(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-19
(45)【発行日】2025-06-27
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20250620BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20250620BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20250620BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20250620BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B5/20 101
G02F1/1335 505
G02F1/1335 510
G09F9/30 338
G09F9/30 349B
G09F9/30 349D
G09F9/30 349E
(21)【出願番号】P 2019207427
(22)【出願日】2019-11-15
【審査請求日】2022-11-09
【審判番号】
【審判請求日】2024-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小間 徳夫
(72)【発明者】
【氏名】矢田 竜也
(72)【発明者】
【氏名】三井 雅志
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】高松 大
【審判官】関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/111472号(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/139522号(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/16573(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/92877(WO,A1)
【文献】特開2018-189945号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02F 1/1335
G02B 5/20
G02F 1/1335
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示されるアゾ化合物またはその塩を含有し、
【化1】
(式中、A
1は置換基を有するフェニル基、またはナフチル基を示し、R
1またはR
2は各々独立に、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、スルホ基、又はスルホ基を有する低級アルコキシ基を示し、X
1は置換基を有してもよいフェニルアミノ基を示す。)
基材2枚の吸収軸を平行にして測定して得られる透過率において、
520nm乃至590nmの平均透過率が30%以上であって、
420nm乃至480nmの平均透過率と、520nm乃至590nmの平均透過率との差の絶対値が5%以内であり、かつ、
520nm乃至590nmの平均透過率と、590nm乃至660nmの平均透過率との差の絶対値が5%以内であって、
さらに、前記基材2枚の吸収軸を直交にして測定して得られる各波長透過率において、
420nm乃至480nmの平均透過率と、520nm乃至590nmの平均透過率との差の絶対値が2%以内であり、かつ、
520nm乃至590nmの平均透過率と、600nm乃至660nmの平均透過率との差の絶対値が2%以内である、偏光機能を有する基材と、
カラーフィルターと、
を備え、
前記カラーフィルターを光が2回透過したときのNTSC比は、1%以上
5%以下であることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記カラーフィルターは、無色透明な領域を有し、前記無色透明な領域の面積は、前記カラーフィルターの全領域の面積の1/4以上であることを特徴とする請求項
1に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
偏光素子は一般的に、二色性色素であるヨウ素又は二色性染料をポリビニルアルコール樹脂フィルムに吸着配向させることにより製造されている。この偏光素子の少なくとも片面に接着剤層を介してトリアセチルセルロースなどからなる保護フィルムを貼合して偏光板とされ、液晶表示装置などに用いられる。二色性色素としてヨウ素を用いた偏光板はヨウ素系偏光板と呼ばれ、一方、二色性色素として二色性染料を用いた偏光板は染料系偏光板と呼ばれる。これらのうち染料系偏光板は、高耐熱性、高湿熱耐久性、高安定性を有し、また、配合による色の選択性が高いという特徴がある一方で、同じコントラストを有するヨウ素系偏光板に比べると透過率が低いという問題点があった。そのため、高い耐久性を維持し、色の選択性が多様であって、より高い透過率を実現することが困難とされていた。
【0003】
しかしながら、そういった色の選択性が多様である染料系偏光板であっても、これまでの偏光素子は吸収軸を平行に設置すると黄色味を呈する偏光素子である。また、一方のヨウ素系偏光板の色は吸収軸を平行に設置すると黄緑、吸収軸を直交に設置すると青色を呈色する偏光素子であり、そういった偏光板を表示装置(以下、またはディスプレイとも表記する)に用いる場合には、その偏光素子の色が表示特性に大きく影響を与える。特に、液晶を用いた表示装置においては、少なくとも液晶セルを介して観察者側に偏光素子を一枚設けることが必須である。そのため、その偏光板の色が観察者から確認できることは明瞭である。しかしながら、そういった偏光素子の波長特性による発色はディスプレイの表示特性に大きく影響を与える要素の一つであり、バックライトを用いた従来の透過型液晶デバイスでは、バックライトのスペクトル分布やカラーフィルターの調整により表示色を最適化する必要がある。
【0004】
一方で、周囲光を利用する表示装置、特に反射型液晶デバイスでは、透過型ディスプレイのように光源のスペクトルを調整することができないため、偏光板の波長特性がそのまま表示色となる。このことから、偏光板の波長特性の改善が重要な課題となっていた。これまでの反射型の液晶デバイスは白表示がやや黄色がかり、黒表示が、青色がかったものとなる。そのため他の反射型デバイス(電子ペーパーディスプレイ等)と比較して、表示品位が劣ったものと見なされてきた。
【0005】
また、ディスプレイの表示性能を改善する偏光板として、カラーフィルターのスペクトルの調整や粘着剤等に色素を混ぜて表示色を調整する手法を用いた偏光板が、提案されている。しかしながら、いずれも偏光板の透過率を低下させる結果となり、コストも掛かることから、大いに改善が求められている。また、偏光板の波長特性の改善も行われているが、一般的に用いられているヨウ素系偏光板では透過スペクトル(吸収軸が平行時)を各波長で均一にすると、直交時において短波長に光の漏れが生じ、十分な表示を行うことができなかった。この偏光板の色相を改善する方法として、特許文献1または特許文献2のような技術が開示されている。
【0006】
特許文献1は、ニュートラル係数を算出し、絶対値が0乃至3である偏光板を開示している。特許文献2は、410nm乃至750nmの透過率において、平均値の±30%以内であり、ヨウ素に加えて、直接染料、反応染料、または酸性染料を添加して調整してなる偏光素子を開示している。同文献に開示の偏光素子は、単体透過率、つまりは、偏光素子を1枚のみを用いて測定した時の色をUCS色空間におけるa値、b値で絶対値2以内にして得られた偏光素子である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4281261号公報
【文献】特許第3357803号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】機能性色素の応用,第1刷発行版,(株)CMC出版,入江正浩監修,P98-100
【文献】染料化学,細田豊著,技報堂
【文献】液晶が分かる本,工業調査会出版,苗村省平著,Q58―Q59
【文献】イラスト・図解液晶のしくみがわかる本,技術評論社,竹添秀男・高西陽一・宮地弘一著、P182
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1では、実施例から分かるように、ニュートラル係数(Np)が低くても、JIS Z 8729から求められる平行位の色相だけでもa*値がー2乃至-1、かつ、b*値が2.5乃至4.0であることから、色としては白表現時に黄緑色を呈していることが分かる。また、直交位の色相はa*値が0乃至1ではあるが、b*値が-1.5乃至-4.0であることから、青色を呈している偏光板になってしまっていた。
【0010】
また、特許文献2では、偏光素子は、単体透過率、つまりは、偏光素子を1枚のみを用いて測定した時の色をUCS色空間におけるa値、b値で絶対値2以内にして得られた偏光素子である。しかしながら、偏光板を2枚用いて白表示時(平行にした場合)および黒表示時(直交にした場合)の色相を同時に無彩色が表現できるものではない。また、実施例を見ればわかるように、その単体透過率の平均値は、実施例1で31.95%、実施例2で31.41%であり、透過率が低いため、高透過率を求められる分野、特に、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンスなどの分野では十分な性能を有するものではなかった。
【0011】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高い反射率を有しながらも、着色のない高品位な白表示と黒表示及び優れたカラー表示が実現できる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討の結果、アゾ化合物を含有してなる偏光機能を有する基材であって、基材2枚の吸収軸を平行にして測定して得られる各波長透過率において、520nm乃至590nmの平均透過率が30%以上であって、420nm乃至480nmの平均透過率と、520nm乃至590nmの平均透過率との差の絶対値が5%以内であり、かつ、520nm乃至590nmの平均透過率と、590nm乃至660nmの平均透過率との差の絶対値が5%以内であって、さらに、基材2枚の吸収軸を直交にして測定して得られる各波長透過率において、420nm乃至480nmの平均透過率と、520nm乃至590nmの平均透過率との差の絶対値が2%以内であり、かつ、520nm乃至590nmの平均透過率と、600nm乃至660nmの平均透過率との差の絶対値が2%以内であることを特徴とする基材(A)を備える表示装置は、高い反射率を有しながらも、着色のない高品位な白色と黒色を表現でき、かつ、反射型として十分なカラー表示が可能な表示装置を提供できることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明は、
(1)アゾ化合物またはその塩を含有し、
基材2枚の吸収軸を平行にして測定して得られる透過率において、
520nm乃至590nmの平均透過率が30%以上であって、
420nm乃至480nmの平均透過率と、520nm乃至590nmの平均透過率との差の絶対値が5%以内であり、かつ、
520nm乃至590nmの平均透過率と、590nm乃至660nmの平均透過率との差の絶対値が5%以内であって、
さらに、基材2枚の吸収軸を直交にして測定して得られる各波長透過率において、
420nm乃至480nmの平均透過率と、520nm乃至590nmの平均透過率との差の絶対値が2%以内であり、かつ、
520nm乃至590nmの平均透過率と、600nm乃至660nmの平均透過率との差の絶対値が2%以内であることを特徴とする偏光機能を有する基材(A)を備えることを特徴とする表示装置。
【0014】
(2)カラーフィルターを備えることを特徴とする(1)に記載の表示装置。
【0015】
(3)カラーフィルターを光が2回透過したときのNTSC比は、1から20であることを特徴とする(2)に記載の表示装置。
【0016】
(4)カラーフィルターは、赤色カラー層、緑色カラー層、および青色カラー層を含むことを特徴とする(2)または(3)に記載の表示装置。
【0017】
(5)カラーフィルターは、赤色カラー層、赤寄りの緑色カラー層、青色カラー層、および青寄りの緑色カラー層を含むことを特徴とする(2)または(3)に記載の表示装置。
【0018】
(6)カラーフィルターは、無色透明な領域を有することを特徴とする(2)から(5)に記載の表示装置。
【0019】
(7)無色透明な領域の面積は、カラーフィルターの全領域の面積の1/4以上であることを特徴とする(6)に記載の表示装置。
【0020】
(8)基材(A)2枚の吸収軸を直交にして測定して得られる各波長透過率において、
420nm乃至480nmの平均透過率と、520nm乃至590nmの平均透過率との差の絶対値が0.3%より大きく、かつ、
520nm乃至590nmの平均透過率と、600nm乃至660nmの平均透過率との差の絶対値が0.3%より大きいことを特徴とする(1)から(7)に記載の表示装置。
【0021】
(9)表示装置が、液晶表示装置であることを特徴とする(1)から(8)に記載の表示装置。
【0022】
(10)液晶表示装置が、反射型液晶表示装置であることを特徴とする(9)に記載の表示装置。
【0023】
(11)表示装置の背面側から順に、反射板、基材(A)、液晶層、カラーフィルター、基材(A)が少なくとも配置されることを特徴とする(2)から(10)に記載の表示装置。
【0024】
(12)液晶層は、背面側から順に、反射電極、液晶層、透明電極と配置されることを特徴とする(11)に記載の表示装置。
【0025】
(13)反射板は、拡散反射型であることを特徴とする(11)または(12)に記載の表示装置。
【0026】
(14)反射電極は、拡散反射型であることを特徴とする(12)に記載の表示装置。
【0027】
(15)光拡散機能を有する基材を、基材(A)と液晶層との間に備えることを特徴とする(11)から(14)に記載の表示装置。
【0028】
(16)120乃至160nmの位相差値を有する基材と基材(A)とが積層されていることを特徴とする(1)から(15)に記載の表示装置。
【発明の効果】
【0029】
本発明の表示装置は、高い反射率を有しながらも、着色のない高品位な白表示と黒表示及び優れたカラー表示が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】カラーフィルターを光が二回透過した際のNTSC比と透過率との関係を表した図である。
【
図2】(a)は実施例1に係る表示装置の縦断面図であり、(b)は(a)に示される表示装置のカラーフィルターの平面図である。
【
図3】基材(A)と同様の材料で作製した偏光板の平行透過率と直交透過率との関係を表す図である。
【
図4】平行透過率とコントラストとの関係を表した図である。
【
図5】(a)は実施例2に係る表示装置の縦断面図であり、(b)は(a)に示される表示装置のカラーフィルターの平面図である。
【
図6】(a)は実施例3に係る表示装置の縦断面図であり、(b)は(a)に示される表示装置のカラーフィルターの平面図である。
【
図7】(a)は実施例4に係る表示装置の縦断面図であり、(b)は(a)に示される表示装置のカラーフィルターの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明では、アゾ化合物を含有してなる偏光機能を有する基材であって、
該基材2枚の吸収軸を平行にして測定して得られる各波長透過率において、
520nm~590nmの平均透過率が30%以上であって、
420nm~480nmの平均透過率と、520nm~590nmの平均透過率との差の絶対値が5%以内であり、かつ、
520nm~590nmの平均透過率と、590nm~660nmの平均透過率との差の絶対値が5%以内であって、
さらに、前記基材2枚の吸収軸を直交にして測定して得られる各波長透過率において420nm~480nmの平均透過率と、520nm~590nmの平均透過率との差の絶対値が2%以内であり、かつ、
520nm~590nmの平均透過率と、600nm~660nmの平均透過率との差の絶対値が2%以内であることを特徴とする基材(A)を備えることを特徴とする表示装置に関する。
【0032】
(基材(A)について)
本発明の基材(A)を備えた表示装置の透過率には、基材(A)2枚の吸収軸を平行にして測定して得られる520nm~590nmの各波長の平均透過率が30%以上である。それにより、本発明の基材(A)を設けた表示装置は、明るく、かつ、高い輝度を有することが出来る。
【0033】
特に、520nm~590nmの各波長は、JIS Z 8701において色を示す際に、計算で用いる等色関数に基づく最も視感度の高い波長であり、この範囲における各波長の透過率が、目視で確認できる透過率に近いことから、520nm~590nmの各波長の透過率を30%以上に制御することが重要である。
【0034】
例えば、基材2枚の吸収軸を平行にして測定して得られる520nm~590nmの平均透過率と、基材2枚の吸収軸を平行にして得られる視感度補正された平行透過率とは、ほぼ同等な値を示す。このことからも、520nm~590nmの透過率を調整することは非常に重要なことであることが分かる。
【0035】
表示装置に必要な透過率は、基材(A)2枚の吸収軸を平行にして測定して得られる520nm~590nmの各波長の平均透過率として30%~45%であり、好ましくは、35%~40%であって、さらに好ましくは36%~37%である。その際の偏光度は、50%~100%であれば良く、好ましくは60%~100%、より好ましくは70%~100%である。
【0036】
偏光度は高い方が好ましいが、偏光度を高くすると透過率が低下してしまう傾向があるため、偏光度と透過率との関係において表示装置に適した偏光度の偏光素子を選定する必要がある。
【0037】
本発明では、基材(A)2枚の吸収軸を平行にして測定して得られる各波長透過率において、520nm~590nmの平均透過率だけでなく、420nm~480nmの平均透過率と、520nm~590nmの平均透過率との差の絶対値が5%以内であり、かつ、520nm~590nmの平均透過率と、590nm~660nmの平均透過率との差の絶対値が5%以内であることも必要とする。420nm~480nm、520nm~590nm、および、590nm~660nmの各波長は、JIS Z 8729において色を示す際に計算で用いる等色関数に基づく主な波長帯域である。
【0038】
具体的には、JIS Z 8729の元になるJIS Z 8701のXYZ等色関数において、600nmを最大値とするx(λ)、550nmを最大値とするy(λ)、455nmを最大値とするz(λ)のそれぞれの最大値を100とした時、20以上となる値を示す波長が、420nm~480nm、520nm~590nm、および、590nm~660nmの各波長である。
【0039】
それらの420nm~480nm、520nm~590nm、および、590nm~660nmの各波長透過率を所定の透過率に調整した偏光素子または偏光板を用いて、偏光機能を有する基材(A)とし、基材(A)を用いることによって、本願発明の表示装置は達成できる。その調整する範囲は、基材(A)2枚の吸収軸を平行にして測定して得られる各波長透過率において、420nm~480nmの平均透過率と520nm~590nmの平均透過率との差の絶対値においては、5%以内であることが必要であり、好ましくは3%以内である。
【0040】
また、基材(A)2枚の吸収軸を直交にして測定して得られる各波長透過率においても所定の透過率を調整する必要がある。420nm~480nmの平均透過率と、520nm~590nmの平均透過率との差の絶対値が2%以内であり、かつ、520nm~590nmの平均透過率と、600nm~660nmの平均透過率との差の絶対値が2%以内であることを必要とする。
【0041】
さらに、基材(A)2枚の吸収軸を直交にして測定して得られる各波長透過率において、420nm~480nmの平均透過率と、520nm~590nmの平均透過率との差の絶対値においては2%以内であることが必要であるが、好ましくは1%以内である。かつ、520nm~590nmの平均透過率と、590nm~660nmの平均透過率との差の絶対値においては2%以内であることが必要であるが、好ましくは1%以内である。
【0042】
さらにまた、基材(A)2枚の吸収軸を直交にして測定して得られる各波長透過率において、420nm~480nmの平均透過率と、520nm~590nmの平均透過率との差の絶対値においては、プロセス上の課題から0.3%より大きくすることが必要であるが、好ましくは0.5%以上である。かつ、520nm~590nmの平均透過率と、590nm~660nmの平均透過率との差の絶対値においてはプロセス上の課題から、0.3%より大きくすることが必要であるが、好ましくは0.5%以上である。ここでプロセス上の課題とは、アゾ系の染料を複数まぜて染色する際の染色ばらつきのことである。
【0043】
一方で、380nm~420nm、480nm~520nm、660nm~780nmの平均透過率に関する調整も必要ではあるが、420nm~480nmと、520nm~590nmと、600nm~660nmとが調整されていることにより、色素により大きく影響は受けにくいため、調整はしなくてもよい。
【0044】
反射型液晶表示装置において、如何に反射率を高くするかが重要である。これは室内など比較的暗い環境でも十分な視認性を確保する必要があるためである。しかしながら、カラー反射型液晶表示装置では、カラーフィルターの透過率が低いため、反射率が低下してしまっていた。カラーフィルターにより反射率が低下することを示す図として、
図1に、カラーフィルターを光が2回透過した際のNTSC比と透過率との関係を表した図を示す。
【0045】
ここで、カラーフィルターを光が2回透過したときのNTSC比とは、カラーフィルターの各色要素を光が2回透過したときの色度をCIE1931XYZ表色系の色度(x,y)図上にプロットしそれらを直線で結んだ面積と、アメリカテレビジョン標準化委員会(National Television Standards Committee)と、により、CIE1931XYZ表色系の色度(x,y)にて定められた標準方式の3原色、赤(0.670,0.330)、緑(0.210,0.710)、青(0.140,0.080)を結んだ三角形の面積に対する比を%で表したものである。
【0046】
また、カラー反射型液晶表示装置では、外からの光はカラーフィルターを2回透過することから、カラーフィルターのNTSC比は光が2回透過したときのNTSC比とした。
【0047】
図1から、NTSC比が大きいと透過率は低いが、NTSC比が小さくなるにしたがって透過率が高くなることがわかる。従って、カラー反射型液晶表示装置の反射率を高くするには、透過率を高くすればよく、すなわちNTSC比を小さくすればよい。我々はカラー反射型液晶表示装置の研究をしている中で、カラー反射型液晶表示装置においては、NTSC比が小さくても人間の目は十分色を感じることができることを見出した。その結果、人間の目が十分色を感じることができるNTSC比の値は、1%~20%であり、好ましくは1%~10%、より好ましくは1%~5%である。
【0048】
NTSC比が小さいカラーフィルターを使用したカラー反射型液晶表示装置では、反射率が向上し、人間の目の色に対する感度が向上する。そのため、従来の偏光板を使用すると、白表示および/または黒表示で着色が発生し、それを視認することで表示品位を低下させていた。カラー反射型液晶表示装置において、NTSC比の小さいカラーフィルターと基材(A)を同時に使用することで、初めて、反射率の高い明るいカラー表示と、白表示および/または黒表示においても着色のない優れたカラー表示と、が実現できることを見出した。
【0049】
カラーフィルターのNTSC比を1%~20%にする方法として、カラー層を形成する染料または顔料の濃度を低くする方法、カラー層の厚みを薄くする方法、およびカラー層のない透明な領域を形成する方法などがある。特にカラー層のない透明な領域を形成する方法では、カラー層のない透明な領域の偏光板による着色を抑えることができることから、特に基材(A)の使用が有効である。
【0050】
カラー層のない透明な領域を形成する方法において、カラー層のない透明な領域の面積は全領域の面積の1/4以上にすることが必要である。好ましくは、カラー層のない透明な領域の面積は全領域の面積の1/2以上である。より好ましくは、カラー層のない透明な領域の面積は全領域の面積の2/3以上である。これにより、透過率の高い、すなわち反射率が高い明るいカラー表示のカラー反射型液晶を実現することができる。
【0051】
基材(A)を設けた偏光素子または偏光板を表示装置に設けることで、表示装置の色の発現を制御することが出来る。特に、基材(A)を設けた偏光素子または偏光板は、一般的な用法と同じく、表示装置に設けると、偏光板に基づく色相を制御でき、表示装置は白を表示する際には上質の紙のような白を表現でき、また、黒を表示する際には漆黒の黒色を表現できるに至る。
【0052】
一般的な偏光板では、黒を表現できるように制御した場合には、偏光素子を平行にした場合の透過率において白色純度が低下し、黄色または黄緑色に呈色してしまう。逆に、白を表現できるように偏光素子を平行にした場合の透過率を制御した場合には、偏光素子が直交になった時の透過率において黒色純度が低下し青色に呈色してしまう。そういった色相を持つ偏光素子が表示装置に設けられることによって、その偏光素子の色相を表示装置が呈色することは当然である。
【0053】
この表示装置の呈色は、バックライトを用いた従来の透過型液晶デバイスでは、バックライトのスペクトル分布やカラーフィルターの調整により表示色を最適化できる。しかしながら、偏光板のその色をバックライトやカラーフィルターによって調整する必要があった。
【0054】
ところが、外光を利用して表示させる反射型表示装置、特に、反射型液晶デバイスでは、バックライトを有さないため、白表示時の黄色の呈色と、黒表示時の青色の呈色を同時にカラーフィルターで改善することは出来ない。さらに、外光の反射を防止したい場合に偏光板を用いて反射防止する表示装置、例えば有機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、OLEDと省略)やプラズマディスプレイ等で用いる場合には、偏光板は、発光表示装置よりも人が観察する側に、位相差板と共に設けられている。
【0055】
これまでの一般的な偏光板では、OLEDの発色の色純度を低下させることから、偏光板の色相の改善は非常に重要であった。そういった反射光を制御したいOLEDなどの表示装置などにも本発明の処方は有効である。つまり、本発明では、従来の偏光板が有する白表示時の黄色の呈色と、黒表示時の青色の呈色する問題によって発生する発色を改善し、白表示時に高品位な紙のような白色を表示し、黒表示時に漆黒の黒を表示するに至る表示装置を提供し、かつ、特に反射型ディスプレイにおいて、その表示時の輝度を向上させ、かつ、コントラストをも向上させうることを達成した。
【0056】
(本願発明の基材(A)の偏光素子および偏光板の作成方法)
アゾ化合物、特に一般的に二色性染料を含有し得る素子としては、例えば、親水性高分子よりなるものを製膜されたものを用いる。親水性高分子は特に限定しないが、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、アミロース系樹脂、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸塩系樹脂などがある。二色性染料を含有させる場合、加工性、染色性、および架橋性などからポリビニルアルコール系樹脂、および、その誘導体よりなる樹脂が最も好ましい。それらの樹脂をフィルム形状として、本発明の染料、および、その配合物を含有させ、延伸等の配向処理を適用することによって、偏光素子、または偏光板を作製できる。
【0057】
アゾ化合物よりなる二色性染料とは、例えば、非特許文献1に示されるような有機化合物を使用することができる。特に、二色性の高いものが好ましい。例えば、シー.アイ.ダイレクト.イエロー12、シー.アイ.ダイレクト.イエロー28、シー.アイ.ダイレクト.イエロー44、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ26、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ39、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ107、シー.アイ.ダイレクト.レッド2、シー.アイ.ダイレクト.レッド31、シー.アイ.ダイレクト.レッド79、シー.アイ.ダイレクト.レッド81、シー.アイ.ダイレクト.レッド247、シー.アイ.ダイレクト.グリーン80、シー.アイ.ダイレクト.グリーン59、並びに特開2001-33627号公報、特開2002-296417号公報及び特開昭60-156759号公報、に記載された有機染料等が挙げられる。
【0058】
これらの有機染料は遊離酸の他、アルカリ金属塩(例えばNa塩、K塩、Li塩)、アンモニウム塩、又はアミン類の塩として用いることができる。ただし、二色性染料はこれらに限定されず公知の2色性染料を用いることが出来る。アゾ化合物は、遊離酸、その塩、またはその銅錯塩染料であることで、特に、光学特性が向上される。このアゾ系染料は、1種のみで用いても良いし、他のアゾ化合物と配合して用いても良く、配合は限定されない。こういったアゾ化合物を用いて、偏光素子の透過率を、基材(A)2枚の吸収軸を平行にして測定して得られる各波長透過率において、520nm~590nmの平均透過率が30%以上であって、420nm~480nmの平均透過率と、520nm~590nmの平均透過率との差の絶対値が5%以内であり、かつ、520nm~590nmの平均透過率と、590nm~660nmの平均透過率との差の絶対値が5%以内であって、さらに、基材(A)2枚の吸収軸を直交にして測定して得られる各波長透過率において、420nm~480nmの平均透過率と、520nm~590nmの平均透過率との差の絶対値が2%以内であり、かつ、520nm~590nmの平均透過率と、600nm~660nmの平均透過率との差の絶対値が2%以内に調整することによって、本願発明を実現するための偏光素子を作製するに至る。
【0059】
以下、アゾ化合物を含浸できる素子として、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを例にして、具体的な偏光素子の作製方法を説明する。ポリビニルアルコール系樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法で作製することができる。製造方法として、例えば、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得ることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニル及びこれと共重合可能な他の単量体の共重合体などが例示される。酢酸ビニルに共重合する他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、および不飽和スルホン酸類などが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85~100モル%程度であり、好ましくは95モル%以上が好ましい。このポリビニルアルコール系樹脂は、さらに変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性したポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用できる。またポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、粘度平均重合度を意味し、当該技術分野において周知の手法によって求めることができる。粘度平均重合度は、通常1000~10000程度、好ましくは1500~6000程度である。
【0060】
かかるポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は特に限定されるものでなく、公知の方法で製膜することができる。この場合、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムには可塑剤としてグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリエチレングリコールなどが含有していても良い。可塑剤量は5~20重量%であり、好ましくは8~15重量%が良い。ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルムの膜厚は特に限定されないが、例えば、5μm~150μm程度、好ましくは10μm~100μm程度が好ましい。
【0061】
以上により得られた原反フィルムには、次に膨潤工程が施される。膨潤処理は20℃~50℃の溶液に30秒~10分間浸漬させることによって処理が適用される。溶液は水が好ましい。延伸倍率は1.00~1.50倍で調整することが良く、好ましくは1.10~1.35倍が良い。偏光素子を作製する時間を短縮する場合には、アゾ化合物の染色処理時にも膨潤するので膨潤処理を省略しても良い。
【0062】
膨潤工程とは20℃~50℃の溶液にポリビニルアルコール樹脂フィルムを30秒~10分間浸漬させることによって行われる。溶液は水が好ましい。偏光素子を製造する時間を短縮する場合には、色素の染色処理時にも膨潤するので膨潤工程を省略することもできる。
【0063】
膨潤工程の後に、染色工程が施される。染色工程では、非特許文献1などで示されるアゾ化合物(通称 二色性染料)を用いて含浸することが出来る。このアゾ化合物を含浸させることを、色を着色する工程であることから、染色工程としている。ここでアゾ化合物としては非特許文献1に記載されている染料や、式(1)などで示されるアゾ化合物を、染色工程でポリビニルアルコールフィルムに色素を吸着、および、含浸させることができる。または、ヨウ素とヨウ化カリウムが含浸した水溶液に浸漬し、ヨウ素を吸着させた後に、式(1)で示されるアゾ化合物のそれぞれを吸着、および、含浸させることで、本願の偏光機能を有する基材(A)とすることも出来る。ヨウ素とともに吸着させるアゾ化合物は式(1)で表されるアゾ化合物以外にも、特許公報昭64―5623の実施例1乃至実施例5で示されるアゾ化合物や特開平03―12606号の実施例1乃至実施例4で示されるアゾ化合物を用いても良い。
【0064】
【化1】
(式中、A
1は置換基を有するフェニル基、またはナフチル基を示し、R
1またはR
2は各々独立に、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、スルホ基、又はスルホ基を有する低級アルコキシ基を示し、X
1は置換基を有してもよいフェニルアミノ基を示す。)
【0065】
染色工程は、色素をポリビニルアルコールフィルムに吸着、および含浸させる方法であれば、特に限定されないが、例えば、染色工程はポリビニルアルコール樹脂フィルムを二色性染料に含有した溶液に浸漬させることによって行われる。この工程での溶液温度は、5~60℃が好ましく、20~50℃がより好ましく、35~50℃が特に好ましい。溶液に浸漬する時間は適度に調節できるが、30秒~20分で調節するのが好ましく、1~10分がより好ましい。染色方法は、該溶液に浸漬することが好ましいが、ポリビニルアルコール樹脂フィルムに該溶液を塗布することによって行うことも出来る。
【0066】
二色性染料を含有した溶液は、染色助剤として、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、無水硫酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウムなどを含有することが出来る。それらの含有量は、染料の染色性による時間、温度によって任意の濃度で調整できるが、それぞれの含有量としては、0~5重量%が好ましく、0.1~2重量%がより好ましい。非特許文献1に記載の二色性染料であるアゾ化合物や、式(1)で示されるアゾ化合物などは遊離酸として用いられるほか、当該化合物の塩でも良い。そのような塩は、リチウム塩、ナトリウム塩、及びカリウム塩などのアルカリ金属塩、或いは、アンモニウム塩やアルキルアミン塩などの有機塩として用いることも出来る。好ましくは、ナトリウム塩である。
【0067】
染色工程後、次の工程に入る前に洗浄工程(以降洗浄工程1という)を行うことが出来る。洗浄工程1とは、染色工程でポリビニルアルコール樹脂フィルムの表面に付着した染料溶媒を洗浄する工程である。洗浄工程1を行うことによって、次に処理する液中に染料が移行するのを抑制することができる。洗浄工程1では、一般的には洗浄溶液に水が用いられる。洗浄方法は、溶媒に浸漬することが好ましいが、洗浄溶液をポリビニルアルコール樹脂フィルムに塗布することによって洗浄することも出来る。洗浄の時間は、特に限定されないが、好ましくは1~300秒、より好ましくは1~60秒である。洗浄工程1での洗浄溶液の温度は、親水性高分子が溶解しない温度であることが必要となる。一般的には5~40℃で洗浄処理される。ただし、洗浄工程1の工程がなくとも、性能には問題は出ないため、本工程は省略することもできる。
【0068】
染色工程又は洗浄工程1の後、架橋剤及び/又は耐水化剤を含有させる工程を行うことが出来る。架橋剤としては、例えば、ホウ酸、ホウ砂又はホウ酸アンモニウムなどのホウ素化合物、グリオキザール又はグルタルアルデヒドなどの多価アルデヒド、ビウレット型、イソシアヌレート型又はブロック型などの多価イソシアネート系化合物、チタニウムオキシサルフェイトなどのチタニウム系化合物などを用いることができるが、他にもエチレングリコールグリシジルエーテル、ポリアミドエピクロルヒドリンなどを用いることができる。耐水化剤としては、過酸化コハク酸、過硫酸アンモニウム、過塩素酸カルシウム、ベンゾインエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、塩化アンモニウム又は塩化マグネシウムなどが挙げられるが、好ましくはホウ酸が用いられる。以上に示された少なくとも1種以上の架橋剤及び/又は耐水化剤を用いて架橋剤及び/又は耐水化剤を含有させる工程を行う。その際の溶媒としては、水が好ましいが限定されるものではない。
【0069】
架橋剤及び/又は耐水化剤を含有させる工程での溶媒中の架橋剤及び/又は耐水化剤の含有濃度は、ホウ酸を例にして示すと溶媒に対して濃度0.1~6.0重量%が好ましく、1.0~4.0重量%がより好ましい。この工程での溶媒温度は、5~70℃が好ましく、5~50℃がより好ましい。ポリビニルアルコール樹脂フィルムに架橋剤及び/又は耐水化剤を含有させる方法は、溶媒に浸漬することが好ましいが、溶液をポリビニルアルコール樹脂フィルムに塗布又は塗工してもよい。この工程での処理時間は30秒~6分が好ましく、1~5分がより好ましい。ただし、架橋剤及び/又は耐水化剤を含有させることが必須でなく、時間を短縮したい場合には、架橋処理又は耐水化処理が不必要な場合には、この処理工程を省略してもよい。
【0070】
染色工程、洗浄工程1、または架橋剤及び/又は耐水化剤を含有させる工程を行った後に、延伸工程を行う。延伸工程とは、ポリビニルアルコールフィルムを1軸に延伸する工程である。延伸方法は湿式延伸法又は乾式延伸法のどちらでも良く、延伸倍率は3倍以上延伸されていることで本発明は達成しうる。延伸倍率は、3倍以上、好ましくは5倍~7倍に延伸されていることが良い。
【0071】
乾式延伸法の場合には、延伸加熱媒体が空気媒体の場合には、空気媒体の温度は常温~180℃で延伸するのが好ましい。また、湿度は20~95%RHの雰囲気中で処理するのが好ましい。加熱方法としては、例えば、ロール間ゾーン延伸法、ロール加熱延伸法、圧延伸法、赤外線加熱延伸法などが挙げられるが、その延伸方法は限定されるものではない。延伸工程は1段で延伸することもできるが、2段以上の多段延伸により行うことも出来る。
【0072】
湿式延伸法の場合には、水、水溶性有機溶剤、又はその混合溶液中で延伸する。架橋剤及び/又は耐水化剤を含有した溶液中に浸漬しながら延伸処理を行うことが好ましい。架橋剤としては、例えば、ホウ酸、ホウ砂又はホウ酸アンモニウムなどのホウ素化合物、グリオキザール又はグルタルアルデヒドなどの多価アルデヒド、ビウレット型、イソシアヌレート型又はブロック型などの多価イソシアネート系化合物、チタニウムオキシサルフェイトなどのチタニウム系化合物などを用いることができるが、他にもエチレングリコールグリシジルエーテル、ポリアミドエピクロルヒドリンなどを用いることができる。耐水化剤としては、過酸化コハク酸、過硫酸アンモニウム、過塩素酸カルシウム、ベンゾインエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、塩化アンモニウム又は塩化マグネシウムなどが挙げられる。以上に示された少なくとも1種以上の架橋剤及び/又は耐水化剤を含有した溶液中で延伸を行う。架橋剤はホウ酸が好ましい。
【0073】
延伸工程での架橋剤及び/又は耐水化剤の濃度は、例えば、0.5~15重量%が好ましく、2.0~8.0重量%がより好ましい。延伸倍率は2~8倍が好ましく、5~7倍がより好ましい。延伸温度は40~60℃で処理することが好ましく、45~58℃がより好ましい。延伸時間は通常30秒~20分であるが、2~5分がより好ましい。湿式延伸工程は1段で延伸することができるが、2段以上の多段延伸により行うこともできる。
【0074】
湿式延伸法の場合には、水、水溶性有機溶剤、又はその混合溶液中で延伸する。架橋剤及び/又は耐水化剤を含有した溶液中に浸漬しながら延伸処理を行うことが好ましい。架橋剤としては、例えば、ホウ酸、ホウ砂又はホウ酸アンモニウムなどのホウ素化合物、グリオキザール又はグルタルアルデヒドなどの多価アルデヒド、ビウレット型、イソシアヌレート型又はブロック型などの多価イソシアネート系化合物、チタニウムオキシサルフェイトなどのチタニウム系化合物などを用いることができるが、他にもエチレングリコールグリシジルエーテル、ポリアミドエピクロルヒドリンなどを用いることができる。耐水化剤としては、過酸化コハク酸、過硫酸アンモニウム、過塩素酸カルシウム、ベンゾインエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、塩化アンモニウム又は塩化マグネシウムなどが挙げられる。以上に示された少なくとも1種以上の架橋剤及び/又は耐水化剤を含有した溶液中で延伸を行う。架橋剤はホウ酸が好ましい。
【0075】
延伸工程での架橋剤及び/又は耐水化剤の濃度は、例えば、0.5~15重量%が好ましく、2.0~8.0重量%がより好ましい。延伸倍率は2~8倍が好ましく、5~7倍がより好ましい。延伸温度は40~60℃で処理することが好ましく、45~58℃がより好ましい。延伸時間は通常30秒~20分であるが、2~5分がより好ましい。湿式延伸工程は1段で延伸することができるが、2段以上の多段延伸により行うこともできる。
【0076】
延伸工程を行った後には、フィルム表面に架橋剤及び/又は耐水化剤の析出、又は異物が付着することがあるため、フィルム表面を洗浄する洗浄工程(以降洗浄工程2という)を行うことができる。洗浄時間は1秒~5分が好ましい。洗浄方法は洗浄溶液に浸漬することが好ましいが、溶液をポリビニルアルコール樹脂フィルムに塗布又は塗工によって洗浄することができる。1段で洗浄処理することもできるし、2段以上の多段処理をすることもできる。洗浄工程の溶液温度は、特に限定されないが通常5~50℃、好ましくは10~40℃である。
【0077】
ここまでの処理工程で用いる溶媒として、例えば、水、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール又はトリメチロールプロパン等のアルコール類、エチレンジアミン又はジエチレントリアミン等のアミン類などの溶媒が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、1種以上のこれら溶媒の混合物を用いることもできる。最も好ましい溶媒は水である。
【0078】
延伸工程又は洗浄工程2の後には、フィルムの乾燥工程を行う。乾燥処理は、自然乾燥により行うことができるが、より乾燥効率を高めるためにはロールによる圧縮やエアーナイフ、又は吸水ロール等によって表面の水分除去を行うことができ、及び/又は送風乾燥を行うこともできる。乾燥処理温度としては、20~100℃で乾燥処理することが好ましく、60~100℃で乾燥処理することがより好ましい。乾燥処理時間は30秒~20分を適用できるが、5~10分であることが好ましい。
【0079】
以上の方法で、偏光機能を有する基材(A)の偏光素子、すなわち、アゾ化合物を含有し、基材(A)2枚の吸収軸を平行にして測定して得られる透過率において、520nm~590nmの平均透過率が30%以上であって、420nm~480nmの平均透過率と、520nm~590nmの平均透過率との差の絶対値が5%以内であり、かつ、520nm~590nmの平均透過率と、590nm~660nmの平均透過率との差の絶対値が5%以内であって、さらに、基材(A)2枚の吸収軸を直交にして測定して得られる各波長透過率において、420nm~480nmの平均透過率と、520nm~590nmの平均透過率との差の絶対値が2%以内であり、かつ、520nm~590nmの平均透過率と、600nm~660nmの平均透過率との差の絶対値が2%以内である偏光素子を得ることが出来る。
【0080】
得られた偏光素子は、その片面、又は両面に透明保護層を設けることによって偏光板とする。透明保護層はポリマーによる塗布層として、又はフィルムのラミネート層として設けることができる。透明保護層を形成する透明ポリマー又はフィルムとしては、機械的強度が高く、熱安定性が良好な透明ポリマー又はフィルムが好ましい。透明保護層として用いる物質として、例えば、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースのようなセルロースアセテート樹脂又はそのフィルム、アクリル樹脂又はそのフィルム、ポリ塩化ビニル樹脂又はそのフィルム、ナイロン樹脂またはそのフィルム、ポリエステル樹脂又はそのフィルム、ポリアリレート樹脂又はそのフィルム、ノルボルネンのような環状オレフィンをモノマーとする環状ポリオレフィン樹脂又はそのフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン骨格を有するポリオレフィン又はその共重合体、主鎖又は側鎖がイミド及び/又はアミドの樹脂又はポリマー又はそのフィルムなどが挙げられる。また、透明保護層として、液晶性を有する樹脂又はそのフィルムを設けることもできる。保護フィルムの厚みは、例えば、0.5~200μm程度である。その中の同種又は異種の樹脂又はフィルムを片面、もしくは両面に1層以上設けることによって偏光板を作製する。
【0081】
得られた偏光板は場合によって、例えば液晶、有機エレクトロルミネッセンス(通称、OLEDまたはOEL)等の表示装置に貼り合わせる場合、後に非露出面となる保護層またはフィルムの表面に、視野角改善及び/又はコントラスト改善のための各種機能性層、輝度向上性を有する層、またはフィルムを設けることもできる。偏光板を、これらのフィルムや表示装置に貼り合せるには粘着剤を用いるのが好ましい。
【0082】
また、各種機能性層とは、位相差を制御する層又はフィルムを示す。特に、反射防止を付与するためには、偏光素子または偏光板に、視感度の高い550nmに対して1/4の位相差に調整された位相差板(以下、1/4λ)を、偏光素子または偏光板の吸収軸に対して45°に貼合して設けることが一般的である。その1/4λの位相差値とは120nm~160nmに調整された位相差板であり、好ましくは130nm~145nmである。
【0083】
しかしながら、1/4λだけでは、反射防止機能が不十分であることがあるため、さらにより反射防止機能を向上させるために、240nm~300nmの位相差値に調整された位相差板(以下、1/2λと省略)を偏光板の吸収軸に対して15°、かつ、1/4λを75°で貼合された位相差板を2枚使用して反射防止を向上させる手法もある。
【0084】
さらに、この偏光板は、もう一方の表面、すなわち、保護層又はフィルムの露出面に、反射防止層、防眩層、ハードコート層など、公知の各種機能性層を有していてもよい。この各種機能性を有する層を作製するには塗工方法が好ましいが、その機能を有するフィルムを接着剤又は粘着剤を介して貼合せることもできる。
【0085】
以上の方法で、アゾ化合物を含有し、基材(A)2枚の吸収軸を平行にして測定して得られる各波長透過率において、520nm~590nmの平均透過率が30%以上であって、420nm~480nmの平均透過率と、520nm~590nmの平均透過率との差の絶対値が5%以内であり、かつ、520nm~590nmの平均透過率と、590nm~660nmの平均透過率との差の絶対値が5%以内であって、さらに、基材(A)2枚の吸収軸を直交にして測定して得られる各波長透過率において、420nm~480nmの平均透過率と、520nm~590nmの平均透過率との差の絶対値が2%以内であり、かつ、520nm~590nmの平均透過率と、600nm~660nmの平均透過率との差の絶対値が2%以内の偏光素子、および、偏光板を得ることが出来る。
本発明の偏光素子または偏光板を用いた液晶表示装置は、明るく、かつ、高い輝度を有することが出来る。その結果、信頼性が高く、長期的に高コントラストで、かつ、高い色再現性を有する液晶表示装置になる。
【0086】
こうして得られた本発明の偏光板は、必要に応じて保護層又は機能層及び板ガラスなどの支持体等を設け偏光機能を有する基材(A)として利用され、液晶プロジェクター、電卓、時計、ノートパソコン、ワープロ、液晶テレビ、偏光レンズ、偏光メガネ、カーナビゲーション、及び屋内外の計測器や表示器等に使用される。特に、反射型液晶表示装置、半透過液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス等では好適である。
【0087】
一般的な反射型液晶表示装置は、背面側から順に反射板、偏光板、液晶セル、偏光板の構成を有しており、その表示品位を改善するために、光拡散板や位相差板(例えば1/4λ)を用いることが一般的な構成である。
【0088】
その一般的な構成に対して、本願の偏光機能を有する基材(A)を用いて、背面側から順に拡散反射板、偏光機能を有する基材(A)、液晶セル、偏光機能を有する基材(A)の構成、または、背面側から順に反射板、拡散板、偏光機能を有する基材(A)、液晶セル、偏光機能を有する基材(A)にて例示される構成にすることによって、白表示時に高品位な紙のような白を表示し、黒表示時に漆黒な黒を表示するに至る表示装置を提供できるようになるため、表示品位は飛躍的に向上する。
【0089】
光拡散板は、反射板と背面側の偏光板との間に設けることが一般的ではあるが、特にその光拡散作用が得られれば、その積層構成は限定されることはない。または、非特許文献3で示されるように一枚偏光板方式(SPDモード)などの方式や、非特許文献4で示されるような構成が報告されている。このような構成において、一般的な偏光板では、漆黒な黒色を表示しようとすると、白色表示において黄色を呈色した白色表示になり、逆に、高品位な紙のような白色を表示しようとすると黒色を表示時に青色を呈色してしまった。
【0090】
このような問題から、反射型液晶、特にカラー反射型液晶表示装置では、これまでは白表示時の白色、黒表示での黒色を、カラーフィルターまたは液晶素子で改善する必要が生じ、この結果、反射率が低く、表示が暗いとみなされ、表示品位が低いとみなされてきた。こういった反射型液晶の表示装置で偏光機能を有する基材(A)を用いることによって、偏光板が有する白表示時の黄色の呈色と、黒表示時の青色の呈色する問題によって発生する色相を改善し、平行位でも直交位でも、各波長の透過率依存性がないことから、白表示時に高品位な紙のような白を表示し、黒表示時に漆黒な黒を表示するに至る表示装置を提供できる。
【0091】
特に、透過率が一定であり、かつ、各波長での透過率の波長依存性がないことから、カラーフィルターで色の補正が出来ない白黒色の反射ディスプレイでは特に有効である。また、本偏光機能を有する基材(A)は、必要な透過率の範囲としては、基材2枚の吸収軸を平行にして測定して得られる520nm~590nmの各波長の平均透過率として25%~45%での任意の透過率の調整が可能であるため、その表示時の輝度を向上させ、および、コントラストをも向上させうることを達成しうる。
【0092】
さらに、その表示品位を向上させるためには、偏光機能を有する基材(A)が液晶セルを挟んで反射型偏光板と積層され、かつ、光拡散機能を有する基材を具備し、偏光機能を有する基材(A)が液晶セルに対して観察者側に設置されることで、その表示品位は向上する。反射型偏光板には、特許第4162645号、特許第4442760号に例示されるような規則的な凹凸を設けた偏光子や、特開2006―215175号、特開2007―298634号などの熱可塑性樹脂の交互積層タイプや、3M社製のBEFシリーズ、特にDBEFシリーズ、または、BEFRPなどの特殊な形状を有する樹脂成型タイプを用いることが出来る。
【0093】
また、特開2012―37611号に記載されるような異方性光拡散板も、異方性光拡散により偏光機能を有するため、反射型偏光板として用いることが出来る。この異方性光拡散板は、背面側から順に反射板、液晶セル、位相差板(例えば1/4λ)、偏光機能を有する基材(A)という例示される構成の中で、異方性光拡散板を反射板と液晶セルの間、液晶セルと位相差板の間、位相差板と偏光板との間のいずれかに設けることが良い。
【0094】
さらに、アクティブマトリックス型の反射型ディスプレイへの応用も可能である。光拡散機能を有する基材が、偏光機能を有する基材(A)と液晶セルとの間に設けられており、かつ、液晶セルの電極が鏡面反射型電極である反射型液晶表示装置であることで達成しうる。具体的な構成例としては、背面側から順に反射型電極、液晶セル、光拡散板、偏光機能を有する基材(A)の構成である。その際、視認性を改善するために、いずれかの層の間に、位相差板を設けても良い。
【0095】
特に、アクティブマトリックス型の反射ディスプレイは、反射型カラー液晶表示装置に好適に用いられるため、偏光素子または偏光板の色の影響を受けやすく、平行位および直交位の各波長透過率において、波長依存性がなく、ほぼ一定の透過率を有し、カラーシフトがなく、かつ、高偏光度な基材が求められる。そういった反射型カラー液晶表示用に、偏光機能を有する基材(A)は有効であり、その設けた表示装置は非常に高い演色性を有する表示装置になる。
【0096】
また、アクティブマトリックス型の反射型ディスプレイへの応用として、非特許文献4に記載されるように、液晶セルの電極が樹脂などによって凹凸を作り、かつ、透明なITO電極を用いずにアルミ電極を用いて反射させる拡散反射型電極であることで、より表示品位を向上させることが出来る。具体的な構成例としては、背面側から順に拡散型反射電極、液晶セル、偏光機能を有する基材(A)の構成である。その際、視認性を改善するために、いずれかの層の間に、位相差板を設けても良い。また、いずれかの層の間に光拡散機能を有する基材を設け、さらに光拡散性を設けて視認性を向上させても良い。
【0097】
以上の方法で、これまで表示品位が低いと見なされていた反射型の液晶デバイスであっても、表示品位を飛躍的に向上させ、偏光板が有する白表示時の黄色の呈色と、黒表示時の青色の呈色する問題によって発生する表示装置の色目を改善し、白表示時に白を表示し、黒表示時に黒を表示し、かつ、反射型カラー液晶表示装置において高い演色性を示す表示装置を提供できる。
【0098】
またさらに、偏光機能を有する基材(A)は、透過率の範囲としては、基材(A)2枚の吸収軸を平行にして測定して得られる520nm~590nmの各波長の平均透過率として25%~45%での任意の透過率の調整が可能であるため、その表示時の輝度を向上させ、および、コントラストをも向上させうることを達成しうる。また、反射型液晶の構成によって、その表示品位は各段に向上させることが出来る。
【実施例】
【0099】
(実施例1)
本発明の実施例1の表示装置について
図2を用いて説明する。
図2(a)は実施例1の表示装置の縦断面図であり、表示装置の上面(観察者側)(以下、単に上面という)から順に、基材(A)1、位相差板2、拡散板3、第1のガラス基板4、カラーフィルター5、対向電極(ITO6)、液晶層7、反射板兼画素電極(Al)8、第2のガラス基板9が配置される。ここで図面の縦横比は、わかりやすくするために実際の比率とは異なっている。なお、以下の実施例において、同一の符号を付した部分は同一物を表している。
図2(b)は、カラーフィルター5の平面図であり、赤5a、緑5b、青5cの画素要素からできていることを表している。実際の表示装置はこの赤緑青のパターンの周期が画素の数だけ繰り返されたものになっている。
【0100】
基材(A)1は染料をPVAに染色した染料系偏光板である。
図3は、基材(A)1と同様の材料で作製した偏光板の平行透過率と直交透過率との関係を表す図である。すなわち、使用した基材(A)1と同様の材料で染色濃度を調整して染料系偏光板を作製し、その偏光板2枚の吸収軸を平行にして測定して得られる透過率(平行透過率)と、偏光板2枚の吸収軸を直交にして測定して得られる透過率(直交透過率)の関係を示した図である。
図3から平行透過率が高くなるに従い、直交透過率も高くなっていくことがわかる。
図4は、平行透過率とコントラストとの関係を示した図である。
図4から平行透過率が高くなるに従い、コントラストが低下していくことがわかる。ここでコントラストは、以下の式で表される偏光板のコントラストである。
コントラスト=平行透過率/直交透過率
【0101】
偏光板のコントラストは10以上が必要であること、また反射率の低下を抑える理由から、基材(A)1の平行透過率は36%~39%の値になるように調整した。反射型液晶表示装置では反射率を高くして明るい表示を実現することが重要である。本実施例では、反射率が20%以上得られ、かつ、良好なカラー表示が実現できるよう、カラーフィルターのNTSC比を5%~15%となるように調整した。
【0102】
ところで、反射率では、カラーフィルターの透過率と基材(A)1の平行透過率との積が最も大きなファクターである。例えば、カラーフィルターを光が二回透過した際のNTSC比と透過率の関係を示した
図1を参照すると、カラーフィルターのNTSC比が5%~15%におけるカラーフィルターの透過率は70~90%であり、反射率が20%以上得られ、かつ、良好なカラー表示が実現できる。なお、カラーフィルターは層の厚みや顔料の濃度を変えて色の濃さを調整できる。
【0103】
また基材(A)2枚の吸収軸を平行にして測定して得られる透過率において、
420nm乃至480nmの平均透過率と、520nm~590nmの平均透過率との差の絶対値が1.0%~2%、かつ、
520nm乃至590nmの平均透過率と、590nm~660nmの平均透過率との差の絶対値が1.0%~2.0%、
さらに、該基材2枚の吸収軸を直交にして測定して得られる各波長透過率において、
420nm乃至480nmの平均透過率と、520nm~590nmの平均透過率との差の絶対値が0.5%~1.0%、
520nm乃至590nmの平均透過率と、600nm~660nmの平均透過率との差の絶対値が0.5%~1%になるように調整した。このような方法で作製した実施例1の反射型液晶表示装置において、反射率が高くて明るい、かつ、着色のない高品位な白表示と黒表示、及び、優れたカラー表示が実現した。
【0104】
(実施例2)
本発明の実施例2の表示装置について
図5を用いて説明する。
図5(a)は実施例2の表示装置の縦断面図であり、上面から順に、基材(A)1、位相差板2、 拡散板3、ガラス基板4、透明な領域を設けたカラーフィルター51、対向電極(ITO)6、液晶層7、反射板兼画素電極(Al)8、第2のガラス基板9が配置される。ここで図面の縦横比は、効果をわかりやすくするために実際の比率とは異なっている。
【0105】
図5(b)は、透明な領域を設けたカラーフィルター51の平面図であり、赤51a、緑51b、青51cの画素要素からできていることを表している。カラーフィルター51の各色にはカラー層のない透明な領域が各色の領域の一部に設けられている。透明な領域は、面積を変えることで、カラーフィルター51のNTSC比を1%~20%の範囲に調整することができ、反射率を高くすることができる。なお、透明な領域は、中央部に設けられる方が生産時のばらつきが少なくより好ましい。そして、基材(A)1を使用することにより、カラーフィルター51に形成された透明な領域の着色も防止し、高い反射率を有しながらも、着色のない高品位な白表示と黒表示及び優れたカラー表示が実現できる。
【0106】
(実施例3)
本発明の実施例3は、実施例2と比較して画素の構成が異なっており、赤、緑、青、透明の画素からできている。カラーフィルター52、赤52a、緑52b、青52cのカラー層に加え、カラー層のない透明な画素52dが形成されている。カラー層52a~52cに透明画素52dを加えることで、NTSC比が1%~20%の範囲と小さくなり、反射率が向上し、明るい表示が可能となる。
【0107】
また、各カラー層52a~52cおよび透明な画素52dを略正方形にし、田の字に配置することで、横並びに配置するよりも無効領域が少なくなり、開口率を高くすることが可能となり、反射率の高いカラー表示を実現することができる。また基材(A)1を使用することにより、カラーフィルター52に形成された透明な画素52dの着色も防止し、高い反射率を有しながらも、着色のない高品位な白表示と黒表示及び優れたカラー表示が実現できる。
【0108】
(実施例4)
本発明の実施例4を
図7に示した。実施例2、3と比較して画素の構成が異なっており、赤、赤寄りの緑、青、青寄りの緑の半透明の画素からできている。カラーフィルター53は、赤53a、赤寄りの緑53b、青53c、青寄りの緑53dのカラー層からなる。カラーフィルター53の、赤53a、赤寄りの緑53b、青53c、青寄りの緑53dにはカラー層のない透明な領域が各色層の一部に設けられており、透明な領域の面積を変えることで、カラーフィルター53の材料や厚みを変えることなくカラーフィルター53のNTSC比を1%~20%の範囲に調整することができ、反射率を高くすることができる。
【0109】
また、4つの各画素を略正方形にし、田の字に配置することで、横並びに配置するよりも無効領域が少なくなり、開口率を高くすることが可能となり、反射率の高いカラー表示を実現することができる。また基材(A)1を使用することにより、カラーフィルター53に形成された透明な領域の着色も防止し、高い反射率を有しながらも、着色のない高品位な白表示と黒表示及び優れたカラー表示が実現できる。
【0110】
(実施例5)
本発明の実施例5を
図8に示した。実施例5では、拡散形状81を形成した反射板兼表示電極(Al)が形成されてある。反射板の拡散機能と拡散板3の効果により、より広い範囲に外光を拡散させることができる。
【0111】
(実施例6)
本発明の実施例6を
図9に示した。実施例6では、表示装置の背面側に反射板10を配置し、反射板10の上に第2の基材11、第2のガラス基板9が順に配置される。そして、第2のガラス基板9の上には透明画素電極(ITOもしくはIZO)82が配置されている。この構造により、第1のガラス基板4ならびに第2のガラス基板9で挟まれた領域内に反射板を形成する必要がなく、また、反射板10に特定の偏光した光を反射するような反射型偏光板を用いることで、反射型偏光板を介して背面側から入射する光を用いた表示も可能となる。
【符号の説明】
【0112】
1 基材(A)、2 位相差板、3 拡散板、4 第1のガラス基板、5 カラーフィルター、6 対向電極(ITO)、7 液晶層、8 反射板兼画素電極(Al)、9 第2のガラス基板、5a カラーフィルターの赤の領域、5b カラーフィルターの緑の領域、5c カラーフィルターの青の領域、51 透明な領域を設けたカラーフィルター、51a 透明な領域を設けたカラーフィルターの赤領域、51b 透明領域を設けたカラーフィルターの緑領域、51c 透明な領域を設けたカラーフィルターの青領域、51d 透明な領域を設けたカラーフィルターの赤領域、52a 実施例3のカラーフィルターの赤領域、52b 実施例3カラーフィルターの緑領域、52c 実施例3のカラーフィルターの青領域、52d 実施例3のカラーフィルターの透明領域、53a 実施例4のカラーフィルターの赤領域、53b 実施例4のカラーフィルターの赤寄りの緑領域、53c 実施例4のカラーフィルターの青領域、53d 実施例4のカラーフィルターの青寄りの緑色領域、81 拡散形状を形成した反射板兼表示電極(Al)、82 透明画素電極(ITOもしくはIZO)