(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-17
(45)【発行日】2025-06-25
(54)【発明の名称】通信ケーブル
(51)【国際特許分類】
H01B 11/06 20060101AFI20250618BHJP
【FI】
H01B11/06
(21)【出願番号】P 2024053699
(22)【出願日】2024-03-28
【審査請求日】2024-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000238049
【氏名又は名称】冨士電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 宏
(72)【発明者】
【氏名】中村 雄一郎
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-5181(JP,A)
【文献】国際公開第2023/214465(WO,A1)
【文献】特開2023-23550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数対の対撚線と、前記複数対の対撚線を互いに離間させるための介在とを含むケーブル心と、
前記ケーブル心に横巻きされた押巻きテープと、
前記押巻きテープを被覆する遮蔽層と、
前記遮蔽層を被覆する外被と、
を有し、
前記押巻きテープの幅は、5mm超かつ25mm未満であり、
前記ケーブル心の撚合ピッチは、40mm超かつ100mm未満であることを特徴とする、
通信ケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載の通信ケーブルであって、
前記押巻きテープの幅は、10~20mmの範囲内であり、
前記ケーブル心の撚合ピッチは、50~90mmの範囲内であることを特徴とする、
通信ケーブル。
【請求項3】
請求項1に記載の通信ケーブルであって、
前記押巻きテープの幅に対する前記押巻きテープの巻付けピッチの割合は、0.47~0.73の範囲内であることを特徴とする、通信ケーブル。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の通信ケーブルであって、
前記通信ケーブルの外径は、3.0~6.5mmの範囲内であることを特徴とする、通信ケーブル。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の通信ケーブルであって、
前記押巻きテープは、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維およびガラス繊維からなる群から選択される1種以上の繊維を含む不織布テープであることを特徴とする、通信ケーブル。
【請求項6】
請求項5に記載の通信ケーブルであって、
前記不織布テープの坪量は、90~110g/m
2の範囲内であることを特徴とする、通信ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
LAN(Local Area Network)ケーブルなどの通信ケーブルは、サーバ同士の間やサーバとスイッチとの間、サーバとパーソナルコンピュータとの間など、様々な機器の接続に使用されている。近年では、カテゴリ6A規格を満たす高速データ通信に適する通信ケーブルが求められている。
【0003】
一方で、高速データ通信に適する通信ケーブルには、可撓性が低いケーブルが多い。可撓性が低いケーブルは、硬く反発しやすいため、作業者が布設しにくいという問題を有している。このため、通信ケーブルの可撓性を高める様々な手段が提案されている。たとえば、特許文献1では、押巻きとして坪量が90~110g/m2の不織布テープを用いることで通信ケーブルの可撓性を向上させることが、本発明者らによって提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高密度に配線する用途などでは、外径が3.0~6.5mm程度の細径の通信ケーブルが使用されることがある。本発明者らは、このような細径の通信ケーブルにおいても上記坪量の不織布テープを押巻きとして使用することで可撓性を向上させることを試みたところ、通信ケーブルの反射減衰量(return loss:RL)および近端漏話減衰量(near end crosstalk:NEXT)が顕著に低下してしまった。
【0006】
本発明の目的は、細径であっても、反射減衰量および近端漏話減衰量を維持しつつ可撓性を向上させることができる通信ケーブルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための通信ケーブルは、
複数対の対撚線と、前記複数対の対撚線を互いに離間させるための介在とを含むケーブル心と、
前記ケーブル心に横巻きされた押巻きテープと、
前記押巻きテープを被覆する遮蔽層と、
前記遮蔽層を被覆する外被と、
を有し、
前記押巻きテープの幅は、5mm超かつ25mm未満であり、
前記ケーブル心の撚合ピッチは、40mm超かつ100mm未満であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、細径であっても、反射減衰量および近端漏話減衰量を維持しつつ可撓性を向上させることができる通信ケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る通信ケーブルの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態に係る通信ケーブルとして、いわゆるLAN用ツイストペアケーブルについて、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、これに限定されるものではない。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値または下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値または下限値に置き換えてもよい。
【0011】
(通信ケーブルの構成)
図1は、本発明の一実施の形態に係る通信ケーブル1の概略断面図である。
図1に示されるように、通信ケーブル1は、ケーブル心10と、ケーブル心10に横巻きされた押巻きテープ20と、押巻きテープ20を被覆する遮蔽層30と、遮蔽層30を被覆する外被40とを有する。
【0012】
ケーブル心10は、複数対の対撚線8と、複数対の対撚線8を互いに離間させるための介在9とを含む。複数対の対撚線8および介在9は、所定の撚合ピッチで一定方向に撚り合わせられている。ここで「撚合ピッチ」とは、複数対の対撚線8および介在9を一括して撚ったときに、一対の対撚線8が一周するのに必要なケーブル心10の長さ方向の距離を意味する。
【0013】
複数対の対撚線8は、それぞれ2本の絶縁電線6を有する。各対撚線8において、2本の絶縁電線6は、所定の対撚ピッチで一定方向に撚り合わせられている。ここで「対撚ピッチ」とは、2本の絶縁電線6を一括して撚ったときに、一方の絶縁電線6が一周するのに必要な対撚線8の長さ方向の距離を意味する。
対撚線8の数は、複数であれば特に限定されない。本実施の形態では、対撚線8の数は、4対である。
【0014】
絶縁電線6は、導体2と、導体2を被覆する絶縁層4とを有する。
導体2は、導電性金属材料で形成された導線である。導体2の種類は、特に限定されない。本実施の形態では、導体2は、軟銅線である。導体2は単線でもよいし、複数の素線を撚り合わせた撚線であってもよい。導体2の外径(円相当径)は、特に制限されず、通信ケーブル1の用途や種類などに応じて適宜選択される。導体2の直径は、例えば、0.2~0.5mmの範囲内である。
絶縁層4は、導体2を被覆している。絶縁層4の材料は、絶縁性を有していれば特に限定されない。本実施の形態では、絶縁層4は、ポリエチレンで構成されている。絶縁層4の厚さは、特に限定されず適宜選択される。絶縁層4の厚さは、例えば、0.1~0.3mmの範囲内である。
【0015】
介在9は、通信ケーブル1の長さ方向に延在しており、複数対の対撚線8を互いに離間させる。すなわち、複数対の対撚線8は、互いに接触しないように介在9によって分離されている。介在9の形状は、複数対の対撚線8をそれぞれ離間させることができれば特に限定されない。本実施の形態では、介在9の通信ケーブル1の長さ方向に直交する断面形状は、プラス記号の形状である。すわなち、介在9は、いわゆる十字介在である。介在9の材料も、上記の機能を発揮できれば特に限定されない。本実施の形態では、介在9の材料は、ポリエチレンである。
介在9は、ケーブル心10(通信ケーブル1)の長さ方向に沿って撚られている。これに伴い、複数対の対撚線8も、介在9に分離されつつケーブル心10(通信ケーブル1)の長さ方向に沿って撚られている。
【0016】
これまで説明したように、ケーブル心10(複数対の対撚線8および介在9)は、所定の撚合ピッチで一定方向に撚り合わせられている。前述のとおり、「撚合ピッチ」とは、複数対の対撚線8および介在9を一括して撚ったときに、一対の対撚線8が一周するのに必要なケーブル心10の長さ方向の距離を意味する。ここで、ケーブル心10の撚合ピッチは、40mm超かつ100mm未満であることが好ましい。たとえば、ケーブル心10の撚合ピッチは、50~90mmの範囲内である。
本実施の形態に係る通信ケーブル1では、撚合ピッチを40mm以下とすると、近端漏話減衰量(NEXT)が低下してしまいやすいが、撚合ピッチを40mm超とすることで、近端漏話減衰量の低下を抑制することができる。撚合ピッチが40mm以下の場合に近端漏話減衰量が低下する理由は、これに限定されるわけではないが、以下のように推察される。すなわち、撚合ピッチが40mm以下の場合、撚合ピッチの影響で対撚線8の対撚ピッチが変わりやすく、その影響で近端漏話減衰量が低下してしまう。これに対し、撚合ピッチが40mm超の場合は、対撚線8の対撚ピッチが変わりにくく、近端漏話減衰量が低下しにくい。
また、本実施の形態に係る通信ケーブル1では、撚合ピッチを100mm以上とすると、反射減衰量(RL)も低下してしまいやすいが、撚合ピッチを100mm未満とすることで、反射減衰量の低下を抑制することができる。撚合ピッチが100mm以上の場合に反射減衰量が低下する理由は、これに限定されるわけではないが、以下のように推察される。すなわち、撚合ピッチが100mm以上の場合、通信ケーブル1が曲がったときに撚合ピッチが変わりやすく、その影響で反射減衰量が低下してしまう。これに対し、撚合ピッチが100mm未満の場合は、撚合ピッチが変わりにくく、反射減衰量が低下しにくい。
【0017】
押巻きテープ20は、ケーブル心10の周囲に横巻きされており、ケーブル心10を被覆している。本明細書において「横巻き」とは、長尺なテープを被巻き体の長さ方向に沿ってらせん状に、テープの側縁部を先に巻きつけたテープに重ねながら巻き付けることを意味する。押巻きテープ20は、ケーブル心10の導体2と遮蔽層30との間の距離を一定に保持する。
押巻きテープ20の構成は、特に限定されない。押巻きテープ20は、例えば不織布テープや樹脂テープなどであり、不織布テープが好ましい。不織布テープの例には、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維およびガラス繊維からなる群から選択される1種以上の繊維を含む不織布テープが含まれる。樹脂テープの例には、ポリプロピレンテープおよび高密度ポリエチレンテープが含まれる。本実施の形態では、押巻きテープ20は、ポリエチレンテレフタレート(Poly ethylene terephthalate:PET)の不織布テープである。
押巻きテープ20の厚みは、特に限定されないが、0.1~0.5mmの範囲内が好ましい。押巻きテープ20が不織布テープである場合、不織布テープの坪量は90~110g/m2の範囲内であることが好ましく、95~105g/m2の範囲内であることが特に好ましい。
また、押巻きテープ20が不織布テープである場合、不織布テープの実測厚さのばらつきは1.5~5.5%の範囲内であることが好ましい。ここで「実測厚さのばらつき」とは、通信ケーブル1を1m切り出したときに、その切り出し片に含まれる不織布テープについて長さ方向に沿う20か所で厚さを実測し、その平均値(mm)に対する最大のずれ量と最小のずれ量との差をそれぞれ算出し、当該算出値を平均値で除した値(%)である。
押巻きテープ20の枚数は、本実施形態の目的および効果を損なわない範囲であれば特に限定されない。
【0018】
押巻きテープ20の幅は、5mm超かつ25mm未満であることが好ましい。たとえば、押巻きテープ20の幅は、10~20mmの範囲内である。押巻きテープ20の幅を25mm未満とすることで、ケーブル心10に巻き付ける押巻きテープ20の巻付けピッチが短くなって、通信ケーブル1が曲がった場合も押巻きテープ20の角立ちが抑制され、ケーブル心10の導体2と遮蔽層30との間の距離が安定する。このように導体2と遮蔽層30との間の距離が安定することで、通信ケーブル1における均一性が向上し、反射減衰量(RL)の減少が抑制される。一方、押巻きテープ20の幅を5mm以下とするのは、製造上困難である。
押巻きテープ20の巻付けピッチは、特に限定されず、押巻きテープ20の幅に応じて適宜設定されうる。たとえば、押巻きテープ20の幅に対する押巻きテープ20の巻付けピッチの割合は、0.47~0.73の範囲内である。
【0019】
遮蔽層30は、押巻きテープ20の外周を被覆している。遮蔽層30は、ケーブル心10を保護するとともに、外部からの電磁波を遮断する。
たとえば、遮蔽層30は、金属ラミネートテープで構成されていてもよい。金属ラミネートテープの例には、アルミニウム箔(Al)をポリエチレンテレフタレートフィルムに積層させたAl/PETテープが含まれる。アルミニウム箔部分には、導通を遮断するためのスリットが形成されていることが好ましい。本実施の形態では、遮蔽層30は、Al/PETテープである。テープ状の遮蔽層30は、ケーブル心10の長さ方向に沿って押巻きテープ20の上に横巻きされている。
遮蔽層30の厚さは、上記の機能を発揮できれば特に限定されず、適宜選択される。遮蔽層30の厚さは、例えば0.01~0.1mmの範囲内である。
【0020】
外被40は、遮蔽層30を被覆している、いわゆるシースである。外被40は、通信ケーブル1の最外層であり、ケーブル心10を保護する。
外被40の材料は、上記の機能を発揮できれば特に限定されない。外被40の材料の例には、ポリ塩化ビニルおよびポリオレフィンが含まれる。本実施の形態では、外被40の材料は、ポリ塩化ビニルである。
外被40の厚さは、特に限定されない。外被40の厚さは、例えば0.3~1.0mmの範囲内である。
【0021】
通信ケーブル1の外径は、特に限定されないが、本実施の形態に係る通信ケーブル1は、細径であっても可撓性、反射減衰量(RL)および近端漏話減衰量(NEXT)に優れている。すなわち、本実施の形態に係る通信ケーブル1は、細径である場合に特に効果を発揮することができる。たとえば、通信ケーブル1の外径は、3.0~6.5mmの範囲内であってもよい。
【0022】
(通信ケーブルの製造方法)
本実施の形態に係る通信ケーブル1の製造方法は、特に限定されない。たとえば、以下の手順により通信ケーブル1を製造することができる。
【0023】
まず、導体2として、軟銅線の単線を準備する。導体2を長さ方向に搬送しながらポリエチレンを押出機のダイスから押し出し、導体2を絶縁層4で被覆して、絶縁電線6を作製する。次いで、2本の絶縁電線6を撚り合わせて対撚線8を作製する。4対の対撚線8を十字介在9に沿わせた状態で所定の撚合ピッチ(40mm超かつ100mm未満)で撚ってケーブル心10を作製する。
【0024】
次いで、所定の幅(5mm超かつ25mm未満)の押巻きテープ20をケーブル心10
の周囲に横巻きする。このとき、押巻きテープ20の幅に対する押巻きテープ20の巻付けピッチの割合は、0.47~0.73の範囲内であることが好ましい。
【0025】
次いで、遮蔽層30を押巻き20の周囲に形成する。たとえば、テープ状の遮蔽層30を押巻き20の周囲に横巻きする。
最後に、押巻きテープ20および遮蔽層30を巻き付けたケーブル心10を長さ方向に搬送しながら、ポリ塩化ビニルを押出機のダイスから押し出して、遮蔽層30の周囲を外被40で被覆する。
【0026】
以上の手順により、通信ケーブル1を製造することができる。
【0027】
(効果)
本実施の形態に係る通信ケーブル1は、ケーブル心10の撚合ピッチが40mm超かつ100mm未満であり、かつ押巻きテープ20の幅が5mm超かつ25mm未満であるため、細径であっても、可撓性、反射減衰量および近端漏話減衰量に優れている(実施例参照)。
【0028】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
【実施例】
【0029】
1.通信ケーブルの製造
導体として、外径0.4mmの軟銅線(単線)を準備した。絶縁層の樹脂として高密度ポリエチレンを準備し、これを押出機のダイスから押し出して導体を絶縁体で被覆して外形0.7mmの絶縁電線を作製した。
絶縁電線を2本撚り合わせ、外径1.4mm程度の対撚線を作製した。
径方向長さ3.5mm×厚さ0.5mmの十字介在を準備し、4対の対撚線を十字介在に沿わせて所定の撚合ピッチ(40mm、50mm、60mm、70mm、80mm、90mmまたは100mm)で撚ってケーブル心を作製した。
【0030】
押巻きとして所定のテープ幅(5mm、10mm、15mm、20mmまたは25mm)のポリエステル不織布テープ(厚さ0.35mm、坪量100g/m2)を準備し、ケーブル心に横巻きした。このとき、不織布テープの巻付けピッチは、テープ幅が5mmのときは2.0mm、テープ幅が10mmのときは5.3mm、テープ幅が15mmのときは9.7mm、テープ幅が20mmのときは14.1mm、テープ幅が25mmのときは27.0mmとした。なお、テープ幅が5mmの場合、不織布テープを適切に巻くことができなかった。
【0031】
遮蔽層として、一定のスリットを有するAl/PETテープ(アルミニウム:厚さ9μm、PET:厚さ43μm、幅22mm)を準備し、これを押巻きの周囲に横巻きした。このとき、7.3mm(1/3ラップ)ずつ重ねて巻き付けた。
最後に、外被の樹脂としてポリ塩化ビニルを準備し、これを押出機のダイスから押し出して遮蔽層を外被(厚さ0.4mm)で被覆し、外径6.0mm程度の通信ケーブルを製造した。
【0032】
2.通信ケーブルの評価
各通信ケーブルについて可撓性、反射減衰量(RL)および近端漏話減衰量(NEXT)を測定した。なお、押巻きとしてテープ幅が5mmの不織布テープを使用した場合、通信ケーブルを製造できなかったため、可撓性、反射減衰量(RL)および近端漏話減衰量(NEXT)の測定も行わなかった。
【0033】
(可撓性)
各通信ケーブルから長さ50cmのサンプルを切り出した。各サンプルについて一方の端部側の長さ30cmの部分を作業台に固定し、他方の端部側の長さ20cmの部分を空間に開放して自由端とした。自由端に50gの荷重を加えて、自由端の鉛直方向における撓み量(作業台の上面から自由端までの鉛直方向の距離)を測定した。
その結果、いずれの通信ケーブルも撓み量が100mm以上であり、良好な可撓性を有していた。
【0034】
(RLおよびNEXT)
各通信ケーブルから長さ100mのサンプルを切り出した。各サンプルについて汎用のLANケーブル自動測定装置を用いて反射減衰量(RL)および近端漏話減衰量(NEXT)を測定した。
反射減衰量(RL)および近端漏話減衰量(NEXT)の評価については、ANSI/TIA規格のカテゴリ6A規格の規格値を基準として、4dB以上の余裕をもって基準を満たす場合を「◎」、2dB以上かつ4dB未満の余裕をもって基準を満たす場合を「〇」、2dB未満の余裕をもって基準を満たす場合を「△」、基準を満たさない場合を「×」と、評価した。
各通信ケーブルの評価結果を表1および表2に示す。表中の「-」は、反射減衰量(RL)または近端漏話減衰量(NEXT)の測定を行わなかったことを示している。
【0035】
【0036】
表1および表2に示されるように、押巻きテープの幅が5mm超かつ25mm未満、かつケーブル心の撚合ピッチが40mm超かつ100mm未満の通信ケーブルは、外径が6.0程度と細径であり、かつ優れた可撓性を有しながらも、反射減衰量(RL)および近端漏話減衰量(NEXT)についてカテゴリ6A規格を満たしていた。
一方、押巻きテープの幅が25mm以上の場合は、反射減衰量(RL)が低下してしまい、カテゴリ6A規格を満たせなかった。
また、押巻きテープの幅が5mm超かつ25mm未満であっても、ケーブル心の撚合ピッチが40mm以下または100mm以上の場合は、反射減衰量(RL)または近端漏話減衰量(NEXT)が低下してしまい、カテゴリ6A規格を満たせなかった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係る通信ケーブルは、例えば、細径タイプのLAN用ツイストペアケーブルとして有用である。
【符号の説明】
【0038】
1 通信ケーブル
2 導体
4 絶縁層
6 絶縁電線
8 対撚線
9 十字介在
10 ケーブル心
20 押巻きテープ
30 遮蔽層
40 外被
【要約】
【課題】細径であっても、反射減衰量および近端漏話減衰量を維持しつつ可撓性を向上させることができる通信ケーブルを提供すること。
【解決手段】通信ケーブル1は、ケーブル心10と、ケーブル心10に横巻きされた押巻きテープ20と、押巻きテープ20を被覆する遮蔽層30と、遮蔽層30を被覆する外被40とを有する。ケーブル心10は、複数対の対撚線8と、複数対の対撚線8を互いに離間させるための介在9とを含む。押巻きテープ20の幅は、5mm超かつ25mm未満である。ケーブル心10の撚合ピッチは、40mm超かつ100mm未満である。
【選択図】
図1