(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-16
(45)【発行日】2025-06-24
(54)【発明の名称】開閉弁装置
(51)【国際特許分類】
B05B 15/00 20180101AFI20250617BHJP
B05B 7/14 20060101ALI20250617BHJP
F16K 31/143 20060101ALI20250617BHJP
A62C 31/00 20060101ALN20250617BHJP
【FI】
B05B15/00
B05B7/14
F16K31/143
A62C31/00
(21)【出願番号】P 2022052791
(22)【出願日】2022-03-29
【審査請求日】2024-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】横田 博之
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-184381(JP,A)
【文献】特開2021-178267(JP,A)
【文献】特開2006-043593(JP,A)
【文献】実開昭63-104777(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 15/00
B05B 7/14
F16K 31/143
A62C 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末を含有する液体を所定圧力でノズルに供給して前記ノズルから噴射する噴射装置における前記ノズルの上流側に設けられ、前記ノズルに至る流路を開閉する開閉弁装置であって、
操作部を有する弁体と、弁座と、前記弁体を閉止方向に付勢する付勢手段と、前記操作部を操作して前記弁体を開放方向に押し下げる操作レバーと、を備え、
前記弁体は、該弁体が開放したときに前記液体の圧力が作用する圧力作用面を有し、該圧力作用面は前記液体の圧力が作用したときに該圧力が前記弁体を開放する方向に作用するように構成されていることを特徴とする開閉弁装置。
【請求項2】
前記弁座は円環状部を有し、前記弁体は該円環状部に挿入可能な挿入部を有し、前記弁体の挿入部が前記弁座における前記円環状部に挿入されて該円環状部の内周面と当接することで弁閉止状態となり、前記挿入部と前記円環状部とが当接しないことで弁開放状態となることを特徴とする請求項1記載の開閉弁装置。
【請求項3】
前記弁体の一部を進退可能にガイドするシリンダー部材を有し、
該シリンダー部材内に前記付勢手段が収容されると共に、該シリンダー部材内に前記液体が入らないようにシールされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の開閉弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末を含有する液体を噴射する噴射装置における前記液体の流路を開閉する開閉弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
消火活動においては、粉末状の添加物を添加した液体を目標物に噴射する場合がある。そのような液体の例として、例えば、特許文献1に開示される「遮光剤」がある。
太陽光パネルが設置された住宅で火災が発生した場合、消火のための放水を行うと、太陽光パネルが発電した電気によって、漏電や、消火活動者の感電等の危険がある。
そこで、特許文献1のような遮光剤を太陽光パネルの表面に塗布することで、太陽光パネルに入射する光を遮断することができる。このような遮光剤は、例えば、膨潤性層状粘土鉱物及び遮光性顔料等の粉末状の添加物を水に分散させて構成されている。
【0003】
また、粉末を含有する液体の他の例として、特許文献2に開示される「延焼防止薬剤」がある。
茅葺き屋根等の植物屋根を備えた古民家等は、周辺の火災からの飛び火による着火延焼のリスクが高い。そのため、延焼防止措置として、このような家屋に消火水を散布する場合があるが、植物屋根は散布した消火水が流出しやすく、連続的に消火水を散布しなければならなかった。そこで、特許文献2のような延焼防止薬剤を用いることで、高粘度の延焼防止薬剤が植物屋根に保持されるので、大量の消火水を必要とせず、散布量を低減することができる。このような延焼防止薬剤も屋根面に保持される粘度を確保するため、無機物の粉末を水に分散させて構成されている。
【0004】
上述したような粉末を含有する液体は、噴射装置を用いて目標物に噴射される。噴射装置としては、例えば、上記液体を背負いタンクのようなものに収容して作業者が持ち運び、該タンクから液体を所定圧力でノズルに供給し、噴射するものなどがある。
上記のような噴射装置には、ノズルの上流側に、液体の流路を開閉するための開閉弁装置が設けられている。開閉弁装置には、例えば、操作者が手動でレバーを動かすことによって流路を開閉するような手動式の開閉弁装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-93288号公報
【文献】特開2018-68672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、粉末を含有する液体を噴射する噴射装置において、上述したような手動式の開閉弁装置を用いる場合には下記のような問題があった。
【0007】
手動式の開閉弁装置は、通常時、弁体がバネによって弁座に押し付けられて閉弁状態になっている。これに対して操作者がレバーを倒すなどして操作することでばねを縮ませ、ばねが縮むことで弁体が弁座から離れて弁が開放する。レバーを倒す角度に応じて弁の開度が大きくなるが、弁の開度が大きくなるほどばねが縮んでばねの反発力も大きくなるため、操作者はレバーに加える操作力を徐々に大きくしながらレバーを操作する必要がある。レバーを最大まで倒すと弁全開状態となるが、操作者がレバーに加える力を途中で止めた場合には中途開放状態で使用される場合もある。
【0008】
しかし、弁体と弁座の隙間が小さい状態で使用を続けた場合、液中の粉末が弁体と弁座の隙間に滞留して成分が分離するという問題がある。また、滞留した粉末によって徐々に弁体と弁座の間が詰まって、開閉弁装置が動作不良を起こすという問題もある。
【0009】
本発明は、係る課題を解決するためになされたものであり、粉末を含有する液体を噴射する噴射装置に用いられる手動式の開閉弁装置において、中途開放状態で使用されることを防ぎ、液体の成分の分離や液体中の粉末による詰まりを防止する開閉弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係る開閉弁装置は、粉末を含有する液体を所定圧力でノズルに供給して前記ノズルから噴射する噴射装置における前記ノズルの上流側に設けられ、前記ノズルに至る流路を開閉するものであって、操作部を有する弁体と、弁座と、前記弁体を閉止方向に付勢する付勢手段と、前記操作部を操作して前記弁体を開放方向に押し下げる操作レバーと、を備え、前記弁体は、該弁体が開放したときに前記液体の圧力が作用する圧力作用面を有し、該圧力作用面は前記液体の圧力が作用したときに該圧力が前記弁体を開放する方向に作用するように構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記弁座は円環状部を有し、前記弁体は該円環状部に挿入可能な挿入部を有し、前記弁体の挿入部が前記弁座における前記円環状部に挿入されて該円環状部の内周面と当接することで弁閉止状態となり、前記挿入部と前記円環状部とが当接しないことで弁開放状態となることを特徴とするものである。
【0012】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記弁体の一部を進退可能にガイドするシリンダー部材を有し、該シリンダー部材内に前記付勢手段が収容されると共に、該シリンダー部材内に前記液体が入らないようにシールされていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の開閉弁装置の弁体は、弁体が開放したときに液体の圧力が作用する圧力作用面を有し、圧力作用面は、圧力作用面に液体の圧力が作用したときに該圧力が弁体を開放する方向に作用するように構成されていることにより、弁開放直後に、弁操作に抵抗する力が大きく減少する。さらに、弁体が開放した際の液体の圧力が弁体を開放する方向に作用するように構成したことで、弁全開状態にするのに必要な操作力を、弁開放開始時に必要な操作力より小さくすることもできるので、操作者は、弁開放直前までレバーに加えていた力のまま、弁全開状態までレバーを握りこむ。したがって、従来のような中途開放状態となる事態が生じにくいので、液体の成分分離や、液体中の粉末による詰まりを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施の形態にかかる開閉弁装置の説明図である(その1)。
【
図2】本発明の一実施の形態にかかる開閉弁装置の説明図である(その2)。
【
図3】実施の形態の開閉弁装置の動作を説明する図である(その1)。
【
図4】実施の形態の開閉弁装置の動作を説明する図である(その2)。
【
図5】実施の形態の開閉弁装置の動作を説明する図である(その3)。
【
図6】従来の開閉弁装置の説明図である(その1)。
【
図7】従来の開閉弁装置の説明図である(その2)。
【
図8】従来の開閉弁装置の動作を説明する図である(その1)。
【
図9】従来の開閉弁装置の動作を説明する図である(その2)。
【
図10】従来の開閉弁装置の動作を説明する図である(その3)。
【
図11】従来の開閉弁装置の課題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施の形態に係る開閉弁装置の説明に先立ち、まずは、従来の手動式の開閉弁装置とその課題について詳細に説明する。
従来の開閉弁装置35が設けられていた噴射装置50は、粉末を含有する液体(以下、単に「液体」という)を噴射するものであって、
図6の断面図に示すように、液体を貯留するタンク(図示なし)と、液体を放水するノズル3と、タンク内の液体をノズル3に供給する供給管5と、タンクの液体を所定の圧力で供給管5に送水するポンプ(図示なし)とを有している。なお、ポンプに代えてガス圧によってタンク内の液体を送水管5に送水するようにしてもよい。
【0016】
そして、従来の開閉弁装置35は、供給管5の内部に設けられてシャフト部9と本体部37からなる弁体39と、弁座41と、弁体39を閉止方向に付勢する付勢ばね17と、供給管5の外部に設けられてシャフト部9を操作して弁体39を開放方向に押し下げる操作レバー19とを備えている。
シャフト部9は、供給管5の管壁を貫通して供給管5の外部に突出する突出部9aと、供給管5の管内に配置され突出部9aより径が小さい小径部9bから構成されている。突出部9aの外周にはOリング21が嵌装されており、供給管5を貫通する部分を上下移動可能にシールしている。
【0017】
また、弁体39の本体部37の外周にもOリング43が嵌装されており、通常時、付勢ばね17によって本体部37が弁座41に押し付けられることでOリング43が弁座41に密着し、弁閉止状態となっている(
図7(a)参照)。
【0018】
使用時には、操作者が供給管5を把持する手で操作レバー19を握り、
図6の「閉止位置」から「全開位置」の方向へ倒して弁を開放する。具体的には、操作レバー19を倒すことで、操作レバー19に設けられた凸部19aが供給管5の管壁から突出したシャフト部9(突出部9a)の上端を下方向に押圧し、付勢ばね17の付勢力に抗して弁体39を押し下げる。弁1次側には、ポンプによって液体が所定の圧力で供給されているので、弁体39が移動して弁体39と弁座41の間に隙間ができると、この隙間から弁1次側の液体が弁2次側に流入する。
弁2次側に流入した液体はポンプの送水圧力でノズル3に供給され、ノズル3から噴射される。
【0019】
上述したように、従来の開閉弁装置35は、操作者が操作レバー19を握る(
図6の「閉止位置」から「全開位置」まで倒す)ことによって弁を開放させるものであるが、この際に操作者が操作レバー19に加える力、即ち、弁体39を押し下げるために必要な力について、
図8~
図10に基づいて以下、詳細に説明する。
図8(a)は、弁閉止時の開閉弁装置35の状態を示している。このとき弁体39には、図中矢印で示すように、弁閉止方向に働く2つの力F
1S及びF
1Pが加わっている。
力F
1Sは、付勢ばね17による付勢力であり、この付勢力F
1Sは付勢ばね17の圧縮量に応じて大きくなる。よって、付勢力F
1Sに関し、通常時(弁閉止時)の付勢力を特にF
1S(min)と表記し、最も付勢ばねが縮むとき(弁全開時)の付勢力を特にF
1S(max)と表記する。
力F
1Pは、弁1次側に充満する液体34の圧力が弁体の下面に作用して生じる力である。液体34の圧力による力F
1Pについては後述にて詳しく説明する。
【0020】
上記の弁閉止方向に働く力F
1S、F
1Pに抗して弁体39を押し下げるためには、F
1S+F
1P以上の力をシャフト部9に加える必要がある。したがって、操作者は、
図8(b)に示すように、操作レバー19を握る力を徐々に大きくしてシャフト部9に加える力F
oを増大させる。
【0021】
F
o>F
1S+F
1Pになると、
図9(a)に示すように、力F
oによってシャフト部9が押し下げられて弁体39が下降する。弁体39が下降すると弁座41に密着していたOリング43が弁座41から離れ、弁1次側と弁2次側が連通する。
弁1次側と弁2次側が連通して液体34が弁2次側に流入すると、弁1次側と弁2次側が同圧になるので、液体34の圧力による弁閉止方向の力F
1Pが働かなくなる。
一方、弁2次側に流入した液体34によって新たな弁閉止方向の力F
2Pが発生する。具体的には、弁2次側に充満した液体34によって突出部9aの下面に液体34の圧力が作用し、上方向、即ち弁閉止方向に力F
2Pが働く。
【0022】
液体34の圧力による弁閉止方向の力F
1P及びF
2Pは、液体34の圧力が作用する作用面の大きさ(外径)に応じて大きくなる。そして、作用面の大きさは、当該作用面が設けられている部位の断面積(具体的には大気圧部分と液体34が充満する部分を隔てる部位の断面積)に応じて大きくなる。即ち、弁体39の本体部37の下面を作用面として働く力F
1Pは本体部37の
図8(a)の破線円に示す部分の断面積に応じた大きさとなり、突出部9aの下面を作用面として働く力F
2Pは突出部9aの
図9(a)の破線円に示す部分の断面積に応じた大きさとなる。
【0023】
本例においては
図9(a)の破線円に示す部分の断面積は
図8(a)の破線円に示す部分の断面積より小さいので、F
1P>F
2Pとなる。
したがって、弁閉止方向に働く力は弁閉止時(F
1S(min)+F
1P)よりも弁開放直後(F
1S(min)+F
2P)の方が小さくなり、
図9(b)に示すように、弁体39を押し下げるのに必要な力が弁開放直後に一時的に減少する。
なお、厳密には弁開放直後の付勢ばね17は弁閉止時よりも縮んでいるので付勢力はF
1S(min)よりも大きくなるが、その増分はわずかなものであるのでここでは無視する。
【0024】
上述したように弁閉止方向に働く力は弁開放直後に一時的に減少するが、その後弁の開度が大きくなるのに伴い、付勢ばね17が縮んで付勢力F
1Sが大きくなるので、弁閉止方向に働く力も増大する。具体的には、弁閉止方向に働く力は
図9(a)の弁開放直後のときの力F
1S(min)+F
2Pから
図10(a)の弁全開状態のときの力F
1S(max)+F
2Pまで徐々に増加する。したがって、操作者は、
図10(b)に示すように、操作レバー19を握る力を徐々に大きくしてシャフト部9に加える力F
oを増大させるように操作レバー19を操作する。操作レバー19を最大に倒すと弁全開状態となり弁開放操作が完了する。
【0025】
上述したように、従来の開閉弁装置35は、弁開放後に操作者が操作レバー19を握る力を徐々に大きくすることで弁の開度が大きくなるものである。したがって、操作者の力加減によっては中途開放状態で操作レバー19を保持することも容易である。例えば、弁開放直後の開度が小さい状態で操作レバー19を保持して放水を続けると、液体34中に分散されている粉末が弁体39と弁座41の間に滞留しやすくなり、これによって
図11に示すような粉末による詰まり45が生じる場合がある。液体34中の粉末による詰まり45は、前述したような液体34の成分分離や開閉弁装置35の動作不良の原因となるため問題である。
【0026】
そこで、本実施の形態に係る開閉弁装置においては、噴射装置1が中途開放状態で使用されるのを防ぎ、上記のような液体34中の粉末による詰まり45を防止できるようにした。以下、
図1、
図2を用いて詳細に説明する。
図1は、開閉弁装置が設けられる噴射装置1の一部を示す断面図であり、
図2(a)、
図2(b)は、開閉弁装置の閉止状態、全開状態を示す部分拡大図である。なお、
図1、
図2において、従来例を説明した
図6、
図7と同様又は対応する部分には同一の符号を付している。
【0027】
本実施の形態の開閉弁装置7は、従来例と同様に、粉末を含有する液体を所定圧力でノズル3に供給してノズル3から噴射する噴射装置1におけるノズル3の上流側に設けられ、ノズル3に至る流路を開閉するものである。
開閉弁装置7は、
図1に示すように、シャフト部9を有する弁体13と、弁座15と、弁体13の一部を進退可能にガイドするシリンダー部材16と、弁体13を閉止方向に付勢する付勢ばね17と、シャフト部9を操作して弁体13を開放方向に押し下げる操作レバー19とを備えている。以下、各構成について詳細に説明する。
【0028】
<弁体>
弁体13は、通常時に弁座15に当接して液体の流路を閉止するものであり、本発明の操作部に相当するシャフト部9と、本体部11から構成される。
シャフト部9は、従来例と同様に、供給管5の管壁を貫通して供給管5の外部に突出する突出部9aと、突出部9aより径が小さい小径部9bを有している。
本体部11は、後述する弁座15の円環状部15aに挿入可能な挿入部23を有しており、挿入部23の外周にはOリング25が嵌装されている。挿入部23が弁座15の円環状部15aに挿入されたとき、Oリング25の外周部が円環状部15aの内周面に当接し、液体の流路が閉止される。また、挿入部23が弁座15の円環状部15aから抜け出して円環状部15aとOリング25が離れた(当接しない)とき、液体の流路が開放される。
【0029】
また、本体部11の下部はシリンダー部材16に進退可能に収容されている。そして、シリンダー部材16に収容される部分の外周にもOリング27が嵌装されている。本体部11の下部に嵌装されたOリング27がシリンダー部材16の内周面に常に当接することで、シリンダー部材16内に液体が入らないようにシールしている。
【0030】
また、弁体13は、弁体13が開放したときに液体の圧力が作用する圧力作用面を有している。本実施の形態の圧力作用面は、突出部9aの下面である第1圧力作用面29と本体部11の上面である第2圧力作用面31の2つの作用面から構成される。
上記2つの作用面に液体の圧力が作用したときに該圧力が弁体13を開放する方向に作用するようにするため、突出部9aは本体部11よりも小径となるように形成されている。この理由については後述の動作説明にて詳しく説明する。
【0031】
<弁座>
弁座15は、通常時に弁体13の本体部11に当接して液体の流路を閉止するものであり、本体部11の挿入部23が挿入可能な円環状部15aを有している。
本実施の形態では、
図2(a)に示すように、本体部11の挿入部23に設けられたOリング25が弁座15の円環状部15aの内周面と当接することで弁閉止状態となるようにしたことで、
図7(a)に示した従来例のような、弁座41の角部と弁体39のOリング43が当接することで弁閉止状態となる場合と比べて、弁体13が着座した状態を保持するための付勢力を小さくすることができる。弁閉止状態を保持するための付勢力を小さくすると本発明の効果をより奏することができるが、この点については後述の動作説明にて詳しく説明する。
【0032】
<シリンダー部材>
シリンダー部材16は、弁体13の一部(具体的には本体部11の下部)を進退可能にガイドするものである。シリンダー部材16内には、付勢ばね17が収容されている。前述したように、本体部11の下部に設けられたOリング27がシリンダー部材16の内周面に常に当接しているので、シリンダー部材16の付勢ばね17が収容される部分に液体が入ることがない。したがって、シリンダー部材16の内圧は大気圧程度となっている。
【0033】
<付勢ばね>
付勢ばね17は、本発明の付勢手段に相当するものであり、弁体13を閉止方向に付勢するものである。付勢ばね17は従来例と同様のものであるので説明を省略する。なお、前述したように、本実施の形態では、弁閉止状態を保持するのに必要な付勢力が従来例よりも小さいので、本実施の形態の付勢ばね17の付勢力F1S(min)は、従来例の付勢ばね17の付勢力F1S(min)よりも小さいものとする。
【0034】
<操作レバー>
操作レバー19は、弁体13のシャフト部9を操作して弁体13を開放方向に押し下げるものであり、通常時は、
図1の「閉止位置」の状態にある。操作者が供給管5を把持する手で供給管5と共に操作レバー19を握ると、操作レバー19は操作レバー軸33を中心に「全開位置」の方向へ回動する。
操作レバー19の回動に伴い、操作レバー19に設けられた凸部19aがシャフト部9の上端を下方向に押圧して弁体13を押し下げ、液体の流路が開放される(
図2(b)参照)。
【0035】
次に、本実施の形態の開閉弁装置7を手動開放するときの開閉弁装置7の動作、及び、その際に弁体13を押し下げるために必要な力について、以下、詳細に説明する。
図3(a)は、弁閉止時の開閉弁装置7の状態を示している。このとき弁体13には、図中矢印で示すように、弁閉止方向に働く付勢ばね17の付勢力F
1S(min)が加わっている。
【0036】
図8(a)の従来例では、付勢ばね17の付勢力F
1S(min)に加えて液体34の圧力による弁閉止方向の力F
1Pが働いていたが、本実施の形態では、弁体13の本体部11の下面がシリンダー部材16に収容されているため、本体部11の下面に液体34の圧力が作用せず、力F
1Pが発生しない。
したがって、弁閉止状態のときに弁閉止方向に働く力は付勢ばね17の付勢力F
1S(min)のみであるので、操作者は、
図3(b)に示すように、操作レバー19を握る力を徐々に大きくしてシャフト部9に加える力F
oをF
1S(min)以上になるように増大させる。
【0037】
F
o>F
1S(min)になると、
図4(a)に示すように、力F
oによってシャフト部9が押し下げられて弁体13が下降する。弁体13が下降すると挿入部23が弁座15の円環状部15aから抜け出し、挿入部23のOリング25が弁座15から離れて弁1次側と弁2次側が連通する。
弁1次側と弁2次側が連通して液体34が弁2次側に流入すると、弁2次側に充満した液体34の圧力が弁体13の第1圧力作用面29と第2圧力作用面31に作用する。
【0038】
まず、液体34の圧力が突出部9aの下面である第1圧力作用面29に作用すると、従来例と同様に、弁閉止方向の力F2Pが働く。
そして、液体34の圧力が本体部11の上面である第2圧力作用面31に作用すると、下方向、即ち弁開放方向の力F3Pが働く。
【0039】
図9(a)の従来例では生じなかった弁開放方向の力F
3Pが、本実施の形態で生じる理由は以下のとおりである。
まず、前述した液体34の圧力による弁閉止方向の力F
1P及びF
2Pは、どちらも、弁体13に嵌装されたOリング43、21によって隔てられた空間に圧力差があることで生じるものである。
例えば、
図8(a)に示した従来例の弁閉止状態では、Oリング43によって隔てられた弁1次側と弁2次側に関し、弁1次側の内圧が液体34の圧力(ポンプ圧)であるのに対して弁2次側の内圧が大気圧となっている。したがって、本体部37の下面に液体34の圧力が作用した時に、本体部37の上側の圧力が小さいことから上方向に押圧する力が発生し、弁閉止方向の力F
1pとなる。
また、
図9(a)の従来例又は
図4(a)の本実施の形態のように、弁開放状態において、突出部9aに嵌装されたOリング21によって隔てられた供給管5の内外の圧力に関し、供給管5の内圧が液体34の圧力(ポンプ圧)であるのに対して供給管5の外部の圧力が大気圧となっている。したがって、突出部9aの下面(第1圧力作用面)に液体34の圧力が作用した時に、突出部9aの上側の圧力が小さいことから上方向に押圧する力が発生し、弁閉止方向の力F
2pとなる。
【0040】
これと同様に、
図4の本実施の形態では、本体部27の下部に嵌装されたOリング27によって隔てられた供給管5とシリンダー部材16の内部空間に関し、供給管5の内圧が液体34の圧力(ポンプ圧)であるのに対してシリンダー部材16の内圧が大気圧となっている。したがって、弁2次側に液体34が流入して本体部11の上面(第2圧力作用面)に液体34の圧力が作用した時に、本体部11の下側の圧力が小さいことから下方向に押圧する力が発生し、弁開放方向の力F
3pとなるのである。
【0041】
このように、弁が開放して弁2次側に液体34が流入すると、第1圧力作用面29と第2圧力作用面31に液体34の圧力が作用して相反する2つの力F2p、F3pが発生するが、本実施の形態では、弁開放方向の力F3pの方が大きくなるように第1圧力作用面29と第2圧力作用面31を構成しているので、この点について説明する。
前述したように、液体34の圧力による力は、液体34の圧力が作用する作用面の大きさ(外径)に応じて大きくなる。そして、作用面の大きさは、当該作用面が設けられている部位の断面積に応じて大きくなる。
【0042】
前述したように、第1圧力作用面29が設けられている突出部9aは第2圧力作用面31が設けられている本体部11よりも小径となるように形成されている。したがって、第1圧力作用面29に作用して働く力F2Pは第2圧力作用面31に作用して働く力F3Pより小さくなる。
よって、弁開放直後に相反する2つの力F2p、F3pが生じるが、F2P<F3Pであるので、弁開放直後の弁閉止方向の力(F1S(min)+F2P-F3P)は、弁閉止時の弁閉止方向の力(F1S(min))より小さくなる。
【0043】
また、前述したように、本実施の形態では弁閉止時の付勢ばね17の付勢力F
1S(min)が従来例よりも小さい。付勢ばね17の付勢力F
1S(min)が小さいと、上述した弁閉止方向の力の減少効果を相対的に大きくなる。
したがって、操作者は、従来例よりも小さい力で弁を開放でき、さらに、弁開放直後、操作レバー19の操作に抗する力が大幅に減少するように感じる(
図4(b)参照)。
【0044】
弁開放後は従来例と同様に、弁の開度が大きくなるのに伴って付勢ばね17が縮み、付勢力F
1Sが大きくなるので、弁体13を押し下げるのに要する力F
oも増大する。しかし、本実施の形態においては、液体34の圧力による弁開放方向の力(=F
3P-F
2P)の方が付勢ばね17の付勢力の増分(=F
1S(max)-F
1S(min))よりも大きくなるように構成されているので、弁開放直前に加えた力から操作力を増大することなく弁全開状態にすることができる(
図5(a)、
図5(b)参照)。
【0045】
上述したように、本実施の形態によれば、弁体13が開放したときに液体の圧力が弁体13を開放する方向に作用するように構成された圧力作用面を有することにより、弁開放直後に、弁操作に抗する力が大きく減少する。さらに、弁を全開するのに要する力は弁開放に要する力より小さい。
したがって、操作者が開閉弁装置7を操作する際に、弁開放に要する力だけで最大までレバーを握りこむことができるので、従来のように操作者が操作を中断して中途開放状態のまま使用する事態が生じにくくなり、液体の成分分離や、液体中の粉末による詰まりを防止することができる。
【0046】
なお、本実施の形態は弁体13の挿入部23が弁座15の円環状部15aに挿入されて円環状部15aの内周面と挿入部23のOリング25が当接することで弁閉止状態となるものであったが、本発明はこの限りではなく、例えば従来例のように、弁座41の角部に弁体39のOリング43が当接することで弁閉止状態となるものであってもよい。
もっとも、本実施の形態は、付勢ばね17の付勢力を小さくできて、軽い力で弁が開放されるので、弁の開度が極小さい状態で使用される事態が生じにくく、好ましい。
【0047】
また、本実施の形態は、弁全開状態にするのに必要な操作力が弁開放に必要な操作力よりも小さくなるように構成したものであるが、本発明はこの限りではない。
本発明は、弁の開度が極小さい状態で使用されるのを防ぐ目的で発案されたものであり、液体の圧力が弁体を開放する方向に作用すれば、少なくとも弁の開度が極小さい状態で使用される事態が生じにくくなるため、本発明は効果を奏する。
もっとも、本実施の形態は、弁開放時に加えた力を増大することなく弁全開状態にできるので、弁の開度が安定してより好ましい。
【符号の説明】
【0048】
1 噴射装置
3 ノズル
5 供給管
7 開閉弁装置
9 シャフト部
9a 突出部
9b 小径部
11 本体部
13 弁体
15 弁座
15a 円環状部
16 シリンダー部材
17 付勢ばね
19 操作レバー
19a 凸部
21 Oリング(突出部)
23 挿入部
25 Oリング(挿入部)
27 Oリング(本体部)
29 第1圧力作用面
31 第2圧力作用面
33 操作レバー軸
34 (粉末を含有する)液体
35 開閉弁装置(従来例)
37 本体部(従来例)
39 弁体(従来例)
41 弁座(従来例)
43 Oリング(従来例)
45 詰まり
50 噴射装置(従来例)