(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-18
(45)【発行日】2025-06-26
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H10D 8/50 20250101AFI20250619BHJP
H10D 12/00 20250101ALI20250619BHJP
H10D 30/60 20250101ALI20250619BHJP
H10D 30/65 20250101ALI20250619BHJP
H10D 62/10 20250101ALI20250619BHJP
H10D 84/80 20250101ALI20250619BHJP
H10D 89/60 20250101ALI20250619BHJP
【FI】
H10D8/50 L
H10D8/50 D
H10D8/50 K
H10D12/00 101Z
H10D30/60 K
H10D30/65
H10D62/10 101G
H10D84/80 101A
H10D84/80 102B
H10D84/80 102C
H10D89/60
(21)【出願番号】P 2021561456
(86)(22)【出願日】2020-11-25
(86)【国際出願番号】 JP2020043842
(87)【国際公開番号】W WO2021106939
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-10-03
(31)【優先権主張番号】P 2019217069
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】幸 忠男
(72)【発明者】
【氏名】石田 剛志
【審査官】西村 治郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-270034(JP,A)
【文献】特開2012-004460(JP,A)
【文献】特開2015-115365(JP,A)
【文献】特開平08-340101(JP,A)
【文献】特開平11-233795(JP,A)
【文献】特開2012-009694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10D 8/50
H10D 62/10
H10D 12/00
H10D 84/80
H10D 89/60
H10D 30/65
H10D 30/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有し、デバイス領域を含む第1導電型の半導体層と、
前記デバイス領域において前記主面の表層部に形成された第2導電型のベース領域と、
前記ベース領域の縁部から内方に間隔を空けて前記ベース領域の表層部に形成され、前記半導体層との間でチャネル領域を画定する第1導電型のソース領域と、
前記ベース領域の表層部において前記ソース領域とは異なる領域に形成され、前記ベース領域の不純物濃度を超える不純物濃度を有する第2導電型のベースコンタクト領域と、
前記デバイス領域において前記ベース領域から間隔を空けて前記主面の表層部に形成され、前記ベース領域との間でドリフト領域を画定する第1導電型のウェル領域と、
前記ウェル領域の表層部に形成された第1導電型のドレイン領域と、
前記ウェル領域の表層部に形成され、前記ドレイン領域に電気的に接続された第2導電型の不純物領域と、
前記主面の上において前記チャネル領域を被覆するゲート絶縁膜、および、前記ゲート絶縁膜の上において前記チャネル領域に対向し、前記ソース領域および前記ベースコンタクト領域に電気的に接続されたゲート電極を有するゲート構造と、を含
み、
前記ウェル領域は、平面視において前記ベース領域を取り囲む環状に形成され、
前記ゲート電極は、平面視において前記ベース領域および前記ウェル領域の間の領域において前記ベース領域を取り囲む環状に形成されている、半導体装置。
【請求項2】
前記不純物領域は、前記ウェル領域の縁部から内方に間隔を空けて形成されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記不純物領域は、前記ベース領域および前記ウェル領域の対向方向に直交する方向に前記ドレイン領域に接続されている、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
複数の前記不純物領域が、1つの前記ドレイン領域を挟み込むように形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
複数の前記ドレイン領域が、間隔を空けて形成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ベース領域は、平面視において一方方向に沿って延びる帯状に形成され、
前記不純物領域は、前記ウェル領域において前記ベース領域の長辺に対向する領域に形成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記主面に形成され、前記デバイス領域を他の領域から電気的に分離する領域分離構造をさらに含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記領域分離構造は、前記半導体層に形成された第2導電型のカラム領域からなる、請求項
7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記主面の表層部において前記ウェル領域および前記カラム領域の間の領域に形成され、前記ドレイン領域に電気的に接続された第2導電型のガード領域をさらに含む、請求項
8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記ベースコンタクト領域は、前記ベース領域の縁部から内方に間隔を空けて前記ベース領域の表層部に形成され、前記ソース領域に電気的に接続されている、請求項1~
9のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記主面の上において前記ドリフト領域を被覆する絶縁膜をさらに含み、
前記ゲート絶縁膜は、前記絶縁膜の厚さ未満の厚さを有し、前記絶縁膜に連なっている、請求項1~
10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記ゲート電極は、前記ゲート絶縁膜の上から前記絶縁膜の上に引き出され、前記絶縁膜を挟んで前記ドリフト領域に対向する引き出し部を含む、請求項
11に記載の半導体装置。
【請求項13】
第2導電型の半導体基板をさらに含み、
前記半導体層は、前記半導体基板の上に積層されている、請求項1~
12のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記デバイス領域において前記半導体基板および前記半導体層の間の境界に跨って形成された第1導電型の埋込領域をさらに含み、
前記ベース領域および前記ウェル領域は、前記半導体層の一部を挟んで前記埋込領域に対向している、請求項
13に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記デバイス領域において前記デバイス領域の周縁に沿うように前記半導体層に形成された第1導電型のチャネルストップ領域をさらに含む、請求項
14に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記チャネルストップ領域は、前記埋込領域に向けて壁状に延び、前記埋込領域に電気的に接続されている、請求項
15に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極、絶縁体および半導体の積層構造を有するEIS(Electrode-Insulator-Semiconductor)型のダイオード構造を備えた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、EIS型のダイオード構造を備えた半導体装置を開示している。この半導体装置は、n型の半導体基板、p型のベース領域、n型のソース領域、p型のアノード領域、n型のカソード領域、ゲート絶縁膜およびゲート電極を含む。
【0003】
ベース領域は、半導体基板の表層部に形成されている。ソース領域は、ベース領域の縁部から内方に間隔を空けてベース領域の表層部に形成され、半導体基板との間でチャネル領域を画定している。アノード領域は、ベース領域の表層部においてソース領域とは異なる領域に形成されている。カソード領域は、ベース領域から間隔を空けて半導体基板の表層部に形成され、ベース領域との間でドリフト領域を画定している。ゲート絶縁膜は、半導体基板の上においてチャネル領域を被覆している。ゲート電極は、ゲート絶縁膜の上に形成され、ゲート絶縁膜を挟んでチャネル領域に対向している。ゲート電極は、ソース領域およびアノード領域に電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
EIS型のダイオード構造は、静電サージ耐量が低いという構造的特徴を有している。静電サージ耐量は、ESD(electro static discharge)耐量とも称される。
【0006】
本発明の一実施形態は、EIS型のダイオード構造を備え、静電サージ耐量を向上できる半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、主面を有し、デバイス領域を含む第1導電型の半導体層と、前記デバイス領域において前記主面の表層部に形成された第2導電型のベース領域と、前記ベース領域の縁部から内方に間隔を空けて前記ベース領域の表層部に形成され、前記半導体層との間でチャネル領域を画定する第1導電型のソース領域と、前記ベース領域の表層部において前記ソース領域とは異なる領域に形成され、前記ベース領域の不純物濃度を超える不純物濃度を有する第2導電型のベースコンタクト領域と、前記デバイス領域において前記ベース領域から間隔を空けて前記主面の表層部に形成され、前記ベース領域との間でドリフト領域を画定する第1導電型のウェル領域と、前記ウェル領域の表層部に形成された第1導電型のドレイン領域と、前記ウェル領域の表層部に形成され、前記ドレイン領域に電気的に接続された第2導電型の不純物領域と、前記主面の上において前記チャネル領域を被覆するゲート絶縁膜、および、前記ゲート絶縁膜の上において前記チャネル領域に対向し、前記ソース領域および前記ベースコンタクト領域に電気的に接続されたゲート電極を有するゲート構造と、を含む、半導体装置を提供する。
【0008】
この半導体装置は、デバイス領域においてEIS型のダイオード構造を含む。ダイオード構造は、具体的には、ベース領域、ソース領域、ベースコンタクト領域、ウェル領域、ドレイン領域およびゲート構造を含む。また、この半導体装置は、デバイス領域においてダイオード構造に電気的に接続されたサイリスタ構造を含む。サイリスタ構造は、具体的には、半導体層の主面に沿ってこの順に形成された不純物領域(第2導電型)、半導体層(第1導電型)、ベース領域(第2導電型)およびソース領域(第1導電型)を含む。
【0009】
サイリスタ構造は、さらに具体的には、ウェル領域側の第1極性型の第1トランジスタ構造、および、ベース領域側の第2極性型の第2トランジスタ構造を含む。第1トランジスタ構造は、半導体層の主面に沿ってこの順に形成された不純物領域(第2導電型)、半導体層(第1導電型)およびベース領域(第2導電型)を含む。第2トランジスタ構造は、半導体層の主面に沿ってこの順に形成されたソース領域(第1導電型)、ベース領域(第2導電型)および半導体層(第1導電型)を含む。
【0010】
順方向電圧がダイオード構造に印加された場合、ダイオード構造がオン状態になる一方で、サイリスタ構造がオフ状態になる。サイリスタ構造がオフ状態になるのは、ドレイン領域および不純物領域が同電位に固定されているためである。これにより、ダイオード構造が導通し、順方向電流がダイオード構造に流れる。この順方向電圧は、さらに、ダイオード構造に電気的に接続された第1トランジスタ構造にも流れる。したがって、静電気等に起因する順方向過電圧(forward overvoltage)がダイオード構造に印加された場合、ダイオード構造および第1トランジスタ構造によって順方向過電流(forward overcurrent)を処理できる。
【0011】
一方、逆方向電圧がダイオード構造に印加された場合、ダイオード構造がオフ状態になる一方で、サイリスタ構造がオン状態になる。これにより、サイリスタ構造が導通し、逆方向電流がサイリスタ構造に流れる。したがって、静電気等に起因する逆方向過電圧(reverse overvoltage)がダイオード構造に印加された場合、サイリスタ構造によって逆方向過電流(reverse overcurrent)を処理できる。よって、この半導体装置によれば、静電サージ耐量を向上できる。
【0012】
本発明における上述の、またはさらに他の目的、特徴および効果は、添付図面を参照して次に述べる実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の主要部の電気的構造を示す回路図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す構造から半導体層の上の構造を取り除いた図である。
【
図7】
図7は、
図5に示すVII-VII線に沿う断面図である。
【
図8】
図8は、
図5に示すVIII-VIII線に沿う断面図である。
【
図9】
図9は、比較例に係る逆流阻止ダイオードの電流電圧特性を示すグラフである。
【
図10】
図10は、本実施形態に係る逆流阻止ダイオードの電流電圧特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置1の主要部の電気的構造を示す回路図である。半導体装置1は、車載ネットワークの1種であるCAN(Controller Area Network)に使用されるトランシーバ集積回路デバイスである。半導体装置1は、入力端子IN、出力端子OUT、電源端子VCC、グランド端子GND、ハイサイド端子CANH、ローサイド端子CANL、制御回路2、ハイサイド出力回路3、ローサイド出力回路4およびゲートドライバ回路5を含む。
【0015】
入力端子INの個数は任意である。
図1では、入力端子INが、第1入力端子IN1および第2入力端子IN2を含む例が示されている。
図1では、マイクロコンピュータ6が入力端子INおよび出力端子OUTに接続され、抵抗分割回路7、コンデンサ8および終端抵抗9がハイサイド端子CANHおよびローサイド端子CANLの間に接続された例が示されている。
【0016】
制御回路2は、複数の入力端子IN、出力端子OUTおよびグランド端子GNDに電気的に接続されている。制御回路2は、電気信号生成回路10および機能回路11を含む。電気信号生成回路10は、入力端子INからの入力信号に基づいて各種回路を駆動する所定の電気信号を生成し、各種回路に出力する。機能回路11は、入力端子INからの入力信号や各種回路からの電気信号に基づいて各種回路をモニタする電気信号を生成し、出力端子OUTに出力する。
【0017】
機能回路11は、たとえば、各種回路を保護する1つまたは複数の保護回路を含む。機能回路11は、保護回路の一例として、過電流保護回路、過熱保護回路および低電圧誤動作抑制回路のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。過電流保護回路は、過電流から各種回路を保護する。過熱保護回路は、加熱から各種回路を保護する。低電圧誤動作抑制回路は、低電圧状態において各種回路が誤動作することを抑制する。
【0018】
ハイサイド出力回路3は、電源端子VCC、ハイサイド端子CANHおよびゲートドライバ回路5に電気的に接続されている。ハイサイド出力回路3は、第1駆動トランジスタ12、第1逆流阻止ダイオード13および第1防護トランジスタ14を含む直列回路を有している。第1駆動トランジスタ12および第1防護トランジスタ14は、p型(第1極性型または第2極性型)のMISFET(Metal Insulator Field Effect Transistor)からそれぞれなる。
【0019】
第1駆動トランジスタ12のゲートは、ゲートドライバ回路5に電気的に接続されている。第1駆動トランジスタ12のソースは、電源端子VCCに接続されている。第1逆流阻止ダイオード13のアノードは、第1駆動トランジスタ12のドレインに接続されている。第1防護トランジスタ14のゲートは、グランド端子GNDに電気的に接続されている。第1防護トランジスタ14のソースは、第1逆流阻止ダイオード13のカソードに接続されている。第1防護トランジスタ14のドレインは、ハイサイド端子CANHに接続されている。第1防護トランジスタ14は、ハイサイド端子CANHが負電圧になった場合、ハイサイド端子CANHから外部(終端抵抗9側)への電流の流出を抑制する。
【0020】
ローサイド出力回路4は、グランド端子GND、ローサイド端子CANLおよびゲートドライバ回路5に電気的に接続されている。ローサイド出力回路4は、第2駆動トランジスタ15、第2防護トランジスタ16および第2逆流阻止ダイオード17を含む直列回路を有している。第2駆動トランジスタ15および第2防護トランジスタ16は、p型とは反対の極性型からなるn型のMISFETからそれぞれなる。
【0021】
第2駆動トランジスタ15のゲートは、ゲートドライバ回路5に電気的に接続されている。第2駆動トランジスタ15のソースは、グランド端子GNDに接続されている。第2防護トランジスタ16のゲートは、電源端子VCCに接続されている。第2防護トランジスタ16のソースは、第2駆動トランジスタ15のドレインに接続されている。第2逆流阻止ダイオード17のカソードは、第2防護トランジスタ16のドレインに接続されている。第2逆流阻止ダイオード17のアノードは、ローサイド端子CANLに接続されている。第2防護トランジスタ16は、ローサイド端子CANLが正電圧になった場合、外部(終端抵抗9側)からローサイド端子CANLへの電流の流入を抑制する。
【0022】
ゲートドライバ回路5は、制御回路2、ハイサイド出力回路3、ローサイド出力回路4およびグランド端子GNDに電気的に接続されている。ゲートドライバ回路5は、制御回路2からの電気信号に応じて所定のパルス波形を有する第1制御信号H/Lおよび所定のパルス波形を有する第2制御信号L/Hを生成する。第2制御信号L/Hは、第1制御信号H/Lの反転信号からなる。第1制御信号H/Lは、第1駆動トランジスタ12のゲートに入力され、第2制御信号L/Hは、第2駆動トランジスタ15のゲートに入力される。
【0023】
抵抗分割回路7は、第1抵抗R1および第2抵抗R2を含む。第1抵抗R1の一端は、ハイサイド端子CANHに接続されている。第2抵抗R2の一端は、第1抵抗R1の他端に接続されている。第2抵抗R2の他端は、ローサイド端子CANLに接続されている。コンデンサ8の一端は、第1抵抗R1および第2抵抗R2の接続部に接続されている。コンデンサ8の他端は、接地されている。終端抵抗9の一端は、第1バス線L1を介してハイサイド端子CANHに接続されている。終端抵抗9の他端は、第2バス線L2を介してローサイド端子CANLに接続されている。
【0024】
ローレベルの第1制御信号H/Lが第1駆動トランジスタ12に入力され、ハイレベルの第2制御信号L/Hが第2駆動トランジスタ15に入力された場合、第1駆動トランジスタ12および第2駆動トランジスタ15がオン状態になる。これにより、3.5V(標準値)のバス信号SHがハイサイド端子CANHに出力され、1.5V(標準値)のバス信号SLがローサイド端子CANLに出力される(ドミナント状態)。
【0025】
一方、ハイレベルの第1制御信号H/Lが第1駆動トランジスタ12に入力され、ローレベルの第2制御信号L/Hが第2駆動トランジスタ15に入力された場合、第1駆動トランジスタ12および第2駆動トランジスタ15がオフ状態になる。これにより、2.5V(標準値)のバス信号SHがハイサイド端子CANHに出力され、2.5V(標準値)のバス信号SLがローサイド端子CANLに出力される(リセッシブ状態)。以下、半導体装置1の構造について説明する。
【0026】
図2は、
図1に示す半導体装置1を示す斜視図である。
図2では、前述の入力端子IN、電源端子VCC、グランド端子GND、ハイサイド端子CANHおよびローサイド端子CANLの図示が省略されている。
【0027】
図2を参照して、半導体装置1は、この形態(this embodiment)では、シリコン製の半導体チップ20を含む。半導体チップ20は、直方体形状に形成されている。半導体チップ20は、一方側の第1主面21、他方側の第2主面22、ならびに、第1主面21および第2主面22を接続する第1~第4側面23A~23Dを有している。
【0028】
第1主面21および第2主面22は、それらの法線方向Zから見た平面視(以下、単に「平面視」という。)において四角形状に形成されている。第1側面23Aおよび第2側面23Bは、第1方向Xに延び、第1方向Xに直交する第2方向Yに対向している。第3側面23Cおよび第4側面23Dは、第2方向Yに延び、第1方向Xに対向している。
【0029】
半導体チップ20は、この形態では、第2主面22側から第1主面21側に向けてこの順に形成されたp型(第1導電型)の半導体基板24、および、p型とは反対の導電型からなるn型(第2導電型)の半導体層25を含む積層構造を有している。半導体基板24は、第2主面22および第1~第4側面23A~23Dの一部を形成している。半導体層25は、第1主面21および第1~第4側面23A~23Dの一部を形成している。
【0030】
半導体基板24のp型不純物濃度は、1×1013cm-3以上1×1016cm-3以下であってもよい。半導体基板24の厚さは、100μm以上1000μm以下であってもよい。半導体基板24の厚さは、200μm以上700μm以下であることが好ましい。
【0031】
半導体層25は、この形態では、半導体基板24の上に形成されたエピタキシャル層からなる。半導体層25のn型不純物濃度は、1×1014cm-3以上1×1016cm-3以下であってもよい。半導体層25の厚さは、半導体基板24の厚さ未満である。半導体層25の厚さは、1μm以上50μm以下であってもよい。半導体層25の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましい。
【0032】
半導体チップ20は、第1主面21に区画された複数のデバイス領域26を含む。複数のデバイス領域26は、1つまたは複数(この形態では複数)の機能デバイス領域27、および、1つまたは複数(この形態では2つ)のダイオード領域28を含む。機能デバイス領域27およびダイオード領域28の個数および配置は任意である。
【0033】
機能デバイス領域27は、前述の制御回路2、ゲートドライバ回路5、第1駆動トランジスタ12、第1防護トランジスタ14、第2駆動トランジスタ15、第2防護トランジスタ16等の一部または全部を構成する種々の機能デバイスが形成された領域である。機能デバイスは、第1主面21および/または第1主面21の表層部を利用して形成される。機能デバイスは、半導体スイッチングデバイス、半導体整流デバイスおよび受動デバイスのうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。機能デバイスは、半導体スイッチングデバイス、半導体整流デバイスおよび受動デバイスが組み合わされた回路網を含んでいてもよい。
【0034】
半導体スイッチングデバイスは、MISFET、CMIS(Complementary - MISFET)、BJT(Bipolar Junction Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Junction Transistor)およびJFET(Junction Field Effect Transistor)のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。半導体スイッチングデバイスは、前述の第1駆動トランジスタ12、第1防護トランジスタ14、第2駆動トランジスタ15および第2防護トランジスタ16を含む。
【0035】
半導体整流デバイスは、pn接合ダイオード、pin接合ダイオード、ツェナーダイオード、ショットキーバリアダイオードおよびファーストリカバリーダイオードのうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。受動デバイスは、抵抗、コンデンサおよびインダクタのうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0036】
複数のダイオード領域28は、複数の機能デバイス領域27から間隔を空けて区画されている。複数のダイオード領域28は、前述の第1逆流阻止ダイオード13および第2逆流阻止ダイオード17がそれぞれ形成された領域である。複数のダイオード領域28内の構造は同様である。以下では、第1逆流阻止ダイオード13側のダイオード領域28(
図2に示す領域III)を例に取って、ダイオード領域28の具体的な構造について説明する。第2逆流阻止ダイオード17側のダイオード領域28の説明は、第1逆流阻止ダイオード13側のダイオード領域28の説明が適用される。
【0037】
図3は、
図2に示す領域IIIの拡大図である。
図4は、
図3に示す構造の要部拡大図である。
図5は、
図4に示す構造から半導体層25の上の構造を取り除いた図である。
図6は、
図5に示す領域VIの拡大図である。
図7は、
図5に示すVII-VII線に沿う断面図である。
図8は、
図5に示すVIII-VIII線に沿う断面図である。
【0038】
図3~
図8を参照して、半導体装置1は、第1主面21において半導体層25の一部の領域をダイオード領域28として区画する領域分離構造30を含む。領域分離構造30は、複数の機能デバイス領域27からダイオード領域28を電気的に分離する。領域分離構造30は、平面視においてダイオード領域28を取り囲む環状(この形態では四角環状)に形成されている。ダイオード領域28の平面形状は、領域分離構造30の内縁によって調整される。領域分離構造30は、この形態では、平面視においてダイオード領域28を四角形状に区画している。
【0039】
領域分離構造30は、この形態では、半導体基板24に電気的に接続されるように半導体層25に壁状に形成されたp型のカラム領域31からなる。カラム領域31は、カラム埋込領域32、カラムウェル領域33およびカラムコンタクト領域34を含む。
【0040】
カラム埋込領域32は、半導体基板24および半導体層25の間の境界に跨って形成され、半導体基板24に電気的に接続されている。この形態では、1つのカラム埋込領域32が形成されているが、半導体基板24に電気的に接続される限り、カラム埋込領域32の個数は任意である。複数のカラム埋込領域32が前記境界から第1主面21側に向かって積層されていてもよい。カラム埋込領域32のp型不純物濃度は、1×1016cm-3以上1×1020cm-3以下であってもよい。
【0041】
カラムウェル領域33は、第1主面21の表層部に形成されている。カラムウェル領域33は、具体的には、半導体層25において第1主面21およびカラム埋込領域32の間の領域に形成され、カラム埋込領域32に電気的に接続されている。カラムウェル領域33は、カラム埋込領域32のp型不純物濃度未満のp型不純物濃度を有していてもよい。カラムウェル領域33のp型不純物濃度は、1×1015cm-3以上1×1017cm-3以下であってもよい。
【0042】
カラムコンタクト領域34は、カラムウェル領域33の底部から第1主面21側に間隔を空けてカラムウェル領域33の表層部に形成されている。カラムコンタクト領域34は、カラムウェル領域33のp型不純物濃度を超えるp型不純物濃度を有している。カラムコンタクト領域34のp型不純物濃度は、1×1018cm-3以上1×1020cm-3以下であってもよい。
【0043】
半導体装置1は、ダイオード領域28において半導体基板24および半導体層25の間の境界に跨って形成されたn型の埋込領域35を含む。
図3~
図5では、埋込領域35が破線によって示されている。埋込領域35は、半導体層25のn型不純物濃度を超えるn型不純物濃度を有している。埋込領域35のn型不純物濃度は、1×10
16cm
-3以上1×10
20cm
-3以下であってもよい。
【0044】
埋込領域35は、第1主面21から半導体基板24側に間隔を空けて形成され、半導体層25の一部を挟んで第1主面21に対向している。埋込領域35は、領域分離構造30から内方に間隔を空けて形成されている。この場合、埋込領域35のn型不純物の一部がダイオード領域28の周縁に拡散していてもよい。つまり、埋込領域35は、ダイオード領域28の周縁側のn型不純物濃度がダイオード領域28の内方部側のn型不純物濃度よりも低い濃度勾配を有していてもよい。
【0045】
半導体装置1は、ダイオード領域28において第1主面21の表層部に形成された1つまたは複数(この形態では複数)のp型のベース領域40を含む。複数のベース領域40は、第1逆流阻止ダイオード13のアノード領域の一部としてそれぞれ形成されている。各ベース領域40のp型不純物濃度は、1×1015cm-3以上1×1017cm-3以下であってもよい。
【0046】
複数のベース領域40は、具体的には、平面視において埋込領域35の縁部によって取り囲まれた領域内にそれぞれ形成されている。複数のベース領域40は、埋込領域35から第1主面21側に間隔を空けて形成され、半導体層25の一部を挟んで埋込領域35に対向している。複数のベース領域40は、この形態では、第1方向Xに延びる帯状にそれぞれ形成され、第2方向Yに間隔を空けて形成されている。これにより、複数のベース領域40は、平面視において第1方向Xに延びるストライプ状に形成されている。
【0047】
半導体装置1は、各ベース領域40の表層部に形成された1つまたは複数(この形態では複数)のn型のソース領域41を含む。各ソース領域41は、半導体層25のn型不純物濃度を超えるn型不純物濃度を有している。各ソース領域41のn型不純物濃度は、1×1018cm-3以上1×1020cm-3以下であってもよい。
【0048】
複数のソース領域41は、各ベース領域40の表層部において第1方向Xに間隔を空けて形成されている。複数のソース領域41は、各ベース領域40の縁部から内方に間隔を空けてそれぞれ形成され、半導体層25との間でベース領域40の表層部からなるチャネル領域42をそれぞれ画定している。複数のソース領域41は、第1方向Xに関して、各ベース領域40の両縁部から内方に間隔を空けて形成され、第1主面21から各ベース領域40の両縁部を露出させている。
【0049】
複数のソース領域41の平面形状は任意である。複数のソース領域41は、平面視において正方形状に形成されていてもよいし、円形状(楕円形状を含む)に形成されていてもよい。複数のソース領域41は、この形態では、第2方向Yに延びる帯状にそれぞれ形成されている。
【0050】
半導体装置1は、各ベース領域40の表層部においてソース領域41とは異なる領域に形成された1つまたは複数(この形態では複数)のp型のベースコンタクト領域43を含む。複数のベースコンタクト領域43は、第1逆流阻止ダイオード13のアノード領域の一部としてそれぞれ形成されている。各ベースコンタクト領域43は、各ベース領域40のp型不純物濃度を超えるp型不純物濃度を有している。各ベースコンタクト領域43のp型不純物濃度は、1×1018cm-3以上1×1020cm-3以下であってもよい。
【0051】
複数のベースコンタクト領域43は、この形態では、各ベース領域40の表層部において第1方向Xに間隔を空けて形成されている。複数のベースコンタクト領域43は、具体的には、1つのソース領域41を挟み込む態様で、複数のソース領域41と交互に形成されている。これにより、複数のソース領域41および複数のベースコンタクト領域43を含むループ配列が各ベース領域40の表層部に形成されている。この形態では、ループ配列の始点および終点の双方が、ソース領域41によってそれぞれ形成されている。しかし、ループ配列の始点および終点のいずれか一方または双方が、ベースコンタクト領域43によって形成されていてもよい。
【0052】
複数のベースコンタクト領域43の平面形状は任意である。複数のベースコンタクト領域43は、平面視において正方形状に形成されていてもよいし、円形状(楕円形状を含む)に形成されていてもよい。複数のベースコンタクト領域43は、この形態では、第2方向Yに延びる帯状にそれぞれ形成されている。
【0053】
半導体装置1は、ダイオード領域28においてベース領域40から間隔を空けて第1主面21の表層部に形成された1つまたは複数(この形態では複数)のn型のウェル領域50を含む。ウェル領域50の個数は、ベース領域40の個数に応じて調整される。複数のウェル領域50は、第1逆流阻止ダイオード13のカソード領域の一部としてそれぞれ形成されている。各ウェル領域50は、各ベース領域40との間でドリフト領域51を画定する。ドリフト領域51は、チャネル領域42に隣接している。各ウェル領域50は、半導体層25のn型不純物濃度を超えるn型不純物濃度を有している。各ウェル領域50のn型不純物濃度は、1×1015cm-3以上1×1017cm-3以下であってもよい。
【0054】
複数のウェル領域50は、埋込領域35から第1主面21側に間隔を空けて形成され、半導体層25を挟んで埋込領域35に対向している。複数のウェル領域50は、平面視において対応する1つのベース領域40を取り囲む環状(この形態では四角環状)にそれぞれ形成されている。これにより、各ドリフト領域51は、平面視において環状に画定されている。ウェル領域50の平面形状は任意であり、長円環状に形成されていてもよい。
【0055】
図6を参照して、複数のウェル領域50は、ウェル幅Wをそれぞれ有している。ウェル幅Wは、ウェル領域50が延びる方向に直交する方向の幅である。ウェル幅Wは、0.5μm以上5μm以下であってもよい。ウェル幅Wは、1μm以上4μm以下であることが好ましい。
【0056】
複数のウェル領域50は、互いに異なる方向に延びる第1領域52および第2領域53をそれぞれ含む。第1領域52は、ベース領域40の長辺(つまり第1方向X)に沿って延びている。第2領域53は、ベース領域40の短辺(つまり第2方向Y)に沿って延びている。第2領域53のウェル幅Wは、第1領域52のウェル幅Wと異なっていてもよい。第2領域53のウェル幅Wは、この形態では、第1領域52のウェル幅W未満である。むろん、第2領域53のウェル幅Wは、第1領域52のウェル幅Wと等しくてもよいし、第1領域52のウェル幅Wを超えていてもよい。
【0057】
複数のウェル領域50の第1領域52は、この形態では、互いに隣り合う複数のベース領域40の間において一体的に形成されている。これにより、複数のウェル領域50は、平面視において複数のベース領域40を梯子状に取り囲む1つのラダーウェル領域を形成している。複数の第1領域52は、1つのドリフト領域51を挟み込む態様で、第2方向Yに複数のベース領域40と交互に形成されている。
【0058】
半導体装置1は、複数のウェル領域50の表層部に形成された1つまたは複数(この形態では複数)のn型のドレイン領域54を含む。複数のドレイン領域54は、第1逆流阻止ダイオード13のカソード領域の一部としてそれぞれ形成されている。各ドレイン領域54は、各ウェル領域50のn型不純物濃度を超えるn型不純物濃度を有している。各ドレイン領域54のn型不純物濃度は、1×1018cm-3以上1×1020cm-3以下であってもよい。
【0059】
複数のドレイン領域54は、各ウェル領域50の第2領域53から間隔を空けて、各ウェル領域50の第1領域52の表層部に形成されている。複数のドレイン領域54は、具体的には、各ウェル領域50の第1領域52の表層部のみに形成され、第2領域53には形成されていない。複数のドレイン領域54は、この形態では、第1領域52の表層部において第2方向Yにベース領域40に対向する領域のみに形成されている。ウェル領域50の第1領域52は、複数のドレイン領域54によって主たる電流経路が形成される有効領域として形成されている。
【0060】
複数のドレイン領域54は、各ウェル領域50の第1領域52の表層部において第1方向Xに間隔を空けて形成されている。複数のドレイン領域54は、第2方向Yに複数のソース領域41と1対1の対応関係で対向している。この構造によれば、複数のドレイン領域54は、ドリフト領域51において複数のソース領域41を最短距離で結ぶ電流経路を形成する。したがって、電流経路における抵抗成分を低減できる。複数のドレイン領域54は、必ずしも複数のソース領域41と1対1の対応関係で対向している必要はない。複数のドレイン領域54は、第2方向Yに複数のベースコンタクト領域43と1対1対応の関係で対向していてもよい。
【0061】
複数のドレイン領域54は、第2方向Yに関して、各ウェル領域50の第1領域52の縁部から内方に間隔を空けて形成されている。複数のドレイン領域54の平面形状は任意である。複数のドレイン領域54は、平面視において正方形状に形成されていてもよいし、円形状(楕円形状を含む)に形成されていてもよい。複数のドレイン領域54は、この形態では、第2方向Yに延びる帯状にそれぞれ形成されている。
【0062】
図6を参照して、複数のドレイン領域54は、第1方向Xに関して第1ドレイン幅WD1それぞれ有し、第2方向Yに関して第2ドレイン幅WD2それぞれ有している。第1ドレイン幅WD1は、0.1μm以上3μm以下であってもよい。第1ドレイン幅WD1は、0.5μm以上2.5μm以下であることが好ましい。第1ドレイン幅WDは、ソース領域41の第1方向Xの幅と等しくてもよい。第2ドレイン幅WD2は、ウェル領域50のウェル幅W未満であることが好ましい。第2ドレイン幅WD2は、0.1μm以上4μm以下であってもよい。第2ドレイン幅WD2は、0.5μm以上3.5μm以下であることが好ましい。
【0063】
半導体装置1は、複数のウェル領域50の表層部において複数のドレイン領域54外の領域に形成された複数のn型の外側ドレイン領域55を含む。各外側ドレイン領域55は、各ウェル領域50のn型不純物濃度を超えるn型不純物濃度を有している。各外側ドレイン領域55は、ドレイン領域54のn型不純物濃度と等しいn型不純物濃度を有している。
【0064】
複数の外側ドレイン領域55は、複数のウェル領域50の第2領域53の表層部にそれぞれ形成されている。複数の外側ドレイン領域55は、さらに、各ウェル領域50において第2領域53から第1領域52に引き出され、複数のドレイン領域54のうちの両端に位置する2つのドレイン領域54と一体的に形成されている。複数の外側ドレイン領域55は、各ウェル領域50の縁部から内方に間隔を空けて形成されている。複数の外側ドレイン領域55は、ウェル領域50における不所望なチャネル反転を抑制する。
【0065】
半導体装置1は、複数のウェル領域50の表層部に形成された1つまたは複数(この形態では複数)のp型の不純物領域56を含む。各不純物領域56は、各ベース領域40のp型不純物濃度を超えるp型不純物濃度を有している。各不純物領域56のp型不純物濃度は、1×1018cm-3以上1×1020cm-3以下であってもよい。
【0066】
複数の不純物領域56は、各ウェル領域50の第2領域53から間隔を空けて、各ウェル領域50の第1領域52の表層部に形成されている。複数の不純物領域56は、具体的には、各ウェル領域50の第1領域52の表層部のみに形成され、第2領域53には形成されていない。複数の不純物領域56は、この形態では、各ウェル領域50の第1領域52の表層部において第2方向Yにベース領域40に対向する領域のみに形成されている。
【0067】
複数の不純物領域56は、各ウェル領域50の第1領域52の表層部において第1方向Xに間隔を空けて形成されている。複数の不純物領域56は、具体的には、各ウェル領域50の第1領域52の表層部において、1つのドレイン領域54を挟み込む態様で、複数のドレイン領域54と交互に形成されている。つまり、複数の不純物領域56は、第1方向Xに複数のドレイン領域54に電気的に接続され、第2方向Yに複数のドレイン領域54とは電気的に接続されていない。
【0068】
複数の不純物領域56は、各ウェル領域50の第1領域52の縁部から内方に間隔を空けて形成されている。つまり、複数の不純物領域56は、第2方向Yにウェル領域50に電気的に接続されている。複数の不純物領域56のベース領域40側の縁部は、複数のドレイン領域54のベース領域40側の縁部に対してウェル領域50の内方に形成されていることが好ましい。この形態では、第2方向Yに関して、複数の不純物領域56の両縁部が、ドレイン領域54の両縁部に対してウェル領域50の内方に形成されている。
【0069】
複数の不純物領域56は、第2方向Yに複数のベースコンタクト領域43と1対1の対応関係で対向している。複数の不純物領域56は、必ずしも複数のベースコンタクト領域43と1対1の対応関係で対向している必要はない。複数の不純物領域56は、複数のドレイン領域54の配列に応じて、第2方向Yに複数のソース領域41と1対1の対応関係で対向していてもよい。
【0070】
複数の不純物領域56の平面形状は任意である。複数の不純物領域56は、平面視において正方形状に形成されていてもよいし、円形状(楕円形状を含む)に形成されていてもよい。複数の不純物領域56は、この形態では、第2方向Yに延びる帯状にそれぞれ形成されている。
【0071】
図6を参照して、複数の不純物領域56は、第1方向Xに関して第1幅W1それぞれ有し、第2方向Yに関して第2幅W2それぞれ有している。第1幅W1は、0.1μm以上3μm以下であってもよい。第1幅W1は、0.5μm以上2.5μm以下であることが好ましい。第1幅W1は、ドレイン領域54の第1ドレイン幅WD1と等しくてもよい。第1幅W1は、ベースコンタクト領域43の第1方向Xの幅と等しくてもよい。第2幅W2は、ドレイン領域54の第2ドレイン幅WD2未満である。第2幅W2は、0.1μm以上3.5μm以下であってもよい。第2幅W2は、0.5μm以上3μm以下であることが好ましい。
【0072】
半導体装置1は、ダイオード領域28において複数のウェル領域50から複数のベース領域40とは反対側に間隔を空けて第1主面21の表層部に形成されたp型のガード領域60を含む。ガード領域60は、具体的には、第1主面21の表層部において領域分離構造30および複数のウェル領域50の間の領域に形成されている。
【0073】
ガード領域60は、埋込領域35から第1主面21側に間隔を空けて形成され、半導体層25の一部を挟んで埋込領域35に対向している。ガード領域60は、平面視において複数のウェル領域50を一括して取り囲む環状(この形態では四角環状)に形成されている。ガード領域60は、領域分離構造30および複数のベース領域40の間に形成されるリーク電流経路を遮蔽する。
【0074】
ガード領域60は、ガードウェル領域61およびガードコンタクト領域62を含む。ガードウェル領域61は、第1主面21の表層部に形成されている。ガードウェル領域61は、具体的には、半導体層25において第1主面21およびカラム埋込領域32の間の深さ位置に形成されている。ガードウェル領域61のp型不純物濃度は、1×1015cm-3以上1×1017cm-3以下であってもよい。
【0075】
ガードウェル領域61は、カラムウェル領域33と等しい深さで形成されていてもよい。ガードウェル領域61は、カラムウェル領域33のp型不純物濃度と等しいp型不純物濃度を有していてもよい。この構造によれば、ガードウェル領域61およびカラムウェル領域33を同一の工程で形成できる。
【0076】
ガードコンタクト領域62は、ガードウェル領域61の底部から第1主面21側に間隔を空けてガードウェル領域61の表層部に形成されている。ガードコンタクト領域62は、ガードウェル領域61のp型不純物濃度を超えるp型不純物濃度を有している。ガードコンタクト領域62のp型不純物濃度は、1×1018cm-3以上1×1020cm-3以下であってもよい。
【0077】
ガードコンタクト領域62は、カラムコンタクト領域34と等しい深さで形成されていてもよい。ガードコンタクト領域62は、カラムコンタクト領域34のp型不純物濃度と等しいp型不純物濃度を有していてもよい。この構造によれば、ガードコンタクト領域62およびカラムコンタクト領域34を同一の工程で形成できる。
【0078】
半導体装置1は、ダイオード領域28においてガード領域60から複数のウェル領域50とは反対側に間隔を空けて半導体層25に形成されたn型のチャネルストップ領域65を含む。以下では、「チャネルストップ」を「CS(channel stop)」と省略して記載する。CS領域65は、第1主面21の表層部において領域分離構造30およびガード領域60の間の領域に形成されている。CS領域65は、ダイオード領域28の周縁に沿って形成されている。CS領域65は、具体的には、平面視においてガード領域60を取り囲む環状(この形態では四角環状)に形成されている。
【0079】
CS領域65は、埋込領域35に電気的に接続されるように半導体層25に壁状に形成されている。CS領域65は、具体的には、CS埋込領域66、CSウェル領域67およびCS表層領域68を含む。
【0080】
CS埋込領域66は、埋込領域35および半導体層25の間の境界に跨って形成され、埋込領域35に電気的に接続されている。この形態では、1つのCS埋込領域66が形成されているが、埋込領域35に電気的に接続される限り、CS埋込領域66の個数は任意である。複数のCS埋込領域66が埋込領域35から第1主面21側に向かって積層されていてもよい。CS埋込領域66のn型不純物濃度は、1×1016cm-3以上1×1020cm-3以下であってもよい。
【0081】
CSウェル領域67は、第1主面21の表層部に形成されている。CSウェル領域67は、具体的には、半導体層25において第1主面21およびCS埋込領域66の間の領域に形成され、CS埋込領域66に電気的に接続されている。CS埋込領域66は、CS埋込領域66のn型不純物濃度未満のn型不純物濃度を有していてもよい。CSウェル領域67のn型不純物濃度は、1×1016cm-3以上1×1020cm-3以下であってもよい。
【0082】
CS表層領域68は、CSウェル領域67の底部から第1主面21側に間隔を空けてCSウェル領域67の表層部に形成されている。CS表層領域68は、CSウェル領域67のn型不純物濃度を超えるn型不純物濃度を有している。CS表層領域68のn型不純物濃度は、1×1018cm-3以上1×1020cm-3以下であってもよい。CS表層領域68は、ソース領域41(ドレイン領域54)と等しいn型不純物濃度を有していてもよい。
【0083】
半導体装置1は、第1主面21を選択的に被覆する絶縁膜70を含む。絶縁膜70は、この形態では、フィールド酸化膜からなる。フィールド酸化膜は、LOCOS(local oxidation of silicon)膜と称されてもよい。絶縁膜70は、領域分離構造30、複数のベース領域40、複数のウェル領域50、ガード領域60およびCS領域65を露出させ、ドリフト領域51を被覆するように第1主面21の上に形成されている。絶縁膜70は、具体的には、複数の第1絶縁膜70A、1つの第2絶縁膜70B、1つの第3絶縁膜70C、1つの第4絶縁膜70Dおよび1つの第5絶縁膜70Eを含む。
【0084】
複数の第1絶縁膜70Aは、対応するドリフト領域51をそれぞれ被覆するように対応するベース領域40およびウェル領域50の間の領域にそれぞれ形成されている。各第1絶縁膜70Aは、平面視において対応するベース領域40を取り囲む環状に形成されている。各第1絶縁膜70Aの内端部は、ベース領域40の縁部を被覆し、チャネル領域42、ソース領域41およびベースコンタクト領域43を露出させている。
【0085】
各第1絶縁膜70Aの外端部は、ウェル領域50の内縁部を被覆し、ウェル領域50の内方部、ドレイン領域54、外側ドレイン領域55および不純物領域56を露出させている。各第1絶縁膜70Aの外端部は、具体的には、複数のドレイン領域54(外側ドレイン領域55)の縁部を被覆し、複数の不純物領域56の縁部を露出させている。これにより、各第1絶縁膜70Aの外端部は、複数の不純物領域56の縁部との間の領域からウェル領域50を露出させている。
【0086】
第2絶縁膜70Bは、ウェル領域50およびガード領域60の間の領域に形成されている。第2絶縁膜70Bは、平面視においてウェル領域50を取り囲む環状に形成されている。第2絶縁膜70Bの内端部は、ウェル領域50の外縁部を被覆し、外側ドレイン領域55を露出させている。第2絶縁膜70Bの内端部は、具体的には、複数の外側ドレイン領域55の縁部を被覆し、複数の外側ドレイン領域55の内方部を露出させている。
【0087】
第2絶縁膜70Bの内端部は、さらに、最も外側に形成されたウェル領域50の外縁部を被覆し、ウェル領域50の内方部、ドレイン領域54、外側ドレイン領域55および不純物領域56を露出させている。第2絶縁膜70Bの内端部は、具体的には、複数のドレイン領域54(外側ドレイン領域55)の縁部を被覆し、複数の不純物領域56の縁部を露出させている。これにより、第2絶縁膜70Bの内端部は、複数の不純物領域56の縁部との間の領域からウェル領域50を露出させている。第2絶縁膜70Bの外端部は、ガード領域60の縁部を被覆し、ガード領域60の内方部を露出させている。
【0088】
第3絶縁膜70Cは、ガード領域60およびCS領域65の間の領域に形成されている。第3絶縁膜70Cは、平面視においてガード領域60を取り囲む環状に形成されている。第3絶縁膜70Cの内端部は、ガード領域60の外縁部を被覆し、ガード領域60の内方部を露出させている。第3絶縁膜70Cの外端部は、CS領域65の内縁部を被覆し、CS領域65の内方部を露出させている。
【0089】
第4絶縁膜70Dは、CS領域65および領域分離構造30(カラム領域31)の間の領域に形成されている。第4絶縁膜70Dは、平面視においてCS領域65を取り囲む環状に形成されている。第4絶縁膜70Dの内端部は、CS領域65の外縁部を被覆し、CS領域65の内方部を露出させている。第4絶縁膜70Dの外端部は、領域分離構造30(カラム領域31)の内縁部を被覆し、領域分離構造30(カラム領域31)の内方部を露出させている。
【0090】
第5絶縁膜70Eは、領域分離構造30(カラム領域31)外の領域に形成されている。第5絶縁膜70Eは、領域分離構造30(カラム領域31)の外縁部を被覆し、領域分離構造30(カラム領域31)の内方部を露出させている。
【0091】
半導体装置1は、ダイオード領域28において第1主面21の上に形成された複数のゲート構造71を含む。複数のゲート構造71は、絶縁膜70から露出する複数のチャネル領域42の上にそれぞれ形成されている。つまり、複数のゲート構造71は、複数の第1絶縁膜70Aの内端部に取り囲まれた領域内にそれぞれ形成されている。複数のゲート構造71は、第1主面21側からこの順に積層されたゲート絶縁膜72およびゲート電極73を含む積層構造をそれぞれ有している。
【0092】
ゲート絶縁膜72は、絶縁膜70の厚さ未満の厚さを有している。ゲート絶縁膜72は、酸化シリコンを含んでいてもよい。ゲート絶縁膜72は、チャネル領域42、ソース領域41の縁部およびベースコンタクト領域43の縁部を被覆している。ゲート絶縁膜72は、具体的には、平面視において内端部および外端部を含む環状に形成されている。
【0093】
ゲート絶縁膜72の内端部は、コンタクト開口74を区画している。コンタクト開口74は、ベース領域40の内方部、複数のソース領域41の内方部および複数のベースコンタクト領域43の内方部を露出させている。コンタクト開口74は、この形態では、第1方向Xに延びる帯状に形成されている。ゲート絶縁膜72の外端部は、絶縁膜70(第1絶縁膜70Aの内端部)に接続されている。
【0094】
ゲート電極73は、この形態では、導電性ポリシリコンを含む。ゲート電極73は、ゲート絶縁膜72の上に形成され、ゲート絶縁膜72を挟んでチャネル領域42に対向している。ゲート電極73は、ゲート絶縁膜72の上から絶縁膜70(第1絶縁膜70A)の上に引き出された引き出し部75を有している。ゲート電極73の引き出し部75は、絶縁膜70(第1絶縁膜70A)を挟んでドリフト領域51に対向している。
【0095】
ゲート電極73は、具体的には、平面視において内端部および外端部を含み、ベース領域40を取り囲む環状に形成されている。ゲート電極73の内端部は、ゲート絶縁膜72の内端部と共にコンタクト開口74を区画している。
【0096】
ゲート電極73の外端部は、引き出し部75によって形成され、平面視においてウェル領域50の内端部から内方に間隔を空けて絶縁膜70の上に形成されている。ゲート電極73の外端部は、この形態では、平面視においてベース領域40およびウェル領域50の間の領域に位置している。ゲート電極73の外端部は、平面視において四角形状(具体的には第1方向Xに延びる長方形状)に形成されている。ゲート電極73の外端部の平面形状は任意であり、長円形状に形成されていてもよい。
【0097】
複数のソース領域41および複数のベースコンタクト領域43は、ゲート電極73に対して自己整合的にそれぞれ形成されていてもよい。つまり、複数のソース領域41および複数のベースコンタクト領域43は、少なくともゲート電極73の内端部を露出させるイオン注入マスクを介してn型不純物およびp型不純物を導入することによって、それぞれ形成されてもよい。この場合、複数のソース領域41および複数のベースコンタクト領域43のループ配列に対応したn型領域およびp型領域のループ配列が、少なくともゲート電極73の内端部に形成される。
【0098】
半導体装置1は、第1主面21の上に形成された層間絶縁膜80を含む。層間絶縁膜80は、絶縁膜70の上に形成され、ダイオード領域28を一括して被覆している。層間絶縁膜80は、領域分離構造30(カラム領域31)、複数のベース領域40、複数のソース領域41、複数のベースコンタクト領域43、複数のウェル領域50、複数のドレイン領域54、複数の外側ドレイン領域55、複数の不純物領域56、ガード領域60およびCS領域65において絶縁膜70から露出する部分を被覆している。
【0099】
半導体装置1は、1つまたは複数(この形態では1つ)の領域分離接続電極81、複数のソース接続電極82、複数のドレイン接続電極83、1つまたは複数(この形態では1つ)のガード接続電極84、および、複数のゲート接続電極86を含む。
【0100】
領域分離接続電極81は、層間絶縁膜80を貫通し、領域分離構造30(カラムコンタクト領域34)に電気的に接続されている。領域分離接続電極81は、基板電位(たとえばグランド電位)に固定されている。領域分離接続電極81は、平面視において領域分離構造30に沿って延びる帯状(具体的には環状)に形成されていてもよい。複数の領域分離接続電極81が、平面視において領域分離構造30に沿って間隔を空けて形成されていてもよい。
【0101】
複数のソース接続電極82は、層間絶縁膜80を貫通し、対応するベース領域40、対応する複数のソース領域41および対応する複数のベースコンタクト領域43にそれぞれ電気的に接続されている。複数のソース接続電極82は、ゲート電位に固定されている。つまり、複数のソース接続電極82は、ゲート電極73と同電位に固定されている。
【0102】
複数のソース接続電極82は、対応するコンタクト開口74内において複数のソース領域41および複数のベースコンタクト領域43を第1方向Xに横切る帯状にそれぞれ形成されている。複数のソース接続電極82の両端部は、対応するベース領域40の両縁部にそれぞれ電気的に接続されている。これにより、ベース領域40、ソース領域41およびベースコンタクト領域43は、同電位(ゲート電位)に固定されている。
【0103】
複数のドレイン接続電極83は、層間絶縁膜80を貫通し、対応する複数のドレイン領域54および対応する複数の不純物領域56にそれぞれ電気的に接続されている。複数のドレイン接続電極83は、ドレイン電位に固定されている。複数のドレイン接続電極83は、複数のドレイン領域54および複数の不純物領域56を第1方向Xに横切る帯状にそれぞれ形成されている。
【0104】
複数のドレイン接続電極83の両端部は、両端のドレイン領域54にそれぞれ接続されている。つまり、複数のドレイン接続電極83は、両端のドレイン領域54を介して複数の外側ドレイン領域55に電気的に接続されている。これにより、ウェル領域50、ドレイン領域54、外側ドレイン領域55および不純物領域56は、同電位(ドレイン電位)に固定されている。
【0105】
ガード接続電極84は、層間絶縁膜80を貫通し、ガード領域60に電気的に接続されている。ガード接続電極84は、複数のドレイン接続電極83と同電位(ドレイン電位)に固定されている。つまり、ガード領域60は、ドレイン領域54等と同電位に固定されている。ガード接続電極84は、平面視においてガード領域60に沿って延びる帯状(具体的には環状)に形成されていてもよい。複数のガード接続電極84が、平面視においてガード領域60に沿って間隔を空けて形成されていてもよい。
【0106】
複数のゲート接続電極86は、層間絶縁膜80を貫通し、対応するゲート電極73にそれぞれ電気的に接続されている。複数のゲート接続電極86は、具体的には、対応するゲート電極73の引き出し部75の任意の位置にそれぞれ電気的に接続されている。複数のゲート接続電極86は、この形態では、第1方向Xに関して複数のゲート電極73の両端部にそれぞれ電気的に接続されている。
図7および
図8では、接続形態を示すため、便宜的にゲート接続電極86を図示している。複数のゲート接続電極86は、ゲート電位に固定されている。つまり、ゲート電極73は、ベース領域40、ソース領域41およびベースコンタクト領域43等と同電位に固定されている。
【0107】
図7を参照して、第1逆流阻止ダイオード13は、EIS(Electrode-Insulator-Semiconductor)型のダイオード構造90を含む。ダイオード構造90は、具体的には、p型のベース領域40、n型のソース領域41、p型のベースコンタクト領域43、n型のウェル領域50、n型のドレイン領域54およびゲート構造71を含む。
【0108】
図8を参照して、第1逆流阻止ダイオード13は、ダイオード構造90に電気的に接続されたサイリスタ構造91を含む。サイリスタ構造91は、具体的には、半導体層25の第1主面21に沿ってこの順に形成されたp型の不純物領域56、n型の半導体層25、p型のベース領域40およびn型のソース領域41を含む。
【0109】
サイリスタ構造91は、さらに具体的には、ウェル領域50側のpnp型(第1極性型)の第1トランジスタ構造92、および、ベース領域40側のnpn型(第2極性型)の第2トランジスタ構造93を含む。第1トランジスタ構造92は、半導体層25の第1主面21に沿ってこの順に形成されたp型の不純物領域56、n型の半導体層25およびp型のベース領域40を含む。第2トランジスタ構造93は、半導体層25の第1主面21に沿ってこの順に形成されたn型のソース領域41、p型のベース領域40およびn型の半導体層25を含む。
【0110】
ダイオード構造90の順方向電圧VFがソース接続電極82(ゲート電極73)およびドレイン接続電極83に印加された場合、ダイオード構造90がオン状態になる一方で、サイリスタ構造91がオフ状態になる。サイリスタ構造91がオフ状態になるのは、ドレイン領域54および不純物領域56が同電位に固定されているためである。これにより、ダイオード構造90が導通し、順方向電流IFがダイオード構造90に流れる。この順方向電圧VFは、さらに、ダイオード構造90に電気的に接続された第1トランジスタ構造92にも流れる。
【0111】
一方、ダイオード構造90の逆方向電圧VRがソース接続電極82(ゲート電極73)およびドレイン接続電極83に印加された場合、ダイオード構造90がオフ状態になる一方で、サイリスタ構造91がオン状態になる。これにより、サイリスタ構造91が導通し、逆方向電流IRがサイリスタ構造91に流れる。
【0112】
図9は、比較例に係る逆流阻止ダイオードの電流電圧特性を示すグラフである。
図10は、本実施形態に係る第1逆流阻止ダイオード13の電流電圧特性を示すグラフである。
図9および
図10に示された電流電圧特性は、公知のTLP(Transmission Line Pulse)測定法によって調べられた。
【0113】
図9および
図10において縦軸は電流[A]であり、横軸は電圧[V]である。正の電流は順方向電流IFを意味し、負の電流は逆方向電流IRを意味している。正の電圧は順方向電圧VFを意味し、負の電圧は逆方向電圧VRを意味している。比較例に係る逆流阻止ダイオードは、不純物領域56を備えていない。つまり、比較例に係る逆流阻止ダイオードは、ダイオード構造90のみを備え、サイリスタ構造91を備えていない。
【0114】
比較例に係る逆流阻止ダイオードでは、静電破壊に至る順方向電流IFが+5A程度である一方、静電破壊に至る逆方向電流IRが-0.5A程度であった。これに対して、本実施形態に係る第1逆流阻止ダイオード13では、静電破壊に至る順方向電流IFが+25A程度である一方、静電破壊に至る逆方向電流IRが-24A程度であった。本実施形態に係る第1逆流阻止ダイオード13では、比較例に係る逆流阻止ダイオードと比較して、順方向および逆方向の双方において静電サージ耐量が向上した。
【0115】
本実施形態に係る第1逆流阻止ダイオード13では、比較例に係る逆流阻止ダイオードとは異なり、静電気等に起因する順方向過電圧(forward overvoltage)が印加された場合、ダイオード構造90および第1トランジスタ構造92によって順方向過電流(forward overcurrent)を処理できる。
【0116】
また、本実施形態に係る第1逆流阻止ダイオード13において静電気等に起因する逆方向過電圧(reverse overvoltage)が印加された場合、サイリスタ構造91によって逆方向過電流(reverse overcurrent)を処理できる。その結果、本実施形態に係る第1逆流阻止ダイオード13では、比較例に係る逆流阻止ダイオードと比較して、静電サージ耐量が向上した。
【0117】
よって、半導体装置1によれば、静電サージ耐量を向上できる。特に、サイリスタ構造91が組み込まれた構造において、第1トランジスタ構造92の作用に起因して順方向電圧VF(順方向電流IF)側の静電サージ耐量が向上したことは、逆方向電圧VRに対する保護デバイスとして利用される一般的なサイリスタデバイスでは実現し得ない異質な効果である。
【0118】
また、半導体装置1によれば、不純物領域56がウェル領域50の縁部から内方に間隔を空けてウェル領域50の表層部に形成されている。この構造によれば、第1主面21に平行な横方向に関して、不純物領域56および半導体層25の間の領域にウェル領域50の一部が介在し、当該ウェル領域50の一部によって第1トランジスタ構造92のベース抵抗が形成される。これにより、サイリスタ構造91を適切に動作させることができる。
【0119】
たとえば、ウェル領域50の表層部において不純物領域56および半導体層25の間の領域にドレイン領域54が形成されている場合、第1トランジスタ構造92のベースが比較的低抵抗なドレイン領域54によって第1トランジスタ構造92のエミッタに短絡される。そのため、サイリスタ構造91の動作が不安定となる。
【0120】
そこで、半導体装置1では、不純物領域56のベース領域40側の縁部をドレイン領域54のベース領域40側の縁部に対してウェル領域50の内方に形成している。この構造によれば、第1トランジスタ構造92のベースおよびエミッタがドレイン領域54によって短絡されることを適切に抑制できる。よって、サイリスタ構造91をより一層適切に動作させることができる。また、この構造によれば、ドレイン領域54およびソース領域41の間に過電圧が印加された場合に、ドレイン領域54およびソース領域41の間におけるパンチスルーを抑制できる。よって、パンチスルー降伏耐圧の低下を抑制できる。
【0121】
また、半導体装置1によれば、不純物領域56は、ベース領域40およびウェル領域50の対向方向に直交する方向にドレイン領域54と対向している。この構造によれば、ベース領域40および不純物領域56を結ぶライン上にサイリスタ構造91を形成できる。これにより、サイリスタ構造91の動作がドレイン領域54によって阻害されることを適切に抑制できる。
【0122】
また、半導体装置1は、第1主面21の表層部においてカラム領域31およびウェル領域50の領域に形成されたp型のガード領域60を含む。ガード領域60は、ドレイン領域54等と同電位に固定されている。具体的には、半導体装置1は、第1主面21の上においてドレイン領域54等に接続されたドレイン接続電極83と、第1主面21の上においてガード領域60に電気的に接続され、ドレイン接続電極83と同電位に固定されたガード接続電極84と、を含む。
【0123】
ダイオード領域28においてカラム領域31およびベース領域40の間の領域には、p型のベース領域40、n型の半導体層25およびp型のカラム領域31を含むpnp型(第1極性型)の第1寄生トランジスタが形成される。ダイオード構造90の順方向電圧VFがソース接続電極82(ゲート電極73)およびドレイン接続電極83に印加された場合、第1寄生トランジスタを介してカラム領域31にリーク電流が流れる。
【0124】
そこで、半導体装置1では、カラム領域31およびウェル領域50の間の領域にガード領域60を形成している。この構造によれば、ダイオード領域28においてカラム領域31およびベース領域40の間の領域に、p型のベース領域40、n型の半導体層25およびp型のガード領域60を含むpnp型(第1極性型)の第2寄生トランジスタが形成される。
【0125】
これにより、ダイオード構造90の順方向電圧VFが印加された場合に、第2寄生トランジスタを介してガード接続電極84にリーク電流を流し込むことができる。その結果、サイリスタ構造91に阻害されることなく、リーク電流を低減できる。リーク電流を低減することはダイオード領域28の電気的特性を向上する上で有効であると同時に、当該リーク電流に起因する他の機能デバイス領域27の電気的特性の変動を抑制する上でも有効である。
【0126】
本発明の実施形態は、さらに他の形態で実施できる。
【0127】
前述の実施形態では、絶縁膜70が、フィールド酸化膜からなる例について説明した。しかし、絶縁膜70は、トレンチに埋設されていてもよい。この場合、トレンチおよび絶縁膜70によってSTI(shallow trench isolation)構造が形成されていてもよい。
【0128】
前述の実施形態では、「第1導電型」が「p型」、「第2導電型」が「n型」である例について説明したが、「第1導電型」が「n型」、「第2導電型」が「p型」であってもよい。この場合の具体的な構成は、前述の説明および添付図面において「n型領域」を「p型領域」に置き換え、「p型領域」を「n型領域」に置き換えることによって得られる。前述の実施形態では、説明の順序を明確にするために「p型」が「第1導電型」と表現され、「n型」が「第2導電型」と表現された例について説明したが、「p型」が「第2導電型」と表現され、「n型」が「第1導電型」と表現されてもよい。
【0129】
前述の実施形態では、第1逆流阻止ダイオード13(第2逆流阻止ダイオード17)が、CANの回路部に組み込まれた例について説明した。しかし、第1逆流阻止ダイオード13(第2逆流阻止ダイオード17)は、CAN以外の種々のアプリケーションの回路部にも組み込むことができる。たとえば、第1逆流阻止ダイオード13(第2逆流阻止ダイオード17)は、LIN(Local Interconnect Network)、FlexRay等の車載ネットワークの回路部、車載スイッチICの回路部、DC/DCコンバータの回路部等に組み込むことができる。第1逆流阻止ダイオード13(第2逆流阻止ダイオード17)は、車載以外のアプリケーションの回路部に組み込まれてもよい。
【0130】
以下、この明細書および図面から抽出される特徴の例を示す。EIS型のダイオード構造は、静電サージ耐量が低いという構造的特徴を有している。静電サージ耐量は、ESD(electro static discharge)耐量とも称される。以下の[A1]~[A17]は、EIS型のダイオード構造を備え、静電サージ耐量を向上できる半導体装置を提供する。
【0131】
[A1]主面を有し、デバイス領域を含む第1導電型の半導体層と、前記デバイス領域において前記主面の表層部に形成された第2導電型のベース領域と、前記ベース領域の縁部から内方に間隔を空けて前記ベース領域の表層部に形成され、前記半導体層との間でチャネル領域を画定する第1導電型のソース領域と、前記ベース領域の表層部において前記ソース領域とは異なる領域に形成され、前記ベース領域の不純物濃度を超える不純物濃度を有する第2導電型のベースコンタクト領域と、前記デバイス領域において前記ベース領域から間隔を空けて前記主面の表層部に形成され、前記ベース領域との間でドリフト領域を画定する第1導電型のウェル領域と、前記ウェル領域の表層部に形成された第1導電型のドレイン領域と、前記ウェル領域の表層部に形成され、前記ドレイン領域に電気的に接続された第2導電型の不純物領域と、前記主面の上において前記チャネル領域を被覆するゲート絶縁膜、および、前記ゲート絶縁膜の上において前記チャネル領域に対向し、前記ソース領域および前記ベースコンタクト領域に電気的に接続されたゲート電極を有するゲート構造と、を含む、半導体装置。
【0132】
この半導体装置は、デバイス領域においてEIS型のダイオード構造を含む。ダイオード構造は、具体的には、ベース領域、ソース領域、ベースコンタクト領域、ウェル領域、ドレイン領域およびゲート構造を含む。また、この半導体装置は、デバイス領域においてダイオード構造に電気的に接続されたサイリスタ構造を含む。サイリスタ構造は、具体的には、半導体層の主面に沿ってこの順に形成された不純物領域(第2導電型)、半導体層(第1導電型)、ベース領域(第2導電型)およびソース領域(第1導電型)を含む。
【0133】
サイリスタ構造は、さらに具体的には、ウェル領域側の第1極性型の第1トランジスタ構造、および、ベース領域側の第2極性型の第2トランジスタ構造を含む。第1トランジスタ構造は、半導体層の主面に沿ってこの順に形成された不純物領域(第2導電型)、半導体層(第1導電型)およびベース領域(第2導電型)を含む。第2トランジスタ構造は、半導体層の主面に沿ってこの順に形成されたソース領域(第1導電型)、ベース領域(第2導電型)および半導体層(第1導電型)を含む。
【0134】
順方向電圧がダイオード構造に印加された場合、ダイオード構造がオン状態になる一方で、サイリスタ構造がオフ状態になる。サイリスタ構造がオフ状態になるのは、ドレイン領域および不純物領域が同電位に固定されているためである。これにより、ダイオード構造が導通し、順方向電流がダイオード構造に流れる。この順方向電圧は、さらに、ダイオード構造に電気的に接続された第1トランジスタ構造にも流れる。したがって、静電気等に起因する順方向過電圧(forward overvoltage)がダイオード構造に印加された場合、ダイオード構造および第1トランジスタ構造によって順方向過電流(forward overcurrent)を処理できる。
【0135】
一方、逆方向電圧がダイオード構造に印加された場合、ダイオード構造がオフ状態になる一方で、サイリスタ構造がオン状態になる。これにより、サイリスタ構造が導通し、逆方向電流がサイリスタ構造に流れる。したがって、静電気等に起因する逆方向過電圧(reverse overvoltage)がダイオード構造に印加された場合、サイリスタ構造によって逆方向過電流(reverse overcurrent)を処理できる。よって、この半導体装置によれば、静電サージ耐量を向上できる。
【0136】
[A2]前記不純物領域は、前記ウェル領域の縁部から内方に間隔を空けて形成されている、A1に記載の半導体装置。
【0137】
[A3]前記不純物領域は、前記ベース領域および前記ウェル領域の対向方向に直交する方向に前記ドレイン領域に接続されている、A1またはA2に記載の半導体装置。
【0138】
[A4]複数の前記不純物領域が、1つの前記ドレイン領域を挟み込むように形成されている、A1~A3のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0139】
[A5]複数の前記ドレイン領域が、間隔を空けて形成されている、A1~A4のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0140】
[A6]前記ベース領域は、平面視において一方方向に沿って延びる帯状に形成され、前記不純物領域は、前記ウェル領域において前記ベース領域の長辺に対向する領域に形成されている、A1~A5のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0141】
[A7]前記ウェル領域は、平面視において前記ベース領域を取り囲む環状に形成され、前記ゲート電極は、平面視において前記ベース領域および前記ウェル領域の間の領域において前記ベース領域を取り囲む環状に形成されている、A1~A6のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0142】
[A8]前記主面に形成され、前記デバイス領域を他の領域から電気的に分離する領域分離構造をさらに含む、A1~A7のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0143】
[A9]前記領域分離構造は、前記半導体層に形成された第2導電型のカラム領域からなる、A8に記載の半導体装置。
【0144】
[A10]前記主面の表層部において前記ウェル領域および前記カラム領域の間の領域に形成され、前記ドレイン領域に電気的に接続された第2導電型のガード領域をさらに含む、A9に記載の半導体装置。
【0145】
[A11]前記ベースコンタクト領域は、前記ベース領域の縁部から内方に間隔を空けて前記ベース領域の表層部に形成され、前記ソース領域に電気的に接続されている、A1~A10のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0146】
[A12]前記主面の上において前記ドリフト領域を被覆する絶縁膜をさらに含み、前記ゲート絶縁膜は、前記絶縁膜の厚さ未満の厚さを有し、前記絶縁膜に連なっている、A1~A11のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0147】
[A13]前記ゲート電極は、前記ゲート絶縁膜の上から前記絶縁膜の上に引き出され、前記絶縁膜を挟んで前記ドリフト領域に対向する引き出し部を含む、A12に記載の半導体装置。
【0148】
[A14]第2導電型の半導体基板をさらに含み、前記半導体層は、前記半導体基板の上に積層されている、A1~A13のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0149】
[A15]前記デバイス領域において前記半導体基板および前記半導体層の間の境界に跨って形成された第1導電型の埋込領域をさらに含み、前記ベース領域および前記ウェル領域は、前記半導体層の一部を挟んで前記埋込領域に対向している、A14に記載の半導体装置。
【0150】
[A16]前記デバイス領域において前記デバイス領域の周縁に沿うように前記半導体層に形成された第1導電型のチャネルストップ領域をさらに含む、A15に記載の半導体装置。
【0151】
[A17]前記チャネルストップ領域は、前記埋込領域に向けて壁状に延び、前記埋込領域に電気的に接続されている、A16に記載の半導体装置。
【0152】
この出願は、2019年11月29日に日本国特許庁に提出された特願2019-217069号に対応しており、この出願の全開示はここに引用により組み込まれる。本発明の実施形態について詳細に説明してきたが、これらは本発明の技術的内容を明らかにするために用いられた具体例に過ぎず、本発明はこれらの具体例に限定して解釈されるべきではなく、本発明の範囲は添付の請求の範囲によって限定される。
【符号の説明】
【0153】
1 半導体装置
3 第1主面
6 半導体基板
7 半導体層
28 ダイオード領域(デバイス領域)
31 カラム領域
35 埋込領域
40 ベース領域
41 ソース領域
42 チャネル領域
43 ベースコンタクト領域
50 ウェル領域
51 ドリフト領域
54 ドレイン領域
56 不純物領域
60 ガード領域
65 チャネルストップ領域
70 絶縁膜
71 ゲート構造
72 ゲート絶縁膜
73 ゲート電極
73 引き出し部