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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-16
(45)【発行日】2025-06-24
(54)【発明の名称】車体側部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/04 20060101AFI20250617BHJP
【FI】
B62D25/04 B
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022071683
(22)【出願日】2022-04-25
(65)【公開番号】P2023161344
(43)【公開日】2023-11-07
【審査請求日】2024-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】小出 遼平
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/090916(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/179916(WO,A1)
【文献】特開2014-073769(JP,A)
【文献】特開2011-37289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向内側に向けて開放するコ字型の断面形状とされたBピラーアウタリインフォースメントアッパおよびBピラーアウタリインフォースメントロアを有するBピラーを備えた車体側部構造において、
フロントサイドドアの内部にはインパクトビームが設けられており、当該インパクトビームの後端は取り付けブラケットを介して前記フロントサイドドアのパネル材に接合されており、前記取り付けブラケットの位置は、前記フロントサイドドアの閉鎖状態において車幅方向から見た場合に前記Bピラーの下部に重なる位置となっていて、車両側突時の側突荷重が前記インパクトビームから前記取り付けブラケットを経て前記Bピラーアウタリインフォースメントアッパの下部に入力されるようになっており、
前記Bピラーアウタリインフォースメントアッパにおける車体前後方向に対して交差する方向に延在する車幅方向延在部は、前記Bピラーアウタリインフォースメントロアに接合されていると共に、当該車幅方向延在部の車幅方向内側の端縁は、上下方向に亘って車幅方向での凹凸を繰り返す波形状となっており、上側から、第1凹状曲線部、第1凸状曲線部、第2凹状曲線部、第2凸状曲線部の順で連続して配置されており、
前記第1凹状曲線部の車幅方向外側への凹陥寸法は、前記第2凹状曲線部の車幅方向外側への凹陥寸法よりも大きく設定されていることを特徴とする車体側部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車体側部構造に係る。特に、本発明は、車両側突時の側突荷重に対するBピラーの耐力向上を図るための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ロッカとルーフサイドレールとを連結すると共にフロントドア開口とリヤドア開口とを区画するBピラー(センタピラーとも呼ばれる)の一般的な構造としては、車幅方向内側(車室内側)に位置するBピラーインナと、車幅方向外側に位置するBピラーアウタと、これらBピラーインナとBピラーアウタとが接合されて成る閉断面構造の内側に配設された補強部材としてのBピラーアウタリインフォースメントとが備えられている。
【0003】
図6は、従来の一般的なBピラーの下端部におけるロッカaとBピラーアウタリインフォースメントbとの接合部分周辺の構造を示す斜視図である。この図6における矢印FRは車体前側を示し、矢印OUTは車幅方向外側を示し、矢印UPは上側を示している。
【0004】
この図6に示すものでは、Bピラーアウタリインフォースメントbは上下2部材で構成されており、ロッカaに接合されたBピラーアウタリインフォースメントロアcと、該Bピラーアウタリインフォースメントロアcの外側に接合されて上方に延在し、図示しないルーフサイドレールに接合されたBピラーアウタリインフォースメントアッパdとを有している。このBピラーアウタリインフォースメントアッパdの下部は、車幅方向に対して直交する方向に延在する(上下方向および車体前後方向に延在する)平板部eとなっており、この平板部eがBピラーアウタリインフォースメントロアcの外面(車幅方向外側を向く面)fに接合されている。
【0005】
一般に、フロントサイドドアの内部に設けられるインパクトビーム(車両側突時の側突荷重を受け止めるための部材)の後端がフロントサイドドアのパネル材に接合される位置は、Bピラー下部に重なる位置(フロントサイドドアの閉鎖状態において車幅方向から見た場合にBピラー下部に重なる位置)となっている。このため、車両側突時にあっては、インパクトビームに入力される側突荷重は該インパクトビームからBピラーアウタリインフォースメントアッパdの下部である前記平板部e付近に入力されることになる。そして、この側突荷重の入力に伴って平板部eが車幅方向内側に折れ曲がるように変形した場合、側突荷重に対するBピラーの耐力(反力)が急速に低下してしまうことになり、車室内に向けての変形速度を低下させるには限界があった。
【0006】
特に、近年、側突評価試験の評価条件が厳しくなる傾向にあっては、インパクトビームからの入力(側突評価試験におけるムービングバリアからの入力)が増加し、Bピラー下部に比較的大きな側突荷重が入力されることになるため、側突荷重に対するBピラー下部の耐力向上を図ることの要求が高くなっている。
【0007】
特許文献1には、Bピラーアウタリインフォースメントの下部を、車幅方向内側に向かって開放するハット型の断面形状とすることが開示されている。これによれば、Bピラーアウタリインフォースメントの下部の剛性が高くなり、側突荷重に対するBピラー下部の耐力をある程度高めることは可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2022-12253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示されている構造にあっては、側突荷重が入力された場合には、Bピラーアウタリインフォースメントが車幅方向内側に屈曲されることに伴って当該Bピラーアウタリインフォースメントにおける車幅方向内側の端縁(車体前後方向に対して交差する方向に延在する車幅方向延在部における車幅方向内側の端縁)の線長が伸びる方向に変形し(上下方向の外側に向かう引張荷重が作用して変形し)、この端縁に破断が発生してしまう可能性の高いものである。このような破断が発生した場合にあっても、側突荷重に対するBピラーの耐力(反力)は急速に低下することになる。このため、側突荷重に対するBピラー(特にBピラー下部)の耐力向上を十分に確保するには改良の余地があった。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、側突荷重に対するBピラーの耐力向上を図ることができる車体側部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、車幅方向内側に向けて開放するコ字型の断面形状とされたBピラーアウタリインフォースメントアッパおよびBピラーアウタリインフォースメントロアを有するBピラーを備えた車体側部構造を前提とする。そして、この車体側部構造は、フロントサイドドアの内部にはインパクトビームが設けられており、当該インパクトビームの後端は取り付けブラケットを介して前記フロントサイドドアのパネル材に接合されており、前記取り付けブラケットの位置は、前記フロントサイドドアの閉鎖状態において車幅方向から見た場合に前記Bピラーの下部に重なる位置となっていて、車両側突時の側突荷重が前記インパクトビームから前記取り付けブラケットを経て前記Bピラーアウタリインフォースメントアッパの下部に入力されるようになっており、
前記Bピラーアウタリインフォースメントアッパにおける車体前後方向に対して交差する方向に延在する車幅方向延在部は、前記Bピラーアウタリインフォースメントロアに接合されていると共に、当該車幅方向延在部の車幅方向内側の端縁が、上下方向に亘って車幅方向での凹凸を繰り返す波形状となっており、上側から、第1凹状曲線部、第1凸状曲線部、第2凹状曲線部、第2凸状曲線部の順で連続して配置されており、
前記第1凹状曲線部の車幅方向外側への凹陥寸法は、前記第2凹状曲線部の車幅方向外側への凹陥寸法よりも大きく設定されていることを特徴とする。
【0012】
この特定事項により、波形状とされたBピラー補強部材における端縁(車体前後方向に対して交差する方向に延在する車幅方向延在部の車幅方向内側の端縁)の形状としては、車幅方向内側に向けて凸となる凸状曲線部と、車幅方向外側に向けて凹となる凹状曲線部とが上下方向に亘って交互に存在している。そして、車両側突時の側突荷重がBピラー補強部材に入力された場合にあっては、車幅方向外側に向けて凹となる凹状曲線部の変形は、該凹状曲線部の線長を短くする(縮める)方向となる。このため、この部分では、側突荷重による破断は生じ難くなり、破断に起因する耐力の急速な低下は抑制されることになる。このため、側突荷重に対するBピラーの耐力向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、Bピラー補強部材における車体前後方向に対して交差する方向に延在する車幅方向延在部の車幅方向内側の端縁を、上下方向に亘って車幅方向での凹凸を繰り返す波形状としている。このため、側突荷重による前記端縁の破断は生じ難くなり、破断に起因する耐力の急速な低下が抑制され、側突荷重に対するBピラーの耐力向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る車体側部の概略構成を示す側面図である。
図2】実施形態に係るBピラーの下端部におけるロッカとBピラーアウタリインフォースメントとの接合部分周辺の構造を示す斜視図である。
図3】Bピラーアウタリインフォースメントアッパの斜視図である。
図4】Bピラーアウタリインフォースメントアッパの端縁を直線状にした比較例において側突荷重が入力された際の当該端縁の変形状態を説明するための模式図である。
図5】実施形態において側突荷重が入力された際のBピラーアウタリインフォースメントアッパの端縁の変形状態を説明するための模式図である。
図6】従来の一般的なBピラーの下端部におけるロッカとBピラーアウタリインフォースメントとの接合部分周辺の構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、Bピラーアウタリインフォースメントが、BピラーアウタリインフォースメントアッパおよびBピラーアウタリインフォースメントロアを備えた構造において、該Bピラーアウタリインフォースメントアッパの下部に本発明を適用した場合について説明する。尚、Bピラーアウタリインフォースメントとしては、2部材で構成されたものには限定されず、1部材で構成されたものや3部材以上で構成されたものであってもよい。
【0016】
-車体側部の概略構成-
図1は、本実施形態に係る車体側部(左側ドア開口の周辺)の概略構成を示す側面図である。この図1における矢印FRは車体前側を示し、矢印UPは上側を示している。以下では、車体左側の側部の構成について説明するが、車体右側の側部も同様の構成(対称とされた構成)となっている。
【0017】
図1に示すように、車体側部の構成としては、フロントドア開口FOとリヤドア開口ROとを区画するように立設されたBピラー1が設けられている。このBピラー1は、フロントドア開口FOの後縁を構成するように立設されており、下端がロッカ2に、上端がルーフサイドレール3にそれぞれ接合されている。
【0018】
ロッカ2は、車体側部の下端(フロアの左右両側端)に沿って車体前後方向に延在する閉断面構造で成る車体構成要素である。ルーフサイドレール3は、車体側部の上端(ルーフの左右両側端)に沿って車体前後方向に延在する閉断面構造で成る車体構成要素である。
【0019】
また、本実施形態に係る車両のフロントサイドドアFD(図1では仮想線で示している)の内部にはインパクトビーム10が設けられている。このインパクトビーム10はフロントサイドドアFDの閉鎖状態において車体前後方向に延在するように配設されている。インパクトビーム10の前後両端には取り付けブラケット10a,10bが設けられており、インパクトビーム10は、この取り付けブラケット10a,10bによってフロントサイドドアFDのパネル材に接合されている。そして、インパクトビーム10の後端の取り付けブラケット10bの位置は、Bピラー1の下部に重なる位置(フロントサイドドアFDの閉鎖状態において車幅方向から見た場合にBピラー1の下部に重なる位置)となっている。このため、車両側突時にあっては、インパクトビーム10に入力される側突荷重は該インパクトビーム10から取り付けブラケット10bを経てBピラー1の下部に入力されるようになっている。
【0020】
-Bピラーの構成-
Bピラー1は、車幅方向内側に向かって開放するハット型の断面形状のBピラーアウタ4と、車幅方向外側に向かって開放するハット型の断面形状のBピラーインナ(図示省略)とを備えている。これらBピラーアウタ4およびBピラーインナそれぞれにおける車体前後方向の両側には上下方向に延在するフランジ部41,42が設けられている。
【0021】
また、Bピラー1の内部には、Bピラーアウタリインフォースメント5(図2を参照)が配設されている。このBピラーアウタリインフォースメント5は、車幅方向内側に向かって開放するハット型の断面形状で形成されている。そして、Bピラーアウタリインフォースメント5における車体前後方向前側に設けられたフランジ部63,66,72c(これらフランジ部について詳しくは後述する)が、Bピラーアウタ4における車体前後方向前側に設けられたフランジ部41およびBピラーインナにおける車体前後方向前側に設けられたフランジ部によって挟まれた状態で溶接(スポット溶接等)されて一体的に接合されている。また、Bピラーアウタリインフォースメント5における車体前後方向後側に設けられたフランジ部66,72d(これらフランジ部についても詳しくは後述する)が、Bピラーアウタ4における車体前後方向後側に設けられたフランジ部42およびBピラーインナにおける車体前後方向後側に設けられたフランジ部によって挟まれた状態で溶接されて一体的に接合されている。これにより、Bピラー1は、上下方向に延在する閉断面構造で構成されることになり、高い剛性が得られている。
【0022】
図2は、Bピラー1の下端部におけるロッカ2とBピラーアウタリインフォースメント5との接合部分周辺の構造を示す斜視図である。この図2における矢印FRは車体前側を示し、矢印OUTは車幅方向外側を示し、矢印UPは上側を示している。
【0023】
以下、この図2を用いて、Bピラー1の下端部におけるロッカ2とBピラーアウタリインフォースメント5との接合部分周辺の構造について説明する。
【0024】
図2に示すように、ロッカ2は、車体前後方向に延びるロッカインナパネル21とロッカアウタパネル22とが接合されて構成されている。ロッカインナパネル21は、車幅方向外側に開放されたハット型の断面形状とされている。また、ロッカアウタパネル22は、車幅方向内側に開放されたハット型の断面形状とされている。そして、これらパネル21,22それぞれに形成されたフランジ部21a,22a、21b,22b同士が接合されることによって閉断面構造が構成されている。
【0025】
Bピラーアウタリインフォースメント5は上下2部材で構成されている。具体的には、ロッカ2に接合されたBピラーアウタリインフォースメントロア6と、該Bピラーアウタリインフォースメントロア6の外側に接合されて上方に延在し、ルーフサイドレール3に接合されたBピラーアウタリインフォースメントアッパ(本発明でいうBピラー補強部材)7とを有している。
【0026】
Bピラーアウタリインフォースメントロア6は、車幅方向内側に開放されたハット型の断面形状とされている。このBピラーアウタリインフォースメントロア6は、第1板部61、第2板部62、第3板部(図2では表れていないため符号は付していない)、前側フランジ部63、後側フランジ部(図2では表れていないため符号は付していない)を備えている。
【0027】
第1板部61は、車幅方向に対して直交する方向に延びている。第2板部62は、第1板部61における車体前方側の端縁から車幅方向内側に向かって延びている。第3板部は、第1板部61における車体後方側の端縁から車幅方向内側に向かって延びている。前側フランジ部63は、第2板部62の先端縁(車幅方向内側の先端縁)から車体前方側に向かって延びている。後側フランジ部は、第3板部の先端縁(車幅方向内側の先端縁)から車体後方側に向かって延びている。
【0028】
Bピラーアウタリインフォースメントロア6の下部は、ロッカアウタパネル22に接合されるフランジ部64,65,66を備えている。具体的には、ロッカアウタパネル22の外側面に接合される第1フランジ部64、ロッカアウタパネル22の上面に接合される第2フランジ部65,65、ロッカアウタパネル22のフランジ部22aに接合される第3フランジ部66,66を有している。第1フランジ部64は第1板部61に連続している。第2フランジ部65,65は第2板部62および第3板部に連続している。第3フランジ部66,66は前側フランジ部63および後側フランジ部に連続している。
【0029】
Bピラーアウタリインフォースメントロア6の下部における第1板部61と第2板部62との間の稜線Aは下方に向かって車体前方に湾曲している。また、第1板部61と第3板部との間の稜線Bは下方に向かって車体後方に湾曲している。
【0030】
次に、Bピラーアウタリインフォースメントアッパ7について説明する。図3は、Bピラーアウタリインフォースメントアッパ7の斜視図である。図3に示すように、Bピラーアウタリインフォースメントアッパ7は、ルーフサイドレール3に接合する上部71、該上部71の下側に連続し車幅方向内側に開放されたハット型の断面形状とされた中央部72、該中央部72の下側に連続する下部73を備えている。
【0031】
上部71は、ルーフサイドレール3の外面形状に合致した断面形状とされており、ルーフサイドレール3の外面に重ね合わされて溶接される部分である。
【0032】
中央部72は、第1板部72a、第2板部72b、第3板部(図2および図3では表れていないため符号は付していない)、前側フランジ部72c、後側フランジ部72dを備えている。
【0033】
第1板部72aは、車幅方向に対して直交する方向に延びている。この第1板部72aは、Bピラーアウタリインフォースメントロア6の第1板部61に重ね合わされて溶接される部分である。第2板部72bは、第1板部72aにおける車体前方側の端縁から車幅方向内側に向かって延びている。この第2板部72bは、Bピラーアウタリインフォースメントロア6の第2板部62に重ね合わされて溶接される部分である。第3板部は、第1板部72aにおける車体後方側の端縁から車幅方向内側に向かって延びている。この第3板部は、Bピラーアウタリインフォースメントロア6の第3板部に重ね合わされて溶接される部分である。前側フランジ部72cは、第2板部72bの先端縁(車幅方向内側の先端縁)から車体前方側に向かって延びている。この前側フランジ部72cは、Bピラーアウタリインフォースメントロア6の前側フランジ部63に重ね合わされて溶接される部分である。後側フランジ部72dは、第3板部の先端縁(車幅方向内側の先端縁)から車体後方側に向かって延びている。この後側フランジ部72dは、Bピラーアウタリインフォースメントロア6の後側フランジ部に重ね合わされて溶接される部分である。
【0034】
下部73は、第1板部73a、第2板部73b、第3板部(図2および図3では表れていないため符号は付していない)を備え、車幅方向内側に向けて開放するコ字型の断面形状とされている。
【0035】
第1板部73aは、車幅方向に対して直交する方向に延びている。この第1板部73aは、前記第1板部72aと同様に、Bピラーアウタリインフォースメントロア6の第1板部61に重ね合わされて溶接される部分である。第2板部73bは、第1板部73aにおける車体前方側の端縁から車幅方向内側に向かって延びている。第3板部は、第1板部73aにおける車体後方側の端縁から車幅方向内側に向かって延びている。このため、これら第2板部73bおよび第3板部が本発明でいう車幅方向延在部(車体前後方向に対して交差する方向に延在する車幅方向延在部)に相当する。
【0036】
本実施形態の特徴は、この下部73における第2板部73bおよび第3板部それぞれの端縁(車体前後方向に対して交差する方向に延在する車幅方向延在部における車幅方向内側の端縁)8の形状にある。
【0037】
この端縁8の形状としては、上下方向に亘って車幅方向での凹凸を繰り返す波形状となっている。具体的には、図2および図3に示すように、車幅方向内側に向けて凸となる凸状曲線部として第1凸状曲線部8Bおよび第2凸状曲線部8Dが備えられている。また、車幅方向外側に向けて凹となる凹状曲線部として第1凹状曲線部8Aおよび第2凹状曲線部8Cが備えられている。そして、この端縁8における上側から、第1凹状曲線部8A、第1凸状曲線部8B、第2凹状曲線部8C、第2凸状曲線部8Dの順で連続して配置されている。これら凹状曲線部8A,8Cおよび凸状曲線部8B,8Dの端縁形状の曲率は任意に設定可能である。例えば所定の曲率を有する円弧形状であってもよいし、曲率が変化していく曲線であってもよい。また、各凹状曲線部8A,8Cおよび凸状曲線部8B,8Dそれぞれの形状は互いに同一形状であってもよいし、互いに異なる形状であってもよい。この端縁8の形状の成形は、Bピラーアウタリインフォースメントアッパ7のプレス加工時に同時に行われる。または、プレス加工時には端縁を直線状に成形しておき、その後、この端縁に対して波形状とするための加工を行うようにしてもよい。
【0038】
また、本実施形態では、凸状曲線部8B,8Dおよび凹状曲線部8A,8Cをそれぞれ2個ずつ設けているが、これに限定されることなく、凸状曲線部および凹状曲線部をそれぞれ1個ずつ設けるようにしたり、それぞれを3個以上設けるようにしてもよい。
【0039】
-側突荷重の入力時-
次に、側突荷重の入力時の動作におけるBピラーアウタリインフォースメントアッパ7の変形について説明する。
【0040】
前述したように、インパクトビーム10の後端の取り付けブラケット10bの位置は、Bピラー1の下部に重なる位置となっており、車両側突時にあっては、インパクトビーム10に入力される側突荷重は該インパクトビーム10から取り付けブラケット10bを経てBピラー1の下部に入力されることになる。つまり、Bピラーアウタリインフォースメントアッパ7の下部に側突荷重は入力される。
【0041】
本実施形態にあっては、Bピラーアウタリインフォースメントアッパ7の端縁8が波形状となっているため、側突荷重がBピラーアウタリインフォースメントアッパ7の下部に入力された場合にあっては、第1凹状曲線部8Aおよび第2凹状曲線部8Cの変形としては、該凹状曲線部8A,8Cの線長を短くする(縮める)方向となる。つまり、この部分は、上下方向の外側に向かう引張荷重は作用することがないことから、線長が伸びる方向には変形しない部分となる。このため、各凹状曲線部8A,8Cでは、側突荷重による破断は生じ難くなり、破断に起因するBピラー1の下部の耐力の急速な低下は抑制されることになる。このため、側突荷重に対するBピラー1の耐力向上を図ることができる。
【0042】
以下、各凹状曲線部8A,8Cの変形状態について具体的に説明する。図4は、Bピラーアウタリインフォースメントアッパの端縁(車体前後方向に対して交差する方向に延在する車幅方向延在部の車幅方向内側の端縁)Eを直線状にした比較例において側突荷重Fが入力された際の当該端縁Eの変形状態を説明するための模式図である。この図4では、図中の右側が車幅方向外側であり、直線状の端縁Eに対して右側から側突荷重Fが入力している。この側突荷重Fが入力された場合、端縁Eの変形としては、該端縁Eの線長を長くする(引き伸ばす)方向となる(図4において破線で示す引張方向の矢印を参照)。つまり、この端縁Eでは、上下方向の外側に向かう引張荷重が作用することになるため、線長が伸びる方向に変形して破断が生じやすくなっている。
【0043】
一方、図5は、実施形態において側突荷重Fが入力された際のBピラーアウタリインフォースメントアッパ7の端縁8の変形状態(第1凹状曲線部8Aの変形状態)を説明するための模式図である。前述した如く、側突荷重Fが入力された場合、第1凹状曲線部8Aの変形としては、該第1凹状曲線部8Aの線長を短くする方向となる(図5において破線で示す圧縮方向の矢印を参照)。つまり、この部分は、上下方向の外側に向かう引張荷重は作用することがないことから、線長が伸びる方向には変形しない部分である。このため、第1凹状曲線部8Aでは、側突荷重Fによる破断は生じ難くなり、破断に起因するBピラー1の下部の耐力の急速な低下は抑制されることになる。このため、側突荷重Fに対するBピラー1の耐力向上を図ることができることになる。
【0044】
このように、本実施形態では、Bピラーアウタリインフォースメントアッパ7の端縁8の形状を変更するといった比較的簡単な構成によってBピラー1の耐力向上を図ることが可能である。
【0045】
-他の実施形態-
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲および該範囲と均等の範囲で包含される全ての変形や応用が可能である。
【0046】
例えば、前記実施形態では、Bピラーアウタリインフォースメントアッパ7の端縁8を波形状とする構成を該Bピラーアウタリインフォースメントアッパ7の下部のみに適用していたが、上下方向の中央部にも適用するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、車両側突時の側突荷重に対するBピラーの耐力向上を図るための車体側部構造に適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 Bピラー
7 Bピラーアウタリインフォースメントアッパ(Bピラー補強部材)
8 Bピラーアウタリインフォースメントアッパの端縁
8A 第1凹状曲線部
8B 第1凸状曲線部
8C 第2凹状曲線部
8D 第2凸状曲線部
図1
図2
図3
図4
図5
図6