(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-16
(45)【発行日】2025-06-24
(54)【発明の名称】情報表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20250617BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20250617BHJP
B60K 35/40 20240101ALI20250617BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20250617BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/23
B60K35/40
H04N5/64 501D
H04N5/64 521Z
(21)【出願番号】P 2024062435
(22)【出願日】2024-04-09
(62)【分割の表示】P 2022206231の分割
【原出願日】2019-01-17
【審査請求日】2024-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】高木 栄治
(72)【発明者】
【氏名】杉山 寿紀
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-025722(JP,A)
【文献】特開平08-072587(JP,A)
【文献】特開2007-087792(JP,A)
【文献】国際公開第2018/139157(WO,A1)
【文献】特開2014-026244(JP,A)
【文献】国際公開第2013/190959(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/170406(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/190434(WO,A1)
【文献】特開2017-097074(JP,A)
【文献】特開2017-207622(JP,A)
【文献】特開2015-194709(JP,A)
【文献】特開平09-043540(JP,A)
【文献】特表2008-512696(JP,A)
【文献】特開2012-032611(JP,A)
【文献】特開2018-059965(JP,A)
【文献】特表平03-505489(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0050564(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/23 - 35/235
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントガラスに映像光を反射させ観視者に映像情報を表示する情報表示装置であって、
照明光束を発生するバックライト装置と、
前記バックライト装置からの照明光束を映像情報に応じて変調して前記フロントガラスに出射する表示パネルと、
前記フロントガラスの一部に設けられ、前記表示パネルからの映像光を前記観視者の眼に向かって反射させるフィルムと、
を備
え、
前記フィルムは、映像光入射面から順にフロントガラスに向けて透明拡散シート、偏光板が順次配置されている、
情報表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報表示装置において、
前記バックライト装置は、一部にフレネルレンズを含んでいる、
情報表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の情報表示装置において、
前記表示パネルの光出射面に光束を所望の方向に屈折させるリニアフレネルレンズを含んでいる、
情報表示装置。
【請求項4】
請求項1に記載の情報表示装置において、
前記表示パネルの光出射面に設けられたリニアフレネルレンズと、
前記リニアフレネルレンズを保護するための保護カバーと、
を備え、
前記保護カバーは、略透明な基
材を含み、当該保護カバーの光出射側の一部にブラックストライプが設けられ
ている、
情報表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の情報表示装置において、
更に、前記保護カバーの互いに隣接する前記ブラックストライプの間に、反射防止膜が設けられ
ている、
情報表示装置。
【請求項6】
請求項1に記載の情報表示装置において、
前記表示パネルの映像表示面
に設けられた前記表示パネルを保護する保護カバーを含み、
前記保護カバーの光入射側には、光束のP波成分を吸収又は反射する膜が設けられ
ている、
情報表示装置。
【請求項7】
請求項
1に記載の情報表示装置において、
前記フィルムを構成する偏光板は、S偏光の映像光を
透過する、
情報表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や電車や航空機等(以下では、総称して「車両」と言う)のフロントガラス又はコンバイナに画像を投影する情報表示システムに関し、その画像をフロントガラスで折り返してミラーの如く反射させてその実像又は虚像を観察するようにした車両用情報表示装置およびその情報表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロントガラスやコンバイナに映像光を投写して虚像を形成し、ルート情報や渋滞情報などの交通情報、燃料残量や冷却水温度等の自動車情報を表示する所謂、ヘッドアップディスプレイ(HUD:Head-Up-Display)装置が以下の特許文献1により既に知られている。
【0003】
この種の情報表示装置においては、ドライバが虚像を観視できる領域を拡大することが望まれる一方、虚像が高解像度で視認性が高いことも重要な性能要因である。
【0004】
ヘッドアップディスプレイ装置は、映像表示装置に表示された映像を、凹面ミラー(凸レンズの作用)を含む光学系を用いてドライバに拡大像として虚像を提供するものであり、最終反射面としてフロントガラス又はコンバイナが必ず必要である。
【0005】
上述されたヘッドアップディスプレイ装置に使用される映像表示装置としては、高品位な映像が容易に得られ、かつ、安価であることから、液晶表示素子(液晶表示パネル)が用いることが多いが、一方で、セットの小型化のために、小型の液晶表示素子が用いられることから、得られる投写画像の解像度が不足し、例えばスマートフォンなどに表示される高解像度な映像を表示するには不向きであると言う新たな課題が明確になった。
【0006】
本発明は、上述したヘッドアップディスプレイ装置の解像度を補うため、ドライバがフロントガラスを介して観視する外部景観に対して映像表示領域ごとに異なる技術手段を用いて映像情報表示装置を併用する車両用情報表示システムと、かかるシステムに用い、高解像度な映像情報をドライバに提供するための情報表示装置を含めた情報表示装置を実現する技術手段に関する。
【0007】
また、以下の特許文献2によれば、情報表示装置の映像源として使用する安価な液晶表示パネルを太陽光による損傷から守るために、液晶表示パネルからの表示光を通過させて赤外線を反射させる透過反射部材(ホットミラー)を、平行でない状態で、液晶表示パネルの前側に離間して設けるヘッドアップディスプレイ装置が既に知られている。
【0008】
一方、異なる構造のヘッドアップディスプレイ装置として、以下の非特許文献1にも開示されるような自動車の天井(サンバイザー)付近にコンバイナを含めた本体を取り付ける装置も既に提案されているが、衝突事故を起こした時にHUD装置が外れた場合、運転者に怪我を負わせる可能性があるなど、なお安全上の課題が残る。そのためヘッドアップディスプレイ装置としては、今後、フロントガラスで直接映像光を反射させる方式が主流となると考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2015-194707号公報
【文献】特許第4788882号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】PIONEER R&D(Vol.22,2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の従来技術である特許文献1に開示されたヘッドアップディスプレイ装置の例では、画像を表示するデバイスと表示デバイスに表示された画像を投写する投写光学系を備え、投写光学系として表示デバイスから観視者の光路において第一ミラーと第二ミラーを有し、第一ミラーにおける画像長軸方向の入射角と第一ミラーにおける画像短軸方向の入射角、及び、表示デバイスの画像表示面と第一ミラーとの間隔と、観視者によって視認される虚像の水平方向の幅の関係を所定の条件を満足させることで、装置を実現している。しかしながら、上述した映像の高解像度化についての具体的な解決手段は示されておらず、ましてや、昼間の所定条件下において太陽光がフロントガラスを通過して凹面ミラーで集光され液晶パネルと偏光板に像ダメージを与え性能が大幅に低下すると言う新たな問題に関しては、その記載すらなかった。
【0012】
今後は、上記の特許文献1に記載されたフロントガラスを反射面とする方式が主流となると考えられるが、しかしスマートフォンを代表とする情報端末の表示映像の高解像度化に対する対応については全く考慮されていない。加えて、車両用情報表示装置の実用化には非常に重要な問題となる、昼間の所定の条件化で発生する、フロントガラスを透過して凹面ミラーで集光された太陽光が液晶表示装置の光出射側に設けられた偏光板や液晶パネルそのものに集光され、当該太陽光の熱と光線強度によって変質して正常な機能を果たさなくなる、所謂、焼け(炭化)の発生に対する対応策についても全く配慮されていない。
【0013】
同様に、最終反射面がコンバイナである非特許文献1に開示された技術においても、表示映像の高解像度化や、映像表示素子を液晶パネルとした場合に昼間の所定条件化において太陽光がフロントガラスとコンバイナを通過して凹面ミラーで集光され液晶パネルと偏光板にダメージを与え性能が大幅に低下するという新たな問題に対しては、何ら配慮されていなかった。
【0014】
更に、上記特許文献2においては、太陽光による液晶表示パネルの損傷のおそれを低減するため、太陽光の赤外線を選択的に反射させるための透過反射部材(ホットミラー)を光路上に配置することが提案されている。しかしながら、侵入する太陽光は赤外線だけではなく、可視領域や紫外領域の光線をも含んでおり、太陽光による液晶表示素子及び偏光板に与えるダメージを軽減するためには、赤外線の低減だけでは不十分であった。さらに可視光を含む外光の侵入による悪影響である運転者が視認する映像の品位、特に、コントラスト性能と見かけの解像度が大幅に低下すると言う新たな問題や表示映像の高解像度化に対する対応については、何等の考慮もされていなかった。
【0015】
このように、上述した従来技術によるドライバに映像情報を提供する情報表示装置としてヘッドアップディスプレイ装置では、解像度の高い表示映像を得るためには大型液晶表示素子を使用する必要があり、そのため、装置の小型化と高解像度化を両立できないという第一の課題が明確になった。
【0016】
更に、ヘッドアップディスプレイ装置の映像表示装置として使用する液晶パネルにおいては、実際に車載した場合、昼間の所定条件下において太陽光がフロントガラスを通過して凹面ミラーで集光され、液晶パネルと偏光板にダメージを与え、その結果、性能が大幅に低下すると言う第二の課題も明確になった。
【0017】
本発明は、上述した従来技術における問題点に鑑みてなされたものであり、より具体的には、装置の小型化と高解像度化を両立可能で実用にも耐えうる車載用情報表示システムと、そのための情報表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明では、上述した目的を達成するため、車両のフロントガラスに映像光を反射させ観視者に映像情報を表示する情報表示システムであって、映像光を前記フロントガラスで反射させて虚像を観視者に観視させる第一の情報表示装置と、映像光を前記フロントガラスで反射させて反射映像を観視者に観視させる第二の情報表示装置と、を備え、第一の情報表示装置により表示する映像の解像度は、第二の情報表示装置により表示する映像の解像度より低い車両用情報表示システムが提供される。
【0019】
また、本発明では、車両のフロントガラスに映像光を反射させ観視者に映像情報を表示する情報表示システムを構成するための情報表示装置であって、一部に開口部を有する筺体の内部に、映像情報を表示する映像光を生成する映像光生成手段と、映像光生成手段からの映像光に所定の光学的な処理を施す映像光処理手段と、映像光処理手段からの映像光を、筺体の開口部を介して観視者が映像情報をフロントガラスの前方に虚像として認識するように投写する手段と、を備えている情報表示装置が提供される。
【0020】
さらに、本発明では、車両のフロントガラスに映像光を反射させ観視者に映像情報を表示する情報表示システムを構成するための情報表示装置であって、指向性の強い照明光束を発生するバックライト装置と、バックライト装置からの指向性の強い照明光束を映像情報に応じて変調してフロントガラスに出射する表示パネルと、フロントガラスの一部に設けられ、表示パネルからの映像光を観視者がフロントガラスの前方に反射像として認識するように変換する光方向変換パネルと、を備えている情報表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0021】
上述した本発明によれば、ドライバが自車を運転する際にフロントガラスを介して観視する外部景観にフロントガラスで反射させ映像情報を得る情報表示装置としてフロントガラスの一部領域にはヘッドアップディスプレイ装置により遠方に大画面の虚像を表示し、他方、例えばフロントガラスの下端領域には大型高解像度の映像表示装置の映像をフロントガラスで反射させ反射像を直接ドライバや同乗者が観視できる車両用情報表示システムを提供することができる。この結果、ドライバが必要な情報をフロントガラスに解像度や映像の大きさを異にする映像を適宜表示することができる。
【0022】
一方、上述した本発明によれば、ヘッドアップディスプレイ装置の小型化を実現しながら、太陽光を含む外光による運転者が観察する虚像の歪や収差を補正し、同時に、虚像光学系を形成する凹面ミラーにより、フロントガラスを通して入射する太陽光(ほとんどがP偏波成分)を含む外光が集光されて映像表示装置である液晶パネルや偏光板などにダメージを与えて性能を低下させることを軽減することが可能であり、即ち、太陽光を含む外光に含まれる幅広い範囲の波長光による悪影響を低減して優れた性能の虚像を形成する車両用情報表示システムのための情報表示装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の車両用情報表示システムを搭載する自動車の上面図及びフロントガラスの曲率半径の違いを説明する図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る第一の情報表示装置の虚像光学系を含めた概略構成示す図である。
【
図3】第一の情報表示装置や第二の情報表示装置とフロントガラスと運転者の視点位置と太陽光の関係を示す概略構成図である。
【
図4】車両用情報表示システムの第一の情報表示装置とフロントガラスと画像表示位置と運転者の視点位置と太陽光の関係を示す概略構成図である。
【
図5】車両用情報表示システムの第一の情報表示装置に係る略構成図である。
【
図6】車両用情報表示システムの第一の情報表示装置に係る構成部品の作用を説明するための略構成図である。
【
図7】車両用情報表示システムの第二の情報表示装置とフロントガラスと画像表示位置と運転者の視点位置と太陽光の関係を示す概略構成図である。
【
図8】車両用情報表示システムの第二の情報表示装置の概略構成図である。
【
図9】第二の情報表示装置に係る光源装置の構成を示す断面図である。
【
図10】第二の情報表示装置の光源装置の構成と作用を示す上面及び断面図である。
【
図11】第二の情報表示装置に係る光源装置を構成する光学部品の作用を説明するための説明図である。
【
図12】第二の情報表示装置に係る光学部品の構成を説明する概念図である。
【
図13】車両用情報表示システムを構成する第一の情報表示装置と第二の情報表示装置を設けた自動車のコックピットの一例を示す概略構成図である。
【
図14】車両用情報表示システムを構成する第一の情報表示装置と第二の情報表示装置を設けた自動車のコックピットの他の例を示す概略構成図である。
【
図15】車両用情報表示システムにおいてフロントガラスに粘着されるフィルムの構成を説明する図である。
【
図16】S偏光とP偏光による入射角度によるガラスの反射率変化を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面等を用いて、本発明の実施例について詳細に説明する。なお、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0025】
<車両用情報表示システムの概要>
図1(a)は、後述する本発明の実施例に係る情報表示装置100を、自動車や電車や航空機等のうち、特に、自動車に搭載した上面図である。自動車1010の運転席前部には被投影部材としてのフロントガラス6が存在する。このフロントガラス6は自動車のタイプによって車体に対する傾斜角度が異なる。更に、発明者らは最適な虚像光学系を実現するためこの曲率半径も調査した。その結果、フロントガラス6は
図1(b)に示すように、自動車の接地面に対して水平な水平方向の曲率半径Rhと水平軸に対して垂直方向の曲率半径Rvとでは異なり、RhとRvの間には一般に下記の関係が成り立つことが判った。
Rh>Rv
また、この曲率半径の違い、即ち、Rvに対するRhは1.5倍から2.5倍の範囲にあるものが多いことも判明した。
【0026】
本発明では、ドライバが自車を運転する際にフロントガラスを介して観視する外部景観にフロントガラスで反射させ映像情報を表示する。情報表示装置は、フロントガラスを複数の領域に分割して、その一部領域にはヘッドアップディスプレイ装置により遠方に大画面の虚像を表示する。他方、例えばフロントガラスの下端領域には大型高解像度の映像表示装置の映像をフロントガラスで反射させ反射像を直接ドライバや同乗者が観視する。この結果、ドライバが必要な情報をフロントガラスの表示領域に応じて解像度や映像の大きさを異にして適宜表示可能な情報映像システムが提供される。
【0027】
その一例としてのヘッドアップディスプレイ装置は、投写面に映像情報を虚像によって表示する情報表示装置であって、一部に開口部を有する筺体の内部に、映像情報を表示する映像光を生成する映像光生成手段と、前記映像光生成手段からの映像光に所定の光学的な処理を施す手段と、前記映像光処理手段からの映像光を、前記筺体の開口部を介して前記投写面に、観視者が映像情報を前記投写面の前方に虚像として認識可能とするように投写する手段とを備えた情報表示装置が提供される。
【0028】
より具体的は、以下にも詳述するが、本発明の情報表示装置では、開口部に設けたグレアストップ41にP波の太陽光を吸収する偏光板が設けられている。すなわち、偏光板は、P偏光の太陽光を吸収し、S偏光の太陽光を透過させる。偏光板は、例えば、λ/4板またはλ/8板またはλ/16板である。グレアストップ41にP波成分を吸収させることで、次の効果が得られる。
(1)昼間の所定条件化においてフロントガラスを通過したP偏光の太陽光成分(コンバイナ方式ではその後コンバイナも通過)を凹面ミラーの手前で吸収することで、フロントガラスを通過した太陽光が液晶パネルと偏光板に戻らないようにする。
(2)情報表示装置を使用しない場合には太陽光が映像表示装置に戻らないように凹面ミラーを所定の角度を回転させることで凹面ミラーにより集光される太陽光が映像表示装置に戻ることを防止する。
【0029】
更に、フロントガラスの下端領域の映像表示領域に対応したダッシュボードの位置に大型高解像度の映像表示装置を設け、表示映像をフロントガラスで反射させ反射像を直接ドライバや同乗者が観視する情報映像システムが提供される。映像表示位置に対応したフロントガラスには映像光を散乱する作用を持つ透明スクリーンを設け効率よく反射させることで、映像をドライバや同乗者に実用上問題のないレベルの画質で提供することが出来る。前述した大型高解像度の映像表示装置は高輝度であるため映像光の出射方向を制御することで直接映像光がドライバや同乗者の眼に入ることを防止する。
【0030】
<車両用情報表示システムの第一の情報表示装置>
図2は本発明の車両用情報表示装置の第一の情報表示装置の周辺機器構成を示す概略構成図であり、ここでは、その一例として、自動車のフロントガラス6に画像を投影する情報表示装置100について説明する。本発明の一実施例である情報表示装置100としてのヘッドアップディスプレイ装置は、運転者の視線(アイポイント:後に詳述する)8において自車両の前方に虚像V1を形成するため、被投影部材(本実施例では、フロントガラス6の内面)にて反射された各種情報を虚像VI(Virtual Image)として表示する装置(所謂、HUD(Head up Display))である。かかるHUD装置を構成する図示の制御装置40は、ナビゲーションシステム61から、自車両が走行している現在位置に対応する道路の制限速度や車線数、ナビゲーションシステム61に設定された自車両の移動予定経路などの各種の情報を、前景情報(即ち、上記虚像により自車両の前方に表示する情報)として取得する。
【0031】
また、図示の運転支援ECU62は、周辺監視装置63での監視の結果として検出された障害物に従って駆動系や制御系を制御することで、運転支援制御を実現するための制御装置である。かかる運転支援制御としては、例えば、クルーズコントロール、アダプティブクルーズコントロール、プリクラッシュセーフティ、レーンキーピングアシストなどの周知技術を含む。
【0032】
図示の周辺監視装置63は、自車両の周辺の状況を監視する装置であり、一例としては、自車両の周辺を撮影した画像に基づいて自車両の周辺に存在する物体を検出するカメラや、探査波を送受信した結果に基づいて自車両の周辺に存在する物体を検出する探査装置などである。
【0033】
上述したHUD装置の制御装置40は、このような運転支援ECU62からの情報(例えば、先行車両までの距離及び先行車両の方位、障害物や標識が存在する位置など)を前景情報として取得する。更に、この制御装置40には、イグニッション(IG)信号、及び、自車状態情報が入力される。これらの情報の内、自車状態情報とは、車両情報として取得される情報であり、解像度の高い表示を必要としない、例えば、内燃機関の燃料の残量や冷却水の温度など、予め規定された異常状態となったことを表す警告情報を含んでいる。また、方向指示器の操作結果や、自車両の走行速度、更には、シフトポジション情報なども含まれている。以上述べた制御装置40は、イグニッション信号が入力されると起動する。以上が、本実施例の情報表示装置全体システムの説明である。
【0034】
なお、被投影部材は、情報が投影される部材であればよく、前述したフロントガラス6だけではなく、その他、コンバイナであっても良い。即ち、本実施例の情報表示装置100では、運転者の視線8において自車両の前方に虚像を形成して運転者に視認させるものであればよい。
【0035】
上述した構成を有する情報表示装置100では、情報を表示する映像光を投写する映像表示装置4と、映像表示装置4に表示された映像を凹面(自由曲面)ミラー1で虚像を形成する際に発生する歪や収差を補正するために補正用のレンズ素子2を備えている。この情報表示装置100からの映像光束は開口部(図示せず)からフロントガラス6に向かって出射する。
【0036】
また、情報表示装置100は、更に、映像表示装置4やそのバックライトを制御する制御装置40とを備えている。なお、上記映像表示装置4とバックライトなどを含む光学部品は、以下にも述べる虚像光学系であり、光を反射させる凹面ミラー1を含んでいる。また、この光学部品において反射した光は、被投影部材であるフロントガラス6にて反射されて運転者の視線8へと向かう。
【0037】
なお、上記の映像表示装置4としては、例えば、バックライトを有するLCD(Liquid Crystal Display)の他に自発光のVFD(Vacuum Flourescent Display)などがある。
【0038】
一方、上述した映像表示装置4に代えて、投写装置によりスクリーンに映像を表示して、前述の凹面ミラー1で虚像とし被投影部材であるフロントガラス6又はコンバイナ(図示せず)で反射して運転者の視点8に向かわせても良い。
【0039】
ここで、虚像の歪みを低減するために凹面ミラー1の形状は、
図1に示す上部(相対的に運転者の視点8との距離が短いフロントガラス6の下方で光線が反射する領域)では、拡大率が大きくなるように相対的に曲率半径が小さく、他方、下部(相対的に運転者の視点との距離が長いフロントガラス6の上方で光線が反射する領域)では、拡大率が小さくなるように相対的に曲率半径が大きくなる形状とすると良い。また、映像表示装置4を凹面ミラー1の光軸に対して傾斜させることで上述した虚像倍率の違いを補正して発生する歪みそのものを低減することによっても、更に良好な補正が実現できる。
【0040】
一方、乗用車のフロントガラス6は、
図1(b)にも示すように、本体垂直方向の曲率半径Rvと水平方向の曲率半径Rhが異なり、一般には、Rh>Rvの関係にある。このため、反射面としてフロントガラス6を捉えると、凹面ミラー1のトロイダル面となる。このため、本実施の形態の情報表示装置100では、凹面ミラー1の形状はフロントガラス6の形状による虚像倍率を補正するように、即ち、フロントガラス6の垂直方向と水平方向の曲率半径の違いを補正するように水平方向と垂直方向で異なる平均曲率半径とすれば良い。この時、凹面ミラー1の形状は、光軸に対称な球面または非球面(以下に[数2]で示す)形状では、光軸からの距離rの関数であり、離れた場所の水平断面と垂直断面形状を個別に制御できないことから、以下に[数1]で示す自由曲面としてミラー面の光軸からの面の座標(x,y)の関数として補正することが好ましい。
【0041】
【0042】
【0043】
<太陽光の装置内への侵入とその抑制原理>
次に、車両の運転席における太陽光の上述した情報表示装置内への侵入について説明する。
図3は、車両の運転席の近傍における状態を示しており、上述した情報表示装置100は、車体を構成するボンネット44と天井板45との間に取り付けられたフロントガラス6の下方において、例えば、速度計42等の計器類を含むダッシュボードの裏側(後方のボンネット側)に配置されている。また、この図には、車両のステアリング43や、運転者である観視者の目8と共に、車両の上方には昼間の太陽60が示されている。また、
図4は、
図3の構成から、主に、太陽60とフロントガラス6と観視者の目8とを取り出して示しており、
図5は、情報表示装置100の筐体7内に収納された構成を示している。
【0044】
これら
図3及び
図4において、太陽60からの強い光は、白抜きの矢印で示すように、車両のフロントガラス6に対して入射角θ1で入射し、その一部がフロントガラス6により反射された後、残りの光は、情報表示装置100の上部に設けられた開口部に設けた、筐体内部に配置した光学素子や構造物で反射する映像に無関係な反射光を遮断するグレアストップ41(
図5参照)を通って当該装置の内部に侵入する。なお、この時、
図4からも明らかなように、特に、50度以上の入射角では、
図4に示すように太陽光のS偏光成分(S波)の多くは上記のフロントガラス6上で反射される。その結果、情報表示装置100内に侵入する太陽光の多くはP偏光成分(P波)となる。
【0045】
他方、情報表示装置100から出射される映像光は、
図3及び
図4において実線の矢印で示すように、フロントガラス6又はコンバイナ(図示せず)において反射されて観視者の目8に入射することとなる。
【0046】
より具体的には、太陽光などの自然光は、
図17に示すように紫外線から赤外線までの幅広い波長領域の光であるばかりでなく、偏光方向も光の進行方向に垂直な振動方向の光と水平方向の光である2種類の偏光方向(以下S偏光とP偏光と記載)の光とが混ざった状態で存在する。前述したようにフロントガラス6への入射角度が50度を超える領域では、
図16に示すように、ガラス面上での反射率は、S偏光やP偏光、更には、入射角によりそれぞれ異なる。
【0047】
そこで、本実施例では、上述した発明者による知見に基づき、即ち、フロントガラス6を通して侵入する太陽光の多くはP偏光成分であることを考慮し、情報表示装置100内に侵入する太陽光を含む外光を抑制するためには、特に、P波成分の低減が有効であること、加えて、情報表示装置100から投写される映像光としては、S波成分を利用することが効果的であることを確認した。
【0048】
<第一の情報表示装置の具体的な実施例>
続いて、上述した知見に基づいて構成された情報表示装置100の具体的な光学的な構成について、以下に説明する。
【0049】
本発明の一実施例としての情報表示装置100の構成を、
図3を基に説明する。映像表示装置4と凹面ミラー1の間に透過型光学部品として、例えばレンズ素子2が配置されている。レンズ素子2は、凹面ミラー1への光線の出射方向を制御することで凹面ミラー1の形状と合わせて得られる虚像の歪曲収差補正を行なうと同時に、前述したフロントガラス6の水平方向の曲率半径と垂直方向の曲率半径の違いによって生じる非点収差を含めた収差補正を行う。
【0050】
また、収差補正能力を更に高めるために、上述したレンズ素子2は、複数枚のレンズで構成されても良い。又は、レンズ素子2の代わりに曲面(自由曲面)ミラーを配置して、曲面ミラーを用いて光路の折り返しを行うと同時に、凹面ミラー1への光線の入射位置を制御することで、歪曲収差を低減することも出来る。以上にも述べたように、更に、収差補正能力を向上させるために最適設計された光学素子を凹面ミラー1と映像表示装置4の間に設けても、本発明の技術的思想又は範囲を逸脱するものではないことは言うまでもない。更に、上述したレンズ素子2の光軸方向の厚さを変化させることで、本来の収差補正の他に凹面ミラー1と映像表示装置4の光学的な距離を変えて、虚像の表示位置を遠方から近接位置まで、連続的に変化させることも出来る。
【0051】
車外から注ぎ込む太陽光はフロントガラス6によってS偏光成分が反射されP偏光成分が車内に向け透過し開口部から情報表示装置100に入射する。開口部に設けたグレアストップ41の片面には、入射した太陽光のうちP波成分を吸収し、S偏光を透過する偏光板を設ける。更に、グレアストップ41の他方の面または偏光板の太陽光入射面には、紫外線領域と赤外線領域の光を反射する反射膜を設ける。この結果、可視光領域のP偏波と紫外線領域と赤外光領域のほとんどの光が映像表示装置4に入射することが無くなり、結果として映像表示装置4が受ける太陽光のダメージが軽減される。
【0052】
一方、情報表示装置100の画質を低下させる要因として、映像表示装置4から凹面ミラー1に向かって出射する映像光線が途中に配置されたレンズ素子2の表面で反射して映像表示装置4に戻り、再度反射して本来の映像光に重畳されて、画質を低下させることが知られている。このため、本実施例では、レンズ素子2の表面に反射防止膜を成膜して反射を抑えるだけでなく、さらに、レンズ素子2の映像光入射面と出射面のいずれか一方、若しくは、両方のレンズ面形状を、上述した反射光が映像表示装置4の一部分に集光しないような形状(例えば、映像表示装置4に凹面を向けた形状)となるよう、その面形状に制約を持たせて設計することが好ましい。
【0053】
前述したグレアストップ41の偏光板の映像表示装置4側にλ/16板(明るさとの兼ね合いでλ/4またはλ/8など最適選択する)を設け、更に、その取り付け角度を調整する機構を設け、例えば、図に破線で示す位置に移動させること、で映像表示装置4からの出力であるS偏波の映像光の偏光角度を変化させる。この結果ドライバが偏光サングラスを装着していても本発明のグレアストップ41に設けられた波長板の取り付け角度を適宜変化させれば十分な明るさと色の全面性に優れた虚像を得ることが出来る。
【0054】
また、グレアストップ41に設けた偏光板は、車内に入射した太陽光のP偏光成分を吸収しても、光を受ける偏光板の面積が開口部と同じであるため信頼性を損なうことが無い。更に、この偏光板はS偏光を選択的に透過させるため情報表示装置100により得られる虚像のコントラスト性能を向上させるという効果もある。
【0055】
一方、
図5及び
図6に示した本発明の情報表示装置100に使用する光源装置10としては、製品寿命が長い固体光源を採用することが好ましい。例えば、光源装置10は、周囲温度の変動に対する光出力変化が少ないLED(Light Emitting Diode)と、光の発散角を低減する光学手段を設けた偏光ビームスプリッタ(PBS:Polarizing Beam Splitter)とを備え、PBSにより偏光変換を行なうことが好ましい。
【0056】
液晶パネルのバックライト側(光入射面)とレンズ素子2側(光出射面)には、ここでは図示しない偏光板が配置されており、これにより、映像光のコントラスト比を高めている。バックライト側(光入射面)に設ける偏光板には、偏光度が高いヨウ素系のものを採用すれば、高いコントラスト比が得られる。一方、レンズ素子2側(光出射面)には染料系の偏光板を用いることによれば、外光が入射した場合や環境温度が高い場合でも、高い信頼性を得ることが可能となる。
【0057】
映像表示装置4として液晶パネルを用いる場合、特に、運転者が偏光サングラスを着用している場合には、特定の偏波が遮蔽されて映像が見えない不具合が発生する。これを防ぐために、上述したように情報表示装置内部で発生するグレアがドライバの視線に戻らないように開口部に設けたグレアストップ41の片側の面にλ/4板またはλ/8またはλ/16板が配置される。この板により、グレアが特定の偏光方向に揃えられる。また、グレアストップ41を
図5に示す位置から
図6に破線で示す位置46まで回転させることで、映像光の偏光角を適宜変更し、円偏光に変換するか直線偏光の偏光軸を回転させて、偏光サングラスの偏光方向と異なる偏光軸とすることが好ましい。一方、偏光軸を回転させて円偏光に近づけると、情報表示装置からの映像光はS偏光から偏光軸が回転するためフロントガラス6による反射率が低下し映像の明るさが低下するので、両者のバランスを取って選択すると良い。
【0058】
発明者らは、この時得られる映像の色むら(全面白表示における画面全体の色の均一性)を低減するためには、映像光束が最も広がるグレアストップの位置に所定の波長板を設けることが効果的であることを実験により求めた。
【0059】
<車両用情報表示システムの第二の情報表示装置>
続いて、本願発明の情報表示システムの第二の情報表示装置についての具体的な光学的な構成について、以下に説明する。
【0060】
<第二の情報表示装置の具体的な実施例>
本願発明の第二の情報表示装置である情報表示装置48としては、
図3や
図7にも示すように、例えばスマートフォン300等からの高解像度の映像(大型高解像度の映像表示装置の映像)を、フロントガラス6の表面に設けたフィルム(例えば、透明フィルムやシート等)51で観視者の眼に向かって反射させることで、疑似的にフロントガラス上に映像を表示する。
【0061】
次に、情報表示装置48の構成について
図8を用いて説明する。映像表示素子(液晶表示パネル)52は、画面サイズが6インチを超える比較的大型な液晶表示パネルにより構成される。一般的に、フロントガラス6の曲率半径は部分的に異なることが多いため、映像を反射させる場所によって表示映像に不均一(縦方向と横方向)な歪が発生する。このため観視方向から反射像を見た場合に正しい映像を得るために歪補正が必要となる。この歪補正によって実用上問題のないレベルの補正を行うにはパネルの解像度は1280×720ドット以上が必要となる。
【0062】
図9には、映像表示素子52と共に、その下方には、その光源を構成する光源装置101を展開斜視図として示している。この映像表示素子(液晶表示パネル)52は、バックライト装置である光源装置101により指向性の強い照明光束を得て、フロントガラス6に設けたフィルム51に向かって映像信号に応じて変調をかけた映像光を出射する。この
図9では、情報表示装置48は、映像表示素子52とともに、光源装置101からの出射光束30の指向特性を制御する光方向変換パネル54及び第2の拡散板18bを備えている。即ち、情報表示装置48(
図8参照)の両面には偏光板が設けられ、特定の偏波の映像光が映像信号により光の強度を変調して出射する構成となっている。これにより、スマートフォン300等からの高解像度の映像(大型高解像度の映像表示装置の映像)をフロントガラス6に投写し、その表面に設けたフィルム51により、観視者の眼に向かって反射させる。
【0063】
また、光源装置101は、例えば、プラスチックなどにより形成されている。光源装置101は、後にも詳述するLED、コリメータ、合成拡散ブロック、導光体等、これらを内部に収納する光源装置101のケース(
図8参照)を備えている。光源装置101の上面には、情報表示装置48映像表示素子52が取り付けられている。また、光源装置101のケースのひとつの側面には、半導体光源であるLED(Light Emitting Diode)素子やその制御回路を実装したLED基板102(
図9-10を参照)が取り付けられていると共に、LED基板102の外側面には、LED素子および制御回路で発生する熱を冷却するためのヒートシンク103が取り付けられている(
図8参照)。
【0064】
他方、光源装置101の上面に取り付けられた映像表示素子52は、液晶表示パネルフレームと、当該フレームに取り付けられた液晶表示パネルと、更に、当該パネルに電気的に接続されたFPC(Flexible Printed Circuits:フレキシブル配線基板)403(
図8参照)などから構成されている。即ち、映像表示素子52は、後にも詳細に説明するが、固体光源であるLED素子と共に、電子装置を構成する制御回路(ここでは図示せず)からの制御信号によって、表示される映像が生成され、制御される。
【0065】
続いて、光源装置101の構成、即ち、光源装置101のケース内に収納されている光学系について、以下に
図9及び
図10を参照しながら詳細に説明する。
【0066】
図9及び
図10には、光源を構成する複数(本例では、2個)のLED14a、14b(ここでは、図示せず)が示されており、これらはLEDコリメータ15に対して所定の位置に取り付けられている。なお、このLEDコリメータ15は、各々、例えば、アクリル等の透光性の樹脂により形成されている。そして、このLEDコリメータ15は、
図10(b)にも示すように、放物断面を回転して得られる円錐凸形状の外周面156を有すると共に、その頂部では、その中央部に凸レンズ部(即ち、凸レンズ面)157を形成した凹部153を有する。また、凸レンズ部157の中央部には、外側に突出した凸レンズ面(あるいは、内側に凹んだ凹レンズ面でもよい)154を有している。なお、LEDコリメータ15の円錐形状の外周面を形成する外周面156は、LED14aから周辺方向に出射する光をその内部で全反射することが可能な角度の範囲内において設定され、あるいは、反射面が形成されている。
【0067】
他方、LED14a、14bは、その回路基板である、所謂、LED基板102の表面上の所定の位置にそれぞれ配置されている。このLED基板102は、LEDコリメータ15に対して、その表面上のLED14a又は14bが、それぞれ、その凹部153の中央部に位置するように配置されて固定される。
【0068】
かかる構成によれば、上述したLEDコリメータ15によって、LED14aまたは14bから放射される光のうち、特に、その中央部分から上方(図の右方向)に向かって放射される光は、LEDコリメータ15の外形を形成する凸レンズ部157、凸レンズ面154により集光されて平行光となる。また、その他の部分から周辺方向に向かって出射される光は、LEDコリメータ15の円錐形状の外周面を形成する放物面によって反射され、同様に、集光されて平行光となる。換言すれば、その中央部に凸レンズを構成すると共に、その周辺部に放物面を形成したLEDコリメータ15によれば、LED14aまたは14bにより発生された光のほぼ全てを平行光として取り出すことが可能となり、発生した光の利用効率を向上することが可能となる。
【0069】
なお、LEDコリメータ15の光の出射側には、以下にも詳述する偏光変換素子21が設けられている。この偏光変換素子21は、図からも明らかなように、断面が平行四辺形である柱状(以下、平行四辺形柱)の透光性部材と、断面が三角形である柱状(以下、三角形柱)の透光性部材とを組み合わせ、LEDコリメータ15からの平行光の光軸に対して直交する面に平行に、複数、アレイ状に配列して構成されている。更に、これらアレイ状に配列された隣接する透光性部材間の界面には、交互に、PBS膜211と反射膜212とが設けられており、また、偏光変換素子21へ入射してPBS膜211を透過した光が出射する出射面には、1/2λ位相板213が備えられている。
【0070】
この偏光変換素子21の出射面には、更に、
図10(a)にも示す矩形状の合成拡散ブロック16が設けられている。即ち、LED14aまたは14bから出射された光は、LEDコリメータ15の働きにより平行光となって合成拡散ブロック16へ入射し、出射側のテクスチャー161により拡散された後、以下に述べる導光体17に到る。
【0071】
導光体17は、例えば、アクリル等の透光性の樹脂により断面が略三角形(
図10(b)参照)の棒状に形成された部材であり、そして、
図10(a)からも明らかなように、上記合成拡散ブロック16の出射面に第1の拡散板18aを介して対向する導光体光入射部(導光体光入射面)171と、斜面を形成する導光体光反射部(導光体光反射面)172と、第2の拡散板18bを介して上記映像表示素子52を含む液晶表示パネルと対向する導光体光出射部(導光体光出射面)173とを備えている。
【0072】
この導光体17の導光体光反射部172には、その一部拡大図である
図9に示すように、多数の反射面172aと連接面172bとが交互に鋸歯状に形成されている。そして、反射面172a(図では右上がりの線分)は、図において一点鎖線で示す水平面に対してαn(n:自然数であり、本例では、例えば、1~130である)を形成している。一例として、ここでは、αnは43度以下(但し、0度以上)に設定されている。
【0073】
この結果、導光体光入射部171は、光源側に傾斜した湾曲の凸形状に形成されている。これによれば、合成拡散ブロック16の出射面からの平行光は、第1の拡散板18aを介して拡散されて導光体17へ入射し、図からも明らかなように、導光体光入射部171により上方に僅かに屈曲(偏向)しながら導光体光反射部172に達する。
【0074】
以上に詳述したように、上述した本発明になる情報表示装置48によれば、光利用効率やその均一な照明特性をより向上すると同時に、モジュール化されたS偏光波の光源装置を含め、小型かつ低コストで製造することが可能となる。なお、上記の説明では、偏光変換素子21をLEDコリメータ15の後に取り付けるものとして説明したが、本実施の形態はそれに限定されることなく、液晶表示パネルに至る光路中のいずれかの場所に設けることによっても同様の作用・効果が得られることは、当業者であれば明らかであろう。
【0075】
なお、この導光体光反射部172には、多数の反射面172aと連接面172bとが交互に鋸歯状に形成されている。第1の拡散板18aを介して拡散された拡散光は、各々の反射面172a上で全反射されて上方に向かう。上方に向かった拡散光は、導光体光出射部173や第2の拡散板18bを介して、平行な拡散光束として指向特性を制御する光方向変換パネル54に入射する。この拡散光束に対し、光方向変換パネル54は、この拡散光束に対する光の方向変換を行う。光方向変換が行われた拡散光束は、光方向変換パネル54から、例えば
図9に示す方向に出射し、映像表示素子52へ斜め方向から入射する。
【0076】
図11は、上述した情報表示装置48に設けられる光方向変換パネル54の原理を説明するための概略説明図である。導光体からの光束は光方向変換パネルの入射面から入射し、出射面に設けられたリニアフレネルレンズのレンズ作用によりに所望の方向θ3に光束を屈折させる。この時、所望の方向θ3は光束のリニアフレネルレンズへの入射角θ2とリニアフレネルレンズのフレネル角θ0と基材の屈折率nによりスネルの法則から一義的に導き出される。この結果、導光体からの平行光束に所望の方向に指向性を与えることが出来る。
【0077】
同様に
図11に示した構造のリニアフレネルレンズを映像表示装置48の光出射面に設けることで映像光束の反射面に成るフロントガラス6の方向に指向性を持たせる。この結果、ドライバが直接、映像表示装置48の画面を覗いても映像光が直接目に届かないので運転の支障になることがない。リニアフレネルレンズのピッチは、映像表示装置48の画素ピッチの1/3以下であることが望ましい。例えば、画素とリニアフレネルレンズのピッチ比で発生するモアレを実用上問題のないレベルまで軽減するには、リニアフレネルレンズのピッチは、画素ピッチの1/7以下であることが好ましい。またリニアフレネルレンズを摩耗などから保護するために保護カバー(破線で図示)が表面に設けられる。
【0078】
図12は、上述した情報表示装置48のダッシュボード47に接する保護カバー50の概略構成を示す横断面図である。略透明な基材56の光出射側の一部にはブラックストライプ59が設けられる。ブラックストライプ59は、太陽光を含めた外光の表面反射を低減する。ブラックストライプ59には、例えば、カーボンブラックを含んだ黒色塗料が用いられる。また、ブラックストライプを設けない部分には、表面反射を抑えるための反射防止膜が設けられる。反射防止膜により、保護カバー50の表面での外光反射が大幅に軽減され、ドライバが自車を運転する際の外光反射による支障が軽減される。
【0079】
他方、略透明な基材56の光入射側には、太陽光束のうちP波成分を吸収又は反射する膜又はフィルム58を、成膜又は粘着する。この結果、太陽光のP波成分が情報表示装置48に入射することが無いため、耐光性や耐熱性に関する信頼性が大幅に向上する。一方、フィルム58は、情報表示装置48からの出力されるS偏波の映像光を選択的に透過するフィルターの特性も併せ持つため、得られる映像のコントラスト性能が大幅に向上する。
【0080】
なお、上述した映像表示装置48の映像源が液晶パネルであるため、前述した情報表示装置100と同様に、運転者が偏光サングラスを着用している場合には、特定の偏波が遮蔽されて映像が見えない不具合が発生する。これを防ぐために、情報表示装置48保護カバー50のフィルム58と、基材56との間には、λ/4板またはλ/8またはλ/16板などの位相差板57が配置されている。位相差板57を設けることにより、光束の偏光方向を特定の方向に揃え、映像光が最適な偏光角として、偏光サングラスの偏光方向と所望量偏光軸をずらすと良い。
【0081】
一方、偏光軸を回転させて円偏光に近づけると、情報表示装置からの映像光の偏光軸がS偏光から回転する。このため、フロントガラス6による反射率が低下し映像の明るさが低下するので、両者のバランスを取って選択すると良い。
【0082】
<車両用情報表示システムの具体的な実施例>
上述した情報表示装置100と情報表示装置48を含む本発明の情報表示システムを配置した自動車のコックピット内の配置の一例を
図13に示す。
図13(a)は、左側にステアリングを配置した自動車に対応したシステムを、
図13(b)は、右側にステアリングを配置した自動車に対応したシステムを示す。図の画像表示領域1(a)には、情報表示装置100を用いて映像情報をフロントガラス6で反射させ、虚像をドライバに観視させる。画像表示領域1(b)には、情報表示装置48に表示された映像情報をフロントガラスで反射させ、実映像をドライバに観視させる。なお、映像情報を、フィルム51を設けたコンバイナで反射させても良い。
【0083】
情報表示装置100と情報表示装置48は、
図3に示すように、フロントガラス6とステアリング43との間に配置されている。ダッシュボード47内部には、フロントガラス6からステアリング43に向けて、映像表示装置48、情報表示装置100が順次配置される。この結果、ドライバが自車を運転する際にフロントガラス6を介して観視する外部景観には、フロントガラス6で反射させ映像情報を得る情報表示システムとしてフロントガラス6を複数の領域に分割して、その一部領域には情報表示装置100として、ヘッドアップディスプレイ装置により遠方に大画面の虚像を表示し、他方、例えばフロントガラスの下端領域(自車のボンネットの範囲に映像を表示する)には第二の情報表示装置として、大型高解像度の情報表示装置48の映像をフロントガラス6で反射させ反射像を直接ドライバや同乗者が観視する情報映像システムを提供する。この結果、ドライバが必要な情報をフロントガラス6の表示領域に応じて解像度や映像の大きさを異にして適宜表示できる。
【0084】
なお、
図13のルームミラー71にはドライバの状態監視と自動車内の様子をモニタするカメラ72を設け、例えばドライバの目の高さに合わせて前述した情報表示装置からの映像光の出射方向を制御する。
【0085】
図14は、助手席の同乗者にも映像情報を提供する情報映像システムを示した概略図であり、
図13と同様に、
図14(a)は左側にステアリングを配置した自動車に対応したシステムを、
図14(b)は右側にステアリングを配置した自動車に対応したシステムを示す。画像表示領域1(a)には、情報表示装置100を用いて映像情報をフロントガラスで反射させ、虚像をドライバに観視させる。画像表示領域1(b)には、情報表示装置48に表示された映像情報をフロントガラスで反射させ、実映像をドライバに観視させる。これにより、同乗者には、映像表示装置48と同様の構成を備えた装置(図示は省略)により表示された映像情報をフロントガラスの画像表示領域1(c)に反射させ、実映像をドライバに観視させる。
【0086】
なお、画像表示領域1(b)及び画像表示領域1(c)に対応するフロントガラス6には、既述のフィルム51(
図7参照)を粘着または接着することは明らかであろう。
【0087】
次に、フィルム51の構成を
図15により説明する。フロントガラス6(説明の都合上、水平配置とする)に斜め方向から入射する太陽光は、そのS偏波は反射し、P偏波が透過してフィルム51に向かう。フィルム51はS波を透過する偏光板55bと透明拡散シート55aで構成されている。透明拡散シート55aは、屈折率の大きいナノ粒子ジルコニウムやナノ粒子ダイヤモンドを分散させた熱可塑性高分子を溶かしながら延伸したフィルムであり、例えばJXTGエネルギー社製「カレイドスクリーン」等である。透明拡散シート55aを用いることで、映像を表示していない場合には透明であり、ドライバが外界(車外)の風景観監する妨げとならない。他方、映像表示時には、映像光を拡散させドライバや同乗者に映像情報を視認させることが可能となる。
【0088】
情報表示装置48からの映像光はS偏波であるが、前述した透明拡散シート55aの内部で散乱した映像光の一部はフロントガラス6に向かって偏光方向が回転され、その一部はP偏光に近くなる。この光は偏光板55bで吸収されるため、フロントガラス6の外界と接する面で反射することが無い。こにため、フィルム51で反射した映像は、フロントガラス6の反射映像により生じる二重像となることはない。
【0089】
同様に、映像の反射面としてフロントガラス6の代わりにコンバイナに前述したフィルム51を貼っても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0090】
以上述べた本願発明の情報表示システム及び第一の情報表示装置では、(1)昼間の所定条件化においてフロントガラスを通過したP偏光の太陽光成分(コンバイナ方式ではその後コンバイナも通過)を凹面ミラーの手前で吸収することで液晶パネルと偏光板に戻らないようにする。
(2)第一の情報表示装置を使用しない場合には、太陽光が映像表示装置に戻らないように凹面ミラーを所定の角度を回転させることで凹面ミラーにより集光される太陽光が映像表示装置に戻ることを防止する。
【0091】
更に、フロントガラスの下端領域の映像表示領域に対応したダッシュボードの位置に大型高解像度の第二の情報表示装置を設け、その表示映像をフロントガラスで反射させ反射像を直接ドライバや同乗者が観視する情報映像システムを提供する。第二映像表示位置に対応したフロントガラスには映像光を散乱する作用を持つ透明スクリーンを設け、効率よく反射させることで映像をドライバや同乗者に実用上問題のないレベルの画質で提供することが出来る。前述した大型高解像度の第二映像表示装置は、高輝度であるため、映像光の出射方向を制御することで直接映像光がドライバや同乗者の眼に入ることを防止する。
【0092】
本実施の形態によれば、ドライバが自車を運転する際にフロントガラスを介して観視する外部景観にフロントガラスで反射させた映像情報を重ねて得る情報表示装置として、フロントガラスを複数の領域に分割してその一部領域にはヘッドアップディスプレイ装置で遠方に大画面の虚像を表示し、他方、例えばフロントガラスの下端の領域には大型高解像度の映像表示装置の映像をフロントガラスで反射させて反射像を直接ドライバや同乗者が観視し、その結果、例えばスマートフォンを代表とする情報端末の表示映像が高解像度化することに対応可能な高画質な映像情報を得ることが出来る車載用情報表示システムとそのための情報表示装置が提供されることとなる。
【0093】
更に、大型高解像度映像表示装置においても、主に太陽光の赤外成分だけでなく幅広い範囲の波長の光のP偏光成分の一部を吸収させることで映像表示装置に入射する光のエネルギーを低減する。また、高解像度映像表示装置(例えば液晶表示パネル)の表面に保護カバーを設けその一面に光吸収層を設けて太陽光の一部を吸収させ、他方の面に偏光板を設けてP波の太陽光を吸収させることで液晶表示装置(例えば液晶表示パネル)と一体化した偏光板が受ける悪影響を低減することが可能となる。
【0094】
また、大型高解像度映像表示装置の映像光は指向性を持たせ直接光がドライバの眼に入らないように配置する。映像光を発散光から指向性のある光束とすることで光の利用効率を高めることもできる。
【0095】
以上、種々の実施例について詳述したが、しかしながら、本発明は、上述した実施例のみに限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するためにシステム全体を詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0096】
100…情報表示装置(第一の情報表示装置)、1…凹面ミラー、2…レンズ素子、4…映像表示装置(液晶表示素子、液晶表示パネル)、6…フロントガラス(被投影部材)、7…筐体、V1…虚像、8…アイポイント(観察者の眼)、101…光源装置、41…グレアストップ、43…ステアリング、47…ダッシュボード、48…情報表示装置(第二の情報表示装置)、50…保護カバー、51…フィルム、55a…透明拡散シート、55b…偏光板、57…位相差板、58…フィルム、52…映像表示素子、59…ブラックストライプ、1010…自動車、300…スマートフォン