぞれの透過波長帯域を除く他の波長帯域の光信号を反射する。波長選択フィルタ40(1)~40(M)は、後述するベースプレート50の載置面51に、接合部材60によって固定されている。波長選択フィルタ40(1)~40(M)は、基板41、多層膜42及び反射防止膜43を有している。
【0042】
基板41は、光透過性を有する材料により形成されている。光透過性を有する材料は、例えばガラスである。光透過性を有するとは、対象とする波長の光を95%以上透過することをいう。基板41は、例えば波長多重光信号に含まれる波長を全て含む波長帯域において光透過性を有している。基板41は、略直方体形状に形成されている。基板41は、第1主面41a、第2主面41b、底面41c、第1側面41e及び第2側面41fを有している。第1主面41a及び第2主面41bは、X方向(第1方向)において対向している。以下の説明では、X方向に垂直な方向をY方向、X方向及びY方向に垂直な方向をZ方向とする。第1主面41a及び第2主面41bは、X方向から見た場合に、矩形状を有している。第1主面41aは、図6に示されるように、基板41の外側に向かって凸の曲面状を有している。第2主面41bは、Y方向及びZ方向に沿って平坦に形成されている。
【0043】
底面41cは、第1主面41aと第2主面41bとを接続しており、後述するベースプレート50の載置面51とZ方向において対向している。底面41cは、X方向及びY方向に沿って平坦に形成されている。第1側面41e及び第2側面41fは、Y方向(第2方向)において互いに対向している。第1側面41e及び第2側面41fのそれぞれは、第1主面41aと第2主面41bとを接続しており、X方向及びZ方向に沿って平坦に延在している。X方向から見た場合において、基板41のY方向に沿う幅は、例えば0.8mm以上2mm以下であってもよく、基板41のZ方向に沿う幅は、例えば0.8mm以上2mm以下であってもよい。基板41のX方向に沿う最大厚さは、例えば0.5mm以上2mm以下であってもよい。
【0044】
多層膜42は、特定の透過波長帯域の光信号のみを透過し、他の波長帯域の光信号を反射するように構成されたバンドパスフィルタである。多層膜42は、多数の薄膜フィルタ(Thin Film Filter;TFF)が積層されることにより構成されている。薄膜フィルタは、誘電体により形成されている。多層膜42を構成している薄膜フィルタの層数は、例えば100層以上である。多層膜42の厚さは、例えば30μm以上100μm以下である。多層膜42は、基板41の第1主面41a上に直接形成されており、第1主面41aと接触している。多層膜42は、第1主面41aに沿って延在しており、図6に示されるように第1主面41aから離れる方向に向かって凸の曲面状を有している。本実施形態では、第1主面41aの全体に多層膜42が形成されている。
【0045】
多層膜42は、第1表面42a、第2表面42b及び第3表面42cを有している。第1表面42aは、基板41の第1主面41a側の表面であり、第1主面41aと接触している。第2表面42bは、第1主面41aとは反対側の表面である。第3表面42cは、ベースプレート50の載置面51に臨む表面であり、第1表面42aと第2表面42bとを接続している。本実施形態では、第3表面42cは、基板41の底面41cと面一である。
【0046】
図7は、波長選択フィルタ40(1)~40(M)が有する多層膜42の透過波長帯域を示すグラフである。図7において、横軸は波長を示し、縦軸は光透過率を示している。図7には、波長選択フィルタ40(1)~40(M)にそれぞれ対応する透過波長帯域F(1)~F(M)と、光信号の信号波長λ~λとが示されている。図7に示されるように、多層膜42は、波長選択フィルタ40(1)~40(M)のそれぞれごとに異なる透過波長帯域F(1)~F(M)を有している。透過波長帯域が異なるとは、透過波長帯域の中心波長同士が異なることをいい、透過波長帯域における短波長端付近及び長波長端付近において透過波長帯域同士が重なり合う場合を含む。本実施形態では、透過波長帯域F(1)~F(M)の幅は互いに等しい。透過波長帯域F(1)~F(M)は、信号波長λ1~λをそれぞれ含んでいる。一例として、透過波長帯域F(1)~F(M)の中心波長は、それぞれ信号波長λ~λである。
【0047】
反射防止膜43は、第2主面41bにおける光信号の反射を防止するように構成されている。反射防止膜43は、複数の薄膜フィルタが積層されることにより構成されたAR(Anti-Reflection)膜である。薄膜フィルタは、誘電体により形成されている。反射防止膜43を構成している薄膜フィルタの層数は、例えば10層以下である。反射防止膜43の厚さは、例えば0.1μm以上3μm以下である。反射防止膜43は、基板41の第2主面41b上に直接形成されており、第2主面41bと接触している。反射防止膜43は、第2主面41bに沿って延在している。本実施形態では、反射防止膜43は、Y方向及びZ方向に沿って平坦に延在している。本実施形態では、第2主面41bの全体に反射防止膜43が形成されている。
【0048】
反射防止膜43は、第1表面43a、第2表面43b及び第3表面43cを有している。第1表面43aは、基板41の第2主面41b側の表面であり、第2主面41bと接触している。第2表面43bは、第2主面41bとは反対側の表面である。第3表面43cは、ベースプレート50の載置面51に臨む表面であり、第1表面43aと第2表面43bとを接続している。本実施形態では、第3表面43cは、基板41の底面41cと面一である。
【0049】
波長選択フィルタ40(1)~40(M)では、温度変化による透過波長帯域の変動を小さく抑えるために、多層膜42そのものの膨張と、基板41の膨張の影響による多層膜42の収縮が相殺されるように線膨張係数が比較的大きい材料により基板41が形成される。そのため、基板41は、通常、多層膜42よりも大きい線膨張係数を有している。波長選択フィルタ40(1)~40(M)は、所定の成膜温度において基板41の第1主面41a上に多層膜42を成膜した後、基板41及び多層膜42を冷却する過程を経て形成される。このとき、基板41と多層膜42との線膨張係数の差に起因して、基板41の第1主面41a及び多層膜42に、凸状に湾曲した反りが生じる。特に、波長間隔が狭いDWDM(Dense-WDM)信号に適した多層膜42は、急峻な透過特性を得るために100層以上の薄膜フィルタが積層されてなるため、反射防止膜43と比べて厚く形成されており、線膨張係数の差に起因する反りが生じやすい。多層膜42の第1表面42a及び第2表面42bの曲率半径は、例えば1m程度の小さな値となる。多層膜42の反りによって、波長選択フィルタ40(1)~40(M)は、反射防止膜43側から入射する光信号に対して反射型の凹レンズとして作用する。
【0050】
ベースプレート50は、図1に示されるように、第1コリメータ10、第2コリメータ20(1)~(M)及び波長選択フィルタ40(1)~40(M)が載置される板状部材であり、後述する筐体70に固定されている。ベースプレート50の厚さ方向は、Z方向と一致している。本実施形態では、ベースプレート50は、Z方向から見た場合に角部が丸められた長方形状を有している。ベースプレート50の形状は限定されず、例えば正方形状又は楕円形状であってもよい。ベースプレート50は、X方向及びY方向に沿って延在する平坦な載置面51を有している。載置面51には、第1コリメータ10、第2コリメータ20(1)~(M)及び波長選択フィルタ40(1)~40(M)が載置されている。ベースプレート50は、例えばSUS430及びSUS410等のステンレス鋼、ガラス、又はインバーといった線膨張係数が比較的小さい材料により形成されていてもよい。ベースプレート50の線膨張係数は、例えば15.0×10-6(1/K)以下であってもよい。
【0051】
接合部材60は、接着剤の硬化物であり、波長選択フィルタ40(1)~40(M)をベースプレート50の載置面51に固定するための部材である。ここで、「接着剤」とは、硬化前(未硬化)の状態の接合部材60の組成物を指す。接合部材60は、接着剤が硬化されることにより形成される。接合部材60は、載置面51に対する波長選択フィルタ40(1)~40(M)の移動及び向きの変動を抑制する。接合部材60は、図6に示されるように、基板41の底面41cとベースプレート50の載置面51との間に配置されている。接合部材60は、基板41の底面41cに接触し、多層膜42及び反射防止膜43に非接触である。接合部材60は、底面41cに直接接触している。以下、基板41の底面41c、多層膜42の第3表面42c及び反射防止膜43の第3表面43cを併せた面を、波長選択フィルタ40(1)~40(M)の底面40cという。Z方向から見た場合において、底面40cにおける接合部材60との接触面積は、底面40c全体の面積の70%以下の大きさであってもよいし、50%以下の大きさであってもよい。
【0052】
本実施形態では、全ての波長選択フィルタ40(1)~40(M)において、接合部材60は、基板41の底面41cに接触し、多層膜42に非接触である。したがって、第1番目の波長選択フィルタ40(1)から第(M/2)番目の波長選択フィルタ40(M/2)の少なくともいずれかにおいて、接合部材60は、基板41の底面41cに接触し、多層膜42に非接触である。さらに、M個の波長選択フィルタ40(1)~40(M)のうち、(M/2)個以上の波長選択フィルタ40(1)~40(M)において、接合部材60は、基板41の底面41cに接触し、多層膜42に非接触である。なお、全ての波長選択フィルタ40(1)~40(M)のうち少なくとも一つの波長選択フィルタ40(1)~40(M)において、接合部材60は、基板41の底面41cに接触し、多層膜42に非接触であればよい。
【0053】
接合部材60を構成する接着剤は、例えば接着用樹脂を含んでいる。接着剤に含まれる接着用樹脂は、紫外線が照射されることにより硬化する紫外線硬化樹脂であってもよい。接着剤が紫外線硬化樹脂を含んでいる場合、例えば底面41cと載置面51との間に接着剤が配置された状態で、当該接着剤に紫外線が照射されることにより接合部材60が形成される。接着剤は、環境温度の変化による接合部材60の熱変形を防ぐためのフィラー65を含んでいる。フィラー65は、接着剤の硬化物である接合部材60にも含まれている。フィラー65は、接着用樹脂よりも小さい線膨張係数を有している。フィラー65の材料は、例えばシリカである。フィラー65の形状は、例えば球状又は多角形状であってもよい。フィラー65の平均粒径は、例えば10μm以上であってもよい。フィラー65の平均粒径は、顕微鏡法によって測定された投影面積相当直径の平均値、又はレーザ回折散乱法によって測定された球体積相当直径の平均値である。接着剤の体積に対するフィラー65の含有量は、例えば50体積%以上であってもよいし、70体積%以上であってもよい。硬化後の接合部材60の体積に対するフィラー65の含有量は、硬化前の接着剤の体積に対するフィラー65の含有量と同等であってもよい。例えば、接着剤の体積に対するフィラー65の含有量が50体積%以上である場合、接合部材60の体積に対するフィラー65の含有量も50体積%以上であってもよい。
【0054】
接合部材60の厚さは、フィラー65の平均粒径よりも大きく、例えば30μm以上であってもよいし、50μm以上であってもよい。接合部材60の厚さとは、底面41cと載置面51との間に位置している接合部材60のZ方向における最大厚さである。したがって、接合部材60の厚さが30μm以上である場合、底面41cと載置面51との間のZ方向における最大間隔は少なくとも30μm以上となる。ベースプレート50からの熱による波長選択フィルタ40(1)~40(M)の熱変形を抑制する観点から、底面41cと載置面51との間のZ方向における最大間隔は大きい方が好ましく、例えば30μm以上であってもよいし、50μm以上であってもよい。
【0055】
筐体70は、図1及び図2に示されるように、内部空間Sを有する箱状に形成されている。内部空間Sは例えば密閉されている。更には、内部空間Sには窒素等の不活性ガスが充填されている。筐体70は、第1コリメータ10、第2コリメータ20(1)~(M)、波長選択フィルタ40(1)~40(M)及びベースプレート50を内部空間Sに収容している。筐体70は、開口71aを有する本体71と、開口71aを塞ぐ蓋72とを有している。本体71は、X方向及びY方向に沿って延在している底板73、及び底板73の外縁からZ方向に沿って延在している側壁74を有している。Z方向における側壁74の端面74aには、底板73に向かって窪む複数の凹部74bが形成されている。複数の凹部74bには、光ファイバ11及び光ファイバ21が挿通されている。
【0056】
蓋72は、板状に形成されており、凹部74bに光ファイバ11及び光ファイバ21が挿通された状態で、開口71aを塞ぐように本体71に取り付けられる。凹部74bの表面と蓋72の表面との間の隙間は、樹脂等の封止部材により封止されていてもよい。封止部材は、内部空間Sへの外気、湿気及び埃の進入、及び不活性ガスが充填されている場合は内部空間Sからの不活性ガスの流出を抑制する。
【0057】
続いて、第1コリメータ10、第2コリメータ20(1)~(M)、及び波長選択フィルタ40(1)~40(M)の配置態様について説明する。図1に示されるように、第2コリメータ20(1)~(M)は、Z方向から見た場合に、第1列L11及び第2列L12の二列に並ぶように配置されている。具体的には、奇数番目の第2コリメータ20(1),20(3),・・・,20(M-1)はこの順で一列に並んでおり、第1列L11を構成している。偶数番目の第2コリメータ20(2),20(4),・・・,20(M)はこの順で一列に並んでおり、第2列L12を構成している。本実施形態における第1列L11及び第2列L12の並び方向はY方向であり、互いに一致している。
【0058】
波長選択フィルタ40(1)~40(M)は、第2コリメータ20(1)~(M)と同様に、Z方向から見た場合に、第1列L21及び第2列L22の二列に並んでいる。具体的には、奇数番目の波長選択フィルタ40(1),40(3),・・・,40(M-1)はこの順で一列に並んでおり、第1列L21を構成している。偶数番目の波長選択フィルタ40(2),40(4),・・・,40(M)はこの順で一列に並んでおり、第2列L22を構成している。本実施形態における第1列L21及び第2列L22の並び方向はY方向であり、互いに一致している。波長選択フィルタ40(1)~40(M)は、並び方向における位置が第1列L21と第2列L22とで交互になるように配置されている。
【0059】
第1列L21の波長選択フィルタ40(1),40(3),・・・,40(M-1)の反射防止膜43は、第2列L22へと向いている。第2列の波長選択フィルタ40(2),40(4),・・・,40(M)の反射防止膜43は、第1列L21へと向いている。Y方向において、波長選択フィルタ40(2)は波長選択フィルタ40(1)と波長選択フィルタ40(3)との間に位置している。以降の波長選択フィルタ40(3)~40(M-1)も同様である。すなわち、Y方向において、第m番目(m=2,・・・,M-1)の波長選択フィルタ40(m)は、波長選択フィルタ40(m-1)と波長選択フィルタ40(m+1)との間に位置している。Z方向から見た場合に、波長選択フィルタ40(1)~40(M)の第1列L21及び第2列L22は、第2コリメータ20(1)~(M)の第1列L11及び第2列L12の間に配置されている。
【0060】
第1コリメータ10は、Z方向から見た場合に、波長選択フィルタ40(1)と第2コリメータ20(1)とを結ぶ直線上に配置されている。第1コリメータ10は、第1番目の波長選択フィルタ40(1)を介して、第1番目の第2コリメータ20(1)と直線的且つ空間的に光結合する。すわなち、第1コリメータ10と第2コリメータ20(1)とを結ぶ光路は、波長選択フィルタ40(1)を通過する。波長選択フィルタ40(1)は、基板41の第2主面41b側において第1コリメータ10と光結合し、基板41の第1主面41a側において第2コリメータ20(1)と光結合する。
【0061】
波長選択フィルタ40(1)の基板41の第2主面41bは、第2番目の波長選択フィルタ40(2)を介して、第2番目の第2コリメータ20(2)と直線的且つ空間的に光結合する。すなわち、波長選択フィルタ40(1)の基板41の第2主面41bと、第2コリメータ20(2)とを結ぶ光路は、波長選択フィルタ40(2)を通過する。波長選択フィルタ40(2)は、基板41の第2主面41b側において波長選択フィルタ40(1)と光結合し、基板41の第1主面41a側において第2コリメータ20(2)と光結合する。第3番目以降の第2コリメータ20(3)~20(M)及び波長選択フィルタ40(3)~40(M)についてもこれらと同様に光結合する。
【0062】
上記の構成を言い換えると、次のようになる。第m番目(m=1,・・・,M-1)の波長選択フィルタ40(m)の基板41の第2主面41bは、第(m+1)番目の波長選択フィルタ40(m+1)を介して、第(m+1)番目の第2コリメータ20(m+1)と直線的且つ空間的に光結合する。すなわち、波長選択フィルタ40(m)の基板41の第2主面41bと第2コリメータ20(m+1)とを結ぶ光路は、波長選択フィルタ40(m+1)を通過する。波長選択フィルタ40(m+1)は、基板41の第2主面41b側において波長選択フィルタ40(m)と光結合し、基板41の第1主面41a側において第2コリメータ20(m+1)と光結合する。
【0063】
図8を参照して、複数の光信号を合波する場合の波長合分波器1の動作について説明する。図8は、互いに波長が異なるM個の光信号Sλ~Sλを合波する場合における波長合分波器1の動作を示す図である。この場合、まず、第M番目の光信号Sλが、第M番目の第2コリメータ20(M)から出力され、第M番目の波長選択フィルタ40(M)に到達する。光信号Sλは、波長選択フィルタ40(M)を透過して、第(M-1)番目の波長選択フィルタ40(M-1)に到達し、波長選択フィルタ40(M-1)の多層膜42にて反射される。
【0064】
同時に、第(M-1)番目の光信号SλM-1が、第(M-1)番目の第2コリメータ20(M-1)から出力され、波長選択フィルタ40(M-1)に到達する。光信号SλM-1は、波長選択フィルタ40(M-1)を透過して、光信号Sλと合波される。当該合波光は、第(M-2)番目の波長選択フィルタ40(M-2)に到達し、波長選択フィルタ40(M-2)の多層膜42にて反射される。
【0065】
同時に、第(M-2)番目の光信号SλM-2が、第(M-2)番目の第2コリメータ20(M-2)から出力され、波長選択フィルタ40(M-2)に到達する。光信号SλM-2は、波長選択フィルタ40(M-2)を透過して、光信号Sλ及びSλM-1と合波される。以降、同様にして第1番目の光信号Sλまで順に合波され、波長多重光信号が生成される。生成された波長多重光信号は、波長選択フィルタ40(1)から第1コリメータ10に到達し、光ファイバ11を介して波長合分波器1の外部へ出力される。
【0066】
図9を参照して、複数の光信号を分波する場合の波長合分波器1の動作について説明する。図9は、互いに波長が異なるM個の光信号Sλ~Sλを分波する場合における波長合分波器1の動作を示す図である。この場合、まず、光信号Sλ~Sλを含む波長多重光信号が、第1コリメータ10から出力され、波長選択フィルタ40(1)に到達する。第1番目の光信号Sλは、波長選択フィルタ40(1)を透過し、第2コリメータ20(1)の光ファイバ21を介して波長合分波器1の外部へ出力される。
【0067】
残りの光信号Sλ~Sλは、波長選択フィルタ40(1)の多層膜42において反射され、波長選択フィルタ40(2)に到達する。第2番目の光信号Sλは、波長選択フィルタ40(2)を透過し、第2コリメータ20(2)の光ファイバ21を介して波長合分波器1の外部へ出力される。残りの光信号Sλ~Sλは、波長選択フィルタ40(2)の多層膜42において反射され、第3番目の波長選択フィルタ40(3)に到達する。以降、同様にして光信号Sλまで順に分波され、各光信号Sλ~Sλが波長合分波器1の外部へ出力される。
【0068】
上述した本実施形態の波長合分波器1によって得られる効果について、従来の波長合分波器が有する課題と併せて説明する。まず、従来の波長合分波器が有する波長選択フィルタ140について、図28を参照して説明する。図28は、従来の波長合分波器が備える波長選択フィルタ140を示す図である。図28には、環境温度の変化に伴って波長選択フィルタ140の形状が変形する様子が示されている。図28の(a)部には室温(例えば25℃)環境下での波長選択フィルタ140が示されており、(b)部には室温よりも低温(例えば-40℃)環境下での波長選択フィルタ140が示されており、(c)部には室温よりも高温(例えば85℃)環境下での波長選択フィルタ140が示されている。
【0069】
波長選択フィルタ140は、上述した波長選択フィルタ40(1)~40(M)と同様の構成を有している。具体的には、波長選択フィルタ140は、基板141、多層膜142及び反射防止膜143を有しており、接合部材160によりベースプレート150の載置面151に固定されている。従来の波長合分波器は、接合部材160が波長選択フィルタ140の多層膜142及び反射防止膜143に接触している点で、波長合分波器1と異なっている。接合部材160は、基板141の底面141c、多層膜142及び反射防止膜143に接触している。
【0070】
図28の(a)部に示されるように、室温環境下においては、多層膜142の第2表面142bと波長選択フィルタ140に入射する光信号の光軸AX2との交点における、第2表面142bの接平面H2が光軸AX2に対して垂直である。これに対して、(b)部及び(c)部に示されるように、低温環境下及び高温環境下においては、接平面H2が光軸AX2に対して傾斜する。上述したように、基板141は線膨張係数が比較的大きい材料により形成される。環境温度の変化による基板141の熱変形に追従して、多層膜142が変形する。低温環境下では多層膜142は曲率が増大するように変形し、高温環境下では多層膜142の曲率が減少するように変形する。このとき、波長選択フィルタ140のベースプレート150寄りの端部が接合部材160によってベースプレート150の載置面151に固定(束縛)されているため、低温環境下では、接平面H2は光軸AX2との成す角度(図28の角度α)が90°よりも大きくなるように傾斜する。高温環境下では、接平面H2は光軸AX2との成す角度αが90°よりも小さくなるように傾斜する。すなわち、低温環境下では多層膜142が載置面151から離れるように傾き、高温環境下では多層膜142が載置面151に近づくように傾く。このような温度変化による意図しない多層膜142の傾きは、波長選択フィルタ140から反射される光信号の光路ずれを生じさせ、波長選択フィルタ140による挿入損失を増加させる。
【0071】
これに対し、本実施形態に係る波長合分波器1では、M個の波長選択フィルタ40(1)~40(M)のうち少なくとも一つの波長選択フィルタ40(1)~40(M)において、接合部材60が、基板41の底面41cに接触し、かつ多層膜42に非接触である。接合部材60が多層膜42に非接触であることにより、多層膜42は接合部材60によってベースプレート50の載置面51に束縛されない。そのため、環境温度の変化によって基板41の熱変形が起こった場合に多層膜42に生じる応力が低減される。この結果、波長合分波器1では、環境温度が変化した場合における多層膜42の傾きが抑制される。よって、波長合分波器1では、環境温度が変化した場合であっても波長選択フィルタ40(1)~40(M)にて反射される光信号の光路ずれが生じ難く、波長選択フィルタ40(1)~40(M)による挿入損失の増加を抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態では、接合部材60を構成する接着剤は、紫外線硬化樹脂を含んでいる。この場合、接着剤に対して紫外線を照射することにより速やかに接着剤を硬化させることができる。したがって、接着剤を硬化する過程において、波長選択フィルタ40(1)~40(M)の位置及び向きのずれが生じ難く、波長選択フィルタ40(1)~40(M)による挿入損失の増加を抑制することができる。
【0073】
また、本実施形態では、接合部材60を構成する接着剤は、シリカからなるフィラー65を含んでいてもよい。この場合、シリカは線膨張係数が比較的小さい材料であるため、環境温度の変化による接合部材60の熱変形が抑制される。そのため、環境温度が変化した場合であっても、接合部材60によって固定された波長選択フィルタ40(1)~40(M)の位置及び向きのずれが生じ難く、波長選択フィルタ40(1)~40(M)による挿入損失の増加を抑制することができる。
【0074】
また、本実施形態では、接合部材60を構成する接着剤の体積に対するフィラー65の含有量は、50体積%以上であってもよい。この場合、環境温度の変化による接合部材60の熱変形が一層抑制される。そのため、環境温度が変化した場合における波長選択フィルタ40(1)~40(M)の位置及び向きのずれが一層生じ難く、波長選択フィルタ40(1)~40(M)による挿入損失の増加を更に抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態では、基板41の底面41cとベースプレート50の載置面51との間隔は、50μm以上であってもよい。この場合、環境温度の変化によるベースプレート50の熱変形の影響が波長選択フィルタ40(1)~40(M)へと及び難い。具体的には、ベースプレート50の熱変形の影響が接合部材60によって吸収され得る。そのため、環境温度が変化した場合であっても、波長選択フィルタ40(1)~40(M)の位置及び向きのずれが生じ難く、波長選択フィルタ40(1)~40(M)による挿入損失の増加を抑制することができる。
【0076】
また、本実施形態では、ベースプレート50の線膨張係数は、15.0×10-6(1/K)以下であってもよい。この場合、環境温度の変化によるベースプレート50の熱変形が抑制される。そのため、環境温度が変化した場合であっても、ベースプレート50上に配置された波長選択フィルタ40(1)~40(M)の位置及び向きのずれが生じ難く、波長選択フィルタ40(1)~40(M)による挿入損失の増加を抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態では、第1番目から第(M/2)番目までの波長選択フィルタ40(1)~40(M/2)の少なくともいずれかにおいて、接合部材60が基板41の底面41cに接触し、多層膜42に非接触である。例えば、図9を参照して説明したように、複数の光信号Sλ~Sλを含む波長多重光信号を波長選択フィルタ40(1)から波長選択フィルタ40(M)へと順に透過させつつ分波する場合、光路の上流側に配置されている波長選択フィルタ(例えば、波長選択フィルタ40(1)~40(M/2))の位置及び向きのずれは、光路の下流側に配置されている波長選択フィルタ(例えば、波長選択フィルタ40(M/2+1)~40(M))の位置及び向きのずれと比べて、挿入損失を大きく増加させる。本実施形態に係る波長合分波器1では、光路の上流側に配置されている第1番目から第(M/2)番目までの波長選択フィルタ40(1)~40(M/2)の少なくともいずれかにおいて、接合部材60が多層膜42に非接触である。そのため、光路の上流側に配置されている波長選択フィルタ40(1)~40(M/2)の位置及び向きのずれが生じ難く、波長選択フィルタ40(1)~40(M)による挿入損失の増加を効果的に抑制することができる。
【0078】
また、本実施形態では、接合部材60が基板41の底面41cに接触し、多層膜42に非接触である波長選択フィルタ40(1)~40(M)の個数は、(M/2)個以上である。この場合、波長選択フィルタ40(1)~40(M)による挿入損失の増加をより確実に抑制することができる。
【0079】
また、本実施形態では、波長合分波器1は、第1コリメータ10と、M個の第2コリメータ20(1)~(M)と、M個の波長選択フィルタ40(1)~40(M)と、ベースプレート50とが内部空間Sに収容された筐体70を更に備えている。内部空間Sは密閉され、更には不活性ガスが充填されている。この場合、例えば内部空間Sに収容されたベースプレート50の酸化が抑制され、波長合分波器1の特性劣化を抑制することができる。
【0080】
<第1変形例>
図10及び図11を参照して、第1実施形態に係る波長合分波器の第1変形例について説明する。図10は、第1変形例に係る波長選択フィルタ40(1)~40(M)を示す斜視図である。図11は、第1変形例に係る波長選択フィルタ40(1)~40(M)を反射防止膜43側から見た図である。
【0081】
本変形例では、接合部材60が基板41の底面41cのみならず、反射防止膜43の第2表面43b及び第3表面43cに接触している。接合部材60は、第2表面43b及び第3表面43cに直接接触している。図11には、X方向から見た場合の基板41の第2主面41bの中心C1と、中心C1を中心とする仮想円H3とが示されている。波長選択フィルタ40(1)~40(M)を透過する光信号は、例えば中心C1を通過する。本実施形態では、仮想円H3の半径は300μmである。接合部材60における反射防止膜43に接触している接触部分61は、X方向から見た場合に、仮想円H3の外側に位置している。すなわち、接触部分61は、X方向から見た場合に、第2主面41bの中心C1から300μm以上離れて位置している。
【0082】
本変形例では、接合部材60は、反射防止膜43の第2表面43b及び第3表面43cに接触している。この場合、波長選択フィルタ40(1)~40(M)と接合部材60との接触面積が増加し、波長選択フィルタ40(1)~40(M)が接合部材60によってベースプレート50により強固に固定される。そのため、例えば波長選択フィルタ40(1)~40(M)に対して物理的な外力が加えられた場合であっても、波長選択フィルタ40(1)~40(M)の位置及び向きのずれが生じ難く、波長選択フィルタ40(1)~40(M)による挿入損失の増加を抑制することができる。
【0083】
また、本変形例では、接合部材60における反射防止膜43に接触している接触部分61は、X方向から見た場合に、第2主面41bの中心C1から300μm以上離れて位置している。この場合、接合部材60の接触部分61が第2主面41bの中心C1からある程度離れて位置しているため、波長選択フィルタ40(1)~40(M)を通過する光信号が接合部材60によって遮られることを抑制することができる。
【0084】
<第2変形例>
図12を参照して、第1実施形態に係る波長合分波器の第2変形例について説明する。図12は、第2変形例に係る波長選択フィルタ40(1)~40(M)を示す斜視図である。第2変形例では、接合部材60が基板41の底面41cのみならず、基板41の第1側面41e及び第2側面41fに接触している。接合部材60は、第1側面41e及び第2側面41fに直接接触している。
【0085】
本変形例では、接合部材60は、基板41の第1側面41e及び第2側面41fに接触している。この場合、波長選択フィルタ40(1)~40(M)と接合部材60との接触面積が増加し、波長選択フィルタ40(1)~40(M)が接合部材60によってベースプレート50により強固に固定される。そのため、例えば波長選択フィルタ40(1)~40(M)に対して物理的な外力が加えられた場合であっても、波長選択フィルタ40(1)~40(M)の位置及び向きのずれが生じ難く、波長選択フィルタ40(1)~40(M)による挿入損失の増加を抑制することができる。
【0086】
<第3変形例>
図13を参照して、第1実施形態に係る波長合分波器の第3変形例について説明する。図13は、第3変形例に係る波長選択フィルタ40(1)~40(M)を示す斜視図である。
【0087】
本変形例では、接合部材60が基板41の底面41cのみならず、反射防止膜43の第2表面43b及び第3表面43c、並びに基板41の第1側面41e及び第2側面41fに接触している。接合部材60は、第2表面43b及び第3表面43c、並びに第1側面41e及び第2側面41fに直接接触している。第1変形例と同様に、接合部材60における反射防止膜43に接触している接触部分61は、X方向から見た場合に、第2主面41bの中心C1から300μm以上離れて位置している。
【0088】
本変形例では、接合部材60は、反射防止膜43の第2表面43b及び第3表面43c、並びに基板41の第1側面41e及び第2側面41fに接触している。この場合、波長選択フィルタ40(1)~40(M)と接合部材60との接触面積が増加し、波長選択フィルタ40(1)~40(M)が接合部材60によってベースプレート50により強固に固定される。そのため、例えば波長選択フィルタ40(1)~40(M)に対して物理的な外力が加えられた場合であっても、波長選択フィルタ40(1)~40(M)の位置及び向きのずれが生じ難く、波長選択フィルタ40(1)~40(M)による挿入損失の増加を抑制することができる。
【0089】
また、本変形例では、接合部材60における反射防止膜43に接触している接触部分61は、X方向から見た場合に、第2主面41bの中心C1から300μm以上離れて位置している。この場合、接合部材60の接触部分61が第2主面41bの中心C1からある程度離れて位置しているため、波長選択フィルタ40(1)~40(M)を通過する光信号が接合部材60によって遮られることを抑制することができる。
【0090】
<第2実施形態>
図14から図16を参照して、第2実施形態に係る波長合分波器について説明する。図14は、第2実施形態に係る波長選択フィルタ40A(1)~40A(M)を示す斜視図である。図15は、第2実施形態に係る波長選択フィルタ40A(1)~40A(M)の断面図である。図16は、第2実施形態に係る波長選択フィルタ40A(1)~40A(M)を多層膜42側から見た図である。以下の説明では、第1実施形態に係る波長選択フィルタ40(1)~40(M)と相違する点を主に説明し、同様の点については説明を省略する。
【0091】
波長選択フィルタ40A(1)~40A(M)は、波長選択フィルタ40(1)~40(M)と同様に、基板41A、多層膜42及び反射防止膜43を有している。基板41Aは、第1主面410a、第2主面41b、底面41c、第1側面41e及び第2側面41fを有している。基板41Aの第1主面410aは、図15に示されるように、X方向において第2主面41bと対向している第1部分411と、第1部分411及び底面41cに対して傾斜して延在している第2部分412とを含んでいる。
【0092】
第1部分411は、基板41の外側に向かって凸の曲面状を有している。第2部分412は、X方向及びZ方向に対して傾斜する平坦な面である。第2部分412は、第1部分411よりも底面41c寄りに位置しており、第1部分411と底面41cとを接続している。第2部分412は、例えば基板41Aの角部を面取りすることにより形成される。図16には、X方向から見た場合の基板41Aの第1主面410aの中心C2と、中心C2を中心とする仮想円H4とが示されている。波長選択フィルタ40A(1)~40A(M)を透過する光信号は、例えば中心C2を通過する。本実施形態では、仮想円H4の半径は300μmである。第2部分412は、X方向から見た場合に、仮想円H4の外側に位置している。すなわち、第2部分412は、X方向から見た場合に、第1主面410aの中心C2から300μm以上離れて位置している。
【0093】
多層膜42は、第1部分411上に形成されており、第2部分412上には形成されていない。すなわち、第2部分412は、多層膜42から露出している露出領域を含んでいる。本実施形態では、第2部分412の全体が露出領域に相当する。一例として、多層膜42は、第1部分411及び第2部分412上に形成された後に、第2部分412上に位置している部分がエッチングにより除去されることによって形成されてもよい。
【0094】
接合部材60は、基板41の底面41c、及び第1主面410aの第2部分412に接触しており、多層膜42に非接触である。接合部材60は、底面41c及び第2部分412に直接接触している。接合部材60における露出領域(第2部分412)に接触している接触部分62は、X方向から見た場合に、仮想円H4の外側に位置している。すなわち、接触部分62は、X方向から見た場合に、第1主面410aの中心C2から300μm以上離れて位置している。
【0095】
本実施形態では、基板41Aの第1主面410aは、多層膜42が形成されていない露出領域を含み、接合部材60は、露出領域に接触している。また、本実施形態では、第1主面410aは、X方向において第2主面41bと対向している第1部分411と、第1部分411及び基板41Aの底面41cに対して傾斜して延在し、第1部分411と底面41cとを接続している第2部分412とを含んでいる。第2部分412は、露出領域を含んでいる。この場合、接合部材60が基板41Aの底面41cのみならず、第1主面410aの一部に接触しているため、波長選択フィルタ40A(1)~40A(M)と接合部材60との接触面積が増加し、波長選択フィルタ40A(1)~40A(M)が接合部材60によってベースプレート50により強固に固定される。そのため、例えば波長選択フィルタ40A(1)~40A(M)に対して物理的な外力が加えられた場合であっても、波長選択フィルタ40A(1)~40A(M)の位置及び向きのずれが生じ難く、波長選択フィルタ40A(1)~40A(M)による挿入損失の増加を抑制することができる。
【0096】
また、本実施形態では、接合部材60における露出領域に接触している接触部分62は、X方向から見た場合に、第1主面410aの中心C2から300μm以上離れて位置している。この場合、接合部材60の接触部分62が第1主面410aの中心C2からある程度離れて位置しているため、波長選択フィルタ40A(1)~40A(M)を通過する光信号が接合部材60によって遮られることを抑制することができる。
【0097】
<第1変形例>
図17を参照して、第2実施形態に係る波長合分波器の第1変形例について説明する。図17は、第1変形例に係る波長選択フィルタ40A(1)~40A(M)を示す斜視図である。
【0098】
本変形例では、接合部材60は、基板41Aの底面41c及び第1主面410aの第2部分412のみならず、反射防止膜43の第2表面43b及び第3表面43cに接触している。接合部材60は、第2表面43b及び第3表面43cに直接接触している。接合部材60における反射防止膜43に接触している接触部分61は、X方向から見た場合に、第2主面41bの中心C1から300μm以上離れて位置している。
【0099】
本変形例では、接合部材60は、反射防止膜43の第2表面43b及び第3表面43cに接触している。この場合、波長選択フィルタ40A(1)~40A(M)と接合部材60との接触面積が増加し、波長選択フィルタ40A(1)~40A(M)が接合部材60によってベースプレート50により強固に固定される。そのため、例えば波長選択フィルタ40A(1)~40A(M)に対して物理的な外力が加えられた場合であっても、波長選択フィルタ40A(1)~40A(M)の位置及び向きのずれが生じ難く、波長選択フィルタ40A(1)~40A(M)による挿入損失の増加を抑制することができる。
【0100】
また、本変形例では、接合部材60における反射防止膜43に接触している接触部分61は、X方向から見た場合に、第2主面41bの中心C1から300μm以上離れて位置している。この場合、接合部材60の接触部分61が第2主面41bの中心C1からある程度離れて位置しているため、波長選択フィルタ40A(1)~40A(M)を通過する光信号が接合部材60によって遮られることを抑制することができる。
【0101】
<第2変形例>
図18を参照して、第2実施形態に係る波長合分波器の第2変形例について説明する。図18は、第2変形例に係る波長選択フィルタ40A(1)~40A(M)を示す斜視図である。第2変形例では、接合部材60が基板41Aの底面41c及び第1主面410aの第2部分412のみならず、基板41Aの第1側面41e及び第2側面41fに接触している。接合部材60は、第1側面41e及び第2側面41fに直接接触している。
【0102】
本変形例では、接合部材60は、基板41Aの第1側面41e及び第2側面41fに接触している。この場合、波長選択フィルタ40A(1)~40A(M)と接合部材60との接触面積が増加し、波長選択フィルタ40A(1)~40A(M)が接合部材60によってベースプレート50により強固に固定される。そのため、例えば波長選択フィルタ40A(1)~40A(M)に対して物理的な外力が加えられた場合であっても、波長選択フィルタ40A(1)~40A(M)の位置及び向きのずれが生じ難く、波長選択フィルタ40A(1)~40A(M)による挿入損失の増加を抑制することができる。
【0103】
<第3変形例>
図19及び図20を参照して、第2実施形態に係る波長合分波器の第3変形例について説明する。図19は、第3変形例に係る波長選択フィルタ40A(1)~40A(M)を示す斜視図である。図20は、第3変形例に係る波長選択フィルタ40A(1)~40A(M)の断面図である。
【0104】
本変形例では、接合部材60が基板41Aの底面41c及び第1主面410aの第2部分412のみならず、反射防止膜43の第2表面43b及び第3表面43c、並びに基板41Aの第1側面41e及び第2側面41fに接触している。接合部材60は、第2表面43b及び第3表面43c、並びに第1側面41e及び第2側面41fに直接接触している。第1変形例と同様に、接合部材60における反射防止膜43に接触している接触部分61は、X方向から見た場合に、第2主面41bの中心C1から300μm以上離れて位置している。
【0105】
本変形例では、接合部材60は、反射防止膜43の第2表面43b及び第3表面43c、並びに基板41Aの第1側面41e及び第2側面41fに接触している。この場合、波長選択フィルタ40A(1)~40A(M)と接合部材60との接触面積が増加し、波長選択フィルタ40A(1)~40A(M)が接合部材60によってベースプレート50により強固に固定される。そのため、例えば波長選択フィルタ40A(1)~40A(M)に対して物理的な外力が加えられた場合であっても、波長選択フィルタ40A(1)~40A(M)の位置及び向きのずれが生じ難く、波長選択フィルタ40A(1)~40A(M)による挿入損失の増加を抑制することができる。
【0106】
また、本変形例では、接合部材60における反射防止膜43に接触している接触部分61は、X方向から見た場合に、第2主面41bの中心C1から300μm以上離れて位置している。この場合、接合部材60の接触部分61が第2主面41bの中心C1からある程度離れて位置しているため、波長選択フィルタ40A(1)~40A(M)を通過する光信号が接合部材60によって遮られることを抑制することができる。
【0107】
<第3実施形態>
図21を参照して、第3実施形態に係る波長合分波器について説明する。図21は、第3実施形態に係る波長合分波器1Bの模式的な断面図である。以下の説明では、第1実施形態に係る波長合分波器1と相違する点を主に説明し、同様の点については説明を省略する。
【0108】
波長合分波器1Bは、第1コリメータ10と、M個の第2コリメータ20(1)~20(M)と、M個の波長選択フィルタ40(1)~40(M)と、ベースプレート50Bと、接合部材60と、筐体70と、を備えている。波長合分波器1Bは、ベースプレート50Bの構成に関して第1実施形態の波長合分波器1と異なっている。
【0109】
ベースプレート50Bの載置面51Bは、第1載置部分52a及び一対の第2載置部分52bを有している。第1載置部分52aは、X方向において一対の第2載置部分52bの間に位置している。第1載置部分52a及び第2載置部分52bは、X方向及びY方向に沿って平坦に延在している。筐体70の底板73を基準としたときのZ方向における第1載置部分52aの高さは、第2載置部分52bの高さと異なっている。第1載置部分52aは、第2載置部分52bよりも底板73から離れて位置している。すなわち、ベースプレート50における第1載置部分52aに対応する部分の厚さは、第2載置部分52bに対応する部分の厚さよりも大きい。第1載置部分52aと一対の第2載置部分52bとは、一対の段差面52cによって接続されている。
【0110】
第1載置部分52aには、波長選択フィルタ40(1)~40(M)が載置され、一対の第2載置部分52bには、第2コリメータ20(1)~(M)が載置されている。具体的には、一方の第2載置部分52bには、奇数番目の第2コリメータ20(1),20(3),・・・,20(M-1)が載置され、他方の第2載置部分52bには、偶数番目の第2コリメータ20(2),20(4),・・・,20(M)が載置されている。他方の第2載置部分52bには、第1コリメータ10(図1を参照)が更に載置されている。
【0111】
本実施形態では、ベースプレート50Bは、底板73からの高さが異なる第1載置部分52a及び第2載置部分52bを有している。第1載置部分52aには、波長選択フィルタ40(1)~40(M)が載置され、第2載置部分52bには、第1コリメータ10及び第2コリメータ20(1)~(M)が載置されている。この場合、第1載置部分52aに載置される波長選択フィルタ40(1)~40(M)と、第2載置部分52bに載置される第1コリメータ10及び第2コリメータ20(1)~(M)とを適切に光結合させることができる。例えば、一般的に、Z方向における波長選択フィルタ40(1)~40(M)のサイズは、第1コリメータ10及び第2コリメータ20(1)~(M)のサイズよりも小さいため、第1載置部分52aが第2載置部分52bよりも高くなるようにベースプレート50を設計することで、波長選択フィルタ40(1)~40(M)の光軸と第1コリメータ10及び第2コリメータ20(1)~(M)の光軸とを適切に一致させることができる。
【0112】
<第4実施形態>
図22を参照して、第4実施形態に係る波長合分波器について説明する。図22は、第4実施形態に係る波長合分波器1Cの模式的な断面図である。以下の説明では、第1実施形態に係る波長合分波器1と相違する点を主に説明し、同様の点については説明を省略する。
【0113】
波長合分波器1Cは、第1コリメータ10と、M個の第2コリメータ20(1)~20(M)と、M個の波長選択フィルタ40(1)~40(M)と、ベースプレート50Cと、接合部材60と、筐体70と、を備えている。波長合分波器1Cは、ベースプレート50Cの構成に関して第1実施形態の波長合分波器1と異なっている。
【0114】
ベースプレート50Cは、筐体70の底板73上に配置されたメインベースプレート55と、メインベースプレート55上に配置された第1ベースプレート56及び一対の第2ベースプレート57とを有している。メインベースプレート55、第1ベースプレート56及び第2ベースプレート57は、X方向及びY方向に沿って延在している板状部材である。メインベースプレート55は底板73に固定され、第1ベースプレート56及び第2ベースプレート57はメインベースプレート55に固定されている。第1ベースプレート56は、一対の第2ベースプレート57と別体であり、X方向において一対の第2ベースプレート57の間に位置している。
【0115】
第1ベースプレート56は、波長選択フィルタ40(1)~40(M)が載置される載置面56aを有している。載置面56aは、X方向及びY方向に沿って平坦に延在している。一対の第2ベースプレート57のそれぞれは、第2コリメータ20(1)~(M)が載置される載置面57bを有している。載置面57bは、X方向及びY方向に沿って平坦に延在している。一方の第2ベースプレート57の載置面57bには、奇数番目の第2コリメータ20(1),20(3),・・・,20(M-1)が載置され、他方の第2ベースプレート57の載置面57bには、偶数番目の第2コリメータ20(2),20(4),・・・,20(M)が載置されている。他方の第2ベースプレート57の載置面57bには、第1コリメータ10(図1を参照)が更に載置されている。
【0116】
筐体70の底板73を基準としたときのZ方向における載置面56aの高さは、載置面57bの高さと異なっている。載置面56aは、載置面57bよりも底板73から離れて位置している。すなわち、第1ベースプレート56の厚さは、第2ベースプレート57の厚さよりも大きい。
【0117】
本実施形態では、ベースプレート50Cは、M個の波長選択フィルタ40(1)~40(M)が載置された第1ベースプレート56と、第1ベースプレート56と別体であり第1コリメータ10及びM個の第2コリメータ20(1)~(M)が載置された第2ベースプレート57とを有している。この場合、波長選択フィルタ40(1)~40(M)が載置される第1ベースプレート56と、第1コリメータ10及び第2コリメータ20(1)~(M)が載置される第2ベースプレート57とを独立に設計することが可能となる。これにより、波長選択フィルタ40(1)~40(M)、第1コリメータ10及び第2コリメータ20(1)~(M)の配置自由度を向上させることができる。
【0118】
<第5実施形態>
図23を参照して、第5実施形態に係る波長合分波器について説明する。図23は、第5実施形態に係る波長合分波器1Dの構成を示す模式的な図である。以下の説明では、第1実施形態に係る波長合分波器1と相違する点を主に説明し、同様の点については説明を省略する。
【0119】
波長合分波器1Dは、第1実施形態の波長合分波器1の構成に加えて、第3コリメータ30を更に備える。第3コリメータ30は、アップグレード用ポートとして用いられ得る。第3コリメータ30の構成は、第1コリメータ10と同様である。第3コリメータ30は、波長選択フィルタ40(M)の基板41の第2主面41bと対向して配置され、波長選択フィルタ40(M)の基板41の第2主面41bと、空間を介して光学的に結合されている。
【0120】
本実施形態では、波長合分波器1Dは、M番目の波長選択フィルタ40(M)と光学的に結合された第3コリメータ30を更に備える。この場合、第3コリメータ30をアップグレード用ポートとして用いることで、波長合分波器1Dのチャネル数を必要に応じて増加させることができる。
【0121】
<第6実施形態>
図24及び図25を参照して、第6実施形態に係る波長合分波器について説明する。図24は、第6実施形態に係る波長合分波器1Eの模式的な平面図である。図25は、図24に示される波長合分波器1Eの模式的な断面図である。以下の説明では、第1実施形態に係る波長合分波器1と相違する点を主に説明し、同様の点については説明を省略する。
【0122】
波長合分波器1Eは、第1コリメータ10と、M個の第2コリメータ20(1)~20(M)と、M個の波長選択フィルタ40(1)~40(M)と、ベースプレート50Eと、接合部材60と、筐体70Eと、光学素子80とを備えている。ベースプレート50Eは、Z方向において対向している第1載置面58a及び第2載置面58bを有している。第1載置面58a及び第2載置面58bは、X方向及びY方向に沿って平坦に延在している。第1載置面58aは、第2載置面58bよりも底板73寄りに位置している。ベースプレート50Eには、第1載置面58a及び第2載置面58bにおいて開口する孔部58cが形成されている。孔部58cは、Z方向から見た場合に、Y方向に沿う長辺を有する長方形状に形成されている。孔部58cの内部には、後述する光学素子80が配置されている。
【0123】
第1載置面58aには、第1コリメータ10と、奇数番目の第2コリメータ20(1),20(3),・・・,20(M-1)と、奇数番目の波長選択フィルタ40(1),40(3),・・・,40(M-1)とが載置されている。第2載置面58bには、偶数番目の第2コリメータ20(2),20(4),・・・,20(M)と、偶数番目の波長選択フィルタ40(2),40(4),・・・,40(M)とが載置されている。すなわち、奇数番目の第2コリメータ20(1),20(3),・・・,20(M-1)は、偶数番目の第2コリメータ20(2),20(4),・・・,20(M)とZ方向における位置が異なっている。同様に、奇数番目の波長選択フィルタ40(1),40(3),・・・,40(M-1)は、偶数番目の波長選択フィルタ40(2),40(4),・・・,40(M)とZ方向における位置が異なっている。ベースプレート50Eは、奇数番目の波長選択フィルタ40(1),40(3),・・・,40(M-1)と、偶数番目の波長選択フィルタ40(2),40(4),・・・,40(M)との間に配置されている。Z方向から見た場合に、第2コリメータ20(1)~(M)は、この順でY方向に沿って一列に並んでいる。同様に、Z方向から見た場合に、波長選択フィルタ40(1)~40(M)は、この順でY方向に沿って一列に並んでいる。
【0124】
Z方向から見た場合に、奇数番目の第2コリメータ20(1),20(3),・・・,20(M-1)は、偶数番目の第2コリメータ20(2),20(4),・・・,20(M)の一部と重なるように配置されていてもよい。同様に、Z方向から見た場合に、奇数番目の波長選択フィルタ40(1),40(3),・・・,40(M-1)は、偶数番目の波長選択フィルタ40(2),40(4),・・・,40(M)の一部と重なるように配置されていてもよい。
【0125】
筐体70Eの側壁74には、複数の貫通孔74cが形成されている。複数の貫通孔74cには、光ファイバ11及び光ファイバ21が挿通されている。側壁74の内面には、複数の凸部75が形成されている。図25に示されるように、複数の凸部75のうちの二つずつがペアを成し、ペアを成す凸部75がZ方向において並んでいる。ペアを成す凸部75の間には、ベースプレート50Eの端部が挟み込まれており、ベースプレート50Eが底板73から離隔した状態で筐体70Eに固定されている。
【0126】
光学素子80は、光路の向きを変更する素子であり、本実施形態ではプリズムである。光学素子80は、例えばミラーであってもよい。光学素子80は、Y方向に沿って延在する反射面81を有している。反射面81は、第1コリメータ10と第1番目の第2コリメータ20(1)とを結ぶ光路の向き、及び第m番目(m=1,・・・,M-1)の波長選択フィルタ40(1)~40(M-1)と第(m+1)番目の第2コリメータ20(2)~(M)とを結ぶ光路の向きを変更する。第1コリメータ10と、第2コリメータ20(1)~(M)と、波長選択フィルタ40(1)~40(M)とは、Z方向から見た場合に、反射面81に対して同じ側に位置している。
【0127】
光信号Sλ~Sλを分波する場合、まず、光信号Sλ~Sλを含む波長多重光信号が、第1コリメータ10から出力され、光学素子80の反射面81に到達する。波長多重光信号は反射面81において反射され、波長選択フィルタ40(1)に到達する。光信号Sλは、波長選択フィルタ40(1)を透過し、第2コリメータ20(1)を通って波長合分波器1Eの外部へ出力される。残りの光信号Sλ~Sλは、波長選択フィルタ40(1)において反射され、反射面81において再び反射されたのち、波長選択フィルタ40(2)に到達する。以降、同様にして光信号Sλまで1波長ずつ分波され、波長合分波器1Eの外部へ出力される。
【0128】
光信号Sλ~Sλを合波する場合、まず、光信号Sλが、第2コリメータ20(M)から出力され、波長選択フィルタ40(M)に到達する。光信号Sλは、波長選択フィルタ40(M)を透過して、反射面81に到達する。光信号Sλは反射面81において反射された後、波長選択フィルタ40(M-1)に到達し、波長選択フィルタ40(M-1)において再び反射される。同時に、光信号SλM-1が、第2コリメータ20(M-1)から波長選択フィルタ40(M-1)に到達する。光信号SλM-1は、波長選択フィルタ40(M-1)を透過して、光信号Sλと合波される。以降、同様にして光信号Sλまで順に合波され、波長多重光信号が生成される。生成された波長多重光信号は、波長選択フィルタ40(1)から反射面81に到達し、反射面81において反射された後、第1コリメータ10に到達する。波長多重光信号は、第1コリメータ10から波長合分波器1Eの外部へ出力される。
【0129】
本実施形態では、波長合分波器1Eは、Z方向から見た場合に、Y方向に沿って延在している反射面81を有する光学素子80を更に備えている。M個の第2コリメータ20(1)~(M)及びM個の波長選択フィルタ40(1)~40(M)のそれぞれは、Z方向から見た場合に、Y方向に沿って並んでいる。第1コリメータ10と、第2コリメータ20(1)~(M)と、波長選択フィルタ40(1)~40(M)とは、Z方向から見た場合に、反射面81に対して同じ側に位置している。反射面81は、第1コリメータ10と第1番目の第2コリメータ20(1)とを結ぶ光路の向き、及び第m番目(m=1,・・・,M-1)の波長選択フィルタ40(1)~40(M-1)と第(m+1)番目の第2コリメータ20(2)~(M)とを結ぶ光路の向きを変更する。この場合、奇数番目の第2コリメータ20(1),20(3),・・・,20(M-1)及び波長選択フィルタ40(1),40(3),・・・,40(M-1)と、偶数番目の第2コリメータ20(2),20(4),・・・,20(M)及び波長選択フィルタ40(2),40(4),・・・,40(M)とが向かい合うように配置されている場合と比べて、波長合分波器1Eの小型化を図ることができる。
【0130】
本実施形態では、奇数番目の波長選択フィルタ40(1),40(3),・・・,40(M-1)は、偶数番目の波長選択フィルタ40(2),40(4),・・・,40(M)とZ方向における位置が異なっている。ベースプレート50Eは、奇数番目の波長選択フィルタ40(1),40(3),・・・,40(M-1)と偶数番目の波長選択フィルタ40(2),40(4),・・・,40(M)との間に配置されている。この場合、Z方向から見た場合に、奇数番目の波長選択フィルタ40(1),40(3),・・・,40(M-1)を、偶数番目の波長選択フィルタ40(2),40(4),・・・,40(M)の一部と重なるように配置することができ、波長合分波器1Eの小型化を一層図ることができる。
【0131】
図26及び図27を参照して、環境温度の変化による多層膜の傾き角の変動、及び挿入損失の変動に関するシミュレーションの結果について説明する。本シミュレーションでは、接合部材の接触態様が異なる波長選択フィルタについて、環境温度が25℃から85℃に変化した際の多層膜の傾き角の変動量、及び挿入損失の変動量を計算した。図26は、波長選択フィルタに対する接合部材の接触態様を示す模式図である。図27は、接合部材の接触態様と、多層膜の傾き角の変動量及び挿入損失の変動量との関係を示す図である。
【0132】
図26には、本シミュレーションにおいて想定された波長選択フィルタに対する接合部材の接触態様が示されている。図26の(a)部に示される接触態様(a)は、従来の波長合分波器における接合部材160の接触態様である。図26の(a)部に示される波長選択フィルタ140は、上述した第1実施形態に係る波長選択フィルタ40(1)~40(M)と同様の構成を有している。接触態様(a)は、波長選択フィルタ140の底面140c全体に接合部材160が接触している態様である。すなわち、接触態様(a)では、接合部材160が、基板141の底面141c、多層膜142の第3表面142c及び反射防止膜143の第3表面143cに接触している。
【0133】
図26の(b)部に示される接触態様(b)、及び図26の(c)部に示される接触態様(c)は、本開示に係る接合部材60の接触態様である。具体的には、接触態様(b)及び接触態様(c)は、接合部材60が多層膜42に非接触である態様である。図26の(b)部及び(c)部に示される波長選択フィルタ40は、第1実施形態に係る波長選択フィルタ40(1)~40(M)と同様の構成を有している。接触態様(b)では、接合部材60は、基板41の底面41c及び反射防止膜43の第3表面43cに接触し、多層膜42に非接触である。接触態様(b)では、波長選択フィルタ40の底面40cにおける接合部材60との接触面積は、底面40c全体の面積の50%以上の大きさである。接触態様(c)では、接合部材60は、基板41の底面41cに接触し、多層膜42の第3表面42c及び反射防止膜43の第3表面43cに非接触である。接触態様(c)では、波長選択フィルタ40の底面40cにおける接合部材60との接触面積は、底面40c全体の面積の50%以下の大きさである。
【0134】
本シミュレーションでは、第1実施形態に係る波長合分波器1と同様に、波長選択フィルタ及び第2コリメータの個数を12個(M=12)とし、環境温度が室温(25℃)から高温(85℃)に変化した際の多層膜の傾き角の変動量、及び挿入損失ILの変動量を計算した。多層膜の傾き角の変動量は、室温環境下における載置面に対する多層膜の角度と、高温環境下における載置面に対する多層膜の角度との差分である。また、挿入損失ILの変動量は、第12番目の第2コリメータ20(12)に対応するチャネルポートでの挿入損失の値に基づいて計算した。
【0135】
本シミュレーションでは、材料等が異なる2種類の構成(構成1、構成2)の多層膜を想定してシミュレーションを行った。図27のグラフAは、構成1の多層膜を有する波長選択フィルタの傾き角の変動量を示すグラフであり、グラフBは、構成2の多層膜を有する波長選択フィルタの傾き角の変動量を示すグラフである。図27のグラフCは、構成1の多層膜を有する波長選択フィルタを使用したときの挿入損失ILの変動量を示すグラフであり、グラフDは、構成2の多層膜を有する波長選択フィルタを使用したときの挿入損失ILの変動量を示すグラフである。図27の横軸は接合部材の接触態様を示し、縦軸は傾き角の変動量(単位:deg)及び挿入損失ILの変動量(単位:dB)を示している。
【0136】
図27に示されるように、接触態様(a)と比べて、接触態様(b)及び接触態様(c)の方が、多層膜42の傾き角の変動量及び挿入損失ILの変動量が小さい。具体的には、接触態様(a)と比べて、接触態様(b)では傾き角の変動量が約20%小さく、挿入損失ILの変動量が約40%小さい。また、接触態様(a)と比べて、接触態様(c)では傾き角の変動量が約60%小さく、挿入損失ILの変動量が約80%小さい。本シミュレーションの結果から、接合部材60が多層膜42に非接触である接触態様を採用することにより、環境温度が変化した場合の多層膜42の傾き角の変動量、及び挿入損失ILの変動量が小さくなることが確認できる。また、本シミュレーションにおける接触態様(b)の結果と接触態様(c)の結果から、波長選択フィルタ40の底面40c全体の面積に対する、接合部材60の接触面積の割合が小さいほど、環境温度が変化した際の多層膜42の傾き角の変動量、及び挿入損失ILの変動量が小さくなることが確認できる。
【0137】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明してきたが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく様々な実施形態に適用することができる。例えば、上記各実施形態では、接合部材60は、一体に形成された一つの接合部材であったが、接合部材60は、分離した複数の接合部材から構成されていてもよい。
【0138】
上記第1実施形態では、基板41の第1主面41aの全体に多層膜42が形成されていたが、第1主面41aは、多層膜42が形成されていない露出領域を含んでいてもよい。この場合、接合部材60は、第1主面41aの露出領域に接触していてもよい。
【0139】
上記第6実施形態(図24を参照)では、光学素子80は、一体に形成された一つの光学素子であったが、光学素子80は、複数の光学素子から構成されていてもよい。この場合、複数の光学素子が、Y方向に沿って配置されていてもよい。
【0140】
上記各実施形態では、波長選択フィルタがDWDMフィルタである場合について例示したが、波長選択フィルタは、例えば低密度波長分割多重(CWDM:Coarse Wavelength Division Multiplexing)フィルタなど任意の波長間隔を有するフィルタであってもよい。
【符号の説明】
【0141】
1,1B,1C,1D,1E…波長合分波器
10…第1コリメータ
11…光ファイバ(第1光導波路)
12…第1コリメートレンズ
12a,13a,22a,23a…第1端面
12b,13b,22b,23b…第2端面
12c,13c,22c,23c…外周面
13,23…フェルール
14,24…キャピラリ
14a,24a…第1開口
14b,24b…第2開口
14c,24c…内周面
15,25…接合部材
20(1)~20(12)…第2コリメータ
21…光ファイバ(第2光導波路)
22…第2コリメートレンズ
30…第3コリメータ
40,40(1)~40(12),40A(1)~40A(12),140…波長選択フィルタ
40c,140c…底面
41,41A,141…基板
41a,410a…第1主面
41b…第2主面
41c,141c…底面
41e…第1側面
41f…第2側面
42,142…多層膜
42a…第1表面
42b,142b…第2表面
42c,142c…第3表面
43,143…反射防止膜
43a…第1表面
43b…第2表面
43c,143c…第3表面
50,50B,50C,50E,150…ベースプレート
51,51B,56a,57b,151…載置面
52a…第1載置部分
52b…第2載置部分
52c…段差面
55…メインベースプレート
56…第1ベースプレート
57…第2ベースプレート
58a…第1載置面
58b…第2載置面
58c…孔部
60,160…接合部材
61,62…接触部分
65…フィラー
70,70E…筐体
71a…開口
72…蓋
73…底板
74…側壁
74a…端面
74b…凹部
74c…貫通孔
75…凸部
80…光学素子
81…反射面
411…第1部分
412…第2部分
AX1…光軸
AX2…光軸
C1…中心
C2…中心
F(1)~F(12)…透過波長帯域
H1…仮想平面
H2…接平面
H3…仮想円
H4…仮想円
L11…第1列
L12…第2列
L21…第1列
L22…第2列
S…内部空間

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