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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-20
(45)【発行日】2025-06-30
(54)【発明の名称】車両管理システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20250623BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20250623BHJP
   E21C 47/00 20060101ALI20250623BHJP
   B60T 7/16 20060101ALI20250623BHJP
【FI】
G08G1/00 X
G05D1/43
E21C47/00
B60T7/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022054836
(22)【出願日】2022-03-30
(65)【公開番号】P2023147378
(43)【公開日】2023-10-13
【審査請求日】2024-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】金井 政樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】岩永 東祐
【審査官】山田 嘉彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/090093(WO,A1)
【文献】特開平8-263138(JP,A)
【文献】特開2020-086779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G05D 1/00 - 1/87
E21C 25/00 - 51/00
B60T 7/12 - 8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬対象物を運搬する自律走行可能な少なくとも第1無人車両および第2無人車両を含む複数の無人車両と、前記複数の無人車両のそれぞれに対して前記運搬対象物を積み込む積込作業を行う積込機械と、前記積込機械と前記複数の無人車両とを管制制御する管制局とが相互に通信可能に無線接続された車両管理システムであって、
前記複数の無人車両の作業現場における位置を示す位置情報と向きを示す方位情報とを含む車体情報を取得し、前記複数の無人車両に対する走行許可に基づいて前記複数の無人車両の自律走行をそれぞれ制御するとともに、前記複数の無人車両が走行する走行経路を成す複数の走行区間のうち、前記複数の無人車両のそれぞれについて所定の走行区間における走行許可を要求する走行許可要求を出力する無人車両制御装置と、
前記積込機械によって前記運搬対象物を前記無人車両に積み込む積込作業を行う位置として前記走行経路に予め設定されている積込位置に停止している前記無人車両への積込作業が完了した旨を示す積込完了通知を前記積込機械のオペレータの入力操作に応じて出力する積込完了通知入力装置と、
前記作業現場に予め定められた作業計画および複数の走行経路の位置および制限速度の情報を含む地図情報に基づいて前記複数の無人車両が走行する走行経路を設定し、前記無人車両制御装置からの走行許可要求に基づいて、前記複数の無人車両に設定された走行経路の所定の走行区間の走行許可を出力する管制制御装置とを備え、
前記管制制御装置は、
前記積込位置を含む走行区間であって前記無人車両が同時に1台のみ進入可能な積込区間と、前記積込区間に隣接する走行区間であって前記積込区間に向かう無人車両が待機する待機区間とが設定され、
前記待機区間に停止している第1無人車両の前記待機区間における走行許可要求を受信した場合に、
前記第1無人車両が発進してから前記積込区間に進入する前に停止するために減速開始すべき減速開始位置に到達するまでの時間である減速開始位置到達時間を算出し、
前記積込区間に位置する前記第2無人車両に対する前記積込完了通知を受信して前記第2無人車両が発進してから前記積込区間の外に到達するまでの時間である積込区間解放位置到達時間を算出し、
前記減速開始位置到達時間と前記積込区間解放位置到達時間とに基づいて、前記第1無人車両が前記減速開始位置に到達するよりも予め定めた余裕時間だけ前に前記第2無人車両が前記積込区間の外に到達するような前記第1無人車両と前記第2無人車両の発進時差を算出し、
前記第2無人車両に対する前記積込完了通知の受信時刻と前記発進時差とに基づいて、前記第1無人車両の発進時刻を算出し、
前記発進時刻を過ぎてから前記第1無人車両に対する前記待機区間における走行許可を出力することを特徴とする車両管理システム。
【請求項2】
請求項1記載の車両管理システムにおいて、
前記複数の無人車両は、前記無人車両制御装置をそれぞれ有し、
前記積込機械は、前記積込完了通知入力装置を有し、
前記管制局は、前記管制制御装置を有することを特徴とする車両管理システム。
【請求項3】
請求項1記載の車両管理システムにおいて、
前記管制制御装置は、
前記積込機械の1回の積込動作で前記第2無人車両に積み込まれる前記運搬対象物の積込量と、前記第2無人車両の積載予定量とに基づいて、前記第2無人車両に対する積込作業が完了するまでに必要な積込動作回数を算出し、
前記発進時差が負である場合に、前記積込動作回数と積込動作の開始時刻とに基づいて、前記積込完了通知の受信時刻を推定し、
推定した前記積込完了通知の受信時刻と前記発進時差とに基づいて、前記第1無人車両の発進時刻を算出し、
前記発進時刻を過ぎてから前記第1無人車両に対する前記待機区間における走行許可を出力することを特徴とする車両管理システム。
【請求項4】
請求項3記載の車両管理システムにおいて、
前記管制制御装置は、予め学習した積込時刻と積込完了通知の受信時刻との時間差に基づいて、前記積込完了通知の受信時刻を推定することを特徴とする車両管理システム。
【請求項5】
請求項1記載の車両管理システムにおいて、
前記管制制御装置は、前記第1無人車両の前記積込区間への進入速度を設定することを特徴とする車両管理システム。
【請求項6】
請求項5記載の車両管理システムにおいて、
前記管制制御装置は、前記積込区間の距離に基づいて、前記第1無人車両の前記積込区間への前記進入速度を設定することを特徴とする車両管理システム。
【請求項7】
請求項5記載の車両管理システムにおいて、
前記管制制御装置は、前記積込区間の走行時間が最短となるように、前記第1無人車両の前記積込区間への前記進入速度を設定することを特徴とする車両管理システム。
【請求項8】
請求項1記載の車両管理システムにおいて、
前記管制制御装置は、
前記積込位置を含む走行区間であって前記無人車両が同時に1台のみ進入可能な積込区間と、前記積込区間に隣接する走行区間であって前記積込区間に向かう無人車両が待機する待機区間とが設定され、
前記待機区間に停止している第1無人車両の前記待機区間における走行許可要求を受信した場合に、
前記第1無人車両が発進してから前記積込区間に進入する前に停止するために減速開始すべき減速開始位置に到達するまでの時間である減速開始位置到達時間を算出し、
前記積込区間に位置する前記第2無人車両に対する前記積込完了通知を受信して前記第2無人車両が発進してから前記積込区間の外に到達するまでの時間である積込区間解放位置到達時間を算出し、
前記減速開始位置到達時間と前記積込区間解放位置到達時間とに基づいて、前記第1無人車両が前記減速開始位置に到達するよりも予め定めた余裕時間だけ前に前記第2無人車両が前記積込区間の外に到達するような前記第1無人車両と前記第2無人車両の発進時差を算出し、
前記発進時差の間に前記第2無人車両が到達する目標到達位置を算出し、
前記第2無人車両が前記目標到達位置に到達したときに前記第1無人車両に対する前記待機区間における走行許可を出力することを特徴とする車両管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
露天掘り鉱山等において、オペレータが搭乗することなく自律走行するダンプトラック(すなわち、無人車両)と、無線通信回線を介して無人車両と通信する管制局とを備える車両管理システムが用いられている。
【0003】
車両管理システムに関する技術としては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1には、積込場の入口点から積込機が存在する積込点まで車両が走行する車両の走行経路を生成し、生成された走行経路に沿って車両を走行させる車両の走行システムにおいて、積込点の位置情報と入口点の位置情報に基づき、入口点から積込点の近傍の待機点を経由して積込点に至る走行経路を生成する走行経路生成手段と、走行経路生成手段によって生成された走行経路の情報に基づき車両を走行経路に沿って、入口点から待機点まで走行させる第1の走行制御手段と、車両を待機点で積込機から許可を得るまで待機させる待機手段と、車両が待機点で待機中に、あるいは入口点から待機点までの間を走行中に、積込機から管制装置または/および車両に積込点の位置変更の指示があった場合に、当該位置変更後の積込点の位置情報と積込点が移動する前の前記走行経路上の待機点の位置情報に基づき、待機点から当該位置変更後の積込点までの部分走行経路を生成する部分走行経路生成手段と、車両が待機点で待機中に、および入口点から待機点までの間を走行中に、積込機から管制装置または/および車両に積込点の位置変更の指示がなかった場合には、走行経路生成手段によって生成された走行経路の情報に基づき車両を走行経路に沿って、待機点から積込点まで走行させるとともに、車両が待機点で待機中に、あるいは入口点から待機点までの間を走行中に、積込点の位置変更の指示があった場合には、部分走行経路生成手段によって生成された部分走行経路の情報に基づき車両を部分走行経路に沿って待機点から位置変更後の積込点まで走行させる第2の走行制御手段とを備えた車両の走行システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2011/090093号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術においては、無人車両の走行経路上に、車両が積込機から許可を得るまで待機すべき点としてスイッチバック点のような待機点を積込点の近くに設定し、無人車両をこの待機点まで、すなわち、積込機の近くまで極力停止させることなく走行させ続けることで、生産効率の向上を図っている。
【0006】
しかしながら、待機点は、無人車両同士の接触等が生じないように積込点から余裕をもった位置に設定する必要がある。特に、露天掘り鉱山等においては超大型の無人車両を稼働させることが多く、無人車両の加減速等の動作変更に要する移動距離を考慮するため、待機点は積込点からある程度離れた位置に設定される。また、上記従来技術のように無人車両の待機点からの発進タイミングを考慮しない場合には、積込点における無人車両の入れ換えに要する時間が長くなり、生産性が低下してしまう。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、積込位置における無人車両の入れ換えに要する時間を短縮することができ、生産性を向上することができる車両管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、運搬対象物を運搬する自律走行可能な少なくとも第1無人車両および第2無人車両を含む複数の無人車両と、前記複数の無人車両のそれぞれに対して前記運搬対象物を積み込む積込作業を行う積込機械と、前記積込機械と前記複数の無人車両とを管制制御する管制局とが相互に通信可能に無線接続された車両管理システムであって、前記複数の無人車両の作業現場における位置を示す位置情報と向きを示す方位情報とを含む車体情報を取得し、前記複数の無人車両に対する走行許可に基づいて前記複数の無人車両の自律走行をそれぞれ制御するとともに、前記複数の無人車両が走行する走行経路を成す複数の走行区間のうち、前記複数の無人車両のそれぞれについて所定の走行区間における走行許可を要求する走行許可要求を出力する無人車両制御装置と、前記積込機械によって前記運搬対象物を前記無人車両に積み込む積込作業を行う位置として前記走行経路に予め設定されている積込位置に停止している前記無人車両への積込作業が完了した旨を示す積込完了通知を前記積込機械のオペレータの入力操作に応じて出力する積込完了通知入力装置と、前記作業現場に予め定められた作業計画および複数の走行経路の位置および制限速度の情報を含む地図情報に基づいて前記複数の無人車両が走行する走行経路を設定し、前記無人車両制御装置からの走行許可要求に基づいて、前記複数の無人車両に設定された走行経路の所定の走行区間の走行許可を出力する管制制御装置とを備え、前記管制制御装置は、前記積込位置を含む走行区間であって前記無人車両が同時に1台のみ進入可能な積込区間と、前記積込区間に隣接する走行区間であって前記積込区間に向かう無人車両が待機する待機区間とが設定され、前記待機区間に停止している第1無人車両の前記待機区間における走行許可要求を受信した場合に、前記第1無人車両が発進してから前記積込区間に進入する前に停止するために減速開始すべき減速開始位置に到達するまでの時間である減速開始位置到達時間を算出し、前記積込区間に位置する前記第2無人車両に対する前記積込完了通知を受信して前記第2無人車両が発進してから前記積込区間の外に到達するまでの時間である積込区間解放位置到達時間を算出し、前記減速開始位置到達時間と前記積込区間解放位置到達時間とに基づいて、前記第1無人車両が前記減速開始位置に到達するよりも予め定めた余裕時間だけ前に前記第2無人車両が前記積込区間の外に到達するような前記第1無人車両と前記第2無人車両の発進時差を算出し、前記第2無人車両に対する前記積込完了通知の受信時刻と前記発進時差とに基づいて、前記第1無人車両の発進時刻を算出し、前記発進時刻を過ぎてから前記第1無人車両に対する前記待機区間における走行許可を出力するものとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、積込位置における無人車両の入れ換えに要する時間を短縮することができ、生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】車両管理システムの全体構成を示す図である。
図2】積込機械の一例として示す油圧ショベルの外観を示す図である。
図3】運転室内に設置された運転席の概観を示す図である。
図4】無人車両の一例として示すダンプトラックの外観を模式的に示す側面図である。
図5】車両管理システムを示す機能ブロック図である。
図6】配車管理情報のテーブルの一例を示す図である。
図7】管制情報記憶部に記憶された管制情報のテーブルの一例を示す図である。
図8】積込作業を行う作業エリアに設定される走行経路の一例を示す図である。
図9】管制制御装置における走行許可発進処理の処理内容を示すフローチャートである。
図10】積込区間開放時間推定処理の処理内容を示すフローチャートである。
図11】積込区間開放時間推定処理の処理原理を説明する図である。
図12】減速開始位置到達時間推定処理の処理内容を示すフローチャートである。
図13】減速開始位置到達時間推定処理の処理原理を説明する図である。
図14】発進時刻決定処理の処理内容を示すフローチャートである。
図15】発進時刻決定処理の処理原理を説明する図である。
図16】発進時刻決定処理の処理原理を説明する図である。
図17】発進時刻決定処理の処理原理を説明する図である。
図18】車両管理の様子を示す図である。
図19】無人車両の位置と速度の変化を示す図である。
図20】対比例として示す従来技術における車両管理の様子を示す図である。
図21】無人車両の位置と速度の変化を示す図である。
図22】第2の実施の形態の管制制御装置における走行許可発進処理の処理内容を示すフローチャートである。
図23】第2の実施の形態における最適走行速度の算出原理を説明する図である。
図24】第2の実施の形態の変形例における最適走行速度の算出原理を説明する図である。
図25】第3の実施の形態の管制制御装置における走行許可発進処理の処理内容を示すフローチャートである。
図26】第4の実施の形態における走行許可出力の処理原理について説明する図である。
図27】第4の実施の形態の車両管理の様子を示す図である。
図28】第5の実施の形態における走行経路の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、本実施の形態では、車両管理システムの管理対象となる運搬車両の一例としてダンプトラックを、積込機械の一例として油圧ショベルをそれぞれ示して説明するが、他の運搬車両や積込機械を管理対象とする車両管理システムにおいても本発明の適用が可能である。
【0012】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態を図1図21を参照しつつ説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態に係る車両管理システムの全体構成を示す図である。
【0014】
図1に示すように、車両管理システム100は、露天掘り鉱山等の作業現場に用いられるシステムであり、掘削作業及び積込作業を行う1台以上の積込機械10と、積込機械10から積み込まれた土砂等の運搬対象物を搬送する1台以上の無人車両20(無人車両20-1、無人車両20-2)と、無人車両20の配車管理及び交通管制を行う管制局30とを含む。積込機械10、無人車両20及び管制局30は、無線通信回線40によって互いに通信可能に構成されている。具体的には、露天掘り鉱山内等には複数の無線基地局41が設置されており、積込機械10、無人車両20及び管制局30は、これらの無線基地局41を介して互いに送受信を行っている。
【0015】
本実施の形態では、管制局30の交通管制方式として、搬送経路60を示す地図データ上でノードにより分割された搬送経路60の部分区間(走行区間)を、各無人車両20の位置に基づいて排他的に走行許可する制御方式(いわゆる走行許可区間制御方式)が用いられている。走行許可区間制御方式では、例えば自車の前方の走行区間の走行許可を要求した際に、走行許可を要求した前方の走行区間が他の無人車両に対して走行許可がなされている場合又は進入禁止として設定されている場合には、自車に当該前方の走行区間の走行許可はなされない。従って、自車は、現在許可されている区間内の例えば終端で停止し、前方の走行区間の走行許可がなされるまで待機する。
【0016】
図2は、積込機械の一例として示す油圧ショベルの外観を示す図である。なお、積込機械10は、油圧ショベルに限定されず、例えばホイールローダ等であっても良い。
【0017】
図2に示すように、油圧ショベル(積込機械)10は、垂直方向にそれぞれ回動するブーム191、アーム192、およびバケット193を連結して構成された多関節型のフロント装置10Aと、上部旋回体10Bと、下部走行体10Cとで構成されている。また、上部旋回体10Bの上部前方には、オペレータが搭乗する運転室197が配置されている。
【0018】
フロント装置10Aのブーム191の基端は上部旋回体10Bの前部に回動可能に支持されており、アーム192の一端はブーム191の基端とは異なる端部(先端)に回動可能に支持されており、アーム192の他端にはバケット193が回動可能に支持されている。ブーム191、アーム192、バケット193、上部旋回体10B、及び下部走行体10Cはそれぞれブームシリンダ194、アームシリンダ195、バケットシリンダ196、及び、図示しない旋回モータや左右の走行モータにより駆動される。以降、ブームシリンダ194、アームシリンダ195、バケットシリンダ196、旋回モータおよび左右の走行モータをまとめて車体駆動装置180(後の図5参照)と称することがある。
【0019】
図3は、運転室内に設置された運転席の概観を示す図である。
【0020】
図3に示すように、運転室197に設置された運転席172には、油圧アクチュエータ194~196等を操作するための操作信号を出力する操作レバー171(右操作レバー171-1、左操作レバー171-2)が設けられている。操作レバー171は前後左右に傾倒可能であり、操作信号であるレバーの傾倒量、すなわちレバー操作量を電気的に検知する図示しない検出装置を含み、検出装置が検出したレバー操作量を電気配線を介して出力する。つまり、操作レバー171の前後方向または左右方向に、油圧アクチュエータ194~196等の操作がそれぞれ割り当てられている。以降、右操作レバー171-1及び左操作レバー171-2を含む操作レバー171を車体操作入力装置171(後の図5参照)と称することがある。
【0021】
また、操作レバー171(例えば、右操作レバー171-1)の上部には、操作レバー171を把持している間、例えば右手親指によって常時素早い操作が可能なスイッチとして積込完了通知入力装置170が配置されている。
【0022】
積込完了通知入力装置170は、積込機械(油圧ショベル10)によって運搬対象物を無人車両20に積み込む積込作業を行う位置として走行経路に予め設定されている積込位置に停止している無人車両20への積込作業が完了した旨を示す積込完了通知を積込機械のオペレータの入力操作に応じて出力するものである。
【0023】
なお、積込完了通知入力装置170は、オペレータが容易に操作できるように、例えば運転席172に配置されたスイッチ等であればよく、必ずしも操作レバー171の上部に配置されるスイッチである必要はない。例えば、オペレータが積込等の通常操作を行いながら入力操作ができるものであれば、スイッチ以外のものであっても良く、操作レバー171の上部に配置されたものでなくても良い。
【0024】
図4は、無人車両(運搬車両)の一例として示すダンプトラックの外観を模式的に示す側面図である。なお、図4においては、従動輪、駆動輪、及び、走行モータ等は、左右一対の構成のうちの一方のみを図示して符号を付し、他方については図中に括弧書きで符号のみを示して図示を省略する。
【0025】
図4に示すように、無人車両であるダンプトラック20は、例えば、電気駆動ダンプトラックであり、前後方向に延在して支持構造体を形成する車体フレーム281と、車体フレーム281の上部に前後方向に延在するように配置され、その後端下部をピン結合部285aを介して車体フレーム281に傾動可能に設けられた荷台(ベッセル)285と、車体フレーム281の下方前側左右に設けられた一対の従動輪(前輪)282L,282Rと、車体の下方後側左右に設けられた一対の駆動輪(後輪)283L,283Rと、車体フレーム281の上方前側に設けられた運転室284と、車体フレーム281の下方に設けられた燃料タンク289と、車体フレーム281上に配置され、燃料タンク289から供給される燃料により駆動するエンジン(図示せず)と、エンジンに接続されて駆動される発電機から出力される電力を用いて車輪(駆動輪283L,283R)を駆動する走行モータ290L,290R等を有する電気駆動システムとから概略構成されている。走行モータ290L,290Rは、図示しない減速機とともに駆動輪283L,283Rの回転軸部に収められている。車体フレーム281と荷台285とはホイストシリンダ286により接続されており、ホイストシリンダ286の伸縮によって荷台285がピン結合部285aを中心に回動される。
【0026】
図5は、車両管理システムを示す機能ブロック図である。
【0027】
図5に示すように、車両管理システム100は、土砂等の運搬対象物を運搬する自律走行可能な複数の無人車両20と、複数の無人車両20のそれぞれに対して運搬対象物を積み込む積込作業を行う積込機械10と、積込機械10と複数の無人車両20とを管制制御する管制局30とが相互に通信可能に無線接続されて構成されている。
【0028】
複数の無人車両20には、それぞれ、無人車両20の作業現場における位置を示す位置情報と向きを示す方位情報とを含む車体情報を取得し、無人車両20に対する走行許可に基づいて無人車両20の自律走行を制御するとともに、無人車両20が走行する走行経路を成す複数の走行区間のうち、所定の走行区間における走行許可を要求する走行許可要求を出力する無人車両制御装置200が配置されている。
【0029】
積込機械10には、積込機械10によって運搬対象物を無人車両20に積み込む積込作業を行う位置として走行経路に予め設定されている積込位置に停止している無人車両20への積込作業が完了した旨を示す積込完了通知を積込機械10のオペレータの入力操作に応じて出力する積込完了通知入力装置170が配置されている。
【0030】
管制局30には、作業現場に予め定められた作業計画および複数の走行経路の位置および制限速度の情報を含む地図情報に基づいて複数の無人車両20が走行する走行経路を設定し、無人車両制御装置200からの走行許可要求に基づいて、複数の無人車両20に設定された走行経路の所定の走行区間の走行許可を出力する管制制御装置310が配置されている。
【0031】
なお、図5においては、積込機械10と無人車両20とがそれぞれ1台ずつ示されているが、2台以上存在する場合についてもそれぞれ同様の構成を有している。
【0032】
(積込機械10)
積込機械10は、車体操作入力装置171、車体駆動装置180、積込完了通知入力装置170、及び無線通信装置140を備えている。
【0033】
無線通信装置140は、例えば無線通信回線40に接続するための無線機である。この無線通信装置140は、無線通信回線40を介して無人車両20又は管制局30との間で情報の送受信を行う。
【0034】
車体操作入力装置171は、操作レバー171-1,171-2であり、運転席172に設けられている。
【0035】
車体駆動装置180は、ブームシリンダ194、アームシリンダ195、バケットシリンダ196、旋回モータおよび左右の走行モータであり、車体操作入力装置171からの操作信号に応じて駆動される。また、車体駆動装置180には、図示しない慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)が設けられており、車体駆動装置180の姿勢情報、或いは、姿勢情報から得られる積込回数を無線通信装置140を介して無人車両20や管制局30に送信可能である。
【0036】
積込完了通知入力装置170は、積込機械(油圧ショベル10)によって運搬対象物を無人車両20に積み込む積込作業を行う位置として走行経路に予め設定されている積込位置に停止している無人車両20への積込作業が完了した旨を示す積込完了通知を積込機械のオペレータの入力操作に応じて出力するものである。積込完了通知入力装置170からの積込完了通知は、無線通信装置140を介して無人車両20や管制局30に送信される。
【0037】
積込機械10は、図示しない制御装置により全体の動作を制御されている。積込機械10の制御装置は、例えば演算を実行するCPU(Central Processing Unit)と、演算のためのプログラムを記録した二次記憶装置としてのROM(Read Only Memory)と、演算経過の保存や一時的な制御変数を保存する一時記憶装置としてのRAM(Random Access Memory)とを組み合わせてなるマイクロコンピュータにより構成されており、記憶されたプログラムの実行によって積込機械10の動作を制御する。
【0038】
(無人車両20)
無人車両20は、無人車両制御装置200、走行駆動装置210、位置・方位センサ220、速度センサ230、積載センサ270、記憶装置250、及び無線通信装置240を備えている。
【0039】
走行駆動装置210は、無人車両制御装置200の制御信号に基づいて無人車両20の走行を駆動するものであり、例えば、無人車両20の操舵角を変更するための操舵モータ、無人車両20を走行させるための走行モータ290L,290R、及びブレーキ等を含む。
【0040】
位置・方位センサ220は、例えばGPS(Global Positioning System)装置や磁気を用いたセンサ等であり、自車の位置および方位を計測し、計測した位置および方位を無人車両制御装置200に出力する。なお、位置・方位センサ220は、GPSと慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)とを組み合わせたもの、あるいは地上に設置された基地局からの電波を用いて位置を特定するものであっても良い。
【0041】
積載センサ270は、無人車両20に積載された積荷の重量(すなわち、積載量)を計測するものであり、ベッセル(荷台)285の着座部分に備えられた重量センサであっても良く、ベッセル285を動作させるホイストシリンダ286の圧力に基づいて重量を推定するものであっても良い。この積載センサ270は、計測した積載量を無人車両制御装置200に出力する。
【0042】
記憶装置250は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーション・プログラム、データベース等が格納されている。また、記憶装置250には、作業現場に予め定められた作業計画および複数の走行経路の位置および制限速度の情報を含む地図情報を記憶する地図情報記憶部251としての記憶領域が形成されている。
【0043】
無線通信装置240は、例えば無線通信回線40に接続するための無線機である。この無線通信装置240は、無線通信回線40を介して積込機械10又は管制局30との間で情報の送受信を行う。
【0044】
無人車両制御装置200は、例えば、演算を実行するCPU(Central Processing Unit)と、演算のためのプログラムを記録した二次記憶装置としてのROM(Read Only Memory)と、演算経過の保存や一時的な制御変数を保存する一時記憶装置としてのRAM(Random Access Memory)とを組み合わせてなるマイクロコンピュータにより構成されており、記憶されたプログラムの実行によって無人車両20の動作を制御する。
【0045】
無人車両制御装置200は、自律走行制御部201、車体情報管理部202、及び走行許可要求部203を有している。車体情報管理部202は、位置・方位センサ220から出力された位置および方位の情報と、積載センサ270から出力された積載量の情報とを管理するとともに、これらの情報を無線通信装置240を介して管制局30に送信する。また、車体情報管理部202は、位置、方位及び積載量の情報を自律走行制御部201に出力する。更に、車体情報管理部202は、管制局30の管制制御部312(後述する)から自車に対する走行経路及び走行許可区間の情報を受信した場合、受信した情報を自律走行制御部201に出力する。
【0046】
自律走行制御部201は、車体情報管理部202から出力された位置、方位、積載量、走行経路及び走行許可区間の情報に基づいて、走行許可されている経路に追従しつつ、走行許可区間から逸脱しないように無人車両20を走行させるための加減速制御信号や操舵制御信号などの制御信号を生成する。更に、自律走行制御部201は、生成したこれらの制御信号を走行駆動装置210に出力する。
【0047】
(管制局30)
管制局30は、管制制御装置310、管制記憶装置350、及び無線通信装置340を備えている。
【0048】
管制記憶装置350は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーション・プログラム、データベース等が格納されている。管制記憶装置350には、配車管理情報記憶部351、管制情報記憶部352、及び地図情報記憶部353としての記憶領域がそれぞれ形成されている。
【0049】
無線通信装置340は、例えば、無線通信回線40に接続するための無線機であり、無線通信回線40を介して積込機械10又は無人車両20との間で情報の送受信を行う。
【0050】
管制制御装置310は、例えば、演算を実行するCPU(Central Processing Unit)と、演算のためのプログラムを記録した二次記憶装置としてのROM(Read Only Memory)と、演算経過の保存や一時的な制御変数を保存する一時記憶装置としてのRAM(Random Access Memory)とを組み合わせてなるマイクロコンピュータにより構成されており、記憶されたプログラムの実行によって管制局30の動作を制御する。
【0051】
管制制御装置310は、配車管理部311と、管制制御部312と、交代車両発進時刻算出部313とを有している。
【0052】
配車管理部311は、無人車両20の目的地までの走行経路を設定する。例えば無人車両20が積込位置にいる場合、配車管理部311は、放土位置までの走行経路を設定する。一方、無人車両20が放土位置にいる場合、配車管理部311は、積込位置までの走行経路を設定する。そして、配車管理部311によって設定された走行経路は、配車管理情報として、例えばテーブルの形式で配車管理情報記憶部351に記憶されている。
【0053】
図6は、配車管理情報のテーブルの一例を示す図である。
【0054】
図6に示すように、配車管理情報では、無人車両20を固有に識別する車両ID毎に、配車管理部311によって設定された走行経路が目標経路としてそれぞれ記録されている。目標経路は、積込位置(node_LP)から放土位置(node_DP)まで、あるいは放土位置(node_DP)から積込位置(node_LP)までの経路を示している。
【0055】
目標経路のうち、積込作業や放土作業を行う作業エリア間の搬送路のように予め走行経路として設定することが可能な地図情報については、予め搬送路の形状に合わせた形式で地図情報記憶部353に記憶されている。一方、積込位置や待機位置、放土位置などの作業地点を含む走行区間のように、走行経路として予め設定することができない地図情報については、作業地点である積込位置又は放土位置が指定されたときに管制制御部312によって生成され、地図情報記憶部353に記憶される。なお、管制制御部312によって生成される地図情報は1つのみ生成されても良く、複数生成されても良い。複数生成された場合、配車管理部311は、無人車両20に対して走行経路を設定する際に、複数の地図情報のうちの一つを選択する。
【0056】
また、配車管理部311は、無人車両20に対して走行経路を設定する際に、目的地の作業エリアに対して生成済みの地図情報が存在した場合、作業エリア間の走行経路と作業エリア内での走行経路とを同時に設定する。一方、目的地の作業エリアに対して生成済みの地図情報が存在しない場合、配車管理部311は、まず目的地となる作業エリアの入口点までの走行経路を設定し、当該作業エリアにおける積込位置や待機位置、放土位置などの作業地点が指定された時点で作業エリア内の走行経路を設定すれば良い。
【0057】
管制制御部312は、管制情報記憶部352に記憶された交通管制の情報(以降、単に「管制情報」と称する)に基づいて、無人車両20の走行経路に設定された複数の走行区間をそれぞれ、複数の無人車両20の何れかについてのみ走行許可を付与した走行許可区間として設定する。すなわち、複数の走行区間について、各走行区間に走行許可が付与される無人車両20は1台のみとなり、1つの走行区間に複数の無人車両20の走行許可が付与されることはない。
【0058】
図7は、管制情報記憶部に記憶された管制情報のテーブルの一例を示す図である。
【0059】
管制情報では、ノードIDと、各ノードIDで示される走行区間(経路上の次のノードまでの走行区間)に対して走行許可を付与した無人車両を示す「走行許可車両」とが関連付けられている。管制制御部312は、無人車両20の位置に応じて、走行許可可能な前方区間を当該無人車両20に対する走行許可区間として設定する。無人車両20は、その設定された区間のノードに従って走行する。
【0060】
本実施の形態においては、走行許可区間制御方式が採用されている。従って、ある無人車両20-1に設定済みの走行許可区間の前方の走行区間が他の無人車両20-2に対する走行許可区間として設定されている場合、管制制御部312は、無人車両20-1に対して当該前方の走行区間は走行許可しない。この場合、無人車両20-1は現在許可されている走行許可区間の終端ノードを超えないように停止し、前方区間が走行許可されるまで待機する。
【0061】
また、管制制御部312は、作業エリアにおいて指定された作業地点に基づいて地図情報を生成し、生成した地図情報を地図情報記憶部353に記憶させる。
【0062】
図8は、積込作業を行う作業エリアに設定される走行経路の一例を示す図である。
【0063】
図8に示すように、積込位置(LP:Loading Point)(node_LP)が指定された場合、管制制御部312は作業エリア内の走行経路60を生成する。走行経路60は、走行区間S1,S2,S3を含む複数の走行区間により形成されている。
【0064】
積込位置(node_LP)は、例えば、積込機械10の位置情報等に基づいて管制制御部312によって指定される。また、積込位置との位置関係に応じて、積込位置に他の無人車両20-1が位置している場合に後続の無人車両20-2が待機する待機位置(node_RP)が管制制御部312によって指定される。なお、本実施の形態において、積込位置及び待機位置は、無人車両20の前進又は後進を切り換える切り返し位置として設定されている場合を例示している。
【0065】
管制制御部312によって積込位置(node_LP)および待機位置(node_RP)が指定されると、管制制御部312は、作業エリアの入口や出口に設定された図示しないノード、待機位置(node_RP)及び積込位置(node_LP)に基づき、無人車両20が走行するための地図情報を生成する。
【0066】
図8に示す走行経路60において、待機位置を含む走行区間S1は積込位置に向かう無人車両20-2が待機する待機区間S1であり、折り返し位置として設定された待機位置RPを含んでいる。また、走行区間S2,S3はそれぞれ、待機区間から積込位置へ至る積込区間および無人車両20-1が積込位置から退出するための退出区間であり、積込区間S2と退出区間S3の間の折り返し位置として設定された積込位置LPを含んでいる。すなわち、積込区間S2と退出区間S3は積込位置において重複しており、走行許可の付与については一体として考える。すなわち、走行区間S2,S3には、同時に1台のみが侵入可能である。したがって、特に区別しない場合には、積込区間S2は退出区間S3を含むものとして考える。
【0067】
なお、地図情報の生成方法については種々の方法が考えられるが、例えば、作業エリアのうち走行経路の生成が許容された範囲内で、走行経路の部分要素である直線や円弧の組み合わせによる候補の中から、経路長最短などの指標に基づき適切な経路を探索することにより行われる。
【0068】
また、放土作業を行う作業エリアにおいても、管制制御部312は、指定された放土位置に基づいて同様に地図情報を生成する。その場合、放土位置は、作業エリアで作業するブルドーザなどのオペレータ、あるいは管制局30で遠隔操作を行うオペレータによって指定されても良い。
【0069】
交代車両発進時刻算出部313は、待機区間S1の待機位置に停止して待機している無人車両20-2から待機区間S2についての走行許可要求を受信した場合に、以下のような手順により無人車両20-2に待機区間S1の走行許可を出力する。
【0070】
まず、交代車両発進時刻算出部313は、無人車両20-2(第1無人車両)が待機位置を発進してから積込区間S2に進入する前に停止するために減速開始すべき減速開始位置に到達するまでの時間である減速開始位置到達時間を算出する。
【0071】
また、積込区間S2に位置する無人車両20-1(第2無人車両)に対する積込完了通知を受信して無人車両20-1が積込位置を発進してから退出区間S3の外に到達するまでの時間である積込区間解放位置到達時間を算出する。
【0072】
続いて、減速開始位置到達時間と積込区間解放位置到達時間とに基づいて、無人車両20-2が減速開始位置に到達するよりも予め定めた余裕時間だけ前に無人車両20-1が退出区間S3の外に到達するような無人車両20-1と無人車両20-2の発進時差を算出する。
【0073】
そして、無人車両20-1に対する積込完了通知の受信時刻と発進時差とに基づいて、無人車両20-2の発進時刻を算出し、この発進時刻を過ぎてから無人車両20-2に対する待機区間S1の走行許可(ここでは、待機位置からの発進許可を含んでいるといえる)を出力する。
【0074】
なお、後続の無人車両20-2からは待機区間S1についての走行許可要求と同時に積込区間S2についての走行許可要求も出されており、先行の無人車両20-1が退出区間S3の外に到達するのと同時に無人車両20-2の積込区間S2についての走行許可(ここでは、待機区間S1から積込区間S2への進入許可を含んでいるといえる)が出力される。
【0075】
以下、管制制御装置310による処理の詳細について詳細に説明する。
【0076】
図9は、管制制御装置における走行許可発進処理の処理内容を示すフローチャートである。
【0077】
図9において、管制制御装置310は、待機区間S1の待機位置に停止している無人車両20-2から待機区間S1についての走行許可要求を受信すると(ステップS1001)、積込区間S2に先行する無人車両20-1が存在するか否かを判定し(ステップS1002)、判定結果がNOの場合、すなわち、積込区間に先行する無人車両20-1が存在しない場合には、待機区間S1の走行許可を無人車両20-2に送信し(ステップS1007)、処理を終了する。
【0078】
また、ステップS1002での判定結果がYESの場合、すなわち、積込区間S2に先行する無人車両20-1が存在する場合には、交代車両発進時刻算出部313は、先行する無人車両20-1が退出区間S3の外に到達して積込区間S2が開放される積込区間開放時間を推定する積込区間開放時間推定処理を実施し(ステップS1003)、無人車両20-2が待機位置を発進してから積込区間S2に進入する前に停止するために減速開始すべき減速開始位置に到達するまでの時間である減速開始位置到達時間を推定する減速開始位置到達時間推定処理を実施し(ステップS1004)、無人車両20-1に対する積込完了通知の受信時刻と発進時差とに基づいて、無人車両20-2の発進時刻を決定する発進時刻決定処理を実施する(ステップS1005)。
【0079】
続いて、管制制御装置310は、ステップS1005で算出した発進時刻を過ぎたか否かを判定し(ステップS1006)、判定結果がNOの場合は、判定結果がYESになるまで、すなわち、発進時刻を超過するまでステップS1006の処理を繰り返す。また、ステップS1006の判定結果がYESの場合、すなわち、発進時刻を超過した場合には、待機区間S1の走行許可を無人車両20-2に送信し(ステップS1007)、処理を終了する。
【0080】
図10は、積込区間開放時間推定処理の処理内容を示すフローチャートである。また、図11は、積込区間開放時間推定処理の処理原理を説明する図である。
【0081】
図10及び図11に示すように、積込区間開放時間推定処理では、積込区間開放位置Xrelを算出し(ステップS1201)、積込区間開放位置XrelまでのΔx刻みの位置x(k=1,…,N)を生成し(ステップS1202)、各位置xkにおける速度vkを計算し(ステップS1203)、各分割位置xk間毎に平均速度から走行時間を計算し(ステップS1204)、積込区間開放位置への到達時間Trel、すなわち、積込区間開放時間を算出し(ステップS1205)、処理を終了する。
【0082】
なお、加速度(一定とする)をα、LP発進時遅延時間をTLPdel、走行許可開放マージンをLrel、制限速度をvlim(x)とすると、各数値は以下のように計算される。
・積込区間開放位置:xrel=d+Lrel
・距離Δx毎の位置:kΔx(k=0,…,N、N=xrel/Δx(切り上げ)
・各xkにおける速度:vk=min(√2αxk,vlim(xk))
・xrel到達時間:Trel=TLPdel+Σ(2Δx/(vk+v(k+1)))(k=0,…,N―1)
【0083】
図12は、減速開始位置到達時間推定処理の処理内容を示すフローチャートである。また、図13は、減速開始位置到達時間推定処理の処理原理を説明する図である。
【0084】
図12及び図13に示すように、減速開始位置到達時間推定処理では、減速開始位置xdecを計算し(ステップS1401)、減速開始位置xdecまでのΔx刻みの位置xk(k=1,…,N)を生成し(ステップS1402)、各位置xkにおける速度vkを計算し(ステップS1403)、各分割位置xk間毎に平均速度から走行時間を計算し(ステップS1404)、減速開始位置到達時間Tdecを計算し(ステップS1405)、処理を終了する。
【0085】
なお、加速度(一定とする)をα、RP発進時遅延時間をTRPdel、積込区間進入速度をv0、減速度(一定とする)をβ、停止マージンをLmargin、制限速度をvlim(x)とすると、各数値は以下のように計算される。
・減速開始位置:xdec=df-(v0^2/2β+Lmargin)
・距離Δx毎の位置:kΔx(k=0,…,N、N=xrel/Δx(切り上げ)
・各xkにおける速度:vk=min(√2axk,vlim(xk))
・xdec到達時間:Tdec=TRPdel+Σ(2Δx/(vk+v(k+1)))(k=0,…,N―1)
【0086】
図14は、発進時刻決定処理の処理内容を示すフローチャートである。また、図15図17は、発進時刻決定処理の処理原理を説明する図である。
【0087】
図14図17に示すように、発進時刻決定処理では、発進時差を算出し(ステップS1501)、発進時差が0(ゼロ)よりも大きいか否かを判定する(ステップS1502)。
【0088】
ステップS1502での判定結果がYESの場合、すなわち、発進時差が正である場合には、先行する無人車両が発進したか否かを判定し(ステップS1503)、判定結果がNOの場合には、先行する無人車両が発進するまで、すなわち、判定結果がYESとなるまでステップS1503の処理を繰り返す。また、ステップS1503での判定結果がYESの場合には、発進時刻に基づいて最適発進時刻を決定し(ステップS1504)、処理を終了する。
【0089】
また、ステップS1502での判定結果がNOの場合、すなわち、発進時差が負の場合には、先行する無人車両に所定回数の積込動作を行ったか否かを判定し(ステップS1505)、判定結果がNOの場合には、判定結果がYESになるまでステップS1505の処理を繰り返す。また、ステップS1505での判定結果がYESの場合、すなわち、所定回数の積込動作を行った場合には、先行する無人車両の発進時刻を推定し(ステップS1506)、推定した発進時刻に基づいて最適発進時刻を決定し(ステップS1504)、処理を終了する。
【0090】
なお、発進時差が正の場合には、図15に示すように、先行車発進時刻をt0、積込区間開放時間をTrel、減速開始時間をTdec、発進時差をTdiff、積込区間開放時刻をtA=t0+Trel、減速開始時刻をtB=t0+Tdiff+Tdecとすると、発進時差が満たすべき条件であるtA<tBから、t0+Trel<tB=t0+Tdiff+Tdecが成り立ち、Tdiff>Trel-Tdecが導かれる。ここで、マージン時間Tmを定義すると、発進時差Tdiff=Trel-Tdec+Tmで求められる。また、発進時差が負の場合には、図16に示すように、先行車発進時刻に推定時刻t01を用いることで、発進時差Tdiff=Trel-Tdec+Tmを求めることができる。
【0091】
また、図17に示すように、発進時差が負の場合に推定する発進時刻は、油圧ショベル(積込機械10)とダンプトラック(無人車両20)との車格(各容量は予め記憶されている)に基づいて、積込回数を算出することにより求めることができる。具体的には、必要積込回数N_L=トラック積載容量/ショベルバケット容量(切上げ)を求め、最終積込開始時刻(N_L-1回目の積込完了時刻)と積込完了通知予測時間(最終積込開始時刻から積込完了通知時刻までの時間)を定義することで、積込完了通知推定時刻t01=最終積込開始時刻+積込完了通知予測時間を算出する。積込完了通知予測時間は、実際の最終積込開始時刻と積込完了通知時刻のデータに基づき学習し、予め設定した初期値を実績値の移動平均値で更新する。なお、積込完了通知予測時間は、オペレータと油圧ショベルの車格の組合せ毎に独立で学習してもよい。
【0092】
以上のように構成した本実施の形態における効果を従来技術と対比しつつ説明する。
【0093】
図20は、対比例として示す従来技術における車両管理の様子を示す図であり、図21は無人車両の位置と速度の変化を示す図である。
【0094】
図20及び図21に示すように、従来技術においては、積込区間S2にて先行する無人車両と待機区間S1の待機位置で停止している後続の無人車両とが同時に発進した場合(状態a)、先行の無人車両が退出区間S3の外に到達する前(すなわち、後続の無人車両の積込区間S2についての走行許可が取得される前)に後続の無人車両が待機区間S1と積込区間S2の境界に到達してしまうため、後続の無人車両は積込区間S2の走行許可が得られるまで待機区間S1において一時停止する必要が生じる(状態b)。そして、先行の無人車両が退出区間S3の外に到達すると、後続の無人車両は積込区間S2についての走行許可を取得し(状態c)、待機区間S1から積込区間S2に加速しながら進入し(状態d)、すぐさま減速して積込位置に到着する(状態e)。すなわち、従来技術においては、後続の無人車両の加速や減速の頻度が増加するために平均速度が下がって作業効率が低下すると共に、積込位置における無人車両の入れ換えに要する時間が長くなり、生産性が低下してしまう。
【0095】
図18は、本実施の形態における車両管理の様子を示す図であり、図19は無人車両の位置と速度の変化を示す図である。
【0096】
図18及び図19に示すように、本実施の形態においては、積込区間S2にて先行する無人車両が積込位置から発進し、後続の無人車両が待機区間S1の待機位置で停止を維持している状態において(状態a)、後続の無人車両からの待機区間についての走行許可要求に応じて、先行する無人車両の発進から時間差をもって待機区間S1についての走行許可が出され、後続の無人車両が発進する(状態b)。このとき、先行する無人車両の発進と後続の無人車両の発進の時間差は、本実施の形態における車両管理システムにより最適に設定され、先行の無人車両は、後続の無人車両が待機区間S1の走行中であって減速開始位置に到達する前に退出区間S3の外に到達する。すなわち、言い換えると、後続の無人車両は待機区間S1の走行中であって減速開始位置に到達する前に積込区間S2についての走行許可を取得する(状態c)。そして、これにより、後続の無人車両は、積込区間S2の走行許可の解放からより短い時間で、かつ、待機区間S1で減速することなく最高速度(制限速度)で積込区間S2に進入し、積込位置に到着することができるので(状態d、状態e)、積込位置における無人車両の入れ換えに要する時間を短縮することができ、生産性を向上することができる。
【0097】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態を図22及び図23を参照しつつ説明する。ただし、本実施の形態において、第1の実施の形態と同様の構成等には同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
【0098】
本実施の形態は、後続の無人車両に積込区間における走行時間が最短(極小)となるような最適走行速度(制限速度)を適用する場合を示すものである。
【0099】
図22は、本実施の形態の管制制御装置における走行許可発進処理の処理内容を示すフローチャートである。また、図23は、本実施の形態における最適走行速度の算出原理を説明する図である。
【0100】
図22において、管制制御装置310は、待機区間S1の待機位置に停止している無人車両20-2から待機区間S1についての走行許可要求を受信すると(ステップS1001)、積込区間S2に先行する無人車両20-1が存在するか否かを判定し(ステップS1002)、判定結果がNOの場合、すなわち、積込区間に先行する無人車両20-1が存在しない場合には、待機区間S1の走行許可を無人車両20-2に送信し(ステップS1007)、処理を終了する。
【0101】
また、ステップS1002での判定結果がYESの場合、すなわち、積込区間S2に先行する無人車両20-1が存在する場合には、交代車両発進時刻算出部313は、積込区間S2の距離(長さ)に基づいて後続の無人車両20-2の最適な走行速度(最適走行速度)を決定する最適走行速度決定処理を実施し(ステップS1901)、先行する無人車両20-1が退出区間S3の外に到達して積込区間S2が開放される積込区間開放時間を推定する積込区間開放時間推定処理を実施し(ステップS1003)、無人車両20-2が待機位置を発進してから積込区間S2に進入する前に停止するために減速開始すべき減速開始位置に到達するまでの時間である減速開始位置到達時間を推定する減速開始位置到達時間推定処理を実施し(ステップS1004)、無人車両20-1に対する積込完了通知の受信時刻と発進時差とに基づいて、無人車両20-2の発進時刻を決定する発進時刻決定処理を実施する(ステップS1005)。
【0102】
続いて、管制制御装置310は、ステップS1005で算出した発進時刻を過ぎたか否かを判定し(ステップS1006)、判定結果がNOの場合は、判定結果がYESになるまで、すなわち、発進時刻を超過するまでステップS1006の処理を繰り返す。また、ステップS1006の判定結果がYESの場合、すなわち、発進時刻を超過した場合には、最適走行速度を対象となる無人車両20の制限速度として適用し(ステップS1902)、待機区間S1の走行許可を無人車両20-2に送信し(ステップS1007)、処理を終了する。
【0103】
図23に示すように、後続の無人車両20-2の走行速度v(制限速度)と、積込区間S2を走行する無人車両20-2が減速開始位置から停止位置である積込位置LPに到達するまでの走行時間Tとは、トレードオフの関係となる。これは、無人車両20-2の走行速度vが大きいほど減速開始距離Lstop(減速開始位置から積込位置LPまでの距離)が大きくなり、無人車両20-2が減速及び停止に要する走行距離が伸びるためである。一方で、図23に示すように、走行時間Tが極小となる無人車両の走行速度(最適走行速度)が存在する。
【0104】
ここで、後続の無人車両20-2の待機区間S1から積込区間S2への侵入速度をv0、減速開始位置から積込位置までの間の減速度をβ、停止マージンをLmargin、積込区間S1の距離(長さ)をLS2とすると、最適走行速度は以下のように求められる。
・減速開始位置から積込位置までの距離(減速開始距離):L(v0)
L(v0)=v0^2/2β+Lmargin+LS2
・減速開始距離における走行時間:T(v0)
T(v0)=L(v0)/v0+v0/2β=v0/β+(Lmargin+LS2)/v0
・最適走行速度:v01
v01=√β(Lmargin+LS2) (T(v0)の変曲点より)
・最短走行時間:v01
T(v01)=2√((Lmargin+LS2)/β)
【0105】
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0106】
以上のように構成した本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0107】
また、最適走行速度を制限速度として適用することにより、積込位置における無人車両の入れ換えに要する時間をさらに短縮することができ、生産性を向上することができる。
【0108】
<第2の実施の形態の変形例>
本発明の第2の実施の形態の変形例を図24を参照しつつ説明する。ただし、本変形例において、第2の実施の形態と同様の構成等には同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
【0109】
本実施の形態は、後続の無人車両に積込区間における燃料消費量が最小(極小)となるような最適走行速度(制限速度)を適用する場合を示すものである。
【0110】
図24は、本変形例における最適走行速度の算出原理を説明する図である。
【0111】
図24に示すように、後続の無人車両20-2の走行速度v(制限速度)と、積込区間S2を走行する無人車両20-2が減速開始位置から停止位置である積込位置LPに到達するまでの燃料消費量Fとは、トレードオフの関係となる。これは、無人車両20-2の走行速度vが大きいほど短時間で走行できるものの燃費が悪化し、走行速度vが小さいほど燃費は改善するものの、無人車両20-2の走行時間が伸びるためである。一方で、図24に示すように、燃料消費量Fが極小となる無人車両の走行速度(最適走行速度)が存在する。本変形例では、この最適走行速度を後続の無人車両20-2の制限速度として適用する。
【0112】
その他の構成は第2の実施の形態と同様である。
【0113】
以上のように構成した本変形例においても第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0114】
また、最適走行速度を制限速度として適用することにより、燃費を向上することができる。
【0115】
なお、本変形例においては、走行速度と燃料消費量の関係に基づいて最適走行速度を算出したが、これに限られず、例えば、速度v0に関する走行時間の関数T(v0)と、燃料消費量の関数F(v0)とに重み付けしたものを評価関数とし、それらを最小化(極小化)するような最適走行速度を計算してもよい。また、燃料消費量を極小化するようなエンジンの最適回転数を算出するように構成しても良い。
【0116】
<第3の実施の形態>
本発明の第3の実施の形態を図25を参照しつつ説明する。ただし、本実施の形態において、第1の実施の形態と同様の構成等には同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
【0117】
本実施の形態は、先行の無人車両の位置や速度などの走行状態に応じて積込区間開放時間を更新し、更新した積込区間開放時間に応じて発進時差Tdiffを更新する場合を示すものである。
【0118】
図25は、本実施の形態の管制制御装置における走行許可発進処理の処理内容を示すフローチャートである。
【0119】
図25において、管制制御装置310は、待機区間S1の待機位置に停止している無人車両20-2から待機区間S1についての走行許可要求を受信すると(ステップS1001)、積込区間S2に先行する無人車両20-1が存在するか否かを判定し(ステップS1002)、判定結果がNOの場合、すなわち、積込区間に先行する無人車両20-1が存在しない場合には、待機区間S1の走行許可を無人車両20-2に送信し(ステップS1007)、処理を終了する。
【0120】
また、ステップS1002での判定結果がYESの場合、すなわち、積込区間S2に先行する無人車両20-1が存在する場合には、先行する無人車両20-1が退出区間S3の外に到達して積込区間S2が開放される積込区間開放時間を推定する積込区間開放時間推定処理を実施し(ステップS1003)、無人車両20-2が待機位置を発進してから積込区間S2に進入する前に停止するために減速開始すべき減速開始位置に到達するまでの時間である減速開始位置到達時間を推定する減速開始位置到達時間推定処理を実施し(ステップS1004)、無人車両20-1に対する積込完了通知の受信時刻と発進時差とに基づいて、無人車両20-2の発進時刻を決定する発進時刻決定処理を実施する(ステップS1005)。
【0121】
続いて、管制制御装置310は、ステップS1005で算出した発進時刻を過ぎたか否かを判定し(ステップS1006)、判定結果がNOの場合には、先行車両の位置や速度に基づいて積込区間開放時間Trelを更新し、更新した積込区間開放時間Trelに応じて算出した発進時差Tdiffが前回更新した発進時座Tdiffよりも小さい場合には、その発進時差Tdiffに基づいた算出値で最適発進時刻を更新し(ステップS2001)、ステップS1006の処理に戻る。
【0122】
また、ステップS1006の判定結果がYESの場合、すなわち、発進時刻を超過した場合には、最適走行速度を対象となる無人車両20の制限速度として適用し(ステップS1902)、待機区間S1の走行許可を無人車両20-2に送信し(ステップS1007)、処理を終了する。
【0123】
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0124】
以上のように構成した本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0125】
また、最適発進時刻が最適となるように更新することにより、積込位置における無人車両の入れ換えに要する時間をさらに短縮することができ、生産性を向上することができる。
【0126】
<第4の実施の形態>
本発明の第4の実施の形態を図26及び図27を参照しつつ説明する。ただし、本実施の形態において、第1の実施の形態と同様の構成等には同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
【0127】
本実施の形態は、先行の無人車両の積込区間における位置に基づいて後続の無人車両の待機区間における走行許可(発進許可)を出す場合を示すものである。
【0128】
図26は、本実施の形態における走行許可出力の処理原理について説明する図である。
【0129】
図26に示すように、積込区間S2の先行の無人車両20-1が発進してから「発進時差」だけ遅れて待機区間S1の後続の無人車両20-2が発進することから、先行の無人車両20-1が「発進時差」の間に到達する位置(目標到達位置)を特定することができる。そして、先行の無人車両20-1の目標到達位置への到達をトリガとして後続の無人車両20-2を発進させれば(言い換えると、走行許可を出せば)、第1の実施の形態と同様の動作を実現することができる。すなわち、本実施の形態では、時間(時刻)に代えて先行の無人車両の位置をトリガとすることで、第1の実施の形態と同様の動作を実現する。
【0130】
ここで、先行の無人車両20-1の加速度をαL、最大速度をvmaxとすると、発進時差Tdiff=Trel-Tdec+Tmに応じて目標到達位置は以下のように算出される。
【0131】
すなわち、図26の(1)Tdiff≦vmax/αLの場合には、目標到達位置はαL×Tdiff^2となる。また、(2)Tdiff>vmax/αLの場合には、目標到達位置はvmax×Tdiff-vmax^2/2αLとなる。
【0132】
図27は、本実施の形態の車両管理の様子を示す図である。
【0133】
図27に示すように、本実施の形態においては、積込区間S2にて先行する無人車両が積込位置から発進し、後続の無人車両が待機区間S1の待機位置で停止を維持している状態において(状態a)、先行の無人車両が退出区間S3の目標到達位置に到達したら後続の無人車両に待機区間S1の走行許可が出され、後続の無人車両が発進する(状態b)。このとき、先行する無人車両の発進と後続の無人車両の発進の時間差は、第1の実施の形態と同様に車両管理システムにより最適となるように設定され、先行の無人車両は、後続の無人車両が待機区間S1の走行中であって減速開始位置に到達する前に退出区間S3の外に到達する。すなわち、言い換えると、後続の無人車両は待機区間S1の走行中であって減速開始位置に到達する前に積込区間S2についての走行許可を取得する(状態c)。そして、これにより、後続の無人車両は、積込区間S2の走行許可の解放からより短い時間で、かつ、待機区間S1で減速することなく最高速度(制限速度)で積込区間S2に進入し、積込位置に到着することができるので(状態d、状態e)、積込位置における無人車両の入れ換えに要する時間を短縮することができ、生産性を向上することができる。
【0134】
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0135】
以上のように構成した本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0136】
<第5の実施の形態>
本発明の第5の実施の形態を図28を参照しつつ説明する。ただし、本実施の形態において、第1の実施の形態と同様の構成等には同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
【0137】
本実施の形態は、積込位置及び待機位置が、無人車両20の前進又は後進を切り換える切り返し位置ではなく、無人車両20が一方から侵入して他方に退出する停止通過位置として設定される場合を示すものである。
【0138】
図28は、本実施の形態における走行経路の一例を示す図である。
【0139】
図28に示すように、走行経路60において、走行区間S0は、積込位置に向かう無人車両20-2が待機する待機区間S0であり、終端部に停止通過位置として設定された待機位置(QP:Queuing Point)が配置されている。また、走行区間S1は、待機区間S0の待機位置QPから発進した後続の無人車両20-2が積込退出区間S2,S3への進入に際して走行する助走区間S1である。また、走行区間S2,S3は、第1の実施の形態における積込区間S2と退出区間S3の両方の特徴を合わせた積込退出区間S2,S3であり、停止通過位置として設定された積込位置(LP:Loading Point)を含んでいる。積込退出区間S2,S3は、走行許可の付与については一体として考えられ、同時に1台のみが侵入可能である。
【0140】
以上のように構成した本実施の形態において、助走区間S1と積込退出区間S2,S3とを合わせて第1の実施の形態の積込区間S2及び退出区間S3と同様に扱うことにより、第1の実施の形態と同様の動作を行うことができる。
【0141】
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0142】
以上のように構成した本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0143】
なお、図28に示す積込作業を行う作業エリアにおいて、入口位置~積込位置LPの経路と、積込経路LP~出口位置の経路とを別々のものとして考え、走行区間S2と走行区間S3とを独立に生成し、走行区間S2と走行区間S3の重なった位置に積込位置LPを設定してもよい。
【0144】
<付記>
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例や組み合わせが含まれる。また、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【符号の説明】
【0145】
10…積込機械(油圧ショベル)、10A…フロント装置、10B…上部旋回体、10C…下部走行体、20…無人車両(ダンプトラック)、30…管制局、40…無線通信回線、41…無線基地局、60…走行経路(搬送経路)、100…車両管理システム、140…無線通信装置、170…積込完了通知入力装置、171…車体操作入力装置(操作レバー)、172…運転席、180…車体駆動装置、191…ブーム、192…アーム、193…バケット、194…ブームシリンダ、195…アームシリンダ、196…バケットシリンダ、197…運転室、200…無人車両制御装置、201…自律走行制御部、202…車体情報管理部、203…走行許可要求部、210…走行駆動装置、220…位置・方位センサ、230…速度センサ、240…無線通信装置、250…記憶装置、251…地図情報記憶部、270…積載センサ、281…車体フレーム、282L,282R…従動輪、283L,283R…駆動輪、284…運転室、285…荷台(ベッセル)、285a…ピン結合部、286…ホイストシリンダ、289…燃料タンク、290L,290R…走行モータ、310…管制制御装置、311…配車管理部、312…管制制御部、313…交代車両発進時刻算出部、340…無線通信装置、350…管制記憶装置、351…配車管理情報記憶部、352…管制情報記憶部、353…地図情報記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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