(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-18
(45)【発行日】2025-06-26
(54)【発明の名称】ウニ様食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 17/00 20160101AFI20250619BHJP
A23B 2/80 20250101ALI20250619BHJP
【FI】
A23L17/00 101D
A23L17/00 101E
A23B2/80 Z
(21)【出願番号】P 2020168607
(22)【出願日】2020-10-05
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000119520
【氏名又は名称】一正蒲鉾株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084102
【氏名又は名称】近藤 彰
(72)【発明者】
【氏名】苗代 慧
(72)【発明者】
【氏名】大塚 葉奈子
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-102703(JP,A)
【文献】特開2001-224339(JP,A)
【文献】特開平01-257448(JP,A)
【文献】特公昭62-019819(JP,B2)
【文献】特開2000-116358(JP,A)
【文献】特開昭61-202669(JP,A)
【文献】特開昭56-072665(JP,A)
【文献】特開昭62-019819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
Google
日経テレコン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚肉すり身5.0~20.0重量%、こんにゃく粉0.6~1.4重量%、植物油5.0~9.0重量%、水65.0~75.0重量%の範囲で
、且つ魚肉すり身に対するこんにゃく粉の混合比率が8:2以上となる範囲内で適宜組み合わせた主材料に、ウニ風味調味料を含む適宜な調味料及び品質改良剤を加えて擂潰し、擂潰物を加熱処理して製造したことを特徴とするウニ様食品の製造方法。
【請求項2】
擂潰物をフィルム袋に封入して加熱処理した後に凍結する請求項1記載のウニ様食品の製造方法。
【請求項3】
魚肉すり身5.0~20.0重量%、こんにゃく粉0.6~1.4重量%、植物油5.0~9.0重量%、水65.0~75.0重量%の範囲で
、且つ魚肉すり身に対するこんにゃく粉の混合比率が8:2以上となる範囲内で適宜組み合わせた主材料に、ウニ風味調味料を含む適宜な調味料及び品質改良剤を加えた擂潰物の加熱処理物がフィルム包装袋に充填されて、チルド流通食品又は冷凍食品としたウニ様食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウニ様食品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
魚肉すり身を使用してウニ様食品を製造することは従前より種々提案されている。
特許文献1には、ウニ風味に味付けした魚肉すり身を主材とする練肉を顆粒状にし、表面を蛋白変性剤で短繊維状魚肉を得、更につなぎ練肉を混合して蒸煮して蒸しウニ様食品を得る製造方法が開示されている。
【0003】
特許文献2には粒状の植物性蛋白、食用油脂と水で伸ばした魚肉すり身をウニ風に味付けして練り合わせ、加熱処理(油中加熱、蒸煮後油中加熱、蒸煮後熱風乾燥)して、二種類の食感によってウニに類似性を確保する製造方法が開示されている。
【0004】
また魚肉練り製品の物性(食感・歯ごたえ)調整として、魚肉すり身にグルコマンナンを混合する製造方法が知られている。例えば特許文献3には、アルカリ変性させたマンナンゲル状物を魚肉磨砕工程で5重量%以上混合する魚肉練り製品の製造方法が開示されており、また特許文献4には、アルカリ剤添加のマンナンペーストと魚肉すり身ペーストと食用油に、特にトランスグルタミナーゼを加えて混合し、加熱処理して製出する蒲焼様魚肉練り製品の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公昭61-59095号公報。
【文献】特公昭62-19819号公報。
【文献】特開平6-189720号公報。
【文献】特開2015-43745号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従前のウニ様食品は、外観を重視するためにウニの粒状食感が前提となっているが、生ウニは粒状食感よりもゲル状食感が現実に近いものである。また柔らかい食感の魚肉練り製品の製造方法としてグルコマンナンを混合することが知られているが、特定の疑似食品(ウナギの蒲焼)のために、特定の物性改良剤(トランスグルタミナーゼ)や特定の製造工程を必須としているものである。
【0007】
そこで本発明は物性(食感)が生ウニに近く、且つ容易に製造が可能であるウニ様食品及びその製造方法を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るウニ様食品の製造方法は、魚肉すり身5.0~20.0重量%、こんにゃく粉0.6~1.4重量%、植物油5.0~9.0重量%、水65.0~75.0重量%の範囲で適宜組み合わせた主材料に、ウニ風味調味料を含む調味料及び品質改良剤を加えて擂潰し、加熱処理して製造したことを特徴とするものであり、また前記加熱処理後に凍結したことを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係るウニ様食品は、上記製造方法と同様の成分構成で、擂潰・加熱処理物がフィルム包装袋に充填され、チルド流通食品又は冷凍食品としたことを特徴とするものである。
【0010】
魚肉すり身とこんにゃく粉と植物油と水を特定の範囲内の組み合わせで混合擂潰すると、乳化して蕩ける食感(ゲル化状態)の物性を備えた食品を得ることができ、ウニペーストやウニフレーバー等の風味調味料、加工でん粉やキサンタンガム、日持ち向上剤、色合いを調製する色素を添加して一緒に擂潰混合し、加熱処理することで、外観上も風味も生ウニに酷似した食品を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の構成は上記の通りで、所定の材料を混合擂潰しフィルム袋充填して加熱処理するという簡単な製造工程で、生ウニ様の食品を提供できたものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】同使用材料の特定(表2・商品名及びメーカー名)。
【
図5】同魚肉すり身の配合比率検証用の試料配合(表5)。
【
図6】同魚肉すり身の配合比率別の破断強度と破断変形(グラフ2)。
【
図7】同魚肉すり身の配合比率別の試料の状態と官能評価(表6)。
【
図8】同こんにゃく粉の配合比率検証用の試料配合(表7)。
【
図9】同こんにゃく粉の配合比率別の破断強度と破断変形(グラフ3)。
【
図10】同こんにゃく粉の配合比率別の試料の状態と官能評価(表8)。
【
図11】同植物油の配合比率検証用の試料配合(表9)。
【
図12】同植物油の配合比率別の破断強度と破断変形(グラフ4)。
【
図13】同植物油の配合比率別の試料の状態と官能評価(表10)。
【
図14】同水の配合比率検証用の試料配合(表11)。
【
図15】同水の配合比率別の破断強度と破断変形(グラフ5)。
【
図16】同水の配合比率別の試料の状態と官能評価(表12)。
【
図17】同魚肉すり身、こんにゃく粉、植物油、水の各最小・最大の配合比率を組み合わせた検証用の試料配合(表13,14)。
【
図18】同魚肉すり身、こんにゃく粉、植物油、水の各最小・最大の配合比率を組み合わせた試料の破断強度と破断変形(グラフ6)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に本発明の実施形態について説明する。
図2(表2)に示した使用材料を、
図1(表1)の配合比率で調合して擂潰機(Stephan社のUMC5)に投入して3,000rpmで乳化状態になるまで擂潰し、フィルム包装袋に充填して加熱処理する。加熱処理は90℃40分のボイル加熱で、加熱処理後に冷却し、更に冷凍庫(-20℃)で凍結する。
【0014】
商品としては、冷凍食品或いはチルド食品として流通させ、食に供する際に自然解凍をなすもので、前記食品は、生ウニ同様な蕩ける食感を備えており、外観並びに風味と相俟って生ウニ代替品となる食品を得ることができた。
【0018】
次に魚肉すり身の配合比率について検証した。検証手段は、
図5(表5)に示すとおり魚肉すり身の配合比率を0.0~30.0重量%まで5.0重量%刻みで変えて擂潰・ケーシング充填・ボイル加熱した各試料の破断強度と当該時の破断変形を計測した。計測結果は
図6(グラフ2)のとおりである(グラフ中Ctrl.は、上記実施形態に採用した配合比率の計測値である。以下同様)。また試料の状態と官能評価は
図7(表6)のとおりである。この結果、魚肉すり身の適正配合比率は5.0~20.0重量%の範囲であることが確認できた。
【0019】
次にこんにゃく粉の配合比率について検証した。検証手段は、
図8(表7)に示すとおりこんにゃく粉の配合比率を0.2~2.0重量%まで0.1~0.2重量%刻みで変えて擂潰・ケーシング充填・ボイル加熱した各試料の破断強度と当該時の破断変形を計測した。計測結果は
図9(グラフ3)のとおりである。また試料の状態と官能評価は
図10(表8)のとおりである。この結果、こんにゃく粉の適正配合比率は0.6~1.4重量%の範囲であることが確認できた。
【0020】
次に植物油の配合比率について検証した。検証手段は、
図11(表9)に示すとおり植物油の配合比率を0.0~30.0重量%まで適宜な重量%刻みで変えて擂潰・ケーシング充填・ボイル加熱した各試料の破断強度と当該時の破断変形を計測した。計測結果は
図12(グラフ4)のとおりである。また試料の状態と官能評価は
図13(表10)のとおりである。この結果、植物油の適正配合比率は5.0~9.0重量%の範囲であることが確認できた。
【0021】
次に水の配合比率について検証した。検証手段は、
図14(表11)に示すとおり水の配合比率を60.0~85.0重量%まで5.0重量%刻みで変えて擂潰・ケーシング充填・ボイル加熱した各試料の破断強度と当該時の破断変形を計測した。計測結果は
図15(グラフ5)のとおりである。また試料の状態と官能評価は
図16(表12)のとおりである。この結果、水の適正配合比率は65.0~75.0重量%の範囲であることが確認できた。
【0022】
上記の結果から、製出物(ウニ様食品)の物性(食感)を決定する魚肉すり身、こんにゃく粉、植物油、水の各適正配合比率の範囲が検証できたので、更に前記の範囲の最大最小の各成分の試料による検証を行った。配合表は
図17(表13,14)に示すとおりで、最大配合比率の組み合わせは100.0%を超えるので、魚肉すり身を最大配合比率より少なく組み合わせて配合し、最小配合比率の不足分は加工でん粉やウニペースト等の添加物を配合して調整した。
【0023】
前記の試料を擂潰・ケーシング充填・ボイル加熱し、その破断強度と当該時の破断変形を計測した結果が
図18(グラフ6)のとおりで、最大配合比率の組み合わせでもまた最小配合比率での組み合わせのいずれでも十分に生ウニ様の物性(食感)であった。