(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-17
(45)【発行日】2025-06-25
(54)【発明の名称】単独運転系統構成装置、単独運転系統構成システム、および単独運転系統構成方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20250618BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20250618BHJP
【FI】
H02J3/38 180
H02J3/00 170
(21)【出願番号】P 2021075032
(22)【出願日】2021-04-27
【審査請求日】2024-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 将士
(72)【発明者】
【氏名】友部 修
(72)【発明者】
【氏名】河村 勉
(72)【発明者】
【氏名】曹 民圭
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-222980(JP,A)
【文献】国際公開第2012/023209(WO,A1)
【文献】特開平05-316655(JP,A)
【文献】特開2009-171803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
H02J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統構成案を作成する系統構成案作成部と、
前記系統構成案作成部が作成した前記系統構成案ごとに単独運転の可否を判定することにより、単独運転可能な系統構成案のうち負荷容量が最大の系統構成案を選定できる単独運転可否判定部と、
電力用途を分解する電力用途分解部と、
前記電力用途分解部が分解した用途別電力データを用いて負荷種別の電力需要を予測する負荷種別需要予測部と、
を備えることを特徴とする単独運転系統構成装置。
【請求項2】
前記負荷種別需要予測部は、前記電力用途分解部が分解した前記用途別電力データを用いるか、または、当該用途別電力データおよび回帰分析の両方を用いて負荷種別の電力需要を予測する、
ことを特徴とする請求項
1に記載の単独運転系統構成装置。
【請求項3】
系統構成案を作成する系統構成案作成部と、
前記系統構成案作成部が作成した前記系統構成案ごとに単独運転の可否を判定することにより、単独運転可能な系統構成案のうち負荷容量が最大の系統構成案を選定できる単独運転可否判定部と、
負荷モデル、または縮約した負荷モデルを用いて負荷種別に特徴のある突入電流を推定する突入電流推定部、
を備えることを特徴とする単独運転系統構成装置。
【請求項4】
前記突入電流推定部は、予測した復電後の負荷種別需要に基づき、系統モデル中の変圧器モデルおよび/または負荷モデルのパラメータを時系列に設定する、
ことを特徴とする請求項
3に記載の単独運転系統構成装置。
【請求項5】
前記系統構成案作成部は、負荷または/および電源の構成がそれぞれ異なる複数の系統構成案を作成し、
前記単独運転可否判定部は、前記複数の系統構成案ごとに単独運転の可否を判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の単独運転系統構成装置。
【請求項6】
前記単独運転可否判定部は、安定に単独運転可能な系統構成案のうち最大の負荷容量を有する系統構成案を判定できる、
ことを特徴とする請求項1に記載の単独運転系統構成装置。
【請求項7】
前記系統構成案作成部は、開閉器状態の組み合わせによる系統構成案を作成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の単独運転系統構成装置。
【請求項8】
前記系統構成案作成部は、単独運転系統構成案ごとの負荷容量の行列を計算する、
ことを特徴とする請求項1に記載の単独運転系統構成装置。
【請求項9】
分散電源のトリップ基準、または単独運転可否判定基準を設定する設定部、
を有することを特徴とする請求項1に記載の単独運転系統構成装置。
【請求項10】
前記単独運転可否判定部は、前記設定部によって設定された分散電源のトリップ基準に基づき、単独運転可否を判定する、
ことを特徴とする請求項
9に記載の単独運転系統構成装置。
【請求項11】
前記系統構成案作成部が作成した系統構成案を選択して画面に出力する画面出力部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の単独運転系統構成装置。
【請求項12】
前記画面出力部は、系統構成案ごとの開閉器状態、および/または、系統構成案ごとの電力供給エリアを画面に出力する、
ことを特徴とする請求項
11に記載の単独運転系統構成装置。
【請求項13】
前記画面出力部は、管理する配電系統の地図、および事故点情報を画面に出力する、
ことを特徴とする請求項
11に記載の単独運転系統構成装置。
【請求項14】
前記画面出力部は、系統解析において設定部により設定された分散電源トリップ判定基準および/または単独運転可否判定基準の各設定を画面に出力する、
ことを特徴とする請求項
11に記載の単独運転系統構成装置。
【請求項15】
前記画面出力部は、系統構成案ごとに、予測した負荷種別需要に関するグラフ、予測した分散電源出力に関するグラフ、および、突入電流を含む系統に流れる電流および系統周波数偏差、系統周波数のうち何れかに関するグラフのうち何れかを画面に出力する、
ことを特徴とする請求項
11に記載の単独運転系統構成装置。
【請求項16】
前記画面出力部は、系統構成案ごとに負荷容量、単独運転可否判定結果、および周波数偏差の自乗平均平方根の値のうち何れかを画面に出力する、
ことを特徴とする請求項
11に記載の単独運転系統構成装置。
【請求項17】
前記画面出力部は、単独運転可能と判定した系統構成案のうち負荷容量が最大の系統構成案を画面に出力する、
ことを特徴とする請求項
11に記載の単独運転系統構成装置。
【請求項18】
系統構成案を作成する系統構成案作成部と、
前記系統構成案作成部が作成した前記系統構成案ごとに、単独運転の可否を判定することにより、単独運転可能な系統構成案のうち負荷容量が最大の系統構成案を選定できる単独運転可否判定部と、
電力用途を分解する電力用途分解部と、
前記電力用途分解部が分解した用途別電力データを用いて負荷種別の電力需要を予測する負荷種別需要予測部と、
を備えることを特徴とする単独運転系統構成システム。
【請求項19】
系統構成案を作成する系統構成案作成部と、
前記系統構成案作成部が作成した前記系統構成案ごとに、単独運転の可否を判定することにより、単独運転可能な系統構成案のうち負荷容量が最大の系統構成案を選定できる単独運転可否判定部と、
負荷モデル、または縮約した負荷モデルを用いて負荷種別に特徴のある突入電流を推定する突入電流推定部、
を備えることを特徴とする単独運転系統構成システム。
【請求項20】
系統構成案作成部が、系統構成案を作成するステップと、
前記系統構成案作成部が作成した前記系統構成案ごとに、単独運転可否判定部が単独運転の可否の判定を繰り返すことで単独運転可能な系統構成案のうち負荷容量が最大の系統構成案を選定するステップと、
電力用途分解部が、電力用途を分解するステップと、
負荷種別需要予測部が、前記電力用途分解部が分解した用途別電力データを用いて負荷種別の電力需要を予測するステップと、
を実行することを特徴とする単独運転系統構成方法。
【請求項21】
系統構成案作成部が、系統構成案を作成するステップと、
前記系統構成案作成部が作成した前記系統構成案ごとに、単独運転可否判定部が単独運転の可否の判定を繰り返すことで単独運転可能な系統構成案のうち負荷容量が最大の系統構成案を選定するステップと、
突入電流推定部が、負荷モデル、または縮約した負荷モデルを用いて負荷種別に特徴のある突入電流を推定するステップと、
を実行することを特徴とする単独運転系統構成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電事業者などが運用する単独運転に関して、単独運転可否を判定しながら、単独運転系統の構成を支援する単独運転系統構成装置、単独運転系統構成システム、および単独運転系統構成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能エネルギー電源などの分散電源の電力系統への導入が進められている。その一方で、台風や洪水といった大規模災害が増加傾向にあり、これに伴う基幹系統事故や配電系統での多重事故による大規模停電や復旧長期化の事例が顕在化している。電力インフラは、これらの電力供給支障への対応が求められている。今後は、電力系統に連系する分散電源を最大限に活用しつつ、広範囲、早期の停電復旧と、その後の安定した電力供給を実現するために、新たな電力系統運用が必要である。
【0003】
特に、電力インフラの中でも、配電系統においては、太陽光発電をはじめとする分散電源の導入が顕著に進められ、有事における単独運転の検討がなされている。一方、単独運転においては、単独運転系統内の需要や分散電源の出力、単独運転時の過渡現象により、安定に電力供給できないことが課題となることが予想される。このため、有事の際、配電系統での単独運転を安定に継続可能、かつ停電から復旧する需要家を最大限に拡大したいニーズが存在する。
【0004】
本技術分野の背景技術として、特許文献1に記載の発明がある。この文献の要約書には、「パワーコンディショナ100は、第1自立運転出力端子107及び第2自立運転出力端子108と、インバータ102と、インバータ102が出力する第1電流を検出する第1電流センサ105と、第1自立運転出力端子107及び前記第2自立運転出力端子108のいずれか一方に供給される第2電流を検出する第2電流センサ106と、第1電流が所定の第1閾値以上となるか、又は、第2電流が所定の第2閾値以上となる場合に、警告を発する、又は、インバータ102の動作を停止させる制御部111と、記憶部109とを備え、制御部111は、優先度が低い側の自立運転出力端子に流れる電流と、優先度が高い側の自立運転出力端子に接続される負荷の電流とに応じて、インバータ102を制御する。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている発明は、分散電源を用いて、突入電流を許容しつつ、配電系統から解列した特定負荷に電力供給できる。しかしながら、特許文献1に記載されている発明では、配電系統での単独運転において一般負荷への安定した電力供給の可否を判定することができず、更に単独運転により停電復旧する負荷を最大化することもできない。
そこで、本発明は、配電系統の単独運転時に安定に電力を供給し、停電から復旧する負荷容量を最大化する系統構成案を作成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決するため、本発明の単独運転系統構成装置は、系統構成案を作成する系統構成案作成部と、前記系統構成案作成部が作成した前記系統構成案ごとに単独運転の可否を判定することにより、単独運転可能な系統構成案のうち負荷容量が最大の系統構成案を選定できる単独運転可否判定部と、電力用途を分解する電力用途分解部と、前記電力用途分解部が分解した用途別電力データを用いて負荷種別の電力需要を予測する負荷種別需要予測部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の単独運転系統構成システムは、系統構成案を作成する系統構成案作成部と、前記系統構成案作成部が作成した前記系統構成案ごとに単独運転の可否を判定することにより、単独運転可能な系統構成案のうち負荷容量が最大の系統構成案を選定できる単独運転可否判定部と、電力用途を分解する電力用途分解部と、前記電力用途分解部が分解した用途別電力データを用いて負荷種別の電力需要を予測する負荷種別需要予測部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の単独運転系統構成方法は、系統構成案作成部が、系統構成案を作成するステップと、前記系統構成案作成部が作成した前記系統構成案ごとに、単独運転可否判定部が単独運転の可否の判定を繰り返すことで単独運転可能な系統構成案のうち負荷容量が最大の系統構成案を選定するステップと、電力用途分解部が、電力用途を分解するステップと、負荷種別需要予測部が、前記電力用途分解部が分解した用途別電力データを用いて負荷種別の電力需要を予測するステップと、を実行することを特徴とする。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、配電系統の単独運転時に安定に電力を供給し、停電から復旧する負荷容量を最大化する系統構成案を作成可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の単独運転系統構成装置を示すブロック図である。
【
図4】系統構成案作成部の処理を示すフローチャートである。
【
図6】過去分散電源出力データの一例を示す図である。
【
図7】系統解析設定値設定部の処理を示すフローチャートである。
【
図9】単独運転可否判定部の構成と動作を示すブロック図である。
【
図10】画面出力部の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以降、本発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態の単独運転系統構成装置1000を示すブロック図である。
単独運転系統構成装置1000は、系統構成案作成部200と、系統解析設定値設定部500と、単独運転可否判定部700と、画面出力部800と、表示装置900を含んで構成される。単独運転系統構成装置1000は更に、不図示の記憶部に、系統情報100と、過去需要データ300と、過去分散電源出力データ400と、系統解析設定値600と、単独運転系統構成プログラムとを格納している。単独運転系統構成装置1000は、CPU(Central Processing Unit)とRAM(Random Access Memory)と不揮発性の大容量記憶部を有するコンピュータである。なお、本発明は、単一の装置に限られず、複数のサーバ等が連携した単独運転系統構成システムとして実装されてもよい。
【0013】
系統情報100は、この単独運転系統構成装置1000が管理する配電系統101(
図3参照)における開閉器区間ごとの負荷容量を示す情報である。
系統構成案作成部200は、系統情報100に基づいて単独運転系統の構成案を作成する機能部であり、その処理について後記する
図4で説明する。
【0014】
過去需要データ300は、過去の電力使用量に関するデータであり、後記する
図5で詳細に説明する。過去需要データ300は、単独運転可否判定部700に入力される。
過去分散電源出力データ400は、過去の分散電源出力に関するデータであり、後記する
図6で詳細に説明する。過去分散電源出力データ400は、単独運転可否判定部700に入力される。
【0015】
系統解析設定値設定部500は、系統解析に用いる設定値等を系統解析設定値600に設定する機能部であり、後記する
図7でその処理を説明する。
系統解析設定値600は、系統解析に用いる設定値に関するデータであり、後記する
図8で詳細に説明する。系統解析設定値600は、単独運転可否判定部700に入力される。
【0016】
単独運転可否判定部700は、過去需要データ300と過去分散電源出力データ400と系統解析設定値設定部500を参照しつつ、系統構成案作成部200が作成した系統構成案を負荷容量の降順に評価し、系統構成案が再停電なく安定な単独運転が可能か否かを判定する機能部である。単独運転可否判定部700は、系統構成案作成部が作成した前記系統構成案ごとに単独運転の可否を判定することにより、単独運転可能な系統構成案のうち負荷容量が最大の系統構成案を選定できる。単独運転可否判定部700は、後記する
図9でその構成と動作を説明する。
【0017】
画面出力部800は、表示装置900に表示する内容を選択して表示させる機能部であり、後記する
図10でその処理を説明する。
【0018】
表示装置900は、例えば液晶パネルや有機EL(Electro Luminescence)パネルなどを備えて構成され、運用者が選択した表示内容などを表示する。この表示装置900に表示される画面について、後記する
図11で説明する。
【0019】
図2は、系統情報100の一例を示す図である。
系統情報100は、開閉器番号欄110と、隣接開閉器番号欄111と、負荷容量欄112と、需要家番号欄113と、分散電源番号欄114と、事故区間情報欄115とを含んで構成される。
開閉器番号欄110には、
図3に示す配電系統101に設置された開閉器を特定する通し番号の情報が格納される。ここで通し番号の1は、
図3に示す開閉器SW1に相当する。以降、通し番号2~4は、開閉器SW2~SW4に相当する。
隣接開閉器番号欄111には、開閉器番号に対応する開閉器に隣接する全ての開閉器を特定する通し番号の情報が格納される。
【0020】
ここで、第1行目には、開閉器番号欄110に1が格納され、隣接開閉器番号欄111に2と4が格納されている。第1行目は、
図3に示した第4~第7の需要家と、第1の分散電源とが接続された単独系統を示す。
第2行目には、開閉器番号欄110に1が格納され、隣接開閉器番号欄111に3が格納されている。第2行目は、
図3に示した第1~第3の需要家と、変電所とが接続された単独系統を示す。
【0021】
負荷容量欄112には、隣接する開閉器で区切られる区間の負荷容量の情報が格納される。第1行目には、第4~第7の需要家の負荷容量の総和が格納される。第2行目には、第1~第3の需要家の負荷容量の総和が格納される。
需要家番号欄113には、配電系統101の需要家を特定する通し番号であり、開閉器区間に存在する需要家を示す情報が格納される。
図3に示した各需要家は、黒丸とそれに隣接する“#1”などの番号で示されている。
【0022】
分散電源番号欄114には、配電系統101に設置された分散電源を特定する通し番号であり、開閉器区間に存在する分散電源を示す情報が格納される。
図3に示した分散電源は、変電所と分散電源とを含む概念である。
事故区間情報欄115には、開閉器区間が事故により開放されているか否かを示す情報が格納される。
【0023】
図3は、単独運転系統構成装置1000が管理する配電系統101の一例を示す図である。
配電系統101は、第1~第14の需要家と、第1~第2の分散電源と、変電所と、スイッチSW1~SW4とを含んで構成される。各需要家は、黒丸のノードとそれに隣接する“#1”や“#2”などの番号で示されている。
第1~第3の需要家と変電所とは、スイッチSW3とスイッチSW1との間に配置されている。第1の分散電源と第4~第7の需要家は、スイッチSW1とスイッチSW2とスイッチSW4の間に配置されている。第2の分散電源と第9~第14の需要家は、スイッチSW2によって接続されている。第8の需要家は、スイッチSW4によって接続されている。
【0024】
図1に示した系統情報100と、単独運転系統構成装置1000が管理する配電系統101とは紐づけられている。系統情報100は、例えば開閉器、分散電源、配電用変電所などの位置を示し、例えば開閉器番号、分散電源番号、配電用変電所を特定する番号、ノードに対応する需要家番号の情報などを含んで構成される。単独運転系統構成装置1000が管理する配電系統101は、系統情報100と紐づく限り、如何なる構成でもよく、
図3に示す構成に限定されない。また、単独運転系統構成装置1000が管理する配電系統101の各要素は、道路や住宅等の地図上の位置情報と紐づけられている。
【0025】
図4は、系統構成案作成部200の処理を示すフローチャートである。
処理を開始すると、系統構成案作成部200は、系統情報100から、自身が管理する配電系統101内の開閉器の開閉器番号をすべて抽出し、負荷容量の行列の1列目とする(ステップS10)。
【0026】
そのあと、系統構成案作成部200は、1列目の開閉器番号に対応する開閉器に隣接する全ての開閉器の開閉器番号を系統情報100から抽出し、負荷容量の行列の2列目とし、開閉器区間をすべて特定する(ステップS11)。
そのあと、系統構成案作成部200は、各開閉器区間の負荷容量を系統情報100から抽出し、負荷容量の行列の3列目とする(ステップS12)。
【0027】
そのあと、系統構成案作成部200は、各開閉器区間に、例えばエリア1、エリア2のようなエリア番号を付与し、負荷容量の行列の4列目とする(ステップS13)。これらの処理により、各開閉器区間の負荷容量と、各区間の構成に必要な開閉器の開閉器番号と、隣接する開閉器区間すなわち同一の開閉器によってそれぞれ区切られる開閉器区間は、エリア番号によって一元的に識別可能となる。
【0028】
そのあと、系統構成案作成部200は、各エリア番号を1列目に、対応する開閉器区間の負荷容量を2列目に格納した負荷容量の行列を作成する(ステップS14)。
【0029】
そのあと、系統構成案作成部200は、2からエリア番号の最大値までの自然数を取りうる変数を例えばnと置き、nを2からエリア番号の最大値まで順に動かして、1つ以上の開閉器区間と互いに隣接するn個の開閉器区間で構成される系統構成案を総当たり的に作成する(ステップS15)。つまり、系統構成案作成部200は、開閉器状態の組み合わせによる系統構成案を作成する。
【0030】
そして、系統構成案作成部200は、各系統構成に含まれるエリア番号をそれぞれすべて負荷容量の行列の1列目に順に追加する(ステップS16)。これにより、1つの開閉器区間のみによる系統構成案、および1つ以上の開閉器区間と必ず隣接する、すなわち連系可能な開閉器区間のみによる系統構成案をすべて作成し、エリア番号の組み合わせにより識別できる。
【0031】
そのあと、系統構成案作成部200は、各系統構成案の負荷容量を、各エリア番号に対応する負荷容量の総和から計算し(ステップS17)、負荷容量の行列の2列目にそれぞれ格納すると(ステップS18)、
図4の処理を終了する。これにより、各系統構成の負荷容量は、他から参照可能となる。そして、系統構成案作成部200は、負荷または/および電源の構成がそれぞれ異なる複数の系統構成案を作成する機能部として動作する。
【0032】
図5は、過去需要データ300の一例を示す図である。
過去需要データ300は、需要家番号欄301と、電力消費量欄302と含んで構成される。
【0033】
需要家番号欄301には、自身が管理する配電系統101の需要家を特定する通し番号が格納されており、系統情報100の需要家番号と同一の情報が格納されている。電力消費量欄302には、例えば電力会社が有するスマートメータなどにより計測する需要家の使用電力に関する過去の時系列データが格納される。電力消費量欄302には、低圧太陽光発電などの分散電源の出力が含まれてもよい。
【0034】
図6は、過去分散電源出力データ400の一例を示す図である。
過去分散電源出力データ400は、分散電源番号欄401と、分散電源出力欄402と含んで構成される。
【0035】
分散電源番号欄401には、管理する配電系統101の分散電源を特定する通し番号が格納されており、系統情報100の分散電源番号と同一の情報が格納されている。分散電源出力欄402は、例えば電力会社が有する分散電源の出力に関する過去の時系列データであり、例えば高圧太陽光発電や系統用蓄電池システムなどの出力の時系列データである。
【0036】
図7は、系統解析設定値設定部500の処理を示すフローチャートである。
処理を開始すると、系統解析設定値設定部500は、系統解析設定値600を構成する設定情報の入力を受け付ける(ステップS30)。設定情報には、例えば単独運転開始時刻、単独運転終了時刻、周波数解析時間刻み、電流解析時間刻み、系統定数、慣性定数、負荷周波数特性定数、分散電源トリップ判定基準、単独運転可否判定基準などがある。
【0037】
そのあと、系統解析設定値設定部500は、入力された設定情報を系統解析設定値600として格納すると(ステップS31)、
図7の処理を終了する。系統解析設定値設定部500は、分散電源のトリップ基準、または単独運転可否判定基準を設定する設定部として機能する。
【0038】
図8は、系統解析設定値600の一例を示す図である。
系統解析設定値600は、単独運転開始時刻欄601と、単独運転終了時刻欄602と、周波数解析時間刻み欄603と、電流解析時間刻み欄604と、系統定数欄605と、慣性定数欄606と、負荷周波数特性定数欄607と、分散電源トリップ判定基準欄608と、単独運転可否判定基準欄609とを含んで構成される。
【0039】
単独運転開始時刻欄601には、単独運転を開始する予定時刻が格納される。
単独運転終了時刻欄602には、単独運転を終了する予定時刻が格納される。
周波数解析時間刻み欄603には、単独運転系統の系統周波数を解析するシミュレーションにおける時間刻みが格納される。
【0040】
電流解析時間刻み欄604には、単独運転系統に流れる電流を解析するシミュレーションにおける時間刻みが格納される。
系統定数欄605には、単独運転系統の系統定数が格納される。
慣性定数欄606には、単独運転系統の慣性定数が格納される。
【0041】
負荷周波数特性定数欄607には、単独運転系統の負荷周波数特性定数が格納される。
分散電源トリップ判定基準欄608には、後述の単独運転可否判定部700において分散電源がトリップする基準が格納される。分散電源がトリップする基準とは、例えば単独運転期間中の単独運転系統における周波数偏差の大きさが3.0Hz以上の時間帯が1秒以上連続することや、分散電源の出力電流が分散電源の定格電流を超える時間帯が1秒以上継続することなどである。
【0042】
単独運転可否判定基準欄609には、単独運転可否判定部700において単独運転可能か不可能化を判定する基準が格納される。単独運転可能と判定する基準とは、例えば単独運転期間中の単独運転系統における周波数偏差の自乗平均平方根(RMS:Root Means Square)値が±0.2Hz以内の場合である。
【0043】
図9は、単独運転可否判定部700の構成と動作を示すブロック図である。
単独運転可否判定部700は、単独系統構成案抽出部701、電力用途分解部702、復電後需要予測部703、復電後分散電源出力予測部704、突入電流推定部705、系統安定性解析部706を含んで構成される。単独運転可否判定部700は、複数の系統構成案ごとに単独運転の可否を判定し、安定に単独運転可能な系統構成案のうち最大の負荷容量を有する系統構成案を選定可能とする。
【0044】
最初、単独系統構成案抽出部701は、系統構成案作成部200から系統構成案ごとの負荷容量の行列を参照し、負荷容量の最も大きい系統構成案を抽出する。そのあと、単独系統構成案抽出部701は、抽出した系統構成案における過去需要データを抽出する。
【0045】
電力用途分解部702は、単独系統構成案抽出部701が抽出した系統構成案における過去需要データを、例えば照明や空調などの負荷種別それぞれの過去の需要データ(用途別電力データ)と、例えば低圧太陽光発電などの分散電源の過去の出力データ(用途別電力データ)とに分解する。
【0046】
復電後需要予測部703は、電力用途分解部702が分解した負荷種別それぞれの過去需要データ(用途別電力データ)を用いるか、または、負荷種別それぞれの過去需要データ(用途別電力データ)および回帰分析の両方を用いて、復電後の負荷種別の電力需要を予測する。
復電後分散電源出力予測部704は、電力用途分解部702が分解した分散電源過去出力データを元に、例えば回帰分析などで、復電後の分散電源出力を予測する。
【0047】
突入電流推定部705は、予測した復電後の負荷種別需要に基づき、系統モデル中の変圧器モデル、負荷モデル、縮約した負荷モデル等のパラメータを時系列に設定し、系統解析設定値600に設定された電流解析時間刻みで、復電後の単独運転系統に流れ、負荷種別に特徴のある突入電流をシミュレーションする。
【0048】
これにより、突入電流推定部705は、系統構成案と、時間により変化する変圧器および負荷の突入電流を考慮しながら、復電後の単独運転系統に流れる電流を推定できる。
【0049】
また、突入電流推定部705は、系統解析設定値600に電流に関する分散電源トリップ判定基準がある場合には、同シミュレーションにおいて同基準を満たした時間に分散電源をトリップさせる。これにより、変圧器および負荷の突入電流などにより分散電源がトリップする時間を推定できる。突入電流推定部705は、例えば変圧器および照明や空調などの各負荷を、それぞれ等価回路でモデリングしてシミュレーションする。
【0050】
また、突入電流推定部705は、例えば一般需要家がすべて同じ種類の負荷を同数持つものと仮定し、例えば系統すべての変圧器や負荷をモデリングする。その後、突入電流推定部705は、縮約前と縮約後でシミュレーション結果が同様となるよう、変圧器や負荷モデルのパラメータをチューニングする。これにより突入電流推定部705は、変圧器や負荷モデルを縮約して計算時間を短縮することができる。
【0051】
系統安定性解析部706は、復電後の負荷種別需要予測、分散電源出力予測、突入電流推定結果を元に、例えば系統解析設定値600に設定された周波数解析時間刻みで需給周波数安定性などをシミュレーションする。系統安定性解析部706は、系統解析設定値600に、例えば周波数に関する分散電源トリップ判定基準が含まれる場合、シミュレーションにおいて同基準を満たした時間に分散電源をトリップさせる。これにより、系統安定性解析部706は、周波数偏差の時間変化および周波数逸脱による分散電源のトリップをシミュレーションできる。
【0052】
そのあと、系統安定性解析部706は、系統解析設定値600に設定された単独運転可否判定基準に基づき、単独系統構成案抽出部701にて抽出した単独運転系統構成案で単独運転が可能か否かを判定し、系統構成案と負荷容量と単独運転可否の組み合わせの情報を保存する。
【0053】
そのあと、単独系統構成案抽出部701は、直前に判定した系統構成案の次に負荷容量の大きい系統構成案を負荷容量の行列から抽出する。以降、単独運転可否判定部700は、一連の処理を繰り返し、最も負荷容量が小さい系統構成案の単独運転可否を判定した場合に、一連の処理を終了する。系統構成案と負荷容量と単独運転可否の組み合わせの情報により、ユーザは、安定に単独運転可能な系統構成案のうち最大の負荷容量を有する系統構成案を選定可能となる。また、ユーザは、各系統構成案で単独運転が可能か否かを知ることができる。
【0054】
図10は、画面出力部800の処理を示すフローチャートである。
画面出力部800は、例えばボタンやプルダウンなどを、後述する表示装置900上の表示内容選択ペイン911(
図11参照)に表示する。表示装置900に表示されたボタンやプルダウンなどを運用者が単数、または複数押下したり、選択したりすることにより、画面出力部800は、運用者に選択された表示内容を表示装置900に表示された別ペインに出力する。
【0055】
この際、選択できる表示内容は、例えば、系統構成案作成部200が作成した単独運転系統構成案、系統構成案ごとの開閉器状態、系統構成案ごとの電力供給エリア、事故点情報、道路や住宅等の地図、系統解析設定値設定部500で運用者が任意に設定した分散電源トリップ判定基準や単独運転可否判定基準等の各設定、予測した負荷種別需要に関するグラフ、予測した分散電源出力に関するグラフ、突入電流を含む系統に流れる電流および系統周波数偏差、系統周波数のうち何れかに関するグラフ、系統構成案ごとの負荷容量、系統構成案ごとの単独運転可否判定結果、系統構成案ごとの周波数の自乗平均平方根値、最適な系統構成案などである。
【0056】
また、画面出力部800は、系統解析において設定部により設定された分散電源トリップ判定基準や、単独運転可否判定基準の各設定を画面に出力してもよい。ここで最適な系統構成案とは、単独運転可能と判定した系統構成案のうち負荷容量が最大のものをいう。画面出力部800は、
図11に示す画面910の表示内容選択ペイン911を通じて運用者が選択した表示内容を、画面910の別のペインに表示する。
【0057】
図11は、画面出力部800が出力する画面910である。
画面910は、表示装置900に表示される画面であり、画面出力部800にて選択した表示内容を、例えば
図11のように表示する。
【0058】
表示内容選択ペイン911は、画面出力部800で選択処理する表示内容を、運用者が操作して選択するための表示である。これにより、他のペインには、表示内容選択ペイン911で選択された表示内容が表示される。
【0059】
解析条件ペイン912には、運用者が任意に設定した各設定が表示される。解析条件ペイン912には、例えば系統解析設定値600を構成する情報が表示される。
図11では、単独運転開始時刻、単独運転終了時刻、系統定数、慣性定数、負荷周波数特性定数、分散電源トリップ判定基準、単独運転可否判定基準、などが表示されている。
【0060】
地図ペイン914には、系統構成案と、これに位置関係が対応した道路や住宅等の地図とが重畳表示される。系統構成案は、各系統が識別できるように色付けされた系統図であり、系統図上には、例えば系統中の開閉器状態を示すために開状態と閉状態の開閉器を色分けして表示し、また例えば事故点9141の位置を、バツ印などの記号で表示する。地図上には、例えば単独運転で電力供給するエリア9142が色付けして表示される。
【0061】
解析結果ペイン915は、単独運転可否判定部700で保存した系統構成案に応じた単独運転に関するシミュレーション結果が表示される。
図11では、シミュレーション結果として、予測した負荷種別需要に関するグラフ、単独運転系統の周波数または周波数偏差に関するグラフ、突入電流を含む単独運転系統に流れる電流に関するグラフ、単独運転系統ごとの周波数偏差の自乗平均平方根値、系統等構成案ごとの負荷容量、系統構成案ごとの単独運転可否判定結果が表示されている。しかし、解析結果ペイン915のシミュレーション結果は、これに限られず、予測した分散電源出力に関するグラフなどであってもよい。
シミュレーション結果は、系統構成案に応じて表示される。ただし、画面出力部800にて最適な系統構成案を表示するよう選択されている場合、例えば画面910には、単独運転可能と判定した単独運転系統構成案のうち負荷容量が最大の系統構成案に応じた表示内容が表示される。
【0062】
(変形例)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば上記した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0063】
上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部または全部を、例えば集積回路などのハードウェアで実現してもよい。上記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈して実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記録装置、または、フラッシュメモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)などの記録媒体に置くことができる。
【0064】
各実施形態に於いて、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1000 単独運転系統構成装置
100 系統情報
101 配電系統
110 開閉器番号欄
111 隣接開閉器番号欄
112 負荷容量欄
113 需要家番号欄
114 分散電源番号欄
115 事故区間情報欄
200 系統構成案作成部
300 過去需要データ
301 需要家番号欄
302 電力消費量欄
400 過去分散電源出力データ
401 分散電源番号欄
402 分散電源出力欄
500 系統解析設定値設定部 (設定部)
600 系統解析設定値
601 単独運転開始時刻欄
602 単独運転終了時刻欄
603 周波数解析時間刻み欄
604 電流解析時間刻み欄
605 系統定数欄
606 慣性定数欄
607 負荷周波数特性定数欄
608 分散電源トリップ判定基準欄
609 単独運転可否判定基準欄
700 単独運転可否判定部
701 単独系統構成案抽出部
702 電力用途分解部
703 復電後需要予測部 (負荷種別需要予測部)
704 復電後分散電源出力予測部
705 突入電流推定部
706 系統安定性解析部
800 画面出力部
900 表示装置
910 画面
911 表示内容選択ペイン
912 解析条件ペイン
914 地図ペイン
915 解析結果ペイン