(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-17
(45)【発行日】2025-06-25
(54)【発明の名称】イヤホン
(51)【国際特許分類】
H04R 1/10 20060101AFI20250618BHJP
【FI】
H04R1/10 104
(21)【出願番号】P 2025051592
(22)【出願日】2025-03-26
【審査請求日】2025-04-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522264087
【氏名又は名称】株式会社Move
(74)【代理人】
【識別番号】100207011
【氏名又は名称】高 義輝
(72)【発明者】
【氏名】陳 聖叡
(72)【発明者】
【氏名】山崎 能孝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 来輝
【審査官】▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0105679(US,A1)
【文献】特開2019-076692(JP,A)
【文献】特開2018-186934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカによる音声出力と脈波センサによる生体情報の取得とを並行して行う脈波センサ付きイヤホンであって、
スピーカと、耳介に当接する第1当接部と、を有するスピーカ部と、
一端側において前記スピーカ部に接続し、他端側に向かい弓状に湾曲する弾性部材を有する接続部と、
前記接続部の前記他端側に接続し、前記第1当接部に対向する第2当接部を有し、前記第2当接部において耳裏部に当接する脈波センサを有するセンサ部と、を備え
、
前記接続部は、装着状態において前記弾性部材の復元力により、耳甲介に当接する前記第1当接部と、前記第1当接部が当接する前記耳甲介の裏側の前記耳裏部に当接する前記第2当接部と、によって前記耳介を挟み込むことにより装着状態を保持する、
イヤホン。
【請求項2】
前記接続部は、前記一端側が前記スピーカ部における前記第1当接部の反対側から延びて半円形状に湾曲することにより、装着時において外耳の裏側を耳輪に沿って延び前記センサ部に接続する、
請求項1に記載のイヤホン。
【請求項3】
前記スピーカ部の前記第1当接部は、装着状態における頭部の位置を基準として、上方から下方を観察した場合に、前記接続部が形成する湾曲部分の前方および後方の端部を結んだ直線よりも、頭部から離間する外側に位置する、
請求項2に記載のイヤホン。
【請求項4】
前記スピーカ部は、前記スピーカの振動を伝達する円形の振動板および前記振動板の周囲に形成され前記振動板を支持する側面部を有する円柱型の骨伝導スピーカであり、
前記第1当接部は、前記振動板と前記側面部との間に介在する稜線部または前記側面部を少なくとも含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載のイヤホン。
【請求項5】
前記スピーカ部は、前記振動板の振動方向が、装着状態における頭部の左右方向に対して後方に5度から45度の範囲で傾いている、
請求項4に記載のイヤホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、イヤホンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、耳に装着し、生体情報を取得可能なウェアラブルデバイスの開発が進展している。
【0003】
例えば、特許文献1には、一方の電極が人体の耳に装着され、他方の電極が左手もしくは躯幹に装着される心電計が開示されている。
【0004】
また特許文献2に記載の装置は、発光ダイオードと光検出器を含むハウジング部分が接続部材で結合され、装着者の耳に装着され、発光ダイオードが放射した光の一部が耳を通過して光検出器で検出され、プロセッサが検出信号に基づき酸素飽和度レベルを計算する。
【0005】
特許文献3に記載の生体センサは、耳介外周部に沿って装着されるアーム状装着部と、検出電極と接地電極を有する静電容量型生体情報検出部を備え、装着部の構造により脱落を抑制し、生体情報検出部が容易に生体情報を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2021-142322号公報
【文献】特表2022-536465号公報
【文献】特開2009-153823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の技術に関連して、ユーザの生体情報を取得する脈波センサと、ユーザに音声を伝達するスピーカとを離隔して装着する場合に、耳輪を跨いで装着すると、見た目の印象が不自然であり好ましくない。また、スピーカと脈波センサとを近接させる構成においては、スピーカの振動が脈波センサに与える影響が懸念されるため、脈波センサの配置の制約および小型化の必要が生じる。脈波センサの配置または大きさの制約は、コストの上昇に繋がるおそれがある。
【0008】
本開示は上記課題に鑑みて、生体情報の取得と音声出力とを並行して実行可能であって、それぞれの機能を好適に発揮でき、且つ、自然な印象により耳に装着されるイヤホンを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示にかかるイヤホンは、スピーカによる音声出力と脈波センサによる生体情報の取得とを並行して行う脈波センサ付きのイヤホンである。イヤホンは、スピーカ部と、接続部と、センサ部と、を有している。スピーカ部は、スピーカと、耳介に当接する第1当接部と、を有する。接続部は、一端側においてスピーカ部に接続し、他端側に向かい弓状に湾曲する弾性部材を有する。センサ部は、接続部の他端側に接続し、第1当接部に対向する第2当接部を有し、第2当接部において耳裏部に当接する脈波センサを有する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、生体情報の取得と音声出力とを並行して実行可能であって、それぞれの機能を好適に発揮でき、且つ、自然な印象により耳に装着されるイヤホンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】本開示にかかるイヤホンのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲にかかる発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載および図面は、適宜、省略、および簡略化がなされている。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0013】
<実施の形態>
図1を参照してイヤホン10について説明する。
図1は、本開示にかかるイヤホンの外観図である。イヤホン10は、イヤホン10を装着するユーザの生体情報を取得するとともに音声を出力する脈波センサ付きイヤホンである。すなわちイヤホン10は、スピーカによる音声出力と脈波センサによる生体情報の取得とを並行して行う。イヤホン10は主な構成として、スピーカ部11、センサ部13、接続部12およびケーブル14を有している。
【0014】
なお、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものとして、
図1は、右手系の直交座標系が付されている。また、
図2以降において、直交座標系が付されている場合、
図1のX軸、Y軸、およびZ軸方向と、これらの直交座標系のX軸、Y軸、およびZ軸方向はそれぞれ一致している。
【0015】
また、本実施形態にかかるイヤホン10は、代表例としてユーザの左耳に装着するタイプについて説明するが、当然ながら、イヤホン10は、対称形状の右耳タイプも存在し得る。またイヤホン10の使用方法は、片耳だけでも可能であるし、両耳を同時に使用することも可能である。
【0016】
スピーカ部11は、装着状態において耳介に当接してユーザに音声を伝達する。スピーカ部11は主な構成として、振動板110、側面部111、稜線部112、第1当接部113およびスピーカ210を有している。スピーカ部11は、接続部12の一端側において接続部12と接続している。
【0017】
振動板110は、スピーカ210の振動をユーザの耳介に伝達する。振動板110は、円形であって、且つ、耳介に沿う程度のなだらかな凸形状を呈している。振動板110の背面にはスピーカ210が配置されている。そのため、振動板110はユーザの耳介に当接した状態において、好適にスピーカ210の振動を耳介に伝達する。振動板110は、稜線部112を介して側面部111に支持されている。
【0018】
側面部111は、稜線部112を介して振動板110を支持する支持部材である。スピーカ部11において、円形の振動板110と、中空円筒状の側面部111とにより、スピーカ部11は略円柱状を呈している。
【0019】
稜線部112は、側面部111と振動板110とを接続する稜線の領域に形成された円環状の部分である。振動板110と側面部111との間に介在する稜線部112は円環状のラウンド形状を呈している。
【0020】
円環状に形成されている側面部111および稜線部112の内、センサ部13の第2当接部131に対向する領域は、第1当接部113である。なお、振動板110、側面部111および稜線部112は例えば、一体に成形されたABS樹脂またはポリカーボネート樹脂またはこれらを主成分とする樹脂である。
【0021】
第1当接部113は、装着時において、耳介に当接する。上述の通り、第1当接部113は、円環状に形成されている側面部111および稜線部112の内、センサ部13の第2当接部131に対向する領域である。すなわち、第1当接部113は、振動板110と側面部111との間に介在する稜線部112または側面部111を少なくとも含む。
【0022】
第1当接部113は、なだらかな3次元曲面による凸形状を呈している。これにより、第1当接部113は、スピーカ部11がユーザの耳介に当接する際に、耳介との接触面積を一定の範囲確保し、装着時におけるイヤホン10の保持力の向上に寄与している。また第1当接部113がなだらかな3次元曲面による凸形状を呈していることにより、スピーカ部11が耳介に当接した場合に、イヤホン10は、ユーザに違和感を与えることなく耳介に装着される。
【0023】
スピーカ210は、音声を出力する。本実施形態にかかるスピーカ210は、骨伝導スピーカである。スピーカ210は、振動板110の背面において、側面部111の内部に配置されている。スピーカ210は、自己の振動を、振動板110に伝達する。
【0024】
接続部12は、一端側においてスピーカ部11に接続し、他端側に向かい弓状に湾曲する弾性部材を有する。接続部12は主な構成として、カバー部120、弾性部材121および線材122を有している。
【0025】
カバー部120は、湾曲した管状を呈した可撓性を有する部材である。可撓性を有する部材は例えば、エラストマである。カバー部120は内部に、弾性部材121および線材122を内包している。弾性部材121は、接続部12を変形させた場合に復元力を発生させる。弾性部材121は例えばオーステナイト系のステンレス鋼、ピアノ線またはチタン合金である。線材122は、スピーカ部11とセンサ部13との間の電気信号を伝導する。なお、弾性部材121は電気信号を伝導してもよい。また、線材122は弾性を有していてもよい。すなわち、弾性部材121と線材122とは別体であってもよいし同じ物であってもよい。
【0026】
センサ部13は、接続部12の他端側に接続する。センサ部13は、装着状態において、ユーザの耳裏部に位置する。センサ部13は主な構成として、筐体部130、第2当接部131、制御基板200および脈波センサ220を有している。センサ部13は、接続部12と接続する部分の反対側において、ケーブル14と接続している。
【0027】
筐体部130は制御基板200および脈波センサ220を内包する筐体である。筐体部130は、スピーカ部11に対向する側に、第2当接部131が形成されている。第2当接部131は、耳裏部に沿って当接する程度になだらかに三日月状に湾曲した面である。すなわち、センサ部13は、第1当接部113に対向する第2当接部131を有している。
【0028】
第2当接部131は第1当接部113に対向する位置に脈波センサ220を有している。脈波センサ220は、反射型の脈波センサである。脈波センサは、心臓が血液を送り出す際に生じる血管の容積変化を波形として捉え、その変化を観察するための検知器である。脈波センサ220は、耳裏部に当接する領域に配置されている。脈波センサ220は、第2当接部131の湾曲した面に沿って配置された透光性の窓の内側に存在する。脈波センサ220は、この窓の内側に発光部および受光部を有している。すなわち、センサ部13は、第2当接部131において耳裏部に当接する脈波センサ220を有している。
【0029】
制御基板200は、スピーカ210および脈波センサ220を制御するための回路を搭載する。制御基板200はその他に、スピーカ210または脈波センサ220の信号を外部の装置と無線通信するための通信回路等を有していてもよい。制御基板200は、ケーブル14を介して外部の装置と通信可能に接続する。ケーブル14は、センサ部13と外部の装置とを通信可能に接続するためのケーブルを内包する。
【0030】
なお、ケーブル14の長さは任意であって、ケーブル14の先端は所定のコネクタが接続され得る。本実施形態にかかるケーブル14は、
図1に示した破線により示した部分より先の形状および仕様は省略される。ケーブル14の仕様は、当業者が想定する種々の仕様が選択され得る。
【0031】
次に、
図2を参照して、イヤホン10のブロック図について説明する。
図2は、本開示にかかるイヤホン10のブロック図である。イヤホン10は主な構成として、スピーカ210、脈波センサ220、音声信号処理部230、センサ信号処理部250およびコネクタ260を有している。
【0032】
スピーカ210は音声信号処理部230から音声信号を受け取り、受け取った音声信号を振動に変換する。本実施形態にかかるスピーカ210は骨伝導スピーカである。ただし、スピーカ210は、骨伝導スピーカに限られない。スピーカ210は、自己が発生させる振動を、空気を介してユーザの鼓膜に伝達するものであってもよい。
【0033】
脈波センサ220は、発光部および受光部を有する。発光部は例えばLED(light-emitting diode)である。受光部は、発光部が発した光の反射光を検出し、検出した光を電気信号に変換してセンサ信号処理部250に送信する。
【0034】
音声信号処理部230は、コネクタ260から受け取った音声信号をスピーカ210に供給する。センサ信号処理部250は、脈波センサ220の発光部に電流を供給するとともに、脈波センサ220の受光部から受け取った検出信号を受け取り、受け取った検出信号をコネクタ260に送信する。コネクタ260は、イヤホン10の外部機器に接続し、電力の供給を受けるとともに、音声信号およびセンサ信号のやり取りを行うインタフェースである。
【0035】
なお、イヤホン10の機能構成は、上述のものに限られない。イヤホン10は、コネクタ260を有さず、無線通信により外部機器と通信可能に接続してもよい。この場合、イヤホン10は、通信機能を有する。またこの場合、イヤホン10はバッテリをさらに有する。イヤホン10は、音声信号またはセンサ信号のいずれか一方を無線通信により接続し、いずれか他方を有線通信により接続するものであってもよい。いずれにせよ、イヤホン10は、スピーカにより音声出力と、脈波センサ220による生体情報の取得とを並行して行う。
【0036】
次に、
図3から
図8を参照して、イヤホン10の構成についてさらに説明する。
図3は、本開示にかかるイヤホン10の正面図である。
図4は、イヤホン10の裏面図である。
図5は、イヤホン10の左側面図である。
図6は、イヤホン10の右側面図である。
図7は、イヤホン10の上面図である。
図8は、イヤホン10の装着状態を示す正面図である。
【0037】
なお、
図7に示す通り、本開示において、装着状態におけるユーザの前方に対応するZ軸プラス方向を「前方」と称する。同様に、装着状態におけるユーザの後方に対応するZ軸マイナス方向を「後方」と称する。また装着状態におけるユーザの頭部の左右方向における頭部に面する側(
図7のX軸マイナス側)を「内側」と称する。装着状態におけるユーザの頭部の反対側(
図7のX軸プラス側)を「外側」と称する。
【0038】
図3~
図8を参照して、接続部12の形状について説明する。
図3および
図4に示す通り、接続部12は、一端側がスピーカ部11における第1当接部113の反対側(Z軸プラス側)から延びて半円形状に湾曲する。また、
図5~
図7に示す通り、接続部12は、所定の平面(XY平面)に沿って湾曲している。所定の平面は、装着状態において、側頭部に平行な面である。これにより、
図8に示すように、接続部12は、装着時において外耳の裏側を耳輪に沿って延び、耳裏部に位置するセンサ部13に接続する。このような構成により、イヤホン10は、装着状態において、イヤホン10を装着したユーザを見る者に対して、違和感を抑えた自然な印象を与えることができる。
【0039】
次に、イヤホン10の装着状態について説明する。イヤホン10を装着する際に、ユーザは、スピーカ部11とセンサ部13とを離間させる方向に変形させ、スピーカ部11とセンサ部13との間に耳介を挟み込むようにイヤホン10を配置して、スピーカ部11とセンサ部13とを解放する。これにより、接続部12は、弾性部材の復元力により、耳甲介に当接する第1当接部113と、第1当接部113が当接する耳甲介の裏側の耳裏部に当接する第2当接部131と、によって耳介を挟み込む。よって、接続部12は装着状態を保持する。換言すると、装着状態において、スピーカ部11は、後方に押圧する力が働き、センサ部13は前方に押圧する力が働く。これによりイヤホン10は、耳介を挟み込み、装着状態を保持する。
【0040】
次に、スピーカ部11の配置について説明する。スピーカ部11は、スピーカ210の振動を伝達する円形の振動板110および振動板110の周囲に形成され振動板110を支持する側面部111を有する円柱型の骨伝導スピーカである。スピーカ部11は、振動板110の振動方向が、装着状態における頭部の後方に5度から45度の範囲で傾いている。
【0041】
図7には、スピーカ210の中心線C1が示されている。中心線C1は、スピーカ210の振動方向と一致している。中心線C1は、X軸に平行な直線Lに対して、内側且つ後方に向かって傾いている。X軸に平行な直線Lと中心線C1との角度A1は、例えば20度である。角度A1は好ましくは15度から30度である。角度A1は5度から45度の範囲であってもよい。
【0042】
スピーカ部11の第1当接部113は、装着状態における頭部の位置を基準として、上方から下方を観察した場合に、接続部12が形成する湾曲部分の前方および後方の端部を結んだ直線よりも、頭部から離間する外側に位置する。
【0043】
図7において、二点鎖線により示された線C2は、接続部12が形成する半円形状の湾曲部分に沿った面を示したものである。上方から下方を観察した上面図において、接続部12は線C2に沿って延びている。このとき、第1当接部113は、線C2より外側すなわち頭部から離間する側に位置している。これにより、スピーカ部11は、装着状態において第1当接部113が耳介に当接した場合に、第1当接部113を支点として振動板110が頭部に近づく方向(すなわち内側)に向かうモーメントを接続部12から受けることになる。
【0044】
図9は、イヤホン10の装着状態における断面図である。
図9に示す断面図は
図3のII-II断面である。
図9に示すように、イヤホン10は、第1当接領域B1、第2当接領域B2および第3当接領域B3において耳介に当接している。
【0045】
この内、第1当接領域B1は、耳甲介の後方の部分である。第1当接領域B1において、スピーカ部11の第1当接部113は、接続部12の復元力により耳甲介を後方に押圧する。このとき、第1当接部113は、第1方向D1に向かって耳甲介を押圧する。なお、第1当接部113は3次元曲面による凸形状を有している。そのため、第1当接部113は、様々なユーザの耳甲介の形状に対応できる。
【0046】
第2当接領域B2は、第1当接領域B1の裏側に対応する耳裏部である。第2当接領域B2において、第2当接部131は、接続部12の復元力により耳介を前方に押圧する。さらに、第2当接部131は、脈波センサ220を含む。脈波センサ220は、好適に耳介を押圧した状態で生体情報を取得する。そのため、脈波センサ220は安定した状態で生体情報を取得できる。また脈波センサ220に対向する耳介の反対側には、スピーカ部11が耳甲介に当接している。そのため、脈波センサ220は太陽光など外光の影響を受け難い構成となっている。
【0047】
第3当接領域B3は、耳甲介の内側の部分である。第3当接領域B3は振動板110が当接している。このとき、第1当接部113は線C2より外側に存在している。そのため振動板110は、第1当接部113を支点としたモーメントを接続部12から受けている。このモーメントの方向は、第1方向D1に直交する方向であって、且つ、内側に向かう第2方向D2である。よって、振動板110は、好適に耳甲介に当接し、スピーカ210の振動をユーザに伝達する。
【0048】
次に、装着状態において振動板110が耳甲介を押圧する力についてさらに説明する。
図6には、耳裏当接部132が示されている。耳裏当接部132は、接続部12の他端側からセンサ部13とケーブル14との接続部分近傍に至るまで、Z軸プラス側かつX軸プラス側に沿って形成された稜線部である。耳裏当接部132は、装着状態において第2当接部131の頭部から遠い側に位置する筐体部130と、第2当接部131との間に形成された稜線部分を含む。耳裏当接部132は、装着状態において少なくとも一部が耳裏に当接する。
【0049】
図8には、破線により耳裏当接部132が示されている。装着状態において、耳裏当接部132の少なくとも一部は、耳裏に当接する。これにより、イヤホン10は、頭部に向かう内側(すなわち本実施形態におけるX軸マイナス側)に押圧される。
【0050】
図9の矢印D3は、イヤホン10が耳裏から受ける力を示している。イヤホン10の耳裏当接部132が内側へ向かう力を受ける。耳裏当接部132が受ける力は、接続部12を介してスピーカ部11に伝わる。これにより、スピーカ部11は、耳甲介に当接する。よって、イヤホン10は、接続部12が第1当接部113と第2当接部131とを挟持する力の分力(第2方向D2の力)に加えて、耳裏当接部132が耳裏から受ける内側へ向かう力(矢印D3の力)により、振動板110を耳甲介に好適に当接する。これにより、イヤホン10はスピーカ210がの振動をユーザに伝達できる。
【0051】
以上、実施形態について説明した。上述の構成により、イヤホン10は、好適に耳介を保持するとともに、第2当接部131に配置された脈波センサ220が好適に生体情報を取得する。またスピーカ部11は、第1当接部113が第2当接部131と共に耳介を挟持し、且つ、振動板110が好適に耳甲介に当接してスピーカ210の振動をユーザに伝達する。このような構成により、脈波センサ220はスピーカ210の振動による影響を受け難く、且つ、大きさの制約を受けない。これによりイヤホン10は、コストの増大を抑えつつ、好適に生体情報を取得できる。以上、本実施の形態によれば、生体情報の取得と音声出力とを並行して実行可能であって、それぞれの機能を好適に発揮でき、且つ、自然な印象により耳に装着されるイヤホンを提供できる。
【0052】
なお、実施形態は上述の構成に限られない。例えば、イヤホン10は片耳のみに用いるものであってもよいし、両耳に用いるものであってもよい。またイヤホン10が両耳に用いるものである場合、脈波センサ220は片方だけに配置されていても良いし、両方に配置されていてもよい。スピーカ部11が有するスピーカ210は、骨伝導スピーカに代えて、外耳道に音波を伝達する音響ダクトを有するものであってもよい。
【0053】
以上、実施の形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上述の実施の形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。そして、各実施の形態は、適宜他の実施の形態と組み合わせることができる。
【0054】
各図面は、1又はそれ以上の実施形態を説明するための単なる例示である。各図面は、1つの特定の実施形態のみに関連付けられるのではなく、1又はそれ以上の他の実施形態に関連付けられてもよい。当業者であれば理解できるように、いずれか1つの図面を参照して説明される様々な特徴は、例えば明示的に図示または説明されていない実施形態を作り出すために、1又はそれ以上の他の図に示された特徴と組み合わせることができる。例示的な実施形態を説明するためにいずれか1つの図に示された特徴のすべてが必ずしも必須ではなく、一部の特徴が省略されてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 イヤホン
11 スピーカ部
12 接続部
13 センサ部
14 ケーブル
110 振動板
111 側面部
112 稜線部
113 第1当接部
120 カバー部
121 弾性部材
122 線材
130 筐体部
131 第2当接部
132 耳裏当接部
200 制御基板
210 スピーカ
220 脈波センサ
230 音声信号処理部
250 センサ信号処理部
260 コネクタ
A1 角度
B1 第1当接領域
B2 第2当接領域
B3 第3当接領域
C1 中心線
C2 線
D1 第1方向
D2 第2方向
【要約】
【課題】生体情報の取得と音声出力とを並行して実行可能であって、それぞれの機能を好適に発揮でき、且つ、自然な印象により耳に装着されるイヤホンを提供する。
【解決手段】イヤホン10は、スピーカによる音声出力と脈波センサによる生体情報の取得とを並行して行う脈波センサ付きのイヤホンである。イヤホン10は、スピーカ部11と、接続部12と、センサ部13と、を有している。スピーカ部11は、スピーカ210と、耳介に当接する第1当接部113と、を有する。接続部12は、一端側においてスピーカ部11に接続し、他端側に向かい弓状に湾曲する弾性部材を有する。センサ部13は、接続部12の他端側に接続し、第1当接部113に対向する第2当接部131を有し、第2当接部131において耳裏部に当接する脈波センサ220を有する。
【選択図】
図1