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  • -シールド構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-16
(45)【発行日】2025-06-24
(54)【発明の名称】シールド構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/17 20060101AFI20250617BHJP
   H01R 13/187 20060101ALI20250617BHJP
   H01R 13/648 20060101ALI20250617BHJP
【FI】
H01R13/17
H01R13/187 B
H01R13/648
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021175821
(22)【出願日】2021-10-27
(65)【公開番号】P2023065167
(43)【公開日】2023-05-12
【審査請求日】2024-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 恵
(72)【発明者】
【氏名】中川 昌大
(72)【発明者】
【氏名】野村 章一
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-185931(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102394406(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第114006201(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103515765(CN,A)
【文献】実開昭48-52062(JP,U)
【文献】特開2021-9841(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0322322(US,A1)
【文献】特開2018-78070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/00-13/08
H01R13/15-13/35
H01R13/56-13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を内部に収容した筒状のシールドシェルと、
前記シールドシェルの内部に一端部が収容される筒状のホルダと、を有し、
前記ホルダの前記一端部側には、軸方向と交わる方向に突出するように環状のリブが設けられ、
前記シールドシェルにおける前記ホルダ側の一端部には、外周上に凹部が設けられ、
前記リブと前記凹部とで形成された空間に、シールド接続のためのコイルばねが保持されているシールド構造。
【請求項2】
前記シールドシェルと前記ホルダとが隣接する箇所に、ロック係止機構が設けられた、
請求項1に記載のシールド構造。
【請求項3】
前記コイルばねの一部は、前記シールドシェルの前記一端部側の外周面及び前記ホルダの前記リブの外周面から突出している、
請求項1又は2に記載のシールド構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車といった電動車に搭載されるコネクタには、シールド機能、及び、電池パックやパワーコントロールユニット等のユニット類と接続する機能が求められる。コネクタのシールド部品は、円筒形状を有し、銅やアルミニウムといった、導電性を有する金属材料で構成され、円筒形状の内部に電線を収容する。円筒形状の外側には、全周にわたって、凹形状、すなわち溝が施される。この溝内に、ユニット類と接続するために、リング状のコイルばねが設置され、コイルばねが脱落しないように保持されている。この種の技術として、例えば特許文献1には、高圧電流を伝送するための接続装置が開示されている。この接続装置においても、シールドスプリング要素がシールドスリーブに接続され、固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5731614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、リング状のコイルばねを設置するための溝をシールド部品に施すためには、高い精度が必要となるため、切削加工が行われる。このため、加工費用が高くなる。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シールドシェルの加工を容易とし、コスト低減が可能なシールド構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係るシールド構造は、下記を特徴としている。
電線を内部に収容した筒状のシールドシェルと、
前記シールドシェルの内部に一端部が収容される筒状のホルダと、を有し、
前記ホルダの前記一端部側には、軸方向と交わる方向に突出するように環状のリブが設けられ、
前記シールドシェルにおける前記ホルダ側の一端部には、外周上に凹部が設けられ、
前記リブと前記凹部とで形成された空間に、シールド接続のためのコイルばねが保持されているシールド構造。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るシールド構造によれば、シールドシェルの加工を容易とし、コスト低減が可能となる。
【0008】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態のシールド構造を示す正面図である。
図2図2は、図1に示したシールド構造のA-A断面図である。
図3図3は、図2におけるB部分の拡大図である。
図4図4は、図1に示したシールド構造を適用したコネクタの斜視図である。
図5図5は、参考例のシールド構造を示す正面図である。
図6図6は、図5に示したシールド構造のC-C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0011】
図1は、一実施形態のシールド構造1を示す正面図である。図2は、図1に示したシールド構造1のA-A断面図である。図3は、図2におけるB部分の拡大図である。図4は、図1に示したシールド構造1を適用したコネクタ40の斜視図である。
【0012】
図1及び図2に示すように、シールド構造1は、シールドシェル10と、フロントホルダ20とを備える。
【0013】
シールドシェル10は、電線を収容する筒部11と、筒部11の外周に全周に亘って設けられた円環状のリブ12と、を有する。シールドシェル10は、銅やアルミニウムといった導電性を有する金属材料で構成され、電磁波シールド機能を有する。筒部11は、円筒形状を有し、一端部11aが開放され、他端部11bに底部13を有する。底部13には、開口111を有する。フロントホルダ20に保持された端子に接続された電線が、開口111から引き出される。
【0014】
シールドシェル10は、一端部11a側がフロントホルダ20に嵌合する。シールドシェル10の一端部11a側には、外周上に凹部14(図3参照)が設けられる。凹部14は、一例として、一端部11aを絞り加工することによって形成され、一端部11aの全周に亘って、筒部11の厚みよりも薄くされる。すなわち、シールドシェル10の一端部11aは、図3に示す断面形状がL字形状を有する。
【0015】
フロントホルダ20は、筒部21と、筒部21の外周に設けられた円環状のリブ22と、を有し、端子を保持する。フロントホルダ20は、絶縁樹脂で構成される。筒部21は、円筒形状を有し、一端部21aが開放され、他端部21bに底部23を有する。底部23は開口211を有する。フロントホルダ20は、一端部21aが、シールドシェル10の内部に収容される。リブ22は、筒部21の外周から、軸方向(図1の上下方向)と交わる方向に突出するように設けられる。
【0016】
フロントホルダ20の一端部21aが、シールドシェル10の一端部11aに収容された状態において、図3に示すように、リブ22と凹部14とで空間Sが形成される。空間Sは、シールドシェル10とフロントホルダ20との接続部分において、周方向の全体にわたって形成される。空間Sには、シールド接続のためのコイルばね30が配置される。
【0017】
コイルばね30は、空間Sにおいて、シールドシェル10及びフロントホルダ20と、3つの箇所で当接する。この3箇所は、シールドシェル10の凹部14における底面11A及び側面11B、及び、フロントホルダ20のリブ22の側面22Aである。底面11Aは、薄肉の一端部11aの外周面である。側面11Bは、一端部11aにおいて凹部14に隣接し、凹部14が形成されていない部分の外周面16と、底面11Aとを接続する面である。側面22Aは、フロントホルダ20のリブ22において、シールドシェル10の一端部11aに対向する面である。コイルばね30は、底面11A、側面11B、及び側面22Aにおいて、シールドシェル10とフロントホルダ20とで挟まれて保持される。
【0018】
シールドシェル10とフロントホルダ20との間には、ロック係止機構25が設けられる。ロック係止機構25は、フロントホルダ20の一端部21aにおいて、外周面24が、シールドシェル10の一端部11aに向けて膨出した凸部を有する。ロック係止機構25は、凸部が、一端部21aの全周に亘って円環状に設けられてもよいし、一端部の一部に設けられた凹部が、1又は2以上設けられてもよい。シールドシェル10とフロントホルダ20との間に、ロック係止機構25が設けられることにより、シールドシェル10の一端部11a側に、フロントホルダ20に対する押圧力が加わった場合に、ロック係止機構25の反発力によって、ロックが掛かる。この構造により、シールドシェル10とフロントホルダ20とが外れるのを防止できる。
【0019】
図3に示すように、コイルばね30の一部は、シールドシェル10の一端部11a側の外周面16及びフロントホルダ20におけるリブ22の外周面22aから突出している。この突出部において、コイルばね30が、電池パックやパワーコントロールユニット(Power Control Unit:PCU)といった車載ユニットの金属ケース等と電気的に接続可能となる。
【0020】
図4に示すコネクタ40は、シールド構造1と、ハウジング41と、を備える。このコネクタ40に、相手側のコネクタが嵌合することにより、車載ユニット類と電気的に接続される。
【0021】
ここで、図5及び図6を参照して、参考例のシールド構造101について説明する。参考例のシールド構造101は、図1から図3に示したシールド構造1と比較して、凹部14を有さず、シールドシェル110の一端部111aの全周に、コイルばね30を保持するための凹形状溝115を有する点が主に異なる。参考例のシールド構造101においては、シールドシェル110に凹形状溝115を形成するために、精度の高い切削加工が必要とされるため、加工費用が高くなる。
【0022】
一方、本実施形態のシールド構造1によれば、シールドシェル10の一端部11a側に凹形状溝115を形成することなく、絞り加工等により形成した凹部14とフロントホルダ20のリブ22との間にコイルばね30を保持できる。よって、シールドシェル10の加工が容易になり、加工コストを低減できる。
【0023】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、前述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0024】
ここで、上述した本発明の実施形態に係るシールド構造の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
【0025】
[1] 電線を内部に収容した筒状のシールドシェル(10)と、
前記シールドシェルの内部に一端部(21a)が収容される筒状のホルダ(フロントホルダ20)と、を有し、
前記ホルダの前記一端部側には、軸方向と交わる方向に突出するように環状のリブ(22)が設けられ、
前記シールドシェルにおける前記ホルダ側の一端部(11a)には、外周上に凹部(14)が設けられ、
前記リブ(22)と前記凹部(14)とで形成された空間(S)に、シールド接続のためのコイルばね(30)が保持されているシールド構造(1)。
【0026】
上記[1]の構成のシールド構造によれば、シールドシェルの一端部に形成した凹部とホルダのリブとで形成された空間にコイルばねを保持できる。このため、通常はコイルばねを保持するための凹形状溝をシールドシェルの一端部側に形成する必要があるが、上記構成のシールド構造においては凹形状溝を形成する必要がない。よって、上記構成のシールド構造によれば、シールドシェルの加工が容易になり、加工コストを低減できる。
【0027】
[2] 前記シールドシェルと前記ホルダとが隣接する箇所(外周面24)に、ロック係止機構(25)が設けられた、
上記(1)に記載のシールド構造。
【0028】
上記[2]の構成のシールド構造によれば、ロック係止機構により、シールドシェルとホルダとが外れない構造となる。
【0029】
[3] 前記コイルばねの一部は、前記シールドシェルの前記一端部側の外周面(16)及び前記ホルダの前記リブ(22)の外周面(22a)から突出している、
上記[1]又は[2]に記載のシールド構造。
【0030】
上記[3]の構成のシールド構造によれば、接続相手先のユニット類がホルダ及びシールドシェルの外周面に当接することで、コイルばねの一部に接触して電気的に接続可能となる。
【符号の説明】
【0031】
1 シールド構造
10 シールドシェル
11 筒部
11a 一端部
11A 底面
11b 他端部
11B 側面
12 リブ
14 凹部
16 外周面
20 フロントホルダ
21 筒部
21a 一端部
21b 他端部
22 リブ
22a 外周面
22A 側面
24 外周面
25 ロック係止機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6