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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-16
(45)【発行日】2025-06-24
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20250617BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20250617BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20250617BHJP
【FI】
H01L21/304 648L
H01L21/304 648G
H01L21/304 651B
H01L21/304 643A
H01L21/306 R
H01L21/30 569C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021134271
(22)【出願日】2021-08-19
(65)【公開番号】P2022045904
(43)【公開日】2022-03-22
【審査請求日】2024-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2020151658
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴大
(72)【発明者】
【氏名】小林 健司
(72)【発明者】
【氏名】澤島 隼
(72)【発明者】
【氏名】吉田 武司
(72)【発明者】
【氏名】根來 世
(72)【発明者】
【氏名】折坂 昌幸
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-187395(JP,A)
【文献】特開2016-042517(JP,A)
【文献】特開2017-092079(JP,A)
【文献】特開2017-010977(JP,A)
【文献】国際公開第2017/018481(WO,A1)
【文献】特開2011-077244(JP,A)
【文献】特開2010-010421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/306
H01L 21/027
B05C 5/00
B05C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平に保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持されている前記基板を、前記基板の中央部を通る鉛直な回転軸線まわりに回転させる基板回転手段と、
前記基板保持手段に保持されている前記基板に向けて薬液を吐出する薬液ノズルと、
前記基板保持手段に保持されている前記基板を平面視で取り囲む上端部と、前記上端部に向かって斜め上に延びる円筒状の傾斜部と、を含み、前記基板保持手段に保持されている前記基板から外方に飛散した液体を受け止める筒状のガードと、
前記ガードを取り囲む内周面を含むチャンバーと、
前記チャンバーの前記内周面から内方に離れた外周端と、前記ガードを取り囲む内周端と、を含み、前記チャンバー内における前記ガードのまわりの空間を上下に仕切る仕切板と、
前記ガードを昇降させることにより、前記仕切板の前記内周端から前記ガードまでの最短距離を変更するガード昇降ユニットと、
前記チャンバー内において前記仕切板よりも下方に配置された上流端を含み、前記ガードの内側の気体と前記仕切板の下側の気体とを前記上流端内に吸引し、前記チャンバーの外に排出する排気ダクトと、を備え
前記ガードの外周面は、鉛直な直線状の断面を有する円筒状の鉛直部を含み、
前記仕切板は、前記チャンバー内における前記ガードのまわりの空間を上下に仕切る水平部と、前記水平部から下方に延びる円筒状の鉛直部とを含み、
前記仕切板の前記鉛直部の内周面は、鉛直な直線状の断面を有しており、平面視で前記ガードの前記鉛直部を取り囲んでおり、
前記ガードの前記鉛直部が前記鉛直部の前記内周面と水平に向かい合う上側処理位置に前記ガードが配置されているとき、前記仕切板の前記内周端から前記ガードまでの距離は、前記ガードの前記鉛直部と前記鉛直部の前記内周面との間で最も小さく、
前記仕切板は、前記仕切板の前記水平部および前記鉛直部を含む内周リングと、前記内周リングを支持するサポートプレートと、を含み、
前記内周リングは、前記回転軸線に直交する方向である径方向に前記サポートプレートおよびガードに対して移動可能である、基板処理装置。
【請求項2】
基板を水平に保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持されている前記基板を、前記基板の中央部を通る鉛直な回転軸線まわりに回転させる基板回転手段と、
前記基板保持手段に保持されている前記基板に向けて薬液を吐出する薬液ノズルと、
前記基板保持手段に保持されている前記基板を平面視で取り囲む上端部と、前記上端部に向かって斜め上に延びる円筒状の傾斜部と、を含み、前記基板保持手段に保持されている前記基板から外方に飛散した液体を受け止める筒状のガードと、
前記ガードを取り囲む内周面を含むチャンバーと、
前記チャンバーの前記内周面から内方に離れた外周端と、前記ガードを取り囲む内周端と、を含み、前記チャンバー内における前記ガードのまわりの空間を上下に仕切る仕切板と、
前記ガードを昇降させることにより、前記仕切板の前記内周端から前記ガードまでの最短距離を変更するガード昇降ユニットと、
前記チャンバー内において前記仕切板よりも下方に配置された上流端を含み、前記ガードの内側の気体と前記仕切板の下側の気体とを前記上流端内に吸引し、前記チャンバーの外に排出する排気ダクトと、
前記チャンバー内における前記仕切板の下側の空間で前記ガードを取り囲む内周面および外周面と、前記内周面および外周面で開口しており、前記排気ダクトを通じて前記チャンバーから排出される気体が通過する排出穴と、前記内周面および外周面で開口しており、前記外周面の外側から前記内周面の内側に移動する気体が通過する排気中継穴と、を含む、筒状外壁と、を備え、
前記筒状外壁の前記排気中継穴は、前記筒状外壁の前記排出穴よりも小さい、基板処理装置。
【請求項3】
基板を水平に保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持されている前記基板を、前記基板の中央部を通る鉛直な回転軸線まわりに回転させる基板回転手段と、
前記基板保持手段に保持されている前記基板に向けて薬液を吐出する薬液ノズルと、
前記基板保持手段に保持されている前記基板を平面視で取り囲む上端部と、前記上端部に向かって斜め上に延びる円筒状の傾斜部と、を含み、前記基板保持手段に保持されている前記基板から外方に飛散した液体を受け止める筒状のガードと、
前記ガードを取り囲む内周面を含むチャンバーと、
前記チャンバーの前記内周面から内方に離れた外周端と、前記ガードを取り囲む内周端と、を含み、前記チャンバー内における前記ガードのまわりの空間を上下に仕切る仕切板と、
前記ガードを昇降させることにより、前記仕切板の前記内周端から前記ガードまでの最短距離を変更するガード昇降ユニットと、
前記チャンバー内において前記仕切板よりも下方に配置された上流端を含み、前記ガードの内側の気体と前記仕切板の下側の気体とを前記上流端内に吸引し、前記チャンバーの外に排出する排気ダクトと、を備え、
前記ガードの外周面は、鉛直な直線状の断面を有する円筒状の鉛直部を含み、
前記仕切板は、前記内周端を含む内周リングを含み、
前記内周リングは、前記チャンバー内における前記ガードのまわりの空間を上下に仕切る水平部と、前記内周端を含み、前記水平部から下方に延びる円筒状の鉛直部とを含み、
前記内周リングの前記鉛直部の内周面は、鉛直な直線状の断面を有しており、平面視で前記ガードの前記鉛直部を取り囲んでいる、基板処理装置。
【請求項4】
リンス液を前記基板保持手段に保持されている前記基板に向けて吐出するリンス液ノズルと、
前記ガード昇降ユニットを制御することにより、前記基板上の薬液を前記リンス液ノズルから吐出されたリンス液で置換しているときの前記最短距離を、前記薬液ノズルが薬液を吐出しているときの前記最短距離よりも大きくする制御装置と、をさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記筒状外壁は、前記チャンバー内における前記仕切板の下側の空間で前記ガードを取り囲む内周面および外周面と、前記内周面および外周面で開口する貫通穴と、を含む筒状体と、前記貫通穴の一部を覆った状態で前記筒状体に保持されており、前記筒状体に対して移動可能な可動カバーと、を含み、
前記排気中継穴は、前記筒状体の前記貫通穴と前記可動カバーとによって形成されており、前記筒状体に対する前記可動カバーの位置に応じて開度が変わる、請求項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記仕切板の前記鉛直部の前記内周面と前記ガードの前記外周面の前記鉛直部とが水平に向かい合う対向範囲の上下方向の長さは、前記回転軸線まわりの方向である周方向に前記排気ダクトの前記上流端に近づくにしたがって増加している、請求項1または3に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記回転軸線に直交する方向である径方向における前記仕切板の前記鉛直部の前記内周面から前記ガードの前記外周面の前記鉛直部までの距離は、前記回転軸線まわりの方向である周方向に前記排気ダクトの前記上流端に近づくにしたがって減少している、請求項1、3、または6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
基板を水平に保持しながら、前記基板の中央部を通る鉛直な回転軸線まわりに回転させるステップと、
回転している前記基板に向けて薬液を吐出するステップと、
前記基板から外方に飛散した薬液を、前記基板を平面視で取り囲む上端部と、前記上端部に向かって斜め上に延びる円筒状の傾斜部と、を含む筒状のガードに受け止めさせるステップと、
前記ガードの内側の気体を、前記ガードを取り囲むチャンバーの内周面から内方に離れた外周端と、前記ガードを取り囲む内周端と、を含み、前記チャンバー内における前記ガードのまわりの空間を上下に仕切る仕切板よりも下方に配置された排気ダクトの上流端内に吸引し、前記チャンバーの外に排出するステップと、
前記仕切板の下側の気体を、前記排気ダクトの前記上流端内に吸引し、前記チャンバーの外に排出するステップと、
前記基板への薬液の吐出を停止した後に、前記ガードを下降させることにより、前記仕切板の前記内周端から前記ガードまでの最短距離を増加させるステップと、を含み、
前記ガードの外周面は、鉛直な直線状の断面を有する円筒状の鉛直部を含み、
前記仕切板は、前記チャンバー内における前記ガードのまわりの空間を上下に仕切る水平部と、前記水平部から下方に延びる円筒状の鉛直部とを含み、
前記仕切板の前記鉛直部の内周面は、鉛直な直線状の断面を有しており、平面視で前記ガードの前記鉛直部を取り囲んでおり、
前記ガードの前記鉛直部が前記鉛直部の前記内周面と水平に向かい合う上側処理位置に前記ガードが配置されているとき、前記仕切板の前記内周端から前記ガードまでの距離は、前記ガードの前記鉛直部と前記鉛直部の前記内周面との間で最も小さく、
前記仕切板は、前記仕切板の前記水平部および前記鉛直部を含む内周リングと、前記内周リングを支持するサポートプレートと、を含み、
前記内周リングは、前記回転軸線に直交する方向である径方向に前記サポートプレートおよびガードに対して移動可能である、基板処理方法。
【請求項9】
基板を水平に保持しながら、前記基板の中央部を通る鉛直な回転軸線まわりに回転させるステップと、
回転している前記基板に向けて薬液を吐出するステップと、
前記基板から外方に飛散した薬液を、前記基板を平面視で取り囲む上端部と、前記上端部に向かって斜め上に延びる円筒状の傾斜部と、を含む筒状のガードに受け止めさせるステップと、
前記ガードの内側の気体を、前記ガードを取り囲むチャンバーの内周面から内方に離れた外周端と、前記ガードを取り囲む内周端と、を含み、前記チャンバー内における前記ガードのまわりの空間を上下に仕切る仕切板よりも下方に配置された排気ダクトの上流端内に吸引し、前記チャンバーの外に排出するステップと、
前記仕切板の下側の気体を、前記排気ダクトの前記上流端内に吸引し、前記チャンバーの外に排出するステップと、
前記基板への薬液の吐出を停止した後に、前記ガードを下降させることにより、前記仕切板の前記内周端から前記ガードまでの最短距離を増加させるステップと、を含み、
筒状外壁が前記チャンバー内における前記仕切板の下側の空間で前記ガードを取り囲んでおり、
前記筒状外壁は、前記チャンバー内における前記仕切板の下側の空間で前記ガードを取り囲む内周面および外周面と、前記内周面および外周面で開口しており、前記排気ダクトを通じて前記チャンバーから排出される気体が通過する排出穴と、前記内周面および外周面で開口しており、前記外周面の外側から前記内周面の内側に移動する気体が通過する排気中継穴と、を含み、
前記筒状外壁の前記排気中継穴は、前記筒状外壁の前記排出穴よりも小さい、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理装置および基板処理方法に関する。基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置や有機EL(electroluminescence)表示装置などのFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置やFPDなどの製造工程では、半導体ウエハやFPD用ガラス基板などの基板を処理する基板処理装置が用いられる。特許文献1に記載の基板処理装置は、基板を水平に保持しながら回転させるスピンチャックと、スピンチャックに保持されている基板の上面に向けてSPM(硫酸と過酸化水素水の混合液)を吐出するノズルと、スピンチャックに保持されている基板の上面に向けてリンス液を吐出するノズルと、基板から外方に飛散した液体を受け止める筒状のガードと、スピンチャックやガード等を収容するチャンバーとを備えている。
【0003】
ガードの上端部は、平面視で基板を取り囲んでいる。ガードは、ガードの上端が基板よりも下方に位置する下位置と、ガードの上端が基板よりも上方に位置する液受け位置と、液受け位置よりも上方の上位置と、のいずれかに配置される。SPMを基板に供給するときは、ガードの上端が基板の上面から十分に離れた上位置にガードが配置される。基板上のSPMをリンス液で洗い流すときは、基板の上面からガードの上端までの鉛直方向への距離が減少した液受け位置にガードが配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-032728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
薬液やリンス液などの処理液を回転している基板に向けて吐出すると、処理液のミストが基板の上方や基板の周辺に発生する。発生した薬液のミストが、ガードの上端部の内側を通じてガードの外に漏れると、漏れ出た薬液のミストや漏れ出たミスト状の薬液を含む雰囲気(以下、これらを総称して「薬液雰囲気」という。)がチャンバーの内面に付着し、パーティクルに変化する場合がある。薬液雰囲気が基板の方に流れ、基板に付着する場合もある。基板をチャンバーから搬出するときやチャンバーに搬入するときに、薬液雰囲気が基板に付着する場合もある。これらは基板の汚染原因となり得る。
【0006】
特許文献1に記載の基板処理装置は、SPMなどの薬液のミスト等を含む雰囲気が、ガードの上端部の内側を通じてガードの外に漏れることを防止するために、SPMを基板に供給するときに、ガードを極めて高い位置まで上昇させている。しかしながら、基板処理装置によっては、このような高い位置にガードを配置できない場合がある。
そこで、本発明の目的の一つは、薬液のミストがガードの上端部の内側を通じてガードの外に漏れたとしても、漏れ出た薬液のミストを確実に除去できる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、基板を水平に保持する基板保持手段と、前記基板保持手段に保持されている前記基板を、前記基板の中央部を通る鉛直な回転軸線まわりに回転させる基板回転手段と、前記基板保持手段に保持されている前記基板に向けて薬液を吐出する薬液ノズルと、前記基板保持手段に保持されている前記基板を平面視で取り囲む上端部と、前記上端部に向かって斜め上に延びる円筒状の傾斜部と、を含み、前記基板保持手段に保持されている前記基板から外方に飛散した液体を受け止める筒状のガードと、前記ガードを取り囲む内周面を含むチャンバーと、前記チャンバーの前記内周面から内方に離れた外周端と、前記ガードを取り囲む内周端と、を含み、前記チャンバー内における前記ガードのまわりの空間を上下に仕切る仕切板と、前記ガードを昇降させることにより、前記仕切板の前記内周端から前記ガードまでの最短距離を変更するガード昇降ユニットと、前記チャンバー内において前記仕切板よりも下方に配置された上流端を含み、前記ガードの内側の気体と前記仕切板の下側の気体とを前記上流端内に吸引し、前記チャンバーの外に排出する排気ダクトと、を備える、基板処理装置を提供する
【0008】
この構成によれば、ガードのまわりに仕切板が配置されている。仕切板の外周端は、チャンバーの内周面から内方に離れており、仕切板の内周端は、ガードを取り囲んでいる。ガード昇降ユニットがガードを昇降させると、仕切板の内周端からガードまでの最短距離が増加または減少する。これにより、ガードと仕切板との間を通る経路の圧力損失を増加または減少させることができる。
【0009】
排気ダクトは、ガードの内側の気体と仕切板の下側の気体とを、排気ダクトの上流端から排気ダクトの内部に吸引する。ガードの上側の気体は、ガードの上端部の内側を下方に通過し、排気ダクト内に吸引される。仕切板の上側の気体は、チャンバーと仕切板との間の隙間と、ガードと仕切板との間の隙間と、の少なくとも一方を下方に通過し、排気ダクト内に吸引される。
【0010】
ガード昇降ユニットが仕切板の内周端からガードまでの最短距離を減少させると、ガードと仕切板との間を通る経路の圧力損失が増加するので、ガードの上端部の内側を通過する気体の流量が増加する。これにより、ガードの上端部の内側を通じてガードの外に漏れる薬液のミストの量を減らすことができる。
ガード昇降ユニットが仕切板の内周端からガードまでの最短距離を増加させると、ガードと仕切板との間を通る経路の圧力損失が減少するので、ガードと仕切板との間を通過する気体の流量が増加する。薬液のミストがガードの外に漏れたとしても、漏れ出たミストは、チャンバーと仕切板との間の隙間と、ガードと仕切板との間の隙間と、の少なくとも一方を下方に通過し、排気ダクト内に吸引される。これにより、漏れ出たミストを確実に除去できる。
【0011】
ガードの内側の雰囲気を重点的に吸引することは、薬液のミストがガードの外に漏れることを防止する上で重要である。ガードおよび仕切板の上方の雰囲気を重点的に吸引することは、漏れ出た薬液のミストを除去する上で重要である。したがって、排気のバランスをとること、つまり、重点的に排気する箇所を変更することは、基板およびチャンバーの汚染を減らす上で重要である。
【0012】
ガードを昇降させて、仕切板の内周端からガードまでの最短距離を変更すれば、ガードの内側とガードおよび仕切板の上方との間で重点的に排気する箇所を変更できる。したがって、基板の処理の進行に応じてガードを昇降させれば、薬液のミストが存在し得る箇所の雰囲気を重点的に吸引でき、基板およびチャンバーの汚染を減らすことができる。
前記実施形態において、以下の特徴の少なくとも1つを、前記基板処理装置に加えてもよい。
前記基板処理装置は、リンス液を前記基板保持手段に保持されている前記基板に向けて吐出するリンス液ノズルと、前記ガード昇降ユニットを制御することにより、前記基板上の薬液を前記リンス液ノズルから吐出されたリンス液で置換しているときの前記最短距離を、前記薬液ノズルが薬液を吐出しているときの前記最短距離よりも大きくする制御装置と、をさらに備える
【0013】
この構成によれば、基板上の薬液をリンス液で置換する。薬液のミストがガードの外に漏れた場合、薬液雰囲気は、リンス液ノズルがリンス液を吐出しているときに、ガードおよび仕切板の上方を漂う。リンス液ノズルがリンス液を吐出しているときは、薬液ノズルが薬液を吐出しているときよりも仕切板の内周端からガードまでの最短距離が大きい。これにより、ガードおよび仕切板の上方を漂う薬液雰囲気を、チャンバーと仕切板との間の隙間と、ガードと仕切板との間の隙間と、の少なくとも一方に吸引できる。
【0014】
リンス液は、薬液以外の液体を意味する。リンス液の具体例は、水を主成分とする水含有液である。水含有液は、純水(脱イオン水:DIW(Deionized Water))などの水であってもよい。すなわち、水含有液における水の濃度は、100%または実質的に100%であってもよい。低濃度(たとえば10~100ppm)であれば、水含有液は、水以外の物質を含んでいてもよい。リンス液のミストがチャンバーや基板に付着しても基板の品質に問題がなければ、リンス液は、水含有液以外の液体であってもよい。たとえば、IPA(イソプロピルアルコール)やHFE(ハイドロフルオロエーテル)などの有機溶剤(液体)がリンス液であってもよい。
【0015】
前記基板処理装置は、前記チャンバー内における前記仕切板の下側の空間で前記ガードを取り囲む内周面および外周面と、前記内周面および外周面で開口しており、前記排気ダクトを通じて前記チャンバーから排出される気体が通過する排出穴と、前記内周面および外周面で開口しており、前記外周面の外側から前記内周面の内側に移動する気体が通過する排気中継穴と、を含む、筒状外壁をさらに備える
【0016】
この構成によれば、筒状外壁が仕切板の下側でガードを取り囲んでいる。ガードの上端部の内側を通過した気体は、筒状外壁の排出穴と排気ダクトとを通過し、チャンバーの外に排出される。ガードと仕切板との間を通過した気体も、筒状外壁の排出穴と排気ダクトとを通過し、チャンバーの外に排出される。したがって、これらの気体は、筒状外壁の排気中継穴を通過せずに、チャンバーの外に排出される。
【0017】
その一方で、チャンバーと仕切板との間を通過した気体は、筒状外壁の排気中継穴を通過して、筒状外壁の外側から筒状外壁の内側に移動する。その後、この気体は、筒状外壁の排出穴と排気ダクトとを通過し、チャンバーの外に排出される。したがって、筒状外壁のまわりの気体は、筒状外壁の外側から筒状外壁の内側に移動し、その後、筒状外壁の内側から筒状外壁の外側に移動する。
【0018】
このように、チャンバーと仕切板との間を通過した気体が、筒状外壁の排気中継穴を通過し、その後、筒状外壁の排出穴と排気ダクトとを通過するので、チャンバーと仕切板との間に流入した気体が通過する経路は、ガードの上端部の内側を通過する経路よりも圧力損失が大きい。したがって、ガードの上端部の内側を通過する気体の流量と、ガードと仕切板との間を通過する気体の流量とを増やすことができる。
【0019】
ガードの上端部の内側を通過する気体の流量を増やすことにより、ガードの外に漏れる薬液のミストを減らすことができる。さらに、薬液のミストがガードの外に漏れたとしても、漏れ出たミストは、ガードの上端部からそのまわりに流れる。仕切板の内周端は、仕切板の外周端よりもガードの近くに配置されている。したがって、ガードと仕切板との間を通過する気体の流量を増やすことより、漏れ出た薬液のミストをより確実に除去できる。
【0020】
前記筒状外壁の前記排気中継穴は、前記筒状外壁の前記排出穴よりも小さい
この構成によれば、筒状外壁の排気中継穴の面積が筒状外壁の排出穴の面積よりも小さい。ガードの上端部の内側を通過した気体とガードと仕切板との間を通過した気体とは、排気中継穴を通過しないのに対して、チャンバーと仕切板との間を通過した気体は、排気中継穴を通過し、その後、排出穴と排気ダクトとを通過する。したがって、チャンバーと仕切板との間に流入した気体が通過する経路の圧力損失が大きい。これにより、ガードの上端部の内側を通過する気体の流量と、ガードと仕切板との間を通過する気体の流量とをさらに増やすことができる。
【0021】
前記筒状外壁は、前記チャンバー内における前記仕切板の下側の空間で前記ガードを取り囲む内周面および外周面と、前記内周面および外周面で開口する貫通穴と、を含む筒状体と、前記貫通穴の一部を覆った状態で前記筒状体に保持されており、前記筒状体に対して移動可能な可動カバーと、を含み、前記排気中継穴は、前記筒状体の前記貫通穴と前記可動カバーとによって形成されており、前記筒状体に対する前記可動カバーの位置に応じて開度が変わる
【0022】
この構成によれば、筒状外壁の外側から筒状外壁の内側に流れる気体が通過する排気中継穴が、筒状体を貫通する貫通穴と、貫通穴の一部を覆う可動カバーとによって形成されている。筒状体に対して可動カバーを移動させると、排気中継穴の開度が変わり、排気中継穴の圧力損失が増加または減少する。これにより、排気のバランスを変更できる。つまり、ガードの上端部の内側を通過する排気と、ガードと仕切板との間を通過する排気と、チャンバーと仕切板との間を通過する排気と、のバランスを変更することができる。
【0023】
可動カバーは、筒状体の内周面または外周面に沿って平行に移動するスライドカバーであってもよいし、水平または鉛直な直線まわりに開閉する開閉カバーであってもよい。可動カバーがスライドカバーである場合、可動カバーを筒状体に対して移動させると、筒状体の貫通穴において可動カバーに覆われていない部分の面積が変わる。可動カバーが開閉カバーである場合、可動カバーを筒状体に対して移動させると、筒状体と可動カバーと間の隙間の大きさが変わる。これにより、排気中継穴の開度が変わり、排気中継穴の圧力損失が増加または減少する。
【0024】
前記ガードの外周面は、鉛直な直線状の断面を有する円筒状の鉛直部を含み、前記仕切板は、前記チャンバー内における前記ガードのまわりの空間を上下に仕切る水平部と、前記水平部から下方に延びる円筒状の鉛直部とを含み、前記仕切板の前記鉛直部の内周面は、鉛直な直線状の断面を有しており、平面視で前記ガードの前記鉛直部を取り囲んでおり、前記ガードの前記鉛直部が前記鉛直部の前記内周面と水平に向かい合う上側処理位置に前記ガードが配置されているとき、前記仕切板の前記内周端から前記ガードまでの距離は、前記ガードの前記鉛直部と前記鉛直部の前記内周面との間で最も小さい
【0025】
この構成によれば、仕切板の水平部が、チャンバー内におけるガードのまわりの空間を上下に仕切っており、仕切板の鉛直部が、水平部から下方に延びている。鉛直部の内周面は、平面視でガードの外周面の鉛直部を取り囲んでいる。ガードを上側処理位置に移動させると、ガードの外周面の鉛直部が鉛直部の内側に配置され、鉛直部の内周面と水平に向かい合う。
【0026】
ガードが上側処理位置に配置されているとき、仕切板の内周端からガードまでの距離は、ガードの外周面の鉛直部と鉛直部の内周面との間で最も小さい。言い換えると、ガードが上側処理位置に配置されているときは、鉛直部の内周面からガードの外周面の鉛直部までの径方向(基板の回転軸線に直交する方向)への距離が、仕切板の内周端からガードまでの最短距離に相当する。したがって、ガードと仕切板との間を通る経路の圧力損失は、主として、鉛直部の内周面からガードの外周面の鉛直部までの径方向への距離に依存する。
【0027】
ガードの外周面の鉛直部の断面と鉛直部の内周面の断面とはいずれも鉛直である。さらに、鉛直部が水平部から下方に延びているから、鉛直部の内周面の下端は、水平部よりも下方に配置されている。言い換えると、鉛直部の内周面は、上下方向にある程度の長さを有している。したがって、上下方向へのガードの位置を精密に制御しなくても、ガードの外周面の鉛直部を鉛直部の内周面に水平に対向させることができ、ガードと仕切板との間を通る経路の圧力損失を容易に調整できる。
【0028】
前記仕切板は、前記仕切板の前記水平部および前記鉛直部を含む内周リングと、前記内周リングを支持するサポートプレートと、を含み、前記内周リングは、前記回転軸線に直交する方向である径方向に前記サポートプレートおよびガードに対して移動可能である
この構成によれば、水平部と鉛直部とを含む内周リングが、サポートプレートに支持されている。内周リングは、サポートプレートに対して径方向に移動可能である。サポートプレートに対して内周リングを径方向に移動させると、内周リングがガードに対して径方向に移動し、鉛直部の内周面からガードの外周面の鉛直部までの径方向への距離が変化する。したがって、仕切板の内周端からガードまでの最短距離を変更することができ、ガードと仕切板との間を通る経路の圧力損失を増加または減少させることができる。
【0029】
前記仕切板の前記鉛直部の前記内周面と前記ガードの前記外周面の前記鉛直部とが水平に向かい合う対向範囲の上下方向の長さは、前記回転軸線まわりの方向である周方向に前記排気ダクトの前記上流端に近づくにしたがって増加している
この構成によれば、仕切板の鉛直部の内周面とガードの外周面の鉛直部とが水平に向かい合う対向範囲の上下方向の長さ(図6に示す長さL1に相当)が、全周にわたって一定ではなく、変化している。仕切板の内周端からガードまでの距離は、仕切板の鉛直部の内周面とガードの外周面の鉛直部との間で最も小さい。したがって、ガードと仕切板との間を通る経路の圧力損失は、全周にわたって一定ではなく、変化している。
【0030】
ガードと仕切板との間を通る経路の圧力損失が排気ダクトの近くで小さいと(ガードと仕切板との間の隙間を下方に通過する気体に加わる抵抗が排気ダクトの近くで小さいと)、排気ダクトの方に気体を吸引する吸引力が排気ダクトの近くで大幅に低下し、排気ダクトの上流端から周方向に離れた位置に伝達される吸引力が大幅に低下する。上下方向における対向範囲の長さが排気ダクトの上流端に周方向に近づくにしたがって増加しているので、この経路の圧力損失は、排気ダクトの上流端に周方向に近づくにしたがって増加する。したがって、排気ダクトの上流端から周方向に離れた位置に伝達される吸引力の低下を減少させることができ、周方向における吸引力の均一性を向上させることができる。
【0031】
前記回転軸線に直交する方向である径方向における前記仕切板の前記鉛直部の前記内周面から前記ガードの前記外周面の前記鉛直部までの距離は、前記回転軸線まわりの方向である周方向に前記排気ダクトの前記上流端に近づくにしたがって減少している
この構成によれば、仕切板の鉛直部の内周面からガードの外周面の鉛直部までの径方向の距離が、全周にわたって一定ではなく、変化している。仕切板の内周端からガードまでの距離は、仕切板の鉛直部の内周面とガードの外周面の鉛直部との間で最も小さい。したがって、ガードと仕切板との間を通る経路の圧力損失は、全周にわたって一定ではなく、変化している。
【0032】
ガードと仕切板との間を通る経路の圧力損失が排気ダクトの近くで小さいと、排気ダクトの方に気体を吸引する吸引力が排気ダクトの近くで大幅に低下し、排気ダクトの上流端から周方向に離れた位置に伝達される吸引力が大幅に低下する。仕切板の鉛直部の内周面からガードの外周面の鉛直部までの径方向の距離が排気ダクトの上流端に周方向に近づくにしたがって減少しているので、この経路の圧力損失は、排気ダクトの上流端に周方向に近づくにしたがって増加する。したがって、排気ダクトの上流端から周方向に離れた位置に伝達される吸引力の低下を減少させることができ、周方向における吸引力の均一性を向上させることができる。
【0033】
本発明の他の実施形態は、基板を水平に保持しながら、前記基板の中央部を通る鉛直な回転軸線まわりに回転させるステップと、回転している前記基板に向けて薬液を吐出するステップと、前記基板から外方に飛散した薬液を、前記基板を平面視で取り囲む上端部と、前記上端部に向かって斜め上に延びる円筒状の傾斜部と、を含む筒状のガードに受け止めさせるステップと、前記ガードの内側の気体を、前記ガードを取り囲むチャンバーの内周面から内方に離れた外周端と、前記ガードを取り囲む内周端と、を含み、前記チャンバー内における前記ガードのまわりの空間を上下に仕切る仕切板よりも下方に配置された排気ダクトの上流端内に吸引し、前記チャンバーの外に排出するステップと、前記仕切板の下側の気体を、前記排気ダクトの前記上流端内に吸引し、前記チャンバーの外に排出するステップと、前記基板への薬液の吐出を停止した後に、前記ガードを下降させることにより、前記仕切板の前記内周端から前記ガードまでの最短距離を増加させるステップと、を含む、基板処理方法を提供する。
【0034】
この方法によれば、回転している基板に向けて薬液を吐出する。その後、ガードを下降させる。これにより、仕切板の内周端からガードまでの最短距離が増加し、ガードと仕切板との間を通る経路の圧力損失が減少する。そのため、ガードと仕切板との間を通過する気体の流量が増加する。薬液のミストがガードの外に漏れたとしても、漏れ出たミストは、チャンバーと仕切板との間の隙間と、ガードと仕切板との間の隙間と、の少なくとも一方を下方に通過し、排気ダクト内に吸引される。これにより、漏れ出たミストを確実に除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の内部を示す図解的な平面図である。
図2図1に示すII-II線に沿う基板処理装置の鉛直断面を示す図解的な断面図である。
図3】基板処理装置に備えられた処理ユニットの内部を水平に見た模式図である。
図4A】処理ユニットの内部を示す図解的な平面図である。
図4B】処理ユニットの内部を示す図解的な平面図である。
図5図3の一部を拡大した拡大図である。
図6図3の一部をさらに拡大した拡大図である。
図7図5に示す矢印VIIの方向に筒状外壁を見た外観図である。
図8】処理カップおよび仕切板を上方から見た図解的な平面図である。
図9】処理ユニット内における気体の流れについて説明するための断面図である。
図10】基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
図11】基板処理装置によって実行される基板の処理の一例について説明するための工程図である。
図12A】薬液を基板に供給するときの第1ガードおよび第2ガードの位置の一例を示す断面図である。
図12B】リンス液を基板に供給するときの第1ガードおよび第2ガードの位置の一例を示す断面図である。
図12C】基板を乾燥させるときの第1ガードおよび第2ガードの位置の一例を示す断面図である。
図13】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置に備えられた処理カップの鉛直断面を示す断面図である。
図14】本発明の第3実施形態に係る処理カップおよび仕切板の鉛直断面を示す断面図である。
図15】本発明の第4実施形態に係る処理カップおよび仕切板の鉛直断面を示す断面図である。
図16】本発明の第5実施形態に係る処理カップの水平断面を示す断面図である。
図17】本発明の第6実施形態に係る処理カップおよび排気ダクトの水平断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1の内部を示す図解的な平面図である。図2は、図1に示すII-II線に沿う基板処理装置1の鉛直断面を示す図解的な断面図である。
基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。図1に示すように、基板処理装置1は、複数枚の基板Wを収容するキャリアCAを支持するロードポートLPと、ロードポートLP上のキャリアCAから搬送された基板Wを処理液や処理ガスなどの処理流体で処理する処理ユニット2と、ロードポートLP上のキャリアCAと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送システム5と、基板処理装置1を制御する制御装置3とを含む。図1は、複数のロードポートLPと複数の処理ユニット2とが基板処理装置1に設けられた例を示している。複数のロードポートLPは、直線状に水平に並べられている。
【0037】
複数の処理ユニット2は、それぞれが上下に積層された複数の処理ユニット2を含む複数のタワーTWを形成している。図1は、4つのタワーTWが形成された例を示している。複数のタワーTWの半数は、直線状の搬送路4の右側に配置されており、複数のタワーTWの残りの半数は、搬送路4の左側に配置されている。図2に示すように、この例では、各タワーTWは、上下に積層された6つの処理ユニット2を含む。したがって、24台の処理ユニット2が基板処理装置1に設けられている。
【0038】
全てのタワーTWの上側の処理ユニット2は、上側処理ユニット群を構成しており、全てのタワーTWの下側の処理ユニット2は、下側処理ユニット群を構成している。1つのタワーTWを構成する処理ユニット2の数が奇数である場合、真ん中の処理ユニット2は、上側処理ユニット群および下側処理ユニット群のいずれに属していてもよい。図1および図2に示す例では、上側の12台の処理ユニット2が上側処理ユニット群を構成しており、下側の12台の処理ユニット2が下側処理ユニット群を構成している。
【0039】
図1に示すように、搬送システム5は、ロードポートLP上のキャリアCAと処理ユニット2との間で搬送される基板Wが一時的に置かれる基板載置部6と、ロードポートLP上のキャリアCAと基板載置部6との間で基板Wを搬送するインデクサロボットIRと、基板載置部6と処理ユニット2との間で基板Wを搬送するセンターロボットCRとを含む。
【0040】
基板載置部6は、平面視でインデクサロボットIRとセンターロボットCRとの間に配置されている。図2に示すように、基板載置部6は、平面視で互いに重なり合う上側基板載置部6uおよび下側基板載置部6Lを含む。上側基板載置部6uは、下側基板載置部6Lの上方に配置されている。上側基板載置部6uは、上側処理ユニット群とキャリアCAとの間で搬送される基板Wを一時的に保持する。下側基板載置部6Lは、下側処理ユニット群とキャリアCAとの間で搬送される基板Wを一時的に保持する。
【0041】
上側基板載置部6uおよび下側基板載置部6Lは、いずれも、未処理の基板Wが置かれる未処理基板載置部7と、処理済みの基板Wが置かれる処理済み基板載置部8と含む。未処理基板載置部7および処理済み基板載置部8は、平面視で互いに重なっている。未処理基板載置部7は、処理済み基板載置部8の上方に配置されている。上側基板載置部6uおよび下側基板載置部6Lの少なくとも一方において、未処理基板載置部7が処理済み基板載置部8の下方に配置されていてもよい。
【0042】
未処理基板載置部7および処理済み基板載置部8は、いずれも、複数枚の基板Wを上下に重なるように水平に支持する複数の支持部を含む。支持部は、基板Wの下面に接触する複数のピンであってもよいし、基板Wの右側および左側で水平に延びる一対のレールであってもよい。基板Wは、インデクサロボットIR側およびセンターロボットCR側のいずれからでも未処理基板載置部7内に進入可能であり、インデクサロボットIR側およびセンターロボットCR側のいずれからでも処理済み基板載置部8内に進入可能である。
【0043】
インデクサロボットIRは、平面視で基板載置部6とロードポートLPとの間に配置されている。インデクサロボットIRは、基板Wを水平に支持する1つ以上のハンドHiを含む。ハンドHiは、水平方向および鉛直方向のいずれにも平行に移動可能である。ハンドHiは、鉛直な直線まわりに180度以上回転可能である。ハンドHiは、複数のロードポートLP上のいずれのキャリアCAにも基板Wの搬入および搬出を行うことができ、いずれの未処理基板載置部7および処理済み基板載置部8にも基板Wの搬入および搬出を行うことができる。
【0044】
図2に示すように、センターロボットCRは、上側基板載置部6uと上側処理ユニット群との間で基板Wを搬送する上側センターロボットCRuと、下側基板載置部6Lと下側処理ユニット群との間で基板Wを搬送する下側センターロボットCRLとを含む。上側センターロボットCRuは、下側センターロボットCRLよりも上方に配置されている。上側センターロボットCRuおよび下側センターロボットCRLは、複数のタワーTWの間に形成された搬送路4に配置されている。
【0045】
上側センターロボットCRuおよび下側センターロボットCRLは、いずれも、基板Wを水平に支持する1つ以上のハンドHcを含む。ハンドHcは、水平方向および鉛直方向のいずれにも平行に移動可能である。ハンドHcは、鉛直な直線まわりに180度以上回転可能である。
上側センターロボットCRuのハンドHcは、上側処理ユニット群に属するいずれの処理ユニット2にも基板Wの搬入および搬出を行うことができ、上側基板載置部6uの未処理基板載置部7および処理済み基板載置部8に基板Wの搬入および搬出を行うことができる。下側センターロボットCRLのハンドHcは、下側処理ユニット群に属するいずれの処理ユニット2にも基板Wの搬入および搬出を行うことができ、下側基板載置部6Lの未処理基板載置部7および処理済み基板載置部8に基板Wの搬入および搬出を行うことができる。
【0046】
図3は、処理ユニット2の内部を水平に見た模式図である。図4Aおよび図4Bは、処理ユニット2の内部を示す図解的な平面図である。図4Bでは、仕切板81を省略しており、筒状外壁70を仕切板81と排気ダクト78との間に位置する水平な断面で示している。図5は、図3の一部を拡大した拡大図である。図6は、図3の一部をさらに拡大した拡大図である。図7は、図5に示す矢印VIIの方向に筒状外壁70を見た外観図である。図8は、処理カップ52および仕切板81を上方から見た図解的な平面図である。
【0047】
図3に示すように、処理ユニット2は、内部空間を有する箱型のチャンバー12と、チャンバー12内で1枚の基板Wを水平に保持しながら基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1まわりに回転させるスピンチャック21と、スピンチャック21に保持されている基板Wに薬液やリンス液などの処理液を供給する複数のノズルとを含む。
図4Aに示すように、チャンバー12は、基板Wが通過する搬入搬出口13bが設けられた箱型の隔壁13と、搬入搬出口13bを開閉するシャッター17とを含む。図3に示すように、チャンバー12は、さらに、隔壁13の天井面で開口する送風口13aの下方に配置された整流板18を含む。クリーンエアー(フィルターによってろ過された空気)を送るFFU11(ファン・フィルター・ユニット11)は、送風口13aの上に配置されている。送風口13aは、チャンバー12の上端部に設けられており、後述する排気ダクト78は、チャンバー12の下端部に配置されている。排気ダクト78の上流端78uは、チャンバー12の中に配置されており、排気ダクト78の下流端は、チャンバー12の外に配置されている。
【0048】
隔壁13は、スピンチャック21を取り囲む筒状の側壁15と、スピンチャック21の上方に配置された上壁14と、スピンチャック21の下方に配置された下壁16と含む。上壁14の下面は、隔壁13の天井面に相当し、下壁16の上面は、隔壁13の床面に相当する。送風口13aは、上壁14に設けられており、搬入搬出口13bは、側壁15に設けられている。
【0049】
整流板18は、チャンバー12の内部空間を整流板18の上方の上空間Suと整流板18の下方の下空間SLとに仕切っている。隔壁13の天井面と整流板18の上面との間の上空間Suは、クリーンエアーが拡散する拡散空間である。整流板18の下面と隔壁13の床面との間の下空間SLは、基板Wの処理が行われる処理空間である。スピンチャック21は、下空間SLに配置されている。隔壁13の床面から整流板18の下面までの鉛直方向の距離は、整流板18の上面から隔壁13の天井面までの鉛直方向の距離よりも長い。
【0050】
FFU11は、送風口13aを介して上空間Suにクリーンエアーを送る。上空間Suに供給されたクリーンエアーは、整流板18に当たって上空間Suを拡散する。上空間Su内のクリーンエアーは、整流板18を上下に貫通する複数の貫通孔を通過し、整流板18の全域から下方に流れる。下空間SLに供給されたクリーンエアーは、排気ダクト78内に吸い込まれ、チャンバー12から排出される。これにより、整流板18から下方に流れる均一なクリーンエアーの下降流(ダウンフロー)が、下空間SLに形成される。基板Wの処理は、クリーンエアーの下降流が形成されている状態で行われる。
【0051】
スピンチャック21は、基板Wを水平に挟む複数のチャックピン22と、複数のチャックピン22を支持する円板状のスピンベース23とを含む。スピンチャック21は、さらに、スピンベース23の中央部から下方に延びるスピン軸24と、スピン軸24を回転させることにより複数のチャックピン22およびスピンベース23を回転させる電動モータ25と、電動モータ25を取り囲むチャックハウジング26とを含む。
【0052】
図5に示すように、スピンベース23は、基板Wの下方に配置される円形の上面23uと、スピンベース23の上面23uの外周から下方に延びる円筒状の外周面23oとを含む。チャックハウジング26の外周面は、スピンベース23の外周面23oから下方に延びている。スピンベース23の上面23uは、基板Wの下面と平行である。スピンベース23の上面23uは、基板Wの下面から離れている。スピンベース23の上面23uは、基板Wと同心である。スピンベース23の上面23uの外径は、基板Wの外径よりも大きい。チャックピン22は、スピンベース23の上面23uの外周部から上方に突出している。
【0053】
図3に示すように、複数のノズルは、基板Wの上面に向けて第1薬液を吐出する第1薬液ノズル27と、基板Wの上面に向けて第2薬液を吐出する第2薬液ノズル31とを含む。複数のノズルは、さらに、基板Wの上面に向けて処理液を吐出する中心ノズル44と、基板Wの下面に向けて処理液を吐出する下面ノズル35とを含む。中心ノズル44および下面ノズル35は、基板Wの上面または下面に向けてリンス液を吐出するリンス液ノズルの一例である。図3は、第1薬液がDHF(希フッ酸)であり、第2薬液がSC1(アンモニア過酸化水素水混合液)であり、リンス液が純水(脱イオン水:DIW(Deionized Water))である例を示している。
【0054】
第1薬液ノズル27は、基板Wに対する処理液の衝突位置を基板Wの上面または下面内で移動させることができるスキャンノズルであってもよいし、基板Wに対する処理液の衝突位置を移動させることができない固定ノズルであってもよい。他のノズルについても同様である。図3は、第1薬液ノズル27および第2薬液ノズル31がスキャンノズルであり、中心ノズル44および下面ノズル35が固定ノズルである例を示している。
【0055】
第1薬液ノズル27は、第1薬液ノズル27に第1薬液を案内する第1薬液配管28に接続されている。第1薬液配管28に介装された第1薬液バルブ29が開かれると、第1薬液が、第1薬液ノズル27の吐出口から下方に連続的に吐出される。同様に、第2薬液ノズル31は、第2薬液ノズル31に第2薬液を案内する第2薬液配管32に接続されている。第2薬液配管32に介装された第2薬液バルブ33が開かれると、第2薬液が、第2薬液ノズル31の吐出口から下方に連続的に吐出される。
【0056】
第1薬液は、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸、リン酸、酢酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえばクエン酸、蓚酸など)、有機アルカリ(たとえば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなど)、界面活性剤、および腐食防止剤の少なくとも1つを含む液であってもよいし、これ以外の液体であってもよい。第2薬液についても同様である。
【0057】
図示はしないが、第1薬液バルブ29は、薬液が通過する環状の弁座が設けられたバルブボディと、弁座に対して移動可能な弁体と、弁体が弁座に接触する閉位置と弁体が弁座から離れた開位置との間で弁体を移動させるアクチュエータとを含む。他のバルブについても同様である。アクチュエータは、空圧アクチュエータまたは電動アクチュエータであってもよいし、これら以外のアクチュエータであってもよい。制御装置3は、アクチュエータを制御することにより、第1薬液バルブ29を開閉させる。
【0058】
第1薬液ノズル27は、鉛直方向および水平方向の少なくとも一方に第1薬液ノズル27を移動させる第1ノズル移動ユニット30に接続されている。第1ノズル移動ユニット30は、第1薬液ノズル27が先端に取り付けられた水平に延びる第1ノズルアーム30aを含む。第1ノズル移動ユニット30は、第1ノズルアーム30aを移動させることにより、第1薬液ノズル27から吐出された薬液が基板Wの上面に供給される処理位置と、第1薬液ノズル27が平面視でスピンチャック21のまわりに位置する退避位置と、の間で第1薬液ノズル27を水平に移動させる。
【0059】
同様に、第2薬液ノズル31は、鉛直方向および水平方向の少なくとも一方に第2薬液ノズル31を移動させる第2ノズル移動ユニット34に接続されている。第2ノズル移動ユニット34は、第2薬液ノズル31が先端に取り付けられた水平に延びる第2ノズルアーム34aを含む。第2ノズル移動ユニット34は、第2ノズルアーム34aを移動させることにより、第2薬液ノズル31から吐出された薬液が基板Wの上面に供給される処理位置と、第2薬液ノズル31が平面視でスピンチャック21のまわりに位置する退避位置と、の間で第2薬液ノズル31を水平に移動させる。
【0060】
第1ノズル移動ユニット30は、平面視で基板Wの中央部を通る円弧状の経路に沿って第1薬液ノズル27を水平に移動させる旋回ユニットであってもよいし、平面視で基板Wの中央部を通る直線状の経路に沿って第1薬液ノズル27を水平に移動させるスライドユニットであってもよい。第2ノズル移動ユニット34についても同様である。図4Aは、第1ノズル移動ユニット30および第2ノズル移動ユニット34の両方が旋回ユニットである例を示している。
【0061】
下面ノズル35は、スピンベース23の上面23uと基板Wの下面との間に配置された円板部と、円板部から下方に延びる筒状部とを含む。下面ノズル35の筒状部は、スピンベース23の中央部を上下に貫通する貫通穴に挿入されている。下面ノズル35の筒状部は、回転軸線A1に沿って上下に延びている。下面ノズル35の液吐出口は、下面ノズル35の円板部の上面中央部で開口している。基板Wがスピンチャック21に保持されている状態では、下面ノズル35の液吐出口が、基板Wの下面中央部に上下に対向する。
【0062】
下面ノズル35は、下面ノズル35にリンス液を案内するリンス液配管36に接続されている。リンス液配管36に介装されたリンス液バルブ37が開かれると、リンス液が、下面ノズル35の吐出口から上方に連続的に吐出される。下面ノズル35から吐出されるリンス液は、純水である。リンス液は、IPA(イソプロピルアルコール)、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(たとえば、10~100ppm程度)の塩酸水、および希釈濃度(たとえば、10~100ppm程度)のアンモニア水のいずれかであってもよい。
【0063】
スピンベース23の内周面と下面ノズル35の外周面は、上下に延びる筒状の気体流路38を形成している。下筒状通路は、スピンベース23の上面23uの中央部で開口する中央開口38oを含む。下面ノズル35の円板部は、中央開口38oの上方に配置されており、平面視で中央開口38oに重なっている。気体流路38は、不活性ガスをスピンベース23の中央開口38oに導く気体配管39に接続されている。気体配管39に介装された気体バルブ40が開かれると、不活性ガスが、スピンベース23の中央開口38oから上方に連続的に吐出される。スピンベース23の中央開口38oから吐出される不活性ガスは、窒素ガスである。不活性ガスは、ヘリウムガスやアルゴンガスなどの窒素ガス以外のガスであってもよい。
【0064】
処理ユニット2は、さらに、スピンチャック21の上方に配置された遮断部材41を含む。図3は、遮断部材41が円板状の遮断板である例を示している。遮断部材41は、スピンチャック21の上方に水平に配置された円板部である。遮断部材41は、円板部の外周から下方に延びる筒状部をさらに含んでいてもよい。遮断部材41は、遮断部材41の中央部から上方に延びる筒状の支軸42によって水平に支持されている。遮断部材41の中心線は、基板Wの回転軸線A1上に配置されている。遮断部材41の下面は、基板Wの上面に対向する対向面である。遮断部材41の下面は、基板Wの上面と平行であり、基板Wの直径以上の外径を有している。
【0065】
遮断部材41は、遮断部材41を鉛直に昇降させる遮断部材昇降ユニット43に接続されている。遮断部材昇降ユニット43は、退避位置(図3に示す位置)から処理位置までの範囲内の任意の位置に遮断部材41を位置させる。処理位置は、センターロボットCRのハンドHc(図1参照)が基板Wと遮断部材41との間に進入できない高さまで遮断部材41の下面が基板Wの上面に近接する近接位置である。退避位置は、センターロボットCRのハンドHcが遮断部材41と基板Wとの間に進入可能な高さまで遮断部材41が退避した離間位置である。処理位置には、液処理位置(図12A図12Bに示す位置)と乾燥処理位置(図12Cに示す位置)とが含まれる。液処理位置は、乾燥処理位置と退避位置との間の位置である。
【0066】
中心ノズル44は、遮断部材41の下面の中央部で開口する中央開口47oを介して処理液や処理ガスなどの処理流体を基板Wに供給する。中心ノズル44は、回転軸線A1に沿って上下に延びている。中心ノズル44は、遮断部材41の中央部を上下に貫通する貫通穴に挿入されている。遮断部材41の内周面は、径方向(回転軸線A1に直交する方向)に間隔を空けて中心ノズル44の外周面を取り囲んでいる。中心ノズル44は、遮断部材41と共に昇降する。処理流体を吐出する中心ノズル44の吐出口は、遮断部材41の中央開口47oの上方に配置されている。
【0067】
中心ノズル44は、中心ノズル44にリンス液を案内するリンス液配管45に接続されている。リンス液配管45に介装されたリンス液バルブ46が開かれると、リンス液が、中心ノズル44の吐出口から下方に連続的に吐出される。中心ノズル44から吐出されたリンス液は、遮断部材41の中央開口47oを通過し、基板Wの上面に衝突する。中心ノズル44から吐出されるリンス液は、純水である。純水以外の前述のリンス液が中心ノズル44から吐出されてもよい。
【0068】
遮断部材41の内周面と中心ノズル44の外周面は、上下に延びる筒状の気体流路47を形成している。気体流路47は、不活性ガスを遮断部材41の中央開口47oに導く気体配管48に接続されている。気体配管48に介装された気体バルブ49が開かれると、不活性ガスが、遮断部材41の中央開口47oから下方に連続的に吐出される。遮断部材41の中央開口47oから吐出される不活性ガスは、窒素ガスである。不活性ガスは、ヘリウムガスやアルゴンガスなどの窒素ガス以外のガスであってもよい。
【0069】
処理ユニット2は、スピンチャック21の周囲を取り囲む筒状の処理カップ52を含む。処理カップ52は、基板Wから外方に飛散した処理液を受け止める複数のガード53と、複数のガード53によって下方に案内された処理液を受け止める複数のカップ68と、全てのガード53と全てのカップ68とを取り囲む筒状外壁70とを含む。図3は、2つのガード53と2つのカップ68とが設けられており、最も外側のカップ68が外側から2番目のガード53と一体である例を示している。
【0070】
2つのガード53は、スピンチャック21を同心円状に取り囲んでいる。2つのカップ68も、スピンチャック21を同心円状に取り囲んでいる。以下では、最も外側のガード53を第1ガード53Aといい、残りのガード53を第2ガード53Bという。同様に、最も外側のカップ68を第1カップ68Aといい、残りのカップ68を第2カップ68Bという。第1ガード53Aおよび第2ガード53Bを総称して、ガード53といい、第1カップ68Aおよび第2カップ68Bを総称して、カップ68ということがある。
【0071】
図5に示すように、ガード53は、スピンチャック21の周囲を取り囲む円筒部54と、円筒部54から回転軸線A1に向かって斜め上に延びる円筒状の天井部60とを含む。天井部60は、回転軸線A1に向かって斜め上に延びる円筒状の傾斜部61と、傾斜部61の上端から回転軸線A1に向かって水平に延びる円形の水平部62と、天井部60の内周端に相当する水平部62の内周端から下方に突出した円形の折り返し部63とを含む。第1ガード53Aの円筒部54と第2ガード53Bの円筒部54とは、スピンチャック21を同心円状に取り囲んでいる。第1ガード53Aの天井部60は、第2ガード53Bの天井部60の上方に配置されている。
【0072】
第1ガード53Aの天井部60の内周部は、第1ガード53Aの上端部53uに相当する。第2ガード53Bの天井部60の内周部は、第2ガード53Bの上端部に相当する。第1ガード53Aの上端部53uと第2ガード53Bの上端部とは、平面視で基板Wおよびスピンベース23を取り囲む円形の開口を形成している。第1ガード53Aの上端部53uの内径は、第2ガード53Bの上端部の内径よりも小さい。第1ガード53Aの上端部53uの内径は、第2ガード53Bの上端部の内径と等しくてもよい。第1ガード53Aの上端部53uの内径と第2ガード53Bの上端部の内径は、スピンベース23および遮断部材41の外径よりも大きい。
【0073】
ガード53の円筒部54は、天井部60から下方向に鉛直に延びる円筒状の上側鉛直部55を含む。第1ガード53Aの円筒部54は、上側鉛直部55に加えて、天井部60から下方向に鉛直に延びており、上側鉛直部55を同心円状に取り囲む円筒状の外側鉛直部56と、外側鉛直部56の下端部に設けられたベースリング57とを含む。第2ガード53Bの円筒部54は、上側鉛直部55に加えて、上側鉛直部55の内周面から回転軸線A1に向かって斜め下に延びる円筒状の中間傾斜部58と、中間傾斜部58の下端部から下方向に鉛直に延びる円筒状の下側鉛直部59とを含む。
【0074】
図6に示すように、第1ガード53Aの外周面64は、鉛直な直線状の断面を有する円筒状の鉛直部65と、鉛直部65の上端から上方に延びる外側に凸の円弧状の断面を有する円筒状の円弧部66と、円弧部66の上端から回転軸線A1に向かって斜め上に延びる直線状の断面を有する円筒状の傾斜部67とを含む。鉛直部65は、第1ガード53Aの外側鉛直部56の外周面である。傾斜部67は、第1ガード53Aの天井部60の外周面である。円弧部66は、第1ガード53Aの外側鉛直部56と第1ガード53Aの天井部60との結合部の外周面である。
【0075】
図5に示すように、カップ68は、スピンチャック21を取り囲む円筒状の内壁部69iと、径方向に間隔を空けて内壁部69iを取り囲む円筒状の外壁部69oと、内壁部69iの下端部から外壁部69oの下端部に延びる円形の底壁部69bとを含む。内壁部69i、外壁部69o、および底壁部69bは、上向きに開いた環状の液受溝を形成している。ガード53によって受け止められた液体は、液受溝内に流れ落ちる。カップ68内の液体を排出する排液口は、底壁部69bの上面で開口している。
【0076】
第1カップ68Aの内壁部69iは、第2ガード53Bの上側鉛直部55から下方に延びている。第1カップ68Aの内壁部69iは、第2ガード53Bの下側鉛直部59を取り囲んでいる。第1カップ68Aの内壁部69iは、第2カップ68Bの外壁部69oよりも外側に配置されている。
第2カップ68Bの内壁部69iは、チャックハウジング26の外周面に沿って配置されている。チャックハウジング26の外周面は、チャックハウジング26の上端に向かって次第に細くなるテーパー部26tを含む。第2カップ68Bの内壁部69iは、テーパー部26tの下端(外周端)よりも内側に配置されており、平面視でテーパー部26tに重なっている。第2カップ68Bの外壁部69oは、テーパー部26tの下端よりも外側に配置されている。
【0077】
第1ガード53Aの上側鉛直部55は、第1カップ68Aの内壁部69iおよび外壁部69oの間に挿入されている。第2ガード53Bの下側鉛直部59は、第2カップ68Bの内壁部69iおよび外壁部69oの間に挿入されている。第1ガード53Aは、第1カップ68Aから離れており、第1カップ68Aに接触していない。同様に、第2ガード53Bは、第2カップ68Bから離れており、第2カップ68Bに接触していない。第1ガード53Aによって受け止められた処理液は、第1ガード53Aの上側鉛直部55を伝って第1カップ68Aの中に入る。第2ガード53Bによって受け止められた処理液は、第2ガード53Bの下側鉛直部59を伝って第2カップ68Bの中に入る。
【0078】
第1ガード53Aおよび第2ガード53Bは、チャンバー12の隔壁13に対して上下に移動可能である。第1カップ68Aは、第2ガード53Bと一体であり、第2ガード53Bと共に上下に移動する。第1カップ68Aは、第2ガード53Bとは別の部材であり、隔壁13に対して固定されていてもよい。第2カップ68Bは、隔壁13に対して固定されている。第2カップ68Bの底壁部69bは、チャンバー12の床面(隔壁13の床面。以下同様)から上方に離れている。第1カップ68Aの底壁部69bも、チャンバー12の床面から上方に離れている。
【0079】
筒状外壁70は、チャンバー12の床面から上方に延びている。筒状外壁70の上端は、スピンベース23の外周面23oの下端よりも上方に配置されている。筒状外壁70の上端は、基板Wよりも下方に配置されている。筒状外壁70の内周面70iおよび外周面70oは鉛直である。筒状外壁70の内周面70iは、径方向に間隔を空けて第1ガード53Aの外周面64を同心円状に取り囲んでいる。筒状外壁70の外周面70oは、チャンバー12の側壁15(隔壁13の側壁15。以下同様)から内方に離れている。筒状外壁70の内周面70iおよび外周面70oは、第1ガード53Aの外周面64と同心の円筒面であってもよいし、第1ガード53Aの外周面64と同心の円弧状に形成された2つ以上の帯状面と2つ以上の帯状面を接続する2つ以上の接続面とを含んでいてもよい。
【0080】
図3に示すように、複数のガード53は、複数のガード53を鉛直方向に個別に昇降させるガード昇降ユニット51に接続されている。ガード昇降ユニット51は、処理位置から退避位置までの範囲内の任意の位置にガード53を位置させる。図3は、第1ガード53Aおよび第2ガード53Bが退避位置に配置された状態を示している。処理位置は、スピンチャック21に保持されている基板Wが配置される基板Wの保持位置よりもガード53の上端が上方に配置される位置である。退避位置は、ガード53の上端が基板Wの保持位置よりも下方に配置される位置である。
【0081】
処理位置には、上側処理位置(図12Aに示す位置)と下側処理位置(図12Bに示す位置)とが含まれる。上側処理位置および下側処理位置は、いずれも、ガード53の上端が基板Wの保持位置よりも上方に配置される位置である。上側処理位置は、下側処理位置よりも上方の位置である。第1ガード53Aの内側に位置する第2ガード53Bの上側処理位置は、上側処理位置に位置する第1ガード53Aの折り返し部63が、第1ガード53Aの天井部60と第2ガード53Bの天井部60との間の隙間の入口を塞ぐ位置である。第2ガード53Bの下側処理位置は、下側処理位置に位置する第1ガード53Aの折り返し部63が、第1ガード53Aの天井部60と第2ガード53Bの天井部60との間の隙間の入口を塞ぐ位置である。
【0082】
回転している基板Wに処理液を供給するときは、少なくとも一つのガード53が処理位置に配置される。この状態で、処理液が基板Wに供給されると、処理液は、基板Wから外方に振り切られる。振り切られた処理液は、基板Wに水平に対向するガード53の内面に衝突し、このガード53に対応するカップ68に案内される。これにより、基板Wから排出された処理液がカップ68に集められる。
【0083】
図3に示すように、処理ユニット2は、チャンバー12内の気体を排出する排気ダクト78を含む。排気ダクト78は、筒状外壁70に接続されている。排気ダクト78は、基板Wよりも下方に配置されている。排気ダクト78は、チャンバー12の側壁15を貫通している。排気ダクト78は、筒状外壁70からチャンバー12の外まで水平に延びている。排気ダクト78は、基板処理装置1が設置される工場に設けられた排気設備に接続されている。チャンバー12内の気体(ミスト状の液体を含む)は、排気設備の吸引力で排気ダクト78の上流端78uを通じて排気ダクト78内に吸い込まれ、排気ダクト78によって排気設備の方に案内される。
【0084】
排気ダクト78は、筒状外壁70を径方向に貫通する排出穴72に挿入されている。排気ダクト78は、筒状外壁70の内周面70iから突出している。排気ダクト78の上流端78uは、筒状外壁70の内側に配置されている。排気ダクト78の上流端78uは、第1ガード53Aの外周端よりも外側に配置されている。排気ダクト78の上流端78uは、チャンバー12内の気体を吸引する排気口を形成している。排気ダクト78の排気口と筒状外壁70の排出穴72とが重なり合うのであれば、排気ダクト78の上流端78uは、筒状外壁70の外周面70oに接続されていてもよい。排気ダクト78に形成された排気口の数は1つである。複数の排気口が排気ダクト78に形成されてもよい。
【0085】
図5に示すように、筒状外壁70は、第1ガード53Aおよび第2ガード53Bを取り囲む筒状体71と、筒状体71に取り付けられたスライドカバー75とを含む。筒状体71の内周面および外周面は、筒状外壁70の内周面70iおよび外周面70oに相当する。排出穴72(図3参照)は、筒状体71に形成されている。スライドカバー75は、筒状体71を径方向に貫通する貫通穴74の一部を覆っている。筒状体71の貫通穴74とスライドカバー75とは、筒状外壁70の外側から筒状外壁70の内側に流れる気体が通過する排気中継穴73を形成している。
【0086】
スライドカバー75は、筒状外壁70の外側に配置されており、ボルト77によって筒状外壁70に固定されている。図7に示すように、ボルト77は、スライドカバー75に形成された長孔76に挿入されている。図7は、スライドカバー75の長孔76が周方向(回転軸線A1まわりの方向)に延びる例を示している。スライドカバー75は、ボルト77と長孔76とが相対移動できる範囲内で筒状外壁70に対して移動可能である。
【0087】
排気中継穴73は、筒状体71の貫通穴74においてスライドカバー75で覆われていない部分に相当する。スライドカバー75を筒状外壁70に固定するボルト77を緩めて、スライドカバー75を筒状外壁70に対して移動させると、貫通穴74においてスライドカバー75で覆われた部分の面積が変わる。これにより、排気中継穴73の面積が調整される。その後、ボルト77を締めると、スライドカバー75が再び筒状外壁70に固定される。
【0088】
図7は、貫通穴74およびスライドカバー75が四角形状であり、スライドカバー75が周方向に移動可能である例を示している。貫通穴74においてスライドカバー75で塞がれていない部分の面積が小さいと、上下に延びるスリットが筒状外壁70およびスライドカバー75によって形成される。このスリットが排気中継穴73に相当する。排気中継穴73の面積は、排気ダクト78の上流端78uによって形成された排気口の面積よりも小さい。排気中継穴73の面積は、排気口の面積以上であってもよい。
【0089】
図4Bに示すように、筒状外壁70は、平面視で第1ガード53Aを同心円状に取り囲む円筒部91と、円筒部91から外側に突出した一対の突出部92とを含む。一対の突出部92は、基板Wの回転中心に相当する回転軸線A1に対して平面視で互いに反対側に配置されている。円筒部91の内周面91iは、平面視において径方向に間隔を空けて第1ガード53Aの外周面64と直接向かい合っている。径方向における円筒部91の内周面91iと第1ガード53Aの外周面64との間隔は、一定または概ね一定である。前述の排出穴72(図3参照)および貫通穴74(図5参照)は、円筒部91を径方向に貫通している。排気ダクト78は、円筒部91の外周面からチャンバー12の内周面12iに向かって延びている。
【0090】
各突出部92は、円筒部91よりも外側に配置された最外壁94と、円筒部91から最外壁94に延びる一対の側壁93とを含む。水平な断面において、側壁93は、側壁93の内端から側壁93の外端まで直線状に延びている。最外壁94は、一方の側壁93の外端から他方の側壁93の外端に延びている。径方向における最外壁94の内面と第1ガード53Aの外周面64との間隔は、径方向における円筒部91の内周面91iと第1ガード53Aの外周面64との間隔よりも大きい。側壁93の内面と円筒部91の内周面91iとによって形成されたコーナー部の角度は、たとえば、90度または概ね90度である。
【0091】
ガード昇降ユニット51は、筒状外壁70の一対の突出部92に収容されている。ガード昇降ユニット51は、電力や空気圧などのエネルギーを出力部の運動に変換する昇降アクチュエータ98と、昇降アクチュエータ98の出力部の運動をガード53に伝達する伝達機構95とを含む。昇降アクチュエータ98および伝達機構95は、ガード53ごとに2つずつ設けられている。同じガード53に対応する2つの伝達機構95は、回転軸線A1に対して互いに反対側に配置されている。2つの伝達機構95は、一方の突出部92と第1ガード53Aとの間に配置されており、残り2つの伝達機構95は、他方の突出部92と第1ガード53Aとの間に配置されている。
【0092】
昇降アクチュエータ98は、エネルギーを出力部の直線運動に変換するリニアアクチュエータであってもよいし、エネルギーを出力部の回転運動に変換するロータリーアクチュエータであってもよい。昇降アクチュエータ98が電動モータなどのロータリーアクチュエータである場合、伝達機構95は、昇降アクチュエータ98の出力部の回転を上下方向へのガード53の運動に変換する変換機構を備えている。変換機構は、ボールねじ機構またはラックアンドピニオン機構であってもよいし、これら以外であってもよい。
【0093】
図4Bは、昇降アクチュエータ98が電動モータであり、伝達機構95の変換機構がラックアンドピニオン機構である例を示している。ラックアンドピニオン機構は、昇降アクチュエータ98によって回転駆動されるピニオン97と、ピニオン97の回転に応じて軸方向に移動するラック軸96とを含む。2本のラック軸96は、一方の突出部92と第1ガード53Aとの間に配置されており、残りの2本のラック軸96は、他方の突出部92と第1ガード53Aとの間に配置されている。4本のラック軸96は、鉛直な姿勢で支持されている。
【0094】
第1ガード53Aに対応する2本のラック軸96は、ラック軸96ごとに設けられたブラケットを介して第1ガード53Aに連結されている。第2ガード53B(図5参照)に対応する2本のラック軸96は、ラック軸96ごとに設けられたブラケットを介して第2ガード53Bに連結されている。昇降アクチュエータ98がピニオン97を回転させると、ピニオン97の回転角に対応する移動量だけラック軸96がピニオン97に対して上方または下方に移動し、ラック軸96の運動がガード53に伝達される。制御装置3(図1参照)は、同じガード53に対応する2つの昇降アクチュエータ98を制御することにより、第1ガード53Aまたは第2ガード53Bを処理位置から退避位置までの範囲内の任意の位置で静止させる。
【0095】
図5に示すように、処理ユニット2は、チャンバー12内における第1ガード53Aのまわりの空間を上下に仕切る仕切板81を含む。仕切板81は、第1ガード53Aのまわりに配置されている。仕切板81は、第1ガード53Aの外周面64と水平に向かい合う内周リング83と、内周リング83を支持するサポートプレート82とを含む。内周リング83およびサポートプレート82は、第1ガード53Aを取り囲んでいる。内周リング83は、サポートプレート82に固定されている。内周リング83およびサポートプレート82は、チャンバー12内における第1ガード53Aのまわりの空間を上下に仕切っている。
【0096】
サポートプレート82は、筒状外壁70の上方に配置されている。サポートプレート82は、筒状外壁70の上に置かれており、筒状外壁70に支持されている。サポートプレート82は、チャンバー12の隔壁13に固定されている。サポートプレート82は、一体の一つの部材であってもよいし、複数の分割体であってもよい。サポートプレート82の上面は、サポートプレート82の内周端からサポートプレート82の外周端まで水平な平面である。サポートプレート82の上面は、基板Wの回転軸線A1に向かって斜め上にまたは斜め下に延びる平坦な傾斜面であってもよいし、水平で平坦な水平部と水平面に対して斜めに傾いた傾斜部とを含んでいてもよい。
【0097】
サポートプレート82の外周面は、仕切板81の外周端81oに相当する。仕切板81の外周端81oは、チャンバー12の内周面12i(隔壁13の側壁15の内周面。以下同様)に沿って配置されている。仕切板81の外周端81oは、チャンバー12の内周面12iから水平に離れており、チャンバー12の内周面12iと水平に向かい合っている。チャンバー12の内周面12iと仕切板81の外周端81oとの間の外側隙間Goの大きさは、場所にかかわらず一定または概ね一定である。外側隙間Goは、基板Wの厚みよりも大きく、仕切板81の外周端81oから仕切板81の内周端81iまでの径方向への最短距離よりも小さい。
【0098】
内周リング83は、第1ガード53Aの外周面64と径方向に向かい合う鉛直部85と、鉛直部85からサポートプレート82の方に延びる水平部84とを含む。鉛直部85は、サポートプレート82の内側に配置されており、サポートプレート82に取り囲まれている。水平部84は、平面視でサポートプレート82に重なっており、サポートプレート82に接している。水平部84は、サポートプレート82の内周端から第1ガード53Aの方に突出している。水平部84は、サポートプレート82の上方に配置されている。水平部84は、サポートプレート82の下方に配置されていてもよい。図5に示す例の場合、水平部84の上面が仕切板81の上端に相当する。仕切板81の上端は、基板Wよりも下方に配置されている。
【0099】
鉛直部85は、平面視で第1ガード53Aを取り囲んでいる。鉛直部85は、第1ガード53Aのベースリング57の上方に配置されており、平面視でベースリング57に重なっている。鉛直部85の内径は、第1ガード53Aの外側鉛直部56の外径よりも大きく、第1ガード53Aのベースリング57の外径よりも小さい。鉛直部85の内周面は、第1ガード53Aの外周面64と同心または概ね同心の円筒状である。
【0100】
鉛直部85の内周面は、内周リング83の内周面83iに相当する。内周リング83の内周面83iは、内周リング83の内周面83iの上端から内周リング83の内周面83iの下端まで鉛直である。内周リング83の内周面83iの上端は、基板Wよりも下方に配置されている。内周リング83の内周面83iの上端は、筒状外壁70の上端よりも上方に配置されている。内周リング83の内周面83iの下端は、筒状外壁70の上端よりも下方に配置されている。内周リング83の内周面83iの下端は、スピンベース23の外周面23oの下端よりも上方に配置されている。
【0101】
前述のように、第1ガード53Aおよび第2ガード53Bは、上側処理位置から退避位置までの範囲内の任意の位置で静止する。下側処理位置は、上側処理位置と退避位置との間の位置である。上側処理位置および下側処理位置は、いずれも、ガード53の上端が基板Wよりも上方に配置される位置である。退避位置は、ガード53の上端が基板Wよりも下方に配置される位置である。
【0102】
第1ガード53Aがいずれの位置に配置されているときでも、内周リング83の内周面83iの少なくとも一部は、第1ガード53Aの外周面64と等しい高さに配置されている。図6に示すように、第1ガード53Aが上側処理位置に配置されると、第1ガード53Aの外周面64の鉛直部65が径方向に間隔を空けて内周リング83の内周面83iと水平に向かい合う。第1ガード53Aの外周面64の鉛直部65と内周リング83の内周面83iとの両方が鉛直であるから、このとき、鉛直に延びる円筒状の内側隙間Giが、第1ガード53Aと内周リング83との間に形成される。第1ガード53Aが上側処理位置に配置されたとき、鉛直部85は、第1ガード53Aのベースリング57から上方に離れている。
【0103】
第1ガード53Aが上側処理位置に配置されたとき、内周リング83の内周面83iは、仕切板81のうちで最も第1ガード53Aに近づいている。したがって、内周リング83の内周面83iと第1ガード53Aの外周面64の鉛直部65との間の内側隙間Giは、第1ガード53Aと仕切板81との間の隙間のうちで最も小さい最小隙間に相当する。内周リング83の内周面83iから第1ガード53Aの外周面64の鉛直部65までの径方向の距離は、内側隙間Giの大きさD1に相当する。
【0104】
内周リング83の内周面83iは、仕切板81の内周端81iに相当する。仕切板81の内周端81iと第1ガード53Aの外周面64の鉛直部65との間の内側隙間Giは、基板Wの厚みよりも大きく、仕切板81の外周端81oから仕切板81の内周端81iまでの径方向への最短距離よりも小さい。内側隙間Giは、外側隙間Go(図5参照)より小さくてもまたは大きくてもよいし、外側隙間Goと等しくてもよい。
【0105】
鉛直部85の内径および第1ガード53Aの外周面64の鉛直部65の外径が一定であれば、内側隙間Giの大きさD1と内側隙間Giの断面積(水平面に沿う内側隙間Giの断面の面積)とは、第1ガード53Aの高さ(上下方向への第1ガード53Aの位置。以下同様)にかかわらず一定である。これに対して、内側隙間Giの長さL1(上下方向への内側隙間Giの長さL1。以下同様)は、第1ガード53Aの高さに応じて変化する。たとえば、図6に示す位置よりも第1ガード53Aを上方に位置させると、内側隙間Giが上下方向に長くなる。
【0106】
第1ガード53Aの外周面64の鉛直部65が内周リング83の内周面83iに水平に対向する範囲内で第1ガード53Aの高さを変えると、内側隙間Giの大きさD1および断面積は変わらず、内側隙間Giの長さL1が増加または減少する。内側隙間Giの長さL1と第1ガード53Aの高さとは正比例の関係にある。つまり、第1ガード53Aを上下に移動させると、内側隙間Giの長さL1は、第1ガード53Aの移動量に正の定数をかけた値だけ増加または減少する。したがって、第1ガード53Aの外周面64の鉛直部65と内周リング83の内周面83iとの少なくとも一方が斜めに傾いている場合と比較して、内側隙間Giの圧力損失を容易に調整できる。
【0107】
第1ガード53Aを下側処理位置に配置したとき、第1ガード53Aの外周面64の鉛直部65は、径方向に間隔を空けて内周リング83の内周面83iと水平に向かい合ってもよいし、内周リング83の内周面83iと水平に向かい合っていなくてもよい。つまり、第1ガード53Aの外周面64の鉛直部65の上端が、内周リング83の内周面83iの下端よりも下方に配置されてもよい。第1ガード53Aの外周面64の鉛直部65が径方向に間隔を空けて内周リング83の内周面83iと水平に向かい合う場合、内側隙間Giの長さL1は、第1ガード53Aが上側処理位置に配置されているときよりも短い。
【0108】
第1ガード53Aが上側処理位置および下側処理位置のいずれかに配置されているとき、第1ガード53Aと仕切板81との間を通る経路の圧力損失は、第1ガード53Aが退避位置に配置されているときよりも大きい。第1ガード53Aと仕切板81との間を通る経路の圧力損失は、内側隙間Giの断面積に応じて変化する。内側隙間Giの断面積が同じであれば、この圧力損失は、内側隙間Giの長さL1に応じて変化する。したがって、第1ガード53Aが上側処理位置に配置されているとき、第1ガード53Aと仕切板81との間を通る経路の圧力損失は、第1ガード53Aが下側処理位置に配置されているときよりも大きい。
【0109】
内周リング83は、一体の一つの部材であってもよいし、複数の分割体であってもよい。内周リング83は、サポートプレート82と一体であってもよい。この場合、内周リング83の鉛直部85がサポートプレート82の内周端から下方に延びていてもよい。図8は、内周リング83が周方向に並んだ円弧状の3つの分割リング83rに分割されており、それぞれの分割リング83rがボルト87によってサポートプレート82に固定された例を示している。
【0110】
分割リング83rをサポートプレート82に固定するボルト87は、分割リング83rに設けられた長孔86に挿入されている。分割リング83rの長孔86は、径方向に延びている。分割リング83rは、ボルト87と長孔86とが相対移動できる範囲内でサポートプレート82に対して移動可能である。ボルト87を緩めて、分割リング83rをサポートプレート82に径方向に対して移動させると、第1ガード53Aの外周面64の鉛直部65から内周リング83の内周面83iまでの径方向の距離が変化する。これにより、内側隙間Giの大きさD1および断面積を調整できる。
【0111】
図9は、処理ユニット2内における気体の流れについて説明するための断面図である。以下では、図3および図9を参照する。図9は、第1ガード53Aおよび第2ガード53Bが上側処理位置に配置された状態を示している。
排気ダクト78は、基板処理装置1が設置される工場に設けられた排気設備に接続されている。第1ガード53Aの上側の気体は、排気設備の吸引力で第1ガード53Aの上端部53uの方に吸い寄せられ、第1ガード53Aの上端部53uの内側を下方に通過する。図9中の気流F1は、第1ガード53Aの上端部53uの内側を通過する気流を示している。第1ガード53Aの上端部53uの内側を通過した気体は、全てのガード53の内側および下側を通過した後、もしくは、径方向に隣接する2つのガード53の間を通過した後、排気ダクト78内に吸引される。
【0112】
その一方で、仕切板81の内周端81iを構成する内周リング83が第1ガード53Aから離れており、第1ガード53Aと仕切板81との間に内側隙間Giが形成されているので、第1ガード53Aおよび仕切板81の上側の気体は、排気設備の吸引力で第1ガード53Aと仕切板81との間の内側隙間Giの方に吸い寄せられ、内側隙間Giを下方に通過する。図9中の気流F2は、内側隙間Giを通過する気流を示している。内側隙間Giを通過した気体は、排気ダクト78内に吸引される。
【0113】
さらに、筒状外壁70を径方向に貫通する排気中継穴73が筒状外壁70に形成されており、仕切板81の外周端81oを構成するサポートプレート82がチャンバー12の内周面12iから離れているので、仕切板81の上側の気体は、排気設備の吸引力でチャンバー12と仕切板81との間の外側隙間Goの方に吸い寄せられ、外側隙間Goを下方に通過する。その後、この気体は、排気中継穴73から筒状外壁70の内側に吸い込まれ、排気ダクト78内に吸引される。図9中の気流F3は、チャンバー12と仕切板81との間の外側隙間Goを通過し、その後、排気中継穴73を通過する気流を示している。
【0114】
チャンバー12と仕切板81との間の外側隙間Goの大きさは、第1ガード53Aの高さにかかわらず一定である。これに対して、第1ガード53Aと仕切板81との間の内側隙間Giの大きさD1(図6参照)は、第1ガード53Aの高さに応じて変化する。さらに、第1ガード53Aの外周面64の鉛直部65が内周リング83の内周面83iに水平に対向する範囲内で第1ガード53Aの高さを変えると、内側隙間Giの長さL1(図6参照)だけが変化する。したがって、第1ガード53Aの高さを変えることで、内側隙間Giの圧力損失を変更でき、内側隙間Giに流入する気体の流量を変化させることができる。
【0115】
図10は、基板処理装置1の電気的構成を示すブロック図である。
制御装置3は、コンピュータ本体3aと、コンピュータ本体3aに接続された周辺装置3dとを含む、コンピュータである。コンピュータ本体3aは、各種の命令を実行するCPU3b(central processing unit:中央処理装置)と、情報を記憶するメモリー3cとを含む。周辺装置3dは、プログラムP等の情報を記憶するストレージ3eと、リムーバブルメディアRMから情報を読み取るリーダー3fと、ホストコンピュータ等の他の装置と通信する通信装置3gとを含む。
【0116】
制御装置3は、入力装置および表示装置に接続されている。入力装置は、ユーザーやメンテナンス担当者などの操作者が基板処理装置1に情報を入力するときに操作される。情報は、表示装置の画面に表示される。入力装置は、キーボード、ポインティングデバイス、およびタッチパネルのいずれかであってもよいし、これら以外の装置であってもよい。入力装置および表示装置を兼ねるタッチパネルディスプレイが基板処理装置1に設けられてもよい。
【0117】
CPU3bは、ストレージ3eに記憶されたプログラムPを実行する。ストレージ3e内のプログラムPは、制御装置3に予めインストールされたものであってもよいし、リーダー3fを通じてリムーバブルメディアRMからストレージ3eに送られたものであってもよいし、ホストコンピュータなどの外部装置から通信装置3gを通じてストレージ3eに送られたものであってもよい。
【0118】
ストレージ3eおよびリムーバブルメディアRMは、電力が供給されていなくても記憶を保持する不揮発性メモリーである。ストレージ3eは、たとえば、ハードディスクドライブ等の磁気記憶装置である。リムーバブルメディアRMは、たとえば、コンパクトディスクなどの光ディスクまたはメモリーカードなどの半導体メモリーである。リムーバブルメディアRMは、プログラムPが記録されたコンピュータ読取可能な記録媒体の一例である。リムーバブルメディアRMは、一時的ではない有形の記録媒体(non-transitory tangible media)である。
【0119】
ストレージ3eは、複数のレシピを記憶している。レシピは、基板Wの処理内容、処理条件、および処理手順を規定する情報である。複数のレシピは、基板Wの処理内容、処理条件、および処理手順の少なくとも一つにおいて互いに異なる。制御装置3は、ホストコンピュータによって指定されたレシピにしたがって基板Wが処理されるように基板処理装置1を制御する。制御装置3は、後述する各工程を実行するようにプログラムされている。
【0120】
図11は、基板処理装置1によって実行される基板Wの処理の一例について説明するための工程図である。以下では、図3および図11を参照する。
処理される基板Wは、たとえば、シリコンウエハなどの半導体ウエハである。基板Wの表面は、トランジスタやキャパシタ等のデバイスが形成されるデバイス形成面に相当する。基板Wは、パターン形成面である基板Wの表面にパターンが形成された基板Wであってもよいし、基板Wの表面にパターンが形成されていない基板Wであってもよい。
【0121】
基板処理装置1によって基板Wが処理されるときは、チャンバー12内に基板Wを搬入する搬入工程(図11のステップS1)が行われる。
具体的には、遮断部材41が退避位置に位置しており、全てのガード53が退避位置に位置しており、全てのスキャンノズルが退避位置に位置している状態で、センターロボットCR(図1参照)が、基板WをハンドHcで支持しながら、ハンドHcをチャンバー12内に進入させる。そして、センターロボットCRは、基板Wの表面が上に向けられた状態でハンドHc上の基板Wを複数のチャックピン22の上に置く。その後、複数のチャックピン22が基板Wの外周面に押し付けられ、基板Wが把持される。センターロボットCRは、基板Wをスピンチャック21の上に置いた後、ハンドHcをチャンバー12の内部から退避させる。
【0122】
次に、気体バルブ49および気体バルブ40が開かれ、遮断部材41の中央開口47oとスピンベース23の中央開口38oとが窒素ガスの吐出を開始する。これにより、基板Wと遮断部材41との間の空間と基板Wとスピンベース23との間の空間が窒素ガスで満たされる。その一方で、遮断部材昇降ユニット43が遮断部材41を退避位置から液処理位置に下降させ、ガード昇降ユニット51が少なくとも一つのガード53を退避位置から処理位置に上昇させる。その後、電動モータ25が駆動され、基板Wの回転が開始される(図11のステップS2)。
【0123】
次に、第1薬液の一例であるDHFを基板Wの上面に供給する第1薬液供給工程が行われる(図11のステップS3)。
具体的には、遮断部材41が液処理位置に位置しており、少なくとも一つのガード53が処理位置に位置している状態で、第1ノズル移動ユニット30が第1薬液ノズル27を退避位置から処理位置に移動させる。その後、第1薬液バルブ29が開かれ、第1薬液ノズル27がDHFの吐出を開始する。第1薬液バルブ29が開かれてから所定時間が経過すると、第1薬液バルブ29が閉じられ、DHFの吐出が停止される。その後、第1ノズル移動ユニット30が、第1薬液ノズル27を退避位置に移動させる。
【0124】
第1薬液ノズル27から吐出されたDHFは、第1薬液供給速度で回転している基板Wの上面に衝突した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。そのため、DHFが基板Wの上面全域に供給され、基板Wの上面全域を覆うDHFの液膜が形成される。第1薬液ノズル27がDHFを吐出しているとき、第1ノズル移動ユニット30は、基板Wの上面に対するDHFの着液位置が中央部と外周部とを通るように着液位置を移動させてもよいし、中央部で着液位置を静止させてもよい。
【0125】
次に、リンス液の一例である純水を基板Wの上面に供給する第1リンス液供給工程が行われる(図11のステップS4)。
具体的には、遮断部材41が液処理位置に位置しており、少なくとも一つのガード53が処理位置に位置している状態で、リンス液バルブ46が開かれ、中心ノズル44が純水の吐出を開始する。純水の吐出が開始される前に、ガード昇降ユニット51は、基板Wから外方に飛散した液体を受け止めるガード53を切り替えるために、少なくとも一つのガード53を鉛直に移動させてもよい。中心ノズル44から吐出された純水は、第1リンス液供給速度で回転している基板Wの上面中央部に衝突した後、基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板W上のDHFは、中心ノズル44から吐出された純水によって洗い流される。これにより、基板Wの上面全域を覆う純水の液膜が形成される。リンス液バルブ46が開かれてから所定時間が経過すると、リンス液バルブ46が閉じられ、純水の吐出が停止される。
【0126】
次に、第2薬液の一例であるSC1を基板Wの上面に供給する第2薬液供給工程が行われる(図11のステップS5)。
具体的には、遮断部材41が液処理位置に位置しており、少なくとも一つのガード53が処理位置に位置している状態で、第2ノズル移動ユニット34が第2薬液ノズル31を退避位置から処理位置に移動させる。その後、第2薬液バルブ33が開かれ、第2薬液ノズル31がSC1の吐出を開始する。SC1の吐出が開始される前に、ガード昇降ユニット51は、基板Wから外方に飛散した液体を受け止めるガード53を切り替えるために、少なくとも一つのガード53を鉛直に移動させてもよい。第2薬液バルブ33が開かれてから所定時間が経過すると、第2薬液バルブ33が閉じられ、SC1の吐出が停止される。その後、第2ノズル移動ユニット34が、第2薬液ノズル31を退避位置に移動させる。
【0127】
第2薬液ノズル31から吐出されたSC1は、第2薬液供給速度で回転している基板Wの上面に衝突した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板W上の純水は、第2薬液ノズル31から吐出されたSC1に置換される。これにより、基板Wの上面全域を覆うSC1の液膜が形成される。第2薬液ノズル31がSC1を吐出しているとき、第2ノズル移動ユニット34は、基板Wの上面に対するSC1の着液位置が中央部と外周部とを通るように着液位置を移動させてもよいし、中央部で着液位置を静止させてもよい。
【0128】
次に、リンス液の一例である純水を基板Wの上面に供給する第2リンス液供給工程が行われる(図11のステップS6)。
具体的には、遮断部材41が液処理位置に位置しており、少なくとも一つのガード53が処理位置に位置している状態で、リンス液バルブ46が開かれ、中心ノズル44が純水の吐出を開始する。純水の吐出が開始される前に、ガード昇降ユニット51は、基板Wから外方に飛散した液体を受け止めるガード53を切り替えるために、少なくとも一つのガード53を鉛直に移動させてもよい。中心ノズル44から吐出された純水は、第2リンス液供給速度で回転している基板Wの上面中央部に衝突した後、基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板W上のSC1は、中心ノズル44から吐出された純水によって洗い流される。これにより、基板Wの上面全域を覆う純水の液膜が形成される。リンス液バルブ46が開かれてから所定時間が経過すると、リンス液バルブ46が閉じられ、純水の吐出が停止される。
【0129】
次に、基板Wの回転によって基板Wを乾燥させる乾燥工程が行われる(図11のステップS7)。
具体的には、少なくとも一つのガード53が処理位置に位置している状態で、遮断部材昇降ユニット43が遮断部材41を液処理位置から乾燥処理位置に下降させる。この状態で、電動モータ25が基板Wを回転方向に加速させ、第1薬液供給工程から第2リンス液供給工程までの期間における基板Wの回転速度よりも大きい高回転速度(たとえば数千rpm)で基板Wを回転させる。これにより、液体が基板Wから除去され、基板Wが乾燥する。基板Wの高速回転が開始されてから所定時間が経過すると、電動モータ25が回転を停止する。これにより、基板Wの回転が停止される(図11のステップS8)。
【0130】
次に、基板Wをチャンバー12から搬出する搬出工程(図11のステップS9)が行われる。
具体的には、遮断部材昇降ユニット43が遮断部材41を退避位置まで上昇させ、ガード昇降ユニット51が全てのガード53を退避位置まで下降させる。さらに、気体バルブ49および気体バルブ40が閉じられ、遮断部材41の中央開口47oとスピンベース23の中央開口38oとが窒素ガスの吐出を停止する。その後、センターロボットCRが、ハンドHcをチャンバー12内に進入させる。センターロボットCRは、複数のチャックピン22が基板Wの把持を解除した後、スピンチャック21上の基板WをハンドHcで支持する。その後、センターロボットCRは、基板WをハンドHcで支持しながら、ハンドHcをチャンバー12の内部から退避させる。これにより、処理済みの基板Wがチャンバー12から搬出される。
【0131】
図12Aは、薬液を基板Wに供給するときの第1ガード53Aおよび第2ガード53Bの位置の一例を示す断面図である。図12Bは、リンス液を基板Wに供給するときの第1ガード53Aおよび第2ガード53Bの位置の一例を示す断面図である。図12Cは、基板Wを乾燥させるときの第1ガード53Aおよび第2ガード53Bの位置の一例を示す断面図である。
【0132】
図12Aに示すように、薬液を基板Wに供給するときは、全てのガード53のうちで最も外側に位置するガード53、つまり、第1ガード53Aを上側処理位置に位置させながら、回転している基板Wの上面に向けて薬液を吐出する。このとき、第2ガード53Bは、第2ガード53Bが第1ガード53Aに近接する上側処理位置に配置されていてもよいし、第2ガード53Bが第1ガード53Aから離れた退避位置に配置されていてもよい。図12Aは、第1ガード53Aおよび第2ガード53Bの両方が上側処理位置に配置された例を示している。
【0133】
第1ガード53Aの外周面64の鉛直部65が内周リング83の内周面83iに水平に対向する範囲内であれば、第1ガード53Aの上側処理位置は、第1薬液を基板Wに供給するときと(第1薬液供給工程(図11のステップS3))、第2薬液を基板Wに供給するとき(第2薬液供給工程(図11のステップS4))とで異なっていてもよい。また、第1ガード53Aを上側処理位置に配置するのであれば、第2ガード53Bの位置は、第1薬液を基板Wに供給するときと、第2薬液を基板Wに供給するときとで異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0134】
前述のように、第1ガード53Aの上端部53uの内側に形成された開口の面積とチャンバー12と仕切板81との間の外側隙間Goの大きさとが、第1ガード53Aの高さにかかわらず一定である一方で、第1ガード53Aを上側処理位置に配置すると、第1ガード53Aと仕切板81との間の内側隙間Giが最も小さくなる。そのため、第1ガード53Aと仕切板81との間の内側隙間Giを通過する気体の流量が減少する。その代わりに、第1ガード53Aの上端部53uの内側を通過する気体の流量とチャンバー12と仕切板81との間の外側隙間Goを通過する気体の流量との少なくとも一方が増加する。
【0135】
第1ガード53Aの上端部53uの内側を通過する気体の流量を「中央流量」と、第1ガード53Aと仕切板81との間の内側隙間Giを通過する気体の流量を「内側流量」と、チャンバー12と仕切板81との間の外側隙間Goを通過する気体の流量を「外側流量」と、それぞれ定義する。図12Aに示す状態では、内側流量は、外側流量よりも少なく(内側流量<外側流量)、内側流量および外側流量の和は、中央流量以下である(内側流量+外側流量≦中央流量)。ただし、中央流量、内側流量、および外側流量の関係は、これに限られない。
【0136】
図12Bは、リンス液を基板Wに供給するときの第1ガード53Aおよび第2ガード53Bの位置の一例を示している。第1リンス液供給工程(図11のステップS4)および第2リンス液供給工程(図11のステップS6)の少なくとも一方においてリンス液を基板Wに供給するときは、第1ガード53Aを下側処理位置に位置させながら、回転している基板Wの上面に向けてリンス液を吐出する。このとき、第2ガード53Bは、下側処理位置に配置されていてもよいし、退避位置に配置されていてもよい。図12Bは、第1ガード53Aおよび第2ガード53Bの両方が下側処理位置に配置された例を示している。
【0137】
第1ガード53Aの下側処理位置は、第1リンス液供給工程(図11のステップS4)と第2リンス液供給工程(図11のステップS6)とで異なっていてもよいし、同じであってもよい。また、第1ガード53Aを下側処理位置に配置するのであれば、第2ガード53Bの位置は、第1リンス液供給工程(図11のステップS4)と第2リンス液供給工程(図11のステップS6)とで異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0138】
第1ガード53Aを下側処理位置に配置すると、第1ガード53Aが上側処理位置に位置するときよりも第1ガード53Aと仕切板81との間の内側隙間Giの圧力損失が減少するので、第1ガード53Aが上側処理位置に位置するときと比較すると、内側流量が増加する。図12Bに示す状態では、内側流量は、外側流量以下であり(内側流量≦外側流量)、内側流量および外側流量の和は、中央流量以上である(内側流量+外側流量≧中央流量)。ただし、中央流量、内側流量、および外側流量の関係は、これに限られない。
【0139】
図12Cは、基板Wを乾燥させるときの第1ガード53Aおよび第2ガード53Bの位置の一例を示している。乾燥工程(図11のステップS7)において基板Wを乾燥させるときは、上側処理位置、下側処理位置、および退避位置のいずれに第1ガード53Aおよび第2ガード53Bを配置してもよい。図12Cは、第1ガード53Aが上側処理位置に配置され、第2ガード53Bが退避位置に配置された例を示している。図12Cに示す状態は、第2ガード53Bが退避位置に配置されている点で図12Aに示す状態とは異なる。
【0140】
図12Aに示す状態では、第1ガード53Aの上端部53uの内側を通過した気体が、第1ガード53Aおよび第2ガード53Bの内側および下側を通過するのに対し、図12Cに示す状態では、第1ガード53Aの上端部53uの内側を通過した気体が、第1ガード53Aおよび第2ガード53Bの間を通過する。このような違いはあるものの、中央流量、内側流量、および外側流量の関係は、図12Aに示す状態と図12Cに示す状態とで等しい。ただし、中央流量、内側流量、および外側流量の関係は、これに限られない。
【0141】
薬液が基板Wの上面に衝突すると、薬液のミストが発生する。基板Wから外方に飛散した薬液がガード53の内面に衝突したときも、薬液のミストが発生する。基板Wがチャンバー12内にあるときは、クリーンエアーのダウンフローがチャンバー12内に形成されており、排気ダクト78がチャンバー12内の気体を吸引している。したがって、薬液のミストは、第1ガード53Aの上端部53uを通じて第1ガード53Aの外に漏れることなく、排気ダクト78内に吸引される。さらに、薬液を基板Wに供給するときは、図12Aに示すように第1ガード53Aを上側処理位置に配置しており、中央流量を増加させているので、薬液のミストはより確実に排気ダクト78内に吸引される。
【0142】
薬液を基板Wに供給した後は、リンス液を基板Wに供給する。リンス液を基板Wに供給するときは、図12Bに示すように第1ガード53Aを下側処理位置に配置しており、内側流量を増加させているので、微量の薬液のミストが第1ガード53Aの上端部53uを通じて第1ガード53Aの外に漏れたとしても、漏れ出た薬液のミストや漏れ出たミスト状の薬液を含む雰囲気(以下、これらを総称して「薬液雰囲気」という。)は、第1ガード53Aと仕切板81との間の内側隙間Giか、チャンバー12と仕切板81との間の外側隙間Goを通って排気ダクト78内に吸引される。
【0143】
その一方で、リンス液を基板Wに供給するときは、中央流量、つまり、第1ガード53Aの上端部53uの内側を通過する気体の流量が減少している。リンス液を基板Wに供給しているときは、薬液のミストではなく、純水などのリンス液のミストが発生する。したがって、リンス液のミストが第1ガード53Aの上端部53uを通じて第1ガード53Aの外に漏れたとしても、チャンバー12や基板Wの汚染は発生しない。
【0144】
薬液を基板Wに供給したときに、微量の薬液のミストが第1ガード53Aの外に漏れたとしても、基板Wの乾燥を開始したときには、全てまたは殆ど全ての薬液雰囲気が排気ダクト78内に吸引されている。薬液雰囲気が残っていたとしても、残留量が極めて少ない。したがって、図12Cに示す例のように、第1ガード53Aを上側処理位置に位置させながら、基板Wを乾燥させてもよい。この場合、基板Wの乾燥に伴って発生したミストが第1ガード53Aの上端部53uを通じて第1ガード53Aの外に漏れることを防止できる。基板Wの乾燥開始時に薬液雰囲気が残っていることが懸念される場合は、第1ガード53Aを下側処理位置または退避位置に位置させながら、基板Wを乾燥させてもよい。
【0145】
以上のように第1実施形態では、第1ガード53Aのまわりに仕切板81が配置されている。仕切板81の外周端81oは、チャンバー12の内周面12iから内方に離れており、仕切板81の内周端81iは、第1ガード53Aを取り囲んでいる。ガード昇降ユニット51が第1ガード53Aを昇降させると、仕切板81の内周端81iから第1ガード53Aまでの距離が増加または減少する。これにより、第1ガード53Aと仕切板81との間を通る経路の圧力損失を増加または減少させることができる。
【0146】
排気ダクト78は、第1ガード53Aの内側の気体と仕切板81の下側の気体とを、排気ダクト78の上流端78uから排気ダクト78の内部に吸引する。第1ガード53Aの上側の気体は、第1ガード53Aの上端部53uの内側を下方に通過し、排気ダクト78内に吸引される。仕切板81の上側の気体は、チャンバー12と仕切板81との間の隙間と、第1ガード53Aと仕切板81との間の隙間と、の少なくとも一方を下方に通過し、排気ダクト78内に吸引される。
【0147】
ガード昇降ユニット51が仕切板81の内周端81iから第1ガード53Aまでの距離を減少させると、第1ガード53Aと仕切板81との間を通る経路の圧力損失が増加するので、第1ガード53Aの上端部53uの内側を通過する気体の流量が増加する。これにより、第1ガード53Aの上端部53uの内側を通じて第1ガード53Aの外に漏れる薬液のミストの量を減らすことができる。
【0148】
ガード昇降ユニット51が仕切板81の内周端81iから第1ガード53Aまでの距離を増加させると、第1ガード53Aと仕切板81との間を通る経路の圧力損失が減少するので、第1ガード53Aと仕切板81との間を通過する気体の流量が増加する。薬液のミストが第1ガード53Aの外に漏れたとしても、漏れ出たミストは、チャンバー12と仕切板81との間の隙間と、第1ガード53Aと仕切板81との間の隙間と、の少なくとも一方を下方に通過し、排気ダクト78内に吸引される。これにより、漏れ出たミストを確実に除去できる。
【0149】
第1ガード53Aの内側の雰囲気を重点的に吸引することは、薬液のミストが第1ガード53Aの外に漏れることを防止する上で重要である。第1ガード53Aおよび仕切板81の上方の雰囲気を重点的に吸引することは、漏れ出た薬液のミストを除去する上で重要である。したがって、排気のバランスをとること、つまり、重点的に排気する箇所を変更することは、基板Wおよびチャンバー12の汚染を減らす上で重要である。
【0150】
第1ガード53Aを昇降させて、仕切板81の内周端81iから第1ガード53Aまでの最短距離を変更すれば、第1ガード53Aの内側と第1ガード53Aおよび仕切板81の上方との間で重点的に排気する箇所を変更できる。したがって、基板Wの処理の進行に応じて第1ガード53Aを昇降させれば、薬液のミストが存在し得る箇所の雰囲気を重点的に吸引でき、基板Wおよびチャンバー12の汚染を減らすことができる。
【0151】
本実施形態では、基板W上の薬液をリンス液で置換する。薬液のミストが第1ガード53Aの外に漏れた場合、薬液雰囲気は、リンス液ノズルの一例である中心ノズル44がリンス液を吐出しているときに、第1ガード53Aおよび仕切板81の上方を漂う。中心ノズル44がリンス液を吐出しているときは、薬液ノズルが薬液を吐出しているときよりも仕切板81の内周端81iから第1ガード53Aまでの最短距離が大きい。これにより、第1ガード53Aおよび仕切板81の上方を漂う薬液雰囲気を、チャンバー12と仕切板81との間の隙間と、第1ガード53Aと仕切板81との間の隙間と、の少なくとも一方に吸引できる。
【0152】
本実施形態では、筒状外壁70が仕切板81の下側で第1ガード53Aを取り囲んでいる。第1ガード53Aの上端部53uの内側を通過した気体は、筒状外壁70の排出穴72と排気ダクト78とを通過し、チャンバー12の外に排出される。第1ガード53Aと仕切板81との間を通過した気体も、筒状外壁70の排出穴72と排気ダクト78とを通過し、チャンバー12の外に排出される。したがって、これらの気体は、筒状外壁70の排気中継穴73を通過せずに、チャンバー12の外に排出される。
【0153】
その一方で、チャンバー12と仕切板81との間を通過した気体は、筒状外壁70の排気中継穴73を通過して、筒状外壁70の外側から筒状外壁70の内側に移動する。その後、この気体は、筒状外壁70の排出穴72と排気ダクト78とを通過し、チャンバー12の外に排出される。したがって、筒状外壁70のまわりの気体は、筒状外壁70の外側から筒状外壁70の内側に移動し、その後、筒状外壁70の内側から筒状外壁70の外側に移動する。
【0154】
このように、チャンバー12と仕切板81との間を通過した気体が、筒状外壁70の排気中継穴73を通過し、その後、筒状外壁70の排出穴72と排気ダクト78とを通過するので、チャンバー12と仕切板81との間に流入した気体が通過する経路は、第1ガード53Aの上端部53uの内側を通過する経路よりも圧力損失が大きい。したがって、第1ガード53Aの上端部53uの内側を通過する気体の流量と、第1ガード53Aと仕切板81との間を通過する気体の流量とを増やすことができる。
【0155】
第1ガード53Aの上端部53uの内側を通過する気体の流量を増やすことにより、第1ガード53Aの外に漏れる薬液のミストを減らすことができる。さらに、薬液のミストが第1ガード53Aの外に漏れたとしても、漏れ出たミストは、第1ガード53Aの上端部53uからそのまわりに流れる。仕切板81の内周端81iは、仕切板81の外周端81oよりも第1ガード53Aの近くに配置されている。したがって、第1ガード53Aと仕切板81との間を通過する気体の流量を増やすことより、漏れ出た薬液のミストをより確実に除去できる。
【0156】
本実施形態では、筒状外壁70の排気中継穴73の面積が筒状外壁70の排出穴72の面積よりも小さい。第1ガード53Aの上端部53uの内側を通過した気体と第1ガード53Aと仕切板81との間を通過した気体とは、排気中継穴73を通過しないのに対して、チャンバー12と仕切板81との間を通過した気体は、排気中継穴73を通過し、その後、排出穴72と排気ダクト78とを通過する。したがって、チャンバー12と仕切板81との間に流入した気体が通過する経路の圧力損失が大きい。これにより、第1ガード53Aの上端部53uの内側を通過する気体の流量と、第1ガード53Aと仕切板81との間を通過する気体の流量とをさらに増やすことができる。
【0157】
本実施形態では、筒状外壁70の外側から筒状外壁70の内側に流れる気体が通過する排気中継穴73が、筒状体71を貫通する貫通穴と、貫通穴の一部を覆うスライドカバー75とによって形成されている。可動カバーの一例であるスライドカバー75を筒状体71に対して移動させると、排気中継穴73の開度が変わり、排気中継穴73の圧力損失が増加または減少する。これにより、排気のバランスを変更できる。つまり、第1ガード53Aの上端部53uの内側を通過する排気と、第1ガード53Aと仕切板81との間を通過する排気と、チャンバー12と仕切板81との間を通過する排気と、のバランスを変更することができる。
【0158】
本実施形態では、仕切板81の水平部84が、チャンバー12内における第1ガード53Aのまわりの空間を上下に仕切っており、仕切板81の鉛直部85が、水平部84から下方に延びている。鉛直部85の内周面は、平面視で第1ガード53Aの外周面64の鉛直部65を取り囲んでいる。第1ガード53Aを上側処理位置に移動させると、第1ガード53Aの外周面64の鉛直部65が鉛直部85の内側に配置され、鉛直部85の内周面と水平に向かい合う。
【0159】
第1ガード53Aが上側処理位置に配置されているとき、仕切板81の内周端81iから第1ガード53Aまでの距離は、第1ガード53Aの外周面64の鉛直部65と鉛直部85の内周面との間で最も小さい。言い換えると、第1ガード53Aが上側処理位置に配置されているときは、鉛直部85の内周面から第1ガード53Aの外周面64の鉛直部65までの径方向への距離が、仕切板81の内周端81iから第1ガード53Aまでの最短距離に相当する。したがって、第1ガード53Aと仕切板81との間を通る経路の圧力損失は、主として、鉛直部85の内周面から第1ガード53Aの外周面64の鉛直部65までの径方向への距離に依存する。
【0160】
第1ガード53Aの外周面64の鉛直部65の断面と鉛直部85の内周面の断面とはいずれも鉛直である。さらに、鉛直部85が水平部84から下方に延びているから、鉛直部85の内周面の下端は、水平部84よりも下方に配置されている。言い換えると、鉛直部85の内周面は、上下方向にある程度の長さを有している。したがって、上下方向への第1ガード53Aの位置を精密に制御しなくても、第1ガード53Aの外周面64の鉛直部65を鉛直部85の内周面に水平に対向させることができ、第1ガード53Aと仕切板81との間を通る経路の圧力損失を容易に調整できる。
【0161】
本実施形態では、水平部84と鉛直部85とを含む内周リング83が、サポートプレート82に支持されている。内周リング83は、サポートプレート82に対して径方向に移動可能である。サポートプレート82に対して内周リング83を径方向に移動させると、内周リング83が第1ガード53Aに対して径方向に移動し、鉛直部85の内周面から第1ガード53Aの外周面64の鉛直部65までの径方向への距離が変化する。したがって、仕切板81の内周端81iから第1ガード53Aまでの最短距離を変更することができ、第1ガード53Aと仕切板81との間を通る経路の圧力損失を増加または減少させることができる。
【0162】
次に、第2実施形態について説明する。
第1実施形態に対する第2実施形態の主要な相違点は、3つのガード53が1つの処理カップ52に設けられていることである。
図13は、本発明の第2実施形態に係る基板処理装置1に備えられた処理カップ52の鉛直断面を示す断面図である。図13において、前述の図1図12Cに示された構成と同等の構成については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0163】
3つのガード53は、スピンチャック21を同心円状に取り囲んでいる。最も外側のガード53は、第1ガード53Aであり、第1ガード53Aの内側のガード53は、第2ガード53Bであり、第2ガード53Bの内側のガード53は、第3ガード53Cである。第2ガード53Bの形態は、第1実施形態に係る第1ガード53Aと同様である。第3ガード53Cの形態は、第1実施形態に係る第2ガード53Bと同様である。つまり、第2実施形態は、第1実施形態に係る第1ガード53Aの外側に追加のガード53(第2実施形態に係る第1ガード53A)を配置した点で第1実施形態とは異なる。
【0164】
第1ガード53Aの天井部60は、回転軸線A1に向かって斜め上に延びる円筒状の傾斜部61と、傾斜部61の上端から回転軸線A1に向かって水平に延びる円形の水平部62とを含む。第1ガード53Aの天井部60は、天井部60の内周端に相当する水平部62の内周端から下方に突出した円形の折り返し部63を含んでいてもよい。
第1ガード53Aの円筒部54は、天井部60から下方向に鉛直に延びる円筒状の上側鉛直部55と、上側鉛直部55の下端部に設けられたベースリング57とを含む。第1ガード53Aの上端部53uの内径は、基板Wの直径よりも大きく、スピンベース23の外径よりも大きい。図13は、第1ガード53Aの上端部53uの内径が、第2ガード53Bの上端部の内径と等しく、第3ガード53Cの上端部の内径よりも小さい例を示している。
【0165】
ガード昇降ユニット51(図3参照)は、上側処理位置と退避位置との間で、第1ガード53A、第2ガード53B、および第3ガード53Cを鉛直方向に個別に昇降させる。図13は、第1ガード53A、第2ガード53B、および第3ガード53Cが上側処理位置に配置された例を示している。第1ガード53Aを上側処理位置に配置すると、第1ガード53Aの外周面64の鉛直部65が径方向に間隔を空けて内周リング83の内周面83iと水平に向かい合い、鉛直に延びる円筒状の内側隙間Giが、第1ガード53Aと内周リング83との間に形成される。これにより、第1ガード53Aと仕切板81との間を通る経路の圧力損失が増加する。したがって、第2実施形態に係る基板処理装置1では、第1実施形態に係る基板処理装置1と同様の効果を奏することができる。
【0166】
他の実施形態
本発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
たとえば、薬液を、基板Wの上面ではなく、基板Wの下面に供給してもよい。もしくは、基板Wの上面および下面の両方に薬液を供給してもよい。これらの場合、下面ノズル35に薬液を吐出させればよい。
【0167】
基板Wに向けてリンス液を吐出しているときに、第1ガード53Aを下側処理位置に配置するのではなく、リンス液の吐出を停止した後に、第1ガード53Aを下側処理位置に配置してもよい。
スピンチャック21は、複数のチャックピン22を基板Wの外周面に接触させるメカニカルチャックに限らず、非デバイス形成面である基板Wの裏面(下面)をスピンベース23の上面23uに吸着させることにより基板Wを水平に保持するバキュームチャックであってもよい。スピンチャック21は、ベルヌーイの定理により発生する吸引力で基板Wを水平に保持するベルヌーイチャックであってもよいし、電気的な力で基板Wを水平に保持する静電チャックであってもよい。
【0168】
筒状外壁70の排気中継穴73の開度は一定であってもよい。この場合、可動カバーの一例であるスライドカバー75を省略してもよい。
排気中継穴73を筒状外壁70から省略してもよい。この場合、筒状外壁70の上端と仕切板81の下面との間、および、筒状外壁70の下端とチャンバー12の床面との間の少なくとも一方に隙間を設ければよい。
【0169】
仕切板81は、仕切板81の外周端81oから仕切板81の内周端81iまで厚みが一定の平板であってもよい。つまり、内周リング83を省略し、サポートプレート82の内周端を第1ガード53Aの方に延長してもよい。この場合、第1ガード53Aの上側処理位置は、第1ガード53Aの外周面64の鉛直部65が、サポートプレート82の内周端に相当するサポートプレート82の内周面と水平に向かい合う位置であってもよい。
【0170】
筒状外壁70および仕切板81の少なくとも一方を省略してもよい。
内周リング83を周方向に並んだ複数の分割リング83rに分割する場合、図14に示すように、複数の分割リング83rのうちで周方向に排気ダクト78の上流端78uに最も近い分割リング83rの鉛直部85を、他の分割リング83rの鉛直部85よりも下方向に長くしてもよい(白色の矢印参照)。これに代えてもしくはこれに加えて、図15に示すように、複数の分割リング83rのうちで周方向に排気ダクト78の上流端78uに最も近い分割リング83rの鉛直部85を、他の分割リング83rの鉛直部85よりも第1ガード53Aの外周面64に径方向に近づけてもよい(白色の矢印参照)。
【0171】
排気ダクト78の方に気体を吸引する吸引力は、排気ダクト78から周方向に離れるにしたがって弱くなる。第1ガード53Aと仕切板81との間を通る経路の圧力損失を増加させると、このような吸引力の低下が緩和される。しかしながら、この経路の圧力損失を第1ガード53Aの全周において増加させると、第1ガード53Aと仕切板81との間の内側隙間Giを通過し、排気ダクト78に吸引される気体の流量が減少してしまう。
【0172】
排気ダクト78の近くだけで分割リング83rの鉛直部85を下方向に長くすることにより、第1ガード53Aと仕切板81との間を通る経路の圧力損失を、排気ダクト78の近くだけで増加させることができる。同様に、排気ダクト78の近くだけで分割リング83rの鉛直部85を第1ガード53Aの外周面64に径方向に近づけることにより、第1ガード53Aと仕切板81との間を通る経路の圧力損失を、排気ダクト78の近くだけで増加させることができる。これにより、内側隙間Giを通過し、排気ダクト78に吸引される気体の流量の減少を小さくしながら、排気ダクト78からの周方向の距離に依存する吸引力の低下を減少させることができる。
【0173】
なお、内周リング83を周方向に並んだ3つ以上の分割リング83rに分割する場合、全ての分割リング83rでなければ、2つ以上の分割リング83rを図14および図15の少なくとも一方に示すように形成してもよい。内周リング83を等分割してもよいし、不等分割してもよい。後者の場合、周方向に最も短い分割リング83rを、周方向に排気ダクト78の上流端78uに最も近い位置に配置してもよい。このようにすれば、図14に示す構造と図15に示す構造とのうちの少なくとも一方を採用した場合に、第1ガード53Aと仕切板81との間を通る経路の圧力損失を微調整し易い。
【0174】
内周リング83を分割せずに図14に示す構造と図15に示す構造とのうちの少なくとも一方を採用してもよい。具体的には、内周リング83の鉛直部85において周方向に排気ダクト78の上流端78uに最も近い部分とその近傍だけを、下方向に長くしてもよい。これに代えてもしくはこれに加えて、内周リング83の鉛直部85において周方向に排気ダクト78の上流端78uに最も近い部分とその近傍だけを、第1ガード53Aの外周面64に径方向に近づけてもよい。
【0175】
内周リング83を分割する場合および分割しない場合のいずれにおいても、内周リング83の鉛直部85の上下方向の長さを、排気ダクト78の上流端78uに近づくにしたがって段階的または連続的に増加させてもよいし、内周リング83の鉛直部85の内周面から第1ガード53Aの外周面64の鉛直部65までの径方向の距離(図6に示す内側隙間Giの大きさD1に相当)を、排気ダクト78の上流端78uに近づくにしたがって段階的または連続的に減少させてもよい。このようにすれば、第1ガード53Aと仕切板81との間を通る経路の圧力損失を、段階的または連続的に変化させることができる。
【0176】
図16に示すように、水平な断面において筒状外壁70の突出部92の内面と筒状外壁70の円筒部91の内周面91iとがなす角度を、90度を超える値にしてもよい。図16に示す水平な断面において、円筒部91の内周面91iの周方向の端E1における接線を、接線TL1と定義する。接線TL1に対して側壁93の内面93iがなす角度は、最外壁94に近づくにしたがって段階的または連続的に増加していてもよい。図16は、突出部92の内面と円筒部91の内周面91iとがなす角度が約140度であり、接線TL1に対して側壁93の内面93iがなす角度が、最外壁94に近づくにしたがって約30度(図16に示す角度θ11)から約40度(図16に示す角度θ12)に増加した例を示している。
【0177】
全ての側壁93をこのように形成してもよいし、いくつかの側壁93だけをこのように形成してもよい。たとえば、一対の突出部92のうち排気ダクト78に近い方の突出部92の一対の側壁93だけをこのように形成してもよい。少なくとも1つの側壁93をこのように形成することにより、排気ダクト78に向かって第1ガード53Aと筒状外壁70との間を流れる気体が、突出部92から受ける抵抗を減らすことができ、排気ダクト78からの周方向の距離に依存する吸引力の低下を減少させることができる。
【0178】
図17に示すように、水平な断面において排気ダクト78の内周面78iと筒状外壁70の円筒部91の内周面91iとがなす角度を、鈍角(90度よりも大きく、180度よりも小さい値)にしてもよい。図17に示す水平な断面において、円筒部91の内周面91iの周方向の端E2における接線を、接線TL2と定義する。接線TL2に対して排気ダクト78の内周面78iがなす角度は、排気ダクト78の上流端78uから排気ダクト78に沿って遠ざかるにしたがって段階的または連続的に増加していてもよい。図17は、排気ダクト78の内周面78iと円筒部91の内周面91iとがなす角度が約110度であり、接線TL2に対して排気ダクト78の内周面78iがなす角度が、排気ダクト78の上流端78uから排気ダクト78に沿って遠ざかるにしたがって約75度(図17に示す角度θ21)から約80度(図17に示す角度θ22)に増加した例を示している。
【0179】
図17に示す水平な断面において、排気ダクト78の内周面78iは、2つの交点で筒状外壁70と交わっている。この2つの交点の両方で排気ダクト78の内周面78iを前記のように形成してもよいし、この2つの交点の一方だけで排気ダクト78の内周面78iを前記のように形成してもよい。2つの交点のうちの少なくとも一方において排気ダクト78の内周面78iを前記のように形成することにより、排気ダクト78に向かって第1ガード53Aと筒状外壁70との間を流れる気体が、円筒部91から受ける抵抗を減らすことができる。
【0180】
図17に示す例では、基板Wの回転方向Drが反時計回りであり、第1ガード53Aと筒状外壁70との間を時計回りに流れる気体が、左側の交点(図17において一点鎖線の長方形で囲まれた部分)を通過し、排気ダクト78に吸引される。したがって、図17に示す構造では、基板Wの回転方向Drとは反対の方向に流れる気体に加わる抵抗を減らすことができ、このような方向に流れる気体を効率的に排気ダクト78に吸引できる。
【0181】
基板処理装置1は、円板状の基板Wを処理する装置に限らず、多角形の基板Wを処理する装置であってもよい。
前述の全ての構成の2つ以上が組み合わされてもよい。前述の全ての工程の2つ以上が組み合わされてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0182】
1 :基板処理装置
3 :制御装置
12 :チャンバー
12i :チャンバーの内周面
21 :スピンチャック(基板保持手段)
25 :電動モータ(基板回転手段)
27 :第1薬液ノズル(薬液ノズル)
31 :第2薬液ノズル(薬液ノズル)
35 :下面ノズル(リンス液ノズル)
44 :中心ノズル(リンス液ノズル)
51 :ガード昇降ユニット
53A :第1ガード(ガード)
53u :第1ガードの上端部
61 :ガードの傾斜部
65 :ガードの外周面の鉛直部
70 :筒状外壁
70i :筒状外壁の内周面
70o :筒状外壁の外周面
71 :筒状体
72 :排出穴
73 :排気中継穴
74 :貫通穴
75 :スライドカバー(可動カバー)
78 :排気ダクト
78u :排気ダクトの上流端
81 :仕切板
81i :仕切板の内周端
81o :仕切板の外周端
82 :サポートプレート
83 :内周リング
84 :内周リングの水平部
85 :内周リングの鉛直部
A1 :回転軸線
D1 :内側隙間の大きさ
Gi :内側隙間
Go :外側隙間
W :基板
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13
図14
図15
図16
図17