IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立製作所の特許一覧

特許7698596ソフトウェアアップデートシステム及びソフトウェアアップデート方法
<>
  • 特許-ソフトウェアアップデートシステム及びソフトウェアアップデート方法 図1
  • 特許-ソフトウェアアップデートシステム及びソフトウェアアップデート方法 図2
  • 特許-ソフトウェアアップデートシステム及びソフトウェアアップデート方法 図3
  • 特許-ソフトウェアアップデートシステム及びソフトウェアアップデート方法 図4
  • 特許-ソフトウェアアップデートシステム及びソフトウェアアップデート方法 図5
  • 特許-ソフトウェアアップデートシステム及びソフトウェアアップデート方法 図6
  • 特許-ソフトウェアアップデートシステム及びソフトウェアアップデート方法 図7
  • 特許-ソフトウェアアップデートシステム及びソフトウェアアップデート方法 図8
  • 特許-ソフトウェアアップデートシステム及びソフトウェアアップデート方法 図9
  • 特許-ソフトウェアアップデートシステム及びソフトウェアアップデート方法 図10
  • 特許-ソフトウェアアップデートシステム及びソフトウェアアップデート方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-17
(45)【発行日】2025-06-25
(54)【発明の名称】ソフトウェアアップデートシステム及びソフトウェアアップデート方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/00 20060101AFI20250618BHJP
   B66B 5/00 20060101ALI20250618BHJP
   G06F 8/65 20180101ALI20250618BHJP
【FI】
B66B3/00 S
B66B5/00 G
G06F8/65
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022036609
(22)【出願日】2022-03-09
(65)【公開番号】P2023131710
(43)【公開日】2023-09-22
【審査請求日】2024-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽鳥 貴大
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 勇来
(72)【発明者】
【氏名】納谷 英光
(72)【発明者】
【氏名】助川 祐太
【審査官】田中 尋
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-255275(JP,A)
【文献】特開2011-131963(JP,A)
【文献】特開2018-122947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00
B66B 5/00
G06F 8/65
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの制御を行う制御装置のソフトウェアをアップデートするソフトウェアアップデートシステムであって、
前記制御装置は、
前記ソフトウェアを記憶するメモリと、
前記ソフトウェアを実行する制御部と、を備え、
前記メモリの記憶領域は、前記エレベータの制御機能の分類に対応して複数のエリアに区分され、前記ソフトウェアは、前記制御機能の分類に基づいて分割されて対応するエリアに格納され、
前記制御部は、前記ソフトウェアのアップデートを実行する場合に、当該アップデートにより変更される制御機能の分類を特定し、変更される制御機能に対応するエリアを選択的に書き換えるものであり、
前記制御機能の分類は、
複数のエレベータで共通して使用される標準機能であって変更が想定されていない不変部と、
前記標準機能であって運行を停止した状態での更新が必要な重要可変部と、
前記標準機能であって運行中の更新が可能な可変部と、
を含む
ことを特徴とするソフトウェアアップデートシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のソフトウェアアップデートシステムであって、
前記制御機能の分類は、前記エレベータに個別に対応して設けられた機能である案件対応部を含み、
前記制御部は、
所定の切り替えトリガの入力を受け付けたことを条件に、前記重要可変部、前記可変部及び/又は前記案件対応部に対応するエリアの書き換えを実行することを特徴とするソフトウェアアップデートシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のソフトウェアアップデートシステムであって、
前記制御部は、
前記アップデートにより変更される制御機能が格納されているエリアを判定し、
前記アップデートにより変更される制御機能によって影響を受けるエリアを判定し、
当該影響を受けるエリアを対象として動作テストを実施した上で、
前記アップデートを実行することを特徴とするソフトウェアアップデートシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のソフトウェアアップデートシステムであって、
前記制御装置とネットワーク経由で接続され、アップデート用のソフトウェアを前記制御装置に送信するサーバをさらに備え、
前記制御装置は、前記サーバから受信した前記アップデート用のソフトウェアと既存の前記ソフトウェアとの差分を確認することで、前記アップデートにより変更される制御機能の分類を特定する
ことを特徴とするソフトウェアアップデートシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のソフトウェアアップデートシステムであって、
前記制御装置とネットワーク経由で接続され、アップデート用のソフトウェアを前記制御装置に送信するサーバをさらに備え、
前記サーバは、
前記アップデートにより変更される制御機能を判定し、
当該変更される制御機能によって影響を受けるエリアを判定し、
当該影響を受けるエリアを対象として動作テストを実施した上で、
前記アップデート用のソフトウェアを前記制御装置に送信することを特徴とするソフトウェアアップデートシステム。
【請求項6】
エレベータの制御を行う制御装置のソフトウェアをアップデートするソフトウェアアップデート方法であって、
前記制御装置が、
アップデート用のソフトウェアを取得するステップと、
前記アップデート用のソフトウェアと既存の前記ソフトウェアとを比較し、変更される制御機能を確認するステップと、
前記変更される制御機能の分類を特定するステップと、
メモリに格納された既存の前記ソフトウェアを前記アップデート用のソフトウェアに書き換えるステップと、
を含み、
前記メモリの記憶領域は、前記エレベータの制御機能の分類に対応して複数のエリアに区分され、既存の前記ソフトウェアは、前記制御機能の分類に基づいて分割されて対応するエリアに格納されており、
前記制御装置は、前記書き換えに際し、前記変更される制御機能に対応するエリアを選択的に書き換えるものであり、
前記制御機能の分類は、
複数のエレベータで共通して使用される標準機能であって変更が想定されていない不変部と、
前記標準機能であって運行を停止した状態での更新が必要な重要可変部と、
前記標準機能であって運行中の更新が可能な可変部と、
を含む
ことを特徴とするソフトウェアアップデート方法。
【請求項7】
請求項1に記載のソフトウェアアップデートシステムであって、
前記制御装置は、各用途に合ったサブ制御装置を、備え、
前記サブ制御装置のソフトウェアアップデートは、前記制御装置経由にて実施され、前記サブ制御装置の用途に合った、通信方式、切替方式を選択され、実行されることを特徴とするソフトウェアアップデートシステム。
【請求項8】
請求項7に記載のソフトウェアアップデートシステムであって、
前記サブ制御装置は、前記制御装置にて対象のIDにて管理され、対象のROMデータには前記IDが付与されており、前記制御装置は、前記IDに従い、対象のサブ制御装置のアップデートを行うことを特徴とするソフトウェアアップデートシステム。
【請求項9】
請求項7に記載のソフトウェアアップデートシステムであって、
前記通信方式は、常時通信を止めずに、前記アップデート用の前記ソフトウェアのデータを送信すること、或いは、前記常時通信を止めて、前記アップデート用の前記ソフトウェアのデータを送信することのいずれか一つにて実施されることを特徴とするソフトウェアアップデートシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータのソフトウェアアップデートシステム及びソフトウェアアップデートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータ等の自動乗客搬送装置のソフトウェアを更新するため、特開2017-97880号公報(特許文献1)に記載の技術がある。この公報には、「自動乗客搬送装置の構成要素に含まれる第1制御アプリケーションを自動更新する方法では、前記自動乗客搬送装置を運行停止させ、前記第1制御アプリケーションから第2制御アプリケーションへの切り替えを行ない、前記第2制御アプリケーションの切り替え後の点検作業を行なって前記自動乗客搬送装置が、前記第2制御アプリケーションが起動している状態で正しく動作するかどうかを判断し、前記第2制御アプリケーションの前記切り替え後の点検作業で、前記自動乗客搬送装置が正しく動作する場合、前記自動乗客搬送装置を運行させる。」という記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-97880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、運行に影響を与えない機能についてソフトウェアのアップデートを行う場合であっても、エレベータを運行停止させ、ソフトウェア全体を更新する必要があった。このため、従来のエレベータのソフトウェアの更新は、効率的ではなかった。
【0005】
そこで、本発明では、エレベータのソフトウェアを効率的にアップデート可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、代表的な本発明のソフトウェアアップデートシステムの一つは、エレベータの制御を行う制御装置のソフトウェアをアップデートするソフトウェアアップデートシステムであって、前記制御装置は、前記ソフトウェアを記憶するメモリと、前記ソフトウェアを実行する制御部と、を備え、前記メモリの記憶領域は、前記エレベータの制御機能の分類に対応して複数のエリアに区分され、前記ソフトウェアは、前記制御機能の分類に基づいて分割されて対応するエリアに格納され、前記制御部は、前記ソフトウェアのアップデートを実行する場合に、当該アップデートにより変更される制御機能の分類を特定し、変更される制御機能に対応するエリアを選択的に書き換えることを特徴とする。
また、代表的な本発明のソフトウェアアップデート方法の一つは、エレベータの制御を行う制御装置のソフトウェアをアップデートするソフトウェアアップデート方法であって、前記制御装置が、アップデート用のソフトウェアを取得するステップと、前記アップデート用のソフトウェアと既存の前記ソフトウェアとを比較し、変更される制御機能を確認するステップと、前記変更される制御機能の分類を特定するステップと、メモリに格納された既存の前記ソフトウェアを前記アップデート用のソフトウェアに書き換えるステップと、を含み、前記メモリの記憶領域は、前記エレベータの制御機能の分類に対応して複数のエリアに区分され、既存の前記ソフトウェアは、前記制御機能の分類に基づいて分割されて対応するエリアに格納されており、前記制御装置は、前記書き換えに際し、前記変更される制御機能に対応するエリアを選択的に書き換えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、エレベータのソフトウェアを効率的にアップデート可能な技術を提供できる。上記した以外の課題、構成及び効果は以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1のソフトウェアアップデートシステムの構成
図2】ソフトウェアの構造の説明図
図3】ROMのエリアについての説明図
図4】機能管理テーブルの説明図
図5】実施例1の制御装置のフローチャート
図6】実施例2のソフトウェアアップデートシステムの構成図
図7】動作テストの範囲についての説明図
図8】実施例2の制御装置のフローチャート
図9】実施例3のソフトウェアアップデートシステムの構成図
図10】実施例3のサーバのフローチャート
図11】実施例3の制御装置のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、実施例1のソフトウェアアップデートシステムの構成図である。実施例1のソフトウェアアップデートシステムは、データベース10、サーバ20、ネットワーク30、制御装置40、エレベータ60を有する。
【0011】
エレベータ60は、乗カゴや駆動機構を有している。制御装置40は、エレベータ60の運行を制御する。1つの建屋に複数のエレベータ60を設置する場合には、各エレベータ60にそれぞれ制御装置40が設けられる。
【0012】
制御装置40は、ネットワーク30を介してサーバ20と接続する。サーバ20は、複数の制御装置40に関する情報をデータベース10に登録して管理する。制御装置40の情報には、機種、ソフトウェアのバージョン、設置場所、管理者などが含まれる。
【0013】
また、データベース10には、制御装置40が用いるソフトウェア自体も格納される。サーバ20は、制御装置40に適用可能な新たなソフトウェアがある場合に、当該ソフトウェアをアップデート用のソフトウェアとして制御装置40に送信する。
制御装置40は、それまで使用していた既存のソフトウェアをサーバ20から受信したアップデート用のソフトウェアに置き換えることで、ソフトウェアのアップデートを実行する。
【0014】
制御装置40は、その内部にCPU(Central Processing Unit)41、RAM(Random Access Memory)42、ROM(Read Only Memory)43を有する。ROM43は不揮発メモリであり、RAM42は揮発メモリである。
【0015】
CPU41は、ROM43に格納されたソフトウェアを読み出してRAM42に展開し、展開したソフトウェアを実行することで、制御部として動作する。
具体的には、CPU41は、ソフトウェアのアップデートに関し、受信部51、差分確認部52、データ整合部53、伝送把握部54及び切替部55としての動作を行う。
【0016】
受信部51は、サーバ20からアップデート用のソフトウェアを受信する。差分確認部52は、アップデート用のソフトウェアと、ROM43に格納されている既存のソフトウェアとの差分を確認する。この差分の確認を行うことで、ソフトウェアが提供するエレベータの制御機能のうち、どの制御機能がアップデートにより変更されるかを特定することができる。
【0017】
データ整合部53は、アップデート用のソフトウェアを受信した場合に、受信したソフトウェアの整合性を確認する。整合性の確認は、サムチェックなど任意の手法を用いればよい。伝送把握部54は、制御装置40とサーバ20とのデータの伝送状態を確認する処理を行う。切替部55は、ROM43を書き換えることで、既存のソフトウェアをアップデート用のソフトウェアに切り替える。切替部55は、切り替えに際し、所定の切り替えトリガの入力受付を条件とすることができる。切り替えトリガは、エレベータの運行を停止するなど、ソフトウェアの更新を安全に実行可能な状態で入力される信号である。
【0018】
図2は、ソフトウェアの構造の説明図である。制御装置40のソフトウェアは、OS(Operating System)部、標準部、案件対応部、現地調整部を有する。図1に示した受信部51、差分確認部52、データ整合部53、伝送把握部54及び切替部55は、OS部に属する。
【0019】
標準部は、エレベータの動作を制御する機能のうち、複数のエレベータで共通して使用される標準機能を提供する。案件対応部は、エレベータの動作を制御する機能のうち、案件別に個別に対応して設けられた、或いは従来あるエレベータの機能を案件特有にアレンジされた機能を提供する。例えばエレベータの報知条件を案件特有に変更するなどが挙げられる。現地調整部は、エレベータの設置時に現地で調整された機能を提供する。
【0020】
さらに、標準部は、不変部、重要可変部、可変部に分けられる。不変部は、標準機能であって、アップデートによる変更が想定されていない機能を提供する。例えば法律に関連する機能であり、納入時に第三者認定されている機能などが挙げられる。重要可変部は、標準機能であって、安全確保などのため、運行を停止した状態での更新が必要な機能を提供する。例えば、乗カゴの昇降、扉の開閉に関する機能などが、重要可変部により提供される。可変部は、標準機能であって、運行中の更新が可能な機能を提供する。例えば、乗客への報知に関する機能などが、可変部により提供される。
このように、エレベータの制御機能は、OS部、不変部、重要可変部、可変部、案件対応部、現地調整部に分類することができる。
【0021】
ROM43の記憶領域は、エレベータの制御機能の分類に対応して複数のエリアに区分されている。そして、ソフトウェアは、制御機能の分類に基づいて分割され、対応するエリアに格納されている。
【0022】
図3は、ROM43のエリアについての説明図である。図3では、ROM43は、エリア71~76に区分されている。それぞれのエリアは、先頭アドレスと、エリアサイズで規定される。エリア71~76には、制御機能の分類に対応付けられている。例えば、エリア71は、OS部に対応付けられる。エリア72は、不変部に対応付けられる。エリア73は、重要可変部に対応付けられる。エリア74は、可変部に対応付けられる。エリア75は、案件対応部に対応付けられる。エリア76は、現地調整部に対応付けられる。
【0023】
このように、ROM43を複数のエリアに区分し、ソフトあウェアを分割して各エリアに格納しているため、エリアを跨ぐデータの受け渡しに取り決めが必要である。そこで、各機能が格納されたアドレスを管理する機能管理テーブルを設ける。機能管理テーブルは、各機能がそれぞれ保持すればよい。もしくは、機能管理テーブルを担当するデータマネージャを設け、各機能がデータマネージャに問い合わせを行ってアクセス先を特定する構成であってもよい。
【0024】
図4は、機能管理テーブルの説明図である。図4では、機能管理テーブルは、機能Aのアドレスと、機能Bのアドレスと、機能Cのアドレスとを管理している。機能Aは、機能Aの処理自体と、データ取得部と、データ更新部と、データとを含んで実現される。
【0025】
データ更新部は、外部から提供されたデータで機能Aのデータを更新する。機能Aの処理は、機能Aのデータを用いて行われ、機能Aのデータを更新する。データ取得部は、機能Aのデータを取得して、外部に提供する。これらのデータ更新部と、データ取得部については、関数のように定義し、データの取得更新を行っても良いが、実装速度を保つために、データに対して間接テーブルを設けてプログラム上、ポインタアクセスにより、直接データをアクセスする方式でも良い。
【0026】
機能Bについても機能Aと同様に、処理、データ取得部、データ更新部、データが含まれる。各機能のデータ取得部とデータ更新部は、機能管理テーブルを参照してアクセス先を特定する。このため、機能間のデータのやり取りを実現できる。
【0027】
図5は、実施例1の制御装置のフローチャートである。まず、受信部51は、アップデート用のソフトウェアのデータであるROMデータを受信しているか否かを判定する(ステップS101)。ROMデータを受信していなければ(ステップS101;No)、そのまま処理を終了する。
【0028】
ROMデータを受信しているならば(ステップS101;Yes)、伝送把握部54が伝送状態を確認して通信が完了したか否かを判定する(ステップS102)。通信が完了していなければ(ステップS102;No)、ステップS102を繰り返す。通信が完了したならば(ステップS102;Yes)、データ整合部53が整合性を確認する(ステップS103)。
【0029】
整合性が確認できなければ(ステップS103;No)、そのまま処理を終了する。整合性が確認できれば(ステップS103;Yes)、差分確認部52が差分の確認を行う。この差分の確認により、ソフトウェアが提供するエレベータの制御機能のうち、どの制御機能がアップデートにより変更されるかを特定することができる。
【0030】
変更箇所が標準部の不変部であるならば(ステップS105;Yes)、アップデートは不可である。そこで、切替部55は、通信データを破棄して(ステップS106)、処理を終了する。
【0031】
変更箇所が不変部ではなく(ステップS105;Yes)、重要可変部であるならば(ステップS107;Yes)、切替部55は、重要可変部のエリアを書き換えの対象として選択する(ステップS109)。
【0032】
変更箇所が重要可変部ではなく(ステップS107;Yes)、案件対応部であるならば(ステップS108;Yes)、切替部55は、案件対応部のエリアを書き換えの対象として選択する(ステップS110)。
【0033】
ステップS109又はステップS110の後、切替部55は、受信したROMデータをサブROMに書き込むことでサブROMのアップデートを行う(ステップS111)。サブROMは、例えばROM43と同様の不揮発メモリであり、予備用に設けられている。
【0034】
ステップS111の後、切替部55は、切り替えトリガの入力を受け付けたか否かを判定する(ステップS112)。切り替えトリガの入力を受け付けていなければ(ステップS112;No)、ステップS112を繰り返すことで、切り替えトリガの入力を待機する。そして、切り替えトリガの入力を受け付けた場合に(ステップS112;Yes)、切替部55は、メインROMであるROM43を書き換えることでアップデートを行って(ステップS113)、処理を終了する。
【0035】
変更箇所が重要可変部ではなく(ステップS107;Yes)、案件対応部でもなければ(ステップS108;No)、切替部55は、可変部のエリアを書き換えの対象として選択する(ステップS114)。そして、メインROMであるROM43を書き換えることでアップデートを行って(ステップS115)、処理を終了する。
【実施例2】
【0036】
実施例2のソフトウェアアップデートシステムは、制御装置が動作テストを行う機能を備えている。
図6は、実施例2のソフトウェアアップデートシステムの構成図である。図6に示したように、実施例2の制御装置40aは、CPU41が、対象エリア判別部56、対象テスト判別部57及び仮想テスト実行部58の機能をさらに実現する点が実施例1と異なる。その他の構成及び動作は実施例1と同様であるので、同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0037】
対象エリア判別部56は、アップデートにより変更される制御機能が格納されているエリアを判定する。対象テスト判別部57は、アップデートにより変更される制御機能によって影響を受けるエリアを判定する。影響を受けるエリアとは、アップデートにより変更される制御機能が格納されているエリアと、変更された制御機能によって動作やデータが変化するエリアとを含む。仮想テスト実行部58は、アップデートにより影響を受けるエリアを対象として、仮想的な動作テストを実施する。切替部55は、仮想的な動作テストにより正常に動作することを確認したうえで、アップデートを実行する。
【0038】
図7は、動作テストの範囲についての説明図である。例えば、重要可変部に属する機能Aがアップデートにより変更され、機能Aの動作に重要可変部と案件対応部が関係する場合には、仮想テスト実行部58は、重要可変部に対するテストA-1とA-2、案件対応部に対するテストTA-1を実行する。同様に、可変部に属する機能Bがアップデートにより変更され、機能Bの動作に案件対応部と現地調整部が関係する場合には、仮想テスト実行部58は、可変部に対するテストB-1、案件対応部に対するテストTB-1、現地調整部に対するテストTB-2を実行する。
【0039】
ここで、動作テストについては、事前に入力条件と、出力条件を規定し、機能毎にテスト条件を設けておく。テスト動作用の仮想的なデータ領域を設け、当該データ領域の入力条件と、出力条件を利用し、機能Aを動作させ、得られた出力結果と、出力条件の一致を確認する。予め設定された出力条件と合致した場合は動作良好とし、合致しなかった場合は、動作不可とし、エラーと判断する。具体的には、機能Aを関数で定義した場合、入力の引数を、予め設定された入力条件として引数の具体値を設定する。引数無しの関数の場合には、機能にて定義されているデータ更新部にて、予め設定された入力条件として、必要なインスタンスへのデータを更新するような入力条件を規定する。出力条件は、当該入力条件における関数の返り値、或いは、データ取得部にて必要なインスタンスへのデータを取得し、当該データ値がどのような値になるか規定したものを出力条件とする。
【0040】
また、動作テストは、テスト動作用の仮想的なデータ領域を設ける方式以外に、実際にテストモードに移行して、実際のエレベータを稼働した結果を出力条件として規定する方式でも良い。この際には、通常人が乗車しないような時間帯にて、エレベータを自動運転から切離し、乗り場のボタンに応答しないモードとする。その後、仮にエレベータを利用する利用者がいた際に同乗することを避けるために、テストモードである旨を常にエレベータ内の表示器に放置する。また荷重によって利用者を検知した場合には、テストモードである旨、及び降車を促す案内を音声、或いは、表示器に報知する。
【0041】
実際のテストについては、対象となる機能が有効となるような入力条件と出力条件を規定し、仮想的にハード入力をセットする。例えば乗り場ボタンに応答する機能を確認する場合には、入力条件は任意のフロアの乗り場ボタンの入力、任意のフロアにエレベータを待機させることであり、出力条件は、待機階から、当該フロアにエレベータが走行し、当該フロアに到着後、予め算出される時間内(例えば10秒以内)にドアが開くことが出力条件となる。
【0042】
更に動作テストは、重要可変部、及び可変部によって起動するテスト項目をわけることを想定する。具体的には、機能から得られたデータ値を参照する、別機能のテストまで実行することは、重要可変部では設けること。可変部においては、自機能のみのテストのみ実行することとする。
【0043】
図8は、実施例2の制御装置のフローチャートである。図8のフローチャートは、ステップS201~S203が追加されている点が図5と異なる。その他のステップについては図5と同様であるので、同一のステップには同一の符号を付して説明を省略する。
【0044】
ステップS201は、変更対象が重要可変部である場合(ステップS107;Yes)に実行されるステップである。ステップS201では、テスト実行部58は、標準部の関連エリアについて仮想テストを実行し、その後、ステップS109に進む。
【0045】
ステップS202は、変更対象が案件対応部である場合(ステップS108;Yes)に実行されるステップである。ステップS202では、テスト実行部58は、案件対応部について仮想テストを実行し、その後、ステップS110に進む。
【0046】
ステップS203は、変更対象が案件対応部でない場合(ステップS108;No)に実行されるステップである。ステップS203では、テスト実行部58は、可変部について仮想テストを実行し、その後、ステップS110に進む。
【実施例3】
【0047】
実施例3のソフトウェアアップデートシステムは、動作テストを行う機能をサーバに設けている。
図9は、実施例3のソフトウェアアップデートシステムの構成図である。図9に示したように、実施例2のサーバ20bは、対象エリア判別部21、対象テスト判別部22及び仮想テスト実行部23を備える点が実施例1と異なる。
【0048】
対象エリア判別部21は、実施例2の対象エリア判別部56と同様に動作する。対象テスト判別部22は、実施例2の対象テスト判別部22と同様に動作する。仮想テスト実行部23は、実施例2の仮想テスト実行部58と同様に動作する。
制御装置40bは、実施例1の制御装置40と同様の構成を有するが、その動作は異なる。
【0049】
図10は、実施例3のサーバのフローチャートである。まず、サーバ20bは、アップデート用のソフトウェアのデータであるROMデータをデータベース10から取得する(ステップS301)。
【0050】
変更箇所が標準部の不変部であるならば(ステップS302;Yes)、仮想テスト実行部23が標準部の関連エリアについて仮想テストを実施(ステップS303)する。その後、サーバ20bは、対象のROMデータにおいて、不変部に変更がある旨を通知内容とし(ステップS304)、ステップS313に進む。
【0051】
変更箇所が不変部ではなく(ステップS302;No)、重要可変部であるならば(ステップS305;Yes)、仮想テスト実行部23が標準部の関連エリアについて仮想テストを実施(ステップS306)する。その後、サーバ20bは、対象のROMデータにおいて、重要可変部に変更がある旨を通知内容とし(ステップS307)、ステップS313に進む。
【0052】
変更箇所が重要可変部ではなく(ステップS305;No)、案件対応部であるならば(ステップS308;Yes)、仮想テスト実行部23が案件対応部の関連エリアについて仮想テストを実施(ステップS309)する。その後、サーバ20bは、対象のROMデータにおいて、案件対応部に変更がある旨を通知内容とし(ステップS310)、ステップS313に進む。
【0053】
変更箇所が案件対応部でなければ(ステップS308;No)、仮想テスト実行部23が可変部の関連エリアについて仮想テストを実施(ステップS311)する。その後、サーバ20bは、対象のROMデータにおいて、可変部に変更がある旨を通知内容とし(ステップS312)、ステップS313に進む。
【0054】
ステップS313では、通知内容として決定した変更機能を制御装置40bに通知する。その後、制御装置40bからメインROMの伝送準備が完了した旨の通知を受け(ステップS314)、制御装置40bに対してメインROMのアップデート用のデータを伝送処理し(ステップS315)、処理を終了する。
【0055】
図11は、実施例3の制御装置のフローチャートである。まず、受信部51は、アップデート用のソフトウェアのデータであるROMデータを受信しているか否かを判定する(ステップS401)。ROMデータを受信していなければ(ステップS401;No)、そのまま処理を終了する。
【0056】
ROMデータを受信しているならば(ステップS401;Yes)、伝送把握部54が伝送状態を確認して通信が完了したか否かを判定する(ステップS402)。通信が完了していなければ(ステップS402;No)、ステップS402を繰り返す。通信が完了したならば(ステップS402;Yes)、データ整合部53が整合性を確認する(ステップS403)。
【0057】
整合性が確認できなければ(ステップS403;No)、そのまま処理を終了する。整合性が確認できれば(ステップS403;Yes)、切替部55は、受信したROMデータをサブROMに書き込むことでサブROMのアップデートを行う(ステップS404)。
【0058】
ステップS404の後、切替部55は、切り替えトリガの入力を受け付けたか否かを判定する(ステップS405)。切り替えトリガの入力を受け付けていなければ(ステップS405;No)、ステップS405を繰り返すことで、切り替えトリガの入力を待機する。そして、切り替えトリガの入力を受け付けた場合に(ステップS405;Yes)、切替部55は、メインROMであるROM43を書き換えることでアップデートを行って(ステップS406)、処理を終了する。切り替えトリガは、前記サーバ20から前記制御装置40への切替指令でもよいし、現地の保守員による前記制御装置40に設けられたスイッチや、特定の操作によって手動で切り替える方式でもどちらでも良い。また、メメインROMであるROM43を書き換えることは、トリガ検出した後、ソフトウェアのリセットを行い、イニシャル動作から立ち上がることが一般的である。よって、リセットから正常動作するまでに時間を要する。その際にはエレベータの利用は一時的に不可となるため、トリガ検出のみでなく、エレベータの稼働状況に応じて切替を行う方式でも良い。例えば深夜などの誰も利用しない時間帯や、運転モードはエレベータの乗り場からのサービス要求、更にはかご内の指定された行き先階への配車が完了し、無応答状態が3分経過後などの運転モードを検出した場合などである。
【0059】
上述してきたように、実施例に開示したシステムは、エレベータの制御を行う制御装置40のソフトウェアをアップデートするソフトウェアアップデートシステムであって、前記制御装置40は、前記ソフトウェアを記憶するメモリであるROM43と、前記ソフトウェアを実行する制御部としてのCPU41とを備える。前記メモリの記憶領域は、前記エレベータの制御機能の分類に対応して複数のエリアに区分され、前記ソフトウェアは、前記制御機能の分類に基づいて分割されて対応するエリアに格納される。前記制御部は、前記ソフトウェアのアップデートを実行する場合に、当該アップデートにより変更される制御機能の分類を特定し、変更される制御機能に対応するエリアを選択的に書き換える。
かかる構成及び動作により、更新する機能よっては運行停止することなくエレベータのソフトウェアをアップデートすることができ、効率的なアップデートが実現できる。
【0060】
また、開示のシステムによれば、前記制御機能の分類は、複数のエレベータで共通して使用される標準機能であって変更が想定されていない不変部と、前記標準機能であって運行を停止した状態での更新が必要な重要可変部と、前記標準機能であって運行中の更新が可能な可変部と、前記エレベータに個別に対応して設けられた機能である案件対応部と、
を含む。
そして、前記制御部は、所定の切り替えトリガの入力を受け付けたことを条件に、前記重要可変部、前記可変部及び/又は前記案件対応部に対応するエリアの書き換えを実行する。
このため、運行の安全性に影響する可能性のある重要可変部や案件対応部に関しては、運行停止したことを示すトリガの受付を更新の条件とし、可変部については運行中に更新することができる。
【0061】
また、開示のシステムによれば、前記制御部は、前記アップデートにより変更される制御機能が格納されているエリアを判定し、前記アップデートにより変更される制御機能によって影響を受けるエリアを判定し、当該影響を受けるエリアを対象として動作テストを実施した上で、前記アップデートを実行する。
かかる構成及び動作により、更新前に効率的に動作テストを実施することができる。
【0062】
また、開示のシステムによれば、前記制御装置40とネットワーク経由で接続され、アップデート用のソフトウェアを前記制御装置に送信するサーバ20をさらに備え、前記制御装置40は、前記サーバ20から受信した前記アップデート用のソフトウェアと既存の前記ソフトウェアとの差分を確認することで、前記アップデートにより変更される制御機能の分類を特定する。
かかる構成及び動作によれば、サーバから受信したアップデート用のソフトウェアと既存のソフトウェアとの差分を効率的に確認することができる。
【0063】
また、開示のシステムによれば、前記制御装置40とネットワーク経由で接続され、アップデート用のソフトウェアを前記制御装置40に送信するサーバをさらに備え、前記サーバ20は、前記アップデートにより変更される制御機能を判定し、当該変更される制御機能によって影響を受けるエリアを判定し、当該影響を受けるエリアを対象として動作テストを実施した上で、前記アップデート用のソフトウェアを前記制御装置40に送信する。
かかる構成及び動作によれば、制御装置40に負荷をかけることなくソフトウェアの動作を確認したうえで、アップデートを行うことができる。
【0064】
なお、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、かかる構成の削除に限らず、構成の置き換えや追加も可能である。
一例として、建屋に複数の制御装置40が存在する場合に、サーバ20と複数の制御装置40との間にゲートウェイ装置を設けてもよい。ゲートウェイ装置がサーバ20からアップデート用のソフトウェアを受信して保持し、複数の制御装置40に適宜送信する構成とすれば、サーバ20やネットワーク30の負荷を軽減することができる。
【0065】
またアップデート対象が、前述した制御装置の場合では、サーバ20から直接制御装置に対して通信で、ROMデータをバイナリで伝送する方式が考えられるが、別の装置が対象であった場合には、サーバ20から直接制御装置40に対して通信で、対象装置のROMデータをバイナリで送信し、制御装置40から、対象の装置にデータを送信することが考えられる。その際に、通信データには管理IDを設け、対象の装置との関連付けを行い、制御装置40から対象の装置である旨を判断する。ROMの整合性判定については、送信されたデータと、例えばサム管理、データサイズなどによって整合性判定を行い、対象装置のアップデート通信を行う。
【0066】
サブの制御装置については、常時、制御装置40との通信が実行されており、以下の2方式のどちらかにより、アップデート通信を実行する。
【0067】
<方式1>
常時通信を止めずに、通信パケットの空き領域を利用して、アップデート通信を行う方式である。これは、常時通信の空き状況を加味して、当該通信の空き状況に応じて、ROMデータを分割し、ROMデータの伝送を行う。データの分割には、制御装置40のデータ伝送から、サブの制御装置からのACK/NACKの返信時間を確保した時間帯にて伝送できる範囲で、対象データを送信する。これにより、通常の装置利用を停止することなくアップデート伝送が可能となる。
【0068】
<方式2>
常時通信を止めて、一時的に、対象の装置の利用を停止する。通常の装置を利用するための通信を停止し、アップデート用のROMデータの伝送のみにより、対象のデータの送信完了時間が、方式1よりも早いことがメリットとして挙げられる。
【0069】
上記のいずれかによって実行されるサブの制御装置への通信処理によって、サーバ20から制御装置40を経由したサブの制御装置へのデータ送信が可能となる。あとは、前述したアップデート方式に従いソフトウェアアップデートが可能となる。
【0070】
切替トリガは、制御装置40からの伝送データを送信が完了し、サブの制御装置の切替準備完了の信号受信し、制御装置40からサブの制御装置への切替指令によって、切替トリガとする。ここで制御装置40の指令送信タイミングは、深夜などの誰も利用しない時間帯や、運転モードはエレベータの乗り場からのサービス要求、更にはかご内の指定された行き先階への配車が完了し、無応答状態が3分経過後などの運転モードを検出した場合などである。またサブの制御装置の対象ごとに指令送信タイミングを変更しても良い。例えば、かご内の表示器のアップデートと乗り場のボタンの制御装置については、かご内の表示器については、かご内表示器が省エネ制御に用いられるタイミングにて切り替え指令を出すことや、乗り場のボタンの制御装置については、各階存在することから、各階のデマンドに従って、切替を行うことや、シンプルにエレベータが利用されない時間帯になった時点で切り替えることなどが考えられる。これにより、各サブの制御装置の用途に合ったそれぞれの切替方式や通信方式を採用して、アップデートを行うことにより、極力使い勝手を損なわずに、新たな機能を付与することや、従来の機能の改善を実施することが可能となる。
【符号の説明】
【0071】
10:データベース、20:サーバ、21:対象エリア判別部、22:対象テスト判別部、23:仮想テスト実行部、30:ネットワーク、40:制御装置、41:CPU、42:RAM、43:ROM、51:受信部、52:差分確認部、53:データ整合部、54:伝送把握部、55:切替部、56:対象エリア判別部、57:対象テスト判別部、58:仮想テスト実行部、60:エレベータ、71~76:エリア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11