IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

特許7697448情報処理装置、車両、情報処理方法、及び情報処理プログラム
<>
  • 特許-情報処理装置、車両、情報処理方法、及び情報処理プログラム 図1
  • 特許-情報処理装置、車両、情報処理方法、及び情報処理プログラム 図2
  • 特許-情報処理装置、車両、情報処理方法、及び情報処理プログラム 図3
  • 特許-情報処理装置、車両、情報処理方法、及び情報処理プログラム 図4
  • 特許-情報処理装置、車両、情報処理方法、及び情報処理プログラム 図5
  • 特許-情報処理装置、車両、情報処理方法、及び情報処理プログラム 図6
  • 特許-情報処理装置、車両、情報処理方法、及び情報処理プログラム 図7
  • 特許-情報処理装置、車両、情報処理方法、及び情報処理プログラム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-16
(45)【発行日】2025-06-24
(54)【発明の名称】情報処理装置、車両、情報処理方法、及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 11/06 20060101AFI20250617BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20250617BHJP
【FI】
G01S11/06
E05B49/00 K
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022177570
(22)【出願日】2022-11-04
(65)【公開番号】P2024067467
(43)【公開日】2024-05-17
【審査請求日】2024-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉原 徹
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第115209345(CN,A)
【文献】特開2011-223499(JP,A)
【文献】特表2019-528387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/00 - G01S 19/55
E05B 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
BLE無線通信を用いて自装置と携帯端末との通信を行い、前記BLE無線通信に係る信号の強度が所定の閾値以上である場合、UWB無線通信を用いて前記自装置と前記携帯端末との測距を開始する測距部と、
前記UWB無線通信による測距結果が所定の動作条件を満たしたか否かを判定する判定部と、
前記動作条件を満たした場合、前記携帯端末に前記閾値の変更の提案を通知する通知部と、
を備えた情報処理装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記UWB無線通信による測距の継続時間が所定の時間以上であるか否か、及び前記UWB無線通信による測距の頻度が所定の頻度以上であるか否かの少なくとも一方の条件を前記動作条件として判定する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記測距部は、前記UWB無線通信による測距を開始した後、前記信号の強度が所定の閾値未満である場合、前記UWB無線通信による測距を停止する
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記携帯端末から前記閾値を変更するための変更値を受け付ける受付部と、
受け付けた前記変更値を前記閾値として設定する設定部と、
をさらに備える請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の情報処理装置を備え、
前記情報処理装置は、ユーザによる自車両の操作が検出できない場合、前記動作条件を満たしたか否かを判定する
車両。
【請求項6】
前記情報処理装置は、前記UWB無線通信による測距を開始した回数を計数し、前記操作が検出された場合、前記回数を初期化する
請求項5に記載の車両。
【請求項7】
BLE無線通信を用いて自装置と携帯端末との通信を行い、前記BLE無線通信に係る信号の強度が所定の閾値以上である場合、UWB無線通信を用いて前記自装置と前記携帯端末との測距を開始し、
前記UWB無線通信による測距結果が所定の動作条件を満たしたか否かを判定し、
前記動作条件を満たした場合、前記携帯端末に前記閾値の変更の提案を通知する、
処理をコンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項8】
BLE無線通信を用いて自装置と携帯端末との通信を行い、前記BLE無線通信に係る信号の強度が所定の閾値以上である場合、UWB無線通信を用いて前記自装置と前記携帯端末との測距を開始し、
前記UWB無線通信による測距結果が所定の動作条件を満たしたか否かを判定し、
前記動作条件を満たした場合、前記携帯端末に前記閾値の変更の提案を通知する、
処理をコンピュータに実行させるための情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に係る指示を送信可能な携帯端末の探索を制御する情報処理装置、車両、情報処理方法、及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、UWB(Ultra Wide Band)無線通信を用いて携帯端末の位置を決定し、携帯端末の位置に基づいてBLE(Bluetooth Low Energy)を用いて、ドアのアンロック及びエンジンの始動等の車両機能の指示を携帯端末から受信するデジタルキーシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-63428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のデジタルキーシステムは、BLE無線通信によって携帯端末と車両との通信が確立した後、UWB無線通信を用いて携帯端末を測距することによって、携帯端末が車両の近辺に位置することを検知してからUWB無線通信による携帯端末の測距を開始する。
【0005】
ところで、BLE無線通信による測距は、UWB無線通信による測距と比較して精度が劣ることがある。また、BLE無線通信による測距は、携帯端末の性能、及び車両周辺の環境に応じて、精度が変動する。そのため、携帯端末の性能、及び車両周辺の環境等を考慮して、BLE無線通信による測距の精度を一律に保つことが困難となることがある。すなわち、BLE無線通信による測距の結果に応じてUWB無線通信による測距を行う場合において、携帯端末を誤検知して余計なUWB無線通信による測距を実行する虞がある。
【0006】
本発明は、BLE無線通信による測距の結果に応じてUWB無線通信による測距を行う場合において、余計なUWB無線通信による測距の実行を抑制できる情報処理装置、車両、情報処理方法、及び情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の情報処理装置は、BLE無線通信を用いて自装置と携帯端末との通信を行い、前記BLE無線通信に係る信号の強度が所定の閾値以上である場合、UWB無線通信を用いて前記自装置と前記携帯端末との測距を開始する測距部と、前記UWB無線通信による測距結果が所定の動作条件を満たしたか否かを判定する判定部と、前記動作条件を満たした場合、前記携帯端末に前記閾値の変更の提案を通知する通知部と、を備えている。
【0008】
請求項1に記載の情報処理装置は、BLE無線通信における信号の強度が所定の閾値以上である場合、UWB無線通信による携帯端末との距離の測距を開始し、UWB無線通信による測距結果が所定の動作条件を満たした場合、当該閾値の変更する旨を携帯端末に通知する。つまり、当該情報処理装置によれば、BLE無線通信による測距の結果に応じてUWB無線通信による測距を行う場合において、余計なUWB無線通信による測距の実行を抑制できる。
【0009】
請求項2に記載の情報処理装置は、請求項1に記載の情報処理装置において、前記判定部は、前記UWB無線通信による測距の継続時間が所定の時間以上であるか否か、及び前記UWB無線通信による測距の頻度が所定の頻度以上であるか否かの少なくとも一方の条件を前記動作条件として判定する。
【0010】
請求項2に記載の情報処理装置によれば、提案を通知する条件を変更することができる。
【0011】
請求項3に記載の情報処理装置は、請求項2に記載の情報処理装置において、前記測距部は、前記UWB無線通信による測距を開始した後、前記信号の強度が所定の閾値未満である場合、前記UWB無線通信による測距を停止する。
【0012】
請求項3に記載の情報処理装置によれば、UWB無線通信による電力の消費を抑制できる。
【0013】
請求項4に記載の情報処理装置は、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の情報処理装置において、前記携帯端末から前記閾値を変更するための変更値を受け付ける受付部と、受け付けた前記変更値を前記閾値として設定する設定部と、をさらに備える。
【0014】
請求項4に記載の情報処理装置によれば、ユーザが所望する閾値に変更することができる。
【0015】
請求項5に記載の車両は、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の情報処理装置を備え、前記情報処理装置は、ユーザによる自車両の操作が検出できない場合、前記動作条件を満たしたか否かを判定する。
【0016】
請求項5に記載の車両によれば、ユーザが自車両を操作できない位置にいることを検出して、ユーザに閾値の変更を提案できる。
【0017】
請求項6に記載の車両は、請求項5に記載の車両において、前記情報処理装置は、前記UWB無線通信による測距を開始した回数を計数し、前記操作が検出された場合、前記回数を初期化する。
【0018】
請求項6に記載の車両によれば、余計な提案を通知することを抑制できる。
【0019】
請求項7に記載の情報処理方法は、BLE無線通信を用いて自装置と携帯端末との通信を行い、前記BLE無線通信に係る信号の強度が所定の閾値以上である場合、UWB無線通信を用いて前記自装置と前記携帯端末との測距を開始し、前記UWB無線通信による測距結果が所定の動作条件を満たしたか否かを判定し、前記動作条件を満たした場合、前記携帯端末に前記閾値の変更の提案を通知する、処理をコンピュータが実行する。
【0020】
請求項7に記載の情報処理方法によれば、BLE無線通信における信号の強度が所定の閾値以上である場合、UWB無線通信による携帯端末との距離の測距を開始し、UWB無線通信による測距結果が所定の動作条件を満たした場合、当該閾値を変更する旨を携帯端末に通知する。つまり、当該情報処理方法によれば、BLE無線通信による測距の結果に応じてUWB無線通信による測距を行う場合において、余計なUWB無線通信による測距の実行を抑制できる。
【0021】
請求項8に記載の情報処理プログラムは、BLE無線通信を用いて自装置と携帯端末との通信を行い、前記BLE無線通信に係る信号の強度が所定の閾値以上である場合、UWB無線通信を用いて前記自装置と前記携帯端末との測距を開始し、前記UWB無線通信による測距結果が所定の動作条件を満たしたか否かを判定し、前記動作条件を満たした場合、前記携帯端末に前記閾値の変更の提案を通知する、処理をコンピュータに実行させる。
【0022】
請求項8に記載の情報処理プログラムが実行されるコンピュータは、BLE無線通信における信号の強度が所定の閾値以上である場合、UWB無線通信による携帯端末との距離の測距を開始し、UWB無線通信による測距結果が所定の動作条件を満たした場合、当該閾値を変更する旨を携帯端末に通知する。つまり、当該コンピュータによれば、BLE無線通信による測距の結果に応じてUWB無線通信による測距を行う場合において、余計なUWB無線通信による測距の実行を抑制できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、BLE無線通信による測距の結果に応じてUWB無線通信による測距を行う場合において、余計なUWB無線通信による測距の実行を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態に係る制御システムの概略構成を示す図である。
図2】本実施形態に係るBLE無線通信における通信可能な範囲の一例を示す概略図である。
図3】本実施形態に係る変更前の強度閾値の範囲の一例を示す概略図である。
図4】本実施形態に係る変更後の強度閾値の範囲の一例を示す概略図である。
図5】本実施形態に係る制御システムにおいて実行される処理の流れを示すシーケンス図である。
図6】本実施形態に係る車両のハードウェア構成を示すブロック図である。
図7】本実施形態に係る制御ECUの機能構成を示すブロック図である。
図8】本実施形態に係る制御ECUにおいて実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の情報処理装置としての制御ECU(Electronic Control Unit)を含む制御システムについて説明する。制御ECUは、BLE(Bluetooth Low Energy)無線通信、及びUWB(Ultra Wide Band)無線通信を用いて、車両に係る指示を送信する携帯端末の探索の制御を行う装置とし機能する。
【0026】
(制御システム)
図1に示されるように、本実施形態の制御システム10は、車両12と、携帯端末30と、を含んで構成されている。車両12は、情報処理装置としての制御ECU20と、車両12に搭載されている機器を制御する装置である複数のECU22と、を含んでいる。制御ECU20、及び携帯端末30は、BLE無線通信、及びUWB無線通信によって相互に接続可能である。
【0027】
制御ECU20は、各ECU22から送信されたCAN(Controller Area Network)プロトコルに基づく通信情報を取得する機能を有している。本実施形態のECU22としては、後述するボデーECUが例示される。制御ECU20及び各ECU22は、外部バス20Hを介して、相互に接続されている。
【0028】
また、制御ECU20は、BLE無線通信、及びUWB無線通信を用いて、携帯端末30と通信を行う。制御ECU20は、BLE無線通信における信号の強度を用いて、携帯端末30との距離の測距を行い、当該信号の強度が、所定の閾値以上である(携帯端末30が所定の距離の範囲内に存在する)場合、UWB無線通信を行う。制御ECU20は、UWB無線通信による信号の伝搬時間を用いて、携帯端末30との距離の測距を行う(TOA:Time Of Arrival)。ここで、制御ECU20は、UWB無線通信による測距結果が所定の動作条件を満たした場合、BLE無線通信に係る信号の強度の閾値の変更の提案に関する通知を携帯端末30に送信する。なお、以下では、BLE無線通信に係る信号の強度の閾値を「強度閾値」という。
【0029】
携帯端末30は、車両12の所有者が携帯可能なスマートフォン等の端末である。携帯端末30には、車両12に係るデジタルキーが予め記憶されており、携帯端末30は、デジタルキーを用いて遠隔操作によって車両12におけるドアのロック、及びアンロック等の操作を可能とする。携帯端末30は、車両12から強度閾値の変更に係る通知を受信すると、当該通知をモニタに表示する。携帯端末30は、ユーザが入力した強度閾値の変更後の値(以下、「変更値」という。)を制御ECU20に送信する。なお、本実施形態では、車両12と通信する端末は、ユーザが携帯する携帯端末30である形態について説明する。しかし、これに限定されない。例えば、ユーザが携帯可能であれば、タブレット、及びカーナビゲーション装置等の端末であってもよい。
【0030】
一例として図2に示すように、BLE無線通信が可能な範囲40に携帯端末30が含まれる場合、BLE無線通信による測距が行われる。また、一例として図3に示すように、携帯端末30を把持したユーザが車両12近付くことによって強度閾値を示す範囲41に携帯端末30が含まれる状態となった場合、UWB無線通信による測距が開始される。
【0031】
ここで、例えば、車両12が住宅等の建物に隣接する駐車場に駐車されている場合、ユーザが車両12に乗車する意図がなくとも車両12に近づき、ユーザが所持している携帯端末30が範囲40及び範囲41に含まれる場合がある。
【0032】
そこで、制御ECU20による通知に応じてユーザが変更値を制御ECU20に送信して強度閾値を変更することによって、一例として図4に示すように、携帯端末30が強度閾値を示す範囲41の範囲外となる。すなわち、UWB無線通信による測距が行われなくなる。
【0033】
一例として示す図5は、制御ECU20及び携帯端末30が協働することによって実行される処理の一例を示すシーケンス図である。
【0034】
図5に示すように、制御ECU20及び携帯端末30は、BLE無線通信を行う(ステップS101)。
【0035】
制御ECU20は、BLE無線通信における信号の強度が、強度閾値以上であるか否かを判定する(ステップS102)。信号の強度が、強度閾値以上である場合(ステップS102:Yes)、制御ECU20は、ステップS103に移行する。一方、信号の強度が、強度閾値以上ではない(BLE無線通信における信号の強度が、強度閾値未満である)場合(ステップS102:No)、制御ECU20は、信号の強度が、強度閾値以上になるまで待機する。
【0036】
制御ECU20及び携帯端末30は、BLE無線通信と共に、UWB無線通信を行う(ステップS103)。
【0037】
制御ECU20は、UWB無線通信における所定の動作条件を満たしたか否かを判定する(ステップS104)。所定の動作条件を満たした場合(ステップS104:Yes)、制御ECU20は、ステップS105に移行する。一方、所定の動作条件を満たしていない場合(ステップS104:No)、制御ECU20は、BLE無線通信、及びUWB無線通信を継続する。
【0038】
制御ECU20は、強度閾値の変更の提案を携帯端末30に通知する(ステップS105)。
【0039】
携帯端末30は、通知を受信した後、ユーザが入力した変更値を制御ECU20に送信する(ステップS106)。
【0040】
制御ECU20は、変更値を携帯端末30から受け付け(ステップS107)、受け付けた変更値を強度閾値として設定する(ステップS108)。
【0041】
(車両)
図6に示されるように、本実施形態に係る車両12は、制御ECU20と、複数のECU22と、複数の車載機器24と、を含んで構成されている。
【0042】
制御ECU20は、CPU(Central Processing Unit)20A、ROM(Read Only Memory)20B、RAM(Random Access Memory)20C、車内通信I/F(Interface)20D、BLE通信部20E、及びUWB通信部20Fを含んで構成されている。CPU20A、ROM20B、RAM20C、車内通信I/F20D、BLE通信部20E、及びUWB通信部20Fは、内部バス20Gを介して相互に通信可能に接続されている。
【0043】
CPU20Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU20Aは、ROM20Bからプログラムを読み出し、RAM20Cを作業領域としてプログラムを実行する。
【0044】
ROM20Bは、各種プログラム及び各種データを記憶している。本実施形態のROM20Bには、携帯端末30の探索を制御する処理を実行する制御プログラム100が記憶されている。RAM20Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。
【0045】
車内通信I/F20Dは、各ECU22と接続するためのインタフェースである。当該インタフェースは、CANプロトコルによる通信規格が用いられる。車内通信I/F20Dは、外部バス20Hに対して接続されている。
【0046】
BLE通信部20Eは、BLEアンテナ24Aが接続されている。BLE通信部20Eは、BLEアンテナ24Aを介して、携帯端末30等の機器と通信するための無線通信モジュールである。BLEアンテナ24Aは、例えば、Bluetooth周波数帯(2.4GHz)の無線通信を行う通信機器であって、携帯端末30に要求信号を送信し、携帯端末30から応答信号を受信する。
【0047】
UWB通信部20Fは、UWBアンテナ24Bが接続されている。UWB通信部20Fは、UWBアンテナ24Bを介して、携帯端末30等の機器と通信するための無線通信モジュールである。UWBアンテナ24Bは、例えば、超広帯域(例えば3.1GHzから10.6GHz)のパルス状の電波信号を用いて無線通信を行う通信機器であって、携帯端末30に要求信号を送信し、携帯端末30から応答信号を受信する。
【0048】
ECU22は、ボデーECU22Aを少なくとも含む。ボデーECU22Aは、車両12のボデー各部を制御する。ボデーECU22Aには、車載機器24を構成するロッキングアクチュエータ24Cが接続されている。ボデーECU22Aは、車両12のドアのロック、及びアンロックの指示に応じて、車両12のドアをロック、及びアンロックを実行させる。ロッキングアクチュエータ24Cは、指示に応じて、ドアのロック、及びアンロックを行う。ここで、本実施形態に係るボデーECU22Aは、ユーザによって車両12のドアを開扉する操作が行われた場合、ドアが操作された旨を制御ECU20に通知する。
【0049】
図7に示されるように、本実施形態の制御ECU20では、CPU20Aが制御プログラム100を実行することで、BLE測距部200、UWB測距部210、記憶部220、判定部230、通知部240、受付部250、及び設定部260として機能する。
【0050】
BLE測距部200は、BLE無線通信における信号の強度を用いて、携帯端末30との距離を測距する。具体的には、BLE測距部200は、BLE無線通信において、携帯端末30から受信した信号の強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)に応じて、携帯端末30との距離を測距する。
【0051】
UWB測距部210は、BLE無線通信によって受信した信号の強度が、強度閾値以上である場合、携帯端末30との通信を行い、UWB無線通信によって携帯端末30との測距を開始する。ここで、UWB測距部210は、UWB無線通信による測距を開始した後、BLE無線通信における信号の強度が、強度閾値未満となった場合、UWB無線通信による測距を停止する。
【0052】
記憶部220は、UWB測距部210による測距を停止した回数(以下、「停止回数」という。)を計数し、停止回数を記憶する。また、記憶部220は、UWB測距部210による測距の継続時間を測定し、継続時間を記憶する。なお、本実施形態では、UWB測距部210による測距を停止した頻度として、車両12が操作される、又は強度閾値が変更されるまでに測距を停止した停止回数を計数する形態について説明する。しかし、これに限定されない。測距を停止した総数を計数してもよいし、所定の期間内に測距を停止した回数を計数してもよい。
【0053】
判定部230は、UWB無線通信における所定の動作条件を満たしたか否かを判定する。ここで、動作条件とは、UWB測距部210による測距を停止した停止回数が、所定の回数以上である場合、及びUWB測距部210による測距の継続時間が、所定の時間以上である場合である。
【0054】
また、判定部230は、ボデーECU22Aから車両12のドアが操作された旨の通知が送信されたか否かの判定を行う。
【0055】
通知部240は、UWB無線通信における所定の動作条件を満たした場合、強度閾値の変更の提案を携帯端末30に通知する。具体的には、通知部240は、ボデーECU22Aから通知が送信されていない場合であって、UWB測距部210による測距を停止した停止回数が、所定の回数以上である場合、又は、通知部240は、UWB測距部210による測距の継続時間が、所定の時間以上である場合、携帯端末30に通知する。なお、本実施形態では、停止回数が所定の回数以上である場合、又は継続時間が所定の時間以上である場合、通知を行う形態について説明した。しかし、これに限定されない。停止回数が所定の回数以上である場合、かつ継続時間が所定の時間以上である場合、通知を行ってもよい。
【0056】
受付部250は、携帯端末30から変更値を受け付ける。具体的には、受付部250は、強度閾値の変更の提案を携帯端末30に通知した後、強度閾値を変更するための変更値を受け付ける。
【0057】
設定部260は、受け付けた変更値を強度閾値として設定する。携帯端末30から受け付けた変更値を強度閾値に設定することによって、UWB無線通信による測距の実行が抑制される。
【0058】
(処理の流れ)
次に、図8を参照して、本実施形態に係る制御ECU20の作用について説明する。図8は、本実施形態に係る制御処理のフローの一例を示すフローチャートである。CPU20AがROM20Bから制御プログラム100を読み出し、実行することによって、図8に示す制御処理が実行される。図8に示す制御処理は、例えば、制御ECU20が、携帯端末30を検出した場合、実行される。
【0059】
ステップS201において、CPU20Aは、携帯端末30とのBLE無線通信を実行する。なお、以下では、CPU20Aは、BLE無線通信を継続して実行する。
【0060】
ステップS202において、CPU20Aは、BLE無線通信における信号の強度を用いて、携帯端末30との距離を測距する。
【0061】
ステップS203において、CPU20Aは、BLE無線通信における信号の強度が強度閾値以上であるか否かの判定を行う。信号の強度が強度閾値以上である場合(ステップS203:YES)、CPU20Aは、ステップS204に移行する。一方、信号の強度が強度閾値以上ではない(信号の強度が強度閾値未満である)場合(ステップS203:NO)、CPU10Aは、ステップS202に移行して、BLE無線通信による測距を継続する。
【0062】
ステップS204において、CPU20Aは、携帯端末30とのUWB無線通信を実行する。
【0063】
ステップS205において、CPU20Aは、UWB無線通信における信号の伝搬時間を用いて、携帯端末30との距離を測距する。ここで、CPU20Aは、測距の継続時間を測定して継続時間を記憶する。
【0064】
ステップS206において、CPU20Aは、BLE無線通信における信号の強度を用いて、携帯端末30との距離を測距する。
【0065】
ステップS207において、CPU20Aは、BLE無線通信における信号の強度が強度閾値以上であるか否かの判定を行う。信号の強度が強度閾値以上である場合(ステップS207:YES)、CPU20Aは、ステップS209に移行する。一方、信号の強度が強度閾値以上ではない(信号の強度が強度閾値未満である)場合(ステップS207:NO)、CPU10Aは、ステップS208に移行する。
【0066】
ステップS208において、CPU20Aは、携帯端末30とのUWB無線通信を切断して、UWB無線通信による測距を停止する。ここで、CPU20Aは、継続時間に0を設定し、停止回数に1を加算する。
【0067】
ステップS209において、CPU20Aは、ユーザによる車両12の操作があったか否かの判定を行う。ユーザによる車両12の操作があった場合(ステップS209:YES)、CPU20Aは、ステップS215に移行する。一方、ユーザによる車両12の操作がない場合(ステップS209:NO)、CPU10Aは、ステップS210に移行する。
【0068】
ステップS210において、CPU20Aは、UWB無線通信による測距の継続時間が所定の時間以上であるか否かの判定を行う。継続時間が所定の時間以上である場合(ステップS210:YES)、CPU20Aは、ステップS212に移行する。一方、継続時間が所定の時間以上ではない(継続時間が所定の時間未満である)場合(ステップS210:NO)、CPU10Aは、ステップS211に移行する。
【0069】
ステップS211において、CPU20Aは、UWB無線通信による測距の停止回数が所定の回数以上であるか否かの判定を行う。停止回数が所定の回数以上である場合(ステップS211:YES)、CPU20Aは、ステップS212に移行する。一方、停止回数が所定の回数以上ではない(停止回数が所定の回数未満である)場合(ステップS211:NO)、CPU10Aは、ステップS205に移行して、UWB無線通信による測距を継続する。
【0070】
ステップS212において、CPU20Aは、携帯端末30に強度閾値の変更の提案を通知する。
【0071】
ステップS213において、CPU20Aは、携帯端末30から変更値を受け付ける。
【0072】
ステップS214において、CPU20Aは、受け付けた変更値を強度閾値として設定する。
【0073】
ステップS215において、CPU20Aは、継続時間、及び停止回数を初期化する。
【0074】
ステップS216において、CPU20Aは、処理を終了するか否かの判定を行う。処理を終了する場合(ステップS216:YES)、CPU20Aは、処理を終了する。一方、処理を終了しない場合(ステップS216:NO)、CPU20Aは、ステップS201に移行して、携帯端末30とのBLE無線通信を実行する。
【0075】
(実施形態のまとめ)
本実施形態の制御ECU20は、BLE無線通信における信号の強度が所定の閾値以上である場合、UWB無線通信による携帯端末との距離の測距を開始し、UWB無線通信による測距結果が所定の動作条件を満たした場合、当該閾値の変更を携帯端末に通知する。
【0076】
以上、本実施形態によれば、BLE無線通信による測距の結果に応じてUWB無線通信による測距を行う場合において、余計なUWB無線通信による測距の実行を抑制できる。
【0077】
[備考]
なお、上記実施形態でCPU20Aがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した各種処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、上述した処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0078】
また、上記実施形態において、各プログラムはコンピュータが読み取り可能な非一時的記録媒体に予め記憶(インストール)されている態様で説明した。例えば、CPU20Aにおける制御プログラム100はROM20Bに予め記憶されている。しかしこれに限らず、各プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0079】
20 制御ECU(情報処理装置)
200 BLE測距部(測距部)
210 UWB測距部(測距部)
230 判定部
240 通知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8