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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-17
(45)【発行日】2025-06-25
(54)【発明の名称】密閉扉開閉構造
(51)【国際特許分類】
   E05D 7/00 20060101AFI20250618BHJP
   E05D 3/02 20060101ALI20250618BHJP
   E06B 7/22 20060101ALI20250618BHJP
【FI】
E05D7/00
E05D3/02
E06B7/22 F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2025065592
(22)【出願日】2025-04-11
【審査請求日】2025-04-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597100538
【氏名又は名称】株式会社ミラプロ
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 雄飛
(72)【発明者】
【氏名】日原 涼
(72)【発明者】
【氏名】長澤 遼平
(72)【発明者】
【氏名】小川 功
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】実開平4-18183(JP,U)
【文献】実開昭58-11066(JP,U)
【文献】特開平9-41778(JP,A)
【文献】実開平4-72182(JP,U)
【文献】実開昭59-181178(JP,U)
【文献】実開平4-73189(JP,U)
【文献】実開平4-1386(JP,U)
【文献】特開2011-241623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 1/00-9/00
E06B 7/22
B65D 43/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の開口に対してシール部材を介して扉を密閉する密閉扉開閉構造であって、
前記筐体に固定された単一のヒンジ軸を備えて前記扉を開閉するヒンジ機構を具備し、
前記ヒンジ機構は、
前記ヒンジ軸に枢支される枢支部材と、
前記枢支部材に抜け止め状態で連結されて、前記扉と一体に移動する扉側部材と、
前記枢支部材の抜け止め部と前記扉側部材との間に内蔵され、前記シール部材の反力に抗して前記扉側部材を前記ヒンジ軸に向けて付勢する付勢体とを備えた、
密閉扉開閉構造。
【請求項2】
前記抜け止め部は、前記付勢体の付勢力を外部調整する調整部材を備える、
請求項1記載の密閉扉開閉構造。
【請求項3】
前記枢支部材は、前記ヒンジ軸に直交する方向に延設される軸部を備え、
前記扉側部材は、前記軸部が挿通されるブッシュ部を有して、前記軸部の延設方向に沿って移動自在に前記枢支部材に対して連結されており、
前記ブッシュ部を貫通した前記軸部の先端に前記抜け止め部が取り付けられている、
請求項1記載の密閉扉開閉構造。
【請求項4】
前記扉側部材は、前記扉への固定部と前記ブッシュ部を有する前記枢支部材との連結部が一体構造になっており、
前記連結部には、前記ブッシュ部の周囲に前記付勢体を収容する空間が複数形成されている、
請求項3記載の密閉扉開閉構造。
【請求項5】
前記筐体の対向面と前記扉の密閉面とが平行な位置関係を確保して前記シール部材に反力を発生させる、
請求項1記載の密閉扉開閉構造。
【請求項6】
前記シール部材の反力発生時には、前記シール部材に均等負荷が加わるように、前記付勢体の付勢力が設定される、
請求項5記載の密閉扉開閉構造。
【請求項7】
前記付勢体は、磁気反発力にて前記扉側部材を付勢する、
請求項1記載の密閉扉開閉構造。
【請求項8】
前記磁気反発力は、外部から可変制御可能である、
請求項7記載の密閉扉開閉構造。
【請求項9】
前記扉の周囲と前記筐体の開口の周囲の一方又は両方には、前記扉の開閉を電磁アシストする開閉アシスト機能部が設けられている、
請求項1記載の密閉扉開閉構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉扉開閉構造に関する。
【背景技術】
【0002】
気密性を要するチャンバー(空間、部屋、容器、槽等を含む)には、開口周囲の筐体と開口を閉じる扉との間にOリングなどのシール部材(パッキングやガスケットを含む)が設けられた、密閉扉の開閉構造が採用されている。このような密閉扉開閉構造は、一般にヒンジ機構が用いられ、ヒンジ軸周りに枢動する扉がシール部材を押圧することで、チャンバー内を密閉状態にする。
【0003】
従来、前述した密閉扉開閉構造では、良好な密閉状態を得るために、二軸型のヒンジ機構を採用したものが知られている。一例を示すと、筐体に固着される固定ヒンジ体が、第一軸部材により連結ヒンジ体に枢着され、扉に固着される可動ヒンジ体が、第二軸部材により連結ヒンジ体に枢着され、可動ヒンジ体の当接部と連結ヒンジ体の当接部とが相互に接触して一方向の回動を所定の角度で止める。これにより、可動ヒンジ体と連結ヒンジ体とが不要な相対的回動を起こさないように制御している(下記特許文献1参照)。
【0004】
また、従来、単一ヒンジ軸のヒンジ機構において、ヒンジ軸を軸孔に対して変位することで、扉の密閉性を高めることも検討されている。一例としては、筐体と扉との間で、扉を枢動可能に支持するヒンジ機構において、扉に設けた軸孔に嵌合するヒンジ軸と、筐体に設けられヒンジ軸を保持する長孔状の軸孔とを具備し、ヒンジ軸を、長孔状の軸孔の断面長手方向に変位可能にしたものが知られている(下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-56515号公報
【文献】特許第7360305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
気密性を要するチャンバーに用いられる密閉扉開閉構造は、扉閉時のチャンバーの良好な気密性を確保するために、先ず、シール部材が扉によって均等に圧縮されることが必要になる。しかしながら、固定単一軸のヒンジ機構では、扉の閉動作の終局段階で扉がシール部材に接触するときに、ヒンジ軸に近いところからシール部材に接触することになり、シール部材の全周に対して均等に扉が接触することにはならない。その結果、扉の閉め込み時にヒンジ軸に近い側のシール部材が先行圧縮され、それに近接するシール部材が膨れたり捩じれたりすることで、扉の閉状態が不完全になって気密性が確保できなくなる場合がある。
【0007】
また、固定単一軸のヒンジ機構を備える密閉扉開閉構造にて繰り返し扉の開閉を行うと、開閉の度にシール部材が不均等に圧縮されて機械的又は応力的なダメージが生じ、シール部材の耐久性を維持することが難しくなる。更に、シール部材が前述したダメージを受けると、摩擦等によって粉塵が発生する場合があり、粉塵がチャンバー内に入り込むことで、チャンバー内の収容物や設備・装置に悪影響を及ぼすことが懸念される。
【0008】
これに対して、前述した従来技術のように、二軸型のヒンジ機構を採用すると、可動ヒンジ体と連結ヒンジ体とが不要な相対的回動を起こさないように相対的回動角度が固定されることになるので、適用できる筐体の構造、寸法などが限定されるという難点がある。これにより、装置ごとにヒンジ機構を設計し、あるいは枢軸の軸受け孔を楕円孔に加工する等、装置ごとに煩雑な個別対応が必要になる問題があった。
【0009】
また、前述した従来技術のように、単一ヒンジ軸のヒンジ機構において、ヒンジ軸を軸孔に対して変位させた場合には、長孔状の軸孔に対してヒンジ軸の位置を変位させることになる。これによると、ヒンジ軸を完全に固定できないことで、扉を安定的に開閉させることが難しく、繰り返し扉を開閉する場合の機構安定性や耐久性が確保できない問題があった。
【0010】
本発明は、このような問題に対処するために提案されたものである。すなわち、シール部材を筐体と扉との間に介在させて密閉性を得る密閉扉開閉構造において、固定単一軸のヒンジ機構であっても、扉がシール部材を均等に圧縮させて、良好な密閉状態が得られるようにすること、シール部材の耐久性を高め、摩擦等による粉塵発生を抑制すること、適用できる筐体の構造や寸法の制限を無くし、装置毎の煩雑な個別対応を省くこと、繰り返し扉を開閉する場合の機構安定性や耐久性を確保すること、などのうちの一つが、本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
筐体の開口に対してシール部材を介して扉を密閉する密閉扉開閉構造であって、前記筐体に固定された単一のヒンジ軸を備えて前記扉を開閉するヒンジ機構を具備し、前記ヒンジ機構は、前記ヒンジ軸に枢支される枢支部材と、前記枢支部材に抜け止め状態で連結されて、前記扉と一体に移動する扉側部材と、前記枢支部材の抜け止め部と前記扉側部材との間に内蔵され、前記シール部材の反力に抗して前記扉側部材を前記ヒンジ軸に向けて付勢する付勢体とを備えた、密閉扉開閉構造。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】密閉扉開閉構造の正面図。
図2】ヒンジ機構の平面図。
図3】ヒンジ機構の断面図(A-A断面図)。
図4】ヒンジ機構の断面図(B-B断面図)。
図5】ヒンジ機構の分解斜視図。
図6】密閉扉開閉構造に加わる力の関係を示した説明図(横断面図)。
図7】密閉扉開閉構造の他の実施形態(付勢体を磁石にした例)の説明図。
図8】密閉扉開閉構造の他の実施形態(付勢体の磁気付勢力を可変制御した例)の説明図。
図9】密閉扉開閉構造の他の実施形態(開閉アシスト機能部を設けた例)の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における共通符号の重複説明は適宜省略する。
【0014】
図1に示すように、密閉扉開閉構造1は、筐体100の開口101に対して、シール部材102を介して扉200を開閉する構造である。ここでの筐体100はチャンバー(空間、部屋、容器、槽等を含む)の一部(壁材)であり、チャンバーに対して開口101を形成する部材である。
【0015】
シール部材102は、開口101の外側全周に設けられるが、筐体100側に固定されていてもよいし、扉200側に固定されていてもよい。扉200におけるシール部材102が設けられる面を密閉面として、この密閉面と対面する筐体100側の面を対向面とする。シール部材102の一例は、ゴム等の弾性体で形成されたOリングである。
【0016】
扉200には、開閉ハンドル201やロックハンドル202が必要に応じて設けられる。開閉ハンドル201は、操作者が手で持って扉200を開閉動作させる付属部品である。開閉ハンドル201を押し操作することで扉200は閉動作し、開閉ハンドル201を引き操作することで扉200は開動作する。ロックハンドル202は、操作者の操作で図示省略したロック機構を動作させて、扉200の密閉状態を保持するためのものである。
【0017】
密閉扉開閉構造1は、筐体100側に固定された単一のヒンジ軸2を備えるヒンジ機構10を具備し、扉200はこのヒンジ機構10によって筐体100に対して開閉動作する。ヒンジ軸2は、筐体100側に固定されていればよく、その固定手段はどのような構造であってもよい。例えば、筐体の一部に一体化してヒンジ軸2を設けてもよい。図示の例では、ヒンジ軸固定部材3によって、ヒンジ軸2を筐体100に固定している。
【0018】
ヒンジ軸2は、筐体100に固定された単一軸であるが、これに対して設置されるヒンジ機構10は、一つ又は複数であってよい。図示の例では、扉200に対して単一のヒンジ軸2が設けられ、これに対して2つヒンジ機構10が設けられている。
【0019】
図2図5により、ヒンジ機構10の構成を説明する。先ず、ヒンジ軸2を筐体100側に固定するためのヒンジ軸固定部材3には、必要に応じて、樹脂製等のストッパ部材3Aが固定ピン3Pによって固定されている。ストッパ部材3Aは、扉200の開放時に扉200が筐体100に衝突するのを防いでいる。ヒンジ軸固定部材3は、固定ピン3Qによって筐体100に固定されている。
【0020】
ヒンジ軸固定部材3は、ヒンジ機構10の取り付け位置をヒンジ軸2の所定位置に拘束する拘束部3Bを備えている。拘束部3Bでは、拘束ピン3Cによって、ヒンジ軸固定部材3をヒンジ軸2の所定位置に固定している。拘束部3Bは二股状に配置され、一対の拘束部3Bの間に後述するヒンジ機構10の枢支部材11が配置されることで、ヒンジ軸2に対するヒンジ機構10の位置が設定される。
【0021】
ヒンジ機構10は、ヒンジ軸2に枢支される枢支部材11と、扉200と一体に移動する扉側部材12と、ヒンジ機構10に内蔵される付勢体13を備えており、筐体100側に固定された単一のヒンジ軸2に対して扉200を枢動させて開閉動作する。
【0022】
枢支部材11は、ヒンジ軸2に枢支される枢支部11Aと、扉側部材12が連結される軸部11Bと、抜け止め部11Cとを有する。抜け止め部11Cは、後述する付勢体13の付勢力を外部調整する調整部材11Dを備え、この調整部材11Dによって軸部11Bの先端に取り付けられている。軸部11Bは、枢支部11Aに対して、ヒンジ軸2に直交する方向に延設されている。
【0023】
扉側部材12は、枢支部材11に抜け止め状態で連結されて、扉200と一体に移動する。図示の例では、扉側部材12は固定ネジ14で扉200に固定されているが、他の例として、扉200と一体になっていてもよい。図示の扉側部材12は、扉200への固定部12Aと枢支部材11との連結部12Bが一体構造になっており、固定部12Aが固定ネジ14によって扉200に固定されている。
【0024】
扉側部材12の連結部12Bは、枢支部材11の軸部11Bが挿通するブッシュ部12Cを有しており、軸部11Bがブッシュ部12Cに挿通されることで、枢支部材11に対して、扉側部材12が軸部11Bの延設方向に沿って移動自在に連結される。この際、扉側部材12の移動は、軸部11Bの延設方向に限定される。そして、ブッシュ部12Cを貫通した軸部11Bの先端に抜け止め部11Cが取り付けられることで、扉側部材12は、枢支部材11に対して抜け止め状態になっている。
【0025】
扉側部材12の連結部12Bには、ブッシュ部12Cの周囲に、付勢体13を収容する空間12Dが複数形成されている。付勢体13は、一端側が扉側部材12における連結部12Bの空間12Dに収容され、他端側が枢支部材11の抜け止め部11Cの凹部に収容されることで、ヒンジ機構10に内蔵されている。ブッシュ部12Cの周囲に付勢体13を分散配置することで、付勢体13の付勢力を扉側部材12に均等に作用させることができ、軸部11Bに対する扉側部材12の移動が円滑になる。
【0026】
扉側部材12のブッシュ部12Cには、ドライブッシュ15を介して、枢支部材11の軸部11Bが挿通される。これによって、軸部11Bの延設方向に沿って、扉側部材12が移動自在になっている。また、枢支部材11における軸部11Bの長さは、扉側部材12の連結部12Bが軸部11Bに挿通された状態で、扉側部材12が移動できる隙間が形成されるように設定されている。
【0027】
付勢体13は、一例としては、圧縮に対して反発力を発生するバネ(圧縮バネ)である。また、バネの代替品として、圧縮に対して反発力を発生させるゴムなどの弾性体を用いることができる。付勢体13を、前述した空間12Dに収容して、扉側部材12の連結部12Bと枢支部材11の抜け止め部11Cの間に内蔵することで、付勢体13の反発力が軸部11Bに沿って作用する。
【0028】
これにより付勢体13は、シール部材102の反力に抗して扉側部材12をヒンジ軸2に向けて付勢する。そして、付勢体13の付勢力は、付勢体13が圧縮されることで発生することから、シール部材102の反力に抗して付勢体13の付勢力が発生している状態では、付勢体13の圧縮によって、扉側部材12はヒンジ軸2から離れる方向に移動する。付勢体13の付勢力は、調整部材11Dのねじ込み量で抜け止め部11Cを扉側部材12の連結部12Bに近接離間させることで、調整することができる。
【0029】
このような密閉扉開閉構造1によると、筐体100の開口101を開放した状態から、扉200をヒンジ軸2に対して枢動させる閉動作を行い、筐体100の対向面と扉200の密閉面との間で、シール部材102に反力が発生すると、この反力に抗して付勢体13の付勢力が発生することで付勢体13が圧縮される。これにより、扉側部材12はヒンジ軸2から離れる方向に移動することになり、筐体100の対向面と扉200の密閉面とが平行になるように扉200が移動する。これによって、シール部材102の全体が筐体100の対向面と扉200の密閉面との間で均等に圧縮されるようになる。
【0030】
なお、シール部材102の反力に抗して付勢体13の付勢力を発生させて、筐体100の対向面と扉200の密閉面とを平行にするために、付勢体13の付勢力を適正に設定する。空間12Dに収容させる付勢体13は、交換可能になっており、扉200の重量やシール部材102の性状や性質に合わせて、付勢体13の付勢力(付勢体13がバネの場合には、バネの材質や強度)を変更することで、適正な設定が可能になる。
【0031】
図6にて、密閉扉開閉構造1によりシール部材102に均等負荷が加わるメカニズムを説明する。
【0032】
図6は、密閉扉開閉構造1の横断面図(ヒンジ軸2に直交する断面図)であり、筐体100の対向面と扉200の密閉面とが平行な位置関係を確保してシール部材102に反力を発生させた状態を示している。図示矢印のFaは、ヒンジ軸2に近い側(図示のPA支点)に位置するシール部材102に発生する反力であり、図示矢印のFbは、ヒンジ軸2から遠い側(図示のPB支点)に位置するシール部材102に発生する反力である。なお、シール部材102は、開口101の外側全周に亘って環状に配置されている。
【0033】
ここで、図示矢印のF1は、開閉ハンドル201を操作者が押して扉200を閉じる際の閉め込み力を示し、図示矢印のF2は、付勢体13の付勢力(バネ反力)の総和を示し、図示矢印のF3は、扉200の開閉によりヒンジ軸2の周りに生じる摩擦力を示している。この際、筐体100の対向面と扉200の密閉面がシール部材102に接するまでは、当然ながらFa=Fb=0になり、また、シール部材102の反力(Fa,Fb)が発生しない状態では、付勢体13の付勢力F2も生じないので、F2=0になる。よって、その状態では、力の釣り合いからF1=F3(Fa=Fb=F2=0)になる。
【0034】
そして、筐体100の対向面と扉200の密閉面とがシール部材102に接すると、シール部材102の反力Fa,Fbが発生し、これに対抗して付勢体13の付勢力F2が発生する。この際、筐体100の対向面と扉200の密閉面とが平行な位置関係を確保してシール部材102に反力を発生させた状態では、次式(1)が成立する。
F1+F2=F3+Fa+Fb (1)
【0035】
そうすると、扉200が閉められる過程では、(F1+F2)は、F3~(F3+Fa+Fb)まで変化する。ここで、ここで付勢体13の付勢力をF2=(F3+Fa+Fb)/2と設定すれば、閉め込み力は、F1=(F3+Fa+Fb)/2~F3の範囲で可変になり、筐体100の対向面と扉200の密閉面とがシール部材102に接触した直後は、F1=F2=(F3+Fa+Fb)/2になって、上記の式(1)が成立する。つまり、付勢体13の付勢力F2の設定によって、筐体100の対向面と扉200の密閉面とが平行な位置関係を確保してシール部材102に反力を発生させる状態が得られることになり、シール部材102の反力発生時には、シール部材102に均等負荷が加わるようになる。
【0036】
なお、付勢体13の付勢力をF2=(F3+Fa+Fb)/2によって設定するに際し、摩擦力は、F3=k・M(M:ドアの自重、k:摩擦係数)で求めることができる。また、シール部材102の反力Fa,Fbは、シール部材102の性状や性質(具体的には断面形状や材質等)によって予め求めることができる。
【0037】
図7及び図8は、密閉扉開閉構造1の他の実施形態を示している。図7に示した例は、ヒンジ機構10に内蔵される付勢体13を永久磁石13Mで構成している。この例では、扉側部材12の連結部12Bに設けた空間12Dと枢支部材11の抜け止め部11Cの凹部に、永久磁石13Mを磁極が互いに反発するように一対配置しており、永久磁石13Mの磁気反発力にて扉側部材12をヒンジ軸2側に付勢している。これによると、調整部材11Dによって外部から一対の永久磁石13Mの間隔を調整することで、磁気反発力(付勢力)が調整可能になる。
【0038】
図8に示した例は、ヒンジ機構10に内蔵される付勢体13を、磁気反発力を発生させる電磁石にて構成している。この電磁石は、例えば、電流が流される通電線13Xと磁性体からなる芯体13Yとにより構成し、芯体13Yの周囲に通電線13Xをコイル状に巻き回している。ここでも、扉側部材12の連結部12Bに設けた空間12Dと枢支部材11の抜け止め部11Cの凹部に、電磁石を磁極が互いに反発するように一対配置し、一対の電磁石の間にはエアギャップが設けられている。
【0039】
この電磁石の付勢体13は、制御部203によって外部から付勢力を可変制御可能にしている。制御部203は、電磁石の通電線13Xに流す電流の大きさを調整することで、付勢力を可変制御する。エアギャップを介して対向配置された電磁石に同じ大きさの電流が逆向きに流されることで、電流の大きさに応じた磁気的反発力を得ることができる。これによると、付勢体13の付勢力を予め設定する必要がなくなり、扉200の重量やシール部材102の材質等が変わった場合であっても、汎用的にヒンジ機構10を取り付けた後に付勢力を可変制御することで、シール部材102に均等負荷を加えることができる。
【0040】
図9は、密閉扉開閉構造1の他の実施形態を示しており、ここでは、前述した実施形態に開閉アシスト機能部を付加している。開閉アシスト機能部は、扉200の周囲と筐体100の開口101の周囲の一方又は両方に設けられ、扉200の開閉を電磁アシストするものである。
【0041】
図示の例では、扉200側に電磁力発生体204を設置し、筐体100側に電磁力発生体205を設置している。これによると、扉200の閉時には、開閉ハンドル201の押し動作を検知することで、電磁力発生体204,205間で磁気吸引力を発生させて閉め動作をアシストする。また、扉200の開時には、開閉ハンドル201の引き動作を検知することで、電磁力発生体204,205間で磁気反発力を発生させて開け動作をアシストする。このような開閉アシスト機能部を付加することで、一定の閉め込み力F1で扉200を閉じることができると共に、密閉状態で閉じられた扉200を小さな力で開放することができる。
【0042】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る密閉扉開閉構造1によると、シール部材102を筐体100と扉200との間に介在させて密閉性を得る扉200の開閉構造であって、ヒンジ機構10が固定単一のヒンジ軸2を備えるものであるが、扉200がシール部材102を均等に圧縮させて、良好な密閉状態を得ることができる。これにより、シール部材102の耐久性を高め、摩擦等による粉塵発生を抑制することができるようになる。
【0043】
また、ヒンジ機構10に内蔵した付勢体13の付勢力をシール部材102の反力等によって適宜設計することで、適用できる筐体100の構造や寸法の制限を無くし、装置毎の煩雑な個別対応を省いて、前述したように良好な密閉状態を得ることができる。更に、ヒンジ機構10のヒンジ軸2は、筐体100側に固定されている単一軸であるから、ヒンジ軸2の位置が扉200の開閉で変位する不安定さは無くなり、繰り返し扉200を開閉する場合の機構安定性や耐久性を確保することができる。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1:密閉扉開閉構造 2:ヒンジ軸
3:ヒンジ軸固定部材 3A:ストッパ部材 3P,3Q:固定ピン
3B:拘束部 3C:拘束ピン
10:ヒンジ機構
11:枢支部材 11A:枢支部 11B:軸部
11C:抜け止め部 11D:調整部材
12:扉側部材 12A:固定部 12B:連結部
12C:ブッシュ部 12D:空間
13:付勢体 13M:永久磁石 13X:通電線 13Y:芯体
14:固定ネジ 15:ドライブッシュ
100:筐体 101:開口 102:シール部材 103:面圧センサ
200:扉 201:開閉ハンドル 202:ロックハンドル
203:制御部 204,205:電磁力発生体
【要約】
【課題】シール部材を筐体と扉との間に介在させて密閉性を得る密閉扉開閉構造において、固定単一軸のヒンジ機構であっても、扉がシール部材を均等に圧縮させて、良好な密閉状態が得られるようにする。
【解決手段】密閉扉開閉構造は、筐体の開口に対してシール部材を介して扉を密閉するものであって、筐体に固定された単一のヒンジ軸を備えて扉を開閉するヒンジ機構を具備し、ヒンジ機構は、ヒンジ軸に枢支される枢支部材と、枢支部材に抜け止め状態で連結されて、扉と一体に移動する扉側部材と、枢支部材の抜け止め部と扉側部材との間に内蔵され、シール部材の反力に抗して扉側部材をヒンジ軸に向けて付勢する付勢体とを備えた。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
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図7
図8
図9