(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-16
(45)【発行日】2025-06-24
(54)【発明の名称】荷受ステージおよび揚重システム
(51)【国際特許分類】
E04G 21/16 20060101AFI20250617BHJP
【FI】
E04G21/16
(21)【出願番号】P 2021215093
(22)【出願日】2021-12-28
【審査請求日】2024-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391062377
【氏名又は名称】綜建産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】上田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智弥
(72)【発明者】
【氏名】清水 達広
(72)【発明者】
【氏名】岩瀧 恭介
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-233627(JP,A)
【文献】特許第3090172(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/14-21/22
E04G 3/00- 3/34
B66B 9/187
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の床開口部に設けられた荷受ステージであって、
前記床開口部の互いに対向する2つの辺縁同士の間に配置された複数の横架材と、
前記横架材
上に支持されて前記床開口部を塞ぐ平板状のステージ本体と、
前記横架材の両端に設けられて前記床開口部の辺縁に係止可能
な係止治具と、を備え
、
前記係止治具は、前記横架材が接合される係止治具本体と、
前記係止治具本体に回転可能に設けられて、回転することにより前記係止治具本体の外側に突出して前記床開口部の辺縁の床面に係止した突出状態と前記係止治具本体に収納された収納状態とを切り替え可能な係止部と、
前記係止部を突出状態または収納状態で前記係止治具本体に固定する固定具と、を備え、
前記横架材は、前記係止治具の下端側に挿入されて前記係止治具にボルト固定された鋼製の山留主材または仮設材用鋼管であり、
前記ステージ本体は、所定間隔おきに配置された複数の角形鋼管と、前記角形鋼管の上に所定間隔おきに配置された複数の端太角材と、前記端太角材の上に敷設された木製足場板と、を備え、
前記木製足場板の上面は、前記床開口部の辺縁の床面と略面一であることを特徴とする荷受ステージ。
【請求項2】
請求項
1に記載の荷受ステージを備える揚重システムであって、
前記構造物は、複数階を有する建物であり、
前記床開口部は、前記建物の各階に上下方向に連続して形成され、
前記建物の前記床開口部の直上の躯体に設けられた揚重装置をさらに備えることを特徴とする揚重システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床開口部に設けられる荷受ステージを構成する係止治具、この係止治具を用いた荷受ステージ、および、この荷受ステージを用いた揚重システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エレベータシャフトや立体駐車場などの上下に連続する床開口に仮設の荷取りステージを設けることが提案されている(特許文献1参照)。
特許文献1の荷取りステージは、開口より小さくなるように形成された本体と、本体に伸縮可能に取り付けられた2組のスライド手段とを備える。このスライド手段は、スライド手段が伸びた状態では荷取りステージが各階の開口の周縁にある建築物の部分に支持されるように形成されている。
特許文献2の仮設構造体は、縦穴貫通部内に設けられたフレームと、フレームを建物の躯体に支持させる支持部と、フレーム内に設けられた荷揚機構と、フレームと縦穴貫通部の外周部との間に設けられた足場部とを備える。支持部は、フレームの高さ方向の中間部に設けられたフレーム側アーム受け部材と、フレーム側アーム受け部材の先端部に設けられた鉛直方向に延びる長尺のガイドレールと、ガイドレールに設置されて向かい合う縦穴貫通部の外周部に直交する面内において回転可能なアームとから構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-159149号公報
【文献】特開2010-270545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、汎用品を用いて低コストで製作可能な、荷受ステージおよび揚重システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、構造物の床開口部に設けられた荷受ステージとして、横架材が接合される係止治具本体と、係止治具本体に回転可能に設けられて床開口部の辺縁に係止可能な係止部と、を備える係止治具を開発し、この係止治具、横架材、ステージ本体を含んで荷受ステージを構成することで、床開口部の大きさや形状に合わせた荷受ステージを低コストで製作できる点に着眼し、本発明に至った。
第1の発明の係止治具(例えば、後述の係止治具13)は、床開口部(例えば、後述の床開口部4)に設けられる荷受ステージを構成する係止治具(例えば、後述の荷受ステージ10)であって、床開口部の互いに対向する2つの辺縁同士の間に配置される横架材(例えば、後述の横架材11)が接合される係止治具本体(例えば、後述の係止治具本体20)と、前記係止治具本体に回転可能に設けられて外側に突出して前記床開口部の辺縁に係止した突出状態と前記係止治具本体に収納された収納状態とを切り替え可能な係止部(例えば、後述の係止部30)と、前記係止部を突出状態または収納状態で前記係止治具本体に固定する固定具(例えば、後述の固定具40)と、を備えることを特徴とする。
【0006】
第2の発明の荷受ステージ(例えば、後述の荷受ステージ10)は、構造物(例えば、後述の建物2)の床開口部(例えば、後述の床開口部4)に設けられた荷受ステージであって、前記床開口部の互いに対向する2つの辺縁同士の間に配置された複数の横架材(例えば、後述の横架材11)と、前記横架材に支持されて前記床開口部を塞ぐ平板状のステージ本体(例えば、後述のステージ本体12)と、前記横架材の両端に設けられて前記床開口部の辺縁に係止可能な第1の発明の係止治具(例えば、後述の係止治具13)と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、荷受ステージの係止部を床開口部の辺縁に係止することで、床開口部に容易に荷受ステージを設置できる。また、荷受ステージの係止部を収納することで、床開口部を通して荷受ステージを容易に揚重できる。
また、係止治具のみを特別に製作し、横架材やステージ本体に汎用品を用いることで、低コストで荷受ステージを製作できる。
また、横架材の長さを適宜変更することで、床開口部の大きさや形状に合わせて、荷受ステージの大きさを容易に変更できる。
また、横架材およびこの横架材の両端に設けた係止治具の数を適宜増やすことで、荷受ステージに積載する資材の重量に容易に対応できる。
【0008】
第3の発明の荷受ステージは、前記横架材は、鋼製の山留主材または仮設材用鋼管であり、前記ステージ本体は、所定間隔おきに配置された複数の角形鋼管(例えば、後述の角形鋼管50)と、前記角形鋼管の上に所定間隔おきに配置された複数の端太角材(例えば、後述の端太角材51)と、前記端太角材の上に敷設された木製足場板(例えば、後述の木製足場板52)と、を備えることを特徴とする。
具体的には、山留主材は、断面がH形状の鋼材である。仮設材用鋼管は、JIS G3444(一般構造用炭素綱鋼管)およびJIS G3466(一般構造用角形鋼管)の規格品である。
【0009】
この発明によれば、横架材として鋼製の山留主材または仮設材用鋼管を利用し、ステージ本体を角形鋼管、端太角材、木製足場板を組み合わせて構築したので、汎用品を用いて低コストで荷受ステージを製作できる。
【0010】
第4の発明の揚重システムは、上述の荷受ステージを備える揚重システム(例えば、後述の揚重システム1)であって、前記構造物は、複数階を有する建物であり、前記床開口部は、前記建物の各階に上下方向に連続して形成され、前記建物の前記床開口部の直上の躯体(例えば、後述の床躯体5)に設けられた揚重装置(例えば、後述の揚重装置6)をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、建物の床開口部の直上の躯体に揚重装置を設けたので、この揚重装置で荷受ステージを揚重して上下に移動できる。また、床開口部に仮設エレベータを設置しなくても、揚重装置により床開口部を通して資材を揚重できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、汎用品を用いて低コストで製作可能な、荷受ステージおよび揚重システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る揚重システムが設けられた建物の縦断面図である。
【
図2】揚重システムを構成する荷受ステージの側面図である。
【
図4】荷受ステージの係止治具の正面図およびI-I断面図である。
【
図5】荷受ステージの係止治具のII-II断面図である。
【
図6】荷受ステージの係止治具の係止部の動作を示す図である。
【
図7】係止治具の係止部の収納状態を示す縦断面図である。
【
図8】揚重システムによる荷受ステージの昇降状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、構造物の床開口部に設ける荷受ステージとして、床開口部に横架材を設け、この横架材の両端に係止治具を設けるとともに、横架材に支持させてステージ本体を設けた。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る揚重システム1が設けられた建物2の縦断面図である。
揚重システム1は、複数階を有する構造物としての建物2に設けられる。建物2の各階の床3には、エレベータシャフトとして鉛直方向に連続する矩形状の床開口部4が設けられている。
揚重システム1は、所定階の床開口部4に設けられた荷受ステージ10と、建物2の床開口部4の直上の最上階の床躯体5に設けられた揚重装置6と、を備える。揚重装置6は、フック7に連結されたワイヤを巻き上げるまたは巻き出すことにより、荷受ステージ10や資材を揚重するものである。この揚重装置6としては、電動チェーンブロック、レバーブロック(登録商標)、電動ホイスト、ベビーホイストなどが挙げられる。
【0015】
図2は、荷受ステージ10の側面図である。
図3は、荷受ステージ10の平面図である。
荷受ステージ10は、矩形状の床開口部4の互いに対向する2つの辺縁同士の間に配置された横架材11と、横架材11に支持されて床開口部4を塞ぐ平板状のステージ本体12と、横架材11の両端に設けられて床開口部4の辺縁に係止可能な係止治具13と、を備える。
横架材11は、鋼製の山留主材であり、所定間隔おきに複数設けられている。なお、横架材11としては、鋼製の山留主材に限らず、仮設材用鋼管としてもよい。
ステージ本体12は、横架材11の上に所定間隔おきに設けられた複数の角形鋼管50と、角形鋼管50の上に所定間隔おきに設けられた複数の端太角材51と、端太角材51の上に敷設された木製足場板52と、を備える。角形鋼管50は、横架材11に直交する方向に延びている。端太角材51は、角形鋼管50に直交する方向つまり横架材11に略平行に延びている。
【0016】
図4(a)は、係止治具13の正面図であり、
図4(b)は、
図4(a)の係止治具13のI-I断面図である。
図5は、
図4(a)の係止治具13のII-II断面図である。
係止治具13は、横架材11の端部に接合される係止治具本体20と、係止治具本体20に回転軸Rで回転可能に設けられた係止部30と、係止部30を所定の姿勢で係止治具本体20に固定する固定具40と、を備える。
係止治具本体20のうち回転軸Rの上方には、貫通孔21が形成されている。また、係止治具本体の上端部には、吊りピース22が設けられている。係止治具本体20の下端側には、横架材11が挿入されてボルト23で固定されている。
【0017】
係止部30は、
図6に示すように、回転軸Rで回転することにより、係止治具本体20の外側に突出して床開口部4の辺縁に係止した突出状態(
図4(b)に示す)、係止治具本体20に収納された収納状態(
図7に示す)と、を切り替え可能となっている。この係止部30の回転軸Rの周囲の2箇所には、貫通孔31、32が形成されている。
係止部30の先端には、建物2の床面上に当接するプレート33が設けられており、このプレート33には、貫通孔34が形成されている。建物2の床3にあと施工でアンカーボルト60を打設し、このアンカーボルト60を貫通孔34に挿通してナット61で締め付けることで、係止治具13が建物2の床3に固定される(
図2、
図3参照)。
【0018】
固定具40は、ボルト41およびナット42で構成される。ボルト41を係止治具本体20の貫通孔21および係止部30の貫通孔31に挿通してナット42を締め付けることにより、係止部30が突出状態で固定される(
図4(b)参照)。一方、ボルト41を係止治具本体20の貫通孔21および係止部30の貫通孔32に挿通してナット42を締め付けることにより、係止部30が収納状態で固定される(
図7参照)。
【0019】
以上の揚重システム1では、以下のようにして荷受ステージ10を昇降させる。すなわち、
図8に示すように、揚重装置6のフック7と荷受ステージ10の係止治具13の吊りピース22とを吊りワイヤ62で連結する。次に、アンカーボルト60に螺合したナット61を取り外し、その後、係止部30を回転させて収納状態とする。これにより、荷受ステージ10が床開口部4を通過することが可能となる。次に、揚重装置6を駆動して荷受ステージ10を所定階に昇降させる。その後、係止部30を回転させて突出状態として床開口部4に係止させ、この係止部30をあと施工のアンカーボルト60およびナット61で再度床3に固定する。
【0020】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)荷受ステージ10の係止部30を床開口部4の辺縁に係止することで、床開口部4に容易に荷受ステージ10を設置できる。また、荷受ステージ10の係止部30を収納することで、床開口部4を通して荷受ステージ10を容易に揚重できる。
また、係止治具13のみを特別に製作し、横架材11やステージ本体12に汎用品を用いることで、荷受ステージ10を低コストで製作できる。
また、横架材11の長さを適宜変更することで、床開口部4の大きさや形状に合わせて、荷受ステージ10の大きさを容易に変更できる。
また、横架材11およびこの横架材11の両端に設けた係止治具13の数を適宜増やすことで、荷受ステージ10に積載する資材の重量に容易に対応できる。
【0021】
(2)横架材として鋼製の山留主材を利用し、ステージ本体を角形鋼管50、端太角材51、木製足場板52を組み合わせて製作したので、汎用品を用いて低コストで荷受ステージ10を製作できる。
(3)建物2の床開口部4の直上の床躯体5に揚重装置6を設けたので、この揚重装置6で荷受ステージ10を揚重して上下に移動できる。また、床開口部4に仮設エレベータを設置しなくても、揚重装置6により床開口部4を通して資材を揚重できる。また、荷受ステージ10を床開口部4に設置した状態では、荷受ステージ10のステージ本体12上に資材を置くことができる。
【0022】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上述の実施形態では、建物2の床開口部4の直上の床躯体5に揚重装置6を設けて、この揚重装置6により床開口部4を通して資材を揚重したり荷受ステージ10を上下に移動させたりしたが、これに限らず、タワークレーンを用いて、床開口部4を通して資材を揚重したり荷受ステージ10を上下に移動させたりしてもよい。
【符号の説明】
【0023】
1…揚重システム 2…建物 3…床 4…床開口部 5…床躯体
6…揚重装置 7…フック
10…荷受ステージ 11…横架材 12…ステージ本体 13…係止治具
20…係止治具本体 21…貫通孔 22…吊りピース 23…ボルト
30…係止部 31…貫通孔 32…貫通孔 33…プレート 34…貫通孔
40…固定具 41…ボルト 42…ナット
50…角形鋼管 51…端太角材 52…木製足場板
60…アンカーボルト 61…ナット 62…吊りワイヤ