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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-17
(45)【発行日】2025-06-25
(54)【発明の名称】相変化デバイス
(51)【国際特許分類】
   H10B 63/10 20230101AFI20250618BHJP
   H10N 70/00 20230101ALI20250618BHJP
   H10N 70/20 20230101ALI20250618BHJP
【FI】
H10B63/10
H10N70/00 A
H10N70/20
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022565947
(86)(22)【出願日】2021-06-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-11
(86)【国際出願番号】 CN2021099344
(87)【国際公開番号】W WO2021254241
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-11-14
(31)【優先権主張番号】16/903,245
(32)【優先日】2020-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(74)【代理人】
【識別番号】100120710
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】リー、ニン
(72)【発明者】
【氏名】サダナ、デヴェンドラ、ケー
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-004924(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0273378(US,A1)
【文献】特開2007-214565(JP,A)
【文献】特開2007-258440(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0189918(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10B 63/10
H10N 70/00
H10N 70/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相変化デバイス(PCD)であって、
第1の半導体材料からなり第1の半導体厚さを有する第1の半導体層であって、前記第1の半導体層は第1の境界面と第1の電極面とをさらに有し、前記第1の境界面と前記第1の電極面とが互いに前記第1の半導体層の反対側にあり、前記第1の半導体材料が温度、電圧またはこれらの両方の第1の条件において第1のアモルファス状態と第1の結晶状態との間を遷移する特性を有し、前記第1の半導体層における前記第1の結晶状態の程度に応じて、前記相変化デバイス(PCD)が有する複数の状態が生じるように構成されている、前記第1の半導体層と、
第2の半導体材料からなり第2の半導体厚さを有する第2の半導体層であって、前記第2の半導体層は第2の境界面と第2の電極面とをさらに有し、前記第2の境界面と前記第2の電極面とが互いに前記第2の半導体層の反対側にあり、前記第1の境界面と前記第2の境界面とが境界において互いに電気的、物理的および化学的に接触し、前記第2の半導体材料が温度、電圧またはこれらの両方の第2の条件において第2のアモルファス状態と第2の結晶状態との間を遷移する特性を有し、前記第2の半導体層は、前記第1の半導体層が前記第1の半導体厚さにおいて前記第1のアモルファス状態に遷移されるときに、前記第2の半導体層における前記第2の半導体材料が、前記第2の結晶状態に維持されるように構成される、前記第2の半導体層と、
前記第1の半導体層の前記第1の電極面と物理的および電気的に接触している第1の電極と、
前記第2の半導体層の前記第2の電極面と物理的および電気的に接触している第2の電極と
を備え、前記第1の条件と前記第2の条件とは、区別可能に異なる、相変化デバイス(PCD)。
【請求項2】
前記第1の条件がより低い温度であり、前記第2の条件がより高い温度である、請求項1に記載のPCD。
【請求項3】
前記より低い温度および前記より高い温度が、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電圧パルスによって引き起こされる、請求項2に記載のPCD。
【請求項4】
前記電圧パルスが、前記第2の半導体材料を前記第2の結晶状態から遷移させることなく、前記第1の半導体材料が前記第1のアモルファス状態に遷移するのに十分に高い電圧の大きさを有するリセット・パルスである、請求項3に記載のPCD。
【請求項5】
前記リセット・パルスが、前記第1のアモルファス状態が前記第1の結晶状態に遷移しないように十分に速いリセット・パルス立下り時間を有する、請求項4に記載のPCD。
【請求項6】
前記第1の半導体材料の全体が前記第1のアモルファス状態にあり、前記第1のアモルファス状態の前記第1の半導体材料の両端間の第1の抵抗が、前記第1の半導体材料の一部が前記第1の結晶状態にあるときの前記第1の抵抗よりも大きい、請求項5に記載のPCD。
【請求項7】
前記電圧パルスが、前記第1の半導体材料が前記第1のアモルファス状態から遷移するのに十分に高い電圧の大きさを有するセット・パルスである、請求項3に記載のPCD。
【請求項8】
前記セット・パルスが、前記境界から第1の半導体結晶層がエピタキシャル成長して前記第1の半導体層を、前記第1の半導体厚さより小さいエピタキシャル厚さをもつ前記第1の半導体結晶層と、残留厚さをもつ第1のアモルファス残留層とに分離するように、十分に遅い緩やかなセット・パルス立下り時間を有する、請求項7に記載のPCD。
【請求項9】
前記エピタキシャル厚さが、前記セット・パルス立下り時間によって決定される、請求項8に記載のPCD。
【請求項10】
前記第1の半導体層が、前記第1の半導体厚さよりも小さいエピタキシャル厚さをもつ第1の半導体結晶層と、残留厚さをもつ第1のアモルファス残留層とに分離され、前記第1の半導体材料の両端間の第1の抵抗が、前記第1の半導体材料が前記第1のアモルファス状態にあるときの前記第1の抵抗より小さく、前記第1の半導体材料が前記第1の結晶状態にあるときの前記第1の抵抗より大きい、請求項1に記載のPCD。
【請求項11】
相変化デバイス(PCD)であって、
第1の半導体材料からなり第1の半導体厚さを有する第1の半導体層であって、前記第1の半導体層は第1の境界面と第1の電極面とをさらに有し、前記第1の境界面と前記第1の電極面とが互いに前記第1の半導体層の反対側にあり、前記第1の半導体材料が温度、電圧またはその両方の第1の条件において第1のアモルファス状態と第1の結晶状態との間を遷移する特性を有し、前記第1の半導体層における前記第1の結晶状態の程度に応じて、前記相変化デバイス(PCD)が有する複数の状態が生じるように構成されている、前記第1の半導体層と、
第2の半導体材料からなり第2の半導体厚さを有する第2の半導体層であって、前記第2の半導体層は第2の境界面と第2の電極面とをさらに有し、前記第2の境界面と前記第2の電極面とが互いに前記第2の半導体層の反対側にあり、前記第2の半導体材料が、温度、電圧またはその両方の第2の条件において第2のアモルファス状態と第2の結晶状態との間を遷移する特性を有し、前記第2の半導体層は、前記第1の半導体層が前記第1の半導体厚さにおいて前記第1のアモルファス状態に遷移されるときに、前記第2の半導体層における前記第2の半導体材料が、前記第2の結晶状態に維持されるように構成される、前記第2の半導体層と、
前記第1の半導体層の前記第1の電極面と物理的および電気的に接触している第1の電極と、
前記第2の半導体層の前記第2の電極面と物理的および電気的に接触している第2の電極と、
前記第1の半導体層と前記第2の半導体層との間の境界に拡散防止層と
を備え、前記第1の境界面と前記第2の境界面とが前記拡散防止層に互いに電気的、物理的および化学的に接触しており、前記第1の条件と前記第2の条件とは、区別可能に異なる、相変化デバイス(PCD)。
【請求項12】
相変化デバイス(PCD)であって、
第1の半導体材料からなり第1の半導体厚さを有する第1の半導体層であって、前記第1の半導体層は第1の境界面と第1の電極面とをさらに有し、前記第1の境界面と前記第1の電極面とが互いに前記第1の半導体層の反対側にあり、前記第1の半導体材料が温度、電圧またはこれらの両方の第1の条件において第1のアモルファス状態と第1の結晶状態との間を遷移する特性を有し、前記第1の半導体材料が前記第1の半導体厚さより小さいエピタキシャル厚さをもつ第1の半導体結晶層と残留厚さをもつ第1のアモルファス残留層とに分離されており、前記第1の半導体層における前記エピタキシャル厚さに応じて、前記相変化デバイス(PCD)の複数の状態が生じるように構成されている、前記第1の半導体層と、
第2の半導体材料からなり第2の半導体厚さを有する第2の半導体層であって、前記第2の半導体層は第2の境界面と第2の電極面とをさらに有し、前記第2の境界面と前記第2の電極面とが互いに前記第2の半導体層の反対側にあり、前記第1の境界面と前記第2の境界面とが境界において互いに電気的、物理的および化学的に接触し、前記第2の半導体材料が、前記第1の条件とは区別可能に異なる、温度、電圧またはその両方の第2の条件において第2のアモルファス状態と第2の結晶状態との間を遷移する特性を有し、前記第2の半導体層は、前記第1の半導体層が前記第1の半導体厚さにおいて前記第1のアモルファス状態に遷移されるときに、前記第2の半導体層における前記第2の半導体材料が、前記第2の結晶状態に維持されるように構成される、前記第2の半導体層と、
前記第1の半導体層の前記第1の電極面と物理的および電気的に接触している第1の電極と、
前記第2の半導体層の前記第2の電極面と物理的および電気的に接触している第2の電極と
を備え、
前記第1の電極と前記第2の電極との間で測定される全抵抗を有する、相変化デバイス(PCD)。
【請求項13】
前記エピタキシャル厚さが増大するにつれ、前記全抵抗が減少する、請求項12に記載のPCD。
【請求項14】
前記エピタキシャル厚さを変化させることによって、複数の全抵抗状態を有し、前記複数の全抵抗状態のうちの1つが、セット電圧パルスによって選択される、請求項12に記載のPCD。
【請求項15】
前記第1の半導体材料がゲルマニウムであり、前記第2の半導体材料がシリコンである、請求項1~請求項14のいずれか1項に記載のPCD。
【請求項16】
相変化デバイス(PCD)を製造する方法であって、
絶縁体層上に第1の電極を堆積させるステップと、
前記第1の電極上に第1の半導体層を堆積させるステップであって、前記第1の半導体層の材料が温度、電圧またはこれらの両方の第1の条件において第1のアモルファス状態と第1の結晶状態との間を遷移する特性を有する、前記堆積させるステップと、
前記第1の半導体層上に第2の半導体層を堆積させるステップであって、前記第2の半導体層の材料が、前記第1の条件とは区別可能に異なる、温度、電圧またはこれらの両方の第2の条件において第2のアモルファス状態と第2の結晶状態との間を遷移する特性を有する、前記堆積させるステップと、
前記第1の半導体層および前記第2の半導体層を結晶化させるステップと、
前記第2の半導体層の材料を、前記第2の結晶状態に維持しながら、前記第1の半導体層をアモルファス化するステップと、
を含み、前記相変化デバイス(PCD)は、セット電圧パルスで前記第1の半導体層を、前記第1の結晶状態である第1の半導体結晶層と、前記第1のアモルファス状態である第1の半導体アモルファス層とに分離し、前記分離の程度に応じて、前記相変化デバイス(PCD)が有する複数の状態のうちの1の状態とするように構成される、方法。
【請求項17】
加熱および冷却アニールが、前記第1の半導体層の全体および前記第2の半導体層の全体を結晶化させる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の半導体層を加熱し、冷却時間期間中に前記第1の半導体層が冷却することを可能にし、前記冷却時間期間中に、前記第1の半導体結晶層が前記冷却時間期間の長さによって決定されるエピタキシャル厚さまでエピタキシャル成長することによって、前記第1の半導体層の分離がなされる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記PCDの抵抗状態が、セット電圧パルスによって決定される冷却時間期間によって決定される、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は相変化デバイスに関する。より詳細には、本発明は複数の状態をもつ相変化デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの相変化デバイス(PCD:phase change device)は、たとえば、高抵抗状態(HRS:high resistive state)および低抵抗状態(LRS:low resistive state)の2つの状態で動作することができる。他のPCDは、複数の状態において、たとえばHRSとLRSとの間の抵抗値で動作することができる。これらのデバイスに異なる電圧を印加することにより、デバイスの状態のセットやリセットを行うことができる。
【0003】
いくつかのデバイスでは、通常は絶縁的である絶縁体が、十分に高い電圧の印加によって1つまたは複数のフィラメントまたは導電路を通じて導通(低抵抗状態(LRS)に)させられ得る。フィラメント/導電路が形成されると、電圧変化が絶縁体を「リセット」(たとえば、フィラメント/導電路を遮断してHRSとする)、または「セット」する(フィラメント/導電路を再形成してLRSとする)ことができる。電気バイアスによってフィラメントの構成を変えることによって、LRSとHRSとの間の中間状態を形成/記憶することも可能である。
【0004】
抵抗変化型ランダムアクセス・メモリ(RRAM(R):resistive random-access memory)のようなPCDは、高密度および高速の不揮発性メモリ用途だけでなく、ニューロモーフィック・コンピューティングに使用される電子シナプス・デバイスまたはメモリスタのための有望な技術としても検討されている。ニューロモーフィック・コンピューティング応用では、抵抗変化型メモリ・デバイスがプレニューロンとポストニューロンとの間の接続(シナプス)として使用され得、接続の重みをデバイス抵抗の形式で表現する。複数のプリニューロンとポストニューロンは、RRAM(R)のクロスバー・アレイによって接続され得、完全に接続されたニューラル・ネットワークを自然に表現する。
【0005】
PCDを配線工程(BEOL:back end of the line)で作ると、課題が生じ得る。デバイス回路は、一般に基板工程(FEOL:front end of line)で回路の下部層に配置されるが、BEOLは一般に複数の絶縁体基板層を有し、相変化デバイスを製造するとき、特に大規模のメモリ構造のようなPCDの高密度アレイを形成する場合、使うことが困難であり得る。
【0006】
特にBEOL領域において、PCDおよび高密度のPCDアレイの構築を可能にする構造および方法が求められている。さらに、複数状態PCD構造およびこれらの複数状態PCD構造の製造方法が求められている。
【発明の概要】
【0007】
本発明のいくつかの実施形態によれば、相変化デバイス(PCD)は、第1および第2の半導体層を有する。第1の半導体層は、第1の半導体材料からなり、第1の半導体厚さと、第1の境界面と、第1の電極面とを有する。第1の境界面と第1の電極面とは、互いに第1の半導体層の反対側にある。第1の半導体材料は、1つまたは複数の第1の条件において、第1のアモルファス状態と第1の結晶状態との間を遷移することができる。第2の半導体層は、第2の半導体材料からなり、第2の半導体厚さと、第2の境界面と、第2の電極面とを有する。第2の境界面と第2の電極面とは、互いに第2の半導体層の反対側にある。第1の境界面と第2の境界面とは、境界において互いに電気的、物理的、および化学的に接触している。第2の半導体材料は、1つまたは複数の第2の条件において、第2のアモルファス状態と第2の結晶状態との間を遷移することができる。第1の電極は、第1の半導体層の第1の電極面と物理的および電気的に接触しており、第2の電極は、第2の半導体層の第2の電極面と物理的および電気的に接触している。第1の条件と第2の条件とは異なる。したがって、いくつかの実施形態では、第1および第2の半導体材料は、異なるアモルファス状態または結晶状態あるいはその両方にあり得る。
【0008】
いくつかの実施形態では、第1の半導体層は、第1のエピタキシャル結晶層と第1のアモルファス残留層とに分割または分離される。第1のエピタキシャル結晶層は、エピタキシャル厚さおよびエピタキシャル抵抗を有し、第1のアモルファス残留層は、残留厚さおよび残留抵抗を有する。エピタキシャル厚さを制御することによって、第1の半導体の両端間抵抗、したがってデバイス(の電極)の両端間の全抵抗が制御され、LRSから複数のHRSまで、複数の抵抗状態を生じさせる。
【0009】
PCDの製造方法および使用方法を開示する。
【0010】
本発明の様々な実施形態について、後に添付の図面を参照しながらより詳細に説明するが、ここで簡単に説明する。図は、本発明の様々な機器、構造、および関連する方法ステップを示している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】相変化デバイス(PCD)を製造する一例示的プロセスの初期ステップにおける準備的な積層構造の構成正面図である。
図2】2つの半導体層および随意の拡散防止層の追加後の準備的な積層構造の構成正面図である。
図3】PCDのフットプリントを画定するマスク・エッチング・ステップ後の準備的な積層構造の構成正面図である。
図4】絶縁体で覆われた準備的な積層構造の構成正面図である。
図5】PCDの初期構造の、上部電極を含む積層構造の構成正面図である。
図6】第1および第2の半導体層が加熱され、冷却されて結晶構造を形成した後の、PCDの初期構造の実施形態の構成正面図である。
図7】第1の半導体層がアモルファス構造にリセットされた後のPCDの実施形態の構成正面図である。
図8】第1の半導体結晶層と第1の半導体アモルファス層との2層構造が複数あって、第1の半導体層がそのうちの1つにセットされた後のPCDの実施形態の構成正面図である。
図9】拡散防止層をもつ代替のPCDの実施形態の構成正面図である。
図10】(A)は、1つまたは複数のリセット・パルスを示す電圧対時間のプロットであり、(B)は、1つまたは複数のセット・パルスを示す電圧対時間のプロットである。
図11】PCDの製造プロセスの実施形態のフローチャートである。
図12】PCDを動作させるためのプロセスの実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態は、本明細書に開示された例示的な方法、機器、構造、システムおよびデバイスに限定されるものではなく、この開示が与えられる当業者には明らかとなるが、むしろ、他の代替的でより広範な方法、機器、構造、システムおよびデバイスに対して、より広範に適用可能であることは理解されるべきである。
【0013】
加えて、添付の図面に示される様々な層、構造、または領域、あるいはその組合せは縮尺通りに描かれておらず、一般的に使用される種類の1つまたは複数の層、構造、または領域、あるいはその組合せが所定の図面に明示的に示されていないことがあることは理解されるべきである。これは、明示的に示されていない層、構造、または領域、あるいはその組合せが実際のデバイスから省略されることを意味するものではない。
【0014】
加えて、説明がやむを得ずそのような省略された要素に焦点を当てられていないとき、明確さまたは平易さあるいはその両方のために、特定の要素は図から省かれ得る。さらに、図面全体で使用される同一または類似の参照番号は、同一または類似の特徴、要素、または構造を示すために使用され、したがって、同一または類似の特徴、要素、または構造の詳細な説明は、図面の各々について繰り返されない。
【0015】
本発明の実施形態によって開示される半導体デバイス、構造、および方法は、アプリケーション、ハードウェア、または電子システム、あるいはその組合せにおいて採用され得る。本発明の実施形態を実施するための適切なハードウェアおよびシステムは、パーソナル・コンピュータ、通信ネットワーク、電子商取引システム、携帯通信デバイス(たとえば、セルおよびスマートフォン)、固体媒体記憶デバイス、エキスパートおよび人工知能システム、機能回路、ニューラル・ネットワークなどを含み得るが、これらに限定されない。本半導体デバイスおよび構造を組み込んだシステムおよびハードウェアは、本発明の実施形態として企図されている。
【0016】
本明細書で使用する際、「高さ(height)」は、要素(たとえば、層、トレンチ、ホール、開口部など)の底面から上面まで測定された、または要素が置かれている面を基準にして測定された、あるいはその両方の、断面図または正面図における要素の垂直方向の寸法を指す。
【0017】
逆に、「深さ(depth)」は、要素(たとえば、層、トレンチ、ホール、開口部など)の上面から下面まで測定した、断面図または正面図における要素の垂直方向の寸法を指す。「厚い(thick)」、「厚さ(thickness)」、「薄い(thin)」などの用語またはそれらの派生語が記載される場合、「高さ」の代わりに使用されることがある。
【0018】
本明細書で使用する際、「横方向の(lateral)」、「横側(lateral side)」、「面(side)」、および「外側面(lateral surface)」は、図面における左側面(left-side surface)または右側面(right-side surface)などの要素(たとえば、層、開口部など)の側面(side surface)のことを指す。
【0019】
本明細書で使用する際、「幅(width)」または「長さ(length)」は、要素(たとえば、層、トレンチ、ホール、開口部など)の一側面から反対側の面まで測定された、図面における要素の寸法を指す。「厚い」、「厚さ」、「薄い」などの用語またはそれらの派生語が記載される場合、「幅」または「長さ」の代わりに使用されることがある。
【0020】
本明細書で使用する際、「上部の(upper)」、「下部の(lower)」、「右の(right)」、「左の(left)」、「垂直の(vertical)」、「水平の(horizontal)」、「上部(top)」、「底部(bottom)」などの用語、およびそれらの派生語は、図面図において方向付けられるように、開示される構造および方法に関連する。たとえば、本明細書で使用する際、「垂直の」は、正面図における基板の上面に垂直な方向を指し、「水平の」は、正面図における基板の上面に平行な方向を指す。
【0021】
本明細書で使用する際、別段に指定されない限り、「上に(on)」、「上に(overlying)」、「頂上に(atop)」、「上に(on top)」、「上に位置する(positioned on)」または「上に位置する(positioned atop)」などの用語は、第1の要素が第2の要素上に存在することを意味し、第1の要素と第2の要素との間に介在要素が存在し得る。本明細書で使用する際、別段に指定されない限り、「上に(on)」、「上に(overlying)」、「頂上に(atop)」、「上に(on top)」、「上に位置する(positioned on)」もしくは「上に位置する(positioned atop)」、「上に配置される(disposed on)」という用語、または「接触して(in contact)」もしくは「直接接触して(direct contact)」という用語に関連して使用される「直接(directly)」という用語は、第1の要素と第2の要素とが、第1の要素と第2の要素との間に、たとえば、中間の導電層、絶縁体層または半導体層などの介在要素が存在せずに接続されることを意味する。
【0022】
これらの用語は、記載されたデバイスの向きによって影響を受ける可能性があることを理解されたい。たとえば、これらの記述の意味は、デバイスが上下逆に回転されれば変わることもあり得るが、本発明の特徴間の相対的な関係を記述しているので、記述は依然有効である。
【0023】
相変化デバイス(PCD)構造ならびにPCDの製造および動作のプロセスの実施形態を開示する。
【0024】
PCD構造の非限定的な例は、上部電極と底部電極との間に挟まれた第1の半導体層と第2の半導体層を含む。第1の半導体層と第2の半導体層とは、第1の半導体層および第2の半導体層の面のうちの1つ(境界面)の各々が、他方の境界面と物理的に接触している境界を有する。いくつかの実施形態では、第1の境界面と第2の境界面との間に薄い拡散防止層が存在する。第1の半導体層および第2の半導体層の各々は、それぞれの半導体層の境界面とは反対側の半導体層の面である電極面を有する。第1の半導体層上の第1の電極面は、底部または第1の電極と物理的および電気的に接触しており、第2の半導体層上の第2の電極面は、上部または第2の電極と物理的および電気的に接触している。
【0025】
第1の半導体層および第2の半導体層を構成する材料は、半導体の各々が異なる条件、たとえば温度のような熱的変化によってアモルファス構造から結晶構造に変化するという、異なる、区別可能な熱特性を有している。
【0026】
熱的な加熱と冷却のステップ、たとえばアニールは、第1と第2の半導体層の両方を結晶状態にするために実行される。
【0027】
「セット」ステップにより、第1の結晶層のエピタキシャル結晶成長または変化が(分離した)第1の半導体層内に境界から始まり第1の半導体層に浸透する第1のエピタキシャル結晶層を形成することが可能になる。したがって、第1の半導体層は、第1のエピタキシャル結晶層と第1のアモルファス残留層とに分割または分離される。第1のエピタキシャル結晶層は、エピタキシャル厚さおよびエピタキシャル抵抗を有し、第1のアモルファス残留層は、残留厚さおよび残留抵抗を有する。
【0028】
たとえばセット・パルスの特性を変えることによって、どのようにセット・ステップが実行されるかを変えることによって、エピタキシャル厚さと残留厚さは変わる。したがって、エピタキシャル抵抗と残留抵抗は変えられ得、構造の両端間の抵抗の異なる総計(全抵抗)、たとえば構造の異なる(抵抗)状態は、予め決定され、制御され、可能にされ得る。
【0029】
ここで図を参照されたい。
【0030】
図1は、相変化デバイス(PCD)を製造する例示的なプロセスの初期ステップにおける準備的な積層構造100の構成正面図である。
【0031】
構造100は基板105を有する。絶縁体層110は基板105上に配置される。いくつかの実施形態では、たとえば配線工程(BEOL)において、基板105は省略されることがある。底部電極115は、絶縁体層110上に配置される。
【0032】
基板105は、単一の元素(たとえば、シリコンまたはゲルマニウム);主として単一の元素(たとえば、ドーピングをともなう)、たとえばシリコン;または化合物半導体、たとえばガリウムヒ素(GaAs)、もしくは半導体合金、たとえばシリコンゲルマニウム(SiGe)から作ることができる。いくつかの実施形態では、基板105は、シリコン(Si)、SiGe、Si:C(炭素ドープされたシリコン)、ゲルマニウム(Ge)、炭素ドープされたシリコンゲルマニウム(SiGe:C)、Si合金、Ge合金、III-V族材料(たとえば、GaAs、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)、インジウムヒ素(InAs)、インジウムリン(InP)、アルミニウムヒ素(AlAs)など)、II-V族材料(たとえば、セレン化カドミウム(CdSe)、硫化カドミウム(CdS)またはその組合せ)または他の同種半導体を含むが、これらに限定されない、1つまたは複数の半導体材料を含む。加えて、複数層の半導体材料は、基板105の半導体材料として使用され得る。いくつかの実施形態では、基板105は半導体材料と絶縁体材料の両方を含む。いくつかのシリコン・オン・インシュレータ(SOI)実装では、埋め込み酸化物層、BOX(buried oxide)(たとえば、SiO2)が基板105中に埋め込まれる。
【0033】
いくつかの実施形態では、絶縁体層110は、low-k絶縁体からなる。「low-k絶縁体」という用語は一般に、酸化シリコンより小さい誘電率、たとえば3.9より小さい誘電率を有する絶縁材料を指す。非限定的な例として、絶縁体層110は、誘電体酸化物(たとえば、酸化シリコン、SiOx);誘電体窒化物(たとえば、窒化シリコン、SiN;硼炭窒化シリコン、SiBCN;炭窒化シリコン、SiCN;および硼窒化シリコン、SiBN);誘電体酸窒化物(たとえば、酸炭窒化シリコン、SiOCN、および酸窒化シリコン、SiON);炭化シリコン(SiC);炭酸化シリコン(SiCO);またはこれらの任意の組合せまたは同様のものを含む材料からなる。
【0034】
絶縁体層110は、原子層堆積(ALD:atomic layer deposition)、化学気相成長(CVD:chemical vapor deposition)、プラズマ強化化学気相成長(PECVD:plasma enhanced chemical vapor deposition)、高周波化学気相成長(RFCVD:radio frequency chemical vapor deposition)、物理気相成長(PVD:physical vapor deposition)、パルス・レーザ堆積(PLD:pulsed laser deposition)、または液体ソース・ミスト化学堆積(LSMCD:liquid source misted chemical deposition)、あるいはその組合せを含む既知の堆積技術によって堆積され得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、絶縁体層110は、50ナノメートル(nm)と100nmとの間の絶縁体層厚さ111を有する。他の厚さ111も想定される。
【0036】
第1の電極または底部電極115は、導電性材料、たとえば金属からなる。金属の非限定的な例は、銅(Cu)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、窒化タリウム(Tl3N)、および窒化チタン(TiN)を含む。いくつかの実施形態では、第1の/底部電極115はAlからなる。
【0037】
第1の/底部電極115は、ALD、CVD、PECVD、RFCVD、PVD、PLD、LSMCD、またはスパッタリング、あるいはその組合せによって堆積され得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、第1の電極115の厚さ116は、50ナノメートル(nm)と100nmとの間にある。他の厚さ116も想定される。
【0039】
図2は、2つの半導体層(250、225)および随意の拡散防止層285の追加後の準備的な積層構造200の構成正面図である。
【0040】
第1の半導体層250は、アモルファス形態(第1のアモルファス形態)と結晶形態(第1の結晶形態)とを取り得る第1の半導体材料からなる。第2の半導体層225は、アモルファス形態(第2のアモルファス形態)と結晶形態(第2の結晶形態)とを取り得る第2の半導体材料からなる。アモルファス形態は、様々な物理的条件下で結晶形態に遷移することができる(逆もまた同様)。第1の半導体材料は、第2の半導体がアモルファス形態から結晶形態への遷移を行う条件とは異なる条件(たとえば、温度または電圧あるいはその両方の印加)で、第1の半導体材料をアモルファス形態から結晶形態に遷移させる特性を有する。
【0041】
いくつかの実施形態では、第1の半導体層250材料はゲルマニウム(Ge)であり、第2の半導体層225材料はシリコン(Si)である。他の材料も想定される。
【0042】
第1の半導体層250は、20nmと50nmとの間の第1の半導体層250の厚さ251を有する。第2の半導体層225も同様に、20nmと50nmとの間の第2の半導体層225の厚さ226を有する。
【0043】
第1の半導体層250は、第1の境界面257と第1の電極面258とを有する。第1の境界面257と第1の電極面258とは、互いに反対側、すなわち第1の半導体層250の反対側にある。
【0044】
第2の半導体層225は、第2の境界面227と第2の電極面228とを有する。第2の境界面227と第2電極面228とは、互いに反対側、すなわち第2の半導体層225の反対側にある。
【0045】
第1の電極面は、第1の/底部電極115と物理的および電気的に接触している。いくつかの実施形態では、第1の境界面257は、第2の境界面227と物理的、化学的、および電気的に接触している。代替の実施形態では、第1の境界面257と第2の境界面227との間に「挟まれた」随意の拡散防止層(DBL:diffusion blocking layer)285が存在する。第2の電極面228は、以下に示す、たとえば図5中の第2の/上部電極515と物理的および電気的に接触している。
【0046】
DBL285は、第1の半導体層250材料(たとえばGe)の第2の半導体層225材料(たとえばSi)への拡散を防止する。DBLは窒化チタン(TiN)または炭素(C)から製造され得る。他の既知のバリア、拡散防止材料も使用され得る。
【0047】
DBL285は、1nmと10nmとの間の厚さ286を有する薄い層である。
【0048】
第1の半導体層250、第2の半導体層225およびDBL285は、ALD、CVD、PECVD、RFCVD、PVD、PLDまたはLSMCD、あるいはその組合せによって堆積させられ得る。堆積の順序は重要でない。ただし、随意のDBL層285が配置される場合、DBL層285は、第1の境界面257と第2の境界面227との間に存在することになる。半導体層(250、225)を堆積する順序を逆にすると、第2の電極面228は第1の/底面電極115と物理的および電気的に接触しており、第1の電極面258は第2の/上面電極515と物理的および電気的に接触している。ただし、いずれの場合も、以下に説明するように、一般性を失うことなく、第1の半導体層250がエピタキシャル成長をともなう半導体層となる。
【0049】
図3は、PCDのフットプリントを画定する既知のマスク・エッチングのステップ、たとえば指向性反応性イオン・エッチング(RIE:reactive ion etch)後の準備的な積層構造300の構成正面図である。残る予定の半導体層(350、325)の周囲(左および右-ならびに前および後、図示せず)の多量の半導体層(225、250)が除去される310間、マスクは半導体層(225、250)の一部を保護する。マスクされていない第1の半導体層250および第2の半導体層225を除去するのに適した1つまたは複数の既知の化学物質が使用され得る。いくつかの実施形態では、エッチングは、バリア層、たとえば、第1の/底部電極115で停止する。
【0050】
この構造300および以下の構造において、DBL285は構造に含まれることも含まれないこともあるが、明確さのためにDBL285を図示していない。このマスクを使用したエッチングは、第1の/底部電極115面上でPCDが使用する寸法または面積あるいはその両方、すなわちPCDのフットプリントを画定する。
【0051】
図4は、絶縁体410で覆われた準備的な積層構造400の構成正面図である。
【0052】
いくつかの実施形態では、絶縁体410は、絶縁体層110におけるものと同じ種類であるか、または同じ方法によって配置されるか、あるいはその両方であり得る。いくつかの実施形態では、絶縁体410は、層間絶縁体(ILD)であり得る。ILD410は、たとえば、酸化シリコン、スピンオングラス、流動性酸化物、高密度プラズマ酸化物、ボロホスホシリケート・ガラス(BPSG)、またはそれらの任意の組合せを含むがこれらに限定されないlow-k絶縁体材料(k<4.0をもつ)から形成され得る。ILD410は、CVD、PVD、PECVD、ALD、蒸着、化学溶液堆積、または同様のプロセスを含むが、これらに限定されない堆積プロセスによって堆積される。
【0053】
図5は、第2の/上部電極515を含む積層構造500の構成正面図である。構造500は完成しているが、後に説明するように、半導体層(325、350)がPCDとして効率的に動作するために半導体層(325、350)の化学構造を変換させる必要があるという点で、構造500はPCDの初期構造である。
【0054】
第2の/上部電極515は、第2の半導体層325の上方のILD/絶縁体層410を貫いてマスクを使用したエッチング、たとえば指向性RIEを実行することによって形成される。いくつかの実施形態では、エッチングは第2の電極面228で停止する。第1の電極層115を堆積させるために使用されたものと同様の材料および方法を使用して、第2の/上部電極515は、第2の電極面228と物理的および電気的に接触するように堆積させられる。
【0055】
図6は、第1の半導体層350および第2の半導体層325が加熱され、冷却されて結晶構造(650、625)を形成した後の、初期構造PCD実施形態600の構成正面図である。
【0056】
第1の半導体構造350を第1の結晶状態650に変換し、第2の半導体構造325を第2の結晶状態625に変換する1つまたは複数の変化した物理的条件を第1の半導体層350と第2の半導体層325の両方が経験するように、物理的プロセスが実行される。
【0057】
いくつかの実施形態では、変化した物理的条件は、熱アニールである。換言すれば、両方の半導体層(350、325)が溶融する温度を上回る温度で加熱され、次に時間をかけて冷却され、その結果、第1の結晶質半導体層650と第2の結晶質半導体層625の両方が形成される。第1の結晶層650と第2の結晶層625の両方を結晶化させる時間および温度の水準は、層内の材料の種類と層内の材料の体積とに依存する。実際の時間と温度の値は、特定の状況に応じて決定される必要があるが、非限定的な例として、温度は、デバイス内で局所的に摂氏900度(℃)と1000℃との間の温度に昇温され、室温まで1マイクロ秒と10マイクロ秒との間の期間をかけて冷却することが可能とされる。
【0058】
非限定的な例では、アニール・ステップによって、第1の半導体層350中のアモルファスGe(α-Ge)が結晶質Ge(c-Ge)650に変化させられ、第2の半導体層325中のアモルファスSi(α-Si)が結晶質Si(c-Si)625に変化させられる。
【0059】
図7は、第1の結晶質半導体層650がアモルファス構造750にリセットされた後のPCDの実施形態700の構成正面図である。
【0060】
第1の結晶構造半導体層650は、第2の結晶構造半導体層625の構造を変えることなく、アモルファス構造750に「リセット」される。これは、第1の半導体層(350、650)および第2の半導体層(325、625)各々が、1つまたは複数の異なる区別可能な物理的条件でアモルファスから結晶質への遷移(および再び元に戻ること)を行った特性を有することに起因している。したがって、アモルファスから結晶質への遷移(および再び元に戻ること)は、第2の半導体層構造(325、625)に影響を与えることなく第1の半導体層構造(350、650)において行われ得る。
【0061】
非限定的な例では、GeはSiよりも低い温度でアモルファスから結晶質に遷移する(および再び元に戻る)。1つまたは複数の電気的/電圧パルスを第1の/底部電極115と第2の/上部電極515との間に印加することによって、電流が第1(350、650)および第2(325、625)の半導体層を貫通して流れ、それらを昇温させる。パルスは、GeをGeの遷移点(温度)より高いがSiの遷移点より低い温度で加熱するように設計されている。したがって、第1の結晶質半導体層650(たとえば、c-Ge)は溶融するが、第2の結晶質半導体層625は溶融しない。第1のアモルファス半導体層750を結晶状態に再形成するには急速過ぎる急冷期間が存在する。第2の結晶質625半導体層625(たとえばc-Si)は、この温度/電圧の変化によって、結晶状態625から変化することはない。
【0062】
構造700は、今度は「リセット」され、高抵抗のアモルファス状態750にある第1の半導体層350を有する。したがって、第1のアモルファス半導体層750の増大した抵抗のために、構造700の全体の抵抗は高くなる。構造700は、第1の半導体層350のアモルファス構造によってHRSにリセットされる。後述するが、第1の半導体層350を結晶構造に戻すように「セット」することは、第1の半導体層(350、650)の両端間抵抗を減少させ、2つ以上の状態、LRSと複数のHRSをもつPCDである構造700をLRSに到達するまで複数のHRSに置く。
【0063】
第1の半導体層350および第2の半導体層325中の材料種類、層の体積、および他の要因が、電圧パルスのタイミング、形状、および大きさを設計するために使用される。「リセット」するために使用される電圧パルスの、パルス・タイミング、形状、大きさの例を後に図10(A)で提供する。いくつかの実施形態では、リセット状態で、第1の半導体層350の体積全体がアモルファス状態にある。
【0064】
図8は、第1のアモルファス半導体層850が、複数の2層構造(850A、850B)、すなわち第1の半導体結晶層850Aと第1の半導体アモルファス層850B、のうちの1つに「セット」された後のPCDの実施形態800の構成正面図である。
【0065】
一実施形態では、セット・パルス(図10(B)を参照のこと)は、第1のアモルファス半導体層(たとえば、リセット・パルスが第1の半導体層を完全にアモルファス状態750にリセットした後の)を、2つの層:1.エピタキシャル厚さ865とエピタキシャル抵抗とを有する第1のエピタキシャル結晶層850Aと、2.残留厚さ860と残留抵抗とを有する第1のアモルファス残留層850Bとに分離した、分離した第1の半導体層850に変化させる。残留層850Bは、セット・パルス後に第1の半導体アモルファス層750のアモルファス層750の残留したものである。
【0066】
セット・パルスの形状、持続時間、タイミング、および大きさは、たとえば、第1のエピタキシャル結晶層850Aの厚さ865、第1のアモルファス残留層850Bの厚さ860をどの程度の大きさにするかを決定する。したがって、エピタキシャル抵抗および残留抵抗は、エピタキシャル結晶層850Aおよび残留層850Bのそれぞれの厚さ(865、860)を制御するセット・パルスの設計によって制御され得る。したがって、セット状態における分離した第1の半導体層850の抵抗およびデバイス800全体の全抵抗(第1の電極115と第2の電極515との間で測定される)、すなわち、HRSの抵抗の総計は、セット・パルスの設計によって制御される。
【0067】
複数のHRSのうちの1つにおけるデバイス800の抵抗の総計、およびセット・パルスをどのように設計するかに影響を与える他の要因は、第1の半導体層250および第2の半導体層225の材料および厚さ(251、226)、ならびに、存在すればDBL層285の材料の種類および厚さ286を含む。
【0068】
その結果、第1の半導体層250および第2の半導体層225の他の外部の物理的条件を一定にした状態で、セット・パルスの形状、持続時間、タイミング、および大きさを変化させることによって、セット状態における複数の高抵抗状態、たとえばデバイス800の全抵抗の値が生成され得る。したがって、セット・パルスを変化させることによって、構造体800は、複数の(抵抗の)セット状態をもつPCDであり得る。
【0069】
セット・ステップがどのように実行されるかを変えることによって、たとえばセット・パルスの特性を変えることによって、エピタキシャル厚さと残留厚さが変化することになる。したがって、エピタキシャル抵抗と残留抵抗とが変えられ得、構造の両端間抵抗の異なる総計、たとえば構造の異なる状態は、予め決定され、制御され、可能にされ得る。
【0070】
セット・パルスの設計は、第1のエピタキシャル結晶層850Aがどのように形成されるかを決定する。
【0071】
「エピタキシャル成長」という用語は、半導体材料の接触面上での半導体材料の成長を意味し、成長させられる半導体材料が堆積面の半導体材料と同じ結晶特性を有する。エピタキシャル成長が続いているところで、成長層850Aの面875における原子が、面875上を動き回り、それら自らを原子の結晶配列に合わせて配置させるために十分なエネルギーを持つように、材料パラメータが生成され得る。
【0072】
たとえば、セット・パルスが第1のアモルファス半導体層750を加熱し、溶融させるように設計される場合、第1のアモルファス半導体層750中の原子は動き回るのに十分なエネルギーを有することになる。加えて、セット・パルスにより第1のアモルファス半導体層750が徐冷されることが可能になれば、移動する原子(たとえばGeの)は、原子が接触している結晶面の結晶軸方向に移動することになる。
【0073】
DBL985がある場合、DBL985はGe結晶化のテンプレートとして作用することができる。
【0074】
この非限定的な例を続けると、セット・パルスが第1のアモルファス半導体層750材料(Ge)を溶融するとき、第2の半導体層625中の材料(Si)は結晶構造のままである。第1のアモルファス半導体層750中の原子が徐冷されると、原子は、境界825を起点とする第2の半導体層625の結晶秩序に沿うように自らを配置する。層850が徐冷され続けるにしたがって、第1のアモルファス半導体層750中のより多くの原子が結晶秩序に沿って配置し、したがって成長する第1のエピタキシャル結晶層850Aの厚さ865を増大させ、第1のアモルファス半導体層750の境境界875をより深く移動させる。第1のエピタキシャル結晶層850Aの厚さ865が増大するので、残留層850Bの厚さ860は減少する。
【0075】
第1のエピタキシャル結晶層850Aの厚さ865と残留層850Bの厚さ860とを変化させることによって、これらの層の抵抗値が変化し、したがって、セット・パルスを制御することによってデバイス800の全体の抵抗が変化する。
【0076】
いくつかの実施形態では、セット・パルスを時間とともに値を緩やかに減少させることによって、たとえば、冷却の変化率を小さくすること、または分離した第1の半導体層850の冷却時間を長くすること、あるいはその両方によって、第1のエピタキシャル結晶層850Aの厚さ865は増大し、残留層850Bの厚さ860は縮小することになる。
【0077】
図9は、拡散防止層(DBL)985をもつ代替のPCDの実施形態900の構成正面図である。防止層985は、図2に示す随意層285を堆積し、DBL285が堆積させられなかった場合に実行されるプロセス・ステップを継続することによって形成される。
【0078】
図10(A)は、電圧1030対時間1035のプロット1000であり、1つまたは複数のリセット・パルス、典型的には1025、を示している。リセット・パルス1025は、継続時間1010と、第1の半導体層250中の材料(たとえばGe)を溶融するには十分高いが第2の半導体層225中の材料(たとえばSi)にはそうでない高さ1020とを有する。しかしながら、第1の250半導体層材料が結晶化する時間を有しないように、持続時間1010は十分に短く、特に下降時間1026は十分に速い。したがって、第1の半導体層材料250は、デバイス800/900がリセットされると、アモルファス構造/状態750のままである、またはアモルファス構造/状態750に戻る。
【0079】
図10(B)は、1つまたは複数のセット・パルス、典型的には1070、を示す電圧1030対時間1035プロット1050である。セット・パルスは、セット・パルスの立下り時間1075にわたって緩やかに立下る時間速度1065で、大きさ1055と持続時間1060を有する。たとえば、立下り時間速度1065は、パルス1070の大きさ1055をセット・パルス立下り時間1075で除したものである。
【0080】
議論したように、とりわけこれらのパルスの大きさ(1020、1055)、タイミング(1010、1060、1075)、持続時間(1010、1080)、および形状(1025、1070)の設計は、第1の半導体層350および第2の半導体層325の材料の種類および厚さ(251、226)に依存する。
【0081】
しかしながら、いくつかの実施形態では、リセット・パルス1025は、7ボルトと10ボルトとの間、たとえば8ボルトのリセット・パルス大きさ1020;2.0ナノ秒(ns)と3.0nsとの間のリセット・パルス立上り時間1024、たとえば2.5ns;および2.0ナノ秒(ns)と3.0nsとの間のリセット・パルス立下り時間1026、たとえば2.5nsを有する。リセット・パルスの形状は、矩形またはその他の形状であり得る。しかし、リセット・パルスの立下り時間1026は、材料が結晶化しないように十分に速くなければならない。リセット・パルス1025の大きさ1020は、第2の半導体層625の材料の結晶構造が変化しないように、十分に低くなければならない。
【0082】
いくつかの実施形態、非限定的な例では、セット・パルス1070は、4ボルトと6ボルトとの間の大きさ1069、たとえば5ボルト;2.0ナノ秒(ns)と3.0nsとの間のセット・パルス立上り時間1069、たとえば2.5ns;および0.8ミリ秒(ms)と1.5msとの間の長いセット・パルス立下り時間1075、たとえば1.0msを有する。いくつかのセット・パルス形状は、第1の半導体結晶層850Aに結晶構造を形成する時間を与えるために、たとえば1.0msを上回る緩やかな立下り時間を有する。セット・パルス1070の継続時間1080は、長い立下り時間1075を含むために十分長く、たとえば、1.0ms以上である。
【0083】
図11は、PCDを製造するプロセスの一実施形態1100を示すフローチャートである。
【0084】
方法のステップ1105は、絶縁体層110または基板105あるいはその両方の上への第1の電極115の堆積で始まる。次に、第1の半導体層250および第2の半導体層225が堆積させられる。いくつかの実施形態では、拡散防止層285は、電気的な第1の半導体層250と第2の半導体層225との間に堆積させられる。
【0085】
ステップ1110は、図3から図5において画定されたように、PCDのフットプリントを画定するエッチングおよび他のリソグラフィのステップを行った後、第2の電極515を堆積させる。
【0086】
ステップ1115は、図6で説明したように、熱的な加熱および冷却ステップ、たとえばアニールで第1の半導体層250および第2の半導体層225を結晶化させる。他の結晶化法も可能である。
【0087】
ステップ1120は、たとえばリセット電圧パルス1025で物理的条件を変化させ、デバイスをリセット状態またはLRSに置くことによって、第1の半導体層をアモルファス化させる。
【0088】
ステップ1125は、たとえばセット電圧パルス1075で物理的条件を変化させることによって、第1の半導体層850を第1の半導体結晶層850Aと第1の半導体アモルファス層850Bとに分離する。これは、デバイス800を、セット電圧パルス1075の設計によって選択された複数の抵抗状態(第1の電極115と第2の電極515との間の全抵抗によって測定される)のうちの1つに置く。抵抗状態は、LRSとHRSとの間の複数の値のうちの1つをもつデバイス800の両端間の全抵抗を有することになる。LRSにおいては、第1の半導体結晶層850Aは、第1の半導体層250の全幅251に等しい幅またはエピタキシャル厚さ865を有する。
【0089】
図12は、PCDを動作させるためのプロセスの一実施形態1200を示すフローチャートである。
【0090】
プロセス1200は、第1の半導体層850を全ての第1の半導体850材料がアモルファス状態750にあるアモルファス状態にリセットする、ステップ1205から開始する。いくつかの実施形態では、このステップはリセット・パルス1025で実行される。
【0091】
ステップ1210では、デバイス、たとえば800は、第1の半導体層850を第1の半導体結晶層850Aと残留層850Bとに分離するようにセットされる。
【0092】
ステップ1215では、図10(B)で説明したように、デバイス、たとえば800の両端間の全抵抗が、セット・パルスによって選択される。全抵抗とは、第1の電極115と第2の電極515との間で測定される抵抗値である。全抵抗は第1の半導体層850の抵抗に大きく影響され、同様に第1の半導体層850の抵抗は第1の半導体結晶層850Aの幅またはエピタキシャル厚さ865に影響される。エピタキシャル厚さ865が大きいほど、より低抵抗な状態である結晶状態にある第1の半導体層850材料の体積が大きくなる。したがって、エピタキシャル厚さ865を制御することによって、全抵抗は、LRSとHRSとの間、または第1の半導体層850材料がそれぞれ完全にアモルファスである構造と完全に結晶質である構造との間の複数の値の1つに変化させられ得る。セット・パルスの設計が、どれだけの第1の半導体層850材料がエピタキシャル成長し、エピタキシャル厚さ865を増大させ、全抵抗を減少させるか決定する。
【0093】
本発明の様々な実施形態の説明は、例示のために提示したが、網羅的であることまたは開示した実施形態に限定することを意図していない。多くの改変および変形は、当業者には説明した実施形態の範囲および思想から逸脱することなく明らかになろう。たとえば、本発明の実施形態に従って開示される半導体デバイス、構造、および方法は、アプリケーション、ハードウェア、または電子システム、あるいはその組合せに採用され得る。本発明の実施形態を実施するための適切なハードウェアおよびシステムは、パーソナル・コンピュータ、通信ネットワーク、電子商取引システム、携帯通信機器(たとえば、セルおよびスマートフォン)、固体媒体記憶装置、エキスパートおよび人工知能システム、機能回路などを含むが、これらに限定されない。本半導体デバイスを組み込んだシステムおよびハードウェアは、本発明の実施形態として企図されている。
【0094】
本明細書で使用する用語は、実施形態の原理と、市場で見出される技術に対する実用化または技術的改良とを説明するために、あるいは他の点では、他の当業者が本明細書に開示した実施形態を理解することが可能となるように選択した。実質的に同じ機能を実行し、実質的に同じやり方で動作し、実質的に同じ効用を有し、または同様のステップを実行し、あるいはその組合せを行う、異なる用語で説明されたデバイス、構成要素、要素、特徴、機器、システム、構造、技術、および方法は、本発明の実施形態として企図されている。
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