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特許7698577組織常在メモリー様T細胞を生成するための方法及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-17
(45)【発行日】2025-06-25
(54)【発明の名称】組織常在メモリー様T細胞を生成するための方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20250618BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20250618BHJP
   A61K 35/17 20250101ALI20250618BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250618BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250618BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20250618BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20250618BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250618BHJP
【FI】
C12N5/0783
C12N15/09 Z ZNA
A61K35/17
A61P35/00
A61P29/00
A61P37/04
A61P37/06
A61P43/00 121
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2021521143
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 US2019057016
(87)【国際公開番号】W WO2020081987
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】62/747,523
(32)【優先日】2018-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/846,270
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518256430
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ ザ ユニヴァーシティ オブ テキサス システム
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】イー カッシアン
(72)【発明者】
【氏名】ハサン ファーラー
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0228839(US,A1)
【文献】ZAID, A., et al.,"Chemokine receptor-dependent control of skin tissue-resident memoty T cell formation.",THE JOURNAL OF IMMUNOLOGY,2017年10月01日,Vol.199, No.7,pp.2451-2459,DOI: 10.4049/jimmunol.1700571
【文献】NIZARD, M., et al.,"Induction of resident memory T cells enhances the efficacy of cancer vaccine.",NATURE COMMUNICATIONS,2017年05月24日,Vol.8,15221 (pp.1-11),DOI: 10.1038/ncomms15221
【文献】MA, C., et al.,"TGF-beta controls the formation of kidney-resident T cells via promoting effector T cell extravasation.",THE JOURNAL OF IMMUNOLOGY,2017年01月15日,Vol.198, No.2,pp.749-756,DOI: 10.4049/jimmunol.1601500
【文献】HOMBRINK, P., et al.,"Programs for the persistence, vigilance and control of human CD8+ lung-resident memory T cells.",NATURE IMMUNOLOGY,2016年11月28日,Vol.17, No.12,pp.1467-1478,DOI: 10.1038/ni.3589
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00- 7/08
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/00- 3/00
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織常在メモリー様T細胞(TRM様T細胞)を生成するためのインビトロ方法であって、
(a)初期エフェクター細胞を生成するため、T細胞の開始集団を低酸素条件下又は低酸素誘導剤の存在下で培養することと、ここで前記T細胞の開始集団が、末梢血サンプル中のCD45RA CCR7 CD8 ナイーブT細胞、または抗原特異的(四量体+)T細胞を含む
(b)TRM様T細胞を生成するため、前記初期エフェクター細胞をトランスフォーミング成長因子β1(TGF-β1)の存在下でさらに培養することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記末梢血サンプルが、健常対象、がんと診断された対象又はがんを有することが疑われている対象から得られたサンプルである、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記開始集団の前記T細胞が、培養前に、ペプチド、完全長抗原又は細胞ライセートでパルスされた抗原提示細胞により刺激される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記T細胞が、腫瘍部位から得られたT細胞であるか、又は腫瘍浸潤リンパ球である、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記T細胞が、ナイーブT細胞である、請求項に記載の方法。
【請求項6】
T細胞の前記開始集団が、CD8陽性及びペプチドMHC四量体陽性である細胞について濃縮するため、精製される、請求項に記載の方法。
【請求項7】
低酸素条件が、5%未満の酸素としてさらに定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記低酸素誘導剤が、低酸素模倣物である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記低酸素誘導剤又は低酸素模倣物が、塩化コバルト(CoCl)、デフェロキサミンメシル酸塩(DFOM)、ジメチルオキサリルグリシン(dimethyloxalyglycine)(DMOG)、又はプロリルヒドロキシラーゼ阻害剤である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤が、2-OG類似体、またはロキサデュスタット(FG-4592)である、請求項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(b)の培養が、抗CD3及び抗CD28抗体、抗CD3及び抗CD28ビーズ、支持細胞、抗原提示細胞、人工抗原提示細胞、ペプチド及び/若しくはタンパク質抗原、又はそれらの組み合わせを含む、TCR刺激及び同時刺激の存在下で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(b)の培養が、IL-15の存在下で実施される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記IL-15が、5~20ng/mLまたは10ng/mLの濃度で存在する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
TGF-β1が、組換えヒトTGF-β1(rhTGF-β1)としてさらに定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記rhTGF-β1が、0.1~5ng/mL、1~1.5ng/mL、または1.25ng/mLの濃度で存在する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(b)の培養が、低酸素条件下又は低酸素誘導剤の存在下で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記TRM様T細胞が、CD69CD103である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(b)で生成された前記細胞の少なくとも30%又は40%が、CD69CD103細胞である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記TRM様T細胞が、PD-1、CD101、及び/又はCD49aを発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記TRM様T細胞が、大気酸素条件下で培養された細胞と比べて、CD69、ITGAE、PDCD1及び/又はCD101のより高い発現を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記TRM様T細胞が、大気酸素条件下で培養された細胞と比べて、TNFα、GZMB、SLC2A1、及び/又はVEGFのより高い発現を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記TRM様T細胞が、CXCR6タンパク質の発現を本質的に有しない、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
抗原特異的なTRM様T細胞を生成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
抗原特異的なTRM様T細胞を生成することが、ステップ(a)及び/又はステップ(b)中、前記細胞をヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤の存在下で培養することを含み、前記HDAC阻害剤が、トリコスタチンA、トラポキシンB、フェニル酪酸、バルプロ酸、ボリノスタット(スベラニロヒドロキサム酸又はSAHA、Zolinza(登録商標)として市販)、ベリノスタット(PXD101、Beleodaq(登録商標)として市販)、パノビノスタット(Farydaq(登録商標)として市販)、ダシノスタット(LAQ824)、エンチノスタット(SNDX-275又はMS-275)、タセジナリン(CI994)、及びモセチノスタット(MGCD0103)からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
CXCR6タンパク質の発現を本質的に有しない、インビトロで培養され単離されたTRM様T細胞であって、TRM様T細胞が、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法によって生成されるTRM様T細胞。
【請求項26】
RM様T細胞が、
(a)PD-1、CD101、及び/又はCD49aを発現する、
(b)CD69CD103である、
(c)GNLY、MYO7A、ITGAE、EGR2、CCL20、ATP1B1、NR4A3、PERP、RASGEF1B、NR4A1、BMF、EGR1、CXCL13、PDCD1、ITGA1、CCL22、CA10、RGS1、ITGA1、CD101、TNFRSF9(4-1BB)、CCL4、CCL5、NOTCH1、RBPJ、STRIP2、ARHGEF40、DBH、SRGAP3、CSGALNACT1、GPR25、RGS16、DAPK2、NCS1、COL6A3、GDPD4、SLC1A4、CDK14、LMCD1、ILDR2、及び/又はADCY3を発現する、
(d)GNLY、MYO7A、ITGAE、EGR2、CCL20、ATP1B1、NR4A3、PERP、RASGEF1B、NR4A1、BMF、EGR1、CXCL13、PDCD1、ITGA1、CCL22、CA10、及び/又はRGS1を発現する、
(e)ITGAE、ITGA1、PDCD1、CD101、TNFRSF9(4-1BB)、CXCL13、CCL20、NOTCH1、RBPJ、NR4A1、EGR2、及び/又はRGS1を発現する、
(f)MYO7A、STRIP2、ARHGEF40、ITGAE、DBH、SRGAP3、CSGALNACT1、GPR25、RGS16、DAPK2、NCS1、COL6A3、GDPD4、SLC1A4、CXCL13、CDK14、LMCD1、ILDR2、及び/又はADCY3を発現する
(g)CD58、NR3C1、RAP1GAP2、SELP、CXCR2、TBX21、ITGAL、SELL、KLF3、KLF2、RASGRP2、FAM65B、SERPINE2、ITGAM、KLRB1、TGFBR3、SMAD3、TNFSF8、DUSP2、PLEK、GOLGA2P7、FOSB、PLCG2、SLAMF7、SLC6A8、SOCS3、及び/又はPTGER2を発現しないか又はそれらの発現を本質的に有しない
(h)CD58、NR3C1、RAP1GAP2、SELP、CXCR2、TBX21、ITGAL、SELL、KLF3、RASGRP2、ITGAM、KLRB1、TGFBR3、SMAD3、及び/又はTNFSF8を発現しないか又はそれらの発現を本質的に有しない、
(i)KLF2、KLF3、SELL、FAM65B、及び/又はSERPINE2を発現しないか又はそれらの発現を本質的に有しない、および/または
(j)DUSP2、PLEK、GOLGA2P7、FOSB、PLCG2、ITGAM、FOS、KLF3、SLAMF7、TNFSF8、SLC6A8、KLF2、SOCS3、及び/又はPTGER2を発現しないか又はそれらの発現を本質的に有しない、
請求項25に記載のTRM様T細胞。
【請求項27】
CXCR6タンパク質の発現を本質的に伴わないTRM様T細胞の有効量を含み、前記TRM様T細胞が、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法により生成される、対象における免疫関連障害の処置剤。
【請求項28】
前記免疫関連障害が、がん、自己免疫不全、移植片対宿主病、同種移植片拒絶、又は炎症性状態である、請求項27に記載の剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年10月18日に出願された米国仮特許出願第62/747,523号及び2019年5月10日に出願された米国仮特許出願第62/846,270号の利益を主張し、これら双方の全体は参照により本明細書中に援用される。
【0002】
配列表の援用
8KB(Microsoft Windows(登録商標)において測定された時)であり、2019年10月17日に作成された「UTFCP1408WO_ST25.txt」という名称のファイル中に含まれる配列表は、本明細書とともに電子申請により出願され、参照により本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0003】
1.分野
本発明は、一般に薬学及び免疫学の分野に関する。より詳細には、それは組織常在メモリー様T細胞を生成するための方法及びその使用に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2.関連技術の説明
組織常在メモリー細胞(TRM)は、ウイルス性疾患に対する局所的なフロントライン防御において重要であるメモリーT細胞の最近同定されたサブセットである。最近の報告では、この表現型を有する細胞が抗腫瘍免疫における重要な役割を担うことも示唆している。TRM分化に関しては比較的にほとんど知られておらず、内因性組織常在メモリー細胞は単離するのが困難であることで、基礎研究におけるそれらの試験及び養子細胞療法におけるそれらの応用が妨げられる。したがって、組織常在メモリー細胞を生成するための方法についての要求は満たされていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、本開示は、組織常在メモリー様T細胞(TRM様T細胞)を生成するためのインビトロ方法であって、(a)T細胞の開始集団を得ることと;(b)初期エフェクター細胞(early effector cells)を生成するため、T細胞の開始集団を低酸素条件下又は低酸素誘導剤の存在下で培養することと;(c)TRM様T細胞を生成するため、初期エフェクター細胞をトランスフォーミング成長因子β1(TGF-β1)の存在下でさらに培養することと、を含む方法を提供する。
【0006】
別の実施形態では、本開示は、組織常在メモリー様T細胞(TRM様T細胞)を生成するためのインビトロ方法であって、(a)T細胞の開始集団を得ることと;(b)初期エフェクター細胞を生成するため、T細胞の開始集団を低酸素条件下又は低酸素誘導剤の存在下で培養することと;(c)TRM様T細胞を生成するため、初期エフェクター細胞をトランスフォーミング成長因子β1(TGF-β1)、トランスフォーミング成長因子β2(TGF-β2)、トランスフォーミング成長因子β3(TGF-β3)又はトランスフォーミング成長因子β4(TGF-β4)の存在下でさらに培養することと、を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、培養は、初期エフェクター細胞を生成するため、T細胞の開始集団を活性化することを含む。
【0007】
さらに別の実施形態では、本開示は、TRM様T細胞を生成するためのインビトロ方法であって、(a)T細胞の開始集団を得ることと;(b)T細胞の開始集団を低酸素条件下又は低酸素誘導剤の存在下で培養することと;(c)TRM様T細胞を生成するため、T細胞の開始集団をTGF-β1の存在下でさらに培養することと、を含む方法を提供する。
【0008】
いくつかの態様では、T細胞の開始集団は、CD8末梢血T細胞である。具体的な態様では、CD8末梢血T細胞は、ヒトCD8末梢血T細胞である。特定の態様では、ヒトCD8末梢血T細胞を得ることは、末梢血サンプルからCD45RACCR7CD8ナイーブT細胞について選択することを含む。いくつかの態様では、末梢血サンプルは、健常対象から得られる。いくつかの態様では、末梢血サンプルは、がんと診断された対象又はがんを有することが疑われている対象から得られる。いくつかの態様では、末梢血サンプルは、ウイルス性疾患と診断された対象又はウイルス性疾患を有することが疑われている対象から得られる。特定の態様では、T細胞の開始集団は、ペプチド、完全長抗原又は細胞ライセートでパルスされた抗原提示細胞によるナイーブT細胞の刺激により生成された。特定の態様では、T細胞は、腫瘍部位から得られるか、又は腫瘍浸潤リンパ球である。いくつかの態様では、T細胞は、ナイーブT細胞である。例えば、細胞ライセートは、腫瘍ライセートである。具体的な態様では、抗原は、がん抗原である。いくつかの態様では、ペプチドは、がん細胞により差次的に発現されるか又は高度に発現されるタンパク質に由来するペプチドである。いくつかの態様では、ペプチドは、ネオ抗原に由来するか又は突然変異を含むタンパク質に由来するペプチドである。特定の態様では、T細胞の開始集団は、目的の抗原に特異的なT細胞について濃縮される。特定の態様では、T細胞の開始集団は、CD8陽性ペプチドMHC四量体陽性細胞について濃縮するため、精製される。いくつかの態様では、T細胞の開始集団は、蛍光標識細胞分取により精製される。特定の態様では、T細胞の開始集団は、改変されたT細胞である。いくつかの態様では、改変されたT細胞は、クローン化T細胞受容体(TCR)の宿主細胞の集団への導入により生成される。特定の態様では、宿主細胞の集団は、末梢血単核球である。いくつかの態様では、クローン化TCRは、非ウイルス的方法、例えばエピソームベクター又はトランスポゾン-トランスポザーゼ系により、宿主細胞の集団に導入される。特定の態様では、クローン化TCRは、形質導入により、宿主細胞の集団に導入される。いくつかの態様では、宿主細胞の集団は、TCRα鎖及びTCRβ鎖を含むウイルスベクターにより形質導入される。特定の態様では、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。いくつかの態様では、宿主細胞の形質導入された集団は、CD8陽性ペプチドMHC四量体陽性細胞について濃縮するため、精製される。特定の態様では、改変されたT細胞は、キメラ抗原受容体を発現した。具体的な態様では、キメラ抗原受容体は、クローン化TCRを含む。いくつかの態様では、T細胞の開始集団は、対象から得られた腫瘍浸潤リンパ球である。
【0009】
特定の態様では、低酸素条件は、5%未満の酸素、例えば、4%、3%、2%、1%、又はそれ以下の酸素としてさらに定義される。いくつかの態様では、低酸素誘導剤は、低酸素模倣物である。特定の態様では、低酸素誘導剤又は低酸素模倣物は、塩化コバルト(CoCl)、デフェロキサミンメシル酸塩(DFOM)、ジメチルオキサリルグリシン(dimethyloxalyglycine)(DMOG)、又はプロリルヒドロキシラーゼ阻害剤、例えば2-OG類似体である。いくつかの態様では、プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤は、ロキサデュスタット(FG-4592)である。
【0010】
いくつかの態様では、ステップ(b)の培養は、TCR刺激及び同時刺激の存在下で実施される。特定の態様では、TCR刺激及び同時刺激は、抗CD3及び抗CD28抗体、抗CD3及び抗CD28ビーズ、支持細胞、抗原提示細胞、人工抗原提示細胞、ペプチド及び/若しくはタンパク質抗原、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの態様では、TCR刺激及び同時刺激は、抗CD3及び抗CD28ビーズを含む。特定の態様では、ステップ(b)の培養は、3~5日間、例えば4日間実施される。特定の態様では、ステップ(b)の培養は、酸素正常状態、例えば20%酸素で実施される。特定の態様では、ステップ(b)の培養のステップは、例えば25~100IU/mL、例えば25、50、又は75IU/mLのIL-2の存在下で実施される。いくつかの態様では、ステップ(b)の培養は、低酸素条件、例えば2%酸素下で実施される。特定の態様では、培養は、IL-15の存在下で実施される。いくつかの態様では、IL-15は、5~20ng/mL、例えば7~12ng/mL、具体的には7、8、9、10、11、又は12ng/mLの濃度で存在する。
【0011】
特定の態様では、TGF-β1は、組換えヒトTGF-β1(rhTGF-β1)とさらに定義される。いくつかの態様では、rhTGF-β1は、0.1~5ng/mL、例えば1~1.5ng/mL、具体的には1.1、1.15、1.2、1.25、1.3、1.35、1.4、1.45、又は1.5ng/mLの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、rhTGF-β1は、約2、3、4、5、6、7、8、9、10ng/mLの濃度で存在する。さらに他の実施形態では、rhTGF-β1は、約15、20、25、30、35、40、45又は50ng/mLの濃度で存在する。いくつかの態様では、ステップ(c)の培養は、低酸素条件下又は低酸素誘導剤の存在下で実施される。特定の態様では、ステップ(c)の培養は、1~3日間、例えば2日間実施される。
【0012】
いくつかの態様では、TRM様T細胞は、CD69CD103である。特定の態様では、ステップ(c)で生成された細胞の少なくとも30%、例えば、40%、45%、50%、55%、60%又はそれ以上は、CD69CD103細胞である。いくつかの態様では、TRM様T細胞は、PD-1、CD101、及び/又はCD49aを発現する。特定の態様では、TRM様T細胞で発現されたPD-1、CD101、及び/又はCD49aは、(例えばフローサイトメトリーを介して)細胞表面発現として測定される。特定の態様では、TRM様T細胞は、大気酸素条件下で培養された細胞と比べて、CD69、ITGAE、PDCD1、及び/又はCD101のより高い発現を有する。特定の態様では、CD69、ITGAE、PDCD1、及び/又はCD101のより高い発現は、大気酸素条件下で培養された細胞と比べてのCD69、ITGAE、PDCD1、及び/又はCD101タンパク質のより高い発現である。他の態様では、CD69、ITGAE、PDCD1、及び/又はCD101のより高い発現は、大気酸素条件下で培養された細胞と比べてのCD69、ITGAE、PDCD1、及び/又はCD101 mRNA転写物のより高い発現である。
【0013】
特定の態様では、TRM様T細胞は、大気酸素条件下で培養された細胞と比べて、TNFA、GZMB、SLC2A1、及び/又はVEGFのより高い発現を有する。特定の態様では、TNFA、GZMB、SLC2A1、及び/又はVEGFのより高い発現は、大気酸素条件下で培養された細胞と比べてのTNFα、GZMB、GLUT1、及び/又はVEGFタンパク質のより高い発現である。他の態様では、TNFA、GZMB、SLC2A1、及び/又はVEGFのより高い発現は、大気酸素条件下で培養された細胞と比べてのTNFA、GZMB、SLC2A1、及び/又はVEGF mRNA転写物のより高い発現である。
【0014】
いくつかの態様では、TRM様T細胞は、大気酸素条件下で培養された細胞と比べて、S1PR1、KLF2、及び/又はSELLの減少した発現を有する。いくつかの態様では、TRM様T細胞は、大気酸素条件下で培養された細胞と比べて、S1PR1、KLF2、及び/又はCD62Lタンパク質の減少した発現を有する。いくつかの態様では、TRM様T細胞は、大気酸素条件下で培養された細胞と比べて、S1PR1、KLF2、及び/又はSELL mRNA転写物の減少した発現を有する。
【0015】
具体的な態様では、TRM様T細胞は、CXCR6タンパク質の発現を本質的に有しない。特定の態様では、TRM様T細胞は、CXCR6タンパク質の本質的に検出不能な細胞表面発現を有する。
【0016】
いくつかの態様では、TRM様T細胞は、大気酸素条件下で培養された細胞と比べて、GNLY、MYO7A、ITGAE、EGR2、CCL20、ATP1B1、NR4A3、PERP、RASGEF1B、NR4A1、BMF、EGR1、CXCL13、PDCD1、ITGA1、CCL22、CA10、RGS1、ITGA1、CD101、TNFRSF9(4-1BB)、CCL4、CCL5、NOTCH1、RBPJ、STRIP2、ARHGEF40、DBH、SRGAP3、CSGALNACT1、GPR25、RGS16、DAPK2、NCS1、COL6A3、GDPD4、SLC1A4、CDK14、LMCD1、ILDR2、及び/又はADCY3のより高い発現を有する。特定の態様では、GNLY、MYO7A、ITGAE、EGR2、CCL20、ATP1B1、NR4A3、PERP、RASGEF1B、NR4A1、BMF、EGR1、CXCL13、PDCD1、ITGA1、CCL22、CA10、RGS1、ITGA1、CD101、TNFRSF9(4-1BB)、CCL4、CCL5、NOTCH1、RBPJ、STRIP2、ARHGEF40、DBH、SRGAP3、CSGALNACT1、GPR25、RGS16、DAPK2、NCS1、COL6A3、GDPD4、SLC1A4、CDK14、LMCD1、ILDR2、及び/又はADCY3タンパク質のより高い発現。特定の態様では、GNLY、MYO7A、ITGAE、EGR2、CCL20、ATP1B1、NR4A3、PERP、RASGEF1B、NR4A1、BMF、EGR1、CXCL13、PDCD1、ITGA1、CCL22、CA10、RGS1、ITGA1、CD101、TNFRSF9(4-1BB)、CCL4、CCL5、NOTCH1、RBPJ、STRIP2、ARHGEF40、DBH、SRGAP3、CSGALNACT1、GPR25、RGS16、DAPK2、NCS1、COL6A3、GDPD4、SLC1A4、CDK14、LMCD1、ILDR2、及び/又はADCY3 mRNA転写物のより高い発現。
【0017】
いくつかの態様では、TRM様T細胞は、大気酸素条件下で培養された細胞と比べて、GNLY、MYO7A、ITGAE、EGR2、CCL20、ATP1B1、NR4A3、PERP、RASGEF1B、NR4A1、BMF、EGR1、CXCL13、PDCD1、ITGA1、CCL22、CA10、及び/又はRGS1のより高い発現を有する。特定の態様では、GNLY、MYO7A、ITGAE、EGR2、CCL20、ATP1B1、NR4A3、PERP、RASGEF1B、NR4A1、BMF、EGR1、CXCL13、PDCD1、ITGA1、CCL22、CA10、及び/又はRGS1のより高い発現は、GNLY、MYO7A、ITGAE、EGR2、CCL20、ATP1B1、NR4A3、PERP、RASGEF1B、NR4A1、BMF、EGR1、CXCL13、PDCD1、ITGA1、CCL22、CA10、及び/又はRGS1タンパク質のより高い発現である。特定の態様では、GNLY、MYO7A、ITGAE、EGR2、CCL20、ATP1B1、NR4A3、PERP、RASGEF1B、NR4A1、BMF、EGR1、CXCL13、PDCD1、ITGA1、CCL22、CA10、及び/又はRGS1のより高い発現は、GNLY、MYO7A、ITGAE、EGR2、CCL20、ATP1B1、NR4A3、PERP、RASGEF1B、NR4A1、BMF、EGR1、CXCL13、PDCD1、ITGA1、CCL22、CA10、及び/又はRGS1 mRNA転写物のより高い発現である。
【0018】
いくつかの態様では、TRM様T細胞は、大気酸素条件下で培養された細胞と比べて、ITGAE、ITGA1、PDC1、CD101、TNFRSF9(4-1BB)、CXCL13、CCL20、NOTCH1、RBPJ、NR4A1、EGR2、及び/又はRGS1のより高い発現を有する。特定の態様では、ITGAE、ITGA1、PDCD1、CD101、TNFRSF9(4-1BB)、CXCL13、CCL20、NOTCH1、RBPJ、NR4A1、EGR2、及び/又はRGS1のより高い発現は、ITGAE、ITGA1、PDCD1、CD101、TNFRSF9(4-1BB)、CXCL13、CCL20、NOTCH1、RBPJ、NR4A1、EGR2、及び/又はRGS1タンパク質のより高い発現である。特定の態様では、ITGAE、ITGA1、PDCD1、CD101、TNFRSF9(4-1BB)、CXCL13、CCL20、NOTCH1、RBPJ、NR4A1、EGR2、及び/又はRGS1のより高い発現は、ITGAE、ITGA1、PDCD1、CD101、TNFRSF9(4-1BB)、CXCL13、CCL20、NOTCH1、RBPJ、NR4A1、EGR2、及び/又はRGS1 mRNA転写物のより高い発現である。
【0019】
いくつかの態様では、TRM様T細胞は、大気酸素条件下で培養された細胞と比べて、MYO7A、STRIP2、ARHGEF40、ITGAE、DBH、SRGAP3、CSGALNACT1、GPR25、RGS16、DAPK2、NCS1、COL6A3、GDPD4、SLC1A4、CXCL13、CDK14、LMCD1、ILDR2、及び/又はADCY3のより高い発現を有する。特定の態様では、MYO7A、STRIP2、ARHGEF40、ITGAE、DBH、SRGAP3、CSGALNACT1、GPR25、RGS16、DAPK2、NCS1、COL6A3、GDPD4、SLC1A4、CXCL13、CDK14、LMCD1、ILDR2、及び/又はADCY3のより高い発現は、MYO7A、STRIP2、ARHGEF40、ITGAE、DBH、SRGAP3、CSGALNACT1、GPR25、RGS16、DAPK2、NCS1、COL6A3、GDPD4、SLC1A4、CXCL13、CDK14、LMCD1、ILDR2、及び/又はADCY3タンパク質のより高い発現である。特定の態様では、MYO7A、STRIP2、ARHGEF40、ITGAE、DBH、SRGAP3、CSGALNACT1、GPR25、RGS16、DAPK2、NCS1、COL6A3、GDPD4、SLC1A4、CXCL13、CDK14、LMCD1、ILDR2、及び/又はADCY3のより高い発現は、MYO7A、STRIP2、ARHGEF40、ITGAE、DBH、SRGAP3、CSGALNACT1、GPR25、RGS16、DAPK2、NCS1、COL6A3、GDPD4、SLC1A4、CXCL13、CDK14、LMCD1、ILDR2、及び/又はADCY3 mRNA転写物のより高い発現である。
【0020】
いくつかの態様では、TRM様T細胞は、大気酸素条件下で培養された細胞と比べて、CD58、NR3C1、RAP1GAP2、SELP、CXCR2、TBX21、ITGAL、SELL、KLF3、KLF2、RASGRP2、FAM65B、SERPINE2、ITGAM、KLRB1、TGFBR3、SMAD3、TNFSF8、DUSP2、PLEK、GOLGA2P7、FOSB、PLCG2、SLAMF7、SLC6A8、SOCS3、及び/又はPTGER2のより低い発現を有する。特定の態様では、CD58、NR3C1、RAP1GAP2、SELP、CXCR2、TBX21、ITGAL、SELL、KLF3、KLF2、RASGRP2、FAM65B、SERPINE2、ITGAM、KLRB1、TGFBR3、SMAD3TNFSF8、DUSP2、PLEK、GOLGA2P7、FOSB、PLCG2、SLAMF7、SLC6A8、SOCS3、及び/又はPTGER2のより低い発現は、CD58、NR3C1、RAP1GAP2、SELP、CXCR2、TBX21、ITGAL、SELL、KLF3、KLF2、RASGRP2、FAM65B、SERPINE2、ITGAM、KLRB1、TGFBR3、SMAD3、TNFSF8、DUSP2、PLEK、GOLGA2P7、FOSB、PLCG2、SLAMF7、SLC6A8、SOCS3、及び/又はPTGER2タンパク質のより低い発現である。特定の態様では、CD58、NR3C1、RAP1GAP2、SELP、CXCR2、TBX21、ITGAL、SELL、KLF3、KLF2、RASGRP2、FAM65B、SERPINE2、ITGAM、KLRB1、TGFBR3、SMAD3、TNFSF8、DUSP2、PLEK、GOLGA2P7、FOSB、PLCG2、SLAMF7、SLC6A8、SOCS3、及び/又はPTGER2のより低い発現は、CD58、NR3C1、RAP1GAP2、SELP、CXCR2、TBX21、ITGAL、SELL、KLF3、KLF2、RASGRP2、FAM65B、SERPINE2、ITGAM、KLRB1、TGFBR3、SMAD3、TNFSF8、DUSP2、PLEK、GOLGA2P7、FOSB、PLCG2、SLAMF7、SLC6A8、SOCS3、及び/又はPTGER2 mRNA転写物のより低い発現である。
【0021】
いくつかの態様では、TRM様T細胞は、大気酸素条件下で培養された細胞と比べて、CD58、NR3C1、RAP1GAP2、SELP、CXCR2、TBX21、ITGAL、SELL、KLF3、RASGRP2、ITGAM、KLRB1、TGFBR3、SMAD3、及び/又はTNFSF8のより低い発現を有する。特定の態様では、CD58、NR3C1、RAP1GAP2、SELP、CXCR2、TBX21、ITGAL、SELL、KLF3、RASGRP2、ITGAM、KLRB1、TGFBR3、SMAD3、及び/又はTNFSF8のより低い発現は、CD58、NR3C1、RAP1GAP2、SELP、CXCR2、TBX21、ITGAL、SELL、KLF3、RASGRP2、ITGAM、KLRB1、TGFBR3、SMAD3、及び/又はTNFSF8タンパク質のより低い発現である。特定の態様では、CD58、NR3C1、RAP1GAP2、SELP、CXCR2、TBX21、ITGAL、SELL、KLF3、RASGRP2、ITGAM、KLRB1、TGFBR3、SMAD3、及び/又はTNFSF8のより低い発現は、CD58、NR3C1、RAP1GAP2、SELP、CXCR2、TBX21、ITGAL、SELL、KLF3、RASGRP2、ITGAM、KLRB1、TGFBR3、SMAD3、及び/又はTNFSF8 mRNA転写物のより低い発現である。
【0022】
いくつかの態様では、TRM様T細胞は、大気酸素条件下で培養された細胞と比べて、GNLY、MYO7A、ITGAE、EGR2、CCL20、ATP1B1、NR4A3、PERP、RASGEF1B、NR4A1、BMF、EGR1、CXCL13、PDCD1、ITGA1、CCL22、CA10、及び/又はRGS1のより高い発現を有する。特定の態様では、GNLY、MYO7A、ITGAE、EGR2、CCL20、ATP1B1、NR4A3、PERP、RASGEF1B、NR4A1、BMF、EGR1、CXCL13、PDCD1、ITGA1、CCL22、CA10、及び/又はRGS1のより高い発現は、GNLY、MYO7A、ITGAE、EGR2、CCL20、ATP1B1、NR4A3、PERP、RASGEF1B、NR4A1、BMF、EGR1、CXCL13、PDCD1、ITGA1、CCL22、CA10、及び/又はRGS1タンパク質のより高い発現である。特定の態様では、GNLY、MYO7A、ITGAE、EGR2、CCL20、ATP1B1、NR4A3、PERP、RASGEF1B、NR4A1、BMF、EGR1、CXCL13、PDCD1、ITGA1、CCL22、CA10、及び/又はRGS1のより高い発現は、GNLY、MYO7A、ITGAE、EGR2、CCL20、ATP1B1、NR4A3、PERP、RASGEF1B、NR4A1、BMF、EGR1、CXCL13、PDCD1、ITGA1、CCL22、CA10、及び/又はRGS1 mRNA転写物のより高い発現である。
【0023】
いくつかの態様では、TRM様T細胞は、大気酸素条件下で培養された細胞と比べて、MYO7A、STRIP2、ARHGEF40、ITGAE、DBH、SRGAP3、CSGALNACT1、GPR25、RGS16、DAPK2、NCS1、COL6A3、GDPD4、SLC1A4、CXCL13、CDK14、LMCD1、ILDR2、及び/又はADCY3のより高い発現を有する。特定の態様では、MYO7A、STRIP2、ARHGEF40、ITGAE、DBH、SRGAP3、CSGALNACT1、GPR25、RGS16、DAPK2、NCS1、COL6A3、GDPD4、SLC1A4、CXCL13、CDK14、LMCD1、ILDR2、及び/又はADCY3のより高い発現は、MYO7A、STRIP2、ARHGEF40、ITGAE、DBH、SRGAP3、CSGALNACT1、GPR25、RGS16、DAPK2、NCS1、COL6A3、GDPD4、SLC1A4、CXCL13、CDK14、LMCD1、ILDR2、及び/又はADCY3タンパク質のより高い発現である。特定の態様では、MYO7A、STRIP2、ARHGEF40、ITGAE、DBH、SRGAP3、CSGALNACT1、GPR25、RGS16、DAPK2、NCS1、COL6A3、GDPD4、SLC1A4、CXCL13、CDK14、LMCD1、ILDR2、及び/又はADCY3のより高い発現は、MYO7A、STRIP2、ARHGEF40、ITGAE、DBH、SRGAP3、CSGALNACT1、GPR25、RGS16、DAPK2、NCS1、COL6A3、GDPD4、SLC1A4、CXCL13、CDK14、LMCD1、ILDR2、及び/又はADCY3 mRNA転写物のより高い発現である。
【0024】
さらなる態様では、方法は、目的の抗原に対する特異性を有するTRM様T細胞を生成することをさらに含む。いくつかの態様では、目的の抗原に対する特異性を有するTRM様T細胞は、目的の抗原に特異的なT細胞受容体(TCR)をTRM様T細胞に形質導入することにより改変される。他の態様では、目的の抗原に対する特異性を有するTRM様T細胞は、目的の抗原に対する特異性を有するT細胞の開始集団を使用することにより生成される。いくつかの態様では、TRM様T細胞は、ステップ(b)中、T細胞の開始集団をペプチドパルス抗原提示細胞(APC)、例えば人工APC(aAPC)とともに培養することにより活性化される。いくつかの態様では、APCは、成熟樹状細胞である。具体的な態様では、ステップ(b)及び(c)は、少なくとも1回反復される。いくつかの態様では、TRM様T細胞は、ステップ(b)及び/又はステップ(c)中、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤の存在下で培養される。特定の態様では、HDAC阻害剤は、トリコスタチンA、トラポキシンB、フェニル酪酸、バルプロ酸、ボリノスタット(スベラニロヒドロキサム酸又はSAHA、Zolinza(登録商標)として市販)、ベリノスタット(PXD101、Beleodaq(登録商標)として市販)、パノビノスタット(Farydaq(登録商標)として市販)、ダシノスタット(LAQ824)、エンチノスタット(SNDX-275又はMS-275)、タセジナリン(CI994)、及びモセチノスタット(MGCD0103)からなる群から選択される。
【0025】
いくつかの態様では、目的の抗原は、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺がん、及び肺の扁平上皮がんを含む)、腹膜のがん、胃(gastric)若しくは胃(stomach)がん(胃腸がん及び胃腸間質がんを含む)、膵がん、子宮頸がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜若しくは子宮がん、唾液腺がん、腎(kidney)若しくは腎(renal)がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、様々なタイプの頭頚部がん、又はメラノーマを標的化又は処置することが意図される。
【0026】
さらに、CXCR6タンパク質を発現しないか、実質的に発現しないか、又は本質的に発現しないTRM様T細胞が本明細書に提供される。いくつかの態様では、CXCR6タンパク質の非発現は、CXCR6タンパク質の非細胞表面発現である。他の態様では、TRM様T細胞は、CXCR6 mRNA転写物を発現するが、CXCR6タンパク質を発現しないか又は細胞表面上でCXCR6タンパク質を発現する。いくつかの態様では、TRM様T細胞は、目的の抗原に特異的である。別の実施形態では、上に提示されるようなTRM様T細胞の集団を含む医薬組成物が提供される。別の実施形態では、CXCR6タンパク質の発現を本質的に伴わないTRM様T細胞の集団及び薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物が提供される。いくつかの態様では、TRM様T細胞は、本実施形態の方法により生成される。いくつかの態様では、TRM様T細胞は、PD-1、CD101、及び/又はCD49aを発現する。特定の態様では、細胞の少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%又はそれ以上は、CD69CD103細胞である。特定の態様では、TRM様T細胞は、CD69CD103細胞である。いくつかの態様では、TRM様T細胞は、大気酸素条件下で培養された細胞と比べて、GNLY、MYO7A、ITGAE、EGR2、CCL20、ATP1B1、NR4A3、PERP、RASGEF1B、NR4A1、BMF、EGR1、CXCL13、PDCD1、ITGA1、CCL22、CA10、RGS1、ITGA1、CD101、TNFRSF9(4-1BB)、CCL4、CCL5、NOTCH1、RBPJ、STRIP2、ARHGEF40、DBH、SRGAP3、CSGALNACT1、GPR25、RGS16、DAPK2、NCS1、COL6A3、GDPD4、SLC1A4、CDK14、LMCD1、ILDR2、及び/又はADCY3のより高い発現を有する。いくつかの態様では、TRM様T細胞は、大気酸素条件下で培養された細胞と比べて、GNLY、MYO7A、ITGAE、EGR2、CCL20、ATP1B1、NR4A3、PERP、RASGEF1B、NR4A1、BMF、EGR1、CXCL13、PDCD1、ITGA1、CCL22、CA10、及び/又はRGS1のより高い発現を有する。いくつかの態様では、TRM様T細胞は、大気酸素条件下で培養された細胞と比べて、ITGAE、ITGA1、PDC1、CD101、TNFRSF9(4-1BB)、CXCL13、CCL20、NOTCH1、RBPJ、NR4A1、EGR2、及び/又はRGS1のより高い発現を有する。いくつかの態様では、TRM様T細胞は、大気酸素条件下で培養された細胞と比べて、MYO7A、STRIP2、ARHGEF40、ITGAE、DBH、SRGAP3、CSGALNACT1、GPR25、RGS16、DAPK2、NCS1、COL6A3、GDPD4、SLC1A4、CXCL13、CDK14、LMCD1、ILDR2、及び/又はADCY3のより高い発現を有する。いくつかの態様では、TRM様T細胞は、大気酸素条件下で培養された細胞と比べて、CD58、NR3C1、RAP1GAP2、SELP、CXCR2、TBX21、ITGAL、SELL、KLF3、KLF2、RASGRP2、FAM65B、SERPINE2、ITGAM、KLRB1、TGFBR3、SMAD3、及び/又はTNFSF8、DUSP2、PLEK、GOLGA2P7、FOSB、PLCG2、SLAMF7、SLC6A8、SOCS3、及び/又はPTGER2のより低い発現を有する。いくつかの態様では、TRM様T細胞は、大気酸素条件下で培養された細胞と比べて、CD58、NR3C1、RAP1GAP2、SELP、CXCR2、TBX21、ITGAL、SELL、KLF3、RASGRP2、ITGAM、KLRB1、TGFBR3、SMAD3、及び/又はTNFSF8のより低い発現を有する。いくつかの態様では、TRM様T細胞は、大気酸素条件下で培養された細胞と比べて、KLF2、KLF3、SELL、FAM65B、及び/又はSERPINE2のより低い発現を有する。いくつかの態様では、TRM様T細胞は、大気酸素条件下で培養された細胞と比べて、DUSP2、PLEK、GOLGA2P7、FOSB、PLCG2、ITGAM、FOS、KLF3、SLAMF7、TNFSF8、SLC6A8、KLF2、SOCS3、及び/又はPTGER2のより低い発現を有する。
【0027】
別の実施形態では、対象における免疫関連障害を処置するための、CXCR6タンパク質の発現を本質的に伴わないTRM様T細胞、例えば本実施形態の方法によって生成されるTRM様T細胞を有効量で含む組成物が提供される。特定の態様では、TRM様T細胞は、目的の抗原に対する特異性を有する。
【0028】
さらに、対象における免疫関連障害を処置するための、CXCR6タンパク質の発現を本質的に伴わないTRM様T細胞、例えば本実施形態の方法によって生成されるTRM様T細胞の有効量での使用が本明細書に提供される。特定の態様では、TRM様T細胞は、目的の抗原に対する特異性を有する。
【0029】
いくつかの態様では、目的の抗原は、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺がん、及び肺の扁平上皮がんを含む)、腹膜のがん、胃(gastric)若しくは胃(stomach)がん(胃腸がん及び胃腸間質がんを含む)、膵がん、子宮頸がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜若しくは子宮がん、唾液腺がん、腎(kidney)若しくは腎(renal)がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、様々なタイプの頭頚部がん、又はメラノーマを標的化又は処置することが意図される。
【0030】
さらなる実施形態では、対象における免疫関連障害を処置する方法であって、CXCR6タンパク質の発現を本質的に伴わないTRM様T細胞、例えば本実施形態の方法によって生成されるTRM様T細胞を有効量で対象に投与することを含む方法が提供される。いくつかの態様では、対象はヒトである。
【0031】
いくつかの態様では、免疫関連障害は、がん、自己免疫不全、移植片対宿主病、同種移植片拒絶、又は炎症性状態である。特定の態様では、対象は、組織又は臓器移植を受けている。
【0032】
さらなる態様では、方法は、少なくとも1つの治療薬を投与することをさらに含む。いくつかの態様では、少なくとも1つの第2の治療薬は、化学療法、免疫療法、手術、放射線療法、又は生物学的療法を含む。いくつかの態様では、TRM様T細胞及び/又は少なくとも1つの第2の治療薬は、静脈内に、腹腔内に、気管内に、腫瘍内に、筋肉内に、内視鏡的に、病変内に、経皮的に、皮下に、局所性に、又は直接注射若しくは灌流により投与される。特定の態様では、TRM様T細胞は、第2の治療薬の前に投与される。いくつかの態様では、TRM様T細胞は、第2の治療薬の後に投与される。特定の態様では、TRM様T細胞は、第2の治療薬と同時に投与される。具体的な態様では、免疫療法は、4-1BB作動薬である。特定の態様では、4-1BB作動薬は、4-1BB抗体である。他の態様では、第2の治療薬は、免疫チェックポイント阻害剤である。特定の態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗CTLA-4、抗PD1又は抗PD-L1阻害剤である。
【0033】
別の実施形態では、対象におけるウイルス感染を処置する方法であって、CXCR6発現を本質的に伴わないTRM様T細胞、例えば本方法によって生成されるTRM様T細胞、例えば1つ以上のウイルス抗原に対する特異性を有するTRM様T細胞を有効量で投与することを含む方法が提供される。
【0034】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明白になるであろう。しかし、詳細な説明及び具体例が、本発明の好ましい実施形態を示す一方で、本発明の精神及び範囲の中での様々な変更及び修飾がこの詳細な説明から当業者にとって明白になることで、あくまで例示によって示されることは理解されるべきである。
【0035】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本開示の特定の態様をさらに示すために含まれる。本開示は、これら図面の1つ以上を本明細書中に提示される具体的な実施形態の詳細な説明と組み合わせて参照することを通じて、より十分に理解されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】組織常在メモリー細胞を生成するための方法を表す模式図。
【0037】
図2A-2E】低酸素及びTGF-β1に曝露されたヒトCD8T細胞はTRM様転写特性を有する。末梢血から単離されたナイーブCD8T細胞が、20%O下又は2%O(低酸素)下で4日間、次いでrhTGF-β1の添加とともにさらに2日間活性化された。TRMに関連する遺伝子の発現レベルが、定量リアルタイムPCRを介して分析された。(A-E)低酸素(2%O)+TGF-β1下での遺伝子転写物レベルの、AtmosO(約20%O)+TGF-β1を上回る倍数変化。古典的な低酸素応答性遺伝子は、細胞の低酸素応答の活性化を示すための対照として(E)で示される。CX3CR1の発現は検出できなかった。n=6、3つの独立実験;多重比較のためのBenjamini、Krieger及びYekutieli補正を伴う対応t検定;P<0.05,**P<0.01,***P<0.001;FDR<0.05、データは平均+/-平均値の標準誤差である。
【0038】
図3A-3C】低酸素をTGF-β1と組み合わせることで、CD69CD103集団が誘導され、ヒトTRM関連マーカーが発現される。健常ヒトドナーの末梢血から単離されたナイーブCD8T細胞が、大気酸素(約20%)下又は低酸素(2%酸素)下で4日間、次いでrhTGF-β1の添加とともにさらに2日間活性化された。(A)CD69CD103RM様集団の頻度、(B及びC)続いてTRM関連マーカーの発現がフローサイトメトリーにより評価された。ドナー1名からの代表的結果が(B)に示され、灰色ヒストグラムが蛍光マイナスワン(FMO)対照を表す。n=7、3つの独立実験;比の対応t検定(A)又は分散分析(C);P<0.05,**P<0.01,***P<0.001,****P<0.0001。
【0039】
図4A-4B】低酸素及びTGF-β1は、CD69CD103細胞を誘導するように協力する。図2に記載の通り、ナイーブCD8T細胞がrhTGF-β1の添加の存在下又は不在下で活性化された。(A)CD69CD103集団の頻度及び(B)TRM関連マーカーの発現がフローサイトメトリーにより評価されたが、代表的結果が、(A)ドナー1名、n=4、二元配置分散分析(A)又は一元配置分散分析(B)、P<0.05,**P<0.01について示される。
【0040】
図5A-5F】低酸素及びTGF-β1で誘導されたTRM表現型細胞が、内因性TRMについて報告された場合と類似する転写差異を示す。前記の通り、CD69CD103、CD69CD103、及びCD69CD103CD8T細胞が生成され、RNA配列決定を介するトランスクリプトーム分析用のRNAの単離前に選別された(n=3)。(A)グローバルトランスクリプトームに基づく、対のCD69CD103、CD69CD103、及びCD69CD103CD8T細胞の主成分分析(PCA)。(B)20%O、2%O下、及び2%O+TGF-β1下の各々で生成されたCD69CD103(左)細胞、CD69CD103(中)細胞、及びCD69CD103(右)細胞についての上位150の差次的に発現された遺伝子の教師なしクラスタリング。差次的発現は|log2FC|≧1及びFDR<0.05によって判定された。(C)選択された差次的に発現されたTRM関連遺伝子の発現レベル。正規化濃縮スコア(NES)として提示される、(D)CD69CD103細胞対CD69CD103細胞及び(E)CD69CD103細胞対CD69CD103細胞のトランスクリプトームにおける内因性TRM及びTILRMに由来する遺伝子シグネチャーのGSEA。(F)(E)に示されるTILRM GSEAからの上位34の差次的に発現された遺伝子。
【0041】
図6A-6B】低酸素及びTGF-β1で誘導されたTRMにおいて、代謝、遊走、並びにTRMの生成及び維持に関与する経路が差次的に調節される。(A)CD69CD103細胞内で上方制御又は下方制御される各経路の成分をコードする差次的に発現された遺伝子の、CD69CD103細胞内でのそれらの発現と比べての頻度、及び負の対数変換P値(右側垂直軸;フィッシャー直接検定);バーを越える数として示される、インビトロ誘導されたCD69CD103RMにおいて濃縮される、Ingenuity経路分析(IPA)データベースからの上位30の古典的経路は、各経路内の全遺伝子を表し、バーは有意性の順番で提示される。(B)低酸素+TGF-β1でインビトロ誘導されたTRM及び内因性ヒトTRMにおいて差次的に調節されたIPA古典的経路。
【0042】
図7A-7D】低酸素及びTGF-β1下でのヒトCD8T細胞の分化がCD69CD103集団の誘導をもたらす。(A)フローサイトメトリー分析において用いられたゲーティング方法。(B)フローサイトメトリー分析におけるfixable viability dye(Invitrogen)によって判定された細胞生存度。(C及びD)フローサイトメトリーによって判定された、20%O+TGF-β1及び2%O+TGF-β1条件を比較する集団頻度における変化。n=7、3つの独立実験;対応t検定(B)、比の対応t検定(C)、又は分散分析(D);P<0.05,**P<0.01,***P<0.001,****P<0.0001。
【0043】
図8A-8F】10%O及びTGF-β1下で分化されたヒトCD8T細胞は、TRM様転写特性を有しない。末梢血から単離されたナイーブCD8T細胞が20%O(AtmosO)下又は10%O(circulationO)下で4日間、次いでrhTGF-β1の添加とともにさらに2日間活性化された。TRM関連遺伝子の発現レベルが、定量リアルタイムPCRを介して分析された。(A-E)10%O+TGF-β1下での遺伝子転写物レベルの、20%O+TGF-β1を上回る倍数変化。(F)CD69CD103RM様集団の頻度が次にフローサイトメトリーにより評価された。ドナー1名からの代表的結果が(F)に示される。n=3、2つの独立実験;(A-E)多重比較のためのBenjamini、Krieger及びYekutieli補正を伴う対応t検定;FDR<0.05,データは平均+/-平均値の標準誤差である;(F)独立t検定、P<0.05。
【0044】
図9A-9B】低酸素及びTGF-β1で誘導されたTRM表現型細胞が、内因性TRMについて報告された場合と類似する転写差異を示す。図4に記載の通り、CD69CD103、CD69CD103、及びCD69CD103T細胞が生成され、RNA配列決定を介するトランスクリプトーム分析用のRNAの単離前に選別された(n=3)。(A)内因性ヒトTRMのトランスクリプトーム分析において一般に報告された、選択された遺伝子の発現を示すヒートマップ。(B)ヒト肺からのCD8CD69T細胞対CD8CD69T細胞(Kumarら、2017を参照、参照により本明細書中に援用される)並びに低酸素及びTGF-β1でインビトロ誘導されたCD69CD103RM(i-TRM)に対する正常細胞培養条件からのCD69CD103細胞(TGF-β1を伴わない20%O)における転写差異(log2FC)を比較するヒートマップ。差次的発現は、log2FC≧|1|及びFDR<0.05によって判定される。
【0045】
図10A-10C】(A)末梢血から単離されたナイーブCD8T細胞が、20%O(AtmosO)下、HIFプロリルヒドロキシラーゼ阻害剤FG-4592(ロキサデュスタット)の存在下で4日間、次いでrhTGF-β1とともにさらに2日間活性化された。4日目のrhTGF-β1の添加とともに2%O(低酸素)下で活性化された細胞が、比較目的で示される。CD69CD103集団の頻度は、フローサイトメトリーにより評価されたが、代表的結果がドナー1名におけるFACSプロットにて示される(n=3)。(B)MART-1ペプチドパルス自己樹状細胞による刺激。フローサイトメトリーによって検出された、CD69CD103抗原特異的(四量体)T細胞を生成するため、ナイーブCD8T細胞が、4日目のrhTGF-β1の添加とともに、20%O(AtmosO)下又は2%O下で、MART-1(M27)ペプチドでパルスされた自己単球由来樹状細胞で7日間刺激された。代表的結果が、ドナー1名におけるFACSプロットにて示される。n=4、独立t検定、**P<0.01。データは平均+/-平均値の標準誤差である。(C)改良された急速拡大プロトコルにより、抗原特異的T細胞内でTRM表現型が誘導される。抗原特異的T細胞内でTRM表現型を誘導するため、改良された急速拡大プロトコルにおいて低酸素及びrhTGF-β1が使用された。抗原特異的T細胞は、自己MART-1ペプチドパルス樹状細胞(ETC)による刺激又はgp100に特異的なTCR(TCRT)の形質導入を介して生成され、蛍光色素コンジュゲート四量体で標識され、選別された。次に、選別された抗原特異的T細胞が、20%O下で、抗CD3(OKT3)及び照射された支持細胞で刺激され、IL-2が添加される(通常のREP)か、又は2%O下でIL-15が添加され、4日目以降、rhTGF-β1が添加された。棒グラフは、MART-1 ETCにおける結果を示し、データは平均+/-平均値の標準誤差であり、n=3、独立t検定、**P<0.01。
【発明を実施するための形態】
【0046】
組織常在メモリー細胞(TRM)は、組織内に存在する非再循環(non-recirculating)メモリーT細胞であり、組織からの放出及びリンパ節への遊走を可能にする分子が欠如し、フロントライン応答者(frontline responders)として作用する(Mami-Chouaib and Tartour,2019)。TRM分化については、比較的にほとんど知られてない。組織に侵入するエフェクターT細胞は、組織保持を可能にする遺伝子を上方又は下方制御することにより、TRMになり得る。本試験では、低酸素及びTGF-β1がヒト末梢血CD8T細胞においてTRM様表現型を誘導し得ることが見出された。本試験では、ヒト末梢血T細胞、例えばCD8T細胞又はCD4T細胞がインビトロで低酸素及びTGF-β1下で分化されるとき、それらはTRM表現型を発現し、一般に組織常在メモリー細胞に関連するタンパク質マーカー及び遺伝子を発現することが示された(表1)。これらの知見により、TRM分化についての以前に報告されていない要因が同定され、養子細胞療法などの基礎研究及びトランスレーショナルな応用としてTRM表現型細胞を生成する容易な手段が可能になる。
【0047】
したがって、本開示の特定の実施形態は、TRM表現型細胞を生成するための方法を提供する。用語「TRM表現型細胞」及び「TRM様細胞」は、本方法によって提供される細胞を指すように本明細書で互換可能に用いられる。方法は、末梢血T細胞を低酸素条件下又は低酸素を誘導若しくは模倣する薬剤の存在下で培養することを含み得、例示的な低酸素模倣物として、限定はされないが、塩化コバルト(CoCl)、デフェロキサミンメシル酸塩(DFOM)、ジメチルオキサリルグリシン(DMOG)、又はプロリルヒドロキシラーゼ阻害剤、例えばロキサデュスタットが挙げられる。この期間中、細胞は、初期エフェクター細胞を生成するため、例えば抗CD3及び抗CD28ビーズにより、ポリクローナルに活性化され得る。用語「初期エフェクター細胞」は、ナイーブ状態からの活性化から1週以内である細胞を指す。活性化は、限定はされないが、抗CD3/抗CD28抗体、抗CD3/抗CD28ビーズ、支持細胞、抗原提示細胞、人工抗原提示細胞、ペプチド及び/若しくはタンパク質抗原、又はこれらの組み合わせを含む、TCR刺激及び同時刺激の存在下で培養することを含んでもよい。初期エフェクター細胞を生成するための活性化後、細胞は、TRM表現型細胞を生成するため、TGF-β1の存在下でさらに培養される。したがって、低酸素及びTGF-β1は、ヒトTRM関連マーカーを発現するCD8CD69CD103細胞集団を誘導するため、使用可能である。低酸素及びTGF-β1下で分化されたヒトCD8T細胞は、TRM様転写特性を有する。
【0048】
RM様細胞は、抗原特異的にされてもよい。一方法は、TRM様細胞を生成するための本明細書に記載の条件下でのナイーブT細胞のポリクローナル活性化、続いて抗原特異的なTCRを発現するための形質導入を含んでもよい。ETC刺激方法の改変版では、ナイーブT細胞は、低酸素下でペプチドパルス抗原提示細胞(又は人工抗原提示細胞)を介して活性化され、続いてrh TGF-β1の存在下でさらに培養されてもよい。この活性化は、抗原特異的細胞を生成するため、2回実施されてもよい。別の方法では、抗原特異的なTRM様細胞は、既に拡大された抗原特異的細胞をTRM表現型に分化させるため、低酸素及びTGF-β1とHDAC阻害剤などのエピジェネティック修飾剤との組み合わせにより生成されてもよい。
【0049】
本T細胞、例えばT細胞の開始集団は、改変されたT細胞であってもよい。特定の実施形態では、改変されたT細胞は、キメラ抗原受容体を発現するT細胞(CAR T細胞)を含む。特定の実施形態では、改変されたT細胞は、腫瘍特異的なエピトープ又はネオエピトープに結合する能力がある組換えT細胞受容体を発現するT細胞を含む。いくつかの実施形態では、改変されたT細胞は、当業者に公知の多くの十分に確立された遺伝子導入方法のいずれかを用いて構築される。特定の実施形態では、改変細胞は、所望される標的腫瘍抗原に特異的なキメラ抗原受容体をコードする核酸又は所望される腫瘍特異的なエピトープ若しくはネオエピトープに特異的な組換えTCRをコードする核酸を導入するためのウイルスベクターに基づく遺伝子導入方法を用いて構築される。特定の実施形態では、改変細胞は、所望される標的腫瘍抗原に特異的なキメラ抗原受容体をコードする核酸又は所望される腫瘍特異的なエピトープ若しくはネオエピトープに特異的な組換えTCRをコードする核酸を導入するための非ウイルスベクターに基づく遺伝子導入方法を用いて構築される。特定の実施形態では、ウイルスベクターに基づく遺伝子導入方法は、レンチウイルスベクターを含む。特定の実施形態では、ウイルスベクターに基づく遺伝子導入方法は、レトロウイルスベクターを含む。特定の実施形態では、ウイルスベクターに基づく遺伝子導入方法は、アデノウイルス又はアデノ随伴ウイルスベクターを含む。非ウイルスベクターに基づく遺伝子導入方法は、エピソームベクター又はトランスポゾン-トランスポザーゼ系を含んでもよい。例えば、トランスポゾン-トランスポザーゼ系は、周知のSleeping Beauty、Frog Princeトランスポゾン-トランスポザーゼ系、又はTTAAに特異的なトランスポゾンPiggyBac系であり得る。特定の実施形態では、非ウイルスベクターに基づく遺伝子導入方法は、Znフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、及びクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)/CRISPR関連タンパク質9(Cas9)ヌクレアーゼからなる群から選択される遺伝子編集法を含む。特定の実施形態では、非ウイルスベクターに基づく遺伝子編集法は、リポフェクション、ヌクレオフェクション、微粒子銃、ビロソーム、リポソーム、ポリカチオン又は脂質:核酸コンジュゲート、ネイキッドDNA、人工ビリオン、及びDNAの作用物質増強型取り込み(agent-enhanced uptake)からなる群から選択されるトランスフェクション又は形質転換方法を含む。
【0050】
特定の実施形態では、CAR T細胞は、細胞外抗原結合ドメイン、任意選択的なスペーサー配列、膜貫通ドメイン、1つ以上の細胞内シグナル伝達ドメイン、及びCAR T細胞を活性化又は不活性化するための1つ以上の任意選択的な制御配列を含むCAR構築物を発現する。
【0051】
特定の実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、所望される標的に特異的に結合する能力がある部分を含む。特定の実施形態では、所望される標的に特異的に結合する能力がある部分は、モノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む。特定の実施形態では、その抗原結合断片は、所望される標的に特異的に結合する能力があるモノクローナル抗体の一本鎖可変断片(scFv)を含む。特定の実施形態では、所望される標的は、腫瘍特異抗原である。特定の実施形態では、腫瘍特異抗原は、CD19、CD20、CD22、癌胎児性抗原、アルファフェトプロテイン、CA-125、MUC-1、上皮腫瘍抗原、メラノーマ関連抗原(MAGE)(例えば、MAGE-1、MAGE-11、又はMAGE-A)、突然変異p53、突然変異ras、HER2/Neu、ERBB2、葉酸塩結合タンパク質、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp120、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp41、GD2、CD123、CD23、CD30、CD56、c-Met、メソセリン、GD3、HERV-K、IL-11Rα、κ鎖、λ鎖、CSPG4、ERBB2、EGFRvIII、VEGFR2、及びヒトパピローマウイルス(HPV)からなる群から選択される。特定の実施形態では、所望される標的は、腫瘍特異的ネオエピトープである。特定の実施形態では、腫瘍特異的ネオエピトープは、インシリコ分析により同定される。特定の実施形態では、腫瘍特異的ネオエピトープは、ヒト対象由来の自己TILの集団から同定及び精製される。
【0052】
特定の実施形態では、膜貫通ドメインは、細胞膜を架橋可能な構造を形成する能力がある任意の合成又は天然アミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、細胞膜を架橋可能な構造は、αヘリックスを含む。特定の実施形態では、膜貫通領域は、CD3ζ、CD3ε、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD134、4-1BB/CD137、CD154、誘導性T細胞共刺激分子(ICOS)/CD278、グルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質(GITR)/CD357、NKG2D、TCRα及びTCRβからなる群から選択される天然に存在する膜貫通タンパク質に由来する。特定の実施形態では、天然に存在する膜貫通タンパク質に由来する膜貫通領域は、他のシグナル伝達タンパク質との相互作用に関与することが知られている配列内に1つ以上のアミノ酸置換を含む。
【0053】
特定の実施形態では、1つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインは、1つ以上の細胞内チロシンに基づく活性化モチーフ(intracellular tyrosine-based activation motif)(「ITAM」)を含む。特定の実施形態では、1つ以上のITAMは、CD3ゼータ(CD3ζ)分子上に存在する。特定の実施形態では、1つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインは、CD28、4-1BB/CD137、ICOS、OX40、CD2、CD40L、CD27、Light-R、GITR、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される同時刺激シグナル伝達ドメインをさらに含む。
【0054】
特定の実施形態では、T細胞は、腫瘍特異的エピトープ又はネオエピトープに結合する能力がある組換えT細胞受容体を含む。特定の実施形態では、組換えT細胞受容体は、対象から単離されたT細胞からクローン化された天然に存在するTCRを含む。特定の実施形態では、組換えTCRは、TCRアルファ(TCRα)ポリペプチド及びTCRベータ(TCRβ)ポリペプチドを含むヘテロ二量体(即ちTCRαβ)を含む。特定の実施形態では、組換えTCRは、TCRガンマ(TCRγ)ポリペプチド及びTCRデルタ(TCRδ)ポリペプチドを含むヘテロ二量体(即ちTCRγδ)を含む。
【0055】
特定の実施形態では、組換えTCRαβは、対象から単離され、且つ所望される標的に由来するペプチド抗原に特異的であるクローン化TCRαβを含む。特定の実施形態では、対象は、哺乳動物である。特定の実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。特定の実施形態では、所望される標的は、CD19、CD20、CD22、癌胎児性抗原、アルファフェトプロテイン、CA-125、MUC-1、上皮腫瘍抗原、メラノーマ関連抗原、突然変異p53、突然変異ras、HER2/Neu、ERBB2、葉酸塩結合タンパク質、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp120、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp41、GD2、CD123、CD23、CD30、CD56、c-Met、メソセリン、GD3、HERV-K、IL-11Rα、κ鎖、λ鎖、CSPG4、ERBB2、EGFRvIII、及びVEGFR2からなる群から選択される腫瘍特異抗原である。特定の実施形態では、組換えTCRγδは、対象から単離され、且つ所望される標的に由来するペプチド抗原に特異的であるクローン化TCRγδを含む。特定の実施形態では、対象は、哺乳動物である。特定の実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。特定の実施形態では、所望される標的は、CD19、CD20、CD22、癌胎児性抗原、アルファフェトプロテイン、CA-125、MUC-1、上皮腫瘍抗原、メラノーマ関連抗原、突然変異p53、突然変異ras、HER2/Neu、ERBB2、葉酸塩結合タンパク質、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp120、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp41、GD2、CD123、CD23、CD30、CD56、c-Met、メソセリン、GD3、HERV-K、IL-11Rα、κ鎖、λ鎖、CSPG4、ERBB2、EGFRvIII、及びVEGFR2からなる群から選択される腫瘍特異抗原である。
【0056】
さらに、養子細胞療法における、例えばがん又はウイルス性疾患を処置するための、本明細書に提供されるTRM様細胞の使用を意図した方法が本明細書に提供される。細胞は、免疫抑制のため、例えば移植片対宿主病(GVHD)、組織若しくは臓器拒絶、又は自己免疫状態を有する対象に対して使用されてもよい。
【0057】
【表1】
【0058】
I.定義
本明細書で用いられるとき、「本質的に含まない」は、特定成分の観点で、特定成分のいずれもが組成物中に意図的に配合されておらず、且つ/又はあくまで汚染物質として又は微量に存在することを意味するように本明細書で用いられる。それ故、組成物の任意の意図されない汚染に起因する特定成分の総量は、0.05%より十分に少なく、好ましくは0.01%未満である。特定成分の量が標準的分析法により検出できないような組成物が最も好ましい。
【0059】
本明細書で用いられるとき、「a」又は「an」は、1つ以上を意味してもよい。本明細書の請求項中で用いられ、用語「含む(comprising)」と併用されるとき、用語「a」又は「an」は、1つ又は2つ以上を意味してもよい。
【0060】
特許請求の範囲における用語「又は」の使用は、代替物のみ又は代替物が相互に排他的であることを指すことが明示されない限り、「及び/又は」を意味するように使用されるが、本開示は、代替物のみと「及び/又は」とを指す定義を支持する。本明細書で用いられるとき、「別の」は、少なくとも第2又はそれ以上を意味してもよい。用語「約(about)」、「実質的に」及び「約(approximately)」は、一般に規定値±5%を意味する。
【0061】
「自己免疫疾患」は、免疫系が正常宿主の一部である抗原(即ち自己抗原)に対する免疫応答(例えばB細胞又はT細胞応答)を生成し、結果として組織を損傷させる場合の疾患を指す。自己抗原は、宿主細胞に由来してもよい、又は通常は粘膜表面をコロニー化する微生物(共生生物として公知)などの共生生物に由来してもよい。
【0062】
用語「移植片対宿主病(GVHD)」は、骨髄又は他の組織移植に共通の重篤な合併症を指し、ここでは移植レシピエント自身の組織に対しての提供された免疫学的にコンピテントなリンパ球の反応が認められる。GVHDは、血縁ドナー又は非血縁ドナーのいずれかに由来する幹細胞を使用又は含有する任意の移植片で生じ得る合併症である。いくつかの実施形態では、GVHDは、慢性GVHD(cGVHD)である。
【0063】
本明細書で用いられるとき、用語「キメラ抗原受容体」、「CAR」、「キメラT細胞受容体」、「人工T細胞受容体」又は「キメラ免疫受容体」は、所望される非MHC制限抗原結合特異性を免疫エフェクター細胞、例えばエフェクターT細胞上に移植する、改変されたキメラ受容体構築物を指す。CARは、例えば、細胞外抗原結合ドメイン(例えば、抗体又は抗体断片、例えば所望される抗原特異性を有する一本鎖可変断片(scFv)など)、スペーサー配列、膜貫通ドメイン、及び1つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインを含んでもよい。例示的な細胞内シグナル伝達ドメインは、1つ以上の細胞内チロシンに基づく活性化モチーフ(「ITAM」)、例えばCD3ゼータ(CD3ζ)、及び/又は1つ以上の同時刺激シグナル伝達ドメイン、例えば、CD28、4-1BB/CD137、ICOS、OX40、又はそれらの組み合わせなどを含んでもよい。
【0064】
本明細書で用いられるとき、用語「処置する(treat)」、「処置」、「処置すること(treating)」などは、例えば治療薬を対象に投与することにより、又は対象に対して外科的、臨床的、若しくは他の医学的処置を施すことにより、対象における疾患又は病態の症状を寛解、低減、又は緩和するプロセスを指す。
【0065】
本明細書で用いられるとき、用語「対象」又は「患者」は、個体、例えばヒト又は非ヒト生物、例えば霊長類、哺乳動物、又は脊椎動物を指すように本明細書で互換可能に用いられる。
【0066】
用語「治療的利益」又は「治療的に有効な」は、本願全体を通じて用いられるとき、この病態の医学的処置に関して、対象の健康を促進又は増強するものを指す。これは、限定はされないが、疾患の徴候又は症状の頻度又は重症度における低下を含む。例えば、がんの処置は、例えば、腫瘍のサイズにおける減少、腫瘍の侵襲性における低減、がんの成長速度における減少、又は転移の予防を含んでもよい。がんの処置はまた、がんを有する対象の生存を延長することを指してもよい。
【0067】
本明細書で一般に用いられるとき、「薬学的に許容できる」は、合理的なリスク・ベネフィット比に見合う、過剰な毒性、刺激作用、アレルギー反応、又は他の課題若しくは合併症を伴わない、ヒト及び動物の組織、臓器、及び/又は体液との接触時の使用に適した、健全な医学的判断の範囲内にある化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指す。
【0068】
「薬学的に許容できる塩」は、上で定義される通り、薬学的に許容でき、且つ所望される薬理学的活性を有する、本明細書で開示される化合物の塩を意味する。かかる塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸;又は1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、3-フェニルプロピオン酸、4,4’メチレンビス(3-ヒドロキシ-2-エン-1-カルボン酸)、4-メチルビシクロ[2.2.2]オクト-2-エン-1カルボン酸、酢酸、脂肪族モノ-及びジカルボン酸、脂肪族硫酸、芳香族硫酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、炭酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクロペンタンプロピオン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ヒドロキシナフトエ酸、乳酸、ラウリル硫酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、o-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、シュウ酸、p-クロロベンゼンスルホン酸、フェニル置換アルカン酸、プロピオン酸、p-トルエンスルホン酸、ピルビン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、第三級ブチル酢酸、トリメチル酢酸などの有機酸とともに形成される酸付加塩を含む。薬学的に許容できる塩はまた、存在する酸性プロトンが無機塩又は有機塩と反応する能力があるときに形成されてもよい塩基付加塩を含む。許容できる無機塩は、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アルミニウム及び水酸化カルシウムを含む。許容できる有機塩は、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N-メチルグルカミンなどを含む。本発明の任意の塩の一部を形成する特定のアニオン又はカチオンが、その塩が全体として薬理学的に許容できる限り重要でないことは理解されるべきである。薬学的に許容できる塩並びにそれらの調製及び使用方法のさらなる例が、Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,and Use(P.H.Stahl & C.G.Wermuth eds.,Verlag Helvetica Chimica Acta,2002)に提示されている。
【0069】
「薬学的に許容できる担体」、「薬物担体」、又は単に「担体」は、化学薬品を運搬、送達及び/又は輸送することに関与する、活性成分処方とともに製剤化される薬学的に許容できる物質である。例えば、薬物バイオアベイラビリティを調節し、薬物代謝を減少させ、且つ/又は薬物毒性を低減するための徐放性技術を含む、薬剤の送達及び有効性を改善するための薬物担体が使用されてもよい。一部の薬物担体は、特定の標的部位への薬物送達の有効性を増強することがある。担体の例として、リポソーム、微粒子(例えば、乳酸-グリコール酸共重合体製)、アルブミンミクロスフェア、合成高分子、ナノファイバー、タンパク質-DNA複合体、タンパク質コンジュゲート、赤血球、ビロソーム、及びデンドリマーが挙げられる。
【0070】
用語「培養する」は、好適な培地中での細胞のインビトロ維持、分化、及び/又は増殖を指す。「濃縮された」は、生物内に存在する場合の組織内で見出されるよりも高い百分率の全細胞内に存在する細胞を含む組成物を意味する。
【0071】
「単離された」生物学的成分(血液材料の一部、例えば血液成分)は、天然に存在する、生物の他の生物学的成分から実質的に分離又は精製されている成分を指す。単離された細胞は、天然に存在する、生物の他の生物学的成分から実質的に分離又は精製されているものである。
【0072】
II.使用方法
いくつかの実施形態では、本開示は、養子細胞療法のための方法であって、本開示のTRM細胞を有効量で投与することを含む方法を提供する。本開示の特定の実施形態では、がん又はウイルス性疾患は、免疫応答を誘発するTRM細胞集団の養子移植により処置される。いくつかの実施形態では、TRM細胞集団自体が、免疫応答を媒介することになる。TRM細胞は、一旦インビボで活性化すると、免疫応答を誘発することになる様々な炎症促進性因子、例えばケモカイン及びサイトカインを生成することがある。個体におけるがんの進行を処置するか又は遅延させるための方法であって、TRM細胞集団を有効量で個体に投与することを含む方法が本明細書に提供される。本方法は、免疫異常、固形がん、血液がん、及びウイルス感染を処置するため、適用されてもよい。例えば、実施形態による処置の対象のウイルス感染は、HIV、HBV又はヘルペスウイルス感染であってもよい。
【0073】
本処置方法が有用である場合の腫瘍は、任意の悪性細胞型、例えば固形腫瘍又は血液腫瘍に見出されるものを含む。例示的な固形腫瘍として、限定はされないが、膵臓、結腸、盲腸、胃、脳、頭部、頸部、卵巣、腎臓、喉頭、肉腫、肺、膀胱、メラノーマ、前立腺、及び胸部からなる群から選択される臓器の腫瘍を挙げることができる。例示的な血液腫瘍として、骨髄の腫瘍、T細胞又はB細胞悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、芽細胞腫、骨髄腫などが挙げられる。本明細書に提供される方法を用いて処置されてもよいがんのさらなる例として、限定はされないが、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺がん、及び肺の扁平上皮がんを含む)、腹膜のがん、胃(gastric)若しくは胃(stomach)がん(胃腸がん及び胃腸間質がんを含む)、膵がん、子宮頸がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜若しくは子宮がん、唾液腺がん、腎(kidney)若しくは腎(renal)がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、様々なタイプの頭頚部がん、及びメラノーマが挙げられる。
【0074】
がんは、具体的には以下の組織学的タイプであってもよいが、それは、新生物、悪性;がん;がん、未分化;巨細胞及び紡錘細胞がん;小細胞がん;乳頭がん;扁平上皮がん;リンパ上皮がん;基底細胞がん;毛母がん;移行上皮がん;乳頭移行上皮がん;腺がん;ガストリノーマ、悪性;胆管細胞がん;肝細胞がん;肝細胞がんと胆管細胞がんの複合型;小柱腺がん;腺様嚢胞がん;腺腫性ポリープにおける腺がん;腺がん、家族性大腸腺腫症;固形がん;カルチノイド腫瘍、悪性;細気管支・肺胞腺がん;乳頭腺がん;色素嫌性がん;好酸性がん;好酸性腺がん;塩基好性がん;明細胞腺がん;顆粒細胞がん;濾胞腺がん;乳頭・濾胞腺がん;非被包性硬化性がん;副腎皮質がん;類内膜がん;皮膚付属器がん;アポクリン腺がん;皮脂腺がん;耳垢腺がん;粘表皮がん;嚢胞腺がん;乳頭状嚢腺がん;乳頭状漿液嚢胞腺がん;粘液性嚢胞腺がん;粘液性腺がん;印環細胞がん;浸潤性乳管がん;髄様がん;小葉がん;炎症性がん;パジェット病、乳腺;腺房細胞がん;腺扁平上皮がん;扁平上皮化生随伴腺がん;胸腺腫、悪性;卵巣間質腫、悪性;莢膜細胞腫、悪性;顆粒膜細胞腫、悪性;アンドロブラストーマ、悪性;セルトリ細胞がん;ライディッヒ細胞腫、悪性;脂質細胞腫瘍、悪性;傍神経節腫、悪性;乳房外傍神経節腫、悪性;褐色細胞腫;血管球血管肉腫;悪性メラノーマ;無色素性メラノーマ;表在拡大型メラノーマ;悪性黒子型メラノーマ;末端黒子型メラノーマ;結節性メラノーマ;巨大色素性母斑における悪性メラノーマ;類上皮細胞メラノーマ;青色母斑、悪性;肉腫;線維肉腫;線維性組織球腫、悪性;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;間質性肉腫;混合腫瘍、悪性;ミュラー管混合腫瘍;腎芽腫;肝芽腫;癌肉腫;間葉腫、悪性;ブレンナー腫瘍、悪性;葉状腫瘍、悪性;滑膜肉腫;中皮腫、悪性;未分化胚細胞腫;胚性癌腫;奇形腫、悪性;卵巣甲状腺腫、悪性;絨毛がん;中腎腫、悪性;血管肉腫;血管内皮腫、悪性;カポジ肉腫;血管外皮腫、悪性;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;軟骨芽細胞腫、悪性;間葉性軟骨肉腫;骨の巨細胞腫;ユーイング肉腫;歯原性腫瘍、悪性;エナメル上皮歯牙肉腫;エナメル上皮腫、悪性;エナメル上皮線維肉腫;松果体腫、悪性;脊索腫;神経膠腫、悪性;上衣腫;星状細胞腫;原形質性星状細胞腫;線維性星細胞腫;星状芽細胞腫;神経膠芽腫;乏突起神経膠腫;乏突起膠芽細胞腫;未分化神経外胚葉性;小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽細胞腫;網膜芽細胞腫;嗅神経原腫瘍;髄膜腫、悪性;神経線維肉腫;神経鞘腫、悪性;顆粒細胞腫、悪性;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキンリンパ腫(hodgkin’s);側肉芽腫;悪性リンパ腫、小リンパ球性;悪性リンパ腫、大細胞、びまん性;悪性リンパ腫、濾胞性;菌状息肉症;他の特定非ホジキンリンパ腫;B細胞リンパ腫;低グレード/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中間グレード/濾胞性NHL;中間グレードびまん性NHL;高グレード免疫芽球性NHL;高グレードリンパ芽球性NHL;高グレード小型非分割細胞NHL;巨大腫瘤病変NHL;マントル細胞リンパ腫;エイズ関連リンパ腫;ワルデンシュトレームマクログロブリン血症;悪性組織球症;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞性白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞性白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄肉腫;ヘアリー細胞白血病;慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);急性骨髄性白血病(AML);及び慢性骨髄芽球性白血病に限定されない。
【0075】
特定の実施形態は、白血病を処置する方法に関する。白血病は、血液又は骨髄のがんであり、血球、通常は白血球(white blood cells)(白血球(leukocytes))の異常な増殖(増殖による生成)によって特徴づけられる。それは血液腫瘍と称される疾患の広範なグループの一部である。白血病は、疾患のスペクトルを網羅する広義語である。白血病は、急性及び慢性疾患として臨床的且つ病理学的に分類される。
【0076】
本開示の特定の実施形態では、TRM細胞は、それを必要とする個体、例えばがん又は感染、例えば細菌又はウイルス感染を有する個体に送達される。次に、細胞は、個体の免疫系を増強することで、がん又は病原細胞の各々を攻撃する。場合によっては、個体に1用量以上の細胞が供される。個体に2用量以上の免疫細胞が供される場合、投与間の期間は、個体における増殖のための期間を許容する上で十分である必要があり、具体的な実施形態では、投与間の期間は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、又はそれ以上である。
【0077】
本開示の特定の実施形態は、免疫介在性障害を処置又は予防するための方法を提供する。一実施形態では、対象は、自己免疫疾患を有する。自己免疫疾患の非限定例として、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫アジソン病、副腎の自己免疫疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎及び精巣炎、自己免疫性血小板減少症、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアック・スパート皮膚炎(celiac spate-dermatitis)、慢性疲労免疫機能障害症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、寒冷凝集素症、クローン病、円板状ループス、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛-線維筋炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA神経障害、若年性関節炎、扁平苔癬、ループスエリテマトーデス、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、1型又は免疫介在性糖尿病、重症筋無力症、ネフローゼ症候群(微小変化群、巣状糸球体硬化症、又は膜性腎症(mebranous nephropathy)など)、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、全身硬直症候群、全身性エリテマトーデス、エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、ぶどう膜炎、脈管炎(結節性多発動脈炎、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、又はヘルペス状皮膚炎脈管炎など)、白斑、及びウェゲナー肉芽腫症が挙げられる。したがって、本明細書で開示される方法を用いて処置可能である自己免疫疾患のいくつかの例として、限定はされないが、多発性硬化症、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、I型糖尿病、クローン病;潰瘍性大腸炎、重症筋無力症、糸球体腎炎、強直性脊椎炎、脈管炎、又は乾癬が挙げられる。対象はまた、喘息などのアレルギー性障害を有し得る。
【0078】
さらに別の実施形態では、対象は移植臓器のレシピエントであり、又は拒絶を予防及び/若しくは処置するため、幹細胞及びTRM細胞が使用される。特定の実施形態では、対象は、移植片対宿主病を有するか、又は発現するリスクがある。GVHDは、血縁ドナー又は非血縁ドナーのいずれかからの幹細胞を使用又は含有する任意の移植で生じ得る合併症である。GVHDには、急性及び慢性の2種類がある。急性GVHDは、移植から3か月以内に出現する。急性GVHDの徴候は、剥離又は水疱形成皮膚を伴い、拡散し、より重篤になることがある手と足の赤みがかった皮疹を含む。急性GVHDはまた、胃と腸を冒す可能性があり、その場合、痙攣、悪心、及び下痢を呈する。皮膚及び眼の黄変(黄疸)は、急性GVHDが肝臓を冒していることを示す。慢性GVHDは、その重症度:ステージ/グレード1は軽度;ステージ/グレード4は重篤、に基づいてランク付けされる。慢性GVHDは、移植から3か月又はそれ以降に発現する。慢性GVHDの症状は、急性GVHDの場合に類似するが、さらに慢性GVHDは、眼の粘液膜、口の唾液腺、並びに胃壁及び腸を潤滑する腺を冒すこともある。本明細書で開示される免疫細胞の集団のいずれかを利用することができる。移植臓器の例として、腎臓、肝臓、皮膚、膵臓、肺及び/又は心臓などの固形臓器移植片、又は島、肝細胞、筋芽細胞、骨髄、若しくは造血若しくは他の幹細胞などの細胞移植片が挙げられる。移植片は、顔の組織などの複合移植片であり得る。免疫細胞は、移植前に、移植と同時に、又は移植後に投与可能である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、移植前に、例えば、移植の少なくとも1時間前、少なくとも12時間前、少なくとも1日前、少なくとも2日前、少なくとも3日前、少なくとも4日前、少なくとも5日前、少なくとも6日前、少なくとも1週前、少なくとも2週前、少なくとも3週前、少なくとも4週前、又は少なくとも1か月前に投与される。1つの具体的な非限定例では、治療有効量の免疫細胞の投与は、移植の3~5日前になされる。
【0079】
いくつかの実施形態では、対象は、TRM細胞集団に先立ち、骨髄非破壊的リンパ球枯渇化学療法が施され得る。骨髄非破壊的リンパ球枯渇化学療法は、任意の好適なかかる治療法であり得、任意の好適な経路により施され得る。骨髄非破壊的リンパ球枯渇化学療法は、特にがんがメラノーマであり、それが転移性であり得る場合、例えば、シクロホスファミド及びフルダラビンの投与を含み得る。シクロホスファミド及びフルダラビンを投与する例示的経路は、静脈内である。同様に、シクロホスファミド及びフルダラビンは、任意の好適な用量で投与され得る。特定の態様では、約60mg/kgのシクロホスファミドが2日間投与され、その後、約25mg/mのフルダラビンが5日間投与される。
【0080】
特定の実施形態では、TRM細胞集団の増殖及び活性化を促進する成長因子が、TRM細胞集団と同時又は免疫細胞の後のいずれかに対象に投与される。成長因子は、TRM細胞集団の増殖及び活性化を促進する任意の好適な成長因子であり得る。好適な免疫細胞成長因子の例として、インターロイキン(IL)-2、IL-7、IL-15、及びIL-12が挙げられ、それらは、単独で、又はIL-2とIL-7、IL-2とIL-15、IL-7とIL-15、IL-2、IL-7とIL-15、IL-12とIL-7、IL-12とIL-15、又はIL-12とIL2などの様々な組み合わせで使用可能である。
【0081】
治療有効量のTRM細胞は、非経口投与、例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、胸骨内、又は関節内注射、又は注入を含むいくつかの経路により投与可能である。
【0082】
養子細胞療法における使用が意図されたTRM細胞の治療有効量は、治療中の対象において所望される効果を得る量である。例えば、これは、進行を阻害するか又は自己免疫若しくは同種免疫疾患の後退を引き起こすのに必要である、又は自己免疫疾患によって引き起こされる症状、例えば疼痛及び炎症を軽減する能力があるTRM細胞の量であり得る。それは、炎症に関連する症状、例えば、疼痛、水腫及び体温上昇を軽減するのに必要な量であり得る。それはまた、移植臓器の拒絶を低減又は予防するのに必要な量であり得る。
【0083】
RM細胞は、疾患を処置するための標準処置に合致する処置計画、例えば、病態を寛解するための1日~数日にわたる単回若しくは数回投与、又は疾患進行を阻害し、疾患再発を予防するための長期間にわたる周期的投与で投与され得る。製剤中で利用されるべき正確な用量は、投与経路、及び疾患又は障害の重篤度にも依存することになり、施術者の判断及び各患者の状況に従って決定される必要がある。免疫細胞の治療有効量は、処置中の対象、苦痛の重症度及びタイプ、並びに投与様式に依存することになる。いくつかの実施形態では、ヒト対象の処置において使用可能である用量は、少なくとも3.8×10個、少なくとも3.8×10個、少なくとも3.8×10個、少なくとも3.8×10個、少なくとも3.8×10個、少なくとも3.8×10個、又は少なくとも3.8×1010個の免疫細胞/mの範囲である。特定の実施形態では、ヒト対象の処置において使用される用量は、約3.8×10個~約3.8×1010個の免疫細胞/mの範囲である。さらなる実施形態では、免疫細胞の治療有効量は、約5×10個の細胞/kg体重~約7.5×10個の細胞/kg体重、例えば、約2×10個の細胞/kg体重~約5×10個の細胞/kg体重、又は約5×10個の細胞/kg体重~約2×10個の細胞/kg体重で変化し得る。免疫細胞の正確な量は、当業者により、対象の年齢、体重、性別、及び生理的状態に基づいて容易に決定される。有効用量は、インビトロ又は動物モデル試験系から誘導される用量反応曲線から外挿可能である。
【0084】
RM細胞は、免疫介在性障害の処置のための1つ以上の他の治療薬と組み合わせて投与されてもよい。併用療法剤として、限定はされないが、1つ以上の抗微生物剤(例えば、抗生物質、抗ウイルス薬及び抗真菌薬)、抗腫瘍剤(例えば、フルオロウラシル、メトトレキサート、パクリタキセル、フルダラビン、エトポシド、ドキソルビシン、又はビンクリスチン)、免疫枯渇剤(immune-depleting agent)(例えば、フルダラビン、エトポシド、ドキソルビシン、又はビンクリスチン)、免疫抑制剤(例えば、アザチオプリン、又はグルココルチコイド、例えばデキサメタゾン又はプレドニゾン)、抗炎症剤(例えば、グルココルチコイド、例えば、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン若しくはプレドニゾン、又は非ステロイド性抗炎症剤、例えば、アセチルサリチル酸、イブプロフェン若しくはナプロキセンナトリウム)、サイトカイン(例えば、インターロイキン-10又はトランスフォーミング成長因子-β)、ホルモン(例えば、エストロゲン)、又はワクチンを挙げることができる。さらに、限定はされないが、カルシニューリン阻害剤(例えば、シクロスポリン及びタクロリムス);mTOR阻害剤(例えば、ラパマイシン);ミコフェノール酸モフェチル、(例えば、CD3、CD4、CD40、CD154、CD45、IVIG、又はB細胞を認識する)抗体;化学療法剤(例えば、メトトレキサート、トレオスルファン、ブスルファン);照射;又はケモカイン、インターロイキン若しくはそれらの阻害剤(例えば、BAFF、IL-2、抗IL-2R、IL-4、JAKキナーゼ阻害剤)を含む免疫抑制剤又は免疫寛容誘発剤が投与可能である。かかる追加的な医薬品は、所望される効果に応じて、免疫細胞の投与の前、間、又は後に投与可能である。細胞及び薬剤のこの投与は、同じ経路により又は異なる経路により、また同じ部位若しくは異なる部位のいずれかで可能である。
【0085】
A.併用療法
特定の実施形態では、本明細書に提供される方法は、少なくとも1つの追加的な治療薬を対象に投与するステップをさらに含む。本明細書で開示されるすべての追加的な治療薬は、任意の潜在的毒性、起こり得る副作用、及び任意の他の関連する要因を考慮する、各々の具体的な組成物又は治療法に対する優良臨床試験基準に従い、対象に投与されることになる。
【0086】
特定の実施形態では、追加的な治療法は、免疫療法、放射線療法、手術(例えば、腫瘍の外科的切除)、化学療法、骨髄移植、又は上記の組み合わせであってもよい。追加的な治療法は、標的療法であってもよい。特定の実施形態では、追加的な治療法は、一次治療の前に施される(即ちアジュバント療法の場合)。特定の実施形態では、追加的な治療法は、一次処置の後に施される(即ちネオアジュバント療法の場合。
【0087】
特定の実施形態では、追加的な治療法は、免疫療法を含む。特定の実施形態では、免疫療法は、免疫チェックポイント阻害剤を含む。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、プログラム細胞死経路1(PD-1/CD279)及びそのリガンド(PD-L1/CD274及びPD-L2/CD273)、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4/CD152)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3/CD223)、B及びTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、Igを伴うT細胞免疫受容体及び免疫受容体チロシンに基づく阻害性モチーフ(ITIM)ドメイン(TIGIT)、T細胞免疫グロブリンドメイン及びムチンドメイン3(TIM-3/HAVcr2)、キラー免疫グロブリン様受容体(KIR/CD158)、T細胞活性化のVドメイン免疫グロブリンサプレッサー(VISTA)、及びアデノシンA2a受容体(A2aR)からなる群から選択される免疫チェックポイントタンパク質を阻害する。いくつかの態様では、免疫療法剤は、4-1BB作動薬である。例示的な4-1BB作動薬として、限定はされないが、4-1BB作動薬抗体(例えば、ウトミルマブ)、組換え4-1BB(限定はされないが、可溶性、マトリックス結合性のスキャフォールド結合形態を含む)、及び4-1BBアプタマーが挙げられる。
【0088】
特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1結合アンタゴニストである。特定の実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体である。特定の実施形態では、抗PD-1抗体は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、及びCT-011からなる群から選択される。特定の実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、イムノアドヘシン(例えば、免疫グロブリン定常領域(例えば免疫グロブリン配列のFc領域)に融合されたPDL1又はPDL2の細胞外又はPD-1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。
【0089】
特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4結合アンタゴニストである。特定の実施形態では、CTLA-4結合アンタゴニストは、抗CTLA-4抗体である。特定の実施形態では、抗CTLA-4抗体は、イピリムマブ及びトレメリムマブからなる群から選択される。
【0090】
特定の実施形態では、追加的な治療薬は、放射線療法による処置を含む。特定の実施形態では、放射線療法は、ガンマ線(γ線)、X線、マイクロ波、陽子線照射、紫外線照射、及び放射性同位元素の腫瘍への直接送達からなる群から選択される。特定の実施形態では、放射線療法は、X線による処置を含む。特定の実施形態では、X線は、3~4週間にわたり、50~200レントゲンの一日量で施される。特定の実施形態では、X線は、2000~6000レントゲンの単回線量で施される。特定の実施形態では、放射線療法は、放射性同位元素の腫瘍への直接送達を含む。放射性同位元素における線量範囲は、同位体の半減期、放射される放射線の強度及びタイプ、並びに腫瘍細胞による取り込みの程度に応じて広範に変化するが、適切な治療有効量の決定は、当業者のレベルの範囲内である。
【0091】
特定の実施形態では、追加的な治療薬は、一次処置に伴う副作用(例えば、悪心、悪液質など)の処置のための薬剤の投与を含む。特定の実施形態では、追加的な治療法は、免疫療法を含む。特定の実施形態では、追加的な治療法は、放射線療法を含む。いくつかの実施形態では、放射線療法は、γ線照射を含む。特定の実施形態では、追加的な治療法は、手術を含む。特定の実施形態では、追加的な治療法は、放射線療法と手術との組み合わせを含む。特定の実施形態では、追加的な治療法は、アルキル化剤、アントラサイクリン、細胞骨格破壊剤、エポチロン、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、キナーゼ阻害剤、ヌクレオチド類似体及びヌクレオチド前駆体類似体、ペプチド抗生物質、白金に基づく化合物、レチノイド、ビンカアルカロイド、及びそれらの誘導体からなる群から選択される化学療法剤のクラスによる処置を含む。
【0092】
本明細書で検討される追加的な治療法は、本明細書に提供される組成物の投与の前、後、又はそれと同時に施されてもよい。特定の実施形態では、追加的な治療法は、本明細書に提供される組成物の前に施される。特定の実施形態では、追加的な治療法は、本明細書に提供される組成物の後に施される。特定の実施形態では、追加的な治療法は、本明細書に提供される組成物の投与の前又は後に1つ以上の間隔で施される。治療中の対象が併用療法から利益を得るように、追加的な治療法を施すための適切な間隔の決定は、当業者のレベルの範囲内である。
【0093】
B.医薬組成物
別の態様では、TRM細胞及び薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物及び製剤が本明細書に提供される。
【0094】
本明細書に記載のような医薬組成物及び製剤は、所望される純度を有する活性成分(抗体又はポリペプチドなど)を1つ以上の任意選択的な薬学的に許容できる担体(Remington’s Pharmaceutical Sciences 22ndedition,2012)と、水溶液、例えば正常な生理食塩水(例えば0.9%)及びヒト血清アルブミン(例えば10%)の形態で混合することにより調製され得る。薬学的に許容できる担体は、一般に、利用される用量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、限定はされないが、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジンなどのアミノ酸;単糖、二糖、及び他の糖、例えば、グルコース、マンノース、又はデキストリン;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、亜鉛-タンパク質複合体);及び/又はポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0095】
III.キット
いくつかの実施形態では、例えばTRM細胞を生成するための1つ以上の培地及び成分を含み得るキットが提供される。かかる配合物は、TRM細胞との組み合わせに適した形態で因子のカクテルを含んでもよい。試薬系は、必要に応じて、水性培地又は凍結乾燥形態のいずれかでパッケージングされてもよい。キットの容器手段は、一般に、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ又は他の容器手段を含むことになり、その中に成分が入れられ、好ましくは好適にアリコートされてもよい。キット内に2つ以上の成分が存在する場合、キットはまた、一般に、第2の、第3の又は他の追加的な容器を含むことになり、その中に追加的な成分が別々に入れられてもよい。しかし、成分の様々な組み合わせが、バイアル中に含まれてもよい。キットの成分は、乾燥粉末として提供されてもよい。試薬及び/又は成分が乾燥粉末として提供されるとき、粉末は、好適な溶媒の添加により再構成され得る。溶媒も別の容器手段で提供されてよいことが想定される。キットはまた、典型的には、市販用に密封された、キット成分を含有するための手段を含むことになる。かかる容器は、注射又はブロー成形プラスチック容器を含んでもよく、その中に所望されるバイアルが保持される。キットはまた、使用説明書を、例えば印刷又は電子フォーマット、例えばデジタルフォーマットで含み得る。
【実施例
【0096】
IV.実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含められる。以下の実施例中に開示される技術が、本発明の実施において十分に機能することが発明者によって発見された技術を表し、それ故、その実施における好ましいモードを構成することが考察できることは当業者によって理解される必要がある。しかし、当業者は、本開示に照らして、開示される具体的な実施形態において多数の変化を設けることができることを理解するだけでなく、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく同様又は類似の結果を得る必要がある。
【0097】
実施例1-組織常在メモリーT細胞の生成
末梢血サンプルを健常ヒト対象から得た。FACSを使用して血液を選別し、ナイーブ(CD45RACCR7)CD8T細胞を単離した。次に、T細胞を多クローン性に大気酸素下(約20%)又は低酸素下(2%O)で4日間活性化させ、「初期エフェクター」を生成した。次に、初期エフェクターを1.25ng/mLのrhTGF-β1の存在下でさらに2日間培養した。次に細胞を収集し、TRM関連遺伝子及び表面マーカーの発現について分析した。
【0098】
低酸素とTGF-β1との組み合わせにより、CD69CD103集団が誘導され、CD69及びCD103を含むヒトTRM関連マーカーが発現されることが見出された(図3)。TRM様T細胞を、さらなる遺伝子の発現における変化についてさらに分析した。低酸素下対大気酸素条件下で培養された細胞がTRM表現型に関連する遺伝子発現における変化を有することが見出された(図2)。
【0099】
ナイーブCD8T細胞を、rhTGF-β1の添加の存在下又は不在下で低酸素により活性化させた。CD69CD103集団の頻度をフローサイトメトリーにより評価した。低酸素及びTGF-β1がCD69CD103細胞を誘導するように協力することが認められた(図4)。
【0100】
さらに、低酸素及びTGF-β1で誘導されたTRM表現型細胞が、内因性TRMについて報告された場合と同様の転写差異を示すことが見出された。CD69CD103、CD69CD103、及びCD69CD103T細胞を生成させ、選別してから、RNAを単離し、RNA配列決定を介してトランスクリプトーム分析を行った(n=3)。図9Aは、一般に内因性ヒトTRMのトランスクリプトーム分析にて報告された、選択された遺伝子の発現を示すヒートマップを示す。図9Bは、ヒト肺からのCD8CD69T細胞対CD8CD69T細胞、並びにCD69CD103低酸素及びTGF-β1でインビトロ誘導されたTRM(i-TRM)に対する正常な細胞培養条件(TGF-β1を伴わない20%O)からのCD69CD103細胞における転写差異(log2FC)を比較するヒートマップを示す。差次的発現を|log2FC|≧1及びFDR<0.05により判定した。
【0101】
本試験は、低酸素及びTGF-β1が、CD8CD69CD103細胞集団を誘導し、ヒトTRM関連マーカーを発現し、内因性ヒトTRMの場合と類似の転写特性を有するように協力することを示した。この研究は、インビボでのTRM分化についての別の考えられる要因を示し、この特有の細胞型を利用する養子細胞療法の開発を可能にすると思われる抗原特異的なTRM様細胞を生成するためのインビトロ方法における基盤を提供する。したがって、本方法は、TRM表現型を有する細胞を生成するために用いることができる。
【0102】
実施例2-材料及び方法
細胞単離及びインビトロ細胞培養:健常なドナー末梢血単核球(PBMC)を白血球除去により収集し、使用まで液体窒素中で貯蔵した。すべてのヒトサンプル収集は、インフォームドコンセントを得て実施し、UT MD Anderson Cancer Centerの機関審査委員会(IRB)により承認された。StemCell EasySep(商標)キットを使用し、CD8T細胞を健常ドナーPBMCから濃縮した。次に、CD8、CD45RA、及びCCR7に対する蛍光色素コンジュゲート抗体で細胞を染色した。FACSAria(商標)III又はFusionセルソーター(BD Biosciences)を使用し、ナイーブCD8CD45RACCR7細胞を選別した。選別されたナイーブ細胞を、10IU/mlのIL-2(Prometheus)を有する細胞培地(10%FBS、L-グルタミン、及びペニシリン-ストレプトマイシンを有するRPMI)に再懸濁し、低酸素チャンバー(Coy Laboratory Products)内の2%酸素又は標準細胞培養インキュベーター(Thermo Fisher)内の大気酸素(約20%)に一晩平衡化した。平衡化後、抗CD3/抗CD28ビーズ(Dynabeads(登録商標),Gibco)で細胞を4日間活性化させた。4日目、1.25ng/mlの組換えヒトTGF-β1(Biolegend)を添加し、細胞をさらに2日間培養した。自己ペプチドパルス樹状細胞による刺激又はTCR形質導入とその後の四量体に基づく選別を介して生成された抗原特異的CD8T細胞を、通常の急速拡大プロトコル(REP)又はTRM修飾REPを用いて拡大した。30ng/mLの抗CD3(OKT3)を使用し、四量体陽性細胞を10~14日間拡大し、i)20%酸素と通常のREPの場合にIL-2(50IU/ml)の添加、又はii)2%酸素と修飾REPの場合にIL-15(10ng/ml)及びrhTGF-β1(1.25ng/ml、4日目開始)の添加のいずれかの下で、支持細胞として同種PBMC及びLCLに200回照射し、TRM表現型を誘導した。
【0103】
フローサイトメトリー:ヒトTRM関連マーカーの分析のため、ビーズを細胞から除去し、細胞を染色緩衝液で1回洗浄し、Live/Dead Fixable Aqua(Life Technologies)及びCD8、CD69、CD103、PD-1、CD101、CXCR6、及びCD49aに対する蛍光色素コンジュゲート抗体(すべてBiolegend)で染色した。染色後、細胞を4%パラホルムアルデヒド固定緩衝液(Biolegend)で固定し、洗浄し、分析まで染色緩衝液中で貯蔵した。ACEA Novocyte(登録商標)3000フローサイトメーターを使用し、染色された細胞を分析した。単一の蛍光色素で染色された補償ビーズ(UltraComp(商標),eBioscience)及び蛍光マイナスワン(FMO)サンプルを対照として使用した。FlowJoソフトウェア(BD Biosciences)を使用し、データを分析した。
【0104】
定量リアルタイムPCR(qRT-PCR又はqPCR):ヒトTRM関連遺伝子発現の分析のため、ビーズを細胞から除去し、細胞をPBSで1回洗浄した。Qiagen RNeasy(登録商標)Plus Mini Kitを使用し、製造業者の使用説明書に従い、RNAを単離した。必要な場合、Qiagen RNeasy(登録商標)MinElute Cleanup Kitを使用し、製造業者の使用説明書に従い、RNAをさらに精製及び/又は濃縮した。M-MLV逆転写酵素(Thermo Fisher)を使用し、第1鎖cDNAを合成した。QuantStudio(登録商標)5リアルタイムPCRシステム及びPowerUp(商標)SYBR(登録商標)Green Master Mix(Applied Biosystems,ThermoFisher Scientific)を使用し、定量リアルタイムPCRを実施した。相対的なmRNA遺伝子発現をハウスキーピング遺伝子RPL13Aに正規化した。使用したプライマーを下表に列挙する。
【0105】
【表2】
【0106】
RNA-配列決定トランスクリプトーム分析:FACSAria(商標)IIIuセルソーター(BD Biosciences)を使用し、細胞を選別してから、Qiagen RNeasy(登録商標)Plus Mini Kit、続いてQiagen RNeasy(登録商標)MinElute Cleanup Kitを使用し、RNAを単離した。Illumina TruSeq Stranded mRNA Kitを使用し、ライブラリーを構築した。Illumina NextSeq(登録商標)500プラットフォームを使用し、RNA配列決定を実施した。生の読み取り値をヒト(Homo sapiens)参照ゲノム及びトランスクリプトーム(GRCh38,GENCODEV23)に、HISAT2(バージョン:2.1.0)によりマッピングした。Htseq-count(バージョン:2.1.0)を使用し、遺伝子についてのカウント数を得た。R及びBioconductorパッケージDESeq2(バージョン1.14.1)を使用し、差次的に発現された遺伝子を同定した。FDR<0.05及び|倍数変化|>2を有する遺伝子(mRNAのみ、P値補正用にタンパク質をコードする遺伝子を得る)を差次的に発現されたとみなした。R及びBioconductorパッケージfgsea(バージョン1.10.0)を使用し、予め規定された遺伝子セットが2つの生物学的状態(例えば表現型)間で統計学的に有意なコンコーダントな(concordant)差異を示すか否かを判定した。遺伝子セットは、いくつかの予め公表されたT細胞シグネチャーから誘導した。TRMシグネチャーは、いくつかの試験から構築した。肺TRM及び乳がんTILシグネチャーは、遺伝子発現オムニバス(GEO)からダウンロードし、各々、GSE61397及びGSE110938であった。0.05未満の偽発見率(FDR)補正P値は、有意又は「真」とみなした。
【0107】
有意に差次的に発現された遺伝子(FDR<0.05及び|倍数変化|>2)の機能的分析を、参照セットとしてのIngenuity知識ベースにおけるすべての遺伝子を使用するIngenuity(登録商標)経路分析(IPA)ソフトウェア(バージョン48207413,Qiagen)と、経路が条件間で有意に変更されるか否か(-log10[P値]>1.3)を判定するためのコア分析における右側フィッシャー直接検定により実施した。
【0108】
統計分析:GraphPad Prism(バージョン7,GraphPad software,San Diego,CA)を使用し、データのグラフィカル表示及び統計分析を実施した。データを平均±平均値の標準誤差として表示する。実験群間の結果を、図の説明中に記載の統計学的検定を用いて比較した(分散分析とその後常にチューキーの多重比較検定を行う)。p<0.05を統計学的に有意とみなした。
【0109】
実施例3-低酸素はヒト組織常在メモリーT細胞分化における環境的要因として作用する
低酸素及びTGF-β1下で分化したヒトCD8T細胞はTRM様表現型を得る:炎症性組織内での相対的低酸素という条件で、低酸素圧がTRM分化へのさらなる要因をもたらし得ることが仮定された。低酸素がTRM表現型の誘導に寄与し得るか否かを判定するため、ナイーブ(CD45RACCR7)CD8T細胞をヒト末梢血から選別し、それらを低酸素下(2%O)又は正常な細胞培養条件下(大気酸素、約20%O)で4日間活性化し、「初期エフェクター」を生成し、次にrhTGF-β1の存在下でさらに2日培養した。
【0110】
定量リアルタイムPCR(qPCR)を使用し、TRM転写特性に関連した遺伝子パネルの発現について大集団を評価した。2%O+TGF-β1下で分化した細胞は、ヒトTRMのコア転写シグネチャーとしてKumar et al.2017(参照により本明細書中に援用される)によって同定された遺伝子の大部分の上方制御を示した(即ち、CD69、ITGAE(CD103)、PDCD1(PD-1)、CD101、及びCXCR6)(図2A)。特に、ITGA1(CD49a)の転写物レベルにおいて差異は認められなかった。さらに、T細胞再循環において重要な遺伝子の転写物(S1PR1、KLF2、SELL(CD62L))は下方制御され、常在メモリー表現型がさらに示唆された。(図2B)。マウスモデルにおける以前の報告では、S1PR1及びKLF2の下方制御がTRM分化にとって重要であり、これら遺伝子のレベル低下が内因性ヒトTRMにおいても認められていることが示されている。転写因子Eomesにおける転写物は、劇的に減少した(図2C)。マウスにおける試験では、Eomesの消滅がTGF-β1応答性及びTRMの確立に必要であることが示されている。IRF4及びRUNX3は上方制御された。TRMにおけるIRF4の具体的役割は、依然として明確でないが、その上方制御がヒトTRMにて報告されている。転写因子RUNX3は近年、TRM分化の主要な制御因子であることが同定されている。最後に、エフェクター分子TNF-α及びグランザイムbをコードする転写物のレベル上昇が、ヒト肺TRMにおいて報じられた知見と同様に認められた(図2D)。古典的な低酸素応答性遺伝子SLC2A1(Glut-1)及びVEGFの発現上昇により、細胞が低酸素条件に応答していることが確認された(図1E)。全体的に、これらの結果は、ヒトCD8T細胞がTGF-β1と組み合わせて低酸素下で分化されるとき、それらが組織常在メモリー様転写特性を得ることを示す。
【0111】
ヒトTRMのコアシグネチャーであると考えられるマーカーのタンパク質レベル発現を評価するためのフローサイトメトリー分析。試験したすべての健常ドナーにおいて、2%O+TGF-β1条件下で、20%O+TGF-β1条件下と比べてCD69CD103細胞における増加が認められた(図2A)。細胞生存度は、2%O+TGF-β1細胞において、20%O+TGF-β1細胞に対して同等又は優位であった(図7B)。これらのCD69CD103細胞は、PD-1、CD101、及びCD49aを発現した(図3B)。特に、CXCR6表面タンパク質発現は、転写上方制御にもかかわらず認められなかった。CD69とCD103の双方の発現は、TRMを明らかにするために現在一般に使用されているが、部分的には内因性常在メモリー細胞内でのCD69及びCD103の異質性発現に起因し、これら表面マーカーのいずれがTRMを同定するための使用に最適であるかについては依然として論争の的である。したがって、2%O+TGF-β1条件から、CD69CD103、CD69CD103、及びCD69CD103集団の中でTRM関連マーカーPD-1、CD101、及びCD49aの発現レベルを比較した。予想通り、CD69CD103集団が、最高レベルのPD-1及びCD101表面発現を有した(図3C)。CD49aの発現も高かったが、CD69CD103集団で認められた発現レベルに等しかった。異なる酸素条件の比較では、CD69CD103集団において、集団の倍数変化における最も著しい増加が見出された(図7C、7D)。これらの結果に基づき、インビトロ誘導されたTRM細胞としてのCD69CD103集団に対するさらなる分析に注目することを選択した。
【0112】
低酸素及びTGF-β1曝露はTRM表現型を得るための相乗的要因である:正常な組織培養条件下での大気酸素レベルが(生理学的に重要である)10%Oの効果が評価されたインビボでのT細胞によって経験される場合よりも高いことから、T細胞を循環中で非低酸素下酸素レベルに曝露する。10%O+TGF-β1におけるCD69CD103T細胞において20%O+TGF-β1と比べてわずかな増加が認められたが、多重比較における補正により、TRMシグネチャー遺伝子の発現における2つの条件間で有意差がないことが明らかになった(図8A-E)。さらに、CD69CD103集団の倍数変化(20%超のO2+TGF-β1)は、2%O+TGF-β1条件対10%O+TGF-β1条件において有意により大きかった(図8F)。
【0113】
低酸素及びTGF-β1のTRM表現型細胞の誘発への各寄与を評価するため、インビトロ分化実験を、2%O又は20%O下で、rhTGF-β1の添加の存在下又は不在下で実施した。低酸素及びTGF-βが各々、これらマーカーの発現を駆動し得るという公表された報告に一致し、低酸素が主にCD69細胞を誘導した一方で、TGF-β1はCD103細胞を誘導した。低酸素又はTGF-β1が単独でCD69CD103細胞の中規模集団を確かに誘導するが、低酸素とTGF-β1との組み合わせは、組み合わせ効果がいずれかの条件単独での相加的効果よりも顕著に大きかったことから、常在性表現型の誘導に協力するようにみられる(図4A)。低酸素及びTGF-β1によって誘導されたCD69CD103細胞は、TRMマーカーPD-1、CD101、及びCD49aを、20%O及び2%O条件下の大部分の集団(各々、CD69CD103及びCD69CD103)と比べて高レベルで発現した(図4B)。
【0114】
インビトロ誘導されたTRMは内因性ヒトTRM遺伝子シグネチャーにおける濃縮を示す:CD69CD103(20%O)細胞、CD69CD103(2%O)細胞及びCD69CD103(2%O+TGF-β1)細胞の中でのTRMマーカー発現における差異が異なる集団を表すことを示唆したことから、各表現型を選別し、それらの転写特性をRNA配列決定により分析した。主成分分析(PCA)によると、これら3つの集団が互いに異なることが確認された(図5A)。教師なし階層的クラスタリングによると、CD69CD103細胞及びCD69CD103細胞における遺伝子シグネチャーが異なる一方で、CD69CD103細胞がやや中間的な転写特性を有することが示された(図5B、5C)。CD69CD103細胞とCD69CD103細胞との間での上位の差次的に発現された遺伝子の比較によると、内因性ヒトTRMについて報告された場合に一致する遺伝子発現パターン、例えば、ITGAE、EGR2、GNLY、BMF、RASGEF1B、及びNR4A1の発現増加、並びにSELL、KLF2、及びKLF3の発現減少が示され、再循環しない転写プログラムが示された(図5B、5C)。KLF2標的遺伝子S1PR1もまた下方制御されたが、倍数変化の閾値を満たさなかった。CD69CD103細胞は、ITGA1、PDCD1、CD101、及びTNFRSF9の発現増加を示し、それらのすべては、内因性ヒトTRM内で上方制御されることが常に報告されている。インビボで内因性肺TRMの維持に寄与することが知られている転写因子NOTCH1、及びノッチシグナル伝達における中心的役割を担うRBPJのレベル上昇が認められた(図5C)。
【0115】
内因性TRMは、様々なケモカインを、おそらくは他の免疫細胞を局所組織に動員する場合のそれらの「アラーム機能」の一部として発現することが多い。内因性TRMのケモカイン特性に一致して、試験におけるインビトロ誘導されたCD69CD103細胞は、CXCL13及びCCL20、並びにCCL4、CCL5、及びCCL22を上方制御した(図5C)。不明確な役割を有するが、内因性ヒトTRMにおいて常に報告されている遺伝子の発現における変化、例えばMYO7A及びRGS1の上方制御、並びにSERPINE2、RAP1GAP2、RASGRP2、及びFAM65Bの下方制御も認められた。
【0116】
それらの知見の生理学的関連性に関する洞察を得るため、末梢血からのCD103エフェクターメモリー細胞又は同じ組織部位内部のCD103T細胞と比べられた内因性ヒトCD103RMについての公表された分析からの遺伝子シグネチャーを用いて、遺伝子セット濃縮分析(GSEA)を実施した。結果によると、CD69CD103細胞と比べてのCD69CD103細胞の転写特性が、血液TEM及び局所CD103T細胞と比べてのTRMのシグネチャーに類似する一方で、CD69CD103細胞と比べてのCD69CD103細胞が専ら同じ組織内のTRM対CD103T細胞のシグネチャーに類似することが示された(図5D)。これらの結果は、局所組織に対する循環における酸素圧下での差異の程度を反映する。同じ腫瘍内部のTILであっても、循環中のT細胞に対する組織内のT細胞よりも類似した酸素レベルに曝露されることになり、様々な固形腫瘍タイプにおけるTILの複数の直近の特性が、CD103常在メモリー様TIL(TILRM)の存在を報じている。それ故、低酸素+TGF-β1下で誘導されたCD69CD103細胞を低酸素単独下で誘導されたCD69CD103細胞と比較し、CD8CD69CD103対CD8CD69CD103乳がんTILについて報じられた遺伝子シグネチャーの濃縮が認められた(図5E、5F)。低酸素及びTGF-βが腫瘍微小環境に共通の特徴であることから、結果として、これら条件がインビボでのCD103TILの生成に寄与することがあることが示される。
【0117】
CD69CD103細胞をCD69CD103細胞と比較するIngenuity経路分析(IPA)によると、差次的に発現された遺伝子の多くが、解糖、糖新生、及びTGF-βシグナル伝達経路の成分であることが示された(図6A)。細胞が低酸素及びTGF-βに曝露されたことで、低酸素が細胞代謝の主要な制御因子であると仮定すると、これらの結果は想定された。ノッチシグナル伝達経路における遺伝子の濃縮も認められ、それは内因性ヒト肺TRM内で報告されている(図6A)。これらの知見は、TRM分化における代謝の役割についでの疑問を生じさせる。Hombrinkらは、ノッチシグナル伝達の化学的阻害が解糖、酸化的リン酸化、及び脂肪酸代謝経路に関与する遺伝子に影響したことから、肺TRMにおけるノッチシグナル伝達の主要な役割が代謝プログラムの調節であることを示唆した。低酸素と同様、好気性解糖の既知の修飾物質であるプリン作動性受容体P2RX7の欠失が、P2RX7欠損細胞がミトコンドリアの質量及び機能の低減、好気性解糖の欠陥、及びグルコース取り込み障害を呈したことから、代謝の調節不全を介してTRMの形成を損なうことも示唆されている。
【0118】
白血球血管外漏出シグナル伝達に関与する差次的に発現された遺伝子の濃縮。上皮接着結合シグナル伝達、インテグリンシグナル伝達、及びパキシリン(Paxilin)シグナル伝達が認められたが、すべてが接着斑シグナル伝達に関与し、遊走のプログラム化における変化が示唆された(図6B)。PI(3)K(ホスファチジルイノシトール-3-OHキナーゼ)シグナル伝達がKLF2のサイトカイン誘導性下方制御に関与し、インビボでのTRMの生成における役割を担うことがあるという先行報告に一致して、イノシトールリン酸シグナル伝達に関与する複数の経路、即ち、3-ホスホイノシチド生合成、イノシトールリン酸化合物のスーパー経路、D-ミオ-イノシトール(1,4,5,6)-四リン酸生合成、及びD-ミオ-イノシトール(3,4,5,6)-四リン酸生合成についても濃縮された。
【0119】
低酸素+TGF-βで誘導されるTRM転写特性の機能的関連性をより十分に理解するため、Kumarらによって公表された転写データに対して、経路分析も実施し、Th1及びTh2活性化における変化と顆粒球接着及び血管外漏出経路が、それらの内因性肺TRM及びインビトロ誘導されたTRMに共通することが見出された。特に、データセットのすべての中で、軸索ガイダンス経路も高度に有意に差次的に調節された。軸索ガイダンスは、最初、表面上は常在メモリーT細胞に無関係であり、現在のTRMの文献にて報告されていないが、環境要因が細胞の遊走パターンに影響を及ぼす場合のプロセスである。軸索ガイダンスを司る同じ要素の多くが、免疫細胞輸送を調節することも公知であり、低酸素及び/又はTGF-βにより調節され得る。
【0120】
TGFB1と組み合わせたHIFプロリルヒドロキシラーゼ阻害剤FG-4592(ロキサデュスタット)の効果を評価するため、さらなる試験を実施した。末梢血から単離したナイーブCD8T細胞を、20%O(AtmosO)下、HIFプロリルヒドロキシラーゼ阻害剤FG-4592(ロキサデュスタット)の存在下で4日間、次にrhTGF-β1を用いてさらに2日間活性化させた。4日目、rhTGF-β1の添加とともに2%O(低酸素)下で活性化させた細胞を比較用に図10Aに示す。組み合わせは、CD69CD103細胞を誘導することが認められた(図10A)。
【0121】
次に、ナイーブCD8T細胞を、4日目のrhTGF-β1の添加とともに20%O(AtmosO)又は2%O下で7日間、MART-1(M27)ペプチドでパルスした自己単球由来樹状細胞で刺激し、CD69CD103抗原特異的(四量体)T細胞を生成した(フローサイトメトリーにより検出した)(図10B)。低酸素及びrhTGF-β1を改良した急速拡大プロトコルにおいて使用し、抗原特異的T細胞内でTRM表現型を誘導した。抗原特異的T細胞を、自己MART-1ペプチドパルス樹状細胞(ETC)による刺激又はgp100に特異的なTCR(TCRT)の形質導入を介して生成し、蛍光色素コンジュゲート四量体で標識し、選別した。次に、選別された抗原特異的T細胞を、20%O下で、抗CD3(OKT3)及び照射された支持細胞で刺激し、IL-2を添加する(通常のREP)か又は2%OでIL-15を添加し、4日目以降、rhTGF-β1を添加した。このように、改良した急速拡大プロトコルにより、抗原特異的T細胞内でTRM表現型が誘導されることも示された(図10C)。
【0122】
したがって、本試験では、ヒト末梢血由来T細胞からインビトロでTRM表現型を再現するとともに、TRM分化における潜在的要因として低酸素を同定した。ヒトにおいて実施可能な実験に対して明白な制限がある一方で、記述した試験は、低酸素+TGF-βで誘導されたTRMが内因性TRM並びに遊走及び代謝に関連する経路の転写及びプロテオミクスのランドスケープを再現するという観察により支持されて、低酸素がTRM表現型の獲得に寄与し得る環境的要因であるという説得力のある証拠を提供する。
【0123】
本明細書で開示及び主張された方法のすべては、本開示に照らして、過度の実験を行うことなく、構築し、実施することができる。本発明の組成物及び方法が好ましい実施形態の観点で説明されている一方で、本明細書に記載の方法に、且つ方法のステップ又は一連のステップにおいて変更が本発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく適用されてもよいことは当業者にとって明らかになるであろう。より具体的には、化学的且つ生理学的に関連する特定の薬剤が本明細書に記載の薬剤と置き換えられてもよい場合、同一又は同様の結果が得られることは明らかになるであろう。当業者にとって明白なすべてのかかる類似する置換及び修飾は、貼付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の精神、範囲及び概念の範囲内にあると思われる。
参考文献
以下の参考文献は、本明細書における提示を補足する、例示的な手順又は他の詳細を提供する程度まで、参照により本明細書中に具体的に援用される。
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図1
図2A-2B】
図2C-2E】
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B-1】
図5B-2】
図5B-3】
図5B-4】
図5C
図5D-5E】
図5F
図6A-1】
図6A-2】
図6B
図7A-7D】
図8A-8E】
図8F
図9A
図9B-1】
図9B-2】
図9B-3】
図10A
図10B
図10C
【配列表】
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