(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-18
(45)【発行日】2025-06-26
(54)【発明の名称】杭頭半剛接合構造
(51)【国際特許分類】
E02D 27/12 20060101AFI20250619BHJP
【FI】
E02D27/12 Z
(21)【出願番号】P 2021181963
(22)【出願日】2021-11-08
【審査請求日】2024-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】中村 聡武
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 知之
(72)【発明者】
【氏名】原 裕之郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 拓
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-023602(JP,A)
【文献】特開2007-332688(JP,A)
【文献】特開昭58-153823(JP,A)
【文献】特開2004-211496(JP,A)
【文献】特開2019-190103(JP,A)
【文献】特開2003-055984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00-27/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の下方に位置する基礎と、
地盤に貫入され、前記基礎の下端部から離れて配置された杭体と、
前記杭体の杭頭部の周囲を包囲する補強鋼管と、前記補強鋼管の内部に充填材を充填して形成される充填部と、を備える接合部と、
前記基礎と前記接合部との間に配置され、前記基礎の下端部と前記接合部の上端部に当接し、前記補強鋼管の上端面より大きく形成された当接面を備えた縁切り部と、
を備える、
杭頭半剛接合構造。
【請求項2】
前記充填部は、上端部から下向きに拡径する方向に傾斜するテーパー部を有し、
前記テーパー部の上端面は、前記縁切り部の当接面と当接し、前記杭体の上端が平滑に切断された切断部の上面より小さく形成される、
請求項1に記載の杭頭半剛接合構造。
【請求項3】
前記縁切り部は、前記基礎と前記接合部との間に設けられ、前記テーパー部の上端面より大きく形成された鋼板を備える、
請求項2に記載の杭頭半剛接合構造。
【請求項4】
L型の外形形状を有し、前記鋼板の上面に平面視等間隔で連結され、前記基礎に固定された複数のひげ筋を備える、
請求項3に記載の杭頭半剛接合構造。
【請求項5】
前記縁切り部は、前記基礎の下端部と前記補強鋼管との間に配置され、前記テーパー部の周縁に設けられる外縁縁切り部を有し、
前記外縁縁切り部は、前記補強鋼管の対向面より大きく形成される、
請求項2から4のいずれか一項に記載の杭頭半剛接合構造。
【請求項6】
前記杭体の周縁部に設けられ、前記補強鋼管の下端部に当接する、捨てコンクリート層と、
前記杭体の周縁部に設けられ、前記捨てコンクリート層の下部に当接する砕石層と、
を備える、
請求項1から5のいずれか一項に記載の杭頭半剛接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭頭半剛接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構造物を支持する杭と構造物基礎との接合方法として、杭頭部の回転に対して完全に拘束しない杭頭半剛接合構造が知られている。杭頭半剛接合構造は、杭頭部の回転に対する固定度の大きさを制御することにより杭頭部と地中部の曲げモーメントをバランス良く分布させることができ、杭基礎の耐震性能を向上させる構造である。従来の杭頭半剛接合構造は、例えば特許文献1のように杭頭部が基礎中に埋設され一体とされて施工される構成が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の構成の杭頭半剛接合構造は、基礎と杭頭部が一体化されているため、地震や風による外力が建物に作用した時、基礎から一体化されている杭頭部に伝達されるせん断力と曲げ応力が大きいという課題がある。そのため、杭頭部に大きなせん断力および曲げ応力が作用することで杭頭部と基礎との接合部で破断する虞がある。特に、既存杭は地震時の水平抵抗を考慮されていない場合があるため、既存杭を用いた従来の杭頭半剛接合構造は、杭頭部に伝達されるせん断力が既存杭の許容値より大きくなるという課題がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、基礎から杭頭部に伝達されるせん断力および曲げ応力を小さくすることができる杭頭半剛接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る杭頭半剛接合構造は、構造物の下方に位置する基礎と、地盤に貫入され、前記基礎の下端部から離れて配置された杭体と、前記杭体の杭頭部の周囲を包囲する補強鋼管と、前記補強鋼管の内部に充填材を充填して形成される充填部と、を備える接合部と、前記基礎と前記接合部との間に配置され、前記基礎の下端部と前記接合部の上端部に当接し、前記補強鋼管の上端面より大きく形成された当接面を備えた縁切り部と、を備える。
【0007】
上記の構成とすることにより、杭体と基礎が接合部によって接合されることで、杭頭部が外力に対して完全に拘束されていない杭頭半剛接合構造とすることができる。杭頭半剛接合構造は、接合部と基礎とが縁切り部によって縁切りされ、杭体と接合部と基礎が別体として形成されるため、基礎から杭頭部に伝達されるせん断力および曲げ応力を小さくすることができる。そのため、杭体に対して大きなせん断力が基礎に作用した際においても杭体が破断することを防ぐことができる。
【0008】
また、本発明に係る杭頭半剛接合構造において、前記充填部は、上端部から下向きに拡径する方向に傾斜するテーパー部を有し、前記テーパー部の上端面は、前記縁切り部の当接面と当接し、前記杭体の上端が平滑に切断された切断部の上面より小さく形成されてもよい。
【0009】
上記の構成とすることにより、杭頭半剛接合構造は、テーパー部の上端面が切断部の上面より小さい断面で形成されることで接合部の回転剛性を小さくすることができる。そのため、杭体に生じる曲げ応力をより小さくすることができ、杭体に対して大きな曲げ応力が基礎に作用した際においても杭体が曲げ破壊することを防ぐことができる。
【0010】
また、本発明に係る杭頭半剛接合構造において、前記縁切り部は、前記基礎と前記接合部との間に設けられ、前記テーパー部の上端面より大きく形成された鋼板を備えてもよい。
【0011】
上記の構成とすることにより、杭頭半剛接合構造は、基礎と接合部との間に鋼板が設けられることで、基礎と接合部との不陸を防ぎ、基礎と接合部との当接箇所を一様な状態とすることができる。そのため、当接箇所に作用する応力を均一とすることができ、局所的な応力の作用による当接箇所の損傷を防ぐことができる。また、鋼板は摩擦係数が小さいため、当接箇所のせん断抵抗を向上させることができる。
【0012】
また、本発明に係る杭頭半剛接合構造は、L型の外形形状を有し、前記鋼板の上面に平面視等間隔で連結され、前記基礎に固定された複数のひげ筋を備えてもよい。
【0013】
上記の構成とすることにより、杭頭半剛接合構造は、鋼板と基礎との定着性を向上させることができるため、大きな水平変位の作用等による位置のずれの発生等を防ぐことができる。
【0014】
また、本発明に係る杭頭半剛接合構造において、前記縁切り部は、前記基礎の下端部と前記補強鋼管との間に配置され、前記テーパー部の周縁に設けられる外縁縁切り部を有し、前記外縁縁切り部は、前記補強鋼管の対向面より大きく形成されてもよい。
【0015】
上記の構成とすることにより、基礎と接合部は、補強鋼管の一部が平面視でテーパー部の端部から外側に突出する等の補強鋼管の平面視断面の一部がテーパー部より大きく形成されている構成においても、確実に縁切りされ別体とすることができる。
【0016】
また、本発明に係る杭頭半剛接合構造は、前記杭体の周縁部に設けられ、前記補強鋼管の下端部に当接する、捨てコンクリート層と、前記杭体の周縁部に設けられ、前記捨てコンクリート層の下部に当接する砕石層と、を備えてもよい。
【0017】
上記の構成とすることで、杭頭半剛接合構造は、捨てコンクリート層および砕石層により、補強鋼管の下端部で強固に支持される構成とすることができる。そのため、補強鋼管の設置箇所の地盤の沈下等による各部位の位置のズレ等を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、基礎から杭頭部に伝達されるせん断力および曲げ応力を小さくすることができる杭頭半剛接合構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態による杭頭半剛接合構造の一例を示す横断面図である。
【
図2】本発明の実施形態による杭頭半剛接合構造の一例を示す平面視断面図であって、(a)は
図1のA-A線に沿う平面視断面を示し、(b)は
図1のB-B線に沿う平面視断面を示し、(c)は
図1のC-C線に沿う平面視断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態による杭頭半剛接合構造について、
図1および
図2に基づいて説明する。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
図1に示すように、本実施形態による杭頭半剛接合構造1は、基礎2と、杭体3と、補強鋼管4と、縁切り部5と、充填部6と、を備える。
【0021】
基礎2は、地盤G上に載置され、基礎2の上方に新設される構造物を支持する。本実施形態の基礎2は図示しない柱とパイルキャップから構成され、パイルキャップの下部が地盤G上に載置される。基礎2の構成は上記に限定されず、基礎スラブが地盤G上に載置されるフーチング基礎としてもよい。
【0022】
図1および
図2(a)に示すように、杭体3は、基礎2が地盤G上に載置される以前に取り除かれた構造物を支持していた既存杭3として地盤Gに貫入され設けられる(以下、「杭体3」を「既存杭3」とする)。既存杭3は、円筒形状を有し、円筒形の中心軸が鉛直方向に略一致して設けられる。
【0023】
既存杭3は、地盤Gを掘削して形成された平面視円形の建て込み穴31内に直接造成された場所打ちコンクリート杭である。既存杭3は、コンクリート杭部32とコンクリート杭部32の内部に配置された鉄筋かご33を有する。既存杭3は、鉄筋かご33を建て込み穴31内の所定の位置に配置し、公知のコンクリート材を隙間なく打設してコンクリート杭部32を形成することで設けられる。
【0024】
既存杭3は、基礎2の下部に位置し、基礎2に近接対向する杭頭部34の上端341が杭体3の径方向に平滑に切断された切断部35が形成される。切断部35は、基礎2の下端部21から既存杭3の貫入方向に離隔D1を取った位置に形成されている。
【0025】
鉄筋かご33は、複数の帯筋331と、複数の主筋332とを備える。既存杭3は、コンクリート杭部32内に鉄筋かご33が配筋され、コンクリート杭部32と鉄筋かご33が定着することにより、杭耐力を向上できる。
【0026】
帯筋331は、平面視環状の外形形状を有し、既存杭3の貫入方向に一定の間隔で複数配置される。主筋332は、複数の帯筋331のそれぞれの内縁部331aに当接し、帯筋331の周方向に一定の間隔で複数配置される。複数の帯筋331と、複数の主筋332とは各内縁部331aにおける当接箇所で連結することで鉄筋かご33を形成する。
【0027】
補強鋼管4は平面視円形に形成され、平面視直径が既存杭3の平面視直径よりも大きく形成される。補強鋼管4は、上端341よりも上方に突出し、杭頭部34と充填部6の一部を平面視で包囲する。補強鋼管4と既存杭3との間は、平面視環状の隙間7が形成される。杭頭半剛接合構造1は、隙間7により、杭頭半剛接合構造1の施工時に施工誤差が生じた場合、施工誤差を解消できる。
【0028】
縁切り部5は、基礎2と補強鋼管4との間に配置される。本実施形態において、縁切り部5は、基礎2と充填部6との間に配置される鋼板51と、下端部21と補強鋼管4の上端部41との間に配置される外縁縁切り部52を備える。鋼板51は、外縁縁切り部52の上方に配置される。
【0029】
鋼板51は、平面視矩形および板状のステンレス鋼板である。鋼板51は高い剛性を有する。鋼板51の上面511および下面512の摩擦係数は、下端部21の下端面211の摩擦係数よりも小さい。
【0030】
外縁縁切り部52は、平面視中空の円形形状を有する。外縁縁切り部52は、対向する補強鋼管4の上端部41の上端面42より大きく形成される。外縁縁切り部52の中空孔521の内周面521aには、中空孔521の上端内周縁部521bから内周面521aに沿って中空孔521の下端内周縁部521cに向かって拡径する方向に傾斜するテーパー部522が形成される。
【0031】
充填部6は、補強鋼管4および外縁縁切り部52の内部に設けられる。また、充填部6は、既存杭3と鋼板51との間に設けられる。つまり、充填部6は既存杭3と補強鋼管4と縁切り部5に包囲される。充填部6は、充填材61を中空孔521から隙間7を含めて既存杭3と補強鋼管4と縁切り部5に包囲される箇所に隙間なく充填して形成される。充填材61は、公知のコンクリート材である。充填部6が形成されることで既存杭3と補強鋼管4とを一体化できる。
【0032】
充填部6は、外縁縁切り部52に当接する上側外周面62に、下面512との当接部63の周縁部631から上側外周面62に沿って当接部63から外縁縁切り部52の下端部523の深さまで下向きに拡径する方向に傾斜するテーパー部64が形成される。当接部63は、充填部6の上端部63である。
【0033】
図2(b)に示すように、テーパー部64の上端面641は下面512と当接し、切断部35の上面である切断面351より小さく形成される。テーパー部522とテーパー部64は、テーパー形状が略一致し当接する。補強鋼管4と充填部6は、杭頭部34と基礎2との接合部8として備えられる。
【0034】
図1に示すように、充填部6は、テーパー部64の下端642と既存杭3の上端341との間に配鉄筋65と複数のスペーサー66が設けられる。配鉄筋65および複数のスペーサー66は、充填材61を充填する前に設置される。
【0035】
配鉄筋65は、平面視井桁状に形成され、複数のスペーサー66上に設置され、鉛直方向に所定のかぶりを確保して切断面351の上方に配置される。配鉄筋65は、補強鋼管4の内周面に当接しないように形成される。
【0036】
複数のスペーサー66は、切断面351上に所定の間隔で配置される。スペーサー66は、例えば、上面に鉄筋を載置する溝部が形成されたブロック型の公知のスペーサーが挙げられる。複数のスペーサー66は、補強鋼管4に対する所定の水平方向のかぶりを確保するスペーサーをさらに有してもよい。例えば、補強鋼管4の内周面に近接する鉄筋が挿通する孔部が形成された中空円盤状のスペーサーが挙げられる。
【0037】
杭頭半剛接合構造1は、上記の構成により充填部6内に配鉄筋65が設けられることで、外力に対する充填部6の耐力を向上させ、充填部6のひび割れを防止できる。
【0038】
鋼板51は、下端部21と接合部8の上端部81および外縁縁切り部52の上端部524との間に設けられる。鋼板51は、上面511と下端部21が当接し、下面512と接合部8の上端面82および外縁縁切り部52の上端面525が当接する(以下、「上端面82」を「当接面82」とする)。鋼板51の下面512は、当接面82より大きく形成される。上記の構成により、鋼板51は、
図2(c)に示すように、基礎2の下端面211と接合部8の当接面82を完全に縁切りする。また、下面512は、鋼板51の当接面82との当接面である。
【0039】
外縁縁切り部52は、テーパー部522の周縁で基礎2および鋼板51と補強鋼管4の上端部41を完全に縁切りする。外縁縁切り部52は、充填材61を打設して充填部6を形成する際の捨て型枠としても用いられる。
【0040】
上記の構成により、基礎2と既存杭3との間に接合部8が形成され、縁切り部5により基礎2と接合部8が完全に縁切りされた杭頭半剛接合構造1が形成される。また、基礎2と接合部8と既存杭3は別体として形成される。
【0041】
既存杭3の周縁部36に、補強鋼管4の下端部43に当接する捨てコンクリート層G1と、捨てコンクリート層G1の下部に当接する砕石層G2が設けられる。捨てコンクリート層G1および砕石層G2は、地盤G内で積層して杭頭半剛接合構造1を支持する。捨てコンクリート層G1および砕石層G2は、地盤Gが杭頭半剛接合構造1によって沈下しない締固め強度で形成される。
【0042】
鋼板51は、上面511上にL型の外形形状を有し、上面511に平面視等間隔で接合された複数のひげ筋9が設けられる。複数のひげ筋9は、上面511の周縁部511aに等間隔で配置される。
【0043】
図1および
図2において、杭頭半剛接合構造1に備えられる各構成の寸法は、説明の都合上誇張されているが、実際の寸法は、例えば、既存杭3は直径D2が1000mmで形成され、補強鋼管4は直径D3が1200mm、厚みT1が12mmで形成される。また、上記の寸法の既存杭3が補強鋼管4の平面視中央に配置されることで、平面視環状の隙間7は径長L1が88mmで形成される。
【0044】
次に、上述した本発明の実施形態による杭頭半剛接合構造1の作用・効果について図面を用いて説明する。
【0045】
本実施形態による杭頭半剛接合構造1は、補強鋼管4と充填部6による接合部8が基礎2と既存杭3との間に配置されるため、杭頭部34が回転方向やせん断方向等の方向性を有する外力に対して完全に拘束されていない構成となる。杭頭半剛接合構造1は、基礎2と接合部8との間に縁切り部5が設けられるため、基礎2と既存杭3と接合部8が、縁切り部5によって完全に縁切りされた別体として形成される。
上記の構成により、杭頭半剛接合構造1は、基礎2から既存杭3の杭頭部34に伝達されるせん断力および曲げ応力を小さくすることができる。そのため、既存杭3に対して過大なせん断力が基礎2に作用した場合においても既存杭3が破断することを防ぐことができる。
【0046】
充填部6の上側外周面62には、下面512との当接部63の周縁部631から上側外周面62に沿って当接部63から外縁縁切り部52の下端部523の深さまで下向きに拡径する方向に傾斜するテーパー部64が形成される。テーパー部64の上端面641は下面512と当接し、切断部35の上面である切断面351より小さく形成される。
上記の構成により、杭頭半剛接合構造1は、接合部8の当接面82がテーパー部64により切断面351よりも小さく形成されるため、接合部8の回転剛性を小さくすることができる。そのため、杭頭半剛接合構造1は、既存杭3に生じる曲げ応力をより小さくすることができ、既存杭3に対して過大な曲げ応力が基礎2に作用した場合においても既存杭3が曲げ破壊することを防ぐことができる。接合部8は、テーパー部64のテーパー形状により、接合部8の角部の欠損とひび割れも防止することが可能となる。
【0047】
鋼板51は、下端部21と接合部8の上端部81および外縁縁切り部52の上端部524との間に設けられ、上面511と下端部21が当接し、下面512と当接面82および上端面525が当接する。鋼板51の下面512は、当接面82より大きく形成される。上記の構成により、基礎2の下端面211と接合部8の当接面82を鋼板51によって完全に縁切りすることができる。
杭頭半剛接合構造1は、高剛性の鋼板51が設けられることによって接合部8との不陸を防ぎ、接合部8との当接部513を一様な状態とすることができるそのため、当接部513に作用する応力を均一とすることができ、局所的な応力の作用による当接部513の損傷を防ぐことができる。鋼板51の摩擦係数は、基礎2の摩擦係数よりも小さいため、基礎2から既存杭3に伝達されるせん断力に対する当接部513のせん断力抵抗を向上させることができる。
【0048】
鋼板51は、上面511上にL型の外形形状を有し、上面511に平面視等間隔で接合された複数のひげ筋9が設けられる。複数のひげ筋9は、上面511の周縁部511aに等間隔で配置される。
上記の構成により、杭頭半剛接合構造1は、基礎2と鋼板51との定着性を向上させることができるため、大きな水平変位の作用等による鋼板51の設置位置のずれの発生等を防ぐことができる。
【0049】
外縁縁切り部52は、テーパー部64の周縁に設けられ、下端部21および下面512と補強鋼管4の上端部41との間に配置され、テーパー部522とテーパー部64が当接する。外縁縁切り部52は、平面視円形に形成され、補強鋼管4の外縁縁切り部52の下端部523との対向面である上端面42より大きく形成される。
上記の構成により、杭頭半剛接合構造1は、外縁縁切り部52によって基礎2と接合部8を確実に縁切りし別体とすることができる。
【0050】
既存杭3の周縁部36に、補強鋼管4の下端部43に当接する捨てコンクリート層G1と、捨てコンクリート層G1の下部に当接する砕石層G2が設けられる。
上記の構成から、杭頭半剛接合構造1は、捨てコンクリート層G1および砕石層G2が積層された構成によって、下端部43が強固に支持される構成とすることができる。そのため、補強鋼管4の設置箇所の地盤の沈下等による各部位の設置位置のズレ等を防ぐことができる。
【0051】
本実施形態による杭頭半剛接合構造1により、既存杭3を新設する基礎2の杭体として容易に再利用することが可能となる。既存杭3を再利用することにより、構造物の施工コストの低減、工期の短縮、杭の新設に伴う振動・騒音や既存杭の廃棄等の環境負荷を低減することが可能になる。
【0052】
以上、本発明による杭頭半剛接合構造の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態において、既存杭3、接合部8、外縁縁切り部52は平面視円形形状に形成されているが、平面視矩形形状に形成されてもよい。
【0053】
例えば、上記の実施形態では、テーパー部64は充填部6の外周面の一部である上側外周面62に形成されているが、充填部6の構成に応じてテーパー部64が形成されてもよい。例えば、充填部6の外周面の全面にテーパー部64が形成される構成であってもよい。
【0054】
例えば、上記の実施形態では、縁切り部5は鋼板51と外縁縁切り部52とを備えるが、縁切り部5が上端面42よりも大きく形成された鋼板51による構成であってもよい。
【0055】
例えば、上記の実施形態では、鋼板51の上面511上にひげ筋9が複数設けられるが、鋼板51にボルト孔を穿孔し、基礎2に鋼板51を貫通するアンカーボルトを打設する構成であってもよい。
【0056】
例えば、上記の実施形態では、補強鋼管4の下部に捨てコンクリート層G1と砕石層G2が設けられるが、砕石層G2を砕石の粒径の大きさにより2層に分けて形成した構成であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 杭頭半剛接合構造
2 基礎
3 既存杭(杭体)
4 補強鋼管
5 縁切り部
6 充填部
8 接合部
9 ひげ筋
21 下端部
34 杭頭部
35 切断部
36 周縁部
42 上端面(対向面)
43 下端部
51 鋼板
52 外縁縁切り部
61 充填材
63 当接部(上端部)
64 テーパー部
81 上端部
351 切断面(上面)
512 下面(当接面)
641 上端面
G 地盤
G1 捨てコンクリート層
G2 砕石層