(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-17
(45)【発行日】2025-06-25
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20250618BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20250618BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20250618BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F17/00 B
H01F17/04 Z
(21)【出願番号】P 2021137966
(22)【出願日】2021-08-26
【審査請求日】2024-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】江田 北斗
(72)【発明者】
【氏名】大久保 等
(72)【発明者】
【氏名】荒田 正純
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 政太郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 耕平
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 隆将
(72)【発明者】
【氏名】太田 学
(72)【発明者】
【氏名】小沼 健栄
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-089936(JP,A)
【文献】特開2018-206950(JP,A)
【文献】特開2012-069781(JP,A)
【文献】特開2018-074144(JP,A)
【文献】特開2016-146431(JP,A)
【文献】特開2015-130472(JP,A)
【文献】特開2020-155510(JP,A)
【文献】特開2003-297646(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0233703(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23
H01F 27/26-27/30
H01F 27/32
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 30/00-38/12
H01F 38/16
H01F 38/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行な第1の端面および第2の端面を有する素体と、
前記素体内に設けられ、前記第1の端面に露出するとともに前記第1の端面において露出する露出領域が第1方向に沿って延びる絶縁基板と、
前記絶縁基板上に設けられ、前記第1の端面に露出する第1端部を有する第1のコイル部と、
前記第1の端面に設けられ、前記絶縁基板の露出領域の一部を覆うとともに前記第1のコイル部の前記第1端部を覆う第1の外部端子と、を備え、
前記第1の外部端子は、前記第1方向に沿って前記絶縁基板の露出領域に向かって突出する第1の凸部を有し、
前記第1の凸部は、前記第1の端面において前記第1方向と直交する第2方向に関し、前記第1の外部端子の中心位置から偏倚している、コイル部品。
【請求項2】
前記第1の外部端子は、一対の前記第1の凸部を有し、
前記一対の第1の凸部は、前記第1方向に沿って互いに逆向きに突出する、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第1の外部端子の外形が曲線で構成された角部を有する、請求項1
又は2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記絶縁基板は、ガラスクロスを含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記露出領域における前記絶縁基板の表面粗さは、前記素体の前記第1の端面の表面粗さより小さい、請求項1~
4のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記素体は、前記第1の端面において前記第1方向と直交する第2方向から前記絶縁基板を挟む一対の磁性層を更に有し、
前記第2方向に関し、前記絶縁基板の厚さは、前記磁性層の厚さより薄い、請求項1~
5のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記素体は、金属磁性粉含有樹脂で構成される、請求項1~
6のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記素体は、前記第1の端面および前記第2の端面に対して直交する実装面と、該実装面に対向する天面とを更に有し、
前記第1の外部端子は、前記第1の端面における前記天面の縁から離間している、請求項1~
7のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記第1の外部端子は、前記第1の端面における前記第1方向と直交する第2方向に並ぶ複数の領域を有し、
前記複数の領域は、前記第1の凸部を含む第1領域と、前記第1領域と前記実装面側において隣り合う第2領域と、前記第1領域と前記天面側において隣り合う第3領域とを含み、
前記第1方向に関し、前記第2領域の長さは、前記第3領域の長さよりも長い、請求項
8に記載のコイル部品。
【請求項10】
前記絶縁基板は、前記第1の端面において前記素体から突出する、請求項1~
9のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項11】
前記絶縁基板上に設けられ、前記第1の端面に露出する第2端部を有する第2のコイル部と、
前記第1の端面に前記第1の外部端子と前記第1方向において隣り合って設けられ、前記絶縁基板の露出領域の一部を覆うとともに前記第2のコイル部の前記第2端部を覆う第2の外部端子と、を更に備え、
前記第2の外部端子は、前記第1方向に沿って前記絶縁基板の露出領域に向かって突出する第2の凸部を有し、
前記第1の端面において、前記第1の外部端子の前記第1の凸部と前記第2の外部端子の前記第2の凸部とが互いに向かい合う、請求項1~
10のいずれか一項に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、素体内にコイルが設けられたコイル部品が知られている。下記特許文献1には、素体内に2つのコイルが設けられた4端子のコイル部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなコイル部品においては、一般に、コイルの端部と電気的に接続された外部端子が素体表面に設けられる。素体と外部端子との間の密着強度が低いと外部端子が素体から剥離してしまうため、十分な密着強度を得る必要がある。
【0005】
本発明は、素体と外部端子との間の密着強度の向上が図られたコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るコイル部品は、互いに平行な第1の端面および第2の端面を有する素体と、素体内に設けられ、第1の端面に露出するとともに第1の端面において露出する露出領域が第1方向に沿って延びる絶縁基板と、絶縁基板上に設けられ、第1の端面に露出する第1端部を有する第1のコイル部と、第1の端面に設けられ、絶縁基板の露出領域の一部を覆うとともに第1のコイル部の第1端部を覆う第1の外部端子と、を備え、第1の外部端子は、第1方向に沿って絶縁基板の露出領域に向かって突出する第1の凸部を有する。
【0007】
上記コイル部品においては、第1の外部端子の第1の凸部により、第1の外部端子と素体とが接する面積が増大するため、両者は、互いにより強固に密着される。このため、第1の外部端子と素体との間の密着強度を向上することができる。
【0008】
本発明の他の側面に係るコイル部品は、第1の外部端子が、一対の前記第1の凸部を有し、一対の第1の凸部が、第1方向に沿って互いに逆向きに突出する。
【0009】
本発明の他の側面に係るコイル部品は、第1の凸部が、第1の端面において第1方向と直交する第2方向に関し、第1の外部端子の中心位置から偏倚している。
【0010】
本発明の他の側面に係るコイル部品は、第1の外部端子の外形が曲線で構成された角部を有する。
【0011】
本発明の他の側面に係るコイル部品は、絶縁基板が、ガラスクロスを含む。
【0012】
本発明の他の側面に係るコイル部品は、露出領域における絶縁基板の表面粗さが、素体の第1の端面の表面粗さより小さい。
【0013】
本発明の他の側面に係るコイル部品は、素体が、第1の端面において第1方向と直交する第2方向から絶縁基板を挟む一対の磁性層を更に有し、第2方向に関し、絶縁基板の厚さは、磁性層の厚さより薄い。
【0014】
本発明の他の側面に係るコイル部品は、素体が、金属磁性粉含有樹脂で構成される。
【0015】
本発明の他の側面に係るコイル部品は、素体が、第1の端面および第2の端面に対して直交する実装面と、該実装面に対向する天面とを更に有し、第1の外部端子が、第1の端面における天面の縁から離間している。
【0016】
本発明の他の側面に係るコイル部品は、第1の外部端子が、第1の端面における第1方向と直交する第2方向に並ぶ複数の領域を有し、複数の領域が、第1の凸部を含む第1領域と、第1領域と実装面側において隣り合う第2領域と、第1領域と天面側において隣り合う第3領域を含み、第1方向に関し、第2領域の長さが、第3領域の長さよりも長い。
【0017】
本発明の他の側面に係るコイル部品は、絶縁基板が、第1の端面において素体から突出する。
【0018】
本発明の他の側面に係るコイル部品は、絶縁基板上に設けられ、第1の端面に露出する第2端部を有する第2のコイル部と、第1の端面に第1の外部端子と第1方向において隣り合って設けられ、絶縁基板の露出領域の一部を覆うとともに第2のコイル部の第2端部を覆う第2の外部端子と、を更に備え、第2の外部端子が、第1方向に沿って絶縁基板の露出領域に向かって突出する第2の凸部を有し、第1の端面において、第1の外部端子の第1の凸部と第2の外部端子の第2の凸部とが互いに向かい合う。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、素体と外部端子との間の密着強度の向上が図られたコイル部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施形態に係るコイル部品の概略斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2に示すコイル部品のIV-IV線断面図である。
【
図5】
図5は、
図2に示すコイル部品のV-V線断面図である。
【
図7】
図7は、
図1に示すコイル部品の素体の一方の端面を示した図である。
【
図8】
図8は、
図1に示すコイル部品の素体の他方の端面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0022】
実施形態に係るコイル部品1は、一例としてバランコイルである。バランコイルは、たとえば近距離無線通信回路(NFC回路)をセルラー端末に搭載する際に利用される。バランコイルがアンテナの不平衡信号とNFC回路の平衡信号との間の変換をおこなうことで、不平衡回路と平衡回路との接続が実現される。コイル部品1は、コモンモードフィルタ又はトランスに用いることができる。
【0023】
図1に示すように、コイル部品1は、素体10と、素体10内に埋設されたコイル構造体20と、素体10の表面に設けられた二対の外部端子電極60A、60B、60C、60Dとを備えて構成されている。
【0024】
素体10は、直方体状の外形を有し、6つの面10a~10fを有する。素体10は、一例として、長辺2.0mm、短辺1.25mm、高さ0.50mm~0.65mm(一例として0.65mm)の寸法で設計される。素体10の面10a~10fのうち、端面10a(第1の端面)と端面10b(第2の端面)とが互いに平行であり、上面10c(実装面)と下面10d(天面)とが互いに平行であり、側面10eと側面10fとが互いに平行である。下面10dは、上面10cに対向している。上面10cと下面10dと側面10eと側面10fとは、端面10aと端面10bに対して直交する。素体10の上面10cは、コイル部品1が実装される実装基板の実装面と平行に対向する面である。以下の説明では、側面10e、10fの対向方向を素体10の幅方向、上面10cと下面10dとの対向方向を素体10の高さ方向とも称す。
【0025】
素体10は、磁性材料の一種である金属磁性粉含有樹脂12で構成されている。金属磁性粉含有樹脂12は、金属磁性粉体がバインダ樹脂により結着された結着粉体である。金属磁性粉含有樹脂12の金属磁性粉は、たとえば鉄ニッケル合金(パーマロイ合金)、カルボニル鉄、アモルファス、非晶質または結晶質のFeSiCr系合金、センダスト等で構成されている。バインダ樹脂は、たとえば熱硬化性のエポキシ樹脂である。本実施形態では、結着粉体における金属磁性粉体の含有量は、体積パーセントでは80~92vol%であり、質量パーセントでは95~99wt%である。磁気特性の観点から、結着粉体における金属磁性粉体の含有量は、体積パーセントで85~92vol%、質量パーセントで97~99wt%であってもよい。金属磁性粉含有樹脂12の磁性粉は、1種類の平均粒径を有する粉体であってもよく、複数種類の平均粒径を有する混合粉体であってもよい。
【0026】
素体10の金属磁性粉含有樹脂12は、
図2,3に示すように、後述するコイル構造体20を一体的に覆っている。具体的には、金属磁性粉含有樹脂12は、コイル構造体20を上下方向から覆うとともに、コイル構造体20の外周を覆っている。また、金属磁性粉含有樹脂12は、コイル構造体20の内周領域を充たしている。
図4、5に示すように、金属磁性粉含有樹脂12は、素体10の高さ方向からコイル構造体20を挟む一対の磁性部12a,12b(磁性層)と、磁性部12aと磁性部12bとの間に介在する複数の磁性部12cを有する。また、
図4に示すように、磁性部12a,12bの厚さの最大値W
10a,W
10b及び最小値W
20a,W
20bは、素体10の高さ方向に沿った磁性部12a,12bの厚さである。磁性部12a,12bの厚さの最大値W
10a,W
10bは、後述するコイル構造体40A、40Bが介在していない部分における磁性部12a,12bの厚さであり、たとえば端面10a、10bと側面10e、10fとによって画成される角部における磁性部12a,12bの厚さである。磁性部12aの厚さの最大値W
10a、及び磁性部12bの厚さの最大値W
10bは、たとえば235μm~315μmである。また、磁性部12a、12bの厚さの最小値W
20a、最小値W
20bは、例えば、後述するコイル構造体40A、40Bが介在している部分における磁性部12a、12bの厚さである。磁性部12aの厚さの最小値W
20a、及び磁性部12bの厚さの最小値W
20bは、たとえば80μm~270μmである。
【0027】
コイル構造体20は、金属磁性粉含有樹脂12に埋設されている。コイル構造体20は、絶縁基板30と、絶縁基板30の上側に設けられた上側コイル構造体40Aと、絶縁基板30の下側に設けられた下側コイル構造体40Bとを備えて構成されている。なお、上述した複数の磁性部12cは、絶縁基板30と同一層内に位置する。複数の磁性部12cは、絶縁基板30の設けられた層において、絶縁基板30を除いた部分を充たしている。具体的には、磁性部12cの一部は、絶縁基板30の内周領域を充たしており、磁性部12cの他の一部は、絶縁基板30の外周領域を充たしている。
【0028】
絶縁基板30は、平板状の形状を有し、素体10の端面10a、10b間に亘って延在しており、端面10a、10bに対して直交するように設計されている。また、絶縁基板30は、素体10の上面10cおよび下面10dに対して平行に延在している。
図3に示すように、絶縁基板30は、素体10の長辺方向に沿って延びる楕円環状のコイル形成部31と、素体10の短辺方向に沿って延びるとともにコイル形成部31を両側から挟む一対のフレーム部34A、34Bとを有する。絶縁基板30はフレーム部34Aにおいて素体10の端面10aから露出しており、フレーム部34Aは、端面10aにおいて露出する露出領域R
Aを形成している。同様に、絶縁基板30はフレーム部34Bにおいて素体10の端面10bから露出しており、フレーム部34Bは、端面10bにおいて露出する露出領域R
Bを形成している。コイル形成部31の中央部分には、素体10の長辺方向に沿って延びる楕円状の開口32が設けられている。
【0029】
絶縁基板30は、非磁性の絶縁材料で構成されている。本実施形態では、絶縁基板30はガラスクロスにエポキシ系樹脂が含浸した構成を有する。絶縁基板30を構成する樹脂は、エポキシ系樹脂に限られず、BTレジン、ポリイミド、アラミド等であってもよい。絶縁基板30の構成材料は、セラミックやガラスであってもよい。絶縁基板30の構成材料は、大量生産されているプリント基板材料であってもよい。絶縁基板30の構成材料は、BTプリント基板、FR4プリント基板、またはFR5プリント基板に用いられる樹脂材料であってもよい。
【0030】
絶縁基板30の厚さW
30は、
図4に示すように、たとえば10μm~60μmの範囲に設計することができる。絶縁基板30の厚さW
30は、たとえば25μmである。絶縁基板30の厚さW
30は、たとえば、磁性部12aの厚さの最小値W
20a及び磁性部12bの厚さの最小値W
20bより薄くなるように設計することができる。なお、磁性部12aの厚さの最大値W
10a、磁性部12bの厚さの最大値W
10b、及び絶縁基板30の厚さW
30を足し合わせると、素体10の高さと同じ長さとなる。
【0031】
上側コイル構造体40Aは、絶縁基板30のコイル形成部31における基板上面30aに設けられている。上側コイル構造体40Aは、
図2、3に示すように、第1の平面コイル41と、第2の平面コイル42と、上側絶縁体50Aとを備えて構成されている。第1の平面コイル41と第2の平面コイル42とは、絶縁基板30の上面30a上において並行するように隣り合った状態で巻回されている。本実施形態において、上側コイル構造体40Aの厚さW
40Aは、絶縁基板30の厚さW
30より厚くなるように設計されている。
図4に示すように、上側コイル構造体40Aの厚さW
40Aは、たとえば90μm~175μmであり、一例として110μmである。なお、磁性部12aの厚さの最小値W
20a、及びコイル構造体40Aの厚さW
40Aを足し合わせると、磁性部12aの厚さの最大値W
10aと同じ厚さとなる。
【0032】
第1の平面コイル41は、絶縁基板30の上面30aにおいて、同一層内で、コイル形成部31の開口32の周りに巻かれた略長円形の渦巻状空芯コイルである。第1の平面コイル41のターン数は、1ターンであってもよく複数ターンであってもよい。本実施形態では、第1の平面コイル41のターン数は3~4である。第1の平面コイル41は、外側端部41aと、内側端部41bとを有する。外側端部41aは、フレーム部34Aに設けられており、素体10の端面10aから露出する。内側端部41bは、開口32の縁に設けられている。絶縁基板30には、第1の平面コイル41の内側端部41bと重なる位置に、絶縁基板30の厚さ方向に延びる第1の貫通導体41cが設けられている。第1の平面コイル41は、たとえばCuで構成されており、電解めっきにより形成され得る。
【0033】
第2の平面コイル42は、第1の平面コイル41同様、絶縁基板30の上面30aにおいて、同一層内で、コイル形成部31の開口32の周りに巻かれた略長円形の渦巻状空芯コイルである。第2の平面コイル42は、第1の平面コイル41の内周側において、第1の平面コイル41と隣り合うように巻回されている。第2の平面コイル42のターン数は、1ターンであってもよく複数ターンであってもよい。本実施形態では、第2の平面コイル42のターン数は、第1の平面コイル41のターン数と同じである。第2の平面コイル42は、外側端部42aと、内側端部42bとを有する。第2の平面コイル42の外側端部42aは、第1の平面コイル41の外側端部41a同様、フレーム部34Aに設けられており、素体10の端面10aから露出する。第2の平面コイル42の内側端部42bは、開口32の縁に設けられており、第1の平面コイル41の内側端部41bに隣接している。絶縁基板30には、第2の平面コイル42の内側端部42bと重なる位置に、絶縁基板30の厚さ方向に延びる第2の貫通導体42cが設けられている。第2の平面コイル42は、第1の平面コイル41同様、たとえばCuで構成されており、電解めっきにより形成され得る。
【0034】
上側絶縁体50Aは、絶縁基板30の上面30a上に設けられており、公知のフォトリソグラフィによってパターニングされた厚膜レジストである。上側絶縁体50Aは、第1の平面コイル41および第2の平面コイル42のめっき成長領域を画定している。本実施形態では、
図4に示すように、上側絶縁体50Aは、第1の平面コイル41および第2の平面コイル42を一体的に覆っており、より具体的には第1の平面コイル41および第2の平面コイル42の側面と上面とを覆っている。上側絶縁体50Aの一部は、
図5、6に示すように、素体10の内部から外側端部41aと外側端部42aとの間を通って素体10の端面10aまで延び、端面10aに露出している。また、上側絶縁体50Aの一部は、
図5、6に示すように、基板上面30aに沿って素体10の内部から端面10bまで延びて、端面10bに露出している。上側絶縁体50Aの厚さは、第1の平面コイル41および第2の平面コイル42の厚さより厚い。上側絶縁体50Aは、たとえばエポキシ樹脂で構成される。
【0035】
下側コイル構造体40Bは、絶縁基板30のコイル形成部31における基板下面30bに設けられている。下側コイル構造体40Bは、
図2、3に示すように、第1の平面コイル41と、第2の平面コイル42と、下側絶縁体50Bとを備えて構成されている。第1の平面コイル41と第2の平面コイル42とは、絶縁基板30の下面30b上において並行するように隣り合った状態で巻回されている。本実施形態において、下側コイル構造体40Bの厚さW
40Bは、絶縁基板30の厚さW
30より厚くなるように設計されている。
図4に示すように、下側コイル構造体40Bの厚さW
40Bは、たとえば90μm~175μmであり、一例として110μmである。なお、磁性部12bの厚さの最小値W
20b、及び下側コイル構造体40Bの厚さW
40Bを足し合わせると、磁性部12bの厚さの最大値W
10bと同じ厚さとなる。
【0036】
下側コイル構造体40Bの第1の平面コイル41および第2の平面コイル42は、上側コイル構造体40Aの第1の平面コイル41および第2の平面コイル42と対称性を有する。より具体的には、下側コイル構造体40Bの第1の平面コイル41および第2の平面コイル42は、素体10の短辺に平行な軸周りに、上側コイル構造体40Aの第1の平面コイル41および第2の平面コイル42を反転させた形状を有する。
【0037】
下側コイル構造体40Bの第1の平面コイル41の外側端部41aは、フレーム部34Bに設けられており、素体10の端面10bから露出する。下側コイル構造体40Bの第1の平面コイル41の内側端部41bは、絶縁基板30に設けられた第1の貫通導体41cと重なっている。そのため、下側コイル構造体40Bの第1の平面コイル41の内側端部41bは、第1の貫通導体41cを介して、上側コイル構造体40Aの第1の平面コイル41の内側端部41bと電気的に接続されている。下側コイル構造体40Bの第1の平面コイル41は、たとえばCuで構成されており、電解めっきにより形成され得る。
【0038】
下側コイル構造体40Bの第2の平面コイル42の外側端部42aは、フレーム部34Bに設けられており、素体10の端面10bから露出する。下側コイル構造体40Bの第2の平面コイル42の内側端部42bは、絶縁基板30に設けられた第2の貫通導体42cと重なっている。そのため、下側コイル構造体40Bの第2の平面コイル42の内側端部42bは、第2の貫通導体42cを介して、上側コイル構造体40Aの第2の平面コイル42の内側端部42bと電気的に接続されている。下側コイル構造体40Bの第2の平面コイル42は、たとえばCuで構成されており、電解めっきにより形成され得る。
【0039】
下側絶縁体50Bは、絶縁基板30の下面30b上に設けられており、公知のフォトリソグラフィによってパターニングされた厚膜レジストである。下側絶縁体50Bは、上側絶縁体50A同様、第1の平面コイル41および第2の平面コイル42のめっき成長領域を画定している。本実施形態では、
図4に示すように、下側絶縁体50Bは、第1の平面コイル41および第2の平面コイル42を一体的に覆っており、より具体的には第1の平面コイル41および第2の平面コイル42の側面と上面とを覆っている。下側絶縁体50Bの一部は、上側絶縁体50A同様、素体10の内部から外側端部41aと外側端部42aとの間を通って素体10の端面10bまで延び、端面10bに露出している。また、下側絶縁体50Bの一部は、基板下面30bに沿って素体10の内部から端面10aまで延びて、端面10aに露出している。下側絶縁体50Bの厚さは、第1の平面コイル41および第2の平面コイル42の厚さより厚い。下側絶縁体50Bの厚さは、上側絶縁体50Aの厚さと同一であってもよい。下側絶縁体50Bは、たとえばエポキシ樹脂で構成される。
【0040】
素体10には、二重コイル構造を構成する一対のコイル部C1、C2を備える。第1のコイル部C1は、絶縁基板30の上面30aに設けられた上側コイル構造体40Aの第1の平面コイル41と、絶縁基板30の下面30bに設けられた下側コイル構造体40Bの第1の平面コイル41と、両面の第1の平面コイル41同士を接続する第1の貫通導体41cとにより構成されている。第1のコイル部C1において、上側コイル構造体40Aの第1の平面コイル41の外側端部41aが第1端部を構成しており、下側コイル構造体40Bの第1の平面コイル41の外側端部41aが第2端部を構成している。第2のコイル部C2は、絶縁基板30の上面30aに設けられた上側コイル構造体40Aの第2の平面コイル42と、絶縁基板30の下面30bに設けられた下側コイル構造体40Bの第2の平面コイル42と、両面の第2の平面コイル42同士を接続する第2の貫通導体42cとにより構成されている。第2のコイル部C2において、上側コイル構造体40Aの第2の平面コイル42の外側端部42aが第1端部を構成しており、下側コイル構造体40Bの第2の平面コイル42の外側端部42aが第2端部を構成している。
【0041】
二対の外部端子電極60A、60B、60C、60Dは、素体10の互いに平行な端面10a、10bに一対ずつ設けられている。
【0042】
端面10aに設けられた一対の外部端子電極60A、60Bのうち、外部端子電極60A(第1の外部端子)は上側コイル構造体40Aの第1の平面コイル41の外側端部41aと接続され、外側端部41aを覆っている。外部端子電極60B(第2の外部端子)は上側コイル構造体40Aの第2の平面コイル42の外側端部42aと接続され、外側端部42aを覆っている。
図7に示すように、一対の外部端子電極60A、60Bは、素体10の幅方向において隣り合っており、かつ、互いに離間するように設けられている。端面10a側から見て、外部端子電極60Aは、側面10f側に偏倚しており、端面10aにおける側面10f近傍まで覆っている。外部端子電極60Aは、端面10aにおける下面10dの縁から離間している。また、外部端子電極60Bは、側面10e側に偏倚しており、端面10aにおける側面10e近傍まで覆っている。外部端子電極60Bは、端面10aにおける下面10dの縁から離間している。
【0043】
端面10bに設けられた一対の外部端子電極60C、60Dのうち、外部端子電極60Cは下側コイル構造体40Bの第1の平面コイル41の外側端部41aと接続され、外部端子電極60Dは下側コイル構造体40Bの第2の平面コイル42の外側端部42aと接続されている。
図8に示すように、一対の外部端子電極60C、60Dは、素体10の幅方向において隣り合っており、かつ、互いに離間するように設けられている。外部端子電極60Cは、側面10f側に偏倚しており、端面10bにおける側面10f近傍まで覆っている。外部端子電極60Cは、端面10bにおける下面10dの縁から離間している。また、外部端子電極60Dは、側面10e側に偏倚しており、端面10bにおける側面10e近傍まで覆っている。外部端子電極60Dは、端面10bにおける下面10dの縁から離間している。
【0044】
端面10aの外部端子電極60Aと端面10bの外部端子電極60Cとは、素体10の長辺方向において互いに対応する位置に設けられている。同様に、端面10aの外部端子電極60Bと端面10bの外部端子電極60Dとは、素体10の長辺方向において互いに対応する位置に設けられている。
【0045】
外部端子電極60A、60B、60C、60Dはいずれも、L字状に屈曲しており、端面10a、10bと上面10cとを連続的に覆っている。本実施形態では、外部端子電極60A、60B、60C、60Dは、樹脂電極で構成されており、たとえばAg粉を含有する樹脂で構成されている。
【0046】
続いて、
図7を参照しつつ、素体10の端面10aの構成について説明する。
【0047】
上述したとおり、素体10の端面10aには絶縁基板30が露出領域RAにおいて露出している。露出領域RAは、端面10aにおいて上面10cおよび下面10dに対して平行な第1方向(すなわち、端面10aにおける素体10の幅方向)に沿って、素体10の側面10e、10f間に亘って延在している。露出領域RAは、素体10の端面10aにおいて第1方向と直交する第2方向(すなわち、上面10cおよび下面10dとの対面方向、端面10aにおける素体10の高さ方向)に関し、端面10aの略中心位置にある。
【0048】
外部端子電極60Aは、端面10aにおける側面10f側に位置しており、露出領域RAの一部分を覆っている。外部端子電極60Aは、端面10a側から見て略矩形状を呈し、より詳しくは曲面で構成された角部を有する(すなわち、角丸の)矩形状を呈する。そのため、外部端子電極60Aの外形は、鋭い角部を有しない。より詳しくは、外部端子電極60Aは、第2方向に並ぶ3つの領域で構成されている。3つの領域は、それぞれ第1方向に延びる矩形状を呈している。3つの領域のうち、第1領域Ra1は、露出領域RA上に位置している。第2領域Ra2は、第1領域Ra1と上面10c側において隣り合っている。第3領域Ra3は、第1領域Ra1と下面10d側において隣り合っている。第1方向に沿った第1領域Ra1の長さ(すなわち、第1領域Ra1の幅)Wa1は、第1方向に沿った第2領域Ra2の長さ(すなわち、第2領域Ra2の幅)Wa2より長い。さらに、第2領域Ra2の長さWa2は、第1方向に沿った第3領域Ra3の長さ(すなわち、第3領域Ra3の幅)Wa3より長い。第1領域Ra1の長さWa1はたとえば500μm~600μm、第2領域Ra2の長さWa2はたとえば400μm~500μm、第3領域Ra3の長さWa3はたとえば300μm~400μmである。第2領域Ra2が幅広の場合には、はんだ実装時において実装基板近傍のはんだ形成領域が拡大するため、実装強度および電気接続の安定性が高まる。
【0049】
露出領域RA上に位置する第1領域Ra1は、第2方向に関する端面10aの略中心に位置している。外部端子電極60Aの第2領域Ra2は、端面10aにおいて上面10cの縁まで達している。一方、外部端子電極60Aの第3領域Ra3は、端面10aにおいて、下面10dの縁まで達しておらず、第3領域Ra3の下端は下面10dの縁から第2方向に沿って離間している。そのため、第2方向に沿った第2領域Ra2の高さは、第3領域Ra3の高さより高く、かつ、第2方向に関する外部端子電極60Aの中心位置Laは、端面10aの中心位置よりも上面10c側に位置している。換言すると、外部端子電極60Aの第1領域Ra1は、第2方向に関し、外部端子電極60Aの中心位置Laよりも下面10d側に偏倚している。
【0050】
外部端子電極60Aの第1領域R
a1は、上述したように、第2領域R
a2及び第3領域R
a3と比較して第1方向に沿った長さが大きい。具体的には、外部端子電極60Aの第1領域R
a1のうち、第2領域R
a2及び第3領域R
a3と接していない部分が、第2領域R
a2及び第3領域R
a3と比較して第1方向に突き出る一対の凸部61a,61b(第1の凸部)を構成している。一対の凸部61a,61bは、第1方向に沿って絶縁基板30の露出領域R
Aに向かって突出する。一対の凸部61a,61bは、互いに逆向きに突出する。具体的には、凸部61aは、第1方向に沿って側面10eに近づく向き(
図7では右向き)に突出する。凸部61bは、第1方向に沿って側面10fに近づく向き(
図7では左向き)に突出する。なお、本実施形態においては、第1領域R
a1は、第2方向に関し、外部端子電極60Aの中心位置Laよりも下面10d側に偏倚しているため、第1領域R
a1の凸部61a,61bも、第2方向に関し、外部端子電極60Aの中心位置Laよりも下面10d側に偏倚している。凸部61a,61bの突出長さは、たとえば10μm~100μmである。
【0051】
外部端子電極60Bは、端面10aにおける側面10e側に位置しており、露出領域RAの一部分を覆っている。外部端子電極60Bは、端面10a側から見て略矩形状を呈し、より詳しくは曲面で構成された角部を有する(すなわち、角丸の)矩形状を呈する。そのため、外部端子電極60Bの外形は、鋭い角を有しない。より詳しくは、外部端子電極60Bは、外部端子電極60A同様、第2方向に並ぶ3つの領域で構成されている。3つの領域は、それぞれ第1方向に延びる矩形状を呈している。3つの領域のうち、第1領域Rb1は、露出領域RA上に位置している。第2領域Rb2は、第1領域Rb1と上面10c側において隣り合っている。第3領域Rb3は、第1領域Rb1と下面10d側において隣り合っている。第1方向に沿った第1領域Rb1の長さ(すなわち、第1領域Rb1の幅)Wb1は、第1方向に沿った第2領域Rb2の長さ(すなわち、第2領域Rb2の幅)Wb2より長い。さらに、第2領域Rb2の長さWb2は、第1方向に沿った第3領域Rb3の長さ(すなわち、第3領域Rb3の幅)Wb3より長い。第1領域Rb1の長さWb1はたとえば500μm~600μm、第2領域Rb2の長さWb2はたとえば400μm~500μm、第3領域Rb3の長さWb3はたとえば300μm~400μmである。
【0052】
露出領域RA上に位置する第1領域Rb1は、第2方向に関する端面10aの略中心に位置している。外部端子電極60Bの第2領域Rb2は、端面10aにおいて上面10cの縁まで達している。一方、外部端子電極60Bの第3領域Rb3は、端面10aにおいて、下面10dの縁まで達しておらず、第3領域Rb3の下端は下面10dの縁から第2方向に沿って離間している。そのため、第2方向に沿った第2領域Rb2の高さは、第3領域Rb3の高さより高く、かつ、第2方向に関する外部端子電極60Bの中心位置Lbは、端面10aの中心位置よりも上面10c側に位置している。換言すると、外部端子電極60Bの第1領域Rb1は、第2方向に関し、外部端子電極60Bの中心位置Lbよりも下面10d側に偏倚している。本実施形態において、第2方向に関する外部端子電極60Aの中心位置Laと外部端子電極60Bの中心位置Lbとは同じ高さ位置にある。
【0053】
外部端子電極60Bの第1領域R
b1は、上述したように、第2領域R
b2及び第3領域R
b3と比較して第1方向に沿った長さが大きい。具体的には、外部端子電極60Bの第1領域R
b1のうち、第2領域R
b2及び第3領域R
b3と接していない部分が、第2領域R
b2及び第3領域R
b3と比較して第1方向に突き出る一対の凸部62a,62b(第2の凸部)を構成している。一対の凸部62a,62bは、第1方向に沿って絶縁基板30の露出領域R
Aに向かって突出する。一対の凸部62a,62bは、互いに逆向きに突出する。具体的には、凸部62aは、第1方向に沿って側面10fに近づく向き(
図7では左向き)に突出する。凸部62bは、第1方向に沿って側面10eに近づく向き(
図7では右向き)に突出する。なお、本実施形態においては、第1領域R
b1は、第2方向に関し、外部端子電極60Bの中心位置Lbよりも下面10d側に偏倚しているため、第1領域R
b1の凸部62a,62bも、第2方向に関し、外部端子電極60Bの中心位置Lbよりも下面10d側に偏倚している。また、外部端子電極60Bの凸部62aと、外部端子電極60Aの凸部61aとは、端面10aの露出領域R
Aにおいて互いに向かい合う。具体的には、外部端子電極60Bの凸部62aは、外部端子電極60Aに近づくように露出領域R
Aにおいて突出する。外部端子電極60Aの凸部61aは、外部端子電極60Bに近づくように露出領域R
Aにおいて突出する。なお、凸部62a,62bの突出長さは、たとえば10μm~100μmである。
【0054】
続いて、
図8を参照しつつ、素体10の端面10bの構成について説明する。
【0055】
素体10の端面10bには絶縁基板30が露出領域R
Bにおいて露出している。
図8に示すように、露出領域R
Bは、端面10aにおける露出領域R
Aと同様にして、端面10bにおいて上面10cおよび下面10dに対して平行な第1方向(すなわち、端面10bにおける素体10の幅方向)に沿って、素体10の側面10e、10f間に亘って延在している。露出領域R
Bは、素体10の端面10bにおいて第1方向と直交する第2方向(すなわち、上面10cおよび下面10dとの対面方向、端面10bにおける素体10の高さ方向)に関し、端面10bの略中心位置にある。
【0056】
外部端子電極60Cは、端面10bにおける側面10f側に位置しており、露出領域RBの一部分を覆っている。外部端子電極60Cは、端面10b側から見て略矩形状を呈し、より詳しくは曲面で構成された角部を有する(すなわち、角丸の)矩形状を呈する。そのため、外部端子電極60Cの外形は、鋭い角を有しない。より詳しくは、外部端子電極60Cは、第2方向に並ぶ3つの領域で構成されている。3つの領域は、それぞれ第1方向に延びる矩形状を呈している。3つの領域のうち、第1領域Rc1は、露出領域RB上に位置している。第2領域Rc2は、第1領域Rc1と上面10c側において隣り合っている。第3領域Rc3は、第1領域Rc1と下面10d側において隣り合っている。第1方向に沿った第1領域Rc1の長さ(すなわち、第1領域Rc1の幅)Wc1は、第1方向に沿った第2領域Rc2の長さ(すなわち、第2領域Rc2の幅)Wc2より長い。さらに、第2領域Rc2の長さWc2は、第1方向に沿った第3領域Rc3の長さ(すなわち、第3領域Rc3の幅)Wc3より長い。第1領域Rc1の長さWc1はたとえば500μm~600μm、第2領域Rc2の長さWc2はたとえば400μm~500μm、第3領域Rc3の長さWc3はたとえば300μm~400μmである。
【0057】
露出領域RB上に位置する第1領域Rc1は、第2方向に関する端面10bの略中心に位置している。外部端子電極60Cの第2領域Rc2は、端面10bにおいて上面10cの縁まで達している。一方、外部端子電極60Cの第3領域Rc3は、端面10bにおいて、下面10dの縁まで達しておらず、第3領域Rc3の下端は下面10dの縁から第2方向に沿って離間している。そのため、第2方向に沿った第2領域Rc2の高さは、第3領域Rc3の高さより高く、かつ、第2方向に関する外部端子電極60Cの中心位置Lcは、端面10bの中心位置よりも上面10c側に位置している。換言すると、外部端子電極60Cの第1領域Rc1は、第2方向に関し、外部端子電極60Cの中心位置Lcよりも下面10d側に偏倚している。
【0058】
外部端子電極60Cの第1領域R
c1は、上述したように、第2領域R
c2及び第3領域R
c3と比較して第1方向に沿った長さが大きい。具体的には、外部端子電極60Cの第1領域R
c1のうち、第2領域R
c2及び第3領域R
c3と接していない部分が、第2領域R
c2及び第3領域R
c3と比較して第1方向に突き出る一対の凸部63a,63bを構成している。一対の凸部63a,63bは、第1方向に沿って絶縁基板30の露出領域R
Bに向かって突出する。一対の凸部63a,63bは、互いに逆向きに突出する。具体的には、凸部63aは、第1方向に沿って側面10eに近づく向き(
図8では左向き)に突出する。凸部63bは、第1方向に沿って側面10fに近づく向き(
図8では右向き)に突出する。なお、本実施形態においては、第1領域R
c1は、第2方向に関し、外部端子電極60Cの中心位置Lcよりも下面10d側に偏倚しているため、第1領域R
c1の凸部63a,63bも、第2方向に関し、外部端子電極60Cの中心位置Lcよりも下面10d側に偏倚している。なお、凸部63a,63bの突出長さは、たとえば10μm~100μmである。
【0059】
外部端子電極60Dは、端面10bにおける側面10e側に位置しており、露出領域RBの一部分を覆っている。外部端子電極60Dは、端面10b側から見て略矩形状を呈し、より詳しくは曲面で構成された角部を有する(すなわち、角丸の)矩形状を呈する。外部端子電極60Dの外形は、鋭い角を有しない。より詳しくは、外部端子電極60Dは、外部端子電極60C同様、第2方向に並ぶ3つの領域で構成されている。3つの領域は、それぞれ第1方向に延びる矩形状を呈している。3つの領域のうち、第1領域Rd1は、露出領域RB上に位置している。第2領域Rd2は、第1領域Rd1と上面10c側において隣り合っている。第3領域Rd3は、第1領域Rd1と下面10d側において隣り合っている。第1方向に沿った第1領域Rd1の長さ(すなわち、第1領域Rd1の幅)Wd1は、第1方向に沿った第2領域Rd2の長さ(すなわち、第2領域Rd2の幅)Wd2より長い。さらに、第2領域Rd2の長さWd2は、第1方向に沿った第3領域Rd3の長さ(すなわち、第3領域Rd3の幅)Wd3より長い。第1領域Rd1の長さWd1はたとえば500μm~600μm、第2領域Rd2の長さWd2はたとえば400μm~500μm、第3領域Rd3の長さWd3はたとえば300μm~400μmである。
【0060】
露出領域RB上に位置する第1領域Rd1は、第2方向に関する端面10bの略中心に位置している。外部端子電極60Dの第2領域Rd2は、端面10bにおいて上面10cの縁まで達している。一方、外部端子電極60Dの第3領域Rd3は、端面10bにおいて、下面10dの縁まで達しておらず、第3領域Rd3の下端は下面10dの縁から第2方向に沿って離間している。そのため、第2方向に沿った第2領域Rd2の高さは、第3領域Rd3の高さより高く、かつ、第2方向に関する外部端子電極60Dの中心位置Ldは、端面10bの中心位置よりも上面10c側に位置している。換言すると、外部端子電極60Dの第1領域Rd1は、第2方向に関し、外部端子電極60Dの中心位置Ldよりも下面10d側に偏倚している。本実施形態において、第2方向に関する外部端子電極60Cの中心位置Lcと外部端子電極60Dの中心位置Ldとは同じ高さ位置にある。
【0061】
外部端子電極60Dの第1領域R
d1は、上述したように、第2領域R
d2及び第3領域R
d3に対して第1方向に沿った長さが大きい。すなわち、外部端子電極60Dの第1領域R
d1のうち、第2領域R
d2及び第3領域R
d3と接していない部分が、第2領域R
d2及び第3領域R
d3と比較して第1方向に突き出る一対の凸部64a,64bを構成している。一対の凸部64a,64bは、第1方向に沿って絶縁基板30の露出領域R
Bに向かって突出する。一対の凸部64a,64bは、互いに逆向きに突出する。具体的には、凸部64aは、第1方向に沿って側面10fに近づく向き(
図8では右向き)に突出する。凸部64bは、第1方向に沿って側面10eに近づく向き(
図8では左向き)に突出する。なお、本実施形態においては、第1領域R
d1は、第2方向に関し、外部端子電極60Dの中心位置Ldよりも下面10d側に偏倚しているため、第1領域R
d1の凸部64a,64bも、第2方向に関し、外部端子電極60Dの中心位置Ldよりも下面10d側に偏倚している。また、外部端子電極60Dの凸部64aと、外部端子電極60Cの凸部63aとは、端面10bの露出領域R
Bにおいて互いに向かい合う。具体的には、外部端子電極60Dの凸部64aは、外部端子電極60Cに近づくように露出領域R
Bにおいて突出する。外部端子電極60Cの凸部63aは、外部端子電極60Dに近づくように露出領域R
Bにおいて突出する。凸部64a,64bの突出長さは、たとえば10μm~100μmである。
【0062】
端面10a,10bの断面について、
図9を参照しつつ説明する。端面10bの断面は、端面10aの断面と同一または同様であるため説明を省略する。
【0063】
図9に示すように、端面10aには、絶縁基板30のフレーム部34Aが端面10aから突出した突出部35Aが設けられている。突出部35Aの突出長さW
35Aはたとえば10μm~30μmである。すなわち、3つの領域R
a1、R
a2、R
a3のうちの第1領域R
a1に対応する部分の絶縁基板30が突出している。外部端子電極60Aの厚さは、端面10aを基準にすると均一にはなっておらず、
図9に示すように、3つの領域R
a1、R
a2、R
a3それぞれにおいて異なる。具体的には、外部端子電極60Aの厚さは、第2領域R
a2の下面10dに近い側の下端部において最小厚さT
1となり、第3領域R
a3の第2の方向における中央付近において最大厚さT
2となる。外部端子電極60Aの厚さは、第2領域R
a2の下端部から第3領域R
a3の中央付近まで単調に増加し、その後上面10cに至るまで単調に減少する。但し、フレーム部34Aの露出領域R
Aが、端面10aにおいて端面10aに直交する方向に突出しているため、露出領域R
Aにおいて、外部端子電極60Aの厚さT
3は、突出部35Aが突出した長さW
35Aの分だけ短くなる。なお、最小厚さT
1は、たとえば10μmであり、最大厚さT
2は、たとえば40μmである。
【0064】
端面10aの突出部35Aは、素体10の製造段階において、端面10aにおける金属磁性粉含有樹脂12が端面10aから後退することにより生じる。より詳細には、一体となるように形成された複数の素体10が切断されることにより、各素体10が互いに分離する。当該切断により生じた面として平坦な端面10aが形成される。そして、各素体10に対してバレル研磨などの表面処理(エッチング処理等を含む)が行われ、端面10aにおいて相対的に研磨されやすい金属磁性粉含有樹脂12が研磨される。当該研磨により、端面10aにおける露出領域RA以外の領域が端面10aに垂直な方向に後退することにより、相対的にフレーム部34A,34Bの一部が端面10aから突出し、突出部35Aとなる。なお、端面10aにおいて、研磨後における露出領域RAの表面粗さは、磁性部12a及び磁性部12bの表面粗さより小さい。
【0065】
本実施形態では、外部端子電極60Aの凸部61a及び凸部61bにより、外部端子電極60Aと素体10との接する面積が増大するため、両者は、互いにより強固に密着される。このため、外部端子電極60Aと素体10との間の密着強度を向上することができる。なお、外部端子電極60B,60C,60Dも同様に、素体10との間の密着強度を向上できる。以上のことから、外部端子電極60A,60B,60C,60Dが素体10から剥離してしまうことを抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態では、外部端子電極60A,60B,60C,60Dの外形は、曲線で構成されており、角のない形状を呈している。ここで、外形に鋭い角がある場合、外部端子電極60A,60B,60C,60Dに対して外部から応力が加わると、外部端子電極60A,60B,60C,60Dが角を起点として剥がれやすくなってしまう。したがって、本実施形態の構成によれば、外部端子電極60A,60B,60C,60Dが、素体10から剥離してしまうことを抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態では、絶縁基板30のフレーム部34Aは、端面10aにおいて素体10から突出する。そして、絶縁基板30のフレーム部34Bは、端面10bにおいて素体10から突出する。これにより、突出部35Aにおいて端面10aの表面積が増大し、それにより外部端子電極60A,60B,60C,60Dとの密着面積が増大し、両者は、互いにより強固に密着される。このため、外部端子電極60Aと素体10との間の密着強度を向上することができる。以上のことから、外部端子電極60A,60B,60C,60Dが素体10から剥離してしまうことを抑制することができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。たとえば、コイルの数は、2つに限らず、3つ以上であってもよい。端面10a,10bにおける端子数は、2つに限らず、1つあるいは3つ以上であってもよい。第1領域Ra1,Rb1,Rc1,Rd1は、外部端子電極60A,60B,60C,60Dの中心位置La,Lb,Lc,Ldから下面10d側に偏倚しているが、中心位置La,Lb,Lc,Ldと一致していてもよく、上面10c側に偏倚してもよい。上側絶縁体50Aおよび下側絶縁体50Bは、端面10a,10bにおいて露出しているが、露出しなくてもよい。中心位置La,Lbは、互いに同じ高さに位置してもよいし、異なる高さに位置していてもよい。中心位置Lc,Ldは、互いに同じ高さに位置してもよいし、異なる高さに位置していてもよい。外部端子電極60A,60B,60C,60Dにおいて、凸部の数は、2つに限らず、1つあるいは3つ以上であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…コイル部品、10…素体、10a…端面(第1の端面)、10b…端面(第2の端面)、10d…下面(実装面)12…金属磁性粉含有樹脂、12a,12b…磁性部(磁性層)、30…絶縁基板、41…第1の平面コイル、42…第2の平面コイル、41a…外側端部(第1端部)、42a…外側端部(第2端部)、50A…上側絶縁体、50B…下側絶縁体、60A~60D…外部端子電極、61a,61b…凸部(第1の凸部)、62a,62b…凸部(第2の凸部)、RA,RB…露出領域、C1…第1のコイル部、C2…第2のコイル部、Ra1,Rb1,Rc1,Rd1…第1領域、Ra2,Rb2,Rc2,Rd2…第2領域、Ra3,Rb3,Rc3,Rd3…第3領域、W30…絶縁基板の厚さ、W10a,W20a,W10b,W20b…磁性層の厚さ。