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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-18
(45)【発行日】2025-06-26
(54)【発明の名称】水中形状情報取得システム
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/20 20060101AFI20250619BHJP
【FI】
G01B21/20 D
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2024042716
(22)【出願日】2024-03-18
【審査請求日】2024-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390014568
【氏名又は名称】東芝プラントシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】弁理士法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若松 敏文
(72)【発明者】
【氏名】武田 優大
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-187442(JP,A)
【文献】特開2008-256553(JP,A)
【文献】特開2022-187765(JP,A)
【文献】特開2021-079816(JP,A)
【文献】特開平01-232203(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112344877(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00 - 7/34
G01B 11/00 - 11/30
G01B 17/00 - 21/32
G01N 21/84 - 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクに貯留された液体中の対象物の形状情報を計測するための形状情報計測部と、
貯留された液体に浮遊し、前記液体中の形状情報計測部の位置を検出する位置検出ユニットとを備え、
前記形状情報計測部は前記位置検出ユニットに吊り下げられ、
前記位置検出ユニットは、
前記液体の液面に交差する方向の回転軸を中心として回転しながら前記タンクの内周面にレーザ光を照射し、前記照射されたレーザ光を受光することで前記内周面までの距離の測定結果を示す点群データを取得するレーザ測定部と、
前記取得された点群データで囲まれる領域のうちの特定の位置を、前記位置検出ユニットの原点として決定し、前記原点を基準として前記位置検出ユニットの移動に応じた前記位置検出ユニットのXY座標系上の位置を算出する位置検出部とを有する水中形状情報取得システム。
【請求項2】
前記位置検出ユニットは自走能力を有する船体を備え、
前記形状情報計測部は、前記位置検出ユニットの船体から吊り下げられた接続部材の先端に設けられた取付部に取り外し可能に連結された、請求項1記載の水中形状情報取得システム。
【請求項3】
前記形状情報計測部は前記液体中における深度を検出する深度センサと、
前記位置検出ユニットのXY座標系上の位置と、前記深度センサの深度を表すZ座標系上の位置とを表示する表示装置とをさらに備え、
前記表示装置は、撮像された対象物を前記液面に沿ったXYZ座標系上の画像として表示する、請求項1記載の水中形状情報取得システム。
【請求項4】
前記深度センサは圧力式である、請求項3記載の水中形状情報取得システム。
【請求項5】
前記形状情報計測部に対して超音波を照射してその反射光を受信することにより前記形状情報計測部の深度を検出する超音波出力センサと、
前記位置検出ユニットのXY座標系上の位置と、前記形状情報計測部の深度を表すZ座標系上の位置とを表示する表示装置とをさらに備え、
前記表示装置は、撮像された対象物を前記液面に沿ったXYZ座標系上の画像として表示する、請求項1又は2記載の水中形状情報取得システム。
【請求項6】
前記レーザ測定部を水平に保持するための水平度確認用加速度センサをさらに備えた、請求項1又は2記載の水中形状情報取得システム。
【請求項7】
前記接続部材に光ファイバジャイロでヨー軸の角度補正を行うジャイロセンサを搭載する、請求項2記載の水中形状情報取得システム。
【請求項8】
前記形状情報計測部はカメラである、請求項1記載の水中形状情報取得システム。
【請求項9】
タンクに貯留された液体中の対象物の形状情報を計測するための形状情報計測部と、貯留された液体に浮遊し、前記液体中の形状情報計測部の位置を検出する位置検出ユニットとを備えた水中形状情報取得システムの水中形状情報取得方法であって、
前記位置検出ユニットは、
前記液体の液面に交差する方向の回転軸を中心として回転しながら前記タンクの内周面にレーザ光を照射し、前記照射されたレーザ光を受光することで前記内周面までの距離の測定結果を示す点群データを取得するステップと、
前記取得された点群データで囲まれる領域のうちの特定の位置を、前記位置検出ユニットの原点として決定し、前記原点を基準として前記位置検出ユニットの移動に応じた前記位置検出ユニットのXY座標系上の位置を算出するステップとを含む水中形状情報取得方法。
【請求項10】
前記形状情報計測部は前記位置検出ユニットに吊り下げられた、請求項9記載の水中形状情報取得方法。
【請求項11】
前記位置検出ユニットは自走能力を有する船体を備え、
前記形状情報計測部は、前記位置検出ユニットの船体から吊り下げられた接続部材の先端に設けられた取付部に取り外し可能に連結された、請求項10記載の水中形状情報取得方法。
【請求項12】
前記形状情報計測部は、前記取付部に機械式のクランプ機構を用いて連結されるように構成された、請求項11記載の水中形状情報取得方法。
【請求項13】
前記形状情報計測部は、前記取付部に非接触式の渦電流式の磁気センサや光電式センサのクランプ機構を用いて遠隔でワイヤに装着された、請求項11記載の水中形状情報取得方法。
【請求項14】
前記形状情報計測部の前記液体中における深度を検出するステップと、
前記位置検出ユニットのXY座標系上の位置と、深度センサとの深度を表すZ座標系上の位置とを表示するステップとをさらに含み、
前記表示するステップは、撮像された対象物を前記液面に沿ったXYZ座標系上の画像として表示することを含む、請求項10記載の水中形状情報取得方法。
【請求項15】
前記形状情報計測部に対して超音波を照射してその反射光を受信することにより前記形状情報計測部の深度を検出するステップと、
前記位置検出ユニットのXY座標系上の位置と、前記検出された深度を表すZ座標系上の位置とを表示するステップとをさらに含み、
前記表示するステップは、撮像された対象物を前記液面に沿ったXYZ座標系上の画像として表示することを含む、請求項10記載の水中形状情報取得方法。
【請求項16】
前記形状情報計測部はカメラである、請求項10記載の水中形状情報取得方法。
【請求項17】
前記位置検出ユニットは自走能力を有する船体を備え、前記船体に前記形状情報計測部が一本吊りされた、請求項10記載の水中形状情報取得方法。
【請求項18】
前記形状情報計測部にプロペラが設けられ、前記プロペラの回転で移動速度を求め、積分して移動距離を算出する、請求項10記載の水中形状情報取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中形状情報取得システムに関する。
【背景技術】
【0002】
廃止措置プラントや福島震災後における原子力発電所の解体計画を行うために水中での形状情報を取得する必要がある。このために水中の炉内の形状測定行い、取得した点群データから図面化してその情報に基づいて原子力発電所の解体計画を企てる。
水中での形状情報を取得するための水中形状情報取得システムの方式には大きく分けて超音波式とレーザ式とがある。廃止措置プラントや福島県での震災における原子力発電所内では金属容器内で計測することとなるために、超音波式のシステムでは反響して使用する事は出来ず、レーザ式のシステムが使用される。このレーザ測定法にはTOF法や三角計測法等が知られており、TOF法ではレーザの被写体にあたり戻る時間を測定する為、レーザを苦手とする光沢のある金属や曲面等の測定では精度が落ちたり測定不良となる。また、三角法はレーザと受光カメラの角度で測定する距離が決まり、精度が高い反面測定対象物までの距離が限定されるという問題がある。
【0003】
従来、水中形状情報取得システムでは、測定対象物を広範囲に測定する場合には、測定開始時の原点と測定終了時の原点とがずれない事が正確な点群データを取得するためのキーとなる。そのために、水中形状情報取得システムを固定して回転計測する事でズレのない点群データを取得するシステムが主流となっているが固定設置できる個所は非常に限定される。
【0004】
そこで、ダイバーがカメラを手に持ち測定対象物まで近づいて撮影する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-61513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、廃止措置プラントや福島での震災後における原子力発電所の炉内などは放射線が高線量であり、ダイバーによる測定は不可能である。さらに、ダイバーが手動で測定するハンデイータイプの測定装置は距離や寸法を測定することができるが、原点位置が固定できない為データを合成するエリアの測定は出来ないという問題があった。
【0007】
本発明は上述の事情によりなされたもので、測定装置を固定して測定することがほとんど出来ない福島震災の原子力発電所や廃止措置プラントにおいて、測定装置を固定することなく未知の形状を高精度で測定が出来るシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、実施形態に係る水中形状情報取得システムは、貯留された液体中の対象物の形状情報を計測するための形状情報計測部と、貯留された液体に浮遊し、前記液体中の形状情報計測部の位置を検出する位置検出ユニットとを備え、前記形状情報計測部は前記位置検出ユニットに吊り下げられ、前記位置検出ユニットは、前記液体の液面に交差する方向の回転軸を中心として回転しながら前記タンクの内周面にレーザ光を照射し、前記照射されたレーザ光を受光することで前記内周面までの距離の測定結果を示す点群データを取得するレーザ測定部と、前記取得された点群データに基づいて、前記位置検出ユニットのXY座標系上の位置を算出する位置検出部とを有する。
【0009】
前記構成の一態様において、前記位置検出ユニットは自走能力を有する船体を備え、前記形状情報計測部は、前記位置検出ユニットの船体から吊り下げられた接続部材の先端に設けられた取付部に取り外し可能に連結された。
【0010】
前記構成の一態様において、前記形状情報計測部は前記液体中における深度を検出する深度センサと、前記位置検出ユニットのXY座標系上の位置と、前記深度センサの深度を表すZ座標系上の位置とを表示する表示装置とをさらに備え、前記表示装置は、前記撮像された対象物を前記液面に沿ったXYZ座標系上の画像として表示する。
【0011】
前記構成の一態様において、前記深度計は圧力式である。
【0012】
前記構成の一態様として、前記形状情報計測部に対して超音波を照射してその反射光を受信することにより前記形状情報計測部の深度を検出する超音波出力センサ、前記位置検出ユニットのXY座標系上の位置と、前記深度センサとの深度を表すZ座標系上の位置とを表示する表示装置とをさらに備え、前記表示装置は、前記撮像された対象物を前記液面に沿ったXYZ座標系上の画像として表示する。
【0013】
前記構成の一態様として、前記レーザ測定部を水平に保持するための水平度確認用加速度センサをさらに備えている。
【0014】
前記構成の一態様として、前記接続部材に光ファイバジャイロでヨー軸の角度補正を行うジャイロセンサを搭載している。
【0015】
前記構成の一態様として、前記形状情報計測部はカメラである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態による水中形状情報取得システム1を示すブロック図である。
図2】本実施形態による水中形状情報取得システム1を示す平面図である。
図3】本実施形態による水中形状情報取得システム1を示す図2のIII-III断面図である。
図4】本実施形態による水中形状情報取得システム1における位置検出ユニット20を示す側面図である。
図5】本実施形態による水中形状情報取得システム1における位置検出ユニット20を示す平面図である。
図6】本実施形態による水中形状情報取得システム1の変形例を示す概略図である。
図7】本実施形態による水中形状情報取得システム1の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明による実施形態を説明する。なお、実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0018】
先ず、図1図5を参照して、本実施形態による水中形状情報取得システム1について説明する。図1は本実施形態に係る水中形状情報取得システム1を示すブロック図である。図2図1の水中形状情報取得システム1の平面図である。図3図2のIII-III断面図である。図4図1の位置検出ユニット20の平面図である。
【0019】
水中形状情報取得システム1は、タンク9に貯留された水10の中に位置する原子力発電所の炉内などの対象物を撮像(計測)するための三次元形状計測装置(形状情報計測部)3の位置を、貯留された液体である水10に浮遊し、水中の三次元形状計測装置3の位置を検出する位置検出ユニット20で検出するために用いることができる。位置検出ユニット20に吊り下げられた三次元形状計測装置3は、潜水してタンク9の内部を撮像して金属製のタンク9の劣化等を検出する。
【0020】
図1に示すように、水中形状情報取得システム1は、位置検出装置2と、三次元形状計測装置3と三次元形状計測装置3の移動方向を指示する光源の発光体4と、三次元形状計測装置用電源ユニット7と、三次元形状計測装置用PC(personal computer)8とを備えて構成される。なお、本実施形態では、個の発光体4を用いて構成されているが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明は、発光体の数を1個もしくは2個で構成されてもよいし、5個以上を用いて構成されてもよい。図1の位置検出装置2は、タンク9に貯留された水10に浮遊し、水中の三次元形状計測装置3の位置を検出する。図1の位置検出装置2は、位置検出ユニット20と、位置検出用電源ユニット5と、表示装置である位置検出用PC6とを備えて構成される。ここで、位置検出部である位置検出用CPU22は、後述するように、取得された点群データに基づいて、位置検出ユニット20のXY座標系上の位置を算出する。そして、位置検出用CPU22は位置検出ユニット20のXY座標系上の位置のデータを位置検出用PC6に送信する。
【0021】
タンク9内において水10に浮遊する位置検出ユニット20は、地上側に配置される位置検出用電源ユニット5および位置検出用PC6とケーブル11で接続される。図2に示すように、位置検出ユニット20は、タンク9の天板90を部分的に貫通するタンクマンホール91を通してタンクマンホール91の上端部から吊り下げられた状態で水中に投入される。
【0022】
位置検出用電源ユニット5は、ケーブル11を介して位置検出ユニット20に電源を供給する。
【0023】
位置検出用PC6は、ケーブル11を介して位置検出ユニット20から、後述する原点を基準とした位置検出ユニット20の位置の検出結果を受信する。また、位置検出用PC6は、三次元形状計測装置用PC8から、後述する深度センサ31による三次元形状計測装置3の深度の検出結果を受信する。そして、位置検出用PC6は、これらの受信した検出結果に基づいて、後述する原点を基準とした三次元形状計測装置3の位置を算出(検出)する。そして、位置検出用PC6は、算出された三次元形状計測装置3の位置を、モニタの画面上にXY座標系上の画像および数値として表示する。
【0024】
タンク9内において潜水して作業する三次元形状計測装置3は、地上側に配置される三次元形状計測装置用電源ユニット7および三次元形状計測装置用PC8とケーブル12を介して接続されている。
【0025】
三次元形状計測装置用電源ユニット7は、ケーブル12を介して三次元形状計測装置3に電源を供給する。
【0026】
三次元形状計測装置用PC8は、ケーブル12を介して三次元形状計測装置3から、後述するカメラ33によるタンク9の内部の撮像画像と、後述する深度センサ31による三次元形状計測装置3の深度の検出結果とを受信する。三次元形状計測装置用PC8は、受信した三次元形状計測装置3の深度の検出結果を位置検出用PC6に送信する。
【0027】
以下、位置検出ユニット20について説明する。図1に示すように、位置検出ユニット20は、XY平面上においてZ軸を中心として360度回転可能なレーザ測定部であるレーザユニット(LIDER)21と、位置検出部である位置検出用CPU(中央演算処理装置)22と、撮像装置であるカメラ23と、移動装置である移動用スラスタ24と、CPU25と、スラスタ起動ユニット26と、レーザユニット21を水平に保持するための水平度確認用加速度センサ27と、電源分離ユニット28とを備えて構成される。さらに、図3および図4に示すように、位置検出ユニット20は、自走能力を有する自走式の船体(フレーム)210と、浮力体211と、船体210の移動を制御するための船体制御装置26とを備えて構成される。ここで、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸を有する座標系において、重力方向と逆方向Z軸とする。レーザユニット(LIDER)21はZ軸を中心に360度回転し、測定対象物までの距離を測定して船体(フレーム)210がどこにいるかを判断し測定位置を特定化する。
【0028】
図3に示すように、船体210上に船体制御装置26と、水平度確認用加速度センサ27と、カメラ23とが取り付けられ、水平度確認用加速度センサ27上にレーザユニット21が取り付けられている。また、船体210の下部には浮力体211が取り付けられ、浮力体211の下部に位置検出ユニット20が移動するためのスラスタ24がそれぞれ設けられている。
【0029】
なお、姿勢制御機構の回転体として、リアクションホイールを用いて構成されてもよい。ここで、リアクションホイールは、ホイール(円板)と、そのホイールの回転軸に接続されたモータとを有する。モータはホイールに回転トルクを加えると、回転トルクと反対方向にトルクを受ける。したがって、モータを機体に固定してホイールを回転させると、機体はホイールの回転方向とは反対方向へ回転を開始する。このように、ホイールの回転を適切に制御することで、レーザユニット21の姿勢を制御することができる。
また、船体210の回転制御機構として慣性計測装置(IMU)を、船体210の移動方向を維持するために一軸ジャイロシステムを用いて構成されてもよい。
三次元形状計測装置3は、位置検出ユニット20の船体(フレーム)から吊り下げられた一本吊治具(接続部材)46の先端に設けられた取付部(吊具)47に取り外し可能に連結されている。
【0030】
また、IMUを使用して位置情報を得るように構成されてもよい。この場合には、一本吊でロールとピッチは制限されるので、回転方向のヨー軸のズレを減らすことが必要となる。従って、ヨー軸は進行方向に影響を与えるため、進行方向を制御する為IMUの位置情報に光ファイバジャイロで補正を行い長時間ヨー軸の角度を安定させることで進路を測定する。
【0031】
図4において、位置検出ユニット20は、十字状に交差する棒状の4本のフレーム210を有しており、各フレーム210の交差位置には、レーザユニット21および水平度確認用加速度センサ27が上下に配置され、各フレーム210の交差位置の反対側には、浮力体211および移動用スラスタ24が配置されている。
【0032】
レーザユニット21は、レーザ距離計と、該レーザ距離計を制御する制御部とを有する。レーザユニット21は、浮力体211の浮力によって水に浮遊した状態で、水面10aにほぼ直交(すなわち、交差)する方向の回転軸を中心として360度回転しながら、レーザ距離計の照射部から内周面90aにレーザ光を照射する。レーザユニット21は、内周面90aに照射したレーザ光をレーザ距離計の図示しない受光部で受光することで、位置検出ユニット20(すなわち、位置検出装置2)から内周面90aまでの距離の測定結果を示す点群データを取得する。
【0033】
図3に示されるように、レーザユニット21は、位置検出ユニット20が水10に浮遊している状態において、水10に浸からずに水面10aの上方に位置している。これにより、レーザユニット21が水面10aよりも上方に位置することで、レーザユニット21が空気中でレーザ光を照射および受光することができる。これにより、タンク9の内周面90aまでの距離を正確に示す点群データを得ることができる。
【0034】
図3に示すように、カメラ23は、水中に位置する三次元形状計測装置3を撮像する。カメラ23は、位置検出ユニット20が水10に浮遊した状態において、光軸が鉛直下方を向くように船体(フレーム)210上に配置される。
【0035】
移動用スラスタ24は、水面10a上で位置検出ユニット20を移動させる。ここで、移動用スラスタ24の起動および停止は、スラスタ起動ユニット26によって実行される。図1に示すように、三次元形状計測装置3に搭載された3つの発光体4は、三次元形状計測装置3の移動方向を指示するように三角形状に配置されている。スラスタ起動ユニット26は、後述するカメラ23による三次元形状計測装置3の撮像画像のうちの発光体4の画像の位置が変化した場合に、発光体4の画像によって特定された移動方向Aに向かって位置検出ユニット20が移動するように移動用スラスタ24を起動する。これにより、三次元形状計測装置3の移動に追従するように位置検出ユニット20を移動させて、三次元形状計測装置3をカメラ23の視野角内に捕捉し続けることができる。なお、三次元形状計測装置3をカメラ23の視野角内に捕捉し続けるための位置検出ユニット20の移動は、カメラ23の撮像画像を確認しながら作業者が手動で行ってもよい。
【0036】
位置検出用CPU22は、レーザユニット21で取得された点群データに基づいて位置検出ユニット20(すなわち、位置検出装置2)の原点を決定する。より詳しくは、位置検出用CPU22は、レーザユニット21で取得された点群データで囲まれる領域のうちの特定の位置を、位置検出ユニット20の座標(位置)の原点として決定する。例えば、原点は、点群データで囲まれる領域の中心点すなわちタンク9の中心であってもよい。そして、位置検出用CPU22は、決定された原点を基準とした三次元形状計測装置3の位置を検出するための処理を実行する。
【0037】
具体的には、位置検出用CPU22は、移動用スラスタ24による位置検出ユニット20の移動に応じて、原点を基準とした位置検出ユニット20のXY座標系上の位置を検出する。より詳しくは、位置検出用CPU22は、移動用スラスタ24による移動後にレーザユニット21によって取得された点群データで囲まれる領域のうちの位置検出ユニット20の位置と、原点とを比較することで、原点を基準とした位置検出ユニット20の位置を検出する。この構成により、原点登録することで自由にデータを採取し、データを合成することで立体化することが可能になる。
【0038】
また、位置検出用CPU22は、カメラ23による三次元形状計測装置3の撮像画像を、CPU25を介して取り込み、取り込まれた三次元形状計測装置3の撮像画像に基づいて、位置検出ユニット20の位置を三次元形状計測装置3の位置として検出する。より詳しくは、位置検出用CPU22は、発光体4の点滅を、カメラ23による三次元形状計測装置3の撮像画像を介して認識し、CPU25を介して取り込んだ三次元形状計測装置3の撮像画像を画像処理することで、位置検出ユニット20の位置を三次元形状計測装置3の位置として検出する。
【0039】
位置検出用CPU22は、原点を基準とした位置検出ユニット20の検出結果と、原点を基準とした三次元形状計測装置3の位置の検出結果とを、ケーブル11を介して位置検出用PC6に送信する。
【0040】
位置検出用PC6は、位置検出用CPU22から送信された原点を基準とした位置検出ユニット20の位置を三次元形状計測装置3の位置として表示する。
【0041】
水平度確認用加速度センサ27は、位置検出ユニット20を水中に投入する際に、位置検出ユニット20が水面10aに対して平行すなわち水平になっているか否かを確認する。位置検出ユニット20が水面10aに対して平行になっていない場合、吊下げ装置は、水平度確認用加速度センサ27で平行になっていると確認されるまで、位置検出ユニット20の傾きを調整する。
【0042】
CPU25は、位置検出ユニット20の各構成部21~24、26、27の動作を統括して制御する。電源分離ユニット28は、位置検出用電源ユニット5から供給された電源を位置検出ユニット20の各構成部21~27に分配する。
【0043】
以下、三次元形状計測装置3について詳しく説明する。図1に示すように、三次元形状計測装置3は、深度計である深度センサ31と、マーカ制御ユニット32と、貯留された液体中の対象物の形状情報を計測するための形状情報計測部であるカメラ33と、CPU34と、電源分離ユニット35とを備えて構成される。
【0044】
深度センサ31は、三次元形状計測装置3に搭載され、水中での三次元形状計測装置3の深度を検出する。深度センサ31は、圧力式の深度センサである。磁気式の深度センサではなく圧力式の深度センサ31を採用することで、金属製のタンク9による反響の影響を受けることなく、三次元形状計測装置3の深度を正確に検出できる。
【0045】
なお、本発明では三次元形状計測装置3の水面からの距離(深度)は圧力式深度センサを用いて構成される。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明は、圧力式深度センサの代わりに超音波式の深度センサを用いて構成されてもよい。図6のようにワイヤ内部に超音波を発信し三次元形状計測装置3の上部に反射板51を設置して超音波の反射速度を測定し深度を測定する。すなわち、超音波式の深度センサは三次元形状計測装置3に対して超音波を照射してその反射光を受信することにより三次元形状計測装置3の深度を検出することが可能となる。この構成によれば、金属環境下で問題となる超音波ノイズによる影響を受けない。さらに、塩分や温度変化がある環境における影響で精度が落ちることがない。
【0046】
深度センサ31は、三次元形状計測装置3の深度の検出結果を、ケーブル12を介して三次元形状計測装置用PC8に送信する。三次元形状計測装置用PC8は、送信された深度の検出結果を位置検出用PC6に転送する。
【0047】
マーカ制御ユニット32は、発光体4が点滅するように発光体4の駆動を制御する。
【0048】
カメラ33は、タンク9の内部を撮像する。カメラ33は、タンク9の内部の撮像画像を、ケーブル12を介して三次元形状計測装置用PC8に送信する。
【0049】
CPU25は、三次元形状計測装置3の各構成部31~33の動作を統括して制御する。
【0050】
電源分離ユニット35は、三次元形状計測装置用電源ユニット7から供給された電源を三次元形状計測装置3の各構成部31~34に分配する。
【0051】
次に、原子力発電所の炉内などの対象物を撮像する方法について説明する。
【0052】
先ず、図3に示したように、吊下げ装置によってタンクマンホール91からタンク9の内部に位置検出ユニット20を吊り下げた状態で、位置検出ユニット20を水中に投入する。このとき、水平度確認用加速度センサ27は、位置検出ユニット20が水面10aに対して水平になっているか否かを確認し、水平になっていない場合、吊下げ装置は、水平になるように位置検出ユニット20の傾きを調整する。
【0053】
そして、レーザユニット21は、位置検出ユニット20が水中に投入された位置すなわちタンクマンホール91の直下において、水面10aにほぼ直交する回転軸(Z軸)を中心とした回転方向に360度回転しながら、タンク9の内周面90aに周方向に沿ってレーザ光を照射する。そして、レーザユニット21は、内周面90aに照射したレーザ光を受光し、レーザ光の照射から受光までの時間に基づいて、位置検出ユニット20から内周面90aまでの距離を測定する。そして、レーザユニット21は、距離の測定結果を示す点群データを取得する。
【0054】
点群データを取得した後、位置検出用CPU22は、取得された点群データで囲まれる領域のうちのタンク9の中央位置を計算し、計算されたタンク9の中央位置を、位置検出ユニット20の原点(0,0)として決定する。
【0055】
また、移動用スラスタ24は、三次元形状計測装置3に搭載された発光体4がカメラ23の視野角内に捕捉される位置まで自動または手動で位置検出ユニット20を移動する。
【0056】
原点を決定した後、位置検出ユニット20のカメラ23は、三次元形状計測装置3の発光体4を撮像する。発光体4の撮像は、発光体4が捕捉される位置まで位置検出ユニット20を移動させた後に行われる。
【0057】
発光体4を撮像した後、位置検出用CPU22は、移動後にレーザユニット21によって取得された点群データで囲まれる領域のうちの位置検出ユニット20の位置と、原点とを比較することで、原点(0,0)を基準とした位置検出ユニット20の位置を算出する
【0058】
次に、三次元形状計測装置用PC8は、深度センサ31により検出された深度データを受信し、位置検出用PC6に送信する。位置検出用PC6は、原点を基準とした位置検出ユニット20の位置の検出結果を受信する。そして、位置検出用PC6は、これらの受信した検出結果に基づいて、原点を基準とした三次元形状計測装置3の位置を算出(検出)する。この算出されたタイミングにて、カメラ33によるタンク9の内部が撮像され撮像画像データが三次元形状計測装置用PC8を介して位置検出用PC6に送信される。そして、位置検出用PC6は、算出された三次元形状計測装置3の位置を、モニタの画面上にXY座標系上の画像および数値として表示する。各座標における画像を合成することにより、対象物の3次元画像が位置検出用PC6に表示される。
【0059】
本実施形態に係る水中形状情報取得システム1によれば、炉内に測定装置を固定して測定することがほとんど出来ない廃止措置プラントや福島震災における原子力発電所などの分厚い金属やコンクリートでおおわれた場所においても、測定装置を固定することなく未知の形状を高精度測定が可能となる。
【0060】
[その他の実施形態]
三次元形状計測装置3は、ジャイロセンサを備えて構成されてもよい。この場合には、角度を検出し姿勢制御用フライホイールを回転制御することで、回転力により姿勢を安定させることが可能となる。
また、一本吊治具(接続部材)46にジャイロセンサ50(図6参照)を搭載し常に三次元形状計測装置3が水平となるように制御するように構成されてもよい。したがって、船体(フレーム)210が移動すると船体(フレーム)210に傾きが発生する場合においても三次元形状計測装置3を水平に保つことが可能となる。
【0061】
上記実施形態では、自走式の船体を用いてその船体に三次元形状計測装置3を一本吊りした。本発明はこれに限定されない。例えば、自走式の船体を使用しないで、クレーン等を用いて一本吊りで三次元形状計測装置3を移動させるように構成されてもよい。
この場合には、図7に示すように、三次元形状計測装置3の下に円筒状の筒に120度間隔で3基のプロペラを設けた測定器48をつける。プロペラの回転で移動速度を求め、積分して移動距離を算出する。測定部の向きを正面として最初に方位を決めて投入し、一軸センサで角度(方位)を求めて移動距離と合わせて位置を特定する。なお、図ではプロペラを3基として図示されているが、3基以上であればよく、プロペラの数が多ければ測定精度は向上する。
【0062】
図7に示すように、位置検出ユニット20Aは、上述した実施形態に係る位置検出ユニット20と比較すると、レーザユニット21を2個備えたことが相違する。位置検出ユニット20Aは、距離測定用のレーザユニット(LIDER)21を2個用いて270度測定して測定角度をラップさせて死角を無くして補正することで360度測定を行うことが可能となる。
【0063】
図7に示すように、位置検出ユニット20Aを矢印A方向に移動させて後からステンレス製ワイヤを用いて1本吊りされた三次元形状計測装置3にクランプ機構を用いて接続するように構成されてもよい。
この場合には、機械式のクランプ機構を用いて構成されてもよい。さらに、非接触式の渦電流式の磁気センサや光電式センサ等のクランプ機構55(図7参照)を用いて遠隔でワイヤに装着するように構成されてもよい。この場合には、クランプ機構55を使用し、U字型の船体の中央部にワイヤを合わせると8ミリ(mm)の位置でワイヤを検出し、一定方向にスラスタを制御することで隙間を維持しながら位置検出ユニットで三次元形状計測装置3の位置を特定化する。この構成によれば、機械式のクランプ機構を用いるのと比較すると、把持力や角度などによりワイヤにテンションが張り水中の三次元形状計測装置3の姿勢に影響が出ることはない。
【0064】
本発明の幾つかの実施形態を説明したが、前記各実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施しうるものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1 水中形状情報取得システム
2 位置検出装置
3 三次元形状計測装置(形状情報計測部)
4 発光体
5 位置検出用電源ユニット
6 位置検出用PC
7 三次元形状計測装置用電源ユニット
8 三次元形状計測装置用PC
9 タンク
10 水
20 位置検出ユニット
21 レーザユニット
22 位置検出用CPU
23,33 カメラ
24 移動用スラスタ
25,34 CPU
26 スラスタ起動ユニット
27 水平度確認用加速度センサ
28,35 電源分離ユニット
31 深度センサ
32 マーカ制御ユニット
【要約】      (修正有)
【課題】炉内に固定して計測することがほとんど出来ない福島震災の原子力発電所や廃止措置プラントにおいて、固定することなく未知の形状を高精度で測定が出来るシステムを提供する。
【解決手段】貯留された液体中の対象物の形状情報を計測するための形状情報計測部3と、貯留された液体に浮遊し、前記液体中の形状情報計測部の位置を検出する位置検出ユニット20とを備え、前記形状情報計測部は前記位置検出ユニットに吊り下げられ、前記位置検出ユニットは、前記液体の液面に交差する方向の回転軸を中心として回転しながら前記タンクの内周面にレーザ光を照射し、前記照射されたレーザ光を受光することで前記内周面までの距離の測定結果を示す点群データを取得するレーザ測定部21と、前記取得された点群データに基づいて、前記位置検出ユニットのXY座標系上の位置を算出する位置検出部とを有する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7