(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-20
(45)【発行日】2025-06-30
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20250623BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20250623BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20250623BHJP
【FI】
H01L21/304 643A
H01L21/306 R
H01L21/68 P
(21)【出願番号】P 2021154175
(22)【出願日】2021-09-22
【審査請求日】2024-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 仁司
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-012591(JP,A)
【文献】特開2008-060579(JP,A)
【文献】特開平06-291030(JP,A)
【文献】特開2017-045803(JP,A)
【文献】特開平09-213772(JP,A)
【文献】特開2013-229552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/304-21/3063
H01L21/308
H01L21/465-21/467
H01L21/67 -21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に向いた基板保持面を有する保持板を有し、前記基板保持面上に基板を吸引して保持する吸引チャックと、
鉛直方向に沿う回転軸線まわりに前記吸引チャックを回転させる回転駆動ユニットと、
前記保持板の下方に配置され、前記保持板に対して下方から対向する対向部材と、
前記吸引チャックを前記対向部材に対して相対的に上下動させる上下動ユニットと、
前記保持板に設けられた第1強磁性体片と、
前記対向部材に移動可能に設けられ、前記第1強磁性体片との距離に応じて前記第1強磁性体片との間に生じる磁力によって駆動される第2強磁性体片と、
前記対向部材に設けられ、前記第2強磁性体片の移動に伴って作動し、前記吸引チャックの前記基板保持面上に基板が保持されているときに、当該基板の周端面に当接または当該基板の周端面から離間するように開閉する開閉ピンと、
を含む、基板処理装置。
【請求項2】
前記第1強磁性体片および前記第2強磁性体片のうちの少なくとも一方は永久磁石である、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記開閉ピンが、前記基板保持面上で基板を前記回転軸線に対してセンタリングするためのセンタリングピンを含む、請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記開閉ピンが、前記吸引チャックから基板を受け取って保持する保持ピンを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記上下動ユニットによる前記吸引チャックの上下動によって前記保持板および前記対向部材が接近することによって係合する凹凸結合によって前記保持板および前記対向部材の相対回転を規制する回転規制リンクをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記対向部材が、前記回転軸線まわりに回転可能である、請求項1~5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
基板の周端面の異なる位置にそれぞれ当接可能に配置された複数の前記開閉ピンを含み、
前記対向部材に設けられ、前記第2強磁性体片の移動を複数の前記開閉ピンに共通に伝達するリンク機構をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
上方に向いた基板保持面を有する保持板を有し、前記基板保持面上に基板を吸引して保持する吸引チャックと、
鉛直方向に沿う回転軸線まわりに前記吸引チャックを回転させる回転駆動ユニットと、
前記保持板の下方に配置され、前記保持板に対して下方から対向する対向部材と、
前記吸引チャックを前記対向部材に対して相対的に上下動させる上下動ユニットと、
前記保持板に設けられた第1強磁性体片と、
前記対向部材に移動可能に設けられ、前記第1強磁性体片との距離に応じて前記第1強磁性体片との間に生じる磁力によって駆動される第2強磁性体片と、
前記対向部材に設けられ、前記第2強磁性体片の移動に伴って作動し、前記吸引チャックの前記基板保持面上に基板が保持されているときに、当該基板の周端面に当接および当該基板の周端面から離間するように開閉する第1開閉ピンと、
前記対向部材に設けられ、前記上下動ユニットによる前記吸引チャックの上下動に伴って作動し、前記吸引チャックの前記基板保持面上に基板が保持されているときに、当該基板の周端面に当接および当該基板の周端面から離間するように開閉する第2開閉ピンと、
を含む、基板処理装置。
【請求項9】
前記吸引チャックが前記対向部材に対して第1相対回転位置にある状態で前記吸引チャックが前記対向部材に接近すると、前記第2強磁性体片が移動して前記第1開閉ピンが基板の周端面に接近し、
前記吸引チャックが前記対向部材に対して前記第1相対回転位置とは異なる第2相対回転位置にある状態で前記吸引チャックが前記対向部材に接近すると、前記第2開閉ピンが作動して基板の周端面に接近する、請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記第1強磁性体片および前記第2強磁性体片のうちの少なくとも一方は永久磁石である、請求項8または9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記回転軸線まわりの周方向に前記第2強磁性体片から間隔を空けて配置され、前記対向部材に移動可能に設けられ、前記第1強磁性体片との距離に応じて前記第1強磁性体片との間に生じる磁力によって駆動される第3強磁性体片をさらに含み、
前記第2開閉ピンは、前記第3強磁性体片の移動に伴って作動する、請求項8~10のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記第1強磁性体片および前記第3強磁性体片のうちの少なくとも一方は永久磁石である、請求項11に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記第1開閉ピンが、前記基板保持面上で基板を前記回転軸線に対してセンタリングするためのセンタリングピンを含む、請求項8~12のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記第2開閉ピンが、前記吸引チャックから基板を受け取って保持する保持ピンを含む、請求項8~13のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記上下動ユニットによる前記吸引チャックの上下動によって前記保持板および前記対向部材が接近することによって係合する凹凸結合によって前記保持板および前記対向部材の相対回転を規制する回転規制リンクをさらに含む、請求項8~14のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記上下動ユニットによる前記吸引チャックの上下動によって前記保持板および前記対向部材が接近することによって係合する凹凸結合によって前記保持板および前記対向部材の相対回転を規制する回転規制リンクをさらに含み、
前記回転規制リンクは、前記第1相対回転位置および前記第2相対回転位置の少なくとも一方において、前記保持板および前記対向部材の相対回転を規制する、請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記対向部材が、前記回転軸線まわりに回転可能である、請求項8~16のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項18】
前記吸引チャックに基板が保持されているときに、当該基板の周縁部を処理する周縁処理手段をさらに含む、請求項8~17のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項19】
前記第2開閉ピンは、前記吸引チャックから基板を受け取って保持する保持ピンであり、
前記保持ピンに基板が保持されているときに、当該基板の下面を処理する下面処理手段をさらに含む、請求項8~18のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項20】
上方に向いた基板保持面を有する
保持板を有する吸引チャックと、
前記保持板に設けられた第1強磁性体片と、前記吸引チャックの下方に配置され
前記保持板に対して下方から対向する対向部材、
および前記吸引チャックの上下動によって作動する保持ピンを有するメカニカルチャックと
、前記対向部材に移動可能に設けられ、前記第1強磁性体片との距離に応じて前記第1強磁性体片との間に生じる磁力によって駆動されて前記保持ピンを作動させる第3強磁性体片とを備えた基板処理装置によって基板を処理する方法であって、
前記吸引チャック
の前記基板保持面上に基板を載置する工程と、
前記基板保持面上で基板をセンタリングする工程と、
前記センタリング後に、前記吸引チャックで基板を吸引保持する工程と、
前記吸引チャックで基板を吸引保持した状態で、前記吸引チャックを鉛直な回転軸線まわりに回転しながら、前記基板の周縁部を処理する周縁処理工程と、
前記吸引チャックによる前記基板の吸引保持を解除し、前記吸引チャックを下降させて前記保持ピンを作動させることにより、前記吸引チャックから前記保持ピンに基板を渡し、前記基板の下面が前記吸引チャックの上方に離間した状態で前記保持ピンを前記基板の周端面に当接させて、前記メカニカルチャックによって前記基板を保持する工程と、
前記基板を保持した前記メカニカルチャックを前記回転軸線まわりに回転しながら、当該メカニカルチャックに保持された基板の下面を処理する下面処理工程と、
を含む、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理する装置および方法に関する。処理対象の基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置および有機EL(Electroluminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板等が含まれる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、基板の周辺部を処理するベベル処理を行う基板処理装置を開示している。この基板処理装置は、基板を吸着して保持する真空チャック部を有する回転部と、基板の周辺部に処理液を供給するノズル部と、基板から排出される処理液を受けるドレインカップとを備えている。この基板処理装置は、さらに、ドレインカップの外側に配置された基板位置決め装置を備えている。基板位置決め装置は、回転部を挟んで対向する第1の位置決め機構および第2の位置決め機構を備えている。第1の位置決め機構は、基板の側面と接触する第1の基準部を基板の半径方向に駆動する第1の駆動部を備える。第2の位置決め機構は、基板の側面と接触する第2の基準部を基板の半径方向に駆動する第2の駆動部を備える。第1の駆動部は、位置制御可能なステッピングモータ等からなり、制御部によって制御される。第2の駆動部は、直線的に移動可能なエアシリンダまたはモータ等により構成され、制御部によって制御される。
【0003】
基板に対してベベル処理を行う際には、真空チャック部上で基板を浮上させた状態で、第1の駆動部および第2の駆動部を制御して、基板の中心と回転部の回転中心とを一致させる。その後、基板を真空チャック部に吸着させ、第1の基準部および第2の基準部を基板の側面から退避させる。そして、回転部によって基板を回転させながら、ノズル部から基板に処理液を供給してベベル処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の基板処理装置は、基板の側面に当接する第1の基準部および第2の基準部を駆動するために専用の駆動装置を必要としている。そのため、基板処理装置に備えるべき駆動装置が多く、それに応じてコストが高くつき、かつ構造が複雑である。したがって、主として、コストの低減および構造の簡素化の観点から、改善の余地がある。
【0006】
そこで、この発明の一実施形態は、基板を吸引して保持する吸引チャックと、基板の周端面に当接する開閉ピンとを有する基板処理装置のコストの低減および構造の簡素化に有利な構成および方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一実施形態は、上方に向いた基板保持面を有する保持板を有し、前記基板保持面上に基板を吸引して保持する吸引チャックと、鉛直方向に沿う回転軸線まわりに前記吸引チャックを回転させる回転駆動ユニットと、前記保持板の下方に配置され、前記保持板に対して下方から対向する対向部材と、前記吸引チャックを前記対向部材に対して相対的に上下動させる上下動ユニットと、前記保持板に設けられた(たとえば固定された)第1強磁性体片と、前記対向部材に移動可能に設けられ、前記第1強磁性体片との距離に応じて前記第1強磁性体片との間に生じる磁力によって駆動される第2強磁性体片と、前記対向部材に設けられ、前記第2強磁性体片の移動に伴って作動し、前記吸引チャックの前記基板保持面上に基板が保持されているときに、当該基板の周端面に当接または当該基板の周端面から離間するように開閉する開閉ピン(周端面当接片)と、を含む、基板処理装置を提供する。
【0008】
この構成により、吸引チャックを上下動することにより、第1強磁性体片および第2強磁性体片の間に働く磁力が変化し、それによって、第2強磁性体片が移動する。その移動に伴い、開閉ピンが開閉作動する。したがって、吸引チャックを上下動する機構を利用して開閉ピンを作動させることができるので、専用の駆動装置を必要としない。そのため、構造が簡単であり、それに応じてコストを低減できる。
【0009】
吸引チャックの一つの例は、真空吸引による負圧によって基板を基板保持面に吸着するバキュームチャックである。吸引チャックの別の例は、ベルヌーイ吸引によって基板を基板の保持面に吸引して保持するベルヌーイチャックである。
【0010】
一つの実施形態では、前記第1強磁性体片および前記第2強磁性体片のうちの少なくとも一方は永久磁石である。すなわち、第1強磁性体片および第2強磁性体片の一方のみが永久磁石であってもよく、それらの両方が永久磁石であってもよい。両方が永久磁石の場合には、第1強磁性体片および第2強磁性体片の間に働く吸引磁力を利用する構成のほか、それらの間に働く反発磁力を利用する構成とすることもできる。
【0011】
一つの実施形態では、前記開閉ピンが、前記基板保持面上で基板を前記回転軸線に対してセンタリング(中心合わせ)するためのセンタリングピンを含む。この構成により、吸引チャックを上下動させる機構を利用して、基板を回転軸線に対してセンタリングすることができる。したがって、専用の駆動装置を必要としない、簡単で低コストの構成でセンタリング機能を備えることができる。
【0012】
センタリングピンは、回転軸線に対して接近/離反するように移動し、基板の周端面に実質的に点接触(たとえば1点で点接触)する構造を有していることが好ましい。より具体的には、センタリングピンは、鉛直方向に延びる軸形状の当接部を有し、その当接部は基板の周端面に向かって凸の筒状面(たとえば当該軸形状の軸線に沿って延びる筒状面(より具体的には円筒面))を備え、その筒状面が基板の周端面に当接するように構成されていることが好ましい。
【0013】
一つの実施形態では、前記開閉ピンが、前記吸引チャックから基板を受け取って保持する保持ピンを含む。この構成により、吸引チャックを上下動させる機構を利用して、吸引チャックから保持ピンへと基板を渡し、保持ピンによって基板を保持させることができる。したがって、専用の駆動装置を必要としない、簡単で低コストの構成で、吸引チャックと保持ピンとの間で基板を持ち替えることができ、吸引チャックおよび保持ピンのいずれによっても基板を保持できる機能を備えることができる。
【0014】
一つの実施形態では、前記基板処理装置は、前記上下動ユニットによる前記吸引チャックの上下動によって前記保持板および前記対向部材が接近することによって係合する凹凸結合によって前記保持板および前記対向部材の相対回転を規制する回転規制リンクをさらに含む。
【0015】
この構成により、吸引チャックの上下動によって、回転規制リンクを係合/解除できる。回転規制リンクの解除状態では、吸引チャックのみに回転駆動ユニットの回転力を伝達できる。回転規制リンクの係合状態では、回転駆動ユニットの回転力が吸引チャックに伝達され、さらに対向部材にも伝達される。
【0016】
一つの実施形態では、前記対向部材が、前記回転軸線まわりに回転可能である。
【0017】
回転規制リンクを備えている場合には、回転規制リンクを係合状態とすることにより、回転駆動ユニットによって吸引チャックを回転させると、その回転力によって対向部材を回転させることができる。したがって、対向部材に保持ピンが設けられている場合には、保持ピンによって基板を保持した状態で対向部材を回転軸線まわりに回転できるので、基板を回転させながら基板を処理することができる。
【0018】
たとえば、吸引チャックによって基板を保持して回転させながら、基板の周縁部の処理(ベベル処理)を行うことができる。そして、保持ピンによって基板を保持した状態で対向部材を回転(したがって、基板を回転)させながら、基板の下面の処理を行うことができる。
【0019】
一つの実施形態では、前記基板処理装置は、基板の周端面の異なる位置にそれぞれ当接可能に配置された複数の前記開閉ピンを含む。前記基板処理装置は、前記対向部材に設けられ、前記第2強磁性体片の移動を複数の前記開閉ピンに共通に伝達するリンク機構をさらに含む。
【0020】
この構成によれば、リンク機構によって複数の開閉ピンを同期して作動させることができる。それにより、開閉ピンを精密に動作させることができる。
【0021】
この発明の一つの実施形態は、上方に向いた基板保持面を有する保持板を有し、前記基板保持面上に基板を吸引して保持する吸引チャックと、鉛直方向に沿う回転軸線まわりに前記吸引チャックを回転させる回転駆動ユニットと、前記保持板の下方に配置され、前記保持板に対して下方から対向する対向部材と、前記吸引チャックを前記対向部材に対して相対的に上下動させる上下動ユニットと、前記保持板に設けられた(たとえば固定された)第1強磁性体片と、前記対向部材に移動可能に設けられ、前記第1強磁性体片との距離に応じて前記第1強磁性体片との間に生じる磁力によって駆動される第2強磁性体片と、前記対向部材に設けられ、前記第2強磁性体片の移動に伴って作動し、前記吸引チャックの前記基板保持面上に基板が保持されているときに、当該基板の周端面に当接および当該基板の周端面から離間するように開閉する第1開閉ピン(第1周端面当接片)と、前記対向部材に設けられ、前記上下動ユニットによる前記吸引チャックの上下動に伴って作動し、前記吸引チャックの前記基板保持面上に基板が保持されているときに、当該基板の周端面に当接および当該基板の周端面から離間するように開閉する第2開閉ピン(第2周端面当接片)と、を含む、基板処理装置を提供する。
【0022】
この構成により、吸引チャックを上下動することにより、第1強磁性体片および第2強磁性体片の間に働く磁力が変化し、それによって、第2強磁性体片が移動する。その移動に伴い、第1開閉ピンが開閉作動する。また、吸引チャックの上下動に伴って、第2開閉ピンが開閉作動する。したがって、吸引チャックを上下動する機構を利用して第1開閉ピンおよび第2開閉ピンを作動させることができるので、専用の駆動装置を必要としない。そのため、構造が簡単であり、それに応じてコストを低減できる。
【0023】
吸引チャックの一つの例は、真空吸引による負圧によって基板を基板保持面に吸着するバキュームチャックである。吸引チャックの別の例は、ベルヌーイ吸引によって基板を基板の保持面に吸引して保持するベルヌーイチャックである。
【0024】
一つの実施形態では、前記吸引チャックが前記対向部材に対して第1相対回転位置にある状態で前記吸引チャックが前記対向部材に接近すると、前記第2強磁性体片が移動して前記第1開閉ピンが基板の周端面に接近する。一方、前記吸引チャックが前記対向部材に対して前記第1相対回転位置とは異なる第2相対回転位置にある状態で前記吸引チャックが前記対向部材に接近すると、前記第2開閉ピンが作動して基板の周端面に接近する。
【0025】
この構成により、第1相対回転位置で吸引チャックを上下動させることにより、第1開閉ピンを開閉作動させることができる。また、第2相対回転位置で吸引チャックを上下動させることにより、第2開閉ピンを作動させることができる。したがって、吸引チャックの上下動によって、第1開閉ピンおよび第2開閉ピンを選択的に作動させることができる。たとえば、第1開閉ピンおよび第2開閉ピンが異なる機能を有する場合には、その機能を選択的に使用することができる。
【0026】
一つの実施形態では、前記第1強磁性体片および前記第2強磁性体片のうちの少なくとも一方は永久磁石である。すなわち、第1強磁性体片および第2強磁性体片の一方のみが永久磁石であってもよく、それらの両方が永久磁石であってもよい。両方が永久磁石の場合には、第1強磁性体片および第2強磁性体片の間に働く吸引磁力を利用する構成のほか、それらの間に働く反発磁力を利用する構成とすることもできる。
【0027】
一つの実施形態では、前記基板処理装置は、前記回転軸線まわりの周方向に前記第2強磁性体片から間隔を空けて配置され、前記対向部材に移動可能に設けられ、前記第1強磁性体片との距離に応じて前記第1強磁性体片との間に生じる磁力によって駆動される第3強磁性体片をさらに含む。前記第2開閉ピンは、前記第3強磁性体片の移動に伴って作動する。
【0028】
この構成により、吸引チャックを上下動することにより、第1強磁性体片および第3強磁性体片の間に働く磁力が変化し、それによって、第3強磁性体片が移動する。その移動に伴い、第2開閉ピンが開閉作動する。第3強磁性体片は、第2強磁性体片から周方向に間隔を空けて配置されているので、たとえば、吸引チャックと対向部材との相対回転位置を適切に選択することにより、第1強磁性体片と第2強磁性体片との間に有効な磁力(第2強磁性体片を移動させ得る磁力)が作用する状態と、第1強磁性体片と第3強磁性体片との間に有効な磁力(第3強磁性体片を移動させ得る磁力)が作用する状態とを切り換えることができる。それにより、第1開閉ピンおよび第2開閉ピンを選択的に作動させることができる。
【0029】
一つの実施形態では、前記第1強磁性体片および前記第3強磁性体片のうちの少なくとも一方は永久磁石である。すなわち、第1強磁性体片および第3強磁性体片の一方のみが永久磁石であってもよく、それらの両方が永久磁石であってもよい。両方が永久磁石の場合には、第1強磁性体片および第3強磁性体片の間に働く吸引磁力を利用する構成のほか、それらの間に働く反発磁力を利用する構成とすることもできる。
【0030】
一つの実施形態では、前記第1開閉ピンが、前記基板保持面上で基板を前記回転軸線に対してセンタリング(中心合わせ)するためのセンタリングピンを含む。この構成により、吸引チャックを上下動させる機構を利用して、基板を回転軸線に対してセンタリングすることができる。したがって、専用の駆動装置を必要としない、簡単で低コストの構成でセンタリング機能を備えることができる。
【0031】
センタリングピンは、回転軸線に対して接近/離反するように移動し、基板の周端面に実質的に点接触(たとえば1点で点接触)する構造を有していることが好ましい。より具体的には、センタリングピンは、鉛直方向に延びる軸形状の当接部を有し、その当接部は基板の周端面に向かって凸の筒状面(たとえば当該軸形状の軸線に沿って延びる筒状面(より具体的には円筒面))を備え、その筒状面が基板の周端面に当接するように構成されていることが好ましい。
【0032】
一つの実施形態では、前記第2開閉ピンが、前記吸引チャックから基板を受け取って保持する保持ピンを含む。この構成により、吸引チャックを上下動させる機構を利用して、吸引チャックから保持ピンへと基板を渡し、保持ピンによって基板を保持させることができる。したがって、専用の駆動装置を必要としない、簡単で低コストの構成で、吸引チャックと保持ピンとの間で基板を持ち替えることができ、吸引チャックおよび保持ピンのいずれによっても基板を保持できる機能を備えることができる。
【0033】
一つの実施形態では、前記基板処理装置、前記上下動ユニットによる前記吸引チャックの上下動によって前記保持板および前記対向部材が接近することによって係合する凹凸結合によって前記保持板および前記対向部材の相対回転を規制する回転規制リンクをさらに含む。
【0034】
この構成により、吸引チャックの上下動によって、回転規制リンクを係合/解除できる。回転規制リンクの解除状態では、吸引チャックのみに回転駆動ユニットの回転力を伝達できる。回転規制リンクの係合状態では、回転駆動ユニットの回転力が吸引チャックに伝達され、さらに対向部材にも伝達される。
【0035】
一つの実施形態では、前記回転規制リンクは、前記第1相対回転位置および前記第2相対回転位置の少なくとも一方において、前記保持板および前記対向部材の相対回転を規制する。この構成により、第1相対回転位置および第2相対回転位置の一方または両方において、吸引チャックおよび対向部材を一体的に回転させることができる。
【0036】
前記第2開閉ピンが保持ピンであるときには、回転規制リンクは、少なくとも前記第2相対回転位置において係合状態となって、前記保持板および前記対向部材の相対回転を規制することが好ましい。それより、保持ピンで基板を保持した状態で、回転駆動ユニットの回転力によって当該基板を回転軸線まわりに回転することができる。
【0037】
一つの実施形態では、前記対向部材が、前記回転軸線まわりに回転可能である。
【0038】
回転規制リンクを備えている場合には、回転規制リンクを係合状態とすることにより、回転駆動ユニットによって吸引チャックを回転させると、その回転力によって対向部材を回転させることができる。したがって、たとえば、対向部材に保持ピンが設けられている場合には、保持ピンによって基板を保持した状態で対向部材を回転軸線まわりに回転できるので、基板を回転させながら基板を処理することができる。
【0039】
たとえば、吸引チャックによって基板を保持して回転させながら、基板の周縁部の処理(ベベル処理)を行うことができる。そして、保持ピンによって基板を保持した状態で対向部材を回転(したがって、基板を回転)させながら、基板の下面の処理を行うことができる。
【0040】
一つの実施形態では、前記基板処理装置は、前記吸引チャックに基板が保持されているときに、当該基板の周縁部を処理する周縁処理手段をさらに含む。
【0041】
この構成により、吸引チャックで基板を保持しながら、基板の周縁部を処理できる。吸引チャックは、基板を吸引して保持するので、基板の周縁部に当接することなく基板を保持できる。したがって、吸引チャックで基板を保持しながら周縁部の処理(ベベル処理)を行うことにより、基板の周縁部を隈無く処理できる。
【0042】
前記周縁処理手段は、基板の周縁部に向けて処理流体(たとえばエッチング液やリンス液等の処理液)を供給する処理流体ノズルを含んでいてもよい。処理流体ノズルは、基板の周縁部の上面に処理流体を供給する上面ノズルであってもよい。
【0043】
一つの実施形態では、前記第2開閉ピンは、前記吸引チャックから基板を受け取って保持する保持ピンである。前記基板処理装置は、前記保持ピンに基板が保持されているときに、当該基板の下面を処理する下面処理手段をさらに含む。
【0044】
この構成により、保持ピン(第2開閉ピン)で基板を保持しながら、基板の下面を処理することができる。保持ピンは、基板の周端面に当接して基板を保持するので、基板の下面の処理を阻害しない。したがって、基板の下面の良好な処理が可能である。
【0045】
前記下面処理手段は、基板の下面に向けて処理流体(たとえばエッチング液やリンス液等の処理液)を供給する処理流体ノズル(下面ノズル)を含んでいてもよい。
【0046】
この発明の一つの実施形態は、上方に向いた基板保持面を有する吸引チャックと、前記吸引チャックの下方に配置され、前記吸引チャックの上下動によって作動する保持ピンを有するメカニカルチャックとを備えた基板処理装置によって基板を処理する方法を提供する。この基板処理方法は、前記吸引チャック上に基板を載置する工程と、前記基板保持面上で基板をセンタリングする工程と、前記センタリング後に、前記吸引チャックで基板を吸引保持する工程と、前記吸引チャックで基板を吸引保持した状態で、前記吸引チャックを鉛直な回転軸線まわりに回転しながら、前記基板の周縁部を処理する周縁処理工程と、前記吸引チャックによる前記基板の吸引保持を解除し、前記吸引チャックを下降させて前記保持ピンを作動させることにより、前記吸引チャックから前記保持ピンに基板を渡し、前記基板の下面が前記吸引チャックの上方に離間した状態で前記保持ピンを前記基板の周端面に当接させて、前記メカニカルチャックによって前記基板を保持する工程と、前記基板を保持した前記メカニカルチャックを前記回転軸線まわりに回転しながら、当該メカニカルチャックに保持された基板の下面を処理する下面処理工程と、を含む。
【0047】
この方法によれば、吸引チャックの基板保持面上で基板をセンタリングした後に、吸引チャックで基板を吸引保持するので、基板は回転軸線に対してセンタリングされた状態で吸引チャックに保持される。その状態で吸引チャックを回転軸線まわりに回転しながら基板の周縁部を処理することにより、基板の周縁部を正確に処理できる。より具体的には、基板周縁部の処理幅を精密に制御できる。吸引チャックは、基板の周縁部に接することなく基板を保持できるので、基板の周縁部を隈無く処理できる。一方、基板の周縁部の処理の後には、吸引チャックの吸引保持が解除され、吸引チャックの下方に配置されたメカニカルチャックに基板が渡される。メカニカルチャックは、基板の下面が吸引チャックの上方に離間した状態で、基板保持ピンを基板の周端面に当接させて当該基板を保持する。そして、メカニカルチャックを回転軸線まわりに回転させながら、基板の下面の処理が行われる。メカニカルチャックは、基板の下面に接することなく基板を保持できるので、基板の下面の処理を阻害しない。こうして、回転軸線を共有する吸引チャックからメカニカルチャックへと基板を引き渡すことによって、基板の周縁部の処理(ベベル処理)と、基板の下面の処理とを連続的に(より具体的には、同一チャンバ内で)実行することができる。それにより、基板処理の生産性を向上することができる。
【0048】
メカニカルチャックの保持ピンは、吸引チャックを上下動する機構を利用して作動させることができるので、専用の駆動装置を必要としない。そのため、構造が簡単であり、それに応じてコストを低減できる。
【0049】
この発明の一つの実施形態は、上方に向いた基板保持面を有する保持板を有する吸引チャックと、前記保持板に設けられた第1強磁性体片と、前記吸引チャックの下方に配置され前記保持板に対して下方から対向する対向部材、および前記吸引チャックの上下動によって作動する保持ピンを有するメカニカルチャックと、前記対向部材に移動可能に設けられ、前記第1強磁性体片との距離に応じて前記第1強磁性体片との間に生じる磁力によって駆動されて前記保持ピンを作動させる第3強磁性体片とを備えた基板処理装置によって基板を処理する方法を提供する。この基板処理方法は、前記吸引チャックの前記基板保持面上に基板を載置する工程と、前記基板保持面上で基板をセンタリングする工程と、前記センタリング後に、前記吸引チャックで基板を吸引保持する工程と、前記吸引チャックで基板を吸引保持した状態で、前記吸引チャックを鉛直な回転軸線まわりに回転しながら、前記基板の周縁部を処理する周縁処理工程と、前記吸引チャックによる前記基板の吸引保持を解除し、前記吸引チャックを下降させて前記保持ピンを作動させることにより、前記吸引チャックから前記保持ピンに基板を渡し、前記基板の下面が前記吸引チャックの上方に離間した状態で前記保持ピンを前記基板の周端面に当接させて、前記メカニカルチャックによって前記基板を保持する工程と、前記基板を保持した前記メカニカルチャックを前記回転軸線まわりに回転しながら、当該メカニカルチャックに保持された基板の下面を処理する下面処理工程と、を含む。
これらの基板処理方法においても、前述の基板処理装置に関して述べた様々な特徴を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】
図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置の一例である基板処理ユニットの内部構成を図解的に示す側面図である
【
図2A】
図2Aは、吸引チャックおよびメカニカルチャックに関する構成例を示す縦断面図であり、基板のセンタリング時の状態を示す。
【
図2B】
図2Bは、吸引チャックおよびメカニカルチャックに関する構成例を示す縦断面図であり、基板の周縁部の処理(ベベル処理)を実行するときの状態を示す。
【
図2C】
図2Cは、吸引チャックおよびメカニカルチャックに関する構成例を示す縦断面図であり、基板の下面の処理を実行するときの状態を示す。
【
図3A-3C】
図3A、
図3Bおよび
図3Cは、センタリングピン駆動機構の構成例を説明するための図であり、センタリングピンが開状態のときの構成を示す。
【
図4A-4C】
図4A、
図4Bおよび
図4Cは、センタリングピン駆動機構の構成例を説明するための図であり、センタリングピンが閉状態のときの構成を示す。
【
図5】
図5は、吸引チャックの保持板における第1磁石片の配置例を説明するための平面図である。
【
図6】
図6は、メカニカルチャックの保持ピン、センタリングピン、第2磁石片および第3磁石片の配置例を説明するための平面図である。
【
図7A-7B】
図7Aは、連結ピンを2つの連結凹部のうちの一方である第1連結凹部に係合させた状態の平面図である。
図7Bは、連結ピンを2つの連結凹部のうちの他方である第2連結凹部に係合させた状態の平面図である。
【
図8】
図8は、基板処理ユニットによる基板処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図9】
図9は、この発明の第2の実施形態に係る基板処理ユニットの構成例を説明するための断面図である。
【
図10】
図10は、この発明の第3の実施形態に係る基板処理ユニットの構成例を説明するための断面図である。
【
図11A-11B】
図11Aおよび
図11Bは、この発明の第4の実施形態を説明するための図であり、磁気反発力によって保持ピンを駆動する構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0052】
図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置の内部構成を図解的に示す側面図である。一般的な基板処理システムは、複数の基板処理ユニットと、複数の基板処理ユニットに対して基板を搬送する基板搬送ロボットとを備えている。
図1には、このような基板処理システムに備えられる基板処理ユニットの構成を示し、以下では、基板処理ユニットの構成を主として説明する。基板処理ユニットは、この発明の一実施形態に係る基板処理装置の一例である。
【0053】
基板処理ユニット100は、基板Wを一枚ずつ処理する枚葉型である。基板Wは、この実施形態では、半導体ウエハ等の円形基板である。基板処理ユニット100は、基板Wに対して処理流体を用いた処理を施すように構成されている。処理流体の例は、処理液および処理ガスを含む。処理液の例は、薬液およびリンス液を含む。薬液は、基板Wの材料と反応する薬品である。基板Wの材料とは、半導体材料のほか、基板Wの表面に形成された酸化膜、窒化膜、レジスト等の膜材料を含む。リンス液は、主として基板W上の薬液を洗い流すための液体である。薬液の例としては、希フッ酸(DHF)、フッ酸、フッ硝酸、バッファードフッ酸(BHF)、フッ化アンモニウム、HFEG(フッ酸およびエチレングリコールの混合液)、リン酸、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(クエン酸、シュウ酸等)、有機アルカリ(TMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)等)、硫酸過酸化水素水混合液(SPM)、アンモニア過酸化水素水混合液(SC1)、塩酸過酸化水素水混合液(SC2)、アルコール類(イソプロピルアルコール(IPA)等)、界面活性剤、腐食防止剤、疎水化剤を挙げることができる。リンス液の例としては、脱イオン水(DIW)、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、希釈濃度(たとえば10ppm~100ppm)の塩酸水を挙げることができる。処理ガスの例としては、基板Wと反応する反応性ガス(オゾンガス、フッ素ガス、フッ化水素を含む気体、IPAを含む気体等)、および基板Wに対して化学的に不活性な不活性ガス(窒素ガス等)を挙げることができる。
【0054】
基板処理ユニット100は、チャンバ1と、吸引チャック10と、メカニカルチャック20と、筐体2と、上面ノズル5と、下面ノズル6とを含む。基板処理ユニット100は、さらに、第1処理流体供給機構80と、第2処理流体供給機構85と、ノズル移動機構90と、ガード94と、吸引チャック10を鉛直な回転軸線Aまわりに回転させる回転駆動ユニット60とを備えている。基板処理ユニット100は、さらに、吸引チャック10をメカニカルチャック20に対して相対的に上下動させる上下動ユニット70を備えている。回転駆動ユニット60および上下動ユニット70は、筐体2に収容されている。
【0055】
基板処理ユニット100の各部は、制御装置120によって制御される。制御装置120は、具体的には、第1処理流体供給機構80、第2処理流体供給機構85、ノズル移動機構90、回転駆動ユニット60、上下動ユニット70などを制御する。制御装置120は、典型的には、コンピュータであり、プロセッサおよびメモリを備えており、メモリに格納されたプログラムをプロセッサが実行することによって、様々な機能を実行するように構成されている。
【0056】
吸引チャック10およびメカニカルチャック20は、チャンバ1内に収容され、チャンバ1内で基板Wを保持するように構成されている。
【0057】
吸引チャック10は、基板Wを水平姿勢で保持して鉛直な回転軸線Aまわりに回転可能な構成を有している。吸引チャック10は、上方に向いた基板保持面14を有する保持板11を有し、基板保持面14上に基板Wを吸引して保持するように構成されている。保持板11は、平面視において、保持対象の基板Wよりも小さく、基板保持面14は基板Wの下面の中央領域に対向するように構成されている。保持板11は、セラミック材料、樹脂材料等の非磁性体で構成されている。
【0058】
メカニカルチャック20は、基板Wを水平姿勢で保持して、吸引チャック10と共通の回転軸線Aまわりに回転可能な構成を有している。メカニカルチャック20は、保持板11の下方に配置され、保持板11に対して下方から対向する対向部材の一例であるスピンベース21を備えている。スピンベース21は、セラミック材料、樹脂材料等の非磁性体で構成されている。スピンベース21は、平面視において回転軸線Aを中心とした円形を成すように構成されている。
【0059】
スピンベース21には、基板Wの周端面に当接することにより、基板Wのセンタリングを行うセンタリングピンCP(第1開閉ピンまたは第2開閉ピンの一例)が設けられている。スピンベース21には、さらに、基板Wの周縁部を保持することにより基板Wを水平に保持する保持ピンHP(第1開閉ピンまたは第2開閉ピンの一例)が設けられている。
【0060】
複数の保持ピンHPが、回転軸線Aまわりの周方向に間隔を空けて配置されており、各保持ピンHPは、スピンベース21の周縁部から上方に突出している。センタリングピンCPは、保持ピンHPに対して、回転軸線Aまわりの周方向にずれた位置に配置されている。複数のセンタリングピンCPが周方向に間隔を空けて配置されており、各センタリングピンCPは、スピンベース21の周縁部から上方に突出している。
【0061】
3本以上のセンタリングピンCPが設けられることが好ましい。同様に、3本以上の保持ピンHPが設けられることが好ましい。センタリングピンCPおよび保持ピンHPは、樹脂材料等の非磁性体材料で構成されている。
【0062】
第1処理流体供給機構80は、上面ノズル5に第1処理流体FL1を供給する。第1処理流体供給機構80は、第1処理流体FL1が流通する第1配管81と、第1配管81の流路を開閉する第1バルブ82とを含む。第1バルブ82を開閉することにより、上面ノズル5からの第1処理流体FL1の吐出/停止を切り換えることができる。上面ノズル5は、基板Wの上面に向けて第1処理流体FL1を吐出する。第1バルブ82の開閉は、制御装置120によって制御される。
【0063】
ノズル移動機構90は、鉛直方向および水平方向に上面ノズル5を移動する。ノズル移動機構90は、先端部に上面ノズル5が結合されたアーム91と、アーム91を駆動することによって上面ノズル5を移動させるアーム駆動機構92とを含む。アーム駆動機構92は、たとえば電動モータを含む。ノズル移動機構90は、たとえば、上面ノズル5を移動することにより、吸引チャック10に保持された基板Wの周縁部の上面に上面ノズル5の着液位置を配置する。その状態で上面ノズル5から第1処理流体FL1が吐出されることにより、基板Wの周縁部に対する処理、いわゆるベベル処理を行うことができる。
【0064】
第2処理流体供給機構85は、下面ノズル6に第2処理流体FL2を供給する。下面ノズル6は、吸引チャック10の下面に結合された回転軸である内回転軸15を挿通するように配置されている。下面ノズル6の上端が吐出口であり、この吐出口は、メカニカルチャック20に基板Wが保持されたときに、その基板Wの下面に向けて第2処理流体FL2を吐出する。第2処理流体供給機構85は、第2処理流体FL2が流通する第2配管86と、第2配管86の流路を開閉する第2バルブ87とを含む。第2バルブ87を開閉することにより、下面ノズル6からの第2処理流体FL2の吐出/停止を切り換えることができる。第2バルブ87の開閉は、制御装置120によって制御される。
【0065】
ガード94は、基板Wに供給され、その回転に伴って遠心力によって外方に排出される処理流体を受け止める。ガード94は、第1ガード部95と、第2ガード部96とを含む。第2ガード部96は、第1ガード部95の内側に配置されている。第2ガード部96は、第1ガード部95よりも下方で処理流体を受け止めるように構成されている。この実施形態では、吸引チャック10に基板Wを保持しているときに排出される処理流体が第1ガード部95で受けられ、メカニカルチャック20に基板Wを保持しているときに排出される処理流体が第2ガード部96で受けられる。
【0066】
図2A、
図2Bおよび
図2Cは、吸引チャック10およびメカニカルチャック20に関する、より詳しい構成例を示す縦断面図であり、吸引チャック10が異なる高さに配置されている状態をそれぞれ示す。
【0067】
筐体2の上壁で構成された保持部3によって、ガード94が支持されている。ガード94は、筒状の第1ガード部95および第2ガード部96に加えて、それらを結合する底部97を備え、底部97が筐体2に支持されている。底部97は、第1ガード部95および第2ガード部96によってそれぞれ受けられた処理流体(主として処理液)を受ける第1溝98および第2溝99を形成している。
【0068】
ガード94によって取り囲まれるように、メカニカルチャック20が配置されている。メカニカルチャック20は、円盤状のスピンベース21と、スピンベース21の下面に結合された中空の回転軸である外回転軸22とを備えている。外回転軸22は、外周面に配置された外軸受23、およびそれを支持する軸受支持部24を介して、筐体2の保持部3によって支持されている。それにより、メカニカルチャック20は、回転軸線Aまわりに回転可能である。
【0069】
吸引チャック10の保持板11は、中央付近に吸引ヘッド12を備えており、吸引ヘッド12の上面である基板保持面14に基板Wの下面を吸引して保持するように構成されている。保持板11は、平面視において、吸引ヘッド12よりも大きく、保持対象の基板Wよりも小さい。この実施形態では、保持板11は、さらに、平面視において、スピンベース21よりも小さい。より詳細には、吸引ヘッド12の上面である基板保持面14に基板Wを保持した状態で、基板Wの周縁よりも内側に保持板11の全体が位置する。
【0070】
保持板11の下面に、中空の回転軸である内回転軸15が結合され、鉛直方向に沿って下方に延びている。内回転軸15の外周面は、ボールスプライン等のスライド軸受16によって保持されている。スライド軸受16は、内回転軸15の上下動を案内する一方、内回転軸15とともに回転軸線Aまわりに回転するように構成されている。すなわち、内回転軸15は、スライド軸受16に対して上下動可能である一方、スライド軸受16に対する周方向回転は不能であり、スライド軸受16が回転軸線Aまわりに回転することによって、スライド軸受16とともに回転する。
【0071】
スライド軸受16には、電動モータ61の回転力が、モータプーリー62、ベルト63およびプーリー64によって伝達される。電動モータ61は、筐体2の保持部3に保持されている。電動モータ61、ベルト63およびプーリー64などにより、吸引チャック10を回転軸線Aまわりに回転させる回転駆動ユニット60が構成されている。
【0072】
スライド軸受16は、その外周面に配置された内軸受17を介して、メカニカルチャック20の回転軸である外回転軸22の内周面に支持されている。すなわち、スライド軸受16と外回転軸22の内周面との間に内軸受17が配置されている。それにより、スライド軸受16はメカニカルチャック20に対して回転軸線Aまわりの相対回転が可能であり、それに応じて、吸引チャック10は、メカニカルチャック20に対して回転軸線Aまわりの相対回転が可能である。
【0073】
吸引チャック10の回転軸である内回転軸15は、上下動ユニット70に結合されている。上下動ユニット70は、内回転軸15の下端を支持する支持ブラケット71と、支持ブラケット71を上下動させる昇降機構であるボールねじ機構72とを含む。支持ブラケット71は、下軸受76を介して内回転軸15を回転可能に支持している。ボールねじ機構72は、支持ブラケット71に結合されたボールナット73と、ボールナット73に螺合して鉛直方向に延びたねじ軸74と、ねじ軸74を回転させる駆動ユニット75とを含む。駆動ユニット75は、典型的には、電動モータと、電動モータの回転力をねじ軸74に伝達する動力伝達機構とを含む。ねじ軸74の上端は、筐体2の保持部3に回転可能に支持されており、ねじ軸74の下端は、チャンバ1の底部1Bに固定された固定台4に回転可能に支持されている。
【0074】
駆動ユニット75に備えられる電動モータは、ステッピングモータやパルスモータのような位置制御の可能な電動モータである。電動モータの位置制御によって、吸引チャック10の高さを制御することができる。駆動ユニット75(より具体的にはその電動モータ)は、制御装置120(
図1参照)によって制御される。
【0075】
支持ブラケット71には、内回転軸15の内周面と整合する開口71aが形成されている。この開口71aを通り、かつ内回転軸15を挿通するように、下面ノズル6が配置されている。下面ノズル6は、チャンバ1の底部1Bに固定されている。下面ノズル6には、第2処理流体供給機構85の第2配管86が接続されている。
【0076】
支持ブラケット71の下面と、チャンバ1の底面との間には、ベローズ78が配置されている。ベローズ78は、下面ノズル6を取り囲むように配置されており、支持ブラケット71の上下動に追従して伸縮し、その内方の空間の気密性を確保する。
【0077】
下面ノズル6と内回転軸15の内周面との間の空間は、気体流路18を提供している。気体流路18は、下面ノズル6とベローズ78の内面との間の空間に連通している。気体流路18の上端は、吸引ヘッド12の中央部において開口し、吸引口13を形成している。気体流路18の下端は、チャンバ1の底部1Bを貫通する連通管101に連通している。連通管101には、気体配管102が結合されている。気体配管102には、吸引機構105と、ガス供給機構110とが接続されている。
【0078】
吸引機構105は、コンプレッサ等を含む吸引部106と、吸引部106と気体配管102とを接続する吸引配管107と、吸引配管107に介装された吸引バルブ108とを含む。吸引バルブ108を開くことによって、気体流路18内の気体が吸引されて気体流路18内が負圧となるので、吸引ヘッド12上に基板Wを吸着(真空吸着)して保持できる。
【0079】
ガス供給機構110は、ガス供給源から供給されるガスを、ガス供給配管111を介して気体配管102に供給する。ガス供給配管111には、ガス供給バルブ112が介装されている。供給されるガスは、不活性ガス(窒素ガス等)または空気であってもよい。ガス供給バルブ112を開くことによって、気体流路18に気体を供給できる。それにより、吸引ヘッド12における基板Wの吸着を解除したり、基板Wの下面に向けて不活性ガス等を供給したり、不活性ガス等の供給によって基板保持面14上に基板Wを浮上させたりすることができる。
【0080】
支持ブラケット71には、下軸受76の下方において、内回転軸15の下端に接するシール部材77が配置されている。内回転軸15が回転するとき、シール部材77は内回転軸15に摺接し、それらの間の気密性を保持する。
【0081】
スピンベース21および保持板11の相対回転を規制するために、回転規制リンク27が設けられている。回転規制リンク27は、上下動ユニット70による上下動によって保持板11をスピンベース21に接近させることによって係合する凹凸結合により、スピンベース21および保持板11の相対回転を規制する。この実施形態では、保持板11には、下方に突出する連結ピンPが備えられており、スピンベース21には、連結ピンPと凹凸結合する連結凹部R1,R2が設けられており、これらが回転規制リンク27を構成している。
【0082】
吸引チャック10がメカニカルチャック20に対する適切な相対回転位置に配置されているときに、保持板11が下降してスピンベース21に接近すると、連結ピンPが連結凹部R1またはR2に係合する。これにより、保持板11とスピンベース21との相対回転が規制される。そのため、回転駆動ユニット60によって吸引チャック10を回転軸線Aまわりに回転させると、その回転がスピンベース21に伝達され、メカニカルチャック20が吸引チャック10とともに回転軸線Aまわりに回転する。
【0083】
保持板11を上昇させてスピンベース21から離間させると、連結ピンPが連結凹部R1,R2から離脱し、保持板11とスピンベース21とが相対回転可能になる。したがって、回転駆動ユニット60によって吸引チャック10を回転軸線Aまわりに回転させても、その回転はメカニカルチャック20には伝達されない。
【0084】
保持板11には、第1強磁性体片としての第1磁石片M1(永久磁石片)が設けられている。この実施形態では、周方向に間隔を空けて複数個の第1磁石片M1が設けられている。また、スピンベース21には、第2強磁性体片としての第2磁石片M2(永久磁石片)が設けられている。この実施形態では、周方向に間隔を空けて複数個の第2磁石片M2が設けられている。さらに、スピンベース21には、第2強磁性体片または第3強磁性体片としての第3磁石片M3(永久磁石片)が設けられている。この実施形態では、周方向に間隔を空けて複数個の第3磁石片M3が設けられている。
【0085】
複数の第1磁石片M1、複数の第2磁石片M2および複数の第3磁石片M3は、回転軸線Aから見て等しい角度間隔でそれぞれ配置されている。第1磁石片M1は、保持板11に対する位置が実質的に固定されている。第2磁石片M2および第3磁石片M3は、スピンベース21に対して所定の作動範囲で移動可能であるように、スピンベース21に取り付けられている。この実施形態では、第1磁石片M1、第2磁石片M2および第3磁石片M3の個数は、同数であり、具体的には3個である。むろん、この個数は、一例に過ぎない。
【0086】
平面視において第1磁石片M1および第2磁石片M2の周方向位置が整合しているとき、吸引チャック10を上下動させて第1磁石片M1および第2磁石片M2の間の距離を変動させると、その距離に応じて生じる磁力により、第2磁石片M2が移動する(
図2A参照)。このとき、第1磁石片M1と第3磁石片M3との間に作用する磁力は実質的に無視できる程度であり、第3磁石片M3の位置は実質的に変動しない。
【0087】
同様に、平面視において第1磁石片M1および第3磁石片M3の周方向位置が整合しているとき、吸引チャック10を上下動させて第1磁石片M1および第3磁石片M3の間の距離を変動させると、その距離に応じて生じる磁力により、第3磁石片M3が移動する(
図2C参照)。このとき、第1磁石片M1と第2磁石片M2との間に作用する磁力は実質的に無視できる程度であり、第2磁石片M2の位置は実質的に変動しない。したがって、吸引チャック10とメカニカルチャック20との相対回転位置を適切に選択することにより、吸引チャック10の上下動によって、第2磁石片M2および第3磁石片M3のうちの一方を選択的に移動させることができる。
【0088】
スピンベース21には、第2磁石片M2の移動をセンタリングピンCPに伝達するセンタリングピン駆動機構30が備えられている。センタリングピン駆動機構30は、この実施形態では、複数のセンタリングピンCPの動作を同期させるためのリンク機構を含む。同様に、スピンベース21には、第3磁石片M3の移動を保持ピンHPに伝達する保持ピン駆動機構40が備えられている。
【0089】
保持ピン駆動機構40は、この実施形態では、保持ピンHPの下端に結合され、回転軸線Aに対して放射方向(回転半径方向)にスライド可能にスピンベース21に保持されたスライダ41と、スライダ41を回転軸線Aから離れる開方向に付勢するばね42とを含む。第3磁石片M3は、スライダ41に固定されている。
【0090】
吸引ヘッド12を下降すると、第1磁石片M1が第3磁石片M3よりも回転軸線Aに近い位置に配置され(
図2C参照)、それらの間の吸引磁力によって、スライダ41がばね42の力に抗して回転軸線Aに近づくように移動する。それにより、保持ピンHPが回転軸線Aに近づくように移動し、基板Wの周端面に当接し、基板Wの周縁部を保持する閉状態となる。吸引ヘッド12が上昇すると第1磁石片M1および第3磁石片M3の間の磁力が弱まるので、ばね42の力によって、スライダ41が回転軸線Aから離れる方向に移動し、保持ピンHPが開状態となって、基板Wの周縁部の保持が解除される。
【0091】
保持ピンHPは、スピンベース21からほぼ鉛直方向に立設された軸部55と、軸部55の頭部に配置された当接部56とを含む。当接部56は、側面視において、回転軸線Aに向かってV字形に開いた保持溝57を備えている。保持溝57は、基板Wの周縁部を受け容れて保持するように構成されている。基板Wの周端面は、典型的には、回転軸線Aを含む鉛直な切断面において外側に膨出する円弧形状をなす凸湾曲面を形成している。保持溝57は、このような周端面に対して上方および下方からそれぞれ接する2つの斜面を有している。
【0092】
図3Aおよび
図4Aは、センタリングピン駆動機構30の構成例を説明するための図解的な断面図であり、2本のセンタリングピンCPおよび回転軸線Aを通る切断面での構成を示す。
図3AはセンタリングピンCPが開状態のときの構成を示し、
図4AはセンタリングピンCPが閉状態のときの構成を示す。
図3Bおよび
図4Bは、
図3Aおよび
図4Aの切断面線Bからみた図解的な断面をそれぞれ示す。また、
図3Cおよび
図4Cは、
図3Aおよび
図4Aの矢印Cに沿って平面視したときのセンタリングピンCPの近傍の構成をスピンベース21等の図示を省略した状態で示す。
【0093】
センタリングピンCPは、鉛直方向に沿って立設された軸部51と、軸部51の上端に固定された当接部52とを含む。軸部51は、その軸線まわりに回動可能にスピンベース21に取り付けられている。具体的には、軸部51の下端部が軸受54を介してスピンベース21に結合されている。当接部52は、軸部51の軸線、すなわち回動軸線53から偏心した位置で軸部51の上端に取り付けられている。したがって、軸部51が回動軸線53まわりに回動されると、当接部52は、回転軸線Aに接近/離反する方向に移動する。
【0094】
当接部52は、この実施形態では、軸部51よりも細い直線状の軸形状を有し、鉛直方向に沿って軸部51の上端に立設されている。当接部52は、より具体的には、その軸形状に沿って延びる円筒面からなる外周面を備え、その外周面が基板Wの周端面に実質的に点接触(たとえば1点で点接触)によって当接するように構成されている。
【0095】
センタリングピン駆動機構30は、センタリングピンCPの軸部51に結合され、回動軸線53と直交する放射方向に張り出したレバー31と、レバー31の先端部に設けられたカムフォロワ32と、カムフォロワ32と係合したカムガイド33と、カムガイド33を上下方向に案内する上下方向ガイド34とを含む。これらは、複数のセンタリングピンCPを同期して作動させるリンク機構を構成している。カムガイド33に第2磁石片M2が固定されている。
【0096】
カムガイド33は、上下方向に対して、回転軸線Aまわりの周方向に傾斜したカム面を有するカム穴33aを有し、このカム穴33aにカムフォロワ32が係合している。カムガイド33は、回転軸線Aを取り囲む環状に構成されており、複数のセンタリングピンCPに対応した複数のカム穴33aを有している。複数のカム穴33aに、複数のセンタリングピンCPに結合されたレバー31の先端の複数のカムフォロワ32がそれぞれ係合している。
【0097】
図3A、
図3Bおよび
図3Cに示す状態から、
図4A、
図4Bおよび
図4Cに示すように、吸引チャック10を下降させて第1磁石片M1を第2磁石片M2に近づけると、それらの間の吸引磁力によって、第2磁石片M2が持ち上げられる。それに応じて、カムガイド33がそれに働く重力に抗して上昇する。すると、カムフォロワ32はカム面に案内されて周方向に移動し、それに応じてレバー31が回動する。それによって、センタリングピンCPの軸部51がレバー31とともに回動軸線53まわりに回動する。センタリングピンCPの当接部52は回動軸線53に対して偏心しているので、センタリングピンCPの回動によって、回転軸線Aとの間の距離が変動する。
【0098】
具体的には、第2磁石片M2が持ち上げられることによって、当接部52は、回転軸線Aに近づき、基板Wの周端面に当接可能な閉状態となる(
図4A、
図4Bおよび
図4C参照)。一方、吸引チャック10を上昇させて第1磁石片M1を第2磁石片M2から遠ざけると、それらの間の磁気吸引力が弱まり、それに応じて、カムガイド33は重力によって下降する。これにより、レバー31が周方向に回動するので、センタリングピンCPが回動し、その当接部52は回転軸線Aから遠ざかり、基板Wの周端面から離間した開状態となる(
図3A、
図3Bおよび
図3C参照)。
【0099】
リンク機構からなるセンタリングピン駆動機構30の働きにより、吸引チャック10の上下動によって、複数のセンタリングピンCPが同期して開閉動作する。そのため、吸引チャック10を下降させると、複数のセンタリングピンCPの当接部52が一斉に回転軸線Aに向かって移動するので、吸引チャック10を非吸引状態としておけば、吸引チャック10上で基板Wを水平方向にスライドさせながら、基板Wの中心を回転軸線A上に正確にセンタリングできる。
【0100】
図5は、吸引チャック10の保持板11における第1磁石片M1の配置例を説明するための平面図である。吸引ヘッド12は、平面視において、回転軸線Aを中心とした円形の基板保持面14(基板吸引面)を有している。保持板11は、平面視において、回転軸線Aを中心とした円形の上面を有している。その径は、吸引ヘッド12の径よりも大きく保持対象の基板Wの径よりも小さい。保持板11の周縁部には、周方向に間隔を空けて、複数個(この実施形態では3個)の第1磁石片M1が配置されている。複数の第1磁石片M1は、この実施形態では、周方向に沿って等間隔に配置されており、回転軸線Aを中心として等角度間隔で配置されている。連結ピンPは、この実施形態では、いずれの第1磁石片M1とも周方向に異なる位置に配置されている。
【0101】
図6は、メカニカルチャック20の保持ピンHP、センタリングピンCP、第2磁石片M2および第3磁石片M3の配置を説明するための平面図である。メカニカルチャック20のスピンベース21は、回転軸線Aを中心とした円形であり、中央には、吸引チャック10に結合された内回転軸15を挿通させる開口21aが形成されている。スピンベース21の外径は、保持板11よりも大きい。さらにこの実施形態では、スピンベース21は、保持対象の基板Wの径よりも大きな外径を有している。
【0102】
スピンベース21の周縁部には、周方向に沿って間隔を空けて、複数本(この実施形態では3本)の保持ピンHPが配置されている。複数本の保持ピンHPは、この実施形態では、周方向に沿って等間隔に配置されており、回転軸線Aを中心として等角度間隔で配置されている。スピンベース21の周縁部には、さらに、周方向に沿って間隔を空けて、複数本(この実施形態では、3本)のセンタリングピンCPが配置されている。複数本のセンタリングピンCPは、この実施形態では、周方向に沿って等間隔に配置されており、回転軸線Aを中心として等角度間隔で配置されている。
【0103】
この実施形態では、保持ピンHPと同数のセンタリングピンCPが設けられており、保持ピンHPとセンタリングピンCPとが周方向に沿って間隔を空けて交互に配置されている。保持ピンHPおよびセンタリングピンCPは、周方向に沿って等間隔に配置されており、回転軸線Aを中心として等角度間隔で配置されている。すなわち、周方向に隣り合う一対の保持ピンHPの周方向に関する中間位置に一本のセンタリングピンCPが配置されている。
【0104】
複数のセンタリングピンCPにそれぞれ対応する複数の第2磁石片M2がスピンベース21に配置されている。この実施形態では、複数の第2磁石片M2の周方向の配置は、それぞれ対応するセンタリングピンCPと同じである。すなわち、互いに対応するセンタリングピンCPおよび第2磁石片M2は、回転軸線Aのまわりの角度位置が等しい。第2磁石片M2の回転軸線Aからの半径方向位置は、センタリングピンCPの半径方向位置とは異なっている。すなわち、第2磁石片M2は、センタリングピンCPよりも回転軸線Aに近い位置に配置されている。この第2磁石片M2の配置に対応するように、環状(この実施形態では円環状)のカムガイド33が配置されている。
【0105】
また、複数の保持ピンHPにそれぞれ対応する複数の第3磁石片M3がスピンベース21に配置されている。この実施形態では、前述のように、保持ピンHPに結合されたスライダ41に第3磁石片M3が固定されている。したがって、複数の第3磁石片M3の周方向の配置は、それぞれ対応する保持ピンHPと同じである。すなわち、互いに対応する保持ピンHPおよび第3磁石片M3は、回転軸線Aのまわりの角度位置が等しい。第3磁石片M3の回転軸線Aからの半径方向位置は、保持ピンHPの半径方向位置とは異なっている。すなわち、第3磁石片M3は、保持ピンHPよりも回転軸線Aに近い位置に配置されている。
【0106】
第2磁石片M2および第3磁石片M3の周方向位置は異なっている。この実施形態では、第2磁石片M2と同数の第3磁石片M3が設けられており、第2磁石片M2と第3磁石片M3とが周方向に沿って間隔を空けて交互に配置されている。第2磁石片M2および第3磁石片M3は、回転軸線Aを中心として等角度間隔で配置されている。すなわち、周方向に隣り合う一対の第2磁石片M2の周方向に関する中間位置に一つの第3磁石片M3が配置されている。
【0107】
第2磁石片M2および第3磁石片M3の回転半径方向位置は、等しくてもよいし、異なっていてもよい。具体的には、カムガイド33およびスライダ41の作動が互いに干渉せず、かつ、第1磁石片M1との間で適切な磁力が得られるように、第2磁石片M2および第3磁石片M3の回転半径方向位置を定めればよい。
【0108】
スピンベース21には、保持板11の連結ピンPと係合する連結凹部R1,R2(連結穴)が設けられている。連結凹部R1,R2は、連結ピンPと整合する回転半径方向位置に配置されている。この実施形態では、2つの連結凹部R1,R2が周方向に間隔を空けて配置されている。回転軸線Aから見た2つの連結凹部R1,R2の角度間隔は、周方向に隣り合う第2磁石片M2および第3磁石片M3の回転軸線Aから見た角度間隔に等しい。
【0109】
吸引チャック10およびメカニカルチャック20の相対回転位置を調整して、連結ピンPといずれかの連結凹部R1,R2とが平面視において重なり合う配置とすることにより、吸引チャック10を下降させたときに、連結ピンPおよび連結凹部R1,R2を係合させ、回転規制リンク27を係合状態(相対回転規制状態)とすることができる。
【0110】
メカニカルチャック20を既定角度位置(既定回転位置)で停止させるために、チャック停止機構28が備えられている。チャック停止機構28は、たとえば、スピンベース21に固定された回転磁石片28aと、その磁石片を吸引する固定磁石片28bとを含む。回転磁石片28aは、スピンベース21とともに回転し、固定磁石片28bは、非回転状態でチャンバ1内に配置される。回転規制リンク27が係合解除状態であり、メカニカルチャック20が回転軸線Aまわりに自由回転できるときには、回転磁石片28aおよび固定磁石片28bの間の磁気吸引力によって、メカニカルチャック20は既定角度位置へと導かれる。
【0111】
回転駆動ユニット60の電動モータ61(
図2B等参照)は、たとえばパルスモータのように、位置制御の可能な電動モータである。したがって、電動モータ61の位置制御によって、吸引チャック10の回転軸線Aまわりの回転角を制御できる。回転規制リンク27が解除状態のときには、メカニカルチャック20は既定角度位置で停止しているので、吸引チャック10の回転角を制御することによって、メカニカルチャック20に対する吸引チャック10の相対回転位置(相対角度位置)を制御することができる。
【0112】
より具体的には、吸引チャック10の回転を停止させるとき、制御装置120(
図1参照)は、電動モータ61の位置制御を行う。それにより、制御装置120は、メカニカルチャック20に対する吸引チャック10の相対回転位置を第1相対回転位置および第2相対回転位置のいずれかに制御して、吸引チャック10の回転を停止させる。
【0113】
第1相対回転位置は、第1磁石片M1と第2磁石片M2との回転軸線Aまわりの角度位置が整合する位置であり、連結ピンPと第1連結凹部R1とが平面視において整合する位置である。第2相対回転位置は、第1磁石片M1と第3磁石片M3との回転軸線Aまわりの角度位置が整合する位置であり、連結ピンPと第2連結凹部R2とが平面視において整合する位置である。
【0114】
図7Aは、連結ピンPを2つの連結凹部のうちの一方である第1連結凹部R1に係合させた状態の平面図である。このとき、吸引チャック10は、メカニカルチャック20に対して第1相対回転位置にある。すなわち、保持板11に固定された第1磁石片M1と第2磁石片M2(センタリングピンCP)との周方向位置が整合し、第3磁石片M3は、隣り合う一対の第1磁石片M1の中間の周方向位置に配置される。したがって、第1磁石片M1と第2磁石片M2との間に働く磁力によって、第2磁石片M2が移動し、それに伴って、センタリングピンCPが作動する。すなわち、センタリングピンCPの当接部52が、回転軸線Aに近づくように移動して閉状態となる(
図2A、
図4A、
図4Bおよび
図4C参照)。それにより、吸引チャック10上で基板Wをセンタリングすることができる。第1磁石片M1と第3磁石片M3との距離は充分に離れているので、第3磁石片M3は実質的に移動しない。したがって、保持ピンHPは開状態に保たれる。
【0115】
図7Bは、連結ピンPを2つの連結凹部のうちの他方である第2連結凹部R2に係合させた状態の平面図である。このとき、吸引チャック10は、メカニカルチャック20に対して第2相対回転位置にある。すなわち、保持板11に固定された第1磁石片M1と第3磁石片M3(保持ピンHP)との周方向位置が整合し、第2磁石片M2は、隣り合う一対の第1磁石片M1の中間の周方向位置に配置される。したがって、第1磁石片M1と第3磁石片M3との間に働く磁力によって、第3磁石片M3が移動し、それに伴って、保持ピンHPが作動する。すなわち、保持ピンHPの当接部56が、回転軸線Aに近づくように移動して閉状態となる(
図2C参照)。それにより、基板Wの縁部を保持ピンHPで保持して、メカニカルチャック20によって基板Wを保持することができる。第1磁石片M1と第2磁石片M2との距離は充分に離れているので、第2磁石片M2は実質的に移動しない。したがって、センタリングピンCPは開状態に保たれる。
【0116】
図8は、基板処理ユニット100による基板処理の一例を説明するためのフローチャートである。この処理は、制御装置120が基板処理ユニット100の各部を制御することによって実行される。
【0117】
制御装置120は、吸引チャック10の回転位置を制御することにより、吸引チャック10のメカニカルチャック20に対する相対回転位置を前述の第1相対回転位置(
図7A参照)に制御する(ステップS1)。吸引チャック10がすでに第1相対回転位置に配置されていれば、この処理は省かれてもよい。
【0118】
未処理の基板Wは、基板搬送ロボット(図示せず)によって、基板処理ユニット100に搬入されて、吸引チャック10の基板保持面14に載置される(ステップS2)。このとき、吸引チャック10は、基板保持面14がガード94の上端よりも上に位置する基板受け渡し位置に配置されている。基板搬送ロボットのハンドは、チャンバ1内に進入し、吸引チャック10の基板保持面14に基板Wを載置した後に、チャンバ1外に退避する。
【0119】
上下動ユニット70は、吸引チャック10をセンタリング高さ(
図2A参照)まで下降させる。センタリング高さとは、第1磁石片M1および第2磁石片M2の間に働く磁力によって第2磁石片M2が移動し、それによって、センタリングピンCPが開状態から閉状態に切り換わる高さである。このとき、吸引ヘッド12は基板Wを吸着していない。より具体的には、制御装置120は、吸引配管107に介装された吸引バルブ108を閉状態に保持している。制御装置120は、このとき、ガス供給配管111に介装されたガス供給バルブ112を開状態として、吸引口13に窒素ガス等を供給していてもよい。より具体的には、吸引口13をから吹き出される窒素ガス等によって、基板Wが基板保持面14上で浮上した状態となってもよい。したがって、基板Wの周端面がセンタリングピンCPによって回転軸線Aに向かって複数の方向(この実施形態では3方向)から押されると、基板保持面14上で基板Wが水平移動し、基板Wの中心が回転軸線Aと一致する。こうして、基板Wのセンタリングが達成される(ステップS3)。
【0120】
次に、制御装置120は、ガス供給バルブ112を閉状態とし、吸引バルブ108を開状態とする。それによって、吸引ヘッド12は基板保持面14に基板Wを吸引して保持する(ステップS4)。その状態で、上下動ユニット70は、吸引チャック10をベベル処理高さ(
図2B参照)まで上昇させる(ステップS5)。ベベル処理高さでは、回転規制リンク27の係合が解かれており、吸引チャック10の回転がメカニカルチャック20に伝達されない。また、吸引チャック10がベベル処理高さまで上昇することにより、第1磁石片M1と第2磁石片M2との距離が大きくなり、それにより、それらの間に働く磁力が小さくなる。それにより、カムガイド33が自重で下降するので、センタリングピンCPは開状態へと遷移する。
【0121】
そして、制御装置120は、回転駆動ユニット60によって吸引チャック10を回転軸線Aまわりに回転させる。それによって、センタリングされて吸引チャック10に保持されている基板Wが回転軸線Aまわりに回転される(ステップS6)。この状態でベベル処理が実行される(ステップS7。周縁処理工程、周縁処理手段)。ベベル処理では、回転中の基板Wの表面の周縁部に向けて、上面ノズル5から第1処理流体FL1が供給され、それによって、基板Wの周縁部が処理される(
図1参照)。基板Wがセンタリングされていることにより、処理幅を精密に制御することができる。たとえば、上面ノズル5から薬液(たとえばエッチング液)が供給されて薬液処理が行われ、その後に、上面ノズル5からリンス液が供給されてリンス処理が行われる。リンス処理の後に、リンス液を吐出することなく基板Wを回転させて基板W上の液成分を振り切るスピンドライが行われてもよい。
【0122】
ベベル処理が終了すると、制御装置120は、回転駆動ユニット60を制御して吸引チャック10の回転を停止する。このとき、制御装置120は、吸引チャック10の回転位置を制御し、連結ピンPが第2連結凹部R2の直上に位置する回転位置(基板保持回転位置)で吸引チャック10の回転を停止させる(ステップS8)。すなわち、吸引チャック10のメカニカルチャック20に対する相対回転位置は、前述の第2相対回転位置(
図7B参照)となる。その後、上下動ユニット70は、吸引チャック10を基板保持高さ(
図2Cの吸引チャック10の位置よりもやや高い高さ)まで下降させる(ステップS9)。それにより、連結ピンPが第2連結凹部R2に結合する。
【0123】
基板保持高さは、連結ピンPが第2連結凹部R2に連結して回転規制リンク27が係合状態となり、かつ第1磁石片M1および第3磁石片M3の間に働く磁力によって第3磁石片M3が移動し、保持ピンHPを閉状態へと作動させることができる高さである。よって、保持ピンHPが基板Wの周端面に向かって移動して当接する。複数の保持ピンHPが回転軸線Aに向かって複数の方向(この実施形態では3方向)から基板Wの周端面に向かって移動して当接し、基板Wの周縁部を保持する。これにより、基板Wは、メカニカルチャック20によって保持される。この保持の前後に、制御装置120は、吸引バルブ108を閉じて吸引ヘッド12による基板Wの吸引を解除する(ステップS10)。それにより、吸引チャック10からメカニカルチャック20へと基板Wが渡される。吸引チャック10は、さらに、吸引ヘッド12の基板保持面14が基板Wの下面から下方に離間した位置(下面処理高さ、
図2C参照)となるように、制御装置120によって、その高さが制御される(ステップS11)。
【0124】
次いで回転駆動ユニット60は、吸引チャック10を回転軸線Aまわりに回転させる。この回転が回転規制リンク27によってメカニカルチャック20に伝達されるので、メカニカルチャック20が回転軸線Aまわりに回転し、それによって、基板Wが回転軸線Aまわりに回転される(ステップS12)。その状態で、下面処理が実行される(ステップS13。下面処理手段)。下面処理においては、下面ノズル6から基板Wの下面に向けて第2処理流体FL2が吐出され、それによって、基板Wの下面が処理される。たとえば、下面ノズル6から薬液を吐出して基板Wの下面の薬液処理が行われ、その後に、下面ノズル6からリンス液が吐出されて、基板Wの下面のリンス処理が行われる。この下面処理の際に、吸引ヘッド12の基板保持面14が薬液およびリンス液によって同時に洗浄される。その後、リンス液の吐出を停止して、基板Wの回転を加速し、基板W上の液を振り切るスピンドライが行われる(ステップS14)。
【0125】
その後、回転駆動ユニット60は、基板Wの回転を停止させる(ステップS15)。このとき、制御装置120は、吸引チャック10の回転停止位置を制御してもよい。具体的には、制御装置120は、吸引チャック10が前述の第1相対回転位置に対応する回転位置となるように、吸引チャック10の回転停止位置を制御してもよい。回転規制リンク27によってメカニカルチャック20も吸引チャック10もともに回転または停止するため、吸引チャック10の回転停止位置を制御することにより、メカニカルチャック20は、その既定角度位置へと導かれて停止する。これにより、次に基板Wが搬出されるときに、吸引チャック10の回転位置の制御(ステップS1)を省いても、吸引チャック10がセンタリング高さまで下降すると(ステップS3)、センタリングピンCPを作動させることができる。
【0126】
次いで、上下動ユニット70は、吸引チャック10を上昇させる(ステップS16)。吸引チャック10の上昇によって、第1磁石片M1および第3磁石片M3の間に働く磁力が弱まり、それによって、保持ピンHPが開状態に切り換わる。その状態で、吸引チャック10がさらに上昇することにより、基板Wは吸引チャック10によって持ち上げられ、メカニカルチャック20から吸引チャック10へと基板Wが渡される。吸引チャック10は、さらに基板受け渡し位置まで上昇する。その状態で、基板搬送ロボットのハンドがチャンバ1内に進入し、吸引チャック10から処理済みの基板Wをすくい取ってチャンバ1外へと搬出する(ステップS17)。
【0127】
以上のように、この実施形態によれば、吸引チャック10の保持板11に第1磁石片M1が固定されており、メカニカルチャック20のスピンベース21には、第2磁石片M2の移動によって作動するセンタリングピンCPが設けられている。吸引チャック10の上下動によって、第1磁石片M1を第2磁石片M2に近づけると、それらの間の磁力によって第2磁石片M2が移動し、それに伴って、センタリングピンCPが開状態から閉状態へと作動する。これにより、センタリングピンCPが基板Wの周端面に当接し、基板Wの中心を回転軸線Aに位置合わせする。このように、吸引チャック10を上下動する構成を利用してセンタリングピンCPを作動させることができるので、専用の駆動装置を必要としない。そのため、構造が簡単であり、それに応じて基板処理ユニット100のコストを低減できる。
【0128】
また、メカニカルチャック20のスピンベース21には、第3磁石片M3の移動によって作動する保持ピンHPが設けられている。吸引チャック10の上下動によって第1磁石片M1を第3磁石片M3に近づけると、それらの間の磁力によって第3磁石片M3が移動し、それに伴って、保持ピンHPが開状態から閉状態へと作動する。これにより、保持ピンHPが基板Wの周端面に当接し、基板Wの周縁部を保持する。このように、吸引チャック10を上下動する構成を利用して保持ピンHPを作動させることができるので、専用の駆動装置を必要としない。そのため、構造が簡単であり、それに応じて基板処理ユニット100のコストを低減できる。
【0129】
また、この実施形態では、吸引チャック10がスピンベース21に対して第1相対回転位置にある状態で吸引チャック10が前記スピンベース21に接近すると、第2磁石片M2が移動することにより、センタリングピンCPが基板Wの周端面に接近する。一方、吸引チャック10がスピンベース21に対して第1相対回転位置とは異なる第2相対回転位置にある状態で吸引チャック10がスピンベース21に接近すると、第3磁石片M3が移動することにより、保持ピンHPが作動して基板Wの周端面に接近する。したがって、吸引チャック10の上下動によって、センタリングピンCPおよび保持ピンHPを選択的に作動させることができる。
【0130】
第2磁石片M2および第3磁石片M3は、回転軸線Aまわりの周方向に間隔を空けて配置されている。そのため、第1相対回転位置では第1磁石片M1および第2磁石片M2の間において有効な磁力(第2磁石片M2を移動させ得る磁力)が生じ、第1磁石片M1および第3磁石片M3の間には有効な磁力(第3磁石片M3を移動させ得る磁力)が生じない。同様に、第2相対回転位置では、第1磁石片M1および第2磁石片M2の間には有効な磁力が生じず、第1磁石片M1および第3磁石片M3の間に有効な磁力が生じる。それにより、センタリングピンCPおよび保持ピンHPを選択的に作動させることができる。
【0131】
センタリングピンCPおよび保持ピンHPを個別に備えることにより、センタリングピンCPは、基板Wのセンタリングに適した構成を有することができ、保持ピンHPは、基板Wの保持に適した構成を有することができる。それにより、基板Wのセンタリングおよび基板Wの保持をいずれも精度よく行うことができる。
【0132】
また、この実施形態では、上下動ユニット70による吸引チャック10の上下動によって保持板11およびスピンベース21が接近することによって係合する凹凸結合によって保持板11およびスピンベース21の相対回転を規制する回転規制リンク27が備えられている。吸引チャック10の上下動によって、回転規制リンク27を係合/解除できる。回転規制リンク27の解除状態では、吸引チャック10のみに回転駆動ユニット60の回転力を伝達できる。回転規制リンク27の係合状態では、回転駆動ユニット60の回転力が吸引チャック10に伝達され、さらにスピンベース21にも伝達される。したがって、回転駆動ユニット60を吸引チャック10およびメカニカルチャック20の回転の共通の駆動源として利用できる。
【0133】
また、この実施形態では、吸引チャック10に基板Wが保持されているときに、当該基板Wの周縁部の処理(ベベル処理)が行われる。吸引チャック10は、基板Wを吸引して保持するので、基板Wの周縁部に当接することなく基板Wを保持できる。したがって、吸引チャック10で基板Wを保持しながらベベル処理を行うことにより、基板Wの周縁部を隈無く処理できる。
【0134】
また、この実施形態では、メカニカルチャック20の保持ピンHPに基板Wが保持されているときに、当該基板Wの下面の処理が行われる。保持ピンHPは、基板Wの周端面に当接して基板Wを保持するので、基板Wの下面の処理を阻害しない。したがって、基板Wの下面の良好な処理が可能である。
【0135】
また、この実施形態の基板処理ユニット100は、上方に向いた基板保持面14を有する吸引チャック10上に基板Wを載置する工程(ステップS2)と、基板保持面14上で基板Wをセンタリングする工程(ステップS3)と、そのセンタリング後に、吸引チャック10で基板Wを吸引保持する工程(ステップS4)と、吸引チャック10で基板Wを吸引保持した状態で、吸引チャック10を鉛直な回転軸線Aまわりに回転しながら、基板Wの周縁部を処理する周縁処理工程(ステップS6,S7)と、吸引チャック10による基板Wの吸引保持を解除し、当該吸引チャック10から、当該吸引チャック10の下方に配置されたメカニカルチャック20の保持ピンHPに基板Wを渡し、基板Wの下面が吸引チャック10の上方に離間した状態でメカニカルチャック20の保持ピンHPを基板Wの周端面に当接させて基板Wを保持する工程(ステップS9,S10,S11)と、基板Wを保持したメカニカルチャック20を回転軸線Aまわりに回転しながら、当該メカニカルチャック20に保持された基板Wの下面を処理する下面処理工程(ステップS12,S13)と、を含む、基板処理方法を実行する。
【0136】
この方法によれば、吸引チャック10の基板保持面14上で基板Wをセンタリングした後に、吸引チャック10で基板Wを吸引保持するので、基板Wは回転軸線Aに対してセンタリングされた状態で吸引チャック10に吸引される。その状態で吸引チャック10を回転軸線Aまわりに回転しながら基板Wの周縁部を処理することにより、基板Wの周縁部を正確に処理できる。より具体的には、基板周縁部の処理幅を精密に制御できる。吸引チャック10は、基板Wの周縁部に接することなく基板Wを保持できるので、基板Wの周縁部を隈無く処理できる。一方、基板Wの周縁部の処理の後には、吸引チャック10の吸引保持が解除され、吸引チャック10の下方に配置されたメカニカルチャック20に基板Wが渡される。メカニカルチャック20は、基板Wの下面が吸引チャック10の上方に離間した状態で、保持ピンHPを基板Wの周端面に当接させて当該基板Wを保持する。そして、メカニカルチャック20を回転軸線Aまわりに回転させながら、基板Wの下面の処理が行われる。メカニカルチャック20は、基板Wの下面に接することなく基板Wを保持できるので、基板Wの下面の処理を阻害しない。こうして、回転軸線Aを共有する吸引チャック10からメカニカルチャック20へと基板Wを引き渡すことによって、基板Wの周縁部の処理(ベベル処理)と、基板Wの下面の処理とを連続的に(より具体的には、同一チャンバ1内で)実行することができる。それにより、基板処理の生産性を向上することができる。
【0137】
図9は、この発明の第2の実施形態に係る基板処理ユニット100の構成例を説明するための断面図である。この実施形態では、センタリングピン駆動機構30は、保持ピン駆動機構40と同様なスライド型の駆動機構を備えている。すなわち、センタリングピン駆動機構30は、センタリングピンCPの下端に結合され、回転軸線Aに対して放射方向(回転半径方向)にスライド可能にスピンベース21に保持されたスライダ35と、スライダ35を回転軸線Aから離れる開方向に付勢するばね36とを含む。第2磁石片M2は、スライダ35に固定されている。吸引ヘッド12を下降させると、第1磁石片M1が第2磁石片M2よりも回転軸線Aに近い位置に配置され、それらの間の吸引磁力によって、スライダ35がばね36の力に抗して回転軸線Aに近づくように移動する。それにより、センタリングピンCPが回転軸線Aに近づくように移動し、基板Wの周端面に当接する閉状態となる。吸引ヘッド12が上昇すると第1磁石片M1および第2磁石片M2の間の磁力が弱まるので、ばね36の力によって、スライダ35が回転軸線Aから離れる方向に移動し、センタリングピンCPが開状態となって、基板Wの周縁面から離間する。
【0138】
このほかの構成は、第1の実施形態と実質的に同様である。
【0139】
図10は、この発明の第3の実施形態に係る基板処理ユニット100の構成例を説明するための断面図である。この実施形態では、保持ピン駆動機構40は、第3磁石片M3を備えておらず、磁力を用いずに保持ピンHPを開閉するように構成されている。保持ピンHPの下端には、レバー43が結合されており、レバー43は周方向(接線方向)に延びた揺動軸43bまわりに揺動可能にスピンベース21に結合されている。レバー43の操作端43aは、吸引チャック10が下降することによって、保持板11の押圧部44によって下方に押されるように配置されている。レバー43の操作端43aが下方に押されることにより、レバー43が揺動して、保持ピンHPの先端部が回転軸線Aに向かって変位する。それにより、保持ピンHPが閉状態となり、保持ピンHPの頭部の保持溝57は基板Wの周縁部を保持する。吸引チャック10が上昇すると、レバー43の操作端43aの下方への押圧力が取り除かれる。それにより、保持ピンHPおよびレバー43は重力によって初期位置に戻り、それに応じて、保持ピンHPは開状態となる。保持ピンHPを開状態に付勢するばねを設けてもよい。
【0140】
その他の構成については、第1の実施形態または第2の実施形態と実質的に同様である。
【0141】
図11Aおよび
図11Bは、この発明の第4の実施形態を説明するための図であり、磁気反発力によって保持ピンHPを駆動する構成例を示す。保持ピンHPは、鉛直方向に沿う回動軸線47まわりに回動可能にスピンベース21に結合された軸部45と、軸部45の先端に回動軸線47に対して偏心して設けられた当接部46とを有している。したがって、軸部45が回動軸線47まわりに回動することにより、当接部46が基板Wの周端面に当接する閉状態(
図11B参照)と、当接部46が基板Wの周端面から退避した開状態(
図11A参照)とに切り換わる。軸部45には、第1レバー48と第2レバー49とが結合されている。第1レバー48には、軸部45を開方向に付勢するばね50の一端が結合されており、ばね50の他端はスピンベース21に結合されている。第2レバー49には、第3磁石片M3が固定されている。吸引チャック10をメカニカルチャック20に近づけると、第1磁石片M1と第3磁石片M3との間に働く反発磁力によって、軸部45がばね50の付勢力に抗して閉方向に回動する。それにより、当接部46を基板Wの周端面に向けて移動させて、保持ピンHPを閉状態(
図11B参照)とすることができる。
【0142】
この構成は、センタリングピンCPの駆動機構にも応用できる。
【0143】
以上、この発明の実施形態について説明してきたが、この発明は、さらに他の形態で実施することもできる。
【0144】
たとえば、前述の実施形態では、メカニカルチャック20は、センタリングピンCPおよび保持ピンHPを備え、センタリング機能および基板保持機能の両方を有している。しかし、保持ピンHPを省いて、センタリング機能のみを有する構成としてもよい。また、センタリングピンCPを省いて、基板保持機能のみを有する構成としてもよい。
【0145】
また、前述の実施形態では、第1磁石片M1および第2磁石片M2がいずれも永久磁石であるが、それらのうちの一方を永久磁石以外の強磁性体、すなわち、保持力または残留磁束密度の小さい強磁性体で構成してもよい。同様に、第1磁石片M1および第3磁石片M3のうちの一方を永久磁石以外の強磁性体、すなわち、保持力または残留磁束密度の小さい強磁性体で構成してもよい。
【0146】
また、前述の実施形態では、複数個の第1磁石片M1と、これに整合する個数および配置の複数の第2磁石片M2とを設けているが、これに限られない。たとえば、3本のセンタリングピンCPのうちの2本を固定ピンとし、1本を可動ピンとして、一つの第1磁石片M1と、これに整合する配置の一つの第2磁石片M2とを設けてもよい。また、3本のセンタリングピンCPのうちの1本を固定ピンとし、2本を可動ピンとして、二つの第1磁石片M1と、これに整合する配置の二つの第2磁石片M2とを設けてもよい。むろん、4本以上の可動センタリングピンCPを設けるときには、それに対応して、4個以上の第1磁石片M1と、これに整合する4以上の個数および配置の第2磁石片M2とを設けてもよい。
【0147】
保持ピンHPに関しても同様である。すなわち、前述の実施形態では、複数個の第1磁石片M1と、これに整合する個数および配置の複数の第3磁石片M3とを設けているが、これに限られない。たとえば、3本の保持ピンHPのうちの2本を固定ピンとし、1本を可動ピンとして、一つの第1磁石片M1と、これに整合する配置の一つの第3磁石片M3とを設けてもよい。また、3本の保持ピンHPのうちの1本を固定ピンとし、2本を可動ピンとして、二つの第1磁石片M1と、これに整合する配置の二つの第3磁石片M3とを設けてもよい。むろん、4本以上の可動保持ピンHPを設けるときには、それに対応して、4個以上の第1磁石片M1と、これに整合する4以上の個数および配置の第3磁石片M3とを設けてもよい。
【0148】
また、前述の実施形態では、吸引チャック10は、吸引ヘッド12に吸引口13を有するバキュームチャックの形態を有しているが、吸引チャック10は、基板保持面14に設けたノズルから圧縮気体を吹き出し、ベルヌーイ効果を利用して基板Wを吸引保持するベルヌーイチャックの形態を有していてもよい。
【0149】
また、前述の実施形態では、回転規制リンク27は、吸引チャック10の保持板11に設けた連結ピンPがメカニカルチャック20のスピンベース21に設けた連結凹部R1,R2に係合する構成であるが、連結ピンPをスピンベース21に設け、対応する連結凹部R1,R2を保持板11に設けてもよい。
【0150】
また、前述の実施形態では、回転規制リンク27は、第1相対回転位置および第2相対回転位置の両方で係合状態となっているが、たとえば、メカニカルチャック20を吸引チャック10とともに回転させる第2相対回転位置でのみ係合状態となるように構成されていてもよい。また、回転規制リンク27を、センタリングのための第1相対回転位置においてのみ係合状態となるように構成する一方で、メカニカルチャック20を回転駆動するための別の回転駆動装置を設けてもよい。
【0151】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0152】
5 :上面ノズル
6 :下面ノズル
10 :吸引チャック
11 :保持板
12 :吸引ヘッド
14 :基板保持面
15 :内回転軸
20 :メカニカルチャック
21 :スピンベース
22 :外回転軸
27 :回転規制リンク
28 :チャック停止機構
30 :センタリングピン駆動機構
40 :保持ピン駆動機構
57 :保持溝
60 :回転駆動ユニット
70 :上下動ユニット
80 :第1処理流体供給機構
85 :第2処理流体供給機構
90 :ノズル移動機構
100 :基板処理ユニット
105 :吸引機構
110 :ガス供給機構
120 :制御装置
A :回転軸線
CP :センタリングピン
HP :保持ピン
M1 :第1磁石片
M2 :第2磁石片
M3 :第3磁石片
P :連結ピン
R1 :第1連結凹部
R2 :第2連結凹部
W :基板