(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-17
(45)【発行日】2025-06-25
(54)【発明の名称】酸性ガス吸着材及び酸性ガス吸着装置
(51)【国際特許分類】
B01J 20/26 20060101AFI20250618BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20250618BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20250618BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20250618BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20250618BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20250618BHJP
【FI】
B01J20/26 A
B01J20/28 Z
B01J20/34 H
B01D53/04 110
B01D53/04 220
B01J20/30
C01B32/50
(21)【出願番号】P 2023555071
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 JP2022035487
(87)【国際公開番号】W WO2023063051
(87)【国際公開日】2023-04-20
【審査請求日】2025-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2021169443
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021195086
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 克矩
(72)【発明者】
【氏名】上田 沙紀
(72)【発明者】
【氏名】山本 瑞木
【審査官】炭 喜達
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-500168(JP,A)
【文献】特表2018-509280(JP,A)
【文献】特開2017-047412(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0160097(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28
B01J 20/30-20/34
B01D 53/02-53/12
C01B 32/00-32/991
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ基を有するポリマーを含む酸性ガス吸着材であって、
前記酸性ガス吸着材における窒素元素の密度が12.0mmol/gよりも大きく、
前記酸性ガス吸着材の比表面積が0.5m
2/g以上であり、
前記ポリマーのガラス転移温度が40℃以下である、酸性ガス吸着材。
【請求項2】
85℃10%RHの環境下で100時間の加熱処理を行った場合に、吸着可能な二酸化炭素の量(mmol/g)の維持率R1が50%以上である、請求項
1に記載の酸性ガス吸着材。
【請求項3】
85℃85%RHの環境下で100時間の加熱処理を行った場合に、吸着可能な二酸化炭素の量(mmol/g)の維持率R2が50%以上である、請求項
1に記載の酸性ガス吸着材。
【請求項4】
前記ポリマーを主成分として含む、請求項
1に記載の酸性ガス吸着材。
【請求項5】
前記ポリマーは、エポキシモノマーに由来する構成単位を含むアミンポリマーである、請求項
1に記載の酸性ガス吸着材。
【請求項6】
前記アミンポリマーは、アミンモノマー及びエポキシモノマーを含むモノマー群の重合体P1、並びに、アミンプレポリマー及びエポキシモノマーを含む化合物群の反応物P2からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、請求項
5に記載の酸性ガス吸着材。
【請求項7】
前記アミンプレポリマーの重量平均分子量が300以上である、請求項
6に記載の酸性ガス吸着材。
【請求項8】
前記アミンプレポリマーがポリエチレンイミンを含む、請求項
6に記載の酸性ガス吸着材。
【請求項9】
前記アミンモノマーが脂肪族アミンを含む、請求項
6に記載の酸性ガス吸着材。
【請求項10】
前記エポキシモノマーのエポキシ当量が150g/eq.以下である、請求項
5に記載の酸性ガス吸着材。
【請求項11】
前記エポキシモノマーは、エーテル基を有する多官能エポキシ化合物を含む、請求項
5に記載の酸性ガス吸着材。
【請求項12】
多孔質構造を有する、請求項
1に記載の酸性ガス吸着材。
【請求項13】
ガス入口と、ガス出口とを有する吸着部を備え、
前記吸着部は、請求項
1に記載の酸性ガス吸着材を収容している、酸性ガス吸着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性ガス吸着材及び酸性ガス吸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気中における二酸化炭素の量を低減するために、二酸化炭素回収・貯留(CCS:Carbon capture and storage)や二酸化炭素回収・利用(CCU:Carbon capture and utilization)が検討されている。CCSやCCUでは、大気から二酸化炭素を分離することによって、二酸化炭素の回収が行われることがある。
【0003】
二酸化炭素などの酸性ガスを大気から分離する方法として、酸性ガスを吸着材に吸着させて分離する吸着法が開発されている。吸着法で利用される吸着材は、例えば、大気と接触することによって、酸性ガスを吸着できる。
【0004】
吸着材の材料としては、例えば、酸性ガスを吸着する機能を有するアミン化合物が挙げられる。一例として、特許文献1には、吸着材として、アミノ基が導入されたフィブリル化セルロースが開示されている。特許文献2には、メソポーラス材料の孔の内部にアミノ基が導入された吸着材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/009241号
【文献】米国特許第7767004号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
比較的温和な条件で、酸性ガスの吸着及び脱離を行うことに適した酸性ガス吸着材が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
アミノ基を有するポリマーを含む酸性ガス吸着材であって、
前記酸性ガス吸着材における窒素元素の密度が12.0mmol/gよりも大きく、
下記の吸着試験A1を行った場合に、二酸化炭素の吸着量a1が0.35mmol/g以上であり、
下記の脱離試験B1を行った場合に、二酸化炭素の脱離量b1が0.2mmol/g以上である、酸性ガス吸着材を提供する。
吸着試験A1:二酸化炭素、窒素及び水蒸気から構成された混合ガスを、前記酸性ガス吸着材が収容された容器内に15時間送り続ける。ここで、前記混合ガスにおける前記二酸化炭素の濃度が400volppmであり、前記混合ガスは、温度が23℃であり、湿度が50%RHである。
脱離試験B1:前記混合ガスを前記容器内に送り続けつつ、前記吸着試験A1を行った後の前記酸性ガス吸着材について、50℃で1.5時間加熱する。
【0008】
さらに本発明は、
アミノ基を有するポリマーを含む酸性ガス吸着材であって、
前記酸性ガス吸着材における窒素元素の密度が12.0mmol/gよりも大きく、
前記酸性ガス吸着材の比表面積が0.5m2/g以上であり、
前記ポリマーのガラス転移温度が40℃以下である、酸性ガス吸着材を提供する。
【0009】
さらに本発明は、
ガス入口と、ガス出口とを有する吸着部を備え、
前記吸着部は、上記の酸性ガス吸着材を収容している、酸性ガス吸着装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、比較的温和な条件で、酸性ガスの吸着及び脱離を行うことに適した酸性ガス吸着材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】酸性ガス吸着材による二酸化炭素の吸着量の測定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1態様にかかる酸性ガス吸着材は、
アミノ基を有するポリマーを含む酸性ガス吸着材であって、
前記酸性ガス吸着材における窒素元素の密度が12.0mmol/gよりも大きく、
下記の吸着試験A1を行った場合に、二酸化炭素の吸着量a1が0.35mmol/g以上であり、
下記の脱離試験B1を行った場合に、二酸化炭素の脱離量b1が0.2mmol/g以上である。
吸着試験A1:二酸化炭素、窒素及び水蒸気から構成された混合ガスを、前記酸性ガス吸着材が収容された容器内に15時間送り続ける。ここで、前記混合ガスにおける前記二酸化炭素の濃度が400volppmであり、前記混合ガスは、温度が23℃であり、湿度が50%RHである。
脱離試験B1:前記混合ガスを前記容器内に送り続けつつ、前記吸着試験A1を行った後の前記酸性ガス吸着材について、50℃で1.5時間加熱する。
【0013】
本発明の第2態様において、例えば、第1態様にかかる酸性ガス吸着材では、前記吸着量a1(mmol/g)に対する前記脱離量b1(mmol/g)の比率が50%以上である。
【0014】
本発明の第3態様において、例えば、第1又は第2態様にかかる酸性ガス吸着材では、下記の脱離試験B2を行った場合に、二酸化炭素の脱離量b2が0.25mmol/g以上である。
脱離試験B2:前記混合ガスを前記容器内に送り続けつつ、前記吸着試験A1を行った後の前記酸性ガス吸着材について、65℃で1.5時間加熱する。
【0015】
本発明の第4態様において、例えば、第3態様にかかる酸性ガス吸着材では、前記吸着量a1(mmol/g)に対する前記脱離量b2(mmol/g)の比率が70%以上である。
【0016】
本発明の第5態様において、例えば、第1~第4態様のいずれか1つにかかる酸性ガス吸着材では、下記の吸着試験A2を行った場合に、二酸化炭素の吸着量a2が0.05mmol/g以上である。
吸着試験A2:前記混合ガスを前記容器内に1時間送り続ける。
【0017】
本発明の第6態様において、例えば、第1~第5態様のいずれか1つにかかる酸性ガス吸着材では、下記の吸着試験A3を行った場合に、二酸化炭素の吸着量a3が0.1mmol/g以上である。
吸着試験A3:前記混合ガスを前記容器内に4時間送り続ける。
【0018】
本発明の第7態様において、例えば、第1~第6態様のいずれか1つにかかる酸性ガス吸着材では、前記ポリマーのガラス転移温度が40℃以下である。
【0019】
本発明の第8態様において、例えば、第1~第7態様のいずれか1つにかかる酸性ガス吸着材では、比表面積が0.5m2/g以上である。
【0020】
本発明の第9態様にかかる酸性ガス吸着材は、
アミノ基を有するポリマーを含む酸性ガス吸着材であって、
前記酸性ガス吸着材における窒素元素の密度が12.0mmol/gよりも大きく、
前記酸性ガス吸着材の比表面積が0.5m2/g以上であり、
前記ポリマーのガラス転移温度が40℃以下である。
【0021】
本発明の第10態様において、例えば、第1~第9態様のいずれか1つにかかる酸性ガス吸着材は、85℃10%RHの環境下で100時間の加熱処理を行った場合に、吸着可能な二酸化炭素の量(mmol/g)の維持率R1が50%以上である。
【0022】
本発明の第11態様において、例えば、第1~第10態様のいずれか1つにかかる酸性ガス吸着材は、85℃85%RHの環境下で100時間の加熱処理を行った場合に、吸着可能な二酸化炭素の量(mmol/g)の維持率R2が50%以上である。
【0023】
本発明の第12態様において、例えば、第1~第11態様のいずれか1つにかかる酸性ガス吸着材は、前記ポリマーを主成分として含む。
【0024】
本発明の第13態様において、例えば、第1~第12態様のいずれか1つにかかる酸性ガス吸着材では、前記ポリマーは、エポキシモノマーに由来する構成単位を含むアミンポリマーである。
【0025】
本発明の第14態様において、例えば、第13態様にかかる酸性ガス吸着材では、前記アミンポリマーは、アミンモノマー及びエポキシモノマーを含むモノマー群の重合体P1、並びに、アミンプレポリマー及びエポキシモノマーを含む化合物群の反応物P2からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む。
【0026】
本発明の第15態様において、例えば、第14態様にかかる酸性ガス吸着材では、前記アミンプレポリマーの重量平均分子量が300以上である。
【0027】
本発明の第16態様において、例えば、第14又は第15態様にかかる酸性ガス吸着材では、前記アミンプレポリマーがポリエチレンイミンを含む。
【0028】
本発明の第17態様において、例えば、第14態様にかかる酸性ガス吸着材では、前記アミンモノマーが脂肪族アミンを含む。
【0029】
本発明の第18態様において、例えば、第13~第17態様のいずれか1つにかかる酸性ガス吸着材では、前記エポキシモノマーのエポキシ当量が150g/eq.以下である。
【0030】
本発明の第19態様において、例えば、第13~第18態様のいずれか1つにかかる酸性ガス吸着材では、前記エポキシモノマーは、エーテル基を有する多官能エポキシ化合物を含む。
【0031】
本発明の第20態様において、例えば、第1~第19態様のいずれか1つにかかる酸性ガス吸着材は、多孔質構造を有する。
【0032】
本発明の第21態様にかかる酸性ガス吸着装置は、
ガス入口と、ガス出口とを有する吸着部を備え、
前記吸着部は、第1~第20態様のいずれか1つにかかる酸性ガス吸着材を収容している。
【0033】
以下、本発明の詳細を説明するが、以下の説明は、本発明を特定の実施形態に制限する趣旨ではない。
【0034】
本実施形態の酸性ガス吸着材は、アミノ基を有するポリマーPを含む。酸性ガス吸着材における窒素元素の密度dは、12.0mmol/gよりも大きい。
【0035】
酸性ガス吸着材における窒素元素の密度dは、好ましくは12.2mmol/g以上であり、12.5mmol/g以上、13.0mmol/g以上、13.5mmol/g以上、14.0mmol/g以上、14.5mmol/g以上、15.0mmol/g以上、15.5mmol/g以上、16.0mmol/g以上、16.5mmol/g以上、17.0mmol/g以上、さらには17.5mmol/g以上であってもよい。窒素元素の密度dが大きければ大きいほど、酸性ガス吸着材による酸性ガスの吸着量や酸性ガスを吸着する速度が大きい傾向がある。窒素元素の密度dの上限値は、特に限定されず、例えば30mmol/gであり、20mmol/gであってもよい。本明細書では、酸性ガス吸着材における窒素元素の密度dは、1gの酸性ガス吸着材に含まれる窒素元素の物質量を意味する。なお、酸性ガス吸着材に含まれる全ての窒素元素がアミノ基に由来する場合、窒素元素の密度dは、酸性ガス吸着材におけるアミノ基の密度とみなすことができる。
【0036】
窒素元素の密度dは、次の方法によって測定できる。まず、市販のCHN元素分析装置を用いて、酸性ガス吸着材に含まれる窒素元素の重量比率w(wt%)を測定する。得られた結果に基づいて、下記式から窒素元素の密度dを算出することができる。
密度d(mmol/g)=(重量比率w(wt%)×1000)/(窒素の原子量×100)
【0037】
さらに、本実施形態の酸性ガス吸着材について、下記の吸着試験A1を行った場合に、二酸化炭素の吸着量a1が0.35mmol/g以上である。さらに、下記の脱離試験B1を行った場合に、二酸化炭素の脱離量b1が0.2mmol/g以上である。
吸着試験A1:二酸化炭素、窒素及び水蒸気から構成された混合ガスGを、酸性ガス吸着材が収容された容器内に15時間送り続ける。ここで、混合ガスGにおける二酸化炭素の濃度が400volppmであり、混合ガスGは、温度が23℃であり、湿度が50%RHである。
脱離試験B1:混合ガスGを上記の容器内に送り続けつつ、吸着試験A1を行った後の酸性ガス吸着材について、50℃で1.5時間加熱する。
【0038】
(吸着試験及び脱離試験)
以下では、吸着試験A1及び脱離試験B1の詳細について説明する。吸着試験A1及び脱離試験B1は、例えば、
図1に示す測定装置10を用いて測定することができる。測定装置10は、第1タンク30及び第2タンク31を備えている。一例として、第1タンク30が乾燥状態の窒素を貯蔵し、第2タンク31が、乾燥状態の窒素と乾燥状態の二酸化炭素との混合ガスを貯蔵している。第2タンク31の混合ガスにおける二酸化炭素の濃度は、例えば、5vol%である。
【0039】
測定装置10は、水70を収容した第1容器40と、第1タンク30からの窒素を第1容器40に送るための第1経路60とをさらに備えている。第1経路60は、第1タンク30のガス出口に接続された一端と、第1容器40の水70中に配置された他端とを有する。第1タンク30から第1容器40に送られた窒素は、水70と接触することによって加湿される。第1経路60には、第1タンク30から第1容器40に送られる窒素の流量を調節するためのマスフローコントローラ35が配置されている。
【0040】
測定装置10は、第2容器41、第2経路62及びバイパス経路61をさらに備えている。第2経路62は、第1容器40と第2容器41とを接続している。第1容器40に送られ、加湿された窒素は、第2経路62を通じて、第2容器41に送られる。バイパス経路61は、第1タンク30とマスフローコントローラ35との間の位置において、第1経路60から分岐し、第2経路62に接続している。第1タンク30から送られた窒素の一部は、バイパス経路61に流入し、第2経路62を通じて第2容器41に送られる。バイパス経路61には、第1タンク30からバイパス経路61に送られる窒素の流量を調節するためのマスフローコントローラ36が配置されている。
【0041】
測定装置10は、第2タンク31からの混合ガスを第2経路62に送るための第3経路63をさらに備えている。第3経路63は、第2タンク31のガス出口に接続された一端と、第2経路62に接続された他端とを有する。第3経路63には、第2タンク31から第2経路62に送られる混合ガスの流量を調節するためのマスフローコントローラ37が配置されている。第2経路62に送られた混合ガスは、第2経路62を通じて第2容器41に送られる。
【0042】
測定装置10は、第3容器42及び第4経路64をさらに備えている。第3容器42は、水71と、水71中に配置された吸着部21とを収容する。第3容器42において、水71の温度は、23℃に維持される。吸着部21は、ガス入口22と、ガス出口23とを有する。吸着部21は、その内部に酸性ガス吸着材を収容する容器として機能する。吸着部21は、水71が内部に浸み込まないように構成されている。吸着部21は、典型的には、疎水性の樹脂、例えばテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)などのフッ素樹脂、で構成されたチューブである。一例として、吸着部21としてのチューブは、内径が4mmであり、外径が6mmである。吸着部21は、測定装置10に対して、着脱可能に構成されている。
【0043】
なお、測定装置10は、吸着部21を備えた酸性ガス吸着装置として用いることも可能である。本発明は、その別の側面から、ガス入口22と、ガス出口23とを有する吸着部21を備え、吸着部21は、酸性ガス吸着材を収容している、酸性ガス吸着装置20を提供する。
【0044】
第4経路64は、第2容器41と第3容器42とを接続している。詳細には、第4経路64は、第3容器42において、吸着部21のガス入口22に接続されている。第4経路64には、吸着部21に供給されるガスにおける二酸化炭素の濃度を測定するための第1濃度計50が配置されている。第1濃度計50としては、例えば、LI-COR社製のCO2/H2Oガスアナライザー、LI-850-3を用いることができる。
【0045】
測定装置10は、吸着部21のガス出口23に接続され、吸着部21から測定装置10の外部にガスを排出するための第5経路65をさらに備えている。第5経路65には、背圧弁55及び第2濃度計51が配置されている。背圧弁55によって、吸着部21内の圧力を一定の値に調整することができる。第2濃度計51は、吸着部21から排出されるガスにおける二酸化炭素の濃度を測定することができる。第2濃度計51としては、例えば、LI-COR社製のCO2/H2Oガスアナライザー、LI-850-3を用いることができる。
【0046】
測定装置10の各経路は、例えば、金属製又は樹脂製の配管で構成されている。
【0047】
[前処理]
まず、酸性ガス吸着材を準備し、乾燥処理を行う。酸性ガス吸着材としては、後述する耐熱性試験や耐湿熱性試験を行う前のものを用いる。乾燥処理は、例えば、真空雰囲気下、60℃の条件で酸性ガス吸着材を2時間以上処理することによって行われる。次に、露点約-60℃のドライルーム内で、乾燥処理後の酸性ガス吸着材を吸着部21に充填する。吸着部21に充填される酸性ガス吸着材の重量は、例えば50mgである。次に、吸着部21の両端に第4経路64及び第5経路65を接続し、吸着部21を第3容器42の水71に浸漬させる。
【0048】
次に、測定装置10の第1経路60、第2経路62、バイパス経路61及び第3経路63を通じて、第1タンク30からの窒素、及び、第2タンク31からの混合ガスを第2容器41に供給する。第2容器41内で、これらのガスが混合され、二酸化炭素、窒素及び水蒸気から構成された混合ガスGが得られる。第2容器41内では、混合ガスGにおける二酸化炭素の濃度が400volppmに調整される。混合ガスGは、温度が23℃であり、湿度が50%RHである。混合ガスGは、第4経路64を通じて、酸性ガス吸着材の重量に対して十分な流量、例えば、50mgの酸性ガス吸着材に対して300mL/minの流量、で吸着部21に供給される。吸着部21内において、混合ガスGの圧力は、背圧弁55によって、例えば107kPaに調節される。
【0049】
次に、混合ガスGが吸着部21に供給されている状態で、吸着部21を第3容器42から取り出し、吸着部21を80℃の湯浴(図示せず)に2時間以上浸漬させる。吸着部21の湯浴への浸漬は、第1濃度計50で測定された二酸化炭素の濃度と、第2濃度計51で測定された二酸化炭素の濃度とが実質的に同じ値になるまで行う。これにより、吸着部21内の酸性ガス吸着材について、前処理が完了する。
【0050】
[吸着試験]
次に、混合ガスGが吸着部21に供給されている状態で、吸着部21を湯浴から取り出し、第3容器42の水71に浸漬させる。これにより、吸着部21内の酸性ガス吸着材について、二酸化炭素の吸着試験(吸着試験A1)を開始する。吸着試験は、開始してから15時間経過するまで行う。詳細には、混合ガスGを吸着部21に15時間送り続ける。吸着試験を15時間行った場合、酸性ガス吸着材による二酸化炭素の吸着は、通常、平衡に達しているとみなすことができる。
【0051】
吸着試験A1では、開始から15時間までに酸性ガス吸着材が吸着した二酸化炭素の物質量M1を測定する。酸性ガス吸着材が吸着した二酸化炭素の物質量は、第1濃度計50で測定された二酸化炭素の濃度と、第2濃度計51で測定された二酸化炭素の濃度との差を経時的に測定した結果から算出することができる。物質量M1に基づいて、1gの酸性ガス吸着材が15時間で吸着する二酸化炭素の物質量を算出し、得られた算出値を吸着量a1として特定する。
【0052】
[脱離試験]
次に、混合ガスGを吸着部21に送り続けている状態で、吸着部21を第3容器42から取り出し、吸着部21を50℃の湯浴(図示せず)に浸漬させる。これにより、吸着部21内の酸性ガス吸着材について、二酸化炭素の脱離試験(脱離試験B1)を開始する。脱離試験は、開始してから1.5時間経過するまで行う。
【0053】
脱離試験B1では、開始から1.5時間までに酸性ガス吸着材から脱離した二酸化炭素の物質量M2を測定する。酸性ガス吸着材から脱離した二酸化炭素の物質量は、第1濃度計50で測定された二酸化炭素の濃度と、第2濃度計51で測定された二酸化炭素の濃度との差を経時的に測定した結果から算出することができる。物質量M2に基づいて、1gの酸性ガス吸着材から1.5時間で脱離する二酸化炭素の物質量を算出し、得られた算出値を脱離量b1として特定する。
【0054】
[吸着量及び脱離量]
本実施形態の酸性ガス吸着材において、吸着試験A1を行った場合の二酸化炭素の吸着量a1は、好ましくは0.4mmol/g以上であり、0.5mmol/g以上、0.8mmol/g以上、1.0mmol/g以上、1.3mmol/g以上、1.5mmol/g以上、1.8mmol/g以上、2.0mmol/g以上、2.1mmol/g以上、2.2mmol/g以上、さらには2.3mmol/g以上であってもよい。二酸化炭素の吸着量a1の上限値は、特に限定されず、例えば10mmol/gである。
【0055】
本実施形態の酸性ガス吸着材において、脱離試験B1を行った場合の二酸化炭素の脱離量b1は、好ましくは0.25mmol/g以上であり、0.3mmol/g以上、0.5mmol/g以上、0.8mmol/g以上、1.0mmol/g以上、1.3mmol/g以上、1.5mmol/g以上、さらには1.8mmol/g以上であってもよい。二酸化炭素の脱離量b1の上限値は、特に限定されず、例えば10mmol/gである。
【0056】
吸着量a1(mmol/g)に対する脱離量b1(mmol/g)の比率(50℃脱離率)は、例えば40%以上であり、45%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、さらには90%以上であってもよい。50℃脱離率の上限値は、特に限定されず、例えば99%である。
【0057】
本発明は、その別の側面から、
アミノ基を有するポリマーPを含む酸性ガス吸着材であって、
酸性ガス吸着材における窒素元素の密度が12.0mmol/gよりも大きく、
上記の吸着試験A1を行った場合に、二酸化炭素の吸着量a1が0.35mmol/g以上であり、
吸着量a1(mmol/g)に対する、上記の脱離試験B1を行った場合における二酸化炭素の脱離量b1(mmol/g)の比率(50℃脱離率)が40%以上である、酸性ガス吸着材を提供する。
この酸性ガス吸着材において、50℃脱離率は、上記で例示した範囲を満たしていてもよく、特に50%以上であってもよい。
【0058】
本実施形態の酸性ガス吸着材について、下記の脱離試験B2を行った場合、二酸化炭素の脱離量b2は、0.25mmol/g以上であることが好ましい。
脱離試験B2:混合ガスGを、酸性ガス吸着材が収容された容器(上記の吸着部21)に送り続けつつ、上記の吸着試験A1を行った後の酸性ガス吸着材について、65℃で1.5時間加熱する。
【0059】
脱離試験B2は、吸着部21を65℃の湯浴に浸漬させることを除き、上記の脱離試験B1と同じ方法によって行うことができる。脱離試験B2を行った場合の二酸化炭素の脱離量b2は、好ましくは0.3mmol/g以上であり、0.5mmol/g以上、0.8mmol/g以上、1.0mmol/g以上、1.3mmol/g以上、1.5mmol/g以上、1.8mmol/g以上、2.0mmol/g以上、2.1mmol/g以上、さらには2.2mmol/g以上であってもよい。二酸化炭素の脱離量b2の上限値は、特に限定されず、例えば10mmol/gである。
【0060】
吸着量a1(mmol/g)に対する脱離量b2(mmol/g)の比率(65℃脱離率)は、例えば40%以上であり、45%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、96%以上、さらには97%以上であってもよく、100%であってもよい。
【0061】
本実施形態の酸性ガス吸着材について、下記の吸着試験A2を行った場合、二酸化炭素の吸着量a2は、0.05mmol/g以上であることが好ましい。吸着量a2は、酸性ガスを吸着する速度の指標として用いることができる。すなわち、吸着量a2が大きければ大きいほど、酸性ガス吸着材は、酸性ガスを吸着する速度が大きいと言える。
吸着試験A2:混合ガスGを、酸性ガス吸着材が収容された容器(上記の吸着部21)内に1時間送り続ける。
【0062】
吸着試験A2は、試験時間を15時間から1時間に変更することを除き、上記の吸着試験A1と同じ方法によって行うことができる。吸着試験A2を行った場合の二酸化炭素の吸着量a2は、好ましくは0.1mmol/g以上であり、0.2mmol/g以上、0.3mmol/g以上、0.4mmol/g以上、0.5mmol/g以上、0.6mmol/g以上、0.7mmol/g以上、0.8mmol/g以上、さらには0.9mmol/g以上であってもよい。二酸化炭素の吸着量a2の上限値は、特に限定されず、例えば5mmol/gである。
【0063】
本実施形態の酸性ガス吸着材について、下記の吸着試験A3を行った場合、二酸化炭素の吸着量a3は、0.1mmol/g以上であることが好ましい。吸着量a3についても、酸性ガスを吸着する速度の指標として用いることができる。すなわち、吸着量a3が大きければ大きいほど、酸性ガス吸着材は、酸性ガスを吸着する速度が大きいと言える。
吸着試験A3:混合ガスGを、酸性ガス吸着材が収容された容器(上記の吸着部21)内に4時間送り続ける。
【0064】
吸着試験A3は、試験時間を15時間から4時間に変更することを除き、上記の吸着試験A1と同じ方法によって行うことができる。吸着試験A3を行った場合の二酸化炭素の吸着量a3は、好ましくは0.3mmol/g以上であり、0.5mmol/g以上、0.8mmol/g以上、1.0mmol/g以上、1.3mmol/g以上、1.5mmol/g以上、1.7mmol/g以上、さらには1.8mmol/g以上であってもよい。二酸化炭素の吸着量a3の上限値は、特に限定されず、例えば5mmol/gである。
【0065】
(耐熱性試験)
本実施形態の酸性ガス吸着材は、耐熱性が高いことが好ましい。酸性ガス吸着材の耐熱性は、例えば、酸性ガス吸着材について耐熱性試験を行うことによって評価することができる。耐熱性試験は、例えば、酸性ガス吸着材について、85℃10%RHの環境下で100時間の加熱処理を行うことにより実施できる。一例として、酸性ガス吸着材について、85℃10%RHの環境下で100時間の加熱処理を行った場合に、吸着可能な二酸化炭素の量(mmol/g)の維持率R1は、例えば30%以上であり、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、92%以上、94%以上、95%以上、さらには96%以上であってもよい。維持率R1が高ければ高いほど、酸性ガス吸着材について、耐熱性が高いと言える。耐熱性が高い酸性ガス吸着材は、長期使用における耐久性が高いと言える。維持率R1の上限値は、特に限定されず、例えば99%である。
【0066】
維持率R1は、詳細には、次の方法によって特定することができる。まず、露点約-60℃のドライルーム内で、酸性ガス吸着材をガラス容器(例えば、アズワン社製のラボランスクリュー管瓶)に配置する。次に、ガラス容器を恒温恒湿機(例えば、エスペック社製のPSL-2J)にセットし、空気中、85℃10%RHで100時間の加熱処理を行う。次に、加熱処理後の酸性ガス吸着材を、ドライルーム内の真空乾燥機(例えば、EYELA社製のVOS-310C)にセットし、真空雰囲気下、60℃の条件で2時間以上処理する。処理後の酸性ガス吸着材について、上記の吸着試験A1を行ったときの二酸化炭素の吸着量a4を測定する。得られた吸着量a4と、耐熱性試験前の酸性ガス吸着材について吸着試験A1を行ったときの二酸化炭素の吸着量a1とに基づいて、下記式により維持率R1を算出することができる。
維持率R1(%)=吸着量a4(mmol/g)÷吸着量a1(mmol/g)×100
【0067】
なお、二酸化炭素の吸着量a4は、例えば0.35mmol/g以上であり、0.4mmol/g以上、0.5mmol/g以上、0.8mmol/g以上、1.0mmol/g以上、1.3mmol/g以上、1.5mmol/g以上、1.8mmol/g以上、さらには2.0mmol/g以上であってもよい。二酸化炭素の吸着量a4の上限値は、特に限定されず、例えば10mmol/gである。
【0068】
(耐湿熱性試験)
本実施形態の酸性ガス吸着材は、耐湿熱性が高いことが好ましい。酸性ガス吸着材の耐湿熱性は、例えば、酸性ガス吸着材について耐湿熱性試験を行うことによって評価することができる。耐湿熱性試験は、例えば、酸性ガス吸着材について、85℃85%RHの環境下で100時間の加熱処理を行うことにより実施できる。一例として、酸性ガス吸着材について、85℃85%RHの環境下で100時間の加熱処理を行った場合に、吸着可能な二酸化炭素の量(mmol/g)の維持率R2は、例えば30%以上であり、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、さらには96%以上であってもよい。維持率R2が高ければ高いほど、酸性ガス吸着材について、耐湿熱性が高いと言える。耐湿熱性が高い酸性ガス吸着材は、長期使用における耐久性が高いと言える。維持率R2の上限値は、特に限定されず、例えば99%である。
【0069】
維持率R2は、詳細には、次の方法によって特定することができる。まず、露点約-60℃のドライルーム内で、酸性ガス吸着材をガラス容器(例えば、アズワン社製のラボランスクリュー管瓶)に配置する。次に、ガラス容器を恒温恒湿機(例えば、エスペック社製のPSL-2J)にセットし、空気中、85℃85%RHで100時間の加熱処理を行う。次に、加熱処理後の酸性ガス吸着材を、ドライルーム内の真空乾燥機(例えば、EYELA社製のVOS-310C)にセットし、真空雰囲気下、60℃の条件で2時間以上処理する。処理後の酸性ガス吸着材について、上記の吸着試験A1を行ったときの二酸化炭素の吸着量a5を測定する。得られた吸着量a5と、耐湿熱性試験前の酸性ガス吸着材について吸着試験A1を行ったときの二酸化炭素の吸着量a1とに基づいて、下記式により維持率R2を算出することができる。
維持率R2(%)=吸着量a5(mmol/g)÷吸着量a1(mmol/g)×100
【0070】
なお、二酸化炭素の吸着量a5は、例えば0.35mmol/g以上であり、0.4mmol/g以上、0.5mmol/g以上、0.8mmol/g以上、1.0mmol/g以上、1.3mmol/g以上、1.5mmol/g以上、1.8mmol/g以上、2.0mmol/g以上、さらには2.1mmol/g以上であってもよい。二酸化炭素の吸着量a5の上限値は、特に限定されず、例えば10mmol/gである。
【0071】
(ポリマー)
酸性ガス吸着材において、ポリマーPは、アミノ基に起因して、酸性ガスを吸着する機能を有する。ポリマーPは、例えば、アミノ基として、1級アミノ基、2級アミノ基及び3級アミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む。酸性ガスの吸着性の観点から、ポリマーPは、1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましく、2級アミノ基を含むことが特に好ましい。言い換えると、ポリマーPが有するアミノ基は、2級アミノ基を含むことが好ましい。2級アミノ基を有するポリマーPによれば、吸着した酸性ガスを容易に脱離できる傾向もある。すなわち、2級アミノ基を有するポリマーPによれば、比較的温和な条件で酸性ガス吸着材の再生処理を行うことができる。なお、ポリマーPは、3級アミノ基を含んでいてもよいが、3級アミノ基を含まなくてもよい。
【0072】
ポリマーPにおける窒素元素の重量比率は、例えば5wt%以上であり、好ましくは10wt%以上である。この重量比率が高ければ高いほど、酸性ガス吸着材における酸性ガスの吸着性が向上する傾向がある。ポリマーPにおける窒素元素の重量比率の上限値は、特に限定されず、例えば30wt%である。なお、ポリマーPに含まれる全ての窒素元素がアミノ基に由来する場合、上記の窒素元素の重量比率は、ポリマーPにおけるアミノ基の重量比率とみなすことができる。
【0073】
ポリマーPにおける窒素元素の密度は、例えば12.0mmol/gよりも大きく、好ましくは12.2mmol/g以上であり、12.5mmol/g以上、13.0mmol/g以上、13.5mmol/g以上、14.0mmol/g以上、14.5mmol/g以上、15.0mmol/g以上、さらには15.5mmol/g以上であってもよい。窒素元素の密度の上限値は、特に限定されず、例えば30mmol/gであり、20mmol/gであってもよい。本明細書では、ポリマーPにおける窒素元素の密度は、1gのポリマーPに含まれる窒素元素の物質量を意味し、例えば、上述した酸性ガス吸着材における窒素元素の密度dと同様の方法によって測定できる。なお、ポリマーPに含まれる全ての窒素元素がアミノ基に由来する場合、窒素元素の密度は、ポリマーPにおけるアミノ基の密度とみなすことができる。
【0074】
ポリマーPは、アミノ基以外の他の官能基を含んでいてもよい。他の官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、エーテル基、エステル基、アミド基などが挙げられる。ポリマーPは、他の官能基として、エーテル基を含むことが好ましい。
【0075】
ポリマーPは、例えば、エポキシモノマーに由来する構成単位U1を含むアミンポリマーである。このアミンポリマーは、例えば、アミンモノマー及びエポキシモノマーを含むモノマー群の重合体P1、並びに、アミンプレポリマー及びエポキシモノマーを含む化合物群の反応物P2からなる群より選ばれる少なくとも1つを含み、好ましくは反応物P2である。反応物P2は、窒素元素の密度が高い傾向があるだけでなく、耐熱性や耐湿熱性が高い傾向もある。反応物P2の具体例は、エポキシモノマーによってアミンプレポリマーが架橋されたもの(架橋物)である。
【0076】
重合体P1を形成するためのモノマー群は、上述のとおり、アミンモノマー及びエポキシモノマーを含み、好ましくはこれらのモノマーのみから構成される。すなわち、重合体P1は、好ましくはアミンモノマー及びエポキシモノマーの重合体である。
【0077】
アミンモノマーは、アミノ基を少なくとも1つ含むモノマーであり、例えば、1級アミノ基を少なくとも1つ含む。アミンモノマーに含まれる1級アミノ基の数は、好ましくは2以上であり、3以上であってもよく、4以上であってもよい。1級アミノ基の数の上限値は、特に限定されず、例えば10である。アミンモノマーは、1級アミノ基の他に、2級アミノ基や3級アミノ基を含んでいてもよいが、3級アミノ基を含まなくてもよい。アミンモノマーにおいて、全てのアミノ基の数に対する1級アミノ基の数の比率は、特に限定されず、例えば10%以上であり、好ましくは20%以上であり、より好ましくは30%以上であり、40%以上であってもよい。この比率の上限値は、特に限定されず、例えば80%であり、60%であってもよい。
【0078】
アミンモノマーの分子量は、例えば50以上であり、好ましくは100以上であり、より好ましくは150以上である。アミンモノマーの分子量が大きければ大きいほど、重合体P1における窒素元素の密度を大きく調整しやすい。アミンモノマーの分子量の上限値は、特に限定されず、例えば1000未満であり、好ましくは500以下であり、300以下であってもよい。アミンモノマーのアミン当量は、例えば10g/eq.以上であり、好ましくは20g/eq.以上であり、より好ましくは30g/eq.以上である。アミンモノマーのアミン当量が大きければ大きいほど、重合体P1における窒素元素の密度を大きく調整しやすい。アミンモノマーのアミン当量の上限値は、特に限定されず、例えば150g/eq.以下であり、好ましくは100g/eq.以下であり、50g/eq.以下であってもよい。なお、本明細書において、アミン当量とは、アミンモノマーに含まれる1級アミノ基の活性水素1当量に対するアミンモノマーの質量を意味する。
【0079】
アミンモノマーとしては、例えば、エチルアミン、エチレンジアミン、1,4-ブチレンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,3,6-トリスアミノメチルヘキサン、トリス(2-アミノエチル)アミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、ポリメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリエーテルジアミンなどの脂肪族アミン;イソホロンジアミン、メンタンジアミン、ピペラジン、N-アミノエチルピペラジン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、これらの変性品などの脂環族アミンなどが挙げられる。アミンモノマーは、脂肪族アミン、特にトリエチレンテトラミン(TETA)、を含むことが好ましい。アミンモノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0080】
エポキシモノマーは、エポキシ基を少なくとも1つ含むモノマーである。エポキシモノマーに含まれるエポキシ基の数は、好ましくは2以上であり、3以上であってもよく、4以上であってもよい。エポキシ基の数が多ければ多いほど、エポキシモノマー中の架橋点が増加し、重合体P1中の架橋構造が密になるため、これにより、耐熱性や耐湿熱性が向上する傾向がある。エポキシモノマーに含まれるエポキシ基の数の上限値は、特に限定されず、例えば10である。
【0081】
エポキシモノマーの分子量は、特に限定されず、例えば1000未満であり、好ましくは500以下である。エポキシモノマーのエポキシ当量は、特に限定されず、例えば150g/eq.以下であり、好ましくは100g/eq.以下である。エポキシモノマーのエポキシ当量が小さければ小さいほど、重合体P1における窒素元素の密度が増加する傾向がある。エポキシモノマーのエポキシ当量の下限値は、特に限定されず、例えば50g/eq.である。なお、エポキシ当量とは、1当量のエポキシ基を含むエポキシモノマーの質量を意味する。
【0082】
エポキシモノマーとしては、例えば、n-ブチルグリシジルエーテル、高級アルコールグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p-sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、t-ブチルフェニルグリシジルエーテルなどの単官能エポキシ化合物;1,5-ヘキサジエンジエポキシド、1,7-オクタジエンジエポキシド、1,9-デカジエンジエポキシドなどのジエポキシアルカン;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルなどのエーテル基を有する多官能エポキシ化合物;N,N,N’,N’-テトラグリシジルメタキシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどのアミノ基を有する多官能エポキシ化合物が挙げられる。
【0083】
エポキシモノマーは、場合によっては、芳香族エポキシ樹脂、非芳香族エポキシ樹脂などであってもよい。芳香族エポキシ樹脂としては、ポリフェニルベースエポキシ樹脂、フルオレン環を含むエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートを含むエポキシ樹脂、複素芳香環(例えば、トリアジン環)を含むエポキシ樹脂等が挙げられる。ポリフェニルベースエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラキス(ヒドロキシフェニル)エタンベースエポキシ樹脂等が挙げられる。非芳香族エポキシ樹脂としては、脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂肪族グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエステル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0084】
エポキシモノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。なお、単官能エポキシ化合物を用いる場合は、2つ以上のエポキシ基を含む他のエポキシモノマーと組み合わせて用いることが好ましい。単官能エポキシ化合物は、重合体P1を形成するためのモノマー群の粘度を調節するための反応性希釈剤として利用することもできる。
【0085】
エポキシモノマーは、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EDE)、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル(PETG)などのエーテル基を有する多官能エポキシ化合物を含むことが好ましい。EDEやPETGは、エポキシ当量が小さく、ポリマーPのガラス転移温度Tgを容易に低下させることができる。これらのエポキシ化合物は、コストが低い傾向もある。エポキシモノマーは、エーテル基を有する多官能エポキシ化合物とともに、又は、当該多官能エポキシ化合物に代えて、N,N,N’,N’-テトラグリシジルメタキシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどのアミノ基を有する多官能エポキシ化合物を含んでいてもよい。
【0086】
反応物P2を形成するためのアミンプレポリマーは、例えば、アミノ基、特に1級アミノ基、を少なくとも1つ含む。アミンプレポリマーに含まれる1級アミノ基の数は、好ましくは2以上であり、3以上であってもよく、4以上であってもよい。1級アミノ基の数の上限値は、特に限定されず、例えば100である。アミンプレポリマーは、1級アミノ基の他に、2級アミノ基や3級アミノ基を含んでいてもよい。アミンプレポリマーにおいて、全てのアミノ基の数に対する1級アミノ基の数の比率は、特に限定されず、例えば10%以上であり、好ましくは20%以上であり、より好ましくは30%以上であり、40%以上であってもよい。この比率が高ければ高いほど、アミンプレポリマー中の架橋点が増加し、反応物P2中の架橋構造が密になるため、これにより、耐熱性や耐湿熱性が向上する傾向がある。この比率の上限値は、特に限定されず、例えば80%であり、60%であってもよい。
【0087】
アミンプレポリマーの重量平均分子量は、特に限定されず、例えば200以上であり、300以上、500以上、1000以上、さらには1500以上であってもよい。重量平均分子量が大きいアミンプレポリマーは、取り扱い上の安全性が高い傾向がある。さらに、重量平均分子量が大きいアミンプレポリマーを用いた場合、反応物P2における窒素元素の密度が増加する傾向がある。アミンプレポリマーの重量平均分子量の上限値は、特に限定されず、例えば5000である。アミンプレポリマーのアミン当量は、例えば10g/eq.以上であり、好ましくは20g/eq.以上であり、より好ましくは30g/eq.以上である。アミンプレポリマーのアミン当量の上限値は、特に限定されず、例えば200g/eq.以下であり、150g/eq.以下であってもよく、100g/eq.以下であってもよい。アミンプレポリマーに含まれる構成単位の数(重合度)は、特に限定されず、例えば、5~100である。
【0088】
アミンプレポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアルキレンポリアミンなどの脂肪族ポリアミン;アミノエチル化アクリルポリマーなどのアミノ基を有する(メタ)アクリル系ポリマー;ポリアミン類とダイマー酸との反応によって形成される脂肪族ポリアミドアミンなどが挙げられる。アミンプレポリマーは、脂肪族ポリアミン、特にポリエチレンイミン(PEI)、を含むことが好ましい。アミンプレポリマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0089】
なお、アミンプレポリマー、特にPEI、は、アミンモノマーよりも取り扱い上の安全性が高い傾向がある。一例として、アミンプレポリマーは、消防法上の危険物に該当しなくてもよく、毒物及び劇物取締法の対象物質に該当しなくてもよい。アミンプレポリマーは、変異原性試験(Ames試験)の結果が陰性のものであってもよい。アミンプレポリマーは、皮膚刺激性試験(ウサギを用いた皮膚一次刺激性試験)の結果が軽度刺激物又は中等度刺激物であるものであってもよい。
【0090】
反応物P2を形成するためのエポキシモノマーとしては、重合体P1について上述したものが挙げられる。
【0091】
上述のとおり、アミンポリマーとしてのポリマーPは、エポキシモノマーに由来する構成単位U1を含む。ポリマーPが重合体P1である場合、ポリマーPは、アミンモノマーに由来する構成単位U2をさらに含む。ポリマーP、特に重合体P1、における構成単位U1の含有率は、例えば20wt%~70wt%である。ポリマーP、特に重合体P1、における構成単位U2の含有率は、例えば30wt%以上であり、好ましくは50wt%以上である。構成単位U2の含有率の上限値は、特に限定されず、例えば80wt%である。
【0092】
ポリマーPのガラス転移温度Tgは、特に限定されず、例えば40℃以下であり、好ましくは30℃以下であり、より好ましくは20℃以下であり、さらに好ましくは15℃以下であり、10℃以下であってもよく、5℃以下であってもよく、0℃以下であってもよい。ポリマーPのガラス転移温度Tgがこの程度に低い場合、酸性ガス吸着材において、酸性ガスを吸着する速度が大きい傾向がある。ポリマーPのガラス転移温度Tgの下限値は、酸性ガス吸着材における酸性ガスの吸着性を十分に確保する観点及び耐熱性の観点から、例えば-100℃であり、好ましくは-50℃であり、より好ましくは-10℃である。本明細書において、ガラス転移温度Tgは、JIS K7121:1987の規定に準拠して求められる中間点ガラス転移温度 (Tmg)を意味する。なお、ポリマーPは、通常、熱硬化性樹脂に相当する。ポリマーPは、例えば、25℃、好ましくは25℃~80℃の範囲、で固体である。
【0093】
ポリマーPの重量平均分子量は、特に限定されず、例えば500以上であり、好ましくは1000以上であり、より好ましくは10000以上であり、さらに好ましくは100000以上である。ポリマーPの重量平均分子量の上限値は、例えば10000000である。
【0094】
酸性ガス吸着材は、例えば、ポリマーPを主成分として含む。本明細書において、「主成分」は、酸性ガス吸着材に重量比で最も多く含まれた成分を意味する。酸性ガス吸着材におけるポリマーPの含有率は、例えば50wt%以上であり、好ましくは70wt%以上であり、より好ましくは90wt%以上であり、95wt%以上であってもよく、99wt%以上であってもよい。酸性ガス吸着材は、実質的にポリマーPのみから構成されていてもよい。ポリマーPの含有率が高ければ高いほど、酸性ガス吸着材における酸性ガスの吸着性が向上する傾向がある。
【0095】
酸性ガス吸着材は、実質的にポリマーPのみから構成されていてもよいが、ポリマーP以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、反応促進剤、可塑剤、顔料、染料、老化防止剤、導電材、帯電防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、酸化防止剤等が挙げられる。反応促進剤は、例えば、ポリマーPを合成するときに利用される。反応促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどの3級アミン;2-フェノール-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェノール-4,5-ジヒドロキシイミダゾールなどのイミダゾール類が挙げられる。これらの反応促進剤は、例えば、重合体P1を合成するための反応を促進することができる。
【0096】
酸性ガス吸着材における窒素元素の重量比率は、例えば5wt%以上であり、好ましくは10wt%以上である。この重量比率が高ければ高いほど、酸性ガス吸着材における酸性ガスの吸着性が向上する傾向がある。酸性ガス吸着材における窒素元素の重量比率の上限値は、特に限定されず、例えば30wt%である。なお、酸性ガス吸着材に含まれる全ての窒素元素がアミノ基に由来する場合、上記の窒素元素の重量比率は、酸性ガス吸着材におけるアミノ基の重量比率とみなすことができる。
【0097】
酸性ガス吸着材の形状は、特に限定されず、例えばブロック状、シート状、粒子状などである。本明細書において、粒子状は、球状、楕円体状、鱗片状、繊維状などを含む。
【0098】
酸性ガス吸着材は、多孔質構造を有していてもよい。一例として、酸性ガス吸着材は、ポリマーPを含む多孔体Sを備えていてもよい。多孔体Sは、典型的には、ポリマーPのみから構成されている。多孔体Sの形状は、例えば、ブロック状、シート状、粒子状などである。なお、酸性ガス吸着材は、多孔体Sとして、多孔質樹脂シートを備えていてもよいが、多孔質樹脂シートを備えていなくてもよい。酸性ガス吸着材は、多孔体S以外の部材、例えばポリマーPを担持するための担体など、を備えていなくてもよい。酸性ガス吸着材が担体などを備えていない場合、裁断や切削によって酸性ガス吸着材の形状を容易に調整できる傾向がある。
【0099】
多孔体Sは、例えば、ポリマーPで構成された三次元網目状骨格を有する。多孔体Sにおいて、例えば、上記の三次元網目状骨格が連続して延びている。多孔体Sに含まれる孔は、例えば、三次元状に連続して形成されている連続孔である。多孔体Sは、独立孔を有していてもよく、多孔体Sを貫通する貫通孔を有していてもよい。
【0100】
酸性ガス吸着材(多孔体S)の比表面積は、特に限定されず、例えば0.5m2/g以上であり、1.0m2/g以上、2.0m2/g以上、3.0m2/g以上、4.0m2/g以上、5.0m2/g以上、6.0m2/g以上、7.0m2/g以上、8.0m2/g以上、さらには9.0m2/g以上であってもよい。酸性ガス吸着材の比表面積が大きければ大きいほど、酸性ガス吸着材において、酸性ガスを吸着する速度が増加する傾向がある。酸性ガス吸着材の比表面積の上限値は、特に限定されず、例えば100m2/gである。酸性ガス吸着材の比表面積は、窒素ガス吸着によるBET(Brunauer-Emmett-Teller)比表面積を意味する。酸性ガス吸着材の比表面積は、JIS Z8830:2013の規定に準拠した方法によって測定できる。
【0101】
本発明は、その別の側面から、
アミノ基を有するポリマーPを含む酸性ガス吸着材であって、
酸性ガス吸着材における窒素元素の密度dが12.0mmol/gよりも大きく、
酸性ガス吸着材の比表面積が0.5m2/g以上であり、
ポリマーPのガラス転移温度が40℃以下である、酸性ガス吸着材を提供する。
この酸性ガス吸着材は、例えば、二酸化炭素に対して、上述した吸着特性及び脱離特性を有する。一例として、酸性ガス吸着材について、上記の方法によって測定された吸着量a1~a3、脱離量b1~b2、50℃脱離率、65℃脱離率などが、上記で例示した範囲を満たしていてもよい。
【0102】
酸性ガス吸着材(多孔体S)の細孔容積は、特に限定されず、例えば0.1cm3/g以上であり、0.2cm3/g以上、0.3cm3/g以上、0.5cm3/g以上、1.0cm3/g以上、さらには2.0cm3/g以上であってもよい。酸性ガス吸着材の細孔容積の上限値は、特に限定されず、例えば5.0cm3/gであり、4.0cm3/gであってもよく、3.0cm3/gであってもよい。酸性ガス吸着材の細孔容積は、水銀圧入法によって測定することができる。水銀圧入法は、市販の細孔分布分析装置(例えば、マイクロメリティックス社製のオートポアV9620)を用いて、初期圧21kPaの条件で行う。
【0103】
酸性ガス吸着材(多孔体S)の平均細孔径は、特に限定されず、例えば0.1μm以上であり、0.2μm以上、0.3μm以上、さらには0.5μm以上であってもよい。酸性ガス吸着材の平均細孔径の上限値は、特に限定されず、例えば50μmである。本明細書において、酸性ガス吸着材の平均細孔径は、水銀圧入法によって測定されたメディアン径を意味する。水銀圧入法は、市販の細孔分布分析装置(例えば、マイクロメリティックス社製のオートポアV9620)を用いて、初期圧21kPaの条件で行う。
【0104】
酸性ガス吸着材が粒子状である場合、酸性ガス吸着材の平均粒径は、特に限定されず、例えば0.5μm以上であり、好ましくは1μm以上であり、10μm以上であってもよく、20μm以上であってもよく、30μm以上であってもよい。酸性ガス吸着材の平均粒径は、200μm以下であってもよく、100μm以下であってもよく、75μm未満であってもよい。本明細書において、酸性ガス吸着材の平均粒径は、レーザー回折式粒度計などによって測定される粒度分布において、体積累積50%に相当する粒径(d50)を意味する。
【0105】
(酸性ガス吸着材の製造方法)
本実施形態の酸性ガス吸着材の製造方法は、例えば、アミンモノマー又はアミンプレポリマーや、エポキシモノマーを含む化合物群を反応させて、ポリマーPを形成することを含む。化合物群は、例えば、アミンモノマー及びエポキシモノマーを含むモノマー群である。ただし、化合物群は、アミンモノマーに代えて、又は、アミンモノマーとともに、アミンプレポリマーを含んでいてもよい。
【0106】
化合物群は、2つのエポキシ基を含むエポキシモノマーE1のみを含んでいてもよく、エポキシモノマーE1に代えて、又は、エポキシモノマーE1とともに、3つ以上、例えば4つ、のエポキシ基を含むエポキシモノマーE2とを含んでいてもよい。化合物群がエポキシモノマーE1及びE2を含む場合、エポキシモノマーE1に対するエポキシモノマーE2の重量比E1/E2は、特に限定されず、例えば4/6~8/2である。
【0107】
ポリマーPを作製する場合、エポキシモノマーと、アミンモノマー又はアミンプレポリマーとの配合比率は、アミンモノマー又はアミンプレポリマーに含まれる1級アミノ基の活性水素の当量(A)に対する、エポキシモノマーに含まれるエポキシ基の当量(E)の比E/Aが、例えば1以下、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.5以下となるように設定することが好ましい。比E/Aが小さければ小さいほど、酸性ガス吸着材における窒素元素の密度dが増加する傾向がある。比E/Aの下限値は、特に限定されず、例えば0.1である。
【0108】
化合物群の反応は、例えば、アミンモノマー及びエポキシモノマーの重合反応である。ただし、化合物群の反応は、エポキシモノマーによるアミンプレポリマーの架橋反応であってもよい。化合物群の反応では、アミンモノマー又はアミンプレポリマーのアミノ基が、エポキシモノマーのエポキシ基と反応する。化合物群の反応は、化合物群にエネルギーを加えることによって行うことができる。化合物群に加えるエネルギーは、熱エネルギーであることが好ましい。一例として、化合物群を40℃~100℃の温度で加熱することによって、化合物群の反応を進行させることができる。ただし、化合物群に加えるエネルギーは、光エネルギーであってもよい。
【0109】
多孔質構造を有する酸性ガス吸着材は、例えば、次の方法によって作製することができる。まず、上記の化合物群をポロゲンと混合し、混合液を作製する。ポロゲンは、例えば、化合物群に含まれるモノマーやプレポリマーを溶かすことができ、さらに、化合物群が反応した後に、反応誘起相分離を生じさせることができる溶剤である。ポロゲンの具体例としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール等のグリコール類、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンジメチルエーテル等のエーテル類が挙げられる。ポリオキシアルキレングリコールの具体例は、ポリ(1,2-ブタンジオール)-6プロピレングリコール、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルなどである。ポロゲンは、酢酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、エタノール、イソプロパノール等の極性溶媒、トルエン等の無極性溶媒、又はこれらの混合溶媒であってもよい。ポロゲンは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0110】
混合液には、化合物群以外の他の成分がさらに添加されてもよい。他の成分としては、例えば、上述した反応促進剤などが挙げられる。
【0111】
次に、混合液中で化合物群を反応させる。一例として、混合液を金型に充填してから加熱処理を行うことによって化合物群を反応させる。これにより、ポリマーP及びポロゲンを含む硬化体が得られる。この硬化体において、ポリマーPとポロゲンとが相分離することにより、共連続構造が形成される。
【0112】
次に、硬化体からポロゲンを抽出し、除去する。これによって、多孔質構造を有する酸性ガス吸着材を得ることができる。ポロゲンの抽出は、例えば、硬化体を溶剤に浸漬させることによって行うことができる。この溶剤としては、水、脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、脂肪族アルコール溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒及びハロゲン含有有機溶媒などを使用することができる。脂肪族炭化水素溶媒としては、n-ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、石油エーテル、ベンジン等が挙げられる。芳香族炭化水素溶媒としては、トルエン、キシレン、メシチレン、ベンゼン等が挙げられる。脂肪族アルコール溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール等が挙げられる。エステル溶媒としては、酢酸エチル等が挙げられる。エーテル溶媒としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール等が挙げられる。ハロゲン含有有機溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、クロロベンゼン等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0113】
なお、硬化体を作製するときに、化合物群の反応速度が大きければ大きいほど、硬化体中において、ポロゲンが細かく分散する傾向がある。ポロゲンが細かく分散した硬化体からポロゲンを除去することによって、大きい比表面積を有する酸性ガス吸着材を作製することができる。化合物群の反応速度は、例えば、化合物群に含まれるモノマーやプレポリマーの種類や配合比率などに応じて変化する。一例として、3つ以上、例えば4つ、のエポキシ基を含むエポキシモノマーE2を用いた場合や、アミンプレポリマーとして、重量平均分子量が大きいポリエチレンイミンを用いた場合などに、化合物群の反応速度が大きい傾向がある。
【0114】
(酸性ガス吸着材の用途)
本実施形態の酸性ガス吸着材は、酸性ガスを吸着することができる。酸性ガスとしては、二酸化炭素、硫化水素、硫化カルボニル、硫黄酸化物(SOx)、シアン化水素、窒素酸化物(NOx)などが挙げられ、好ましくは二酸化炭素である。
【0115】
酸性ガス吸着材は、例えば、次の方法によって使用することができる。まず、酸性ガスを含む混合ガスを酸性ガス吸着材と接触させる。混合ガスは、例えば、酸性ガス以外の他のガスを含んでいる。他のガスとしては、例えば、水素、窒素などの非極性ガス、及び、ヘリウムなどの不活性ガスが挙げられ、好ましくは窒素である。混合ガスは、典型的には大気である。混合ガスは、化学プラント又は火力発電のオフガスであってもよい。
【0116】
混合ガスの温度は、例えば室温(23℃)である。混合ガスにおける酸性ガスの濃度は、特に限定されず、標準状態(0℃、101kPa)で、例えば0.01vol%(100volppm)以上であり、好ましくは0.04vol%(400volppm)以上であり、1.0vol%以上であってもよい。混合ガスにおける二酸化炭素の濃度の上限値は、特に限定されず、標準状態で、例えば10vol%である。混合ガスの圧力は、典型的には、酸性ガス吸着材の使用環境における大気圧に等しい。ただし、酸性ガス吸着材と接触させる混合ガスは、加圧されていてもよい。
【0117】
混合ガスと接触した酸性ガス吸着材は、混合ガスに含まれる酸性ガスを吸着する。混合ガスを酸性ガス吸着材に接触させる操作は、例えば、酸性ガス吸着材による酸性ガスの吸着が平衡に達するまで行う。
【0118】
次に、酸性ガスを吸着した酸性ガス吸着材について再生処理を行う。再生処理は、例えば、酸性ガス吸着材を加熱することによって実施できる。酸性ガス吸着材の加熱温度は、例えば50~80℃である。酸性ガス吸着材は、減圧雰囲気下又は真空雰囲気下で加熱されてもよい。酸性ガス吸着材を加熱することにより、酸性ガスが酸性ガス吸着材から脱離する。これにより、酸性ガス吸着材が再生され、酸性ガス吸着材を繰り返し使用することができる。酸性ガス吸着材から脱離した酸性ガス、特に二酸化炭素、は、化学品の合成原料やドライアイスとして利用することができる。なお、酸性ガス吸着材による酸性ガスの吸着操作、及び酸性ガス吸着材の再生処理は、上述した測定装置10(酸性ガス吸着装置)を用いて実施することが可能である。
【実施例】
【0119】
以下に、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0120】
(実施例1)
まず、6mLのスクリュー管瓶(アズワン社製)に、ポリ(1,2-ブタンジオール)-6プロピレングリコール(日油社製、ユニオール(登録商標)PB-500)1.73gと、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル(日油社製、ユニルーブ(登録商標)DGP-700)0.43gとを加えた。得られた混合液に、エチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、EX-810)0.74g、及びペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル(昭和電工社製、ショウフリー(登録商標)PETG)0.74gを溶解させることによって、エポキシモノマー及びポロゲンの混合液を調製した。
【0121】
次に、この混合液に、ポリエチレンイミン(日本触媒社製、エポミンSP-003)1.56gを添加することによって、エポキシモノマー、アミンプレポリマー及びポロゲンの混合液を調製した。この混合液において、アミンプレポリマーに含まれる1級アミノ基の活性水素の当量(A)に対する、エポキシモノマーに含まれるエポキシ基の当量(E)の比E/Aは、0.5であった。
【0122】
次に、卓上振とう器(エンゼルバイブレーターデジタル60Hz)を強度5に設定して、混合液を2分間振とうさせた。次に、この混合液を80℃の恒温槽に2時間静置させることによって硬化させた。これにより、アミノ基を有するポリマーPを含むブロック状の硬化体を得た。この硬化体をスクリュー管瓶から取り出し、約3mm角に裁断した。次に、硬化体を60℃の酢酸エチル中に1時間浸漬させる操作を、液交換を行って2回繰り返した。これにより、硬化体からポロゲンが除去され、ポリマーPを含む多孔体が形成された。この多孔体について、60℃で1時間乾燥させ、さらに2時間真空乾燥させることによって、実施例1の酸性ガス吸着材を得た。
【0123】
(実施例2~11)
原料の種類や配合量を表1に示すように変更したことを除き、実施例1と同じ方法によって、実施例2~11の酸性ガス吸着材を得た。
【0124】
(比較例1)
まず、6mLのスクリュー管瓶(アズワン社製)に、ポリプロピレングリコール(ADEKA社製、アデカポリエーテルP-400)2.63gと、ポリエチレングリコール(Sigma-Aldrich社製、平均分子量200)0.36gとを加えた。得られた混合液に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、JER828)1.58gを溶解させることによって、エポキシプレポリマー及びポロゲンの混合液を調製した。
【0125】
次に、この混合液に、トリエチレンテトラミン0.60gを添加することによって、エポキシプレポリマー、アミンモノマー及びポロゲンの混合液を調製した。この混合液において、アミンモノマーに含まれる1級アミノ基の活性水素の当量(A)に対する、エポキシプレポリマーに含まれるエポキシ基の当量(E)の比E/Aは、0.5であった。
【0126】
次に、卓上振とう器(エンゼルバイブレーターデジタル60Hz)を強度5に設定して、混合液を2分間振とうさせた。次に、この混合液を80℃の恒温槽に4時間静置させることによって硬化させた。これにより、アミノ基を有するポリマーPを含むブロック状の硬化体を得た。この硬化体をスクリュー管瓶から取り出し、約3mm角に裁断した。次に、硬化体を60℃のイソプロピルアルコール中に1時間浸漬させる操作を、液交換を行って2回繰り返した。さらに、硬化体を60℃の超純水中に1時間浸漬させる操作を、液交換を行って2回繰り返した。次に、硬化体を室温のメタノール中に1時間浸漬させた。硬化体を室温で12時間風乾させ、さらに60℃で8時間真空乾燥させることによって、比較例1の酸性ガス吸着材を得た。
【0127】
(比較例2~3)
原料の種類や配合量を表1に示すように変更したことを除き、比較例1と同じ方法によって、比較例2~3の酸性ガス吸着材を得た。
【0128】
[窒素元素の密度]
作製した酸性ガス吸着材について、上述した方法によって、窒素元素の密度dを測定した。CHN元素分析装置としては、Elementar製のVario EL IIIを用いた。
【0129】
[比表面積]
作製した酸性ガス吸着材について、JIS Z8830:2013の規定に準拠した方法によって、比表面積を測定した。測定には、比表面積測定装置(マイクロトラック・ベル社製、商品名「BERSORP-mini」)を用いた。
【0130】
[ガラス転移温度Tg]
作製した酸性ガス吸着材に含まれるポリマーについて、次の方法によってガラス転移温度Tgを測定した。まず、約5mgの酸性ガス吸着材を示差走査熱量計(TAインスツルメント社製、DSC2500)にセットした。この装置を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/minで30℃から200℃まで昇温し、その温度で1分間保持した。次に、降温速度10℃/minで-50℃まで冷却し、その温度で1分間保持した後、さらに、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温した。2度目の昇温時のDSC曲線において、比熱変化が現れる前の第1ベースラインと、比熱変化が現れた後の第2ベースラインと、比熱変化による屈曲部分のうち、傾きが最大となる点を通過する接線とを特定する。第1ベースライン及び接線の交点と、第2ベースライン及び接線の交点との中間温度をガラス転移温度Tgとして特定した。
【0131】
[二酸化炭素の吸着量]
作製した酸性ガス吸着材について、上述した方法によって、吸着量a1~a3及び脱離量b1~b2を測定した。さらに、この結果に基づいて、吸着量a1(mmol/g)に対する脱離量b1(mmol/g)の比率(50℃脱離率)と、吸着量a1(mmol/g)に対する脱離量b2(mmol/g)の比率(65℃脱離率)を算出した。
【0132】
[耐熱性試験]
作製した酸性ガス吸着材について、上述した方法によって、耐熱性試験を行い、二酸化炭素の吸着量a4を測定した。さらに、吸着量a1(mmol/g)に対する吸着量a4(mmol/g)の比率(維持率R1)を算出した。
【0133】
[耐湿熱性試験]
作製した酸性ガス吸着材について、上述した方法によって、耐湿熱性試験を行い、二酸化炭素の吸着量a5を測定した。さらに、吸着量a1(mmol/g)に対する吸着量a5(mmol/g)の比率(維持率R2)を算出した。
【0134】
【0135】
表1では、エポキシモノマー及びエポキシプレポリマーを単にエポキシ化合物と表現している。アミンモノマー及びアミンプレポリマーを単にアミン化合物と表現している。
【0136】
表1中の略称は以下のとおりである。
EDE:エチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、EX-810)
JER828:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、JER828)
PETG:ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル(昭和電工社製、ショウフリー(登録商標)PETG)
T-C:1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学社製、TETRAD-C)
T-X:N,N,N’,N’-テトラグリシジルメタキシレンジアミン(三菱ガス化学社製、TETRAD-X)
PEI300:ポリエチレンイミン(日本触媒社製、エポミンSP-003、重量平均分子量約300)
PEI1200:ポリエチレンイミン(日本触媒社製、エポミンSP-012、重量平均分子量約1200)
PEI1800:ポリエチレンイミン(日本触媒社製、エポミンSP-018、重量平均分子量約1800)
TETA:トリエチレンテトラミン(東ソー社製)
PB-500:ポリ(1,2-ブタンジオール)-6プロピレングリコール(日油社製、ユニオール(登録商標)PB-500)
P-400:ポリプロピレングリコール(ADEKA社製、アデカポリエーテルP-400)
DGP-700:ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル(日油社製、ユニルーブ(登録商標)DGP-700)
PB-700:ブチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体(日油社製、ユニオール(登録商標)PB-700)
PEG:ポリエチレングリコール(Sigma-Aldrich社製、平均分子量200)
【0137】
なお、実施例及び比較例で用いたアミン化合物の取り扱い上の安全性の指標を以下の表2に示す。
【0138】
【0139】
【0140】
表3からわかるとおり、実施例の酸性ガス吸着材は、窒素元素の密度dが大きく、吸着量a1及び脱離量b1も大きい値であった。実施例の酸性ガス吸着材は、比較的温和な条件で、酸性ガスの吸着及び脱離を行うことに適していると言える。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本実施形態の酸性ガス吸着材は、例えば、大気中の二酸化炭素を吸着することができる。