(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-18
(45)【発行日】2025-06-26
(54)【発明の名称】グラフェンの品質評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20250619BHJP
C01B 32/182 20170101ALI20250619BHJP
【FI】
G01N21/17 A
C01B32/182
(21)【出願番号】P 2021122473
(22)【出願日】2021-07-27
【審査請求日】2021-07-27
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-12
(31)【優先権主張番号】10-2020-0185690
(32)【優先日】2020-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2020年7月27日に公開された、以下の論文。Dong Jin Kim著、2D Materials(「Confocal laser scanning microscopy as a real-time quality-assessment tool for industrial graphene synthesis」)、2020年、第7巻、第4号
(73)【特許権者】
【識別番号】509329800
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(73)【特許権者】
【識別番号】519313150
【氏名又は名称】グラフェン・スクエア・インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】521330552
【氏名又は名称】ダンクック・ユニバーシティ・チョナン・キャンパス・インダストリー・アカデミック・コオペレーション・ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・ヒ・ホン
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ジン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ユン・スン・ウ
【合議体】
【審判長】南 宏輔
【審判官】宮澤 浩
【審判官】伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-136815号公報(JP,A)
【文献】特開平10-62691(JP,A)
【文献】特開平07-333510号公報(JP,A)
【文献】米国特許第11933955(US,B2)
【文献】韓国登録特許第10-2464089(KR,B1)
【文献】Dong Jin Kim et.al.,“Confocal laser scanning microscopy as a real-time quality-assessment tool for industrial graphene synthesis”,[online],2020年5月27日,Graphene & 2DM Industrial Forum 2020 ,インターネット<URL:https://phantomsfoundation.com/ONLINE/GrapheneIF/Posters/GrapheneIF_Kim_Dong_Jin_233.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - 21/01
G01N 21/17 - 21/61
C01B 32/00 - 32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共焦点レーザ走査顕微鏡を用いたグラフェンの品質評価方法であって、
触媒層
としての銅箔上に形成されたグラフェン層にレーザ光を照射するステップと、
前記グラフェン層から反射した光の信号を検出するステップと、
前記検出された光信号を用いて前記グラフェン層の平面イメージを形成するステップと、
前記平面イメージにおいて前記触媒層とグラフェンのコントラスト比を分析するステップと、を含み、
前記グラフェンの品質評価方法は、前記グラフェンの連続形成中にリアルタイムに行われるものであり
、
前記レーザ光は、400nm以上
490nm以下の波長値で照射されるものであり、
前記共焦点レーザ走査顕微鏡は、ピンホールなしに作動するものであり、
前記触媒層と前記グラフェンのコントラスト比が
1.10以上の場合に、前記グラフェン層の品質を良品と判定するステップをさらに含むものである、グラフェンの品質評価方法。
【請求項2】
前記グラフェンは、化学気相蒸着法で前記触媒層上に形成されるものである、請求項1に記載のグラフェンの品質評価方法。
【請求項3】
前記グラフェンは、ロールツーロール工程で前記触媒層上に連続形成されたものである、請求項1に記載のグラフェンの品質評価方法。
【請求項4】
前記コントラスト比を分析するステップは、
前記平面イメージの所定領域のグレースケールを分析して、
前記領域における前記触媒層と前記グラフェンのコントラスト比を算出することを含むものである、請求項1に記載のグラフェンの品質評価方法。
【請求項5】
前記グレースケールの分析は、
前記領域におけるグレースケールヒストグラムまたはグレースケールプロファイルを取得して分析するものである、請求項
4に記載のグラフェンの品質評価方法。
【請求項6】
前記化学気相蒸着法は、700℃以上の温度で行われるものである、請求項2に記載のグラフェンの品質評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェンの品質評価方法に関し、具体的には、共焦点レーザ走査顕微鏡を用いて連続的に形成されるグラフェンの品質をリアルタイムに評価できる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェン(graphene)は多様な産業分野で活用されており、化学気相蒸着法(chemical vapor deposition、CVD)を用いて高品質のグラフェンを大面積に合成する技術が持続的に開発されている。化学気相蒸着法を用いたグラフェンの合成方法は、一般的に、真空チャンバ内で高温に加熱された銅箔上に水素と炭化水素ガスを供給して、銅箔表面上にグラフェンを成長させる。化学気相蒸着法で形成されるグラフェンの品質管理のために、合成されるグラフェンの品質をスクリーニングして品質を評価している。
【0003】
従来は、特定厚さのシリコン酸化膜上にグラフェンを転写した後、光学顕微鏡またはラマンスペクトルを用いてグラフェンの品質を評価した。光学顕微鏡を用いた品質評価方法は、銅箔上のグラフェンのイメージを直接的に分析している。特に、レイリー光散乱(Rayleigh light scattering)を利用した光学顕微鏡のダークフィールド(dark filed、DF)を通して銅箔上で成長したグラフェンを分析することができるが、これは大きな高さの段差が形成された銅箔にグラフェンが成長した場合にのみ適用できるという限界がある。また、弱い散乱光によりDFイメージを形成するためにやや時間がかかり、銅箔上にグラフェンが形成されたサンプルを長時間照明に露出させなければならない問題がある。一方、ラマンスペクトルを用いたグラフェンの品質評価方法は、非常に多い時間がかかるため、大面積のグラフェンを評価する方法として適切ではなかった。
【0004】
そこで、ロールツーロール(roll to roll)のような、グラフェンを大面積に連続合成する工程において、グラフェンの品質をリアルタイムに評価できる技術が必要なのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、連続的に形成されるグラフェンの品質をリアルタイムに評価できる方法を提供することである。
【0006】
ただし、本発明が解決しようとする課題は上述した課題に制限されず、述べていないさらに他の課題は下記の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施態様は、共焦点レーザ走査顕微鏡を用いたグラフェンの品質評価方法であって、触媒層上に形成されたグラフェン層にレーザ光を照射するステップと、前記グラフェン層から反射した光の信号を検出するステップと、前記検出された光信号を用いて前記グラフェン層の平面イメージを形成するステップと、前記平面イメージにおいて前記触媒層とグラフェンのコントラスト比を分析するステップと、を含むグラフェンの品質評価方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施態様に係るグラフェンの品質評価方法は、連続的に形成されるグラフェンの品質をリアルタイムに評価することができる。
【0009】
また、本発明の一実施態様に係るグラフェンの品質評価方法は、大面積に形成されるグラフェンの品質を迅速に評価することができる。
【0010】
本発明の効果は上述した効果に限定されるものではなく、述べていない効果は本願明細書および添付した図面から当業者に明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】ロールツーロール(roll to roll)工程を用いてグラフェンを製造する方法を順次に示す概念図である。
【
図2】本発明の一実施態様に係る共焦点レーザ走査顕微鏡を用いてグラフェンの品質を評価する方法を示す図である。
【
図3】試験片の同一領域に対して光学顕微鏡を用いて撮影したイメージと共焦点レーザ走査顕微鏡を用いて撮影したイメージを示す図である。
【
図4】
図3の(3)にて赤色ボックスで区分される試験片領域におけるAFMイメージおよび深さ勾配を示すグラフである。
【
図5】グラフェンの合成時間を異ならせて製造した試験片を共焦点レーザ走査顕微鏡を用いて撮影したイメージを示す図である。
【
図6】試験片に照射されるレーザ光の波長値を異ならせて共焦点レーザ走査顕微鏡により撮影した試験片の平面イメージおよびこれにより取得したグレースケールヒストグラムを示す図である。
【
図7】実施例3~実施例5および比較例4で算出した銅とグラフェンのコントラスト比および理論を適用して計算したコントラスト比を示すグラフである。
【
図8】グラフェンと銅の理論的なコントラスト比値を計算するために設定される条件を概略的に示す図である。
【
図9】数式4および数式5により計算されたグラフェンの光学伝導度を示すグラフである。
【
図10】合成温度を異ならせて製造されたグラフェンに対して共焦点レーザ走査顕微鏡により撮影した試験片の平面イメージおよびこれにより取得したグレースケールのラインプロファイルを示す図である。
【
図11】本発明の実施例6、実施例7および実施例8で製造されたグラフェンそれぞれのラマンスペクトルおよび半値幅とD/Gの強度比率を示すグラフである。
【
図12】本発明の実施例6、実施例7および実施例8で製造された試験片におけるグラフェンと銅のコントラスト比およびグラフェンのキャリア移動度を示す図である。
【
図13】本発明の実施例1と実施例9により共焦点レーザ走査顕微鏡を用いて撮影したイメージを示す図である。
【
図14】本発明の実施例4、実施例5および比較例4により共焦点レーザ走査顕微鏡を用いて撮影したイメージを示す図である。
【
図15】本発明の実施例10および実施例11による試験片を共焦点レーザ走査顕微鏡を用いて撮影したイメージを示す図である。
【
図16】本発明の実施例10および実施例11による試験片のグレースケールヒストグラム、コントラスト比を示すグラフおよびラマンスペクトルを示す図である。
【
図17】本発明の実施例11により窒素ドーピングされたグラフェンのN1s XPSピークを示す図である。
【
図18】参考例2および参考例6で製造されたグラフェンのラマンスペクトルを示す図である。
【
図19】参考例2~参考例5で製造されたグラフェンに対して共焦点レーザ走査顕微鏡により撮影した試験片の平面イメージを示す図である。
【
図20】参考例6~参考例9で製造されたグラフェンに対して共焦点レーザ走査顕微鏡により撮影した試験片の平面イメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0013】
本明細書において、ある部材が他の部材の「上に」位置しているとする時、これは、ある部材が他の部材に接している場合のみならず、2つの部材の間にさらに他の部材が存在する場合も含む。
【0014】
本明細書において、用語「~するステップ」および「~のステップ」は、「~のためのステップ」を意味しない。
【0015】
本明細書において、「グラフェン層」という用語は、複数の炭素原子が互いに共有結合で連結されてポリサイクリック芳香族分子を形成するグラフェンが膜またはシート形態を形成したものであって、前記共有結合で連結された炭素原子は、基本繰り返し単位として6員環を形成するが、5員環および/または7員環をさらに含むことも可能である。したがって、前記「グラフェン層」は、互いに共有結合した炭素原子(通常、sp2結合)の単一層として見える。前記「グラフェン層」は、多様な構造を有することができ、このような構造は、グラフェン内に含まれる5員環および/または7員環の含有量によって異なる。前記「グラフェン層」は、上述のようなグラフェンの単一層からなるが、これらがいくつか互いに積層されて複数層を形成することも可能であり、最大100nmまでの厚さを形成することができる。
【0016】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施のための具体的な内容を詳細に説明する。
【0017】
本発明の一実施態様は、共焦点レーザ走査顕微鏡を用いたグラフェンの品質評価方法であって、触媒層上に形成されたグラフェン層にレーザ光を照射するステップと、前記グラフェン層から反射した光の信号を検出するステップと、前記検出された光信号を用いて前記グラフェン層の平面イメージを形成するステップと、前記平面イメージにおいて前記触媒層とグラフェンのコントラスト比を分析するステップと、を含むグラフェンの品質評価方法を提供する。
【0018】
本発明の一実施態様に係るグラフェンの品質評価方法は、連続的に形成されるグラフェンの品質をリアルタイムに評価することができる。また、本発明の一実施態様に係るグラフェンの品質評価方法は、大面積に形成されるグラフェンの品質を迅速に評価することができる。
【0019】
本発明の一実施態様によれば、前記グラフェンの品質評価方法は、共焦点顕微鏡を用いて、前記グラフェンの品質を評価することができる。具体的には、共焦点レーザ走査顕微鏡(confocal laser scanning microscopy、CLSM)を用いることができる。光学顕微鏡またはラマンスペクトルを用いた従来のグラフェンの品質評価方法に比べて、本発明の一実施態様に係るグラフェンの品質評価方法は、共焦点レーザ走査顕微鏡を用いることにより、触媒層上に大面積に形成されるグラフェンの品質をリアルタイムに迅速に評価することができる。
図1は、ロールツーロール(roll to roll)工程を用いてグラフェンを製造する方法を順次に示す概念図である。
図1を参照すれば、ロールツーロール工程を用いてグラフェンを製造する方法は、触媒層上にグラフェン層を合成するステップと、前記グラフェン層上に柔軟性基板を積層して積層体を製造するステップと、前記触媒層をエッチングし、前記グラフェン層を前記柔軟性基板に転写するステップと、前記柔軟性基板に転写されたグラフェン層を所定のパターンにパターニングするステップと、前記グラフェン層を基材に転写するステップとを含むことができる。前記ロールツーロール工程を用いてグラフェンを製造する方法は、大韓民国登録特許第10-1300799号に記載の方法を使用することができる。ただし、前記ロールツーロール工程を用いてグラフェンを製造する方法を限定するものではなく、当業界で用いられるロールツーロール工程により前記グラフェンを製造することもできる。
【0020】
この時、本発明の一実施態様に係るグラフェンの品質評価方法は、前記触媒層上にグラフェン層を合成するステップ中に行われる。
【0021】
本発明の一実施態様によれば、前記触媒層上にグラフェン層を形成することができる。具体的には、化学気相蒸着法を用いて前記触媒層の表面上にグラフェンを合成して、前記触媒層の表面上にグラフェン層を形成することができる。前記触媒層上にグラフェン層を形成する方法は、当業界にてグラフェンを合成する方法を制限なく採用して使用可能である。例えば、加熱された触媒層上に水素ガスと炭化ソースを供給して、触媒層上にグラフェンを合成させることができる。前記炭化ソースは、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、エタン、エチレン、エタノール、アセチレン、プロパン、ブタン、ブタジエン、ペンタン、ペンテン、シクロペンタジエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、およびトルエンの少なくとも1つを含むことができるが、前記炭化ソースの種類を限定するものではない。
【0022】
本発明の一実施態様によれば、前記触媒層は、Cu、Ni、Co、Fe、Pt、Au、Al、Cr、Mg、Mn、Mo、Rh、Si、Ta、Ti、W、U、V、Zr、Fe、黄銅、青銅、白銅、ステンレススチール、およびGeの少なくとも1つを含むことができる。前記触媒層は、グラフェン合成のための金属触媒層であってもよいし、グラフェンの合成条件を考慮して適切な触媒層を選択することができる。
【0023】
本発明の一実施態様によれば、前記触媒層は、薄膜または厚膜として提供される。具体的には、前記触媒層の厚さは、1nm以上1,000nm以下、1nm以上500nm以下、または1nm以上300nm以下であってもよい。また、前記触媒層の厚さは、1μm以上1,000μm以下、1μm以上500μm以下、1μm以上100μm以下、または1μm以上50μm以下であってもよい。さらに、前記触媒層の厚さは、1mm以上5mm以下であってもよい。ただし、前記触媒層の厚さを限定するものではなく、前記グラフェン層の合成条件、前記グラフェン層の使用用途などを考慮して、前記触媒層の厚さを設定することができる。
【0024】
本発明の一実施態様によれば、前記化学気相蒸着法は、700℃以上の温度で行われる。具体的には、前記化学気相蒸着法は、750℃以上の温度、800℃以上の温度、850℃以上の温度、900℃以上の温度、または1,000℃以上の温度で行われる。また、前記化学気相蒸着法は、2,000℃以下の温度、1,900℃以下の温度、1,800℃以下の温度、1,700℃以下の温度、1,600℃以下の温度、または1,500℃以下の温度で行われる。前記化学気相蒸着法が行われる温度は、前記触媒層を形成する物質の種類に応じて設定可能である。具体的には、前記触媒層を形成する物質の融点を考慮して設定可能である。例えば、銅を用いて触媒層を形成する場合、前記化学気相蒸着法は、1,000℃以上1,085℃以下の温度で行われる。また、ニッケルを用いて触媒層を形成する場合、前記化学気相蒸着法は、750℃以上850℃以下の温度で行われる。さらに、パラジウムを用いて触媒層を形成する場合、前記化学気相蒸着法は、950℃以上1050℃以下の温度で行われる。
【0025】
前記化学気相蒸着法が行われる温度が前述した範囲内の場合、前記触媒層上に前記グラフェン層が安定的に形成可能であり、合成されるグラフェンの結晶性に優れることができる。すなわち、触媒層を形成するために使用される物質の融点を考慮して、前記化学気相蒸着法が行われる温度を設定することにより、前記触媒層上に前記グラフェン層を安定的に形成することができ、合成されるグラフェンの結晶性をより向上させることができる。
【0026】
また、前記化学気相蒸着法(CVD)が行われる温度は、前記グラフェンの品質評価方法により導出できる。例えば、CVDが行われる温度を異ならせて前記触媒層上に前記グラフェン層を形成し、前記グラフェンの品質評価方法を用いて、CVDが行われる温度に応じて合成されるグラフェンの品質を評価することができる。さらに、前記グラフェンの品質評価方法を用いて、触媒層の種類、触媒層の厚さ、炭化ソースの種類、炭化ソースが供給される量、グラフェンの合成時間などの条件に応じて好適なCVDの実行温度を導出することもできる。これにより、グラフェンの製造前に、グラフェンの製造工程で調節される条件などを考慮して、適切なCVDの実行温度を予め設定することができる。
【0027】
本発明の一実施態様によれば、前記グラフェンは、ロールツーロール工程で前記触媒層上に連続形成される。ロールツーロール工程により前記グラフェン層を形成するために、前記触媒層は、ロール形態で提供される。具体的には、前記触媒層は、前記ロールツーロール工程への使用に適した柔軟性を有する金属箔の形態で提供される。例えば、巻取られた金属箔の触媒層を巻出(unwind)し、巻出される触媒層上に化学気相蒸着法を用いてグラフェン層を形成することができる。
【0028】
図2は、本発明の一実施態様に係る共焦点レーザ走査顕微鏡を用いてグラフェンの品質を評価する方法を示す図である。
図2を参照すれば、前記共焦点レーザ走査顕微鏡は、光源10と、ビームスキャナ20と、中継レンズ30と、ビームスプリッタ40と、対物レンズ50と、チューブレンズ60と、カメラ70と、コリメータ80と、光検出器90とを含むことができる。ただし、前記共焦点レーザ走査顕微鏡に含まれる構成を前述のものに限定するわけではなく、当業界にて使用される共焦点レーザ走査顕微鏡に含まれる構成を追加的に含んでもよい。例えば、前記共焦点レーザ走査顕微鏡は、フィルタ、偏光板などをさらに含んでもよい。
【0029】
本発明の一実施態様によれば、触媒層上に形成されたグラフェン層にレーザ光を照射することができる。
図2を参照すれば、前記共焦点レーザ走査顕微鏡に含まれた光源10から放出されたレーザ光は、ビームスキャナ20で反射して、中継レンズ30、第1ビームスプリッタ41および対物レンズ50を経て、前記グラフェン層GLに照射される。
【0030】
本発明の一実施態様によれば、前記光源10は、レーザ光を出射できる光源で、当業界にて使用されるレーザ光源を制限なく利用可能である。この時、前記光源10は、出射されるレーザ光の波長値を調節することができる。前記光源10から出射された光は、光ファイバ11を通して前記ビームスキャナ20に照射される。
【0031】
本発明の一実施態様によれば、前記レーザ光は、400nm以上550nm以下の波長値で照射される。すなわち、前記光源は、400nm以上550nm以下の波長値を有するレーザ光を照射することができる。具体的には、前記レーザ光の波長値は、400nm以上545nm以下、400nm以上520nm以下、400nm以上500nm以下、または400nm以上490nm以下であってもよい。前記レーザ光の波長値が前記範囲内の場合、後述するグラフェン層の平面イメージにおいて前記触媒層と前記グラフェンが明確に区分可能である。これにより、前記平面イメージにおける前記触媒層と前記グラフェンのコントラスト比を効果的に分析することができる。
【0032】
本発明の一実施態様によれば、前記ビームスキャナ20は、前記対物レンズ50の焦点平面上で前記グラフェン層GLの表面位置をスキャンするための構成であってもよい。前記ビームスキャナ20は、共振型走査ミラー(resonant scanning mirror)およびガルバノミラー(galvano mirror)の少なくとも1つを含むことができる。具体的には、前記ビームスキャナ20は、ガルバノミラーを含むことができる。前記光源10から出射されたレーザ光は、前記ビームスキャナ20によって前記グラフェン層GLの表面の互いに異なる位置に照射される。具体的には、前記ビームスキャナ20は、前記対物レンズ50を通過したレーザ光が照射される前記グラフェン層GLの位置を変更することにより、前記グラフェン層GLを2次元平面スキャンすることができる。
【0033】
また、前記ビームスキャナ20は、軸方向スキャニングが可能な一軸スキャナをさらに含むことができる。前記一軸スキャナがさらに含まれることにより、対物レンズを動かさずに試験片の空間内で焦点を3次元にスキャニングすることもできる。この時、追加される一軸スキャナは、電子式または機械式焦点変調を用いて実現できる。
【0034】
本発明の一実施態様によれば、前記ビームスキャナ20で反射したレーザ光は、前記中継レンズ30に照射される。前記中継レンズ30は、第1中継レンズ31および第2中継レンズ32を含むことができる。前記中継レンズ30は、所定の倍率を有することができ、前記第1および第2中継レンズ31、32を調節して前記中継レンズ30の倍率を調節することができる。
【0035】
本発明の一実施態様によれば、前記中継レンズ30を通過したレーザ光は、前記第1ビームスプリッタ41および前記対物レンズ50を順次に通過して、前記グラフェン層GLに照射される。具体的には、前記レーザ光が照射される対象は、前記触媒層CLの表面一部上にグラフェンが合成されて形成されたグラフェン層GLであってもよい。前記グラフェン層GLは、前記触媒層CLの表面を完全にカバーせず、前記触媒層CLの一部を露出させていてもよい。すなわち、前記触媒層GLおよび前記触媒層CLの表面一部上に形成されたグラフェン層GLを含む複合体に前記レーザ光が照射される。これに関する具体的な内容は後述する。
【0036】
本発明の一実施態様によれば、前記グラフェン層(例えば、前記複合体)から反射したレーザ光(以下、反射光という)は、再度前記対物レンズ50を通過して、前記第1ビームスプリッタ41に流入することができる。前記第1ビームスプリッタ41に流入した前記反射光は2以上の光に分割され、このうち1つの光がチューブレンズ60に流入することができる。
【0037】
本発明の一実施態様によれば、前記チューブレンズ60は、ピンホール(pinhole)を含むことができ、前記ピンホールは、共焦点を形成するための構成に相当する。前記チューブレンズ60に含まれたピンホールは、開閉調節可能である。
【0038】
本発明の一実施態様によれば、チューブレンズ60を通過した光は、第2ビームスプリッタ42に流入し、2以上の光に分割される。
図2を参照すれば、第2ビームスプリッタ42で分割された光の一部はコリメータ80に流入し、他の一部はカメラ70にも流入可能である。この時、前記カメラ70は、CCDカメラであってもよい。前記コリメータ80は、前記第2ビームスプリッタ42で分割された光を受けて平行光に変換させることができる。
【0039】
本発明の一実施態様によれば、前記グラフェン層GLから反射した光の信号を検出することができる。前述のように、前記グラフェン層GLから反射した光は、対物レンズ50、第1ビームスプリッタ41、チューブレンズ60、第2ビームスプリッタ42、コリメータ80を通過して、光検出器90に流入することができる。前記光検出器60は、前記反射光の信号を検出することができる。前記光検出器60は、光ダイオードを含むことができ、前記光ダイオードを用いて流入した光から信号を検出することができる。具体的には、前記光ダイオードは、流入した光の強度を検出して、電流に変換させることができる。前記光検出器60としてフォトマルチプライヤチューブ(photomultiplier tube)を用いることができる。
【0040】
本発明の一実施態様によれば、前記検出された光信号を用いて前記グラフェン層の平面イメージを形成することができる。前記グラフェン層の平面イメージは、前記グラフェン層表面の平面イメージであってもよい。具体的には、前記平面イメージには、前記触媒層の表面一部に形成されたグラフェン層部分のイメージ、前記グラフェンが合成されずに露出した触媒層部分のイメージを含むことができる。
【0041】
本発明の一実施態様によれば、前記共焦点レーザ走査顕微鏡に備えられるか、または外部に備えられたイメージ形成器に前記検出された光信号を提供して、前記グラフェン層の平面イメージを形成することができる。前記イメージ形成器の種類を特に限定するものではなく、当業界にて電流を用いてイメージを形成できるソフトウェアが備えられた装置を制限なく使用可能である。
【0042】
本発明の一実施態様によれば、前記平面イメージにおいて前記触媒層と前記グラフェンのコントラスト比を分析することができる。前記平面イメージにおける前記触媒層と前記グラフェンのコントラスト比を分析する簡単な方法により、前記グラフェンの品質を迅速かつ効果的に分析することができる。
【0043】
本発明の一実施態様によれば、前記コントラスト比を分析するステップは、前記平面イメージの所定領域のグレースケールを分析して、前記領域における前記触媒層と前記グラフェンのコントラスト比を算出することを含むことができる。具体的には、前記グレースケールの分析は、前記領域におけるグレースケールヒストグラムまたはグレースケールプロファイルを取得して分析するものであってもよい。前記平面イメージから所定領域を選択し、選択された所定領域における触媒層とグラフェンのグレースケール(gray scale)に基づいてグレースケールヒストグラムまたはグレースケールプロファイルを取得することができる。前記取得したグレースケールヒストグラムまたはグレースケールプロファイルを分析して、最終的に前記触媒層とグラフェンのコントラスト比を算出することができる。
【0044】
本発明の一実施態様によれば、グレースケールプロファイルは、グレースケールのラインプロファイル(line profile)の形態で取得可能である。小さいサイズの領域を分析するためにグレースケールヒストグラムを用いる場合、グレースケールヒストグラムにおいてピークが小さく形成されてグラフェンピークと触媒層ピークとを区別することが困難になりうる。この場合、グレースケールヒストグラムの代わりにグレースケールプロファイルを用いることで、小規模領域における触媒層とグラフェンのコントラスト比を効果的に分析することができる。
【0045】
本発明の一実施態様によれば、前記グラフェンの品質評価方法は、ロールツーロール工程により前記触媒層上に連続的に形成されるグラフェンの品質をリアルタイムに評価することができる。具体的には、化学気相蒸着法が適用されたロールツーロール工程を用いてグラフェンを連続的に形成する過程中に、リアルタイムに合成されるグラフェンの品質を評価することができる。
【0046】
本発明の一実施態様によれば、前記グラフェンの品質評価方法は、前記グラフェンの連続形成中にリアルタイムに行われる。具体的には、前記グラフェンの品質評価方法は、前記触媒層上に前記グラフェン層が完全に形成される前に行われる。すなわち、合成されるグラフェンが前記触媒層の表面全体をカバーする前に、前記グラフェン層にレーザ光を照射して、前述のようにグラフェンの品質を評価することができる。前記触媒層の表面全体上に前記グラフェン層が形成される場合、前記平面イメージには前記グラフェン層だけが現れるので、前記触媒層と前記グラフェンのコントラスト比を分析することができない。
【0047】
本発明の一実施態様によれば、前記触媒層の単位面積あたりの前記グラフェンのカバー率が30%以上99%以下に形成されたグラフェン層にレーザ光を照射することができる。具体的には、レーザ光が照射される前記グラフェン層のカバー率は、30%以上95%以下、30%以上90%以下、30%以上85%以下、30%以上80%以下、35%以上75%以下、45%以上70%以下、50%以上65%以下、30%以上75%以下、または70%以上99%以下であってもよい。
【0048】
前記グラフェンのカバー率は、下記数式1により計算される。
[数式1]
カバー率(%)=触媒層の単位面積におけるグラフェン層の総面積/触媒層の単位面積
【0049】
前記グラフェンのカバー率が前述した範囲を満足するグラフェン層にレーザ光を照射してグラフェン層の平面イメージを取得する場合、前記平面イメージにおける触媒層とグラフェンのコントラスト比を効果的に分析することができる。
【0050】
また、本発明の一実施態様によれば、前記触媒層の単位面積あたりの前記グラフェンのカバー率が0.5%以上30%未満に形成されたグラフェン層にレーザ光を照射することができる。前記グラフェンのカバー率が前述した範囲を満足するグラフェン層にレーザ光を照射してグラフェン層の平面イメージを取得する場合、前記平面イメージにおけるグラフェン層のシード(seed)の形態および/またはグラフェン層が成長する形態を効果的に分析することができる。
【0051】
前記触媒層の単位面積は、10μm2以上10,000μm2以下であってもよいが、前記グラフェン層のカバー率を導出するための前記触媒層の単位面積範囲を前述した範囲に限定するものではない。
【0052】
本発明の一実施態様によれば、前記共焦点レーザ走査顕微鏡は、ピンホールなしに作動できる。後述する実施例から確認されたように、前記共焦点レーザ走査顕微鏡を作動するにあたり、ピンホールが備えられる場合と、ピンホールが備えられていない場合とで、取得される平面イメージに差はなかった。すなわち、前記グラフェンの品質評価を行うにあたり、共焦点を形成するためにピンホールを設定する工程を省略可能である。これにより、前記グラフェンの品質評価方法の実行時間および実行の難易度を効果的に低減することができる。
【0053】
本発明の一実施態様によれば、前記グラフェンの品質評価方法は、前記触媒層と前記グラフェンのコントラスト比を分析して、前記触媒層上に合成されるグラフェンの結晶性を評価することができる。前記触媒層と前記グラフェンのコントラスト比は合成されるグラフェンの欠陥に影響され、合成されるグラフェンの結晶性が優れているほど、前記コントラスト比は大きくなる。また、合成されるグラフェンの結晶性に優れているほど、グラフェンのキャリア移動度(carrier mobility)が増加できる。すなわち、前記触媒層上で合成されている前記グラフェン層の平面イメージから前記触媒層と前記グラフェンのコントラスト比を分析して、最終的に製造されるグラフェンの品質を予測することができる。
【0054】
本発明の一実施態様によれば、前記グラフェンの品質評価方法は、前記触媒層と前記グラフェンのコントラスト比が1.05以上の場合に、前記触媒層上に前記グラフェン層が形成されたと判別するステップをさらに含むことができる。具体的には、前記触媒層と前記グラフェンのコントラスト比が1.05以上の場合に、前記触媒層上にグラフェンが形成されて、グラフェン層が製造されたことを確認することができる。
【0055】
一方、前記触媒層と前記グラフェンのコントラスト比が1.10以上、または1.15以上の場合に、前記グラフェン層の品質を良品と判定することができる。また、前記触媒層と前記グラフェンのコントラスト比が1.5以下、1.45以下、1.4以下、1.35以下、または1.3以下の場合に、前記グラフェン層の品質を良品と判定することができる。前述のように、前記触媒層と前記グラフェンのコントラスト比が高いほど、より高品質のグラフェンが製造されるはずである。したがって、製造される前記グラフェンの用途などを考慮して、製造されたグラフェンを良品と判定する前記コントラスト比の数値を変更可能である。例えば、需要者が要求する物性に応じて、前記触媒層と前記グラフェンのコントラスト比が1.05未満の場合にも、良品と判定される。
【0056】
本発明の一実施態様によれば、前記触媒層上に前記グラフェン層を連続して形成する過程で、前記触媒層と前記グラフェンのコントラスト比を算出し、製造されたグラフェンのキャリア移動度を評価して、前記コントラスト比に応じたグラフェンの品質をデータベース化し、構築された前記データベースを用いて製造されたグラフェンを不良と判定する前記コントラスト比の数値を設定することができる。
【0057】
本発明の一実施態様によれば、前記グラフェンの品質評価方法は、不良と判定されたグラフェンを後続処理するステップをさらに含むことができる。前述のように、前記触媒層上に前記グラフェン層を連続して形成する過程で、前記触媒層と前記グラフェンのコントラスト比を算出して品質が不良と判定されたグラフェン層部分は後続処理可能である。例えば、不良と判定されたグラフェン層部分を含む複合体部分を回収して連続工程から排除させた後、前記不良と判定されたグラフェン層上に新しいグラフェン層を形成することができる。これにより、不良と判定されたグラフェン層がロールツーロール工程の後続する工程を行う前に予め排除して、ロールツーロール工程を用いたグラフェンの製造効率をより向上させることができる。また、不良と判定されたグラフェン層をグラフェンの合成ステップで回収して良品のグラフェン層に再度製造可能なため、グラフェンの製造費用を節減することができる。
【0058】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明に係る実施例は種々の異なる形態に変形可能であり、本発明の範囲が以下に述べる実施例に限定されると解釈されない。本明細書の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0059】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。
【0060】
実施例1
厚さが25μmの銅箔(純度99.7%)上に化学気相蒸着法(CVD)を用いてグラフェンを合成した。具体的には、水素とメタンガス(H2 5sccm/CH4 80sccm)の混合ガスを、銅箔入りの石英管炉(quartz tube furnace)に注入し、30mTorrの圧力下で1,000℃の温度に加熱した後、水素雰囲気下で30分間銅箔をアニーリングして、銅箔上にグラフェン層を形成して撮影用試験片を製造した。この時、前記混合ガスの注入時間(グラフェンの合成時間)は約13分であった。
【0061】
前記撮影用試験片は、励起電力(excitation power)が120mW、波長値が514nm、スポットサイズが1μmのAr+レーザを用いて励起(excited)された。
【0062】
共焦点レーザ走査顕微鏡(Carl Zeiss、LSM710)の反射(reflection)モードを用いて前記試験片の平面イメージを得た。具体的には、x100比率の対物レンズ(N.A=1.30)を用い、ガラス顕微鏡スライドで覆われたステージに試験片をローディングした。試験片の表面と対物レンズとの間の距離は色差の異なる焦点距離を補償するように調整し、ピンホールを開放し、共焦点レーザ走査顕微鏡を作動した。
【0063】
この時、試験片の表面に405nmの波長値を有するレーザ光を照射し、試験片の表面から反射した光の信号を検出して試験片の平面イメージを得た。この時、ZEN(black edition)およびZEN(blue edition)プログラムにより平面イメージファイルを抽出して分析し、追加的にadobe Photoshop CC2018を用いて分析した。
【0064】
実施例2
前記グラフェンの合成中に前記混合ガスの注入時間を10分に設定したことを除き、前記実施例1と同様の方法で、共焦点レーザ走査顕微鏡の反射モードを用いて試験片の平面イメージを得た。
【0065】
実施例3
前記実施例1と同様の方法で、共焦点レーザ走査顕微鏡の反射モードを用いて試験片の平面イメージを得た。
【0066】
以後、取得した平面イメージから所定領域を選択し、LSM 710 ZENソフトウェア(Carl Zeiss)を用いて当該領域におけるグレースケールを分析してグレースケールヒストグラムを作成した。以後、ヒストグラムのピーク点の比率を用いて前記グレースケールヒストグラムから当該領域における銅箔とグラフェンのコントラスト比を算出した。
【0067】
実施例4
前記実施例3において試験片の表面に照射されるレーザ光の波長値を488nmに調節したことを除き、前記実施例3と同様の方法で、試験片の平面イメージ、グレースケールヒストグラム、およびコントラスト比を得た。
【0068】
実施例5
前記実施例3において試験片の表面に照射されるレーザ光の波長値を543nmに調節したことを除き、前記実施例3と同様の方法で、試験片の平面イメージ、グレースケールヒストグラム、およびコントラスト比を得た。
【0069】
実施例6
前記実施例1において前記グラフェンの合成温度を700℃に設定して前記撮影用試験片を製造したことを除き、前記実施例1と同様の方法で、共焦点レーザ走査顕微鏡の反射モードを用いて試験片の平面イメージを得た。
【0070】
以後、取得した平面イメージから所定領域を選択し、ZEN(black edition)およびZEN(blue edition)プログラムにより平面イメージファイルを抽出して分析し、追加的にadobe Photoshop CC2018を用いて当該領域におけるグレースケールを分析してグレースケールのラインプロファイル(LINE PROFILE OF GRAYSCALE)を作成した。作成されたグレースケールのラインプロファイルに現れたピーク(peak)の上端でのグレースケールと下端でのグレースケールとの比を計算して、当該領域における銅とグラフェンのコントラスト比を算出した。
【0071】
また、Renishaw micro-Raman spectroscopy systemを用いて、前記試験片のラマンスペクトルを得た。取得したラマンスペクトルから、2Dの半値幅(full width of half maximum、FWHM)とD/Gの強度比率(intensity ratio)を抽出した。
【0072】
実施例7
前記実施例1において前記グラフェンの合成温度を800℃に設定したことを除き、前記実施例1と同様の方法で、前記撮影用試験片を製造した。
【0073】
以後、前記実施例6と同様の方法で、試験片の平面イメージ、グレースケールのラインプロファイル、およびコントラスト比を得た。また、前記実施例6と同様の方法で、試験片のラマンスペクトル、2Dの半値幅、およびD/Gの強度比率を得た。
【0074】
実施例8
前記実施例1と同様の方法で、前記撮影用試験片を製造した。
【0075】
以後、前記実施例6と同様の方法で、試験片の平面イメージ、グレースケールのラインプロファイル、およびコントラスト比を得た。また、前記実施例6と同様の方法で、試験片のラマンスペクトル、2Dの半値幅、およびD/Gの強度比率を得た。
【0076】
実施例9
前記実施例1においてピンホールを閉じたことを除き、前記実施例1と同様の方法で、共焦点レーザ走査顕微鏡の反射モードを用いて試験片の平面イメージを得た。
【0077】
実施例10
前記グラフェンの合成中に前記混合ガスの注入時間を約12分に設定したことを除き、前記実施例1と同様の方法で、前記撮影用試験片を製造した。
【0078】
以後、前記実施例3と同様の方法で、試験片の平面イメージ、グレースケールヒストグラム、およびコントラスト比を得た。また、前記実施例6と同様の方法で、試験片のラマンスペクトルを得た。
【0079】
実施例11
前記実施例1と同様の方法で、銅箔上にグラフェン層を形成した。以後、SNTEK RIEエッチング装置を用いて、120mTorrの窒素(純度99.999%)雰囲気で窒素プラズマを5秒間銅上のグラフェン表面に照射して、グラフェン層に窒素をドーピングして撮影用試験片を製造した。
【0080】
以後、ピンホールを開放し、試験片の表面に照射されるレーザ光の波長値を405nmに調節したことを除き、前記実施例3と同様の方法で、試験片の平面イメージ、グレースケールヒストグラム、およびコントラスト比を得た。また、前記実施例6と同様の方法で、試験片のラマンスペクトルを得た。さらに、Thermo scientific sigma probe ESCAスペクトロメーターでアルミニウムX-ray短波長の測定により、N1s XPSピークを得た。
【0081】
参考例1
AFM(Park system、XE-100 model)を用いて、下記
図3の(3)にて赤色ボックスで区分される試験片領域におけるAFMイメージを得た。この時、前記赤色ボックスで区分される領域の大きさは10×10μm
2であり、AFM(atomic force microscope)は非接触モード(non-contact mode)で走査率(scanning rate)が0.3Hzの条件に設定された。
【0082】
参考例2~参考例5
前記実施例1において、触媒層として銅箔の代わりにニッケル箔を用い、化学気相蒸着法を用いたグラフェン合成時の温度を835℃に調節したことを除き、前記実施例1と同様の方法で、撮影用試験片を製造した。
【0083】
以後、参考例2では405nm、参考例3では488nm、参考例4では543nm、参考例5では633nmの波長値を有するレーザ光を試験片の表面に照射したことを除き、前記実施例1と同様の方法で、共焦点レーザ走査顕微鏡の反射モードを用いて試験片の平面イメージを得た。
【0084】
参考例6~参考例9
前記実施例1において、触媒層として銅箔の代わりにパラジウム箔を用い、化学気相蒸着法を用いたグラフェン合成時の温度を1,000℃に調節したことを除き、前記実施例1と同様の方法で、撮影用試験片を製造した。
【0085】
以後、参考例6では405nm、参考例7では488nm、参考例8では543nm、参考例9では633nmの波長値を有するレーザ光を試験片の表面に照射したことを除き、前記実施に1と同様の方法で、共焦点レーザ走査顕微鏡の反射モードを用いて試験片の平面イメージを得た。
【0086】
比較例1
前記実施例1と同様の方法で、撮影用試験片を製造し、光学顕微鏡(Olympus CX41)の明視野(bright field)モードを用いて、前記試験片の明視野イメージを得た。
【0087】
比較例2
前記実施例1と同様の方法で、撮影用試験片を製造し、光学顕微鏡(Olympus CX41)の暗視野(dark field)モードを用いて、前記試験片の暗視野イメージを得た。
【0088】
比較例3
前記実施例1において前記グラフェンの合成中に前記混合ガスの注入時間を30分に設定してグラフェンの合成時間を30分に調節したことを除き、前記実施例1と同様の方法で、共焦点レーザ走査顕微鏡の反射モードを用いて前記試験片の平面イメージを得た。
【0089】
比較例4
前記実施例3において試験片の表面に照射されるレーザ光の波長値を633nmに調節したことを除き、前記実施例3と同様の方法で、試験片の平面イメージ、グレースケールヒストグラム、およびコントラスト比を得た。
【0090】
実験例1:グラフェン層の平面イメージの比較
図3は、試験片の同一領域に対して光学顕微鏡を用いて撮影したイメージと共焦点レーザ走査顕微鏡を用いて撮影したイメージを示す図である。具体的には、
図3の(1)は、比較例1により光学顕微鏡の明視野モードを用いて試験片を撮影したイメージであり、
図3の(2)は、比較例2により光学顕微鏡の暗視野モードを用いて試験片を撮影したイメージであり、
図3の(3)は、実施例1により共焦点レーザ走査顕微鏡の反射モードを用いて取得したイメージである。
図3の(1)~(3)におけるスケールバーの長さは10μmに相当する。
【0091】
図3を参照すれば、光学顕微鏡を用いて撮影した試験片の明視野イメージと暗視野イメージでは、触媒層の銅箔と合成されたグラフェンの区分が難しいことが分かる。
図3の(1)を参照すれば、光学顕微鏡の明視野イメージでは、銅箔上で部分的に成長したグラフェンは、非酸化の銅とほとんど区別されないことが分かる。
【0092】
一方、
図3の(2)を参照すれば、光学顕微鏡の暗視野イメージでは、グラフェンのエッジ部分が強調されて現れ、銅のグレインバウンダリー(grain boundary)と突出表面がレイリー散乱(Rayleigh scattering)によって明るく現れて、銅箔とグラフェンとの区分が難しいことが分かる。
【0093】
これに対し、
図3の(3)を参照すれば、共焦点レーザ走査顕微鏡の反射モードを用いて取得したイメージでは、合成されたグラフェンは明るく現れ、銅箔は暗く現れて、その区分が明確であることが分かる。
【0094】
すなわち、同一の試験片に対して従来の光学顕微鏡を用いて撮影したイメージでは、触媒層と合成されたグラフェンとの間の区分が難しいが、本発明の一実施態様に係る共焦点レーザ走査顕微鏡を用いて撮影したイメージでは、明確に区分されることを確認した。
【0095】
図4は、
図3の(3)にて赤色ボックスで区分される試験片領域におけるAFMイメージおよび深さ勾配を示すグラフである。具体的には、
図4の(1)は、前記参考例1により得た、
図3の(3)にて赤色ボックスで区分される試験片領域におけるAFMイメージであり、
図4の(2)は、
図4の(1)にて赤色点線に相当する部分における銅とグラフェンの深さ勾配を示すグラフである。
【0096】
図4を参照すれば、AFMを用いて前記試験片表面の形態と当該部分における深さ勾配を綿密に確認することができる。また、
図3の(3)を参照すれば、共焦点レーザ走査顕微鏡の反射モードを用いて取得したイメージからもグラフェンが部分成長した形態を概略的に確認することができ、これは
図4に示されたAFMイメージにおける試験片表面の形態と類似することを確認することができた。
【0097】
実験例2:グラフェンの合成時間に応じたグラフェン層の平面イメージの分析
図5は、グラフェンの合成時間を異ならせて製造した試験片を共焦点レーザ走査顕微鏡を用いて撮影したイメージを示す図である。具体的には、
図5の(1)は、実施例2によりグラフェンの合成時間を10分に調節した試験片に対して共焦点レーザ走査顕微鏡の反射モードを用いて取得したイメージであり、
図5の(2)は、実施例1によりグラフェンの合成時間を13分に調節した試験片に対して共焦点レーザ走査顕微鏡の反射モードを用いて取得したイメージであり、
図5の(3)は、比較例3によりグラフェンの合成時間を30分に調節した試験片に対して共焦点レーザ走査顕微鏡の反射モードを用いて取得したイメージである。
図5の(1)~(3)におけるスケールバーの長さは10μmに相当する。
【0098】
図5を参照すれば、グラフェンの合成時間が増加するに伴い、銅箔の表面をカバーするグラフェンの領域が増加することが分かる。
図5の(1)を参照すれば、実施例2の場合に、グラフェンは明るく現れ、銅箔は暗く現れて、コントラスト(contrast)が明確であることを確認することができた。また、
図5の(2)を参照すれば、実施例1の場合に、銅箔表面の多くの部分にグラフェンが合成されているが、暗く現れる銅箔と明るく現れるグラフェンのコントラストが可能であることを確認することができた。これに対し、
図5の(3)を参照すれば、グラフェンの合成時間が30分である比較例3の場合、銅箔表面全体上にグラフェンが合成されて、銅箔とグラフェンのコントラストが不可能であることを確認することができた。
【0099】
実験例3:レーザ光の波長値に応じた触媒層とグラフェンのコントラスト比の分析
図6は、試験片に照射されるレーザ光の波長値を異ならせて共焦点レーザ走査顕微鏡により撮影した試験片の平面イメージおよびこれにより取得したグレースケールヒストグラムを示す図である。
図6のCLSMイメージにおけるスケールバーの長さは10μmに相当する。
【0100】
具体的には、
図6には、同一の試験片に対して照射されるレーザ光の波長値を異ならせた実施例3~実施例5、および比較例4で取得した試験片の平面イメージ(CLSM IMAGE)を示した。また、
図6には、それぞれの平面イメージにおいて赤色箱で表示された領域におけるグレースケールを分析して作成したグレースケールヒストグラム(GRAYSCALE HISTOGRAM)を示した。グレースケールヒストグラムにおいて黒色のガウス(Gaussian)曲線は銅に対応し、赤色のガウス曲線はグラフェンに対応する。
【0101】
図6を参照すれば、同一の試験片に対して照射されるレーザ光の波長値に応じて取得される平面イメージにおける銅とグラフェンのコントラスト比が異なることを確認することができる。具体的には、試験片に照射されるレーザ光の波長値が633nmである比較例4の場合、平面イメージにおいて銅とグラフェンとが区別されず、グレースケールヒストグラム上でも銅のガウス曲線とグラフェンのガウス曲線とが重なっていることを確認した。
【0102】
これに対し、試験片に照射されるレーザ光の波長値が400nm以上550nm以下の範囲を満足する実施例3~実施例5の場合、平面イメージにおいて銅とグラフェンとが区別され、グレースケールヒストグラム上でも銅のガウス曲線とグラフェンのガウス曲線とが区別されることを確認することができる。特に、実施例3と実施例4において銅とグラフェンとがより明確に区別されており、実施例3において銅とグラフェンとが最も明確に区別されていることを確認した。
【0103】
図7は、実施例3~実施例5および比較例4で算出した銅とグラフェンのコントラスト比および理論を適用して計算したコントラスト比を示すグラフである。具体的には、
図7は、
図6に示されたグレースケールヒストグラムに基づいて算出された銅とグラフェンのコントラスト比の値を示した。また、
図7には、試験片に照射されるレーザの波長値に応じて理論的に計算される銅とグラフェンのコントラスト比値を併せて示した。
【0104】
図7を参照すれば、実施例3における銅とグラフェンのコントラスト比は1.260であり、実施例4における銅とグラフェンのコントラスト比は1.116であり、実施例5における銅とグラフェンのコントラスト比は1.057であり、比較例4における銅とグラフェンのコントラスト比は1.025であることを確認した。
【0105】
すなわち、本発明の一実施態様により試験片に照射されるレーザの波長値範囲が400nm以上550nm以下に調節される実施例3~実施例5において、触媒層である銅とグラフェンのコントラスト比が1.05以上で、触媒層上に形成されたグラフェンの品質を効果的に評価できることが分かる。これに対し、試験片に照射されるレーザの波長値が633nmである比較例4の場合、銅とグラフェンのコントラスト比が1.05未満で、銅とグラフェンとを分別して分析することが難しいことを確認した。
【0106】
図7に示された銅とグラフェンの理論的なコントラスト比値は、下記の方法で計算された。
【0107】
図8は、グラフェンと銅の理論的なコントラスト比値を計算するために設定される条件を概略的に示す図である。
【0108】
図8のように、グラフェンと銅の理論的なコントラスト比値を計算するために、銅とグラフェン層を独立した層として仮定した。銅とグラフェンの光学コントラスト比を計算するために、フレネル干渉公式(Fresnel’s interference formula)を適用した。
【0109】
【数1】
前記数式1中、n
Cuは銅の屈折率(refractive index)を意味し、σ
GPはグラフェンの光学伝導度(optical conductivity)を意味し、ε
0は真空の誘電率(dielectric permittivity)を意味し、cは光束を意味する。
【0110】
また、試験片に照射されるレーザ光の波長が405nmの場合に、銅の屈折率を1.3009+i2.1595に設定し、レーザ光の波長が488nmの場合に、銅の屈折率を1.2297+i2.5379に設定し、レーザ光の波長が543nmの場合に、銅の屈折率を1.0523+i2.5833に設定し、レーザ光の波長が633nmの場合に、銅の屈折率を0.26965+i3.4106に設定した。
【0111】
【数2】
の近似光学伝導度(approximated optical conductivity)がディラック・コーン(Dirac-cone)に近接して設定されると、光学反射コントラスト比であるRcは、1未満の非物理的値(unphysical value)を算出する。これは銅上のグラフェンの光学伝導度が可視範囲(visible range)で異なるスペクトルを有することを表す。したがって、銅上のグラフェンの光学特性を推定するために、強結合モデル(tight-binding model)を適用した。ディラック・コーン近似(approximation)下、スペクトルの可視範囲を説明するために、強結合モデルの2次項まで考慮した。
【0112】
400nm未満の波長で、強いキャリア・キャリア相互作用は、電子ジョイント密度(electronic joint density)でファンホーベ特異点(Van Hove singularity)をもたらす。したがって、前記近似値は可視スペクトル(E<3.1eV)またはそれ以下でのみ適用される。
【0113】
電子温度(electronic temperature)値が化学的電位(例えば、T/μ→0)より低い場合、帯内(intraband)および帯間(interband)寄与(contribution)によって、光学伝導性はドルーデ(Drude)と類似する(σ=σintraband+σinterband)。σintrabandとσinterbandは、下記数式の通りである。
【0114】
【数3】
前記数式2および3中、eは電子の電荷であり、
【数4】
はプランク定数(Plank constant)である。前記数式3中、θ(x)はパウリブロッキング(Pauli blocking)を説明するヘヴィサイド階段関数(Heaviside-step function)である。衝突速度はγ<<ωに比べて無視するに値すると仮定した。温度の補正は光学伝導度の実際および仮想部分につながる。
【0115】
【数5】
前記数式4および5中、σ
0は
【数6】
であり、これはグラフェンの普遍的な伝導度に相当する。tは第1近傍の隣りを次数3eVの値で連結するホッピングパラメータ(hopping parameter)であり、k
Bはボルツマン定数(Boltzmann constant)であり、ρ(E)は単位セルにおけるスピンあたりの状態密度を意味する。f
FD(x)は
【数7】
であり、これは、フェルミ・ディラック関数(Fermi-Dirac function)に相当する。また、g(X)は18-4x
2で定義した。
【0116】
図9は、数式4および数式5により計算されたグラフェンの光学伝導度を示すグラフである。具体的には、
図9は、405nm~633nmの波長値を有するレーザ光が照射される場合に、銅に合成されたグラフェンの実際の光学伝導度を数式4により計算した値、および銅に合成されたグラフェンの仮想光学伝導度を数式5により計算した値を示したものである。
【0117】
数式4および数式5を用いて、銅上に合成されたグラフェンと銅の反射コントラスト比を計算した。試験片に照射されるレーザ光の波長が405nmの時、グラフェンと銅のコントラスト比は1.447と計算され、レーザ光の波長が488nmの時のコントラスト比は1.326と計算され、レーザ光の波長が543nmの時のコントラスト比は1.277と計算され、レーザ光の波長が633nmの時のコントラスト比は1.043と計算された。
【0118】
図7に示されるように、前記理論を適用して計算された銅とグラフェンのコントラスト比の傾向性が、実施例3~実施例5と比較例4で測定した実際のコントラスト比の傾向性と類似することから、前記理論を適用して計算された銅とグラフェンのコントラスト比値が妥当であることを確認した。
【0119】
一方、
図7を参照すれば、実施例3~実施例5で測定したコントラスト比と、理論を適用して計算したコントラスト比とでやや差があることを確認した。これはグラフェンと銅の熱膨張係数が異なることによって合成されるグラフェンに若干の原子欠陥(atomic defect)と引張変形(tensile strain)が発生して、理想的な値より低い光学伝導度によると判断される。
【0120】
実験例4:グラフェンの合成温度に応じたコントラスト比とグラフェンのキャリア流動度の分析
図10は、合成温度を異ならせて製造されたグラフェンに対して共焦点レーザ走査顕微鏡により撮影した試験片の平面イメージおよびこれにより取得したグレースケールのラインプロファイルを示す図である。
【0121】
具体的には、
図10には、グラフェンの合成温度が700℃である実施例6、グラフェンの合成温度が800℃である実施例7、グラフェンの合成温度が1,000℃である実施例8で製造されたグラフェンに対して共焦点レーザ走査顕微鏡により撮影した試験片の平面イメージを示した。また、
図10には、それぞれの平面イメージにおいて赤色箱で表示された領域におけるグレースケールを分析して作成したグレースケールのラインプロファイル(LINE PROFILE OF GRAYSCALE)を示した。
【0122】
図10を参照すれば、実施例6、実施例7、および実施例8のグレースケールのラインプロファイルに現れたピーク(peak)の上端でのグレースケールと下端でのグレースケールとの比を計算して、当該領域における銅とグラフェンのコントラスト比を算出した。この時、ピークの上端と下端は、
図10のグレースケールのラインプロファイルに逆三角形にポインティングした。
【0123】
図10を参照すれば、実施例6における触媒層である銅とグラフェンのコントラスト比は1.10であり、実施例7におけるコントラスト比は1.24であり、実施例8におけるコントラスト比は1.28であった。グラフェンの合成温度が増加するに伴い、銅とグラフェンのコントラスト比が増加することを確認した。特に、グラフェンの合成温度が800℃以上では、銅とグラフェンのコントラスト比が1.20以上であることを確認した。
【0124】
図11は、本発明の実施例6、実施例7および実施例8で製造されたグラフェンそれぞれのラマンスペクトルおよび半値幅とD/Gの強度比率を示すグラフである。具体的には、
図11の(1)は、グラフェンの合成温度が700℃である実施例6、グラフェンの合成温度が800℃である実施例7、グラフェンの合成温度が1,000℃である実施例8で製造されたグラフェンのラマンスペクトルを示したものである。
図11の(2)は、実施例6、実施例7および実施例8で取得したラマンスペクトルから抽出したグラフェンの2Dの半値幅とD/Gを示したものである。
【0125】
図11を参照すれば、グラフェンの合成温度が増加するほど、グラフェンの2Dの半値幅とD/Gの強度比率が減少することを確認した。
【0126】
合成されたグラフェンのキャリア移動度(carrier mobility)は、2Dの半値幅と密接な関係があり、2Dの半値幅の関数としての経験式により推定できることが裏付けられている(Robinson,J.A.;Wetherington,M.;Tedesco,J.L.;Campbell,P.M.;Weng,X.;Stitt,J.;Fanton,M.A.;Frantz,E.;Snyder,D.;VanMil,B.L.Correlating Raman spectral signatures with carrier mobility in epitaxial graphene:a guide to achieving high mobility on the wafer scale.Nano letters2009,9,2873-2876)。
【0127】
これを用いて、実施例6、実施例7および実施例8で製造されたグラフェンそれぞれの2Dの半値幅からグラフェンのキャリア移動度を計算した。実施例6で製造されたグラフェンのキャリア移動度は357cm2/Vsであり、実施例7で製造されたグラフェンのキャリア移動度は619cm2/Vsであり、実施例8で製造されたグラフェンのキャリア移動度は8,105cm2/Vsであった。グラフェンの合成温度が増加するほど、製造されるグラフェンのキャリア移動度が増加することを確認した。特に、1,000℃の温度でグラフェンを合成した実施例8のグラフェンは、最も優れたキャリア移動度を有していることが分かる。
【0128】
図12は、本発明の実施例6、実施例7および実施例8で製造された試験片におけるグラフェンと銅のコントラスト比およびグラフェンのキャリア移動度を示す図である。
【0129】
図12を参照すれば、グラフェンの合成温度が増加するほど、試験片における銅とグラフェンのコントラスト比およびグラフェンのキャリア移動度が増加することを確認した。特に、前記コントラスト比が増加する場合に、前記キャリア移動度も増加する傾向性を確認した。これにより、触媒層上に製造されるグラフェンのコントラスト比を算出して、製造されるグラフェンのキャリア移動度を評価できることが分かる。
【0130】
実験例5:共焦点レーザ走査顕微鏡のピンホールの有無による平面イメージの分析
図13は、本発明の実施例1と実施例9により共焦点レーザ走査顕微鏡を用いて撮影したイメージを示す図である。具体的には、
図13は、ピンホールを閉じて共焦点レーザ走査顕微鏡を作動させた実施例9で取得した試験片の平面イメージと、ピンホールを開けて共焦点レーザ走査顕微鏡を作動させた実施例1で取得した試験片の平面イメージを示したものである。この時、
図6に示された実施例3による平面イメージは、
図13に示された実施例1による平面イメージを拡大した部分に相当する。
【0131】
図13を参照すれば、同一の試験片に対して同一の波長値(405nm)を有するレーザ光を照射する場合、実施例1で取得した平面イメージと、実施例9で取得した平面イメージとは、大差なく同一水準であることを確認した。すなわち、ピンホールの開閉に関係なく同一の試験片に対して同一の波長値を有するレーザ光を照射する場合、同一水準の試験片の平面イメージを取得できることが分かる。
【0132】
したがって、本発明の一実施態様に係るグラフェンの品質評価方法は、ピンホールを設定する工程を省略可能で、グラフェンの品質を評価する時間および難易度を効果的に低減できることが分かる。
【0133】
図14は、本発明の実施例4、実施例5および比較例4により共焦点レーザ走査顕微鏡を用いて撮影したイメージを示す図である。この時、
図6に示された実施例4、実施例5、および比較例4による平面イメージそれぞれは、
図14に示された実施例4、実施例5、および比較例4による平面イメージそれぞれを拡大した部分に相当する。
【0134】
実験例6:窒素ドーピングされたグラフェン層の分析
図15は、本発明の実施例10および実施例11による試験片を共焦点レーザ走査顕微鏡を用いて撮影したイメージを示す図である。
図15におけるスケールバーの長さは10μmに相当する。
【0135】
図16は、本発明の実施例10および実施例11による試験片のグレースケールヒストグラム、コントラスト比を示すグラフおよびラマンスペクトルを示す図である。具体的には、
図16の(1)は、実施例10のグラフェンと実施例11の窒素ドーピングされたグラフェンのグレースケールヒストグラムを示したものであり、
図16の(2)は、実施例10のグラフェンと実施例11の窒素ドーピングされたグラフェンの、銅とのコントラスト比を示したものであり、
図16の(3)は、実施例10のグラフェンと実施例11の窒素ドーピングされたグラフェンのラマンスペクトルを示したものである。
【0136】
図15を参照すれば、窒素がドーピングされたグラフェンは明るく現れ、銅は暗く現れて、窒素ドーピングされたグラフェンと銅のコントラストが明確であることを確認した。
【0137】
また、
図16を参照すれば、窒素がドーピングされたグラフェンに対してもグレースケールヒストグラムおよび銅のコントラスト比が得られることを確認した。
図16の(1)および(2)を参照すれば、窒素ドーピングされたグラフェン(実施例11)のコントラスト比は1.133、窒素ドーピングのないグラフェン(実施例10)のコントラスト比は1.248で、コントラスト比はやや低下するもののグラフェンの品質を確認できることが分かる。
【0138】
図17は、本発明の実施例11により窒素ドーピングされたグラフェンのN1s XPSピークを示す図である。具体的には、
図17の(1)は、実施例11により窒素ドーピングされたグラフェンのN1s XPSピークを示したものであり、
図17の(2)は、実施例11により窒素ドーピングされたグラフェンの形状を概略的に示したものである。
【0139】
図17を参照すれば、実施例11により窒素ドーピングされたグラフェンの場合、プラズマ窒素ドーピングによりグラフェンのsp
2結合を切り、それぞれのGraphitic nitrogen、Pyrrolic nitrogen、Pyridinic nitrogenがドーピングされたことを確認することができる。
【0140】
実験例7:触媒層の種類に応じた平面イメージの分析
図18は、参考例2および参考例6で製造されたグラフェンのラマンスペクトルを示す図である。
図18を参照すれば、ニッケル上で成長したグラフェン(参考例2)と、パラジウム上で成長したグラフェン(参考例6)の2D/Gピークは2未満であることを確認することができる。
【0141】
図19は、参考例2~参考例5で製造されたグラフェンに対して共焦点レーザ走査顕微鏡により撮影した試験片の平面イメージを示す図であり、
図20は、参考例6~参考例9で製造されたグラフェンに対して共焦点レーザ走査顕微鏡により撮影した試験片の平面イメージを示す図である。
【0142】
図19を参照すれば、共焦点レーザ走査顕微鏡の反射モードを用いて取得した参考例2~参考例5のイメージでは、合成されたグラフェンは暗く現れ、ニッケルは明るく現れて、その区分が明確であることが分かる。グラフェンとニッケルのコントラストは、試験片の表面に照射されるレーザ光の波長値に大きく影響されないことが確認されるが、543nmの波長でその対比が最も明確であることを確認した。
【0143】
また、
図20を参照すれば、参考例2~参考例5と類似して、共焦点レーザ走査顕微鏡の反射モードを用いて取得した参考例6~参考例9のイメージでは、合成されたグラフェンは暗く現れ、パラジウムは明るく現れて、その区分が明確であることが分かる。
【0144】
一方、合成されたグラフェンが明るく現れ、銅が暗く現れる実施例1の平面イメージと比較した時、参考例2~参考例9で合成されたグラフェンが暗く現れ、金属が明るく現れるのは、多層グラフェンの厚さと結晶性の差および金属の光学的特性に起因すると判断される。
【0145】
すなわち、本発明の一実施態様に係るグラフェンの品質評価方法は、多様な種類の金属層上で形成されるグラフェンの品質を評価できることが分かる。
【0146】
シミュレーション
前記グラフェンの光学伝導度は強結合近似法(tight-binding approximation)から誘導された。グラフェンのキャリアは(2+1)次元の相対論的無質量ディラック方程式(massless Dirac equation)で表現される。ディラック・ハミルトニアン方程式であるH=V
Fσ
αp
αは、電子(m=0)におけるキャリア電荷のエネルギースペクトルと、
【数8】
における正孔(m=1)帯域(band)を提供する。対応する波動関数は
【数9】
である。ここで、σ
αはα=(x、y)を有するパウリ(Pauli)行列であり、p
αは運動量演算子(momentum operator)であり、
【数10】
と
【数11】
は波動ベクトルである。
【0147】
久保公式(Kubo formula)を用いて、帯内(intraband)および帯間(interband)寄与(contribution)で構成されたグラフェンの有効伝導度(effective conductivity)を求めることができる(σ(ω)=σ
intraband(ω)+σ
interband(ω))。ここで、σ
intraband(ω)は
【数12】
であり、σ
interband(ω)は
【数13】
である。
【0148】
グラフェンが媒体1(空気)と媒体2(銅)との間にある場合、z=0におけるマクスウェル(Maxwell)方程式の境界条件は、次の通りである。
【数14】
ここで、ε
1とε
2は前記2つの媒体それぞれの誘電率であり、μ
1とμ
2は前記2つの媒体それぞれの透磁率(permeability)である。また、ρ
grapheneはグラフェンの電荷密度であり、
【数15】
は入射電場(incident electric field)であり、
【数16】
は反射した電場(reflected electric field)であり、
【数17】
は透過された電場(transmitted electric field)である。
【0149】
さらに、下記の関係を導出することができる。
【数18】
【0150】
磁場は入射平面に垂直であり、運動量空間で連続方程式(continuity equation)を適用すれば、下記の関係を導出することができる。
【数19】
【0151】
磁気透過率(magnetic permeabilitie)が0であるので、下記のような透過係数(transmission coefficient、t
p)と反射係数(reflection coefficient、r
p)を得ることができる。
【数20】
【0152】
グラフェンがなければ、前記係数は一般的な結果につながる。最終的に、波長と化学的電位の関数として下記のような反射率(R
p)と透過率(T
p)を得ることができる。
【数21】
【符号の説明】
【0153】
10:光源
11:光ファイバ
20:ビームスキャナ
30:中継レンズ
31:第1中継レンズ
32:第2中継レンズ
40:ビームスプリッタ
41:第1ビームスプリッタ
42:第2ビームスプリッタ
50:対物レンズ
60:チューブレンズ
70:カメラ
80:コリメータ
90:光検出器
CL:触媒層
GL:グラフェン層