(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-17
(45)【発行日】2025-06-25
(54)【発明の名称】地盤注入用薬液組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 17/46 20060101AFI20250618BHJP
C09K 17/30 20060101ALI20250618BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20250618BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20250618BHJP
C08G 18/18 20060101ALI20250618BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20250618BHJP
C08G 18/65 20060101ALI20250618BHJP
C08G 18/30 20060101ALI20250618BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20250618BHJP
C09K 103/00 20060101ALN20250618BHJP
【FI】
C09K17/46 P
C09K17/30 P
E02D3/12 101
C08G18/76
C08G18/18
C08G18/32 025
C08G18/65 023
C08G18/30 020
C08G18/08 038
C09K103:00
(21)【出願番号】P 2021141523
(22)【出願日】2021-08-31
【審査請求日】2024-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】本村 勇太
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼ 智裕
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-070755(JP,A)
【文献】特開2003-171664(JP,A)
【文献】特開2004-075754(JP,A)
【文献】特開2001-011442(JP,A)
【文献】特開平11-080730(JP,A)
【文献】特開2006-233054(JP,A)
【文献】特開2019-001840(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0093566(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 17/00 - 17/52
E02D 3/12
C08G 18/00 - 18/87
C08G 71/00 - 71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸塩水溶液及び触媒を必須の成分として含有するA液と、ポリイソシアネートを必須の成分として含有するB液とからなる地盤注入用薬液組成物において、
前記B液における必須の成分たるポリイソシアネートとして、芳香族ポリイソシアネートが用いられてなると共に、前記A液が、前記触媒として、3級アミンを含有し、更に、1級及び/又は2級アミノ基含有化合物を含有していることを特徴とする地盤注入用薬液組成物。
【請求項2】
前記1級及び/又は2級アミノ基含有化合物が、1分子内に1級及び/又は2級アミノ基を二つ以上有するポリアミン化合物であることを特徴とする請求項1に記載の地盤注入用薬液組成物。
【請求項3】
前記1級及び/又は2級アミノ基含有化合物が、1級及び/又は2級アミノ基を0.5~50mmol/gの割合で有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の地盤注入用薬液組成物。
【請求項4】
前記1級及び/又は2級アミノ基含有化合物が、芳香族アミン化合物であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の地盤注入用薬液組成物。
【請求項5】
前記1級及び/又は2級アミノ基含有化合物が、前記ポリイソシアネートの100質量部に対して、0.01~20質量部の割合において、含有せしめられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の地盤注入用薬液組成物。
【請求項6】
前記触媒としての3級アミンが、アルコール性水酸基を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の地盤注入用薬液組成物。
【請求項7】
前記A液が、更に、ポリオールを含有していることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の地盤注入用薬液組成物。
【請求項8】
前記A液及びB液が、それぞれ、25℃の温度下において、400mPa・s以下の粘度を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の地盤注入用薬液組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤注入用薬液組成物に係り、特に、ケイ酸塩水溶液及び触媒を必須の成分として含有するA液と、ポリイソシアネートを必須の成分として含有するB液とからなる2液型の地盤注入用薬液組成物において、その高温発泡特性を改善する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、地山の不安定な岩盤や地盤の安定強化のための地盤改良用途や、人工構造物のクラックや空隙を充填する空洞充填用途において採用される方策の一つとして、無機乃至有機系グラウトを注入して、地山等を固結せしめる方法が知られており、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとを組み合わせてなる発泡性ポリウレタン材料を用い、それを注入して、発泡・硬化せしめる工法が、採用されてきている。
【0003】
ところで、そのような発泡性ポリウレタン材料の注入による固結工法にあっては、ポリオールとポリイソシアネートとのウレタン化反応によって、有機物(樹脂)主体の発泡硬化体を生成するものであるところから、火気による火災の発生等の問題が内在し、また、その材料自体が高価となるものであるために、施工費用が高騰する等の問題も内在するものであった。
【0004】
このため、特開平5-78667号公報や特開2004-075754号公報等においては、従来のポリオール主体の有機物よりも材料費が安価なものとなるアルカリケイ酸塩水溶液を主成分とするA液と、ポリイソシアネートを主成分とするB液とからなる注入薬液が提案され、それら2液を注入して、発泡・硬化せしめることにより、無機物と有機物の複合発泡硬化体を形成するようにして、従来の発泡性ポリウレタン材料より高い難燃性を発揮せしめ得ることが、明らかにされている。
【0005】
しかしながら、それらA液とB液とからなる注入薬液にあっては、夏場の施工時において、薬液が外気温により30~40℃の高温となる場合があり、それによって、地山の固結作業に大きな影響をもたらす恐れがあった。即ち、高温下において、アルカリケイ酸塩水溶液(水ガラス)とポリイソシアネートとが反応する場合にあっては、水とポリイソシアネートとの反応が促進されるようになることによって、A液とB液との反応による発泡・硬化によって形成される反応生成物(発泡体)の強度が充分に発現しない状態において、発泡が始まるようになるのである。そして、反応生成物の硬化が惹起されるまでに、セルの破泡や破断が惹起されることとなるのであり、そのために、発泡終了段階において、得られた発泡硬化体が強度不足となるところから、自重によって萎んでしまったり、発泡セルの粗大化や不均一化によって、発泡硬化体の強度低下が引き起こされたりする等の問題が、惹起されるようになるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5-78667号公報
【文献】特開2004-075754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、高温下においても安定した発泡特性を発揮し得る地盤注入用薬液組成物を提供することにあり、また、他の課題とするところは、ケイ酸塩水溶液及び触媒を必須の成分として含有するA液と、ポリイソシアネートを必須の成分として含有するB液とからなる2液型の地盤注入用薬液組成物において、その反応によって形成される発泡体の強度を有利に確保しつつ、その発泡の安定性を高め、更には圧縮強度に優れた発泡体を得ることの出来る技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、本発明は、上記した課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組合せにおいて、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載から把握される発明思想に基づいて、理解されるものであることが、考慮されるべきである。
【0009】
先ず、上記した課題を解決するべく、本発明は、ケイ酸塩水溶液及び触媒を必須の成分として含有するA液と、ポリイソシアネートを必須の成分として含有するB液とからなる地盤注入用薬液組成物において、前記B液における必須の成分たるポリイソシアネートとして、芳香族ポリイソシアネートが用いられてなると共に、前記A液が、前記触媒として、3級アミンを含有し、更に、1級及び/又は2級アミノ基含有化合物を含有していることを特徴とする地盤注入用薬液組成物を、その第一の態様とするとものである。
【0010】
また、本発明の第二の態様は、前記1級及び/又は2級アミノ基含有化合物として、1分子内に1級及び/又は2級アミノ基を二つ以上有するポリアミン化合物を用いるものである。
【0011】
さらに、本発明に従う第三の態様によれば、前記1級及び/又は2級アミノ基含有化合物は、1級及び/又は2級アミノ基を0.5~50mmol/gの割合で有していることを特徴とする。
【0012】
加えて、本発明の第四の態様は、前記1級及び/又は2級アミノ基含有化合物が、芳香族アミン化合物であることを特徴とする。
【0013】
そして、本発明に従う第五の態様は、前記1級及び/又は2級アミノ基含有化合物が、前記ポリイソシアネートの100質量部に対して、0.01~20質量部の割合において、含有せしめられていることにある。
【0014】
また、本発明の第六の態様は、前記触媒としての3級アミンが、アルコール性水酸基を有していることを特徴とするものである。
【0015】
さらに、本発明の第七の態様は、前記A液が、更に、ポリオールを含有していることを特徴とする。
【0016】
加えて、本発明に従う第八の態様は、前記A液及びB液が、それぞれ、25℃の温度下において400mPa・s以下の粘度を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
このように、本発明に従う地盤注入用薬液組成物においては、B液における必須の成分たるポリイソシアネートとして、芳香族ポリイソシアネートが用いられると共に、A液中の必須の成分たる触媒として、3級アミンを含有し、更にA液には、1級及び/又は2級アミノ基含有化合物が含有せしめられてなるものであるところから、それらA液とB液との反応を効果的に進行せしめ得て、夏場の高温(30~40℃)下での施工に際しても、反応初期において発泡が安定して進行せしめられ得ることとなり、以て、反応生成物(発泡体)の架橋が有利に促進され得ることとなるのであり、以て、反応生成物の強度等の特性の安定性を高めると共に、発泡体セルを均一にして、反応生成物の萎みを効果的に防止することが出来ることとなるのである。
【0018】
特に、本発明に従う地盤注入用薬液組成物の構成によれば、A液とB液との反応に際して、生じる反応生成物の強度を有利に確保しつつ、発泡せしめることが可能となるのであり、以て、発泡途中における強度を含んで、反応生成物の強度等の特性の安定性を効果的に高めると共に、発泡体セルを均一にして、特に高温時(30~40℃)での発泡体の萎みを効果的に抑制することが出来ることに加えて、発泡体中における架橋を促進させることによって、反応によって生じる発泡体たる反応生成物の圧縮強度を有利に高め得ることとなるのである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
要するに、本発明は、A液とB液とからなる2液型のウレタン系薬液組成物において、かかるA液には、必須の成分たるケイ酸塩水溶液に加えて、触媒としては3級アミンを用い、更に、そのような3級アミン触媒と併用してなる形態において、1級及び/又は2級アミノ基含有化合物を架橋剤として含有せしめると共に、B液における必須の成分たるポリイソシアネートとして、芳香族ポリイソシアネートを用いることとしたことにより、それらA液とB液との反応を効果的に進行せしめて、反応生成物(発泡体)をより一層安定して形成せしめ得るようにしたものであり、以て、所期の目的を有利に達成し得たところに、大きな特徴を有しているのである。
【0020】
そして、そのような本発明に従う薬液組成物を構成する2液のうちの一つであるA液において、その必須の成分の一つとして含有せしめられるケイ酸塩水溶液は、可溶性のケイ酸化合物の水溶液であって、所謂水ガラスとも、称されるものである。ここで、かかるケイ酸化合物としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸アンモニウム等を挙げることが出来るが、その中でも、本発明にあっては、入手が容易で、安価なケイ酸ナトリウム(ケイ酸ソーダ)が、好適に用いられることとなる。そして、ケイ酸ナトリウムを用いる場合においては、SiO2/Na2Oのモル比は、2.0~4.0の範囲内であることが望ましい。このモル比が2.0よりも小さくなると、1級及び/又は2級アミノ基含有化合物や反応触媒等の添加剤との相溶性が悪化し、ゲル状物の生成等が惹起され易くなるところから、長期保存が困難となるのである。また、モル比が4.0よりも大きくなると、液の分散安定性が低下し、更に凝固点が高くなって、冬季に使用出来なくなる等の問題を惹起する恐れがある。
【0021】
ところで、上述の如きケイ酸ナトリウム水溶液である水ガラスとしては、各種のものが市販されており、本発明にあっては、そのような市販品を適宜に選択して用いることが出来る。なお、ケイ酸ナトリウムの水溶液に関しては、JIS規格(JIS K 1408)にて規定され、1号、2号、3号等として知られているところであるが、また、このJIS規格に準拠して配合されたものであれば、4号や5号等や、1.5号や2.5号等の配合のものであっても、それらを用いることが可能である。更に、そのような水溶液の形態にある水ガラス中における固形成分の割合は、JIS規格の各号や、水ガラスの種類等に応じて種々異なるものとなるが、A液の安定性や固結特性等の観点から、一般に、20~60質量%程度とされ、好ましくは30~50質量%の割合の固形成分を含有する水ガラスが、有利に用いられることとなる。
【0022】
また、かかるA液には、B液との反応を促進させるための触媒が、必須の成分として含有せしめられるのであるが、本発明にあっては、特に、3級アミン触媒が有利に用いられることとなる。
【0023】
ここで、3級アミン触媒としては、水との接触により発泡が意図される場合において、ポリイソシアネートと水との反応を促進する作用を有する泡化触媒、ポリイソシアネートとポリオールとの反応を促進する作用を有する樹脂化触媒、更には、ポリイソシアネートの三量化を促進する作用を有するイソシアヌレート化触媒等があり、それらは、何れも、公知のものの中から、適宜に選択されることとなる。
【0024】
具体的には、泡化触媒としては、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン(分子量:173.3、沸点:198℃)、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン(分子量:146.2、沸点:207℃)、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル(分子量:160.3、沸点:189℃)、N,N,N’-トリメチルアミノエチルピペラジン(分子量:171.3、沸点:96℃/12mmHg)、N,N-ジメチルアミノエトキシエタノール(分子量:133.2、沸点:95℃/15mmHg)、トリエチルアミン(分子量:101.2、沸点:89.3℃)等を挙げることが出来る。また、樹脂化触媒には、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(分子量:116.2、沸点:120℃)、N,N,N’,N’-テトラメチルプロパンジアミン(分子量:130.2、沸点:145℃)、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン(分子量:172.3、沸点:210℃)、トリエチレンジアミン(分子量:112.2、沸点:174℃)、33%トリエチレンジアミン・67%ジプロピレングリコール(分子量:112.2、沸点:199℃)、N,N-ジメチルアミノヘキサノール(分子量:145.3、沸点:117℃/12mmHg)、N,N-ジメチルアミノエタノール(分子量:89.1、沸点:133℃)、N-メチル-N’-ヒドロキシエチルピペラジン(分子量:144.2、沸点:55℃/1.5mmHg)、N-メチルモルフォリン(分子量:101.2、沸点:116℃)、1-メチルイミダゾール(分子量:82.1、沸点:198℃)、1,2-ジメチルイミダゾール(分子量:96.1、沸点:205℃)等が挙げられる。更に、イソシアヌレート化触媒としては、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(分子量:265.4、沸点:135℃/1mmHg)、N,N’,N”-トリス(ジメチルアミノプロピル)-ヘキサヒドロ-s-トリアジン(分子量:342.6、沸点:141℃)等が挙げられる。
【0025】
これらの触媒は、単独で使用しても、又は2種以上を併用しても、何等差し支えない。更に、これらの中でも、泡化触媒又は樹脂化触媒が好適に用いられる。特に、これら3級アミンの中でも、アルコール性水酸基を有するものが、本発明の目的をよりよく達成する上において、有利に用いられることとなる。また、かかる3級アミンの分子量が低くなると、揮発し易く、発泡時の反応熱や施工環境下における気温等によって、臭気を発生する問題を惹起するようになるところから、分子量が104以上、好ましくは110以上である3級アミンが、好適に用いられる。更に、発泡時の反応熱に基因する臭気の発生を抑えるべく、常圧時における沸点が100℃以上である3級アミンが、有利に用いられることとなる。
【0026】
なお、かくの如きA液に含有せしめられる触媒としての3級アミンの量としては、一般に、ポリイソシアネートの100質量部に対して0.05~5質量部の割合において、好ましくは0.1~3質量部の割合において、適宜に決定されることとなる。なお、この触媒としての3級アミンの含有量が0.05質量部よりも少なくなると、反応に対する寄与が低下し、反応生成物の強度を充分に確保し得なくなる問題があり、一方、5質量部よりも多くなると、反応が進み過ぎて、異常反応が惹起され、注入作業中に薬液が固化し、充分な発泡を行い難くなる等の問題が惹起されるようになる。
【0027】
また、かかるA液には、必要に応じて、触媒として、上記した3級アミンに加えて、公知の金属触媒や第四アンモニウム塩触媒等を、適宜に含有せしめることも可能である。そこにおいて、金属触媒としては、公知のものを特に制限なく用いることが出来、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、錫、鉛、ビスマス、亜鉛、鉄、ニッケル、ジルコニウム、コバルト等の有機酸金属塩や有機金属錯体を用いることが出来る。そして、その中で、有機酸金属塩としては、酢酸、オクチル酸、ネオデカン酸、ナフテン酸、ロジン酸等と上記金属との塩が挙げられ、また有機金属錯体としては、アセチルアセトン等と上記金属との錯体が挙げられる。具体的には、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、オクチル酸カリウム、オクチル酸ビスマス、オクチル酸鉛、オクチル酸鉄、オクチル酸錫、オクチル酸カルシウム、オクチル酸亜鉛、オクチル酸ジルコニウム、ネオデカン酸ビスマス、ネオデカン酸亜鉛、ネオデカン酸鉛、ネオデカン酸コバルト、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウリレート;アセチルアセトン鉄、アセチルアセトン亜鉛、アセチルアセトンジルコニウム、アセチルアセトンニッケル、アセチルアセトン錫等を挙げることが出来る。これらの金属塩や金属錯体は、その取扱い性の向上のため、ミネラルスピリット、有機酸、グリコール類、エステル類等の希釈剤に溶解させたものとして、用いてもよい。また、これらの金属触媒は、単体で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、好ましくは、カリウム、錫、鉛、ビスマス又は亜鉛の酢酸塩、オクチル酸塩、ネオデカン酸塩、ラウリル酸塩や、アセチルアセトン錯体が挙げられ、より好ましくはカリウム、錫、ビスマスを金属として用いた触媒が、好適に用いられることとなる。
【0028】
また、第四アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、プロピルトリメチルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、ペンチルトリメチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、ヘプチルトリメチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウム、ノニルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、ウンデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、トリデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム等の脂肪族アンモニウム化合物;(2-ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウム、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム、トリメチルアミノエトキシエタノール等のヒドロキシアンモニウム化合物;1-メチル-1-アザニア-4-アザビシクロ[2,2,2]オクタニウム、1,1-ジメチル-4-メチルピペリジニウム、1-メチルモルホリニウム、1-メチルピペリジニウム等の脂環式アンモニウム化合物等が、挙げられる。これらの中でも、触媒活性に優れ、工業的に入手可能なところから、テトラメチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、(2-ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウム、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム、1-メチル-1-アザニア-4-アザビシクロ[2,2,2]オクタニウム、及び1,1-ジメチル-4-メチルピペリジニウムが、好ましく用いられることとなる。
【0029】
なお、かくの如き第四アンモニウム塩を構成する有機酸基又は無機酸基としては、例えば、ギ酸基、酢酸基、オクチル酸基、蓚酸基、マロン酸基、コハク酸基、グルタル酸基、アジピン酸基、安息香酸基、トルイル酸基、エチル安息香酸基、メチル炭酸基、フェノール基、アルキルベンゼンスルホン酸基、トルエンスルホン酸基、ベンゼンスルホン酸基、リン酸エステル基等の有機酸基や、ハロゲン基、水酸基、炭酸水素基、炭酸基等の無機酸基が挙げられる。これらの中でも、触媒活性に優れ且つ工業的に入手可能なことから、ギ酸基、酢酸基、オクチル酸基、メチル炭酸基、ハロゲン基、水酸基、炭酸水素基、炭酸基が好ましい。
【0030】
また、このような第四アンモニウム塩からなる触媒としては、各種のものが市販されており、例えば、U-CAT18X、U-CAT2313(サンアプロ社製)、カオーライザーNo.410、カオーライザーNo.420(花王株式会社製)等を挙げることが出来る。
【0031】
加えて、本発明に従うA液には、必須成分の更なる他の一つとして、1級及び/又は2級のアミノ基を有するアミン化合物である1級及び/又は2級アミノ基含有化合物が、架橋剤として含有せしめられることとなる。ここで、1級及び/又は2級アミノ基含有化合物としては、1級及び/又は2級アミノ基を結合・含有する化合物であれば、特に限定されるものではなく、例えば、脂肪族アミン化合物、脂肪族ポリアミン化合物、芳香族アミン化合物、芳香族ポリアミン化合物、アミノ酸、アルカノールアミン等を挙げることが出来る。
【0032】
具体的には、脂肪族アミン化合物としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン等の直鎖状アミノ基含有化合物や、シクロヘキシルアミン等の脂環式アミノ基含有化合物、ピペリジン等の環状アミノ基含有化合物を挙げることが出来、また、脂肪族ポリアミンとしては、ブタンジアミン、へキサンジアミン、オクタンジアミン、ポリエーテルアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヒドラジン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ジエチレントリアミン等の直鎖状アミノ基含有化合物や、シクロヘキサンジアミン、ノルボルネンジアミン、4,4’-ジアミノシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環式アミノ基含有化合物、ピペラジン等の環状アミノ基含有化合物、キシリレンジアミン等の芳香環を有する脂肪族アミノ基含有化合物を挙げることが出来る。更に、芳香族アミン化合物としては、アニリン、トルイジン、アニシジン、メチルアニリン等のアミノ基含有化合物を挙げることが出来る。また、芳香族ポリアミン化合物としては、トルエンジアミン、メチレンジアニリン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、トリメチルフェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン、4,4’-メチレンビス(N-sec-ブチルアニリン)、アミノベンジルアミン、メチレンビス(エチルメチルアニリン)等のアミノ基含有化合物を挙げることが出来る。更に、アミノ酸としては、リシン、バリン、アスパラギン等の分子内にカルボキシル基とアミノ基を含有する化合物を挙げることが出来、加えて、アルカノールアミン化合物としては、エタノールアミン、ヘキサノールアミン、ジエタノールアミン等の、分子内にアミノ基とヒドロキシル基を有する化合物を挙げることが出来る。加えて、水、エチレングリコール、プロピレングリコール等にプロピレンオキサイドおよび/またはエチレンオキサイドを付加重合して得たポリオキシアルキレングリコール類のヒドロキシル基をアミノ基に変換して得られるポリオキシアルキレンジアミンや、グリセリン、トリメチロールプロパン等にプロピレンオキサイドおよび/またはエチレンオキサイドを付加重合して得たポリオキシアルキレントリオール類のヒドロキシル基をアミノ基に変換して得られるポリオキシアルキレントリアミンを挙げることが出来る。そして、これら1級及び/又は2級のアミノ基を有するアミン化合物は、単独で用いられる他、2種類以上を組み合わせて用いることも出来る。
【0033】
また、本発明にあっては、上述の如き1級及び/又は2級アミノ基含有化合物は、架橋剤としての機能を有効に発揮せしめる上において、1分子内に二つ以上の1級及び/又は2級アミノ基を有するポリアミン化合物であることが望ましく、特に、その反応性と難燃性等の特性を向上せしめる上において、芳香環を有するアミン化合物(芳香族アミン化合物)であることが好ましく、より望ましくは、芳香族ポリアミン化合物であり、中でも、芳香環に結合しているアミノ基の隣の位置の少なくとも一方が、アルキル基で置換されてなる構造の芳香族ポリアミン化合物が、特に好ましく用いられることとなる。また、かかる1級及び/又は2級アミノ基含有化合物の中で、1級アミノ基を含有する化合物が、より好ましく用いられることとなる。
【0034】
加えて、本発明にあっては、上述の如き1級及び/又は2級アミノ基含有化合物の中でも、1級及び/又は2級アミノ基量が0.5~50mmol/g、好ましくは1~20mmol/g、より好ましくは3~15mmol/gである化合物が、有利に用いられることとなる。かかる1級及び/又は2級アミノ基量が0.5mmol/gよりも少なくなると、本発明の目的を充分に達成し難くなる恐れがあるからであり、また50mmol/gよりも多くなると、架橋反応が進み過ぎて、異常反応が惹起され、注入作業中において薬液が固化して、有効な発泡体が得られなくなる等の問題が惹起される恐れがある。
【0035】
さらに、かくの如き1級及び/又は2級アミノ基含有化合物は、一般に、B液中のポリイソシアネートの100質量部に対して、0.01~20質量部の割合となるように、A液中に含有せしめられることが望ましく、好ましくは0.05~10質量部、より好ましく0.1~5質量部の割合となるように含有せしめられることとなる。なお、その含有量が、0.01質量部よりも少なくなると、1級及び/又は2級アミノ基含有化合物におけるアミノ基と、B液中のポリイソシアネートにおけるイソシアネート基との反応が不充分となり、得られる固結体の強度が不充分となったり、かかる反応が充分に進行しないことによって、反応生成物(発泡体)の形成が不充分となる恐れがある。また、その含有量が20質量部を超えるようになると、反応生成物における架橋が進み過ぎて、異常反応が惹起され、注入作業中において固化が生じて、目的とする発泡体が形成され得なくなる恐れが惹起される。
【0036】
なお、本発明に従うA液には、上述の如きアミン化合物に加えて、更に、公知の各種の活性水素基含有化合物を、必要に応じて含有せしめることが出来、中でも、ポリイソシアネート成分と反応し得る、公知の各種のポリオールが、好適に用いられることとなる。
【0037】
そして、そのようなポリオールとしては、特に限定されるものではなく、従来から地山固結用薬液におけるポリオール成分として用いられているものが、同様に使用され得るところであり、例えば、公知のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等を挙げることが出来る。それらのポリオールは、単独で使用することが出来る他、適宜に組み合わせて併用することも可能である。また、ポリオールの添加、配合量としては、本発明の趣旨を逸脱しないように、適宜の割合が選定されることとなるが、一般に、ケイ酸塩水溶液の100質量部に対して、40質量部程度以下、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下とされる。
【0038】
なお、上述せるポリエーテルポリオールとしては、特に限定されるものではないが、例えば、少なくとも2個以上の活性水素基を有する、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類;エチレンジアミン等のアミン類;エタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類等の化合物を出発原料として、これとエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとの付加反応により製造されたもの等を用いることが出来る。また、ポリエステルポリオールにあっても、特に限定されるものではないが、例えば、多価アルコールと、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ダイマー酸等のポリカルボン酸とを反応させて得られるポリカルボン酸系ポリエステルポリオール、ラクトン等を開環重合させて得られるラクトン系ポリエステルポリオール、ひまし油系ポリエステルポリオール等を挙げることが出来る。
【0039】
一方、本発明の対象とする地盤注入用薬液組成物を構成する2液のうちの、他の一つであるB液の必須の構成成分であるポリイソシアネートとしては、本発明にあっては、上記したA液との反応により得られる反応生成物(発泡体)の強度や反応速度等の観点から、芳香族ポリイソシアネートが用いられることとなるのである。ここで、芳香族ポリイソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基(NCO基)を有する有機系イソシアネート化合物であり、公知の各種のものが適宜に選択されて、用いられるところであり、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(クルードMDI)、トリレンジイソシアネート、ポリトリレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等を挙げることが出来、また、それら芳香族ポリイソシアネートのプレポリマーやイソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体等を挙げることができる。これらのポリイソシアネート成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、一般的には、反応性や経済性、取扱性等の観点から、MDIやクルードMDIが好適に用いられることとなる。なお、B液中のポリイソシアネートとして、かかる芳香族ポリイソシアネートのみが用いられる他、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、他の公知のポリイソシアネート成分を併用することも可能である。
【0040】
そして、そのようなポリイソシアネートとしての芳香族ポリイソシアネートは、B液中に、一般に50~100質量%の割合において、好ましくは70~100質量%、より好ましくは80~100質量%の割合において、含有せしめられることとなる。この芳香族ポリイソシアネートの含有量が50質量%よりも少なくなると、反応生成物の強度が低下する問題があり、そのために、B液における芳香族ポリイソシアネートの割合は高い方が望ましく、更にはそのような芳香族ポリイソシアネートのみにて、B液を構成することも可能である。
【0041】
ところで、本発明に従う地山固結用薬液を構成する、上述の如きA液及びB液には、その使用目的に応じて、従来と同様な添加剤を添加せしめることが可能である。例えば、A液に対する添加剤としては、発泡剤、整泡剤、難燃剤、減粘剤等を挙げることが出来る。このようなA液に対する添加剤は、ポリイソシアネートの100質量部に対して0.1~30質量部、好ましくは0.5~20質量部の割合において、用いられることとなる。また、B液に対する添加剤としては、整泡剤、難燃剤、減粘剤等を挙げることが出来、その中で、整泡剤は、ポリイソシアネートの100質量部に対して0.05~5質量部、好ましくは0.1~3質量部の割合となるように用いられ、そして減粘剤は、ポリイソシアネートの100質量部に対して0.5~60質量部、好ましくは1~40質量部の割合となるように用いられ、また難燃剤は、ポリイソシアネートの100質量部に対して1~50質量部、好ましくは5~40質量部の割合となるように用いられることとなる。
【0042】
それら添加剤の中で、発泡剤としては、水、炭化水素、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィン等の公知のものを用いることが可能である。この発泡剤は、特に限定されるものではないが、水が好適に用いられる。この水は、A液を構成するケイ酸塩水溶液からも供給されるものであって、B液のポリイソシアネートと反応して、炭酸ガスを発生するものであるところから、発泡剤として機能するものである。
【0043】
また、整泡剤は、A液とB液との反応によって形成されるフォームのセル構造を均一に整えるために用いられるものである。この整泡剤としては、例えばシリコーン、非イオン系界面活性剤、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、ポリシロキサンオキシアルキレン共重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ヒマシ油エチレンオキシド付加物、ラウリル脂肪酸エチレンオキシド付加物等が挙げられ、これらの中でも、シリコーン及び非イオン系界面活性剤が好ましく用いられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上を併用して、用いられてもよい。また、整泡剤の中では、シリコーン系整泡剤がより好ましく、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、ポリシロキサンオキシアルキレン共重合体等が好ましい。
【0044】
さらに、難燃剤としては、例えば臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、ハロゲン化リン酸エステル、無機系難燃剤等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上を併用して用いられてもよい。これらの中でも、環境への負荷が少なく、発泡性組成物の減粘剤としても機能する点で、リン酸エステルおよびハロゲン化リン酸エステルが好ましく用いられる。なお、リン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリキシレニルホスフェート等が挙げられる。また、ハロゲン化リン酸エステルとしては、例えば、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(2クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、テトラキス(2クロロエチル)ジクロロイソペンチルジホスフェート、ポリオキシアルキレンビス(ジクロロアルキル)ホスフェート等が挙げられる。
【0045】
加えて、減粘剤は溶剤として用いられ、A液又はB液に溶解されて、それらの液を減粘する働きを有するものであって、そのような機能を有するものである限りにおいて、特に限定されるものではなく、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のエーテル類、プロピレンカーボネート等の環状エステル類、ジカルボン酸メチルエステル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、石油系炭化水素類等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上を併用して、用いられてもよい。
【0046】
ところで、本発明に従って調製されるA液及びB液は、それぞれ、25℃の温度下における粘度が400mPa・s以下、好ましくは5~300mPa・s、より好ましくは10~200mPa・sとなるように、調整されることとなる。この粘度が400mPa・sよりも高くなると、地山へ注入するときの圧力損失が増大して、注入作業が困難となる等の問題を惹起するようになる。なお、そのような粘度が低くなり過ぎると、水に希釈され易くなり、排水の白濁等の問題が惹起され易くなるようになる。
【0047】
また、かくの如きA液とB液とから構成される本発明に従う地盤注入用薬液組成物の使用に際しては、それら両液が、使用時に混合されて、目的とする地盤、岩盤等に対して、公知の手法に従って注入され、反応硬化せしめられることにより、高強度の固結体が形成されることとなるのである。なお、かかるA液とB液との混合比(A:B)は、A液中の活性酸素基含有量とB液中のNCO基含有量によって適宜に変化せしめられることとなるが、一般に、質量基準にて、A:B=2:1~1:3、好ましくは、1:1~1:2の範囲内において、採用されることとなる。また、それらA液やB液の使用方法についても、それらの使用の直前に、2液の混合が確実に行なわれ得る手法であれば、特に制限はなく、従来から公知の各種の注入手法が、適宜に採用されることとなる。
【0048】
そして、それらA液とB液とを混合したとき、本発明に従う薬液組成物にあっては、20℃において、発泡倍率が、一般に20倍以下、好ましくは3~15倍である硬化反応生成物(発泡体)が形成されるように、構成されることとなる。なお、この発泡倍率が高くなり過ぎると、生成する発泡体の圧縮強度等の特性が低下する等の問題を惹起する恐れがある。
【0049】
さらに、A液とB液とを混合して、発泡させたときの反応時間、換言すればライズタイムは、300秒以内であることが好ましく、その下限は20秒程度である。このライズタイムが300秒よりも長くなると、地山に注入後、固結するまでに、薬液が湧水中に流出して、水の白濁や泡立ちを惹起する等の問題が生じるようになる。なお、ライズタイムが余りにも短く、例えば、20秒よりも短くなると、反応が進み過ぎて、薬液の注入管を閉塞させる問題や、充分に地山に浸透させ難くなる等の問題が惹起されるようになるので、注意が必要である。
【実施例】
【0050】
以下に、本発明の実施例や比較例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0051】
なお、以下の実施例及び比較例において得られたA液とB液の特性(粘度)と共に、それらA液とB液とを混合して反応硬化せしめたときの反応生成物の発泡倍率とそのライズタイム、発泡倍率比、反応生成物の圧縮強度や酸素指数については、それぞれ、以下の手法に従って、測定乃至は評価した。また、以下に示す「%」及び「部」は、何れも、質量基準にて示されるものである。
【0052】
(1)粘度
実施例及び比較例において得られたA液及びB液の粘度を、それぞれ、JIS-K-7117-1に準拠して、B型粘度測定装置を用いて、測定した。
【0053】
(2)発泡倍率及びライズタイム(反応時間)
下表に示される各種のA液とB液とを、それぞれ、液温:20℃又は35℃に調整した後、下記に示される混合比において、1Lのカップに計100mlとなるように量り取り、ハンドミキシングにて400rpmで10秒間撹拌した。そして、その撹拌開始から発泡高さが最も高くなる時間までを、ライズタイム(反応時間)とした。また、かかる硬化反応終了後の反応生成物の発泡高さを目視にて測定し、発泡倍率を求めた。更に、その求められた20℃での発泡倍率と35℃での発泡倍率の倍率比を算出した。なお、20℃/35℃発泡倍率比が0.7~1.3の範囲内において、温度変化に対して安定した発泡体が得られることとなる。
【0054】
(3)高温(35℃)発泡時の発泡安定性
下表に示される組成のA液とB液とを、それぞれ、液温:35℃となるように調整した後、各表に示される混合比において、1Lのカップに合計100mlとなるように投入して、撹拌しつつ、発泡硬化させる過程を観察し、反応終了後の発泡倍率と発泡途中の最大の発泡倍率とを比較し、最大発泡倍率より収縮が10%以内のものを「◎」、20%以内のものを「○」、20%を超えるものを「×」として、その発泡安定性を評価した。
【0055】
(4)圧縮強度
20℃の温度に調整されたA液とB液とを、下表に示される混合比で、全量が100mlとなるよう計量して、混合した。次いで、かかる混合の後、直ちに、内径:50mm、高さ:100mmの有底円筒型内に、発泡倍率が3倍量となるように、所定量のA液及びB液の混合物を投入し、蓋をした後、2時間以上養生した。その後、脱型した反応生成物を、20℃にて24時間以上養生し、JIS-K-7220:2006に準拠して、圧縮強度の測定を行なった。
【0056】
(5)酸素指数
上記の圧縮強度の測定に準備された発泡体を用いて、10mm×10mm×150mmのサイズの試験体を切り出し、JIS-K-7201-2に準拠して、酸素指数(%)を測定した。この酸素指数は、発泡体の難燃性を評価するものであって、その値が27%以上であれば、良好な難燃性を有しているものと判断される。
【0057】
先ず、以下の実施例及び比較例において用いられるA液又はB液の構成成分として、以下の各種原料を、準備した。
ケイ酸塩水溶液
:1号ケイ酸ソーダI(富士化学株式会社製品、モル比:2.1、固形分:48% に水を添加して固形分約40%に調整したもの)
:1号ケイ酸ソーダII(富士化学株式会社製品、モル比:2.1、固形分:48% に水を添加して固形分約45%に調整したもの)
:2号ケイ酸ソーダ(富士化学株式会社製品、モル比:2.5、固形分:40%)
3級アミン触媒
:カオーライザーNo.26(花王株式会社製品、N,N-ジメチルアミノエトキ シエタノール、MW:133.2)
:カオーライザーNo.1(花王株式会社製品、N,N,N’,N’-テトラメチ ルヘキサメチレンジアミン、MW:172.3)
1級/2級アミノ基含有化合物
:ポリエーテルアミンT403(ポリエーテルアミン、BASF社製品、分子量: 400、官能基:NH2 ×3)
:エタキュア100(ジエチルトルエンジアミン、アルベマール社製品、分子量: 178、官能基:NH2 ×2)
:エタキュア300(ジエチルチオトルエンジアミン、アルベマール社製品、分子 量:214、官能基:NH2 ×2)
:エタキュア420[4,4’-メチレンビス(N-sec-ブチルアニリン)、 アルベマール社製品、分子量:310、官能基:NH×2]
:n-オクチルアミン[東京化成工業株式会社製品、分子量129.3、官能基: NH2×1]
ポリオール
:PG(プロピレングリコール、東京化成工業株式会社製品)
:PP400(三洋化成工業株式会社製品、サンニックスPP400、ポリエーテ ルポリオール、分子量:400、官能基数:2)
:PP1000(三洋化成工業株式会社製品、サンニックスPP1000、ポリエ ーテルポリオール、分子量:1000、官能基数:2)
:EDP1100(株式会社ADEKA製品、ADEKAポリオールEDP110 0、ポリエーテルポリオール、分子量:1100、官能基数:4)
芳香族ポリイソシアネート
:ルプラネートM11S(BASF INOACポリウレタン株式会社製品、ポリ メリックMDI)
:ルプラネートM20S(BASF INOACポリウレタン株式会社製品、ポリ メリックMDI)
:プレポリマー(ルプラネートM11Sの100部に、上記したPP1000を5 部添加して、70℃の温度で3時間反応させて得られたもの)
脂肪族ポリイソシアネート
:タケネートD-170N(三井化学株式会社製品、ヘキサメチレンジアミンジイ ソシアネートのイソシアヌレート体)
整泡剤
:L-6970(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会 社製品、シリコーン系整泡剤)
減粘剤
:PC(東京化成工業株式会社製品、プロピレンカーボネート)
難燃剤
:TMCPP[大八化学工業株式会社製品、トリス(2-クロロプロピル)ホスフ ェート]
【0058】
(実施例1~19)
-A液の調製-
上記で準備した各種の原料、即ち、ケイ酸塩水溶液、3級アミン触媒、1級/2級アミノ基含有化合物及びポリオールを、それぞれ、下記表1~表4に示される各種の組み合わせ及び配合割合において、均一に混合せしめて、実施例1~19に係る各種のA液配合組成物を、それぞれ、調製した。そして、その得られたA液配合組成物の25℃での粘度を測定し、その結果を、下記表1~表4に示した。
【0059】
-B液の調製-
上記で準備した各種の原料、即ち芳香族ポリイソシアネート、整泡剤、減粘剤及び難燃剤を、下記表1~表4に示される各種の組み合わせ及び配合割合において、均一に混合せしめて、実施例1~19に係る各種のB液配合組成物を、それぞれ、調製した。そして、この得られたB液配合組成物の25℃での粘度を測定し、その結果を、下記表1~表4に示した。
【0060】
-A液とB液の反応-
上記で得られたA液とB液とを、表1~表4に示される混合比率において、常温下(20℃)で又は高温下(35℃)で均一に混合して、反応せしめた後、前述の評価手法に従って、各種評価試験を行ない、それらの結果を、下記表1~表4に示した。
【0061】
(比較例1)
実施例1において、1級/2級アミノ基含有化合物を添加しないこと以外は、実施例1と同様の手法に従って、それぞれ試験を行なった。そして、その得られた結果を、下記表5に示した。
【0062】
(比較例2)
実施例13において、1級/2級アミノ基含有化合物を添加しないこと以外は、実施例13と同様の手法に従って、それぞれ試験を行なった。そして、その得られた結果を、下記表5に示した。
【0063】
(比較例3)
実施例1において、3級アミン触媒を添加しないこと以外は、実施例1と同様の手法に従って、それぞれ試験を行なった。そして、その得られた結果を、下記表5に示した。
【0064】
(比較例4)
実施例1において、芳香族ポリイソシアネートに代えて脂肪族ポリイソシアネートであるタケネートD-170Nを用いたこと以外は、実施例1と同様の手法に従って、それぞれ試験を行い、その得られた結果を、下記表5に示した。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
かかる表1~表4の結果より明らかなように、実施例1~19における、本発明に従うA液とB液からなる薬液組成物にあっては、何れも、反応時間が300秒以下となる、反応活性に優れたものであると共に、約3倍以上の発泡倍率において、高い圧縮強度と優れた酸素指数(難燃性)を有する硬化生成物(発泡体)を形成し得るものであり、しかも、35℃の高温発泡時における反応時間や発泡倍率に優れており、それによって、20℃/35℃発泡倍率比が0.7~1.3の範囲内となるものであって、温度変化に対して安定した発泡体を形成せしめ得る結果を示すものであった。
【0071】
これに対して、表5に示される如く、比較例1~4において調製された、A液とB液からなる薬液組成物にあっては、圧縮強度や酸素指数(難燃性)に十分な硬化生成物(発泡体)が得られず、しかも、35℃での高温発泡時の発泡体の収縮が著しいことに加えて、20℃/35℃発泡倍率比が0.7~1.3の範囲から外れて、温度変化に対する安定した発泡体の形成を期待し難いものであることが明らかとなった。なお、比較例3に係る薬液組成物にあっては、3級アミン触媒が添加されていないために、得られる硬化生成物(発泡体)は崩れやすくて、脆い状態のものとなり、圧縮強度や酸素指数の測定が出来ないものであった。また、脂肪族ポリイソシアネートを用いた比較例4においては、常温発泡時のライズタイムが300秒を越えるものとなり、反応時間が長い問題に加えて、発泡倍率が低く、且つ圧縮強度が充分でない等の問題を有するものであった。