IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リンテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-接着方法 図1
  • 特許-接着方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-17
(45)【発行日】2025-06-25
(54)【発明の名称】接着方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/04 20060101AFI20250618BHJP
   B29C 65/34 20060101ALI20250618BHJP
【FI】
B29C65/04
B29C65/34
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021137027
(22)【出願日】2021-08-25
(65)【公開番号】P2022045334
(43)【公開日】2022-03-18
【審査請求日】2024-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2020150397
(32)【優先日】2020-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 裕一
(72)【発明者】
【氏名】田矢 直紀
(72)【発明者】
【氏名】土渕 晃司
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-051923(JP,A)
【文献】国際公開第2018/147351(WO,A1)
【文献】特開昭64-078817(JP,A)
【文献】特開平11-123764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/04
B29C 65/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波誘電加熱接着シートによって被着体を接着する方法であって、
前記高周波誘電加熱接着シートは、熱可塑性樹脂(A)を含み、
前記高周波誘電加熱接着シートに、単位面積当たりの印加出力V1の高周波電界を印加する第1工程と、
前記第1工程後の高周波誘電加熱接着シートに、単位面積当たりの印加出力V2の高周波電界を印加する第2工程と、を備え、
前記第1工程の単位面積当たりの印加出力V1が、0.22W/mm 以上、0.5W/mm 以下であり、
前記第2工程の単位面積当たりの印加出力V2が、0.11W/mm 以上、0.18W/mm 以下であり、
前記第1工程の単位面積当たりの印加出力V1と、前記第2工程の単位面積当たりの印加出力V2とが、下記数式(数1)で表される条件を満たす、
接着方法。
0.7×V1V2≧0.4×V1…(数1)
【請求項2】
前記第1工程の印加時間T1が、1秒以上、25秒未満である、
請求項1に記載の接着方法。
【請求項3】
前記第2工程の印加時間T2が、5秒以上である、
請求項1又は請求項2に記載の接着方法。
【請求項4】
前記第1工程の印加時間T1と、前記第2工程の印加時間T2とが、下記数式(数2)で表される条件を満たす、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の接着方法。
(T1+T2)<60秒…(数2)
【請求項5】
高周波誘電加熱接着シートによって被着体を接着する方法であって、
前記高周波誘電加熱接着シートは、熱可塑性樹脂(A)を含み、
前記高周波誘電加熱接着シートに、単位面積当たりの印加エネルギーJ1の高周波電界を印加する第1工程と、
前記第1工程後の高周波誘電加熱接着シートに、単位面積当たりの印加エネルギーJ2の高周波電界を印加する第2工程と、を備え、
前記第1工程の単位面積当たりの印加エネルギーJ1は、3.5W/mm ・秒以上、5W/mm ・秒以下であり、
前記第1工程の単位面積当たりの印加エネルギーJ1と、前記第2工程の単位面積当たりの印加エネルギーJ2との合計である総印加エネルギー(J1+J2)は、6W/mm ・秒以上、10W/mm ・秒以下であり、
前記第1工程の単位面積当たりの印加エネルギーJ1と、前記第2工程の単位面積当たりの印加エネルギーJ2とが、下記数式(数3)で表される条件を満たす、
接着方法。
J1J2…(数3)
【請求項6】
前記第1工程の単位面積当たりの印加エネルギーJ1と、前記第2工程の単位面積当たりの印加エネルギーJ2とが、下記数式(数3-1)で表される条件を満たす、
請求項に記載の接着方法。
0.9>J1/(J1+J2)>0.4…(数3-1)
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂(A)は、ポリオレフィン系樹脂である、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の接着方法。
【請求項8】
前記高周波誘電加熱接着シートは、高周波電界の印加により発熱する誘電フィラー(B)を、さらに含む、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の接着方法。
【請求項9】
前記誘電フィラー(B)は、酸化亜鉛、炭化ケイ素、チタン酸バリウム及び酸化チタンからなる群から選択される少なくともいずれかを含む、
請求項に記載の接着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一般的に接着することが困難な被着体同士を接着する方法として、例えば、所定の樹脂中に発熱材料を配合してなる接着剤を被着体の間に介在させ、誘電加熱処理、誘導加熱処理、超音波溶着処理、又はレーザー溶着処理等を行う方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、同一材料若しくは異なる材料からなる複数の被着体を接着するための高周波誘電加熱接着シートが記載されており、この高周波誘電加熱接着シートは、所定の割合で配合された所定の熱可塑性樹脂と、誘電フィラーとを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/147351号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1により、高周波電界の印加時間を短縮することができるが、生産効率の観点からは、印加時間をさらに短縮することが求められている。
【0006】
本発明の目的は、高周波電界の印加時間を短縮すること、及び短時間の印加であっても接着強度を向上させることができる接着方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、高周波誘電加熱接着シートによって被着体を接着する方法であって、前記高周波誘電加熱接着シートは、熱可塑性樹脂(A)を含み、前記高周波誘電加熱接着シートに、単位面積当たりの印加出力V1の高周波電界を印加する第1工程と、前記第1工程後の高周波誘電加熱接着シートに、単位面積当たりの印加出力V2の高周波電界を印加する第2工程と、を備え、前記第1工程の単位面積当たりの印加出力V1と、前記第2工程の単位面積当たりの印加出力V2とが、下記数式(数1)で表される条件を満たす、接着方法が提供される。
V1>V2…(数1)
【0008】
本発明の一態様に係る接着方法において、前記第1工程の単位面積当たりの印加出力V1と、前記第2工程の単位面積当たりの印加出力V2とが、下記数式(数1-1)で表される条件を満たすことが好ましい。
0.8×V1≧V2…(数1-1)
【0009】
本発明の一態様に係る接着方法において、前記第1工程の単位面積当たりの印加出力V1が、0.18W/mm以上、2.00W/mm以下であることが好ましい。
【0010】
本発明の一態様に係る接着方法において、前記第1工程の印加時間T1が、1秒以上、25秒未満であることが好ましい。
【0011】
本発明の一態様に係る接着方法において、前記第2工程の単位面積当たりの印加出力V2が、0.09W/mm以上、0.30W/mm以下であることが好ましい。
【0012】
本発明の一態様に係る接着方法において、前記第2工程の印加時間T2が、5秒以上であることが好ましい。
【0013】
本発明の一態様に係る接着方法において、前記第1工程の印加時間T1と、前記第2工程の印加時間T2とが、下記数式(数2)で表される条件を満たすことが好ましい。
(T1+T2)<60秒…(数2)
【0014】
本発明の一態様によれば、高周波誘電加熱接着シートによって被着体を接着する方法であって、前記高周波誘電加熱接着シートは、熱可塑性樹脂(A)を含み、前記高周波誘電加熱接着シートに、単位面積当たりの印加エネルギーJ1の高周波電界を印加する第1工程と、前記第1工程後の高周波誘電加熱接着シートに、単位面積当たりの印加エネルギーJ2の高周波電界を印加する第2工程と、を備え、前記第1工程の単位面積当たりの印加エネルギーJ1と、前記第2工程の単位面積当たりの印加エネルギーJ2とが、下記数式(数3)で表される条件を満たす、接着方法が提供される。
J1>0.75×J2…(数3)
【0015】
本発明の一態様に係る接着方法において、前記第1工程の単位面積当たりの印加エネルギーJ1と、前記第2工程の単位面積当たりの印加エネルギーJ2とが、下記数式(数3-1)で表される条件を満たすことが好ましい。
0.9>J1/(J1+J2)>0.4…(数3-1)
【0016】
本発明の一態様に係る接着方法において、前記熱可塑性樹脂(A)は、ポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。
【0017】
本発明の一態様に係る接着方法において、前記高周波誘電加熱接着シートは、高周波電界の印加により発熱する誘電フィラー(B)を、さらに含むことが好ましい。
【0018】
本発明の一態様に係る接着方法において、前記誘電フィラー(B)は、酸化亜鉛、炭化ケイ素、チタン酸バリウム及び酸化チタンからなる群から選択される少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、高周波電界の印加時間を短縮すること、及び短時間の印加であっても接着強度を向上させることができる接着方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一態様に係る高周波誘電加熱接着シート及び誘電加熱装置を用いた高周波誘電加熱処理を説明する概略図である。
図2】(A)、(B)及び(C)は、各実施態様に係る高周波誘電加熱接着シートの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第一実施形態]
[接着方法]
本実施形態に係る接着方法は、高周波誘電加熱接着シートによって被着体を接着する方法である。この高周波誘電加熱接着シートは、熱可塑性樹脂(A)を含む。
本実施形態に係る接着方法は、前記高周波誘電加熱接着シートに、単位面積当たりの印加出力V1の高周波電界を印加する第1工程と、前記第1工程後の高周波誘電加熱接着シートに、単位面積当たりの印加出力V2の高周波電界を印加する第2工程と、を備え、前記第1工程の単位面積当たりの印加出力V1と、前記第2工程の単位面積当たりの印加出力V2とが、下記数式(数1)で表される条件を満たす。なお、高周波電界とは、高周波で向きが反転する電界である。
V1>V2…(数1)
【0022】
以下、本実施形態に係る接着方法の一例として、単一の接着層からなる高周波誘電加熱接着シートを用いて、第一の被着体と第二の被着体とを接着する態様を挙げて説明するが、本発明は、この態様に限定されない。第一の被着体及び第二の被着体の材質も特に限定されない。
【0023】
本実施形態に係る接着方法は、以下の第1工程及び第2工程を含む。
第1工程及び第2工程は、第一の被着体と第二の被着体との間で挟持した高周波誘電加熱接着シートに対して、高周波電界を印加して、第一の被着体と第二の被着体とを高周波誘電加熱接着シートにより接着する工程である。
通常、高周波電界を印加する工程は、2つの工程に分けられていない。これに対し、本実施形態では、第1工程及び第2工程という特定の2つの工程に分けることで、高周波誘電加熱接着シートにおける樹脂の溶融及び加熱の度合いを調整している。これにより、本実施形態によれば、短時間の印加であっても接着強度を向上させることができるものと推察される。
【0024】
第1工程においては、高周波誘電加熱接着シートに、単位面積当たりの印加出力V1の高周波電界を印加する。
第2工程においては、第1工程後の高周波誘電加熱接着シートに、単位面積当たりの印加出力V2の高周波電界を印加する。
【0025】
第1工程の単位面積当たりの印加出力V1と、第2工程の単位面積当たりの印加出力V2とが、下記数式(数1)で表される条件を満たすことが必要である。
V1>V2…(数1)
上記数式(数1)で表される条件を満たさない場合には、高周波電界の印加時間を短縮しつつ、接着強度を向上させることはできない。
【0026】
本実施態様においては、第1工程の単位面積当たりの印加出力V1と、第2工程の単位面積当たりの印加出力V2とが、下記数式(数1-1)で表される条件を満たすことが好ましい。
0.8×V1≧V2…(数1-1)
上記数式(数1-1)で表される条件を満たす場合には、接着強度を向上させやすい。
また、同様の観点から、第2の単位面積当たりの印加出力V2の上限は、第1工程の単位面積当たりの印加出力V1の値の0.75倍以下であることが好ましく、第1工程の単位面積当たりの印加出力V1の値の0.7倍以下であることがより好ましく、単位面積当たりの印加出力V1の値の0.65倍以下であることがさらに好ましく、単位面積当たりの印加出力V1の値の0.6倍以下であることが特に好ましい。
また、印加時間を短縮するという観点から、第2工程の単位面積当たりの印加出力V2の下限は、第1工程の単位面積当たりの印加出力V1の値の0.1倍以上であることが好ましく、第1工程の単位面積当たりの印加出力V1の値の0.2倍以上であることがより好ましく、第1工程の単位面積当たりの印加出力V1の値の0.3倍以上であることがさらに好ましく、第1工程の単位面積当たりの印加出力V1の値の0.4倍以上であることが特に好ましい。
【0027】
第1工程の単位面積当たりの印加出力V1は、0.18W/mm以上であることが好ましく、0.20W/mm以上であることがより好ましく、0.22W/mm以上であることがさらに好ましい。第1工程の単位面積当たりの印加出力V1は、2.00W/mm以下であることが好ましく、1.75W/mm以下であることがより好ましく、1.50W/mm以下であることがさらに好ましく、1.25W/mm以下であることがよりさらに好ましく、1.00W/mm以下であることがよりさらに好ましく、0.75W/mm以下であることがよりさらに好ましく、0.5W/mm以下であることが特に好ましい。
第1工程の単位面積当たりの印加出力V1が0.18W/mm以上であれば、樹脂が溶融状態になりにくいという不具合を防止できるので、良好な接着力を得やすい。
第1工程の単位面積当たりの印加出力V1が2.00W/mm以下であれば、樹脂が発泡してしまい、接着強度が低下するという不具合を防止できるので、良好な接着力が得やすい。
【0028】
第1工程の印加時間T1は、1秒以上であることが好ましく、3秒以上であることがより好ましく、5秒以上であることがさらに好ましく、7秒以上であることがよりさらに好ましく、10秒以上であることが特に好ましい。第1工程の印加時間T1は、25秒未満であることが好ましく、24秒以下であることがより好ましく、20秒以下であることがさらに好ましい。
第1工程の印加時間T1が1秒以上であれば、誘電加熱処理時に温度が上昇し難いという不具合を防止できるので、良好な接着力を得やすい。
第1工程の印加時間T1が25秒未満であれば、高周波電界の印加時間をさらに短縮できる。
【0029】
第2工程の単位面積当たりの印加出力V2は、0.09W/mm以上であることが好ましく、0.10W/mm以上であることがより好ましく、0.11W/mm以上であることがさらに好ましい。第2工程の単位面積当たりの印加出力V2は、0.30W/mm以下であることが好ましく、0.25W/mm以下であることがより好ましく、0.20W/mm以下であることがさらに好ましく、0.18W/mm以下であることが特に好ましい。
第2工程の単位面積当たりの印加出力V2が0.09W/mm以上であれば、第1工程後の処理温度を維持できるので、良好な接着力を得やすい。
第2工程の単位面積当たりの印加出力V2が0.30W/mm以下であれば、樹脂が発泡してしまい、接着強度が低下するという不具合を防止できるので、良好な接着力が得やすい。
【0030】
第2工程の印加時間T2は、5秒以上であることが好ましく、7秒以上であることがより好ましく、9秒以上であることがさらに好ましく、10秒以上であることが特に好ましい。第2工程の印加時間T2は、60秒未満であることが好ましく、50秒以下であることがより好ましく、40秒以下であることがさらに好ましく、30秒以下であることが特に好ましい。
第2工程の印加時間T2が5秒以上であれば、第1工程後の処理温度を維持できる時間を確保できるので、良好な接着力を得やすい。
第2工程の印加時間T2が60秒未満であれば、高周波電界の印加時間をさらに短縮できる。
【0031】
本実施形態において、第1工程の印加時間T1と、第2工程の印加時間T2とが、下記数式(数2)で表される条件を満たすことが好ましい。
(T1+T2)<60秒…(数2)
上記数式(数2)で表される条件を満たす場合には、高周波電界の印加時間をさらに短縮できる。
また、同様の観点から、印加時間T1及び印加時間T2の合計(T1+T2)は、50秒以下であることがより好ましく、40秒以下であることがさらに好ましく、30秒以下であることが特に好ましい。
【0032】
第1工程及び第2工程において、印加する高周波電界の周波数は、1kHz以上であることが好ましく、1MHz以上であることがより好ましく、5MHz以上であることがさらに好ましく、10MHz以上であることがよりさらに好ましい。
印加する高周波電界の周波数は、300MHz以下であることが好ましく、100MHz以下であることがより好ましく、80MHz以下であることがさらに好ましく、50MHz以下であることがよりさらに好ましい。具体的には、国際電気通信連合により割り当てられた工業用周波数帯13.56MHz、27.12MHz又は40.68MHzが、本実施形態に係る接着方法にも利用される。
【0033】
本実施形態に係る接着方法は、前述の第1工程及び第2工程の前に、工程P1を含んでもよい。
【0034】
・工程P1
工程P1は、第一の被着体と第二の被着体との間に本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートを配置する工程である。工程P1では、第一の被着体を高周波誘電加熱接着シートの第一の表面に接触させる。また、工程P1では、第二の被着体を高周波誘電加熱接着シートの第二の表面に接触させる。
【0035】
第一の被着体と第二の被着体とを接着できるように、高周波誘電加熱接着シートを第一の被着体と第二の被着体の間で挟持することが好ましい。第一の被着体と第二の被着体との間の一部において、複数箇所において又は全面において高周波誘電加熱接着シートを挟持すればよい。第一の被着体と第二の被着体との接着強度を向上させる観点から、第一の被着体と第二の被着体との接着面全体に亘って高周波誘電加熱接着シートを挟持することが好ましい。
また、第一の被着体と第二の被着体との間の一部において高周波誘電加熱接着シートを挟持する一態様としては、第一の被着体と第二の被着体との接着面の外周に沿って高周波誘電加熱接着シートを枠状に配置して、第一の被着体と第二の被着体との間で挟持する態様が挙げられる。このように高周波誘電加熱接着シートを枠状に配置することで、第一の被着体と第二の被着体との接着強度を得るとともに、接着面全体に亘って高周波誘電加熱接着シートを配置した場合に比べて接合体を軽量化できる。
また、第一の被着体と第二の被着体との間の一部に高周波誘電加熱接着シートを挟持する一態様によれば、用いる高周波誘電加熱接着シートのサイズを小さくできるため、接着面全体に亘って高周波誘電加熱接着シートを配置した場合に比べて高周波誘電加熱処理時間を短縮できる。
【0036】
(被着体)
第一の被着体及び第二の被着体の材質は、特に限定されない。被着体の材質は、有機材料、及び無機材料(金属材料等を含む。)のいずれの材料でもよく、有機材料と無機材料との複合材料でもよい。
被着体の材質としての有機材料は、例えば、プラスチック材料、及びゴム材料が挙げられる。プラスチック材料としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂(ABS樹脂)、ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)、ポリアミド樹脂(ナイロン6及びナイロン66等)、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)及びポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)等)、ポリアセタール樹脂(POM樹脂)、ポリメチルメタクリレート樹脂、及びポリスチレン樹脂等が挙げられる。ゴム材料としては、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンゴム(EPR)、及びシリコーンゴム等が挙げられる。また、被着体は、有機材料の発泡材でもよい。
被着体の材質としての無機材料としては、ガラス材料、セメント材料、セラミック材料、及び金属材料等が挙げられる。また、被着体は、繊維と上述したプラスチック材料との複合材料である繊維強化樹脂(Fiber Reinforced Plastics,FRP)でもよい。この繊維強化樹脂におけるプラスチック材料は、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂(ABS樹脂)、ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)、ポリアミド樹脂(ナイロン6及びナイロン66等)、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)及びポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)等)、ポリアセタール樹脂(POM樹脂)、ポリメチルメタクリレート樹脂、及びポリスチレン樹脂等からなる群から選択される少なくとも一種である。繊維強化樹脂における繊維は、例えば、ガラス繊維、ケブラー繊維、及び炭素繊維等が挙げられる。
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートを用いて複数の被着体同士を接着する場合、複数の被着体は、互いに同じ材質であるか、又は異なる材質である。
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートは、被着体との接着に好適に使用できる。
被着体の形状は、特に限定されないが、高周波誘電加熱接着シートを貼り合わせることのできる面を有することが好ましく、シート状又は板状であることが好ましい。複数の被着体同士を接着する場合は、それら被着体の形状及び寸法は、互いに同じでも異なっていてもよい。
【0037】
(誘電加熱接着装置)
前述の第1工程及び第2工程では、例えば、誘電加熱接着装置を用いることにより、高周波誘電加熱接着シートに対して高周波電界を印加できる。
図1には、本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シート及び誘電加熱装置を用いた高周波誘電加熱処理を説明する概略図が示されている。
図1には、誘電加熱接着装置50の概略図が示されている。
誘電加熱接着装置50は、第一高周波電界印加電極51と、第二高周波電界印加電極52と、高周波電源53と、を備えている。
第一高周波電界印加電極51と、第二高周波電界印加電極52とは、互いに対向配置されている。第一高周波電界印加電極51及び第二高周波電界印加電極52は、プレス機構を有している。このプレス機構により、第一の被着体110、高周波誘電加熱接着シート1A及び第二の被着体120を、第一高周波電界印加電極51と第二高周波電界印加電極52との間で加圧処理できる。
【0038】
第一高周波電界印加電極51と第二高周波電界印加電極52とが互いに平行な1対の平板電極を構成している場合、このような電極配置の形式を平行平板タイプと称する場合がある。
高周波電界の印加には平行平板タイプの高周波誘電加熱装置を用いることも好ましい。平行平板タイプの高周波誘電加熱装置であれば、高周波が電極間に位置する高周波誘電加熱接着シートを貫通するので、高周波誘電加熱接着シート全体を温めることができ、被着体と高周波誘電加熱接着シートとを短時間で接着できる。
【0039】
第一高周波電界印加電極51及び第二高周波電界印加電極52のそれぞれに、例えば、周波数13.56MHz程度、周波数27.12MHz程度又は周波数40.68MHz程度の高周波電界を印加するための高周波電源53が接続されている。
誘電加熱接着装置50は、図1に示すように、第一の被着体110及び第二の被着体120との間に挟持した高周波誘電加熱接着シート1Aを介して、誘電加熱処理する。さらに、誘電加熱接着装置50は、誘電加熱処理に加えて、第一高周波電界印加電極51及び第二高周波電界印加電極52による加圧処理によって、第一の被着体110と第二の被着体120とを接着する。
【0040】
第一高周波電界印加電極51及び第二高周波電界印加電極52の間に、高周波電界を印加すると、高周波誘電加熱接着シート1Aが、高周波エネルギーを吸収する。
そして、高周波誘電加熱接着シート1Aの熱可塑性樹脂成分が溶融し、最終的には、第一の被着体110と第二の被着体120とを強固に接着できる。
【0041】
第一高周波電界印加電極51及び第二高周波電界印加電極52は、プレス機構を有することから、プレス装置としても機能する。そのため、第一高周波電界印加電極51及び第二高周波電界印加電極52による圧縮方向への加圧及び高周波誘電加熱接着シート1Aの加熱溶融によって、第一の被着体110と第二の被着体120とをより強固に接着できる。
【0042】
本実施形態に係る接合体は、第一の被着体と、第二の被着体と、本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートと、を有する。第一の被着体と第二の被着体とが、高周波誘電加熱接着シートによって接合されている。
本実施形態に係る接合体の一態様として、例えば、図1に示すように、第一の被着体110、高周波誘電加熱接着シート1A及び第二の被着体120を有する接合体が挙げられる。
【0043】
[高周波誘電加熱接着シート]
次に、本実施形態に係る接着方法に用いる高周波誘電加熱接着シートについて説明する。本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートは、接着層を有する。接着層は、熱可塑性樹脂(A)を含む。
【0044】
(熱可塑性樹脂(A))
熱可塑性樹脂(A)の種類は、特に制限されない。
熱可塑性樹脂(A)は、例えば、融解し易いとともに、所定の耐熱性を有する等の観点から、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、フェノキシ系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
熱可塑性樹脂(A)は、安価でありながら、成形性や機械的強度に優れるという観点から、ポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。
本明細書において、ポリオレフィン系樹脂は、極性部位を有するポリオレフィン系樹脂及び極性部位を有さないポリオレフィン系樹脂を含み、極性部位の有無を特定する場合に、極性部位を有するポリオレフィン系樹脂又は極性部位を有さないポリオレフィン系樹脂のように記載される。
【0045】
(ポリオレフィン系樹脂)
熱可塑性樹脂としてのポリオレフィン系樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン及びポリメチルペンテン等のホモポリマーからなる樹脂、並びにエチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテン及び4-メチルペンテン等からなる群から選択されるモノマーの共重合体からなるα-オレフィン樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としてのポリオレフィン系樹脂は、一種単独の樹脂でもよいし、二種以上の樹脂の組み合わせでもよい。
【0046】
(極性部位を有するポリオレフィン系樹脂)
極性部位を有するポリオレフィン系樹脂における極性部位は、ポリオレフィン系樹脂に対して極性を付与できる部位であれば特に限定されない。極性部位を有するポリオレフィン系樹脂は、被着体に対して高い接着力を示すので好ましい。
熱可塑性樹脂は、オレフィン系モノマーと極性部位を有するモノマーとの共重合体であってもよい。また、熱可塑性樹脂は、オレフィン系モノマーの重合によって得られたオレフィン系ポリマーに極性部位を付加反応等の変性により導入させた樹脂でもよい。
【0047】
熱可塑性樹脂としての極性部位を有するポリオレフィン系樹脂を構成するオレフィン系モノマーの種類については、特に制限されない。オレフィン系モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテン及び4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。オレフィン系モノマーは、これらの一種単独で用いられてもよく、二種以上の組み合わせで用いられてもよい。
オレフィン系モノマーは、機械的強度に優れ、安定した接着特性が得られるという観点から、エチレン及びポリプロピレンが好ましい。
極性部位を有するポリオレフィン系樹脂におけるオレフィン由来の構成単位は、エチレン又はプロピレンに由来する構成単位であることが好ましい。
【0048】
極性部位としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、酢酸ビニル構造、及び酸無水物構造等が挙げられる。
【0049】
(誘電フィラー(B))
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートは、高周波電界の印加により発熱する誘電フィラー(B)を、さらに含むことが好ましい。
誘電フィラー(B)は、周波数域が3MHz以上、300MHz以下の高周波電界を印加した時に発熱するフィラーであることが好ましい。誘電フィラー(B)は、周波数域3MHz以上、300MHz以下のうち、例えば、周波数13.56MHz、27.12MHz又は40.68MHz等の高周波電界の印加により発熱するフィラーであることが好ましい。
【0050】
(種類)
誘電フィラー(B)は、酸化亜鉛、炭化ケイ素(SiC)、アナターゼ型酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸カリウム、ルチル型酸化チタン、水和ケイ酸アルミニウム、アルカリ金属の水和アルミノケイ酸塩等の結晶水を有する無機材料又はアルカリ土類金属の水和アルミノケイ酸塩等の結晶水を有する無機材料等の一種単独又は二種以上の組み合わせが好適である。
【0051】
誘電フィラー(B)は、酸化亜鉛、炭化ケイ素、チタン酸バリウム及び酸化チタンからなる群から選択される少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0052】
例示した誘電フィラーの中でも、種類が豊富であり、様々な形状及びサイズから選択でき、高周波誘電加熱接着シートの接着特性及び機械特性を用途に合わせて改良できるため、誘電フィラー(B)は、酸化亜鉛であることがさらに好ましい。誘電フィラー(B)として酸化亜鉛を用いることで、無色の高周波誘電加熱接着シートを得ることができる。酸化亜鉛は、誘電フィラーの中でも密度が小さいため、誘電フィラー(B)として酸化亜鉛を含有する高周波誘電加熱接着シートを用いて被着体を接合した場合、他の誘電フィラーを含有するシートを用いた場合と比べて、接合体の総重量が増大し難い。酸化亜鉛は、セラミックの中でも硬度が高過ぎないため、高周波誘電加熱接着シートの製造装置を傷つけ難い。酸化亜鉛は、不活性な酸化物であるため、熱可塑性樹脂と配合しても、熱可塑性樹脂に与えるダメージが少ない。
また、誘電フィラー(B)としての酸化チタンは、アナターゼ型酸化チタン及びルチル型酸化チタンの少なくともいずれかであることが好ましく、誘電特性に優れるという観点から、アナターゼ型酸化チタンであることがより好ましい。
【0053】
(体積含有率)
接着層中の誘電フィラー(B)の体積含有率は、10体積%以上であることが好ましく、15体積%以上であることがより好ましい。
接着層中の誘電フィラー(B)の体積含有率は、50体積%以下であることが好ましく、40体積%以下であることがより好ましく、35体積%以下であることがさらに好ましく、25体積%以下であることがよりさらに好ましい。
接着層中の誘電フィラー(B)の体積含有率が10体積%以上であることで、印加時間をさらに短縮できる。
接着層中の誘電フィラー(B)の体積含有率が50体積%以下であることで、脆化しにくいため、接着強度が得られ易い。
【0054】
(平均粒子径)
誘電フィラー(B)の体積平均粒子径は、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、3μm以上であることがさらに好ましい。
誘電フィラー(B)の体積平均粒子径は、30μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることがさらに好ましい。
誘電フィラー(B)の体積平均粒子径が1μm以上であることで、高周波誘電加熱接着シートは、高周波電界の印加時に高い発熱性能を発現し、接着層は、被着体と短時間で強固に接着できる。
誘電フィラー(B)の体積平均粒子径が30μm以下であることで、高周波誘電加熱接着シートは、高周波電界の印加時に高い発熱性能を発現し、接着層は、被着体と短時間で強固に接着できる。また、誘電フィラー(B)の体積平均粒子径が30μm以下であることで、高周波誘電加熱接着シートの強度低下を防止できる。
【0055】
誘電フィラー(B)の体積平均粒子径は、次のような方法によって測定される。レーザー回折・散乱法により、誘電フィラー(B)の粒度分布測定を行い、当該粒度分布測定の結果からJIS Z 8819-2:2001に準じて体積平均粒子径を算出する。
【0056】
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートにおいて、誘電フィラー(B)の平均粒子径Dと接着層の厚さTとが、1≦T/D≦2500の関係を満たすことが好ましい。
T/Dは、1以上であることが好ましく、2以上であることが好ましく、5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、20以上であることがさらに好ましい。T/Dが1以上であれば、接着時に誘電フィラー(B)と被着体とが接触することに起因する接着強度の低下を防止できる。
T/Dは、2500以下であることが好ましく、2000以下であることが好ましく、1750以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましく、500以下であることがさらに好ましく、100以下であることがよりさらに好ましく、50以下であることがさらになお好ましい。T/Dが2500以下であれば、高周波誘電加熱接着シートの作製時に、シート製造装置への負荷を抑制できる。
【0057】
(添加剤)
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートは、添加剤を含んでいてもよいし、添加剤を含んでいなくてもよい。本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートが、複数の層からなる場合、当該複数の層の少なくともいずれかの層が添加剤を含んでいてもよいし、添加剤を含んでいなくてもよい。当該複数の層の少なくともいずれかの層が添加剤を含んでいる場合、接着層が添加剤を含んでいてもよいし、添加剤を含んでいなくてもよい。
【0058】
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートが添加剤を含む場合、添加剤としては、例えば、粘着付与剤、可塑剤、シランカップリング剤、ワックス、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、粘度調整剤、有機充填剤、及び無機充填剤等が挙げられる。添加剤としての有機充填剤、及び無機充填剤は、誘電フィラーとは異なる。
【0059】
粘着付与剤及び可塑剤は、高周波誘電加熱接着シートの溶融特性、及び接着特性を改良できる。
粘着付与剤としては、例えば、ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂の水素化物、テルペンフェノール樹脂、クマロン・インデン樹脂、脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂、及び芳香族石油樹脂の水素化物が挙げられる。
可塑剤としては、例えば、石油系プロセスオイル、天然油、二塩基酸ジアルキル、及び低分子量液状ポリマーが挙げられる。石油系プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、及び芳香族系プロセスオイル等が挙げられる。天然油としては、例えば、ひまし油、及びトール油等が挙げられる。二塩基酸ジアルキルとしては、例えば、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、及びアジピン酸ジブチル等が挙げられる。低分子量液状ポリマーとしては、例えば、液状ポリブテン、及び液状ポリイソプレン等が挙げられる。
【0060】
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートが添加剤を含む場合、高周波誘電加熱接着シート中の添加剤の含有率は、通常、高周波誘電加熱接着シートの全体量基準で、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましい。また、高周波誘電加熱接着シート中の添加剤の含有率は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0061】
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートは、溶剤を含有しないことが好ましい。溶剤を含有しない高周波誘電加熱接着シートによれば、被着体との接着に用いる接着剤に起因するVOC(Volatile Organic Compounds)の問題が発生し難い。
【0062】
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートの接着層は、炭素又は炭素を主成分とする炭素化合物(例えば、カーボンブラック等)及び金属等の導電性物質を含有しないことが好ましい。接着層は、例えば、炭素鋼、α鉄、γ鉄、δ鉄、銅、黄銅、アルミ、鉄-ニッケル合金、鉄-ニッケル-クロム合金、カーボンファイバー及びカーボンブラックを含有しないことが好ましい。
【0063】
接着層が導電性物質を含有する場合、接着層中の導電性物質の含有率は、それぞれ独立に、接着層の全体量基準で、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることがよりさらに好ましく、0.1質量%以下であることがさらになお好ましい。
接着層中の導電性物質の含有率は、0質量%であることが特に好ましい。
接着層中の導電性物質の含有率が20質量%以下であれば、誘電加熱処理した際に電気絶縁破壊して接着部及び被着体の炭化という不具合を防止し易くなる。
【0064】
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートの接着層中、熱可塑性樹脂(A)、及び誘電フィラー(B)の合計含有率は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることがさらに好ましい。
【0065】
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートは、一態様としては高周波誘電加熱接着性の接着層の一層のみからなる。なお、本発明に係る高周波誘電加熱接着シートは、接着層の一層のみからなる態様に限定されず、高周波誘電加熱接着シートの別の態様としては、接着層以外の層が積層されている態様も挙げられる。
このように、高周波誘電加熱接着シートは、高周波誘電加熱接着性の接着層の一層のみからなる場合があるため、本明細書において、「高周波誘電加熱接着シート」という用語と、「接着層」という用語は、場合によっては、互いに入れ替えることが可能である。
図2(A)~(C)には、本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートの複数の態様の概略図が例示されている。
【0066】
図2(A)に示された高周波誘電加熱接着シート1Aは、単一の接着層10のみから構成される。
高周波誘電加熱接着シートは、単一の接着層のみからなることが好ましい。単一の接着層のみからなることで、高周波誘電加熱接着シートの厚さを薄くすることができ、また簡単に成形することができる。
【0067】
図2(B)に示された高周波誘電加熱接着シート1Bは、接着層10と、接着層10を支持する基材30を有し、高周波誘電加熱接着シート1Aと同様、接着層10は、第一表面11を有する。基材30としては、接着層10を支持できる部材であれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、アセテート樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、及び塩化ビニル樹脂等からなる群から選択される少なくとも1種以上の樹脂を含む樹脂フィルム又は樹脂シートが挙げられる。基材30は、誘電フィラー(B)を含んでいてもよく、接着層10中の誘電フィラー(B)と基材30中の誘電フィラーとは、互いに同一であるか又は異なる。
【0068】
図2(C)に示された高周波誘電加熱接着シート1Cは、接着層10及び接着層20の間に配置された中間層40と、を有する。高周波誘電加熱接着シート1Cは、第一表面11及び第一表面11とは反対側の第二表面21を有する。高周波誘電加熱接着シート1Cにおける接着層10を第一接着層と称する場合があり、接着層20を第二接着層と称する場合がある。第一接着層と第二接着層との間に中間層が配置された構成の高周波誘電加熱接着シートにおいては、第一接着層が本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートの接着層の条件を満たしていればよく、一態様においては、第一接着層及び第二接着層の両方が同じ組成及び特性の層であり、一態様においては、第二接着層が第一接着層とは組成及び特性の少なくともいずれかの点で異なる高周波誘電加熱接着性の層であり、一態様においては、第二接着層が、高周波誘電加熱接着性の層ではない一般的な接着剤層であり、高周波誘電加熱接着性ではない第二接着層としては、例えば、水又は溶剤が蒸発して乾燥固化する乾燥固化型の接着剤層、又は粘着剤(感圧性接着剤)から形成される粘着剤層である。
【0069】
(高周波誘電加熱接着シートの形態及び特性)
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートは、一態様では、接着層の一層のみからなり、別の態様では、複数の層からなる場合がある。高周波誘電加熱接着シートが接着層の一層のみからなる場合、当該接着層そのものが高周波誘電加熱接着シートに相当するため、高周波誘電加熱接着シートの形態及び特性は、接着層の形態及び特性に相当する。
【0070】
(高周波誘電加熱接着シートの厚さ)
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートの厚さは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましく、50μm以上であることがよりさらに好ましい。
高周波誘電加熱接着シートの厚さが5μm以上であれば、被着体と接着する際に、高周波誘電加熱接着シートが被着体の凹凸に追従しやすく、接着強度が発現しやすくなる。
高周波誘電加熱接着シートが複数の層からなる多層構成の場合、接着層の厚さは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましく、50μm以上であることがよりさらに好ましい。
高周波誘電加熱接着シートが多層構成のシートである場合、接着層の厚さが5μm以上であれば、被着体と接着する際に、接着層が被着体の凹凸に追従しやすく、接着強度が発現しやすくなる。
高周波誘電加熱接着シートの厚さの上限は、特に限定されない。高周波誘電加熱接着シートの厚さが増すほど、高周波誘電加熱接着シートと被着体とを接着して得られる接合体全体の重量も増加するため、高周波誘電加熱接着シートは、実使用上問題ない範囲の厚さであることが好ましい。高周波誘電加熱接着シートの実用性及び成形性も考慮すると、高周波誘電加熱接着シートの厚さは、2000μm以下であることが好ましく、1000μm以下であることがより好ましく、600μm以下であることがさらに好ましい。
【0071】
(高周波誘電加熱接着シートの誘電特性(tanδ/ε’))
高周波誘電加熱接着シートの誘電特性としての誘電正接(tanδ)、及び誘電率(ε’)は、JIS C 2138:2007に準拠して測定することもできるが、インピーダンスマテリアル法に準じて、簡便かつ正確に測定することができる。
高周波誘電加熱接着シートの誘電特性(tanδ/ε’)は、0.005以上であることが好ましく、0.008以上であることがより好ましく、0.01以上であることがさらに好ましい。また、高周波誘電加熱接着シートの誘電特性(tanδ/ε’)は、0.08以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましい。誘電特性(tanδ/ε’)は、インピーダンスマテリアル装置等を用いて測定される誘電正接(tanδ)を、インピーダンスマテリアル装置等を用いて測定される誘電率(ε’)で除した値である。
高周波誘電加熱接着シートの誘電特性が、0.005以上であれば、誘電加熱処理をした際に、所定の発熱をせず、被着体同士を強固に接着することが困難となるという不具合を防止できる。
高周波誘電加熱接着シートの誘電特性が、0.08以下であれば、被着体の損傷が起きにくい。
なお、高周波誘電加熱接着シートの誘電特性の測定方法の詳細は、次の通りである。所定大きさに切断した高周波誘電加熱接着シートについて、インピーダンスマテリアルアナライザE4991(Agilent社製)を用いて、23℃における周波数40.68MHzの条件下、誘電率(ε’)、及び誘電正接(tanδ)をそれぞれ測定し、誘電特性(tanδ/ε’)の値を算出する。
【0072】
(高周波誘電加熱接着シートの製造方法)
単層の高周波誘電加熱接着シートは、上述の各成分を予備混合し、押出機、及び熱ロール等の公知の混練装置を用いて混錬し、押出成形、カレンダー成形、インジェクション成形、及びキャスティング成形等の公知の成形方法により製造できる。
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートが多層構成の場合は、例えば、上述の各成分を予備混合し、多層押出機を用いた共押出法によって製造できる。また、本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートを構成する各層(例えば、第1の接着層、中間層及び第2の接着層)の単層シートを個別に作製し、複数の単層シートをラミネート処理して積層させることによっても、多層構成のシートを製造できる。複数の単層シートをラミネート処理する際には、例えば、熱ラミネーターを使用する。
また、本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートは、溶融した接着層を基材の上にコーティングする熱押出コーティング、又はホットメルトコーティングによっても製造でき、接着層組成物を溶媒中に分散又は溶解させた塗布液を基材の上にコーティングするウェットコーティングによっても製造できる。
【0073】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
なお、本実施形態では、単位面積当たりの印加出力に代えて、単位面積当たりの印加エネルギーに基づいて第一工程及び第二工程を規定した以外は第一実施形態と同様の構成であるので、第一工程及び第二工程について説明し、それ以外の説明を省略する。
本実施形態に係る接着方法は、前記高周波誘電加熱接着シートに、単位面積当たりの印加エネルギーJ1の高周波電界を印加する第1工程と、前記第1工程後の高周波誘電加熱接着シートに、単位面積当たりの印加エネルギーJ2の高周波電界を印加する第2工程と、を備え、前記第1工程の単位面積当たりの印加エネルギーJ1と、前記第2工程の単位面積当たりの印加エネルギーJ2とが、下記数式(数3)で表される条件を満たす。なお、本実施形態では、第一実施形態と同様に、単一の接着層からなる高周波誘電加熱接着シートを用いて、第一の被着体と第二の被着体とを接着する態様を挙げて説明する。
J1>0.75×J2…(数3)
ここで、J1及びJ2は、それぞれ下記数式(数4-1)及び(数4-2)により算出できる。
J1(W/mm・秒)=T1×V1…(数4-1)
J2(W/mm・秒)=T2×V2…(数4-2)
【0074】
上記数式(数3)で表される条件を満たさない場合には、高周波電界の印加時間を短縮しつつ、接着強度を向上させることはできない。なお、第1工程の単位面積当たりの印加エネルギーJ1、及び第2工程の単位面積当たりの印加エネルギーJ2は、いずれも、0W/mm・秒超である。
また、同様の観点から、第1工程の単位面積当たりの印加エネルギーJ1の下限は、第2工程の単位面積当たりの印加エネルギーJ2の値の0.85倍以上であることが好ましく、第2工程の単位面積当たりの印加エネルギーJ2の値の1倍以上であることがより好ましい。
また、印加時間を短縮するという観点から、第1工程の単位面積当たりの印加エネルギーJ1の上限は、第2工程の単位面積当たりの印加エネルギーJ2の値の10倍以下であることが好ましく、第2工程の単位面積当たりの印加エネルギーJ2の値の5倍以下であることがより好ましい。
【0075】
本実施態様においては、第1工程の単位面積当たりの印加エネルギーJ1と、第2工程の単位面積当たりの印加エネルギーJ2とが、下記数式(数3-1)で表される条件を満たすことが好ましい。
0.9>J1/(J1+J2)>0.4…(数3-1)
上記数式(数3-1)で表される条件を満たす場合には、接着強度を向上させやすい。
また、同様の観点から、J1/(J1+J2)の値の上限は、0.85以下であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましく、0.75以下であることが特に好ましい。J1/(J1+J2)の値の下限は、0.42以上であることが好ましく、0.44以上であることがより好ましく、0.5以上であることが特に好ましい。
【0076】
第1工程の単位面積当たりの印加エネルギーJ1は、2W/mm・秒以上であることが好ましく、3W/mm・秒以上であることがより好ましく、3.5W/mm・秒以上であることが特に好ましい。第1工程の単位面積当たりの印加エネルギーJ1は、9W/mm・秒以下であることが好ましく、7W/mm・秒以下であることがより好ましく、5W/mm・秒以下であることが特に好ましい。
第1工程の単位面積当たりの印加エネルギーJ1が2W/mm・秒以上であれば、樹脂が溶融状態になりにくいという不具合を防止できるので、良好な接着力を得やすい。
第1工程の単位面積当たりの印加エネルギーJ1が9W/mm・秒以下であれば、樹脂が発泡してしまい、接着強度が低下するという不具合を防止できるので、良好な接着力が得やすい。
【0077】
第1工程の単位面積当たりの印加エネルギーJ1と、第2工程の単位面積当たりの印加エネルギーJ2との合計である総印加エネルギー(J1+J2)は、3W/mm・秒以上であることが好ましく、4.5W/mm・秒以上であることがより好ましく、6W/mm・秒以上であることが特に好ましい。総印加エネルギー(J1+J2)は、20W/mm・秒以下であることが好ましく、15W/mm・秒以下であることがより好ましく、10W/mm・秒以下であることが特に好ましい。
総印加エネルギー(J1+J2)の値が、前記範囲内であれば、接着強度を向上させやすい。
【0078】
[実施形態の変形]
本発明は、前記実施形態に限定されない。本発明は、本発明の目的を達成できる範囲での変形及び改良等を含むことができる。
【0079】
前記実施形態では、第1工程に続いて、第2工程を行っているが、これに限定されない。例えば、本発明の効果を損なわないようであれば、第1工程と第2工程の間に、他の工程を行ってもよい。ここで、他の工程としては、第1工程として、第一段階目の高周波誘電加熱を行った後に、しばらく放置する工程等が挙げられる。
【0080】
高周波誘電加熱処理は、前記実施形態で説明した電極を対向配置させた誘電加熱接着装置に限定されず、格子電極タイプの高周波誘電加熱装置を用いてもよい。格子電極タイプの高周波誘電加熱装置は、一定間隔ごとに第一極性の電極と、第一極性の電極とは反対極性の第二極性の電極とを同一平面上に交互に配列した格子電極を有する。
例えば、第一の被着体の端部と第二の被着体の端部とを重ね合わせて接着した接合体を製造する場合は、第一の被着体側又は第二の被着体側に格子電極タイプの高周波誘電加熱装置を配置して高周波電界を印加する。
【0081】
格子電極タイプの高周波誘電加熱装置を用いて第一の被着体と第二の被着体とを接着させる場合に、第一の被着体側に第一の格子電極を配置し、第二の被着体側に第二の格子電極を配置して、第一の被着体、高周波誘電加熱接着シート及び第二の被着体を、第一の格子電極と第二の格子電極との間に挟んで同時に高周波電界を印加してもよい。
【0082】
格子電極タイプの高周波誘電加熱装置を用いて第一の被着体と第二の被着体とを接着させる場合に、第一の被着体及び第二の被着体の一方の面側に格子電極を配置し、高周波電界を印加し、その後、第一の被着体及び第二の被着体の他方の面側に格子電極を配置し、高周波電界を印加してもよい。
【0083】
高周波電界の印加には格子電極タイプの高周波誘電加熱装置を用いることも好ましい。格子電極タイプの高周波誘電加熱装置を用いることで、第一の被着体及び第二の被着体の厚さの影響を受けず、第一の被着体及び第二の被着体の表層側、例えば、高周波誘電加熱接着シートまでの距離が近い被着体側から誘電加熱することにより、被着体同士を接着できる。また、格子電極タイプの高周波誘電加熱装置を用いることで、接合体の製造の省エネルギー化を実現できる。
【0084】
なお、図においては、簡略化のために電極を対向配置させた誘電加熱接着装置を用いた態様を例示した。
【実施例
【0085】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれら実施例に何ら限定されない。
【0086】
[高周波誘電加熱接着シートの作製]
熱可塑性樹脂成分として無水マレイン酸共重合体ポリプロピレン(三菱ケミカル株式会社製、モディックP565、以下、A成分と記載する。)80.0体積%と、B成分として酸化亜鉛(堺化学工業社製、LPZINC11,平均粒子径:11μm、以下B成分と記載する。)20.0体積%と、をそれぞれ容器内に秤量した。
秤量したA成分、及びB成分を容器内で予備混合した。各成分を予備混合した後、30mmΦ二軸押出機のホッパーに供給し、シリンダー設定温度を180℃以上200℃以下、ダイス温度を200℃に設定し、溶融混練することにより、粒状のペレットを得た。
次いで、得られた粒状のペレットを、Tダイを設置した単軸押出機のホッパーに投入し、シリンダー温度を200℃、ダイス温度を200℃の条件として、Tダイから、フィルム状溶融混練物を押出し、冷却ロールにて冷却させることにより、厚さ400μmの高周波誘電加熱接着シートを作製した。
得られたシートについて、インピーダンスマテリアルアナライザE4991ARF(Agilent社製)に、誘電材料テスト・フィクスチャー 16453A(Agilent社製)を取り付け、平行板法にて、23℃における周波数40.68MHzの条件下、比誘電率(ε’r)及び誘電正接(tanδ)を測定した。測定結果に基づき、誘電特性(tanδ/ε’r)の値を算出した。得られた高周波誘電加熱接着シートの誘電特性(tanδ/ε’r)は、0.014であった。
【0087】
[実施例1]
作製した高周波誘電加熱接着シートを、25mm×12.5mmの大きさに切断した。切断した高周波誘電加熱接着シートを、一対の被着体としてのエポキシガラス板(25mm×100mm×1.5mm)の間に挟んだ後に、高周波誘電加熱装置(山本ビニター株式会社製、TRP-400T-RC)の電極間に固定した状態で、周波数40.68MHz、推定押し圧192.8Nに設定した。
そして、第1工程として、印加面積を312.5mm、印加出力を100W(単位面積当たりの印加出力V1を0.32W/mm)、印加時間を15秒に設定して、第一段階目の高周波誘電加熱を行った。次に、第2工程として、印加面積を312.5mm、印加出力を50W(単位面積当たりの印加出力V2を0.16W/mm)、印加時間を10秒に設定して、第二段階目の高周波誘電加熱を行い、接合体を作製した。なお、第1工程における印加出力、印加時間T1、及び単位面積当たりの印加出力V1、並びに、第2工程における印加出力、印加時間T2、及び単位面積当たりの印加出力V2を、表1に示す。さらに、第1工程における単位面積当たりの印加エネルギーJ1、第2工程における単位面積当たりの印加エネルギーJ2、総印加時間(T1+T2)、総印加エネルギー(J1+J2)、並びに、J1/(J1+J2)の値を、表2に示す。
得られた接合体の接合強度を、JIS K 6850に準じて測定した。得られた結果を表1に示す。
【0088】
[実施例2~8]
第1工程及び第2工程の条件を下記表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、接合体を作製した。また、得られた接合体の接合強度を、実施例1と同様の方法で測定した。得られた結果を表1に示す。また、第1工程における単位面積当たりの印加エネルギーJ1、第2工程における単位面積当たりの印加エネルギーJ2、総印加時間(T1+T2)、総印加エネルギー(J1+J2)、並びに、J1/(J1+J2)の値を、表2に示す。
【0089】
[比較例1]
実施例1と同様にして、切断した高周波誘電加熱接着シートを、一対の被着体としてのエポキシガラス板の間に挟んだ後に、高周波誘電加熱装置にセットした。
そして、高周波誘電加熱を二段階に分けずに、印加面積を312mm、印加出力を100W(単位面積当たりの印加出力V1を0.32W/mm)、印加時間を30秒に設定して、高周波誘電加熱を行い、接合体を作製した。なお、高周波誘電加熱における印加出力、印加時間、及び単位面積当たりの印加出力V1を、表1に示す。また、高周波誘電加熱における単位面積当たりの印加エネルギーJ1、総印加時間(T1+T2)、総印加エネルギー(J1+J2)、並びに、J1/(J1+J2)の値を、表2に示す。
【0090】
[比較例2~4]
高周波誘電加熱の条件を下記表1の通りに変更した以外は、比較例1と同様にして、接合体を作製した。また、得られた接合体の接合強度を、実施例1と同様の方法で測定した。得られた結果を表1に示す。また、高周波誘電加熱における単位面積当たりの印加エネルギーJ1、総印加時間(T1+T2)、総印加エネルギー(J1+J2)、並びに、J1/(J1+J2)の値を、表2に示す。
【0091】
[比較例5]
第1工程及び第2工程の条件を下記表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、接合体を作製した。また、得られた接合体の接合強度を、実施例1と同様の方法で測定した。得られた結果を表1に示す。また、第1工程における単位面積当たりの印加エネルギーJ1、第2工程における単位面積当たりの印加エネルギーJ2、総印加時間(T1+T2)、総印加エネルギー(J1+J2)、並びに、J1/(J1+J2)の値を、表2に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
実施例1~8の接着方法によれば、高周波電界の印加時間を短縮すること、及び短時間の印加であっても接着強度を向上させることができた。
【符号の説明】
【0095】
10…接着層(第一接着層)、11…第一表面、110…被着体、120…被着体、1A…高周波誘電加熱接着シート、1B…高周波誘電加熱接着シート、1C…高周波誘電加熱接着シート、20…接着層(第二接着層)、21…第二表面、30…基材、40…中間層、50…誘電加熱接着装置、51…第一高周波電界印加電極、52…第二高周波電界印加電極、53…高周波電源。
図1
図2