(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-17
(45)【発行日】2025-06-25
(54)【発明の名称】制御バルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 31/54 20060101AFI20250618BHJP
F16D 25/08 20060101ALI20250618BHJP
【FI】
F16K31/54
F16D25/08 H
(21)【出願番号】P 2021142665
(22)【出願日】2021-09-01
【審査請求日】2024-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】江口 康彦
(72)【発明者】
【氏名】橋本 一樹
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-047381(JP,A)
【文献】実開昭52-046367(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/54
F16D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レリーズピストン、シリンダ、及びエア室を有するクラッチレリーズ装置を制御するための制御バルブであって、
長手方向に延び、前記長手方向に移動可能に配置される第1ラックと、
前記長手方向に延び、前記長手方向に移動可能に配置される第2ラックと、
前記第1ラックと前記第2ラックとの間に配置され、前記第1ラック及び前記第2ラックに噛み合い、中立位置を中心に前記長手方向に移動可能に配置されるピニオンギアと、
前記ピニオンギアが前記中立位置にあるとき閉鎖状態となり、前記ピニオンギアが前記中立位置から前記長手方向に移動したとき連通状態となるように構成されたバルブ本体と、
を備え、
前記バルブ本体は、前記連通状態において、前記レリーズピストンを動作させるように前記エア室を外部と連通させ、前記閉鎖状態において、前記レリーズピストンを停止させるように前記エア室を閉鎖するように構成され、
前記第1ラックは、クラッチ操作によって、所定の変位量を移動して、前記ピニオンギアを前記中立位置から前記長手方向に移動させるように構成され、
前記第2ラックは、前記レリーズピストンの移動に伴い、前記所定の変位量を、前記第1ラックとは反対方向に移動するように構成される、
制御バルブ。
【請求項2】
前記連通状態は、前記エア室とエア源とを連通する第1連通状態を含み、
前記バルブ本体は、前記ピニオンギアが前記中立位置から前記長手方向
の一方の側である長手方向第1側にある第1位置に移動すると、前記第1連通状態となり、
前記第1ラックは、クラッチ操作がオン状態のとき、前記ピニオンギアを前記中立位置から前記第1位置に移動させる、
請求項1に記載の制御バルブ。
【請求項3】
前記連通状態は、前記エア室と大気圧部とを連通する第2連通状態を含み、
前記バルブ本体は、前記ピニオンギアが前記中立位置から前記長手方向
の他方の側である長手方向第2側にある第2位置に移動すると、前記第2連通状態となり、
前記第1ラックは、クラッチ操作がオフ状態のとき、前記ピニオンギアを前記中立位置から前記第2位置に移動させる、
請求項
2に記載の制御バルブ。
【請求項4】
前記ピニオンギアとともに前記長手方向に移動可能に配置され、前記バルブ本体を押圧して前記連通状態と前記閉鎖状態との間で前記バルブ本体を切り替える、バルブピストンをさらに備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の制御バルブ。
【請求項5】
前記バルブ本体は、第1スリーブ、及び、第2スリーブ、を有し、
前記第1スリーブは、前記ピニオンギアが前記中立位置から前記長手方向
の一方の側である長手方向第1側にある第1位置に移動する場合に開き、
前記第2スリーブは、前記ピニオンギアが前記中立位置から前記長手方向
の他方の側である長手方向第2側にある第2位置に移動する場合に開く、
請求項1から4のいずれか1項に記載の制御バルブ。
【請求項6】
前記バルブ本体は、空気が排出される際の音を抑制するサイレンサー構造を含む、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の制御バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のクラッチ装置において動力伝達状態を解除する操作(以下、レリーズ操作と称する)をするために、クラッチレリーズ装置が設けられている。レリーズ装置は、たとえばクラッチペダルの操作によりスレーブシリンダを作動させ、これによってレリーズ軸受が軸方向に移動する。このレリーズ軸受の移動によって、クラッチ装置を構成するダイヤフラムスプリングの中心部が押圧され、プレッシャプレートによるクラッチディスクへの押圧力が解除される。すなわち、クラッチ装置における動力伝達状態が解除される。
【0003】
また、クラッチレリーズ装置を大型化することなくレリーズ操作時における踏力を軽減するために、Concentric Slave Cylinder(CSC)式のレリーズ装置が用いられている。CSC式のレリーズ装置は、トランスミッションの入力軸と同軸で設けられたレリーズシリンダ及びレリーズピストンを有している。そして、レリーズシリンダに油圧や空圧を供給してレリーズピストンを作動することによって、レリーズ軸受が軸方向に移動する。以下、空圧により作動するCSC方式のレリーズ装置を空圧式CSCという。
【0004】
空圧式CSCを有するクラッチ装置は、レリーズベアリング装置を制御する制御バルブを含む。制御バルブは、エア源に接続されており、クラッチペダルの踏み込み量に応じてクラッチレリーズ装置に供給される空気の量を調整することにより、クラッチレリーズ装置の位置を制御する。
【0005】
特開平10-47381号公報(特許文献1)は、空圧式CSCにおいて油圧バルブシリンダを用いた制御バルブを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
油圧バルブシリンダを用いた制御バルブによりクラッチレリーズ装置を制御すると、油圧シリンダからの油漏れが発生してクラッチが滑る恐れがある。
【0008】
本発明の課題は、油漏れによるクラッチの滑りを防止した、制御バルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の一側面に係る制御バルブは、レリーズピストン、シリンダ、及びエア室を有するクラッチレリーズ装置を制御するための制御バルブである。制御バルブは、第1ラックと、第2ラックと、ピニオンギアと、バルブ本体と、を備える。第1ラックは、長手方向に移動可能に配置される。第2ラックは、長手方向に移動可能に配置される。ピニオンギアは、第1ラックと第2ラックとの間に配置される。ピニオンギアは、第1ラック及び第2ラックに噛み合う。ピニオンギアは、中立位置を中心に長手方向に移動可能に配置される。バルブ本体は、ピニオンギアが中立位置にあるとき閉鎖状態となり、ピニオンギアが中立位置から長手方向に移動したとき連通状態となるように構成されている。バルブ本体は、連通状態において、レリーズピストンを動作させるようにエア室を外部と連通させ、閉鎖状態において、レリーズピストンを停止させるようにエア室を閉鎖するように構成される。第1ラックは、クラッチ操作によって、所定の変位量を移動して、ピニオンギアを中立位置から長手方向に移動させるように構成される。第2ラックは、レリーズピストンの移動に伴い、所定の変位量を、第1ラックとは反対方向に移動するように構成される。
【0010】
このように構成された制御バルブでは、クラッチ操作により、第1ラックは、所定の変位量を移動する。ピニオンギアは第1ラックに噛み合っているため、ピニオンギアも中立位置から長手方向に移動する。これによりバルブ本体も閉鎖状態から連通状態となる。これにより、エア室が外部と連通し、レリーズピストンが移動する。レリーズピストンの移動に伴い、第2ラックが第1ラックとは反対方向に上記所定の変位量を移動する。ピニオンギアは第2ラックに噛み合っているため、ピニオンギアも長手方向に移動して中立位置に戻る。これによりバルブ本体も連通状態から閉鎖状態になり、レリーズピストンの移動が停止する。
【0011】
以上の動作により、制御バルブは、クラッチ操作に対するレリーズピストンの位置を制御して、クラッチレリーズ装置を制御することができる。また、上記のように構成された制御バルブは油圧バルブシリンダを用いないため、油圧シリンダからの油漏れによるクラッチの滑りを防止することができる。
【0012】
(2)好ましくは、連通状態は、エア室とエア源とを連通する第1連通状態を含む。バルブ本体は、ピニオンギアが中立位置から長手方向第1側にある第1位置に移動すると、第1連通状態となる。第1ラックは、クラッチ操作がオン状態のとき、ピニオンギアを中立位置から第1位置に移動させる。
【0013】
(3)好ましくは、連通状態は、エア室と大気圧部とを連通する第2連通状態を含む。バルブ本体は、ピニオンギアが中立位置から長手方向第2側にある第2位置に移動すると、第2連通状態となる。第1ラックは、クラッチ操作がオフ状態のとき、ピニオンギアを中立位置から第2位置に移動させる。
【0014】
(4)好ましくは、制御バルブは、バルブピストンをさらに備える。バルブピストンは、ピニオンギアとともに長手方向移動可能に配置される。バルブピストンは、バルブ本体を押圧して連通状態と閉鎖状態との間でバルブ本体を切り替える。
【0015】
(5)好ましくは、バルブ本体は、第1スリーブ、及び、第2スリーブ、を有する。第1スリーブは、ピニオンギアが中立位置から長手方向第1側にある第1位置に移動する場合に開く。第2スリーブは、ピニオンギアが中立位置から長手方向第2側にある第2位置に移動する場合に開く。
【0016】
(6)好ましくは、バルブ本体は、サイレンサー構造を含む。サイレンサー構造は、空気が排出される際の音を抑制する。
【発明の効果】
【0017】
以上のような本発明では、油漏れによるクラッチの滑りを防止した、制御バルブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態である制御バルブ及びクラッチレリーズ装置の断面図。
【
図2】本発明の一実施形態である制御バルブの動作を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[全体構成]
図1は、本発明の一実施形態である制御バルブ100及びクラッチレリーズ装置200の断面図である。制御バルブ100は、クラッチレリーズ装置200に用いられる。クラッチ装置は、エンジン側のフライホイール(図示せず)からトランスミッション入力シャフト(図示せず)にトルクを伝達及び遮断するための装置である。制御バルブ100とクラッチレリーズ装置200とは、エア配管(図示せず)を介して接続される。クラッチレリーズ装置200の上側には、クラッチ装置が配置されている。クラッチレリーズ装置200の下側には、トランスミッション(図示せず)が配置されている。
【0020】
図1の断面図において、O-O線が回転軸線である。なお、以下の説明において、「長手方向」とは後述の第1ラック10が延びる方向を示す。
図1の下側を「長手方向第1側」とし、
図1の上側を「長手方向第2側」とする。「軸方向」とは回転軸Oが延びる方向を示す。また、「径方向」とは、回転軸Oを中心とした円の半径方向を意味する。
【0021】
[クラッチレリーズ装置200]
クラッチレリーズ装置200は、エンジンとトランスミッションとの間に配置されたクラッチ装置をレリーズ操作するための装置である。すなわち、このクラッチレリーズ装置200によって、クラッチ装置における動力伝達状態が解除される。
【0022】
クラッチレリーズ装置200は、シリンダ220と、レリーズピストン210と、エア室Cと、を含む。
【0023】
<シリンダ220>
シリンダ220は、内周円筒部221と、外周円筒部222と、底部223と、を有している。
【0024】
内周円筒部221は、径方向においてトランスミッションの入力軸(図示せず)の外側に、入力軸と同軸で配置されている。外周円筒部222は、底部223の外周から軸方向第2側に延びる。外周円筒部222は、内周円筒部221とほぼ平行に延びている。底部223には、エア室Cに空気を供給するためのエア供給口224が形成されている。
【0025】
<レリーズピストン210>
レリーズピストン210は、シリンダ220の内周円筒部221と外周円筒部222との間に、入力軸と同軸で配置されている。レリーズピストン210は、シリンダ220の内周円筒部221及び外周円筒部222に沿って軸方向に移動可能である。
【0026】
レリーズピストン210の軸方向第2側の端部には、レリーズ軸受211がはめ込まれている。レリーズ軸受211には、筒状のレリーズ部材230が装着されている。このレリーズ部材230がクラッチ装置のダイヤフラムスプリング300の内周端部に当接している。
【0027】
レリーズピストン210は、非作動位置と作動位置との間で長手方向に移動可能に配置される。なお、作動位置とは、エア室Cに空気が入ってレリーズピストン210が移動し終わった状態での最終位置である。すなわち、作動位置とは、クラッチ装置をクラッチオフ状態にするときのレリーズピストン210の位置である。また、非作動位置とは、エア室Cから空気が排出されてレリーズピストン210が移動し終わった状態での最終位置である。すなわち、非作動位置とは、クラッチ装置をクラッチオン状態にするときのレリーズピストン210の位置である。非作動位置は、作動位置よりもレリーズ軸方向第1側である。
【0028】
<エア室C>
エア室Cは、シリンダ220とレリーズピストン210とによって画定される。詳細には、シリンダ220の内周円筒部221、底部223、外周円筒部222、及びレリーズピストン210によって、エア室Cが形成されている。
【0029】
エア室Cには、レリーズピストン210を軸方向第2側に付勢するスプリング301が設けられている。スプリング301によって、レリーズ部材230は、所定の圧力でダイヤフラムスプリング300の内周端部に押圧されている。エア室Cに空気が供給されていない状態で、レリーズ部材230とダイヤフラムスプリング300との間には予圧が作用している。
【0030】
[制御バルブ100]
制御バルブ100は、クラッチレリーズ装置200に取り付けられている。制御バルブ100は、クラッチレリーズ装置200の軸方向と制御バルブ100の軸方向とが平行になるように配置されている。制御バルブ100は、クラッチレリーズ装置200を制御する。
【0031】
制御バルブ100は、第1ラック10と、第2ラック20と、ピニオンギア30と、バルブピストン42と、バルブ本体40と、を備える。
【0032】
<第1ラック10>
第1ラック10は細長い板状である。第1ラック10は、クラッチペダルに接続されている。第1ラック10は、長手方向がクラッチレリーズ装置200の軸方向と平行になるように、かつ、長手方向に移動可能に配置される。なお、本実施形態において、クラッチペダルを踏み込むと、第1ラック10は長手方向第1側に移動し、クラッチペダルの踏み込みを解除すると、第1ラック10は長手方向第2側に移動するように構成されている。
【0033】
第1ラック10は、第2ラック20を向く側の面に、長手方向に配列された複数の溝11を有する。
【0034】
<第2ラック20>
第2ラック20は細長い板状である。第2ラック20は、レリーズピストン210とともに動く部材に取り付けられている。第2ラック20は、クラッチレリーズ装置200のレリーズピストン210に直接取り付けられてもよい。第2ラック20は、長手方向がクラッチレリーズ装置200の軸方向と平行になるように、かつ、長手方向に移動可能に配置される。つまり、第2ラック20は、第1ラック10と平行になるように配置される。
【0035】
第2ラック20は、第1ラック10を向く側の面に、長手方向に配列された複数の溝21を有する。
【0036】
<ピニオンギア30>
ピニオンギア30は、第1ラック10と第2ラック20との間に配置される。ピニオンギア30は、第1ラック10及び第2ラック20に噛み合っている。より詳細には、ピニオンギア30は、円板状の本体部31と、本体部31の外周部に複数の歯32を有する。複数の歯32は、第1ラック10の複数の溝11と第2ラック20の複数の溝21とに噛み合う。
【0037】
ピニオンギア30は、中立位置を中心に、長手方向に移動可能に配置されている。詳細には、ピニオンギア30は、中立位置を中心に、長手方向第1側にある第1位置と、長手方向第2側にある第2位置と、の間で長手方向に移動可能に配置される。
【0038】
ピニオンギア30は、回転可能である。このピニオンギア30の回転により、第1ラック10が長手方向に動くと、第2ラック20は第1ラック10と反対の方向に動くことができる。
【0039】
<バルブピストン42>
バルブピストン42は、円柱状である。バルブピストン42は、レリーズ軸方向に移動可能である。バルブピストン42は、バルブシリンダ41内を長手方向に移動可能に配置されている。バルブピストン42は、バルブシリンダ41と同軸で配置されている。バルブピストン42は、ピニオンギア30によって操作される。
【0040】
バルブピストン42の長手方向第2側の端部は、ピニオンギア30に接続されている。これにより、バルブピストン42は、ピニオンギア30と連動して軸方向に動く。バルブピストン42は、ピニオンギア30を回転可能に支持する。
【0041】
<バルブ本体40>
バルブ本体40は、クラッチレリーズ装置200のシリンダ220に固定されている。より詳細には、バルブ本体40は、シリンダ220の外周円筒部222に固定されている。バルブ本体40には、エア源(図示せず)が接続される。
【0042】
バルブ本体40は、閉鎖状態と連通状態とに切替可能である。なお、連通状態は、第1連通状態と第2連通状態とを含む。すなわち、本実施形態では、バルブ本体40は、閉鎖状態と、第1連通状態と、第2連通状態とのいずれかに切替可能である。ピニオンギア30が中立位置にあるとき、バルブ本体40は閉鎖状態となる。バルブ本体40は、閉鎖状態において、レリーズピストン210を停止させるようにエア室Cを閉鎖する。
【0043】
ピニオンギア30が中立位置から長手方向に移動したとき、バルブ本体40は連通状態となる。連通状態において、バルブ本体40は、レリーズピストン210を動作させるようにエア室Cを外部と連通させる。外部とは、エア源及び大気圧部である。なお、大気圧部とは、大気に連通する部分である。連通状態には、第1連通状態と第2連通状態とがある。第1連通状態において、バルブ本体40は、エア室Cとエア源とを連通する。また、第2連通状態において、バルブ本体40は、エア室Cと大気圧部とを連通する。ここで、エア源及び大気圧部が、上記外部に相当する。なお、大気圧部とは、大気に連通する部分である。
【0044】
バルブ本体40は、エア配管を介してクラッチレリーズ装置200のエア供給口224に接続される。これにより、第1連通状態のときに、バルブ本体40はクラッチレリーズ装置200のエア室Cに空気を送ることができる。また、バルブ本体40は、大気圧部(図示せず)と連通する。これにより、第2連通状態のときに、バルブ本体40はエア室C内の空気を排気することができる。
【0045】
バルブ本体40は、バルブシリンダ41と、第1スリーブ43と、第2スリーブ44と、サイレンサー構造45と、を含む。第1スリーブ43と、第2スリーブ44と、は、バルブシリンダ41内を長手方向に移動可能に配置されている。
【0046】
バルブシリンダ41は、円筒状である。バルブシリンダ41は、バルブピストン42と同軸で配置されている。バルブシリンダ41は、クラッチレリーズ装置200に空気を供給するためのエア供給口41aを有する。
【0047】
バルブシリンダ41はさらに、第1スリーブ43と第2スリーブ44との間に突起部41bを有する。突起部41bは、バルブ本体40が閉鎖状態において、第1スリーブ43の長手方向第2側の端部に当接して、空気の連通を遮断している。
【0048】
第1スリーブ43は中空の円筒状である。バルブ本体40が閉鎖状態のとき、第1スリーブ43は、第1バルブスプリング43aにより、長手方向第2側に付勢されている。第1スリーブ43の長手方向第2側の端部は、第2スリーブ44の長手方向第1側の端部とバルブシリンダ41の突起部41bとに当接する。
【0049】
バルブ本体40が第1連通状態のとき、突起部41bは第1スリーブ43のレリーズ軸方向第2側の端部から離れている。この状態が給気回路が開いた状態であり、クラッチレリーズ装置200のエア室Cに空気が供給される。
【0050】
第1スリーブ43は、長手方向第1側の端部において、サイレンサー構造45に接続している。サイレンサー構造45は、空間を付与している。サイレンサー構造45は、排気ポートとしても機能する。サイレンサー構造45は、空気が排出される際の音を抑制する。
【0051】
第2スリーブ44は、円柱状である。第2スリーブ44は、中央部に長手方向に延びる凹部を有する。この凹部にバルブピストン42が挿入されている。このため、バルブピストン42が長手方向第1側に移動した場合に、第2スリーブ44はバルブピストン42とともに移動することができる。
【0052】
バルブ本体40が閉鎖状態において、第2スリーブ44は、第2バルブスプリング44aにより、長手方向第2側に付勢されている。第2スリーブ44の長手方向第1側の端部は、第1スリーブ43の長手方向第2側の端部と当接する。
【0053】
バルブ本体40が第2連通状態において、第1スリーブ43のレリーズ軸方向第2側の端部と第2スリーブ44のレリーズ軸方向第1側の端部との間に隙間が生じている。この状態が排気回路が開いた状態である。このとき、第1スリーブ43の上記中空部分を通って、クラッチレリーズ装置200の空気が排気される。
【0054】
[動作]
クラッチ装置は、クラッチオン状態とクラッチオフ状態をとる。クラッチ装置がクラッチオン状態のとき、ダイヤフラムスプリング300の押圧力によってクラッチディスクがプレッシャプレートとフライホイールとの間に挟持されている。このため、エンジンからの動力は、トランスミッションに伝達される。一方、クラッチ装置がクラッチオフ状態のとき、クラッチディスクがフライホイールから離れる。このため、エンジンからトランスミッションに対する動力の伝達が断たれている。
【0055】
クラッチ操作は、クラッチ装置をクラッチオン状態とするためのクラッチオン操作と、クラッチ装置をクラッチオフ状態とするためのクラッチオフ操作と、を含む。なお、クラッチオフ操作とはクラッチペダルを踏む操作であり、クラッチオン操作とはクラッチペダルを解除する操作である。すなわち、クラッチ装置は、通常クラッチオン状態となっている。
【0056】
【0057】
なお、クラッチ装置がクラッチオン状態では、クラッチレリーズ装置200は、スプリング301のみの付勢力によってダイヤフラムスプリング300に対して付勢されている。このとき、
図2の(1)に示すとおり、ピニオンギア30は、中立位置に存在する。
【0058】
クラッチオフ操作が行われると、第1ラック10が長手方向第1側に所定の変位量を移動する。このとき、第2ラック20はまだ移動しておらず、ピニオンギア30は第1ラック10に噛み合っているため、ピニオンギア30は、中立位置から長手方向第1側に移動する。このクラッチオフの操作によってピニオンギア30が移動し終わった最終位置を第1位置とする。
【0059】
これにより、ピニオンギア30がバルブピストン42を長手方向第1側に移動させる。そのため、第2スリーブ44がバルブピストン42と一体的に動き、第1スリーブ43の長手方向第2側の端部を押す。これにより、第1スリーブ43が長手方向第1側に移動して開き、
図2の(2)に示すとおり、バルブ本体40が第1連通状態になる。バルブ本体40は、第1連通状態においてエア室Cをエア源と連通させる。エア源と連通したことにより、エア室Cにエアが供給される。エア室Cに空気が供給されると、レリーズピストン210は、非作動位置から長手方向第2側に移動して、作動位置をとる。これにより、レリーズ部材230がダイヤフラムスプリング300の中心部を押圧し、プレッシャプレートの押圧力を解除する。その結果、クラッチディスクがフライホイールから離れ、エンジンからトランスミッションに対する動力の伝達が断たれる。
【0060】
また、レリーズピストン210のレリーズの第1位置から作動位置への移動に伴い、第2ラック20が長手方向第2側に、第1ラック10が移動した変位量と同じ変位量を移動する。このとき、第1ラック10は移動しない。ピニオンギア30は第2ラック20に噛み合っているため、
図2の(3)に示すとおり、ピニオンギア30も長手方向第2側に移動して中立位置に戻る。これによりバルブ本体40も第1連通状態から閉鎖状態になり、レリーズピストン210の移動が停止する。
【0061】
一方、クラッチオンの操作が行われると、第1ラック10が長手方向第2側に所定の変位量を移動する。このとき、第2ラック20はまだ移動しておらず、ピニオンギア30は第1ラック10に噛み合っているため、ピニオンギア30は、中立位置から長手方向第2側に移動する。このクラッチオンの操作によってピニオンギア30が移動し終わった最終位置を第2位置とする。
【0062】
これにより、ピニオンギア30がバルブピストン42を長手方向第2側に移動させる。そのため、第2スリーブ44が開き、
図2の(4)に示すとおり、バルブ本体40が第2連通状態になる。バルブ本体40は、第2連通状態においてエア室Cを大気圧部と連通させる。大気圧部と連通したことにより、エア室Cからエアが排気される。エア室Cの空気圧が低下すると、レリーズピストン210は、ダイヤフラムスプリング300の押圧力により、作動位置から長手方向第1側に移動して、非作動位置をとる。これにより、クラッチディスクがフライホイールを押圧し、エンジンからトランスミッションに対する動力が伝達される。
【0063】
レリーズピストン210の作動位置から非作動位置への移動に伴い、第2ラック20が長手方向第1側に、第1ラック10が移動した変位量と同じ変位量を移動する。このとき、第1ラック10は移動しない。ピニオンギア30は第2ラック20に噛み合っているため、
図2の(1)に示すとおり、ピニオンギア30も長手方向第1側に移動して中立位置に戻る。これによりバルブ本体40も第2連通状態から閉鎖状態になり、レリーズピストン210の移動が停止する。
【0064】
以上の動作により、制御バルブ100は、クラッチ操作に対するクラッチレリーズ装置200のレリーズピストン210の位置を制御して、クラッチレリーズ装置200を制御することができる。また、本発明の一側面に係る制御バルブ100は油圧シリンダを用いないため、油圧シリンダからの油漏れによるクラッチの滑りを防止することができる。
【0065】
[他の実施形態]
本発明は、以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0066】
変形例1
上記実施例では、クラッチオフの操作とクラッチオンの操作との両方のクラッチ操作において、ピニオンギア30を介して、第1ラック10が長手方向に移動すると、第2ラック20は第1ラック10の変位量と同じ変位量を第1ラック10と反対の方向に移動した。しかしながら、特にこれに限定されない。クラッチオフの操作においてのみ、第1ラック10及び第2ラック20が移動してもよい。また、クラッチオンの操作においてのみ、第1ラック10及び第2ラック20が移動してもよい。
【0067】
変形例2
上記実施形態では、制御バルブ100は、クラッチペダルによるクラッチ操作に応じてレリーズピストン210の位置を制御した。しかしながら、特にこれに限定されない。制御バルブ100は、その他の手段によるクラッチ操作に応じて、クラッチレリーズ装置200の位置を制御してもよい。
【0068】
変形例3
上記実施形態では、第2ラック20は、レリーズピストン210に固定されている。しかしながら、特にこれに限定されない。たとえば、第2ラック20は、レリーズピストン210の他の部位に固定されてもよい。
【0069】
変形例4
上記実施形態では、バルブ本体40は、第1スリーブ43と、第2スリーブ44と、を含む。しかしながら、特にこれに限定されない。たとえば、バルブ本体40は、バルブを一つだけ有してもよい。
【0070】
変形例5
クラッチレリーズ装置200の形状や構成は、前記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0071】
10 第1ラック
20 第2ラック
30 ピニオンギア
40 バルブ本体
42 バルブピストン
43 第1スリーブ
44 第2スリーブ
100 制御バルブ
200 クラッチレリーズ装置
210 レリーズピストン
C エア室