(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-16
(45)【発行日】2025-06-24
(54)【発明の名称】ロボットの制御装置、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B23K 9/12 20060101AFI20250617BHJP
B23K 9/04 20060101ALI20250617BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20250617BHJP
【FI】
B23K9/12 331Q
B23K9/04 G
B23K9/04 Z
B33Y50/02
(21)【出願番号】P 2022183507
(22)【出願日】2022-11-16
【審査請求日】2024-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】近口 諭史
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-174142(JP,A)
【文献】特開2018-149570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00-9/32
B23K 26/00-26/70
B33Y 50/02
B29C 64/00
B22F 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接トーチを用いて積層造形を行うロボットの制御装置であって、
造形物の形状情報と、前記溶接トーチのトーチ情報と、前記積層造形の際の前記溶接トーチの運棒情報とを取得する取得手段と、
前記形状情報および前記トーチ情報に基づいて、前記造形物と前記溶接トーチとの干渉が生じる前記溶接トーチの位置および姿勢のパラメータを示す干渉マップを生成する生成手段と、
前記干渉マップと、前記運棒情報にて規定される前記溶接トーチの位置および姿勢とに基づいて、前記溶接トーチと前記造形物との干渉が生じる位置を特定する特定手段と、
前記特定手段にて特定された位置における前記溶接トーチの姿勢のパラメータを調整する調整手段と、
を有し、
前記干渉マップは、3次元座標系における複数の軸それぞれに対応して生成され、
前記特定手段は、前記複数の軸それぞれのいずれかにて干渉が生じている位置の姿勢のパラメータを、修正を行うパラメータとして特定する、制御装置。
【請求項2】
前記干渉マップは、3次元座標系における軸と、当該軸回りの角度とを対応付けて、前記造形物と前記溶接トーチとの干渉が生じる領域が定義される、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記干渉マップは、前記造形物を積層造形する際のパスごとに生成される、請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記調整手段は、干渉する位置における前記溶接トーチの姿勢のパラメータにオフセットを付与し、連続する位置の姿勢のパラメータにスムージング処理を行うことで、パラメータの調整を行う、請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記形状情報に基づいて、前記積層造形のパスごとの前記造形物の形状を予測する予測手段を更に有し、
前記生成手段は、前記予測手段により予測された前記造形物の形状に基づいて前記干渉マップを生成する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記予測手段は更に、予測したパスごとの前記造形物の形状の外表面を、所定の曲面または曲線モデルによって補間する、請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
溶接トーチを用いて積層造形を行うロボットの制御方法であって、
造形物の形状情報と、前記溶接トーチのトーチ情報と、前記積層造形の際の前記溶接トーチの運棒情報とを取得する取得工程と、
前記形状情報および前記トーチ情報に基づいて、前記造形物と前記溶接トーチとの干渉が生じる前記溶接トーチの位置および姿勢のパラメータを示す干渉マップを生成する生成工程と、
前記干渉マップと、前記運棒情報にて規定される前記溶接トーチの位置および姿勢とに基づいて、前記溶接トーチと前記造形物との干渉が生じる位置を特定する特定工程と、
前記特定工程にて特定された位置における前記溶接トーチの姿勢のパラメータを調整する調整工程と、
を有し、
前記干渉マップは、3次元座標系における複数の軸それぞれに対応して生成され、
前記特定工程において、前記複数の軸それぞれのいずれかにて干渉が生じている位置の姿勢のパラメータを、修正を行うパラメータとして特定する、制御方法。
【請求項8】
コンピュータに、
造形物の形状情報と、溶接トーチのトーチ情報と、積層造形の際の前記溶接トーチの運棒情報とを取得する取得工程と、
前記形状情報および前記トーチ情報に基づいて、前記造形物と前記溶接トーチとの干渉が生じる前記溶接トーチの位置および姿勢のパラメータを示す干渉マップを生成する生成工程と、
前記干渉マップと、前記運棒情報にて規定される前記溶接トーチの位置および姿勢とに基づいて、前記溶接トーチと前記造形物との干渉が生じる位置を特定する特定工程と、
前記特定工程にて特定された位置における前記溶接トーチの姿勢のパラメータを調整する調整工程と、
を実行させ、
前記干渉マップは、3次元座標系における複数の軸それぞれに対応して生成され、
前記特定工程において、前記複数の軸それぞれのいずれかにて干渉が生じている位置の姿勢のパラメータを、修正を行うパラメータとして特定する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの制御装置、制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットを用いて溶接ビードを積層させることで積層造形物を造形することが行われている。また、溶接を自動的に行わせる場合、オペレータは溶接の経路や姿勢を予め教示することが行われている。積層造形を行う際には、すでに造形された溶接ビードや母材の形状や位置を考慮して姿勢を制御する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1では、溶接トーチをモデル化し、パス上の各狙い位置において溶接トーチが造形物に衝突しない角度を算出してトーチ角を設定する構成が開示されている。また、特許文献2では、溶接トーチ姿勢とトーチの位置との関係を定義したテーブルを用いて干渉を判定する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】中国特許出願公開第114161047号明細書
【文献】特許第4335880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
積層造形の際に、積層造形装置の溶接トーチが母材や積層造形物と衝突や干渉した場合、造形が中断されるのみならず、積層造形を再度行うために装置を復旧させる際に長い時間を要する場合がある。そのため、積層造形中の衝突や干渉を回避するように制御する必要がある。しかし、溶接トーチと母材の3次元空間における距離を、溶接トーチの軌跡を構成する複数の点それぞれに対して干渉判定をした場合、膨大な時間を要する。更には、このような干渉判定処理において、漏れも生じ得る。
【0006】
また、溶接トーチと母体との間の距離に基づいて干渉判定を行うことはできる。しかし、その結果を踏まえて、どの方向に溶接トーチが回避すればよいかの姿勢の修正設定も必要となる。このような溶接トーチの干渉判定および回避条件の設定にはユーザの多大な労力を要することとなる。そのため、積層造形に係る溶接トーチの干渉判定に加え、溶接トーチの姿勢の調整を自動的に行う手法が求められていた。
【0007】
上記課題を鑑み、本発明は、積層造形における溶接トーチと造形物との干渉を回避するように自動的に姿勢パラメータを調整することを可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は以下の構成を有する。すなわち、溶接トーチを用いて積層造形を行うロボットの制御装置であって、
造形物の形状情報と、前記溶接トーチのトーチ情報と、前記積層造形の際の前記溶接トーチの運棒情報とを取得する取得手段と、
前記形状情報および前記トーチ情報に基づいて、前記造形物と前記溶接トーチとの干渉が生じる前記溶接トーチの位置および姿勢のパラメータを示す干渉マップを生成する生成手段と、
前記干渉マップと、前記運棒情報にて規定される前記溶接トーチの位置および姿勢とに基づいて、前記溶接トーチと前記造形物との干渉が生じる位置を特定する特定手段と、
前記特定手段にて特定された位置における前記溶接トーチの姿勢のパラメータを調整する調整手段と、
を有し、
前記干渉マップは、3次元座標系における複数の軸それぞれに対応して生成され、
前記特定手段は、前記複数の軸それぞれのいずれかにて干渉が生じている位置の姿勢のパラメータを、修正を行うパラメータとして特定する。
【0009】
また、本発明の別の一形態として、以下の構成を有する。すなわち、溶接トーチを用いて積層造形を行うロボットの制御方法であって、
造形物の形状情報と、前記溶接トーチのトーチ情報と、前記積層造形の際の前記溶接トーチの運棒情報とを取得する取得工程と、
前記形状情報および前記トーチ情報に基づいて、前記造形物と前記溶接トーチとの干渉が生じる前記溶接トーチの位置および姿勢のパラメータを示す干渉マップを生成する生成工程と、
前記干渉マップと、前記運棒情報にて規定される前記溶接トーチの位置および姿勢とに基づいて、前記溶接トーチと前記造形物との干渉が生じる位置を特定する特定工程と、
前記特定工程にて特定された位置における前記溶接トーチの姿勢のパラメータを調整する調整工程と、
を有し、
前記干渉マップは、3次元座標系における複数の軸それぞれに対応して生成され、
前記特定工程において、前記複数の軸それぞれのいずれかにて干渉が生じている位置の姿勢のパラメータを、修正を行うパラメータとして特定する。
【0010】
また、本発明の別の一形態として、以下の構成を有する。すなわち、プログラムであって、
コンピュータに、
造形物の形状情報と、溶接トーチのトーチ情報と、積層造形の際の前記溶接トーチの運棒情報とを取得する取得工程と、
前記形状情報および前記トーチ情報に基づいて、前記造形物と前記溶接トーチとの干渉が生じる前記溶接トーチの位置および姿勢のパラメータを示す干渉マップを生成する生成工程と、
前記干渉マップと、前記運棒情報にて規定される前記溶接トーチの位置および姿勢とに基づいて、前記溶接トーチと前記造形物との干渉が生じる位置を特定する特定工程と、
前記特定工程にて特定された位置における前記溶接トーチの姿勢のパラメータを調整する調整工程と、
を実行させ、
前記干渉マップは、3次元座標系における複数の軸それぞれに対応して生成され、
前記特定工程において、前記複数の軸それぞれのいずれかにて干渉が生じている位置の姿勢のパラメータを、修正を行うパラメータとして特定する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、積層造形における溶接トーチと造形物との干渉を回避するように自動的に姿勢パラメータを調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る積層造形システムの構成例を示す概略構成図。
【
図2】本発明の一実施形態に係る溶接トーチの先端部の構成例を示す概略図。
【
図3】本発明の一実施形態に係る干渉判定を説明するための概念図。
【
図4】本発明の一実施形態に係る溶接トーチの干渉判定を説明するための概念図。
【
図5】本発明の一実施形態に係る溶接トーチの干渉判定を説明するための概念図。
【
図6】本発明の一実施形態に係る溶接トーチの干渉判定を説明するための概念図。
【
図7】本発明の一実施形態に係る溶接トーチのパスの調整を説明するためのグラフ図。
【
図8】本発明の一実施形態に係る干渉マップの例を示すグラフ図。
【
図9A】本発明の一実施形態に係る干渉マップと姿勢との関係の例を示すグラフ図。
【
図9B】本発明の一実施形態に係る干渉マップと姿勢との関係の例を示すグラフ図。
【
図9C】本発明の一実施形態に係る干渉マップと姿勢との関係の例を示すグラフ図。
【
図10】本発明の一実施形態に係る溶接トーチの姿勢のスムージングを説明するためのグラフ図。
【
図11】本発明の一実施形態に係る姿勢パラメータの調整に係る処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面などを参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を説明するための一実施形態であり、本発明を限定して解釈されることを意図するものではなく、また、各実施形態で説明されている全ての構成が本発明の課題を解決するために必須の構成であるとは限らない。また、各図面において、同じ構成要素については、同じ参照番号を付すことにより対応関係を示す。
【0014】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態について説明を行う。ここでは、積層造形を実行可能な積層造形システムを例に挙げて説明する。しかし、本発明の本質部分を実装可能な構成であれば、これに限定するものではない。
【0015】
[システム構成]
図1は、本発明を適用可能な積層造形システムの概略構成図である。
【0016】
本実施形態に係る積層造形システム1は、積層造形装置100、および、積層造形装置100を統括制御する情報処理装置200を含んで構成される。
図1において、X軸、Y軸、Z軸にて示される3次元座標系を示す。3次元座標系の原点位置は、特に限定するものでは無いが、任意の位置が設定され、この原点位置を基準として、積層造形システム1は積層造形の動作を行う。
【0017】
積層造形装置100は、溶接ロボット104、トーチ102に溶加材(溶接ワイヤ)Mを供給する溶加材供給部105、溶接ロボット104を制御するロボットコントローラ106、および電源107を含んで構成される。
【0018】
溶接ロボット104は、多関節ロボットであり、先端軸に設けたトーチ102には、溶加材Mが連続供給可能に支持される。トーチ102は、溶加材Mを先端から突出した状態に保持する。トーチ102の位置や姿勢は、溶接ロボット104を構成するロボットアームの自由度の範囲で3次元的に任意に設定可能となっている。
【0019】
トーチ102は、シールドノズル(不図示)を有し、シールドノズルからシールドガスが供給される。シールドガスは、大気を遮断し、溶接中の溶融金属の酸化、窒化などを防いで溶接不良を抑制する。本実施形態で用いられるアーク溶接法としては、被覆アーク溶接や炭酸ガスアーク溶接等の消耗電極式、TIG溶接やプラズマアーク溶接等の非消耗電極式のいずれであってもよく、造形する積層造形物Wに応じて適宜選定される。
【0020】
トーチ102近傍には、トーチ102の動きに追従して移動可能な形状センサ101が備えられる。形状センサ101は、ベース103上に形成された積層造形物Wの形状を検知する。本実施形態では、形状センサ101により、積層造形物Wを構成する溶接ビード108(単に、「ビード」とも称する)の高さや位置、幅などを検出可能であるものとする。形状センサ101にて検出された情報は、情報処理装置200へ送信される。なお、形状センサ101の構成は、特に限定するものではなく、接触により形状を検出する構成(接触式センサ)であってもよいし、レーザなどにより形状を検出するような構成(非接触式センサ)であってもよい。なお、形成されたビードの形状を導出する手段としては、トーチ102近傍に設置された形状センサ101に限定するものではない。例えば、形成されたビードの形状を間接的に導出するような構成であってもよい。一例としては、溶接電流や溶加材Mの送給速度のプロファイルと、ビードの高さの傾向を示すDB(データベース)を予め規定しておき、造形時の溶接条件に基づいて、形成されたビードの高さを導出するような構成であってもよい。
【0021】
溶接ロボット104において、アーク溶接法が消耗電極式の場合、シールドノズルの内部にはコンタクトチップが配置され、溶融電流が給電される溶加材Mがコンタクトチップに保持される。トーチ102は、溶加材Mを保持しつつ、シールドガス雰囲気で溶加材Mの先端からアークを発生する。溶加材Mは、ロボットアーム等に取り付けた繰り出し機構(不図示)により、溶加材供給部105からトーチ102に送給される。そして、トーチ102を移動しつつ、連続送給される溶加材Mを溶融及び凝固させると、溶加材Mの溶融凝固体である線状の溶接ビード108がベース103上に形成される。溶接ビード108が積層されることで、積層造形物Wが造形される。
【0022】
なお、溶加材Mを溶融させる熱源としては、上記したアークに限らない。例えば、アークとレーザとを併用した加熱方式、プラズマを用いる加熱方式、電子ビームやレーザを用いる加熱方式等、他の方式による熱源を採用してもよい。電子ビームやレーザにより加熱する場合、加熱量を更に細かく制御でき、溶接ビード108の状態をより適正に維持して、積層造形物Wの更なる品質向上に寄与できる。
【0023】
ロボットコントローラ106は、情報処理装置200からの指示に基づき、所定の駆動プログラムにより溶接ロボット104を駆動させ、ベース103上に積層造形物Wを造形させる。つまり、溶接ロボット104は、ロボットコントローラ106からの指令により、溶加材Mをアークで溶融させながらトーチ102を移動させる。電源107は、ロボットコントローラ106に溶接に要する電力を供給する溶接電源である。電源107は、複数の制御モードで動作可能であり、制御モードに応じて、ロボットコントローラ106への電源供給の際の電力(電流や電圧など)を切り替えることが可能である。溶加材供給部105は、情報処理装置200からの指示に基づき、溶接ロボット104のトーチ102への溶加材Mの供給および送給速度を制御する。
【0024】
情報処理装置200は、例えば、PC(Personal Computer)などの情報処理装置などであってよい。
図1に示す各機能は、不図示の制御部が、不図示の記憶部に記憶された本実施形態に係る機能のプログラムを読み出して実行することで実現されてよい。記憶部としては、揮発性の記憶領域であるRAM(Random Access Memory)や、不揮発性の記憶領域であるROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)などが含まれてよい。また、制御部としては、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)、またはGPGPU(General-Purpose computing on Graphics Processing Units)などが用いられてよい。
【0025】
情報処理装置200は、造形制御部201、電源制御部202、送給制御部203、DB管理部204、形状データ取得部205、教示データ取得部206、パラメータ調整部207、および周辺装置制御部208を含んで構成される。造形制御部201は、造形しようとする積層造形物Wの設計データ(例えば、CAD/CAMデータなど)に基づき、造形の際のロボットコントローラ106に対する制御信号を生成する。ここでの制御信号は、溶接ロボット104によるトーチ102の移動軌跡や溶接ビード108の形成時の溶接条件、溶加材供給部105による溶加材Mの送給速度などを含む。トーチ102の移動軌跡は、ベース103上に溶接ビード108を形成している最中のトーチ102の軌跡に限定するものではなく、例えば、溶接ビード108を形成する開始位置へのトーチ102の移動軌跡なども含むものとする。
【0026】
電源制御部202は、電源107によるロボットコントローラ106への電源供給(制御モード)を制御する。制御モードに応じて、同じ形状のビードを形成する際の電流や電圧の値、電流の波形(パルス)なども異なり得る。また、電源制御部202は、電源107から、ロボットコントローラ106に対して提供している電流や電圧の情報を適時取得する。
【0027】
送給制御部203は、溶加材供給部105による溶加材Mの送給速度や送給タイミングを制御する。ここでの溶加材Mの送給制御は、繰り出し(正送給)のみならず、戻し(逆送給)も含むものとする。DB管理部204は、本実施形態に係るDB(データベース)を管理する。本実施形態に係るDBには、例えば、1パスごとの造形結果としてのビードの形状に関する情報が含まれる。ここでのパスは、積層造形物の造形時のトーチ102の経路に相当する。形状データ取得部205は、形状センサ101にて検出された、ベース103上に形成された溶接ビード108の形状データを取得する。
【0028】
教示データ取得部206は、例えば、不図示の教示ペンダントなどを介してオペレータから教示されたパラメータを含む教示データを取得する。造形制御部201は、積層造形物Wの設計データと教示データとを用いて溶接ロボット104を制御することで積層造形物Wを造形することができる。本実施形態では、これらのデータをまとめて「積層計画データ」とも記載する。なお、積層計画データに含まれるデータは、特に限定するものではない。パラメータ調整部207は、後述する処理により、トーチ102と造形物等の干渉を判定し、トーチ102の姿勢を調整するためのパラメータを算出する。積層計画データは、パラメータ調整部207にて算出されたパラメータに基づいて調整される。
【0029】
周辺装置制御部208は、積層造形システム1が備える溶接ロボット104の周りに備えられた周辺装置の動作を制御する。周辺装置は、
図1では不図示であるが、例えば、積層造形物Wが造形されるベース103の位置や姿勢を調整するためのポジショナや、溶接ロボット104を所定方向にスライドさせることが可能なスライダなどが挙げられる。したがって、溶接ロボット104は、これらの周辺装置と連動して積層造形の動作を行ってよい。
【0030】
また、本実施形態に係る設計データにおける座標系と、溶接ロボット104の座標系とは対応付けられており、任意の位置を原点として、3次元における位置が規定されるように座標系の3軸(X軸、Y軸、Z軸)が設定されているものとする。
【0031】
上記構成の積層造形システム1は、積層計画データにて規定されるトーチ102の移動軌跡と、干渉判定の結果に応じて算出されるパラメータに従って、トーチ102を溶接ロボット104の駆動により移動させながら、溶加材Mを溶融させ、溶融した溶加材Mをベース103上に供給する。これにより、ベース103の上面に複数の線状の溶接ビード108が並べられて積層された積層造形物Wが造形される。
【0032】
[干渉判定]
図2は、トーチ102の先端部の形状の例を示す概略図である。トーチ102の先端部はテーパ状になっており、最先端部の幅W1とし、先端部から遠くなるに従って、最大幅W2となる。このテーパ状の部分の長さをLにて示す。例えば、W1=20[mm]、W2=25[mm]、L=21.5[mm]として構成されてよい。このような、積層造形に用いられるトーチ102の情報として、トーチノズル口径やノズルの長さなどが予めトーチ情報として管理される。
【0033】
図3は、トーチ102と、母材や積層造形物との干渉判定の概念を説明するための概念図である。ここでは、トーチ102は、複数の点にてモデル化され、その最先端部を点102aにて示す。また、母材300等の表面も複数の点(例えば、点301)にてモデル化される。ここでは、トーチ102や母材300や造形物は、一定間隔の点にて構成されるが、その点の間隔は特に限定するものではない。
【0034】
例えば、
図3に示すように、トーチ102を構成する点と、母材や造形物を構成する点との3次元空間上における距離判定を行うことで、干渉判定を行う。例えば、点間の距離に対して、一定の閾値を設け、その距離が閾値以下となった場合には、干渉しているものと判定してよい。
【0035】
図4は、
図2に示すトーチ102の構成例に基づいて、3次元空間上でのトーチ102が位置する空間を示す概念図である。ここでは、x軸、y軸、z軸にて3次元座標系を示し、そこにトーチ102が位置しているものとする。
図3に示すようにトーチ102をモデル化し、トーチ102が占有する領域を干渉判定に用いる。領域Rは、3次元空間内においてトーチ102が位置するものとして扱われる領域を示す。ここでは、領域Rをトーチ102が内接する空間として円柱形状にて示すが、他の形状であってもよい。領域Rに関し、x軸方向の長さ(直径)をLxにて示し、y軸方向の長さ(直径)をLyにて示す。ここでは、z方向については省略しているが、同様に定義できる。
【0036】
領域Rは、トーチ102の形状、位置、姿勢によって変動し得る。また、領域Rは、トーチ102の移動方向を考慮して設定されてもよい。
【0037】
図5は、積層造形の際の干渉を説明するための図である。ここでは、x軸方向に沿って水平方向から見た図であり、横方向をy軸とし、高さ方向をz軸とする。トーチ102の周辺には、母材300が配置され、また、ビード350が4層(4パス)にて形成された例を示す。なお、
図5では、トーチ102の先端部の形状を用いて説明するが、
図4の領域Rのようにトーチ102の形状に対応して円柱状の構成にて干渉判定を行ってもよい。
【0038】
ここで、トーチのx座標(図面奥行方向)の位置をxtとする(x=xt)。また、x軸回りのトーチ102の回転角をθxにて示す。また、y軸方向におけるビード350の端部の位置をyBとして示す。更に、y軸方向におけるトーチ102の端部の位置をyTとして示す。このとき、yTは、ビード350の高さ(z軸方向の値)に対応して、トーチ102のy軸方向の値に基づいて特定されてよい。
【0039】
干渉判定においては、
図5の例の場合、以下のように扱うことができる。
y
T>y
B:干渉無し
y
T=y
B:干渉境界(干渉有りと判定可能)
y
T<y
B:干渉有り
【0040】
図6は、3次元座標系において、積層造形動作を行っている際の別の例を示す。
図5と同様に、トーチ102の周辺に母材300が配置され、また、ビード350が5層(5パス)にて形成された例を示している。また、3次元座標系と、その軸回りの回転角θ
x、θ
y、θ
zを示している。ここでは、トーチ102は、x軸方向に沿って移動する例を示している。
【0041】
積層造形中のトーチ102と、母材300やビード350との干渉を回避するため、トーチ102は移動位置に応じて姿勢を調整する必要がある。特に、ビード350については、積層造形が進むにつれてその形状(幅や高さ)が変化するため、そのような変化に対応してトーチ102の姿勢を制御する必要がある。
【0042】
本実施形態では、トーチ102のパスごとにその周辺に位置する母材やビードの位置と、トーチ102との干渉が生じる、トーチ102の位置および姿勢の制御パラメータを定義したマップ(以下、「干渉マップ」と称する)を用い、積層計画データに基づくトーチ102の制御パラメータを調整する。ここでの調整する制御パラメータとして、トーチ102の姿勢、すなわち、3次元空間に対応して定義された3次元座標軸回りの回転角が挙げられる。つまり、ある狙い位置における母材やビードとトーチ102との干渉/非干渉は、母材やビードの位置とトーチ102の位置や姿勢に応じて変化する。
【0043】
図7は、干渉マップとトーチ102のx軸回りの回転角θ
xとの関係の例を示す図である。ここでは、y軸とz軸の値は固定とする。
図7において、横軸はx軸上のxの値を示し、縦軸はx軸回りの回転角θ
xを示す。また、干渉マップ上において、母材300と、ビード350の領域が示される。さらに、線400は、トーチのxの座標における回転角θ
xを示す。
【0044】
ここで、母材300またはビード350の領域と、線400とが重複する姿勢パラメータ(x,θx)は、トーチ102と、母材300またはビード350とが干渉することを意味する。したがって、これらが干渉しないように、パラメータを調整する必要がある。
【0045】
図7の例では、上から順にパラメータを調整する流れを示している。まず、線400は、初期値を示す。そして、線401に示すように、干渉が生じないように調整する。調整方法は特に限定するものではない。例えば、調整は、干渉が生じないように干渉している位置の回転角を干渉が生じる境界(以下、「干渉境界」とも称する)に変更するような構成であってもよいし、あるx軸の値において干渉が生じない領域の中点となる回転角を用いてもよい。もしくは、予め設定されたオフセット値を用いて調整してもよい。
【0046】
さらに、線402に示すように、スムージング処理を行う。スムージングの方法は特に限定するものではない。例えば、スムージング処理は、連続する位置の回転角θの差異が所定の範囲以内となるように行われてもよい。これにより、トーチ102の移動の際に急激な回転角の変化を抑制することができる。
【0047】
図8は、
図7と同様に、干渉マップの構成例を示す。横軸は、座標軸(ここでは、x軸)の値を示し、縦軸は座標軸回りの回転角(ここでは、回転角θ
x)を示す。また、領域801が母材に対応し、領域802がビードに対応する。干渉マップは、軸ごと、更には、パスごとに設けられる。すなわち、積層造形物が10パスにて形成される場合には、3(x軸、y軸、z軸の3軸に対応)×10(10パスそれぞれに対応)=30の干渉マップが用いられる。
【0048】
図9A~
図9Cは、1つのパスに対応して設けられる各軸に対応した干渉マップの例を示す。以下の例では、x軸回りの回転角θ
xの調整を行う場合について説明する。本例では、
図6に示すように、x軸方向に沿って造形が行われるものとし、そのため、y軸の値およびz軸の値は固定となる。したがって、パスの造形方向(トーチ102の移動方向)によって3軸のうちのどのパラメータを調整するかは適宜異なる。
【0049】
図9Aは、x軸方向に対応した干渉マップであり、初期値である線903を設定した状態を示す。横軸はx軸上の値を示し、縦軸はx軸回りの回転角を示す。初期値は、予め規定されていてもよいし、積層計画データなどにて指定されていてもよい。領域901は母材に対応し、領域902はその時点で造形済みのビードに対応する。
【0050】
図9Bは、y軸に対応した干渉マップであり、初期値である点913を設定した状態を示す。上述したように、y軸の値およびy軸回りの回転角θ
yは固定となるため、点にて示す。横軸はy軸上の値を示し、縦軸はy軸回りの回転角を示す。初期値は、予め規定されていてもよいし、積層計画データなどにて指定されていてもよい。領域911は母材に対応し、領域912はその時点で造形済みのビードに対応する。
【0051】
図9Cは、z軸に対応した干渉マップであり、初期値である点923を設定した状態を示す。上述したように、z軸の値およびz軸回りの回転角θ
zは固定となるため、点にて示す。横軸はz軸上の値を示し、縦軸はz軸回りの回転角を示す。初期値は、予め規定されていてもよいし、設計データなどにて指定されていてもよい。領域911は母材に対応する。
【0052】
図10は、
図9A~
図9Cに示した干渉マップに基づいて、x軸回りの回転角θ
xの調整経過を示す。
図7と同様に、干渉判定を行い、干渉が生じない回転角に調整したうえで、スムージング処理が行われる。線903では、トーチ102と母材との干渉が生じている。線904では、干渉が生じないように調整されている。更に、線905、線906のようにスムージング処理を行うことで、急激な回転角の変更を生じさせないようなトーチ102の姿勢制御が可能となる。
【0053】
なお、
図10の例では、y軸の姿勢パラメータ(y,θ
y)およびz軸の姿勢パラメータ(z,θ
z)を調整することなく、x軸の姿勢パラメータ(x,θ
x)のみを調整することで、干渉が生じない制御パラメータを得ることが可能な場合を示した。一方、積層造形の経過によっては、y軸やz軸の姿勢パラメータを固定した状態では、x軸回りの干渉が生じない回転角が存在しない場合がある。このような場合には、y軸回りやz軸回りの値を同時並行的に調整することで、いずれの軸方向においても干渉が生じないようにしてよい。
【0054】
[処理フロー]
図11は、本実施形態に係るトーチ102の姿勢パラメータの調整に係る処理のフローチャートである。本処理フローは、情報処理装置200により実行される。例えば、情報処理装置200が備えるCPUなどの処理部が
図1に示した各部位を実現するためのプログラムを記憶部(不図示)から読み出して実行することにより実現されてよい。また、本処理フローが実行される前に、積層造形のための積層計画データが準備されているものとする。なお、本処理フローは、積層造形の動作が開始される前に予め実施されてもよいし、積層造形の動作の際に平行して実行されてもよい。
【0055】
S1101にて、情報処理装置200は、積層計画データから、形状情報、トーチ情報、および運棒情報を取得する。形状情報は、積層造形物の最終的な形状のほか、パスごとの形状に係る情報を含む。形状情報は、例えば、母材を含む積層造形物のCAD情報をスライスや分割したものであってもよい。形状情報には、1パスごとのビードの積層造形を定義したものや、これを予測したものが含まれてよい。このような情報を含むことで、トーチ102の干渉を正確に予測することが可能となる。なお、ビードの積層を予測する手法としては、例えば、特開2022-071692号公報や特開2022-093023号公報に記載の手法が用いられてよい。
【0056】
また、形状情報において、積層造形物に関するデータの表現形式に依存して、いびつな凹凸等を含む場合には、例えば、所定の曲面や曲線モデルによって外表面を補間することで外表面を平滑化するなどしてもよい。平滑化の手法については特に限定するものではなく、公知の手法が用いられてよい。トーチ情報は、
図2に示したようなトーチ102の形状に係る情報の他、トーチ102がとり得る姿勢の情報を含んでよい。トーチ情報により、例えば、
図4に示すような領域Rを特定することができる。運棒情報は、例えば、
図9Aに示した線903に対応する造形に係る姿勢の初期値が含まれる。初期値は、例えば、上記の姿勢パラメータに対応して、各軸の座標(x,y,z)および各軸回りの角度(θ
x,θ
y,θ
z)の形式にて示されてよい。また、運棒情報には、ビードを形成する際のトーチ102の移動経路、あるパスの終了位置から次のパスの開始位置までのトーチの移動経路、パスの積層順などが含まれてよい。
【0057】
S1102にて、情報処理装置200は、S1101にて取得した形状情報に基づいて、未処理のパスのうちの1のパスに着目する。通常、積層造形において、造形するパスの順番は予め規定されているため、情報処理装置200は、その順番に従って、順に着目する。
【0058】
S1103にて、情報処理装置200は、S1101にて取得した各種情報に基づいて、複数の軸および複数のパスに対応する複数の干渉マップを作成する。すなわち、
図8に示すような干渉マップが作成される。ここでの干渉マップの作成方法としては、例えば、
図5に示すように母材や造形済みのビードの端部座標(例えば、
図5のy
B)を特定することで生成してよい。もしくは、積層造形物や母材に対して3次元の形状モデルを定義して干渉マップを作成してもよい。
【0059】
S1104にて、情報処理装置200は、S1103にて作成した干渉マップに対して、x軸、y軸、z軸における初期値を設定する。例えば、
図9A~
図9Cに示すように各軸における姿勢パラメータである回転角の初期値を設定する。姿勢パラメータの初期値は、例えば、運棒情報にて規定されてよい。
図9A~
図9Cに示したように、トーチ102の移動経路に応じて、3つの軸のうちの2つの軸を固定し、1つの軸を変更するように設定してよい。
【0060】
S1105にて、情報処理装置200は、S1103にて作成した干渉マップと、S1104にて設定した初期値とを比較することで、干渉判定を行う。
【0061】
S1106にて、情報処理装置200は、S1105の干渉判定の結果、3つの軸の少なくとも一部に干渉が生じているか否かを判定する。少なくとも一部に干渉が生じている場合(S1106にてYES)、情報処理装置200の処理は、S1107へ進む。一方、いずれにも干渉が生じていない場合(S1106にてNO)、情報処理装置200の処理はS1119へ進む。ここでの干渉判定において、干渉境界上に位置する場合には、干渉すると判定してよい。
【0062】
S1107にて、情報処理装置200は、干渉マップが示す干渉位置において、干渉が生じないように運棒情報を更新する。このとき、同じ軸回りの回転角を変更することで干渉を回避できる場合には、回転角を更新する。回転角の変更で干渉を回避できない場合には、他の軸回りの回転角を変更する。
【0063】
S1108にて、情報処理装置200は、S1107の更新結果に対し、スムージング処理を行う。例えば、
図7や
図10に示したようにスムージング処理を行う。なお、S1107にて1つの軸の運棒情報のみを更新した場合には、その軸に対するスムージング処理を行ってよい。一方、S1107にて2つ以上の軸の運棒情報を更新した場合には、それらすべてに対してスムージング処理を行ってよい。その後、情報処理装置200の処理は、S1105へ戻り、再度干渉判定を行う。なお、1回の処理にて干渉を回避できる場合には、当該着目パスへの処理を終了することとし、S1109へ進んでもよい。
【0064】
S1109にて、情報処理装置200は、着目パスの運棒情報を決定する。つまり、着目パスに対するトーチ102の姿勢パラメータ(x,θx)が決定される。
【0065】
S1110にて、情報処理装置200は、形状情報において未処理のパスがあるか否かを判定する。未処理のパスが有る場合(S1110にてYES)、情報処理装置200の処理は、S1102へ戻り、次の未処理のパスに着目して処理を繰り返す。一方、未処理のパスが無い場合(S1110にてNO)、情報処理装置200の処理はS1111へ進む。
【0066】
S1111にて、情報処理装置200は、形状情報、および決定した運棒情報に基づいて造形動作を実施する。そして、本処理フローを終了する。
【0067】
以上、本実施形態により、積層造形における溶接トーチと造形物との干渉を回避するように自動的に姿勢パラメータを調整することが可能となる。
【0068】
<その他の実施形態>
上記の実施形態では、
図7に示すように1のパス(例えば、線400)に対して全体を調整するような構成の例を示した。しかし、これに限定するものではなく、いくつかの姿勢パラメータをサンプリングして調整するような構成であってもよい。より具体的には、線400に含まれる複数の連続する姿勢パラメータのうち、所定間隔ごとの姿勢パラメータ(x,θ
x)を対象として調整を行い、その結果を用いてスムージング処理を行ってもよい。
【0069】
また、本発明において、上述した1以上の実施形態の機能を実現するためのプログラムやアプリケーションを、ネットワーク又は記憶媒体等を用いてシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。
【0070】
また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array))によって実現してもよい。
【0071】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 溶接トーチ(例えば、102)を用いて積層造形を行うロボット(例えば、100)の制御装置(例えば、200)であって、
造形物の形状情報と、前記溶接トーチのトーチ情報と、前記積層造形の際の前記溶接トーチの運棒情報とを取得する取得手段(例えば、204、206)と、
前記形状情報および前記トーチ情報に基づいて、前記造形物と前記溶接トーチとの干渉が生じる前記溶接トーチの位置および姿勢のパラメータを示す干渉マップを生成する生成手段(例えば、207)と、
前記干渉マップと、前記運棒情報にて規定される前記溶接トーチの位置および姿勢とに基づいて、前記溶接トーチと前記造形物との干渉が生じる位置を特定する特定手段(例えば、207)と、
前記特定手段にて特定された位置における前記溶接トーチの姿勢のパラメータを調整する調整手段(例えば、207)と、
を有し、
前記干渉マップは、3次元座標系における複数の軸それぞれに対応して生成され、
前記特定手段は、前記複数の軸それぞれのいずれかにて干渉が生じている位置の姿勢のパラメータを、修正を行うパラメータとして特定する、制御装置。
【0072】
この構成によれば、積層造形における溶接トーチと造形物との干渉を回避するように自動的に姿勢パラメータを調整することが可能となる。
【0073】
(2) 前記干渉マップは、3次元座標系における軸と、当該軸回りの角度とを対応付けて、前記造形物が位置する領域が定義される、(1)に記載の制御装置。
【0074】
この構成によれば、各軸に応じた姿勢パラメータに対応した干渉マップを用いて、より精度良く干渉判定を行うことが可能となる。
【0075】
(3) 前記干渉マップは、前記造形物を積層造形する際のパスごとに生成される、(1)または(2)に記載の制御装置。
【0076】
この構成によれば、積層造形によって順番に形成されるビードの形状に対応して干渉判定を行うことが可能となる。
【0077】
(4) 前記調整手段は、干渉する位置における前記溶接トーチの姿勢のパラメータにオフセットを付与し、連続する位置の姿勢のパラメータにスムージング処理を行うことで、パラメータの調整を行う、(1)から(3)のいずれかに記載の制御装置。
【0078】
この構成によれば、急激な溶接トーチの姿勢の変更を抑制し、スムーズな積層造形を行うことが可能となる。
【0079】
(5) 前記形状情報に基づいて、前記積層造形のパスごとの前記造形物の形状を予測する予測手段(例えば、207)を更に有し、
前記生成手段は、前記予測手段により予測された前記造形物の形状に基づいて前記干渉マップを生成する、(1)から(4)のいずれかに記載の制御装置。
【0080】
この構成によれば、積層造形によって順番に形成されるビードの形状に対応して干渉判定を行うことが可能となる。特に、バスごとの形状情報が存在しない場合でもその形状を予測して干渉判定を行うことが可能となる。
【0081】
(6) 前記予測手段は更に、予測したパスごとの前記造形物の形状の外表面を、所定の曲面または曲線モデルによって補間する、(5)に記載の制御装置。
【0082】
この構成によれば、予測結果においていびつな形状や不連続な形状が生じるような場合でも、形状を安定化させ、精度のよい干渉判定が可能となる。
【0083】
(7) 溶接トーチ(例えば、102)を用いて積層造形を行うロボット(例えば、100)の制御方法であって、
造形物の形状情報と、前記溶接トーチのトーチ情報と、前記積層造形の際の前記溶接トーチの運棒情報とを取得する取得工程(例えば、S1101)と、
前記形状情報に基づいて、前記造形物が位置する領域を示す干渉マップを生成する生成工程(例えば、S1103)と、
前記干渉マップと、前記トーチ情報および前記運棒情報にて規定される前記溶接トーチの位置および姿勢とに基づいて、前記溶接トーチと前記造形物との干渉が生じる位置を特定する特定工程(例えば、S1105、S1106)と、
前記特定工程にて特定された位置における前記溶接トーチの姿勢のパラメータを調整する調整工程(例えば、S1107、S1108)と、
を有し、
前記干渉マップは、3次元座標系における複数の軸それぞれに対応して生成され、
前記特定工程において、前記複数の軸それぞれのいずれかにて干渉が生じている位置の姿勢のパラメータを、修正を行うパラメータとして特定する、制御方法。
【0084】
この構成によれば、積層造形における溶接トーチと造形物との干渉を回避するように自動的に姿勢パラメータを調整することが可能となる。
【0085】
(8) コンピュータ(例えば、200)に、
造形物の形状情報と、溶接トーチ(例えば、102)のトーチ情報と、積層造形の際の前記溶接トーチの運棒情報とを取得する取得工程(例えば、S1101)と、
前記形状情報に基づいて、前記造形物が位置する領域を示す干渉マップを生成する生成工程(例えば、S1103)と、
前記干渉マップと、前記トーチ情報および前記運棒情報にて規定される前記溶接トーチの位置および姿勢とに基づいて、前記溶接トーチと前記造形物との干渉が生じる位置を特定する特定工程(例えば、S1105、S1106)と、
前記特定工程にて特定された位置における前記溶接トーチの姿勢のパラメータを調整する調整工程(例えば、S1107、S1108)と、
を実行させ、
前記干渉マップは、3次元座標系における複数の軸それぞれに対応して生成され、
前記特定工程において、前記複数の軸それぞれのいずれかにて干渉が生じている位置の姿勢のパラメータを、修正を行うパラメータとして特定する、プログラム。
【0086】
この構成によれば、積層造形における溶接トーチと造形物との干渉を回避するように自動的に姿勢パラメータを調整することが可能となる。
【符号の説明】
【0087】
1…積層造形システム
100…積層造形装置
101…形状センサ
102…トーチ
103…ベース
104…溶接ロボット
106…ロボットコントローラ
107…電源
108…溶接ビード
200…情報処理装置
201…造形制御部
202…電源制御部
203…送給制御部
204…DB(データベース)管理部
205…形状データ取得部
206…教示データ取得部
207…パラメータ調整部
208…周辺装置制御部
W…積層造形物
M…溶加材