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特許7698711導電性メッシュ構造体およびそれを含むアンテナ素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-17
(45)【発行日】2025-06-25
(54)【発明の名称】導電性メッシュ構造体およびそれを含むアンテナ素子
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/38 20060101AFI20250618BHJP
【FI】
H01Q1/38
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023512484
(86)(22)【出願日】2021-08-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-20
(86)【国際出願番号】 KR2021011181
(87)【国際公開番号】W WO2022045696
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2024-03-15
(31)【優先権主張番号】10-2020-0109542
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】503454506
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132, YAKCHON-RO, IKSAN-SI, JEOLLABUK-DO 54631, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】アン, ギ ファン
(72)【発明者】
【氏名】ユン, ホ ドン
(72)【発明者】
【氏名】リ, ジェ ヒョン
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-108885(JP,A)
【文献】国際公開第2019/172609(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0190678(US,A1)
【文献】国際公開第2017/115641(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/180746(WO,A1)
【文献】特開2015-097358(JP,A)
【文献】特表2021-518071(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0274702(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0403301(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0075722(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0105812(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電層と、
前記誘電層上に配列され、互いに交差する第1導電ラインおよび第2導電ラインを含む導電性メッシュ層とを含み、
前記導電性メッシュ層は、隣り合う前記第1導電ラインおよび前記第2導電ラインによって定義される単位セルを含み、
下記式1及び下記式2を満たす導電性メッシュ構造体を含む、アンテナ素子
[式1]
18.5%≦(導電性メッシュ構造体の透過率)×tan(θ/2)≦60%
[式2]
18.5%≦(誘電層の透過率)×(導電性メッシュ層のオープン領域比率)×tan(θ/2)≦60%
(式1及び式2中、θは前記第1導電ラインと前記第2導電ラインの交差角又は前記単位セルの内角であり、前記導電性メッシュ層の前記オープン領域比率は、前記導電性メッシュ層の面積に対する前記単位セルによって定義されるオープン領域の面積の比率である。)
【請求項2】
前記導電性メッシュ層の前記オープン領域比率は、下記式3で定義される、請求項に記載のアンテナ素子
[式3]
(導電性メッシュ層のオープン領域比率)=(XY)/{(X+2W×COS(θ/2))(Y+2W×SIN(θ/2))}
(式3中、Xは前記単位セルの横方向の対角線の長さであり、Yは前記単位セルの縦方向の対角線の長さであり、Wは前記第1導電ラインおよび前記第2導電ラインの線幅である。)
【請求項3】
前記式1に含まれた(導電性メッシュ構造体の透過率)×tan(θ/2)の値は20~55%である、請求項1に記載のアンテナ素子
【請求項4】
前記導電性メッシュ層から形成された放射電極を含む、請求項に記載のアンテナ素子。
【請求項5】
前記導電性メッシュ層から形成され、前記放射電極に接続された伝送線路をさらに含む、請求項に記載のアンテナ素子。
【請求項6】
前記導電性メッシュ層から形成され、前記放射電極と物理的・電気的に離隔しているダミーメッシュパターンをさらに含む、請求項に記載のアンテナ素子。
【請求項7】
20GHz以上の周波数において0dBi以上のゲインを有する、請求項に記載のアンテナ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性メッシュ構造体およびそれを含むアンテナ素子に関する。より詳細には、交差する導電ラインを含む導電性メッシュ構造体およびそれを含むアンテナ素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置はスマートフォンなどの通信機器と結合されている。これにより、高周波または超高周波通信を実現するためのアンテナが前記画像表示装置に含まれ得る。また、タッチセンサ、指紋センサなどの各種センサ部材もまた画像表示装置に結合され、様々な通信・センシング機能がディスプレイ機能に付加されて実現されている。
【0003】
アンテナまたはセンサ部材の場合は、金属層のような導電体を含み、前記導電体によって画像表示装置の透過度が低下したり、画像品質が劣化したりすることがある。
【0004】
さらに、前記メッシュ構造は、規則的なパターン構造および画像表示装置に含まれる画素配列構造が重畳する場合、モアレ現象が発生し、画像表示装置の画像に干渉することがある。
【0005】
そこで、前記メッシュ構造の透過率および画像表示装置の画素配列構造とのモアレを併せて考慮して、前記メッシュ構造に含まれる導電ラインを設計する必要がある。
【0006】
また、前記メッシュ構造を利用したアンテナまたはセンサ部材は、所望の放射特性およびセンシング感度を十分に提供できるように前記導電ラインを設計する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、向上した光学的・電気的特性を有する導電性メッシュ構造体を提供することである。
【0008】
本発明の課題は、向上した光学的・電気的特性を有するアンテナ素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1.誘電層と、前記誘電層上に配列され、互いに交差する第1導電ラインおよび第2導電ラインを含む導電性メッシュ層とを含み、下記式1を満たす、導電性メッシュ構造体。
[式1]
18.5%≦(導電性メッシュ構造体の透過率)×tan(θ/2)≦60%
(式1中、θは前記第1導電ラインと前記第2導電ラインの交差角である。)
【0010】
2.前記項目1において、前記導電性メッシュ層は、隣り合う前記第1導電ラインおよび前記第2導電ラインによって定義される単位セルを含み、
前記式1中、θは前記単位セルの内角である、導電性メッシュ構造体。
【0011】
3.前記項目2において、前記導電性メッシュ構造体は、下記式2を満たす、導電性メッシュ構造体。
[式2]
18.5%≦(誘電層の透過率)×(導電性メッシュ層のオープン領域比率)×tan(θ/2)≦60%
【0012】
4.前記項目3において、前記導電性メッシュ層の前記オープン領域比率は、下記式3で定義される、導電性メッシュ構造体。
[式3]
(導電性メッシュ層のオープン領域比率)=(XY)/{(X+2W×COS(θ/2))(Y+2W×SIN(θ/2))}
(式3中、Xは前記単位セルの横方向の対角線の長さであり、Yは前記単位セルの縦方向の対角線の長さであり、Wは前記第1導電ラインおよび前記第2導電ラインの線幅である。)
【0013】
5.前記項目1において、前記式1に含まれた(導電性メッシュ構造体の透過率)×tan(θ/2)の値は20~55%である、導電性メッシュ構造体。
【0014】
6.前述の実施形態による前記導電性メッシュ構造体を含む、アンテナ素子。
【0015】
7.前記項目6において、前記導電性メッシュ層から形成された放射電極を含む、アンテナ素子。
【0016】
8.前記項目7において、前記導電性メッシュ層から形成され、前記放射電極に接続された伝送線路をさらに含む、アンテナ素子。
【0017】
9.前記項目7において、前記導電性メッシュ層から形成され、前記放射電極と物理的・電気的に離隔しているダミーメッシュパターンをさらに含む、アンテナ素子。
【0018】
10.前記項目6において、20GHz以上の周波数において0dBi以上のゲインを有する、アンテナ素子。
【発明の効果】
【0019】
本発明の実施形態に係る導電性メッシュ構造体は、基材層と導電性メッシュ層とを含み、前記基材層の透過率および前記導電性メッシュ層の透過率を調節することにより、前記導電性メッシュ構造体の透過率を所定の範囲以上に調節することができる。また、前記導電性メッシュ層の透過率を、前記導電性メッシュ層に含まれる単位セルの内角を考慮して調節することにより、前記導電性メッシュ構造体および画像表示装置の画素構造との規則的な重畳によるモアレを抑制することができる。
【0020】
これにより、導電性メッシュ構造体自体の光学的透過率の向上および前記画素構造のモアレの抑制を共に効果的に実現することができる。
【0021】
前記導電性メッシュ構造体は、例えば、高周波または超高周波(例えば、3G、4G、5Gまたはそれ以上)の移動通信が可能なアンテナ素子に適用し、前記高周波または超高周波帯域での十分なゲインを確保しながら画像表示装置との整合性を併せて考慮したアンテナ素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、例示的な実施形態による導電性メッシュ構造体を示す概略平面図である。
図2図2は、例示的な実施形態による導電性メッシュ構造体の導電性メッシュ層の構造を説明するための部分拡大平面図である。
図3図3は、例示的な実施形態によるアンテナ素子を示す概略断面図である。
図4図4は、例示的な実施形態によるアンテナ素子を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態は、所定の基材層および交差する導電ラインによって形成された導電性メッシュ層を含む導電性メッシュ構造体を提供するものである。
【0024】
また、本発明の実施形態は、前記導電性メッシュ構造体を活用したアンテナ素子の製造方法を提供するものである。しかし、本発明の実施形態によって製造された導電性メッシュ構造体は、アンテナ素子のみに適用されるものではない。前記導電性メッシュ構造体は、タッチセンサ、指紋センサ、光学フィルタ、電磁波フィルタなどのように、例えば高透明、低抵抗の特性が求められる様々な電子、電気素子に活用することができる。
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態をより具体的に説明する。ただし、本明細書に添付される図面は、本発明の好適な実施形態を例示するものであって、発明の詳細な説明とともに本発明の技術思想をさらに理解する一助となる役割を果たすものであるため、本発明は図面に記載された事項のみに限定されて解釈されるものではない。
【0026】
図1は、例示的な実施形態による導電性メッシュ構造体を示す概略平面図である。
【0027】
図1では、誘電層90の上面に平行で、互いに垂直に交差する2つの方向を第1方向および第2方向と定義する。例えば、前記第1方向は前記導電性メッシュ構造体の長手方向に対応し、前記第2方向は前記導電性メッシュ構造体の幅方向に対応し得る。
【0028】
図1を参照すると、導電性メッシュ構造体100は、誘電層90上に形成された導電性メッシュ層を含むことができる。前記導電性メッシュ層は、導電ライン110,120を含むことができる。
【0029】
誘電層90は透明樹脂物質を含むことができる。例えば、誘電層90は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系またはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂;塩化ビニル系樹脂;ナイロン、芳香族ポリアミドなどのアミド系樹脂;イミド系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;スルホン系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン系樹脂;硫化ポリフェニレン系樹脂;ビニルアルコール系樹脂;塩化ビニリデン系樹脂;ビニルブチラル系樹脂;アリレート系樹脂;ポリオキシメチレン系樹脂;エポキシ系樹脂;ウレタン系またはアクリルウレタン系樹脂;シリコン系樹脂などを含むことができる。これらは、単独でまたは2以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、また、光学透明粘着剤(Optically clear Adhesive:OCA)、光学透明樹脂(Optically Clear Resin:OCR)などの粘接着フィルムが誘電層90に含まれ得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、誘電層90は、ガラス、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸窒化物などの無機絶縁物質を含むこともできる。
【0032】
いくつかの実施形態では、誘電層90の誘電率は約1.5~12の範囲に調整することができる。前記誘電率が約12を超えると、信号損失が増加しすぎで、高周波帯域の通信時の信号感度および信号効率が低下することがある。
【0033】
導電ライン110,120は、第1導電ライン110と第2導電ライン120とを含むことができる。図1に示すように、第1導電ライン110および第2導電ライン120は、前記第1方向または前記第2方向に対する斜線方向に延びることができる。
【0034】
例えば、第1導電ライン110は、前記第1方向に対して時計回りの方向に傾斜するように延びることができる。第2導電ライン120は、前記第1方向に対して反時計回りの方向に傾斜するように延びることができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、第1導電ライン110および前記第2導電ラインは、前記第1方向に対して対称になるように配列できる。
【0036】
第1導電ライン110と第2導電ライン120は互いに交差することができる。これにより、交差して隣り合う第1導電ライン110および第2導電ラインによって複数の単位セル130を定義することができる。単位セル130は、前記導電性メッシュ層のオープン領域と定義することができる。
【0037】
図1に示すように、単位セル130は菱形状を有することができ、菱形の内角のうちの小さい内角を単位セル130の内角θと定義することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、第1導電ライン110は、前記第1方向に対して時計回りの方向にθ/2の角度で傾斜するように配列できる。第2導電ラインは、前記第1方向に対して反時計回りの方向にθ/2の角度で傾斜するように配列できる。
【0039】
これにより、第1導電ライン110と第2導電ライン120の交差角によって、単位セル130の内角θを定義することができる。前記導電性メッシュ層は、複数の単位セル130が繰り返されて定義される前記オープン領域と、導電ライン110,120によって定義される導電体領域とを含むことができる。
【0040】
導電ライン110,120は、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)、カルシウム(Ca)、又はこれらの少なくとも一つを含有する合金を含むことができる。これらは単独でまたは2以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
一実施形態では、低抵抗の実現のために、導電ライン110,120は、銀若しくは銀含有合金(例えば、銀-パラジウム-銅(APC))、または銅若しくは銅含有合金(例えば、銅-カルシウム(CuCa))を含むことができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、導電ライン110,120は、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、インジウム亜鉛スズ酸化物(ITZO)、亜鉛酸化物(ZnOx)のような透明導電性酸化物を含むこともできる。
【0043】
いくつかの実施形態では、導電ライン110,120は、透明導電性酸化物層-金属層の2層構造、または透明導電性酸化物層-金属層-透明導電性酸化物層の3層構造のような複層構造を有することもできる。この場合、前記金属層によってフレキシブル特性が向上しつつ抵抗を下げることができ、前記透明導電性酸化物層によって耐食性、透明性を向上させることができる。
【0044】
例えば、導電ライン110,120は黒化処理部を含むことができる。これにより、導電ライン110,120の表面での反射率を減少させ、光反射によるパターンの視認を低減することができる。
【0045】
一実施形態では、導電ライン110,120に含まれる金属層の表面を金属酸化物または金属硫化物に変換して黒化層を形成することができる。一実施形態では、導電ライン110,120または前記金属層上に黒色材料コーティング層、またはメッキ層のような黒化層を形成することができる。前記黒色材料またはめっき層は、ケイ素、炭素、銅、モリブデン、スズ、クロム、モリブデン、ニッケル、コバルトまたはこれらの少なくとも1つを含有する酸化物、硫化物、合金などを含むことができる。
【0046】
黒化層の組成および厚さは、反射率の低減効果、アンテナの放射特性を考慮して調整することができる。
【0047】
図2は、例示的な実施形態による導電性メッシュ構造体の導電性メッシュ層の構造を説明するための部分拡大平面図である。
【0048】
図2を参照すると、図1で説明したように、前記導電性メッシュ層は、交差する第1電極ライン110および第2電極ライン120によって定義される単位セル130を含み、単位セル130の内部空間によるオープン領域を含むことができる。
【0049】
例示的な実施形態によると、前記導電性メッシュ層を含む導電性メッシュ構造体は、下記式1を満たすことができる。
【0050】
[式1]
18.5%≦(導電性メッシュ構造体の透過率)×tan(θ/2)≦60%
【0051】
式1中、θは前述のように、単位セル130の内角を示す。
【0052】
いくつかの実施形態では、前記導電性メッシュ層を含む導電性メッシュ構造体は、下記式2を満たすことができる。
【0053】
[式2]
18.5%≦(誘電層の透過率)×(導電性メッシュ層のオープン領域比率)×tan(θ/2)≦60%
【0054】
式2における導電性メッシュ層のオープン領域比率は、前記導電性メッシュ層の面積に対する前記オープン領域の面積の比率であってもよい。
【0055】
一実施形態では、導電性メッシュ層のオープン領域比率は、下記式3で定義することができる。
【0056】
[式3]
(導電性メッシュ層のオープン領域比率)=(XY)/{(X+2W×COS(θ/2))(Y+2W×SIN(θ/2))}
【0057】
式3中、Xは前記単位セルまたはオープン領域の横方向(第2方向)の対角線の長さであり、Yは前記単位セルまたはオープン領域の縦方向(第1方向)の対角線の長さである。Wは導電ラインの線幅であり、θは単位セルの内角を示す。
【0058】
前記の式1~3に示される範囲内では、導電性メッシュ構造体の所望の透過率を確保しつつ、例えば画像表示装置の画素構造と導電性メッシュ層パターン構造の規則的な重畳によるモアレの発生を低減または抑制することができる。
【0059】
例えば、単位セル130の内角θが反映されたtan(θ/2)の値は、前記モアレを抑制するための因子として作用することができる。式1に示すように、導電性メッシュ構造体の透過率とtan(θ/2)を共に考慮して導電性メッシュ構造体自体の光学的特性を確保しつつ、前記画素構造との干渉によるモアレの発生を共に低減することができる。
【0060】
また、式2及び式3に示すように、単位セル130の内角θは、導電性メッシュ構造体の透過率を変化させる因子としても作用することができる。これにより、所定の透過率を満たしながらモアレの発生が共に抑制されるメッシュ構造体の設計を実現することができる。
【0061】
また、導電性メッシュ構造体の透過率の調整変数として、導電ライン110,120の線幅Wを共にコントロールすることができる。例えば、十分な電流の流れ、電界の生成、アンテナゲイン(gain)を確保するために適切な線幅(W)の範囲をセットし、式1に示される範囲を満たすように式3に含まれる因子を調整することができる。これにより、電気的特性と光学的透過率の向上、およびモアレの抑制を、例示的な実施形態による式1の数値範囲の調整によって効果的に実現することができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、式1に含まれる(導電性メッシュ構造体の透過率)×tan(θ/2)の値は20~55%であってもよく、好ましくは20~40%、より好ましくは25~40%であってもよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、導電ライン110,120の線幅は約1~5μmの範囲で調整することができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、前記導電性メッシュ層は、下記式4で定義されるモアレ指数が0.6以下であってもよい。
【0065】
[式4]
モアレ指数=(コントラスト)×(コントラスト感度関数(CSF)の値)
【0066】
式4中、コントラスト(contrast)は、導電ラインの顕微鏡画像における最も明るい部分と最も暗い部分の明るさの比率で表される明暗差を示す。例えば、導電ライン間の間隔またはピッチ(pitch)が増加するほどコントラストが増加し、これによりユーザにモアレ模様の視認を引き起こす確率が高くなる。
【0067】
式1のCSFの値は、コントラスト感度関数(Contrast Sensitivity Function:CSF)から求められる。コントラスト感度関数(Contrast Sensitivity Function:CSF)の値は、人間の視覚系において規則的なパターンが繰り返されることによる感度を数値化した値であってもよい。CSFの値により、明暗の差が少ない画像に対してパターンの周波数によって人間の肉眼による識別能力または識別可能性を数値化して提供することができる。CSFの値が大きくなるほど、導電ライン110,120と画素の規則的な重畳によって人間の肉眼に視認される確率が増加し得る。
【0068】
具体的には、CSFの値は、空間周波数、視野角および平均輝度を変数として人間に視認され得る確率を示すことができる。空間周波数は、光学画像における明るい部分と暗い部分のサイクル(例えば、サイクル毎ミリメートル(cycles per millimeter(CPM)))または導電ライン110,120のピッチ(pitch)の逆数で表すことができる。空間周波数は、CPD(cycles per degree)に変換して使用することもできる。例示的な実施形態によると、前記空間周波数は、導電ライン110,120と観察者の目との間の距離を400mmに固定して測定することができる。
【0069】
CSFの値は下記の式5、式5-1及び5-2の関数から算出することができる。
【0070】
[式5]
【0071】
[式5-1]
【0072】
[式5-2]
【0073】
式5、5-1及び5-2中、Lは平均輝度(単位:nt=cd/m)、ωは視野角(degree)、fは空間周波数(cycle per degree)を示す。
【0074】
前述のように、モアレの調節因子として単位セルの内角θを使用し、内角θによって透過率も共に調節してモアレを抑制しつつ、導電性メッシュ構造体100自体の光学的特性を所望の範囲に共に制御することができる。
【0075】
図3及び図4は、それぞれ例示的な実施形態によるアンテナ素子を示す概略断面図および平面図である。
【0076】
図3及び図4を参照すると、前記アンテナ素子は、誘電層90の上面上に形成されたアンテナユニット層140を含むことができる。
【0077】
アンテナユニット層140は、前述の導電性メッシュ構造体を含むことができる。例示的な実施形態によると、アンテナユニット層140は、放射パターン150と、放射パターン150の一辺または一端部から延びる伝送線路155とを含むことができる。
【0078】
放射パターン150および伝送線路155は、図1及び図2で説明したように、式1~3に従って透過率および単位セルの内角に関する変数が調整された導電性メッシュ構造体または導電性メッシュ層を含むことができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、アンテナユニット層140は、放射パターン150の周辺に形成されたダミーメッシュパターン170をさらに含むことができる。ダミーメッシュパターン170もまた、前述の導電性メッシュ構造体を含むことができる。
【0080】
ダミーメッシュパターン170は、分離領域175によって放射パターン150および伝送線路155と区分することができる。いくつかの実施形態では、分離領域175は、第1及び第2導電ライン110,120と共に形成することができる。
【0081】
例えば、誘電層90上に導電層を形成することができる。前記導電層を式1~3に従って透過率および単位セルの内角に関する変数を満たす設計デザインに沿ってエッチングして第1及び第2導電ライン110,120を形成しながら、前記エッチング工程によって分離領域175も同時に形成することができる。
【0082】
ダミーメッシュパターン170は、伝送線路155の周辺にも形成することができる。いくつかの実施形態では、誘電層90上にそれぞれ放射パターン150および伝送線路155を含む複数のアンテナパターンを形成し、ダミーメッシュパターン170は前記複数のアンテナパターンの周辺に、または前記複数のアンテナパターンの間に形成することができる。
【0083】
ダミーメッシュパターン170が前記導電性メッシュ層を含み、前記アンテナパターンの周辺に配置されることにより、アンテナ素子の導電性パターンの分布を平準化することができる。これにより、ユーザに導電ライン110,120または導電パターンが視認されることを防止することができる。
【0084】
アンテナユニット層140は、伝送線路155の一端部に接続された信号パッド160を含むことができる。信号パッド160は、例えばフレキシブルプリント回路基板(FPCB)を介してアンテナ駆動集積回路(IC)チップと電気的に接続することができる。これにより、アンテナ駆動ICチップによって信号パッド160を介して放射パターン150へ給電および駆動信号を印加することができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、信号パッド160の周辺にはグランドパッド162を配置することができる。例えば、一対のグランドパッド162を、信号パッド160を挟んで伝送線路155および信号パッド160と電気的・物理的に分離されるように配置できる。
【0086】
グランドパッド162によって信号パッド160の周辺でのノイズを吸収または遮蔽することができ、前記FPCBの前記アンテナ素子へのボンディング工程をより容易に行うことができる。
【0087】
信号パッド160およびグランドパッド162は、前述の金属または合金を含む中身が詰まった(solid)パターンで形成することができる。いくつかの実施形態では、信号パッド160およびグランドパッド162は、画素構造と重畳しないように配置できる。
【0088】
前記アンテナ素子は、誘電層90の底面上に配置されたグランド層80をさらに含むこともできる。グランド層80によって放射パターン150および伝送線路155での電界生成をより促進することができ、放射パターン150および伝送線路155の周辺の電気的ノイズを吸収または遮蔽することができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、グランド層80は前記アンテナ素子の別の構成として含まれ得る。いくつかの実施形態では、前記アンテナ素子が搭載されるディスプレイ装置の導電性部材をグランド層として提供することもできる。
【0090】
前記導電性部材は、例えば、ディスプレイパネルに含まれる薄膜トランジスタ(TFT)のゲート電極、スキャンラインまたはデータラインのような各種配線、または画素電極、共通電極のような各種電極などを含むことができる。
【0091】
一実施形態では、例えば、前記ディスプレイパネルの下に配置された導電性物質を含む各種構造物をグランド層80として提供することもできる。例えば、金属プレート(例えば、SUSプレートなどのステンレス・スチール・プレート)、圧力センサ、指紋センサ、電磁波遮蔽層、放熱シート、デジタイザ(digitizer)などをグランド層80で提供することができる。
【0092】
例示的な実施形態によると、前記アンテナ素子は、高周波または超高周波帯域で十分なゲイン量を提供することができる。いくつかの実施形態では、前記アンテナ素子は、20GHz以上の周波数帯域で0dBi以上のアンテナゲインを提供することができる。
【0093】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示するが、これらの実施例は本発明を例示するものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を制限するものではない。これらの実施例に対し、本発明の範疇および技術思想の範囲内で種々の変更および修正を加えることが可能であることは当業者にとって明らかであり、これらの変形および修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然のことである。
【0094】
実験例
(1)実施例及び比較例
透過率91.1%のCOP誘電層上に、表1に示す条件でCuCaを含む第1導電ラインおよび第2導電ラインを形成(図1を参照)して導電性メッシュ層を形成し、導電性メッシュ構造体を得た。
【0095】
実施例及び比較例のそれぞれの導電性メッシュ構造体から測定された導電性メッシュ構造体の透過率および単位セルの内角を用いて、式1~式3より計算される数値を取得した。具体的には、視感度透過率(Y_D65)を分光測色計(CM-3600A、Konica Minolta)で2D観察者の条件で測定して、導電性メッシュ構造体の透過率を測定した。
【0096】
【表1】
【0097】
(1)実験例
1)モアレの評価
実施例及び比較例のそれぞれの導電性メッシュ構造体を、現在市販されているスマートフォンから収集された画素構造を含むディスプレイパネル上に重畳させ、モアレ現象の発生有無を10人のパネリストに観察させた。
【0098】
前記スマートフォンとしては、製品A(Mate 30 Pro:ファーウェイ社製)、製品B(I-Phone X:アップル社製)、製品C(ギャラクシーS10 5G:サムスン電子社製)、製品D(ギャラクシーノート8:サムスン電子社製)を使用した。前記4つの製品のそれぞれについて、前記導電性メッシュ構造体によるモアレ現象を観察した。
【0099】
具体的には、10人のパネリストに目視で観察させ、モアレ模様が明確に視認されたと評価したパネリストの数を数えて視認確率を評価した。評価基準は以下の通りである(例えば、10人中7人が視認されたと評価した場合の視認確率は70%である。)。
【0100】
<モアレの評価基準>
○:モアレの視認確率が20%以下
△:モアレの視認確率が20~50%
×:モアレの視認確率が60%以上
【0101】
2)アンテナゲインの評価
実施例及び比較例の導電性メッシュ構造体を用いて2.8mm×2.8mmサイズの単一放射パターンを形成し、前記放射パターンによるアンテナゲイン(dBi)を28GHzの条件でmmWave測定器(C&G Microwave社製)を用いて測定した。
【0102】
評価結果は下記表2に示す通りである。
【0103】
【表2】
【0104】
表1を参照すると、前記の式1~式3で説明した数値範囲を満たす実施例では、モアレ現象を抑制しながら、アンテナ放射を実現するための所定のターゲットゲイン(例えば、0dBi)以上のゲイン値を取得した。
【0105】
例えば、式1の数値範囲が約20~55の範囲では、1つ以上の製品の画素構造においてモアレの視認確率が20%以下に減少した。
図1
図2
図3
図4