(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-17
(45)【発行日】2025-06-25
(54)【発明の名称】積載量の測定方法、測定システムおよび運搬車
(51)【国際特許分類】
G01G 19/10 20060101AFI20250618BHJP
B60P 1/04 20060101ALI20250618BHJP
【FI】
G01G19/10 B
B60P1/04 F
B60P1/04 G
(21)【出願番号】P 2021136519
(22)【出願日】2021-08-24
【審査請求日】2024-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000140719
【氏名又は名称】株式会社加藤製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江口 熙
(72)【発明者】
【氏名】石山 賢治
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-233640(JP,A)
【文献】特開2015-135260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 19/00-19/64
B60P 1/00-1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬車に取り付けられた荷台と、該荷台を起伏させる起伏装置と、該起伏装置に生じる圧力を測定する圧力センサと、前記荷台と、前記運搬車の車体をなすフレームとの接触を検出する接触センサとを用いる積載量の測定方法であって、
前記フレームに対し前記荷台が下りた状態からの前記荷台の上げ操作の入力を
検知し、前記荷台の上げ操作の入力量によらず、前記起伏装置に対し一定の制御量で伸長制御を行い、
前記接触センサにより前記荷台が前記フレームに対して浮いたことを把握した時点で前記圧力センサの測定値を取得して前記起伏装置の制御量一定での制御を終了し、
続いて前記荷台の上げ操作の入力量に従って前記起伏装置の伸長制御を開始し、前記荷台を前記入力量まで起伏させる一連の動作を行い、
前記荷台における積荷の積載量の算出は、前記取得の圧力センサの測定値から行うことを特徴とする積載量の測定方法。
【請求項2】
前記荷台が浮いてから、前記起伏装置の圧力値が安定したと見なせる程度の時間が経過した時点で取得された前記起伏装置の圧力値に基づき、積載量の算出を行うこと
を特徴とする請求項1に記載の積載量の測定方法。
【請求項3】
運搬車に取り付けられた荷台と、該荷台を起伏させる起伏装置と、該起伏装置に生じる圧力を測定する圧力センサと、前記荷台と、前記運搬車の車体をなすフレームとの接触を検出する接触センサとを備え、
前記フレームに対し前記荷台が下りた状態からの前記荷台の上げ操作の入力を
検知し、前記荷台の上げ操作の入力量によらず、前記起伏装置に対し一定の制御量で伸長制御を行い、
前記接触センサにより前記荷台が前記フレームに対して浮いたことを把握した時点
で前記圧力センサの測定値
を取得して前記起伏装置の制御量一定での制御を終了し、
続いて前記荷台の上げ操作の入力量に従って前記起伏装置の伸長制御を開始し、前記荷台を前記入力量まで起伏させる一連の動作を行い、
前記荷台における積荷の積載量の算出は、前記取得の圧力センサの測定値から行うよう構成されていることを特徴とする積載量の測定システム。
【請求項4】
前記接触センサは、
前記荷台の上げ動作において、前記荷台が浮いてから、前記圧力センサの測定値が安定したと見なせる程度の時間が経過した時点で前記荷台が浮いたことを検知するよう構成され、
前記積載量の算出は、前記荷台の上げ動作において、前記接触センサが前記荷台が浮いたことを検知した時点で取得された前記圧力センサの測定値に基づいて行われるよう構成されていること
を特徴とする請求項3に記載の積載量の測定システム。
【請求項5】
前記接触センサは、前記荷台が前記フレームに下りている状態で前記荷台から接触が入力される一方、前記荷台が前記フレームから浮いた状態で前記荷台からの接触の入力がオフとなるよう設置された物理接触式のスイッチであり、
前記接触センサは、前記荷台の上げ動作において、前記荷台が浮いてから、前記圧力センサの測定値が安定したと見なせる程度の時間が経過した時点で前記荷台からの接触の入力がオフとなるよう配置され、
前記積載量の算出は、前記荷台の上げ動作において、前記接触センサへの接触の入力がオフになった時点で取得された前記圧力センサの測定値に基づいて行われるよう構成されていること
を特徴とする請求項4に記載の積載量の測定システム。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか一項に記載の積載量の測定システムを備えたことを特徴とする運搬車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬車の荷台における積荷の積載量を測定するための方法とシステム、および該システムを備えた運搬車に関する。
【背景技術】
【0002】
工事現場等においては、運搬車によって土砂等の運搬が行われるが、その際、運搬車の荷台における積荷の積載量を把握することが、過積載の防止や土砂等の運搬状況の把握にとって有効である。このような運搬車における積載量を把握するための技術を記載した文献としては、例えば下記特許文献1がある。特許文献1に記載の不整地運搬車では、積載質量の演算処理の開始後、ベッセルの上げ下げを行うベッセルシリンダを規定時間(例えば2秒程度)だけ伸長させ、その間にベッセルシリンダに生じる圧力に基づいて荷重を計算するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載されているような測定方式では、測定のタイミングや、測定時におけるベッセルシリンダの作動状況によって測定の精度にばらつきが生じる虞がある。荷台における積荷の積載量と、ベッセルシリンダに生じる圧力の関係は、荷台の角度によって変動するし、また、ベッセルシリンダの作動に伴って生じる圧力は、ベッセルシリンダの作動速度によっても変動するからである。
【0005】
本発明は、斯かる実情に鑑み、積荷の積載量を好適に把握し得る積載量の測定方法、測定システムおよび運搬車を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、運搬車に取り付けられた荷台と、該荷台を起伏させる起伏装置と、該起伏装置に生じる圧力を測定する圧力センサと、前記荷台と、前記運搬車の車体をなすフレームとの接触を検出する接触センサとを用いる積載量の測定方法であって、
前記フレームに対し前記荷台が下りた状態からの前記荷台の上げ操作の入力を検知し、前記荷台の上げ操作の入力量によらず、前記起伏装置に対し一定の制御量で伸長制御を行い、
前記接触センサにより前記荷台が前記フレームに対して浮いたことを把握した時点で前記圧力センサの測定値を取得して前記起伏装置の制御量一定での制御を終了し、
続いて前記荷台の上げ操作の入力量に従って前記起伏装置の伸長制御を開始し、前記荷台を前記入力量まで起伏させる一連の動作を行い、
前記荷台における積荷の積載量の算出は、前記取得の圧力センサの測定値から行うことを特徴とする積載量の測定方法にかかるものである。
【0007】
本発明の積載量の測定方法においては、前記荷台が浮いてから、前記起伏装置の圧力値が安定したと見なせる程度の時間が経過した時点で取得された前記起伏装置の圧力値に基づき、積載量の算出を行うようにすることができる。
【0008】
また、本発明は、運搬車に取り付けられた荷台と、該荷台を起伏させる起伏装置と、該起伏装置に生じる圧力を測定する圧力センサと、前記荷台と、前記運搬車の車体をなすフレームとの接触を検出する接触センサとを備え、
前記フレームに対し前記荷台が下りた状態からの前記荷台の上げ操作の入力を検知し、前記荷台の上げ操作の入力量によらず、前記起伏装置に対し一定の制御量で伸長制御を行い、
前記接触センサにより前記荷台が前記フレームに対して浮いたことを把握した時点で前記圧力センサの測定値を取得して前記起伏装置の制御量一定での制御を終了し、
続いて前記荷台の上げ操作の入力量に従って前記起伏装置の伸長制御を開始し、前記荷台を前記入力量まで起伏させる一連の動作を行い、
前記荷台における積荷の積載量の算出は、前記取得の圧力センサの測定値から行うよう構成されていることを特徴とする積載量の測定システム、にかかるものである。
【0009】
本発明の積載量の測定システムにおいて、前記接触センサは、前記荷台の上げ動作において、前記荷台が浮いてから、前記圧力センサの測定値が安定したと見なせる程度の時間が経過した時点で前記荷台が浮いたことを検知するよう構成し、前記積載量の算出は、前記荷台の上げ動作において、前記接触センサが前記荷台が浮いたことを検知した時点で取得された前記圧力センサの測定値に基づいて行われるようにすることができる。
【0010】
本発明の積載量の測定システムにおいて、前記接触センサは、前記荷台が前記フレームに下りている状態で前記荷台から接触が入力される一方、前記荷台が前記フレームから浮いた状態で前記荷台からの接触の入力がオフとなるよう設置された物理接触式のスイッチとし、前記接触センサは、前記荷台の上げ動作において、前記荷台が浮いてから、前記圧力センサの測定値が安定したと見なせる程度の時間が経過した時点で前記荷台からの接触の入力がオフとなるよう配置し、前記積載量の算出は、前記荷台の上げ動作において、前記接触センサへの接触の入力がオフになった時点で取得された前記圧力センサの測定値に基づいて行われるようにすることができる。
【0011】
また、本発明は、上述の積載量の測定システムを備えたことを特徴とする運搬車にかかるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の積載量の測定方法、測定システムおよび運搬車によれば、積荷の積載量を好適に把握するという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の適用される運搬車の形態の一例を示す側面図である。
【
図2】本発明の実施による積載量の測定システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】本実施例による積載量の測定におけるシステム各部の作動状況や測定値を示すタイムチャートである。
【
図4】本発明の参考例として、実施例とは異なる作動を行った場合におけるシステム各部の作動状況や測定値を示すタイムチャートである。
【
図5】本発明の実施による積載量の測定方法における測定手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0015】
図1は本発明の実施による積載量の測定システムを備えた運搬車の一例を示しており、
図2は測定システムの構成の一例を示している。運搬車1は、
図1に示す如く、車体2の後部に取り付けられ、土砂等の積荷Cを積載するよう構成された荷台3と、左右両側に取り付けられた走行装置としてのクローラ4を備えている。
【0016】
車体2をなすフレーム5の上面と、荷台3の下面との間には、荷台3の起伏を行う起伏装置としての流体圧シリンダ6が備えられている。流体圧シリンダ6は、基端部をフレーム5の上面に、先端部を荷台3の下面にそれぞれ回転可能に取り付けられており、フレーム5と荷台3の間で伸縮しつつ起伏することで、荷台3を車体2に対し起伏させるようになっている。
【0017】
また、フレーム5の上面と荷台3との間には、荷台3とフレーム5の接触を検出する接触センサ7が取り付けられている。本実施例の場合、接触センサ7の取付位置は、フレーム5の上面における流体圧シリンダ6の設置位置よりも前方である。接触センサ7としては、物理接触式のスイッチを使用することができ、その場合、荷台3がフレーム5に下りている状態で荷台3から接触が入力される一方、荷台3がフレーム5から浮いた状態で荷台3からの接触の入力がオフとなるよう設置することにより、荷台3とフレーム5の接触を検出することができる。尚、接触センサ7としては、こうした物理接触式のスイッチに限らず、フレーム5と荷台3の接触を検出できるセンサであればどのような装置を採用してもよい。例えば、光学式のセンサ等を用いることもできる。
【0018】
流体圧シリンダ6の伸縮は、流体圧装置8を介して制御装置9により制御される(
図2参照)。制御装置9は、運搬車1(
図1参照)を構成する各部の機器類の作動状態を監視し、制御する情報処理装置である。流体圧装置8は、制御装置9から入力される指令信号に応じ、流体圧シリンダ6の伸び側(ボトム側)に対して流体圧を入力するようになっている。流体圧シリンダ6は、この流体圧によって伸縮し、また荷台3の重量を支持するようになっている。
【0019】
流体圧装置8から流体圧シリンダ6へ流体圧を入力する回路の途中には圧力センサ10が取り付けられており、荷台3の重量を支持し、起伏動作を行うにあたって流体圧シリンダ6に生じる圧力を測定するようになっている。
【0020】
運搬車1(
図1参照)の運転席には、表示装置11が備えられている(
図2参照;
図1には図示せず)。表示装置11は、制御装置9から入力される画像信号に応じ、各種の視覚情報を表示するディスプレイであり、例えば荷台3の作動状態や、圧力センサ10によって検出される圧力の値、それに基づいて算出される積荷Cの積載量等を表示することができるようになっている。
【0021】
また、運搬車1の適宜箇所には警報装置12が備えられている。警報装置12は、後述する積載量の測定の工程において算出された積載量に応じ、人に対し警報を発報する装置である。警報の発報は、例えば積載量が予め設定された閾値(例えば積載量の許容上限値、あるいは安全のためにそれより低く設定された値)に達したことを条件に実行される。
【0022】
本実施例の場合、
図1に示すように、警報装置12として運転室の外側後部にランプが設けられ、車外の人員に対し警報が光として発報されるようになっている。尚、警報装置12としてはここに示した以外にも種々の構成や配置を採用することができる。例えば、表示装置11に警報装置12の機能を兼用させ、運搬車1の運転手に対し表示装置11を通じて警報を視覚情報として発報してもよいし、警報を聴覚情報として発報するブザーやスピーカーとして警報装置12を備えてもよい。
【0023】
また、運搬車1の運転席には、制御装置9に対して操作指令を入力する操作装置13が備えられている。操作装置13は、運搬車1の運転を人が操作するための装置であり、例えばクローラ4による走行や、流体圧シリンダ6による荷台3の上げ下げといった動作に関する操作を入力できるようになっている。
【0024】
次に、上記した本実施例による積載量の測定方法について、
図3のタイムチャートを参照しながら説明する。
【0025】
本実施例では、接触センサ7への入力の有無に基づいて荷台3がフレーム5から浮くタイミングを把握し、このタイミングで取得された流体圧シリンダ6内の圧力値(圧力センサ10の測定値)に基づき、積載量を算出する。さらにその際、流体圧シリンダ6に対して入力する制御量をオペレータからの操作入力にかかわらず一定にすることで、積載量の算出に用いる圧力センサ10の測定値の取得条件を揃え、積載量を精度良く把握できるようにしている。
【0026】
図3のタイミングチャートでは、オペレータが時刻t
0に操作装置13に荷台3の上げ操作を入力し、これに応じて流体圧シリンダ6の伸長制御がなされ、荷台3の上げ動作が行われる場合を想定している。
【0027】
初期状態において、荷台3はフレーム5に対し下りきっており(荷台角度ゼロ)、接触センサ7に接触している(接触センサON)。流体圧シリンダ6に対して制御信号は入力されておらず(流体圧シリンダ制御量ゼロ)、流体圧シリンダ6の圧力値(圧力センサ10の測定値)もゼロである。
【0028】
オペレータは、ここから時刻t0に操作装置13のレバーを倒して操作入力を開始する。操作装置13に対する荷台3の上げ操作の入力量は、時刻t0から時刻t1にかけて0%から100%まで増加し、荷台3が上がり切るまで一定(100%)に保たれる。
【0029】
制御装置9では、時刻t0に荷台3の上げ操作の入力を検知すると、まず操作装置13への操作の入力量によらず、一定の制御量により流体圧シリンダ6の伸長制御を行う。尚、ここで流体圧シリンダ6に入力される制御量としては、ゼロから最大値までのうちの適当な値(例えば、最大値の50%)を予め設定しておけばよい。
【0030】
流体圧シリンダ6は、制御装置9から入力される一定の制御量に従って内部の流体圧を増加させる。流体圧が増加していくと、該流体圧による力が荷台3から加わる荷重を上回ったタイミング(時刻t2)で荷台3がフレーム5から浮き始め、いずれ荷台3から接触センサ7への接触の入力がオフになる(時刻t3)。
【0031】
制御装置9は、接触センサ7への入力がオフになったことを検知すると、一定の制御量による流体圧シリンダ6の制御を終了し、オペレータから操作装置13への操作入力量に基づく制御を開始する。ここに示した例の場合、流体圧シリンダ6に対する制御量を100%まで増大させる。
【0032】
荷台3は、時刻t2から傾斜を増し、流体圧シリンダ6の伸長によりいずれ最大角度まで上昇する。
【0033】
この一連の動作において、圧力センサ10の測定値(圧力値)は、例えば次のように変動する。まず、時刻t0に流体圧シリンダ6の伸長制御が開始されると、流体圧シリンダ6内における圧力の上昇に伴い、フレーム5に分散されて支持されていた荷台3の荷重が流体圧シリンダ6に集中していき、圧力値は時刻t2まで上昇を続ける。時刻t2に荷台3がフレーム5から離れ、傾斜が始まると、圧力値はここをピークとして低下に転じ、荷台3からの積荷Cの排出が始まると、それによってさらに低下していく。
【0034】
この間、制御装置9には圧力センサ10の測定値が入力されるが、制御装置9では、荷台3がフレーム5から浮いて接触センサ7への入力がオフになった時刻t3における圧力値に基づき、荷台3における積荷Cの積載量を算出する。
【0035】
積載量の根拠とする圧力値の取得のタイミングをこのように限定することには、いくつかの利点がある。まず、タイミングを限定することそれ自体によって、荷台3と流体圧シリンダ6の姿勢について常に同じ条件で圧力を計測することができる。荷台3における積荷Cの積載量と、流体圧シリンダ6内の圧力との関係は、むろん正に相関するものの、その係数は荷台3や流体圧シリンダ6の角度によって変わる。そこで、積載量の算出のために参照する圧力値を荷台3と流体圧シリンダ6が特定の姿勢である時点の圧力値に限定すれば、積載量と圧力値との関係は概ね一定であると見なすことができ、適切な計算によって積載量を算出することができる。
【0036】
さらに、その参照する圧力値の取得のタイミングを「接触センサ7により荷台3がフレーム5に対して浮いたことを把握した時点」すなわち「接触センサ7への入力がオフになった時点」(時刻t
3)に限定すると、積載量の算出にとって特に好適である。この段階において、荷台3はフレーム5に対しわずかな角度で浮いた状態である。すなわち、荷台3はフレーム5に対し、流体圧シリンダ6と、その後方(
図1における右側)の支点でのみ支持された状態であり、また、姿勢もほぼ水平である。この状態では、荷台3の荷重がフレーム5に分散せず、また荷台3がほぼ水平であるために積載された積荷Cが自重で移動するようなこともない。
【0037】
尚、このような状態において、流体圧シリンダ6内の圧力値と荷台3における積載量の関係は、積荷Cの重量のみでなく、積荷Cの重心Pの位置によっても変動するが、流体圧シリンダ6における圧力値から積載量を算出するにあたっては、重心Pが適当な位置にあると想定して計算すれば、実用上十分な精度で積載量を算出することができる。特に、上に述べたような特定のタイミングで取得された圧力値を根拠とすれば、荷台3がほぼ水平であるため、積荷Cの重心Pの位置が想定した位置から大きく外れてはいないことが期待でき、より精度の高い計算が可能である。
【0038】
ここで、荷台3がフレーム5から浮いた瞬間(時刻t2)からしばらくの間は、荷台3の浮きに伴う振動により、流体圧シリンダ6内の圧力値が不安定となる。この間に取得された圧力値は、積載量の算出の根拠としては信頼性に欠ける。そこで、このように圧力値が不安定になる時間の存在を予め想定し、荷台3が浮いた後、この時間が経過して圧力値が安定したと思われる時点に取得された圧力値を、積載量の算出に利用するとよい。より具体的には、接触センサ7を、荷台3が浮いてから圧力センサ10の測定値が安定したと見なせる程度の時間が経過した時点で前記荷台が浮いたことを検知するよう構成し、且つ、接触センサ7により荷台が浮いたことが検知された時点で取得された圧力センサ10の測定値を、積載量の算出に使用する。接触センサ7が物理接触式のスイッチである場合には、荷台3がフレーム5から浮いた後、さらに少し荷台3が起立した時点で接触センサ7から荷台3が離れるような位置に、接触センサ7を配置しておけばよい。そして、接触センサ7への入力がオフになった時点の圧力値を積載量の算出に用いれば、安定した圧力値による精度の高い積載量の算出が可能である。尚、「荷台3が浮いてから、流体圧シリンダ6の圧力値が安定すると見なせる程度の時間」は、例えば荷台3の上げ動作を実際に行いつつ圧力値の推移を測定するといった試験等により適宜設定することができ、この試験の結果に応じ、例えば流体圧シリンダ6に対しある一定の制御量により伸長制御を行った場合に、荷台3がフレーム5から浮いてから2秒後に荷台3が接触センサ7から離れるような位置に、接触センサ7の設置位置を調整すればよい。尚、実際に荷台3の上げ動作に伴って積載量を算出する際、荷台3が接触センサ7から離れる時点において、圧力値は必ずしも完全に安定している必要はなく、圧力値から積載量を算出するにあたって便宜上、安定していると見なして差し支えない程度にまで安定していれば十分である。
【0039】
また、圧力値と積載量の関係には、その時点における荷台3と流体圧シリンダ6の姿勢だけでなく、流体圧シリンダ6の作動速度も影響する。本実施例の場合、操作装置13への操作の入力量にかかわらず、荷台3の上げ操作が入力されてから接触センサ7への入力がオフになるまでは一定の制御量で流体圧シリンダ6内の圧力を上昇させるので、流体圧シリンダ6の作動速度が一定の範囲内にある状態での圧力値を積載量の算出に使用することになる。こうして、積載量の算出の根拠とする圧力値の取得条件を揃えることにより、積載量の算出のための計算をより適切に行うことができる。
【0040】
尚、このように一定の制御量による制御を行う場合、オペレータが上げ操作の入力を開始した後、しばらくはオペレータからの操作の入力量と制御装置9による流体圧シリンダ6の制御量が一致しないことになるが、荷台3の上げ動作自体が行われないわけではないので、オペレータは制御遅れを感じることはないか、感じるとしても僅かである。
【0041】
また、積載量の測定にあたっては、オペレータが特段の操作をせずとも、荷台3の上げ操作の度に接触センサ7への接触入力のオフを条件として自動的に計量が行われるので、積載量の測定漏れがなく、オペレータにとっても毎回の操作の必要がないので便利である。しかも上に述べた通り、積載量の根拠とする圧力値は積載量の測定に適したタイミングで取得されるので、高い精度での測定が可能である。
【0042】
図4は本発明の参考例として、上記したような制御を行わない場合の各機器の作動や測定値のタイムチャートを示している。時刻t
0からオペレータが荷台3の上げ操作を入力すると、制御装置9はこれに追従して流体圧シリンダ6に対し圧力を増大させる制御を行う。このとき、制御量はオペレータからの操作の入力量にあわせて増大される。上げ操作の入力から少し経過した時点(時刻t
4)で荷台3がフレーム5から浮き、以後、荷台3の傾斜角度が増大して積荷Cの排出が行われる。
【0043】
この間、流体圧シリンダ6内の圧力値は
図4中の3段目に示すように変動する。仮に荷台3の上げ動作中、オペレータが任意の時点で計量の操作を行い、その時点の圧力値に基づいて積載量を算出するとすれば、このように大きく変動する圧力値のいずれかを一定の数式に当てはめることになり、タイミングによっては実際の積載量と算出された積載量が大きく異なってしまう可能性がある。上記本実施例のように、接触センサ7を用いて決まったタイミングで積載量の算出を行うようにすれば、より好適な積載量の把握が可能である。
【0044】
上記したような積載量の測定方法は、例えば
図5に示す如きフローチャートにまとめることができる。
【0045】
まず、制御装置9では、操作装置13から荷台3の上げ操作入力されているか否かを判定する(ステップS1)。上げ操作が入力されていなければ、そのままステップS1の判定を繰り返しつつ待機する。荷台3の上げ操作が入力されたら、ステップS2に進み、流体圧シリンダ6内の圧力を増大させ、伸長制御を開始する。このとき、制御装置9から流体圧シリンダ6へ入力される制御量は一定である。
【0046】
制御量一定で流体圧シリンダ6内の圧力を増大させつつ、接触センサ7への入力の有無を判定する(ステップS3)。接触センサ7への入力がオンである場合は再びステップS3の判定を行い、これは荷台3が接触センサ7から離れるまで繰り返される。
【0047】
接触センサ7への入力がオフになったらステップS4に進み、圧力センサ10の測定値を取得する。圧力値を取得したら、流体圧シリンダ6の制御量一定での制御を終了し、操作装置13への上げ操作の入力量に従った制御を開始する(ステップS5)。先のステップS4で取得した圧力値に基づいて積載量を算出し(ステップS6)、積載量測定の手順を終了する。
【0048】
算出した積載量は、制御装置9やそれに接続した図示しない情報端末装置等に適宜記録し、必要に応じて表示装置11等に表示し、これをオペレータが参照する。また、積載量が大きく過積載のおそれがある場合等には、表示装置11や警報装置12から警報を発報することもできる。
【0049】
尚、上に説明した積載量の測定手順はあくまで一例であって、積載量を好適に測定できる限りにおいて適宜変更を加えてもよい。例えば、圧力センサ10における圧力値は接触センサ7のオンオフにかかわらず時々刻々取得し、接触センサ7への入力がオフになった時点の圧力値を抽出して積載量の算出に使用するようにしてもよいし、ステップS5とステップS6を同時並行で実行することもできる。
【0050】
以上のように、本実施例の積載量の測定方法においては、荷台3が下りた状態からの荷台3の上げ操作の入力に応じ、荷台3を起伏させる起伏装置(流体圧シリンダ)6に対し一定の制御量で伸長制御を行い、前記一定の制御量による起伏装置6の伸長制御によって荷台3が浮いた段階における起伏装置6の圧力値に基づき積載量の算出を行うようにしている。このようにすれば、荷台3と起伏装置6が一定の姿勢にあり、且つ起伏装置6の作動速度が一定の範囲内にある状態での圧力値を常に積載量の算出に使用することで、適切な計算によって積載量を算出することができる。
【0051】
また、本実施例の積載量の測定方法においては、荷台3が浮いてから、起伏装置6の圧力値が安定したと見なせる程度の時間が経過した時点で取得された起伏装置6の圧力値に基づき、積載量の算出を行うようにしている。このようにすれば、安定した圧力値による精度の高い積載量の算出が可能である。
【0052】
また、本実施例の積載量の測定システムは、運搬車1に取り付けられた荷台3と、荷台3を起伏させる起伏装置6と、起伏装置6に生じる圧力を測定する圧力センサ10と、荷台3と、運搬車1の車体2をなすフレーム5との接触を検出する接触センサ7とを備え、フレーム5に対し荷台3が下りた状態からの荷台3の上げ操作の入力に応じ、起伏装置6に対し一定の制御量で伸長制御を行い、接触センサ7により荷台3がフレーム5に対して浮いたことを把握した時点で取得した圧力センサ10の測定値に基づき、積載量の算出を行うよう構成されている。このようにすれば、荷台3と起伏装置6が一定の姿勢にあり、且つ起伏装置6の作動速度が一定の範囲内にある状態での圧力値を常に積載量の算出に使用することで、適切な計算によって積載量を算出することができる。
【0053】
また、本実施例の積載量の測定システムにおいて、接触センサ7は、荷台3の上げ動作において、荷台3が浮いてから、圧力センサ10の測定値が安定したと見なせる程度の時間が経過した時点で荷台3が浮いたことを検知するよう構成され、前記積載量の算出は、荷台3の上げ動作において、接触センサ7が荷台3が浮いたことを検知した時点で取得された圧力センサ10の測定値に基づいて行われるようになっている。このようにすれば、安定した圧力値による精度の高い積載量の算出が可能である。
【0054】
また、本実施例の積載量の測定システムにおいて、接触センサ7は、荷台3がフレーム5に下りている状態で荷台3から接触が入力される一方、荷台3がフレーム5から浮いた状態で荷台3からの接触の入力がオフとなるよう設置された物理接触式のスイッチであり、接触センサ7は、荷台3の上げ動作において、荷台3が浮いてから、圧力センサ10の測定値が安定したと見なせる程度の時間が経過した時点で荷台3からの接触の入力がオフとなるよう配置され、前記積載量の算出は、荷台3の上げ動作において、接触センサ7への接触の入力がオフになった時点で取得された圧力センサ10の測定値に基づいて行われるようになっている。このようにすれば、簡便な構成の接触センサ7を用い、積載量の算出に用いる圧力値として安定した測定値を取得することができる。
【0055】
また、本実施例の運搬車1は、上述の積載量の測定システムを備えているので、上記同様の作用効果を奏することができる。
【0056】
したがって、上記本実施例によれば、積荷の積載量を好適に把握し得る。
【0057】
尚、本発明の積載量の測定方法、測定システムおよび運搬車は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
1 運搬車
2 車体
3 荷台
5 フレーム
6 起伏装置(流体圧シリンダ)
7 接触センサ
10 圧力センサ