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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-17
(45)【発行日】2025-06-25
(54)【発明の名称】樹脂付き銅箔及び銅張積層板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/03 20060101AFI20250618BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20250618BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20250618BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20250618BHJP
   C08L 39/00 20060101ALI20250618BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20250618BHJP
   C08F 299/00 20060101ALI20250618BHJP
   H01B 5/02 20060101ALI20250618BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20250618BHJP
【FI】
H05K1/03 610K
C08L79/08 Z
C08K3/36
C08L101/00
C08L39/00
C08G73/10
C08F299/00
H05K1/03 630H
H05K1/03 610R
H05K1/03 610P
H01B5/02 Z
H01B7/00 302
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021188252
(22)【出願日】2021-11-19
(65)【公開番号】P2023075383
(43)【公開日】2023-05-31
【審査請求日】2024-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西村 謙吾
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 憲幸
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智江
(72)【発明者】
【氏名】田中 竜太朗
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/189354(WO,A1)
【文献】国際公開第2023/013224(WO,A1)
【文献】特開2023-68801(JP,A)
【文献】特開2017-119361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/03
C08G 73/10
B32B 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面粗さ(Rz)が1.1μm以下の銅箔の粗化面又は無粗化銅箔の表面に樹脂組成物からなる樹脂層を有する樹脂付き銅箔であって、該樹脂組成物が、一分子中に少なくとも二個のアミノ基を有するアミノフェノール化合物(a1)、炭素数6乃至36の脂肪族ジアミノ化合物(a2)及びフェノール性水酸基を有さない芳香族ジアミノ化合物(a3)を含むアミノ化合物(A)と四塩基酸二無水物(B)との共重合物であるポリアミック酸樹脂のイミド化物(P)と、フェノール性水酸基と反応し得る官能基とエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(C)との反応物であるポリイミド樹脂(D)、BET法における比表面積が、1.0乃至20m/gであるシリカ(E)、熱硬化性樹脂(F)及び硬化剤(G)を含有する樹脂付き銅箔。
【請求項2】
シリカ(E)の含有量が、ポリイミド樹脂(D)の固形分に対して5乃至50質量%である請求項1に記載の樹脂付き銅箔。
【請求項3】
シリカ(E)の平均粒子径が、0.3乃至5.0μmである請求項1又は2に記載の樹脂付き銅箔。
【請求項4】
シリカ(E)が、シラン化合物で表面処理を施されていないシリカである請求項1乃至3のいずれか一項に記載の樹脂付き銅箔。
【請求項5】
一分子中に少なくとも二個のアミノ基を有するアミノフェノール化合物(a1)が、下記式(1)
【化1】
(式(1)中、Rは水素原子、メチル基又はエチル基を表し、XはC(CH、C(CF、SO、酸素原子、直接結合又は下記式(2)
【化2】
で表される二価の連結基を表す。)
で表される化合物を含む請求項1に記載の樹脂付き銅箔。
【請求項6】
四塩基酸二無水物(B)が、下記式(3)乃至(11)
【化3】
(式(6)中、YはC(CF、SO、CO、酸素原子、直接結合又は下記式(2)
【化4】
で表される二価の連結基を表す。)
からなる群より選択される化合物を含む請求項1に記載の樹脂付き銅箔。
【請求項7】
フェノール性水酸基と反応し得る官能基とエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(C)が有するフェノール性水酸基と反応しうる官能基が、イソシアネート基又は
カルボン酸クロリド基である請求項1に記載の樹脂付き銅箔。
【請求項8】
フェノール性水酸基を有さない芳香族ジアミノ化合物(a3)が、下記式(12)乃至(15)
【化5】
(式(14)中、Rは独立してメチル基又はトリフルオロメチル基を表し、式(15)中、ZはCH(CH)、SO、CH、O-C-O、酸素原子、直接結合又は下記式(2)
【化6】
で表される二価の連結基を、Rは独立して水素原子、メチル基、エチル基又はトリフルオロメチル基を表す。)からなる群より選択される化合物を含む請求項1に記載の樹脂付き銅箔。
【請求項9】
熱硬化性樹脂(F)が、芳香族マレイミド樹脂を含有する請求項1に記載の樹脂付き銅箔。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の樹脂付き銅箔の有する樹脂組成物からなる樹脂層を硬化させて得られる銅張積層体。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅箔の表面に熱硬化性の樹脂組成物からなる樹脂層を有する樹脂付き銅箔、及び該樹脂付き銅箔の有する樹脂層を硬化させた銅張積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレット等のモバイル通信機器や通信基地局装置、コンピュータやカーナビゲーション等の電子機器に不可欠な部材としてプリント配線板が挙げられる。プリント配線板には金属箔との密着性、耐熱性及び柔軟性等の特性に優れた各種の樹脂材料が用いられている。また、近年では高速で大容量の次世代高周波無線用のプリント配線板の開発が行われており、上記の諸特性に加え、樹脂材料には低伝送損失であること、即ち低誘電・低誘電正接であることが求められている。
【0003】
通信機器や電子機器等には、大容量の情報を高速で伝送・処理することを目的として高周波の電気信号が使用されているが、高周波信号は非常に減衰しやすいため、プリント配線板にも伝送損失を低減する工夫が求められる。伝送損失は導体損失と誘電体損失に大別されるが、電気信号の周波数がGHzを超えると、導体損失は回路に使用される銅箔の表面状態に依存するため、導体損失を抑えるためには一般的には低粗度または無粗化の銅箔を用いることが好ましく、即ち、これらの銅箔に対する高い接着性を有する低誘電樹脂が求められている。
【0004】
耐熱性、難燃性、柔軟性、電気特性及び耐薬品性等の特性に優れたポリイミド樹脂は、電気・電子部品、半導体、通信機器及びその回路部品、周辺機器等に広く使用されている。特に構造の工夫等により溶剤溶解性を向上させた可溶性ポリイミド樹脂は、加工や塗工が容易であり、しかもその使用時には高温を要するイミド化工程が不要なため、広い範囲で使用されている。
その一方で、石油や天然油等の炭化水素系化合物が高い絶縁性と低い誘電率を示すことが知られている。
【0005】
特許文献1及び2には、長鎖アルキル鎖を有するダイマージアミンの骨格を導入したポリイミド樹脂を含有する樹脂組成物及びこれを用いた樹脂付き銅箔が記載されており、これらの樹脂組成物は銅箔に対する接着性と高いはんだ耐熱性を有している。
しかしながら、高周波領域においては更なる伝送損失の低減が求められるため、エポキシ樹脂のような誘電特性を悪化させる成分を減らす必要がある。また、銅箔表面の粗度が大きくなると高周波領域における伝送損失が増大することが知られているため、伝送損失を低減するためには銅箔の粗度を小さくする必要があるが、銅箔の粗度が小さくなると樹脂組成物の銅箔に対する接着性が低下してしまう。
【0006】
特許文献3には、誘電特性を向上させるため、ダイマージアミンの骨格を導入したポリイミド樹脂にシリカを添加する例が記載されている。しかしながら、特許文献3に記載の樹脂組成物はエポキシ樹脂の含有割合が高く、誘電特性低減効果が不充分なことに加え、フィラーの添加量が多いため銅箔に対する塗工性が悪いという問題があった。
【0007】
上記問題に対して、特許文献4には、樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有割合を低減することで高い誘電特性を実現したことが記載されている。しかしながら、特許文献4の組成物は熱硬化樹脂の含有割合が低いため、硬化物の架橋密度が低く、耐熱性が低いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-168369号公報
【文献】特開2017-119361号公報
【文献】特開2019-173010号公報
【文献】国際公開2020/071154号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、塗工性に優れた樹脂組成物からなる樹脂層を有する樹脂付き銅箔、及び該樹脂付き銅箔の有する樹脂組成物からなる樹脂層を硬化させて得られる銅張積層体であって、樹脂層の硬化物と銅箔との接着性に優れ、樹脂層の硬化物の耐熱性が良好であると共に、誘電特性に優れる銅張積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、低粗度銅箔の粗化面又は無粗化銅箔の表面に、特定構造の変性ポリイミド樹脂、特定の比表面積を有するシリカ、熱硬化性樹脂及び硬化剤を含有する樹脂組成物からなる樹脂層を有する樹脂付き銅箔が上記の課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
即ち本発明は、
(1)表面粗さ(Rz)が1.1μm以下の銅箔の粗化面又は無粗化銅箔の表面に樹脂組成物からなる樹脂層を有する樹脂付き銅箔であって、該樹脂組成物が、一分子中に少なくとも二個のアミノ基を有するアミノフェノール化合物(a1)、炭素数6乃至36の脂肪族ジアミノ化合物(a2)及びフェノール性水酸基を有さない芳香族ジアミノ化合物(a3)を含むアミノ化合物(A)と四塩基酸二無水物(B)との共重合物であるポリアミック酸樹脂のイミド化物(P)と、フェノール性水酸基と反応し得る官能基とエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(C)との反応物であるポリイミド樹脂(D)、BET法における比表面積が、1.0乃至20m/gであるシリカ(E)、熱硬化性樹脂(F)及び硬化剤(G)を含有する樹脂付き銅箔、
(2)シリカ(E)の含有量が、ポリイミド樹脂(D)の固形分に対して5乃至50質量%である前項(1)に記載の樹脂付き銅箔、
(3)シリカ(E)の平均粒子径が、0.3乃至5.0μmである前項(1)又は(2)に記載の樹脂付き銅箔、
(4)シリカ(E)が、シラン化合物で表面処理を施されていないシリカである前項(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の樹脂付き銅箔、
(5)一分子中に少なくとも二個のアミノ基を有するアミノフェノール化合物(a1)が、下記式(1)
【0011】
【化1】
【0012】
(式(1)中、Rは水素原子、メチル基又はエチル基を表し、XはC(CH、C(CF、SO、酸素原子、直接結合又は下記式(2)
【0013】
【化2】
【0014】
で表される二価の連結基を表す。)
で表される化合物を含む前項(1)に記載の樹脂付き銅箔、
(6)四塩基酸二無水物(B)が、下記式(3)乃至(11)
【0015】
【化3】
【0016】
(式(6)中、YはC(CF、SO、CO、酸素原子、直接結合又は下記式(2)
【0017】
【化4】
【0018】
で表される二価の連結基を表す。)
からなる群より選択される化合物を含む前項(1)に記載の樹脂付き銅箔、
(7)フェノール性水酸基と反応し得る官能基とエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(C)が有するフェノール性水酸基と反応しうる官能基が、イソシアネート基又はカルボン酸クロリド基である前項(1)に記載の樹脂付き銅箔、
(8)フェノール性水酸基を有さない芳香族ジアミノ化合物(a3)が、下記式(12)乃至(15)
【0019】
【化5】
【0020】
(式(14)中、Rは独立してメチル基又はトリフルオロメチル基を表し、式(15)中、ZはCH(CH)、SO、CH、O-C-O、酸素原子、直接結合又は下記式(2)
【0021】
【化6】
【0022】
で表される二価の連結基を、Rは独立して水素原子、メチル基、エチル基又はトリフルオロメチル基を表す。)からなる群より選択される化合物を含む前項(1)に記載の樹脂付き銅箔、
(9)熱硬化性樹脂(F)が、芳香族マレイミド樹脂を含有する前項(1)に記載の樹脂付き銅箔、及び
(10)前項(1)乃至(9)のいずれか一項に記載の樹脂付き銅箔の有する樹脂組成物からなる樹脂層を硬化させて得られる銅張積層体、
に関する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の樹脂付き銅箔の有する樹脂層となる樹脂組成物は塗工性に優れるため、容易な方法で樹脂付き銅箔を調製することが出来る。また、本発明の樹脂付き銅箔の有する樹脂組成物からなる樹脂層を硬化させて得られる銅張積層体は、樹脂層の硬化物と銅箔との接着性に優れ、樹脂層の硬化物の耐熱性が良好であると共に、誘電特性に優れるため、プリント配線板等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の樹脂付き銅箔は、
(1)表面粗さ(Rz)が1.1μm以下の銅箔の粗化面又は無粗化銅箔の表面に樹脂組成物からなる樹脂層を有する樹脂付き銅箔であって、該樹脂組成物が、一分子中に少なくとも二個のアミノ基を有するアミノフェノール化合物(a1)(以下、単に「(a1)成分」とも記載する)、炭素数6乃至36の脂肪族ジアミノ化合物(a2)(以下、単に「(a2)成分」とも記載する)及びフェノール性水酸基を有さない芳香族ジアミノ化合物(a3)(以下、単に「(a3)成分」とも記載する)を含むアミノ化合物(A)(以下、単に「(A)成分」とも記載する)と四塩基酸二無水物(B)(以下、単に「(B)成分」とも記載する)との共重合物であるポリアミック酸樹脂のイミド化物(P)(以下、単に「イミド化物(P)」とも記載する)と、フェノール性水酸基と反応し得る官能基とエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(C)(以下、単に「(C)成分」とも記載する)との反応物であるポリイミド樹脂(D)(以下、単に「(D)成分」とも記載する)、BET法における比表面積が、1.0乃至20m/gであるシリカ(E)(以下、単に「(E)成分」とも記載する)、熱硬化性樹脂(F)(以下、単に「(F)成分」とも記載する)及び硬化剤(G)(以下、単に「(G)成分」とも記載する)を含有する樹脂組成物(以下単に「樹脂組成物」とも記載する)からなる樹脂層を有する。
先ず、(D)成分の中間原料であるイミド化物(P)について説明する。
【0025】
イミド化物(P)の合成に用いられる(a1)成分は、一分子中に少なくとも二個のアミノ基と少なくとも一個のフェノール性水酸基を有する化合物であれば特に限定されない。(a1)成分の具体例としては、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン及び9,9’-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン等が挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
イミド化物(P)の合成に用いられる(a1)成分は、下記式(1)で示される化合物を含有することが好ましい。
【0027】
【化7】
【0028】
(式(1)中、Rは水素原子、メチル基又はエチル基を表し、XはC(CH、C(CF、SO、酸素原子、直接結合又は下記式(2)で表される二価の連結基を表す。
【0029】
【化8】
【0030】
イミド化物(P)を合成する際の(a1)成分の使用量は、イミド化物(P)のフェノール性水酸基当量が1,500乃至25,000g/eq.の範囲となる量が好ましい。フェノール性水酸基当量が1,500g/eq.を下回る場合は、最終的に得られる(D)成分の極性が高くなるため樹脂組成物の硬化物の誘電正接が高くなってしまい、25,000g/eq.を上回る場合は、後述する(C)成分との反応点が少なくなることによって最終的に得られる(D)成分の架橋点が少なくなり、樹脂組成物の硬化物の耐熱性や基材との接着性が低下する傾向にある。
尚、本明細書におけるフェノール性水酸基当量はJIS K-0070に準じた方法で測定した値を意味する。
【0031】
イミド化物(P)は、(A)成分と(B)成分の共重合物であるポリアミック酸樹脂のイミド化反応、即ち、脱水縮合による環化反応によって得られる。よって、意図した水酸基当量及び脂肪族鎖量を有するイミド化物(P)を合成するために必要な(A)成分および(B)成分の量(割合)は、共重合反応に用いる(A)成分および(B)成分それぞれの分子量と(a1)成分中のフェノール性水酸基の数から容易に算出することができる。
【0032】
イミド化物(P)の合成に用いられる(a2)成分は、一分子中に二個のアミノ基を有する炭素数6乃至36の脂肪族化合物であれば特に限定されない。(a2)成分中の脂肪族構造は直鎖、分岐鎖又は環状の何れであってもよく、前記の構造を併せ持つものでもよく、また、飽和の脂肪族及び不飽和の脂肪族の何れであってもよい。
(a2)成分の具体例としては、ヘキサメチレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ノルボルナンジアミン、イソホロンジアミン、ダイマージアミン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’-メチレンビスシクロヘキシルアミン及び炭素数6乃至36のジアミノポリシロキサン等が挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、最終的に得られる(D)成分の誘電特性の観点から、ダイマージアミンを用いることが好ましい。
【0033】
(a2)成分の具体例の項に記載したダイマージアミンとは、オレイン酸等の不飽和脂肪酸の二量体であるダイマー酸の有する二つのカルボキシル基を一級アミノ基に置換したものである(特開平9-12712号公報等参照)。ダイマージアミンの市販品の具体例としては、PRIAMINE1074並びにPRIAMINE1075(いずれもクローダジャパン株式会社製)、及びバーサミン551(コグニスジャパン株式会社製)等が挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。以下、ダイマージアミンの非限定的な一般式を示す(各式において、m+n=6乃至17が好ましく、p+q=8乃至19が好ましく、破線部は炭素-炭素単結合又は炭素-炭素二重結合を意味する)。
【0034】
【化9】
【0035】
イミド化物(P)を合成する際の(a2)成分の使用量は、(A)成分の質量から、(B)成分のモル数の2倍のモル数の水(脱水縮合反応によって生成した水)の質量を除した質量(生成したイミド化物(P)の質量)の10乃至50質量%の範囲となる量が好ましい。(a2)成分の量が前記の範囲を下回ると、最終的に得られる(D)成分中の(a2)成分に由来する脂肪族鎖が少な過ぎて樹脂組成物の硬化物の誘電正接が高くなってしまい、前記の範囲を上回ると、(D)成分中の(a2)成分に由来する脂肪族鎖が多過ぎて樹脂組成物の硬化物の耐熱性が低下する。
【0036】
イミド化物(P)の合成に用いられる(a3)成分は、前記の(a1)成分以外の芳香族ジアミノ化合物であって、一分子中に二個のアミノ基を有する芳香族系の化合物であれば特に限定されない。(a3)成分の具体例としては、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、m-トリレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’-ジエトキシ-4,4’-ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルチオエーテル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノジフェニルチオエーテル、2,2’-ビス(3-ミノフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフォキサイド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフォンスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフォンスルホン、ベンチジン、3,3’-ジメチルベンチジン、3,3’-ジメトキシベンチジン、3,3’-ジアミノビフェニル、p-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、o-キシリレンジアミン、2,2’-ビス(3-アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)ベンゼン、1,3’-ビス(3-アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3-エチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジエチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3-プロピルフェニル)メタン及びビス(4-アミノ-3,5-ジプロピルフェニル)メタン等が挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
イミド化物(P)の合成に用いられる(a3)成分は、樹脂組成物の硬化物の耐熱性と最終的に得られる(D)成分の溶剤への溶解性の観点から、下記式(12)乃至(15)からなる群より選択される化合物を含有することが好ましい。
【0038】
【化10】
【0039】
式(14)中、Rは独立してメチル基又はトリフルオロメチル基を表す。式(15)中、Rは独立して水素原子、メチル基又はエチル基を、ZはCH(CH)、SO、CH、O-C-O、酸素原子、直接結合又は上記式(2)で表される二価の連結基を表す。
【0040】
イミド化物(P)の合成に用いられる(B)成分は、一分子中に二個の酸無水物基を有するものであれば特に限定されない。
(B)成分の具体例としては、無水ピロメリット酸、エチレングリコール-ビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセリン-ビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、1,2,3,4,-ブタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチルシクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、3a,4,5,9b-テトラヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ(2,2,2)-オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物及びビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、5,5’-((プロパン-2,2-ジイルビス(4,1-フェニレン))ビス(オキシ))ビス(イソベンゾフラン-1,3-ジオン)等が挙げられる。なかでも、溶剤溶解性、基材への密着性の面から、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物又は3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物が好ましい。これらは1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
イミド化物(P)の合成に用いられる(B)成分は、ポリアミック酸樹脂、イミド化物(P)および(D)成分の溶剤溶解性の観点から、下記式(3)乃至(11)からなる群より選択される化合物を含有することが好ましい。
【0042】
【化11】
【0043】
式(6)中、YはC(CF、SO、CO、酸素原子、直接結合又は上記式(2)で表される二価の連結基を表す。
【0044】
イミド化物(P)の合成に用いられる(A)成分中の(a1)成分のモル数をa1M、(a2)成分のモル数をa2M、(a3)成分のモル数をa3Mとした場合、a1M/(a1M+a2M+a3M)の値が0.01を超えて0.3未満であることが好ましく、0.03を超えて0.15未満であることがより好ましい。a1M/(a1M+a2M+a3M)が0.01以下の場合は、後述する(C)成分のとの反応部位が少なくなるため樹脂組成物の硬化物の基材接着性およびはんだ耐熱性が低下する傾向にある。また、a1M/(a1M+a2M+a3M)が0.3以上である場合は、樹脂組成物の硬化物の誘電特性が低下する傾向にある。
【0045】
また、a2M/(a1M+a2M+a3M)の値が0.2を超えて0.9未満であることが好ましく、0.3を超えて0.6未満であることがより好ましい。a2M/(a1M+a2M+a3M)が0.2以下の場合は、樹脂組成物の硬化物の誘電特性が悪化したり、(D)成分の溶剤溶解性が悪くなる傾向にある。また、a2M/(a1M+a2M+a3M)が0.9以上の場合は、樹脂組成物の硬化物の耐熱性が悪化する傾向にある。
【0046】
また、a3M/(a1M+a2M+a3M)の値が0.1を超えて0.8未満であることが好ましく、0.2を超えて0.6未満であることがより好ましい。a3M/(a1M+a2M+a3M)が0.1以下の場合は、樹脂組成物の硬化物のはんだ耐熱性が悪化する傾向にある。また、a3M/(a1M+a2M+a3M)が0.8以上の場合は、(D)成分の溶剤溶解性が悪化する傾向にある。
【0047】
(A)成分のモル数をMA、(B)成分のモル数をMBとし、MA/MB>1の関係を満たす量の(A)成分と(B)成分を共重合させると両末端がアミノ基のポリアミック酸樹脂のイミド化物(P)が得られる。このとき、MA/MBの値が1.0を越えて2.0未満の範囲であることが好ましく、1.0を越えて1.5未満以下の範囲であることがより好ましい。前記の値が2.0以上の場合には、(D)成分の高分子量化が不充分となるのに加え、未反応原料の残存率が高くなり、樹脂組成物の硬化後の耐熱性等の諸特性が低下する可能性がある。
【0048】
(A)成分のモル数をMA、(B)成分のモル数をMBとし、MB/MA>1の関係を満たす量の(A)成分と(B)成分を共重合させると両末端がカルボン酸無水物基のポリアミック酸樹脂のイミド化物(P)が得られる。この時、MB/MAの値が1.0を越えて2.0未満の範囲であることが好ましく、1.0を越えて1.5未満以下の範囲であることがより好ましい。前記の値が2.0以上の場合には、(D)成分の高分子量化が不充分となるのに加え、未反応原料の残存率が高くなり、樹脂組成物の硬化後の耐熱性等の諸特性が低下する可能性がある。
【0049】
イミド化物(P)は、公知の方法で合成することができる。例えば、合成に用いる(A)成分および(B)成分を溶剤に溶解させた後、窒素等の不活性雰囲気下、10乃至140℃で加熱撹拌することによってジアミン類と四塩基酸二無水物類との共重合反応が起こり、ポリアミック酸樹脂溶液が得られる。
【0050】
次いで前記で得られたポリアミック酸樹脂溶液に必要により脱水剤や触媒を加え、100乃至300℃で加熱撹拌することによってイミド化反応(脱水を伴う閉環反応)が起こり、イミド化物(P)が得られる。脱水剤としてはトルエン及びキシレン等が、触媒としては3級アミン、及び脱水触媒を用いることができる。3級アミンとしては、複素環式の3級アミンが好ましく、例えば、ピリジン、ピコリン、キノリン、及びイソキノリンなどを挙げられる。脱水触媒としては、例えば、無水酢酸、プロピオン酸無水物、n-酪酸無水物、安息香酸無水物、及びトリフルオロ酢酸無水物等が挙げられる。尚、イミド化物(P)を合成する際の反応時間は反応温度により大きく影響されるが、反応の進行に伴う粘度上昇が平衡に達し、最大の分子量が得られるまで反応を行うことが好ましく、通常数分間乃至30時間である。
【0051】
上記の例はポリアミック酸を経由してイミド化物(P)を合成する方法であるが、合成に用いる(A)成分および(B)成分を溶剤に溶解させた後、必要により脱水剤や触媒を加え、100乃至300℃で加熱撹拌することによって共重合反応とイミド化反応を一括で行い、イミド化物(P)を得てもよい。
【0052】
イミド化物(P)の合成時に用い得る溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn-ヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセチルアセトン、γ-ブチロラクトン、ジアセトンアルコール、シクロヘキセン-1-オン、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチルイソアミルエーテル、エチル-t-ブチルエーテル、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、アニソール、フェネトール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ベンジル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸ベンジル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸イソプロピル、酪酸ブチル、酪酸イソアミル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸イソアミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、サリチル酸メチル、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0053】
好ましい溶剤の使用量は、得られる樹脂の粘度や使途により適宜調整されるべきものであるが、好ましくは固形分含有率60乃至10質量%、より好ましくは50乃至20質量%である。
【0054】
イミド化物(P)合成時の脱水反応を促進させるために、触媒を使用することが好ましく、該触媒の使用量は、(B)成分のモル数の2倍(脱水縮合により生じる水のモル数)の1乃至30%が好ましく、より好ましくは5乃至15%である。使用しうる触媒の具体例としては、トリエチルアミン、ピリジン等既知一般の塩基性触媒等が挙げられる。中でも、沸点が低く、残留しにくい点からトリエチルアミンが好ましい。
【0055】
次に、イミド化物(P)と(C)成分との反応物である(D)成分について説明する。
(D)成分は、イミド化物(P)の有するフェノール性水酸基の一部または全部に、(C)成分を介してエチレン性不飽和二重結合基を導入した構造のポリイミド樹脂である。(D)成分の粘度はエチレン性不飽和二重結合基導入前のイミド化物(P)よりも下がるため、(D)成分を含む樹脂組成物からなる樹脂層の銅箔に対するラミネート性が向上する傾向にある。また、エチレン性不飽和二重結合基は互いに又は後述する熱硬化性樹脂(F)の有する様々な官能基と反応し得るため、樹脂組成物の硬化物の優れた耐熱性と接着性が両立する。
【0056】
イミド化物(P)との反応に用いられる(C)成分は、フェノール性水酸基と反応し得る官能基とエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物であれば特に限定されない。
(C)成分が有するフェノール性水酸基と反応し得る官能基としては、例えばイソシアネート基、カルボン酸クロリド基、酸無水物基、エポキシ基、シリルクロリド基、ハロゲン化アルキル基、エステル基、スルホニルクロリド基及びカルボキシル基等が挙げられる。特に(C)成分からの脱離基由来の残留不純物が生じない点から、イソシアネート基が好ましい。
尚、(C)成分が有するエチレン性不飽和二重結合基は、C=C結合であれば特に限定されない。
【0057】
尚、(A)成分のモル数MAと(B)成分のモル数MBがMA/MB>1の関係を満たす量の(A)成分と(B)成分を共重合させ得られるイミド化物(P)は末端がアミノ基となるため、フェノール性水酸基と反応し得る官能基がイソシアネート基、カルボン酸クロリド基、酸無水物基、エポキシ基、シリルクロリド基、ハロゲン化アルキル基、エステル基、スルホニルクロリド基又はカルボキシル基の(C)成分は、イミド化物(P)の末端アミノ基とも反応し得る。
【0058】
また、(A)成分のモル数MAと(B)成分のモル数MBがMA/MB<1の関係を満たす量の(A)成分と(B)成分を共重合させ得られるイミド化物(P)は末端が酸無水物基となるため、フェノール性水酸基と反応しうる官能基がイソシアネート基、エポキシ基又はカルボキシル基の(C)成分は、イミド化物(P)の末端酸無水物基とも反応し得る。
【0059】
(C)成分の具体例としては、カレンズMOI(昭和電工株式会社製)、カレンズAOI、カレンズMOI-BM、カレンズMOI-BP、カレンズBEI、カレンズMOI-EG、AOI-VM、メタクリル酸クロリド、アクリル酸クロリド、マレイミドカプロン酸クロリド、臭化アリル、ヨウ化アリル、塩化アリル、4-クロロ-1-ブテン、4-ブロモ-1-ブテン、クロトノイルクロリド、シンナモイルクロリドなどが挙げられる。
【0060】
イミド化物(P)と(C)成分との反応物である(D)成分は、公知の方法で合成することができる。例えば、イミド化物(P)の樹脂溶液に、所定量の(C)成分を混合し、80℃乃至150℃で反応させることにより合成できる。
【0061】
イミド化物(P)と(C)成分の反応を進行させるために各種触媒を使用してもよい。触媒は既知の無機酸、有機酸、無機塩基、有機塩基などが使用できる。
【0062】
(D)成分の合成に用いられる(C)成分のモル数をMC、イミド化物(P)のフェノール性水酸基のモル数をMAB、イミド化物(P)の末端官能基のモル数をMPとした場合、MC/(MAB+MP)の値が0.3を超えて1未満であることが好ましく、0.5を超えて1未満であることがより好ましい。MC/(MAB+MP)が1を超える場合は、未反応の(C)成分により樹脂組成物の硬化物の耐熱性が悪化する。また、MC/(MAB+MP)が0.3以下の場合は、(C)成分と反応しないフェノール性水酸基の水素結合によりポリイミド樹脂溶液の粘度が上昇し、ラミネート性が下がる傾向にある上、樹脂組成物の硬化物の基材接着性が低下する傾向にある。
【0063】
次に、(E)成分について説明する。
(E)成分のBET法における比表面積は、1.0乃至20m/gであることが好ましい。比表面積が上記の範囲内の(E)成分を用いることにより、樹脂層中の(E)成分の分散性が改善されて樹脂層の硬化物の可撓性が向上すると共に、シリカと樹脂成分の硬化物との接着強度が向上して、外部からの応力による樹脂層の凝集破壊が起こり難くなる。
【0064】
本発明の樹脂付き銅箔の樹脂層となる樹脂組成物における(E)成分の含有量は、(D)成分の固形分に対し5乃至50質量%であることが好ましく、10乃至45質量%であることがより好ましく、15乃至35質量%であることが更に好ましい。(E)成分の含有量を前記の範囲とすることにより、樹脂層の硬化物と銅箔との接着性が向上したり、樹脂層の硬化物の可撓性が高くなる。
【0065】
(E)成分の平均粒子径は、0.3乃至5.0μmであることが好ましい。(E)成分の平均粒子径を前記の範囲とすることにより、樹脂層への気泡の混入を低減できると共に、樹脂層が銅箔の凹凸に効率よく入り込んで樹脂層の硬化物と銅箔との接着性が向上する。
尚、本明細書における(E)成分の平均粒子径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布測定装置を用いて測定した値を意味する。
【0066】
(E)成分は、シラン化合物で表面処理されていないことが好ましい。(E)成分が表面処理されていると、分散性は向上するものの、樹脂層の硬化物の耐熱性及び樹脂層の硬化物と銅箔との接着性の向上効果が充分に得られないことがある。
【0067】
(E)成分は、球状であることが好ましい。この場合、樹脂層が銅箔表面の凸凹に効率よく入り込んで、樹脂層の硬化物と銅箔との接着性を一層高めることができる。
【0068】
次に(F)成分について説明する。
(F)成分の具体例としては、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、カルボジイミド樹脂、ベンゾオキサジン化合物及びエチレン性不飽和基を有する化合物等が挙げられる。これらの樹脂または化合物は、本発明の樹脂付き銅箔の有する樹脂層を硬化させて得られる銅張積層体の物性および用途に応じて、1種類単独または2種類以上を適宜混合して使用することができる。
本発明においては、(D)成分に(F)成分を併用することにより、樹脂組成物からなる樹脂層の硬化物に熱安定性と高い接着性を付与することができる。その際、(D)成分の末端官能基(アミノ基又は酸無水物基)または(C)成分由来のエチレン性不飽和二重結合基と、(F)成分が反応することが好ましい。
【0069】
(F)成分としては、樹脂組成物の硬化物の耐熱性や接着性が特に優れる点から、マレイミド樹脂又はエチレン性不飽和基を有する化合物が好ましい。
尚、ポリアミック酸樹脂の合成に用いられる(A)成分のモル数をMA、(B)成分のモル数をMB、(C)成分のモル数をMC、イミド化物(P)の末端官能基のモル数をMP、(a1)成分のモル数をMa1とした場合に、MA/MBの値が1を超え、かつMC/(MP+Ma1)の値が0を超えて1未満であるポリイミド樹脂に関しては、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂を使用することも好ましい。
【0070】
また、(F)成分は、樹脂組成物を溶剤に溶解してワニスとした際の粘度上昇が抑制できる観点から、分子量が100乃至50,000であることが好ましい。尚、本明細書における分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法による、ポリスチレンスタンダードの重量平均分子量を意味する。
【0071】
(F)成分としてのマレイミド樹脂は、一分子中にマレイミド基を二つ以上有するものであれば特に限定されない。
一分子中にマレイミド基を二つ以上有するマレイミド樹脂の具体例として、3,4,4’-トリアミノジフェニルメタン、トリアミノフェノールなどと無水マレイン酸との反応で得られる多官能マレイミド化合物、トリス-(4-アミノフェニル)-ホスフェート、トリス(4-アミノフェニル)-ホスフェート、トス(4-アミノフェニル)-チオホスフェートと無水マレイン酸との反応で得られるマレイミド化合物、トリス(4-マレイミドフェニル)メタン等のトリスマレイミド化合物、ビス(3,4-ジマレイミドフェニル)メタン、テトラマレイミドベンゾフェノン、テトラマレイミドナフタレン、トリエチレンテトラミンと無水マレイン酸との反応で得られるマレイミド等のテトラマレイミド化合物、フェノールノボラック型マレイミド樹脂、イソプロピリデンビス(フェノキシフェニルマレイミド)フェニルマレイミドアラルキル樹脂、ビフェニレン型フェニルマレイミドアラルキル樹脂等挙げられ、市販品としては、MIR-3000、MIR-5000(いずれも日本化薬株式会社製)、BMI-70、BMI-80(いずれもケイ・アイ化成株式会社製)、BMI-1000、BMI-2000、BMI-3000、(いずれも大和化成工業株式会社製)、等が挙げられる。
【0072】
特に、樹脂組成物の硬化物からなる樹脂層が機械強度や難燃性等の特性に優れることから、ベンゼン環、ビフェニル環及びナフタレン環等の芳香族環を有するマレイミド樹脂が好ましく、その具体例としては、MIR-3000(日本化薬株式会社製)、MIR-5000(日本化薬株式会社製)が挙げられる。
マレイミド樹脂は、(D)成分の有するエチレン性不飽和二重結合基と反応させることを目的に加えられ、これにより樹脂組成物の硬化物からなる樹脂層の架橋密度が増加し、極性溶剤への耐性が向上すると共に、銅箔への密着性や耐熱性が向上する。
樹脂層となる樹脂組成物がマレイミド樹脂を含有する場合の硬化温度は、150乃至250℃が好ましい。硬化時間は硬化温度に依存するが、概ね数分間乃至数時間程度である。
樹脂層となる樹脂組成物におけるマレイミド樹脂の含有量は、(D)成分のエチレン性不飽和二重結合基1当量に対して、マレイミド樹脂のマレイミド基当量が0.1乃至500当量となる量が好ましい。
尚、本明細書におけるマレイミド基当量は、原料として用いたアミンのアミン当量から算出した理論マレイミド当量を意味する。
【0073】
(F)成分としてのエポキシ樹脂は、一分子中にエポキシ基を二つ以上有するものであれば特に限定されないが、樹脂組成物の硬化物からなる樹脂層が機械強度や難燃性等の特性に優れることから、ベンゼン環、ビフェニル環及びナフタレン環等の芳香族環を有するエポキシ樹脂が好ましく、その具体例としては、jER828(三菱ケミカル株式会社製)、NC-3000、XD-1000(いずれも日本化薬株式会社製)等が挙げられる。
エポキシ樹脂は、(D)成分の末端アミノ基若しくは酸無水物基と反応させることを目的に加えられ、これにより樹脂組成物の硬化物からなる樹脂層の架橋密度が増加し、極性溶剤への耐性が向上すると共に、銅箔への密着性や耐熱性が向上する。
エポキシ樹脂を含有する樹脂組成物の硬化温度は、150乃至250℃が好ましい。硬化時間は硬化温度に依存するが、概ね数分間乃至数時間程度である。
【0074】
樹脂層となる樹脂組成物がエポキシ樹脂を含有する場合のエポキシ樹脂の含有量は、(D)成分の有する末端アミノ基の活性水素及び末端酸無水物基1当量に対するエポキシ樹脂のエポキシ基当量が0.1乃至500当量となる量が好ましい。
尚、本明細書におけるエポキシ基当量は、JIS K-7236に記載された方法で測定した値を意味する。
【0075】
(F)成分としてのエチレン性不飽和基を有する化合物は、一分子中にエチレン性不飽和基を一つ以上有するものであれば特に限定されない。
エチレン性不飽和基を有する化合物の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートモノメチルエーテル、フェニルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アジピン酸エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールエチレンオキサイドジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールエチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペングリコールジ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリエチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0076】
また、この他にも、(メタ)アクリロイル基とウレタン結合を同一分子内に併せ持つウレタン(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリロイル基とエステル結合を同一分子内に併せ持つポリエステル(メタ)アクリレート類;エポキシ樹脂から誘導され、(メタ)アクリロイル基を併せ持つエポキシ(メタ)アクリレート類;これらの結合が複合的に用いられている反応性オリゴマー等もエチレン性不飽和基を有する化合物の具体例として挙げられる。
【0077】
ウレタン(メタ)アクリレート類とは、水酸基含有(メタ)アクリレートとポリイソシアネート、必要に応じて用いられるその他アルコール類との反応物が挙げられる。例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等のグリセリン(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の糖アルコール(メタ)アクリレート類と、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、ジシクロヘキサンメチレンジイソシアネート、及びそれらのイソシアヌレート、ビュレット反応物等のポリイソシアネート等を反応させた、ウレタン(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0078】
ポリエステル(メタ)アクリレート類とは、例えば、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド変性フタル酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性コハク酸(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の単官能(ポリ)エステル(メタ)アクリレート類;ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート等のジ(ポリ)エステル(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパン又はグリセリン1モルに1モル以上のε-カプロラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン等の環状ラクトン化合物を付加して得たトリオールのモノ、ジ又はトリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0079】
また、ペンタエリスリトール、ジメチロールプロパン、トリメチロールプロパン、又はテトラメチロールプロパン1モルに、1モル以上のε-カプロラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン等の環状ラクトン化合物を付加して得たトリオールのモノ、ジ、トリ又はテトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトール1モルに1モル以上のε-カプロラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン等の環状ラクトン化合物を付加して得たトリオールのモノ、若しくはポリ(メタ)アクリレートのトリオール、テトラオール、ペンタオール又はヘキサオール等の多価アルコールのモノ(メタ)アクリレート又はポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0080】
更に、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)テトラメチレングリコール、(ポリ)ブチレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ヘキサンジオール等のジオール成分と、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ダイマー酸、セバチン酸、アゼライン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸等の多塩基酸、及びこれらの無水物との反応物であるポリエステルポリオールの(メタ)アクリレート;ジオール成分と多塩基酸及びこれらの無水物とε-カプロラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン等からなる環状ラクトン変性ポリエステルジオールの(メタ)アクリレート等の多官能(ポリ)エステル(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。
【0081】
エポキシ(メタ)アクリレート類とは、エポキシ基を有する化合物と(メタ)アクリル酸とのカルボキシレート化合物である。例えば、フェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート、ビフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、ナフタレン骨格含有エポキシ(メタ)アクリレート、グリオキサール型エポキシ(メタ)アクリレート、複素環式エポキシ(メタ)アクリレート等、及びこれらの酸無水物変性エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0082】
例えば、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル等のビニルエーテル類;スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン類やトリアリルイソシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート、及びビスアリルナジイミド等のビニル基を有する化合物も、エチレン性不飽和基を有する化合物の具体例として挙げられる。
【0083】
エチレン性不飽和基を有する化合物としては、市販品を利用することができ、例えば、KAYARAD(登録商標)ZCA-601H(商品名、日本化薬(株)製)、TrisP-PAエポキシアクリレート化合物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(日本化薬(株)製KAYARAD(登録商標)ZCR-6007H(商品名)KAYARAD(登録商標)ZCR-6001H(商品名)、KAYARAD(登録商標)ZCR-6002H(商品名)、及びKAYARAD(登録商標)ZCR-6006H(商品名)が挙げられる。これらのエチレン性不飽和基を有する化合物は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0084】
樹脂層となる樹脂組成物におけるエチレン性不飽和基を有する化合物の含有量は、(D)成分のエチレン性不飽和二重結合基当量に対して0.1乃至500当量となる量が好ましい。
尚、本明細書におけるエチレン性不飽和二重結合基当量は、原料から算出した理論エチレン性不飽和二重結合基当量を意味する。
【0085】
次に(G)成分について説明する。
(G)成分は(F)成分の硬化反応を促進するものであれば特に限定されず、(F)成分の硬化剤として従来公知のものを使用可能である。(G)成分は1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0086】
(F)成分がマレイミド樹脂の場合、(G)成分として公知のアミン化合物やチオール化合物、ラジカル開始剤を使用できる。
アミノ化合物の具体例としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、m-キシレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、イソホロンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン、N-アミノエチルピペラジン、アニリン・ホルマリン樹脂等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。樹脂層となる樹脂組成物が(F)成分としてマレイミド樹脂を含有する場合のアミン化合物の添加量は、質量比で(F)成分の好ましくは5倍以下、より好ましくは2倍以下の範囲である。
また、チオール化合物の具体例としては、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトルヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアネート等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。樹脂層となる樹脂組成物が(F)成分としてマレイミド樹脂を含有する場合のチオール化合物の添加量は、質量比で本発明の(F)成分の好ましくは5倍以下、より好ましくは2倍以下の範囲である。
また、ラジカル開始剤の具体例としては、ジクミルパーオキサイド及びジブチルパーオキサイド等の過酸化物類、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物類等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。樹脂層となる樹脂組成物が(F)成分としてマレイミド樹脂を含有する場合のラジカル開始剤の添加量は、マレイミド樹脂に対して0.1乃至10質量%である。
特に反応速度と誘電特性の観点から、ラジカル開始剤を使用することが好ましい。
【0087】
(F)成分がエポキシ樹脂の場合、(G)成分として公知のイミダゾール化合物やホスフィン化合物、フェノール樹脂、アミノ化合物が使用できる。
イミダゾール化合物及びホスフィン化合物の具体例としては、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾ-ル類、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール及び1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物等が挙げられるこれらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。樹脂層となる樹脂組成物が(F)成分としてエポキシ樹脂を含有する場合のイミダゾール化合物又はホスフィン化合物の添加量は、エポキシ樹脂に対して0.1乃至10質量%である。
また、フェノール樹脂の具体例としてはビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェノール、ビスフェノールAD等)、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、芳香族置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、アルキル置換ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)と各種アルデヒド(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アルキルアルデヒド、ベンズアルデヒド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒド等)との重縮合物、フェノール類と各種ジエン化合物(ジシクロペンタジエン、テルペン類、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、テトラヒドロインデン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル、ブタジエン、イソプレン等)との重合物、フェノール類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等)との重縮合物、フェノール類と芳香族ジメタノール類(ベンゼンジメタノール、α,α,α’,α’-ベンゼンジメタノール、ビフェニルジメタノール、α,α,α’,α’-ビフェニルジメタノール等)との重縮合物、フェノール類と芳香族ジクロロメチル類(α,α’-ジクロロキシレン、ビスクロロメチルビフェニル等)との重縮合物、ビスフェノール類と各種アルデヒドの重縮合物、及びこれらの変性物が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく2種以上を用いてもよい。樹脂層となる樹脂組成物が(F)成分としてエポキシ樹脂を含有する場合のフェノール樹脂の添加量は、エポキシ樹脂に対して質量比で(F)成分の好ましくは5倍以下、より好ましくは2倍以下の範囲である。
また、アミノ化合物の具体例としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、m-キシレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、イソホロンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン、N-アミノエチルピペラジン、アニリン・ホルマリン樹脂等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。樹脂層となる樹脂組成物が(F)成分としてエポキシ樹脂を含有する場合のアミン化合物の添加量は、重量比で(F)成分の好ましくは5倍以下、より好ましくは2倍以下の範囲である。
誘電特性の観点から、イミダゾール化合物やホスフィン化合物を使用することが好ましい。
【0088】
(F)成分がエチレン性不飽和基を有する化合物の場合、(G)成分としてラジカル開始剤を使用することが好ましい。
ラジカル開始剤の具体例としては、ジクミルパーオキサイド及びジブチルパーオキサイド等の過酸化物類、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物類等が挙げられるこれらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。樹脂層となる樹脂組成物がエチレン性不飽和基を有する化合物を含有する場合のラジカル開始剤の添加量は、組成物中の全エチレン性不飽和基に対して0.1乃至10質量%である。
【0089】
樹脂層となる樹脂組成物に有機溶剤を併用して、ワニス状の組成物(以下、単にワニスという)とすることができる。
併用し得る溶剤としては、例えばγ-ブチロラクトン類、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド及びN,N-ジメチルイミダゾリジノン等のアミド系溶剤、テトラメチレンスルフォン等のスルフォン類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート及びプロピレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン及びシクロヘキサノン等のケトン系溶剤、トルエン及びキシレンなどの芳香族系溶剤が挙げられる。
有機溶剤は、ワニス中の有機溶剤以外の成分濃度が好ましくは10乃至80質量%、より好ましくは20乃至70質量%となる範囲で使用する。
【0090】
樹脂層となる樹脂組成物には、必要に応じて公知の添加剤を併用してもよい。
併用し得る添加剤の具体例としては、ポリブタジエン又はこの変性物、アクリロニトリル共重合体の変性物、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリイミド、フッ素樹脂、マレイミド系化合物、シアネートエステル系化合物、シリコーンゲル、シリコーンオイル、並びにアルミナ、炭酸カルシウム、石英粉、アルミニウム粉末、グラファイト、タルク、クレー、酸化鉄、酸化チタン、窒化アルミニウム、アスベスト、マイカ、ガラス粉末及び比表面積が1.0乃至20m/g以外のシリカ等の無機充填材、シランカップリング剤のような充填材の表面処理剤、離型剤、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の着色剤、アエロジル等のチキソトロピー付与剤、シリコーン系、フッ素系のレベリング剤や消泡剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノール系重合禁止剤、安定剤、酸化防止剤、光重合開始剤、光塩基発生材、光酸発生剤等が挙げられる。これら添加剤の配合量は、(D)成分、(E)成分、(F)成分及び(G)成分の合計100質量部に対して好ましくは1,000質部以下、より好ましくは700質部以下の範囲であるが、本発明の効果を損なわないことが前提条件である。
【0091】
樹脂層となる樹脂組成物の調製方法は特に限定されないが、各成分を均一に混合するだけでもよい。各成分の混合には溶剤の不存在下では例えば押出機、ニーダ、ロールなどを使用し用い、溶剤の存在下では攪拌装置つきの反応釜などを使用する。
【0092】
次に、表面粗さ(Rz)が1.1μm以下の銅箔の粗化面又は無粗化銅箔の表面に樹脂組成物からなる樹脂層を設けて本発明の樹脂付き銅箔を得る方法を説明する。
本発明の樹脂付き銅箔は、各種公知の方法で得ることができる。具体的には、樹脂組成物を加熱し粘度を下げキャスティングする手法や、溶液を塗布し溶剤を乾燥させる手法が挙げられる。
樹脂組成物の塗工手段は特に制限されず、カーテンコーター、ロールコーター、ラミネーターなどが挙げられる。また各種レベリング手段を併用してもよい
また銅箔としては、表面粗さ(Rz)が1.1μm以下の銅箔の粗化面又は無粗化銅箔であれば各種公知のものを特に制限なく使用できる。具体的には、圧延銅箔や、電解銅箔などが挙げられる。その厚みも特に制限されず、また表面処理(粗化、防錆化)が施されたモノであってもよい。
【0093】
樹脂組成物からなる樹脂層は、未硬化であってもよく、また、加熱下に部分硬化させたものであってもよい。部分硬化の樹脂層は、いわゆるBステージと呼ばれる状態にある。尚、樹脂層の厚さは限定されないが、好ましくは12乃至105μm程度である。
【0094】
銅箔の表面に設けられた樹脂組成物からなる樹脂層を加熱により硬化物(樹脂層)とすることにより、本発明の銅張積層体とすることができる。
樹脂組成物からなる樹脂層の硬化温度及び硬化時間は、(D)成分が有する官能基と(F)成分が有する反応性基との組合せ等を考慮して選択すればよいが、例えば、樹脂組成物がマレイミド樹脂やエポキシ樹脂を含有する場合の硬化温度は、120乃至250℃が好ましく、硬化時間は概ね数十分間乃至数時間程度である。
【0095】
尚、樹脂組成物からなる樹脂層の表面に、ポリイミドフィルムもしくはLCP(液晶ポリマー)等を積層させ、熱プレス後、加熱硬化することにより本発明の銅張積層体を備えた基材を得ることもできる。銅張積層体を備えた基材としては、例えば銅張積層板(CCL)、またはCCLの銅箔に回路パターンを有するプリント配線板や多層配線板等が挙げられる。
【実施例
【0096】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例における「部」は質量部を、「%」は質量%を意味する。尚、実施例におけるGPCの測定条件は以下の通りである。
機種:TOSOH ECOSEC Elite HLC-8420GPC
カラム:TSKgel Super AWM-H
溶離液:NMP(N-メチルピロリドン);0.5ml/分、40℃
検出器:UV(示差屈折計)
分子量標準:ポリスチレン
【0097】
合成例1((D)成分(ポリイミド樹脂1)の合成)
温度計、還流冷却器、ディーンスターク装置、粉体導入口、窒素導入装置及び撹拌装置を取り付けた300mlの反応器に、DAPBAF(2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(2-アミノフェノール)(和歌山精化工業株式会社製、分子量366.26g/mol) 0.67部、PRIAMINE1075(クローダジャパン株式会社製、分子量539.52g/mol) 11.69部、BAFL(9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、JFEケミカル株式会社製、分子量348.16g/mol) 5.89部、及びアニソール 68.24部を入れて70℃に加熱した。次いで、ODPA(オキシジフタル酸無水物、マナック株式会社製、分子量310.22g/mol) 12.41部、トリエチルアミン 0.81部及びトルエン 18.97部を加え、アミック酸の閉環に伴い生成した水をトルエンとの共沸で除去しながら130℃で8時間反応させてイミド化物(P)溶液(P-1)(フェノール性OH当量、7,953g/eq.、分子量99,300)を得た。続いて、カレンズMOI(昭和電工株式会社製、分子量155.15g/mol) 0.60部、重合禁止剤としてBHT(2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール) 0.08部を入れ、130℃で4時間反応させた後、残留するトリエチルアミンとトルエンを引き続き130℃で除去することによってポリイミド樹脂1溶液(ポリイミド1)を得た。
合成例1で用いたジアミン成分((a1)成分、(a2)成分及び(a3)成分)と酸無水物成分((B)成分)のモル比(ジアミン成分のモル数/酸無水物成分のモル数)は1.01、また、フェノール性水酸基と反応し得る官能基とエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(C)成分のモル数をMC、イミド化物(P)溶液(P-1)のフェノール性水酸基のモル数をMAB、イミド化物(P)溶液(P-1)の末端官能基のモル数をMPとすると、MC/(MAB+MP)=0.91であった。
【0098】
合成例2((D)成分(ポリイミド樹脂2)の合成)
温度計、還流冷却器、ディーンスターク装置、粉体導入口、窒素導入装置及び撹拌装置を取り付けた300mlの反応器に、DAPBAF(2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン4,4‘-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(2-アミノフェノール)(和歌山精化工業株式会社製、分子量366.26g/mol) 0.70部、PRIAMINE1075(クローダジャパン株式会社製、分子量534.38g/mol) 11.22部、APB-N(1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、三井化学ファイン株式会社、分子量292.12g/mol) 5.16部、及びアニソール 65.66部を入れて70℃に加熱した。次いで、ODPA(オキシジフタル酸無水物、マナック株式会社製、分子量310.22g/mol) 12.41部、トリエチルアミン 0.81部及びトルエン 18.64部を加え、アミック酸の閉環に伴い生成した水をトルエンとの共沸で除去しながら130℃で8時間反応させてイミド化物(P)溶液(P-2)(フェノール性OH当量、7,302.3g/eq.、分子量101,200)を得た。続いて、カレンズMOI(昭和電工株式会社製、分子量155.15g/mol) 0.60部、重合禁止剤としてBHT(2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール) 0.09部を入れ、130℃で4時間反応させた後、残留するトリエチルアミンとトルエンを引き続き130℃で除去することによってポリイミド樹脂2溶液(ポリイミド2)を得た。
合成例2で用いたジアミン成分((a1)成分、(a2)成分及び(a3)成分)と酸無水物成分((B)成分)のモル比(ジアミン成分のモル数/酸無水物成分のモル数)は1.01、また、フェノール性水酸基と反応し得る官能基とエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(C)成分のモル数をMC、イミド化物(P)溶液(P-2)のフェノール性水酸基のモル数をMAB、イミド化物溶液(P-2)の末端官能基のモル数をMPとすると、MC/(MAB+MP)=0.90であった。
【0099】
合成例3((D)成分(ポリイミド樹脂3)の合成)
温度計、還流冷却器、ディーンスターク装置、粉体導入口、窒素導入装置及び撹拌装置を取り付けた300mlの反応器に、DAPBAF(2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(2-アミノフェノール)(和歌山精化工業株式会社製、分子量366.26g/mol) 0.69部、PRIAMINE1075(クローダジャパン株式会社製、分子量534.38g/mol) 11.45部、APB-N(1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、三井化学ファイン株式会社、分子量292.12g/mol) 5.05部、及びアニソール 70.0部を入れて70℃に加熱した。次いで、BTDA(3,3’,4,4‘-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ダイセル株式会社製、分子量322.01g/mol) 12.88部、トリエチルアミン 0.81部及びトルエン 18.80部を加え、アミック酸の閉環に伴い生成した水をトルエンとの共沸で除去しながら130℃で8時間反応させイミド化物(P)溶液(P-3)(フェノール性OH当量、7,614.3g/eq.、分子量86,200)を得た。続いて、カレンズMOI(昭和電工株式会社製、分子量155.15g/mol) 0.60部、重合禁止剤としてBHT(2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール) 0.09部を入れ、130℃で4時間反応させた後、残留するトリエチルアミンとトルエンを引き続き10℃で除去することによってポリイミド樹脂3溶液(ポリイミド3)を得た。
合成例3で用いたジアミン成分((a1)成分、(a2)成分及び(a3)成分)と酸無水物成分((B)成分)のモル比(ジアミン成分のモル数/酸無水物成分のモル数)は1.01、また、フェノール性水酸基と反応し得る官能基とエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(C)成分のモル数をMC、イミド化物(P)溶液(P-3)のフェノール性水酸基のモル数をMAB、イミド化物(P)溶液(P-3)の末端官能基のモル数をMPとすると、MC/(MAB+MP)=0.90であった。
【0100】
合成例4((D)成分(ポリイミド樹脂4)の合成)
温度計、還流冷却器、ディーンスターク装置、粉体導入口、窒素導入装置及び撹拌装置を取り付けた300mlの反応器に、DAPBAF(2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(2-アミノフェノール)(和歌山精化工業株式会社製、分子量366.26g/mol) 0.69部、PRIAMINE1075(クローダジャパン株式会社製、分子量534.38g/mol)11.92部、BAFL(9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、JFEケミカル株式会社製、分子量348.16g/mol) 6.01部、及びアニソール 69.0部を入れて70℃に加熱した。次いで、ODPA(オキシジフタル酸無水物、マナック株式会社製、分子量310.22g/mol) 12.41部、トリエチルアミン 0.81部及びトルエン 19.08部を加え、アミック酸の閉環に伴い生成した水をトルエンとの共沸で除去しながら130℃で8時間反応させてイミド化物(P)溶液(P-4)(フェノール性OH当量、7,895g/eq.、分子量64,000)を得た。続いて、カレンズMOI(昭和電工株式会社製、分子量155.15g/mol) 0.58部、重合禁止剤としてBHT(2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール) 0.09部を入れ、130℃で4時間反応させた後、残留するトリエチルアミンとトルエンを引き続き130℃で除去することによってポリイミド樹脂4溶液(ポリイミド4)を得た。
合成例4で用いたジアミン成分((a1)成分、(a2)成分及び(a3)成分)と酸無水物成分((B)成分)のモル比(ジアミン成分のモル数/酸無水物成分のモル数)は1.01、また、フェノール性水酸基と反応し得る官能基とエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(C)成分のモル数をMC、イミド化物(P)溶液(P-4)のフェノール性水酸基のモル数をMAB、イミド化物(P)溶液(P-4)の末端官能基のモル数をMPとすると、MC/(MAB+MP)=0.85であった。
【0101】
合成例5((D)成分(比較用ポリイミド樹脂1)の合成)
温度計、還流冷却器、ディーンスターク装置、粉体導入口、窒素導入装置及び撹拌装置を取り付けた300mlの反応器に、DAPBAF(2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(2-アミノフェノール)(和歌山精化工業株式会社製、分子量366.26g/mol) 0.67部、PRIAMINE1075(クローダジャパン株式会社製、分子量539.52g/mol) 11.69部、BAFL(9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、JFEケミカル株式会社製、分子量348.16g/mol) 5.89部、及びアニソール 68.24部を入れて70℃に加熱した。次いで、ODPA(オキシジフタル酸無水物、マナック株式会社製、分子量310.22g/mol) 12.41部、トリエチルアミン 0.81部及びトルエン 18.97部を加え、アミック酸の閉環に伴い生成した水をトルエンとの共沸で除去しながら130℃で8時間反応させて比較用ポリイミド樹脂1溶液(比較用ポリイミド1)(フェノール性OH当量、7,953g/eq.、分子量99,300)を得た。
合成例5で用いたジアミン成分((a1)成分、(a2)成分及び(a3)成分)と酸無水物成分((B)成分)のモル比(ジアミン成分のモル数/酸無水物成分のモル数)は1.01であった。
【0102】
合成例6((D)成分(比較用ポリイミド樹脂2)の合成)
温度計、還流冷却器、ディーンスターク装置、粉体導入口、窒素導入装置及び撹拌装置を取り付けた300mlの反応器に、PRIAMINE1075(クローダジャパン株式会社製、分子量534.38g/mol) 11.38部、BAFL(9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、JFEケミカル株式会社製、分子量348.16g/mol) 5.64部、及びアニソール 170.06部を入れて70℃に加熱した。次いで、ODPA(オキシジフタル酸無水物、マナック株式会社製、分子量310.22g/mol) 12.88部、トリエチルアミン 0.81部及びトルエン 18.75部を加え、アミック酸の閉環に伴い生成した水をトルエンとの共沸で除去しながら130℃で8時間反応させた後、残留するトリエチルアミンとトルエンを引き続き130℃で除去することによって比較用ポリイミド樹脂2溶液(比較用ポリイミド2)(分子量89,400)を得た。合成例6で用いたジアミン成分((a1)成分、(a2)成分及び(a3)成分)と酸無水物成分((B)成分)のモル比(ジアミン成分のモル数/酸無水物成分のモル数)は1.01であった。
【0103】
合成例7((D)成分(比較用ポリイミド樹脂3)の合成)
温度計、還流冷却器、ディーンスターク装置、粉体導入口、窒素導入装置及び撹拌装置を取り付けた300mlの反応器に、DAPBAF(2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン4,4‘-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(2-アミノフェノール)(和歌山精化工業株式会社製、分子量366.26g/mol) 6.60部、PRIAMINE1075(クローダジャパン株式会社製、分子量534.38g/mol) 12.07部、及びアニソール 70.20部を入れて70℃に加熱した。次いで、ODPA(オキシジフタル酸無水物、マナック株式会社製、分子量310.22g/mol) 12.88部、トリエチルアミン 0.81部及びトルエン 19.23部を加え、アミック酸の閉環に伴い生成した水をトルエンとの共沸で除去しながら130℃で8時間反応させてイミド化物(P)溶液(P-7)(フェノール性OH当量、835g/eq.、分子量32,200)を得た。 続いて、カレンズMOI(昭和電工株式会社製、分子量155.15g/mol) 5.96部、重合禁止剤としてBHT(2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール) 1.0部を入れ、130℃で4時間反応させた後、残留するトリエチルアミンとトルエンを引き続き130℃で除去することによって比較用ポリイミド樹脂3溶液(比較用ポリイミド3)を得た。
合成例7で用いたジアミン成分((a1)成分、(a2)成分及び(a3)成分)と酸無水物成分((B)成分)のモル比(ジアミン成分のモル数/酸無水物成分のモル数)は1.01、また、フェノール性水酸基と反応し得る官能基とエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(C)成分のモル数をMC、イミド化物(P)溶液(P-7)のフェノール性水酸基のモル数をMAB、イミド化物(P)溶液(P-7)の末端官能基のモル数をMPとすると、MC/(MAB+MP)=0.55であった。
【0104】
配合例1乃至30(樹脂組成物の調整(配合例1乃至20は本発明の樹脂付き銅箔用の樹脂組成物、配合例21乃至30は比較例の樹脂付き銅箔用の樹脂組成物)
表1乃至3に示した配合量(単位は「部」、表中の部数は、溶剤を含まない固形分換算の部数である)で各成分を配合した後、固形分濃度が20質量%となる量のアニソールを溶剤として追加して均一に混合することにより、樹脂付き銅箔の樹脂層となる樹脂組成物をそれぞれ調整した。
【0105】
表1乃至3における各成分は以下の通りである。尚、無機充填剤の比表面積はBET法で測定した値である。
<ポリイミド樹脂>
(D-1)乃至(D-4);合成例1乃至4で得られたポリイミド1乃至4
(D-5)乃至(D-7);合成例5乃至7で得られた比較用ポリイミド1乃至3
<熱硬化性樹脂>
MIR-3000-70MT;マレイミド樹脂、日本化薬(株)製
XD-1000;エポキシ樹脂、日本化薬(株)製
ZXR-1889H;エポキシアクリレート樹脂、日本化薬(株)製
<無機充填剤>
(E-1);SFP-30M(デンカ株式会社製、溶融シリカ、平均粒子径0.6μm、比表面積6.2m/g)
(E-2);SFP-20M(デンカ株式会社製、溶融シリカ、平均粒子径0.4μm、比表面積11.2m/g)
(E-3);FB-3SDC(デンカ株式会社製、溶融シリカ、平均粒子径3.1μm、比表面積3.6m/g)
(E-4);Sciqas0.7μm(堺化学工業株式会社製、溶融シリカ、平均粒子径0.7μm、比表面積4.3m/g)
(E-5)BA-1(日記触媒化成株式会社製、中空シリカ、平均粒子径16μm、比表面積2.0m/g)
(E-6);Sciqas0.7μm(堺化学工業株式会社製、表面エポキシシラン処理溶融シリカ、平均粒子径0.7μm、比表面積4.3m/g)
(E-7);Sciqas0.7μm(堺化学工業株式会社製、表面ポリシロキサン処理溶融シリカ、平均粒子径0.7μm、比表面積4.3m/g)
(E-8);10SX-CH1(株式会社アドマテックス製、表面アミノシラン処理溶融シリカ、5μm粗粒カット後平均粒子径1.1μm、比表面積15m/g)
(E-9);Sciqas0.1μm(堺化学工業株式会社製、溶融シリカ、平均粒子径0.1μm、比表面積21.5m/g)
(E-10);ナノエースD600(日本タルク株式会社製、タルク、平均粒子径0.6μm、比表面積24m/g)
(E-11);DAW-03(デンカ株式会社製、アルミナ、平均粒子径4.9μm、比表面積0.5m/g)
<硬化剤>
DCP;ジクミルパーオキシド、化薬ヌーリオン(株)製
<添加剤>
KR-513;シランカップリング剤、信越化学(株)製
TT-LX;潤滑油添加剤、城北化学(株)製
KTL-8FH;テフロン(登録商標)パウダー、平均粒子径3.5μm、株式会社喜多村製
【0106】
実施例1乃至20及び比較例1乃至10(本発明及び比較例の樹脂付き銅箔の作製)
福田金属箔粉工業株式会社製の超低粗度無粗化処理電解銅箔CF-T9DA-SV(以下、「T9DA」と記載する。銅箔の厚さ12μm、表面粗さ0.85μm。)の粗面に、オートマチックアプリケータを用いて、塗布、乾燥後の樹脂層の膜厚が30μmとなる量の配合例1乃至20の樹脂組成物をそれぞれ塗布し、120℃で10分間加熱乾燥して実施例1乃至20の樹脂付き銅箔を作成した。また、配合例21乃至30の樹脂組成物を用いて、前記と同じ方法で比較例1乃至10の樹脂付き銅箔を作製した。
【0107】
(樹脂付き銅箔の有する樹脂層の膜厚のばらつき評価)
実施例1乃至20及び比較例1乃至10で得られた樹脂付き銅箔について、任意で選んだ10ヶ所の厚さの測定値から銅箔の厚さ除して、樹脂層の10ヶ所の膜厚を求めた。前記で求めた10ヶ所の膜厚のうち、最大の膜厚と最小の膜厚の差を算出し、下記の評価基準で膜厚のばらつきを評価した。結果を表1乃至3に示した。
〇・・・最大の膜厚と最小値の膜厚の差が4.0μm未満
×・・・最大の膜厚と最小値の膜厚の差が4.0μm以上
【0108】
実施例21乃至40及び比較例11乃至20(本発明及び比較例の銅張積層体の作製)
実施例1乃至20及び比較例1乃至10で得られた樹脂付き銅箔の樹脂層にPPEプリプレグ(Meteorwave4000、AGC nelco(株)製)を重ね合わせ、200℃で60分間、3MPaの条件で真空プレスして樹脂層を硬化させることにより実施例21乃至40及び比較例11乃至20の銅張積層体をそれぞれ作成した。
【0109】
(銅張積層体の接着強度の評価)
実施例21乃至40及び比較例11乃至20で得られた各銅張積層体を10mm幅に切り出し、オートグラフAGS-X-500N(株式会社島津製作所製)を用いて、PPEプリプレグと樹脂組成物の硬化物からなる樹脂層を有する銅箔との間の90°引きはがし強さ(引き剥がし速度は50mm/min)を測定し、下記の評価基準で接着強度を評価した。尚、試験後のサンプルを目視で確認したところ、全て凝集破壊が起こっていた。結果を表1乃至3に示した。
◎・・・6.5N/cm以上
〇・・・5.5N/cm以上6.5N/cm未満
△・・・4.5N/cm以上5.5N/cm未満
×・・・4.5N/cm未満
【0110】
(銅張積層体の熱特性の評価)
実施例1乃至20及び比較例1乃至10で得られた樹脂付き銅箔を、POT-200C(太洋電機産業株式会社製)で288℃に熱したハンダ浴にフロートさせ、フクレが出るまでの時間を測定し、下記の評価基準で熱特性を評価した。結果を表1乃至3に示した。
◎・・・10分以上膨れなし
〇・・・1分以上10分未満で膨れ発生
×・・・1分未満で膨れ発生
【0111】
(樹脂組成物の硬化物からなる樹脂層の誘電率及び誘電正接の評価)
配合例1乃至30の樹脂組成物の塗布量を、樹脂層の膜厚が30μmとなる量から100μmとなる量に変更した以外は実施例1乃至20及び比較例1乃至10と同じ方法で樹脂付き銅箔を作製した後、200℃で60分間加熱して樹脂層を硬化させて銅張積層体をそれぞれ得た。前記で得られた銅張積層体の銅箔を、液比重45ボーメ度の塩化鉄(III)溶液でエッチングして除去し、イオン交換水で洗浄後、105℃で10分間乾燥することにより樹脂組成物の硬化物からなる樹脂層をそれぞれ得た。前記で得られた樹脂層について、オートグラフAGS-X-500N(株式会社島津製作所製)を用いて破断点応力、破断点伸度、弾性率を、またネットワークアナライザー8719ET(アジレントテクノロジー製)を用いて空洞共振法によって10GHzにおける誘電率及び誘電正接を測定した。結果を表1乃至3に示した。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【0114】
【表3】
【0115】
表1乃至3の結果より、本発明の樹脂付き銅箔は膜厚のばらつきが少なく、また樹脂付き銅箔の有する樹脂組成物からなる樹脂層を硬化させて得られる銅張積層体は接着強度及び耐熱性が高く、更に樹脂組成物からなる樹脂層の硬化物は誘電特性に優れていることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の樹脂付き銅箔の有する樹脂層となる樹脂組成物は塗工性に優れるため、容易な方法で樹脂付き銅箔を調製することが出来る。また、本発明の樹脂付き銅箔の有する樹脂組成物からなる樹脂層を硬化させていられる銅張積層体は、樹脂層の硬化物と銅箔との接着性に優れ、樹脂層の硬化物の耐熱性が良好であると共に、誘電特性に優れるため、プリント配線板等に好適に用いることができる。