(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-16
(45)【発行日】2025-06-24
(54)【発明の名称】燃料電池
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0276 20160101AFI20250617BHJP
H01M 8/0273 20160101ALI20250617BHJP
H01M 8/0245 20160101ALI20250617BHJP
H01M 8/1004 20160101ALI20250617BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20250617BHJP
【FI】
H01M8/0276
H01M8/0273
H01M8/0245
H01M8/1004
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2022071370
(22)【出願日】2022-04-25
【審査請求日】2024-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】前田 嵐之介
(72)【発明者】
【氏名】中澤 哲
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-144854(JP,A)
【文献】特開2017-168364(JP,A)
【文献】特開2016-100152(JP,A)
【文献】特開2016-076440(JP,A)
【文献】特開2020-198266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/10
H01M 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1触媒層、第2触媒層、及び、前記第1触媒層と前記第2触媒層との間に配置される電解質膜を備える膜電極接合体と、
前記第1触媒層に積層され、外周端部の少なくとも一部が前記膜電極接合体の外周端を超えて設けられている第1ガス拡散層と、
前記第2触媒層に積層されている第2ガス拡散層と、
前記膜電極接合体の周囲に配置される支持体と、
前記支持体と前記電解質膜及び前記第1触媒層の少なくとも一方とを渡すように配置されるカバーシートと、を備え、
前記カバーシートは、前記電解質膜及び前記第1触媒層の少なくとも一方となる側の先端部が前記カバーシートの他の部位に比べて薄くなるように構成されている、
燃料電池。
【請求項2】
前記先端部は先端に向かうほど薄くなる傾斜面を有する、請求項1に記載の燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、支持フレームと膜電極接合体とを渡すように接着剤及びカバーシートが配置され、カバーシートにガス拡散層が積層されている構造が開示されている。また、特許文献2には、段差面を有するダミー樹脂部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-144854号公報
【文献】特開2020-145026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、カバーシートを配置したとき膜電極接合体やカバーシート自体に破れを生じる不具合を生じることがあった。この破れは反応ガスのリークにつながる虞がある。
【0005】
そこで、上記問題に鑑み、本開示は支持体と膜電極接合体との接合において膜電極接合体やガス拡散層の破損発生を抑制することができる燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者は鋭意検討により、カバーシートのうち膜電極接合体側の先端部において、カバーシートの厚みに起因する空間が生じ、この空間が膜電極接合体やガス拡散層に破損を生じる原因であることの着想を得た。そしてこれを解決する具体的手段により本開示の技術を完成させた。具体的には次の通りである。
【0007】
本願は、第1触媒層、第2触媒層、及び、第1触媒層と第2触媒層との間に配置される電解質膜を備える膜電極接合体と、第1触媒層に積層され、外周端部の少なくとも一部が膜電極接合体の外周端を超えて設けられている第1ガス拡散層と、第2触媒層に積層されている第2ガス拡散層と、膜電極接合体の周囲に配置される支持体と、支持体と電解質膜及び第1触媒層の少なくとも一方とを渡すように配置されるカバーシートと、を備え、カバーシートは、電解質膜及び第1触媒層の少なくとも一方となる側の先端部がカバーシートの他の部位に比べて薄くなるように構成されている、燃料電池を開示する。
【0008】
先端部は先端に向かうほど薄くなる傾斜面を有するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、カバーシートを薄くせずに(カバーシートの強度を低下させずに)カバーシートの厚みに起因して生じる空間を小さくでき、膜電極接合体やカバーシート自体の破れ(破損)の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は発電単位セル10を平面視した図である。
【
図2】
図2は発電部11の断面でありその層構成を説明する図である。
【
図3】
図3は外周部21の断面でありその層構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.発電単位セル
図1~
図3に1つの形態にかかる発電単位セル10を説明する図を示した。発電単位セル10は、水素と酸素(空気)を供給することにより発電するための単位要素であり、このような発電単位セル10が複数積層されて燃料電池を構成している。
図1は発電単位セル10を平面視した図、
図2は発電単位セル10のうち発電部11における層構成を説明する図、
図3は発電単位セル10のうち外周部21における層構成を説明する図である。
【0012】
1.1.発電部
発電部11は、例えば
図1に点線で囲った部分において発電に寄与する部分であり、
図2に当該発電部11における層構成(A-A断面の一部)を表したように複数の層が積層されてなる。
発電単位セル10の発電部11では、電解質膜12を挟んで一方がカソード(酸素供給側)、他方がアノード(水素供給側)である。カソードは電解質膜12側からカソード触媒層13(第1触媒層)、カソードガス拡散層14(第1ガス拡散層)、及び、カソードセパレータ15(第1セパレータ)がこの順に積層されている。一方アノードは、電解質膜12側からアノード触媒層16(第2触媒層)、アノードガス拡散層17(第2ガス拡散層)、及び、アノードセパレータ18(第2セパレータ)をこの順に備えている。なお、電解質膜12、カソード触媒層13、アノード触媒層16による積層体を膜電極接合体と呼ぶことがある。膜電極接合体の厚さは0.4mm程度が典型的であり、発電部11における発電単位セル10の厚さは1.3mm程度が典型的である。
各層は公知のように構成することができるが例えば次の通りである。
【0013】
1.1a.電解質膜
電解質膜12は湿潤状態において良好なプロトン伝導性を示す固体高分子薄膜である。例えばフッ素系のイオン交換膜によって構成され、例えば、炭素-フッ素系高分子を用いることができ、具体的にはパーフルオロアルキルスルフォン酸系ポリマー(ナフィオン(登録商標))等が挙げられる。
電解質膜12の厚さは特に限定されることはないが、100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは10μm以下である。
【0014】
1.1b.カソード触媒層
カソード触媒層13は、触媒金属が担体に担持されている形態で触媒金属が含まれる層である。例えば、触媒金属としてはPt、Pd、Rh、又はこれらを含む合金が挙げられる。担体としては、炭素担体、より詳しくはグラッシーカーボン、カーボンブラック、活性炭、コークス、天然黒鉛、及び、人造黒鉛等からなる炭素粒子を挙げることができる。
【0015】
1.1c.アノード触媒層
アノード触媒層16も、カソード触媒層13と同様に、触媒金属が担体に担持されている形態で触媒金属が含まれる層である。例えば、触媒金属としてはPt、Pd、Rh、又はこれらを含む合金が挙げられる。担体としては、炭素担体、より詳しくはグラッシーカーボン、カーボンブラック、活性炭、コークス、天然黒鉛、及び、人造黒鉛等からなる炭素粒子を挙げることができる。
【0016】
1.1d.カソードガス拡散層
本形態でカソードガス拡散層14は、例えば導電性を有する多孔質体で構成された層である。より具体的な例としては、カーボン多孔体(カーボンペーパー、カーボンクロス、ガラス状カーボン等)、金属多孔体(金属メッシュ、発泡金属)等が挙げられる。
カソードガス拡散層14には、そのカソード触媒層13側に塗工された被覆状の薄膜であるマイクロポーラス層(MPL)を設けてもよい。MPLは必要に応じて撥水性や親水性を有して水分の調整をする機能を有する。MPLとしてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の撥水性樹脂とカーボンブラックなどの導電性材料を主成分とするものが典型的である。
【0017】
1.1e.アノードガス拡散層
アノードガス拡散層17は、例えば導電性を有する多孔質体で構成された層である。より具体的な例としては、カーボン多孔体(カーボンペーパー、カーボンクロス、ガラス状カーボン等)、金属多孔体(金属メッシュ、発泡金属)等が挙げられる。
【0018】
1.1f.カソードセパレータ
カソードセパレータ15はカソードガス拡散層14に反応ガス(本形態では空気)を供給する部材であり、カソードガス拡散層14に対向する面に、複数の溝15aを有しており、この溝が反応ガス流路として機能する。溝の形状は反応ガスを適切にカソードガス拡散層14に供給することができれば特に限定されることはなく、本形態のように板状の部材を波状に形成したサーペンタイン型が挙げられる。そのとき、板厚は0.1mm~0.2mmが典型的であり、凹凸の高さは0.5mm程度が典型的である。
サーペンタイン型とした場合、隣り合う溝15aの間にはカソードセパレータ15を挟んで反対側に溝15bが形成され、これが冷却水流路として機能する。
【0019】
また、カソードセパレータ15には、
図1からわかるように、発電部11から延長して外側となる位置で、溝15a、溝15bが延びる方向の一端側となる部位には空気入口孔A
in、冷却水入口孔W
in、水素出口孔H
outが設けられ、溝15a、溝15bが延びる方向の他端側となる部位には空気出口孔A
out、冷却水出口孔W
out、水素入口孔H
inが設けられている。ここで溝15aは空気入口孔A
in、空気出口孔A
outに連通し、溝15bは冷却水入口孔W
in、冷却水出口孔W
outに連通している。
【0020】
カソードセパレータ15を構成する材料は、発電単位セルのセパレータとして用いることができる任意の材料であってよく、ガス不透過性の導電性材料であってよい。このような材料としては、例えばカーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボンや、プレス成型した金属板等を挙げることができる。
【0021】
1.1g.アノードセパレータ
アノードセパレータ18はアノードガス拡散層17に反応ガス(水素)を供給する部材であり、アノードガス拡散層17に対向する面に、複数の溝18aを有しており、この溝が反応ガス流路として機能する。溝の形状は反応ガスを適切にアノードガス拡散層17に供給することができれば特に限定されることはなく、本形態のようにサーペンタイン型が挙げられる。そのとき板厚は0.1mm~0.2mmが典型的であり、凹凸の高さは0.4mm程度が典型的である。
サーペンタイン型とした場合、隣り合う溝18aの間にはアノードセパレータ18を挟んで反対側に溝18bが形成され、これが冷却水流路として機能する。
【0022】
また、アノードセパレータ18には、
図1からわかるように、発電部11から延長して外側となる位置で、溝18a、溝18bが延びる方向の一端側となる部位には空気入口孔A
in、冷却水入口孔W
in、水素出口孔H
outが設けられ、溝18a、溝18bが延びる方向の他端側となる部位には空気出口孔A
out、冷却水出口孔W
out、水素入口孔H
inが設けられている。ここで溝18aは水素入口孔H
in、水素出口孔H
outに連通し、溝18bは冷却水入口孔W
in、冷却水出口孔W
outに連通している。
【0023】
アノードセパレータ18を構成する材料は、発電単位セルのセパレータとして用いることができる任意の材料であってよく、ガス不透過性の導電性材料であってよい。このような材料としては、例えばカーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボンや、プレス成型した金属板等を挙げることができる。
【0024】
1.1h.発電部による発電
公知の通りであるが、以上説明した発電単位セル10により次のように発電が行われる。
水素入口孔Hinからアノードセパレータ18の溝18aに供給された水素はアノードガス拡散層17を通りアノード触媒層16にてプロトン(H+)と電子(e-)に分解される。プロトンは電解質膜12を通り、電子は外部へつながる導電線を通り、それぞれがカソード触媒層13に達する。残った水素は水素出口孔Houtから排出される。
カソード触媒層13には空気入口孔Ainからカソードセパレータ15の溝15a、カソードガス拡散層14を介して酸素(空気)供給されており、カソード触媒層13では、プロトン、電子、酸素により水(H2O)が発生する。発生した水、及び、残りの空気はカソードガス拡散層14を通りカソードセパレータ15の溝15aに達して空気出口孔Aoutから排出される。
発電単位セル10ではアノード触媒層16から外部へつながる導電線を通る電子の流れを電流として利用する。
【0025】
また、隣り合う発電単位セル10で一方の発電単位セル10のカソードセパレータ15に隣接する他方の発電単位セル10のアノードセパレータ18が重なるように配置されることで、カソードセパレータ15の溝15bとアノードセパレータ18の溝18bとにより冷却水流路が形成される。この冷却水流路に対して冷却水入口孔Winから冷却水が供給され、供給された冷却水は発電単位セル10を冷却し、冷却水出口孔Woutから排出される。
【0026】
1.2.外周部
外周部21は
図1に点線で囲った発電部11の外側で発電単位セル10の外周部であり、
図3に当該外周部21における層構成(B-B断面)を表したように複数の層が積層されてなる。
【0027】
1.2a.外周部の構造
図3からわかるように本形態で外周部21はその少なくとも一部で次のような構成を備えている。
電解質膜12、アノード触媒層16、アノードガス拡散層17の端面は概ね同じ位置となるように積層され、カソード触媒層13の端面は電解質膜12の端面よりも没した(後退した)位置となるように積層されている。さらにカソードガス拡散層14の端面は電解質膜12の端面よりも突出した(進行した)位置であり、発電単位セル10の平面視(
図1の方向からの視点、
図3に矢印Lで示した方向の視線)で支持体23に重なる位置にまで延びている。支持体23については後で説明する。
【0028】
カソードセパレータ15、アノードセパレータ18は、外周部21でもその間に電極部11と同様に上記した各層を挟むように配置されている。また、カソードセパレータ15及びアノードセパレータ18の端面は、膜電極接合体、カソードガス拡散層14、アノードガス拡散層17の各端面よりも突出するように延び、当該延びた部位においてカードセパレータ15及びアノードセパレータ18との間に支持体23が配置される。なお、外周部21ではカソードセパレータ15及びアノードセパレータ18とも流路は不要であるため溝15a、溝18aは形成されていない(ただし、
図3からわかるように一部に溝が形成されていることを妨げるものではない。)。
【0029】
支持体23のカソード側に向く面の端部と膜電極接合体のカソード側を向く面の端部とを渡すようにカバーシート22が配置されている。カバーシート22については後で説明する。
【0030】
1.2b.支持体
上記した支持体23は発電単位セル10の外周部21においてカソードセパレータ15とアノードセパレータ18との間を封止してシールするシール部材として機能する。
支持体23は基材23a、及び、基材23aの両面(カソード側を向く面、アノード側を向く面)のそれぞれに配置された接着層23bを備えている。接着層23bがカソードセパレータ15、アノードセパレータ18に接着されることにより発電部11内を封止してシールしている。従ってカソードセパレータ15とアノードセパレータ18との間隔はその間に挟まれる層によって変化するように曲げられており、
図3からわかるように支持体23のみが配置されている部位ではその一部で間隔が狭められており、カソードセパレータ15とアノードセパレータ18とで支持体23を挟んで固定されている。
【0031】
基材23aは、電気絶縁性及び気密性を有し、融点が比較的高い熱可塑性樹脂材料から形成される。このような材料としては、結晶性のポリマー、より具体的には、エンジニアリングプラスチックを挙げることができる。エンジニアリングプラスチックとしては、例えばポリエチレンナフタレート系樹脂(PEN)及びポリエチレンテレフタレート系樹脂(PET)を挙げることができる。
基材23aの厚さは特に限定されることはないが0.05mm以上0.25mm以下であることが好ましい。
【0032】
接着層23bは、接着された状態において、接着性を有するものであればよく公知のものを用いることができる。例えば官能基(無水マレイン酸,エポキシなど)をポリオレフィンに導入して接着性を付与した変性ポリオレフィン等を挙げることができる。
【0033】
このような支持体23は
図3からわかるように、その端面が膜電極接合体、及び、アノードガス拡散層17の端面に対して、間隙Sを開けて対向するように配置され、発電部11とは反対側に向けて延びている。この間隙Sにより支持体23や膜電極接合体等の線膨張による寸法変化を吸収することができ、膨張、収縮による破損の発生を抑制することができる。
【0034】
1.2c.カバーシート
上記したように支持体23のカソード側に向く面の端部と膜電極接合体のカソード側を向く面の端部とを渡すようにカバーシート22が配置されている。
図4には、
図3のうちカバーシート22が配置された周辺に注目して拡大した図を表した。
【0035】
カバーシート22は、一方の端部が支持体23のカソード側の表面端部、他方の端部が膜電極接合体側で電解質膜12及びカソード触媒層13の少なくとも一方の表面端部を覆うように配置されている(本形態ではカバーシートは電解質膜12及びカソード触媒層13の両方の表面端部を覆うように配置されている。)。これにより、外周部21においてカソードとアノードとを適切に分離することができる。従ってカバーシート22は膜電極接合体側の端部で膜電極接合体とカソードガス拡散層14との間に配置されている。
【0036】
カバーシート22は、燃料電池の反応ガスを透過しない材料が用いられている。反応ガスを透過しない部材として、例えば、ポリプロピレンやポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンナフタレート、ナイロン、エチレンビニルアルコール共重合体等の樹脂からなるフィルム状の部材を採用することができる。特に耐加水分解性、電解質膜との接着の観点から、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン9T、エチレンビニルアルコールが挙げられる。また電解質膜12との接着性を上げるためにアミド基、エポキシ基、ヒドロキシル基等を有する等の添加剤を加えてもよい。
【0037】
ここでカバーシート22は支持体23に重なる部位については支持体23の接着層23bより接着される。一方、カバーシート22が膜電極接合体と重なる部分については必要に応じてカバーシート22に接着層を設けて接着される。ただし、カバーシート22としてナイロンを用いた場合には熱圧着によりカバーシートと膜電極接合体とを接着することができるため接着層は不要となる。
【0038】
また、カバーシート22のうち膜電極接合体側を向く端部には他の部分に比べて薄くなるように構成された先端部22aを有している。
図5には
図4にVで示した部位であり当該先端部22aの部分に注目して拡大した図を示した。
【0039】
図5かわかるように、本形態で先端部22aは先端に向かうにつれて薄くなる傾斜面22bを有しており、この傾斜面22bは凹状に湾曲した形状を有している。これにより先端部22aが空間Aの大きさを減ずることができ、課題を解決することが可能となる。詳しくは後で説明する。
【0040】
ここで、カバーシート22の厚さは特に限定されることはなく、当該先端部22aの先端で60μm以下であることが好ましく、先端部22a以外の部位は60μmより厚いことが好ましい。先端部22a以外の部位で60μmより厚くすることでカバーシート22の強度を高めることができ、破れなどの不具合の発生を抑制することが可能である。また、先端部22aを先端で60μm以下とすることでより確実に空間Aの大きさを減じることができる。
【0041】
2.効果等
カバーシートの一端側をカソードガス拡散層と膜電極接合体との間に配置した場合、カバーシートの厚みに起因して
図5にAで示した部位に空間を生じる。これはカバーシートが厚いほど大きくなる傾向にある。そして発明者はこの空間Aが大きいほど膜電極接合体やカソードガス拡散層に破損を生じる原因となることを突き止めた。
一方、カバーシートは上記のようにシールのためにある程度の厚さを必要とする。従って当該空間Aはどうしても大きくなる傾向にある。
これに対して本開示によれば、先端部22aが空間Aの少なくとも一部を埋めるように作用し、この空間Aの大きさを減じ、これにより、膜電極接合体やカソードガス拡散層に破損を生じる可能性を減らして破損による反応ガスのリークを抑制することができる。
【0042】
3.他の形態
以下に外周部に関する他の形態例を説明する。
3.1.他の形態例1
図6には外周部の形態の他の例を説明する図を示した。
図6は
図4と同じ視点による図である。
図6の例では、カソード触媒層13の端面も電解質膜12の端面と同じ位置に位置付けられている。この場合、カバーシート22が電解質膜12に積層される部分はなくカソード触媒層13に積層される。
このような形態であっても上記と同様の効果を奏するものとなる。
【0043】
3.2.他の形態例2
図7には外周部の形態の他の例を説明する図を示した。
図7は
図5と同じ視点による図である。
図7の例では、先端部22aがそれ以外の部分に対して階段状に細くなる例である。
このような形態であっても上記と同様の効果を奏するものとなる。
【0044】
3.3.他の形態例3
図8には外周部の形態の他の例を説明する図を示した。
図8は
図5と同じ視点による図である。
図8の例では、先端部22aが直線状の傾斜面22dを有する例である。
このような形態であっても上記と同様の効果を奏するものとなる。
【0045】
4.燃料電池
燃料電池30は、上記した発電単位セル10が複数(50枚~400枚程度)重ねられてなる部材であり、複数の発電単位セル10から集電を行う。
図9にその構成の概要を示した。燃料電池30は、スタックケース31、エンドプレート32、複数の発電単位セル10、集電板34、及び、付勢部材35を備えている。
【0046】
スタックケース31は、重ねられた複数の発電単位セル10、集電板34、及び、付勢部材35をその内側に収納する筐体である。本形態でスタックケース31は四角形の筒状で一端が開口し、他端が閉じているとともに、開口の縁に沿って開口とは反対側に板状の片が張り出し、フランジ31aを形成している。
【0047】
エンドプレート32は板状の部材であり、スタックケース31の開口を塞ぐ。スタックケース31のフランジ31aとの重なり部分をボルト及びナット等によりスタックケース31にフタをするようにエンドプレート32がスタックケース31に固定される。
【0048】
発電単位セル10は上記の通りである。このような発電単位セル10が複数重ねられている。このとき、1つの発電単位セル10のカソードセパレータ15に隣接する発電単位セル10のアノードセパレータ18が重なるように配置する。そしてカソードセパレータ15の溝15bとアノードセパレータ18の溝18bとが重なることで冷却水流路が形成される。
【0049】
集電板34は、積層された発電単位セル10から集電を行う部材である。従って集電板34は発電単位セル10の積層体の一端及び他端のそれぞれに配置されており、一方が正極、他方が負極となる。この集電板34に不図示の端子が接続され、外部に電気的に接続できるように構成されている。
【0050】
付勢部材35は、スタックケース31の内側に収まり、発電単位セル10の積層体に対してその積層方向に押圧力を付与する。付勢部材として例えば皿バネ等を挙げることができる。
【0051】
5.その他
以上の説明ではカソード側の各部材を「第1」、アノード側の各部材を「第2」として説明したが、逆であってもよく、カソード側を「第2」、アノード側を「第1」として置き換えても同様の効果を奏するものとなる。
【符号の説明】
【0052】
10 発電単位セル
11 発電部
12 電解質膜
13 カソード触媒層
14 カソードガス拡散層
15 カソードセパレータ
16 アノード触媒層
17 アノードガス拡散層
18 アノードセパレータ
21 外周部
22 カバーシート
22a 先端部
23 支持体
23a 基材
23b 接着層
30 燃料電池