(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-16
(45)【発行日】2025-06-24
(54)【発明の名称】手動変速機
(51)【国際特許分類】
F16D 23/12 20060101AFI20250617BHJP
【FI】
F16D23/12 L
(21)【出願番号】P 2021128499
(22)【出願日】2021-08-04
【審査請求日】2024-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【氏名又は名称】中川 裕人
(72)【発明者】
【氏名】井野邉 修一
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-165333(JP,U)
【文献】特開昭59-184022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源からの駆動力が伝達されることにより回転されるインプットシャフトと、
シフトレバーの操作に応じて選択されるドリブンギヤを介して前記インプットシャフトと接続可能にされデファレンシャル機構を介して駆動力を駆動輪へ向けて伝達するアウトプットシャフトと、
前記インプットシャフトに対する前記駆動源からの駆動力の伝達状態を切り換えるクラッチ機構とを備え、
前記クラッチ機構には、
駆動力が前記インプットシャフトに伝達される締結位置と駆動力が前記インプットシャフトに伝達されない締結解除位置との間で回動可能にされクラッチペダルの操作に応じて回動されるレリーズフォークと、
前記シフトレバーがニュートラル位置に操作された状態において前記レリーズフォークの前記締結解除位置から前記締結位置への回動を規制する規制体とが設けられ
、
前記規制体が、
前記シフトレバーの操作によって回動されるカム部と、
前記レリーズフォークの回動を規制する規制位置と前記レリーズフォークの回動の規制を解除する規制解除位置との間で移動可能にされ前記カム部の動作に応じて移動される回動規制部と、
前記回動規制部を案内するガイド部とを有し、
前記回動規制部を前記規制解除位置から前記規制位置に向かう方向へ付勢するバネ部材が設けられ、
前記回動規制部に被作用部が形成され、
前記カム部に前記被作用部と摺動可能な作用部が形成され、
前記回動規制部が前記カム部に押圧されることにより前記規制位置から前記規制解除位置に移動される
手動変速機。
【請求項2】
前記レリーズフォークが前記クラッチペダルの操作に応じて押圧される力点部と回動中心である支点部と前記力点部より前記インプットシャフトに近づいて位置された作用点部とを有し、
前記規制体が前記支点部と前記力点部の間に位置された
請求項1に記載の手動変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に用いられる手動変速機についての技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される変速機として、車速やエンジンの回転速度に応じて変速比を自動的に切り替える自動変速機と、運転者の操作によって変速比を切り替える手動変速機とが知られている。一般に、自動変速機は自動クラッチ機構を有し、変速時におけるクラッチ機構の締結状態の切り換えが自動で行われる。一方、手動変速機においては、運転者がクラッチペダルを操作した状態においてクラッチ機構の締結状態の切り換えが行われ、運転者はクラッチペダルを操作した上で、シフトレバーを操作することによって複数の変速比の中から所望の変速比を選択して切り換える。手動変速機を搭載した車両として、例えば、特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、手動変速機を搭載した車両の運転時には、一般に、停車時にシフトレバーをニュートラル位置に操作した状態において、クラッチペダルの操作が行われないことが多い。このとき、クラッチ機構は締結状態のままにされているため、手動変速機のインプットシャフトにはエンジン等の駆動源からの駆動力が伝達され続けている。
【0005】
ところが、この状態から、発進に際して、例えば、シフトレバーが1速位置に操作された直後に再びクラッチが締結されると、駆動源からインプットシャフトに伝達される駆動力(トルク)が急激にアウトプットシャフトに伝達され、アウトプットシャフトに連結されたデファレンシャル機構から異音が発生するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、発進時におけるデファレンシャル機構における異音の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る手動変速機は、駆動源からの駆動力が伝達されることにより回転されるインプットシャフトと、シフトレバーの操作に応じて選択されるドリブンギヤを介して前記インプットシャフトと接続可能にされデファレンシャル機構を介して駆動力を駆動輪へ向けて伝達するアウトプットシャフトと、前記インプットシャフトに対する前記駆動源からの駆動力の伝達状態を切り換えるクラッチ機構とを備え、前記クラッチ機構には、駆動力が前記インプットシャフトに伝達される締結位置と駆動力が前記インプットシャフトに伝達されない締結解除位置との間で回動可能にされクラッチペダルの操作に応じて回動されるレリーズフォークと、前記シフトレバーがニュートラル位置に操作された状態において前記レリーズフォークの前記締結解除位置から前記締結位置への回動を規制する規制体とが設けられ、前記規制体が、前記シフトレバーの操作によって回動されるカム部と、前記レリーズフォークの回動を規制する規制位置と前記レリーズフォークの回動の規制を解除する規制解除位置との間で移動可能にされ前記カム部の動作に応じて移動される回動規制部と、前記回動規制部を案内するガイド部とを有し、前記回動規制部を前記規制解除位置から前記規制位置に向かう方向へ付勢するバネ部材が設けられ、前記回動規制部に被作用部が形成され、前記カム部に前記被作用部と摺動可能な作用部が形成され、前記回動規制部が前記カム部に押圧されることにより前記規制位置から前記規制解除位置に移動される
ものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シフトレバーがニュートラル位置に操作された状態において、クラッチペダルの操作に拘わらず駆動源からの駆動力がインプットシャフトに伝達されなくなり、停車時におけるインプットシャフトの回転が抑制されるため、発進時においてインプットシャフトとアウトプットシャフトが円滑に接続され、アウトプットシャフトに連結されたデファレンシャル機構における異音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図2乃至
図12と共に本発明手動変速機の実施の形態を示すものであり、本図は、手動変速機が設けられた車両の概略構成を示す図である。
【
図3】締結が解除された状態を示すクラッチ機構の断面図である。
【
図4】締結された状態を示すクラッチ機構の断面図である。
【
図7】
図5のVII-VIIに沿うカム部の断面図である。
【
図9】回動規制部が規制解除位置にある状態を示す側面図である。
【
図10】回動規制部が規制解除位置にある状態を示す断面図である。
【
図11】回動規制部が規制位置にある状態を示す側面図である。
【
図12】回動規制部が規制位置にある状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の手動変速機を実施するための形態について、添付図面を参照して説明する。
【0011】
<車両の概略構成>
まず、手動変速機が搭載された車両の概略構成について説明する(
図1参照)。
【0012】
車両100は駆動源101と手動変速機1とデファレンシャル機構102と駆動輪103、103とを備えている。
【0013】
駆動源101は、例えば、車両100を走行させるエンジンであり、燃料を燃焼させて出力軸であるクランクシャフト101aに機械的な駆動力(トルク)を発生させ、駆動輪103、103に作用する駆動力を発生する。なお、EV(Electric Vehicle:電気自動車)やHEV(Hybrid Electric Vehicle:ハイブリッド電気自動車)の場合は、エンジンに代えてモーター又はエンジンとモーターの両方が駆動源として用いられる。
【0014】
手動変速機1は、クランクシャフト101aから伝達された駆動力をデファレンシャル機構102に伝達する。手動変速機1にはクラッチペダル200が接続され、クラッチペダル200を操作することにより後述するクラッチ機構が動作され、駆動力の伝達状態が切り換えられる。手動変速機1はシフトレバー300の操作に応じて後述するドリブンギヤが選択可能にされ、デファレンシャル機構102に伝達される駆動力の変速比が選択される。
【0015】
デファレンシャル機構102は、手動変速機1から伝達された駆動力を各駆動軸を介して駆動輪103、103に伝達する。デファレンシャル機構102によって、車両100が旋回する際に生じる駆動輪103、103間の回転速度差が吸収される。
【0016】
上記の構成により、車両100において、駆動源101において発生した駆動力が手動変速機1やデファレンシャル機構102等を介して駆動輪103、103に伝達される。この結果、車両100は走行することができる。
【0017】
<手動変速機の構成>
次に、手動変速機1の構成について説明する(
図2乃至
図8参照)。
【0018】
以下の説明にあっては、駆動源(エンジン)と手動変速機の並ぶ方向を前後方向とし、駆動源を前方とし、手動変速機を後方とし、前後上下左右の方向を示すものとする。ただし、以下に示す前後上下左右の方向は説明の便宜上のものであり、本発明の実施に関しては、これらの方向に限定されることはない。
【0019】
手動変速機1は、ケース2の内外に各部が配置され、それぞれ軸方向が前後方向にされたインプットシャフト3とカウンターシャフト4とアウトプットシャフト5と、クランクシャフト101aに接続されたクラッチ機構6とを有している(
図2参照)。
【0020】
インプットシャフト3はクランクシャフト101aと同軸上に配置されている。インプットシャフト3には、クラッチ機構6を介してクランクシャフト101aから駆動力が伝達される。
【0021】
カウンターシャフト4は、インプットシャフト3の後方においてインプットシャフト3と平行に配置されている。カウンターシャフト4には、径の異なるドライブギヤ7、7、・・・が軸方向に離隔して取り付けられている。ドライブギヤ7、7、・・・はカウンターシャフト4と一体になって回転される。
【0022】
アウトプットシャフト5は、インプットシャフト3の後方においてインプットシャフト3と同軸上に配置されている。アウトプットシャフト5には、径の異なるドリブンギヤ8、8、・・・が回転可能に支持されている。ドリブンギヤ8、8、・・・はそれぞれドライブギヤ7、7、・・・と対応して位置され、それぞれ対応するドライブギヤ7、7、・・・と噛合されている。
【0023】
カウンターシャフト4には、ドリブンギヤ8とドライブギヤ7を介して駆動源101からインプットシャフト3に伝達された駆動力が伝達される。
【0024】
隣り合う所定のドリブンギヤ8、8の間には、アウトプットシャフト5と一体になって回転されるスリーブ9が設けられている。スリーブ9は、例えば、アウトプットシャフト5の軸方向において二つが設けられている。スリーブ9、9はシフトレバー300に接続され、シフトレバー300の操作に連動してアウトプットシャフト5の軸方向へ移動可能にされている。スリーブ9が移動されドリブンギヤ8と連結されることにより、アウトプットシャフト5がドリブンギヤ8と一体になって回転される。
【0025】
手動変速機1において、運転者がシフトレバー300を操作することにより、操作に応じたドリブンギヤ8が選択され、駆動源101からインプットシャフト3に伝達された駆動力が、選択されたドリブンギヤ8と選択されたドリブンギヤ8に噛合されたドライブギヤ7とを介してカウンターシャフト4からアウトプットシャフト5に伝達される。ただし、シフトレバー300がニュートラル位置に操作された状態においては、スリーブ9がいずれのドリブンギヤ8とも連結されず、アウトプットシャフト5に駆動力が伝達されていない状態にされる。
【0026】
クラッチ機構6は、フライホイール10とクラッチディスク11とプレッシャプレート12とダイヤフラムスプリング13とレリーズベアリング14とレリーズフォーク15と規制体16とを有している(
図3及び
図4参照)。フライホイール10とクラッチディスク11とプレッシャプレート12とダイヤフラムスプリング13とレリーズベアリング14はそれぞれ環状に形成され、中心軸がクランクシャフト101aの中心軸と一致されている。
【0027】
フライホイール10は内周部がクランクシャフト101aに連結され、クランクシャフト101aと一体になって回転される。
【0028】
クラッチディスク11はフライホイール10の後側に位置され、フライホイール10と対向した状態にされている。クラッチディスク11の内周部にはインプットシャフト3の前端部が結合され、インプットシャフト3はクラッチディスク11と一体になって回転される。
【0029】
プレッシャプレート12は、クラッチディスク11と略同径の大きさに形成され、クラッチディスク11の後側においてクラッチディスク11と対向して配置されている。
【0030】
ダイヤフラムスプリング13はプレッシャプレート12の後端部側に後方から押し付けられている。ダイヤフラムスプリング13は薄板状に形成され、ダイヤフラムスプリング13にはインプットシャフト3が挿通されている。ダイヤフラムスプリング13は外周部がプレッシャプレート12の外周寄りの部分に後方から押し付けられ、プレッシャプレート12はダイヤフラムスプリング13の弾性力によってクラッチディスク11に近づく方向に付勢されている。
【0031】
レリーズベアリング14には、インプットシャフト3が挿通されている。レリーズベアリング14は外周部がダイヤフラムスプリング13の内周部に後方から接した状態で配置されている。
【0032】
レリーズフォーク15は、レリーズベアリング14の後側において、ケース2に設けられた支点ピン17に回動可能に支持されている。なお、ケース2はクラッチ機構6等を収納する部分であり、ケース2には内部に支点ピン17等の各部が取り付けられる取付部2aを有している。レリーズフォーク15は、上下方向における中間部が支点ピン17に支持され回動中心となる支点部18として設けられ、上端部が力点部19として設けられ、下端部が作用点部20として設けられている。作用点部20は二股に形成され、インプットシャフト3の両側に位置された状態でレリーズベアリング14に後方から接している。
【0033】
レリーズフォーク15は、クラッチペダル200の踏み込み操作に応じて動作されるレリーズシリンダ21によって力点部19が押圧されることにより、
図4に示す矢印Lの方向へ回動される。レリーズフォーク15がLの方向へ回動されることにより作用点部20によって、レリーズベアリング14が前方へ押圧される。
【0034】
レリーズフォーク15は、クラッチペダル200が踏み込まれてレリーズシリンダ21によって押圧され回動された位置が締結解除位置(
図4参照)とされ、クラッチペダル200が踏み込まれずレリーズシリンダ21によって押圧されていない位置が締結位置(
図3参照)とされる。
【0035】
クラッチ機構6は、レリーズフォーク15が締結位置にある状態においては、ダイヤフラムスプリング13の付勢力によってプレッシャプレート12がクラッチディスク11に近づく方向へ付勢され、クラッチディスク11がフライホイール10に押し付けられる(
図3参照)。このとき、クラッチディスク11がフライホイール10と一体になって回転されることにより、駆動源101からフライホイール10に伝達された駆動力がインプットシャフト3に伝達される。
【0036】
一方、レリーズフォーク15が締結解除位置にある状態においては、レリーズフォーク15の作用点部20によってレリーズベアリング14が押圧され、レリーズベアリング14によってダイヤフラムスプリング13の内周部が前方へ押圧される(
図4参照)。ダイヤフラムスプリング13の内周部がレリーズベアリング14によって押されると、プレッシャプレート12が後方へ移動され、プレッシャプレート12の付勢力によるクラッチディスク11のフライホイール10への押し付けが解除され、フライホイール10とクラッチディスク11との間に隙間が生じる。したがって、フライホイール10がクラッチディスク11に対して空転した状態となり、駆動源101からフライホイール10に伝達された駆動力がインプットシャフト3に伝達されない。
【0037】
なお、以下の説明において、駆動源101からの駆動力がインプットシャフト3に伝達された状態はクラッチ機構6が締結された状態であり、駆動力がインプットシャフト3に伝達されていない状態はクラッチ機構6の締結が解除された状態である。
【0038】
規制体16は、レリーズフォーク15の力点部19と支点部18の間において、レリーズフォーク15の左右一方の側に配置されている(
図3及び
図4参照)。規制体16は、カム部22とガイド部23と回動規制部24とバネ部材25とを有している(
図5乃至
図8参照)。
【0039】
カム部22は左右方向を向く板状にされ、レリーズフォーク15側の面が側面部26として形成され、側面部26と反対側の面が側面部27として形成されている(
図5及び
図6参照)。側面部26と側面部27はそれぞれ中心角が鈍角にされた扇形状に形成され、側面部27は側面部26より面積が小さくされている。カム部22の外周部寄りの部分には回転軸部28の一端部が連結されている。カム部22は回転軸部28を支点として回動される。回転軸部28は他端部が、例えば、ケース2に連結されている。
【0040】
カム部22の中心部には、略前後方向に延びる連結部材29の一端部が連結されている。連結部材29の他端部はシフトレバー300に連結され、カム部22はシフトレバー300の操作に応じて回転軸部28を支点として回動される。
【0041】
カム部22の外周面のうち扇形の半径に相当する部分は、側面部26から側面部27に近づくに従って変位するように傾斜された作用部30、30として形成されている(
図7参照)。
【0042】
ガイド部23はカム部22を挟んでレリーズフォーク15と反対側に配置されている(
図3及び
図4参照)。ガイド部23は図示しない固定部材によって、例えば、ケース2に固定されている。ガイド部23には、レリーズフォーク15側に開口されたガイド穴31が形成されている(
図8参照)。
【0043】
回動規制部24は少なくとも一部がガイド穴31に挿入された状態でガイド部23に移動可能に支持され、一部がレリーズフォーク15の回動軌跡上に位置される規制位置とレリーズフォーク15の回動軌跡上に位置されない規制解除位置との間で移動される。
【0044】
回動規制部24の先端部には、上方へ行くに従ってレリーズフォーク15から離隔する方向に傾斜された被作用部32が形成されている。被作用部32は、前後両側縁がカム部22の回転時にそれぞれカム部22の作用部30、30と摺動される。
【0045】
バネ部材25としては、例えば、圧縮コイルバネが用いられ、ガイド穴31において両端部がそれぞれガイド部23と回動規制部24に支持されている。したがって、回動規制部24は、バネ部材25によって規制解除位置から規制位置へ向かう方向に付勢されている。
【0046】
<規制体の動作>
以下に、手動変速機1における動作について説明する(
図9乃至12参照)。
【0047】
規制体16は、走行中、例えば、シフトレバー300が1速位置に操作された状態において、カム部22によって回動規制部24がレリーズフォーク15側から押さえられ、回動規制部24が規制解除位置に保持されている(
図9及び
図10参照)。このとき、回動規制部24はレリーズフォーク15の回動軌跡上に位置されず規制体16がレリーズフォーク15の回動を規制しないため、クラッチペダル200が踏み込まれるとレリーズフォーク15が締結位置から締結解除位置へ向けて回動され、クラッチペダルの踏み込みが解除されるとレリーズフォーク15が締結解除位置から締結位置へ戻る方向に回動される。
【0048】
一方、例えば、車両100が停車した状態において、クラッチペダル200が踏み込まれ、シフトレバー300がニュートラル位置に操作されると、カム部22が回転されて作用部30が回動規制部24の被作用部32に摺動され、回動規制部24がバネ部材25の付勢力によって規制位置まで移動される(
図11及び
図12参照)。このとき、回動規制部24の一部がレリーズフォーク15の回動軌跡上に位置され、回動規制部24によってレリーズフォーク15の締結解除位置から締結位置へ向けての回動が規制される。
【0049】
したがって、この状態でクラッチペダル200の踏み込みが解除されても、クラッチ機構6の締結が解除された状態が維持される。インプットシャフト3は、クラッチ機構6の締結が解除された直後には慣性力によって回転し続けるが、駆動源101からの駆動力が伝達されなくなるため、回転が停止される。
【0050】
さらに、この状態から車両100が発進するために、シフトレバー300が1速位置に操作されると、回動規制部24が規制解除位置まで移動され、回動規制部24によるレリーズフォーク15の回動の規制が解除される。したがって、レリーズフォーク15が締結位置まで回動され、クラッチ機構6が締結された状態となり、インプットシャフトに2に駆動源101からの駆動力が伝達される。このとき、上記のように、インプットシャフト3は回転が停止されているため、インプットシャフト3からアウトプットシャフト5への急激な駆動力の伝達が抑制される。
【0051】
以上のように、手動変速機1においては、シフトレバー300がニュートラル位置に操作された状態において、規制体16によってレリーズフォーク15の締結解除位置から締結位置への回動が規制されることにより、クラッチペダル200の操作に拘わらず駆動源101からの駆動力がインプットシャフト3に伝達されない。したがって、停車時におけるインプットシャフト3の回転が抑制されるため、発進時においてインプットシャフト3とアウトプットシャフト5が円滑に接続され、アウトプットシャフト5に連結されたデファレンシャル機構102における異音の発生を抑制することができる。
【0052】
また、手動変速機1においては、規制体16が、シフトレバー300の操作によって回動されるカム部22と、レリーズフォーク15の回動を規制する規制位置とレリーズフォーク15の回動の規制を解除する規制解除位置との間で移動可能にされカム部22の動作に応じて移動される回動規制部24と、回動規制部24を案内するガイド部23とを有している。
【0053】
これにより、シフトレバー300を操作することにより回動規制部24がガイド部23に案内されて規制位置と規制解除位置との間で移動されるため、簡素な構成でレリーズフォーク15の回動を規制することができる。
【0054】
さらに、回動規制部24を規制解除位置から規制位置に向かう方向へ付勢するバネ部材25が設けられている。
【0055】
これにより、バネ部材25の付勢力によって回動規制部24が規制位置に保持される。したがって、簡素な構成でレリーズフォーク15の回動を確実に規制することができる。
【0056】
さらにまた、回動規制部24に被作用部32が形成され、カム部22に被作用部32と摺動可能な作用部30が形成され、回動規制部24がカム部22に押圧されることにより規制位置から規制解除位置に移動される。
【0057】
これにより、カム部22の作用部30が回動規制部24の被作用部32に摺動されることにより、回動規制部24がバネ部材25の付勢力に反して規制位置から規制解除位置に移動される。
【0058】
したがって、専用の動力源を設けることなく回動規制部24を規制位置から規制解除位置に移動させることが可能になり、規制体16の構成の簡素化を図ることができる。
【0059】
さらに、上記のように構成された手動変速機1においては、レリーズフォーク15がクラッチペダル200の操作に応じて押圧される力点部19と回動中心である支点部18と力点部19よりインプットシャフト3に近づいて位置された作用点部20とを有し、規制体16が支点部18と力点部19の間に位置されている。
【0060】
これにより、規制体16がレリーズフォークの作用点部20から離れて位置される。したがって、規制体16がインプットシャフト3から離れて位置されるため、規制体16が手動変速機1の周囲の部材と干渉し難く、配置スペースやレイアウト設計の自由度の向上を図ることができる。
【0061】
なお、上記には、シフトレバー300の操作によりカム部22が後方へ回動され前側の作用部30によって回動規制部24が規制位置から規制解除位置へ移動された例を示したが、カム部22はシフトレバー300の操作に応じて前後いずれの方向に回動されてもよく、回動規制部24は前後いずれの作用部30によって規制位置から規制解除位置へ移動されてもよい。
【符号の説明】
【0062】
100 車両
101 駆動源
101a クランクシャフト
200 クラッチペダル
300 シフトレバー
1 手動変速機
3 インプットシャフト
4 カウンターシャフト
5 アウトプットシャフト
6 クラッチ機構
8 ドリブンギヤ
15 レリーズフォーク
16 規制体
18 支点部
19 力点部
20 作用点部
22 カム部
23 ガイド部
24 回動規制部
25 バネ部材
30 作用部
32 被作用部