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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-17
(45)【発行日】2025-06-25
(54)【発明の名称】組成物、加硫物、及び、加硫成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20250618BHJP
   C08K 5/25 20060101ALI20250618BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20250618BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20250618BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K5/25
C08K3/22
C08L63/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023574087
(86)(22)【出願日】2023-01-13
(86)【国際出願番号】 JP2023000743
(87)【国際公開番号】W WO2023136318
(87)【国際公開日】2023-07-20
【審査請求日】2024-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2022004399
(32)【優先日】2022-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】富澤 聖耶
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-011201(JP,A)
【文献】特開2000-186171(JP,A)
【文献】特開2000-344899(JP,A)
【文献】特開平08-245842(JP,A)
【文献】特公昭49-016106(JP,B1)
【文献】特開2008-106206(JP,A)
【文献】特開2008-001810(JP,A)
【文献】特開2007-177209(JP,A)
【文献】特開昭64-056752(JP,A)
【文献】国際公開第2013/035697(WO,A1)
【文献】特開2001-226546(JP,A)
【文献】特開2016-210905(JP,A)
【文献】特開2021-095493(JP,A)
【文献】国際公開第2020/044899(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第119039676(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111253638(CN,A)
【文献】特開2002-317084(JP,A)
【文献】特開2003-73514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K3/00-13/08;C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和ニトリル単量体単位の含有率が25質量%未満であるクロロプレン系ゴム、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、及び、天然ゴムから選ばれる少なくとも一種である成分R、並びに、可塑剤Pを含む組成物であって、
前記組成物は、前記成分R100質量部に対して、可塑剤Pを0.1~25質量部を含有し、
可塑剤Pは、重量平均分子量が150~800であり、
可塑剤Pは、脂環式エポキシ樹脂P1、及び、エステル基を有しない可塑剤P2のうち少なくとも1種であ
前記組成物は、前記成分R100質量部に対して、ハイドロタルサイトを0.1~15質量部含有し、
前記組成物は、前記成分R100質量部に対して、有機過酸化物を0.3~1.8質量部含有する、
組成物。
【請求項2】
前記不飽和ニトリル単量体単位がアクリロニトリルに由来する単量体単位である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記成分R100質量部に対して、充填材を20~80質量部含有する、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記エステル基を有しない可塑剤P2が、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、及びビスフェノールF型液状エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも一種の可塑剤を含む、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記エステル基を有しない可塑剤P2 100質量部に対して、カルボン酸ヒドラジド、及びカルボン酸ジヒドラジドから選ばれる少なくとも一種の化合物を1質量部以上含有する、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の組成物の加硫物。
【請求項7】
請求項に記載の加硫物を含む加硫成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムやエラストマーを含む組成物、加硫物及び加硫成形体に関する。
例えば、クロロプレン系ゴムは、優れた機械的強度・耐候性・耐薬品性・耐熱性・耐寒性・耐油性を有するため、一般産業用の伝動ベルトやコンベアベルト、自動車用空気バネ、防振ゴム、ホース、ワイパー、浸漬製品、シール部品、接着剤、ブーツ、ゴム引布、ゴムロールなどの材料として広く使用されている。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、硫黄変性クロロプレンゴム、加硫促進剤、酸化亜鉛及び酸化マグネシウムからなり、上記加硫促進剤の配合量が0.1~5重量部であり、酸化亜鉛の配合量及び酸化マグネシウムの配合量が、それぞれの配合量とムーニースコーチ時間tとの予め求めた関係式により特定される、硫黄変性クロロプレンゴム組成物に係る発明が開示されている。
また、特許文献2には、ムーニー粘度ML(1+4)100℃が20~80であり、特定の構造の官能基を有する、クロロプレン単量体と不飽和ニトリル化合物の共重合体に係る発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-209522号公報
【文献】国際公開第2020/044899号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のゴムやエラストマーを含む組成物は、該組成物の加硫成形体における耐酸性及び耐水性に改善の余地があった。また、組成物の未加硫物のムーニー粘度、スコーチタイム、並びに、及び組成物の加硫物の耐酸性、耐水性、機械的特性、耐寒性のすべてのバランスに優れる組成物を得ることは困難であった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、従来のゴムやエラストマーを含む組成物では困難であった、組成物の未加硫物のムーニー粘度、スコーチタイム、並びに、及び組成物の加硫成形体の耐酸性、耐水性、機械的特性、耐寒性のすべてのバランスに優れる組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、不飽和ニトリル単量体単位の含有率が25質量%未満であるクロロプレン系ゴム、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、及び、天然ゴムから選ばれる少なくとも一種である成分R、並びに、可塑剤Pを含む組成物であって、前記組成物は、前記成分R100質量部に対して、可塑剤Pを0.1~25質量部を含有し、可塑剤Pは、重量平均分子量が150~800であり、可塑剤Pは、脂環式エポキシ樹脂P1、及び、エステル基を有しない可塑剤P2のうち少なくとも1種である、組成物が提供される。
【0007】
本発明者は、鋭意検討を行ったところ、ゴムやエラストマーを含む組成物に、特定の構造を有する可塑剤Pを含有させ、可塑剤Pの含有量と、可塑剤Pの分子量を規定することで、組成物の未加硫物のムーニー粘度、スコーチタイム、並びに、及び該組成物の加硫成形体の耐酸性、耐水性、機械的特性、耐寒性のすべてのバランスに優れる組成物となることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
本発明の別の観点によれば、前記記載の組成物の加硫物が提供される。
また、本発明の別の観点によれば、前記記載の加硫物を用いた加硫成形体が提供される。
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可
能である。
[1]不飽和ニトリル単量体単位の含有率が25質量%未満であるクロロプレン系ゴム、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、及び、天然ゴムから選ばれる少なくとも一種である成分R、並びに、可塑剤Pを含む組成物であって、前記組成物は、前記成分R100質量部に対して、可塑剤Pを0.1~25質量部を含有し、可塑剤Pは、重量平均分子量が150~800であり、可塑剤Pは、脂環式エポキシ樹脂P1、及び、エステル基を有しない可塑剤P2のうち少なくとも1種である、組成物。
[2]前記不飽和ニトリル単量体単位がアクリロニトリルに由来する単量体単位である、[1]に記載の組成物。
[3]前記成分R100質量部に対して、充填材を20~80質量部含有する、[1]または[2]に記載の組成物。
[4]前記成分R100質量部に対して、ハイドロタルサイトを0.1~15質量部含有する、[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]前記エステル基を有しない可塑剤P2が、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、及びビスフェノールF型液状エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも一種の可塑剤を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]前記エステル基を有しない可塑剤P2 100質量部に対して、カルボン酸ヒドラジド、及びカルボン酸ジヒドラジドから選ばれる少なくとも一種の化合物を1質量部以上含有する、[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[7][1]~[6]のいずれかに記載の組成物の加硫物。
[8][7]に記載の加硫物を用いた加硫成形体。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る組成物は、組成物の未加硫物のムーニー粘度、スコーチタイムに優れ、加工性に優れる。さらに、本発明に係る組成物によれば、耐酸性、耐水性、機械的特性、耐寒性のすべてのバランスに優れる加硫物を得ることができる。従来の組成物からなる加硫物は、耐酸性及び耐水性に改善の余地があったところ、本発明に係る組成物によれば、未加硫物における加工性や加硫成形体の機械的特性及び耐寒性を維持しつつ、優れた耐酸性及び耐水性を有する加硫物を得ることができるため、これらの特性が必要とされる様々な部材として用いることができる。具体的には、本発明の一実施形態に係る加硫成形体は、例えば、一般産業用の伝動ベルトやコンベアベルト、自動車用空気バネ、防振ゴム、ホース、ワイパー、浸漬製品、シール部品、接着剤、ブーツ、ゴム引布、ゴムロールなどの材料として、好適に用いることができる。特には、耐酸性及び/又は耐水性が要求される環境で使用される部材として用いることができる。一例として、本発明の一実施形態に係る加硫成形体は、特に耐酸性が求められる鉄鋼用ロール用として、好適に用いることができる。また、本発明の一実施形態に係る加硫成形体は、特に耐水性が求められる製紙用ロールとして、好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を例示して本発明について詳細な説明をする。本発明は、これらの記載によりなんら限定されるものではない。以下に示す本発明の実施形態の各特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0012】
1.組成物
本発明に係る組成物は、不飽和ニトリル単量体単位の含有率が25質量%未満であるクロロプレン系ゴム、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(H-NBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロスルフォン化ポリエチレン(CSM)、天然ゴム(NR)、から選ばれる少なくとも一種である成分R、並びに、可塑剤Pを含む。また、本発明に係る組成物は、成分R100質量部に対して、特定の構造を有する可塑剤Pを0.1~25質量部を含有し、可塑剤Pは、重量平均分子量が150~800である。本発明に係る組成物は、不飽和ニトリル単量体単位の含有率が25質量%未満であるクロロプレン系ゴム、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(H-NBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロスルフォン化ポリエチレン(CSM)、天然ゴム(NR)、から選ばれる少なくとも一種である成分Rと、可塑剤Pを含有し、特定の構造を有する可塑剤Pの含有量と、可塑剤Pの分子量を規定することで、組成物の未加硫物のムーニー粘度、スコーチタイム、並びに、及び該組成物の加硫成形体の耐酸性、耐水性、機械的特性、耐寒性のすべてのバランスに優れる組成物となる。
【0013】
1.1 成分R
本発明に係る組成物は、不飽和ニトリル単量体単位の含有率が25質量%未満であるクロロプレン系ゴム、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(H-NBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロスルフォン化ポリエチレン(CSM)、天然ゴム(NR)、から選ばれる少なくとも一種である成分Rを含む。
1.1.1 クロロプレン系ゴム
本発明に係るクロロプレン系ゴムは、クロロプレン(2-クロロ-1,3-ブタジエン)を単量体単位(単量体単位=構造単位)として有するクロロプレン系重合体を含むゴムを示す。クロロプレン系重合体としては、クロロプレンの単独重合体、クロロプレンの共重合体(クロロプレンと、クロロプレンに共重合可能な単量体との共重合体)等が挙げられる。クロロプレン系重合体のポリマー構造は、特に限定されるものではない。
【0014】
なお、市販品の2-クロロ-1,3ブタジエンには不純物として少量の1-クロロ-1,3-ブタジエンが含まれる場合がある。このような少量の1-クロロ-1,3-ブタジエンを含む2-クロロ-1,3ブタジエンを、本実施形態のクロロプレン単量体として用いることもできる。
【0015】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系ゴムは、不飽和ニトリル単量体単位の含有率が25質量%未満であるクロロプレン系ゴムを含む。
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系ゴムは、当該ゴムを100質量%としたとき、不飽和ニトリル単量体単位の含有率が25質量%未満であり、不飽和ニトリル単量体単位の含有率が1質量%以上、25質量%未満であることが好ましい。
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系ゴムにおける不飽和ニトリル単量体単位の含有率は、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24質量%、25質量%未満であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。不飽和ニトリル単量体単位の含有率を25質量%未満とすることにより、得られる組成物は十分な耐寒性を有するものとなる。また、特には、不飽和ニトリル単量体単位の含有率を1質量%以上とすることにより、得られる組成物は十分な耐油性を有するものとなり、かつ、引張強度、及び耐寒性のバランスに優れる加硫成形体を得ることができる。
【0016】
不飽和ニトリルとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリル等が挙げられる。不飽和ニトリルは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。不飽和ニトリルは、優れた成形性が得られやすい観点、並びに、加硫成形体において優れた破断強度、破断伸び、硬さ、引き裂き強度、耐油性が得られやすい観点から、アクリロニトリルを含むことが好ましい。
【0017】
クロロプレン系ゴムに含まれる不飽和ニトリル単量体単位の含有量は、クロロプレン系ゴム中の窒素原子の含有量から算出することができる。具体的には、元素分析装置(スミグラフ220F:株式会社住化分析センター製)を用いて100mgのクロロプレン系ゴムにおける窒素原子の含有量を測定し、不飽和ニトリル単量体由来の構造単位の含有量を算出できる。元素分析の測定は次の条件で行うことができる。例えば、電気炉温度として反応炉900℃、還元炉600℃、カラム温度70℃、検出器温度100℃に設定し、燃焼用ガスとして酸素を0.2mL/min、キャリアーガスとしてヘリウムを80mL/minフローする。検量線は、窒素含有量が既知のアスパラギン酸(10.52%)を標準物質として用いて作成できる。
【0018】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系ゴムは、成分Rを100質量%としたとき、クロロプレン単量体単位を60~100質量%含むことが好ましい。成分Rにおけるクロロプレン単量体単位の含有率は、例えば、60、65、70、75、80、85、90、95、99、100質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。クロロプレン単量体単位の含有率を上記数値範囲内とすることにより、硬度、引張強度、及び耐寒性のバランスに優れる成形体を得ることができる組成物とすることができる。
【0019】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系ゴムは、クロロプレン単量体及び不飽和ニトリル単量体以外の単量体単位を有するものとすることもできる。クロロプレン単量体及び不飽和ニトリル単量体以外の単量体単位としては、クロロプレン単量体、又は、クロロプレン単量体及び不飽和ニトリル単量体と共重合可能であれば特に制限はないが、(メタ)アクリル酸のエステル類((メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(2-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等)、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、エチレン、スチレン、硫黄等が挙げられる。
【0020】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系ゴムは、クロロプレン系ゴムを100質量%としたとき、クロロプレン単量体及び不飽和ニトリル単量体以外の単量体単位を0~20質量%含むものとすることができる。クロロプレン系ゴムにおけるクロロプレン単量体及び不飽和ニトリル単量体以外の単量体単位の含有率は、例えば、0、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。クロロプレン単量体及び不飽和ニトリル単量体以外の単量体の共重合量をこの範囲に調整することで、得られる組成物の特性を損なわずに、これら単量体を共重合させたことによる効果を発現することができる。
また、本発明の一実施形態に係るクロロプレン系ゴムは、クロロプレン単量体単位及び不飽和ニトリル単量体単位のみからなるものとすることもでき、クロロプレン単量体単位のみからなるものとすることもできる。
【0021】
本発明に係る組成物は、クロロプレン系ゴムを、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の一実施形態に係る組成物が、2種以上のクロロプレン系ゴムを含む場合、組成物に含まれる2種以上のクロロプレン系ゴムに含まれる不飽和ニトリル単量体単位の合計含有率が25質量%未満であることが好ましい。
【0022】
本発明に係るクロロプレン系ゴムに含まれるクロロプレン系重合体(クロロプレンの単独重合体、クロロプレンの共重合体等)は、硫黄変性クロロプレン重合体、メルカプタン変性クロロプレン重合体、キサントゲン変性クロロプレン重合体、ジチオカルボナート系クロロプレン重合体、トリチオカルボナート系クロロプレン重合体、カルバメート系クロロプレン重合体などであってよい。
【0023】
クロロプレン系ゴムの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び、分子量分布(分子量の多分散度、Mw/Mn)は、優れた硬度、引張強度、及び耐寒性がバランスよく得られやすい観点から、下記の範囲であってよい。
【0024】
クロロプレン系ゴムの重量平均分子量は、10×10g/mol以上、50×10g/mol以上、100×10g/mol以上、300×10g/mol以上、400×10g/mol以上、又は、450×10g/mol以上であってよい。クロロプレン系ゴムの重量平均分子量は、5000×10g/mol以下、3000×10g/mol以下、2000×10g/mol以下、1000×10g/mol以下、800×10g/mol以下、又は、500×10g/mol以下であってよい。これらの観点から、クロロプレン系ゴムの重量平均分子量は、10×10~5000×10g/mol、100×10~2000×10g/mol、又は、300×10~1000×10g/molであってよい。
【0025】
クロロプレン系ゴムの数平均分子量は、1×10g/mol以上、5×10g/mol以上、10×10g/mol以上、50×10g/mol以上、100×10g/mol以上、又は、130×10g/mol以上であってよい。クロロプレン系ゴムの数平均分子量は、1000×10g/mol以下、800×10g/mol以下、500×10g/mol以下、300×10g/mol以下、200×10g/mol以下、又は、150×10g/mol以下であってよい。これらの観点から、クロロプレン系ゴムの数平均分子量は、1×10~1000×10g/mol、10×10~500×10g/mol、又は、50×10~300×10g/molであってよい。
【0026】
クロロプレン系ゴムの分子量分布は、1.0以上、1.5以上、2.0以上、2.5以上、3.0以上、3.2以上、又は、3.4以上であってよい。クロロプレン系ゴムの分子量分布は、10以下、8.0以下、5.0以下、4.0以下、3.8以下、3.5以下、又は、3.4以下であってよい。これらの観点から、クロロプレン系ゴムの分子量分布は、1.0~10、2.0~5.0、又は、2.5~4.0であってよい。
【0027】
クロロプレン系ゴムの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレン換算することで得ることが可能であり、具体的には、実施例に記載の方法により測定できる。
【0028】
1.1.2 クロロプレン系ゴムの製造方法
本発明に係るクロロプレン系ゴムの製造方法は特に限定されないが、クロロプレン単量体を含む原料単量体を乳化重合する乳化重合工程を含む製造方法によって得ることができる。
本発明の一実施形態に係る乳化重合工程では、クロロプレン単量体、又は、クロロプレン単量体及び不飽和ニトリル単量体を含む単量体を、乳化剤や分散剤や触媒や連鎖移動剤等を適宜に用いて乳化重合させ、目的とする最終転化率に達した際に重合停止剤を添加してクロロプレン単量体単位を含むクロロプレン系重合体を含むラテックスを得ることができる。
次に、乳化重合工程により得られた重合液から、未反応単量体の除去を行うことができる。その方法は、特に限定されるものではなく、例えば、スチームストリッピング法が挙げられる。
その後、pHを調整し、常法の凍結凝固、水洗、熱風乾燥などの工程を経て、クロロプレン系重合体を含むクロロプレン系ゴムを得ることができる。
【0029】
乳化重合する場合に用いる重合開始剤としては、特に制限はなく、クロロプレンの乳化重合に一般に用いられる公知の重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、t-ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物などが挙げられる。
【0030】
乳化重合する場合に用いる乳化剤としては、特に制限はなく、クロロプレンの乳化重合に一般に用いられる公知の乳化剤を用いることができる。乳化剤としては、炭素数が6~22の飽和又は不飽和の脂肪酸のアルカリ金属塩、ロジン酸又は不均化ロジン酸のアルカリ金属塩(例えばロジン酸カリウム)、β-ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物のアルカリ金属塩(例えばナトリウム塩)等が挙げられる。
【0031】
乳化重合する場合に用いる分子量調整剤としては、特に制限はなく、クロロプレンの乳化重合に一般に用いられる公知の分子量調整剤を用いることができ、例えば、メルカプタン系化合物、キサントゲン系化合物、ジチオカルボナート系化合物、トリチオカルボナート系化合物及びカルバメート系化合物がある。本発明の一実施形態に係るクロロプレン系ゴムの分子量調整剤としては、キサントゲン系化合物、ジチオカルボナート系化合物、トリチオカルボナート系化合物及びカルバメート系化合物を好適に使用できる。
【0032】
重合温度及び単量体の最終転化率は特に制限するものではないが、重合温度は、例えば0~50℃又は10~50℃であってよい。単量体の最終転化率が40~95質量%の範囲に入るように重合を行ってよい。最終転化率を調整するためには、所望する転化率になった時に、重合反応を停止させる重合停止剤を添加して重合を停止させればよい。
【0033】
重合停止剤としては、特に制限はなく、クロロプレンの乳化重合に一般に用いられる公知の重合停止剤を用いることができる。重合停止剤としては、フェノチアジン(チオジフェニルアミン)、4-t-ブチルカテコール、2,2-メチレンビス-4-メチル-6-t-ブチルフェノール等が挙げられる。
【0034】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系ゴムは、例えば、スチームストリッピング法によって未反応の単量体を除去した後、上記ラテックスのpHを調整し、常法の凍結凝固、水洗、熱風乾燥等の工程を経て得ることができる。
【0035】
クロロプレン系ゴムは、分子量調整剤の種類によりメルカプタン変性タイプ、キサントゲン変性タイプ、硫黄変性タイプ、ジチオカルボナート系タイプ、トリチオカルボナート系タイプ及びカルバメート系タイプに分類される。
【0036】
1.1.3 その他の成分R
本発明に係る組成物は、クロロプレン系ゴムの他に、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(H-NBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロスルフォン化ポリエチレン(CSM)、天然ゴム(NR)、から選ばれる少なくとも一種である成分Rを用いてもよい。
【0037】
水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(H-NBR)、及び、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)は、中高ニトリルタイプのものとできる。水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(H-NBR)、及び、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)は、結合アクリロニトリル量が、例えば、30、35、40、45、50%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0038】
1.2 可塑剤P
本発明に係る組成物は、可塑剤Pを含み、可塑剤は、脂環式エポキシ樹脂P1、及びエステル基を有しない可塑剤P2のうち少なくとも1種である。
可塑剤P2は、重量平均分子量が150~800であり、可塑剤として機能する、すなわち、未加硫物における流動性を向上させる機能を有する化合物であれば特に制限はない。可塑剤は、加硫物における柔軟性を向上させることもできる。可塑剤Pは、また、加硫時に硬化することにより、加硫物における引張強度等の機械的特性を向上させる、硬化型可塑剤としての機能を有していてもよい。
エステル基を有しない可塑剤P2は、構造中にエステル基を有しない化合物である。
なお、エステルは、炭酸エステル、リン酸エステル、硫酸エステル等を含む。
【0039】
可塑剤Pは、重量平均分子量が150~800であり、例えば、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。重量平均分子量を上記上限以下とすることにより、未加硫物のムーニー粘度及びスコーチタイムの上昇を防ぐことができ、加工性を維持することができる。また、適度な粘度及び可塑剤としての機能を有する観点から、重量平均分子量を上記下限以上とすることが好ましい。
【0040】
可塑剤Pは、25℃で液状であることが好ましく、25℃での粘度が500cP以上であることが好ましい。25℃での粘度は、例えば、例えば、500、1000、1500、2000、2500、3000、4000、5000、7000、10000、15000、20000cPであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0041】
エステル基を有しない可塑剤P2としては、具体的には、エポキシ系化合物、テルペン系化合物等を挙げることができる。
エポキシ系化合物としては、エポキシ基を有し、エステル基を有しない、分子量150~800の化合物であれば特に制限はなく、例えば、ビスフェノール構造を有するエポキシ樹脂、エポキシ基を有するジエン系重合体(クロロプレン系重合体、水素化NBR、NBRに該当する化合物を除く)を挙げることができる。
【0042】
ビスフェノール構造を有するエポキシ樹脂は、ビスフェノールと、エピクロロヒドリンとの縮合反応により得られるものとできる。ビスフェノール構造を有するエポキシ樹脂としては、ビスフェノールAに由来する構造を含むビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールFに由来する構造を含むビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、及びビスフェノールF型液状エポキシ樹脂がより好ましい。一例としては、以下の構造を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0043】
【化1】
(式中のnは、下記の分子量の規定を満たす任意の整数である。)
【0044】
エポキシ基を有するジエン系重合体としては、エポキシ基を有する、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の脂肪族共役ジエン重合体;スチレン-ブタジエン重合体(SBR)等の芳香族ビニル・脂肪族共役ジエン共重合体;水素化SBRなどが挙げられる。エポキシ基を有するジエン系重合体は、例えば、下記式で表される化合物を含み得る。
【0045】
【化2】
(式中のm及びnは、下記の分子量の規定を満たす任意の整数である。)
【0046】
テルペン系化合物としては、テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水添テルペンフェノール樹脂を挙げることができる。
【0047】
脂環式エポキシ樹脂P1としては、具体的には、グリシジルエステル系脂環式エポキシ系化合物、エポキシ化脂肪酸アルキルエステル等を挙げることができる。
【0048】
脂環式エポキシ樹脂P1としては、下記式(1)、式(2)、及び、式(3)で表される化合物を挙げることができる。
【0049】
【化3】
【0050】
式(3)において、Xは、任意の有機基とすることができ、例えば、任意で置換基を有する炭化水素基とすることでき、一例としては、任意で置換基を有するアルキル基、及び、アルケニル基とすることができる。また、炭化水素基は、カルボニル基、エーテル基(エーテル結合)エポキシ基及びこれらが複数個連結した基を含むことができる。
【0051】
【化4】
【0052】
式(4)においてYは、任意の単結合又は連結基(1以上の原子を有する2価の基)を示す。連結基としては、例えば、2価の炭化水素基(例えば、アルキレン基)、カルボニル基、エーテル基(エーテル結合)、エポキシ基及びこれらが複数個連結した基等が挙げられる。
【0053】
【化5】
【0054】
式(5)において、Z及びZは、それぞれ独立に任意の有機基とすることができ、例えば、任意で置換基を有する炭化水素基とすることでき、一例としては、任意で置換基を有するアルキル基、及び、アルケニル基とすることができる。また、炭化水素基は、カルボニル基、エーテル基(エーテル結合)エポキシ基及びこれらが複数個連結した基を含むことができる。
【0055】
脂環式エポキシ樹脂P1としては、例えば、3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン、4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジ2-エチルヘキシル、4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジ(9,10-エポキシステアリル)等を挙げることができる。
【0056】
可塑剤Pは、上記した化合物を、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。可塑剤Pは、脂環式エポキシ樹脂、並びに、エステル基を有しないエポキシ系化合物及びテルペン系化合物のうち、少なくとも1つを含むことが好ましく、エポキシ系化合物(脂環式エポキシ樹脂及び/又はエステル基を有しないエポキシ系化合物)を含むことがより好ましい。エステル基を有しない可塑剤P2は、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、及びビスフェノールF型液状エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0057】
本発明の一実施形態に係る組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、脂環式エポキシ樹脂以外の、エステル基を有する可塑剤(すなわち、可塑剤P以外の可塑剤)を含むこともできる。また、本発明の一実施形態に係る組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、エステル基を有しない、重量平均分子量150未満又は重量平均分子量が800超である可塑剤や、脂環式エポキシ樹脂であって、重量平均分子量150未満又は重量平均分子量が800超である可塑剤を含むことができる。組成物に含まれる可塑剤を100質量%としたとき、可塑剤P以外の可塑剤の合計の含有率は、例えば、0、5、10、15、20、25、30質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。本発明の一実施形態に係る組成物は、脂環式エポキシ樹脂以外の、エステル基を有する可塑剤を含まないこともできる。また、本発明の一実施形態に係る組成物は、可塑剤P以外の可塑剤を含まないことができる。
【0058】
エステル基を有する可塑剤としては、フタレート系可塑剤、DUP(フタル酸ジウンデシル)、DOP(フタル酸ジオクチル)、DINP(フタル酸ジイソノニル)、DOTP(テレフタル酸ジオクチル)、DOS(セバシン酸ジオクチル)、DBS(セバシン酸ジブチル)、DOA(アジピン酸ジオクチル)、DINCH(1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル)、TOP(トリオクチルフォスフェート)、TBP(トリブチルフォスフェート)等のエステル系可塑剤、エーテルエステル系化合物、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート等のリン酸エステル基を有する化合物、エステル基を有するチオエーテル系可塑剤を挙げることができる。なお、本発明において可塑剤は、植物油、石油系添加物等のオイル類を含まないものとすることができる。
【0059】
本発明に係る組成物は、成分R100質量部に対して、可塑剤Pを0.1~25質量部含有する。成分R100質量部に対する可塑剤Pの含有率は、例えば、0.1、0.5、1、5、10、15、20、25質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。含有率を上記数値範囲内とすることによって、未加硫物のムーニー粘度及びスコーチタイム、並びに、加硫物の耐水性、耐酸性、引張強度、及び耐寒性をバランス良く向上させることができる組成物となる。
なお、本発明の一実施形態に係る組成物が、可塑剤P以外の可塑剤を含む場合、成分R100質量部に対する、可塑剤P及び可塑剤P以外の可塑剤の合計の含有率が上記上限以下であることが好ましい。
【0060】
1.3 硬化剤
本発明の一実施形態に係る組成物は、硬化剤を含むことができ、硬化剤は、カルボン酸ヒドラジド及びカルボン酸ジヒドラジドからなる群から選択されるいずれか1つを含むこともできる。具体的には、サリチル酸ヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、テトラヒドロフタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等が挙げられる。本発明の一実施形態に係る硬化剤は、カルボン酸ジヒドラジドを含むことがより好ましい。本発明の一実施形態に係る硬化剤は、イソフタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、及び、ドデカン二酸ジヒドラジドからなる群から選択されるいずれか1つを含むことがより好ましい。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
本発明の一実施形態に係る組成物は、前記エステル基を有しない、分子量150~800の可塑剤100質量部に対して、カルボン酸ヒドラジド、及びカルボン酸ジヒドラジドから選ばれる少なくとも一種の化合物を1質量部以上含有することが好ましい。本発明の一実施形態に係る組成物は、エステル基を有しない分子量150~800の可塑剤100質量部に対して、カルボン酸ヒドラジド及びカルボン酸ジヒドラジドを合計で、例えば、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40質量部含むことができ、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。上記数値範囲内とすることで、未加硫物のムーニー粘度の上昇及びスコーチタイムの短縮を抑えつつ、より加硫物の機械的特性を向上させることができる。本発明の一実施形態に係る組成物は、組成物に含まれるエポキシ系化合物100質量部に対して、カルボン酸ヒドラジド及びカルボン酸ジヒドラジドを合計で、上記の数値範囲内含んでいても良い。
【0062】
1.4 加硫剤
本発明に係る組成物は、加硫剤を含むことができる。
加硫剤の種類は、本発明の効果を損なわなければ特に限定されない。加硫剤は、クロロプレン系ゴムの加硫に用いることができる加硫剤であることが好ましい。加硫剤は、1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。
加硫剤としては、硫黄、金属酸化物、有機過酸化物を挙げることができる。
【0063】
金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉛、四酸化三鉛、三酸化鉄、二酸化チタン、酸化カルシウム等を挙げることができる。金属酸化物は、酸化亜鉛を含むことが好ましく、酸化亜鉛であることがより好ましい。
【0064】
有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ジイソブチリルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4-t-ブチルシクロへキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジコハク酸パーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)シクロへキシル)プロパン、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート、2,2-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ブタン、t-ブチルパーオキシベンゾエート、n-ブチル4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)バレレート、1,4-ビス[(t-ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼン、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、p-メンタンヒドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイドなどがある。この中でも、ジクミルパーオキサイド、1,4-ビス[(t-ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼン、t-ブチルα-クミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、特に好ましくは1,4-ビス[(t-ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼンである。
【0065】
本発明に係る組成物は、加工安全性が確保され、良好な加硫物を得ることができる観点から、組成物に含まれる成分Rを100質量部としたとき、加硫剤を3~15質量部含むことが好ましい。加硫剤の含有量は、組成物に含まれる成分Rを100質量部としたとき、例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0066】
本発明の一実施形態に係る組成物は、金属酸化物及び有機過酸化物を含むものとすることができる。有機過酸化物を用いる場合、有機過酸化物の添加量は、クロロプレン系ゴム100質量部に対して、0.3~1.8質量部とすることができる。有機過酸化物の添加量は、例えば、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8質量部とすることができ、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0067】
1.5 ハイドロタルサイト
本発明の一実施形態に係る組成物はハイドロタルサイトを含むことができる。
ハイドロタルサイトとしては、下記式で表されるものを用いることができる。
[M2+ 1-x3+ (OH)x+[An-x/n・mHO]x-
【0068】
上記式において、
2+:Mg2+、Zn2+などから選ばれる少なくとも一つの2価金属イオン
3+:Al3+、Fe3+などから選ばれる少なくとも一つの3価金属イオン
n-:Co 2-、Cl、NO 2-などから選ばれる少なくとも一つのn型アニオン
X:0<X≦0.33とすることができる。
【0069】
ハイドロタルサイトとしては、Mg4.3Al(OH)12.6CO・3.5HO、MgZnAl(OH)12CO・3HO、Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO、Mg4.5Al(OH)13CO、MgAl(OH)12CO・3.5HO、MgAl(OH)16CO・4HO、MgAl(OH)14CO・4HO、MgAl(OH)10CO・1.7HOなどがあげられ、特に好ましくは、Mg4.3Al(OH)12.6CO・3.5HO、MgZnAl(OH)12CO・3HOである。
【0070】
ハイドロタルサイトを用いる場合、ハイドロタルサイトの添加量は、クロロプレン系ゴム100質量部に対して、0.1~15質量部とすることができる。ハイドロタルサイトの添加量は、例えば、0.1、0.2、0.3、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。ハイドロタルサイトは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
1.6 オイル類
本発明に係る組成物は、オイル類を含むことができる。オイル類は、菜種油、アマニ油、ヒマシ油、ヤシ油などの植物油、アロマ系オイル、ナフテン系オイル、潤滑油、プロセスオイル、パラフィン、流動パラフィン、ワセリン、石油アスファルトなどの石油系などを含むことができる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
本発明の一実施形態に係る組成物は、組成物に含まれる成分Rを100質量部としたとき、オイル類を0~50質量部含むことができる。例えば、0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0073】
1.7 充填材(補強材)
本発明に係る組成物は、充填材を含むことができる。
充填材・補強材としては、SAF、ISAF、HAF、EPC、XCF、FEF、GPF、HMF、SRFなどのファーネスカーボンブラック、親水性カーボンブラックなどの改質カーボンブラック、チャンネルブラック、油煙ブラック、FT、MTなどのサーマルカーボン、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウムを挙げることができる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
本発明の一実施形態に係る組成物は、組成物に含まれる成分Rを100質量部としたとき、充填材・補強材又はシリカを20~80質量部含むことができ、35~65質量部含むことが好ましい。充填材・補強材又はシリカの含有量は、例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
本発明の一実施形態に係る組成物は、充填材の含有率を上記数値範囲内含有することにより、さらに加硫物・加硫成形体の硬度を向上させることができる。
【0075】
1.8 シランカップリング剤
本発明の一実施形態に係る組成物は、シランカップリング剤を含むことができる。
シランカップリング剤としては、特に制限はなく、市販の組成物に使用されているものが使用でき、例えば、ビニル系カップリング剤、エポキシ系カップリング剤、スチリル系カップリング剤、メタクリル系カップリング剤、アクリル系カップリング剤、アミノ系カップリング剤、ポリスルフィド系カップリング剤、メルカプト系カップリング剤がある。特に、耐スコーチ性や補強効果の観点から架橋時の高温条件下で反応が開始されるビニル系カップリング剤、メタクリル系カップリング剤、アクリル系カップリング剤が好ましい。
【0076】
シランカップリング剤としては、具体的には、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス-(3-トリメトキシンリルプロピル)テトラスルフィド、ビス-(3-メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス-(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス-(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3-ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリロイルモノスルフィド、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジクロロシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン、トリエチルクロロシランなどが挙げられる。
【0077】
本発明の一実施形態に係る組成物は、組成物に含まれる成分Rを100質量部としたとき、シランカップリング剤を0.5~10質量部含むことができ、例えば、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記のシランカップリング剤を含み、また、シランカップリング剤の含有率を上記数値範囲内とすることにより、ゴムやエラストマー中へのシリカフィラーの分散性やゴム等とエポキシ系化合物とシリカフィラー間の補強効果を向上させ、かつ、スコーチの発生を抑制することができる。
【0078】
1.9 滑剤・加工助剤
本発明に係る組成物は、さらに滑剤・加工助剤を含むこともできる。滑剤・加工助剤は、主に、組成物がロールや成形金型、押出機のスクリューなどから剥離しやすくなるようにするなど、加工性を向上させるために添加する。滑剤・加工助剤としては、ステアリン酸等の脂肪酸、ポリエチレン等のパラフィン系加工助剤、脂肪酸アミド、ワセリン、ファクチス等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明に係る組成物は、組成物に含まれる成分Rを100質量部としたとき、滑剤・加工助剤を1~15質量部含むことができ、1~10質量部とすることもできる。滑剤・加工助剤の含有量は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0079】
1.10 加硫促進剤
本発明に係る組成物は、加硫促進剤を含むことができ、組成物に含まれる成分Rを100質量部としたとき、加硫促進剤を0.3~5.0質量部含むことができる。加硫促進剤の含有量は、例えば、0.3、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。なお、本発明に係る組成物は、加硫促進剤を含まないものとすることもできる。
【0080】
加硫促進剤の種類は、本発明の効果を損なわなければ特に限定されない。加硫促進剤は、クロロプレン系ゴムの加硫に用いることができる加硫促進剤であることが好ましい。加硫促進剤は、1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。
加硫促進剤としては、チウラム系、ジチオカルバミン酸塩系、チオウレア系、グアニジン系、キサントゲン酸塩系、チアゾール系等が挙げられる。
【0081】
チウラム系の加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。
ジチオカルバミン酸塩系の加硫促進剤としては、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、N-エチル-N-フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジエチルジチオカルバミン酸テルル等が挙げられる。
チオウレア系の加硫促進剤としては、エチレンチオウレア、ジエチルチオウレア(N,N'-ジエチルチオウレア)、トリメチルチオウレア、ジフェニルチオウレア(N,N'-ジフェニルチオウレア)、1、3-トリメチレン-2-チオウレア等のチオウレア化合物が挙げられる。
グアニジン系の加硫促進剤としては、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩等が挙げられる。
キサントゲン酸塩系の加硫促進剤としては、ブチルキサントゲン酸亜鉛、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛等が挙げられる。
チアゾール系の加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2-(4'-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、N-シクロヘキシルベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド等が挙げられる。
これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0082】
1.11 その他
本発明に係る組成物は、上記した成分に加え、老化防止剤、酸化防止剤、難燃剤、加硫遅延剤等の成分を、本発明の効果を阻害しない範囲でさらに含むことができる。
老化防止剤及び酸化防止剤としては、オゾン老化防止剤、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、アクリレート系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、カルバミン酸金属塩、ワックス、リン系老化防止剤、硫黄系老化防止剤などを挙げることができる。イミダゾール系老化防止剤としては、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトメチルベンゾイミダゾール及び2-メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩を挙げることができる。
本発明に係る組成物は、組成物に含まれる成分Rを100質量部としたとき、老化防止剤及び酸化防止剤を0.1~10質量部含むことができる。
【0083】
2.組成物の製造方法
本発明の一実施形態に係る組成物は、成分R、可塑剤P、及び必要とされるその他の成分を加硫温度以下の温度で混練することで得られる。原料成分を混練する装置としては、従来公知のミキサー、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、オープンロールなどの混練装置を挙げることができる。
【0084】
3.組成物の特性
(未加硫物のムーニー粘度)
本発明の一実施形態に係る組成物は、JIS K 6300-1に基づき、L型ロータの予熱時間1分、回転時間4分、試験温度100℃にて測定したムーニー粘度が、100以下であることが好ましく、90未満であることがより好ましく、80未満であることが更により好ましい。
ムーニー粘度は、例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。ムーニー粘度は、100未満であってもよい。
【0085】
(未加硫物のスコーチタイム)
本発明の一実施形態に係る組成物は、JIS K 6300-1に基づき、125℃でムーニースコーチ試験により測定されるスコーチタイムが、7分以上であることが好ましく、9分以上であることがより好ましく、11分以上であることが更により好ましい。
スコーチタイムは、例えば、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20分であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0086】
(加硫成形体の引張強度)
本発明の一実施形態に係る組成物は、JIS K6299に基づき成形して得た加硫物の、JIS K 6251に基づき測定した引張強度が、21.0MPa以上であることが好ましく、22.5MPa以上であることがより好ましく、24.0MPa以上であることが更により好ましい。引張強度は、例えば、21.0、22.0、23.0、24.0、25.0、26.0、27.0、28.0、29.0、30.0MPaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0087】
(加硫成形体の耐寒性)
本発明の一実施形態に係る組成物は、JIS K 6261に基づき、ゲーマンねじり試験により求めた、組成物をJIS K6299に基づき加硫した加硫物のT10が-10℃未満であることが好ましく、-20℃未満であることがより好ましく、-30℃未満であることが更により好ましい。T10は、例えば、-40、-35、-30、-25、-20、-15℃、-10℃未満であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0088】
(加硫成形体の耐水性)
本発明の一実施形態に係る組成物は、JIS K6299に基づき成形して得た加硫物を、70℃の水に144時間浸漬し、JIS K 6258に基づき算出される体積変化率ΔVが、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8%及び9%未満であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0089】
(加硫成形体の耐酸性)
本発明の一実施形態に係る組成物は、JIS K6299に基づき成形して得た加硫物を、70℃の10%塩酸に144時間浸漬し、JIS K 6258に基づき算出される体積変化率ΔVが、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9%及び10%未満であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0090】
(加硫成形体の耐アルカリ性)
本発明の一実施形態に係る組成物は、JIS K6299に基づき成形して得た加硫物を、70℃の10%塩酸に144時間浸漬し、JIS K 6258に基づき算出される体積変化率ΔVが、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9%及び10%未満であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0091】
(加硫成形体の耐油性)
本発明の一実施形態に係る組成物は、JIS K6299に基づき成形して得た加硫物を、130℃の試験油(自動車用高潤滑油、ASTM No.3、IRM 903 oil)に72時間浸漬し、JIS K 6258に基づき算出される体積変化率ΔVが、例えば、0、5、10、15、20、25、30、35%及び40%未満であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0092】
(耐摩耗性(1000回運転時の体積変化))
本発明の一実施形態に係る組成物は、得られた組成物を、160℃×40分の条件でプレス加硫して、直径63.6mm、厚さ12.7mm、中心孔12.7mmの加硫成形体を作製し、得られた加硫成形体について、JIS K 6264-2:2005に準拠してアクロン摩耗試験(1000回摩耗、ΔV、単位:mm)を行った際の1000回摩耗が、例えば、例えば、0、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100mm、及び110mm未満であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0093】
4.未加硫成形体、加硫物及び加硫成形体
本実施形態に係る未加硫成形体は、本実施形態に係る組成物を用いており、本実施形態に係る組成物(未加硫状態)の成形体(成形品)である。本実施形態に係る未加硫成形体の製造方法は、本実施形態に係る組成物(未加硫状態)を成形する工程を備える。本実施形態に係る未加硫成形体は、本実施形態に係る組成物(未加硫状態)からなる。
【0094】
本実施形態に係る加硫物は、本実施形態に係る組成物の加硫物である。本実施形態に係る加硫物の製造方法は、本実施形態に係る組成物を加硫する工程を備える。
【0095】
本実施形態に係る加硫成形体は、本実施形態に係る組成物の加硫成形体である。本実施形態に係る加硫成形体は、本実施形態に係る加硫物を用いており、本実施形態に係る加硫物の成形体(成形品)である。本実施形態に係る加硫成形体は、本実施形態に係る加硫物からなる。
【0096】
本実施形態に係る加硫成形体は、本実施形態に係る組成物(未加硫状態)を加硫して得られる加硫物を成形することにより得ることが可能であり、本実施形態に係る組成物(未加硫状態)を成形して得られる成形体を加硫することにより得ることもできる。本実施形態に係る加硫成形体は、本実施形態に係る組成物を成形後又は成形時に加硫することにより得ることができる。本実施形態に係る加硫成形体の製造方法は、本実施形態に係る加硫物を成形する工程、又は、本実施形態に係る未加硫成形体を加硫する工程を備える。
【0097】
本実施形態に係る未加硫成形体、加硫物及び加硫成形体は、建築物、構築物、船舶、鉄道、炭鉱、自動車等の各種工業分野のゴム部品として利用可能である。本発明に係る組成物は、未加硫物のムーニー粘度に優れ、スコーチタイムが十分に長いため加工性に優れ、加硫物の耐酸性、耐水性、機械的特性及び耐寒性をバランス良く有するため、これらの特性が必要とされる様々な部材として用いることができる。さらに本発明の一実施形態に係る組成物によれば、耐アルカリ性、耐油性、耐摩耗性に優れる加硫物を得ることもでき、これらの特性が必要とされる様々な部材として用いることができる。本発明の一実施形態に係る組成物は、建築物、構築物、船舶、鉄道、炭鉱、自動車等の各種工業分野のゴム部品として利用可能であり、自動車用ゴム部材(例えば自動車用シール材)、ホース材、ゴム型物、ガスケット、ゴムロール、産業用ケーブル、産業用コンベアベルト、スポンジ等のゴム部品として利用することができる。特には、耐酸性及び/又は耐水性が要求される環境で使用される部材として用いることができる。一例として、本発明の一実施形態に係る組成物は、ゴムロールとして好適に用いることができる。一例として、本発明の一実施形態に係る加硫成形体は、特に耐酸性が求められる鉄鋼用ロール用として、好適に用いることができる。また、本発明の一実施形態に係る加硫成形体は、特に耐水性が求められる製紙用ロールとして、好適に用いることができる。
【0098】
(自動車用ゴム部材)
自動車用ゴム部材は、ガスケット、オイルシール及びパッキンなどがあり、機械や装置において、液体や気体の漏れや雨水や埃などのごみや異物が内部に侵入するのを防ぐ部品である。具体的には、固定用途に使われるガスケットと、運動部分・可動部分に使用されるオイルシール及びパッキンがある。シール部分がボルトなどで固定されているガスケットでは、Oリングやゴムシートなどのソフトガスケットに対して、目的に応じた各種材料が使用されている。また、パッキンは、ポンプやモーターの軸、バルブの可動部のような回転部分、ピストンのような往復運動部分、カプラーの接続部、水道蛇口の止水部などに使われる。本発明の組成物は、未加硫物の加工性を維持しつつ、これら部材の耐酸性、耐水性、機械的特性、耐寒性を高めることができる。これにより、従来の組成物では困難であった、過酷な環境下で使用されるシールを製造することが可能である。
【0099】
(ホース材)
ホース材は、屈曲可能な管であり、具体的には、送水用、送油用、送気用、蒸気用、油圧用高・低圧ホースなどがある。本発明の組成物は、未加硫物の加工性を維持しつつ、ホース材の耐酸性、耐水性、機械的特性、耐寒性を高めることが可能である。これにより、例えば、従来の組成物では困難であった、過酷な環境下で使用されるホース材を製造することができる。
【0100】
(ゴム型物)
ゴム型物は、防振ゴム、制振材、ブーツなどがある。防振ゴム及び制振材は、振動の伝達波及を防止するゴムのことであり、具体的には、自動車や各種車両用のエンジン駆動時の振動を吸収して騒音を防止するためのトーショナルダンパー、エンジンマウント、マフラーハンガーなどがある。本発明の組成物は、防振ゴム及び制振材の耐酸性、耐水性、機械的特性、耐寒性を高めることが可能である。これにより、従来の組成物では困難であった、過酷な環境下でも使用できる防振ゴム及び制振材を製造することができる。
また、ブーツは、一端から他端に向けて外径が次第に大きくなる蛇腹状をなす部材であり、具体的には、自動車駆動系などの駆動部を保護するための等速ジョイントカバー用ブーツ、ボールジョイントカバー用ブーツ(ダストカバーブーツ)、ラックアンドピニオンギア用ブーツなどがある。本発明の組成物は、ブーツの耐酸性、耐水性、機械的特性、耐寒性を高めることが可能である。これにより、従来の組成物よりも過酷な環境下で使用されるブーツを製造することが可能である。
【0101】
(ガスケットなど)
ガスケットや、オイルシール及びパッキンは、機械や装置において、液体や気体の漏れや雨水や埃などのごみや異物が内部に侵入するのを防ぐ部品であり、具体的には、固定用途に使われるガスケットと、運動部分・可動部分に使用されるオイルシール及びパッキンがある。シール部分がボルトなどで固定されているガスケットでは、Oリングやゴムシートなどのソフトガスケットに対して、目的に応じた各種材料が使用されている。また、パッキンは、ポンプやモーターの軸、バルブの可動部のような回転部分、ピストンのような往復運動部分、カプラーの接続部、水道蛇口の止水部などに使われる。本発明の組成物は、これら部材の耐酸性、耐水性、機械的特性、耐寒性を高めることができる。これにより、従来の組成物では困難であった過酷な環境下でも使用できるシールを製造することが可能である。
【0102】
(ゴムロール)
ゴムロールは、鉄芯などの金属製の芯をゴムで接着被覆することによって製造されるものであり、一般に金属鉄芯にゴムシートを渦巻き状に巻き付けて製造される。ゴムロールには、製紙、各種金属製造、フィルム製造、印刷、一般産業用、籾摺りなどの農機具用、食品加工用などの種々の用途の要求特性に応じて、NBRやEPDM、CRなどのゴム材料が用いられている。CRは搬送する物体の摩擦に耐え得る良好な機械的強度を有していることから、幅広いゴムロール用途に使用されている。一方で、製鉄用、製紙用の工業用材料や製品の製造時など、油や水と接触する環境下で用いられるゴムロールには耐油性や耐水性が不十分であり、改良が求められている。また、金、銀、ニッケル、クロム及び亜鉛など、製品にメッキ処理を施す際や、製品を洗浄する工程において酸やアルカリに晒される場合もあり、これらに対する耐性も求められている。さらに、重量物を搬送するゴムロールは荷重により変形するという課題があり、改良を求められている。本発明の組成物は、ゴムロールの耐水性や耐酸性、引張強度を高めることが可能である。これにより、従来の組成物では困難であった水や酸に浸漬または接触する工程で用いられるゴムロールを製造することが可能である。
【0103】
(産業用ケーブル)
産業用ケーブルは、電気や光信号を伝送するための線状の部材である。銅や銅合金などの良導体や光ファイバなどを絶縁性の被覆層で被覆したものであり、その構造や設置個所によって、多岐にわたる産業用ケーブルが製造されている。本発明の組成物は、産業用ケーブルの耐酸性、耐水性、機械的特性、耐寒性を高めることが可能である。これにより、従来の組成物では困難であった過酷な環境下でも使用できる産業用ケーブルを製造することができる。
【0104】
(産業用コンベアベルト)
産業用コンベアベルトは、ゴム製、樹脂製、金属製のベルトがあり、多種多様な使用方法に合わせて選定されている。これらの中でもゴム製のコンベアベルトは、安価で多用されているが、特に搬送物との摩擦や衝突の多い環境下で使用すると、劣化による破損などが発生していた。本発明の組成物は、産業用コンベアベルトの耐酸性、耐水性、機械的特性、耐寒性を高めることが可能である。これにより、従来の組成物では困難であった過酷な環境下で用いられる産業用コンベアベルトを製造することができる。
【0105】
(スポンジ)
スポンジは、内部に細かい孔が無数に空いた多孔質の物質であり、具体的には、防振部材、スポンジシール部品、ウェットスーツ、靴などに利用されている。本発明の組成物は、スポンジの耐酸性、耐水性、機械的特性、耐寒性を高めることが可能である。また、クロロプレン系ゴムを用いているためスポンジの難燃性を高めることも可能である。これにより、従来の組成物では困難であった過酷な環境下下で使用されるスポンジや、難燃性に優れたスポンジを製造することができる。さらに、発泡剤の含有量などの調整により得られるスポンジの硬度も適宜調整可能である。
【0106】
本実施形態に係る組成物(未加硫状態)及び加硫物を成形する方法としては、プレス成形、押出成形、カレンダー成形等が挙げられる。組成物を加硫する温度は、組成物の組成に合わせて適宜設定すればよく、140~220℃、又は、160~190℃であってよい。組成物を加硫する加硫時間は、組成物の組成、未加硫成形体の形状等によって適宜設定すればよい。
【実施例
【0107】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0108】
(実施例1)
<クロロプレン系ゴム(R-2)の製造方法>
加熱冷却ジャケット及び攪拌機を備えた内容積3Lの重合缶に、クロロプレン(単量体)24質量部、アクリロニトリル(単量体)24質量部、ジエチルキサントゲンジスルフィド0.5質量部、純水200質量部、ロジン酸カリウム(ハリマ化成株式会社製)5.00質量部、水酸化ナトリウム0.40質量部、及び、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製)2.0質量部を添加した。次に、重合開始剤として過硫酸カリウム0.1質量部を添加した後、重合温度40℃にて窒素気流下で乳化重合を行った。上述のクロロプレンは、重合開始20秒後から分添し、重合開始からの10秒間の冷媒の熱量変化を元に分添流量を電磁弁で調整し、以降10秒毎に流量を再調節することで連続的に行った。クロロプレン及びアクリロニトリルの合計量に対する重合率が50%となった時点で、重合停止剤であるフェノチアジン0.02質量部を加えて重合を停止させた。その後、減圧下で反応溶液中の未反応の単量体を除去することでクロロプレン-アクリロニトリル共重合体を含む、クロロプレン系ラテックス(R-2)を得た。
【0109】
クロロプレン系ラテックスの上述の重合率[%]は、クロロプレン系ラテックスを風乾したときの乾燥質量から算出した。具体的には、下記式(A)より計算した。式中、「固形分濃度」とは、サンプリングしたクロロプレン系ラテックス2gを130℃で加熱して、溶媒(水)、揮発性薬品、原料等の揮発成分を除いた固形分の濃度[質量%]である。「総仕込み量」とは、重合開始からある時刻までに重合缶に仕込んだ原料、試薬及び溶媒(水)の総量[g]である。「蒸発残分」とは、重合開始からある時刻までに仕込んだ薬品及び原料のうち、130℃の条件下で揮発せずにポリマーと共に固形分として残留する薬品の質量[g]である。「単量体の仕込み量」とは、重合缶に初期に仕込んだ単量体、及び、重合開始からある時刻までに分添した単量体の量の合計[g]である。なお、ここでいう「単量体」とは、クロロプレン及びアクリロニトリルの合計量である。
重合率={[(総仕込み量×固形分濃度/100)-蒸発残分]/単量体の仕込み量}×100 ・・・(A)
【0110】
上述のクロロプレン系ラテックス(R-2)のpHを、酢酸又は水酸化ナトリウムを用いて7.0に調整した後、-20℃に冷やした金属板上でクロロプレン系ラテックスを凍結凝固させることで乳化破壊することによりシートを得た。このシートを水洗した後、130℃で15分間乾燥させることにより固形状のクロロプレン系ゴム(R-2)を得た。
【0111】
上述のクロロプレン系ゴムをTHFでサンプル調整濃度0.1質量%の溶液とした後、高速GPC装置(TOSOH HLC-8320GPC:東ソー株式会社製)によりクロロプレン系ゴムの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)を測定した(標準ポリスチレン換算)。その際、プレカラムとしてTSKガードカラムHHR-Hを使用し、分析カラムとしてHSKgelGMHHR-Hを3本使用し、サンプルポンプ圧8.0~9.5MPa、流量1mL/min、40℃で流出させ、示差屈折計で検出した。
【0112】
流出時間及び分子量は、以下に挙げる分子量既知の標準ポリスチレンサンプル計9点を測定して作成した校正曲線を用いて得た。
Mw=8.42×10、1.09×10、7.06×10、4.27×10、1.90×10、9.64×10、3.79×10、1.74×10、2.63×10
【0113】
クロロプレン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は473×10g/molであり、数平均分子量(Mn)は138×10g/molであり、分子量分布(Mw/Mn)は3.4であった。
【0114】
クロロプレン系ゴム(R-2)に含まれるアクリロニトリルの単量体単位の含有量を、クロロプレン-アクリロニトリル共重合ゴム中の窒素原子の含有量から算出した。具体的には、元素分析装置(スミグラフ220F:株式会社住化分析センター製)を用いて、100mgのクロロプレン系ゴム(R-2)中における窒素原子の含有量を測定し、アクリロニトリルの単量体単位の含有量を算出した。アクリロニトリルの単量体単位の含有量は10.0質量%であった。
【0115】
上述の元素分析は次のとおり行った。電気炉温度として反応炉900℃、還元炉600℃、カラム温度70℃、検出器温度100℃に設定し、燃焼用ガスとして酸素ガスを0.2mL/min、キャリアーガスとしてヘリウムガスを80mL/minフローした。検量線は、窒素含有量が既知のアスパラギン酸(10.52%)を標準物質として用いて作成した。
以上の製造方法で得られた、クロロプレン系ゴム(R-2)のアクリロニトリルの単量体単位の含有量は10.0質量%であった。
【0116】
<クロロプレン系ゴム(R-1、R-3~R-5)の製造方法>
重合工程におけるアクリロニトリル単量体の添加量を変更し、クロロプレン系ゴムに含まれるアクリロニトリル単量体単位の含有量が5.0質量%であるクロロプレン系ゴム(R-1)、アクリロニトリル単量体単位の含有量が20.0質量%であるクロロプレン系ゴム(R-3)、アクリロニトリル単量体単位の含有量が25.0質量%であるクロロプレン系ゴム(R-4)、アクリロニトリル単量体単位の含有量が0.0質量%であるゴム(R-5)を得た。
【0117】
<組成物の作製>
表1~3に記載のように各成分を混合し、8インチオープンロールで混練することにより実施例及び比較例の組成物を得た。
【0118】
組成物を得るために用いた各成分は以下のとおりである。
成分R:
・R-1(クロロプレン・アクリロニトリル共重合体 AN(アクリロニトリル単量体単位)量5質量%)、
・R-2(クロロプレン・アクリロニトリル共重合体 AN量10質量%)、
・R-3(クロロプレン・アクリロニトリル共重合体 AN量20質量%)、
・R-4(クロロプレン・アクリロニトリル共重合体 AN量25質量%)、
・R-5(メルカプタン変性クロロプレンゴム(クロロプレンの単独重合体)、デンカ株式会社製「S-40V」)
・R-6(水素化アクリロニトリルブタジエンゴム 日本ゼオン社製、Zetpol2010、結合アクリロニトリル量36%)
・R-7(アクリロニトリルブタジエンゴム JSR社製、N230S、結合アクリロニトリル量35%)
・R-8(クロロスルフォン化ポリエチレン 東ソー社製、TOSO-CSM)
・R-9(天然ゴム HB Chemical社製、SMR-CV60)
【0119】
可塑剤P2-A:下記構造のビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(重量平均分子量:650)
【0120】
【化6】
【0121】
可塑剤P2-B:下記構造のビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、JER-828)(重量平均分子量:350)
【0122】
【化7】
【0123】
可塑剤P2-C:YSレジンLP(ヤスハラケミカル社製、CAS:64536-06-7)(重量平均分子量:240)
【0124】
【化8】
(上記化合物のカップリング体、及び重合体)
【0125】
可塑剤D:下記構造のエポキシ基を有するジエン系重合体(重量平均分子量:1300)
【0126】
【化9】
【0127】
可塑剤E:エーテルエステル系化合物、株式会社ADEKA製、アデカサイザーRS-700
可塑剤P2-F:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、JER-807)(分子量:230)
可塑剤P1-G:下記構造の脂環式エポキシ樹脂(ダイセル社製、セロキサイド2021P)(分子量:250)
【0128】
【化10】
【0129】
硬化剤:カルボン酸ジヒドラジド、大塚化学株式会社、イソフタル酸ジヒドラジド
加硫剤:酸化亜鉛、堺化学工業株式会社製、酸化亜鉛2種
加硫剤:有機過酸化物、1,4-ビス[(t-ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼン、日本油脂株式会社、パーブチルP
受酸剤:ハイドロタルサイト:化学式 MgZnAl(OH)12CO・3HO、協和化学工業株式会社、ZHT-4A
充填材:カーボンブラック(HAF)、旭カーボン株式会社製「旭#70」
充填材:シリカ、東ソー・シリカ株式会社、Nipsil AQ
シランカップリング剤:メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社、KBM-503
加工助剤:ステアリン酸:新日本理化株式会社製、ステアリン酸50S
耐熱老化防止剤:4,4'-ビス(α、α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、大内新興化学工業株式会社、ノクラックCD
オゾン老化防止剤:3,9-ジ(3-シクロヘキセン-1-イル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、ランクセス株式会社製、ブルカゾンAFS
加硫遅延剤:2,2'-メチレンビス(6-tert-ブチル-p-クレゾール)、大内新興化学工業株式会社、ノクラック、NS-6
【0130】
<組成物(未加硫物)の評価>
(ムーニー粘度の測定)
組成物(未加硫物)について、JIS K 6300-1に準拠して、L型ロータの予熱時間1分、回転時間4分、試験温度100℃にてムーニー粘度の測定を行った。
A:80未満
B:80以上、90未満
C:90以上、100未満
D:100以上
【0131】
(スコーチタイム)
JIS K 6300-1に基づき、L型ロータ、試験温度125℃でムーニースコーチ試験を実施した。測定ムーニー粘度が5M増えた時間をスコーチタイムとした。得られたスコーチタイムを以下の評価基準で評価した。
A:11分以上
B:9分以上、11分未満
C:7分以上、9分未満
D:7分未満
【0132】
<加硫成形体の作製>
得られた組成物をJIS K6299に基づき、160℃×40分の条件でプレス加硫することにより厚さ2mmのシート状の加硫成形体を作製した。
【0133】
<加硫成形体の評価>
上述の加硫成形体の評価を以下のとおり行った。結果を表1及び表2に示す。
【0134】
(引張強度)
JIS K 6251に基づき、上述のシート状の加硫成形体を厚さ2mmのダンベル状3号形試験片に成形し、5枚の試験片を準備した。株式会社島津製作所製の加硫ゴム用長ストローク引張試験システムを用いて、引張速度500mm/minで各試験片の引張強度を測定した。得られた引張強度を以下の評価基準で評価した。
A:24.0MPa以上
B:22.5MPa以上、24.0MPa未満
C:21.0MPa以上、22.5MPa未満
D:21.0MPa未満
【0135】
(耐寒性)
JIS K 6261に基づき、ゲーマンねじり試験を行い、T10を求めた。上述の加硫成形体について、180°ねじりモジュラスが、常温における180°ねじりモジュラスの10倍になる温度(T10)を求めた。得られたT10を以下の基準で評価した。
A:-30℃未満
B:-30℃以上、-20℃未満
C:-20℃以上、-10℃未満
D:-10℃以上
【0136】
(耐水性(70℃の水に144h浸漬後の体積変化率))
上述の加硫成形体から縦25mm、横20mmの試験片を打ち抜くことにより試験片を得た。得られた試験片を、70℃の水に144時間浸漬した。JIS K 6258に準拠して体積変化率ΔVを算出した。得られた体積変化率ΔVを以下の基準で評価した。
A:3%未満
B:3%以上、6%未満
C:6%以上、9%未満
D:9%以上
【0137】
(耐酸性(70℃の10%塩酸に144h浸漬後の体積変化率))
上述の加硫成形体から縦25mm、横20mmの試験片を打ち抜くことにより試験片を得た。得られた試験片を、70℃の10%塩酸に144時間浸漬した。JIS K 6258に準拠して体積変化率ΔVを算出した。得られた体積変化率ΔVを以下の基準で評価した。
A:4%未満
B:4%以上、7%未満
C:7%以上、10%未満
D:10%以上
【0138】
(耐アルカリ性(70℃の10%水酸化ナトリウム水溶液に144h浸漬後の体積変化率))
上述の加硫成形体から縦25mm、横20mmの試験片を打ち抜くことにより試験片を得た。得られた試験片を、70℃の10%水酸化ナトリウム水溶液に144時間浸漬した。JIS K 6258に準拠して体積変化率ΔVを算出した。得られた体積変化率ΔVを以下の基準で評価した。
A:2%未満
B:2%以上、5%未満
C:5%以上、8%未満
D:8%以上
【0139】
(耐油性(130℃のIRM-903に72h浸漬後の体積変化率))
上述の加硫成形体から縦25mm、横20mmの試験片を打ち抜くことにより試験片を得た。得られた試験片を、130℃の試験油(自動車用高潤滑油、ASTM No.3、IRM 903 oil)に72時間浸漬した。JIS K 6258に準拠して体積変化率ΔVを算出した。得られた体積変化率を以下の評価基準で評価した。
A:25%未満
B:25%以上、30%未満
C:30%以上、40%未満
D:40%以上
【0140】
(耐摩耗性(1000回運転時の体積変化))
得られた組成物を、160℃×40分の条件でプレス加硫して、直径63.6mm、厚さ12.7mm、中心孔12.7mmの加硫成形体を作製した。得られた加硫成形体について、JIS K 6264-2:2005に準拠してアクロン摩耗試験(1000回摩耗、ΔV、単位:mm)を行った。110mm以下の値を示したものを良好であると判断した。
A:50mm未満
B:50mm以上、90mm未満
C:90mm以上、110mm未満
D:110mm以上
【0141】
【表1】
【0142】
【表2】
【0143】
【表3】
【0144】
【表4】
【0145】
【表5】
【0146】
【表6】