IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・コーポレイションの特許一覧

<>
  • 特許-核酸コンカテマー由来産物の発現 図1
  • 特許-核酸コンカテマー由来産物の発現 図2
  • 特許-核酸コンカテマー由来産物の発現 図3
  • 特許-核酸コンカテマー由来産物の発現 図4
  • 特許-核酸コンカテマー由来産物の発現 図5
  • 特許-核酸コンカテマー由来産物の発現 図6
  • 特許-核酸コンカテマー由来産物の発現 図7
  • 特許-核酸コンカテマー由来産物の発現 図8
  • 特許-核酸コンカテマー由来産物の発現 図9
  • 特許-核酸コンカテマー由来産物の発現 図10
  • 特許-核酸コンカテマー由来産物の発現 図11
  • 特許-核酸コンカテマー由来産物の発現 図12
  • 特許-核酸コンカテマー由来産物の発現 図13
  • 特許-核酸コンカテマー由来産物の発現 図14
  • 特許-核酸コンカテマー由来産物の発現 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-16
(45)【発行日】2025-06-24
(54)【発明の名称】核酸コンカテマー由来産物の発現
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20250617BHJP
   C12N 15/33 20060101ALI20250617BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20250617BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20250617BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20250617BHJP
【FI】
C12N15/10 Z ZNA
C12N15/33
C12N15/86 Z
C12N15/63 Z
C12Q1/6844 Z
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021573577
(86)(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-26
(86)【国際出願番号】 EP2020065980
(87)【国際公開番号】W WO2020249563
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】16/440,511
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598041463
【氏名又は名称】グローバル・ライフ・サイエンシズ・ソリューションズ・ユーエスエー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・マイケル・デイヴィス
(72)【発明者】
【氏名】エリック・リーミング・クヴァム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・リチャード・ネルソン
(72)【発明者】
【氏名】リサ・エー・ロウリー
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ・ガオ
【審査官】松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/053039(WO,A1)
【文献】Gene Therapy,2019年01月,Vol.26,p.86-92
【文献】Cell Gene Therapy Insights,2017年,Vol.3, No.9,p.731-738
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C12Q
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に所定の比率を有する少なくとも第1の核酸コンカテマー及び第2の核酸コンカテマーを含むコンカテマー混合物を作製する工程であって、前記第1の核酸コンカテマーが、第1の核酸配列の縦列反復を含み、前記第2の核酸コンカテマーが、第2の核酸配列の縦列反復を含む、工程と、
前記コンカテマー混合物を共発現させて、前記第1の核酸配列から第1の発現産物及び前記第2の核酸配列から第2の発現産物を生成する工程と
を含む、ウイルスベクター又はウイルス様粒子を生成する方法。
【請求項2】
第1の核酸コンカテマー及び第2の核酸コンカテマーを、ローリングサークル増幅法を使用して生成する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ローリングサークル増幅法を使用し、環状又はプラスミドDNAを増幅して、第1の核酸コンカテマー及び/又は第2の核酸コンカテマーを生成する工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第1の縦列反復及び/又は第2の縦列反復が、環状又はプラスミドDNAの少なくとも一部の縦列反復である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
培養細胞にコンカテマー混合物をトランスフェクトして、共発現を生じさせる工程を含み、又は共発現を無細胞発現系において生じさせる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第1の核酸コンカテマー、第2の核酸コンカテマー、又は両方が、10kbを超える長さである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第1の発現産物及び第2の発現産物を採取する工程を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第1の核酸コンカテマー又は第2の核酸コンカテマーの一方又は両方が、共発現前にはプロセシングされていない、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第1の発現産物が、ウイルスのエンベロープ又はパッケージングタンパク質であり、第2の発現産物が、前記ウイルスの導入遺伝子を含み、第1の前記発現産物及び第2の前記発現産物が、前記導入遺伝子を送達するためのウイルスベクターを形成する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第1の発現産物が核酸産物であり、第2の発現産物がタンパク質産物である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
第1の発現産物が、第2の発現産物と複合体を形成する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第1の発現産物が、コンカテマー混合物中の第3の核酸コンカテマーに対して作用する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも2つの核酸コンカテマーを所定の比率で含む混合物を作製する工程であって、前記核酸コンカテマーのそれぞれが、2つ以上の核酸配列の縦列反復を含む、工程と、
前記コンカテマー混合物を共発現させて、前記混合物中の各核酸コンカテマーから2つ以上の発現産物を生成する工程と
を含む、ウイルスベクター又はウイルス様粒子を生成する方法。
【請求項14】
コンカテマー混合物中の個々のコンカテマーの核酸配列が、発現させて2つ以上の発現産物を生成する場合に複数のタンパク質を生成する、複数の発現配列を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
コンカテマー混合物中の個々のコンカテマーの核酸配列が、発現させて2つ以上の発現産物を生成する場合に少なくとも1つのタンパク質発現産物及び少なくとも1つの核酸発現産物を含む混合物を生成する、複数の発現配列を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
第1の核酸配列を含む少なくとも1つの鋳型を、鎖置換ローリングサークル増幅法を使用し増幅して、前記第1の核酸配列の縦列反復を含む第1のコンカテマーを生成する工程と、
前記第1のコンカテマーを、第2の核酸配列の縦列反復を含む第2のコンカテマーと接触させて、前記第1の核酸コンカテマーが前記第2の核酸コンカテマーに対して所定の比率で存在するコンカテマー混合物を形成する工程と、
前記コンカテマー混合物を共発現させて、前記第1の核酸配列から第1の発現産物及び前記第2の核酸配列から第2の発現産物を生成する工程であって、前記第1の発現産物の前記第2の発現産物に対する比率が、前記コンカテマー混合物中の前記第1の核酸コンカテマーの前記第2の核酸コンカテマーに対する所定の比率に比例する、工程と
を含む、ウイルスベクター又はウイルス様粒子を生成する方法。
【請求項17】
第1の発現産物が第2の発現産物と複合体を形成することが可能となる工程を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
第1の発現産物及び第2の発現産物が、同一のウイルス、例えば、アデノ随伴ウイルス又はレンチウイルス由来の種々のウイルス産物を含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
第1の発現産物がウイルスmRNAを含み、第2の発現産物が複数のウイルスパッケージングタンパク質を含む、請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットによれ電子的に提出され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる配列表を含む。2019年5月15日に作成された上記のASCIIコピーは、324586-1_SL.txtと名付けられており、13,566バイトのサイズである。
【0002】
本開示は、核酸コンカテマー由来の組換え産物の発現に一般に関し、特定の実施形態では、核酸コンカテマー由来の組換え産物の比率計量的共発現に関する。比率計量的共発現をin vivo及び無細胞の両発現系において実証した。
【背景技術】
【0003】
タンパク質、抗体及び核酸を含む組換え産物は、臨床適用において広範に使用されている。このような組換え産物では、核酸及び/又はタンパク質の発現機構を利用して、臨床的有用性を有する目的の産物を生成し得る。例えば、免疫療法及び他の細胞療法では、ウイルスベクターを頻繁に利用し、遺伝子搭載物を送達して、特定の疾患標的を治療する。一例では、CAR-T免疫療法のためのキメラ抗原受容体を有する、細胞の遺伝子修飾のための搭載物のウイルスベクター送達は、特定の種類の血液がんを治療するために使用し得る。ウイルスベクターの他の適用としては、がんワクチン、一遺伝子性疾患及び感染性疾患における使用が挙げられる。
【0004】
組換えDNA技術は、組換え産物の生成において使用されている。しかし、特定の所望の産物は、組合わされている又はさもなければともに機能する複数の成分を含み得る。このような多成分発現産物の生成は、複雑であり得る。組換え産物生成の一般的な一手法は、種々の成分を複数のプラスミドに分ける工程を含み得る。例えば、複数のプラスミド構築物の共発現は、in vivo及びin vitroでの両設定において行い得る。一部の例では、複数のプラスミド構築物は、培養細胞に一過性にトランスフェクトしてもよく、このような培養細胞は、所望の組換え産物、例えば、ウイルスベクター、タンパク質等を生成するのに使用する。
【0005】
しかし、特定の課題は、細胞における複数のプラスミド構築物の使用と関連している。課題のうちの1つは、複数のプラスミド構築物の共発現を比率計量的に調節することである。例えば、各プラスミド構築物が別々のタンパク質をコードする場合、単一細胞内でのトランスフェクション手順による対応するプラスミドからの2つ(又はこれ以上)のタンパク質の共発現によって、タンパク質が多種多様な比率で発現し、細胞の亜集団は、所望のタンパク質のうちの1つを発現するのみであり得ることが報告されている。
【0006】
タンパク質の比率計量的共発現の調節を向上させ、単一生細胞におけるタンパク質の所望の比率を達成するために、いくつかの手法が試みられている。例えば、2つ以上の別々のプラスミドの使用に代えて、マルチシストロン性プラスミドを構築してもよい。例えば、内部リボソーム侵入部位(IRES)及びウイルス2Aペプチドを有する単一の二重プロモータープラスミドを使用して、異質性が低下した2つ以上のタンパク質の共発現を引き起こすことができるが、これは、各オープンリーディングフレームをマルチシストロン性プラスミドに手間をかけてクローニングする労力を必要とし、結果的には、プラスミド構築物のサイズを増大させる。加えて、プラスミドが、細菌中での維持に必要なさらなる配列を含むため、プラスミドの使用では、生成後の精製、及びプラスミド生成における細菌混入物の非存在を証明するQC分析を必要とし、これはcGMP(臨床的優良製造)プロセスに対する重要な課題となっている。後者は、プラスミド構築物のサイズが増大して細菌染色体DNAからの識別が困難となるにつれ、プラスミドDNAの生成後の精製が複雑化するため、特に難しい課題となっている。
【0007】
したがって、in vitro及びin vivoの両発現系における組換え産物発現の確実な調節のための、特に、調製のための労力が最小限である、系及び方法に対する必要性が、なお存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第10,077,459号
【文献】米国特許第9,938,568号
【非特許文献】
【0009】
【文献】Singh, S. K.ら、Chem. Comm.、4、455~456、1998
【文献】Koshkin, A. A.ら、Tetrahedron、54、3607~3630、1998
【発明の概要】
【0010】
本明細書に開示する特定の実施形態の要約を以下に記載する。このような態様が、このような特定の実施形態の簡潔な要約を読者に単に提供するために提示され、このような態様により、本開示の範囲が制限されることを意図しないことが理解されるべきである。実際、本開示は、以下には記載されない様々な態様を包含し得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態では、相互の所定の比率を有する少なくとも第1の核酸コンカテマー及び第2の核酸コンカテマーを含むコンカテマー混合物を作製する工程であって、第1の核酸コンカテマーが、第1の核酸配列の縦列反復(tandem repeats)を含み、第2の核酸コンカテマーが、第2の核酸配列の縦列反復を含む、工程と、コンカテマー混合物を共発現させて、第1の核酸配列から第1の発現産物及び第2の核酸配列から第2の発現産物を生成する工程とを含む方法を提供する。
【0012】
別の実施形態では、少なくとも2つの核酸コンカテマーを所定の比率で含む混合物を作製する工程であって、核酸コンカテマーのそれぞれが、2つ以上の核酸配列の縦列反復を含む、工程と、混合物を共発現させて、混合物中の各核酸コンカテマーから2つ以上の発現産物を生成する工程とを含む方法を提供する。
【0013】
別の実施形態では、第1の核酸配列を含む少なくとも1つの鋳型を、鎖置換ローリングサークル増幅法を使用し増幅して、第1の核酸配列の縦列反復を含む第1のコンカテマーを生成する工程と、第1のコンカテマーを、第2の核酸配列の縦列反復を含む第2のコンカテマーと接触させて、第1の核酸コンカテマーの第2の核酸コンカテマーに対する所定の比率を有するコンカテマー混合物を形成する工程と、コンカテマー混合物を共発現させて、第1の核酸配列から第1の発現産物及び第2の核酸配列から第2の発現産物を生成する工程であって、第1の発現産物の第2の発現産物に対する比率が、コンカテマー混合物中の第1の核酸コンカテマーの第2の核酸コンカテマーに対する所定の比率に比例する、工程とを含む方法を提供する。
【0014】
別の実施形態では、相互の所定の比率を有する少なくとも1つの核酸コンカテマー及び少なくとも1つのプラスミドを含む混合物を作製する工程であって、少なくとも1つの核酸コンカテマーが第1の核酸配列の縦列反復を含み、少なくとも1つのプラスミドが第2の核酸配列を含む、工程と、混合物を共発現させて、第1の核酸配列から第1の発現産物及び第2の核酸配列から第2の発現産物を生成する工程とを含む方法を提供する。
【0015】
別の実施形態では、トランスフェクト細胞は、第1に提供され、核酸配列の縦列反復を含み、トランスフェクト細胞において発現産物をコードする核酸配列内の少なくとも1つのオープンリーディングフレームを発現する、核酸コンカテマーを一過性にトランスフェクトされる。一実施形態では、提供されるトランスフェクト細胞は、1つ若しくは複数の核酸コンカテマー及び/又は1つ若しくは複数のプラスミドを既にトランスフェクトされている。この方法では、細胞は、核酸コンカテマーを逐次的にトランスフェクトされ得る。代替的実施形態では、トランスフェクト細胞は、1つ又は複数の所望の産物を安定に発現させた後、核酸コンカテマーをトランスフェクトする。
【0016】
本開示のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、図面を通して同様の文字が同様の部分を表す添付の図面を参照して以下の詳細な説明を解釈すれば、よりよく理解されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の実施形態による所望の発現産物を生成する発現系における使用のためのコンカテマーの生成の模式図である。
図2】本開示の実施形態による1つ又は複数の所望の発現産物を生成する共発現系における使用のための2つ以上のコンカテマーの生成の模式図である。
図3】本開示の実施形態による共発現系の潜在的最終産物の模式図である。
図4】本開示の実施形態による共発現系の潜在的複合最終産物の模式図である。
図5】本開示の実施形態による共発現系の、相互に又は別の核酸若しくはタンパク質に対して作用する潜在的最終産物の模式図である。
図6】多生成系の所望の発現産物の全部又は一部を、本開示の実施形態によるコンカテマーを使用して発現させる混合発現戦略の模式図である。
図7】本開示の実施形態によるレンチウイルスベクター産物発現の実施形態の模式図である。
図8】本開示の実施形態によるレンチウイルスベクター産物発現の実施形態の模式図である。
図9】本開示の実施形態によるアデノ随伴ウイルスベクター産物発現の実施形態の模式図である。
図10】本開示の実施形態によるCRISPR産物発現の実施形態の模式図である。
図11】アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドタンパク質の、本開示の実施形態による化学量論的発現を示すアガロースゲル写真である。
図12】軽及び重鎖ポリペプチドの、本開示の実施形態による化学量論的発現を示すアガロースゲル写真である。
図13】ナイーブ細胞に種々の濃度(18%及び2%)でトランスフェクトした、インタクトなローリングサークル増幅生成コンカテマー、ローリングサークル増幅生成直鎖状消化物、及びプラスミドからの、本開示の実施形態によるAAV生成を示す棒グラフである。
図14】混合コンカテマー及びプラスミド発現生成源からの、本開示の実施形態によるAAV生成を示す棒グラフである。
図15】混合コンカテマー及びプラスミド発現生成源からの、本開示の実施形態によるレンチウイルス生成を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1つ又は複数の特定の実施形態を以下に記載する。このような実施形態の簡潔な説明を提供する試みにおいて、実施のすべての特徴を本明細書に記載するものではない。工学又は設計の任意のプロジェクトにおけるように、このような任意の実施の開発においては、各実施に応じて異なり得る開発者らの特定の目標、例えば、系及び商業に関連する制約の順守を達成するために、多数の実施特異的決定が為されなければならないことが認識されるべきである。その上、このような開発の試みは複合的であり、時間を要し得るが、それにもかかわらず、本開示の利益を受ける当業者にとって設計、製作、及び製造に取り組む日常的業務であることが理解されるべきである。
【0019】
大きなサイズ(すなわち、高分子量)の核酸由来の産物の発現は、効率の低さを伴う。このような低効率は、大きな核酸の不十分なトランスフェクション効率の結果であり、次いで、これにより、所望の最終産物生成の減少、並びに転写及び翻訳に必要とされる宿主因子について核酸間でDNA配列に基づく競合が生じ得る。トランスフェクション効率はDNAサイズの関数として低下することがこれまでに示されており、10kbのサイズを超えるプラスミドでは、より小さなサイズのプラスミドと比較してトランスフェクション効率が劇的に低下したことが示されている。DNAコンカテマー又はDNAコンカテマー混合物を使用し、これによりコンカテマーが、所望の発現産物、例えば、タンパク質又は核酸発現産物をコードする核酸配列の縦列反復を含む、発現技術を本明細書において提供する。特定の実施形態では、開示するコンカテマーは、これまでに効率が不十分であったサイズよりも大きいサイズ(例えば、少なくとも10kb)であり得る。しかし、それにもかかわらず、本明細書に開示するように、2つ以上のコンカテマーでは、これらが大きいサイズであるにもかかわらず、混合する場合、高いトランスフェクション効率を達成する。また、より小さいサイズのプラスミドと混合した1つ又は複数のコンカテマーも、2つのうちの1つが大きいサイズであるにもかかわらず、高いトランスフェクション効率を達成する。一実施形態では、コンカテマーは、鎖置換増幅法、例えば、ローリングサークル増幅法(RCA)を使用し生成して、複数のコンカテマーを生成し、所望の発現産物をコードする核酸配列の縦列反復を含有させる。つまり、個々のコンカテマー核酸分子それぞれにおける縦列反復の数は、未知であり得る。それにもかかわらず、高いトランスフェクション効率及び所望の発現産物の生成は、RCAの結果のコンカテマーサイズが可変及び/又は混在する状況であっても達成し得る。更に、所望の共発現産物の頑健な生成及び所望の比率計量的な調節は、本明細書において提供する縦列反復の正確な数が未知であっても、宿主因子について核酸配列間で配列に基づく競合を調節しなくても、達成し得る。
【0020】
更に、本明細書に開示するように、DNAコンカテマーは、共発現系と併用し使用して、2つ以上の発現産物を比率計量的な方法で、予測通りに共発現させ得る。2つ以上のコンカテマーは、トランスフェクト及び共発現させて、共発現産物を生成し得る。比率計量的発現は、所望の最終産物のための発現配列の未知数の縦列反復を有するコンカテマーを使用して生じさせ得る。特定の実施形態では、コンカテマーの少なくとも1つが、約10kbを超えるサイズを有する。2つ以上のコンカテマーのトランスフェクション及び共発現は、単一細胞又は無細胞発現系において生じさせ得る。これは、サイズとトランスフェクション効率と間の関係に関する定説によれば、予想外の結果である。またこれは、転写及び翻訳を制御する宿主因子についてのDNA配列に基づく競合の予測不能な性質によれば、予想外である。例えば、核酸コンカテマーが大きいサイズである(例えば、典型的核酸コンカテマーは、10kbを超えるサイズを有し得る)ため、定説では、2つ以上の異なる核酸コンカテマーを含むDNAカクテルにおいて、核酸コンカテマーがプロセシングされていない(例えば、核酸コンカテマーの生成後に、さらなるプロセシングを行わない)場合は特に、単一細胞に効率的に侵入させることが期待されず、所望の発現産物を生成することが期待されない。加えて、コンカテマーのサイズは、典型的には、正確に決定することができず、また、サイズは、不均一であり、このようなカクテル又は混合物(所定の又は定義された比率で混合した2つ以上のコンカテマーを含む)の設計を、更にいっそう難しい課題としている。
【0021】
本明細書に開示するように、第1及び第2のコンカテマーを含み、定義された比率を使用して作製した核酸コンカテマー混合物は、コンカテマー混合物を共発現させて、コンカテマー混合物の第1の核酸コンカテマー及び第2の核酸コンカテマーからそれぞれ生じる、少なくとも第1及び第2の発現産物を含む、共発現産物を生成するために使用し得る。特定の実施形態では、第1及び第2の発現産物の比率は、コンカテマー混合物における第1及び第2の核酸コンカテマーの定義された比率に比例する。
【0022】
所望の最終産物を発現するRCAにより生成したコンカテマーの使用により、他の発現鋳型、例えば、プラスミド構築物に勝る利点がもたらされる。ローリングサークル増幅法では、意図する適用に対する完全な関連性及び生理活性を有し、例えば、パッケージング、形質導入及び発現エレメント並びにウイルス生成に必要とされるタンパク質を含む最小限のウイルスベクターをコードする、特異的DNA配列(例えば、DNA小環)の迅速生成が可能となる。これにより、DNAの特異的活性(DNA1かたまりあたりのコードセクション)の上昇が可能となる。対照的に、プラスミドは、細菌中での維持には必要であるが意図する適用には不必要な、さらなる配列を含む。RCAコンカテマーは細菌中では製造されないため、RCAの使用によって、外来性細菌成分又は精製試薬による最終DNA産物への潜在的混入が回避される。開示するコンカテマー合成は、細菌を使用せずに行い、このため細菌由来のエンドトキシンを含まない。また、RCAコンカテマーは、大規模な細菌増殖、DNA精製カラム、エンドトキシンの除去、及び細菌由来産物に伴う品質管理、例えば、プラスミド産物における細菌混入物(ゲノムDNA及びRNA)の非存在を証明するQC分析の必要性を排除又は削減する。対照的に、核酸コンカテマーは、細菌を使用せずに調製し及びふやすことができ、最小限の生成後の精製を必要とし、したがって、cGMP製造に適応する、費用及び複雑性における利点をもたらす。更に、RCAにより生成したコンカテマーは、細菌に基づく系において規模拡大が困難な、細菌毒性を有する産物をコードさせるために使用し得る。これは、細菌又は細菌の死による構築物の損失が生じる、細菌増殖の間の産物の漏出性発現が原因で、毒性の産物をコードさせるために使用し得る構築物を維持することが困難であるためである。
【0023】
その上、RCAにより生成したコンカテマーでは、必要に応じたDNA生成及び規模拡大の簡便化を可能とすることができる。ミリグラム~グラム量のローリングサークル増幅DNAは、等温増幅反応を使用して1日未満で鋳型DNAから安価に生成することができる。RCA DNAを5mg生成する合計「実務」時間は、1時間未満である。対照的に、エンドトキシン不含精製カラムを使用して大腸菌(E.coli)のDH5アルファ株から単離したスーパーコイルプラスミドでは、およそ8時間必要とされる。したがって、ローリングサークル増幅法は、標準的細菌由来プラスミドと比較して、より簡便で低価格な製造方法をも提供することが期待される。
【0024】
また更に、RCA方法により、生細胞のプラスミドに基づく系において制限される可能性のある、修飾ヌクレオチドを増幅DNAへ挿入することが可能となる。修飾ヌクレオチドは、ヌクレアーゼ耐性の増強、安定性の増強、長期の遺伝子発現、及びゲノム組込み効率の向上を有する機能化DNAの生成に寄与し得る。一実施形態では、ホスホロチオエート化ヌクレオチドにより修飾したRCA DNAのトランスフェクションによって、標準的ヌクレオチドのみを含むRCA DNAと比較してより長期のタンパク質発現がもたらされた。したがって、一実施形態では、本技術は、修飾ヌクレオチドを組み込んだコンカテマー由来の発現産物を生成又は製造するために使用し得る。
【0025】
図1は、本明細書において提供する少なくとも1つのコンカテマーを使用する所望の発現産物生成の模式図である。環状鋳型14内の発現配列12は、発現配列12の縦列反復を含むコンカテマー16を、ローリングサークル増幅法(RCA)を使用して生成するために使用する。コンカテマー16は生成されると、精製又はさもなければ洗浄した後、操作において、コンカテマー16に作用し発現配列12を発現して発現産物26を生成する、発現系20において使用し得る。しかし、特定の実施形態では、コンカテマー16は、発現系20において、さらなるプロセシングを必要とせずに適用し得る。発現系20は、本明細書に開示する、細胞に基づくか又は無細胞の発現系であり得る。生成されると、発現産物26は、適切な治療プロトコール又は他の適用における使用のために採取し得る。コンカテマー16の発現産物26は、1つ又は複数のタンパク質及び/又は核酸発現産物を含み得る。
【0026】
特定の実施形態では、コンカテマー16は、単独で、又は発現系20の他のコンカテマー16(例えば、2つ以上のコンカテマー16)若しくは他の発現ベクターと併用して、例えば、無細胞発現系において使用するか、又は細胞に基づく系において共トランスフェクトして複数の発現産物26を共発現させ得るプラスミドとの混合物において、使用し得る。特定の実施形態では、約10kb以上のサイズのコンカテマー16は、細胞に基づく発現系において使用して、発現産物26を生成し得る。他の技術とは対照的に、本開示では、大きいサイズのコンカテマー及びコンカテマー混合物により、類似のサイズのプラスミドと比較して、細胞に基づく発現系におけるトランスフェクション効率も同様に低下せず、発現系における共発現効率を低下させる宿主因子についてのDNA配列に基づく競合も生じないことを実証する。
【0027】
図2は、複数のコンカテマーの混合物を使用する所望の発現産物の共発現の模式図である。発現配列12aの縦列反復を有し、RCAにより鋳型14aから生成した第1のコンカテマー16aを、本明細書に提供するように、発現配列12bの縦列反復を有し、RCAにより鋳型14bから生成した第2のコンカテマー16bと混合し得る。発現配列12a、12bは、発現系20により複数の発現産物26a、26bが生成されるように異なり得る。つまり、種々の発現産物26a、26bを異なる発現系20において生成するのではなく、種々の発現産物26a、26bを、例えば、同時に生成した、同一の発現系20において共発現し得る。更に、発現産物26a、26b(その他)の比率は、混合物におけるコンカテマー16a、16b(その他)の比率に基づくか、又は比例し得る。
【0028】
組換えプラスミドのサイズは、任意の挿入発現配列とともにプラスミド構築物のサイズに基づいて容易に決定し得るが、コンカテマーのサイズは、変動し得る。しかし、本技術の実施形態では、各コンカテマー16内の発現配列12の縦列反復の正確な数を決定する試みではなく、各コンカテマー16が単量体であるという想定を含む。この想定は、コンカテマー16の相互のモル比の決定において使用する。例えば、第1のコンカテマー16aは、既知の塩基長1000の発現配列12aの縦列反復を有してもよく、第2のコンカテマー16bは、既知の塩基長1500の発現配列12bの縦列反復を有してもよい。したがって、第1のコンカテマー12a:第2のコンカテマー12bのモル比1:1を達成するために、第2のコンカテマー16bの総量は、共発現に使用するコンカテマー混合物における第1のコンカテマー16aの1.5×とすべきである。コンカテマー16が、ともに1本鎖であるか、ともに2本鎖であるか、又は1本及び2本鎖の混合物であり得ることが理解されるべきである。さらなる任意のコンカテマー16でも、モル比を決定し得る。Table1(表1)では、モル比が発現配列12(又は発現配列、例えば、鋳型14を有するプラスミド/環状構築物)の単量体のサイズに基づき得るという想定を使用する、アデノ随伴ウイルス(AAV)の3つのコンカテマー16共発現系に使用するモル比の例を要約する。
【0029】
【表1】
【0030】
モル比は、RCAにより生成したコンカテマー12a、12bの推定サイズ及びコンカテマー12a、12bの推定濃度に基づいて推定し得る。
【0031】
したがって、別々のプラスミドの単一細胞へのトランスフェクションによる2つ以上のタンパク質の共発現は、発現したタンパク質の多種多様な比率で生じることが報告されているが(例えば、多くの細胞亜集団は、2つのタンパク質構築物のうちの1つを発現するのみである)、本技術では、発現系20において使用するコンカテマー16の比率に比例する、共発現産物のプログラム可能な比率が促進される。コンカテマーは、サイズの変動に関する不確実性を有するが、それにもかかわらず、本開示では、所望の発現産物26を共発現するコンカテマー16の使用により、プログラム可能な比率による頑健な発現が得られることを実証する。
【0032】
共発現ワークフローでは、コンカテマー16は、それぞれの発現産物26の所望の比率に基づく規定又は所定の比率で、混合又は作製し得ることが理解されるべきである。つまり、第1の発現産物26aの第2の発現産物26bに対する所望の比率を達成するために、発現系20のために提供するコンカテマー混合物は、混合物において相互の所定の比率で存在するコンカテマー16a、16bにより作製し得る。2つのコンカテマー16では、コンカテマー16の比率は、1:1、1:1.5、1:2、1:2.5、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10その他であり得る。3つ以上のコンカテマー16では、コンカテマー16の比率は、C1:C2:CNとして表し、ここで、C1、C2からCNのそれぞれは、1、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10その他であってもよく、同一の整数であってはならない。特定の実施形態では、比率は、単純な質量比ではなくモル比である。一実施形態では、約1:1のコンカテマー16のモル比では、約1:1の各発現産物26の比率が得られる。更に、1つ又は複数のDNAコンカテマー16を含む共発現系では、コンカテマーのサイズを推測又は推定するのではなく、DNAの正確な長さを測定して、開示するように、適切な比率を決定し得る。
【0033】
特定の実施形態では、共発現産物は、第1の核酸コンカテマー及び第2の核酸コンカテマーを定義された比率で含むコンカテマー混合物を作製する工程と、コンカテマー混合物を共発現させて、コンカテマー混合物の第1の核酸コンカテマー及び第2の核酸コンカテマーからそれぞれ生じる少なくとも第1の発現産物及び第2の発現産物をそれぞれ生成する工程とにより形成してもよく、ここで、第1の発現産物及び第2の発現産物の比率は、コンカテマー混合物における第1の核酸コンカテマー及び第2の核酸コンカテマーの定義された比率に比例する。特定の実施形態では、第1及び第2の発現産物の比率並びに第1及び第2の核酸コンカテマーの定義された比率は、実質的に同一である。
【0034】
図3図5は、所望の最終産物を形成するための核酸コンカテマーの共発現の実施形態の模式図である。1つ又は複数の共発現産物は、非複合共発現産物又は複合共発現産物の形態であり得る。特定の実施形態では、非複合共発現産物は、共発現して非複合形態で存在する2つ以上の発現産物を含み得る。例えば、共発現産物は、図3に示すように、共発現した後、相互に複合体を形成しない第1の発現産物30及び第2の発現産物34を含み得る。発現産物のそれぞれは、独立的に、タンパク質、RNA又はこれらの組合せであり得る。加えて、各コンカテマー16(16a、16b、任意選択で16c)により、発現産物32、36、38として示す複数の発現産物が生成され得る。
【0035】
特定の実施形態では、複合共発現産物は、図4に示すように、コンカテマー16a、16bのそれぞれから共発現した後、相互に複合体50を形成する2つ以上の発現産物40、42を含み得る。例えば、複合共発現産物は、共発現して相互に複合体50を形成する第1の発現産物40及び第2の発現産物42を含み得る。発現産物のそれぞれは、独立的に、タンパク質、RNA又はこれらの組合せであり得る。加えて、示すように、他のコンカテマー16cにより、複合体50の一部をも形成し得る発現産物(例えば、発現産物46)も生成され得る。複合共発現産物の非限定的な例としては、抗体(例えば、モノクローナル抗体(mAb))、ウイルス様粒子、CRISPR又はレンチウイルスが挙げられ得る。
【0036】
図5は、共発現産物が、分子に対して作用する第1の発現産物を含み得る、実施形態である。第1の発現産物は、別々の発現産物58、60、62から形成される複合共発現産物56であり得る。一実施形態では、第1の発現産物56は、酵素であってもよく、被作用分子64は、酵素が作用する基質であってもよい。一実施形態では、分子64は、コンカテマーである。一実施形態では、複合体56の分子との相互作用により産物66が得られ、これは次いで、複合体56及びこの成分と複合体70を形成し得る。別の実施形態では、第1の発現産物が、タンパク質であってもよく、第2の発現産物が、DNAであってもよい。また、発現系は、最終複合体70の一部ではない発現産物(例えば、発現産物68)を形成する1つ又は複数のさらなるコンカテマー(例えば、コンカテマー16b)を含み得る。分子に対して作用し、分子がコンカテマーである共発現産物の非限定的な例としては、DNAトランスフェクト細胞由来の組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)産物が挙げられる。
【0037】
現在の開示によれば、第1の核酸コンカテマー及び第2の核酸コンカテマーを定義された比率で含むコンカテマー混合物を作製する。コンカテマー混合物は、共発現させて、コンカテマー混合物の第1の核酸コンカテマー及び第2の核酸コンカテマーからそれぞれ生じる少なくとも第1の発現産物及び第2の発現産物をそれぞれ生成し、ここで、第1の発現産物及び第2の発現産物の比率は、コンカテマー混合物における第1の核酸コンカテマー及び第2の核酸コンカテマーの定義された比率に比例する。
【0038】
特定の実施形態では、第1及び第2の核酸コンカテマーのうちの少なくとも1つは、最小限発現配列を含む。最小限発現配列は、宿主細胞においてDNAがふえるのに必要とされる外来性配列を有しない1つ又は複数の所望の産物をコードする。最小限発現配列は、in silicoで設計してin vitroで合成し得る。一実施形態では、各発現配列12のそれぞれは、オープンリーディングフレーム(ORF)及びオープンリーディングフレームに動作可能に結合するプロモーターを含み得る。特定の実施形態では、発現配列のうちの少なくとも1つは、2つ以上のORFに動作可能に結合する1つのプロモーターを含み得る。例えば、発現配列のうちの1つは、2つの異なるORFに機能的に結合するプロモーターを含み得る。
【0039】
2つ以上のコンカテマー16を使用する実施形態では、本明細書において提供するコンカテマー混合物は、2つ以上のコンカテマー16の混合物を含んでもよく、各コンカテマー16のそれぞれが、相互に比較して異なる発現配列12を有する(すなわち、異なる配列を有する核酸)。コンカテマー混合物は、第1の種類の(第1の核酸配列の縦列反復を有する)複数のコンカテマー16の第1のサブセット及び第2の種類の(第1の核酸配列とは異なる第2の核酸配列の縦列反復を有する)複数のコンカテマー16の第2のサブセットから形成して、これにより混合物が、第1のサブセット及び第2のサブセットのコンカテマー16を含み得ることが理解されるべきである。更に、実施形態では、コンカテマー混合物は、第3の種類の(第1の核酸配列及び第2の核酸配列とは異なる第3の核酸配列の縦列反復を有する)コンカテマー16の第3のサブセットその他を含み得る。前述のように、個々の各サブセットにおいて、コンカテマー16のサイズ(塩基長)及びこれらの対応する縦列反復の数は、変動し得る。
【0040】
図6は、本開示の実施形態による発現産物を生成するための技術の種々の実行についての模式図である。一部の実施形態では、複数の発現産物を生成して複合体を形成するか、又は互いに相互作用させて最終的に所望の最終産物を形成することが望まれ得る。発現ワークフローでは、このような発現産物は、発現産物の種類又は発現産物の所望のカスタマイズ若しくは多様性に応じて、種々の発現媒体(種々のコンカテマー16又は一部の実施形態では、1つ若しくは複数のコンカテマー16及び1つ若しくは複数のプラスミド、例えば、プラスミド80若しくはプラスミド82の混合物)に分け得る。
【0041】
例えば、特定の種類の発現産物は、カスタマイズ可能な核酸発現産物86を含み得る。カスタマイズ可能な核酸発現産物86は、カスタマイズしたか又は所望の発現配列を有する鋳型14を使用することにより生成し得る。エンドユーザーにとって目的のものであり得る特定の核酸発現産物86を予測することは困難であり得る。したがって、可変核酸発現産物86のための核酸配列を、より一定又は不変の他の所望の最終産物を含む発現配列12に組み込むのではなく、本明細書において提供するキット又は発現産物生成系87では、カスタマイズ可能又はより可変の領域を別々の鋳型14及びコンカテマー16に分け得る。この方法では、予備生成したか、又はカスタマイズ可能な発現産物86のための発現配列12を別々のコンカテマー16若しくはプラスミド82に組み込む集合キットの一部である、別々の鋳型14として、より普遍の発現産物88を提供し得る。別の実施形態では、DNAコンカテマー(プラスミド又は小環鋳型から増幅された)は、適用ごとに可変又はカスタマイズ可能な成分のために選択され得るが、プラスミドは、適用によって変化しない、より一定の又は予測可能な成分のために選択され得る。このような別々の構築物の例は、図7図10を考慮しながら以下に考察する。
【0042】
レンチウイルス
図7図8は、レンチウイルスウイルスベクター生成系の模式図である。レンチウイルスウイルスベクターの生成は、CAR-T療法細胞の生成時を含む、様々な遺伝子療法の適用に有用であり得る。特には、本明細書において開示する技術を使用して生成したレンチウイルスベクターは、CAR-T療法細胞の生成において使用し得る。一実施形態では、開示の技術により生成したレンチウイルスベクターのレンチウイルス導入遺伝子は、キメラ抗原受容体をコードし得る。
【0043】
レンチウイルスは、直鎖状の1本鎖RNA(ssRNA)ゲノムを有する。第2世代レンチウイルスベクター生成のために描写された実施形態では、ENVタンパク質(例えば、VSV-G)が、第1のコンカテマーの発現配列によりコードされてよく、長い末端反復(LTR)配列と隣接する所望の導入遺伝子配列が、第2のコンカテマーの発現配列の一部であってよく、パッケージングタンパク質が、GAG、POL、REV及びTAT遺伝子をコードするORFを有する第3のコンカテマー上に存在してよい(図7)。第3世代レンチウイルス生成の別の配置(図8)では、パッケージングタンパク質は、一方のコンカテマー上に存在するGAG、POL及び他方のコンカテマー上に存在するREVを有する2つのパッケージングコンカテマーに更に分割される。
【0044】
現在の開示によれば、機能性レンチウイルスの効率的生成は、RCA DNA(VSV-Gエンベロープ、GAG/POL、REV及びGFP mRNAを別々にコードする)の混合物を化学量論的比率でHEK293T細胞において作製し、トランスフェクトすることにより達成された。GAG/POL(pLP1、Invitrogen社)、REV(pLP2、Invitrogen社)、VSV-Gエンベロープ(pLP/VSVG、Invitrogen社)及びパッケージングGFP mRNA(pLenti-GFP、Cell Biolabs社)をコードするプラスミドをRCAにより増幅し、各プラスミドの縦列反復を含む高分子量の超分岐コンカテマーを生成して、良好なウイルスベクター生成を評価した。ウイルスベクターは、生細胞から、又は無細胞発現により生成し得る。
【0045】
現在の開示によれば、複数の核酸コンカテマーを複数の各核酸コンカテマー間の定義された比率で含む、コンカテマー混合物を作製する。コンカテマー混合物は、共発現させて、各核酸コンカテマーからそれぞれ生じる複数の発現産物を生成し、ここで、複数の各発現産物間の比率は、コンカテマー混合物における、それぞれの各核酸コンカテマー間の定義された比率に比例する。
【0046】
開示する実施形態は、レンチウイルスベクターの生成に使用する複数のコンカテマーに関するが、他の実施形態では、コンカテマー及びプラスミドの混合をも検討する。一実施形態では、導入遺伝子のみをコンカテマーを使用して発現させ、一方、他の成分をコードするプラスミド構築物を導入遺伝子コンカテマーとともに共発現系に共トランスフェクトする。別の実施形態では、所望の導入遺伝子及びENVタンパク質を、2つの異なるコンカテマーの混合物から共発現させ、一方、他の成分をコードするプラスミドをコンカテマー混合物とともに共発現系に共トランスフェクトする。本技術は、レンチウイルス導入遺伝子、並びにウイルスベクターの他の成分のためのオープンリーディングフレームを有する任意のプラスミド又はコンカテマー(1つ又は複数のパッケージングコンカテマー又はプラスミド、及び1つのエンベロープコンカテマー又はプラスミド)を含む、1つ又は複数のコンカテマーの、発現系、例えば、HEK293T産生細胞又はA293T細胞への同時トランスフェクションを含み得る。共発現は、細胞又は無細胞により行い得る。
【0047】
特定の実施形態では、個々のRCA産物は、モル比1:1:1:1で混合してHEK293T細胞にトランスフェクトした。特定の実施形態では、1つ又は複数のRCA DNAコンカテマーは、プラスミドDNAにより置換し得る。RCA DNAのプラスミドDNAに対する種々の比率を使用してもよく、例えば、pLenti-GFP:LP1:LP2:LP3のモル比は、それぞれ1:3:3:3及び3:1:1:1である。いずれの場合も、コンカテマーRCA DNAは、プラスミドDNAと効率的に協働し、これにより同等量のレンチウイルスが生成された。
【0048】
アデノ随伴ウイルス(AAV)
野生型AAVは、145ヌクレオチド長の逆位末端反復(ITR)2つを末端に有する、約4.7キロベース(kb)の直鎖状1本鎖DNA(ssDNA)ゲノムを有する。ITRは、非構造及び構造タンパク質をそれぞれコードする2つのウイルスゲノムであるRep(複製)及びCap(カプシド)に隣接する。Rep遺伝子は、4つの制御性タンパク質、Rep78、Rep68、Rep52及びRep40をコードする。このようなタンパク質は、AAVゲノムの複製に関与する。Cap遺伝子は、3つのカプシドタンパク質、VP1(ビリオンタンパク質1)、VP2及びVP3をコードする。AAV血清型の中でも、AAV2は、in vitro及びin vivoでの遺伝子送達に最も広範に使用されている。
【0049】
AAV ITRは、ゲノムレスキュー、複製及びパッケージングに関与するすべてのcis作用エレメントを含み、trans作用ウイルスコード領域、すなわち、Rep及びCap遺伝子領域から分離されている。組換えAAV(rAAV)ベクターの設計では、cis作用ウイルスDNAエレメント(例えば、ITR)は、目的の配列に結合され得るが、Rep及びCap遺伝子領域は、transに配置され得る。典型的には、rAAV粒子は、AAV ITRと隣接する目的のDNAからなる組換えAAVゲノムのクローン、並びにウイルスのRep及びCap遺伝子をtransに発現する別々のプラスミドを含む、プラスミド(AAV cisプラスミド)を産生細胞にトランスフェクトすることにより生成する。アデノウイルスヘルパー因子、例えば、E1A、E1B、E2A、E4ORF6及びVA RNAは、このようなアデノウイルスヘルパー因子をもたらす第3のプラスミドの、産生細胞へのアデノウイルス感染又はトランスフェクションのいずれかにより、もたらされ得る。HEK293細胞をAAV産生細胞として使用する場合、HEK293細胞がE1A/E1b遺伝子を既に含むため、ヘルパー因子は、E2A、E4ORF6及びVA RNAを含む。
【0050】
組換えAAV、特には、組換えAAV2の生成のための一技術は、AAV Rep/Cap遺伝子を内部に有する野生型アデノウイルスの細胞株への感染、並びにAAVベクターDNAに依存している。別の方法であるヘルパーを使用しない方法は、宿主細胞、例えば、HEK293細胞におけるAAV生成に必要とされるすべてのエレメントのアデノウイルスを使用しない一過性トランスフェクションに基づいている。これは、3つのプラスミド:(1)目的の遺伝子(例えば、「導入遺伝子」)を2つのITR間に配置するAAV導入プラスミド、(2)AAV Rep-Cap遺伝子を保有するプラスミド、及び(3)アデノウイルスから単離するヘルパー遺伝子をもたらすヘルパープラスミドでAAV産生細胞を共トランスフェクションすることを含む。このような遺伝子(E4、E2a及びVA)は、AAVの複製を媒介する。導入プラスミド、Rep/Cap及びヘルパープラスミドを、E1A/E1b遺伝子を含む宿主細胞、例えば、HEK293細胞にトランスフェクトして、感染性AAV粒子を生成する。
【0051】
野生型アデノウイルス誘導性AAV産生細胞株を使用する方法は、培養の規模を拡大し、非常に高力価のAAVベクターを生成することが可能であるが、AAV産物からアデノウイルスを完全に除去することは非常に難しい課題であり、野生型アデノウイルスの混入は、ベクターの安全性及び特異性の点において極めて望ましくない。一方、一過性トランスフェクション方法によってアデノウイルスを含まない高力価AAVベクターが生成されるが、この方法は、非常に労力を要し、高価である。
【0052】
加えて、トランスフェクション手順による別々のプラスミドからの単一細胞におけるAAVの組換え共発現では、多種多様な比率で発現することが報告されている。AAVcap遺伝子は、3つの構造タンパク質(VP1、VP2及びVP3)を約1:1:10の化学量論によりコードする。この望ましい化学量論を達成するために、AAVカプシドタンパク質を生成するための組換え方法では、複雑なプロモーター誘導並びに/又は低及び高コピー数プラスミドの組合せを一般的に利用して、例えば、酵母に基づく発現において、VP1、VP2及びVP3の発現比率1:1:10を達成する。
【0053】
現在の開示によれば、VP1、VP2及びVP3カプシドタンパク質の化学量論的発現は、1つ又は複数のコンカテマーを使用して実証されている。発現は、細胞又は無細胞により行い得る。特定の実施形態では、核酸コンカテマーの混合及び補充は、無細胞タンパク質発現反応において1:1:10の比率で行い得る。
【0054】
現在の開示によれば、複数の核酸コンカテマーを複数の各核酸コンカテマー間の定義された比率で含む、コンカテマー混合物を作製する。コンカテマー混合物は、共発現させて、各核酸コンカテマーからそれぞれ生じる複数の発現産物を生成し、ここで、複数の各発現産物間の比率は、コンカテマー混合物におけるそれぞれの各核酸コンカテマー間の定義された比率に比例する。
【0055】
特定の実施形態では、複数の核酸コンカテマーのそれぞれは、所望の導入遺伝子に加えて、重要な複製及びウイルスカプシド因子を別々にコードする。特定の実施形態では、核酸コンカテマーの少なくとも1つは、最小限発現配列を含む。最小限発現配列は、in silicoで設計してin vitroで合成し得る(例えば、以下に列挙する配列番号#1~#3)。別の実施形態では、導入遺伝子(例えば、導入遺伝子搭載物)は、1つ又は複数のREP/CAPコンカテマー由来の別々のコンカテマー上に存在する。更に、別のコンカテマーは、所望の発現系に応じて1つ又は複数のヘルパー配列を含み得る。開示する実施形態は、AAVベクターの生成に使用する複数のコンカテマーに関するが、他の実施形態では、コンカテマー及びプラスミドの混合をも検討する。一実施形態では、導入遺伝子のみをコンカテマーを使用して発現させ、一方、他の成分をコードするプラスミド構築物を導入遺伝子コンカテマーとともに共発現系に共トランスフェクトする。別の実施形態では、所望の導入遺伝子及びカプシドタンパク質を、2つの異なるDNAコンカテマーの混合物から共発現させ、一方、他の成分をコードするプラスミドをコンカテマー混合物とともに共発現系に共トランスフェクトする。本技術は、AAV導入遺伝子、並びにウイルスベクターの他の成分のためのオープンリーディングフレームを有する任意のプラスミド又はコンカテマーを含む、1つ又は複数のコンカテマーの同時トランスフェクションを含み得る。
【0056】
CRISPR
図10は、Type II CRISPR系により行うCRISPR/Cas9ゲノム編集をもたらす共発現系の模式図である。ゲノム編集に利用する場合、この系は、非相同末端結合(NHEJ)又は相同組換え修復(HDR)のいずれかにおいて利用するDNA修復鋳型の任意選択のセクションとともにCas9、crRNA、tracrRNAを含む。
【0057】
CRISPR/Cas9では、プラスミドを利用して標的細胞にトランスフェクトすることが多い。プラスミドの主な成分は、crRNA、tracrRNA、sgRNA、Cas9タンパク質及び修復鋳型を含む。crRNAは、宿主DNAの正しいセクションを位置づけるガイドRNAを、tracrRNAに結合する領域とともに含む。tracrRNAは、crRNAに結合し、活性複合体を形成する。シングルガイドRNA(sgRNA)は、tracrRNA及び少なくとも1つのcrRNAからなる複合RNAである。複数のcrRNA及びtracrRNAは、ともにパッケージングして、シングルガイドRNA(sgRNA)を形成することができる。このsgRNAは、Cas9遺伝子とともに結合させてプラスミドとし、これにより細胞にトランスフェクトすることができる。これらをプラスミドに構築して細胞にトランスフェクトすると、Cas9タンパク質は、crRNAの助けにより、宿主細胞のDNAにおいて正しい配列を見出し、Cas9変異体に応じて、DNAにおける1本鎖又は2本鎖切断を生じる。
【0058】
また、本技術は、従来のプラスミドに基づく技術に代わる1つ又は複数のコンカテマー16を使用して、標的CRISPR/Cas9系を生成又は製造するために使用する。第1及び第2の核酸コンカテマーは、第1及び第2の発現配列をそれぞれ含み得る。第1及び第2の発現配列のうちの一方は、目的のタンパク質(例えば、Cas9)をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)及びオープンリーディングフレームに動作可能に結合するプロモーターを含む。他方の発現配列は、crRNA、tracrRNA、sgRNA又は修復鋳型をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含み得る。
【0059】
抗体
免疫グロブリン又は抗体は、重及び軽鎖を特徴的化学量論的に含む。例えば、免疫グロブリンG(IgG)は、ジスルフィド結合により結合する、同一の重鎖2つ及び同一の軽鎖2つを含む。免疫グロブリンを生成するための従来の組換え方法では、DNA、RNA又はタンパク質配列エレメント(例えば、種々のプロモーター、内部リボソーム侵入部位、翻訳後切断部位、又は種々の強度のポリアデニル化シグナル)を含む単一ベクター発現カセットの複雑な設計を、例えば、CHO細胞において、抗体の重及び軽鎖の所望の発現比率を達成するために必要とし得る。軽鎖対重鎖ポリペプチドの発現比率は、所望の抗体の組換え収率並びに望ましくない凝集物及び断片の制限に対する重要なパラメータとして認識されている。
【0060】
また、本技術は、第1及び第2の核酸コンカテマーの所定の比率を使用し、次いで、軽鎖対重鎖ポリペプチドの所望の比率を得ることにより、より合理的かつ頑健な方法で、軽鎖対重鎖ポリペプチドの発現比率をもたらす抗体を生成又は製造するために使用し得る。一実施形態では、第1及び第2の核酸コンカテマーは、第1及び第2の発現配列をそれぞれ含み、各発現配列が、オープンリーディングフレーム(ORF)及びオープンリーディングフレームに動作可能に結合するプロモーターを含み得る。特定の実施形態では、第1及び第2の発現配列のORFは、それぞれが、抗体の重鎖及び軽鎖をそれぞれコードし得る。特定の実施形態では、発現配列のうちの1つは、2つ以上のORFに動作可能に結合する1つのプロモーターを含み得る。例えば、発現配列のうちの1つは、2つの異なるORFに機能的に結合するプロモーターを含み、一方のORFは、抗体の重鎖をコードし、他方のORFは、軽鎖をコードし得る。別の実施形態では、コンカテマー混合物は、第1のコンカテマーが、第1の抗体の軽鎖及び重鎖ドメインを含む第1の発現配列をコードし、一方、第2のコンカテマーが、第2の抗体の軽鎖及び重鎖ドメインを含む第2の発現配列をコードする、二重特異性抗体を発現するように作製し得る。
【0061】
ウイルス様粒子
また、本技術は、ウイルス様粒子を生成又は製造するために使用し得る。ウイルス様粒子の非限定的な例としては、HPV及びガーダシル(ヒトパピローマウイルス四価6、11、16及び18型)ワクチンが挙げられる。HPVは、2つのカプシドタンパク質、L1及びL2をコードする。主要カプシドタンパク質L1は、自然発生的に集合して、天然のビリオンに酷似する、五量体72個による正二十面体構造を構築し得る。非主要カプシドタンパク質L2は、カプシド形成には必要とされないが、L2は1カプシドあたり平均約36分子存在し得る(推定L1:L2比は約9:1~11:1)。ガーダシル(ヒトパピローマウイルス四価6、11、16及び18型)ワクチンは、それぞれがパン酵母から個々に発現する4つの異なるL1カプソメアの組換えVLP製剤である。
【0062】
第1及び第2の核酸コンカテマーは、第1及び第2の発現配列をそれぞれ含み得る。第1及び第2の発現配列は、第1及び第2の目的のタンパク質、例えば、カプシドタンパク質L1及びL2をそれぞれコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含み得る。発現配列のそれぞれは、対応するオープンリーディングフレームに動作可能に結合するプロモーターを更に含み得る。特定の実施形態では、発現配列のうちの1つは、2つ以上のORFに動作可能に結合する1つのプロモーターを含み得る。例えば、発現配列のうちの1つは、2つの異なるORFに機能的に結合するプロモーターを含み、一方のORFは、カプシドタンパク質L1をコードし、他方のORFは、カプシドタンパク質L2をコードし得る。
【実施例
【0063】
他に明示しない限り、実施例において記載する成分は、一般的化学物質供給業者から市販されているものである。実施例の節において使用する一部の略称は、次の通り、更に詳細に述べる:「mg」:ミリグラム、「ng」:ナノグラム「pg」:ピコグラム、「fg」:フェムトグラム、「mL」:ミリリットル、「mg/mL」:1ミリリットルあたりのミリグラム、「mM」:ミリモル濃度、「mmol」:ミリモル、「pM」:ピコモル濃度、「pmol」:ピコモル、「μL」:マイクロリットル、「min.」:分及び「h.」:時間。
【0064】
(実施例1)
1:1:10のRCA混合物からのアデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドタンパク質の化学量論的発現
図11に示すように、無細胞タンパク質発現反応においてRCA DNAを1:1:10の比率で混合及び補充することにより、VP1、VP2及びVP3カプシドタンパク質の化学量論的発現を実証した。VP1、VP2及びVP3を別々にコードする最小限発現配列をin silicoで設計してin vitroで合成した(配列番号#1~#3)。
【0065】
配列番号1
CCGGGATCCTTCTTTAAATTAATACGACTCACTATAGGGAGACCACAACGGTTTCCCTCTAGAAATAATTTTGTTTAACTTTAAGAAGGAGATATACATATGGCTGCTGACGGATATCTGCCGGATTGGTTGGAAGATAACCTTAGCGAAGGTATACGAGAGTGGTGGGATTTGAAGCCAGGGGCACCAAAGCCGAAGGCAAATCAACAAAAGCAAGACGACGGACGTGGATTGGTGTTGCCGGGATATAAGTATTTGGGACCGTTTAACGGTCTTGATAAGGGCGAGCCAGTTAACGCAGCAGACGCTGCAGCATTAGAACACGATAAGGCATACGATCAACAACTTAAGGCGGGGGATAACCCTTACCTTCGTTACAATCACGCTGACGCCGAGTTTCAAGAAAGGTTGCAAGAAGATACGAGCTTTGGTGGTAACCTTGGACGAGCAGTGTTCCAAGCTAAGAAGCGGGTCCTAGAGCCGTTTGGACTTGTTGAAGAAGGCGCAAAAACAGCACCTGGAAAGAAGAGACCGGTAGAGCAAAGCCCACAAGAGCCGGATAGCTCCAGCGGAATTGGAAAGACTGGACAACAGCCGGCAAAGAAGCGTCTGAATTTTGGACAAACCGGTGATTCCGAGAGCGTACCAGATCCACAGCCGCTTGGTGAGCCACCAGCTACACCAGCAGCTGTTGGCCCTACGACAATGGCAAGCGGCGGTGGCGCACCAATGGCTGATAATAACGAAGGTGCAGACGGGGTTGGAAACGCAAGCGGAAATTGGCATTGTGATAGCACGTGGCTTGGGGATCGTGTTATCACGACGTCAACGAGAACGTGGGCACTTCCGACGTATAACAACCACTTGTACAAGCAAATTAGCTCGGCAAGTACGGGGGCAAGCAACGATAATCACTACTTTGGATATTCCACGCCGTGGGGATATTTTGATTTTAACCGCTTTCATTGTCACTTTAGCCCGCGTGATTGGCAACGGCTTATCAACAATAATTGGGGATTTCGACCGAAGCGGCTTAACTTCAAGCTCTTTAACATTCAGGTCAAAGAAGTAACCACGAACGACGGTGTAACGACGATCGCCAATAATCTTACGAGCACGGTGCAAGTGTTTTCCGATTCTGAGTATCAACTTCCGTACGTCCTTGGTTCCGCACATCAAGGGTGTTTACCGCCTTTTCCGGCCGACGTTTTTATGATCCCGCAATACGGATACCTTACGCTAAATAACGGGTCCCAAGCAGTGGGAAGAAGCAGCTTCTATTGCCTTGAATATTTTCCAAGCCAAATGCTTCGGACCGGAAATAACTTTACCTTTAGCTATACGTTTGAAGACGTGCCGTTTCATTCGTCATACGCACATAGCCAAAGCCTAGATCGCCTTATGAATCCGTTGATCGATCAGTACCTTTACTATCTCAATCGCACGCAAAATCAAAGCGGATCAGCACAAAATAAAGACCTGCTGTTTAGCCGCGGATCTCCAGCTGGCATGAGCGTACAACCGAAGAATTGGCTTCCGGGACCCTGCTATAGGCAACAACGCGTAAGTAAGACGAAGACGGATAACAACAATAGCAACTTTACGTGGACAGGGGCTTCGAAGTACAATCTTAACGGAAGGGAATCCATTATTAACCCTGGCACAGCTATGGCTAGCCACAAAGACGATAAAGATAAGTTCTTTCCGATGTCCGGCGTCATGATTTTCGGAAAAGAGTCCGCAGGTGCATCGAATACGGCACTTGATAACGTAATGATCACGGACGAAGAAGAGATAAAGGCTACGAATCCGGTCGCAACAGAGCGATTCGGAACGGTTGCGGTAAATCTTCAATCGAGCAGCACAGATCCGGCAACTGGCGACGTCCACGTTATGGGCGCACTTCCCGGCATGGTCTGGCAAGATAGGGACGTGTACCTTCAGGGACCGATTTGGGCTAAGATACCGCATACAGACGGACATTTTCACCCAAGTCCGCTTATGGGGGGATTTGGATTAAAGCACCCGCCGCCGCAAATACTCATAAAGAACACACCGGTGCCAGCAAATCCGCCGGCAGAGTTTAGTGCAACGAAGTTTGCAAGCTTTATCACACAATACAGCACGGGACAAGTAAGCGTAGAGATCGAGTGGGAATTGCAAAAAGAGAATAGCAAGCGCTGGAATCCCGAAGTGCAATATACGTCCAACTACGCGAAGAGCGCAAACGTTGATTTCACGGTCGATAACAACGGACTTTATACGGAACCGCGTCCGATTGGAACGAGATATTTGACGCGACCGCTTTAATAACTAGCATAACCCCTTGGGGCCTCTAAACGGGTCTTGAGGGGTTTTTTGCTGCAGAGATCTCCG
【0066】
配列番号2
CCGGGATCCTTCTTTAAATTAATACGACTCACTATAGGGAGACCACAACGGTTTCCCTCTAGAAATAATTTTGTTTAACTTTAAGAAGGAGATATACATATGGCACCTGGAAAGAAGCGACCGGTTGAGCAATCTCCGCAAGAGCCGGATAGCTCCAGCGGAATTGGAAAGACTGGACAACAACCGGCCAAGAAGCGATTGAATTTTGGACAAACGGGGGATTCCGAGAGTGTGCCTGATCCACAACCACTTGGCGAGCCACCAGCAACACCAGCTGCAGTTGGCCCGACAACAATGGCATCTGGCGGCGGCGCACCAATGGCTGATAACAACGAAGGGGCAGACGGTGTTGGAAACGCAAGCGGAAATTGGCATTGTGATTCGACGTGGCTTGGTGATAGGGTCATAACGACAAGCACGCGAACGTGGGCATTACCCACGTATAACAATCACCTCTACAAGCAAATTAGCAGCGCTAGCACTGGTGCATCGAACGATAACCACTACTTTGGGTATAGCACACCGTGGGGATATTTCGATTTTAATCGGTTTCACTGCCATTTTAGCCCAAGGGATTGGCAACGTCTTATCAACAATAACTGGGGATTTAGGCCTAAGCGCCTTAATTTCAAGCTGTTTAACATTCAGGTCAAAGAAGTAACGACGAACGACGGGGTGACGACGATCGCAAATAATCTTACGTCCACGGTGCAAGTTTTTAGCGATAGCGAGTATCAATTACCGTACGTGCTTGGAAGCGCACATCAAGGTTGTCTTCCACCGTTTCCGGCAGACGTCTTTATGATTCCGCAATACGGATACCTTACGCTTAATAACGGAAGCCAAGCTGTAGGTCGGTCTAGCTTTTACTGCCTTGAATACTTTCCGTCACAAATGCTTCGTACCGGAAACAACTTTACGTTTAGCTACACGTTTGAAGACGTGCCGTTTCACAGCTCGTACGCACATTCACAAAGCCTTGATCGCCTTATGAATCCGCTTATCGATCAATACCTCTATTATCTAAACCGGACGCAGAACCAATCGGGATCGGCACAAAACAAAGATTTGTTGTTTAGTCGCGGCAGTCCGGCTGGCATGAGCGTACAACCGAAGAATTGGTTGCCGGGTCCTTGTTATCGTCAACAACGCGTAAGCAAGACGAAGACAGATAACAATAACAGCAATTTTACTTGGACGGGGGCATCCAAGTATAATCTGAACGGACGTGAATCCATCATAAACCCCGGCACAGCTATGGCAAGCCACAAAGACGATAAAGATAAGTTCTTTCCGATGTCCGGCGTTATGATCTTTGGAAAAGAATCAGCTGGGGCAAGTAATACGGCGCTTGATAACGTCATGATAACCGACGAAGAAGAGATCAAGGCAACGAATCCGGTCGCAACGGAACGTTTTGGAACCGTTGCGGTCAATCTTCAATCCAGCAGCACAGATCCGGCAACTGGCGACGTACACGTAATGGGCGCACTTCCTGGCATGGTGTGGCAAGATAGAGACGTGTACCTTCAAGGGCCGATTTGGGCAAAGATACCGCATACGGACGGACACTTTCATCCATCCCCACTTATGGGTGGATTTGGACTTAAGCACCCGCCACCGCAAATTCTTATAAAGAACACGCCGGTACCAGCTAATCCGCCGGCTGAGTTTAGCGCAACCAAGTTTGCAAGCTTTATCACGCAATATTCCACGGGACAGGTAAGCGTTGAGATCGAGTGGGAACTTCAAAAAGAGAATAGCAAGCGCTGGAATCCGGAAGTCCAGTATACATCCAATTACGCGAAGAGCGCAAACGTCGATTTCACGGTGGATAATAACGGACTATACACGGAACCGAGACCGATTGGAACAAGGTATTTGACGCGACCGCTTTAATAACTAGCATAACCCCTTGGGGCCTCTAAACGGGTCTTGAGGGGTTTTTTGCTGCAGAGATCTCCG
【0067】
配列番号3
CCGGGATCCTTCTTTAAATTAATACGACTCACTATAGGGAGACCACAACGGTTTCCCTCTAGAAATAATTTTGTTTAACTTTAAGAAGGAGATATACATATGGCATCTGGCGGCGGCGCACCAATGGCAGATAATAACGAAGGTGCAGACGGGGTTGGTAACGCTTCCGGAAATTGGCACTGTGATAGCACGTGGCTTGGTGATCGTGTGATCACAACAAGCACACGAACGTGGGCCTTACCGACGTACAACAATCACTTGTACAAGCAAATCAGCAGCGCATCCACAGGGGCATCTAACGATAACCACTATTTCGGATACAGCACGCCGTGGGGATATTTTGATTTTAACCGGTTTCACTGCCATTTTAGTCCCCGCGATTGGCAAAGACTGATCAACAACAATTGGGGATTTCGTCCGAAGCGACTTAATTTCAAGCTGTTCAACATACAAGTCAAAGAAGTGACGACGAACGACGGGGTTACGACGATAGCAAATAACCTAACGAGCACGGTGCAAGTATTTAGCGATAGCGAGTATCAACTTCCGTACGTACTTGGATCAGCACATCAAGGGTGCCTTCCACCGTTTCCGGCAGACGTTTTTATGATTCCGCAATACGGATACCTTACGTTGAATAACGGAAGCCAAGCAGTTGGAAGGTCCAGCTTCTACTGTCTTGAATACTTTCCCAGCCAAATGCTTCGCACTGGAAACAACTTTACCTTCAGCTATACATTTGAAGACGTGCCGTTTCATAGTAGCTACGCTCATAGCCAAAGCCTTGATCGACTTATGAATCCGCTTATTGATCAATACCTGTATTACCTCAATCGCACACAGAATCAATCCGGATCGGCACAAAACAAAGATTTGCTCTTTAGCCGCGGCTCACCAGCTGGCATGTCCGTTCAACCGAAGAATTGGCTTCCTGGACCGTGTTATCGTCAACAAAGGGTCTCCAAGACGAAGACGGATAACAACAACAGCAATTTTACGTGGACGGGTGCGAGTAAGTACAATCTTAACGGACGCGAGAGCATTATTAATCCTGGCACAGCAATGGCTAGCCACAAAGACGATAAAGATAAGTTTTTCCCGATGTCCGGCGTCATGATTTTTGGAAAAGAGAGTGCAGGTGCATCGAATACGGCACTAGATAACGTAATGATCACGGACGAAGAAGAAATCAAGGCCACGAATCCTGTAGCAACGGAAAGGTTTGGAACGGTTGCGGTGAATTTGCAAAGCAGCTCCACAGATCCAGCTACCGGCGACGTTCACGTAATGGGCGCATTACCCGGCATGGTCTGGCAAGATCGAGACGTATATCTTCAAGGTCCGATCTGGGCTAAGATTCCACATACTGACGGACACTTTCATCCAAGCCCTCTTATGGGTGGATTTGGACTTAAGCATCCGCCGCCGCAAATTCTCATCAAGAATACGCCGGTGCCGGCAAATCCACCAGCAGAGTTTAGCGCAACCAAGTTTGCTAGCTTTATCACGCAATATTCGACGGGACAAGTGAGCGTCGAGATAGAGTGGGAACTTCAGAAAGAGAACAGCAAGCGGTGGAATCCGGAAGTACAGTATACGAGCAATTACGCAAAGAGCGCAAACGTCGATTTTACCGTCGATAACAACGGGCTTTATACAGAGCCGAGACCGATAGGTACGCGGTATCTTACGCGTCCGCTTTAATAACTAGCATAACCCCTTGGGGCCTCTAAACGGGTCTTGAGGGGTTTTTTGCTGCAGAGATCTCCG
【0068】
各発現配列は、無細胞mRNA転写及びタンパク質翻訳を開始するためのT7プロモーター及びT7遺伝子10リーダーリボソーム結合部位をそれぞれ含む。最小限発現配列をコードする2本鎖DNAは、BamHI及びBglIIにより消化し、相補的オーバーハングを生成して、分子内ライゲーションによりDNA小環を生成した後、エキソヌクレアーゼ処理(ExoI、ExoIII)をして残存する任意の非環状DNAを消化した。次いで、ローリングサークル増幅法(RCA)を使用して、各最小限発現配列の縦列反復から本質的になる高分子量の超分岐コンカテマーを生成した。本明細書において提供する場合、RCAは、米国特許第10,077,459号及び米国特許第9,938,568号に開示するように行ってもよく、これらの開示は、あらゆる目的において参照により本明細書に組み込まれる。RCAにより、in vitroでの転写及び翻訳共役反応を実行する容易で経済的かつ頑健な選択肢の利点がもたらされる。水、反応緩衝液、40μMのプライマー及び20ng/μLのphi29 DNAポリメラーゼを含むRCA試薬は、混入したDNAを予め除去し、その後、ライゲーションした小環鋳型及び400μMのdNTPを加えた。増幅は、+N+N(atN)(atN)(atN)*N(AT六量体)の配列を有する六量体プライマーを使用して行い、生じたRCA産物をチオエート化する反応には10μMのアルファS-dATPが含まれた。RCA産物は、Quant-It(商標)Picogreen(登録商標)dsDNA Assay Kit(ThermoFisher Inc社)を使用して、全RCA反応量100μLから定量し、次いで、中間精製せずに無細胞タンパク質発現反応に直接適用した。VP1、VP2及びVP3の化学量論的発現を達成するために、個々のRCA産物を質量比1:1:10でExpressway(商標)抽出物(ThermoFisher Inc社)中に混合して、全DNA含量を50μL反応あたり0.5μgとした。対照の目的で、VP1、VP2及びVP3(それぞれ約82kD、66kD及び60kD)を、別々の無細胞反応において、それぞれのRCA DNA0.5μgをExpressWay反応物50μLに加えることにより発現させた。FluoroTect(商標)GreenLYS in vitro Translation Label(Promega社)を、蛍光BODIPY-FL標識を有するランダム標識新生リジン残基に対する(アンチコドンUUU tRNAを介する)すべての無細胞発現反応物に加えた。すべての無細胞発現反応物を30℃で6時間、Eppendorf ThermoMixer (1200rpm)内でインキュベートし、次いで、SDS-PAGEにより分析して、ゲル内蛍光によりTyphoon Variable Mode Imager(GE Healthcare社)を使用して、すべてのBODIPY標識翻訳産物を可視化した。図1に提示するデータにより、VP1、VP2及びVP3カプシドタンパク質の化学量論的発現が、無細胞タンパク質発現反応に補充したRCA DNAの比率1:1:10で作製したように実証される。特定の実施形態では、集合活性化タンパク質(AAP)をコードし、1:1:10の比率(VP1、VP2、VP3に対して)で発現するRCA産物を、ウイルスカプシドの集合及び折畳みを強化するために使用し得る。或いは、VP3及びAAPをコードするRCA混合物は、ウイルス様粒子のin vitroでの化学量論的発現を引き起こすのに十分であり得る。
【0069】
(実施例2)
1:2のRCA混合物からの免疫グロブリン鎖の化学量論的発現
免疫グロブリンの重及び軽鎖の化学量論的発現を、2つの異なるRCA核酸コンカテマー産物を使用して実証する。IgG重及び軽鎖を別々にコードする最小限発現配列をin silicoで設計してin vitroで合成した(配列番号#4~#5)。
【0070】
配列番号4
CCGGGATCCCAGTGAATTGTAATACGACTCACTATAGGGCGAATTAATTCCGGTTATTTTCCACCATATTGCCGTCTTTTGGCAATGTGAGGGCCCGGAAACCTGGCCCTGTCTTCTTGACGAGCATTCCTAGGGGTCTTTCCCCTCTCGCCAAAGGAATGCAAGGTCTGTTGAATGTCGTGAAGGAAGCAGTTCCTCTGGAAGCTTCTTGAAGACAAACAACGTCTGTAGCGACCCTTTGCAGGCAGCGGAACCCCCCACCTGGCGACAGGTGCCTCTGCGGCCAAAAGCCACGTGTATAAGATACACCTGCAAAGGCGGCACAACCCCAGTGCCACGTTGTGAGTTGGATAGTTGTGGAAAGAGTCAAATGGCTCACCTCAAGCGTATTCAACAAGGGGCTGAAGGATGCCCAGAAGGTACCCCATTGTATGGGATCTGATCTGGGGCCTCGGTGCACATGCTTTACATGTGTTTAGTCGAGGTTAAAAAACGTCTAGGCCCCCCGAACCACGGGGACGTGGTTTTCCTTTGAAAAACACGATGATAATATGGCCACAACCAAGTGGGTCACCTTCATCTCCCTGCTGTTCCTCTTCTCGTCTGCCTACTCCGACATTCAAATGACACAGTCGCCGTCCTCCCTGTCCGCGTCCGTGGGTGATCGGGTCACCATTACTTGCCGGGCGTCGCAGGGCATCAGAAACTACCTGGCCTGGTACCAGCAGAAGCCCGGCAAGGCACCTAAGCTCCTTATCTACGCGGCCAGCACACTTCAGAGCGGCGTGCCGTCAAGGTTCTCGGGGTCCGGATCAGGCACCGACTTCACTCTGACTATTAGCAGCCTGCAGCCGGAGGACGTGGCCACCTACTACTGCCAACGCTACAACAGAGCTCCCTACACGTTTGGTCAAGGCACCAAAGTGGAGATCAAGCGCACCGTGGCCGCCCCCTCGGTGTTCATCTTTCCACCTTCCGACGAGCAGCTGAAGTCAGGAACTGCCTCCGTGGTCTGCCTGCTGAACAACTTCTATCCGCGCGAGGCTAAGGTGCAGTGGAAGGTCGACAACGCACTCCAGAGCGGAAACTCCCAGGAGTCCGTGACCGAACAGGACTCCAAGGATAGCACCTACTCACTCTCGTCCACCCTGACTTTGAGCAAGGCCGACTACGAAAAGCATAAGGTCTACGCCTGCGAAGTGACCCACCAGGGACTGTCCTCCCCTGTGACCAAGTCCTTCAATCGGGGGGAGTGTTAATAACATCTGACTGAAAAAAAAAAAGTTTAAACACTAGTCCGCTGAGCAATAACTAGCATAACCCCTTGGGGCCTCTAAACGGGTCTTGAGGGGTTTTTTGCTGCAGAGATCTCCG
【0071】
配列番号5
CCGGGATCCCAGTGAATTGTAATACGACTCACTATAGGGCGAATTAATTCCGGTTATTTTCCACCATATTGCCGTCTTTTGGCAATGTGAGGGCCCGGAAACCTGGCCCTGTCTTCTTGACGAGCATTCCTAGGGGTCTTTCCCCTCTCGCCAAAGGAATGCAAGGTCTGTTGAATGTCGTGAAGGAAGCAGTTCCTCTGGAAGCTTCTTGAAGACAAACAACGTCTGTAGCGACCCTTTGCAGGCAGCGGAACCCCCCACCTGGCGACAGGTGCCTCTGCGGCCAAAAGCCACGTGTATAAGATACACCTGCAAAGGCGGCACAACCCCAGTGCCACGTTGTGAGTTGGATAGTTGTGGAAAGAGTCAAATGGCTCACCTCAAGCGTATTCAACAAGGGGCTGAAGGATGCCCAGAAGGTACCCCATTGTATGGGATCTGATCTGGGGCCTCGGTGCACATGCTTTACATGTGTTTAGTCGAGGTTAAAAAACGTCTAGGCCCCCCGAACCACGGGGACGTGGTTTTCCTTTGAAAAACACGATGATAATATGGCCACAACCAAGTGGGTCACCTTCATCTCCCTGCTGTTTCTGTTCTCCTCCGCATACTCGGAAGTCCAACTTGTGGAGTCCGGAGGAGGCCTGGTGCAGCCTGGACGCAGCCTGAGACTGTCGTGTGCTGCGTCCGGATTCACTTTTGACGATTACGCTATGCATTGGGTCAGACAGGCCCCCGGGAAGGGGCTCGAGTGGGTGTCCGCCATCACTTGGAACAGCGGACACATCGACTACGCTGATTCTGTGGAGGGCCGCTTCACTATCTCGCGGGACAACGCCAAGAACTCCCTGTACCTTCAAATGAATTCCCTGCGGGCCGAGGATACTGCTGTGTACTACTGCGCCAAGGTGTCCTACCTGTCCACTGCGTCGTCACTCGACTACTGGGGCCAGGGCACGCTGGTCACCGTGTCCAGCGCGTCCACCAAGGGTCCGAGCGTGTTCCCGCTTGCCCCGTCATCGAAGTCTACCTCGGGCGGCACCGCCGCCCTCGGTTGCCTCGTCAAGGATTACTTCCCGGAGCCCGTGACTGTGTCCTGGAATAGCGGCGCCCTGACCTCGGGAGTGCACACATTCCCGGCGGTGCTGCAGTCAAGCGGTTTGTACTCCCTGTCGTCCGTCGTGACCGTGCCTAGCTCATCCCTGGGGACCCAGACCTACATTTGCAACGTGAACCACAAGCCTTCCAACACCAAGGTCGACAAGAAGGTGGAGCCCAAGTCGTGCGACAAGACCCATACCTGCCCTCCGTGCCCGGCCCCTGAGTTGCTCGGGGGACCTTCCGTGTTCCTGTTCCCGCCGAAGCCTAAGGATACTCTTATGATTAGCAGGACCCCCGAAGTGACCTGTGTGGTGGTGGACGTCAGCCACGAGGACCCCGAAGTCAAGTTCAATTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTCCATAACGCCAAGACTAAGCCAAGGGAGGAGCAGTATAACAGCACTTACCGGGTGGTGTCAGTGCTGACCGTGCTGCATCAGGACTGGCTCAACGGCAAAGAGTACAAGTGCAAGGTGTCCAACAAGGCCCTGCCCGCACCCATTGAGAAGACCATTAGCAAGGCCAAGGGACAGCCACGGGAACCACAGGTGTACACCCTTCCCCCATCCCGCGACGAACTGACTAAGAACCAAGTGTCCCTCACCTGTCTCGTGAAGGGATTCTACCCGAGCGACATCGCAGTCGAGTGGGAATCGAACGGCCAGCCCGAGAACAACTACAAGACGACTCCTCCGGTGCTGGACTCCGACGGTTCCTTCTTCCTGTACTCCAAGCTGACCGTGGACAAGAGCCGCTGGCAGCAGGGCAACGTGTTCAGCTGCTCTGTTATGCACGAAGCCTTGCACAACCACTACACACAGAAGTCACTCTCCCTGTCGCCCGGCAAGTAATAACATCTGACTGAAAAAAAAAAAGTTTAAACACTAGTCCGCTGAGCAATAACTAGCATAACCCCTTGGGGCCTCTAAACGGGTCTTGAGGGGTTTTTTGCTGCAGAGATCTCCG
【0072】
発現配列は、無細胞mRNA転写及びタンパク質翻訳を開始させるためのT7プロモーター及び脳心筋炎ウイルス(EMCV)由来の内部リボソーム侵入部位(IRES)をそれぞれ含んだ。最小限発現配列をコードする2本鎖DNAは、BamHI及びBglIIにより消化し、相補的オーバーハングを生成して、分子内ライゲーションによりDNA小環を生成した後、エキソヌクレアーゼ処理(ExoI、ExoIII)して残存する任意の非環状DNAを消化した。次いで、ローリングサークル増幅法(RCA)を使用して、各最小限発現配列の縦列反復から本質的になる高分子量の超分岐コンカテマーを生成した。RCA及び定量は、実施例1に開示するように行った。RCA産物は、Quant-It(商標)Picogreen(登録商標)dsDNA Assay Kit(ThermoFisher Inc社)を使用して、全RCA反応量100μLから定量し、次いで、エタノール沈殿により精製した。化学量論的発現を達成するために、軽鎖及び重鎖をコードする個々のRCA産物を質量比1:2でそれぞれ1-Step Human Coupled IVT抽出物(ThermoFisher Inc社)中に混合して、全DNA含量を25μL反応あたり125ngとした。対照の目的で、個々の軽及び重鎖(それぞれ約26kD及び52kD)を、別々の無細胞反応において、それぞれのRCA DNA 125ngを1-Step反応物25μLに加えることにより発現させた。FluoroTect(商標)GreenLYS in vitro Translation Label(Promega社)を、蛍光BODIPY-FL標識を有するランダム標識新生リジン残基に対する(アンチコドンUUU tRNAを介する)すべての無細胞発現反応物に加えた。図12に提示するデータにより、無細胞タンパク質発現反応に補充したRCA DNAの比率で規定されたような軽及び重鎖ポリペプチドの化学量論的発現が実証される。無細胞タンパク質発現反応は、最終IgG分子のシグナルペプチドプロセシング及びジスルフィド結合形成を促進する抽出物のミクロソーム含量を増加することにより、更に拡大させてもよい。
【0073】
(実施例3)
機能的AAVウイルス生成のためのRCA混合物の作製
組換えAAVの製造は、3つの異なるプラスミド(Rep/Cap、ヘルパー及びパッケージングしたDNA導入遺伝子)のHEK293T産生細胞への同時トランスフェクションを一般に含む。一過性トランスフェクションの実行は、治療用ウイルスが、足場依存性産生細胞から、懸濁適合細胞と比較して迅速、高収率で、一般に高力価により(重要な予備最適化なしで)生成可能であるため、臨床試験用ウイルスベクターを製造する場合に使用する。しかし、AAV製造の規模拡大は、プラスミドDNA製造のリードタイム及び費用により制限される。ここで、機能的AAVウイルスベクターの効率的生成を、RCA DNA(Rep/Cap、ヘルパー及びGFP導入遺伝子をコードする)の混合物を1:1:1の比率で作製し、HEK293T細胞にトランスフェクトすることにより示した。Rep/Cap(pAAV-RC6、Agilent Genomics社)、ヘルパー(pHelper、Agilent Genomics社)及びパッケージングしたDNA導入遺伝子(pscAAV-GFP、Cell Biolabs社)をコードするプラスミドを、RCAを使用して増幅し、本明細書に開示のように実施及び定量して、各プラスミドの縦列反復を含む高分子量の超分岐コンカテマーを生成した。AAV粒子を生成するために、個々のRCA産物を質量又はモル比1:1:1で混合し、全DNA 4μgをHEK293T細胞に、DharmaFECT kB試薬を使用してトランスフェクトした。対照の目的で、4μgのプラスミドDNA又はRCA DNAの直鎖状消化物(コンカテマーの2本鎖単量体へのScaIエンドヌクレアーゼ切断後)をHEK293T細胞に同様の比率1:1:1でトランスフェクトした。DNA混合物をDharmaFECTとともに10分間、室温で予備インキュベートした後、HEK293T細胞とともに約20時間インキュベートし、その後、トランスフェクト細胞に新鮮培地を与えた。トランスフェクションから3日後に、細胞を回収及び洗浄した後、凍結融解(約-72℃のドライアイス/エタノール浴の後、37℃の水浴における加温により)を4サイクル行うことによりAAV粗溶解物を採取した。細胞片を遠心分離(10,000g×10分)により除去し、2つの異なる最終濃度(18%及び2%)のAAV粗溶解物をナイーブHEK293T細胞とともに新鮮培地においてインキュベートした。形質導入から3日後、GFP陽性細胞をフローサイトメトリーにより、適当なゲーティングのための適切な対照に対して定量した。図13に要約するデータにより、インタクトなRCAコンカテマーからの、プラスミドDNAと比較して等価なAAV生成が実証される。コンカテマー形態及び消化形態の両形態を使用して、RCA DNAモル比1:1:1と比較して、RCA DNA質量比1:1:1によって、ウイルスがより少なく生成された。比率計量的比較により、DNA質量比1:1:1では、DNA混合物における最長コードDNAの相対量が減少し、このため、pHelper DNAにより、ウイルス生成が制限されている可能性があることが明らかとなった。後続の実験では、個々のRCA DNAを個々のプラスミドと混合して、モル濃度の組合せ1:1:1をトランスフェクションにより評価した。いずれの場合も、図14に示すように、コンカテマーRCA DNAは、プラスミドDNAと効率的に協働し、これにより同等量のAAVウイルスが生成された。
【0074】
(実施例4)
機能的レンチウイルス生成のためのRCA混合物の作製
RCA DNA(VSV-Gエンベロープ、Gag/Pol、Rev及びGFP mRNAを別々にコードする)の混合物を化学量論的比率で作製しHEK293T細胞にトランスフェクトすることにより、機能的レンチウイルスの効率的生成を実証した。Gag/Pol(pLP1、Invitrogen社)、Rev(pLP2、Invitrogen社)、VSV-Gエンベロープ(pLP3、Invitrogen社)及びパッケージングGFP mRNA(pLenti-GFP、Cell Biolabs社)をコードするプラスミドを、RCAを使用して増幅し、本明細書に開示のように実施及び定量して、各プラスミドの縦列反復を含む高分子量の超分岐コンカテマーを生成した。増幅は、+N+N(atN)(atN)(atN)*N(AT六量体)の配列を有する六量体プライマーを使用して行い、生じたRCA産物をチオエート化するpLenti-GFP反応には10μMのアルファS-dATPが任意選択で含まれた。レンチウイルスを生成するために、個々のRCA産物をモル比1:1:1:1で混合し、全DNA約3μgをHEK293T細胞に、DharmaFECT kB試薬を使用してトランスフェクトした。対照の目的で、約3μgの環状プラスミド又はプラスミドの線状化消化物(ScaI又はPvuIエンドヌクレアーゼ切断後)をHEK293T細胞に同様の比率1:1:1:1でトランスフェクトした。DNA混合物をDharmaFECTとともに10分間、室温で予備インキュベートした後、HEK293T細胞とともに約20時間インキュベートし、その後、新鮮培地と交換した。トランスフェクションから3日後に使用済み培地(レンチウイルスを含む)を採取し、0.2μmのシリンジフィルターを通して濾過した後、ナイーブHEK293T細胞を5μg/mLのポリブレンの存在下で形質導入させた。ウイルス形質導入から約24時間後、細胞に新鮮培地を与え、更に2~3日インキュベートした。次いで、細胞を採取し(形質導入から3~4日後)、GFP陽性細胞をフローサイトメトリーにより、適切なゲーティング対照に対して定量した。図15に要約するデータにより、インタクトなRCAコンカテマーからの非最適化レンチウイルス生成が実証される。RCA産物又はプラスミドの特定の化学量論的混合物は例であり、レンチウイルスは、代替の化学量論的混合物を使用して生成することもできる。例えば、RCA DNAのプラスミドDNAとの高い比率の混合物、特には、pLenti-GFP:LP1:LP2:LP3のモル濃度の組合せ1:3:3:3及び3:1:1:1をそれぞれ試験した。いずれの場合も、図15に示すように、コンカテマーRCA DNAは、プラスミドDNAと効率的に協働し、これにより同等量のレンチウイルスが生成された。
【0075】
コンカテマー生成及びコンカテマーの発現産物
コンカテマー(例えば、コンカテマー16)を使用して、1つ又は複数のタンパク質又は核酸を含み得る所望の発現産物を生成するための技術を本明細書において提供する。生成発現産物は、発現後に採取(例えば、精製、回収)し、対象のための治療又は療法プロトコールの一部として使用し得る。本開示の実施形態は、本明細書において提供するコンカテマーから1つ又は複数の発現産物を生成する工程と、生成した発現産物を使用して対象を治療する工程とを含む。例えば、開示する技術は、所望の導入遺伝子をコードするウイルスベクターを生成するために使用し得る。したがって、本明細書において提供する発現産物は、所望の導入遺伝子をコードする発現配列を有する核酸を含むウイルスベクターの一部であってもよく、その上、対象をウイルスベクターにより治療する遺伝子療法プロトコールの一部として使用してもよい。導入遺伝子は、対象による療法の必要性に基づいて選択されるため、導入遺伝子は、ウイルスベクター生成系の可変又はカスタマイズ可能な成分であってもよく、一方、ウイルスベクター生成系の他の成分は、定常であるか又はそれほど可変ではない。更に、ウイルスベクターの特定の成分は、所望の指向性又は患者特性に基づいて選択され得る。したがって、定常であるか、又は少数の可能な選択肢並びに試薬及び前駆体分子から選択される、ウイルスベクター生成系の予備作製又は予備生成された部分を含み、ユーザーが系のカスタマイズ可能な部分を生成することが可能となる、キットを本明細書において提供する。
【0076】
別の実施形態では、コンカテマー発現産物を使用して、カスタム抗体を生成し得る。別の実施形態では、コンカテマー発現産物を使用して、CRISPR/Cas9系を生成し得る。別の実施形態では、コンカテマー発現産物を使用して、ウイルス様粒子を生成し得る。遺伝子編集、遺伝子療法、及びカスタム分子に関する産物の発現を含む特定の実施形態を開示しているが、開示する技術は、他の適用に適する発現産物を生成するために使用し得ることが理解されるべきである。このようなものには、多サブユニットタンパク質複合体(例えば、ヒトDNAポリメラーゼアルファは、4つの異なるサブユニットの比率1:1:1:1による複合体である)及び生化学的経路の種々の工程を行うことが可能な酵素の組合せが含まれる。
【0077】
明細書を通して、特定の用語の例証は、非限定的な例として考えられるべきである。「a」、「an」及び「the」の単数形は、文脈上他に明白に指示しない限り、複数の参照対象を含む。近似する言語は、本明細書及び特許請求の範囲を通して本発明において使用する場合、関連する基本的機能の変化を生じることなく、許容範囲で変動し得る任意の定量的表現を修飾するために適用し得る。
【0078】
本開示では、発現産物を生成するために、核酸増幅技術をワークフローの一部として使用し得る。本明細書において使用する場合、「プライマー」の用語は、標的核酸配列(例えば、増幅させるDNA鋳型)にハイブリダイズさせて核酸合成反応を刺激する、短い直鎖状オリゴヌクレオチドを指す。プライマーは、RNAオリゴヌクレオチド、DNAオリゴヌクレオチド又はキメラ配列であり得る。プライマーは、天然、合成、又は修飾ヌクレオチドを含み得る。プライマーの長さの上限及び下限の両方は、経験的に決定する。プライマー長の下限は、核酸増幅反応条件下での標的核酸とのハイブリダイゼーション時に、安定な2本鎖を形成するのに必要とされる最小限の長さである。非常に短いプライマー(通常、3ヌクレオチド長未満)では、このようなハイブリダイゼーション条件下で標的核酸と熱力学的に安定な2本鎖を形成しない。上限は、標的核酸の所定の核酸配列以外の領域において2本鎖を形成する可能性により決定することが多い。一般には、適するプライマー長は、約3ヌクレオチド長~約40ヌクレオチド長の範囲である。
【0079】
本明細書において使用する場合、「ランダムプライマー」の用語は、オリゴヌクレオチド配列における任意の所与の位置のヌクレオチドを、所与の位置が可能性ヌクレオチド又はこの類似体のいずれかからなり得るようにランダム化することにより生成される(完全ランダム化)、プライマー配列の混合物を指す。したがって、ランダムプライマーは、配列内のヌクレオチドの可能なすべての組合せからなる、オリゴヌクレオチド配列のランダム混合物である。例えば、六量体ランダムプライマーは、NNNNNN又は(N)6の配列により表し得る。六量体ランダムDNAプライマーは、4つのDNAヌクレオチドA、C、G及びTの可能なすべての六量体の組合せからなり、46(4,096)種の固有の六量体DNAオリゴヌクレオチド配列を含むランダム混合物を生じる。ランダムプライマーは、標的核酸配列が未知である場合、又は全ゲノム増幅反応を行うために、核酸合成反応を刺激するのに効率的に使用し得る。また、ランダムプライマーは、プライマーの濃度に応じて、1本鎖ローリングサークル増幅(RCA)産物よりも2本鎖RCA産物の刺激及び生成において有効であり得る。
【0080】
本明細書において使用する場合、「ヌクレオチド類似体」の用語は、天然に存在するヌクレオチドと構造的に類似する化合物を指す。ヌクレオチド類似体は、変化したリン酸骨格、糖部分、核酸塩基、又はこれらの組合せを有し得る。ヌクレオチド類似体は、天然ヌクレオチド、合成ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド又は代替置換部分(例えば、イノシン)であり得る。一般には、核酸塩基が変化したヌクレオチド類似体により、とりわけ、種々の塩基対形成及び塩基積重ねの特性が付与される。本明細書において使用する場合、「LNA(ロックド核酸)ヌクレオチド」の用語は、ヌクレオチド類似体を指し、ここで、ヌクレオチドの糖部分は、リボ核酸(RNA)模倣糖立体構造においてロックされた二環式フラノース単位を含む。デオキシリボヌクレオチド(又はリボヌクレオチド)からLNAヌクレオチドへの構造変化、すなわち、2'位及び4'位における炭素原子間(例えば、2'-C、4'-C-オキシメチレン結合、例えば、Singh, S. K.ら、Chem. Comm.、4、455~456、1998又はKoshkin, A. A.ら、Tetrahedron、54、3607~3630、1998を参照)のさらなる結合の導入は、化学的見地から制限される。LNAヌクレオチドにおけるフラノース単位の2'及び4'位は、O-メチレン(例えば、オキシ-LNA: 2'-O,4'-C-メチレン-β-D-リボフラノシルヌクレオチド)、S-メチレン(チオ-LNA)又はNH-メチレン部分(アミノ-LNA)等により結合させ得る。このような結合により、フラノース環の立体構造的自由が制限される。LNAオリゴヌクレオチドは、相補性1本鎖RNA及び相補性1本又は2本鎖DNAに対するハイブリダイゼーション親和性の増強を呈する。LNAオリゴヌクレオチドにより、A型(RNA様)2本鎖立体構造が誘導され得る。リン酸-糖骨格が変化したヌクレオチド類似体(例えば、PNA、LNA)により、とりわけ、鎖特性、例えば、二次構造形成が修飾されることが多い。文字表示の前に付く星(*)印は、文字で表されるヌクレオチドがホスホロチオエート修飾ヌクレオチドであることを意味する。例えば、*Nは、ホスホロチオエート修飾ランダムヌクレオチドを表す。文字表示の前に付くプラス(+)印は、文字で表されるヌクレオチドがLNAヌクレオチドであることを意味する。例えば、+Aは、アデノシンLNAヌクレオチドを表し、+Nは、ロックドランダムヌクレオチド(すなわち、ランダムLNAヌクレオチド)を表す。本明細書において使用する場合、「ホスホロチオエート化ヌクレオチド」又は「チオエート化ヌクレオチド」の用語は、リン酸骨格が変化したヌクレオチドを指し、ここで、糖部分は、ホスホロチオエート結合により結合する。オリゴヌクレオチド配列のリン酸骨格では、ホスホロチオエート結合は、イオウ原子を非架橋酸素原子の代わりに含む。この修飾により、ヌクレオチド間結合がヌクレアーゼ分解に対して抵抗性となり得る。チオエート化ヌクレオチド(チオエート化dNTP)は、α-S-dGTP、α-S-dCTP、α-S-dATP又はα-S-dTTPを含み得るが、これらに限定されない。
【0081】
本明細書において使用する場合、「ローリングサークル増幅法(RCA)」の用語は、環状核酸鋳型(例えば、1本/2本鎖DNA環)をローリングサークル機構により増幅する核酸増幅反応を指す。ローリングサークル増幅反応は、環状で1本鎖であることが多い核酸鋳型へのプライマーのハイブリダイゼーションにより開始する。次いで、核酸ポリメラーゼによって、環状核酸鋳型の周囲に連続的に進行させて、核酸鋳型の配列を何度も繰り返し複製することにより(ローリングサークル機構)環状核酸鋳型にハイブリダイズするプライマーが伸長する。ローリングサークル増幅法により、環状核酸鋳型配列の縦列反復単位を含むコンカテマーを典型的に生成する。ローリングサークル増幅法は、直鎖増幅動態を示す直鎖RCA(LRCA)であり得るか(例えば、1本鎖の特異的プライマーを使用するRCA)、又は指数関数的増幅動態を示す指数関数的RCA(ERCA)であり得る。また、ローリングサークル増幅法は、複数のプライマーを使用して行い(複合的に刺激するローリングサークル増幅法又はMPRCA)、超分岐コンカテマーを生じ得る。例えば、ダブルプライムRCA(double-primed RCA)では、一方のプライマーは、直鎖RCAのように、環状核酸鋳型に対して相補性であり得るが、他方は、RCA産物の縦列反復単位核酸配列に対して相補性であり得る。したがって、ダブルプライムRCAは、一連の多重ハイブリダイゼーション、プライマー伸長、並びにこの両方のプライマー及び両方の鎖を含む鎖置換現象におけるカスケードを特徴づける指数関数的増幅動態を有する鎖反応として進行し得る。これにより、コンカテマーの2本鎖核酸増幅産物の別々のセットが生成されることが多い。RCAは、適する核酸ポリメラーゼ、例えば、Phi29 DNAポリメラーゼを使用して等温条件下でin vitroにより行い得る。適するポリメラーゼは、鎖置換DNA合成能を有する。特定の実施形態では、ローリングサークル増幅法は、ヌクレオチド類似体を含むランダムプライマー混合物を使用して行い得る。
【0082】
本明細書において使用する場合、「ローリングサークル増幅(RCA)産物」又は「RCA生成DNA」の用語は、核酸増幅産物を指し、ここで、環状核酸鋳型(例えば、1本/2本鎖DNA環)は、ローリングサークル増幅反応機構により増幅する。鋳型は、RCA産物と比較して小さいサイズである。ローリングサークル増幅法により、環状核酸鋳型配列の縦列反復単位を含むコンカテマーを典型的に生成する。ローリングサークル増幅生成DNAは、直鎖増幅動態を示す直鎖RCA(LRCA)により(例えば、1本鎖の特異的プライマーを使用するRCA)、又は指数関数的増幅動態を示す指数関数的RCA(ERCA)により生成し得る。また、ローリングサークル増幅生成DNAは、複数のプライマーを使用することにより生成してもよく(マルチプライプライムローリングサークル増幅法又はMPRCA)、ここで、ローリングサークル増幅生成DNAは、超分岐コンカテマーである。ダブルプライムRCAでは、一方のプライマーは、直鎖RCAのように、環状核酸鋳型に対して相補性であり得るが、他方は、RCA生成DNAの縦列反復単位核酸配列に対して相補性であり得る。RCA生成DNAは、適する核酸ポリメラーゼ、例えば、Phi29 DNAポリメラーゼを使用する等温条件下のin vitroでのRCAにより生成し得る。
【0083】
DNA増幅技術、例えば、ローリングサークル増幅法(RCA)は、環状核酸鋳型から出発して大量の高品質DNAを生成するために利用することができる。ローリングサークル増幅法により、対応する環状核酸鋳型の縦列反復単位を含む核酸コンカテマーを生成し得る。核酸コンカテマーは、直鎖状又は分枝鎖状コンカテマーであり得る。
【0084】
本明細書において使用する場合、「核酸コンカテマー」(例えば、本明細書において開示するコンカテマー16)の用語は、核酸配列(例えば、発現配列12)の縦列反復又は縦列反復単位を有する核酸分子を指す。「コンカテマー」、「核酸コンカテマー」及び「DNAコンカテマー」の用語は、本開示を通して互換的に使用し得る。コンカテマーは、1本又は2本鎖であり得る。本明細書において使用する場合、「2本鎖コンカテマーDNA」の用語は、直列に結合する同一のDNA配列の複数のコピーを含む2本鎖DNA分子を指す。RCAにより生成したコンカテマーは、1キロベース(kb)よりも大きいであり、10kbよりも大きいであり、150kbよりも大きいであり得る。一実施形態では、コンカテマーは、50kb~150kbの範囲であり得る。コンカテマーのサイズは、出発鋳型(例えば、鋳型14)のサイズ及び縦列反復の数に関連し、これらは変動し得る。したがって、鋳型溶液に対して行うRCAにより、同一配列の縦列反復を有するが、可変数の縦列反復を有し、したがって、可変長を有するコンカテマーのプールを生成し得る。特定の実施形態では、核酸コンカテマーは、複数の縦列反復配列を含んでもよく、ここで、複数の縦列反復配列のそれぞれは、発現産物をコードする発現配列を含む。
【0085】
特定の実施形態では、核酸コンカテマーは、DNAコンカテマーである。DNAコンカテマーは、DNA小環を鋳型として使用して生成してもよく、ここで、DNA小環は、最小限発現配列から本質的になる。生じるコンカテマーは、DNA小環に由来する最小限発現配列の縦列反復を含む。特定の実施形態では、最小限発現配列は、プロモーター、キャップ非依存性翻訳エレメント及びオープンリーディングフレームから本質的になる。特定の実施形態では、核酸コンカテマーは、修飾ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、又はこれらの組合せを含む。
【0086】
本明細書において使用する場合、「発現配列」又は「発現配列の反復単位」(例えば、発現配列12)の用語は、RNA及び/又はタンパク質発現能を有するDNA配列を指す。したがって、発現産物は、タンパク質、RNA又はこれらの混合物を含む。
【0087】
タンパク質の発現を得ようとする特定の実施形態では、発現配列は、オープンリーディングフレーム(ORF)及びオープンリーディングフレームに動作可能に結合するプロモーターを含む発現適格単位を含み得る。一実施形態では、ORFは、1つ又は複数のタンパク質をコードし得る。コードされたタンパク質は、同一であるか又は異なり得る。一部の実施形態では、発現配列は、2つ以上のORFに動作可能に結合する1つのプロモーターを含み得る。
【0088】
RNAの発現を得ようとする特定の実施形態では、発現配列は、少なくとも1つのプロモーター及び転写終結配列を含むRNA発現適格単位を含み得る。
【0089】
コンカテマーの配列の反復単位は、プロモーター、オープンリーディングフレーム、リボソーム結合部位、及び翻訳終結配列を含み得る。これは、RCA産物のin vitroでの転写及び/又は翻訳に実質的に影響しない配列を、加えて含み得る。例えば、これは、翻訳増強配列、インスレーター配列、又は転写終結配列のような配列を更に含み得る。
【0090】
適するプロモーターの多数の例が、当技術分野において知られており、例えば、T7 RNAポリメラーゼプロモーター配列又はCMV若しくはSV40のようなウイルスに由来するプロモーター配列が挙げられる。
【0091】
同様に、適するリボソーム結合部位の多数の例が、当技術分野において知られており、例えば、内部リボソーム侵入部位(IRES)、ポリA索、種非依存性翻訳リーダー(SITS)、コザック共通配列、及びシャイン・ダルガーノ配列が挙げられる。インスレーター配列により、リボソーム結合又は翻訳開始の効率が一般に増強される。適するインスレーター配列の多数の例が、当技術分野において存在し、例えば、ポリ-ヒスチジン索をコードする配列が挙げられる。一部の実施形態では、インスレーター配列は、リボソーム結合部位の周囲にスペーサー配列を挿入することにより、又は発現したタンパク質のN末端にコドンを最適化若しくは挿入することにより経験的に決定し得る。特定の実施形態では、発現配列は、ポリA配列、転写終結配列、インスレーター配列、又はこれらの組合せを含み得る。
【0092】
特定の実施形態では、発現配列のオープンリーディングフレームは、コドン最適化配列、精製タグ配列、IRESに由来するアミノ末端ペプチド融合配列、プロテアーゼ切断若しくはヌクレオチド切断のための配列、又はこれらの組合せを含み得る。一部の実施形態では、発現配列は、コード及び非コードの両配列を含む。
【0093】
オープンリーディングフレームのコドン最適化配列により、RCA産物の翻訳の速度及び質が増強され得る。コドン最適化によって、目的の遺伝子の翻訳効率が向上することによりタンパク質発現が一般に増加する。また、遺伝子の機能性は、カスタム設計遺伝子においてコドン使用を最適化することにより向上させ得る。コドン最適化実施形態では、種における低頻度のコドンは、高頻度のコドンにより置換してもよく、例えば、低頻度のコドンUUAは、ロイシンの高頻度コドンCUGにより置換してもよい。コドン最適化により、mRNA安定性が向上し、このため、タンパク質翻訳又はタンパク質折畳みの速度が修飾され得る。更に、コドン最適化により、転写及び翻訳の調節がカスタマイズされるか、リボソーム結合部位が修飾されるか、又はmRNA分解部位が安定化され得る。
【0094】
発現配列のオープンリーディングフレームは、発現した産物(例えば、発現したタンパク質)の精製のための精製タグ配列を含み得る。タグ配列は、親和性タグ、プロテアーゼ切断のためのタグ又はこれらの組合せであり得る。親和性タグは、組換えタンパク質の迅速な精製及び検出のために使用し得る。
【0095】
発現配列のオープンリーディングフレームは、IRESに由来するアミノ末端ペプチド融合配列をリボソーム認識の増強のために含み得る。
【0096】
一部の実施形態では、発現配列は、コード配列を含み、ここで、コード配列は、真核細胞において所望のタンパク質発現産物をコード又は生成する。コード配列は、特定の目的遺伝子を含む核酸配列である。一般には、コード配列は、プロモーター及びオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。コード配列は、任意選択で、キャップ非依存性翻訳エレメント(CITE)を含み得る。一部の実施形態では、コード配列は、リボソーム結合部位を更に含む。コード配列は、オープンリーディングフレーム外であるが発現配列内に位置する転写終結配列を含み得る。
【0097】
1つ又は複数の実施形態では、複数の縦列反復配列のそれぞれは、少なくとも1つの発現配列を含む。一部の実施形態では、少なくとも1つの発現配列は、少なくとも1つのコード配列を含む。このような実施形態では、少なくとも1つの発現配列の少なくとも1つのコード配列は、少なくとも1つのプロモーター及び少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含む。一部の実施形態では、複数の縦列反復配列のそれぞれは、2つ以上の発現配列を含む。コード配列を含む2つ以上の発現配列は、同一のタンパク質又は異なるタンパク質をコードし得る。一部の実施形態では、発現配列は、少なくとも1つのオープンリーディングフレームに機能的に結合する少なくとも1つのプロモーターを含む。例えば、一態様では、発現配列において、1つのプロモーターを1つのオープンリーディングフレームに機能的に結合させる。別の態様では、発現配列において、1つのプロモーターを2つの異なるオープンリーディングフレームに機能的に結合させる。一部の実施形態では、発現配列は、2つ以上のオープンリーディングフレームに機能的結合する2つ以上のプロモーターを含み得る。
【0098】
発現配列は、2つの異なるオープンリーディングフレーム、例えば、第1のオープンリーディングフレーム及び第2のオープンリーディングフレームに動作可能に結合するプロモーターを含んでもよく、これらのそれぞれは、他方とは異なるタンパク質をコードする。この例では、単一のプロモーターは、キャップ非依存性翻訳エレメントを介して2つのオープンリーディングフレームに機能的に結合する。オープンリーディングフレームのそれぞれは、翻訳開始及び翻訳終止配列を含む。翻訳終結又は終止配列が、発現配列に必要とされ、さもなければ、無限にポリタンパク質が合成され得るが、これは望ましくない。しかし、転写終止コドンは、転写時にポリシストロン性mRNAの生成を生じる第1のオープンリーディングフレームには任意選択であり得る。このような場合では、in vivoでのタンパク質発現時に、単一のポリシストロン性mRNAが生成されても、これが2つの異なるタンパク質に翻訳され得るように、第1及び第2のオープンリーディングフレーム間の介在配列が、選択され得る。第1のオープンリーディングフレームの翻訳による第1のタンパク質の合成の後、第2のオープンリーディングフレームの第2の翻訳開始配列へのリボソームスリップが行われて、第2のオープンリーディングフレームから第2のタンパク質の合成が開始され得る。これは、「自己切断配列」を第1及び第2のオープンリーディングフレーム間に組み込むことにより達成し得る。適する自己切断配列、例えば、ウイルスP2Aモチーフにより、1つの単一mRNAから2つ以上のタンパク質の生成が促進される。
【0099】
一部の実施形態では、発現配列は非コード配列を含み、ここで、非コード配列により所望のRNA発現産物が生成される。このような発現配列は、いかなるコード配列をも含まない。非コード配列は、プロモーター及び転写終結配列を含む。非コード配列は、オープンリーディングフレームを一般に欠く。また、非コード配列を含む発現配列は、RNA発現配列と呼ぶ。一部の実施形態では、発現配列は、非コード配列から本質的になる。一部の他の実施形態では、発現配列は、コード及び非コードの両配列を含み、ここで、RNAは、発現配列の非コード配列から生成することができる。このような実施形態では、所望のタンパク質はまた、同一の発現配列のコード配列から引き続いて生成し得る。一部の実施形態では、生成したRNAは、下流の種々の適用のために真核細胞から抽出し得る。一実施形態では、抽出したRNAは、レンチウイルス系に引き続いてパッケージングして、別の細胞に送達し得る。非コード配列は、アンチセンスRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、マイクロRNA模倣体、転移RNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)又はこれらの組合せのための配列を含み得るが、これらに限定されない。また、非コード配列は、CRISPR RNA(tracrRNA、crRNA、sgRNA又はgRNA)、核内低分子RNA(snRNA)、核小体低分子RNA(snoRNA)、Piwi結合RNA(piRNA)、テロメラーゼRNA、スプライセオソームRNA、増強RNA、レトロトランスポゾン、X不活性化特異的転写物(Xist)、RNAポリメラーゼI及びRNAポリメラーゼIIIによりコードされるRNA又はこれらの組合せを含み得る。
【0100】
上述のように、コード配列及び非コード配列の両方は、プロモーターを含む。例えば、T7 RNAポリメラーゼ又はCMVプロモーター配列を含む、当技術分野において適するプロモーターのいずれかを、本明細書に記載の方法において使用し得る。同様に、限定されないが、IRES、ポリA索、種依存性翻訳リーダー(SITS)、コザック共通配列、及びシャイン・ダルガーノ配列を含む、当技術分野において適するリボソーム結合部位のいずれかを使用し得る。
【0101】
オープンリーディングフレームは、翻訳開始及び翻訳終止配列を含む。一部の実施形態では、オープンリーディングフレームは、翻訳増強のためのコドン最適化配列を含む。オープンリーディングフレームは、リボソーム認識の増強のための内部リボソーム侵入部位(IRES)に由来するアミノ末端ペプチド融合配列、所望のタンパク質の精製のためのタグ配列、又はこれらの組合せを含み得る。CITEは、IRES、翻訳増強エレメント(TEE)又はこれらの組合せを含み得る。
【0102】
所望のタンパク質は、タグ配列により精製してもよく、ここで、タグ配列は、親和性精製のための融合タグ、プロテアーゼ切断のためのタグ又はこれらの組合せであり得る。親和性精製のための融合タグは、発現したタンパク質の迅速な精製及び検出のために使用し得る。また、このようなタグは、親和性タグと呼ぶ。親和性タグは、ポリヒスチジンタグ、グルタチオンS-トランスフェラーゼタグ(GST)、ヘマグルチニン(HA)、myc(c-myc遺伝子産物に由来する)、FLAG(エンテロキナーゼ切断部位を含む8つのアミノ酸Asp-Tyr-Lys-Asp-Asp-Asp-Asp-Lysからなる)又はこれらの組合せを含み得る。融合タグは、所望のタンパク質の迅速な精製及び検出において役立つが、タグは、組換えタンパク質の永久の定着物又はドメインとは考えられない場合がある。したがって、融合タグの除去が、組換えタンパク質構造及び機能の高度な分析的試験に必要とされることが多い。精製のためのタグは、別の種類のタグ、例えば、プロテアーゼ切断タグを使用することにより、タンパク質から除去し得る。プロテアーゼ切断タグは、特異的タンパク質又はペプチド配列内の特徴的ペプチド結合を切断するために使用し得る。プロテアーゼ切断タグは、例えば、PreScission(商標)Proteaseタグ(GE Healthcare Life Sciences社)又はトロンビンプロテアーゼタグ(GE Healthcare Life Sciences社)を含み得る。
【0103】
上述のように、コード配列のオープンリーディングフレームは、コドン最適化配列を含んでもよく、ここで、コドン最適化配列は、種々の因子、例えば、コドンバイアス、状況に応じたコドン選好性、及び/又は個々のコドン選好性を考慮することにより生成する。オープンリーディングフレームのコドン最適化配列により、RCA産物の翻訳の速度及び質が増強され得る。コドン最適化によって、目的の遺伝子の翻訳効率が向上することにより、コード配列からのタンパク質発現が一般に増加する。また、遺伝子の機能性は、カスタム設計遺伝子においてコドン使用を最適化することにより向上させ得る。コドン最適化実施形態では、種における低頻度のコドンは、高頻度のコドンにより置換してもよく、例えば、低頻度のコドンUUAは、ロイシンの高頻度コドンCUGにより置換してもよい。コドン最適化により、mRNA安定性が向上し、このため、タンパク質翻訳又はタンパク質折畳みの速度が修飾され得る。更に、コドン最適化により、転写及び翻訳の調節がカスタマイズされるか、リボソーム結合部位が修飾されるか、又はmRNA分解部位が安定化され得る。
【0104】
転写終結配列は、DNA鋳型における遺伝子の3'末端に一般に位置する。転写終結配列によって、新たに合成されたmRNAにおいて転写複合体からmRNAを放出するプロセスを開始するシグナルがもたらされ、これは、所望のタンパク質産物の有効な翻訳にも役立ち得る。インスレーター配列によって、リボソーム結合又は翻訳開始の効率が一般に増強される。当技術分野において存在する適するインスレーター配列の多数の例を使用してもよく、例えば、ポリヒスチジン索をコードする配列が挙げられる。一部の実施形態では、インスレーター配列は、リボソーム結合部位の周囲にスペーサー配列を挿入することにより、又は発現したタンパク質のN末端にコドンを最適化若しくは挿入することにより経験的に決定し得る。
【0105】
一部の実施形態では、発現配列は、コード配列、非コード配列、又はこれらの組合せを含む。コード配列は、プロモーター、オープンリーディングフレーム、及び任意選択で、キャップ非依存性翻訳エレメント(CITE)を含む。コード配列のキャップ非依存性翻訳エレメント(CITE)は、内部リボソーム侵入部位(IRES)、翻訳増強エレメント(TEE)又はこれらの組合せであり得る。コード配列のオープンリーディングフレームは、翻訳を増強するためにコドン最適化し得る。オープンリーディングフレームは、所望のタンパク質の精製のためのタグ配列、リボソーム認識の増強のためのIRESに由来するアミノ末端ペプチド融合配列、又はこれらの組合せを更に含み得る。発現配列は、ポリA配列、転写終結配列、インスレーター配列、又はこれらの組合せを更に含む。
【0106】
一部の実施形態では、発現配列は、宿主細胞におけるプラスミドの伝播に必要とされる、いかなる外来性配列をも欠く最小限発現配列である。所望のタンパク質を発現させるための最小限発現配列は、少なくとも、プロモーター、リボソーム結合部位、及び翻訳終結配列を含む。所望のRNAを発現させるための最小限発現配列は、少なくとも、プロモーター、リボソーム結合部位、及び翻訳終結配列を含む。一部の実施形態では、2本鎖RCA生成DNAは、最小限発現配列の縦列反復から本質的になる。このような実施形態では、発現配列は、RCA生成DNAを鋳型として使用するin vivoでのタンパク質発現又はRNA発現に実質的に影響しない配列を、加えて含み得る。例えば、これは、翻訳増強配列、インスレーター配列、又は転写終結配列のような配列を更に含み得る。RCA生成DNAの最小限発現配列は、抗生物質選択遺伝子のような任意の外来性配列、又は宿主細胞におけるクローニング、選択、スクリーニング及び/若しくは複製に必要とされる他の任意のアクセサリー配列を除外する。RCA産物は、最小限発現配列の縦列反復を含む、直鎖状又は分枝鎖状コンカテマーであり得る。RCA生成DNAの最小限発現配列は、最小限発現配列のみを含むDNA小環に由来し得る。
【0107】
2本鎖コンカテマーDNAは、イノシン含有ヌクレオチド、ロックド核酸(LNA)ヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)ヌクレオチド、2-アミノ-デオキシアデノシン、2-チオ-デオキシチミジン、ポリカチオンヌクレオチド、又はこれらの組合せを更に含み得る。一部の実施形態では、修飾ヌクレオチド、例えば、イノシン含有ヌクレオチド、ロックド核酸(LNA)ヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)ヌクレオチド、2-アミノ-デオキシアデノシン、2-チオ-デオキシチミジン、ポリカチオンヌクレオチドは、ローリングサークル増幅法に利用するプライマー配列の一部である。
【0108】
様々な方法を使用して、開示する技術による使用のためのDNA小環鋳型を調製し得る。一部の実施形態では、直鎖状DNA鋳型を環状化してDNA小環鋳型を生成し得る。例となる一実施形態では、直鎖状DNA鋳型の環状化は、酵素反応により、例えば、DNAリガーゼのようなライゲーション酵素を用いたインキュベーションにより、生じ得る。一部の実施形態では、直鎖状DNA鋳型の両終端を核酸配列にハイブリダイズして、両終端を極めて接近させる。次いで、ライゲーション酵素を用いたインキュベーションにより、ハイブリダイズした直鎖状DNA鋳型の環状化が生じて、DNA小環が生成され得る。また、適するDNA小環鋳型は、適切なPCRプライマーを使用する大きなDNA(例えば、ゲノムDNA又はDNAライブラリー由来のDNA)の一部分のPCR増幅の後、PCR産物の環状化により生成し得る。また、DNA小環は、適する直鎖状オリゴヌクレオチドの化学合成の後、合成したオリゴヌクレオチドの環状化により生成し得る。一部の実施形態では、合成した直鎖状オリゴヌクレオチドは、最小限発現配列から本質的になり、DNAリガーゼによる環状化を達成して、DNA小環を生成し得る。
【0109】
発現産物(例えば、発現産物26)を生成するために使用し得る発現系(例えば、発現系20)を本明細書において提供する。発現系20は、細胞に基づく発現系(例えば、哺乳動物、昆虫)又は無細胞発現系であり得る。細胞に基づく発現系の例としては、CHO、NIH3T3、BHK、HepG2及びHEK293細胞に基づく発現系が挙げられる。
【0110】
特定の実施形態では、「無細胞発現系」は、in vitroでの転写及び翻訳系を指す。無細胞発現は、(1)mRNA及びタンパク質を単一の反応において生成するか、又は(2)mRNAを第1の反応において生成し、生じるmRNA産物を第2の別々の翻訳反応に加える、2つの形態を一般に包含する。DNA小環に由来するRCA産物は、(1)又は(2)のいずれかの形態にも利用し得る。例えば、一実施形態では、RCA産物は、「in vitroでの転写-翻訳共役反応」のために提供してもよく、ここで、RCA生成DNAは、mRNAに変換され、mRNAは、RNA及びタンパク質の両生成能を有する1つの反応混合物においてタンパク質を同時に発現する。別の実施形態では、RCA産物は、「転写-翻訳関連反応」に対して提供してもよく、ここで、RCA生成DNAは、mRNAに第1に変換され、mRNAは、翻訳反応混合物に別々に加えてタンパク質を発現させる。特定の実施形態では、コンカテマーは、プロセシングされていない(又はいかなるさらなるプロセシングもされていない)無細胞発現系に対して提供する。一実施形態では、コンカテマーは、RCAのような増幅の直後に無細胞系に加える。「さらなるプロセシング」の用語は、コンカテマーの制限消化、ライゲーション又はこれらの組合せの作用を含むことを意味する。しかし、一部の実施形態では、RCA産物は、分離して(例えば、沈殿により)、塩又は他の混入物、例えば、プライマー又は小さな断片化DNAを反応培地から除去した後、例えば、真核細胞抽出物を使用する、無細胞発現を進行し得る。
【0111】
無細胞発現系は、in vitroでの翻訳、無細胞タンパク質発現、無細胞翻訳、又は無細胞タンパク質合成系であり得る。無細胞発現系の非限定的な例は、真核細胞無細胞発現系である。特定の実施形態では、コンカテマーDNAは、基質上に固定化した後、コンカテマーDNAを無細胞発現系に供し得る。基質に固定化したコンカテマーDNAは、組換え産物のin vitroでの発現後に無細胞発現系から回収し、引き続くin vitroでの転写及び翻訳反応に再使用し得る。
【0112】
コンカテマーDNA(例えば、2本鎖コンカテマーDNA)は、限定されないが、エレクトロポレーション、ソノポレーション、インペールフェクション、形質導入、光学トランスフェクション、マグネトフェクション、ヌクレオフェクション、水力学的送達、熱ショック媒介遺伝子送達、ナノ粒子媒介遺伝子銃送達、リン酸カルシウム媒介送達、カチオン性ポリマー媒介送達、又はリポソーム媒介送達を含む任意の方法により、真核細胞発現系に送達し得る。
【0113】
一部の実施形態では、複数の縦列反復配列を含む外来性2本鎖コンカテマーDNAを含む、真核細胞を提供する。一実施形態では、複数の縦列反復配列のそれぞれは、ホスホロチオエート化ヌクレオチドを含み、ここで、ホスホロチオエート化ヌクレオチドの全ヌクレオチドに対する比率は、少なくとも1:1600である。真核細胞へのトランスフェクションに利用して、この細胞を生成する外来性2本鎖コンカテマーDNAは、プロセシングされていないか又はプロセシングされているRCA生成DNAであり得る。真核細胞は、原生動物、酵母細胞、昆虫細胞、又は哺乳動物細胞であり得る。
【0114】
開示する実施形態の技術的作用は、頑健なトランスフェクション及び所望の発現産物の生成と典型的には関連しないサイズを有する核酸コンカテマーを使用する、所望の発現産物の発現の向上を含む。更に、コンカテマーは、発現配列の縦列反復を未知数又は可変数含み得るが、それにもかかわらず、種々のコンカテマーを、比率計量的に、例えば、モル比に基づいて共発現させて、根拠に基づいた頑健な比率の生成発現産物を生成し得る。本開示では、1つ又は複数の所望の発現産物のための核酸発現配列を有するコンカテマーを、伝統的発現技術、例えば、プラスミドと置換及び/又はこれと併用し使用して、純度の上昇及び頑健な共発現を有する所望の発現産物を生成し得ることを実証する。更に、核酸コンカテマーを使用して、複数の共発現産物が相互に関連する、より複雑な構造又は集合を生成し得る。
【0115】
前述の実施例は、本開示の一部の特徴の例示であり、多数の可能なすべての実施形態から選ばれた実施形態である。特定の特徴のみを例示し、本明細書において記載しているが、当業者は、本開示の利点を考慮して、パラメータを最適化するために修飾/変更を行うことが可能である。したがって、前述の実施形態は、本明細書に記載する実施形態を制限するのではなく、あらゆる点で例示的であるものと考えられる。範囲が与えられている場合は、これらの範囲は、それらの間のすべての部分的範囲を包括する。
【0116】
本記載の説明では、最良の形態を含み、また、当業者が開示する実施形態を実行可能とするために装置又は系の作製及び使用、並びに組み込まれる任意の方法の実施を含む、実施例を使用する。特許性を有する範囲は、特許請求の範囲により定義し、当業者に見出される他の実施例を含み得る。このような他の実施例は、これらが特許請求の範囲の文献上の言語と異ならない構造的要素を有する場合、又はこれらが特許請求の範囲の文献上の言語と非実質的差異を有する等価な構造的要素を含む場合、特許請求の範囲内に存在することを意図する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
0007697890000001.app