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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-17
(45)【発行日】2025-06-25
(54)【発明の名称】遠心クラッチ装置、及びプーリ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 43/06 20060101AFI20250618BHJP
   F16D 13/70 20060101ALI20250618BHJP
   F16H 55/56 20060101ALI20250618BHJP
   F16H 9/18 20060101ALN20250618BHJP
【FI】
F16D43/06
F16D13/70 Z
F16H55/56
F16H9/18 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020154712
(22)【出願日】2020-09-15
(65)【公開番号】P2022048727
(43)【公開日】2022-03-28
【審査請求日】2023-08-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】天國 清和
(72)【発明者】
【氏名】今井 亮一
(72)【発明者】
【氏名】宮川 伸也
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-322177(JP,A)
【文献】特開2012-241804(JP,A)
【文献】特開2020-143758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 43/06
F16D 13/70
F16H 55/56
F16H 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に配置される入力部材と、
前記入力部材と相対回転可能に配置される出力部材と、
前記入力部材とともに回転して遠心力を受ける遠心子と、
前記遠心子と軸方向において間隔をあけて配置される付勢部材と、
前記遠心子と前記付勢部材との間に配置され、前記入力部材と一体的に回転する第1クラッチプレートと、
前記遠心子と前記付勢部材との間において前記第1クラッチプレートと対向するように配置され、前記出力部材と一体的に回転する第2クラッチプレートと、
前記遠心子の遠心力を前記遠心子が前記付勢部材に向かう推力に変換するように構成されるカム機構と、
前記第1クラッチプレート及び前記第2クラッチプレートを覆うように配置され、前記入力部材と一体的に構成される外側筒状部と、
を備える遠心クラッチ装置であって、
前記付勢部材は、前記第1クラッチプレートと前記第2クラッチプレートとの接触面の中心円から外周端までの領域である外周部において、前記第1クラッチプレート又は前記第2クラッチプレートと当接し、
前記付勢部材は、皿バネであり、
前記付勢部材の内周縁部は、前記第1クラッチプレート又は前記第2クラッチプレートと当接し、
前記遠心子は、前記遠心クラッチ装置の停止時において初期位置に配置され、前記遠心クラッチ装置の作動時において前記初期位置よりも径方向外側にある作動位置に移動するように構成され、
前記遠心子が前記初期位置にあるとき、前記遠心子の中心は、前記接触面の中心よりも径方向内側に配置され、
前記遠心子が前記作動位置にあるとき、前記遠心子は、前記接触面の中心よりも径方向外側において、前記第1クラッチプレート又は前記第2クラッチプレートと当接し、
前記第2クラッチプレートは、軸方向に貫通する貫通孔を有さない、
遠心クラッチ装置。
【請求項2】
前記遠心子が前記作動位置にあるとき、前記遠心子の中心は、前記付勢部材の内周縁部よりも径方向外側に配置される、
請求項1に記載の遠心クラッチ装置。
【請求項3】
前記外側筒状部の内周面から径方向内側に突出し、軸方向に延びる支持部をさらに備え、
前記支持部は、
前記第1クラッチプレート又は前記第2クラッチプレートの外周縁部を支持する第1支持部と、
前記付勢部材の外周縁部を支持し、前記第1支持部よりも高さが低い第2支持部と、
を有する、
請求項1又は2に記載の遠心クラッチ装置。
【請求項4】
固定シーブと、
前記固定シーブから軸方向に延びる固定ボスと、
軸方向において前記固定シーブに対して接近及び離間するように移動可能に配置される可動シーブと、
前記可動シーブから軸方向に延び、径方向において前記固定ボスの外側に配置される筒状の可動ボスと、
前記固定ボスからトルクが入力される請求項1からのいずれかに記載の遠心クラッチ装置と、
を備えるプーリ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心クラッチ装置、及びプーリ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遠心クラッチ装置は、エンジンなどの回転数が所定値以上になると、エンジンからのトルクを駆動輪へと伝達するように構成されている。このような遠心クラッチ装置は、主にスクータタイプのモータサイクルなどに用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1に開示された遠心クラッチ装置は、遠心子と皿バネとの間に複数のクラッチプレートが配置されている。遠心クラッチ装置が回転すると、遠心子に遠心力が作用し、遠心子はカム面に沿って径方向外側に移動するとともに皿バネに向かって移動する。この結果、遠心子と皿バネとが複数のクラッチプレートを挟み込むことよって、トルクが伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3993170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した遠心クラッチ装置では、皿バネは径方向内側でクラッチプレートを付勢する一方で、遠心子は径方向外側でクラッチプレートを押圧している。このクラッチプレートに作用する荷重によってクラッチプレートが変形し、クラッチプレートを介する伝達トルクが低下するという問題が生じるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、各クラッチプレートの変形を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1側面に係る遠心クラッチ装置は、入力部材、出力部材、遠心子、付勢部材、第1クラッチプレート、第2クラッチプレート、及びカム機構を備える。入力部材は、回転可能に配置される。出力部材は、入力部材と相対回転可能に配置される。遠心子は、入力部材とともに回転して遠心力を受ける。付勢部材は、遠心子と軸方向において間隔をあけて配置される。第1クラッチプレートは、遠心子と付勢部材との間に配置される、第1クラッチプレートは、入力部材と一体的に回転する。第2クラッチプレートは、遠心子と付勢部材との間において、第1クラッチプレートと対向するように配置される。第2クラッチプレートは、出力部材と一体的に回転する。カム機構は、遠心子の遠心力を遠心子が付勢部材に向かう推力に変換するように構成される。付勢部材は、第1クラッチプレートと第2クラッチプレートとの接触面の外周部において、第1クラッチプレート又は第2クラッチプレートと当接する。
【0008】
この構成によれば、付勢部材が第1クラッチプレート又は第2クラッチプレートを径方向外側において付勢するため、第1及び第2クラッチプレートに作用する荷重によって第1及び第2クラッチプレートが変形することを抑制できる。
【0009】
好ましくは、遠心子は、当該遠心クラッチ装置の停止時において初期位置に配置され、当該遠心クラッチ装置の作動時において作動位置に移動するように構成される。作動位置は、初期位置よりも径方向外側である。
【0010】
好ましくは、遠心子が初期位置にあるとき、遠心子の中心は、接触面の中心よりも径方向内側に配置される。
【0011】
好ましくは、遠心子が作動位置にあるとき、遠心子は、接触面の中心よりも径方向外側において、第1クラッチプレート又は第2クラッチプレートと当接する。
【0012】
好ましくは、付勢部材は、皿バネである。付勢部材の内周縁部は、第1クラッチプレート又は第2クラッチプレートと当接する。
【0013】
好ましくは、遠心クラッチ装置は、外側筒状部及び支持部をさらに備える。外側筒状部は、第1クラッチプレート及び第2クラッチプレートを覆うように配置される。支持部は、外側筒状部の内周面から径方向内側に突出する。支持部は、軸方向に延びている。支持部は、第1支持部と第2支持部とを有する。第1支持部は、第1クラッチプレート又は第2クラッチプレートの外周縁部を支持する。第2支持部は、付勢部材の外周縁部を支持する。第2支持部は、第1支持部よりも高さが低い。
【0014】
本発明の第2側面に係るプーリ装置は、固定シーブ、固定ボス、可動シーブ、可動ボス、及び上記いずれかの遠心クラッチを備えている。固定ボスは、固定シーブから軸方向に延びる。可動シーブは、軸方向において固定シーブに対して接近及び離間するように移動可能に配置される。可動ボスは、可動シーブから軸方向に延びる。可動ボスは、筒状である。可動ボスは、径方向において固定ボスの外側に配置される。遠心クラッチ装置は、固定ボスからのトルクが入力される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、各クラッチプレートの変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】プーリ装置の断面図。
図2】遠心クラッチ装置の断面図。
図3】外側筒状部及び支持部の斜視図。
図4】遠心クラッチ装置の拡大断面図。
図5】第1クラッチプレートの正面図。
図6】第2クラッチプレートの平面図。
図7】第1及び第2クラッチプレートの平面図。
図8】遠心子が初期位置にあるときの遠心クラッチ装置の断面図。
図9】遠心子が作動位置にあるときの遠心クラッチ装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、遠心クラッチ装置を有するプーリ装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、軸方向とは、遠心クラッチ装置の回転軸が延びる方向を意味する。また、径方向とは、回転軸Oを中心とした円の径方向を意味し、周方向とは、回転軸Oを中心とした円の周方向を意味する。
【0018】
[プーリ装置]
プーリ装置100は、例えばCVT(Continuously Variable Transmission)を構成する従動側のプーリ装置として用いられる。このプーリ装置100は、駆動側のプーリ装置(図示省略)からベルト120を介してトルクが伝達される。そして、プーリ装置100は、駆動シャフト(図示省略)を介してトルクを駆動輪(図示省略)に伝達する。
【0019】
プーリ装置100は、固定シーブ101、可動シーブ102、固定ボス103、可動ボス104、及び遠心クラッチ装置10を備える。プーリ装置100は、回転軸Oを中心に回転する。詳細には、プーリ装置100は、駆動シャフトに取り付けられており、駆動シャフトと相対回転可能である。
【0020】
[固定シーブと可動シーブ]
固定シーブ101及び可動シーブ102は、軸方向において、互いに接近及び離間する。詳細には、可動シーブ102が軸方向に移動することによって固定シーブ101と接近及び離間する。可動シーブ102は、付勢部材108、例えばコイルスプリングによって、固定シーブ101に向かって付勢されている。ベルト120が径方向の内側に移動することによって、可動シーブ102は、付勢部材108の付勢力に抗して固定シーブ101から離間するように移動する。
【0021】
固定シーブ101および可動シーブ102は、軸方向において互いに向き合う円板面を有している。固定シーブ101及び可動シーブ102の円板面は、径方向外側に向かって互いの間隔が大きくなるように構成される。この固定シーブ101及び可動シーブ102の円板面によってベルト120を挟んでいる。固定シーブ101および可動シーブ102の中央部には開口が設けられている。
【0022】
[固定ボス]
固定ボス103は、固定シーブ101から軸方向の第1側に延びている。固定ボス103は円筒状である。固定ボス103は、固定シーブ101と一体的に回転する。固定シーブ101と固定ボス103とは、別部材によってそれぞれ形成されており、互いに固定されることによって、一体的に回転する。例えば、固定シーブ101と固定ボス103とを溶接またはろう付けなどによって互いに固定する。なお、固定シーブ101と固定ボス103とは一つの部材で構成されてもよい。
【0023】
固定ボス103の内部には、駆動シャフトが延びている。駆動シャフトは、駆動輪にトルクを伝えるためのシャフトである。駆動シャフトと固定ボス103とは、相対回転可能である。駆動シャフトと固定ボス103との間には、ニードルベアリング105、及びボールベアリング106が配置されている。
【0024】
[可動ボス]
可動ボス104は、可動シーブ102から軸方向の第1側に延びている。可動ボス104は、円筒状である。可動ボス104は、径方向において固定ボス103の外側に配置されている。すなわち、固定ボス103が可動ボス104の内部を延びている。可動ボス104は、固定ボス103の外周面上を軸方向に摺動する。
【0025】
可動ボス104は、可動シーブ102と一体的に回転する。また、可動ボス104は、可動シーブ102と一体的に軸方向に移動する。可動ボス104と可動シーブ102とは、別部材によってそれぞれ形成されており、互いに固定されることによって、一体的に回転及び軸方向に移動する。例えば、可動ボス104と可動シーブ102とを溶接またはろう付けなどによって互いに固定する。なお、可動ボス104と可動シーブ102とは、一つの部材で構成されてもよい。可動ボス104は円筒状である。
【0026】
[遠心クラッチ装置]
遠心クラッチ装置10は、固定ボス103からのトルクを、駆動シャフトに伝達したり遮断したりするように構成されている。遠心クラッチ装置10は、軸方向において、固定シーブ101及び可動シーブ102の第1側に配置されている。なお、図1の左側が軸方向の第1側であり、図1の右側が軸方向の第2側である。遠心クラッチ装置10は、回転軸Oを中心に回転可能である。
【0027】
図2に示すように、遠心クラッチ装置10は、入力部材2、出力部材3、複数の第1クラッチプレート41、複数の第2クラッチプレート42、複数の遠心子5、カム機構6、付勢部材7、外側筒状部8、及び複数の支持部80を有している。
【0028】
[入力部材]
入力部材2は、回転軸O周りを回転可能に配置されている。入力部材2は、固定ボス103の先端部103aに取り付けられている。入力部材2は、固定ボス103からのトルクが入力されて、固定ボス103と一体的に回転する。なお、固定ボス103の基端部103bには固定シーブ101が取り付けられている。
【0029】
固定ボス103の先端部103aは他の部分に比べて外径が小さくなっているため、段差部103cが形成されている。この段差部103cによって、入力部材2の軸方向の第2側への移動が規制される。また、入力部材2はナットなどによって固定ボス103の先端部103aに締結され、入力部材2の軸方向の第1側への移動が規制されている。このように、入力部材2は、軸方向へ移動不能である。
【0030】
入力部材2は、ドライブプレート21と、サポート部材22とを有する。ドライブプレート21は、固定ボス103に取り付けられている。ドライブプレート21は、固定ボス103からのトルクが入力される。ドライブプレート21は、円板状である。
【0031】
サポート部材22は、各遠心子5を支持するように構成されている。サポート部材22は、環状である。サポート部材22は、軸方向においてドライブプレート21の第2側に配置されている。サポート部材22は、軸方向の第1側に延びる複数の第2柱部221を有する。複数の第2柱部221は、周方向に間隔をあけて配置されている。各第2柱部221は、円筒部222によって互いに連結されている。
【0032】
第2柱部221は、軸方向の第1側に開口するネジ孔を有している。このネジ孔にボルト110が螺合することにより、サポート部材22はドライブプレート21に固定される。すなわち、ドライブプレート21とサポート部材22とは、互いに一体的に回転する。
【0033】
サポート部材22は、遠心子5を収容するための複数の収容部223を有している。複数の収容部223は、周方向に間隔をあけて配置されている。この収容部223は、サポート部材22に形成された凹部であり、軸方向の第1側に向かって開口している。すなわち、収容部223は、付勢部材7に向かって開口している。収容部223は、カム面61、規制部224の内壁面などによって画定されている。
【0034】
サポート部材22は、規制部224を有している。規制部224は、筒状であり、サポート部材22の外壁を構成している。この規制部224は、遠心子5の径方向外側に配置されている。そして、規制部224は、遠心子5の径方向外側への移動を規制する。このように、規制部224は、遠心子5の径方向外側への移動を規制することによって、過剰なトルクが遠心クラッチ装置10に入力された場合に、その過剰なトルクを伝達することを防止することができる。なお、規制部224の内周面のうち、遠心子5と当接する部分は平面状となっている。
【0035】
[外側筒状部及び支持部]
外側筒状部8は、筒状であり、軸方向に延びている。具体的には、外側筒状部8は、円筒状である。外側筒状部8は、第1及び第2クラッチプレート41,42を径方向外側から覆うように配置されている。
【0036】
外側筒状部8は、入力部材2と一体的に構成されている。詳細には、外側筒状部8と入力部材2とは一つの部材によって構成されている。外側筒状部8は、サポート部材22の外周縁部から軸方向の第1側に延びている。
【0037】
図3に示すように、支持部80は、外側筒状部8の内周面から径方向内側に突出している。支持部80は、軸方向に延びている。各支持部80は、周方向において互いに間隔をあけて配置されている。支持部80は、外側筒状部8と一体的に回転する。なお、支持部80は、外側筒状部8と一つの部材によって構成されている。支持部80は、第1支持部81、及び第2支持部82を有している。
【0038】
第1支持部81は、第1クラッチプレート41の外周縁部を支持している。詳細には、第1支持部81は、第1クラッチプレート41を回転不能に支持している。また、第1支持部81は、第1クラッチプレート41を軸方向に移動可能に支持している。
【0039】
第2支持部82は、付勢部材7の外周縁部を支持している。詳細には、第2支持部82は、付勢部材7の外周面と当接している。付勢部材7は、止め輪9によって軸方向の第1側への移動が規制される。なお、第2支持部82は、止め輪9も支持している。止め輪9は、第2支持部82の溝821内に一部が収容されている。
【0040】
第2支持部82の高さh2は、第1支持部81の高さh1よりも低い。すなわち、第1支持部81は、第2支持部82よりも径方向内側に突出している。
【0041】
[出力部材3]
図2に示すように、出力部材3は、入力部材2と相対回転可能に配置されている。出力部材3は、回転軸O周りを回転可能である。出力部材3は、トルクを駆動シャフトへと出力する。出力部材3は、軸方向において、入力部材2の第1側に配置されている。出力部材3は、円板部31、円筒部32、及びボス部33を有している。
【0042】
円板部31は、中央に貫通孔を有している。円筒部32は、円板部31の外周縁部から軸方向の第2側に延びている。円筒部32は、外側筒状部8の径方向内側に配置されている。出力部材3は、入力部材2よりも小さい外径を有する。
【0043】
円筒部32は、第2クラッチプレート42を支持している。詳細には、円筒部32は、第2クラッチプレート42の内周縁部を支持している。第2クラッチプレート42は、円筒部32に対して、軸方向に摺動可能であり、回転不能に取り付けられている。
【0044】
ボス部33は、円板部31の内周縁部から軸方向の第2側に延びている。ボス部33は、固定ボス103内を延びている。ボス部33には、スプライン孔331が形成されている。このスプライン孔331に、駆動シャフトがスプライン係合する。
【0045】
[第1及び第2クラッチプレート]
図4に示すように、第1及び第2クラッチプレート41、42は、入力部材2と出力部材3との間でトルクの伝達および遮断を行うように構成されている。この第1及び第2クラッチプレート41、42によって、多板クラッチが構成されている。なお、この多板クラッチは、乾式クラッチである。
【0046】
第1クラッチプレート41と第2クラッチプレート42とは、軸方向において対向している。第1及び第2クラッチプレート41、42は、軸方向において、遠心子5と付勢部材7との間に配置されている。第1クラッチプレート41と第2クラッチプレート42とは、軸方向において、交互に配置されている。
【0047】
第1クラッチプレート41は、入力部材2と一体的に回転するように入力部材2に取り付けられている。詳細には、第1クラッチプレート41は、入力部材2と一体的に回転する第1支持部81に取り付けられている。第1クラッチプレート41の外周縁部が第1支持部81に係合している。第1クラッチプレート41は、軸方向に摺動可能である。
【0048】
図5に示すように、第1クラッチプレート41は、本体部41aと、複数の歯部41bとを有している。本体部41aは、円環状である。歯部41bは、本体部41aから径方向外側に突出している。各歯部41bは、周方向に間隔をあけて配置されている。この隣り合う歯部41bの間に第1支持部81が配置されることによって、第1クラッチプレート41は、第1支持部81に支持されている。
【0049】
図4に示すように、複数の第1クラッチプレート41のうち、最も軸方向の第1側に配置された端部第1クラッチプレート411は、付勢部材7と当接している。また、最も軸方向の第2側に配置された端部第1クラッチプレート412は、遠心子5と当接している。
【0050】
第2クラッチプレート42は、出力部材3と一体的に回転するように出力部材3に取り付けられている。詳細には、第2クラッチプレート42は、出力部材3の円筒部32に取り付けられている。第2クラッチプレート42の内周縁部が円筒部32に係合している。第2クラッチプレート42は、軸方向に摺動可能である。第2クラッチプレート42は、両面に貼り付けられた摩擦材を有している。なお、第2クラッチプレート42ではなく、第1クラッチプレート41の両面に摩擦材が貼り付けられていてもよい。
【0051】
図6に示すように、第2クラッチプレート42は、本体部42aと、複数の歯部42bとを有している。本体部42aは、円環状である。歯部42bは、本体部42aから径方向内側に突出している。各歯部42bは、周方向に間隔をあけて配置されている。この隣り合う歯部42bの間に、円筒部32の一部が配置されることによって、第2クラッチプレート42は、円筒部32に支持されている。
【0052】
図4に示すように、第1クラッチプレート41と第2クラッチプレート42とは、互いに接触している。具体的には、第1クラッチプレート41は、第2クラッチプレート42の摩擦材と接触している。この第1クラッチプレート41と第2クラッチプレート42とが接触する部分を、第1クラッチプレート41と第2クラッチプレート42との接触面43と称する。
【0053】
図7に示すように、接触面43は、環状であって、周方向に延びている。なお、本実施形態では、第1クラッチプレート41の本体部41aと第2クラッチプレート42の本体部42aとが重複する部分が接触面43となる。第1クラッチプレート41の本体部41aと第2クラッチプレート42の本体部42aとは、互いに全体的に接触している。接触面43は、連続的に延びていてもよいし、断続的に延びていてもよい。
【0054】
接触面43は、外周部と内周部とを有する。接触面43の外周部とは、接触面43の外周縁から接触面43の中心円Cまでの領域を意味する。なお、接触面43の外周部は、中心円Cも含む。接触面43の中心円Cとは、接触面43の外周縁と内周縁との中央に延びる円を意味する。すなわち、中心円Cの半径rは、 r=(r1+r2)/2 によって求めることができる。なお、r1は、接触面43の外周縁の半径を意味し、r2は、接触面43の内周縁の半径を意味する。また、中心円Cとは、円周を意味する。
【0055】
[遠心子5]
図4に示すように、遠心子5は、入力部材2とともに回転して遠心力を受けるように配置されている。詳細には、遠心子5は、入力部材2の収容部223内に収容されている。なお、複数の遠心子5は、周方向に間隔をあけて配置されている。
【0056】
遠心子5は、円柱状である。遠心子5は、その外周面がカム面61と当接するように配置されている。このため、遠心子5は、遠心力が作用すると、径方向外側且つ軸方向の第1側に移動可能である。遠心子5は、第1及び第2クラッチプレート41、42を軸方向の第1側に押圧するように構成されている。過剰なトルクが入力されたとき、遠心子5は、径方向外側に移動して規制部224と当接する。このように遠心子5が規制部224と当接すると、それ以上の押圧力が第1及び第2クラッチプレート41,42に掛からない。なお、規制部224の遠心子5と当接する部分は平面状である。
【0057】
遠心子5は、遠心クラッチ装置10の停止時において初期位置に配置され、遠心クラッチ装置10の作動時において作動位置に移動する。なお、作動位置は、初期位置よりも径方向外側に位置する。
【0058】
図8に示すように、遠心子5が初期位置にあるとき、遠心子5の中心O2は、接触面43の中心円Cよりも径方向内側に配置されている。なお、遠心子5が初期位置にあるときに第1クラッチプレート41と接触している場合、遠心子5と第1クラッチプレート41との接触部は、接触面43の中心円Cよりも径方向内側に配置されている。
【0059】
一方、図9に示すように、遠心子5が作動位置にあるとき、遠心子5は、接触面43の中心円Cよりも径方向外側において、第1クラッチプレート41と当接する。また、遠心子5が作動位置にあるとき、遠心子5の中心O2は、接触面43の中心円Cよりも径方向外側に配置されている。
【0060】
[カム機構]
図4に示すように、カム機構6は、遠心子5の遠心力を遠心子5が付勢部材7に向かう推力に変換するように構成される。詳細には、カム機構6は、複数のカム面61を有している。各カム面61は、入力部材2に形成されている。各カム面61は、周方向に間隔をあけて配置されている。カム面61は、付勢部材7を向くとともに、径方向内側に向くように傾斜している。
【0061】
[付勢部材]
付勢部材7は、遠心子5と軸方向において間隔をあけて配置されている。この付勢部材7と遠心子5との間に、第1及び第2クラッチプレート41、42が配置されている。付勢部材7は、第1及び第2クラッチプレート41、42を遠心子5に向かって軸方向に付勢している。
【0062】
付勢部材7は、外周縁部71と内周縁部72とを有する。具体的には、付勢部材7は、皿バネである。付勢部材7の外周縁部71は、第2支持部82に支持されている。付勢部材7の内周縁部72は、端部第1クラッチプレート411と当接している。付勢部材7は、接触面43の外周部において、第1クラッチプレート41と当接している。詳細には、付勢部材7は、接触面43の中心円C、又は中心円Cよりも径方向外側で第1クラッチプレート41と当接している。
【0063】
付勢部材7の外周縁は、第1及び第2クラッチプレート41,42の本体部41a、42aの外周縁よりも径方向外側に配置されている。すなわち、付勢部材7の外径は、第1及び第2クラッチプレート41,42の本体部41a、42aの外径よりも大きい。
【0064】
なお、付勢部材7の内周縁は、第1及び第2クラッチプレート41,42の本体部41a、42aの内周縁よりも径方向外側に配置されている。すなわち、付勢部材7の内径は、第1及び第2クラッチプレート41,42の本体部41a、42aの内径よりも大きい。なお、付勢部材7の内径は、第1及び第2クラッチプレート41,42の本体部41a、42aの外径よりも小さい。
【0065】
[遠心クラッチ装置10の動作]
次に、遠心クラッチ装置10の動作について説明する。まず、停止時には、遠心クラッチ装置10はクラッチオフ状態である。すなわち、遠心クラッチ装置10は、固定ボス103と駆動シャフトとの間でトルクを伝達しない。詳細には、遠心クラッチ装置10の第1及び第2クラッチプレート41,42において、トルクの伝達を遮断する。このため、容易にモータサイクルを押して移動させることができる。なお、この停止時において、遠心子5は初期位置に配置されている。遠心子5の中心O2は、接触面43の中心円Cよりも径方向内側に位置している。
【0066】
発進する際は、固定ボス103から入力部材2にトルクが入力され、入力部材2は回転する。入力部材2が回転すると、入力部材2とともに回転する遠心子5は遠心力によって径方向外側に移動する。すなわち、遠心子5は、遠心クラッチ装置10の作動時において作動位置に移動する。
【0067】
ここで、遠心子5は、カム面61に沿って径方向外側に移動することによって、軸方向の第1側に移動し、第1及び第2クラッチプレート41、42を押圧する。この結果、第1及び第2クラッチプレート41,42はクラッチオン状態となる。なお、このときの遠心子5は、接触面43の中心円Cよりも径方向外側において、第1クラッチプレート41と当接する。
【0068】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0069】
変形例1
上記実施形態では、第1クラッチプレート41が軸方向の両端に配置されていたが、第2クラッチプレート42が軸方向の両端に配置されていてもよい。この場合、遠心子5及び付勢部材7は、第2クラッチプレート42と当接する。
【0070】
変形例2
上記実施形態では、外側筒状部8は、入力部材2と一体的に構成されていたが、外側筒状部8の構成はこれに限定されない。例えば、外側筒状部8は、出力部材3と一体的に構成されていてもよい。詳細には、外側筒状部8は、出力部材3と一つの部材によって構成されていてもよい。この場合、支持部80は、第1クラッチプレート41の外周縁部ではなく、第2クラッチプレート42の外周縁部を支持するように構成される。また、入力部材2は、外側筒状部8の径方向内側において軸方向に延びる円筒部を有する。この入力部材2の円筒部によって第1クラッチプレート41の内周縁部が支持される。
【0071】
変形例3
上記実施形態では、付勢部材7の一例として皿バネを例示しているが、付勢部材7は皿バネ以外であってもよい。例えば、付勢部材7としてコイルスプリングを用いてもよい。
【0072】
変形例4
上記実施形態では、遠心クラッチ装置10はプーリ装置100の構成部品として用いられているが、遠心クラッチ装置10の構成はこれに限定されない。遠心クラッチ装置10は、他の装置に取り付けられていてもよい。
【符号の説明】
【0073】
100 プーリ装置
10 遠心クラッチ装置
2 入力部材
3 出力部材
41 第1クラッチプレート
42 第2クラッチプレート
43 接触面
5 遠心子
6 カム機構
7 付勢部材
8 外側筒状部
80 支持部
81 第1支持部
82 第2支持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9