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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-17
(45)【発行日】2025-06-25
(54)【発明の名称】樹脂発泡体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/06 20060101AFI20250618BHJP
   C08L 31/04 20060101ALI20250618BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20250618BHJP
   C08L 57/02 20060101ALI20250618BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20250618BHJP
   C08L 23/02 20250101ALI20250618BHJP
【FI】
C08J9/06 CES
C08L31/04 S
C08L25/04
C08L57/02
C08L83/04
C08L23/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023569309
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(86)【国際出願番号】 JP2022045438
(87)【国際公開番号】W WO2023120237
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2024-04-08
(31)【優先権主張番号】P 2021206942
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 勇史
(72)【発明者】
【氏名】三輪 孟男
(72)【発明者】
【氏名】橋本 直樹
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-537031(JP,A)
【文献】特開2015-145339(JP,A)
【文献】特開2003-268146(JP,A)
【文献】特開2000-234034(JP,A)
【文献】特開2008-81888(JP,A)
【文献】特開2002-96433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/06
C08L 31/04
C08L 25/04
C08L 57/02
C08L 83/04
C08L 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン酢酸ビニル共重合体を少なくとも含有するポリオレフィン系樹脂と、石油樹脂及び/又はスチレン系樹脂と、を含む樹脂組成物を発泡してなる、樹脂発泡体であって、
JIS K6767に基づくセル数が70個/25mm以上100個/25mm以下であり、
JIS K6796に基づいて測定される前記樹脂発泡体のゲル分率が30%以上である、樹脂発泡体。
【請求項3】
エチレン酢酸ビニル共重合体を少なくとも含有するポリオレフィン系樹脂と、石油樹脂及び/又は水添スチレン系樹脂と、を含む樹脂組成物を発泡してなる、樹脂発泡体であって、
前記樹脂発泡体は、連続気泡樹脂発泡体であり、
前記樹脂発泡体の密度は、20kg/m以上100kg/m以下である、樹脂発泡体。
【請求項4】
樹脂発泡体を備える、シール材であって、
前記樹脂発泡体は、エチレン酢酸ビニル共重合体を少なくとも含有するポリオレフィン系樹脂と、石油樹脂及び/又はスチレン系樹脂と、を含む樹脂組成物を発泡してなる、シール材。
【請求項5】
エチレン酢酸ビニル共重合体を少なくとも含有するポリオレフィン系樹脂と、石油樹脂及び/又はスチレン系樹脂と、を含む樹脂組成物を発泡してなる、連続気泡樹脂発泡体の製造方法であって、
破泡工程を備える、連続気泡樹脂発泡体の製造方法。
【請求項6】
樹脂発泡体を備える、シール材又は吸着材であって、
前記樹脂発泡体は、エチレン酢酸ビニル共重合体を少なくとも含有するポリオレフィン系樹脂と、石油樹脂及び/又は水添スチレン系樹脂と、を含む樹脂組成物を発泡してなる、シール材又は吸着材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂発泡体に関する。
本出願は、2021年12月21日に出願された日本国特許出願2021-206942号に基づくものであって、それらの優先権の利益を主張するものであり、それらの特許出願の全ての内容が、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポリオレフィン系樹脂連続気泡発泡体が記載されている。ポリオレフィン系樹脂連続気泡発泡体は、エチレン酢酸ビニル共重合体80重量部、低密度ポリエチレン20重量部、ジクミルパーオキサイド0.6重量部、アゾジカルボンアミド系発泡剤20重量部、シリコーン系界面活性剤0.5重量部、破泡剤としてタルク10重量部を配合した樹脂組成物を添加して得た成形体を常圧下に加熱して架橋発泡させて得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-310654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の樹脂発泡体は、破泡性が悪く、柔軟性が不十分であった。また、樹脂発泡体のセルを微細化し、樹脂発泡体の用途に応じて、シール性等の種々の特性を向上することが求められている。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、樹脂発泡体の破泡性を向上するとともにセルの微細化を実現することを目的とする。本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
エチレン酢酸ビニル共重合体を少なくとも含有するポリオレフィン系樹脂と、石油樹脂及び/又はスチレン系樹脂と、を含む樹脂組成物を発泡してなる、樹脂発泡体。
【発明の効果】
【0007】
本開示の樹脂発泡体は、破泡性が良好であり、セルが微細化されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】止水性測定用サンプルを示す平面図である。
図2】止水性測定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
・前記石油樹脂及び/又はスチレン系樹脂は、前記ポリオレフィン系樹脂の合計100質量部に対して、2.0質量部以上20質量部以下含まれている、樹脂発泡体。
・前記樹脂組成物は、シリコーン樹脂を含む、樹脂発泡体。
・前記シリコーン樹脂は、前記ポリオレフィン系樹脂の合計100質量部に対して、0質量部を超えて10質量部以下含まれている、樹脂発泡体。
・JIS K6767に基づくセル数が50個/25mm以上である、樹脂発泡体。
【0010】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「-」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10-20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10-20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0011】
1.樹脂発泡体
本開示の樹脂発泡体は、エチレン酢酸ビニル共重合体を少なくとも含有するポリオレフィン系樹脂と、石油樹脂及び/又はスチレン系樹脂と、を含む樹脂組成物を発泡してなる。
【0012】
樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂と、石油樹脂及び/又はスチレン系樹脂と、シリコーン樹脂を含むことが好ましい。さらに、樹脂組成物は、発泡剤と、架橋剤(加硫剤)と、を含んでいてもよい。
組成物の各成分について説明する。
【0013】
(1)ポリオレフィン系樹脂
ポリオレフィン系樹脂は、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)を含有する他は、特に限定されない。ポリオレフィン系樹脂は、EVAのみを含有していてもよいが、EVAと、EVA以外のポリオレフィン系樹脂と、を含有することが好ましい。
【0014】
エチレン酢酸ビニル共重合体は、分子中にエチレンに由来する構造単位と、酢酸ビニルに由来する構造単位と、を含有する重合体である。
EVAにおける酢酸ビニルの含有量は、特に限定されない。酢酸ビニルの含有量は、柔軟性向上の観点から、EVAの質量を100質量%とした場合に、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。上記の酢酸ビニルの含有量は、過剰な架橋を防止する観点から、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。これらの観点から、上記の酢酸ビニルの含有量は、5質量%以上40質量%以下が好ましく、10質量%以上30質量%以下がより好ましい。なお、酢酸ビニルの含有量は、JIS K 6924-1によるものである。
【0015】
EVAのメルトフローレート(MFR)は、特に限定されない。EVAのMFRは、成形性の観点から、JIS K6924-1に準じて、190℃、2.16kg荷重で測定した値として、0.1g/10分-20g/10分であるものが好ましく、0.3g/10分-10g/10分であるものがより好ましく、0.5g/10分-5.0g/10分であるものが更に好ましい。
【0016】
EVAの含有量は、破泡工程における柔軟性の観点から、ポリオレフィン系樹脂の合計を100質量部とした場合に、0質量部を超えており、好ましくは40質量部以上であり、より好ましくは60質量部以上である。上記のEVAの含有量は、過剰な架橋を防止する観点から、100質量部以下であり、好ましくは90質量部以下であり、より好ましくは80質量部以下である。これらの観点から、上記のEVAの含有量は、0質量部を超えて100質量部以下であり、好ましくは40質量部以上90質量部以下であり、より好ましくは60質量部以上80質量部以下である。
【0017】
EVA以外のポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂(EVAを除く)、ポリプロピレン系樹脂、及びこれらの混合物等が挙げられる。EVA以外のポリオレフィン系樹脂は、マスターバッチの希釈樹脂として配合されてもよい。マスターバッチとしては、例えば、シリコーン樹脂含有のシリコーンマスターバッチ、発泡剤マスターバッチ等が挙げられる。
【0018】
ポリエチレン系樹脂(EVAを除く)としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-(4-メチル-1-ペンテン)共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体等を挙げることができる。これらのポリエチレン系樹脂は、一種を単独で用いてもよく、また、二種以上を組合せて用いてもよい。
【0019】
低密度ポリエチレンは、通常、エチレンの繰り返し単位をランダムに分岐結合してなるものである。低密度ポリエチレンは、成形性の観点から、JIS K7210-1に準拠して190℃、2.16kgfで測定したメルトフローレート(MFR)が0.1g/10分-20g/10分であるものが好ましく、0.3g/10分-10g/10分であるものがより好ましく、0.5g/10分-5.0g/10分であるものが更に好ましい。
【0020】
直鎖状低密度ポリエチレンは、長鎖分岐を持たないエチレンとα-オレフィンとの共重合体である。α-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ヘプテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン等を挙げることができる。
【0021】
ポリプロピレン系樹脂は、1分子中にプロピレンに由来する構造単位を含有する重合体であり、プロピレンを含有する単量体成分を重合してなるものである。ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン単独重合体であっても、プロピレンとプロピレン以外のオレフィン(但し、エチレンを除く)との共重合体であってもよい。また、ポリプロピレン系樹脂は、一種を単独で用いてもよく、また、二種以上を組合せて用いてもよい。
【0022】
ポリオレフィン系樹脂は、良好な発泡体を得るための架橋度・溶融粘度の調整、および破泡後のへたりを防止する観点から、EVAとポリエチレン系樹脂(EVAを除く)を含有することが好ましく、EVAと低密度ポリエチレンを含有することがより好ましい。
低密度ポリエチレンの含有量は、ポリオレフィン系樹脂の合計を100質量部とした場合に、好ましくは0質量部以上50質量部以下であり、より好ましくは5質量部以上40質量部以下であり、さらに好ましくは10質量部以上35質量部以下である。
【0023】
(2)石油樹脂
石油樹脂は、石油ナフサ等の熱分解により副生する不飽和炭化水素モノマーを含有する留分を重合して得られる。石油樹脂としては、例えば、脂肪族系石油樹脂(C5系石油樹脂)、芳香族系石油樹脂(C9系石油樹脂)、脂肪族/芳香族系石油樹脂(C5/C9系石油樹脂)、脂環族系石油樹脂(水添系石油樹脂)が挙げられる。脂肪族系石油樹脂(C5系石油樹脂)は、石油ナフサ分解油のC5留分の精製成分を重合して得られた合成樹脂である。芳香族系石油樹脂(C9系石油樹脂)は、石油ナフサ分解油のC9留分の精製成分を重合して得られた合成樹脂である。脂肪族/芳香族系石油樹脂(C5/C9系石油樹脂)は、上記C5留分とC9留分をブレンドした原料を共重合して得られた合成樹脂である。
石油樹脂は、ポリオレフィン系樹脂との相溶性の観点から、C9系水添石油樹脂であることが特に好ましい。
【0024】
石油樹脂は、臭気、色相、熱安定性、耐候性、及びポリオレフィン系樹脂との相溶性の観点から、水添石油樹脂であることが好ましい。水添石油樹脂は、石油樹脂中に存在する不飽和二重結合に対して、水素原子を付加させた樹脂である。水添系石油樹脂としては、水添率90%以上の完全水添型の水添石油樹脂と、水添率90%未満の部分水添型の水添石油樹脂のいずれも用いることができる。
石油樹脂の水素添加率(水添率)は特に制限されない。石油樹脂の水素添加率は、好適にセルを微細化する観点から、好ましくは5%以上であり、より好ましくは10%以上であり、さらに好ましくは25%以上であり、40%以上であってもよい。石油樹脂の水素添加率の上限値は特に限定されず、100%であってもよく、90%以下、80%以下、70%以下であってもよい。
【0025】
C9系水添石油樹脂の市販品は、例えば、アルコンP-90、アルコンP-100、アルコンP-115、アルコンP-125、アルコンP-140、アルコンM-90、アルコンM-100、アルコンM-115、アルコンM-135(荒川化学社製)などが挙げられる。C5系水添石油樹脂の市販品は、例えば、イーストタックC115W(イーストマンケミカル社製)などが挙げられる。C5/C9系水添石油樹脂の市販品は、ジシクロペンタジエン/芳香族共重合系水添石油樹脂の、例えば、アイマーブS-100、アイマーブS-110、アイマーブP-100、アイマーブP-125、アイマーブP-140(出光興産社製)などが挙げられる。C5/C9系未水添石油樹脂の市販品は、例えば、ペトロタック70(東ソー社製)などが挙げられる。
なお、上記の品名の末尾の数字は石油樹脂の軟化点(℃)を示すカタログ値である。石油樹脂の軟化点は、取り扱い性の観点から、例えば、70℃以上、80℃以上、90℃以上とすることができ、90℃より大きいことが好ましく、100℃以上、110℃以上がより好ましい。軟化点の上限は特に限定されないが、入手し易さの点から、例えば140℃以下であってもよい。軟化点の違いは樹脂発泡体の性状にあまり影響を及ぼさないが、軟化点が低い石油樹脂は、輸送時や保管時等に、粉状だったものが塊になるブロッキング等を生じ得る。その点、軟化点が上記の範囲であれば、石油樹脂の取り扱いが容易である。
石油樹脂は、一種を単独で用いてもよく、また、二種以上を組合せて用いてもよい。
【0026】
(3)スチレン系樹脂
スチレン系樹脂は、スチレン系単量体の1種または2種以上を付加重合することによって得ることができる。付加重合反応は公知の方法に従って行うことができ、例えば、リビングアニオン重合触媒を用いて溶液重合する方法、カチオン重合触媒を用いる方法、ラジカル重合開始剤を用いる方法などで付加重合することができる。スチレン系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-フェニルスチレンなどが挙げられる。
なお、スチレン系樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
スチレン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂との相溶性等の観点から、水添スチレン系樹脂であることが好ましい。水添スチレン系樹脂は、スチレン系樹脂を水素化して、芳香環の少なくとも一部を脂環に変化させたものである。
【0028】
水添スチレン系樹脂は、上記スチレン系樹脂中のスチレン系単量体由来の芳香環の少なくとも一部を水素添加して得ることができる。水素添加の方法は従来公知のもので特に限定されない。
例えば、公知の水素化触媒の存在下でスチレン系樹脂を溶剤に溶解した溶液に、水素を吹き込むなどの方法で接触させて行う。水素化触媒としては、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n-ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec-ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウムのごとき遷移金属化合物/アルキル金属化合物の組合せからなる均一系触媒;ニッケル、パラジウム、白金などの不均一系金属触媒;ニッケル/シリカ、ニッケル/けい藻土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/けい藻土、パラジウム/アルミナのごとき金属触媒を担体に担持してなる不均一系固体担持触媒などが挙げられる。
【0029】
水添スチレン系樹脂の水素添加率(水添率)は特に制限されない。水添スチレン系樹脂の水素添加率は、好適にセルを微細化する観点から、好ましくは5%以上であり、より好ましくは10%以上であり、さらに好ましくは25%以上であり、40%以上であってもよい。水添スチレン系樹脂の水素添加率の上限値は特に限定されず、100%であってもよく、95%以下、90%以下、80%以下、70%以下であってもよい。
【0030】
ここで、水添スチレン系樹脂の水添率は、IR(赤外線分光光度計)によるスチレン化合物由来の吸光度のピーク高さから、下記式により、算出される値である。
水添率(%)={(C-D)/C}×100
C:水素添加前の芳香環由来の吸光度ピーク高さ
D:水素添加後の芳香環由来の吸光度ピーク高さ
【0031】
スチレン系樹脂の分子量は、特に限定されない。スチレン系樹脂の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)として、好ましくは500-10000、より好ましくは800-5000、さらに好ましくは1000-4000である。
スチレン系樹脂の市販品は、水添スチレン系樹脂として、例えば、YSレジンSG-110、YSレジンSM-100、YSレジンSS-115(ヤスハラケミカル社製)が挙げられる。スチレン系樹脂の市販品は、未水添のスチレン系樹脂として、例えば、YSレジンSX-100(ヤスハラケミカル社製)が挙げられる。
【0032】
(4)石油樹脂及び/又はスチレン系樹脂の含有量
石油樹脂及び/又はスチレン系樹脂の含有量は、破泡性の向上及びセルの微細化の観点から、ポリオレフィン系樹脂の合計100質量部に対して、好ましくは2.0質量部以上であり、より好ましくは3.0質量部以上であり、さらに好ましくは4.0質量部以上である。上記の石油樹脂及び/又はスチレン系樹脂の含有量は、過度な破泡に起因して樹脂発泡体の復元性が失われる等の物性低下を抑制する観点から、好ましくは20質量部以下であり、より好ましくは15質量部以下であり、さらに好ましくは12質量部以下である。これらの観点から、上記の石油樹脂及び/又はスチレン系樹脂の含有量は、好ましくは2.0質量部以上20質量部以下であり、より好ましくは3.0質量部以上15質量部以下であり、さらに好ましくは4.0質量部以上12質量部以下である。また、上記の石油樹脂及び/又はスチレン系樹脂の含有量は、8質量部以下、6質量部以下であっても破泡性の向上及びセルの微細化を実現し得る。
なお、樹脂組成物が石油樹脂とスチレン系樹脂の一方の樹脂のみを含む場合には、石油樹脂及び/又はスチレン系樹脂の含有量とは、一方の樹脂の含有量を意味する。樹脂組成物が石油樹脂とスチレン系樹脂の双方を含む場合には、石油樹脂及び/又はスチレン系樹脂の含有量とは、石油樹脂とスチレン系樹脂の合計の含有量を意味する。
【0033】
(5)シリコーン樹脂
シリコーン樹脂は任意成分である。シリコーン樹脂としては、たとえば、ポリオルガノシロキサンなどを好適に用いることができる。ここで、ポリオルガノシロキサンは、シロキサン結合を主鎖とし側鎖に有機基を有するものであり、有機基としては、たとえば、メチル基、ビニル基、エチル基、プロピル基、フェニル基などが挙げられる。
【0034】
ポリオルガノシロキサンの具体例としては、ジメチルポリシロキサン、メチルエチルポリシロキサン、メチルオクチルポリシロキサン、メチルビニルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)ポリシロキサンなどが挙げられる。
【0035】
シリコーン樹脂は、シリコーンガム、シリコーンパウダー、シリコーンオイル、またはシリコーンレジンの形態で用いることができる。これらの中でも、ブルームが起こりにくくなるという観点から、シリコーンガムの形態で用いることが好ましい。
【0036】
シリコーン樹脂の含有量は、撥水性付与による止水性向上の観点から、ポリオレフィン系樹脂の合計100質量部に対して、好ましくは0質量部を超えており、より好ましくは1.0質量部以上であり、さらに好ましくは1.5質量部以上である。上記のシリコーン樹脂の含有量は、ポリオレフィン系樹脂中での分散性の観点から、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは7質量部以下であり、さらに好ましくは5質量部以下である。これらの観点から、上記のシリコーン樹脂の含有量は、好ましくは0質量部を超えて10質量部以下であり、より好ましくは1.0質量部以上7質量部以下であり、さらに好ましくは1.5質量部以上5質量部以下である。
【0037】
(6)発泡剤
発泡剤は、特に限定されないが、熱により分解してガスを発生する熱分解型発泡剤が好ましい。熱分解型発泡剤としては、有機系発泡剤又は無機系発泡剤を用いることができる。
【0038】
有機系発泡剤としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)、バリウムアゾジカルボキシレート、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾシクロヘキシルニトリル、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4、4'-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルセミカルバジド等を挙げることができる。
【0039】
無機系発泡剤としては、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ等を挙げることができる。
【0040】
発泡剤は、一種を単独で用いてもよく、また、二種以上を組合せて用いてもよい。上記の中では、微細な気泡を形成できることから、アゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物が好ましく、特に好ましいのは、アゾジカルボンアミド(ADCA)である。
【0041】
発泡剤は、ポリオレフィン系樹脂の合計100質量部に対して、好ましくは5-35質量部であり、より好ましくは10-30質量部であり、さらに好ましくは15-25質量部である。
【0042】
(7)架橋剤
架橋剤は特に限定されない。架橋剤としては、ジクミルパーオキサイド(DCP)、2,5-ジメチル-2,5-ビス-ターシャリーブチルパーオキシヘキサン、1,3-ビス-ターシャリーパーオキシ-イソプロピルベンゼン等の有機過酸化物を挙げることができる。
【0043】
(8)その他の成分
樹脂組成物は、必要に応じて、充填剤(炭酸カルシウム等)、発泡助剤(ステアリン酸亜鉛、尿素系発泡助剤等)、架橋助剤、酸化防止剤、顔料、可塑剤、熱膨張性粒子、機能付与剤(例えば、難燃剤)等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、一種を単独で用いてもよく、また、二種以上を組合せて用いてもよい。
また、組成物は、本開示の効果が著しく阻害されない範囲において、上述したポリマー以外の改質剤などのポリマー(以下、他のポリマーともいう)を含有していてもよい。
【0044】
2.樹脂発泡体の構成
樹脂発泡体の気泡構造は特に限定されない。樹脂発泡体は、連続気泡構造を有することが好ましい。連続気泡構造を有する樹脂発泡体は、後述するように、気泡膜を破裂させて樹脂発泡体の気泡を連通化させて得ることができる。樹脂発泡体が連続気泡構造を有する場合には、以下の樹脂発泡体の物性は、後述する破泡工程を経たサンプルを用いて測定する。破泡工程の条件は、求められる物性に応じて適宜変更できるが、以下の樹脂発泡体の物性は、例えば破泡工程において10回ロールを通したサンプルを用いて測定した測定値である。
【0045】
(1)セル数
本開示の樹脂発泡体は、JIS K6767:1999 附属書A(規定)セルの計数手順に記載されている手順に基づき計測したセル数が、好ましくは50個/25mm以上であり、より好ましくは60個/25mm以上であり、さらに好ましくは70個/25mm以上である。上記のセル数の上限は特に限定されないが、例えば、100個/25mm以下、90個/25mm以下、85個/25mm以下であってもよい。
本開示において、セルとは、発泡体中の空孔部分を意味する。セル数は、上記JIS K6767:1999に基づいてカウントされる、試料片の25mm当たりのセルの数である。
【0046】
(2)密度
樹脂発泡体の密度は、好ましくは20kg/m以上100kg/m以下であり、より好ましくは25kg/m以上50kg/m以下であり、さらに好ましくは30kg/m以上40kg/m以下である。上記の密度は、JIS K7222:2005に準じて測定される見掛け密度である。密度を上記の範囲とすることにより、樹脂発泡体を軽量化できる。
なお、以下の式に示すように、密度の逆数として発泡倍率を算出することができる。
発泡倍率=1000/A A:密度(kg/m
樹脂発泡体の発泡倍率は、好ましくは10倍-50倍であり、より好ましくは20倍-40倍であり、さらに好ましくは25倍-35倍である。
【0047】
(3)圧縮応力50%
樹脂発泡体の圧縮応力は、JIS K6767:1999における「圧縮応力-ひずみ」の試験方法(50%圧縮時、ISO 3386-1に対応)に準じて測定した場合に、好ましくは10kPa以下であり、より好ましくは8kPa以下であり、さらに好ましくは5.5kPa以下である。樹脂発泡体の圧縮応力の下限は特に限定されないが、通常、0.1kPa以上である。
なお、上記の樹脂発泡体の圧縮応力は、例えば、樹脂組成物における石油樹脂及び/又はスチレン系樹脂の配合割合、セルの連通化の程度等を変更して、調整できる。
【0048】
(4)圧縮永久ひずみ
樹脂発泡体の圧縮永久ひずみは、JIS K6767:1999における「圧縮永久ひずみ」の試験方法(圧縮終了後24時間後の厚さ測定、ISO 1856に対応)に準じて測定した場合に、好ましくは5.0%以下であり、より好ましくは3.0%以下であり、さらに好ましくは2.5%以下である。樹脂発泡体の圧縮永久ひずみの下限は特に限定されないが、通常、0.1%以上である。
【0049】
(5)ゲル分率
樹脂発泡体のゲル分率は、好ましくは30%以上であり、より好ましくは50%以上であり、さらに好ましくは70%以上である。ゲル分率の上限は、100%以下であり、例えば、95%以下、90%以下であってもよい。ゲル分率は、JIS K6796に準拠して測定される。ゲル分率の数値が高いほど、樹脂発泡体の架橋度が高いことを示す。
なお、上記のゲル分率は、架橋剤の種類、配合割合、電子線架橋の有無、電子線架橋の条件等を変更して、調整できる。
【0050】
(6)止水性及び用途
樹脂発泡体は、水シール材として好適である。水シール材として用いる場合には、樹脂発泡体は、例えば、打ち抜き等によって用途に応じた厚み及び形状(例えば紐状)とされて使用される。樹脂発泡体は、後述の100mmAq水圧の保持時間が30分以上であることが好ましく、9時間以上であることがより好ましく、24時間以上であることが更に好ましい。100mmAq水圧の保持時間は、10mm厚みの水シール材を図1に示す寸法でU字型に打抜いて作成した止水性測定用サンプル1を、図2に示すように2枚のアクリル樹脂板2、2間に所定の圧縮率(例えば、50%、60%、70%)の圧縮状態で挟み、その状態でU字型の試験用サンプル1内に100mAq水圧となるように水Wを注入し、100mmAq水圧を保持している時間である。
なお、樹脂発泡体の用途は、水シール材に限定されず、各種のシール材、緩衝材、断熱材、吸着剤、建築用部材、自動車用部材、日用資材等に広く利用可能である。
【0051】
3.樹脂発泡体の製造方法
樹脂発泡体の製造方法は特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂に発泡剤を加え、さらに必要に応じて、架橋剤やその他の添加剤を任意に加えて混合し、その後、発泡成形する方法を採用することができる。好ましくは、ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法は、以下の二段ブロック発泡法、一段ブロック発泡法、化学架橋を用いた長尺発泡法、電子線架橋を用いた長尺発泡法のいずれであってもよい。これらの中でも、比較的厚みの大きい樹脂発泡体を製造でき、厚みが大きいことで後述する破泡工程において圧縮率を高められる点でブロック発泡法が好ましく、二段ブロック発泡法がより好ましい。
【0052】
<二段ブロック発泡法>
二段ブロック発泡法は、例えば以下の工程(1)-(4)を備える。
(1)混練工程
前述した、ポリオレフィン系樹脂、石油樹脂及び/又はスチレン系樹脂、架橋剤、発泡剤、シリコーン樹脂(任意成分)、添加剤(任意成分)及び適宜必要とされる充填材や助剤を、押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの混練装置によって発泡剤の分解温度以下の温度で溶融混練し、発泡性樹脂組成物を得る。
(2)一次発泡工程
混練工程で得られた発泡性樹脂組成物を、一次金型の成形空間に充填し、加圧下で加熱する。これにより架橋剤の一部、又は架橋剤及び発泡剤の一部を分解させる。その後除圧し、発泡性樹脂組成物中間体を取り出す。加熱温度は、通常130-150℃、加熱時間は通常25-50分の範囲で決定される。
(3)二次発泡工程
一次発泡工程で得られた発泡性樹脂組成物中間体を、二次金型の成形空間に配置し、常圧下で加熱して二次発泡させた後、二次金型から樹脂発泡体を取り出す。
(4)破泡工程
二次発泡工程で得られた樹脂発泡体を、異方向へ回転する2本のロールの間に通過させる圧縮処理を行い、連続気泡樹脂発泡体を得る。
本工程は、異方向へ回転する2本のロールの間に樹脂発泡体を通過させる圧縮処理を行うことにより、セル膜を破裂させて樹脂発泡体のセルを連通化させる工程である。ここで、各圧縮処理時における圧縮条件(圧縮率、ロールの周速比)及び圧縮処理の回数は、セルの連通化の程度に応じて適宜設定できる。例えば、圧縮処理は、複数回、繰り返して行われることが好ましい。
【0053】
<一段ブロック発泡法>
一段ブロック発泡法は、例えば以下の工程(1)-(3)を備える。
(1)混練工程
前述した、ポリオレフィン系樹脂、石油樹脂及び/又はスチレン系樹脂、架橋剤、発泡剤、シリコーン樹脂(任意成分)、添加剤(任意成分)及び適宜必要とされる充填材や助剤を、押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの混練装置によって発泡剤の分解温度以下の温度で溶融混練し、発泡性樹脂組成物を得る。
(2)発泡工程
混練工程で得られた発泡性樹脂組成物を、金型内に充填して密封し、加圧した状態で所定時間加熱(発泡剤及び架橋剤の分解温度以上の温度で加熱)することにより、架橋剤の架橋及び発泡剤の分解を進行させ、その後、金型を開いて除圧することにより樹脂発泡体を得る。
(3)破泡工程
発泡工程で得られた樹脂発泡体を、異方向へ回転する2本のロールの間に通過させる圧縮処理を行い、連続気泡樹脂発泡体を得る。詳細については、二段ブロック発泡法における破泡工程の説明を援用する。
【0054】
<化学架橋を用いた長尺発泡法>
長尺発泡法は、例えば以下の工程(1)-(3)を備える。
(1)混練工程
前述した、ポリオレフィン系樹脂、石油樹脂及び/又はスチレン系樹脂、架橋剤、発泡剤、シリコーン樹脂(任意成分)、添加剤(任意成分)及び適宜必要とされる充填材や助剤を、単軸押出機、二軸押出機などで混練するとともにシート状に押出してシート等の所定形状の発泡性樹脂組成物(以下、母板という)を押出す。
(2)発泡工程
混練工程で得られた母板を、オーブン等の加熱装置中に運搬しながら、120-250℃(発泡剤及び架橋剤の分解温度以上)にて5-20分間加熱して発泡させることにより樹脂発泡体を得る。なお、オーブン等の加熱装置と運搬装置とが一体となった装置を用いると、当該母板を連続して処理することができるため好ましい。
(3)破泡工程
発泡工程で得られた樹脂発泡体を、異方向へ回転する2本のロールの間に通過させる圧縮処理を行い、連続気泡樹脂発泡体を得る。詳細については、二段ブロック発泡法における破泡工程の説明を援用する。
【0055】
<電子線架橋を用いた長尺発泡法>
電子線架橋を用いた長尺発泡法は、例えば以下の工程(1)-(4)を備える。
(1)混練工程
前述した、ポリオレフィン系樹脂、石油樹脂及び/又はスチレン系樹脂、発泡剤、シリコーン樹脂(任意成分)、架橋剤(任意成分)、添加剤(任意成分)及び適宜必要とされる充填材や助剤を、単軸押出機、二軸押出機などで混練するとともに、シート状等の所定形状の樹脂組成物(以下、母板という)を押出す。混練及び押出しは押出機により一括して行うことができる。均一な混練を行うためには、予め各成分を混合した後に押出しを行うのが好ましい。
(2)架橋工程
混練工程で得られた母板を架橋する。架橋方法としては、電子線、γ線等の電離放射線を架橋する方法を用いることができる。架橋方法としては、電子線照射による架橋(電子線架橋)が好ましい。電子線架橋によれば、発泡体に形成されるセルの微細化を実現でき、セル径を所定の範囲に制御できるからである。電子線架橋は、電子線照射機を用いて行うことができる。なお、必要に応じて、前述した有機過酸化物等の架橋剤を配合して化学架橋を併用してもよい。
電子線の照射線量は、4.0Mrad-8.0Mrad(40kGy-80kGy)が好ましい。照射線量が4.0Mrad未満であると、後述する発泡工程において良好に発泡しないことがある。照射線量が8.0Mradを超えると、架橋が強く、樹脂が硬くなるため、発泡時に割れが発生する懸念がある。電子線の加速電圧は、当該母板の厚み等に応じて適宜調整すれば良く、特に限定されない。
(3)発泡工程
架橋工程で得られた架橋済みの母板を、オーブン等の加熱装置中に運搬しながら、120-250℃(発泡剤及び架橋剤の分解温度以上)にて5-20分間加熱して発泡させることにより樹脂発泡体を得る。なお、オーブン等の加熱装置と運搬装置とが一体となった装置を用いると、当該母板を連続して処理することができるため好ましい。
(4)破泡工程
発泡工程で得られた樹脂発泡体を、異方向へ回転する2本のロールの間に通過させる圧縮処理を行い、連続気泡樹脂発泡体を得る。詳細については、二段ブロック発泡法における破泡工程の説明を援用する。
【0056】
4.本実施形態の作用効果
本実施形態の樹脂発泡体は、破泡性が良好であり、セルが微細化されている。一般的に、セルが微細化すると、セル膜を破裂させにくくなり、セルの破泡性は悪化する傾向がある。本実施形態では、樹脂組成物に石油樹脂及び/又はスチレン系樹脂が含まれることで、破泡性の向上と、セルの微細化を両立できたものと推測される。
より具体的には、本実施形態の樹脂発泡体は、破泡性が良好であるから、連続気泡構造とすることによって樹脂発泡体の柔軟性を好適に向上できる。このため、樹脂発泡体をシール材として用いた場合に、被着物との密着性が高くなり、シール性を向上できる。
さらに、本実施形態の樹脂発泡体は、セルが微細化されているから、樹脂発泡体をシール材として用いた場合に、被着物との間に隙間ができにくい。このため、樹脂発泡体をシール材として用いた場合に、シール材と被着物との間からの水やエア等の流入を抑制し、シール性を向上できる。
【0057】
また、樹脂組成物がシリコーン樹脂を含む場合には、止水性が良好である。シリコーン樹脂によって、樹脂発泡体の撥水性が高くなり、止水性が向上すると推測される。
【実施例
【0058】
以下、実施例により更に具体的に説明する。表1、表2において、「実験例11*」のように、「*」が付されている場合には、比較例であることを示している。実験例1-10、13-20は実施例であり、実験例11,12は比較例である。
【0059】
1.樹脂発泡体の作製
表1、表2に示す配合割合で、実験例の樹脂発泡体を作製した。表1、表2において、主要な原料の詳細を以下に示す。
【0060】
・ポリオレフィン系樹脂1:エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)(酢酸ビニル含有量19重量%、密度941kg/m、MFR2.5g/10分)
・ポリオレフィン系樹脂2:低密度ポリエチレン(LDPE)(密度924kg/m、MFR3.0g/10分)
・石油樹脂1:C5/C9系水添石油樹脂(完全水添型)、出光興産社製、アイマーブP-100(軟化点100℃)
・石油樹脂2:C5/C9系水添石油樹脂(部分水添型)、出光興産社製、アイマーブS-100(軟化点100℃)
・石油樹脂3:C9系水添石油樹脂(完全水添型)、荒川化学社製、アルコンP-90(軟化点90℃)
・石油樹脂4:C9系水添石油樹脂(部分水添型)、荒川化学社製、アルコンM-90(軟化点90℃)
・石油樹脂5:C9系水添石油樹脂(部分水添型)、荒川化学社製、アルコンM-100(軟化点100℃)
・石油樹脂6:C9系水添石油樹脂(部分水添型)、荒川化学社製、アルコンM-115(軟化点115℃)
・スチレン系樹脂1:水添スチレン系樹脂(C8)(部分水添型)、ヤスハラケミカル社製、YSレジンSM-100(軟化点94.0℃)
・スチレン系樹脂2:水添スチレン系樹脂(C8)(部分水添型)、ヤスハラケミカル社製、YSレジンSG-110(軟化点106.5℃)
・スチレン系樹脂3:スチレン系樹脂(C8)(未水添型)、ヤスハラケミカル社製、YSレジンSX-100(軟化点101.0℃)
・石油樹脂7:C5/C9系石油樹脂(未水添型)、東ソー社製、ペトロタック70(軟化点70℃)
・シリコーンマスターバッチ(シリコーン樹脂/ポリオレフィン系樹脂3):低密度ポリエチレン(LDPE)と、ジメチルポリシロキサンからなるシリコーンガムとを1:1(質量比)の割合でマスターバッチとしたもの、信越化学工業社製、X-22-2125H
・発泡剤マスターバッチ(ADCA/ポリオレフィン系樹脂4):アゾジカルボンアミド(ADCA)と、低密度ポリエチレン(LDPE)とを3:2(質量比)の割合でマスターバッチとしたもの
・充填剤:重質炭酸カルシウム(平均粒子径(D50)3.4μm)
・架橋剤:ジクミルパーオキサイド(DCP)
・発泡助剤:ステアリン酸亜鉛を含む発泡助剤
【0061】
なお、表1、表2において、配合割合はポリオレフィン系樹脂の合計を100質量部とした場合の配合割合(質量部)を表す。「シリコーンマスターバッチ」については、「シリコーン樹脂(シリコーンガム)」と「ポリオレフィン系樹脂3(LDPE)」の配合割合を括弧内に示している。「発泡剤マスターバッチ」については、「ADCA」と「ポリオレフィン系樹脂4(LDPE)」の配合割合を括弧内に示している。
【0062】
表1、表2に記載の配合割合で原料を混合し、実施形態に記載の二段ブロック発泡法により樹脂発泡体を得た。破泡工程では、異方向へ回転する2本のロールの間に成形体を通過させる圧縮処理を10回行った。得られた樹脂発泡体を10mmにスライスして、後述の評価方法で評価した。
【0063】
2.評価方法
(1)密度(見掛け密度)
密度(kg/m)は、JIS K7222:2005に基づく見掛け密度として測定した。
(2)圧縮応力50%
圧縮応力50%(kPa)は、JIS K6767:1999における「圧縮応力-ひずみ」の試験方法(50%圧縮時、ISO 3386-1に対応)に準拠して測定した。圧縮応力50%が低いことは、樹脂発泡体の柔軟性が高いことの一つの指標となる。
(3)圧縮永久ひずみ
圧縮永久ひずみ(%)は、JIS K6767:1999における「圧縮永久ひずみ」の試験方法(圧縮終了後24時間後の厚さ測定、ISO 1856に対応)に準拠して測定した。
(4)ゲル分率
ゲル分率(%)は、JIS K6796に準拠して測定した。
(5)セル数
セル数(個)は、JIS K6767:1999に基づいて、試料片の25mm当たりのセルの数をカウントした。
(6)止水性
実施形態に記載の評価方法で、樹脂発泡体における100mmAq水圧の保持時間を測定した。測定時の樹脂発泡体の圧縮率は、50%とした。100mmAq水圧の保持時間に基づき、樹脂発泡体の止水性を以下の基準で評価した。
合格 :100mmAq水圧の保持時間が24時間以上である。
不合格:100mmAq水圧の保持時間が24時間未満である。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
3.結果
結果を表1、表2に併記する。
実験例1-10、13-20は、下記の要件(a)-(c)を満たしている。これに対して実験例11,12は、要件(b)を満たしていない。実験例1-10、13-20は、実験例11,12よりも圧縮応力50%が低く、セル数が多かった。また、実験例1-10、13-18は、「密度」、「圧縮応力50%」、「圧縮永久ひずみ」、「ゲル分率」が良好な物性値を示していた。
・要件(a):樹脂組成物は、エチレン酢酸ビニル共重合体を少なくとも含有するポリオレフィン系樹脂を含む。
・要件(b):樹脂組成物は、石油樹脂及び/又はスチレン系樹脂を含む。
・要件(c):樹脂組成物を発泡してなる。
【0067】
実験例1-10のうち実験例1,2,9,10,14,15,16は、下記の要件(d)を満たしている。これに対して実験例11,12は、要件(d)を満たしていない。実験例1,2,9,10,14,15,16は、止水性の評価が「合格」であり、止水性に優れていた。
・要件(d):樹脂組成物は、シリコーン樹脂を含む。
【0068】
4.実施例の効果
以上の実施例によれば、破泡性が良好であり、セルが微細化された樹脂発泡体を提供できる。
【0069】
本開示は上記で詳述した実施形態に限定されず、様々な変形又は変更が可能である。
図1
図2