IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧

特許7699741ガルバノミラーおよびガルバノミラーの製造方法
<>
  • 特許-ガルバノミラーおよびガルバノミラーの製造方法 図1
  • 特許-ガルバノミラーおよびガルバノミラーの製造方法 図2
  • 特許-ガルバノミラーおよびガルバノミラーの製造方法 図3
  • 特許-ガルバノミラーおよびガルバノミラーの製造方法 図4
  • 特許-ガルバノミラーおよびガルバノミラーの製造方法 図5
  • 特許-ガルバノミラーおよびガルバノミラーの製造方法 図6
  • 特許-ガルバノミラーおよびガルバノミラーの製造方法 図7
  • 特許-ガルバノミラーおよびガルバノミラーの製造方法 図8
  • 特許-ガルバノミラーおよびガルバノミラーの製造方法 図9
  • 特許-ガルバノミラーおよびガルバノミラーの製造方法 図10
  • 特許-ガルバノミラーおよびガルバノミラーの製造方法 図11
  • 特許-ガルバノミラーおよびガルバノミラーの製造方法 図12
  • 特許-ガルバノミラーおよびガルバノミラーの製造方法 図13
  • 特許-ガルバノミラーおよびガルバノミラーの製造方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-19
(45)【発行日】2025-06-27
(54)【発明の名称】ガルバノミラーおよびガルバノミラーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/08 20060101AFI20250620BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20250620BHJP
   G02B 26/08 20060101ALI20250620BHJP
【FI】
G02B5/08 A
G02B26/10 104Z
G02B26/08 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2025507028
(86)(22)【出願日】2024-10-31
(86)【国際出願番号】 JP2024038853
【審査請求日】2025-02-05
(31)【優先権主張番号】P 2024115438
(32)【優先日】2024-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】久米 将実
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 洋平
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110406192(CN,A)
【文献】特開平01-291201(JP,A)
【文献】特開2018-101116(JP,A)
【文献】特開2012-022089(JP,A)
【文献】国際公開第2018/189828(WO,A1)
【文献】特開2011-221207(JP,A)
【文献】国際公開第2022/163804(WO,A1)
【文献】特開2017-129650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/08
G02B 26/10
G02B 26/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡面となる正面と、前記正面とは反対を向く平面形状の背面とを有するミラーサーフェイスと、
前記ミラーサーフェイスの前記背面側に前記背面から離れて設けられた補強プレートと、
前記ミラーサーフェイスと前記補強プレートとの間に挟み込まれて配置されて、前記ミラーサーフェイスの前記背面に固定されるフォーム状コアと前記ミラーサーフェイスとは反対を向き、前記フォーム状コアの背面に固定されるハニカムコアとを含む複数種のコア材と、
前記ミラーサーフェイスと前記補強プレートとの間に挟み込まれて配置されて、前記コア材とは別の材料で形成され、ガルバノミラーを他部材に固定するためのミラー固定部と、
を備え、
前記ミラー固定部は、前記他部材を把持する把持部を有しており、
前記把持部は、前記ミラーサーフェイスおよび前記補強プレートから露出しており、
前記ミラーサーフェイスと前記補強プレートと前記コア材と前記ミラー固定部とのうち隣接する部材同士は、接着層を介して固定され、前記ミラーサーフェイスと前記補強プレートと前記コア材と前記ミラー固定部とが一体化されていることを特徴とするガルバノミラー。
【請求項2】
前記ミラーサーフェイスには、アルミナ、サファイヤ、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミ、炭化ケイ素、B4C-TiB2、ベリリウムのいずれかのセラミックスのプレート、または、単結晶炭化ケイ素、単結晶ケイ素のいずれかのウェハー、もしくは、単結晶シリコンウェハーが用いられることを特徴とする請求項1に記載のガルバノミラー。
【請求項3】
前記コア材の種類は、前記フォーム状コアと前記ハニカムコアとの2種類であり、
前記フォーム状コアの嵩比重が0.4g/cm3未満、かつ、前記フォーム状コアの弾性率が0.1GPa以上であり、
前記ハニカムコアの嵩比重が0.2g/cm3未満、かつ、前記ハニカムコアの比弾性率が10以上であることを特徴とする請求項1に記載のガルバノミラー。
【請求項4】
前記補強プレートの材料は、炭素繊維強化プラスチックであり、
前記補強プレートの嵩比重が1.85g/cm3未満、かつ、前記補強プレートの弾性率が120GPa以上であることを特徴とする請求項1に記載のガルバノミラー。
【請求項5】
前記ミラー固定部の材料は、比弾性率が100以上のセラミックスであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載のガルバノミラー。
【請求項6】
鏡面となる正面と前記正面とは反対を向く平面形状の背面とを有するミラーサーフェイスと、前記ミラーサーフェイスの前記背面側に前記背面から離れて設けられた補強プレートと、前記ミラーサーフェイスと前記補強プレートとの間に挟み込まれて配置されて、前記ミラーサーフェイスの前記背面に固定されるフォーム状コアと前記ミラーサーフェイスとは反対を向き、前記フォーム状コアの背面に固定されるハニカムコアとを含む複数種のコア材と、前記ミラーサーフェイスと前記補強プレートとの間に挟み込まれて配置されて、前記コア材とは別の材料で形成され、ガルバノミラーを他部材に固定するためのミラー固定部とを備え、前記ミラー固定部は、前記他部材を把持する把持部を有しており、前記把持部は、前記ミラーサーフェイスおよび前記補強プレートから露出しているガルバノミラーの製造方法であって、
前記ミラーサーフェイスと前記補強プレートと前記コア材と前記ミラー固定部とのうち隣接する部材同士を接着層により固定して、前記ミラーサーフェイスと前記補強プレートと前記コア材と前記ミラー固定部とを一体化する固定工程と、
前記固定工程の後、前記ミラーサーフェイスの前記鏡面にメタル系材料を蒸着または前記鏡面をスパッタで被覆して前記鏡面に被膜を形成する被膜工程と、
前記鏡面の前記被膜に、誘電多層被膜を更に被覆する被覆工程と、
を含むことを特徴とするガルバノミラーの製造方法。
【請求項7】
前記固定工程の前に、前記ミラーサーフェイスの前記正面をミラーポリッシュする鏡面化工程を含むことを特徴とする請求項6に記載のガルバノミラーの製造方法。
【請求項8】
前記接着層は、樹脂シートからなるフィルム状接着剤であることを特徴とする請求項6または7に記載のガルバノミラーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ加工機などで使用されるガルバノスキャナのガルバノミラーおよびガルバノミラーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話および電子機器の基板の高集積化に伴い、レーザ加工機による加工の高精度化および高速化が求められている。基板の穴開け加工を行うレーザ加工機では、レーザを偏向駆動させるガルバノスキャナが使用されており、レーザ加工機による加工の高速化には、ガルバノスキャナの高速化が不可欠である。
【0003】
従来のガルバノスキャナは、一般に、コイルを有するステータと、永久磁石とロータシャフトとを有するロータと、ロータシャフトに取り付けられたガルバノミラーとを備えている。そして、ステータがハウジングなどに固定され、コイルにより発生した駆動トルクを永久磁石で受けてロータが回転し、ガルバノミラーが回転する。ロータが連続して回転するのに対し、ガルバノミラーは、基準位置より±10数度の範囲で回転する。
【0004】
基板の穴開け加工を連続して行うレーザ加工機にガルバノスキャナを適用する場合、加速→減速→静止を繰り返すことになり、ガルバノスキャナを高速に動作させると駆動電流の周波数が高くなる。このため、永久磁石に渦電流が流れて渦損が発生し、永久磁石の温度が高くなる。永久磁石の温度が過度に高くなると、熱減磁が発生し、磁石特性が劣化し、ガルバノスキャナの動作に支障が生じる。
【0005】
また、ガルバノスキャナを高速に動作させると、ガルバノミラーおよびロータシャフトの負荷が増大するため、ガルバノミラーとロータシャフトとがずれないように、ガルバノミラーをロータシャフトに強固に固定する必要がある。そこで、従来は、ガルバノミラー側にロータシャフトの一部が嵌合するミラー固定部を設け、ガルバノミラーをロータシャフトに機械的に固定する構造が採用されている。しかしながら、当該構造では、ガルバノミラーとロータシャフトとを固定する際に、ミラー固定部にひずみが発生し、ミラー固定部のひずみがガルバノミラーの鏡面に伝わってガルバノミラーの鏡面にもひずみが発生する。これにより、ガルバノミラーの鏡面の精度が悪化してしまい、加工精度の劣化が生じていた。
【0006】
このような状況に鑑み、特許文献1には、ガルバノミラーとロータシャフトとを固定する際の鏡面の精度の悪化を抑えるガルバノミラーが開示されている。特許文献1に開示された技術では、光学特性を有する鏡面とロータシャフトを固定するためのミラー固定部と補強構造であるリブとを備えたガルバノミラーの材料に、ベリリウムなどの低密度で剛性の高い金属材料を使用し、リブのうちミラー固定部に近い部分に切れ込みを入れることで、ミラー固定部のひずみをガルバノミラーの鏡面に伝わり難い構造にして、ガルバノミラーの鏡面に発生するひずみを低減させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3531554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、リブのうちミラー固定部に近い部分に切れ込みを入れることにより、切れ込みを入れた部分の剛性が低下する。そのため、ガルバノミラーの高速駆動時には、ガルバノミラーのぶれが増加し、加工位置のずれが発生するという不具合がある。そのぶれを減らすためには、ガルバノミラーを軽量化し、イナーシャを下げる必要があるが、ガルバノミラーを軽量化させるためには、リブおよび鏡面を薄くする必要がある。しかし、鏡面を薄くすると、鏡面の裏面のリブが存在する部分と存在しない部分との剛性差が顕著になり、リブが存在する部分は、剛性が高いため鏡面研磨加工時の負荷が加わり研磨されるが、リブが存在しない部分は、剛性が低いため撓んで鏡面研磨加工時の負荷が逃げて研磨され難くなる。これにより、鏡面を均一に研磨加工できなくなり、鏡面を所望の平面度に加工できなくなるという不具合がある。また、鏡面を薄くすると、鏡面の剛性が低下し、ガルバノミラーの駆動時に変形が生じやすくなるため、ガルバノスキャナの高速化が困難になるという不具合もある。
【0009】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、軽量化かつ高精度な鏡面を実現しつつ、変形し難い剛性を確保することができるガルバノミラーを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示にかかるガルバノミラーは、ミラーサーフェイスと、補強プレートと、複数種のコア材と、ミラー固定部とを備えている。ミラーサーフェイスは、鏡面となる正面と、正面とは反対を向く平面形状の背面とを有する。補強プレートは、ミラーサーフェイスの背面側に背面から離れて設けられている。複数種のコア材は、ミラーサーフェイスと補強プレートとの間に挟み込まれて配置されて、ミラーサーフェイスの背面に固定されるフォーム状コアとミラーサーフェイスとは反対を向き、フォーム状コアの背面に固定されるハニカムコアとを含む。ミラー固定部は、ミラーサーフェイスと補強プレートとの間に挟み込まれて配置されて、コア材とは別の材料で形成され、ガルバノミラーを他部材に固定する。ミラー固定部は、他部材を把持する把持部を有している。把持部は、ミラーサーフェイスおよび補強プレートから露出している。ミラーサーフェイスと補強プレートとコア材とミラー固定部とのうち隣接する部材同士は、接着層を介して固定され、ミラーサーフェイスと補強プレートとコア材とミラー固定部とが一体化されている。
【発明の効果】
【0011】
本開示にかかるガルバノミラーは、軽量化かつ高精度な鏡面を実現しつつ、変形し難い剛性を確保することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1にかかるガルバノミラーを示す側面図
図2】実施の形態1にかかるガルバノミラーの構成部材を分離した状態を示す側面図
図3】実施の形態1にかかるガルバノミラーを示す斜視図
図4】実施の形態1にかかるガルバノミラーを示す背面図
図5図4に示されるV-V線に沿った断面図
図6】実施の形態1にかかるガルバノミラーの製造プロセスの一例を示すフローチャート
図7】実施の形態1におけるミラーサーフェイスの製造プロセスの一例を示す図
図8】実施の形態1にかかるガルバノミラーの組立手順の一例を示す図
図9】従来技術にかかる単一材料で形成されたガルバノミラーの一例を示す斜視図
図10図9に示されるガルバノミラーの鏡面研磨加工後の変形した状態を示す斜視図
図11】従来技術にかかるサンドイッチ構造のガルバノミラーの変形した状態を示す斜視図
図12図11に示されるA部の拡大図
図13】実施の形態1の変形例1にかかるガルバノミラーを示す斜視図
図14】実施の形態1の変形例2にかかるガルバノミラーの断面形状を示す図であって、図4に示されるV-V線に沿った断面図に相当する図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、実施の形態にかかるガルバノミラーおよびガルバノミラーの製造方法を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかるガルバノミラー100を示す側面図である。図2は、実施の形態1にかかるガルバノミラー100の構成部材を分離した状態を示す側面図である。図3は、実施の形態1にかかるガルバノミラー100を示す斜視図である。図4は、実施の形態1にかかるガルバノミラー100を示す背面図である。ガルバノミラー100は、図示しないステータ、ロータなどと共にガルバノスキャナを構成し、図示しないレーザビームを反射する部材である。ガルバノミラー100は、ロータの回転により特定の振り角の範囲内において回転する。ガルバノミラー100が回転することにより、図示しない被加工物上におけるレーザビームの照射位置を変更させることができる。図1および図2に示すように、ガルバノミラー100は、ミラーサーフェイス1と、補強プレート2と、複数種のコア材3と、ミラー固定部4と、接着層5とを備えている。以下の説明において、ガルバノミラー100の長さ方向をX軸方向とし、ガルバノミラー100の厚さ方向をY軸方向とし、ガルバノミラー100の幅方向をZ軸方向とする。X軸方向とY軸方向とZ軸方向とは、互いに直交する方向である。
【0015】
図2に示すように、ミラーサーフェイス1は、鏡面となる正面1aと、正面1aとは反対を向く平面形状の背面1bとを有する板状の部材である。背面1b自体には、従来設けられていたリブなどの補強構造が形成されていない。ミラーサーフェイス1は、弾性率を密度(嵩比重)で割った値である比弾性率(GPa・cm3/g)が高く、かつ、鏡面研磨加工性が良い材料で形成されることが好ましい。具体的には、ミラーサーフェイス1には、アルミナ、サファイヤ、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミ、炭化ケイ素、B4C-TiB2、ベリリウムのいずれかのセラミックスのプレート、または、単結晶炭化ケイ素、単結晶ケイ素のいずれかのウェハー、もしくは、単結晶シリコンウェハーが用いられることが好ましい。例えば、単結晶炭化ケイ素のウェハーをミラーサーフェイス1に用いる場合には、結晶炭化ケイ素のウェハーをトリミングした後、鏡面研磨加工(ミラーポリッシュ)することにより、鏡面化したミラーサーフェイス1を得られる。ミラーサーフェイス1の厚さは、1mm未満であることが好ましく、400μm以下であることがより好ましい。
【0016】
補強プレート2は、ミラーサーフェイス1の背面1b側に背面1bから離れて設けられた板状の部材である。補強プレート2は、嵩比重が小さく、かつ、剛性が高い材料で形成されることが好ましい。具体的には、補強プレート2の材料は、弾性率が600GPa以上の炭素繊維を使用した炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)であることが好ましい。炭素繊維強化プラスチックとしての比弾性率は、100以上であることが好ましい。補強プレート2の厚さは、1mm未満であることが好ましい。補強プレート2の嵩比重が1.85g/cm3未満、かつ、補強プレート2の弾性率が120GPa以上であることが好ましい。
【0017】
複数種のコア材3は、ミラーサーフェイス1と補強プレート2との間に挟み込まれて配置されて、フォーム状コア3aとハニカムコア3bとを含んでいる。コア材3の種類は、本実施の形態ではフォーム状コア3aとハニカムコア3bとの2種類である。
【0018】
フォーム状コア3aは、ミラーサーフェイス1の背面1bに固定される板状の部材である。フォーム状コア3aは、硬質プラスチックなどを発泡させた板材である。フォーム状コア3aは、硬質プラスチック独立気泡発泡体のように等方的な特性の材料で形成されることが好ましい。具体的には、フォーム状コア3aの材料は、EVONIC社製のROHACELL 110HPなどのように、嵩比重が小さく、かつ、弾性率/(嵩比重)^3値が100GPa以上の材料であることが好ましく、クローズドセル構造材であるとより好ましい。また、フォーム状コア3aの材料は、カーボンの発泡体であるグラフォームでもよいし、嵩比重が0.4g/cm3以下、かつ、弾性率/(嵩比重)^3値が100GPa以上となるフォーム状の材料であれば、金属、セラミックスなどでもよい。ミラーサーフェイス1の背面1bに固定されるコア材3の材料には、ハニカムコア3bのように目視レベルで大きな空間の粗密がある構造材料よりも、フォーム状コア3aが好ましい。フォーム状コア3aの厚さは、2mm以上10mm未満であることが好ましく、5mm未満であることがより好ましい。フォーム状コア3aの嵩比重が0.4g/cm3未満、かつ、フォーム状コア3aの弾性率が0.1GPa以上であることが好ましい。図3に示すように、フォーム状コア3aのX軸方向の一端には、ミラー固定部4の一部が嵌まる切り欠き部3cが形成されている。
【0019】
図2に示すように、ハニカムコア3bは、フォーム状コア3aと補強プレート2との間に設けられる板状の部材である。ハニカムコア3bは、炭素繊維強化プラスチックなどで形成されることが好ましい。具体的には、ハニカムコア3bの材料は、Ultracor社製のhoneycomb UCF-137-3/8-10などのように、比弾性率が高い材料であることが好ましい。ハニカムコア3bの嵩比重が0.2g/cm3未満、かつ、ハニカムコア3bの比弾性率が10以上であることが好ましい。ハニカムコア3bの厚さは、3mm以上15mm未満であることが好ましく、10mm未満であることがより好ましい。図3に示すように、ハニカムコア3bのX軸方向の一端には、ミラー固定部4の一部が嵌まる切り欠き部3dが形成されている。
【0020】
図1に示すように、ミラー固定部4は、ミラーサーフェイス1と補強プレート2との間に挟み込まれて配置されて、ガルバノミラー100を図示しない他部材に固定するための部分である。他部材は、例えば、ロータシャフトである。ミラー固定部4は、コア材3とは別の材料で形成されている。図3に示すように、ミラー固定部4は、フォーム状コア3aの切り欠き部3cとハニカムコア3bの切り欠き部3dとに嵌め込まれている。ミラー固定部4は、X軸方向およびZ軸方向においてフォーム状コア3aおよびハニカムコア3bに隣接して配置されている。ミラー固定部4は、嵩比重が小さく、かつ、弾性率が高い材料で形成されることが好ましい。具体的には、ミラー固定部4の材料は、炭化ケイ素と炭素繊維とを複合化したC/SiC(嵩比重:2.95g/cm3、弾性率:350GPa)のように、嵩比重が4g/cm3未満、かつ、弾性率が300GPa以上で、比弾性率が100以上であることが好ましい。また、ミラーサーフェイス1の材料は、C/SiCの他に、アルミナ、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミ、炭化ケイ素、B4C-TiB2などのセラミックスでもよい。
【0021】
ミラー固定部4は、他部材を把持する把持部4aを有している。把持部4aは、ミラーサーフェイス1および補強プレート2によって覆われることなく、ミラーサーフェイス1および補強プレート2から露出している。把持部4aの形状は、本実施の形態では矩形状であるが、特に制限されない。ミラーサーフェイス1および補強プレート2で他部材を直接把持(固定)すると、ガルバノミラー100と他部材とを固定する際に発生するひずみがミラーサーフェイス1に伝わりやすくなるため好ましくないが、本実施の形態ではミラーサーフェイス1および補強プレート2から露出する把持部4aによって他部材を直接把持するため、ガルバノミラー100と他部材とを固定する際に発生するひずみがミラーサーフェイス1に伝わり難くなる。
【0022】
図2に示される各接着層5は、ガルバノミラー100の構成部材のうち隣接する部材同士を固定する層である。すなわち、ミラーサーフェイス1と補強プレート2とコア材3とミラー固定部4とのうち隣接する部材同士は、接着層5を介して固定され、ミラーサーフェイス1と補強プレート2とコア材3とミラー固定部4とが一体化されている。接着層5は、例えば、樹脂シートからなるフィルム状接着剤、液状の接着剤である。接着層5の数は、本実施の形態では3つである。3つの接着層5を区別する場合には、第1の接着層5a、第2の接着層5b、第3の接着層5cと称する。第1の接着層5aは、ミラーサーフェイス1の背面1bとフォーム状コア3aおよびミラー固定部4とを固定する。第2の接着層5bは、フォーム状コア3aとハニカムコア3bとを固定する。第3の接着層5cは、ハニカムコア3bおよびミラー固定部4と補強プレート2とを固定する。
【0023】
図3および図4に示すように、ガルバノミラー100の外観形状は、本実施の形態では概ね楕円形状(長円形状)であるが、適宜変更してもよい。ガルバノミラー100の各構成部材は、外周が曲面状またはテーパー状に加工され、隣接する部材に接着される接着面が平面状に加工されている。図5は、図4に示されるV-V線に沿った断面図である。図5に示すように、ガルバノミラー100のXY断面形状は、本実施の形態では、ミラーサーフェイス1の面積よりも補強プレート2の面積が小さい台形形状であるが、適宜変更してもよい。なお、図5では、ミラー固定部4の図示を省略している。
【0024】
次に、図6から図8を参照して、実施の形態1にかかるガルバノミラー100の製造方法について説明する。図6は、実施の形態1にかかるガルバノミラー100の製造プロセスの一例を示すフローチャートである。図7は、実施の形態1におけるミラーサーフェイス1の製造プロセスの一例を示す図である。図8は、実施の形態1にかかるガルバノミラー100の組立手順の一例を示す図である。
【0025】
ガルバノミラー100の製造方法は、準備工程と、固定工程と、被膜工程と、被覆工程とを含んでいる。
【0026】
準備工程は、ミラーサーフェイス1と複数種のコア材3と補強プレート2とミラー固定部4とを準備する工程である。図6に示すように、準備工程では、ミラーサーフェイス形成工程と、フォーム状コア形成工程と、ハニカムコア形成工程と、補強プレート形成工程と、ミラー固定部形成工程とを行う。
【0027】
ミラーサーフェイス形成工程では、図7に示されるSiCなどの単結晶インゴット1cを用意して(ステップS11)、単結晶インゴット1cをスライスしてウェハー1dを得る(ステップS12)。1つの単結晶インゴット1cから複数枚のウェハー1dを得る。また、ミラーサーフェイス形成工程では、所望の形状となるように各ウェハー1dをトリミングして(ステップS13)、トリミング部材1eを得る。1枚のウェハー1dから複数枚のトリミング部材1eを得る。その後、ラッピング装置などによって各トリミング部材1eをミラーポリッシュする鏡面化工程を実行する(ステップS14)。これにより、鏡面化したミラーサーフェイス1を得られる。
【0028】
図6に示されるフォーム状コア形成工程では、硬質プラスチックなどを発砲させたバルク材を所定の厚さにスライスし(ステップS21)、その後、ミラーサーフェイス1の形状に合わせてバルク材をトリミングする(ステップS22)。これにより、フォーム状コア3aを得られる。なお、バルク材が発泡した低密度のフォーム材であるため、通常の加工機でバルク材を容易に加工することができる。
【0029】
また、ハニカムコア形成工程では、炭素繊維強化プラスチックなどで形成されたハニカム材を所定の厚さにスライスし(ステップS31)、その後、フォーム状コア3aの形状に合わせてハニカム材をトリミングする(ステップS32)。これにより、ハニカムコア3bを得られる。
【0030】
補強プレート形成工程では、高剛性な炭素繊維を用いてプレートを成形し(ステップS41)、その後、ミラーサーフェイス1の形状に合わせてプレートをトリミングする(ステップS42)。これにより、補強プレート2を得られる。
【0031】
ミラー固定部形成工程では、セラミックスをブロック成形してバルク材を得て(ステップS51)、その後、バルク材をトリミングする(ステップS52)。これにより、ミラー固定部4を得られる。
【0032】
固定工程(ステップS61)は、図8に示されるミラーサーフェイス1と補強プレート2とコア材3とミラー固定部4とのうち隣接する部材同士を接着層5により固定して、ミラーサーフェイス1と補強プレート2とコア材3とミラー固定部4とを一体化する工程である。固定工程では、ミラーサーフェイス1、第1の接着層5a、フォーム状コア3a、第2の接着層5b、ハニカムコア3b、ミラー固定部4、第3の接着層5c、補強プレート2の順に積層する。具体的には、固定工程では、まず、図8の左上に示すようにミラーサーフェイス1を用意する。続いて、ミラーサーフェイス1の背面1bに第1の接着層5aを塗布する。続いて、ミラーサーフェイス1の背面1bに第1の接着層5aを介してフォーム状コア3aを固定する。
【0033】
続いて、図8の中央上に示すようにフォーム状コア3aのうち第1の接着層5aとは反対を向く面に第2の接着層5bを塗布する。続いて、フォーム状コア3aに第2の接着層5bを介してハニカムコア3bを固定する。続いて、フォーム状コア3aの切り欠き部3cおよびハニカムコア3bの切り欠き部3dにミラー固定部4を配置するとともに、第1の接着層5aの露出面5dにミラー固定部4を配置して、ミラーサーフェイス1の背面1bに第1の接着層5aを介してミラー固定部4を固定する。第1の接着層5aの露出面5dは、切り欠き部3c,3dを介して露出する部分である。
【0034】
続いて、図8の右上に示すようにハニカムコア3bのうち第2の接着層5bとは反対を向く面およびミラー固定部4のうち第1の接着層5aとは反対を向く面に第3の接着層5cを塗布する。続いて、第3の接着層5cを挟んでハニカムコア3bおよびミラー固定部4と反対側に、補強プレート2を配置する。続いて、ハニカムコア3bおよびミラー固定部4に第3の接着層5cを介して補強プレート2を固定する。これにより、ミラーサーフェイス1と補強プレート2とフォーム状コア3aとハニカムコア3bとミラー固定部4とが一体化する。第1の接着層5aと第2の接着層5bと第3の接着層5cとは、ここでは樹脂シートからなるフィルム状接着剤である。
【0035】
図6に示される被膜工程(ステップS62)は、固定工程の後、ミラーサーフェイス1の鏡面にメタル系材料を蒸着または鏡面をスパッタで被覆して鏡面に被膜を形成する工程である。すなわち、被膜工程は、増反射コーティングを実施する工程である。被膜は、金属膜である。
【0036】
被覆工程(ステップS63)は、鏡面の被膜に、誘電多層被膜を更に被覆する工程である。すなわち、被覆工程は、増反射コーティングを実施する工程である。被膜工程および被覆工程を行うことにより、ミラーサーフェイス1の鏡面の反射率を高めることができる。以上の工程を行うことにより、図1に示されるガルバノミラー100が製造される。
【0037】
次に、実施の形態1にかかるガルバノミラー100の効果について説明する。
【0038】
はじめに、図9から図12を参照して、従来技術にかかるガルバノミラー200,300について説明する。図9は、従来技術にかかる単一材料で形成されたガルバノミラー200の一例を示す斜視図である。図10は、図9に示されるガルバノミラー200の鏡面研磨加工後の変形した状態を示す斜視図である。図11は、従来技術にかかるサンドイッチ構造のガルバノミラー300の変形した状態を示す斜視図である。図12は、図11に示されるA部の拡大図である。図9に示される従来技術にかかるガルバノミラー200では、ミラーサーフェイス210の背面230を研削することにより軽量化している。一方、ミラーサーフェイス210の背面230に、Z軸方向における中央でX軸方向に延びる背骨構造部250と、背骨構造部250からミラーサーフェイス210の外周縁に向かって延びる複数の肋骨補強部260とからなるリブ240を設けることにより、軽量化によるガルバノミラー200の剛性の低下を軽減している。従来のガルバノミラー200では、ミラーサーフェイス210の背面230の軽量化加工を行った後に、ミラーサーフェイス210の正面220の鏡面研磨加工を行う場合、リブ240の影響によってミラーサーフェイス210の剛性が不均一となる。そのため、リブ240が存在する部分と存在しない部分とで鏡面研磨加工の面圧によるたわみ量に差が発生し、リブ240が存在する部分は剛性が高いため研磨されるが、リブ240が存在しない部分は剛性が低いため撓んで研磨され難くなる。その結果、図10に示されるディンプル270が発生するため、高精度な鏡面を得ることができなかった。一方、従来技術にかかるガルバノミラー200では、ミラーサーフェイス210の鏡面研磨加工を行った後に、ミラーサーフェイス210の背面230の軽量化加工を行った場合、軽量化加工時にひずみが発生し、ミラーサーフェイス210の鏡面の精度が悪化する。そのため、高精度な鏡面を得ることができなかった。つまり、従来技術にかかるガルバノミラー200では、軽量化と鏡面の高精度化との両立ができない。
【0039】
また、図11に示すように、ガルバノミラー300がサンドイッチパネル構造である場合、軽量化のために、2枚の薄い表面プレート310の間に、セルサイズが大きくかつコア密度の低いハニカムコア320を挟み込むサンドイッチパネル構造にすると、表面プレート310とハニカムコア320との固定時に接着の影響を受ける。これにより、図12に示すように、表面プレート310にハニカムコア320のセルパターンをトレースしたディンプル330が発生し、表面プレート310の鏡面の精度の低下が発生する。当該鏡面の精度の低下を解決するためには、ハニカムコア320のセルサイズを小さくして密度を高くするか、または、表面プレート310の剛性を高めるために表面プレート310の厚さを厚くする必要があるが、そうすると、ガルバノミラー300の重量が大きくなる。つまり、従来技術にかかるガルバノミラー300では、軽量化と鏡面の高精度化との両立ができない。
【0040】
この点、本実施の形態では、図2に示すように、ミラーサーフェイス1の背面1bが平面形状であるため、ミラーサーフェイス1単体で鏡面研磨加工を行うことができ、高精度な鏡面を容易に得ることができる。そして、本実施の形態では、予め薄くかつ鏡面研磨加工したミラーサーフェイス1の背面1bを軽くて剛性が高いフォーム状コア3aで補強した上、コア密度の低いハニカムコア3bでさらに補強することで、ガルバノミラー100の軽量化を図りながら、ミラーサーフェイス1の変形による鏡面の精度の低下を防止できる。つまり、本実施の形態では、軽量化と鏡面の高精度化との両立が実現できる。
【0041】
本実施の形態では、図1に示すように、ガルバノミラー100は、比弾性率が高いセラミックスで形成されたミラーサーフェイス1と比弾性率が高い炭素繊維強化プラスチックで形成された補強プレート2との間に、軽くて剛性が高いフォーム状コア3a、炭素繊維強化プラスチックで形成された超軽量なハニカムコア3b、および、セラミックスで形成されたミラー固定部4とを挟み込むサンドイッチ構造である。このような構造により、軽量化かつ高精度な鏡面を実現しつつ、変形し難い剛性を確保することができるガルバノミラー100を得られる。
【0042】
本実施の形態では、図1に示されるミラー固定部4がコア材3とは別の材料で形成されることにより、物性が不連続となる。そのため、ガルバノミラー100と他部材とを固定する際に発生するひずみがコア材3を介してミラーサーフェイス1に伝達され難くなり、ミラーサーフェイス1の鏡面の精度の悪化を低減できる。また、ミラー固定部4とコア材3との接着面積を大きく確保できるため、ガルバノミラー100の駆動時にミラー固定部4とミラーサーフェイス1との境界に発生するひずみを低減できる。
【0043】
本実施の形態では、図1に示すように、ミラーサーフェイス1と補強プレート2と2種類のコア材3とミラー固定部4とを接着して一体化することにより、ガルバノミラー100を製造できる。そのため、軽量化のための複雑な加工が不要になり、簡単な加工および製造工程でガルバノミラー100を製造できる。特に、ミラーサーフェイス1単体で鏡面研磨加工することが可能になるため、鏡面研磨加工が簡単な工程で実現できるようになり、高精度な鏡面を得ることができる。
【0044】
本実施の形態では、図1に示されるミラーサーフェイス1がサファイヤのプレート、または、単結晶炭化ケイ素のウェハー、もしくは、単結晶シリコンウェハーである場合には、従来技術のように炭化ケイ素、ベリリウムなどのバルク材に軽量化加工かつ鏡面研磨加工を行ってミラーサーフェイス210(図9参照)を得る場合に比べて、薄くて軽いミラーサーフェイス1を得られるとともに、ミラーサーフェイス1の鏡面の精度を簡単に高くできる。
【0045】
本実施の形態では、図2に示される接着層5がフィルム状接着剤であることにより、各構成部材の接着面の微細なずれを吸収することができるため、接着後の各構成部材の外形寸法が安定し、寸法精度の高いガルバノミラー100を得られる。
【0046】
次に、実施の形態1にかかるガルバノミラー100の変形例について説明する。
【0047】
図3に示される把持部4aの形状は、本実施の形態では矩形状であったが、例えば、円柱状でも、図13に示される円筒形状でもよい。図13は、実施の形態1の変形例1にかかるガルバノミラー100を示す斜視図である。なお、図13は、ガルバノミラー100を図3に示す状態から紙面の上下に反転させた状態を図示している。
【0048】
図5に示されるガルバノミラー100のXY断面形状は、本実施の形態では台形形状であったが、ガルバノミラー100の全体の厚さが薄い場合、例えば、5mm以下の場合は、図14に示される長方形状などでもよい。なお、図14は、実施の形態1の変形例2にかかるガルバノミラー100の断面形状を示す図であって、図4に示されるV-V線に沿った断面図に相当する図である。図14では、ミラー固定部4の図示を省略している。
【0049】
次に、実施例および比較例により、本開示の効果について更に説明する。
【0050】
(実施例1)
実施例1にかかるガルバノミラーは、ミラーサーフェイスと補強プレートとの間に、フォーム状コアとハニカムコアとミラー固定部とを挟み込んだサンドイッチ構造にした。ガルバノミラーの表面を構成するミラーサーフェイスには、Siウェハーを使用した。フォーム状コアには、EVONIC社製のROHACELL 110HPを使用した。ハニカムコアには、Ultracor社製のhoneycomb UCF-137-3/8-10を使用した。ガルバノミラーの裏面を構成する補強プレートには、DIALEAD k63712を用い、繊維含有率が60%、かつ、繊維配向が0/90度で成形したCFRPプレートを使用した。ミラー固定部には、C/SiC材を使用した。厚さ100μmのフィルム状接着剤を用いて隣接する部材同士を固定し、ミラーサーフェイスと補強プレートとフォーム状コアとハニカムコアとミラー固定部とを一体化させた。なお、各部材の詳細な寸法は、比較例1にかかるガルバノミラーのイナーシャと同等になるように設定した。
【0051】
(比較例1)
比較例1にかかるガルバノミラーは、単一材料で構成した。具体的には、比較例1にかかるガルバノミラーは、焼結SiC材を軽量化加工した後に、鏡面研磨加工して鏡面化することにより得た。比較例1にかかるガルバノミラーの外形形状は、図9に示す形状と同一である。詳細な寸法は、割愛する。
【0052】
(比較例2)
比較例2にかかるガルバノミラーは、表裏2枚のCFRPプレートの間に、コア材としてハニカムコアの1種類のみを挟み込んだ構成にした。CFRPプレートには、実施例1の補強プレートと同じ材料を使用した。ハニカムコアには、実施例1のハニカムコアと同じUltracor社製のhoneycomb UCF-137-3/8-10を使用した。厚さ100μmのフィルム状接着剤を用いて隣接する部材同士を固定し、2枚のCFRPプレートとハニカムコアとを一体化させた。なお、比較例2では、ガルバノミラーの駆動時の変形量が比較例1にかかるガルバノミラーと同程度になるように、CFRPプレートの板厚とハニカムコアの厚さとを設定した。
【0053】
(比較例3)
比較例3にかかるガルバノミラーは、コア材をフォーム状コアの1種類のみにした点以外は、実施例1と同じ構成にした。
【0054】
(試験方法)
上記実施例1および比較例1から3のガルバノミラーについて、重量、イナーシャ、鏡面の精度および駆動時の変形量(高剛性:変形し難さ)の評価を行った。駆動時の変形量に関しては、各ガルバノミラーをガルバノスキャナに組み込み、最大加速度でガルバノスキャナを駆動させた場合の、ガルバノミラーの鏡面の変形量を有限要素解析により求めた。
【0055】
表1は、実施例1および比較例1から3にかかるガルバノミラーの評価結果を示す表である。表1において、各評価項目の数値は、比較例1のガルバノミラーの数値を100として、指数で表記している。各評価項目の数値が小さいほど各評価項目の特性が優れていることを意味している。
【0056】
【表1】
【0057】
表1から明らかなように、比較例2は、駆動時の変形量が比較例1と同等になるように剛性設計した場合、重量およびイナーシャが比較例1の50%未満に低減したのに対し、鏡面の精度が比較例1の1.5倍程度に悪化した。これは、CFRPプレートの表面に発生するディンプル(図11参照)が原因である。ディンプルの発生を無くすには、CFRPプレートの厚さを、比較例2よりも3倍から4倍に厚くする必要があるが、そうすると、重量およびイナーシャは、比較例1の2倍以上になる。さらに、ディンプルの発生を無くしても、CFRPプレートの場合、成形時の樹脂の硬化収縮の影響があるため、成形面の精度が不十分になる。また、成形面は、樹脂と繊維との2種類の材料が混在しているため、成形面に鏡面研磨加工を行っても、十分な表面粗さが得られず、成形面を鏡面化できない。成形面を鏡面化する方法として、成形面を単一の材料で覆い再度鏡面研磨加工を行う方法があるが、そうすると、重量およびイナーシャがさらに大きくなり、また、メタライズなどを行った際にガルバノミラーにバイメタル変形が発生するため、好ましくない。
【0058】
比較例3は、Siウェハーの背面に補強構造が無く、また、Siウェハーの背面に軽量化加工を行っていないため、比較例1よりも鏡面の精度が良い。また、比較例3は、重量が比較例1よりも低減したが、ガルバノミラー全体の厚さが比較例1よりも厚いため、イナーシャが比較例1よりも大きくなった。また、フォーム状コアの剛性がハニカムコアよりも低く、コア全体としての剛性が不十分なため、駆動時の変形量は比較例1よりも大きくなった。駆動時の変形量を小さくするには、フォーム状コアの厚さを厚くする必要があるが、そうすると、重量が比較例1よりも大きくなる。さらに、イナーシャも大きくなり、同じガルバノモータで駆動する場合、ガルバノミラーの駆動スピードが低下するため、好ましくない。
【0059】
実施例1は、イナーシャが比較例1と同等になるように設計した場合、重量、鏡面の精度および駆動時の変形量がいずれも比較例1よりも低減した。つまり、実施例1のガルバノミラーをレーザ加工機などに搭載した場合、加工の高精度化および高速化を実現できる。
【0060】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【0061】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0062】
(付記1)
鏡面となる正面と、前記正面とは反対を向く平面形状の背面とを有するミラーサーフェイスと、
前記ミラーサーフェイスの前記背面側に前記背面から離れて設けられた補強プレートと、
前記ミラーサーフェイスと前記補強プレートとの間に挟み込まれて配置されて、前記ミラーサーフェイスの前記背面に固定されるフォーム状コアとハニカムコアとを含む複数種のコア材と、
前記ミラーサーフェイスと前記補強プレートとの間に挟み込まれて配置されて、前記コア材とは別の材料で形成され、ガルバノミラーを他部材に固定するためのミラー固定部と、
を備え、
前記ミラーサーフェイスと前記補強プレートと前記コア材と前記ミラー固定部とのうち隣接する部材同士は、接着層を介して固定され、前記ミラーサーフェイスと前記補強プレートと前記コア材と前記ミラー固定部とが一体化されていることを特徴とするガルバノミラー。
(付記2)
前記ミラーサーフェイスには、アルミナ、サファイヤ、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミ、炭化ケイ素、B4C-TiB2、ベリリウムのいずれかのセラミックスのプレート、または、単結晶炭化ケイ素、単結晶ケイ素のいずれかのウェハー、もしくは、単結晶シリコンウェハーが用いられることを特徴とする付記1に記載のガルバノミラー。
(付記3)
前記コア材の種類は、前記フォーム状コアと前記ハニカムコアとの2種類であり、
前記フォーム状コアの嵩比重が0.4g/cm3未満、かつ、前記フォーム状コアの弾性率が0.1GPa以上であり、
前記ハニカムコアの嵩比重が0.2g/cm3未満、かつ、前記ハニカムコアの比弾性率が10以上であることを特徴とする付記1または2に記載のガルバノミラー。
(付記4)
前記補強プレートの材料は、炭素繊維強化プラスチックであり、
前記補強プレートの嵩比重が1.85g/cm3未満、かつ、前記補強プレートの弾性率が120GPa以上であることを特徴とする付記1から3のいずれか1つに記載のガルバノミラー。
(付記5)
前記ミラー固定部の材料は、比弾性率が100以上のセラミックスであることを特徴とする付記1から4のいずれか1つに記載のガルバノミラー。
(付記6)
鏡面となる正面と前記正面とは反対を向く平面形状の背面とを有するミラーサーフェイスと、前記ミラーサーフェイスの前記背面側に前記背面から離れて設けられた補強プレートと、前記ミラーサーフェイスと前記補強プレートとの間に挟み込まれて配置されて、前記ミラーサーフェイスの前記背面に固定されるフォーム状コアとハニカムコアとを含む複数種のコア材と、前記ミラーサーフェイスと前記補強プレートとの間に挟み込まれて配置されて、前記コア材とは別の材料で形成され、ガルバノミラーを他部材に固定するためのミラー固定部とを備えるガルバノミラーの製造方法であって、
前記ミラーサーフェイスと前記補強プレートと前記コア材と前記ミラー固定部とのうち隣接する部材同士を接着層により固定して、前記ミラーサーフェイスと前記補強プレートと前記コア材と前記ミラー固定部とを一体化する固定工程と、
前記固定工程の後、前記ミラーサーフェイスの前記鏡面にメタル系材料を蒸着または前記鏡面をスパッタで被覆して前記鏡面に被膜を形成する被膜工程と、
前記鏡面の前記被膜に、誘電多層被膜を更に被覆する被覆工程と、
を含むことを特徴とするガルバノミラーの製造方法。
(付記7)
前記固定工程の前に、前記ミラーサーフェイスの前記正面をミラーポリッシュする鏡面化工程を含むことを特徴とする付記6に記載のガルバノミラーの製造方法。
(付記8)
前記接着層は、樹脂シートからなるフィルム状接着剤であることを特徴とする付記6または7に記載のガルバノミラーの製造方法。
【符号の説明】
【0063】
1,210 ミラーサーフェイス、1a,220 正面、1b,230 背面、1c 単結晶インゴット、1d ウェハー、1e トリミング部材、2 補強プレート、3 コア材、3a フォーム状コア、3b,320 ハニカムコア、3c,3d 切り欠き部、4 ミラー固定部、4a 把持部、5 接着層、5a 第1の接着層、5b 第2の接着層、5c 第3の接着層、5d 露出面、100,200,300 ガルバノミラー、240 リブ、250 背骨構造部、260 肋骨補強部、270,330 ディンプル、310 表面プレート。
【要約】
ガルバノミラー(100)は、鏡面となる正面(1a)と平面形状の背面(1b)とを有するミラーサーフェイス(1)と、ミラーサーフェイス(1)の背面(1b)側に背面(1b)から離れて設けられた補強プレート(2)と、ミラーサーフェイス(1)と補強プレート(2)との間に挟み込まれて配置されてミラーサーフェイス(1)の背面(1b)に固定されるフォーム状コア(3a)とハニカムコア(3b)とを含む複数種のコア材(3)と、ミラーサーフェイス(1)と補強プレート(2)との間に挟み込まれて配置されてコア材(3)とは別の材料で形成されるミラー固定部(4)と、を備えている。ミラーサーフェイス(1)と補強プレート(2)とコア材(3)とミラー固定部(4)とのうち隣接する部材同士は、接着層(5)を介して固定され、ミラーサーフェイス(1)と補強プレート(2)とコア材(3)とミラー固定部(4)とが一体化されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14