(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-16
(45)【発行日】2025-06-24
(54)【発明の名称】防汚塗料組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 183/04 20060101AFI20250617BHJP
C09D 5/16 20060101ALI20250617BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20250617BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20250617BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20250617BHJP
C09D 7/62 20180101ALI20250617BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20250617BHJP
【FI】
C09D183/04
C09D5/16
C09D7/61
C09D7/65
C09D7/63
C09D7/62
B05D7/24 302Y
(21)【出願番号】P 2023551612
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2022036207
(87)【国際公開番号】W WO2023054487
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2024-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2021158831
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022065214
(32)【優先日】2022-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田代 真一
(72)【発明者】
【氏名】青井 敦史
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-143331(JP,A)
【文献】特表2016-509546(JP,A)
【文献】特開2012-158701(JP,A)
【文献】特開2020-193282(JP,A)
【文献】国際公開第2018/186167(WO,A1)
【文献】特表平8-511035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 183/04
C09D 5/16
C09D 7/61
C09D 7/65
C09D 7/63
C09D 7/62
B05D 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)及び(2)から選択される少なくとも1つの硬化性シリコーン(A)、及び滑り剤(C)を含有する、防汚塗料組成物。
(1)両末端にメチルイソブチルケトオキシム基を有するポリオルガノシロキサン
(2)両末端にヒドロキシ基を有するポリオルガノシロキサン、及び下記式(I)で表されるオルガノシラン
【化1】
(式(I)中、R
1は置換又は非置換の炭素数1以上10以下の炭化水素基を表し、Xはメチルイソブチルケトオキシム基であり、aは0又は1である。)
【請求項2】
前記硬化性シリコーン(A)が、両末端にメチルイソブチルケトオキシム基を有するポリオルガノシロキサンを含有する、請求項1に記載の防汚塗料組成物。
【請求項3】
前記ポリオルガノシロキサンが、ポリジメチルシロキサン構造を有する、請求項
1に記載の防汚塗料組成物。
【請求項4】
疎水性シリカ粒子(B1)を更に含有する、請求項
1に記載の防汚塗料組成物。
【請求項5】
親水性シリカ粒子(B2)を更に含有する、請求項
1に記載の防汚塗料組成物。
【請求項6】
前記滑り剤(C)が、シリコーンオイル、パラフィンオイル、油脂、親水性基を有するアクリル系樹脂、及びポリアルキレングリコールよりなる群から選択される1種以上である、請求項
1に記載の防汚塗料組成物。
【請求項7】
前記シリコーンオイルが、フェニル変性シリコーンオイル及びポリエーテル変性シリコーンオイルから選択される1種以上である、請求項6に記載の防汚塗料組成物。
【請求項8】
防汚塗料組成物の固形分中の着色顔料(D)の含有量が1質量%以下である、請求項
1に記載の防汚塗料組成物。
【請求項9】
ポリオルガノシロキサン100質量部に対する滑り剤(C)の含有量が30質量部以上200質量部以下である、請求項8に記載の防汚塗料組成物。
【請求項10】
防汚塗料組成物の固形分中の硬化性シリコーン(A)の含有量が40質量%以上90質量%以下である、請求項
1に記載の防汚塗料組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の防汚塗料組成物から形成された防汚塗膜。
【請求項12】
基材と、前記基材表面に設けられた請求項11に記載の防汚塗膜とを有する、防汚塗膜付き基材。
【請求項13】
前記基材が、船舶、水中構造物、漁業資材及び給排水管から選択される少なくとも1種である、請求項12に記載の防汚塗膜付き基材。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか1項に記載の防汚塗料組成物を基材に塗布するか、又は請求項1~10のいずれか1項に記載の防汚塗料組成物に基材を含浸する工程を有する、防汚塗膜付き基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚塗料組成物、これを用いた防汚塗膜、並びに防汚塗膜付き基材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オルガノポリシロキサン系防汚塗膜は、船舶、水中構造物、漁業資材等への水生生物の付着を防止するために広く用いられている。該防汚塗膜は、その低表面自由エネルギー、低弾性率等の特性により、フジツボ、イガイ等のマクロ生物の付着や定着を防止することができる上、従来の環境中に塗膜成分が放出される水和分解型、加水分解型等の防汚塗膜に比べ、環境への負荷も低いといった優れた利点を有している。
例えば、特許文献1には硬化性オルガノポリシロキサン組成物である防汚塗料組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の防汚塗料から形成された防汚塗膜は、防汚性に優れるものの、表面平滑性の観点で、改善の余地があった。また、更なる環境負荷低減も求められている。
本発明は、表面平滑性に優れる防汚塗膜及びこれを形成するための防汚塗料組成物を提供することを目的とする。更に本発明は、前記防汚塗膜を有する防汚塗膜付き基材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記の課題に鑑み鋭意研究したところ、加水分解性基としてメチルイソブチルケトオキシム基を採用することにより、前記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の[1]~[15]に関する。
[1] 下記(1)及び(2)から選択される少なくとも1つの硬化性シリコーン(A)、及び滑り剤(C)を含有する、防汚塗料組成物。
(1)両末端にメチルイソブチルケトオキシム基を有するポリオルガノシロキサン
(2)両末端にヒドロキシ基を有するポリオルガノシロキサン、及び下記式(I)で表されるオルガノシラン
【0006】
【化1】
(式(I)中、R
1は置換又は非置換の炭素数1以上10以下の炭化水素基を表し、Xはメチルイソブチルケトオキシム基であり、aは0又は1である。)
【0007】
[2]前記硬化性シリコーン(A)が、両末端にメチルイソブチルケトオキシム基を有するポリオルガノシロキサンを含有する、[1]に記載の防汚塗料組成物。
[3] 前記ポリオルガノシロキサンが、ポリジメチルシロキサン構造を有する、[1]又は[2]に記載の防汚塗料組成物。
[4] 疎水性シリカ粒子(B1)を更に含有する、[1]~[3]のいずれか1つに記載の防汚塗料組成物。
[5] 親水性シリカ粒子(B2)を更に含有する、[1]~[4]のいずれか1つに記載の防汚塗料組成物。
[6] 前記滑り剤(C)が、シリコーンオイル、パラフィンオイル、油脂、親水性基を有するアクリル系樹脂、及びポリアルキレングリコールよりなる群から選択される1種以上である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の防汚塗料組成物。
[7] 前記シリコーンオイルが、フェニル変性シリコーンオイル及びポリエーテル変性シリコーンオイルから選択される1種以上である、[6]に記載の防汚塗料組成物。
[8] 着色顔料(D)を更に含有する、[1]~[7]のいずれか1つに記載の防汚塗料組成物。
[9] 防汚塗料組成物の固形分中の着色顔料(D)の含有量が1質量%以下である、[1]~[7]のいずれか1つに記載の防汚塗料組成物。
[10] ポリオルガノシロキサン100質量部に対する滑り剤(C)の含有量が30質量部以上200質量部以下である、[9]に記載の防汚塗料組成物。
[11] 防汚塗料組成物の固形分中の硬化性シリコーン(A)の含有量が40質量%以上90質量%以下である、[1]~[10]のいずれか1つに記載の防汚塗料組成物。
[12] [1]~[11]のいずれか1つに記載の防汚塗料組成物から形成された防汚塗膜。
[13] 基材と、前記基材表面に設けられた[12]に記載の防汚塗膜とを有する、防汚塗膜付き基材。
[14] 前記基材が、船舶、水中構造物、漁業資材及び給排水管から選択される少なくとも1種である、[13]に記載の防汚塗膜付き基材。
[15] [1]~[11]のいずれか1つに記載の防汚塗料組成物を基材に塗布するか、又は[1]~[11]のいずれか1つに記載の防汚塗料組成物に基材を含浸する工程を有する、防汚塗膜付き基材の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、表面平滑性に優れる防汚塗膜及びこれを形成するための防汚塗料組成物が提供される。更に本発明によれば、前記防汚塗膜を有する防汚塗膜付き基材及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の防汚塗料組成物、これを用いた防汚塗膜、並びに防汚塗膜付き基材及びその製造方法について詳細に説明する。
【0010】
[防汚塗料組成物]
本発明の防汚塗料組成物は、下記(1)及び(2)から選択される少なくとも1つの硬化性シリコーン(A)、及び滑り剤(C)を含有する。
(1)両末端にメチルイソブチルケトオキシム基を有するポリオルガノシロキサン(以下、(A-1)ともいう。)
(2)両末端にヒドロキシ基を有するポリオルガノシロキサン、及び下記式(I)で表されるオルガノシラン(以下、(A-2)ともいう。)
【0011】
【化2】
(式(I)中、R
1は置換又は非置換の炭素数1以上10以下の炭化水素基を表し、Xはメチルイソブチルケトオキシム基であり、aは0又は1である。)
【0012】
本発明の防汚塗料組成物によれば、表面平滑性に優れた防汚塗膜が得られる。
上記の効果が得られる詳細な理由は不明であるが、硬化性シリコーン(A)において、加水分解性基として、従来使用されてきたメチルエチルケトオキシム基に代わり、メチルイソブチルケトオキシム基を採用することにより、驚くべきことに、表面平滑性が向上したものと考えられる。また、従来品の硬化の際に生じるメチルエチルケトキシムはECHA(欧州化学機関)にて安全性に対する懸念が指摘されており、環境負荷及び塗装環境における塗装者への曝露低減のため、代替品の提供が強く求められているものである。更に、硬化性シリコーン(A)に加えて、滑り剤(C)を含有することにより、優れた防汚性が発揮されると考えられる。
また、防汚塗料組成物が着色剤を実質的に含有しない組成である場合には、透明性にも優れるという効果を有する。
以下、防汚塗料組成物が含有する各成分について説明する。
【0013】
〔硬化性シリコーン(A)〕
硬化性シリコーン(A)は、上記(1)又は上記(2)から選ばれる。以下、それぞれについて詳述する。
なお、硬化性シリコーン(A)が、上記(1)の態様であり、両末端にメチルイソブチルケトオキシム基を有するポリオルガノシロキサン(以下、「ポリオルガノシロキサン(a1)」ともいう)である場合を(A-1)、硬化性シリコーン(A)が上記(2)の態様であり、両末端にヒドロキシ基を有するポリオルガノシロキサン(以下、「ポリオルガノシロキサン(a2)」ともいう)、及び式(I)で表されるオルガノシラン(以下、「オルガノシラン(a3)」ともいう)である場合を(A-2)ともいう。
<(1)両末端にメチルイソブチルケトオキシム基を有するポリオルガノシロキサン>
両末端にメチルイソブチルケトオキシム基を有するポリオルガノシロキサン(以下、「ポリオルガノシロキサン(a1)」ともいう)は、少なくとも主鎖であるポリオルガノシロキサン構造とメチルイソブチルケトオキシム基を有する反応性部位とを有し、反応性部位を両末端に有する。
前記主鎖は、ポリオルガノシロキサン構造を有し、ポリオルガノシロキサン構造としては、ポリジメチルシロキサン構造、ポリメチルフェニルシロキサン構造等が挙げられ、中でもポリジメチルシロキサン構造が好ましい。なお、主鎖中に、アルキレン基やポリオキシアルキレン基等がブロック状で存在していてもよい。
また、主鎖と反応性部位の連結部位として、例えばアルキレン基やポリオキシアルキレン基等が存在していてもよい。
前記反応性部位は、ポリオルガノシロキサン(a1)の反応性部位同士、あるいは防汚塗料組成物に含まれる後述の有機ケイ素架橋剤(F)と反応して架橋構造を形成し、シリコーン硬化体となり、防汚塗膜を形成する。また、後述のシランカップリング剤(G)とも反応し、シリコーン硬化体の一部を形成することもある。
【0014】
前記反応性部位としては、メチルイソブチルケトオキシム基を有することが好ましく、その位置としては、主鎖の両末端であることが好ましい。
両末端にメチルイソブチルケトオキシム基を有するポリオルガノシロキサンとしては、下記式(II)で表される化合物が好ましい。
【0015】
【化3】
(式(II)中、R
11、R
12は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、又はハロゲン化アルキル基を表し、nは10以上10,000以下の整数を表し、aは、1以上3以下の整数を表す。)
【0016】
式(II)中、nは10以上10,000以下の整数を表し、好ましくは100以上1,000以下であり、後述する動粘度及び重量平均分子量が好適な範囲となるように、適宜選択すればよい。
aは、1以上3以下の整数を表し、1又は2であることが好ましく、2であることがより好ましい。
R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、炭素原子数2以上10以下のアルケニル基、炭素原子数1以上10以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上10以下のアリール基、炭素原子数7以上10以下のアラルキル基、又は炭素原子数1以上10以下のハロゲン化アルキル基を表す。なお、複数存在するR11は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、また、R12が複数存在するとき、R12は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1以上6以下、より好ましくは1以上3以下、更に好ましくは1又は2、より更に好ましくは1である。
アルケニル基の炭素原子数は、好ましくは2以上6以下、より好ましくは2以上3以下であり、ビニル基(-CH=CH2)が特に好ましい。
アルコキシ基の炭素原子数は、好ましくは1以上6以下、より好ましくは1以上3以下、更に好ましくは1又は2である。
アリール基の炭素原子数は、好ましくは6以上8以下であり、芳香環上にアルキル基等の置換基を有していてもよく、例えば、フェニル基、トリル基(メチルフェニル基)、キシリル基(ジメチルフェニル基)、及びナフチル基等が挙げられる。
アラルキル基の炭素原子数は、好ましくは7以上9以下であり、例えば、ベンジル基、2-フェニルエチル基、2-ナフチルエチル基、及びジフェニルメチル基等が挙げられる。
ハロゲン化アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1以上6以下であり、例えば、前記アルキル基に含まれる水素原子の一部又は全部がフッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等のハロゲン原子に置き換えられた基が挙げられる。
これらの中でも、R11はメチル基であることが好ましく、R12は、ビニル基であることが好ましい。
【0017】
<(2)両末端にヒドロキシ基を有するポリオルガノシロキサン、及び式(I)で表されるオルガノシラン>
両末端にヒドロキシ基を有するポリオルガノシロキサン(以下、「ポリオルガノシロキサン(a2)」ともいう)は、少なくとも主鎖であるポリオルガノシロキサン構造と水酸基を有する反応性部位とを有し、反応性部位を両末端に有する。
前記主鎖は、ポリオルガノシロキサン構造を有し、ポリオルガノシロキサン構造としては、ポリジメチルシロキサン構造、ポリメチルフェニルシロキサン構造等が挙げられ、中でもポリジメチルシロキサン構造が好ましい。なお、主鎖中に、アルキレン基やポリオキシアルキレン基等がブロック状で存在していてもよい。
また、主鎖と反応性部位の連結部位として、例えばアルキレン基やポリオキシアルキレン基等が存在していてもよい。
前記シラノール基は、後述する式(I)で表されるオルガノシラン(以下、「オルガノシラン(a3)」ともいう)と反応することにより、両末端にメチルイソブチルケトオキシム基を有するポリオルガノシロキサン(ポリオルガノシロキサン(a1))が得られる。
ポリオルガノシロキサン(a2)は、上記反応により得られたポリオルガノシロキサン(a1)の反応性部位同士、あるいは防汚塗料組成物に含まれる後述の有機ケイ素架橋剤(F)と反応して架橋構造を形成し、シリコーン硬化体となり、防汚塗膜を形成する。また、後述のシランカップリング剤(G)とも反応し、シリコーン硬化体の一部を形成することもある。
【0018】
ポリオルガノシロキサン(a2)としては、下記式(III)で表される化合物が好ましい。
【0019】
【化4】
(式(III)中、pは10以上10,000以下の整数を表し、bは1以上3以下の整数を表し、R
13及びR
14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、又はハロゲン化アルキル基を表す。)
【0020】
式(III)中、pは10以上10,000以下の整数を表し、好ましくは100以上1,000以下であり、後述する粘度及び重量平均分子量が好適な範囲となるように、適宜選択すればよい。
bは、1以上3以下の整数を表し、1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
R13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、炭素原子数2以上10以下のアルケニル基、炭素原子数1以上10以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上10以下のアリール基、炭素原子数7以上10以下のアラルキル基、又は炭素原子数1以上10以下のハロゲン化アルキル基を表す。なお、複数存在するR13は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、また、R14が複数存在するとき、R14は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1以上6以下、より好ましくは1以上3以下、更に好ましくは1又は2、より更に好ましくは1である。
アルケニル基の炭素原子数は、好ましくは2以上6以下、より好ましくは2以上3以下であり、ビニル基(-CH=CH2)が更に好ましい。
アルコキシ基の炭素原子数は、好ましくは1以上6以下、より好ましくは1以上3以下、更に好ましくは1又は2である。
アリール基の炭素原子数は、好ましくは6以上8以下であり、芳香環上にアルキル基等の置換基を有していてもよく、例えば、フェニル基、トリル基(メチルフェニル基)、キシリル基(ジメチルフェニル基)、及びナフチル基等が挙げられる。
アラルキル基の炭素原子数は、好ましくは7以上9以下であり、例えば、ベンジル基、2-フェニルエチル基、2-ナフチルエチル基、及びジフェニルメチル基等が挙げられる。
ハロゲン化アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1以上6以下であり、例えば、前記アルキル基に含まれる水素原子の一部又は全部がフッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等のハロゲン原子に置き換えられた基が挙げられる。
これらの中でも、R13及びR14は、メチル基であることが好ましい。
【0021】
オルガノシラン(a3)は、下記式(I)で表される。
【0022】
【化5】
(式(I)中、R
1は置換又は非置換の炭素数1以上10以下の炭化水素基を表し、Xはメチルイソブチルケトオキシム基であり、aは0又は1である。)
【0023】
式(I)中、aは0又は1であり、得られる両末端にメチルイソブチルケトオキシム基を有するポリオルガノシロキサンの反応性の観点から、1であることが好ましい。
R1は、炭素原子数1以上10以下の炭化水素基を表し、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数2以上10以下のアルケニル基であることが好ましい。
アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1以上6以下、より好ましくは1以上3以下、更に好ましくは1又は2である。
アルケニル基の炭素原子数は、好ましくは2以上6以下、より好ましくは2以上3以下であり、ビニル基(-CH=CH2)が好ましい。
これらの中でも、R1は、ビニル基であることが好ましい。
【0024】
ポリオルガノシロキサン(a2)とオルガノシラン(a3)とは、化学量論比を参考に、混合すればよく、化学量論比に対して過剰量のオルガノシラン(a3)を添加することが好ましい。
具体的には、ポリオルガノシロキサン(a2)100質量部に対するオルガノシラン(a3)の配合量は、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、そして、好ましくは25質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。
【0025】
硬化性シリコーン(A)の重量平均分子量(Mw)は、塗工作業性、防汚塗料組成物の硬化性、及び形成される塗膜の強度を向上させる観点から、好ましくは500以上、より好ましくは5,000以上、更に好ましくは10,000以上、より更に好ましくは15,000以上、より更に好ましくは20,000以上であり、そして、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは100,000以下、更に好ましくは50,000以下、より更に好ましくは40,000以下である。
本発明において、「重量平均分子量(Mw)」は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)を用いて測定し、分子量既知の標準ポリスチレンで換算して算出される。
【0026】
硬化性シリコーン(A)の25℃における粘度は、防汚塗料組成物の製造作業性を向上させる観点、防汚塗料組成物の塗工作業性、硬化性、及び形成される塗膜の強度や屈曲性を向上させる観点から、好ましくは20mPa・s以上、より好ましくは100mPa・s以上、更に好ましくは500mPa・s以上、より更に好ましくは1,000mPa・s以上である。そして、好ましくは100,000mPa・s以下、より好ましくは10,000mPa・s以下、更に好ましくは7,000mPa・s以下である。
なお、硬化性シリコーン(A)の25℃における粘度は、B型回転粘度計(例えば、型式:BM、東京計器株式会社製)により測定した粘度である。
なお、後述するように、ポリオルガノシロキサン(a1)又はポリオルガノシロキサン(a2)と、シリカ粒子(B)とを混練してから防汚塗料組成物に添加する場合、混練物の粘度は、好ましくは20mPa・s以上、より好ましくは100mPa・s以上、更に好ましくは500mPa・s以上、より更に好ましくは1,000mPa・s以上である。そして、好ましくは100,000mPa・s以下、より好ましくは10,000mPa・s以下、更に好ましくは7,000mPa・s以下である。
【0027】
防汚塗料組成物の固形分中の硬化性シリコーン(A)の含有量は、形成される防汚塗膜の強度を向上させる観点から、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは88質量%以下である。
ここで、「防汚塗料組成物の固形分」とは、後述する有機溶剤(I)及び各成分に溶剤として含まれる揮発成分を除いた成分であり、防汚塗膜としてみなすことができる。また、「防汚塗料組成物の固形分」は、塗料組成物を125℃の熱風乾燥機中で1時間乾燥させて得られた固形分(加熱残分)を測定して算出してもよい。
「防汚塗膜中の各成分の含有量」は、後述する有機溶剤(I)、各成分に溶剤として含まれる揮発成分及び硬化反応後に脱離して揮発する成分を差し引いたものの中の各成分の含有量から算出することができる。
【0028】
本発明において、硬化性シリコーン(A)としては、(1)両末端にメチルイソブチルケトオキシム基を有するポリオルガノシロキサン(A-1)であることが好ましい。
硬化性シリコーン(A)が(A-1)であると、1液型の塗料組成物として調製することが可能であり、また、粘度安定性に優れ、取扱い性に優れる。一方、硬化性シリコーン(A)が、(A-2)であると、2液硬化型の塗料組成物とする必要があり、このような形態の塗料組成物は、主剤と硬化剤とを混合した後に粘度が変化しやすく、取扱い性に劣る。
また、(A-1)では、複数のメチルイソブチルケトオキシム基が存在していても、末端に存在するメチルイソブチルケトオキシム基の1つ(第1のメチルイソブチルケトオキシム基)が反応すると、その余のメチルイソブチルケトオキシム基の反応性は、第1のメチルイソブチルケトオキシム基に比べて非常に低いため、線形に近い構造の硬化物を得られる傾向にある。一方、(A-2)とした場合には、オルガノシラン(a3)のメチルイソブチルケトオキシム基の反応性が高いために、オルガノシラン(a3)同士で架橋することで不均一な構造を形成しやすい傾向にある。これらの硬化物の構造が、塗膜物性にも影響を与える場合もあると考えられる。
更に、硬化性シリコーン(A)が(A-1)である場合、滑り剤(C)との相溶性が高く、後述するように、多量の滑り剤(C)を添加することが可能であるが、硬化性シリコーン(A)が(A-2)である場合、滑り剤(C)との相溶性が低く、多量の滑り剤(C)を配合することが困難である。
【0029】
本発明の製造方法に用いる防汚塗料組成物は、硬化性シリコーン(A)以外に、その他の成分を含有することが好ましい。
その他の成分としては、シリカ粒子(B)、滑り剤(C)、着色顔料(D)、及び生物忌避剤(E)、有機ケイ素架橋剤(F)、シランカップリング剤(G)、硬化触媒(H)、有機溶剤(I)、シリカ粒子(B)及び着色顔料(D)以外の顔料、有機ケイ素架橋剤(F)以外の脱水剤、タレ止め剤・沈降防止剤、酵素、難燃剤及び熱伝導改良剤等が挙げられ、本発明の効果を阻害しない範囲で、シリカ粒子(B)、滑り剤(C)、着色顔料(D)、及び生物忌避剤(E)、有機ケイ素架橋剤(F)、シランカップリング剤(G)、硬化触媒(H)、有機溶剤(I)を含有することが好ましい。
【0030】
〔シリカ粒子(B)〕
本発明の防汚塗料組成物は、形成される防汚塗膜の硬度、柔軟性、強度の観点から、シリカ粒子(B)を含有することが好ましく、シリカ粒子(B)として、疎水性シリカ粒子(B1)及び親水性シリカ粒子(B2)が例示される。
シリカ粒子(B)は、形成される防汚塗膜の物性を向上させるだけでなく、防汚塗料組成物の流動性、チキソトロピー性も良好にする。
防汚塗料組成物は、疎水性シリカ粒子(B1)及び親水性シリカ粒子(B2)よりなる群から選択される少なくとも1つを含有することが好ましく、少なくとも疎水性シリカ粒子(B1)を含有することが好ましく、疎水性シリカ粒子(B1)及び親水性シリカ粒子(B2)の双方を含有することがより好ましい。
【0031】
特に、硬化性シリコーン(A)が(A-1)である場合、疎水性シリカ粒子(B1)及び親水性シリカ粒子(B2)を併用することが好ましい。
本発明者等は、硬化性シリコーン(A)として(A-2)を含有する防汚塗料組成物は、粘度が低下しやすく、親水性シリカ粒子(B2)を配合することが困難であることを見出した。
なお、疎水性シリカ粒子(B1)は、形成される防汚塗膜の硬度、柔軟性、強度の観点、及び防汚塗料組成物の流動性、チキソトロピー性の向上の観点から添加することが好ましい。また、親水性シリカ粒子(B2)は、その添加により粘度が低下する傾向にあるが、形成される防汚塗膜の防汚性を向上させる機能を有する。
【0032】
シリカ粒子(B)としては、乾式法シリカ及び湿式法シリカが好ましく、乾式法シリカがより好ましい。
【0033】
疎水性シリカ粒子(B1)は、疎水性処理シリカ(表面を疎水化処理したシリカ)であり、シリカ表面のケイ素原子に結合した水酸基(シラノール基)を疎水化処理剤で処理することにより得られ、水性湿式法シリカ、疎水性フュームドシリカ等が挙げられる。
疎水化処理剤としては、オルガノジシラザン、オルガノアルコキシシラン、オルガノクロロシラン、環状オルガノポリシラザン、線状オルガノポリシロキサン等が例示されるが、これらの中ではオルガノジシラザン、オルガノアルコキシシラン、オルガノクロロシランが好ましい。更に具体的には、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、ヘキサプロピルジシラザン、1,3-ジエチル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン、1,3-ジメチル-1,1,3,3-テトラエチルジシラザン、1,3-ジビニルテトラメチルジシラザン、1,3-ジアリルテトラメチルジシラザン、1,3-ジブテニルテトラメチルジシラザン、1,3-ジペンテニルテトラメチルジシラザン、1,3-ジヘキセニルテトラメチルジシラザン、1,3-ジヘプテニルテトラメチルジシラザン、1,3-ジオクテニルテトラメチルジシラザン、1,3-ジノネニルテトラメチルジシラザン、1,3-ジデケニルテトラメチルジシラザン、1,3-ジビニルテトラエチルジシラザン、1,3-ジメチルテトラビニルジシラザン等のシラザン化合物、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ブテニルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、トリプロピルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジプロピルジクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン等のクロロシラン化合物等が挙げられる。作業性やシリカ表面のシラノール基との反応性等から、シラザン化合物又はクロロシラン化合物を用いることが好ましく、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、及びオクタメチルシクロテトラシロキサン、及び1,3-ジビニルテトラメチルジシラザン用いることがより好ましいく、ヘキサメチルジシラザン、1,3-ジビニルテトラメチルジシラザン、ジメチルジクロロシランを用いることが更に好ましい。
【0034】
疎水性シリカの市販品としては、日本アエロジル株式会社製「AEROSIL R974」、「AEROSIL RX200」等が挙げられる。
【0035】
親水性シリカ粒子(B2)は、無処理シリカ(表面未処理シリカ)であり、乾式法シリカ(フュームドシリカ、無水シリカ)、湿式法シリカ(水和シリカ)等が挙げられ、乾式法シリカが好ましく、フュームドシリカがより好ましい。
親水性シリカの市販品としては、日本アエロジル株式会社製「AEROSIL 200」等が挙げられる。
【0036】
本発明の防汚塗料組成物がシリカ粒子(B)を含有する場合、防汚塗料組成物の固形分中のシリカ粒子(B)の含有量は、形成される防汚塗膜の強度や硬度を向上させる観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0037】
硬化性シリコーン(A)100質量部に対するシリカ粒子(B)の含有量は、形成される防汚塗膜の強度や硬度を向上させる観点から、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、そして、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。
また、シリカ粒子(B)として、疎水性シリカ粒子(B1)と親水性シリカ粒子(B2)とを併用する場合、防汚塗料組成物中の疎水性シリカ粒子(B1)と親水性シリカ(B2)との含有量の比(B1/B2)は、好ましくは5/95以上90/10以下、より好ましくは10/80以上80/20以下、更に好ましくは15/85以上70/30以下、より更に好ましくは20/80以上60/40以下である。
【0038】
〔滑り剤(C)〕
本発明の防汚塗料組成物は、防汚塗料組成物の塗工作業性、防汚性の観点から、滑り剤(C)を含有する。
滑り剤(C)は、形成される防汚塗膜に滑り性を付与することで、水生生物の付着阻害性(防汚性)を向上させることができる。
滑り剤(C)は、25℃において流動性を有するものであることが好ましく、液状であることがより好ましい。滑り剤が流動性を有することで、防汚塗膜内の移動性が高く、表面に滑りを与える効果を高めることができると考えられる。また、防汚塗料組成物の粘度を低減して塗布性も良好にできる。
滑り剤(C)としては、好ましくは油類及び親水性基を有するポリマーから選ばれる1種以上である。
【0039】
前記油類としては、シリコーンオイル、パラフィンオイル、油脂が挙げられ、中でもシリコーンオイルが好ましい。
パラフィンオイルとしては、流動パラフィン等が挙げられる。
油脂としては、脂肪酸とグリセリンのエステルであり、動物性油脂、植物性油脂等が挙げられる。
【0040】
前記親水性基を有するポリマーとしては、親水性基を有するアクリル系ポリマー、ポリアルキレングリコール等が挙げられ、親水性基を有するアクリル系ポリマーが好ましい。
ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体及びそれらのアルキルエーテル等が挙げられる。
【0041】
すなわち、滑り剤(C)は、シリコーンオイル、パラフィンオイル、油脂、親水性基を有するアクリル系ポリマー及びポリアルキレングリコールよりなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、シリコーンオイル及び親水性基を有するアクリル系ポリマーから選ばれる1種以上であることがより好ましく、シリコーンオイルであることが更に好ましい。また、防汚塗料組成物の製造作業性及び形成される防汚塗膜の防汚性の点から、親水性基を有するアクリル系ポリマーを含むことが好ましく、シリコーンオイルと親水性基を有するアクリル系ポリマーの両方を含むことがより好ましい。
以下に好適な滑り剤(C)である、シリコーンオイル(C1)、親水性基を有するアクリル系ポリマー(C2)、及びパラフィンオイル(C3)について、詳細に説明する。
【0042】
<シリコーンオイル(C1)>
本発明の防汚塗料組成物に用いられるシリコーンオイル(C1)としては、ジメチルシリコーン(ポリジメチルシロキサン、未変性シリコーン)、変性シリコーンが挙げられる。変性シリコーンはジメチルシリコーンの一部のメチル基が、メチル基以外の有機基で置換されたものであり、片末端に反応性基を有していてもよい。
シリコーンオイルは界面張力が低く、低温等の環境下でも性質が変化しにくいため、防汚塗膜の表面に移動しやすく、効率的に水生生物の付着防止性(防汚性)や耐ダメージ性を改善することができる。
シリコーンオイル(C1)が片末端に反応性基を有する場合、反応性基としては、シラノール基、オキシムシリル基、アシルオキシシリル基、アルコキシシリル基、アルケニルオキシシリル基、アミノシリル基、アミドシリル基等が挙げられ、シラノール基、オキシムシリル基、アシルオキシシリル基、アルコキシシリル基、アルケニルオキシシリル基が好ましく、シラノール基、オキシムシリル基、アルコキシシリル基、アルケニルオキシシリル基がより好ましく、シラノール基、オキシムシリル基、アルケニルオキシシリル基が更に好ましく、シラノール基、オキシムシリル基がより更に好ましく、オキシムシリル基がより更に好ましい。
オキシム基としては、炭素数が1以上10以下のオキシム基が好ましく、ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基、メチルイソプロピルケトオキシム基、メチルイソブチルケトオキシム基がより好ましく、メチルイソブチルケトオキシム基が更に好ましい。
アルコキシ基としては、炭素数が1以上6以下のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基がより好ましく、メトキシ基が更に好ましい。
オキシム基やアルコキシ基は、1のケイ素原子に2以上のこれらの基が結合していてもよく、1のケイ素原子に2以上のオキシム基又はアルコキシ基が結合していることが好ましく、1のケイ素原子に2つのオキシム基が結合していることがより好ましい。
【0043】
シリコーンオイル(C1)の25℃における粘度は、水生生物に対する滑り性を付与し、防汚性を向上させ、防汚塗料組成物の塗布性を向上させる観点から、好ましくは10mPa・s以上、より好ましくは20mPa・s以上、更に好ましくは40mPa・s以上、より更に好ましくは60mPa・s以上、より更に好ましくは80mPa・s以上であり、そして、好ましくは10,000mPa・s以下、より好ましくは5,000mPa・s以下、更に好ましくは4,000mPa・s以下である。
なお、本明細書において、シリコーンオイル(C1)の25℃における粘度は、B型回転粘度計により測定した粘度を指す。
【0044】
また、シリコーンオイル(C1)の25℃における動粘度は、水生生物に対する滑り性を付与し、防汚性を向上させ、防汚塗料組成物の塗布性を向上させる観点から、好ましくは10mm2/s以上、より好ましくは30mm2/s以上、更に好ましくは50mm2/s以上であり、そして、好ましくは5,000mm2/s以下、より好ましくは4,000mm2/s以下、更に好ましくは3,500mm2/s以下である。
【0045】
変性シリコーンとしては、フェニル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、長鎖アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、フッ化アルキル変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、メタクリル変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、フェノール変性シリコーン等が挙げられる。
このような変性シリコーンの内、防汚性を良好とし、防汚塗料組成物に適度な搖変性を付与し、その塗工性を良好とする観点から、シリコーンオイル(C1)としては、フェニル変性シリコーン及びポリエーテル変性シリコーンから選ばれる1種以上が好ましい。
また、透明性に優れる防汚塗膜を得る観点からは、滑り剤(C)として、フェニル変性シリコーンを含有することが好ましい。
【0046】
変性シリコーンの構造としては、側鎖変性型、両末端変性型、片末端変性型、ブロック型、側鎖及び片末端変性型、側鎖及び両末端変性型が挙げられる。
【0047】
前記ジメチルシリコーンの市販品としては、「KF-96-100cs」(信越化学工業株式会社製、動粘度(25℃):100mm2/s)、「KF-96-1,000cs」(信越化学工業株式会社製、動粘度(25℃):1,000mm2/s)等が挙げられる。
【0048】
フェニル変性シリコーンのフェニル変性率は、防汚性及び防汚塗膜の形成を容易にする観点から、3%以上50%以下が好ましく、3%以上20%以下がより好ましく、4%以上10%以下が更に好ましい。フェニル変性率は、ケイ素に結合したフェニル基とメチル基の総数に対するフェニル基の数を百分率で表したものである。
フェニル変性シリコーンの25℃における動粘度は、形成される防汚塗膜の防汚性、防汚塗料組成物の塗工作業性の観点から、好ましくは10mm2/s以上5,000mm2/s以下、より好ましくは50mm2/s以上4,000mm2/s以下、更に好ましくは80mm2/s以上3,500mm2/s以下である。
フェニル変性シリコーンの市販品としては、「KF-50-100cs」(信越化学工業株式会社製、フェニル変性率=5%、動粘度(25℃):100mm2/s)、「KF-50-1,000cs」(信越化学工業株式会社製、フェニル変性率=5%、動粘度(25℃):1,000mm2/s)、「KF-50-3,000cs」(信越化学工業株式会社製、フェニル変性率=5%、動粘度(25℃):3,000mm2/s)等が挙げられる。
また、片末端メチルエチルケトオキシム-側鎖フェニル変性シリコーンの市販品としては、「BCA-011」(信越化学工業株式会社製、フェニル変性率=5%、動粘度(25℃):100mm2/s)が挙げられる。
【0049】
本発明の防汚塗料組成物がフェニル変性シリコーンを含有する場合、防汚塗料組成物の固形分中の含有量は、形成される防汚塗膜の防汚性、防汚塗膜の形成容易性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、より更に好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは45質量%以下である。
本発明の防汚塗料組成物が後述するクリア防汚塗料組成物であり、かつ、フェニル変性シリコーンを含有する場合、防汚塗料組成物の固形分中のフェニル変性シリコーンの含有量は、形成される防汚塗膜の透明性及び防汚性の観点から、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。
【0050】
ポリエーテル変性シリコーンの構造としては、側鎖変性型、両末端変性型、片末端変性型、ブロック型、側鎖及び片末端変性型、側鎖及び両末端変性型が挙げられ、側鎖変性型及び両末端変性型が好ましい。
ポリエーテル変性シリコーンのポリエーテル基(ポリアルキレングリコール基)を構成するポリエーテル(ポリアルキレングリコール)は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体が挙げられ、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が好ましい。
ポリエーテル変性シリコーンは、形成される防汚塗膜の防汚性及び防汚塗膜の形成を容易にする観点から、その構造中に占めるポリエーテル部分構造の割合は、好ましくは10質量%以上60質量%以下、より好ましくは15質量%以上50質量%以下である。
本発明の防汚塗料組成物がポリエーテル変性シリコーンを含有する場合、防汚塗料組成物の固形分中の含有量は、形成される防汚塗膜の防汚性を向上させ、防汚塗膜を形成しやすくする観点等から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7質量%以下である。
【0051】
本発明の防汚塗料組成物がエチレンオキシ(-OC2H4-)構造単位を含有するポリエーテル変性シリコーンを含有する場合、形成される防汚塗膜に良好な防汚性を付与する観点から、シリコーンのジメチルシロキサン部分構造(-(CH3)2Si-O-)100質量部に対して、エチレンオキシ(-OC2H4-)部分構造の合計質量は、好ましくは0.1質量部以上10質量部以下、より好ましくは0.3質量部以上5質量部以下である。
前記ポリエーテル変性シリコーンの25℃における動粘度は、防汚性及び防汚塗料組成物の塗工作業性等の観点から、好ましくは10mm2/s以上5,000mm2/s以下、より好ましくは50mm2/s以上2,000mm2/s以下、更に好ましくは100mm2/s以上500mm2/s以下である。
前記ポリエーテル変性シリコーンの市販品としては、「X-22-4272」(信越化学工業株式会社製、両末端型、動粘度(25℃):270mm2/s)、「KF-6020」(信越化学工業株式会社製、側鎖型、動粘度(25℃):180mm2/s)、「FZ-2203」(東レ・ダウコーニング株式会社製、ブロック型)、「FZ-2160」(東レ・ダウコーニング株式会社製、両末端型)、「ポリフローKL-402」(共栄社化学株式会社製、動粘度(25℃):350mm2/s)等が挙げられる。
【0052】
防汚塗料組成物の固形分中のシリコーンオイル(C1)の含有量は、形成される防汚塗膜の防汚性を向上させ、防汚塗膜を形成しやすくする観点等から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。
【0053】
<親水性基を有するアクリル系ポリマー(C2)>
本発明の防汚塗料組成物に用いられる親水性基を有するアクリル系ポリマー(C2)としては、親水性基を有するモノマーに由来する構成単位を含有することが好ましく、親水性基を有するモノマーに由来する構成単位と疎水性モノマーに由来する構成単位を含有することがより好ましく、親水性基を有するモノマーに由来する構成単位と疎水性モノマーに由来する構成単位からなることが更に好ましい。
親水性基を有するアクリル系ポリマー(C2)中の親水性基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量は、好ましくは1質量%以上100質量%以下、より好ましくは3質量%以上80質量%以下、更に好ましくは5質量%以上70質量%以下、より更に好ましくは10質量%以上60質量%以下である。
アクリル系ポリマーが親水性基を有することで、防汚塗膜中のアクリル系ポリマーの親水性部位が溶解あるいは膨潤し、徐々に防汚塗膜表面に移行することで水生生物の付着を効率的に防止できるものと考えられる。また、アクリル構造を有するため、ゆるやかな加水分解を受け、水との親和性が変化することで、長期間にわたり、防汚性を維持できると考えられる。
前記親水性基を有するモノマーの親水性基としては、防汚性の観点からエーテル基、水酸基が好ましく、エーテル基がより好ましい。
【0054】
また、親水性基を有するアクリル系ポリマー(C2)中の疎水性モノマーに由来する構成単位の含有量は、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは95質量%以下が更に好ましく、より更に好ましくは90質量%以下であり、そして、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。
疎水性モノマーを有することで、防汚塗膜の他の成分であるシリコーン架橋体等と高い親和性を有し、防汚塗膜表面に均一に滑り効果を発現することができるものと考えられる。
【0055】
前記親水性基を有するモノマーとしては、防汚性の観点から、ポリアルキレングリコール基を有するモノマー、水酸基を有するモノマー及びアルコキシアルキル基を有するモノマーが好ましく、ポリアルキレングリコール基を有するモノマーがより好ましい。
具体的には、防汚性を向上させる観点から、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、4-(メタ)アクリロイルモルフォリン及びビニルピロリドンから選ばれる1種以上が好ましく、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上がより好ましく、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートが更に好ましい。
なお、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
【0056】
ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートとしては、ポリアルキレングリコールの片末端が(メタ)アクリル酸と直接エステル結合又は連結基を介して結合し、残りの片末端が水酸基又はアルコキシ基であるものが挙げられ、アルコキシ基であるものが好ましい。
中でも、ポリアルキレングリコールの片末端が(メタ)アクリル酸と直接エステル結合しているものが好ましく、残りの片末端がアルコキシ基であるものがより好ましい。
末端の(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
末端のアルコキシ基は、メトキシ基、フェノキシ基、オクトキシ基等が挙げられ、メトキシ基、フェノキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
【0057】
ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートを構成するポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体が好ましく、ポリエチレングリコールがより好ましい。
前記ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート中のポリアルキレングリコールを構成する平均アルキレングリコール単位数は、好ましくは2以上25以下、より好ましくは3以上15以下、更に好ましくは5以上12以下である。
【0058】
前記ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの具体例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール-プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール-ブチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリロキシポリ(エチレングリコール-プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールメタクリレート、オクトキシポリ(エチレングリコール-プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ドデシロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクタデシロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールアクリレート等が挙げられ、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0059】
前記ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの市販品としては、新中村化学工業株式会社製のNKエステル AM-90G(メトキシポリエチレングリコール#400アクリレート)、NKエステル AM-130G(メトキシポリエチレングリコール#550アクリレート)、NKエステル M-90G(メトキシポリエチレングリコール#400メタクリレート)、NKエステル M-230G(メトキシポリエチレングリコール#1000メタクリレート);共栄社化学株式会社製のライトアクリレートMTG-A(メトキシ-トリエチレングリコールアクリレート)、ライトアクリレートEC-A(エトキシ-ジエチレングリコールアクリレート)、ライトアクリレートEHDG-AT(2-エチルヘキシル-ジエチレングリコールアクリレート)、ライトエステル041MA(メトキシポリエチレングリコールメタクリレート);日油株式会社製のブレンマーANP-300(ノニルフェノキシポリプロピレングリコールアクリレート)、ブレンマーAP-400(ポリプロピレングリコールモノアクリレート)、ブレンマー70PEP-350B(ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート)、ブレンマー55PET-800(ポリエチレングリコールテトラメチレングリコールモノメタクリレート)、ブレンマー50POEP-800B(オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールメタクリレート);大阪有機化学工業株式会社製のビスコート#MTG(メトキシポリエチレングリコールアクリレート)等が挙げられる。
【0060】
前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの市販品としては、共栄社化学株式会社製のライトエステルHOA(N)(2-ヒドロキシエチルアクリレート)、ライトエステルHO-250(N)(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ライトエステルHOP(N)(2-ヒドロキシプロピルメタクリレート)等が挙げられる。
【0061】
前記アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、メトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0062】
前記テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートとしては、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレートが好ましく、テトラヒドロフルフリルアクリレートがより好ましい。
前記4-(メタ)アクリロイルモルフォリンとしては、4-アクリロイルモルフォリン、4-メタクリロイルモルフォリンが好ましく、4-アクリロイルモルフォリンがより好ましい。
前記ビニルピロリドンとしては、1-ビニル-2-ピロリドン(N-ビニル-2-ピロリドン)、3-アセチル-1-ビニルピロリジン-2-オン、3-ベンゾイル-1-ビニルピロリジン-2-オン等が挙げられ、1-ビニル-2-ピロリドンが好ましい。
【0063】
前記疎水性モノマーとしては、炭素数1以上30以下の分岐、直鎖又は環状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、炭素数6以上10以下の芳香族基を有するアリール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル基含有シリコーンが挙げられ、アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル基含有シリコーンが好ましく、アルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0064】
前記アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は、1以上30以下が好ましく、4以上18以下がより好ましく、4以上8以下が更に好ましく、4以上6以下がより更に好ましい。
また、前記アルキル基は、分岐、直鎖又は環状であり、分岐又は直鎖が好ましく、分岐がより好ましい。
【0065】
前記アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、3,5,5-トリメチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、及びベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの中でも、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0066】
前記アリール(メタ)アクリレートの芳香族基の炭素数は、6以上10以下が好ましく、6以上7以下がより好ましい。
前記アリール(メタ)アクリレートの具体例としては、フェニル(メタ)アクリレート及びベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0067】
前記(メタ)アクリル基含有シリコーンとしては、メタクリル基含有シリコーン及びアクリル基含有シリコーンが挙げられ、メタクリル基含有シリコーンが好ましい。
前記(メタ)アクリル基含有シリコーンは、(メタ)アクリル基がシリコーン主鎖の片末端に連結基を介して結合するもの、及び(メタ)アクリル基がシリコーン主鎖の片末端に直接結合するものが好ましく、(メタ)アクリル基がシリコーン主鎖の片末端に連結基を介して結合するものが好ましい。
前記連結基はトリメチレン基であることが好ましい。
前記シリコーン主鎖は、直鎖又は分岐のジメチルシリコーン(ポリジメチルシロキサン)からなることが好ましく、直鎖のジメチルシリコーンからなることがより好ましい。
また、(メタ)アクリル基とは反対側の末端には、炭素数1以上6以下のアルキル基が存在することがより好ましく、ブチル基が存在することが好ましい。
前記(メタ)アクリル基含有シリコーンの市販品としては、JNC株式会社製のサイラプレーンTM-0701T(トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート)、サイラプレーンFM-0711(メタクリル基含有ジメチルポリシロキサン、数平均分子量1,000)、及びサイラプレーンFM-0721(メタクリル基含有ジメチルポリシロキサン、数平均分子量5,000)等が挙げられる。
前記(メタ)アクリル基含有シリコーンを含むことで、形成される防汚塗膜の防汚性を向上させることができる。
【0068】
防汚塗料組成物が、エチレンオキシ(-OC2H4-)部分構造を有する親水性基を有するアクリル系ポリマー(C2)を含有する場合、形成される防汚塗膜に良好な防汚性を付与する観点から、シリコーンのジメチルシロキサン部分構造(-(CH3)2Si-O-)100質量部に対して、エチレンオキシ(-OC2H4-)部分構造の合計質量は、好ましくは0.1質量部以上10質量部以下、より好ましくは0.3質量部以上5質量部以下である。
【0069】
親水性基を有するアクリル系ポリマー(C2)の重量平均分子量(Mw)は、防汚性や防汚塗料組成物の粘度の観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは3,000以上、更に好ましくは5,000以上、より更に好ましくは7,000以上であり、そして、好ましくは150,000以下、より好ましくは100,000以下、更に好ましくは50,000以下、より更に好ましくは30,000以下である。
親水性基を有するアクリル系ポリマー(C2)の重量平均分子量(Mw)が上記範囲にあると、防汚塗膜に良好な防汚性を付与できる点で好ましい。
【0070】
本発明の防汚塗料組成物が、親水性基を有するアクリル系ポリマー(C2)を含有する場合、防汚塗料組成物の固形分中の親水性基を有するアクリル系ポリマー(C2)の含有量は、防汚性の観点から、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0071】
<パラフィンオイル(C3)>
パラフィンオイル(C3)としては特に限定されず、公知のパラフィンオイルから、後述する好適な動粘度を有するパラフィンオイルを適宜選択して使用すればよい。
前記パラフィンオイルとしては、流動パラフィンが好ましい。
パラフィンオイル(C3)の25℃における動粘度は、防汚性及び防汚塗料組成物の塗工作業性等の観点から、好ましくは10mm2/s以上、より好ましくは50mm2/s以上、更に好ましくは100mm2/s以上であり、そして、好ましくは5,000mm2/s以下、より好ましくは2,000mm2/s以下、更に好ましくは500mm2/s以下である。
【0072】
本発明の防汚塗料組成物の固形分中のパラフィンオイル(C3)の含有量は、形成される防汚塗膜の防汚性を向上させ、防汚塗膜を形成しやすくする観点等から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0073】
〔着色顔料(D)〕
本発明の防汚塗料組成物が着色顔料(D)を含有することも好ましい。
本発明の防汚塗料組成物が着色顔料(D)を含むことで、塗膜強度を高めることができる。
着色顔料(D)は、特に制限されるものではないが、例えば、酸化鉄、酸化チタン、カーボンブラック、酸化亜鉛、ケイ酸アルミニウム、アルミナホワイト、硫酸バリウムなどの無機顔料;ナフトールレッド、フタロシアニンブルー等の有機顔料が挙げられ、防汚塗料組成物の製造作業性や塗工作業性、貯蔵安定性、形成される防汚塗膜の防汚性の観点から、無機顔料であることが好ましく、中でも、酸化鉄、酸化チタン、カーボンブラック、酸化亜鉛、ケイ酸アルミニウム、アルミナホワイト、及び硫酸バリウムから選ばれる1種以上であることが好ましく、酸化鉄、酸化チタン、カーボンブラックから選ばれる1種以上であることが好ましく、酸化鉄、酸化チタンから選ばれる1種以上であることがより好ましい。
前記酸化鉄としては、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄等が挙げられる。
前記酸化チタンとしては、ルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型のいずれも用いることができ、防汚塗膜及び防汚塗料組成物の安定性や入手容易性の観点から、ルチル型を用いることが好ましい。
【0074】
本発明の防汚塗料組成物が着色顔料(D)を含有する場合、防汚塗料組成物の固形分中の着色顔料(D)の含有量は、形成される防汚塗膜の防汚性、及び防汚塗料組成物の製造作業性や塗工作業性、貯蔵安定性に優れる点等から、好ましくは0.01質量%以上20質量%以下、より好ましくは1質量%以上15質量%以下、更に好ましくは4質量%以上12質量%以下である。
【0075】
〔クリア防汚塗料組成物〕
本発明の防汚塗料組成物は、防汚塗料組成物の固形分中の着色顔料(D)の含有量を0質量%以上1質量%以下とし、クリア防汚塗料組成物とすることも好ましい。この場合、着色顔料(D)の含有量は、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、より更に好ましくは0.01質量%以下であり、含有しないことが最も好ましい。
本発明の防汚塗料組成物がクリア防汚塗料組成物である場合、本実施態様の防汚塗料組成物は、例えば、メチルエチルケトオキシム基を有する硬化性シリコーンを使用した場合に比して、透明性に優れるという効果をも有する。
【0076】
本発明の防汚塗料組成物がクリア防汚塗料組成物である場合、着色顔料(D)の含有量が1質量%以下であり、また、透明性の低下を抑制するために、後述する生物忌避剤(E)の使用量も減少させることが好ましい。防汚塗料組成物がクリア防汚塗料組成物である場合、防汚塗料組成物の固形分中の生物忌避基材(E)の含有量は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、より更に好ましくは0.01質量%以下であり、含有しないことが最も好ましい。
クリア防汚塗料組成物の防汚性を向上させる観点から、クリア防汚塗料組成物の固形分中の滑り剤(C)の含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは35質量%以上、より更に好ましくは40質量%以上であり、そして、成膜性、防汚塗膜の強度等の観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
また、クリア防汚塗料組成物である場合、硬化性シリコーン(A)中のポリオルガノシロキサン、すなわち、(A-1)の場合には両末端にメチルイソブチルケトオキシム基を有するポリオルガノシロキサン(a1)、(A-2)の場合には両末端にヒドロキシ基を有するポリオルガノシロキサン(a2)、100質量部に対する滑り剤(C)の含有量は、クリア防汚塗料組成物の防汚性を向上させる観点から、30質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは60質量部以上、より更に好ましくは70質量部以上であり、そして、成膜性、防汚塗膜の強度等の観点から、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは120質量部以下、より更に好ましくは100質量部以下、特に好ましくは90質量部以下である。
クリア防汚塗料組成物である場合、上述のように、滑り剤(C)の含有量を増加させることができる観点から、硬化性シリコーン(A)が(A-1)であることが好ましい。硬化性シリコーン(A)が(A-1)であると、(A-2)である場合に比べて粘度の高い防汚塗料組成物が調製でき、その結果、滑り剤(C)の含有量を上述の範囲としても、タレ止め性に優れた防汚塗料組成物とすることができる。
【0077】
以上より、防汚塗料組成物がクリア防汚塗料組成物である場合、硬化性シリコーン(A)が(A-1)であり、かつ、滑り剤(C)の含有量が上述の範囲である防汚塗料組成物であることが好ましい。これにより、平滑性に優れると共に、透明性に優れ、防汚性に優れる防汚塗膜が得られる。
なお、平滑性及び透明性に優れることから、例えば、水中・水上で使用される機器(太陽光発電パネル、計器・機器類の観測窓、カメラレンズ、水中ライト、水中センサー等)や潜水艇の監視窓への防汚塗料組成物など、水中での防汚性と共に、透明性が要求される用途に好適に使用される。更に、本発明の防汚塗料組成物から得られる防汚塗膜は、平滑性に優れることから、該防汚塗膜を形成すると反射が抑制されて、より視認性に優れる防汚塗膜が得られる。
【0078】
〔生物忌避剤(E)〕
本発明の防汚塗料組成物は、形成される防汚塗膜の防汚性を高めることを目的として、生物忌避剤(E)を含有することが好ましい。
生物忌避剤(E)は、水中において防汚塗膜から溶出するものであり、防汚塗膜表面に水生生物が付着することを抑制し、防汚性を向上させる効果があるものである。
生物忌避剤(E)としては、水生生物に対して忌避効果を有し、水中への一定の溶出速度を有するものが好ましく、銅ピリチオン、亜鉛ピリチオン、4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル(別名:トラロピリル)、及び4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(別名:DCOIT)から選ばれる1種以上が好ましく、防汚塗膜からの溶出性と幅広い生物種に対する忌避効果の観点から、銅ピリチオン及び亜鉛ピリチオンから選ばれる1種以上がより好ましく、溶出性の観点から、銅ピリチオンが更に好ましい。生物忌避剤(E)は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の防汚塗料組成物が生物忌避剤(E)を含有する場合、防汚塗料組成物の固形分中の生物忌避剤(E)の含有量は、防汚塗膜の強度と防汚性、並びに、防汚塗料組成物の塗工性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0079】
〔有機ケイ素架橋剤(F)〕
本発明の防汚塗料組成物は、硬化速度、防汚塗膜の強度、及び基材への付着性を向上させるために、有機ケイ素架橋剤(F)を含有することが好ましい。なお、有機ケイ素架橋剤は、これらの機能を目的とするものに限定されるものではなく、例えば、顔料の湿潤剤として機能することを目的として配合してもよい。
有機ケイ素架橋剤(F)は、ケイ素原子に、3つ又は4つの加水分解性基を有し、加水分解性基を3つ有する場合には、更に1つの炭化水素基を有する有機シランであり、その部分縮合物も含まれる。なお、上記オルガノシラン(a3)に該当する化合物を除く。
前記加水分解性基は、ケイ素原子1つに対し、3つ又は4つである。
前記加水分解性基としては、アルコキシ基が好ましい。
前記アルコキシ基としては、メトキシ基及びエトキシ基が好ましい。
前記炭化水素基としては、炭素数1以上6以下の炭化水素基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基がより好ましく、メチル基及びエチル基が更に好ましい。
有機ケイ素架橋剤(F)としては、テトラエチルオルトシリケート、テトラエチルオルトシリケートの部分解縮合物、アルキルトリアルコキシシラン、オキシムシランが挙げられ、テトラエチルオルトシリケート及びテトラエチルオルトシリケートの部分加水分解縮合物が好ましい。
【0080】
前記テトラエチルオルトシリケートの市販品としてはコルコート社製「エチルシリケート28」、及び多摩化学工業株式会社製「正珪酸エチル」等が挙げられる。
テトラエチルオルトシリケートの部分加水分解縮合物の市販品としては、多摩化学工業株式会社製「シリケート40」、及び旭化成ワッカーシリコーン株式会社製「WACKER SILICATE TES 40 WN」等が挙げられる。
前記アルキルトリアルコキシシランの市販品としては、信越化学工業株式会社製「KBM-13」等が挙げられる。
前記オキシムシランの市販品としては、東レ株式会社製「MTO(MOS)」(メチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン)、「VTO(VOS)」(ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン)等が挙げられる。
有機ケイ素架橋剤(F)は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
本発明の防汚塗料組成物が有機ケイ素架橋剤(F)を含有する場合、防汚塗料組成物の固形分中の有機ケイ素架橋剤(F)の含有量は、0.1質量%以上5質量%以下が好ましく、0.5質量%以上3質量%以下がより好ましい。
本発明の防汚塗料組成物が有機ケイ素架橋剤(F)を含有する場合、防汚塗料組成物中の有機ケイ素架橋剤(F)の硬化性シリコーン(A)100質量部に対する含有量は、0.1質量部以上5質量部以下が好ましく、0.5質量部以上3質量部以下がより好ましい。
【0082】
〔シランカップリング剤(G)〕
前記防汚塗料組成物は、硬化速度、防汚塗膜の硬化性、及び基材への付着性を向上させることを目的として、シランカップリング剤(G)を含有することが好ましい。
シランカップリング剤(G)は、ケイ素原子に、少なくとも1つのアルコキシ基と少なくとも1つの有機反応性基を有する有機アルコキシシランである。
前記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
ケイ素原子に対し、アルコキシ基は1~3個結合しており、2~3個結合していることが好ましく、3個結合していることがより好ましい。
前記有機反応性基としては、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基、イソシアネート基、ウレイド基、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、スチリル基が挙げられ、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基、イソシアネート基、ウレイド基が好ましく、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基がより好ましく、アミノ基が更に好ましい。
アミノ基を含有する具体的な有機反応性基としては、2-(アミノエチル)-3-アミノプロピル基、3-アミノプロピル基が好ましい。
【0083】
シランカップリング剤(G)としては、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-(2-アミノエチルアミノ)エチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、及びN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシランが好ましく、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシランがより好ましい。
シランカップリング剤(G)として、前記化合物の縮合物を用いてもよい。シランカップリング剤(G)は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
本発明の防汚塗料組成物がシランカップリング剤(G)を含有する場合、防汚塗料組成物の固形分中のシランカップリング剤(G)の含有量は、0.05質量%以上3質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1質量%以下がより好ましい。
前記防汚塗料組成物中のシランカップリング剤(G)の硬化性シリコーン(A)100質量部に対する含有量は、0.03質量部以上3質量部以下が好ましく、0.1質量部以上1質量部以下がより好ましい。
【0085】
本発明の防汚塗料組成物は、防汚塗膜の硬化性、強度、及び、基材への付着性の向上を目的として、有機ケイ素架橋剤(F)及び/又はシランカップリング剤(G)を含有することが好ましい。
【0086】
〔硬化触媒(H)〕
前記防汚塗料組成物は、硬化速度と防汚塗膜の膜強度を向上させるために、硬化触媒(H)を含有することが好ましい。
硬化触媒(H)としては、錫化合物、チタン化合物、アルカリ金属の脂肪酸塩、及びアミン化合物が好ましく、チタン化合物及びアミン化合物がより好ましく、チタン化合物が更に好ましい。
【0087】
前記錫化合物としては、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫アセトアセトネート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジペンタノエート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジネオデカノエート、ジオクチル錫ジネオデカノエート、ビス(ジブチルスズラウレート)オキサイド、ジブチルビス(トリエトキシシロキシ)錫、ビス(ジブチルスズアセテート)オキサイド、ジブチル錫ビス(エチルマレート)、ジオクチル錫ビス(エチルマレート)、ナフテン酸錫、オレイン酸錫等が挙げられ、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫アセトアセトネート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジペンタノエート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジネオデカノエートが好ましく、ジブチル錫ジラウレートがより好ましい。
前記錫化合物の市販品としては、日東化成株式会社製「NEOSTANN U-100」、DIC株式会社製「Gleck TL」等が挙げられる。
【0088】
前記チタン化合物としては、テトライソプロポキシチタン、テトラ-N-ブトキシチタン、テトラキス(2-エチルヘキソキシ)チタン、ジプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、チタニウムイソプロポキシオクチルグリコール等が挙げられる。
前記錫化合物及びチタン化合物以外の有機金属化合物としては、ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、亜鉛-2-エチルオクトエート、鉄-2-エチルヘキソエート、コバルト-2-エチルヘキソエート、マンガン-2-エチルヘキソエート、ナフテン酸コバルト、アルコキシアルミニウム化合物等が挙げられる。
前記アルカリ金属の脂肪酸塩としては、酢酸カリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム、オクタン酸カリウム、バーサチック酸カリウム、酢酸ナトリウム、2-エチルヘキサン酸ナトリウム、オクタン酸ナトリウム、バーサチック酸ナトリウム、シュウ酸リチウム、2-エチルヘキサン酸リチウム、オクタン酸リチウム、及びバーサチック酸リチウム等が挙げられる。
前記アミン化合物としては、1,6-ヘキサンジアミン-N,N,N,N-テトラメチル、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,2-ジメチルイミダゾール等が挙げられる。
硬化触媒(H)は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
本発明の防汚塗料組成物が硬化触媒(H)を含有する場合、防汚塗料組成物の固形分中の硬化触媒(H)の含有量は、硬化速度を向上させる観点から、好ましくは0.001質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.01質量%以上3質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以上1質量%以下である。
本発明の防汚塗料組成物が硬化触媒(H)を含有する場合、防汚塗料組成物中の硬化触媒(H)の硬化性シリコーン(A)100質量部に対する含有量は、好ましくは0.003質量部以上30質量部以下、より好ましくは0.03質量部以上5質量部以下、更に好ましくは0.3質量部以上3質量部以下である。
【0090】
〔有機溶剤(I)〕
本発明の防汚塗料組成物は、該塗料組成物の粘度を低く保ち、塗工作業性を向上させるために、有機溶剤(I)を含有してもよい。
有機溶剤(I)としては、例えば、芳香族炭化水素系有機溶剤、脂肪族炭化水素系有機溶剤、脂環族炭化水素系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、及びエステル系有機溶剤等が挙げられ、芳香族炭化水素系有機溶剤及びケトン系有機溶剤が好ましく、芳香族炭化水素系有機溶剤がより好ましい。
前記芳香族炭化水素系有機溶剤としては、トルエン、キシレン、及びメシチレン等が挙げられ、キシレンが好ましい。
前記脂肪族炭化水素系有機溶剤としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、及びオクタン等が挙げられる。
前記脂環族炭化水素系有機溶剤としては、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、及びエチルシクロヘキサン等が挙げられる。
前記ケトン系有機溶剤としては、アセチルアセトン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及び炭酸ジメチル等が挙げられ、アセチルアセトンが好ましい。
前記エステル系有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
有機溶剤(I)は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の防汚塗料組成物が有機溶剤(I)を含有する場合、塗料組成物中の有機溶剤(I)の含有量は、塗工作業性を向上させる観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、塗工時のタレを抑制したり、環境負荷を低減する観点から、好ましくは40質量%以下が好ましく、より好ましくは35質量%以下、更に好ましく30質量%以下である。
【0091】
〔他の任意成分〕
前記シリカ粒子(B)及び着色顔料(D)以外の顔料としては、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、カリ長石、カオリン及びガラス短繊維等が挙げられ、これらの無機充填剤は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記脱水剤としては、ゼオライト、多孔質アルミナ、及びオルトギ酸アルキルエステル等のオルトエステル、オルトホウ酸、イソシアネート化合物等が挙げられる。
前記タレ止め剤・沈降防止剤としては、有機粘土系ワックス(Al、Ca、Znのステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩等)、有機系ワックス(ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、アマイドワックス、ポリアマイドワックス、水添ヒマシ油ワックス等)、有機粘土系ワックスと有機系ワックスの混合物等が挙げられる。
酵素としては、例えばセリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、メタロプロテイナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、及びグリコシダーゼ等が挙げられる。
前記難燃剤としては、酸化アンチモン、及び酸化パラフィン等が挙げられる。
前記熱伝導性改良剤としては、窒化ホウ素、及び酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0092】
〔防汚塗料組成物の態様〕
本発明の防汚塗料組成物は、前記成分を1つの組成物とする1液型防汚塗料組成物でもよく、前記成分を2つ以上の組成物とし、塗布前に混合する多液型防汚塗料組成物でもよいが、保管時の変質を防ぐ点からは多液型防汚塗料組成物が好ましく、塗工作業性の観点からは1液型防汚塗料組成物の方が好ましい。なお、1液型防汚塗料組成物とする場合には、硬化性シリコーン(A)が(A-1)であることが好ましい。
前記多液型防汚塗料組成物としては、2液型防汚塗料組成物、3液以上の多液型防汚塗料組成物が挙げられ、塗工作業性の観点では2液型防汚塗料組成物が好ましく、保管時の変質を防ぐ観点からは3液以上の多液型防汚塗料組成物が好ましい。
本発明の防汚塗料組成物が多液型防汚塗料組成物の場合、ポリオルガノシロキサン(a2)と、オルガノシラン(a3)、有機ケイ素架橋剤(F)、シランカップリング剤(G)及び硬化触媒(H)は異なる液に含まれることが好ましく、シランカップリング剤(G)と、オルガノシラン(a3)、有機ケイ素架橋剤(F)及び硬化触媒(H)は更に異なる液に含まれることがより好ましい。
シリカ粒子(B)、着色顔料(D)及び生物忌避剤(E)は、ポリオルガノシロキサン(a1)又はポリオルガノシロキサン(a2)と同一の液に含まれることが好ましい。
なお、本発明の防汚塗料組成物中の各成分の含有量は、多液型防汚塗料組成物の場合であっても、全ての組成物の合計量に対する含有量である。
【0093】
〔防汚塗料組成物の製造方法〕
前記防汚塗料組成物は、以下のようにして製造することが好ましい。
まず、ポリオルガノシロキサン(a1)又はポリオルガノシロキサン(a2)とシリカ粒子(B)を混練する工程を有することが好ましい。また、混練時又は混練後に加熱してもよい。これらを予め混練することによって、両成分の親和性が向上し、シリカの凝集や塗料組成物の粘度の上昇を抑制することができる。
加熱する場合の条件は、100℃以上が好ましく、100℃以上300℃以下がより好ましく、140℃以上200℃以下が更に好ましい。圧力は常圧下又は減圧下が好ましく、処理時間は3時間以上30時間以下が好ましい。
【0094】
前記防汚塗料組成物は、前記配合成分を混合撹拌することによって得られる。
本発明の防汚塗料組成物が1液型防汚塗料組成物の場合は、必須成分である硬化性シリコーン(A)と、任意成分であるシリカ粒子(B)、滑り剤(C)、着色顔料(D)、生物忌避剤(E)、有機ケイ素架橋剤(F)、シランカップリング剤(G)、硬化触媒(H)及び有機溶剤(I)を適宜加えて、混合撹拌して得られる。
【0095】
本発明の防汚塗料組成物が、多液型防汚塗料組成物の場合は、ポリオルガノシロキサン(a2)と、オルガノシラン(a3)、有機ケイ素架橋剤(F)、シランカップリング剤(G)及び硬化触媒(H)は異なる液に含まれることが好ましい。3液型以上の多液型防汚塗料組成物の場合は、シランカップリング剤(G)と、有機ケイ素架橋剤(F)及び硬化触媒(H)は更に異なる液に含まれることが好ましい。
また、シリカ粒子(B)、着色顔料(D)、及び生物忌避剤(E)は、ポリオルガノシロキサン(a1)及び/又はポリオルガノシロキサン(a2)と同一の液に含まれることが好ましい。
滑り剤(C)はいずれの液に含まれてもよく、ポリオルガノシロキサン(a1)及び/又はポリオルガノシロキサン(a2)が含まれる液に、シリコーンオイル(C1)、親水性基を有するアクリル系ポリマー(C2)、パラフィンオイル(C3)を含むことが好ましい。
混合撹拌は、0℃以上50℃以下で行うことが好ましい。
【0096】
[防汚塗膜]
本発明の防汚塗膜は、上述した防汚塗料組成物から形成された防汚塗膜である。防汚塗膜は、基材上に本実施形態の防汚塗料組成物を塗布、又は含浸した後、これを乾燥及び硬化させることにより形成することができる。
また、防汚塗膜は、水中での水生生物から基材の汚損を防止する目的で使用される防汚塗膜であることが好ましい。
【0097】
[防汚塗膜付き基材及びその製造方法]
本発明の防汚塗膜付き基材は、基材と、前記基材表面に設けられた防汚塗膜とを有する。
前記防汚塗膜付き基材の製造方法は、本実施形態の防汚塗料組成物を基材に塗布する工程(塗布工程)、又は本実施形態の防汚塗料組成物に基材を含浸する工程を有することが好ましく、更に、該防汚塗料組成物を乾燥及び硬化する工程とを有することが好ましい。
【0098】
<塗布工程>
本発明の防汚塗料組成物を塗布する方法としては、刷毛塗装、ローラー塗装、スプレー等、ロールコーター塗装、フローコーター塗装、スリットコーター塗装、グラビアコーター塗装、スピンコーター塗装、カーテンロールコーター塗装、静電塗装、浸漬塗装、シルク印刷、スピン塗装等の公知の方法を挙げることができる。
本発明の防汚塗料組成物から形成される塗膜の厚さは、最終的に形成される防汚塗膜が後述する厚さを有するように設定される。塗膜は、1回の塗装で形成してもよいし、2回以上の塗装(2回以上塗り)で形成してもよい。
本発明の防汚塗膜の厚さは、特に限定されないが、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは50μm以上であり、そして、好ましくは1,000μm以下、より好ましくは500μm以下、更に好ましくは300μm以下である。防汚塗膜がこのような態様であると、長期の防汚性に優れた防汚塗膜となる。
【0099】
<乾燥及び硬化工程>
前述の方法により塗布した本発明の防汚塗料組成物は、例えば、23℃の条件下、好ましくは0.5日以上14日以下、より好ましくは1日以上10日以下程度放置することにより乾燥及び硬化し、防汚塗膜を得ることができる。
なお、本発明の防汚塗料組成物の乾燥及び硬化は、加熱下及び/又は送風しながら行ってもよい。
【0100】
ここで、上記基材としては、特に限定されないが、海水又は真水に接触する基材であることが好ましく、船舶、水中構造物、漁業資材、給排水管及び水上、水中で使用される機器から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、船舶及び水中構造物がより好ましく、船舶が特に好ましい。具体的には、船舶(例:コンテナ船、タンカー等の大型鋼鉄船、漁船、FRP船、木船、ヨット等の船体外板、特に喫水部から船底部分、これらの造船又は修繕船のいずれも含む)、水中構造物(例:石油パイプライン、導水配管、循環水管、工場及び火力・原子力発電所の給排水口、海底ケーブル、海水利用機器類(海水ポンプ等)、メガフロート、湾岸道路、海底トンネル、港湾設備、運河・水路等における各種水中土木工事用構造物等)、漁業資材(例:ロープ、漁網、漁具、浮き子又はブイ等)、工場及び火力・原子力発電所等における海水等の給排水管、水中・水上で使用される機器(太陽光発電パネル、計器・機器類の観測窓、カメラレンズ、水中ライト、水中センサー等)、潜水艇の監視窓等が例示される。
【0101】
上記基材の材質は、特に限定されないが、特に船舶では、鋼、アルミニウム、木材、FRP、ガラス、プラスチック等が挙げられ、また、水上、水中で使用される機器では、ガラス、プラスチック等が挙げられる。
また、上記基材は、防錆剤等のその他の処理剤により処理されていてもよく、予め表面にプライマー等の塗膜が形成されているものであってもよく、本組成物が既に塗装されていてもよく、本塗膜又はその他の防汚塗膜が形成されて経年劣化した旧防汚塗膜であってもよく、特に限定されない。
【実施例】
【0102】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0103】
[防汚塗料組成物の製造]
<硬化性シリコーン(A)及びシリカ粒子(B)の混練物>
表1に示す硬化性シリコーン(A)及びシリカ粒子(B)を表1に記載した割合で混練し、混練物を得た。
【0104】
【0105】
<防汚塗料組成物の成分>
防汚塗料組成物に用いた各成分を表2に示す。表2中の粘度及び動粘度は、いずれも25℃における値である。
【0106】
【0107】
<親水性基を有するアクリル系ポリマー(c2-1)>
合成例1(親水性基を有するアクリル系ポリマー(c2-1)の合成)
反応は常圧、窒素雰囲気下で行った。撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管、滴下ロートを備えた反応容器に、メチルアミルケトン42.86質量部を仕込み、撹拌しながらメチルアミルケトンが100℃になるまで加熱した。反応混合物の温度を100±5℃に保ちながら、NKエステル AM-90G(メトキシポリエチレングリコールアクリレート、平均ポリエチレングリコール単位数9、新中村化学工業株式会社製)40.0質量部、イソブチルアクリレート60.0質量部、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)4.0質量部からなる混合物を4時間かけて反応容器内に滴下した。その後、100±5℃を保ちながら2時間撹拌し、親水性基を有するアクリル系ポリマー(c2-1)の溶液を得た。得られた溶液の固形分は70.3質量%、粘度109mPa・sであり、親水性基を有するアクリル系ポリマー(c2-1)の重量平均分子量(Mw)は9,100であった。
【0108】
(ポリマー溶液の固形分)
ポリマー溶液を、108℃1気圧で3時間乾燥して得られた固形分の質量を乾燥前のポリマー溶液の質量で除して固形分(質量%)を求めた。
【0109】
(ポリマー溶液の粘度)
E型粘度計(TV-25、東機産業株式会社製)を用いて、液温25℃のポリマー溶液の粘度(mPa・s)を測定した。
【0110】
(ポリマーの平均分子量)
ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、下記条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定した。
(GPC条件)
装置:「HLC-8220GPC」(東ソー株式会社製)
カラム:「TSKgel SuperH2000」及び「TSKgel SuperH4000」(それぞれ東ソー株式会社製、6mm(内径)、15cm(長さ))を連結した。
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:0.500mL/min
検出器:RI
カラム恒温槽温度:40℃
標準物質:ポリスチレン
サンプル調製法:ポリマー溶液にTHFを加え、メンブランフィルターで濾過してGPC測定用サンプルを得た。
【0111】
<防汚塗料組成物>
表3に記載された配合量(質量部)に従って各成分を配合し、混合撹拌して、1液型防汚塗料組成物(実施例1~9、及び比較例1~9)を得た。
また、表3に記載された配合量(質量部)に従って各成分を配合し、主剤、硬化剤の各液をそれぞれ混合撹拌して、2液型防汚塗料組成物(実施例10~23及び比較例10~23)を得た。
【0112】
[評価]
得られた塗料組成物について、以下の評価を行った。
<防汚性試験>
サンドブラスト処理鋼板(縦300mm×横100mm×厚さ2.3mm)に、エポキシ樹脂系防食塗料(商品名「バンノー500」、中国塗料株式会社製)を、乾燥膜厚が150μmとなるようにスプレー塗装機を用いて塗装し、常温下(以下、23℃)で24時間乾燥させた。続いて、エポキシ樹脂系バインダーである(商品名「CMP バイオクリン SG-R」、中国塗料株式会社製)を、乾燥膜厚が100μmとなるようにスプレー塗装機を用いて塗装し、常温下で24時間乾燥させた。
次いで、この下塗り塗膜上に前記各実施例及び比較例の防汚塗料組成物を十分に混合した後、乾燥膜厚が200μmとなるようにスプレー塗装機を用いて塗装し、常温下で1週間経過後、塗膜付き試験板を作成した。
得られた防汚塗膜付き試験板を広島県宮島湾にて静置浸漬して、3か月後に試験板表面に海生生物が付着した領面積の比率を目視観察にて、下記の基準で評価した。
【0113】
(評価基準)
5:海生生物の付着面積が、試験板全体の10%未満
4:海生生物の付着面積が、試験板全体の10%以上30%未満
3:海生生物の付着面積が、試験板全体の30%以上50%未満
2:海生生物の付着面積が、試験板全体の50%以上80%未満
1:海生生物の付着面積が、試験板全体の80%以上
【0114】
<平滑性の測定>
前記実施例及び比較例の防汚塗料組成物を平滑なポリ塩化ビニル製板(縦150mm×横70mm×厚さ5mm)にスプレー塗装機を用いて塗装し、常温下で7日間乾燥させた。得られた防汚塗膜付きポリ塩化ビニル製試験板に対し、レーザー変位計により30mm×30mmの範囲を250μmメッシュで測定し、121×121点のデータを取得した。このデータより、塗膜のRz(最大高さ粗さ)、RSm(粗さ曲線要素の平均長さ)を算出した。
【0115】
<摩擦抵抗の評価>
直径310mmのポリ塩化ビニル製円筒の外側面に、下塗り塗料としてエポキシ系バインダー(商品名「CMP バイオクリン SG-R」、中国塗料株式会社製)を乾燥時の膜厚が100μmとなるよう塗布し、乾燥後得られた塗膜上に前記実施例及び比較例の防汚塗料組成物を、乾燥膜厚が100μmとなるようにスプレー塗装機を用いて塗装し、常温下で24時間乾燥させた。
形成される防汚塗膜の摩擦抵抗は、二重円筒式抵抗測定装置を用いて評価した。二重円筒式抵抗測定装置は、内外2つの円筒で構成され、人工海水を満たした外円筒の中に測定対象試料の塗膜を外側面に形成した内円筒を設置し、外円筒を回転させて回転水流を発生させた際に内円筒にかかるトルク応力を測定するものである。
上記実施例、比較例の塗膜付き試験円筒をこの内円筒として用い、測定したトルク応力を無塗装の内円筒を用いて得た基準トルク応力と比較し、その増加割合をトルク増加率%で表し、表3に示した。トルク増加率%が小さい値であるほど塗膜による摩擦抵抗低減効果は高い。
測定は、外円筒の回転速度を1,000rpmとして、温度23℃にて実施した。
【0116】
<隠ぺい率の測定>
隠ぺい率は、JIS K 5600-4-1 に準じて測定した。すわなち、前記実施例6~9及び比較例6~9の防汚塗料組成物を、乾燥膜厚が500μmとなるようにペイントアプリケーターを用いて隠ぺい率試験紙に塗装し、常温下で7日間乾燥させた。得られた防汚塗膜付き隠ぺい率試験紙の黒部に塗装した箇所のY値(YB)と、試験紙の白部に塗装した箇所で箇所のY値(YW)を分光色彩計(型式SD 5000、日本電色工業株式会社製)を用いて測定し、隠ぺい率(%)をYB/YW×100により求めた。
隠ぺい率の値が低い程、透明性に優れることを意味する。
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
実施例及び比較例によれば、本発明の防汚塗料組成物によれば、防汚性及び平滑性に優れた防汚塗膜が得られることが分かる。更に、実施例6~9においては、透明性に優れた防汚塗膜が得られた。