(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-16
(45)【発行日】2025-06-24
(54)【発明の名称】感圧センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 1/20 20060101AFI20250617BHJP
H01H 13/10 20060101ALI20250617BHJP
H01H 1/06 20060101ALI20250617BHJP
【FI】
G01L1/20 Z
H01H13/10
H01H1/06 A
(21)【出願番号】P 2021215401
(22)【出願日】2021-12-29
【審査請求日】2024-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000215833
【氏名又は名称】帝国通信工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094226
【氏名又は名称】高木 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100087066
【氏名又は名称】熊谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】藤巻 賢史
(72)【発明者】
【氏名】内藤 俊司
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-78357(JP,A)
【文献】特開2003-168340(JP,A)
【文献】特開2009-198483(JP,A)
【文献】特開平2-183133(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101995308(CN,A)
【文献】特開2021-50926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00-1/26、
5/00-5/28
H01H 13/10、1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧力に応じて抵抗値が変化する感圧センサにおいて、
基板上に、第1の接点パターン及び当該第1の接点パターンに接続する第1の配線パターンを形成し、
前記第1の接点パターン上に、圧力に応じて抵抗値が変化する第1の感圧抵抗体を形成し、
前記第1の感圧抵抗体上に、開口部を有する絶縁層と、当該開口部を塞ぐ導電層とを形成し、
前記導電層を含む前記絶縁層上に、圧力に応じて抵抗値が変化する第2の感圧抵抗体を形成し、
前記第2の感圧抵抗体上の前記第1の接点パターンに対向する位置に第2の接点パターンを形成し、
さらに前記第2の接点パターンに接続する第2の配線パターンを前記基板上に引き出してなることを特徴とする感圧センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の感圧センサであって、
前記導電層は、前記絶縁層の開口部の内部に充填され、且つ当該開口部からその周囲の絶縁層表面の少なくとも一部を覆うように形成されていることを特徴とする感圧センサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の感圧センサであって、
前記第2の感圧抵抗体は、前記導電層の上面及び側面を覆うように形成されていることを特徴とする感圧センサ。
【請求項4】
請求項1又は2又は3に記載の感圧センサであって、
前記第2の配線パターンは、前記第2の感圧抵抗体の上面もしくは側面、及び前記絶縁層の上面もしくは側面に接触して前記基板上に引き出されていることを特徴とする感圧センサ。
【請求項5】
請求項1乃至4の内の何れかに記載の感圧センサであって、
前記第1の接点パターンと前記第1の配線パターン、及び前記第1の感圧抵抗体、及び前記絶縁層、及び前記導電層、及び前記第2の感圧抵抗体、及び前記第2の接点パターンと前記第2の配線パターンは、前記基板上に印刷によって積層して形成されていることを特徴とする感圧センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押圧力に応じて抵抗値が変化する感圧センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、押圧力に応じて抵抗値が変化する感圧センサは、例えば特許文献1に示すように、下側電極を設けた下側回路基板と、上側電極を設けた上側回路基板とを、スペーサを介して積層し、その際スペーサに設けた開口部内において前記上側電極と下側電極とを対向させ、上側電極の背面側の上側回路基板を押圧してこれを下降させることで上側電極を下側電極に当接させ、当該当接力(荷重)の大きさ(当接面積)に応じて上側電極と下側電極間の抵抗値を変化させるように構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし従来の感圧センサは、上述のように、2枚の回路基板とスペーサとを用いて構成されるので部品点数が多くなり、また製品の厚み寸法が厚くなり、さらに2枚の回路基板とスペーサの組み立て時のずれによって下側電極に対してスペーサの開口部や上側電極の位置がずれてしまう虞があった。
【0005】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、部品点数の削減と厚みの薄型化が図れ、また各構成要素間に組み立てによるずれが生じる虞もない感圧センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、押圧力に応じて抵抗値が変化する感圧センサにおいて、基板上に、第1の接点パターン及び当該第1の接点パターンに接続する第1の配線パターンを形成し、前記第1の接点パターン上に、圧力に応じて抵抗値が変化する第1の感圧抵抗体を形成し、前記第1の感圧抵抗体上に、開口部を有する絶縁層と、当該開口部を塞ぐ導電層とを形成し、前記導電層を含む前記絶縁層上に、圧力に応じて抵抗値が変化する第2の感圧抵抗体を形成し、前記第2の感圧抵抗体上の前記第1の接点パターンに対向する位置に第2の接点パターンを形成し、さらに前記第2の接点パターンに接続する第2の配線パターンを前記基板上に引き出してなることを特徴としている。
本発明によれば、1枚の基板上に各種パターンを形成することで感圧センサを構成できるので、部品点数の削減と厚みの薄型化が図れ、また第1,第2の接点パターンや第1,第2の感圧抵抗体や導電層や絶縁層間に組み立てによるずれが生じる虞もない。
また従来のように第1の接点パターンと第2の接点パターン間にスペーサによる空間を設けないので、軽い力を印加するだけで抵抗値の変化が始まる。従って、軽い力で抵抗値の変化が始まって押圧力が大きくなるに伴ってさらに抵抗値が変化していく特性が要求される感圧センサとして用いて好適となる。
また第1,第2の感圧抵抗体の厚みは薄いために、第1の接点パターンは導電層と上下(真上真下)に対向している部分のみで導通し、且つ第2の接点パターンは導電層と上下(真上真下)に対向している部分のみで導通するので(抵抗値の変化が生じるので)、当該導電層やこれに対向する第1,第2の接点パターンの面積や形状を調整することで、容易且つ正確に抵抗値の調整(例えば導電層の面積を小さくすると抵抗値が大きくなる)を行うことができる。
またこの感圧センサの電気回路は、第1,第2の感圧抵抗体が直列に接続される構造となっているので、この感圧センサの抵抗値を高くすることができ、分解能の高い感圧センサとすることができる。
【0007】
また本発明は、上記特徴に加え、前記導電層は、前記絶縁層の開口部の内部に充填され、且つ当該開口部からその周囲の絶縁層表面の少なくとも一部を覆うように形成されていることを特徴としている。
本発明によれば、導電層を絶縁層の開口部の内部からその周囲にまで形成することで、開口部全体を確実に導電層によって塞ぐことができる。
【0008】
また本発明は、上記特徴に加え、前記第2の感圧抵抗体は、前記導電層の上面及び側面を覆うように形成されていることを特徴としている。
これによって、導電層の上面全体の真上に位置する第2の感圧抵抗体を電気回路の抵抗として作用させることができる。
【0009】
また本発明は、上記特徴に加え、前記第2の配線パターンは、前記第2の感圧抵抗体の上面もしくは側面、及び前記絶縁層の上面もしくは側面に接触して前記基板上に引き出されていることを特徴としている。
これによって第2の配線パターンを基板上に引き出すことができる。
【0010】
また本発明は、上記特徴に加え、前記第1の接点パターンと前記第1の配線パターン、及び前記第1の感圧抵抗体、及び前記絶縁層、及び前記導電層、及び前記第2の感圧抵抗体、及び前記第2の接点パターンと前記第2の配線パターンは、前記基板上に印刷によって積層して形成されていることを特徴としている。
これによって、1枚の基板上に各種パターンを容易且つ正確な位置に形成することができ、部品点数の削減と製造コストの低減化と厚みの薄型化とが図れる。また各種パターンの位置に組み立てによるずれが生じる虞もなくなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、部品点数の削減と厚みの薄型化が図れる。また各構成要素間に組み立てによるずれが生じる虞もなくなり、製品特性の安定した感圧センサを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図5】感圧センサ1の一具体例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる感圧センサ1の概略断面図(
図2のA-A概略断面図)、
図2は感圧センサ1の概略平面図である。これらの図に示すように、感圧センサ1は、基板10上に第1の接点パターン21及び当該第1の接点パターン21に接続する第1の配線パターン31を形成し、前記第1の接点パターン21の上に圧力に応じて抵抗値が変化する第1の感圧抵抗体(第1の感圧抵抗層、第1の感圧抵抗パターン)41を形成し、前記第1の感圧抵抗体41の上に第1の導電層81を形成し、前記第1の感圧抵抗体41の上に前記第1の導電層81の一部を露出させる開口部73を有する絶縁層71を形成し、前記開口部73を含む絶縁層71の上に第2の導電層85を形成し、前記第2の導電層85を含む前記絶縁層71の上に圧力に応じて抵抗値が変化する第2の感圧抵抗体(第2の感圧抵抗層、第2の感圧抵抗パターン)45を形成し、前記第2の感圧抵抗体45の上の前記第1の接点パターン21に対向する位置に第2の接点パターン51を形成し、さらに前記第2の接点パターン51に接続する第2の配線パターン61を前記基板10上に引き出して構成されている。なお以下の説明において、「上」とは基板10から第1の接点パターン21などを形成した面側を見る方向をいい、「下」とはその反対方向をいうものとするが、これは、感圧センサ1を使用する際の方向を限定する趣旨ではない。
【0014】
次に、上記感圧センサ1の構成を、その製造方法と共に説明する。
図3-1,
図3-2は、感圧センサ1の製造方法説明図である。まず、
図3-1(a)に示す基板10を用意する。基板10は可撓性を有する合成樹脂フィルムによって構成されており、この例ではポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いている。
【0015】
次に、
図3-1(a)に示すように、上記基板10上に第1の接点パターン21と第1の配線パターン31とを、導電ペースト(この例では銀ペースト)をスクリーン印刷することによって同時に形成する。第1の接点パターン21は、この例では円形(他の各種形状であっても良い)であり、その外周辺の一部に接続するように線状(他の各種形状であっても良い)の第1の配線パターン31が形成されている。
【0016】
次に、
図3-1(b)に示すように、上記第1の接点パターン21の上面と、これに接続する第1の配線パターン31の一部を覆うように、圧力に応じて抵抗値が変化する第1の感圧抵抗体41を、カーボンペーストをスクリーン印刷することによって形成する。第1の感圧抵抗体41は、この例では円形(他の各種形状であっても良い)であり、その外形(外径)寸法は上記第1の接点パターン21の外形(外径)寸法よりも大きく形成されている。従って、第1の接点パターン21は、その外周全てが第1の感圧抵抗体41によって覆われている。カーボンペーストは、硬化しても柔軟性を有する合成樹脂とカーボン粉と溶剤を混合した導電性塗料を用いて構成されている。
【0017】
次に、
図3-1(c)に示すように、前記第1の感圧抵抗体41の上に第1の導電層81を、銀ペーストをスクリーン印刷することによって形成する。第1の導電層81は、この例では円形(他の各種形状であっても良い)であり、第1の感圧抵抗体41の中央部分に形成される。第1の導電層81の外形(外径)寸法は、前記第1の接点パターン21や第1の感圧抵抗体41の外形(外径)寸法よりも小さく形成されている。
【0018】
次に、
図3-2(d)に示すように、前記第1の感圧抵抗体41の上に、前記第1の導電層81の少なくとも一部を露出させる開口部73を有する絶縁層71を、樹脂ペーストをスクリーン印刷することによって形成する。絶縁層71は、この例では、円形(他の各種形状であっても良い)であり、その中央には円形(他の各種形状であっても良い)の開口部73が設けられている。絶縁層71の外形(外径)寸法は、前記第1の接点パターン21や第1の感圧抵抗体41の外形(外径)寸法よりも大きく形成され、また開口部73の内周(内径)寸法は、前記第1の導電層81の外形(外径)寸法よりも小さく形成されている。従って、第1の感圧抵抗体41は、その外周全てが絶縁層71によって覆われ、また開口部73の内部全体に第1の導電層81が露出している。
【0019】
次に、
図3-2(e)に示すように、前記開口部73を含む絶縁層71の上に、銀ペーストをスクリーン印刷することによって第2の導電層85を形成する。第2の導電層85は、この例では円形(他の各種形状であっても良い)であり、絶縁層71の開口部73を覆うようにその中央部分に形成されている。第2の導電層85は、第1の導電層81と同一の外径寸法に形成されており、これによって前記絶縁層71の開口部73はその全体が第2の導電層85によって覆われている。このとき第2の導電層85は、絶縁層71の開口部73の内部に充填され、且つ当該開口部73からその周囲の絶縁層71表面の少なくとも一部を覆うように形成されている。なお第2の導電層85の外形(外径)形状は、第1の導電層81の外形(外径)形状と異なっていても良い。
【0020】
次に、
図3-2(f)に示すように、前記第2の導電層85を含む前記絶縁層71の上に、圧力に応じて抵抗値が変化する第2の感圧抵抗体45を、カーボンペーストをスクリーン印刷することによって形成する。第2の感圧抵抗体45は、前記第1の感圧抵抗体41と同様、この例では円形(他の各種形状であっても良い)であり、その外形(外径)寸法は前記第1の感圧抵抗体41と同一に形成されている。従って、前記第2の導電層85は、その上面及び側面全てが第2の感圧抵抗体45によって覆われている。カーボンペーストは、前記第1の感圧抵抗体41と同様、硬化しても柔軟性を有する合成樹脂とカーボン粉と溶剤を混合した導電性塗料を用いて構成されている。第2の感圧抵抗体41の厚みは、前記第1の感圧抵抗体41の厚みと同一に形成されている。なお第2の感圧抵抗体45の外形(外径)形状や厚みは、第1の感圧抵抗体41の外形(外径)形状や厚みと異なっていても良い。
【0021】
次に、
図2に示すように、前記第2の感圧抵抗体45の上面を含む上記基板10上に、第2の接点パターン51と第2の配線パターン61とを、銀ペーストをスクリーン印刷することによって同時に形成する。第2の接点パターン51は、この例では円形(他の各種形状であっても良い)であり、その外周辺の一部に接続するように線状(他の各種形状であっても良い)の第2の配線パターン61が形成されている。第2の接点パターン51は前記第1の接点パターン21に対向する位置に、第1の接点パターン21よりも小さい面積で形成されている。また第2の接点パターン51の外径寸法は、前記第2の導電層85の外径寸法よりも大きい面積で形成されている。第2の配線パターン61は、第2の感圧抵抗体45の上面から第2の感圧抵抗体45の側面に接触し、さらに絶縁層71の上面から絶縁層71の側面に接触して前記基板10上に引き出されるように形成されている。
【0022】
以上の製造方法によって感圧センサ1が完成する。なお上記製造手順はその一例であり、他の各種異なる製造手順を用いて製造しても良いことはいうまでもない。
【0023】
以上のように構成された感圧センサ1は、第1の感圧抵抗体41が、第1の接点パターン21と第1,第2の導電層81,85の間に介在し、且つ第2の感圧抵抗体45が、第1,第2の導電層81,85と第2の接点パターン51の間に介在することで、第1,第2の接点パターン21,51間に所定の抵抗値を生じさせている。なお第1の接点パターン21の少なくとも一部は、第1の導電層81の真下に位置していなければ互いに導通しないので、この実施形態に示すように、両者は真上真下に対向する位置に配置されている。同様に第2の接点パターン51の少なくとも一部は、第2の導電層85の真上に位置していなければ互いに導通しないので、この実施形態に示すように、両者は真上真下に対向する位置に配置されている。
【0024】
そして基板10を図示しない基台上に載置し、第2の接点パターン51をその上側から指またはキートップなどの押圧体によって押圧すると、柔軟性を有する第1,第2の感圧抵抗体41,45の両者が圧縮され、それらの厚みが薄くなって、第1,第2の感圧抵抗体41,45中のカーボン粉同士が強く接触することでカーボン粒子間の接触面積が増大し、これによって第1,第2の接点パターン21,51間の抵抗値が小さくなる。一方前記押圧を解除していけば、第1,第2の感圧抵抗体41,45の厚みがそれらの弾性復帰力によって元の厚みに戻ってゆき、抵抗値は大きくなっていく。つまり、前記押圧する力(押圧力)の大きさに応じて、第1,第2の接点パターン21,51間の抵抗値が異なり、これによって前記押圧力に応じた異なる出力が得られ、当該押圧力の大きさを検知することができる。
【0025】
このとき従来のように第1の接点パターン21と第2の接点パターン51間にスペーサによる空間を設けないので、軽い力を印加するだけで抵抗値の変化が始まる。従って、軽い力で抵抗値の変化が始まって押圧力が大きくなるに伴ってさらに抵抗値が変化していく特性が要求される感圧センサ1として用いて好適となる。
【0026】
また感圧センサ1は第1,第2の感圧抵抗体41,45が2層に重ねて形成され、且つ絶縁層71も積層されているので、これら第1,第2の感圧抵抗体41,45と絶縁層71がクッション代わりになり、この感圧センサ1を押下した際に、よりゴム状弾性を持たせることができる。これによって前記抵抗値の変化が押圧力の強さに対応して、よりリニアに変化するようになり、押圧力に応じた出力値の分解能を向上させることができる。
【0027】
図4は、第1,第2の接点パターン21,51間に電圧を印可した場合の電流経路を示した図である。同図に示すように、電流は、第1の配線パターン31⇔第1の接点パターン21⇔第1の感圧抵抗体41⇔第1の導電層81⇔第2の導電層85⇔第2の感圧抵抗体45⇔第2の接点パターン51⇔第2の配線パターン61の経路で流れる。
【0028】
このとき、第1感圧抵抗体41の厚みは薄いので、電圧が印加された第1の接点パターン21と第1の導電層81間において電流が流れるのは、第1の感圧抵抗体41全体中の第1の導電層81に垂直に対向している面の部分X1だけである。同様に、第2感圧抵抗体45の厚みは薄いので、電圧が印加された第2の導電層85と第2の接点パターン51間において電流が流れるのは、第2の感圧抵抗体45全体中の第2の導電層85に垂直に対向している面の部分X2だけである。即ち、第1,第2の配線パターン31,61間の抵抗値は、第1,第2の配線パターン31,61と第1,第2の接点パターン21,51と第1,第2の導電層81,85の抵抗値がゼロであると仮定して、第1の感圧抵抗体41の部分X1と、第2の感圧抵抗体45の部分X2のみによる抵抗値となる。
【0029】
即ち、第1,第2の接点パターン21,51間は、第1の感圧抵抗体41と第1の導電層81が上下に垂直に対向している部分X1と、第2の感圧抵抗体45と第2の導電層85が上下に垂直に対向している部分X2のみで導通するので(抵抗値の変化が生じるので)、当該第1,第2の導電層81,85(場合によっては第1,第2の感圧抵抗体41,45)の面積や形状を調整することで、容易且つ正確に抵抗値の調整(例えば第1,第2の導電層81,85の面積を小さくすると抵抗値が大きくなる)を行うことが可能になる。
【0030】
ところで、上記感圧センサ1を押圧していないときの抵抗値は、より大きい方がこれを押下したときの抵抗値の変化量が大きくなるので、押圧力に応じた出力値の分解能を向上する上で、より好ましい。そして上記感圧センサ1においては、第1の感圧抵抗体41と第2の感圧抵抗体45を直列に接続する構成なので、その分第1,第2の感圧抵抗体41,45の合計の厚みが厚くなり、その分第1,第2の感圧抵抗体41,45を押圧していないときの抵抗値を大きくすることができる。この点からも分解能の高い感圧センサ1とすることができる。
【0031】
もちろん上記感圧センサ1において、第1,第2の感圧抵抗体41,45の厚み自体を第1,第2の接点パターン21,51などの厚みよりも厚く形成しておくことで抵抗値を高くすることも、より好ましいが、本発明はこれに限られず、第1,第2の接点パターン21,51などの厚みと同一又は薄い厚みとしても良い。
【0032】
第1,第2の導電層81,85は、この感圧センサ1のように、絶縁層71の開口部73内全体に確実に塞ぐように(印刷ずれなどを考慮して)、その外形(外径)寸法を開口部73の内径寸法よりも大きく形成しておくことが望ましい。ここで絶縁層71の上に後から形成する第2の導電層85は、絶縁層71の開口部73の内部に充填され且つ当該開口部73からその周囲の絶縁層71表面の少なくとも一部を覆うように形成されていることが望ましい。
【0033】
図5は、感圧センサ1の一具体例を示す平面図である。同図に示すように、基板10は、センサ本体形成部11と、センサ本体形成部11の外周に接続されて帯状に延びる出力引出部13とを具備して構成されている。そしてセンサ本体形成部11には前記第1,第2の接点パターン21,51と第1,第2の感圧抵抗体41,45と絶縁層71と第1,第2の導電層81,85と前記第1,第2の接点パターン21,51にそれぞれ接続した第1,第2の配線パターン31,61の一部とが印刷形成され、出力引出部13には第1,第2の配線パターン31,61の残りの部分が印刷形成されてそれらの先端に出力端子パターン33,63が印刷形成されている。これによって、容易に第1,第2の接点パターン21,51間に電圧を印可し、出力を得ることができる。
【0034】
なお上記感圧センサ1では、第2の配線パターン61を、第2の感圧抵抗体45の上面及び側面(外周側面)と、絶縁層71の上面及び側面(外周側面)に接触させた後に基板10上に引き出しているが、例えば第2の接点パターン51の外周辺の一部と第2の感圧抵抗体45の外周辺の一部と絶縁層71の外周辺の一部とを一致させ、一致させた部分において第2の配線パターン61を接続することで、第2の配線パターン61を第2の感圧抵抗体45の側面と絶縁層71の側面のみに接触して(第2の感圧抵抗体45の上面と絶縁層71の上面に接触させないで)基板10上に引き出す構成とすることも出来る。また第2の感圧抵抗体45の外形を絶縁層71の外形よりも大きく(または一部大きく)して絶縁層71を覆う構成とすれば、第2の配線パターン61は絶縁層71に接触せずに第2の感圧抵抗体45の上面と側面(または側面)のみに接触して基板10上に引き出す構成とすることもできる。
【0035】
上記絶縁層71の開口部73においては、第1の感圧抵抗体41と第2の感圧抵抗体45の間に第1,第2の導電層81,85を配置したので、絶縁層71の開口部73の面積や形状に関わらず、第1の接点パターン21に対向する側の第1の導電層81の面積や形状と、第2の接点パターン51に対向する側の第2の導電層85の面積と形状とを自由に調整することで、これらの抵抗値を容易に調整することができる。
【0036】
また上記実施形態では導電層として第1,第2の導電層81,85の2つを設けたが、何れか一方の導電層81又は85のみで導電層を構成しても良い。但し、第1,第2の導電層81,85の両者を設けた方が、上述のように、第1の感圧抵抗体41との間の抵抗値と、第2の感圧抵抗体45との間の抵抗値を何れも容易に調整できるので、好適である。
【0037】
また上記実施形態では、第2の導電層85を絶縁層71の開口部73内全体に充填したが、第1,第2の導電層81,85間の導通が図れるのであれば、必ずしも開口部73内全体に充填させる必要はなく、一部のみに充填しても良い。
【0038】
以上説明したように、感圧センサ1は、基板10上に、第1の接点パターン21及び第1の接点パターン21に接続する第1の配線パターン31を形成し、前記第1の接点パターン21上に、圧力に応じて抵抗値が変化する第1の感圧抵抗体41を形成し、前記第1の感圧抵抗体41上に、開口部73を有する絶縁層71と当該開口部73を塞ぐ導電層81,85とを形成し、前記導電層81,85を含む前記絶縁層71上に、圧力に応じて抵抗値が変化する第2の感圧抵抗体45を形成し、前記第2の感圧抵抗体45上の前記第1の接点パターン21に対向する位置に第2の接点パターン51を形成し、さらに前記第2の接点パターン51に接続する第2の配線パターン61を前記基板10上に引き出して形成しているので、1枚の基板10上に各種パターンを形成することで感圧センサ1を構成できる。このため部品点数の削減と厚みの薄型化が図れ、また第1,第2の接点パターン21,51や第1,第2の感圧抵抗体41,45や導電層81,85や絶縁層71間に組み立てによるずれが生じる虞もない。
【0039】
また感圧センサ1は、導電層81,85を、絶縁層71の開口部73の内部に充填し、且つ当該開口部73からその周囲の絶縁層71表面の少なくとも一部を覆うように形成しているので、開口部73内全体を確実に導電層81,85によって塞ぐことができる。
【0040】
また前記第2の感圧抵抗体45は、導電層85の上面及び側面を覆うように形成されているので、導電層85の上面全体の真上(
図4のX2の部分)に位置する第2の感圧抵抗体45を電気回路の抵抗として作用させることができる。
【0041】
また感圧センサ1は、第1の接点パターン21と第1の配線パターン31、及び第1の感圧抵抗体41、及び絶縁層71、及び導電層81,85、及び第2の感圧抵抗体45、及び第2の接点パターン51と第2の配線パターン61を、基板10上に印刷によって積層することで形成しているので、1枚の基板10上に各種パターンを容易且つ正確な位置に形成することができ、部品点数の削減と製造コストの低減化と厚みの薄型化とが図れる。また各種パターンの位置に組み立てによるずれが生じる虞もなくなる。
【0042】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、上記基板10、第1の接点パターン21、第1の配線パターン31、第1の感圧抵抗体41、絶縁層71、開口部73、第1,第2の導電層81,85、第2の感圧抵抗体45、第2の接点パターン51、第2の配線パターン61の形状や配置位置に種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0043】
また上記例では、各種パターンの形成にスクリーン印刷を用いたが、他の各種印刷方法(例えばオフセット印刷、インクジェット印刷)、さらには印刷以外の各種パターン形成方法(例えばエッチング方法)を用いて形成しても良い。また上記実施形態では、基板10としてフレキシブル基板を用いたが、硬質の基板を用いても良い。また第2の接点パターン51の上に別途絶縁層や絶縁フィルムを設置し、その上から押圧体によって押圧するように構成してもよい。
【0044】
また、上記記載及び各図で示した実施形態は、その目的及び構成等に矛盾がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。また、上記記載及び各図の記載内容は、その一部であっても、それぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は上記記載及び各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0045】
10 基板
21 第1の接点パターン
31 第1の配線パターン
41 第1の感圧抵抗体
45 第2の感圧抵抗体
51 第2の接点パターン
61 第2の配線パターン
71 絶縁層
73 開口部
81 第1の導電層(導電層)
85 第2の導電層(導電層)