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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-16
(45)【発行日】2025-06-24
(54)【発明の名称】遠隔支援システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20250617BHJP
   B25J 13/00 20060101ALI20250617BHJP
   G05B 19/18 20060101ALI20250617BHJP
【FI】
B25J19/06
B25J13/00 Z
G05B19/18 X
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023526846
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 JP2021044254
(87)【国際公開番号】W WO2022259572
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2024-01-12
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2021/021884
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002103
【氏名又は名称】弁理士法人にじいろ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 修平
(72)【発明者】
【氏名】新井 智規
(72)【発明者】
【氏名】吉田 典道
(72)【発明者】
【氏名】加藤 盛剛
(72)【発明者】
【氏名】安部 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】森岡 昌宏
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-058982(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169144(WO,A1)
【文献】特開2001-142512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業機械を制御する制御装置と、
前記制御装置に接続される第1の情報処理端末と、
前記第1の情報処理端末を制御可能な一つ以上の第2の情報処理端末と、を具備し、
前記一つ以上の第2の情報処理端末から、前記制御装置の制御が可能であって、
前記制御装置は、前記産業機械に関する情報を保持し、
前記第1の情報処理端末は前記制御装置の制御権を有し、
前記第1の情報処理端末を介した前記産業機械に関する情報の修正、変更を支援するために、前記第1の情報処理端末に対するユーザのインストラクションに基づいて、前記一つ以上の第2の情報処理端末に対して前記第1の情報処理端末を操作する操作権が付与され、
前記操作権が付与された前記第2の情報処理端末を操作する他のユーザは、前記制御権の制御範囲において前記第1の情報処理端末を遠隔操作可能であり、前記操作権が付与された前記第2の情報処理端末に対する前記他のユーザのインストラクションに基づいて、前記第1の情報処理端末を介して、前記制御装置の制御が可能であって、
前記制御権は、前記産業機械の動力源による駆動を含む第1制御権と前記動力源による駆動を含まない第2制御権とを有し、
前記制御装置は、前記産業機械の専用の操作装置を備え、
前記操作装置は前記第1制御権を有し、
前記第1の情報処理端末は、前記ユーザのインストラクションに基づいて、前記第1制御権又は前記第2制御権を有する、遠隔支援システム。
【請求項2】
前記操作装置又は前記第1の情報処理端末による前記制御装置の制御が実施されている間、前記第1の情報処理端末又は前記操作装置からの前記制御装置の制御が不可である、請求項1記載の遠隔支援システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記操作装置又は前記第1の情報処理端末による前記制御装置が保持するプログラムの修正が完了したことを示す信号を受信したとき、前記修正されたプログラムを反映する、請求項1又は2に記載の遠隔支援システム。
【請求項4】
前記専用の操作装置及び前記第1の情報処理端末のうち一方は撮像手段を備え、
前記産業機械に関する情報の修正、変更を支援するために、前記撮像手段により撮影された画像又は動画が前記第2の情報処理端末に送信される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の遠隔支援システム。
【請求項5】
前記第1の情報処理端末または前記一つ以上の第2の情報処理端末には、前記専用の操作装置で表示可能な画面と同じ画面を表示することができる、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の遠隔支援システム。
【請求項6】
前記制御装置を複数有し、前記制御装置各々と前記第1の情報処理端末との間のデータ伝送を中継する中継器をさらに備え、
前記中継器は、前記第1の情報処理端末からの切替指令に基づいて、前記第1の情報処理端末に接続する前記制御装置を切り替える、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の遠隔支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製造工場へのロボットや工作機械などの高機能な産業機械の導入が進んでいる。例えば、ロボットには、専用の操作装置が備えられており、ユーザは操作装置を操作することで、直感的にロボットに動作を教示することができる。一方で、ロボットには、PC、タブレット等の汎用的な情報処理端末を接続できるようになっており、ユーザは、ロボットにPCを接続することにより、専用の操作装置を使用することなく、ロボットの設定データの確認や変更などを行うことができる。
【0003】
しかしながら、ロボットが停止したまま動かなくなってしまうなどの不測の事態に対して、現場にいる作業員だけでは対応できない場合がある。このような場合、ロボットメーカの担当者にメール、電話等で問い合わせ、担当者から指示された通りに現場の作業員がロボットを操作する。それでも解決できないとき、ロボットメーカの技術者が直接訪問し、ロボットを操作することとなる。ロボットメーカの技術者がすぐに訪問できない場合には、ロボットの停止期間が長くなってしまい、製造スケジュールの遅延が生じてしまう。これを解決するために、特許文献1には、ロボットのトラブル発生時におけるサービス員による支援を実現するための遠隔操作システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-142512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、遠隔操作システムでは、システムに浸入した第三者や遠隔操作者であるサービス員による、現場にいる作業員の意図しない操作が問題となる場合がある。例えば、現場の状況を把握できていない操作者によりロボットが動かされてしまい、現場にいる作業員や障害物にロボットが衝突してしまう可能性がある。また、遠隔操作により操作されている情報処理端末のデータに不正にアクセスされてしまう可能性がある。このように、遠隔操作を行うサービス員やネットワークへの侵入者に対する安全性や、遠隔操作時の現場の安全性の観点では改善の余地があり、より安全性の高い遠隔支援システムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る遠隔支援システムは、産業機械を制御する制御装置と、制御装置に接続される第1の情報処理端末と、第1の情報処理端末を制御可能な一つ以上の第2の情報処理端末と、を具備する。一つ以上の第2の情報処理端末から、制御装置の制御が可能である。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、安全性の高い遠隔支援を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係る遠隔支援システムの一例を示す図である。
図2図2は、図1の遠隔支援システムのブロック構成図である。
図3図3は、図1のユーザ端末に表示される制御装置の制御モードの選択画面である。
図4図4は、図1のユーザ端末に表示される技術者端末の接続モードの選択画面である。
図5図5は、図1の遠隔支援システムを利用した遠隔支援サービスの一例を示す図である。
図6図6は、図1の遠隔支援システムを利用した遠隔支援サービスの他の例を示す図である。
図7図7は、図1の遠隔支援システムを利用した遠隔支援サービスの他の例を示す図である。
図8図8は、本実施形態に係る遠隔支援システムの他の例を示す図である。
図9図9は、本実施形態に係る遠隔支援システムの第1変形例を示す図である。
図10図10は、本実施形態に係る遠隔支援システムの第2変形例を示す図である。
図11図11は、本実施形態に係る遠隔支援システムの第3変形例を示す図である。
図12図12は、本実施形態に係る遠隔支援システムの第4変形例を示す図である。
図13図13は、本実施形態に係る遠隔支援システムの第5変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る遠隔支援システムを説明する。以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0010】
図1に示すように、本実施形態に係る遠隔支援システム1は、工場に設置されたロボットアーム機構10と、ワークWを撮影するカメラ20と、ロボットアーム機構10及びカメラ20を制御する制御装置40と、ロボットアーム機構10を操作するための専用の操作ペンダント30と、工場の作業員(ユーザ)が操作するPC、タブレット等の第1の情報処理端末50(ユーザ端末50)と、遠隔地にいるロボットメーカの技術者やロボットメーカから委託されたメンテナンス会社の技術者が操作するPC、タブレット等の第2の情報処理端末60(技術者端末60)と、を有する。典型的には、操作ペンダント30とユーザ端末50とは、制御装置40に対して有線ケーブルで接続されている。技術者端末60は、ユーザ端末50に対してインターネット等の外部ネットワーク100を介してデータ通信可能に接続されている。操作ペンダント30とユーザ端末50とは、制御装置40を含むローカルエリアネットワークを介して有線又は無線によりデータ通信可能に接続されていてもよい。ロボットアーム機構10とカメラ20と制御装置40とはロボットシステムを構成する。
【0011】
図2に示すように、制御装置40には、各インターフェース46,47,48、49を介して、ロボットアーム機構10、カメラ20、操作ペンダント30、及びユーザ端末50が接続されている。制御装置40はプロセッサ41を有する。プロセッサ41は、CPU(Central Processing Unit)及びGPU(Graphics Processing Unit)等により構成され、システムバスに接続される各デバイスやコントローラを統括的に制御する。ROM42には、プロセッサ41により実行されるBIOS(Basic Input Output System)、オペレーティングシステムプログラム(OS)等が記憶される。RAM43は、プロセッサ41の主メモリ、ワークエリア等として機能する。記憶装置44には、各種プログラム、各種設定情報などが記憶されている。具体的には、記憶装置44には、ロボットシステムに関する情報が記憶されている。ロボットシステムに関する情報は、ロボットアーム機構10及びカメラ20に所定のタスクを実行させるためのタスクプログラム、ロボットアーム機構10の設定情報、及びカメラ20の設定情報を含む。ロボットアーム機構10の設定情報は、例えば、ロボットアーム機構10の動作速度、加速度、動作範囲などのロボットアーム機構10の制御に関わる様々なパラメータ情報、機能のオンオフ情報等を含む。カメラ20の設定情報は、撮影範囲、撮影速度等を含む。また、記憶装置44には、外部の端末の操作によりロボットアーム機構10及びカメラ20を制御するための制御用アプリケーションが記憶されている。ここでの制御とは、ロボットアーム機構10の各関節部のモータの動作制御、タスクプログラムの修正、及び設定情報の変更を含む。プロセッサ41により制御用アプリケーションが実行されることで、制御装置40は、制御装置40にアクセスしたユーザ端末50に制御用ページを提供することができ、制御用ページを介してユーザ端末50から入力されたデータに基づいて、タスクプログラムの修正、設定情報の変更等のロボットシステムに関するデータの修正、変更をすることができる。
【0012】
ユーザ端末50は、制御装置用インターフェース59を介して制御装置40に接続される。ユーザ端末50はプロセッサ51を有する。プロセッサ51は、CPU(Central Processing Unit)及びGPU(Graphics Processing Unit)等により構成され、システムバスに接続される操作装置55、表示装置56などのデバイスやコントローラを統括的に制御する。ROM52には、プロセッサ51により実行されるBIOS(Basic Input Output System)、オペレーティングシステムプログラム(OS)等が記憶される。RAM53は、プロセッサ51の主メモリ、ワークエリア等として機能する。記憶装置54には、各種プログラム、各種設定情報などが記憶されている。
【0013】
具体的には、記憶装置54には、制御装置40にアクセスするためのアクセス用アプリケーションが記憶されている。アクセス用アプリケーションとして、ブラウザなどの既存のアプリケーションを使用することができる。ユーザ端末50においてブラウザを起動し、制御対象の制御装置40を指定することで、ブラウザに制御装置40の制御用ページを表示することができる。ユーザは、ユーザ端末50に表示された制御用ページを介して制御装置40を制御し、タスクプログラムの修正、設定情報の変更等の制御装置40が保持するデータを更新することができる。制御装置40により提供される制御用ページにアクセスすることができるのであれば、アクセス用アプリケーションはブラウザに限定されることはなく、専用のアプリケーションであってもよい。
【0014】
記憶装置54には、遠隔支援サービスを利用するための遠隔支援アプリケーションが記憶されている。遠隔支援アプリケーションとして、Skypeなどの既存のアプリケーションを使用することができる。ユーザは、Skypeを起動し、所定のインストラクションを行うことで、技術者と音声通話またはビデオ通話を行うことができる。さらに、技術者端末60に対して、ユーザ端末50の操作権を譲渡したり、ユーザ端末50の表示画面の閲覧権を譲渡することができる。技術者端末60に対してユーザ端末50の操作権や閲覧権を譲渡できるのであれば、遠隔支援アプリケーションは、Windowsに内蔵されているリモートデスクトップ等であってもよい。また、遠隔支援アプリケーションは、操作権又は閲覧権の一方のみを譲渡できるようなソフトウェアであってもよい。
【0015】
図3は、制御装置40にアクセスしたユーザ端末50に表示される制御モードの選択画面の一例を示している。制御モードの選択画面は、制御用ページのトップページに対応する。本実施形態に係る遠隔支援システム1は、制御装置40の制御範囲が異なる3つの制御モードを有する。ここでは、図3に示すように、制御モードとして、“制御(モータ動作含む)”、“制御(モータ動作含まない)”、及び“モニタ”の3つのモードが設けられている。
【0016】
制御モードとして“制御(モータ動作含む)”が選択されると、ロボットアーム機構10のモータの動作制御が可能な制御装置40の制御権(第1制御権)がユーザ端末50に付与される。ユーザ端末50には、第1制御権に対応する制御用ページが表示される。第1制御権に対応する制御用ページでは、以下のような作業(制御)を行うことができる。
【0017】
・ロボットシステムに発生している異常や警告などのアラーム内容の確認
・ロボットアーム機構10及びカメラ20の入出力状態の確認
・ロボットアーム機構10及びカメラ20に関連する各種設定情報の確認、変更、及び機能の有効無効の切替
・タスクプログラム(ロボット制御プログラム及びカメラ20制御プログラム)の確認及び変更
・制御装置40のバックアップ取得(タスクプログラム、設定情報、制御装置40の内部メモリのイメージファイル保存)
・ロボットアーム機構10のモータの動作制御
制御モードとして、“制御(モータ動作含まない)”が選択されると、モータの動作制御が不可な制御装置40の制御権(第2制御権)がユーザ端末50に付与される。ユーザ端末50には、第2制御権に対応する制御用ページが表示される。第2制御権に対応する制御用ページでは、第1制御権で許可されている制御のうち、「ロボットアーム機構10のモータの動作制御」以外の作業(制御)を行うことができる。
【0018】
制御モードとして“モニタ”が選択されると、操作ペンダント30の閲覧権がユーザ端末50に付与される。閲覧権では、操作ペンダント30の表示画面の閲覧のみが許可されている。ユーザ端末50に閲覧権が付与されると、ユーザ端末50には操作ペンダント30の表示画面と同じ画面が表示される。ユーザは、ユーザ端末50に表示された操作ペンダント30の表示画面を介して、操作ペンダント30の操作内容を把握することができる。
【0019】
制御装置40に接続されている操作ペンダント30は、制御装置40の制御範囲の限定を受けない。本実施形態では、操作ペンダント30は、上記の第1制御権が付与されているものとみなす事ができる。
【0020】
図4は、ユーザ端末50において、遠隔操作アプリケーションが実行されたときに表示される遠隔支援画面の一例を示している。遠隔支援画面には、ユーザ端末50に搭載されたカメラにより撮影された動画像を表示する領域と、技術者端末60に搭載されたカメラにより撮影された動画像を表示する領域と、リモート操作ボタンと、画面共有ボタンとが表示されている。
【0021】
ユーザによりリモート操作ボタンがクリックされたことを契機に、技術者端末60との接続モードがリモート操作に設定され、ユーザ端末50を操作する権限(操作権)が技術者側に譲渡される。技術者は、技術者端末60のマウス、キーボード等の操作装置を操作することで、ユーザ端末50を遠隔操作することができる。
【0022】
ユーザにより画面共有ボタンがクリックされたことを契機に、技術者端末60との接続モードが画面共有に設定され、ユーザ端末50の表示画面を閲覧する権限(ユーザ端末50の閲覧権)が技術者側に譲渡される。技術者は、技術者端末60の表示画面に表示されたユーザ端末50の表示画面を閲覧することで、ユーザによるユーザ端末50の操作状況を確認することができる。
【0023】
本実施形態に係る遠隔支援システム1を利用した遠隔支援サービスについて、図5図6図7を参照して説明する。
【0024】
図5は、ユーザが、ユーザ端末50で制御装置40の制御モードを選択する前に、ユーザ端末50の操作権を技術者側に譲渡する場合を示している。図5に示すように、ロボットアーム機構10の動作が止まってしまうなどの不具合が生じたとき、ユーザは、メール、電話、チャット等の手段を用い、技術者に問い合わせを行う。技術者は、問い合わせを受け、ユーザ端末50に遠隔支援サービスへの招待メールを送信する。受信した招待メールの本文に含まれるURLがユーザによりクリックされると、ユーザ端末50で遠隔支援アプリケーションが起動し、図4に示すような遠隔支援画面が表示される。ユーザは遠隔支援画面にて、不具合の状況、解決策を技術者に相談することができる。
【0025】
ユーザは、ユーザ自身の操作で解決できそうにないとき、又は技術者からのリモート操作の申し出を承諾したとき、遠隔支援画面上のリモート操作ボタンをクリックする。それにより、ユーザ端末50の操作権が技術者側に譲渡され、技術者は、技術者端末60を介してユーザ端末50を遠隔操作することができる。
【0026】
技術者は、ユーザ端末50を遠隔操作してアクセス用アプリケーションを起動する。ユーザ端末50には図3に示すような制御装置40の制御モードの選択画面が表示される。技術者は、ユーザ端末50を遠隔操作して、制御モードとして、“制御(モータ動作を含まない)”をクリックする。それにより、ユーザ端末50には第2制御権が付与される。技術者は、ユーザ端末50を遠隔操作して、制御装置40にアクセスし、第2制御権により規定された範囲で操作を行い、ロボットシステムに生じた不具合の原因を調査することができる。技術者は、不具合の原因が分かれば、設定情報の変更、タスクプログラムの修正などの修正、変更作業を行う。技術者による修正、変更作業が完了した後、ユーザは、実際にロボットシステムを動作させ、不具合が解消したことを確認する。
【0027】
図6は、ユーザ端末50の閲覧権を技術者に譲渡する場合を示している。ユーザは、技術者にユーザ端末50を操作されたくない、又は技術者からの画面共有の申し出を承諾したとき、遠隔支援画面上の画面共有ボタンをクリックする。それにより、ユーザ端末50の閲覧権が技術者側に譲渡され、技術者は、技術者端末60を介してユーザ端末50の表示画面を閲覧し、ユーザ端末50のユーザ操作を確認することができる。
【0028】
ユーザは、技術者からの指示に従って、ユーザ端末50を操作してアクセス用アプリケーションを起動する。ユーザ端末50には、図3に示すような、制御装置40の制御モードの選択画面が表示される。ユーザは、技術者からの指示に従って、制御モードとして、“制御(モータ動作を含む)”をクリックする。それにより、ユーザ端末50には第1制御権が付与される。ユーザは、ユーザ端末50を操作して、制御装置40にアクセスし、第1制御権により規定された範囲で操作を行うことができる。技術者は、ユーザに対してユーザ端末50の操作を指示しながら、または共有画面上のマーキング等による指示を行いながら、ロボットシステムに発生した不具合の原因を調査する。技術者は、不具合の原因が分かれば、パラメータの変更、プログラムの修正などをユーザに指示し、ユーザは、技術者からの修正、変更指示に従ってユーザ端末50を操作する。修正、変更作業が完了した後、ユーザは、実際にロボットシステムを動作させ、不具合が解消したことを確認する。
【0029】
図7は、ユーザが、ユーザ端末50を操作してアクセス用アプリケーションを起動し、制御モードを選択した後に、ユーザ端末50の操作権を技術者側に譲渡する場合を示している。図7に示すように、ユーザは、遠隔支援画面上のリモート操作ボタンをクリックする前に、アクセス用アプリケーションを起動し、ユーザ端末50に表示された制御モードの選択画面(図3参照)で、制御モードとして、“制御(モータ動作を含まない)”をクリックする。それにより、ユーザ端末50には第2制御権が付与される。制御モードを選択した後、ユーザは、遠隔支援画面上のリモート操作ボタンをクリックする。それにより、ユーザ端末50の操作権が技術者側に譲渡される。技術者は、ユーザ端末50を遠隔操作して、制御装置40にアクセスし、第2制御権により規定された範囲で操作を行い、ロボットシステムに生じた不具合の原因を調査することができる。技術者が、ユーザ端末50を遠隔操作して、不具合を解消し、ユーザが実際にロボットシステムを動作させて確認するまでの工程は、図5で説明したのと同様である。
【0030】
本実施形態に係る遠隔支援システム1によれば、制御装置40ではなく、制御装置40に接続されたユーザ端末50が外部のネットワーク100を介して技術者端末60に接続される。外部のネットワーク100に対するセキュリティレベルは、主にユーザ端末50に依存する。そのため、ユーザ端末50に十分なセキュリティ機能があれば、制御装置40は、外部のネットワーク100に接続するための特別なセキュリティ機能を有する必要はなく、遠隔支援サービスを利用することに伴う制御装置40への第三者の侵入を防止し、制御装置40から外部への情報漏洩のリスクを抑えることができる。それにより、遠隔支援サービスを利用する障壁を低くすることができる。
【0031】
また、技術者側にユーザ端末50の操作権や閲覧権を譲渡する工程は、一般的な既存のアプリケーションの機能を利用することができるため、遠隔支援サービスを利用するためだけの特別なアプリケーションは不要である。そのため、上記のような特別なアプリケーションを開発するコストがかからない。既存のアプリケーションを利用できるため、ユーザ端末50を技術者端末60に接続する設定が簡単であり、ユーザが遠隔支援サービスを利用する障壁はかなり低い。
【0032】
また、ユーザの承諾の上、ユーザ端末50の操作権が技術者側に譲渡されるため、技術者側が強制的にユーザ端末50の操作権を取得することはない。また、ユーザは、技術者によってユーザ端末50が遠隔操作される様子を、ユーザ端末50の表示画面で閲覧することができる。ユーザ監視下で、技術者によるユーザ端末50の遠隔操作がなされるため、技術者によってユーザ端末50が不正に操作されてしまう事態を回避することができる。
【0033】
ユーザは、技術者によってユーザ端末50が不正に操作されることが心配であれば、図6を参照して説明したように、ユーザ端末50の操作権を技術者側に譲渡するのではなく、ユーザ端末50の閲覧権を技術者側に譲渡し、技術者からの指示に従って、自らがユーザ端末50を操作すればよい。また、図7を参照して説明したように、ユーザ端末50の操作権を技術者側に譲渡する前に、アクセス用アプリケーションを起動し、制御モードを選択しておけばよい。それにより、技術者がユーザ端末50を遠隔操作できるようになった時点で、既に制御モードが選択された状態である。技術者は、ユーザにより選択された制御モードで規定された制御(操作)しか行うことができない。そのため、ユーザが意図した制御範囲外の操作が制御装置40に入力される心配はない。技術者は、制御モードが選択された後の制御用ページを遠隔操作するだけとなるため、技術者によるユーザ端末50のトップ画面を閲覧する機会、ユーザ端末50にインストールされている他のアプリケーションへのアクセス機会を少なくすることができ、技術者に対するユーザ端末50のセキュリティを担保することができる。
【0034】
本実施形態に係る遠隔支援システム1は、制御装置40の制御範囲が異なる3つの制御モードを有し、ユーザ端末50と技術者端末60との間の接続に関する2つの接続モードを有する。各モードの選択操作は、ユーザ端末50上で行うことができる。したがって、技術者側にユーザ端末50の操作権を譲渡する前に、予め、制御モードを選択しておけば、技術者は、制御用ページにアクセスしても、その制御モードで許可された制御(操作)しか行うことができない。ユーザは、ユーザ端末50を技術者に遠隔操作されたくないのであれば、ユーザ端末50の閲覧権を技術者側に譲渡し、技術者の指示を仰ぎながら自らユーザ端末50を操作すればよい。このように、ユーザは、選択する制御モードの種類によって、技術者による制御装置40の制御範囲を実質的に制限することができる。また、ユーザは、制御モードを選択するタイミング、選択する制御モードの種類、接続モードを選択するタイミング、選択する接続モードの種類により、技術者に対するセキュリティレベルを任意に設定することができる。それにより、技術者による制御装置40に対する不正操作とユーザ端末50に対する不正操作との両方を防ぐことができる。
【0035】
ユーザにより選択可能な制御モードには、モータ動作を含まない制御モードが含まれる。技術者によるユーザ端末50の遠隔操作中、技術者は現場にはいないため、ロボットアーム機構10の周囲の状況を確認しにくい。ロボットアーム機構10の周囲に作業員や障害物がある状況で、ロボットアーム機構10を動かしてしまえば、作業員や障害物にロボットアーム機構10が衝突してしまう。したがって、モータ動作を含まない制御モードがあることで、ユーザが意図しないタイミングで、技術者によりモータが駆動され、ロボットアーム機構10が動いてしまう事態を回避することができる。それにより、現場にいない技術者による遠隔支援サービスを安心して利用することができる。
【0036】
本実施形態にかかる遠隔支援システム1では、ユーザ端末50は単一の制御装置40に接続されていた。しかしながら、ユーザ端末50が接続される制御装置40は複数であってもよい。図8に示す遠隔支援システム2は、複数のロボットシステム3(3a、3b,3c)を有する。ユーザ端末50は、中継器90を介して複数の制御装置40(40a、40b,40c)に接続される。ユーザは、ユーザ端末50で、アクセス用アプリケーションを起動し、制御対象の制御装置を指定することで、中継器90を介してユーザ端末50に接続される制御装置が切り替えられ、指定した制御装置にアクセスすることができる。このように、遠隔支援システムは制御装置40の数が複数であっても、単一の制御装置40を備える構成と同様の効果を奏する。
【0037】
本実施形態に係る遠隔支援システム1は、制御装置40の制御モードとして、“制御(モータ動作含む)”、“制御(モータ動作含まない)”、及び“モニタ”の3つのモードを有し、ユーザ端末50の操作により選択された制御モードに応じて、ユーザ端末50による制御装置40の制御範囲が限定される。それにより、ユーザ端末50を遠隔操作する技術者による制御装置40の制御範囲を実質的に限定することができた。しかしながら、ユーザ端末50による制御装置40の制御範囲を限定することができるのであれば、制御モードはこれらに限定されない。制御モードは、これらのうち1つだけであってもよいし、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。また、本実施形態では、制御モードは予め決められていたが、ユーザ端末50において、制御モードを設定できるようにしてもよい。それにより、ユーザ端末を遠隔操作する技術者によって、ユーザの意図に反した操作が行われてしまうリスクを低減できる。
【0038】
本実施形態に係る遠隔支援システム1では、制御装置40に操作ペンダント30とユーザ端末50との2つの入力装置が接続されている。2つの入力装置からの入力を受け付けた場合、修正、変更の作業が煩雑となってしまう可能性がある。また、同時に動作指令の入力を受け付けた場合、思わぬ動作をしてしまう可能性がある。そのため、制御装置40は、一方の入力装置から制御装置40に入力されている間、他方の入力装置からの入力を不可とするように構成し、修正、変更の操作を受け付ける入力装置は1つに限定することが望ましい。例えば、制御装置40は、制御装置40に操作ペンダント30がアクセスしている間、ユーザ端末50による制御装置40へのアクセスを拒否する。
【0039】
操作ペンダント30による制御装置40の制御モードは、ユーザ端末50において選択される制御モードに応じて自動的に設定されてもよい。例えば、ユーザ端末50においてモータ動作を含む制御モードが選択された場合に、操作ペンダント30にはモータ動作を含まない制御モードが自動的に設定される。それにより、危険性の高いロボットの動作を、一方の入力装置からのみ受け付けることができる。
【0040】
また、修正、変更中に接続が切れてしまい、修正、変更中のデータが中途半端に反映されてしまう事態や修正、変更中のデータが破損する事態を回避するために、修正、変更が完了した時点で、修正、変更したデータを反映することが望ましい。そのため、制御装置40は、修正、変更の操作が開始されると、その元となるデータをコピーしたものに対して修正、変更を受け付け、修正、変更が完了したことを契機に、元となるデータに対して修正、変更が完了したデータを上書きするように構成される。
【0041】
図5乃至図7では、ユーザにより、ユーザ端末50で制御装置40を操作できる制御モードが選択される例を説明した。しかしながら、ユーザは、操作ペンダント30の操作を技術者に見てもらいたい、現場にいる作業員による操作ペンダント30の操作を技術者とともに閲覧したい、といった場合には、制御モードとして“モニタ”を選択すればよい。制御モードとして“モニタ”が選択され、ユーザ端末50の閲覧権又は操作権が技術者端末60に付与されているとき、技術者端末60には、操作ペンダント30の表示画面と同じ画面が表示される。技術者端末60に表示された操作ペンダント30の画面を閲覧する技術者の指示を受けながら、現場にいる作業員は操作ペンダント30を操作することができる。本実施形態では、操作ペンダント30が制御装置40に接続されていたが、ユーザ端末50を介して制御装置40を制御できるため、操作ペンダント30は制御装置40に必ずしも接続されていなくてもよい。
技術者端末60を操作する技術者によるユーザ端末50の遠隔操作によってシステムの不具合を解消するにあたり、どのような状況でシステムが停止してしまっているのか、どのようなシステムのエラー表示がなされているのかなどの現場の状況を実際に技術者が目視で確認できるように、ユーザ端末50にはカメラ等の撮像手段51が装備される(図1参照)。撮像手段51により撮影された画像又は動画は、ユーザ端末50の遠隔支援アプリケーションにより技術者端末60に送信される。もちろん、他のアプリケーションにより技術者端末60に送信されてもよい。技術者は、ユーザに対して目視で確認したい箇所を要望し、ユーザ端末50に装備された撮像手段51で撮影された画像又は動画を確認しながらシステムの不具合に対応することができる。それにより、技術者による支援作業の作業性を向上できる。もちろん、撮像手段51は、ユーザ端末50とは別体で構成されてもよいし、操作ペンダント30に装備されてもよい。
また、ロボットアーム機構10などの産業機械の待機中、動作中などの音を実際に技術者が聞けるように、ユーザ端末50にはマイク等の録音手段(図示しない)が装備されてもよい。録音手段により録音された音データは、ユーザ端末50の遠隔支援アプリケーションにより技術者端末60に送信される。もちろん、他のアプリケーションにより技術者端末60に送信されてもよい。技術者は、ユーザ端末50に装備された録音手段で録音された音を確認しながらシステムの不具合に対応することができる。それにより、技術者による支援作業の作業性を向上できる。もちろん、録音手段は、ユーザ端末50とは別体で構成されてもよいし、操作ペンダント30に装備されてもよい。
【0042】
顧客のトラブルに対して、複数の技術者で対応する場合を想定し、ユーザ端末50に接続される技術者端末60は複数であってもよい。図9に示すように、ユーザ端末50に2つの技術者端末60(60a、60b)が接続されている。ユーザ端末50の遠隔操作が煩雑にならないように、2つの技術者端末60a,60bのうち一方の技術者端末60aのみにユーザ端末50の操作権が付与可能となるように構成することが望ましい。例えば、ユーザ端末50に表示された遠隔支援画面上のユーザ操作によって、一方の技術者端末60aを指定した上でリモート操作ボタンがクリックされたことに基づいて、技術者端末60aに操作権を付与することができる。このとき、他方の技術者端末60bには、自動的に閲覧権が付与される。他方の技術者端末60bでは、技術者端末60aによってユーザ端末50が遠隔操作される様子を確認することができる。それにより、複数の技術者で情報を共有し、メンテナンス、不具合に効率良く対応することができる。もちろん、ユーザ端末50に表示された遠隔支援画面上のユーザ操作によって、他方の技術者端末60bを指定した上で画面共有ボタンがクリックされたことに基づいて、他方の技術者端末60bに閲覧権を付与するように構成してもよい。3台以上の技術者端末60がユーザ端末50に接続されていた場合も同様に、3台以上の技術者端末60のうち一の技術者端末60にのみ操作権が付与可能となるように構成することが望ましい。
【0043】
現場で作業するユーザが複数である場合を想定して、制御装置40に接続されるユーザ端末50は複数であってもよい。また、ユーザ端末50は、PCではなくスマートフォン、タブレット等の情報処理端末であってもよい。図10に示すように、制御装置40に2つのユーザ端末50(50a、50b)がケーブル等で直接的に接続されている。もちろん、制御装置40を含む内部ネットワークを介して無線によりユーザ端末50が制御装置40に接続されてもよい。制御装置40の制御操作が煩雑にならないように、2つのユーザ端末50a,50bのうち一方のユーザ端末50aのみが制御装置40を制御できるように構成することが望ましい。例えば、ユーザ端末50aで制御用ページにアクセスしている間、ユーザ端末50bで制御用ページにアクセスできない、又はアクセスできても制御用ページ上の操作ができないように構成される。もちろん、制御装置40に3台以上のユーザ端末50が接続されるのであれば、そのうちの一のユーザ端末50のみが制御装置40を制御できるように構成することが望ましい。しかしながら、制御装置40に複数のユーザ端末50が接続された場合において、複数のユーザ端末50で制御装置40を同時に制御することを否定するものではない。
【0044】
本実施形態では、現場にいるユーザが、制御装置40に対して有線ケーブルでユーザ端末50を接続し、遠隔支援を受けることを想定している。しかしながら、ユーザ自身が遠隔地にいる場合もあり得る。そのような場合を想定し、図11に示すように、制御装置40がルータなどのネットワーク機器104に有線又はローカルエリアネットワークを介して無線で接続され、インターネット等の外部ネットワーク100を介して、ユーザ端末50が制御装置40にアクセスできるように構成してもよい。
【0045】
本実施形態では、制御対象がロボットアーム機構10及びカメラ20であった。しかしながら、制御対象は、工作機械、射出成形機、その他のCNC(Computer Numerical Control)制御機械などの産業機械とすることができる。ここでの、工作機械は切削加工機、放電加工機、レーザ加工機、超精密加工機などを含む。またCNC制御機械は、鍛圧機械、搬送装置、ストッカ、布の裁断機などを含む。もちろん、制御対象は、これら産業機械のうち1つであってもよいし、2つ以上が組み合わされたシステムであってもよい。
【0046】
図12に示すように、ワークを切削により加工する切削加工機70と、切削加工機70に接近した位置に配置され、加工前のワークを切削加工機70に供給し、加工後のワークを切削加工機70から搬出するロボットアーム機構10とを有する加工システムにおいて、切削加工機70とロボットアーム機構10とが制御対象となる。ロボットアーム機構10を制御する制御装置40に対してユーザ端末50aが有線ケーブルで接続され、ユーザ端末50aに対して外部ネットワーク100を介して技術者端末60aがデータ通信可能に接続される。切削加工機70を制御する切削加工機制御装置80に対してユーザ端末50bが有線ケーブルで接続され、ユーザ端末50bに対して外部ネットワーク100を介して技術者端末60bがデータ通信可能に接続される。
【0047】
ユーザ端末50aによる制御装置40(ロボットアーム機構10)の制御モードと、ユーザ端末50bによる切削加工機制御装置80(切削加工機70)の制御モードとは、ユーザ端末50a、50bの操作により個別に選択することができる。ユーザは、ユーザ端末50aの操作により技術者端末60aに対して、ユーザ端末50aの操作権又は閲覧権を譲渡することができ、ユーザ端末50bの操作により技術者端末60bに対して、ユーザ端末50bの操作権又は閲覧権を譲渡することができる。
【0048】
例えば、ユーザは、ユーザ端末50aによるロボットアーム機構10の制御モードとして“制御(モータ動作含む)”を選択し、ユーザ端末50bによる切削加工機70の制御モードとして“制御(モータ動作含まない)”を選択するなど、制御対象である複数の産業機械に応じて、現場の状況に応じて、制御モードを選択することができる。また、ユーザは、ユーザ端末50a、50bを操作して、技術者端末60aにユーザ端末50aの操作権を付与し、技術者端末60bにユーザ端末50bの閲覧権を付与するなど、制御対象の産業機械に応じて、また、ユーザ端末50a、50bを操作するユーザの熟練度に応じて支援モードを選択することができる。それにより、現場の安全性と遠隔操作による設定データの修正、変更作業の作業性とを両立することができる。ロボットメーカやメンテナンス会社の技術者は、ユーザ端末50の遠隔操作により、加工システムに関する情報の修正、変更を行うことができる。加工システムに関する情報は、ロボットアーム機構10に関する情報だけではなく切削加工機70に関する情報を含む。切削加工機70に関する情報は、切削加工機70のタスクプログラム、設定情報を含む。
【0049】
図12では、制御対象の2つの産業機械に対して2つのユーザ端末がそれぞれ接続されていた。しかしながら、1つのユーザ端末で制御対象の2つの産業機械を制御するように構成してもよい。例えば、制御対象の2つの産業機械が互いに通信可能に接続され、一方の産業機械に対してユーザ端末が接続され、一方の産業機械を経由して他の産業機械を制御するように構成することができる。もちろん、単一のユーザ端末に対して制御対象の2つの産業機械がデータ通信可能に接続され、単一のユーザ端末により2つの産業機械それぞれが制御可能に構成することができる。
【0050】
図13に示すように、ロボットアーム機構10を制御するロボット制御装置40と切削加工機70を制御する切削加工機制御装置80とがデータ通信可能に接続され、ユーザ端末50は切削加工機制御装置80に有線ケーブルで接続される。ユーザ端末50に対してインターネット等の外部ネットワーク100を介して技術者端末60がデータ通信可能に接続される。ユーザ端末50はロボット制御装置40に有線ケーブルで接続されてもよい。
【0051】
ユーザ端末50によるロボット制御装置50(ロボットアーム機構10)の制御モードと、ユーザ端末50bによる切削加工機制御装置80(切削加工機70)の制御モードとは、ユーザ端末50の操作により個別に設定できるようにしてもよいし、一括して設定できるようにしてもよい。個別に設定できることで、現場の物理的な安全性とデータ管理上の安全性を両立することができる。一括して設定できることで、制御モードの選択操作を簡単に行うことができるため、データの修正、変更作業の作業性を向上することができる。
【0052】
本実施形態に係る遠隔支援システム1は、ロボットアーム機構10及びカメラ20を制御する制御装置40と、制御装置40に接続されるユーザ端末50と、ユーザ端末50を遠隔操作可能な少なくとも一つの技術者端末60とを備え、技術者端末60からユーザ端末50を遠隔操作することにより、制御装置40が保持する情報の修正、変更ができることを1つの特徴としている。それにより、遠隔地にいる技術者は、現場を訪問することなく、ロボットアーム機構10及びカメラ20を含むようなシステムの不具合に対応することができる。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0054】
1…遠隔支援システム、10…ロボットアーム機構、20…カメラ、30…操作ペンダント、40…制御装置、50…第1の情報処理端末(ユーザ端末)、51…撮像手段、60…第2の情報処理端末(技術者端末)、100…ネットワーク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13