(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-18
(45)【発行日】2025-06-26
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂用改質剤
(51)【国際特許分類】
C08G 81/00 20060101AFI20250619BHJP
C08G 77/455 20060101ALI20250619BHJP
C08L 83/10 20060101ALI20250619BHJP
【FI】
C08G81/00
C08G77/455
C08L83/10
(21)【出願番号】P 2021162722
(22)【出願日】2021-10-01
【審査請求日】2024-06-24
(31)【優先権主張番号】P 2020181025
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山崎 絢香
(72)【発明者】
【氏名】中村 泰司
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-527(JP,A)
【文献】特開昭46-006147(JP,A)
【文献】特表2019-529597(JP,A)
【文献】特開2020-19934(JP,A)
【文献】特開平2-269122(JP,A)
【文献】特開平3ー43418(JP,A)
【文献】特開2019-163449(JP,A)
【文献】特開昭46-006148(JP,A)
【文献】特開昭48-900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K3/00-13/08;C08L1/00-101/14
C08G81/00-85/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドのブロック(am)とポリシロキサンのブロック(b)とを構成単位として有するブロックポリマー(X)を含有してなるポリアミド樹脂用改質剤(Y)
であって、
前記ブロックポリマー(X)が、ポリアミドのブロック(am)とポリシロキサンのブロック(b)とがエステル結合を介して結合した構造を有するポリアミド樹脂用改質剤(Y)。
【請求項2】
前記ポリアミドのブロック(am)の数平均分子量(Mn)が、500~10,000である請求項1記載のポリアミド樹脂用改質剤。
【請求項3】
前記ポリシロキサンのブロック(b)の数平均分子量(Mn)が、500~10,000である請求項1又は2記載のポリアミド樹脂用改質剤。
【請求項4】
前記ブロックポリマー(X)が、(am)-(b)ジブロック型構造又は(b)-(am)-(b)トリブロック型構造である請求項1~3のいずれか記載のポリアミド樹脂用改質剤。
【請求項5】
前記ブロックポリマー(X)の数平均分子量(Mn)が、3,000~30,000である請求項1~4のいずれか記載のポリアミド樹脂用改質剤。
【請求項6】
前記ポリアミドのブロック(am)とポリシロキサンのブロック(b)との重量比[(am)/(b)]が25/75~75/25である請求項1~5のいずれか記載のポリアミド樹脂用改質剤。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか記載のポリアミド樹脂用改質剤(Y)とポリアミド樹脂(C)とを含有してなるポリアミド樹脂組成物(Z)。
【請求項8】
前記ポリアミド樹脂用改質剤(Y)とポリアミド樹脂(C)との重量比[(Y)/(C)]が、1/99~20/80である請求項7記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項9】
請求項8記載のポリアミド樹脂組成物(Z)を成形してなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂用改質剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、耐熱性、機械的強度(機械物性)に優れるため、エンジニアリングプラスチックとして、種々の用途に使用されている。
しかしながら、吸水時の機械的強度の低下や寸法変化が課題であり、例えば、カーボンナノファイバーを添加したポリアミド樹脂組成物が提案されている(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、カーボンナノファイバー等のフィラーを添加する場合、成形品の外観を損なう場合があり、それを解決することが望まれていた。
本発明の目的は、ポリアミド樹脂に、吸水時の優れた機械的強度、優れた寸法安定性と外観を与えるポリアミド樹脂用改質剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明は、ポリアミドのブロック(am)とポリシロキサンのブロック(b)とを構成単位として有するブロックポリマー(X)を含有してなるポリアミド樹脂用改質剤(Y)であって、前記ブロックポリマー(X)が、ポリアミドのブロック(am)とポリシロキサンのブロック(b)とがエステル結合を介して結合した構造を有するポリアミド樹脂用改質剤(Y)である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のポリアミド樹脂用改質剤(Y)は下記の効果を奏する。
(1)ポリアミド樹脂組成物の成形品の吸水性を小とし、優れた寸法安定性を付与する。
(2)成形品に優れた機械的強度(機械物性)を与える。
(3)成形品に優れた外観を与える。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<ポリアミドのブロック(am)>
ポリアミドのブロック(am)としては、ジカルボン酸又はそのアミド形成性誘導体とジアミンとを必須構成単量体とするポリアミド(am1)、ジカルボン酸又はモノカルボン酸にラクタムを開環重合させたポリアミド(am2)、水、ジアミン又はモノアミンにラクタムを開環重合させたポリアミド(am3)、アミノカルボン酸を重縮合させたポリアミド(am4)及び(am1)~(am4)の内の少なくとも2種以上をワンショットで合成して得られるポリアミド(am5)等が挙げられる。
ポリアミドのブロック(am)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0008】
ポリアミド(am1)及び(am2)に用いられるジカルボン酸としては、炭素数2~20のジカルボン酸[炭素数2~20の脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸等)、炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、フタル酸、2,6-又は2,7-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、トリレンジカルボン酸、キシリレンジカルボン酸及び5-スルホイソフタル酸等)及び炭素数5~20の脂環式ジカルボン酸(シクロプロパンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、ビシクロヘキシル-4,4’-ジカルボン酸及びショウノウ酸等)等]等が挙げられる。
【0009】
ジカルボン酸のアミド形成性誘導体としては、ジカルボン酸のアルキル(炭素数1~4)エステル(メチルエステル及びエチルエステル等)及びジカルボン酸の酸無水物等が挙げられる。
ジカルボン酸及びそのアミド形成性誘導体は、それぞれ1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ジアミンとしては、炭素数2~12のジアミン等が使用でき、具体的には、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン及びデカメチレンジアミン等が挙げられる
【0010】
ポリアミド(am1)に用いられるジカルボン酸及びそのアミド形成性誘導体の内、機械的強度、寸法安定性および外観の観点から、好ましいのは、炭素数2~20の脂肪族ジカルボン酸、炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸及びこれらのアミド形成性誘導体であり、更に好ましいのは、炭素数2~20の脂肪族ジカルボン酸及びそのアミド形成性誘導体であり、特に好ましいのは炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸及びこれらのアミド形成性誘導体、とりわけ好ましいのは、アジピン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸及びこれらのアミド形成性誘導体、最も好ましいのは、アジピン酸及びそのアミド形成誘導体である。
【0011】
ポリアミド(am2)に用いられるジカルボン酸及びそのアミド形成性誘導体の内、機械的強度、寸法安定性および外観の観点から、好ましいのは、炭素数2~20の脂肪族ジカルボン酸、炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸であり、更に好ましいのは、炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、フタル酸、2,6-又は2,7-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、トリレンジカルボン酸、キシリレンジカルボン酸及び5-スルホイソフタル酸等)であり、特に好ましいのは、テレフタル酸、2,6-又は2,7-ナフタレンジカルボン酸である。
【0012】
ポリアミド(am1)及び(am3)に用いられるジアミンとしては、前記炭素数2~12の脂肪族ジアミン等が挙げられる。
これらのうち、好ましいのは、炭素数6及び炭素数10の脂肪族ジアミン、さらに好ましいのは、1,6-ジアミノヘキサン及び1,10-ジアミノデカン、とくに好ましいのは1,6-ジアミノヘキサンである。
ジアミンは、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0013】
ポリアミド(am2)に用いられるモノカルボン酸としては、炭素数1~20のカルボン酸(カプリン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、安息香酸、t-ブチル安息香酸、2-ナフタレンカルボン酸等)が挙げられる。
【0014】
ポリアミド(am3)に用いられるモノアミンとしては、炭素数1~20のモノアミン(メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン及びドデシルアミン等)が挙げられる。
【0015】
ポリアミド(am2)及び(am3)に用いられるラクタムとしては、合成の容易さおよび寸法安定性の観点から、好ましいのは、ε-カプロラクタム、11-ウンデカンラクタム、12-ラウロラクタムであり、更に好ましいのは、ε-カプロラクタムである。
【0016】
ポリアミド(am4)に用いられるアミノカルボン酸としては、アミノカルボン酸としては、炭素数2~12(好ましくは4~12、更に好ましくは6~12)のアミノカルボン酸等が挙げられ、具体的には、アミノ酸(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン及びフェニルアラニン等)、ω-アミノカプロン酸、ω-アミノエナント酸、ω-アミノカプリル酸、ω-アミノペラルゴン酸、ω-アミノカプリン酸、11-アミノウンデカン酸及び12-アミノドデカン酸等が挙げられる。
上記アミノカルボン酸のうち、合成の容易さおよび寸法安定性の観点から、好ましいのは、グリシン、ロイシン、8-アミノカプリル酸、11-アミノウンデカン酸及び12-アミノドデカン酸であり、更に好ましいのは、8-アミノカプリル酸、11-アミノウンデカン酸及び12-アミノドデカン酸、特に好ましいのは11-アミノウンデカン酸及び12-アミノドデカン酸、最も好ましいのは12-アミノドデカン酸である。
【0017】
ポリアミドのブロック(am)が有するカルボキシル基は、酸価(mgKOH/g)で示され、該(am)が有するアミノ基は、アミン価(mgKOH/g)で示される。
また、片末端にカルボキシル基を有するポリアミド(以下ポリアミドモノカルボン酸と記載する場合がある。)を用いることが好ましい。ポリアミドモノカルボン酸は、ジカルボン酸とジアミンのモル比を調整することにより得る方法;モノカルボン酸共存下でジカルボン酸とジアミンのモル比を調整することにより得る方法;モノカルボン酸にラクタムを開環重合する方法;アミノカルボン酸を重縮合する方法等が挙げられる。
【0018】
また、ポリアミドのブロック(am)は、寸法安定性および機械的強度の観点から、1,6-ジアミノヘキサン、1,10-ジアミノデカン、ε-カプロラクタム、11-ウンデカンラクタム、12-ラウロラクタム、11-アミノウンデカン酸及び12-アミノドデカン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を必須構成単量体とするポリアミドであることが好ましい。
【0019】
ポリアミドのブロック(am)の数平均分子量(Mn)は、機械的強度、寸法安定性および外観の観点から、好ましくは500~10,000であり、さらに好ましくは1,000~6,000、とくに好ましくは2,000~6,000である。
【0020】
本発明におけるポリマーの数平均分子量(Mn)重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定することができる。
・装置(一例) :「HLC-8120」[東ソー(株)製]
・カラム(一例):「TSKgelGMHXL」[東ソー(株)製](2本)
「TSKgelMultiporeHXL-M」[東ソー(株)製](1本)
・試料溶液:0.3重量%のオルトジクロロベンゼン溶液
・溶液注入量:100μl
・流量:1ml/分
・測定温度:135℃
・検出装置:屈折率検出器
・基準物質:標準ポリスチレン(TSKstandardPOLYSTYRENE)
12点(分子量:500、1,050、2,800、5,970、
9,100、18,100、37,900、96,400、
190,000、355,000、1,090,000、
2,890,000)[東ソー(株)製]
【0021】
ポリアミドのブロック(am)の製法としては、一般的なポリアミドの製法がそのまま適用できる。ポリアミド化反応は、減圧下150~300℃の温度範囲で行われ、反応時間は好ましくは0.5~20時間である。また、必要により一般的にポリアミド化反応に用いられる触媒を用いてもよい。
【0022】
<ポリシロキサンのブロック(b)>
本発明におけるポリシロキサンのブロック(b)としては、例えば、前記(am)と反応性の官能基を有するポリシロキサンが挙げられる。
具体的には、前記(am)と反応性の官能基を両末端に有するポリシロキサン(b1)及び前記(am)と反応性の官能基を片末端に有するポリシロキサン含有ポリマー(b2)等が挙げられる。
なお、(am)と反応性の官能基としては、例えば、水酸基、1級アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基が挙げられる。
例えば、(am)が1級アミノ基を有する場合、反応性の官能基としては、カルボキシル基、エポキシ基等が挙げられ、(am)がカルボキシル基を有する場合、反応性の官能基としては、1級アミノ基、水酸基、エポキシ基等が挙げられる。
【0023】
(b)としては、水酸基を有するポリシロキサン[例えば、商品名「X-22-4015」、「X-22-4039」、信越シリコーン製]、1級アミノ基を有するポリシロキサン[例えば、商品名「KF-865」、「KF859」、信越シリコーン製]、カルボキシル基を有するポリシロキサン[例えば、商品名「X-22-3710E」、信越シリコーン製]、エポキシ基を有するポリシロキサン[例えば、商品名「X-22-343」「KF-1001」、信越シリコーン製]等が挙げられる。
【0024】
(b)の数平均分子量(Mn)は、機械的強度、寸法安定性および外観の観点から、好ましくは500~10,000であり、さらに好ましくは1,000~6,000、とくに好ましくは2,000~5,000である。
【0025】
<ブロックポリマー(X)>
本発明におけるブロックポリマー(X)は、前記ポリアミドのブロック(am)と、ポリシロキサンのブロック(b)とを構成単位として有する。
【0026】
(X)の構造として、機械的強度、寸法安定性および外観の観点から、好ましいのは、(1):(am)-(b)ジブロック型構造又は(2):(b)-(am)-(b)トリブロック型構造、さらに好ましいのは、(am)-(b)ジブロック型構造である。
【0027】
分子構造が上記(1)~(2)のブロックポリマーは、例えば、以下の方法で得ることできる。
【0028】
直鎖状の(am)-(b)ジブロック型構造のブロックポリマーは、例えば、カルボキシル基を片末端に有するポリアミドと片末端に1級アミノ基を有するポリシロキサンとを1:1のモル比で反応させて製造できる。
【0029】
直鎖状の(b)-(am)-(b)トリブロック型構造のブロックポリマーは、例えば、両末端にカルボキシル基を有するポリアミドと、片末端に1級アミノ基を有するポリシロキサンとを1:2のモル比で反応させて製造できる。
【0030】
尚、上記においては各構造を有するブロックポリマー(X)を得る際のポリアミド(am)とポリシロキサン(b)の組合せの一例を示したが、上述の通り、(am)と(b)は種々の官能基を有するため、(am)が有する官能基と(b)が有する官能基が反応し得るものであれば、組合せについては適宜採用することができる。
【0031】
(X)としては、ポリアミドのブロック(am)とポリシロキサンのブロック(b)とが、アミド結合、イミド結合、エステル結合又はエポキシ開環結合を介して結合した構造を有するものが好ましく、製造上の容易さの観点から、エステル結合又はアミド結合であることが更に好ましい。
【0032】
(X)のMnは、機械的強度、寸法安定性および外観の観点から、好ましくは3,000~30,000、更に好ましくは4,000~25,000、特に好ましくは5,000~20,000である。
【0033】
ブロックポリマー(X)を構成するポリアミドのブロック(am)とポリシロキサンのブロック(b)との重量比[(am)/(b)]は、機械的強度および寸法安定性の観点から、好ましくは25/75、さらに好ましくは35/65~75/25、特に好ましくは40/60~70/30である。
【0034】
(X)が、(am)と(b)とが、アミド結合又はエステル結合を介して結合した構造を有するものである場合、例えば、(am)と(b)を反応容器に投入し、撹拌下、反応温度100~250℃、圧力0.003~0.1MPaで、アミド化反応、イミド化反応又はエステル化反応で生成する水(以下生成水と略記)を反応系外に除去しながら、1~50時間反応させる方法で製造することができる。
【0035】
<ポリアミド樹脂用改質剤(Y)>
本発明のポリアミド樹脂用改質剤(Y)は、上述のブロックポリマー(X)を含有する。該ポリアミド樹脂用改質剤(Y)は、後述のポリアミド樹脂(C)用改質剤、とりわけポリアミド樹脂用寸法安定剤として好適に使用できる。
【0036】
ポリアミド樹脂用改質剤(Y)には、後述の着色剤(D1)、離型剤(D2)、酸化防止剤(D3)、難燃剤(D4)、紫外線吸収剤(D5)、抗菌剤(D6)、相溶化剤(D7)、充填剤(D8)及びエステル交換防止剤(D9)等の添加剤(D)を含有することができる。
【0037】
<ポリアミド樹脂組成物(Z)>
本発明のポリアミド樹脂組成物(Z)は、前記ポリアミド樹脂用改質剤(Y)とポリアミド樹脂(C)とを含有する。
ポリアミド樹脂用改質剤(Y)とポリアミド樹脂(C)との重量比[(Y)/(C)]は、寸法安定性および機械物性の観点から、好ましくは1/99~20/80、更に好ましくは2/98~15/85、特に好ましくは3/97~10/90である。
【0038】
<ポリアミド樹脂(C)>
本発明におけるポリアミド樹脂(C)としては、アミノ酸、ラクタムまたはジアミンとジカルボン酸を出発原料としたアミド結合を有する熱可塑性重合体が挙げられる。アミノ酸としては、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等が挙げられ、ラクタムとしてはε-カプロラクタム、ω-ラウロラクタム等が挙げられる。
【0039】
ジアミンとしては、脂肪族(C4~15のもの、例えばテトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、2,4-ジメチルオクタメチレンジアミン)、芳香環含有(C6~20のもの、例えばメタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン)、芳香族(C6~20のもの、例えばフェニレンジアミン)、脂環含有[C6~20のもの、例えば1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、3,8-ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン]、複素環含有[C6~15のもの、例えばビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジン]等が挙げられる。
【0040】
ジカルボン酸としては、脂肪族(C6~20のもの、例えばアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、芳香環含有(C8~20のもの、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸)、脂環含有(C8~20のもの、例えばヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ジグリコール酸)等が挙げられる。
【0041】
(C)の具体例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6/10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン6/12)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン11/6)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリヘキサメチレンテレフタル/イソフタルアミド(ナイロン6T/6I)、ポリビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン11T)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド[ナイロン11T(H)]およびこれらのポリアルキレングリコール(Mn100~1,000、例えばポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール)等との共重合体、並びにこれらから構成される共重合ポリアミド[例えばポリカプラミド/ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6/66)、ポリカプラミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6/12)]等が挙げられる。これらの(C)は単独使用または2種以上混合して用いてもよい。
【0042】
上記ポリアミド樹脂(C)のうち、改質効果の観点から、好ましいのは、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12及びこれらの共重合ポリアミド、混合ポリアミドである。上記のうち、成形加工性の観点から、ナイロン6、ナイロン66が特に好ましい。
なお、ポリアミド樹脂(C)のMnは、好ましくは11,000~30,000、更に好ましくは12,000~25,000、特に好ましくは13,000~20,000である。
【0043】
ポリアミド樹脂組成物(Z)には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により、着色剤(D1)[アゾ顔料等]、離型剤(D2)[流動パラフィン等]、酸化防止剤(D3)[トリフェニルホスファイト等]、難燃剤(D4)[三酸化アンチモン等]、紫外線吸収剤(D5)[フェニルサリチレート等]、抗菌剤(D6)[ベンズイミダゾール等]、相溶化剤(D7)[変性ビニル共重合体等]、充填剤(D8)[炭化カルシウム等]及びエステル交換防止剤(D9)[モノオクタデシルホスフェート等]等の添加剤(D)を含有させることができる。各添加剤はそれぞれ1種又は2種以上併用のいずれでもよい。
【0044】
ポリアミド樹脂(C)の重量に基づく(D)の合計含有量は、一般的に45重量%以下、各添加剤の効果及び成形品の機械的強度の観点から好ましくは0.001~40重量%、更に好ましくは0.01~35重量%;各(D)の含有量は、同様の観点から(D1)は好ましくは0.1~3重量%、更に好ましくは0.2~2重量%;(D2)は好ましくは0.01~3重量%、更に好ましくは0.05~1重量%;(D3)は好ましくは0.01~3重量%、更に好ましくは0.05~1重量%;(D4)は好ましくは0.5~20重量%、更に好ましくは1~10重量%;(D5)は好ましくは0.01~3重量%、更に好ましくは0.05~1重量%;(D6)は好ましくは0.5~20重量%、更に好ましくは1~10重量%;(D7)は好ましくは0.5~10重量%、更に好ましくは1~5重量%;(D8)は好ましくは0.5~10重量%、更に好ましくは1~5重量%;(D9)は0.01~3重量%、更に好ましくは0.05~1重量%である。
【0045】
本発明のポリアミド樹脂組成物(Z)は、本発明のポリアミド樹脂用改質剤(Y)、ポリアミド樹脂(C)及び必要により添加剤(D)を溶融混合することにより得ることができる。
このとき、ポリアミド樹脂用改質剤(Y)に含まれている添加剤(D)と同様の添加剤(D)を、ポリアミド樹脂組成物(Z)に添加してもよい。
溶融混合する方法としては、一般的にはペレット状又は粉体状にした各成分を、適切な混合機(ヘンシェルミキサー等)で混合した後、押出機で溶融混合してペレット化する方法が適用できる。
【0046】
溶融混合時の各成分の添加順序には特に制限はないが、例えば、
[1](C)と(Y)を溶融混合した後、必要により(D)を一括投入して溶融混合する方法;
[2](C)と(Y)を溶融混合する際、(C)の一部をあらかじめ溶融混合して(Y)の高濃度組成物(マスターバッチ樹脂組成物)を作製した後、残りの(C)及び必要に応じて(D)を溶融混合する方法(マスターバッチ法又はマスターペレット法);
等が挙げられる。
[2]の方法におけるマスターバッチ樹脂組成物中の(Y)の濃度は、好ましくは20~80重量%であり、更に好ましくは50~70重量%である。
[1]及び[2]の方法の内、(Y)を(C)に効率的に分散しやすいという観点から、[2]の方法が好ましい。
【0047】
<成形品>
本発明の成形品は、前記ポリアミド樹脂組成物(Z)を成形したものである。成形方法としては、射出成形、圧縮成形、カレンダ成形、スラッシュ成形、回転成形、押出成形、ブロー成形及びフィルム成形(キャスト法、テンター法及びインフレーション法等)等が挙げられ、目的に応じて単層成形、多層成形又は発泡成形等の手段も取り入れた任意の方法で成形できる。
【0048】
本発明の成形品は、吸水性を小とし、優れた寸法安定性を付与する。また、優れた機械的強度(機械物性)と、優れた外観を与える。
【0049】
本発明のポリアミド樹脂用改質剤(Y)、該(Y)とポリアミド樹脂(C)とを含有してなるポリアミド樹脂組成物(Z)の成形品は、寸法安定性、機械的強度、外観に優れるため、種々の成形品用途、精密部品用途、自動車部品用途、日常用品用途に好適に使用できる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下において部は重量部を示す。
【0051】
<製造例1>[片末端酸変性ポリアミド(am-1)]
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製耐圧反応容器に、1,6-ジアミノヘキサン200部、テレフタル酸203部及び酸化防止剤[「イルガノックス1010」、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製]1.5部を投入し、窒素置換後、密閉下、撹拌しながら250℃まで昇温し、同温度(圧力:0.2~0.5MPa)で4時間撹拌し、片末端酸変性ポリアミド(am-1)を得た。
なお、(am-1)のアミン価は37mgKOH/g、酸価は37mgKOH/g、Mnは1,500であった。
【0052】
<製造例2>[片末端酸変性ポリアミド(am-2)]
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製耐圧反応容器に、ε-カプロラクタム430部、ドデシルアミン16部、酸化防止剤[「イルガノックス1010」、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製]1.5部及び水20部を投入し、窒素置換後、密閉下、撹拌しながら250℃まで昇温し、同温度(圧力:0.2~0.5MPa)で4時間撹拌し、片末端酸変性ポリアミド(am-2)を得た。
なお、(am-2)のアミン価は0mgKOH/g、酸価は11mgKOH/g、Mnは5,000であった。
【0053】
<製造例3>[片末端酸変性ポリアミド(am-3)]
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製耐圧反応容器に、12-アミノドデカン酸440部、安息香酸5部、及び酸化防止剤[「イルガノックス1010」、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製]1.5部を投入し、窒素置換後、密閉下、撹拌しながら250℃まで昇温し、同温度(圧力:0.2~0.5MPa)で4時間撹拌し、片末端酸変性ポリアミド(am-3)を得た。
なお、(am-3)のアミン価は0mgKOH/g、酸価は5.6mgKOH/g、Mnは10,000であった。
【0054】
<製造例4>[両末端酸変性ポリアミド(am-4)]
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製耐圧反応容器に、ε-カプロラクタム450部、テレフタル酸39部、酸化防止剤[「イルガノックス1010」、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製]1.5部及び水20部を投入し、窒素置換後、密閉下、撹拌しながら250℃まで昇温し、同温度(圧力:0.2~0.5MPa)で4時間撹拌し、両末端酸変性ポリアミド(am-4)を得た。
なお、(am-4)のアミン価は0mgKOH/g、酸価は56mgKOH/g、Mnは2,000であった。
【0055】
<製造例5>[両末端酸変性ポリアミド(am-5)]
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製耐圧反応容器に、ε-カプロラクタム430部、テレフタル酸14部、酸化防止剤[「イルガノックス1010」、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製]1.5部及び水20部を投入し、窒素置換後、密閉下、撹拌しながら250℃まで昇温し、同温度(圧力:0.2~0.5MPa)で4時間撹拌し、両末端酸変性ポリアミド(am-5)を得た。
なお、(am-5)のアミン価は0mgKOH/g、酸価は22mgKOH/g、Mnは5,000であった。
【0056】
<製造例6>[両末端酸変性ポリアミド(am-6)]
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製耐圧反応容器に、12-アミノドデカン酸430部、2,7-ナフタレンジカルボン酸7部及び酸化防止剤[「イルガノックス1010」、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製]1.5部を投入し、窒素置換後、密閉下、撹拌しながら250℃まで昇温し、同温度(圧力:0.2~0.5MPa)で4時間撹拌し、両末端酸変性ポリアミド(am-6)を得た。
なお、(am-6)のアミン価は0mgKOH/g、酸価は11mgKOH/g、Mnは10,000であった。
【0057】
<製造例7>[α-ブチル-ω-アミノ変性ポリジメチルシロキサン(b-1)]
攪拌機、温度計及び冷却管を備えた反応容器に、片末端がブチル基で封鎖されもう一方の末端にSiH結合を有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(Mn=1900)400部と、アリルアミン56部中に酸化白金0.240部を懸濁させた懸濁液とを仕込み、105℃で16時間撹拌下で反応させた。室温まで冷却した後、反応混合物をメンブレンフィルタ(ポリテトラフルオロエチレン[PTFE]、ポアサイズ0.45μm)に通して不溶物を除去した。その後、ろ液に含まれる過剰なアリルアミンを減圧下で除去して、α-ブチル-ω-アミノ変性ポリジメチルシロキサン(b-1)を得た。(b-1)のMnは2,000であった。
【0058】
<製造例8>[α-メチル-ω-末端カルビノール変性ポリジメチルシロキサン(b-2)]
攪拌機、温度計及び冷却管を備えた反応容器に、片末端がメチル基で封鎖されもう一方の末端にSiH結合を有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(Mn=400)400部と、エチレングリコールモノアリルエーテル480部中に酸化白金1.15部を懸濁させた懸濁液とを仕込み、105℃で16時間撹拌下で反応させた。室温まで冷却した後、反応混合物をメンブレンフィルタ(ポリテトラフルオロエチレン[PTFE]、ポアサイズ0.45μm)に通して不溶物を除去した。その後、ろ液に含まれる過剰なエチレングリコールモノアリルエーテルを減圧下で除去して、α-メチル-ω-カルビノール変性ポリジメチルシロキサン(b-2)を得た。(b-2)のMnは500であった。
【0059】
<製造例9>[α-メチル-ω-末端カルビノール変性ポリジメチルシロキサン(b-3)]
攪拌機、温度計及び冷却管を備えた反応容器に、片末端がメチル基で封鎖されもう一方の末端にSiH結合を有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(Mn=1400)400部と、エチレングリコールモノアリルエーテル140部中に酸化白金0.33部を懸濁させた懸濁液とを仕込み、105℃で16時間撹拌下で反応させた。室温まで冷却した後、反応混合物をメンブレンフィルタ(ポリテトラフルオロエチレン[PTFE]、ポアサイズ0.45μm)に通して不溶物を除去した。その後、ろ液に含まれる過剰なエチレングリコールモノアリルエーテルを減圧下で除去して、α-メチル-ω-カルビノール変性ポリジメチルシロキサン(b-3)を得た。(b-3)のMnは1,500であった。
【0060】
<製造例10>[α-メチル-ω-末端カルビノール変性ポリジメチルシロキサン(b-4)]
攪拌機、温度計及び冷却管を備えた反応容器に、片末端がメチル基で封鎖されもう一方の末端にSiH結合を有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(Mn=4900)400部と、エチレングリコールモノアリルエーテル40部中に酸化白金0.096部を懸濁させた懸濁液とを仕込み、105℃で16時間撹拌下で反応させた。室温まで冷却した後、反応混合物をメンブレンフィルタ(ポリテトラフルオロエチレン[PTFE]、ポアサイズ0.45μm)に通して不溶物を除去した。その後、ろ液に含まれる過剰なエチレングリコールモノアリルエーテルを減圧下で除去して、α-メチル-ω-カルビノール変性ポリジメチルシロキサン(b-4)を得た。(b-4)のMnは5,000であった。
【0061】
<製造例11>[α-メチル-ω-末端カルビノール変性ポリジメチルシロキサン(b-5)]
攪拌機、温度計及び冷却管を備えた反応容器に、片末端がメチル基で封鎖されもう一方の末端にSiH結合を有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(Mn=9900)400部と、エチレングリコールモノアリルエーテル20部中に酸化白金0.047部を懸濁させた懸濁液とを仕込み、105℃で16時間撹拌下で反応させた。室温まで冷却した後、反応混合物をメンブレンフィルタ(ポリテトラフルオロエチレン[PTFE]、ポアサイズ0.45μm)に通して不溶物を除去した。その後、ろ液に含まれる過剰なエチレングリコールモノアリルエーテルを減圧下で除去して、α-メチル-ω-カルビノール変性ポリジメチルシロキサン(b-5)を得た。(b-5)のMnは10,000であった。
【0062】
<実施例1>
撹拌機、温度計及び加熱冷却装置を備えた反応容器に、ポリアミド(am-1)100部、ポリシロキサン(b-2)100部、及び酸化防止剤「イルガノックス1010」0.3部を投入し、撹拌しながら210℃に昇温し、減圧下(0.013MPa以下)同温度で5時間反応させて、ブロックポリマー(X-1)を含有してなるポリアミド樹脂用改質剤(Y-1)を得た。
【0063】
<実施例2~6、比較例1>
使用原料及びその使用量を表1に記載のものに代えた以外は実施例1と同様に行い、各ポリアミド樹脂改質剤(Y)を得た。 なお、比較のためのポリアミド樹脂用改質剤(比Y-1)として、市販の無水マレイン酸変性ポリプロピレン[Mn4000、酸価22mgKOH/g]を、そのまま使用した。結果を表1に示す。尚、実施例6は参考例である。
【0064】
【0065】
<実施例11~24、比較例11~13>
表2に示す配合組成(部)に従って、各配合成分をヘンシェルミキサーで3分間ブレンドした後、ベント付き2軸押出機にて、100rpm、220℃、滞留時間5分の条件で溶融混練して、各ポリアミド樹脂組成物(Z)を得た。尚、実施例23、24は参考例である。
【0066】
表2に記載の配合成分は、以下の通りである。
ポリアミド樹脂(C-1):
ポリアミド6[商品名「UBE1013B」、宇部興産(株)製、Mn13,000]
【0067】
得られた各樹脂組成物について、射出成形機[「PS40E5ASE」、日精樹脂工業(株)製]を用い、シリンダー温度240℃、金型温度50℃で成形試験片を作製し、下記の性能試験により評価した結果を表2に示す。
なお、評価(2)では、下記の恒温恒湿機を使用した。
・機器:低温恒温恒湿機[いすず製作所製、TPAV-48-20]
【0068】
<性能試験>
(1)平衡吸水時間(hr)
JIS K7209に準拠して、試験片(80×80×1mm)の吸水率(%)が平衡状態になるまでの時間を測定した。
【0069】
(2)吸湿試験前後の寸法変化率(%)<平行、垂直>
JIS K7143に準拠して、70℃/62%RH雰囲気中における平板試験片(80×80×2mm)の吸湿促進試験を行った。
上記条件における平衡水分率(%)は、23℃/50%RH雰囲気中における吸湿平衡率(%)に近い値となる。乾燥状態の寸法(mm)と吸湿平衡時の寸法(mm)を測定し、寸法変化率(%)を計算した。
寸法変化率(%)=
[(寸法:吸湿試験後)-(寸法:乾燥状態)]×100/(寸法:乾燥状態)
なお、「平行」とは、射出成形における樹脂の流れと同じ方向を意味し、「垂直」とは、樹脂の流れに対して垂直な方向を意味する。
【0070】
(3)外観
試験片(80×80×1mm)の表面の外観を目視で観察して、以下の基準で評価した。
○:異常なく良好(樹脂改質剤を含有しない熱可塑性樹脂と同等)
×:表面荒れ、フクレ等が認められる。
【0071】
(4)機械的強度(アイゾット衝撃強度)の低下率
ポリアミド樹脂(C)にポリアミド樹脂用改質剤(Y)を配合した際の機械的強度の低下率を、アイゾット衝撃強度について評価した。アイゾット衝撃強度(単位:J/m)
ASTM D256 Method A(ノッチ付き、3.2mm厚)に準拠して測定した。
なお、機械的強度の低下率は樹脂改質剤(Y)の配合量によっても異なるので、改質剤(Y)の種類による低下率を明確にするため、特定の配合量での低下率をその際の改質剤(Y)の配合重量%で除した値を用いて評価した。
即ち、下式により求めた機械強度の低下率(%/重量%)を用いて以下の評価基準で評価した。
【0072】
[機械的強度の低下率(%/重量%)]=
{[配合前の機械的強度]-[配合後の機械的強度]}/[配合前の機械的強度]/[樹脂改質剤の配合重量]×100(%)
例えば、配合前の樹脂(アイゾット衝撃強度=2.0J/m)に改質剤(Y)を10重量%配合した場合で、配合後のアイゾット衝撃強度が1.8J/mである場合、計算式は以下の通りとなる。
[機械的強度の低下率(%/重量%)]=
[2.0(J/m)-1.8(J/m)]/2.0(J/m)/10(重量%)×100(%)=1.0(%/重量%)
【0073】
<評価基準>
◎: [低下率]≦0.5
○:0.5<[低下率]≦2.5
△:2.5<[低下率]≦5.5
×:5.5<[低下率]
【0074】
【0075】
表1~2の結果から、本発明のポリアミド樹脂用改質剤(Y)は、比較のものと比べて、ポリアミド樹脂組成物の成形品の吸水性を小とし、優れた寸法安定性を付与する。
また、成形品に優れた機械的強度(機械物性)、優れた外観を与えることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の樹脂改質剤(Y)、該(Y)とポリアミド樹脂(C)とを含有してなるポリアミド樹脂組成物(Z)の成形品は、寸法安定性、機械的強度、外観に優れるため、種々の成形品用途、精密部品用途、自動車部品用途、日常用品用途に好適に使用できる。