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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-20
(45)【発行日】2025-06-30
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20250623BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023529487
(86)(22)【出願日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 JP2022005179
(87)【国際公開番号】W WO2022264495
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2024-08-07
(31)【優先権主張番号】P 2021101384
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健吾
(72)【発明者】
【氏名】池村 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】井口 和也
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-142143(JP,A)
【文献】国際公開第2003/067230(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/178294(WO,A1)
【文献】特開2019-124542(JP,A)
【文献】特開2003-077141(JP,A)
【文献】Internal quantum efficiency of radiation in a bulk CH3NH3PbBr3 perovskite crystal quantified by usin,APL Materials,米国,AIP Publishing,2019年07月31日,Vol. 7,071116,doi: 10.1063/1.5110652
【文献】Demonstration of omnidirectional photoluminescence (ODPL) spectroscopy for precise determination of,Applied Physics Letters,米国,AIP Publishing,2017年07月21日,Vol. 111,032111,doi: 10.1063/1.4995398
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/958
G02B 5/20
G02B 21/00-G02B 21/36
A61B 1/00
G01J 3/00-G01J 3/52
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580 (JDreamIII)
Science Direct
IEEE Xplore
ACS PUBLICATIONS
Scitation
SPIE Digital Library
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定物に向けて励起光を導光する励起光学系と、
前記測定物に照明光による照明スポットを形成する照明光学系と、
前記測定物上の前記照明スポットを撮像する撮像部と、を備え、
前記照明光学系は、第1の色を有する中心領域と、第1の色とは異なる第2の色を有して前記中心領域を囲う周辺領域とを有する光透過部材を含んで構成され、
前記励起光学系と前記照明光学系とは、前記撮像部の視野内において、前記測定物における前記励起光の照射スポットが前記中心領域を通った前記照明光による中心スポット領域に含まれ、且つ前記周辺領域を通った前記照明光による周辺スポット領域に囲まれるように光学的に接続されている測定装置。
【請求項2】
前記光透過部材は、前記中心領域が開口する色付きピンホールである請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
前記周辺領域は、前記中心領域の周りに環状に設けられている請求項1又は2記載の測定装置。
【請求項4】
前記中心領域及び前記周辺領域の形状は、前記撮像部における撮像領域の形状と一致している請求項1~3のいずれか一項記載の測定装置。
【請求項5】
前記光透過部材は、前記第2の色とは異なる第3の色を有して前記周辺領域を囲う周辺領域を更に有する請求項1~4のいずれか一項記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハなどの測定物の検査に用いられる測定手法として、例えばフォトルミネッセンス測定(以下「PL測定」と記す)が知られている。PL測定は、例えば半導体材料に対してバンドギャップより高いエネルギーを持つ光を照射することで生じた電子とホールとの再結合によって放出される光を測定する手法である。PL測定では、結晶の構造欠陥の分布を検出可能である一方、半導体ウェハの品質担保の観点からは、欠陥の定量性や再現性の向上が求められている。
【0003】
別の測定手法として、全方位フォトルミネッセンス測定(以下「ODPL測定」と記す)が知られている(例えば非特許文献1参照)。ODPL測定は、積分球を用いて測定物に吸収された励起光のフォトン数及び全方位への発光フォトン数を測定する手法である。ODPL測定では、不純物密度や点欠陥密度等を含む非輻射再結合に影響されるバンド端発光の発光量子効率を算出できるため、欠陥の定量化が可能となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】“Demonstration of omnidirectional photoluminescence (ODPL) spectroscopy for precise determination of internal quantum efficiency of radiation in GaN single crystals” Kazunobu Kojima et al., Applied Physics Letter 111, 032111 (2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したPL測定或いはODPL測定のように測定物に励起光を照射する場合、励起光の照射スポットの調整の容易性を確保する等の観点から、視野内の測定物上の励起光の照射スポットを観察できることが好ましい。励起光の照射スポットの観察には、例えばカメラ等で構成された撮像部を用いることができる。しかしながら、測定物に向かう励起光の光軸が撮像軸に対して傾斜する場合には、励起光の照射スポットを撮像部で直接観察することが難しくなる。撮像部のセンサが励起光の波長或いは励起光の照射によって測定物で発生する光の波長に対して十分な感度を持たない場合にも、励起光の照射スポットを撮像部で直接観察することが難しくなる。
【0006】
また、励起光が紫外光のような比較的高いエネルギーを有する光である場合、励起光の照射によって測定物に劣化が生じることが考えられる。この場合、測定物への励起光の照射の機会は極力減らすことが好ましく、励起光の照射スポットの観察のために測定とは別に測定物に励起光を照射することを回避したいという事情も存在する。
【0007】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、測定物に励起光を照射することなく視野内の測定物上の励起光の照射スポットを観察できる測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面に係る測定装置は、測定物に向けて励起光を導光する励起光学系と、測定物に照明光による照明スポットを形成する照明光学系と、測定物上の照明スポットを撮像する撮像部と、を備え、照明光学系は、第1の色を有する中心領域と、第1の色とは異なる第2の色を有して中心領域を囲う周辺領域とを有する光透過部材を含んで構成され、励起光学系と照明光学系とは、撮像部の視野内において、測定物における励起光の照射スポットが中心領域を通った照明光による中心スポット領域に含まれ、且つ周辺領域を通った照明光による周辺スポット領域に囲まれるように光学的に接続されている。
【0009】
この測定装置では、照明光学系に含まれる光透過部材により、照明光が照射された測定物において、中心スポット領域の周りに第1の色とは異なる第2の色で周辺スポット領域が形成される。したがって、励起光の照射スポットを照明光の中心スポット領域に予め合わせておくことで、測定物に励起光を照射することなく視野内の測定物上の励起光の照射スポットを観察できる。この構成では、測定時以外の測定物への励起光の照射の機会を減らせるため、励起光が紫外光のような比較的高いエネルギーを有する光である場合であっても、励起光の照射による測定物の劣化を抑えることが可能となる。また、中心スポット領域を囲む周辺スポット領域が第1の色とは異なる第2の色で形成されるため、測定物の全体像の観察も容易となる。
【0010】
光透過部材は、中心領域が開口する色付きピンホールであってもよい。この場合、中心領域の寸法を小さくする場合でも、光透過部材の製造が容易となる。
【0011】
光透過部材において、周辺領域は、中心領域の周りに環状に設けられていてもよい。この場合、測定物上の励起光の照射スポットの視認性が高められる。
【0012】
中心領域及び周辺領域の形状は、撮像部における撮像領域の形状と一致していてもよい。この場合、中心領域の形状が撮像部での撮像画像の形状と同じとなるため、撮像領域の全体を観察することが容易となる。
【0013】
光透過部材は、第2の色とは異なる第3の色を有して周辺領域を囲う周辺領域を更に有していてもよい。この場合、測定物の全体像の観察が一層容易となる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、測定物に励起光を照射することなく視野内の測定物上の励起光の照射スポットを観察できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の一実施形態に係る測定装置の構成を示す概略図である。
図2】外部量子効率の算出手法を示す図である。
図3】標準PLスペクトルの一例を示す図である。
図4】分離光学素子の構成の一例を示す模式的な図である。
図5】標準PLスペクトル測定における励起光学系と第1の検出光学系との光学的な接続状態を示す模式的な図である。
図6】切替部の構成の一例を示す模式的な図である。
図7】照明光学系の要部を示す模式的な図である。
図8】(a)は、励起光学系と照明光学系との光学的な接続状態を示す模式的な図であり、(b)は、撮像部の視野における測定物上の励起光の照射スポットと照明スポットとの位置関係を示す模式的な図である。
図9図1に示した測定装置を用いたODPL測定のフローチャートである。
図10】準備ステップのフローチャートである。
図11】励起光照射スポット確認ステップのフローチャートである。
図12】標準PLスペクトル測定ステップのフローチャートである。
図13】外部量子効率測定ステップのフローチャートである。
図14】内部量子効率算出ステップのフローチャートである。
図15】励起光学系と照明光学系との光学的な接続状態の変形例を示す模式的な図である。
図16】(a)~(c)は、光透過部材の変形例を示す模式的な図である。
図17】(a)~(c)は、光透過部材の他の変形例を示す模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る測定装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
[測定装置の概略]
【0017】
図1は、本開示の一実施形態に係る測定装置の構成を示す概略図である。同図に示す測定装置1は、例えば測定物Sの非破壊検査を行う装置として構成されている。本実施形態では、測定物Sとして、化合物半導体結晶を例示する。より具体的には、測定物Sは、窒化ガリウム(GaN)半導体結晶である。GaN半導体は、可視/紫外の発光デバイスのほか、高周波デバイス、パワーデバイスへの応用が期待される材料である。GaN半導体を用いたデバイスの特性は、貫通転位のような構造欠陥、点欠陥、微量不純物の混入によって大きく影響を受けることが知られている。測定装置1は、デバイスの歩留まりを改善し、量産化を推進すべく、GaN半導体結晶の構造欠陥の分布及び欠陥の定量性の双方を検査する装置として構成されている。
【0018】
測定装置1では、GaN半導体結晶の構造欠陥の分布及び欠陥の定量性の双方を検査するにあたり、測定物に対する全方位フォトルミネッセンス測定(以下「ODPL測定」と記す)を実施する。ODPL測定では、前段のステップとして、積分球を用いた測定物Sの外部量子効率(EQE)の測定を実施する。また、後段のステップとして、測定物の標準フォトルミネッセンススペクトル(以下「標準PLスペクトル」と記す)を用いた測定物Sの内部量子効率(IQE)の算出を実施する。
【0019】
外部量子効率は、測定物で吸収された励起光のフォトン数に対する測定物の外部に放出された発光フォトン数の割合である。図2に示すグラフは、積分球にサンプルを配置しない状態で励起光を積分球に入力した場合に積分球から出力される被測定光のスペクトル(図2のグラフA)と、積分球にサンプルを配置した状態で励起光を積分球に入力した場合に積分球から出力される被測定光のスペクトル(図2のグラフB)とを一例として示したものである。測定物で吸収された励起光のフォトン数は、励起光の波長領域におけるグラフAのスペクトルとグラフBのスペクトルとの差分(図2の領域D1)に相当する。測定物の外部に放出された発光フォトン数は、被測定光の発光波長領域におけるグラフAのスペクトルとグラフBのスペクトルとの差分(図2の領域D2)に相当する。
【0020】
内部量子効率は、測定物で吸収された励起光のフォトン数に対する測定物で発生した発光フォトン数の割合である。内部量子効率に測定物からの光取出効率の影響を考慮したものが外部量子効率となる。測定物からの光取出効率は、当該測定物の材料によって定まる既知の値である。例えばGaN結晶の光取出効率は、2.55%であると見積もられる(”Determination of absolute value of quantum efficiency of radiation in high quality GaN single crystals using an integrating sphere” Kazunobu Kojima et al., Journal of Applied Physics 120, 015704 (2016) 参照)。
【0021】
したがって、測定物の標準PLスペクトルと外部量子効率とが得られれば、測定物の内部量子効率を導出できる。例えばGaN結晶では、結晶性が高く、欠陥数が少ない材料であるほど内部量子効率が高くなる傾向が見られる(例えば上述した非特許文献1参照)。つまり、内部量子効率は、その材料の結晶品質を直接反映しているのであり、ウェハ製造時にウェハ材料の結晶品質を評価することで、デバイスの寿命や性能に繋がる因子の評価が可能となる。
【0022】
内部量子効率の算出には、測定物の標準PLスペクトルの測定が必要となる。積分球を用いた測定は、当該積分球に入射した光及び測定物から発生した全方位の光を検出することになる。積分球を用いて標準PLスペクトルの測定を実施しようとした場合、例えば図3に示すように、全方位の発光を検出するため、標準PLスペクトルが本来有するピーク(図3のピークA)の他にスペクトルのピーク(図3のピークB)が生じてしまうこととなる。このため、一般的には、測定物の標準PLスペクトルの測定を実施する際に積分球は用いられていない。これに対し、測定装置1では、測定の利便性の観点から、積分球に測定物を配置したままの状態で測定物の標準PLスペクトルの測定を実施できるように構成に工夫がなされている。以下、この測定装置1の構成について詳述する。
[測定装置の構成]
【0023】
測定装置1は、図1に示すように、励起光源2と、励起光学系3と、積分球4と、XYステージ5と、光検出器6と、第1の検出光学系7と、第2の検出光学系8と、照明光源9と、照明光学系10と、撮像部11と、演算部12とを備えて構成されている。本実施形態では、金属等の部材によって構成された筐体13内に、励起光学系3、積分球4、光検出器6、第1の検出光学系7、第2の検出光学系8、照明光源9、照明光学系10、及び撮像部11が収容されている。励起光源2、XYステージ5、及び演算部12は、筐体13に対して外付けとなっている。
【0024】
励起光源2は、測定物Sに対する励起光L1を出力する装置である。励起光源2は、コヒーレント光源及びインコヒーレント光源のいずれであってもよい。コヒーレント光源としては、例えばエキシマレーザ(波長193nm)、YAGレーザ第2高調波(波長532nm)、YAGレーザ第4高調波(波長266nm)、HeCdレーザ(波長325nm)、半導体励起全固体UVレーザ(波長320nm)、半導体レーザ(例えばInGaN半導体レーザ(波長375nm~530nm)、赤色半導体レーザ、赤外半導体レーザ)などを用いることができる。インコヒーレント光源としては、例えば水銀ランプ(波長365nm)、LED光源、SLD光源などを用いることができる。励起光源2から出力される励起光L1は、パルス光及びCW光のいずれであってもよい。測定物SがGaN半導体結晶である場合、励起光源2としては、上記光源のうち、例えばYAGレーザ第4高調波、HeCdレーザ、半導体励起全固体UVレーザが用いられる。
【0025】
励起光学系3は、測定物Sに向けて励起光L1を導光する光学系である。励起光学系3は、例えば可変減衰フィルタ16と、ミラー17と、分離光学素子18と、レンズ19とを含んで構成されている。可変減衰フィルタ16は、測定物Sに照射する励起光L1の強度を変化させるための素子であり、測定物Sに向かう励起光L1の強度を調整する。
【0026】
分離光学素子18は、積分球4内の測定物Sに向かう励起光L1の光軸と、励起光L1の照射によって測定物Sで生じた被測定光L2の光軸とを分離する素子である。本実施形態では、分離光学素子18は、図4に示すように、いわゆる孔開きミラーによって構成されており、励起光L1を通過させる開口部21と、後述の被測定光L2及び照明光L3を反射する反射面22とを有している。反射面22において、被測定光L2は、開口部21からずれた位置で反射する。これにより、積分球4内の測定物Sに向かう励起光L1の光軸と、積分球4から出力して光検出器6に向かう被測定光L2の光軸とが分離される。
【0027】
レンズ19は、例えば凸レンズによって構成されている。レンズ19は、積分球4に向かう励起光L1及び照明光L3を測定物Sの表面に集光する。すなわち、レンズ19は、積分球4内の測定物S上に励起光L1の照射スポットLa及び照明光L3の照明スポットLbを形成する(図8(a)参照)。また、レンズ19は、積分球4からの被測定光L2及び照明光L3を平行光化する。
【0028】
積分球4は、反射コーティングが施された球体内壁で光を拡散反射させて空間的に積分する装置である。積分球4の形状は、球状に限られず、半球状であってもよい。積分球4の内部には、測定物Sが配置されている。本実施形態では、XYステージ5に接続されたアーム23の先端部分が積分球4の内部に延びており、当該アーム23の先端部分に測定物Sが保持されている。これにより、測定物Sは、積分球4の内部においてXY面内方向に走査可能となっている。
【0029】
積分球4は、第1のポート24及び第2のポート25を有している。第1のポート24は、XYステージ5による測定物Sの走査面(XY面)に直交する方向に開口している。第2のポート25は、第1のポート24の開口方向と直交する方向(X方向又はY方向)に開口している。本実施形態では、第1のポート24が標準PLスペクトル測定用のポートとなっており、第2のポート25が外部量子効率測定用のポートとなっている。標準PLスペクトル測定では、励起光学系3によって測定物Sに向かう励起光L1と、積分球4内の測定物Sで生じた被測定光L2とが、いずれも積分球4の第1のポート24を通るようになっている。外部量子効率測定では、励起光学系3によって測定物Sに向かう励起光L1が第1のポート24を通り、積分球4内で拡散反射した被測定光L2が第2のポート25を通るようになっている。
【0030】
光検出器6は、励起光L1の照射によって積分球4内の測定物で生じた被測定光L2を検出する装置である。光検出器6は、切替部31を介し、第1の検出光学系7及び第2の検出光学系8の一方に対して光学的に接続されている。光検出器6としては、例えばCMOS、CCD、EM-CCD、光電子増倍管、SiPM(MPPC)、APD(SPAD)、フォトダイオード(アレイ状のものも含む)などを用いることができる。本実施形態では、光検出器6は、BT-CCD(裏面入射型CCDを内蔵したマルチチャンネル光検出器)によって構成されている。光検出器6は、検出結果に基づく信号を演算部12に出力する。光検出器6には、被測定光L2の飽和を抑制するための素子(例えば可変減衰フィルタ)が内蔵されていてもよい。
【0031】
第1の検出光学系7は、標準PLスペクトル測定において、積分球4から光検出器6に向けて被測定光L2を導光する光学系である。第1の検出光学系7は、励起光学系3と共通のレンズ19及び分離光学素子18に加え、ダイクロイックミラー32と、ミラー33と、レンズ34とを含んで構成されている。積分球4の第1のポート24から出力した被測定光L2は、第1の検出光学系7によって導光され、光検出器入力端35を介して光検出器6に入力される。
【0032】
図5は、標準PLスペクトル測定における励起光学系と第1の検出光学系との光学的な接続状態を示す模式的な図である。同図に示すように、標準PLスペクトル測定では、積分球4に測定物Sを配置したままの状態で標準PLスペクトルの測定を実施するにあたり、測定物Sに向かう励起光L1の光軸と、励起光L1の照射によって測定物Sで生じた被測定光L2の光軸とが上述した分離光学素子18によって分離されている。このため、励起光学系3においてレンズを介して積分球4内の測定物Sに入射する励起光L1の光軸と、第1の検出光学系7において積分球4から出射する被測定光L2の光軸とが一定の角度を持って斜交した状態となっている。
【0033】
図5の例では、積分球4に入射する励起光L1の光軸が測定物Sの表面(XY面)に対して傾斜しており、積分球4から出射する被測定光L2の光軸が測定物Sの表面(XY面)に対して垂直となっている。このように、励起光L1の光軸と被測定光L2の光軸とが斜交することで、積分球4内の測定物Sで反射した励起光L1が光検出器6で直接検出されることを防止できる。
【0034】
第1の検出光学系7には、光検出器6における被測定光L2の検出範囲を制限する開口部36が設けられている。本実施形態では、光検出器6は、ファイバ入力型の検出器となっている。また、光検出器入力端35は、光ファイバの素線を束ねたバンドルファイバ37によって構成されている。したがって、本実施形態では、バンドルファイバ37の端面37aが光検出器6における被測定光L2の検出範囲を制限する開口部36に相当する。
【0035】
図5に示すように、測定物Sに向かう励起光L1は、レンズ19によって集光され、測定物Sの表面に結像する。励起光L1の照射によって測定物Sで生じた被測定光L2は、レンズ19によって平行光化された後、レンズ34によって集光され、バンドルファイバ37の端面37a(開口部36)に結像する。すなわち、測定物S上の励起光L1の照射スポットLaと開口部36とは、光学的に共役な関係となっている。照射スポットLaと開口部36とが光学的に共役な関係となっていることで、積分球4内での多重散乱の影響を抑制でき、励起光L1の入射によって測定物Sの表面で発生した被測定光L2のみを積分球4から取り出して検出することが可能となる。したがって、測定装置1では、積分球4に測定物Sを配置したままの状態で測定物Sの標準PLスペクトルの測定を実施できる。
【0036】
第2の検出光学系8は、外部量子効率測定において、積分球4内で拡散反射した被測定光L2を積分球4から光検出器6に向けて導光する光学系である。第2の検出光学系8では、積分球4の第2のポート25から出力した被測定光L2は、第1の検出光学系7とは別の光検出器入力端38を介して光検出器6に入力される。光検出器入力端38は、例えば第1の検出光学系7の光検出器入力端35と同様に、光ファイバの素線を束ねたバンドルファイバ39(図6参照)によって構成されている。
【0037】
切替部31は、光検出器6に対して第1の検出光学系7及び第2の検出光学系8の一方を光学的に接続する部分である。切替部31は、例えば図6に示すように、一対のライトガイド41A,41Bと、軸外し放物面ミラー42とを含んで構成されている。ライトガイド41Aには、第1の検出光学系7側の光検出器入力端35(バンドルファイバ37)が光学的に接続されている。ライトガイド41Bには、第2の検出光学系8側の光検出器入力端38(バンドルファイバ39)が光学的に接続されている。軸外し放物面ミラー42は、例えばステッピングモータ等の駆動手段によって反射面の向きが可変となっている。軸外し放物面ミラー42がライトガイド41A,41Bの一方と光学的に結合することで、ライトガイド41Aからの励起光L1及びライトガイド41Bからの励起光L1の一方のみが光検出器6に向けて導光される。
【0038】
測定装置1は、測定物S上の励起光L1の照射スポットを観察するための構成として、図1に示すように、照明光源9と、撮像部11と、照明光学系10とを備えている。照明光源9は、測定物Sに対する照明光L3を出力する装置である。照明光源9としては、例えば白色光を出力可能なLEDを用いることができる。撮像部11は、照明光L3による測定物S上の照明スポットLb(図8(a)及び(b)参照)を撮像する部分である。撮像部11としては、例えば可視域に感度を有する装置を用いることができる。かかる装置としては、例えばカラーCMOS、カラーCCDカメラなどが挙げられる。
【0039】
照明光学系10は、第1の検出光学系7と共通のレンズ19、分離光学素子18、及びダイクロイックミラー32に加え、光透過部材45と、ダイクロイックミラー46と、レンズ47,48とを含んで構成されている。光透過部材45は、照明光L3に励起光L1の照射スポットの識別のための色を付すための部材である。光透過部材45は、アクリル或いはガラスなどの光透過性を有する部材によって円盤状に形成されている。
【0040】
光透過部材45は、図7に示すように、第1の色を有する円形の中心領域51と、第1の色とは異なる第2の色を有して中心領域51を囲う円環状の周辺領域52とを有している。ここでは、光透過部材45は、中心領域51が開口する色付きピンホール53によって構成されており、第1の色は無色である。周辺領域52の第2の色は、任意の色を用いることができ、例えば緑色である。光透過部材45を経た照明光L3では、中心領域51を通った部分の色は、白色のままであり、周辺領域52を通った部分の色は、白色から緑色に変化する。
【0041】
図8(a)は、励起光学系と照明光学系との光学的な接続状態を示す模式的な図である。同図に示すように、光透過部材45を経た照明光L3は、ダイクロイックミラー32等によって積分球4内の測定物Sに導光される。照明光L3は、レンズ47によって平行光化された後、レンズ19によって集光され、測定物Sの表面に結像する。これにより、測定物Sの表面に照明光L3による照明スポットLbが形成される。
【0042】
図8(a)及び図8(b)の例では、積分球4内の測定物Sに向かう照明光L3の光軸は、積分球4から出力する被測定光L2の光軸と一致している。このため、測定物Sに向かう励起光L1の光軸は、測定物Sに向かう照明光L3の光軸と斜交している。ここでは、測定物Sに入射する励起光L1の光軸は、上述したように測定物Sの表面(XY面)に対して傾斜しており、照明光L3の光軸は、測定物Sの表面(XY面)に対して垂直となっている。測定物Sの表面で反射した照明光L3は、ダイクロイックミラー32等によって撮像部11に導光される。照明光L3は、レンズ19によって平行光化された後、レンズ48によって集光され、撮像部11の撮像面に結像する。
【0043】
励起光学系3と照明光学系10とは、図8(b)に示すように、撮像部11の視野内において、測定物Sにおける励起光L1の照射スポットLaが中心領域51を通った照明光L3による中心スポット領域Lcに含まれ、且つ周辺領域52を通った照明光L3による周辺スポット領域Ldに囲まれるように光学的に接続されている。図8(b)の例では、白色をなす円形の中心スポット領域Lcの略中心に励起光L1の照射スポットLaが位置し、その周囲に緑色をなす円環状の周辺スポット領域Ldが位置している。
【0044】
積分球4に測定物Sと同等のターゲットを配置し、励起光L1の照射スポットLaを照明光L3の中心スポット領域Lcに予め合わせておくことで、実際の標準PLスペクトル測定及び外部量子効率測定を行う際に、測定物Sに励起光L1を照射することなく視野内の測定物S上の励起光L1の照射スポットLaを観察できる。また、中心スポット領域Lcを囲う周辺スポット領域Ldが第2の色をなすことで、励起光L1の照射スポットLa周辺の測定物Sの構造を撮像部11で観察することも可能となる。
【0045】
励起光L1の照射スポットLaと照明光L3の中心スポット領域Lcとの位置合わせを行う場合、例えば積分球4に測定物Sと同等のターゲット治具を配置する。ターゲット治具の中心には、例えば丸型などの印を付しておく。この状態で分離光学素子18及びダイクロイックミラー46の角度を調整し、照射スポットLaの位置及び照明光L3の中心スポット領域Lcの位置をそれぞれターゲット治具の印に合わせることで、励起光L1の照射スポットLaと照明光L3の中心スポット領域Lcとの位置合わせを実施できる。
【0046】
演算部12は、光検出器6から出力される信号に基づいて、測定物Sの外部量子効率及び内部量子効率を算出する部分である。物理的には、RAM、ROMなどのメモリ、CPUなどのプロセッサ(演算回路)、通信インターフェイス、ハードディスクなどの格納部、ディスプレイなどの表示部を備えて構成されたコンピュータシステムである。コンピュータシステムとしては、例えばパーソナルコンピュータ、クラウドサーバ、スマートデバイス(スマートフォン、タブレット端末など)などが挙げられる。演算部12は、PLC(programmable logic controller)によって構成されていてもよく、FPGA(Field-programmable gate array)等の集積回路によって構成されていてもよい。
【0047】
演算部12は、標準PLスペクトル測定において、光検出器6から出力される信号に基づいて標準PLスペクトルの測定データを生成し、当該測定データを格納部に保存する。演算部12は、外部量子効率測定において、光検出器6から出力される信号(測定信号及びリファレンス信号)に基づいて測定物Sの外部量子効率を算出し、算出データを格納部に保存する。また、演算部12は、標準PLスペクトルの測定データと外部量子効率の算出データとに基づいて測定物Sの内部量子効率を算出し、算出データを格納部に保存する。演算部12は、得られた標準PLスペクトルの測定データ、外部量子効率の算出データ、及び内部量子効率の算出データをモニタ等に出力してもよい。
[測定装置を用いたODPL測定の実施手順]
【0048】
図9は、測定装置を用いたODPL測定のフローチャートである。同図に示すように、測定装置1を用いたODPL測定では、準備ステップ(ステップS01)、励起光照射スポット確認ステップ(ステップS02)、標準PLスペクトル測定ステップ(ステップS03)、外部量子効率測定ステップ(ステップS04)、内部量子効率算出ステップ(ステップS05)を順に実施する。
【0049】
準備ステップS01では、図10に示すように、まず、切替部31の設定を行う(ステップS11)。ここでは、切替部31の軸外し放物面ミラー42を駆動し、光検出器6に対して第2の検出光学系8を光学的に接続する。次に、励起光源2から励起光L1を出力し(ステップS12)、励起光L1の強度の調整を行う(ステップS13)。励起光L1の強度の調整は、励起光L1の入射によって積分球4から出力される光が光検出器6で飽和しないように、可変減衰フィルタ16或いは光検出器6に内蔵される可変減衰フィルタ等を調整することによって実施される。励起光L1の強度の調整後、励起光L1の出力を停止する(ステップS14)。そして、XYステージ5のアーム23を積分球4から外してから測定物Sを保持し、アーム23に保持された状態で測定物Sを積分球4内に配置する(ステップS15)。
【0050】
励起光照射スポット確認ステップS02では、図11に示すように、まず、照明光源9から照明光L3を出力する(ステップS21)。次に、照明光L3の照射によって積分球4内の測定物S上に形成される照明光L3の照明スポットLbを撮像部11によって撮像する(ステップS22)。視野内の測定物S上の照射スポットLaにおける中心領域51及び周辺領域52を観察することで、測定物Sにおける励起光L1の照射スポットLaを確認できる。励起光L1の照射スポットLaを確認した後、必要に応じてXYステージ5による測定物Sの位置調整を行い(ステップS23)、照射光の出力を停止する(ステップS24)。
【0051】
標準PLスペクトル測定ステップS03では、図12に示すように、まず、切替部31の設定を行う(ステップS31)。ここでは、切替部31の軸外し放物面ミラー42を駆動し、光検出器6に対して第1の検出光学系7を光学的に接続する。次に、励起光源2から励起光L1を出力して積分球4内の測定物Sに励起光L1を入射し(ステップS32)、光検出器6の露光時間の設定を行う(ステップS33)。光検出器6の露光時間を設定した後、励起光L1の照射によって積分球4の第1のポート24から出力される被測定光L2を第1の検出光学系7によって光検出器6に導光し、測定物Sの標準PLスペクトル測定を実施する(ステップS34)。測定終了後、励起光の出力を停止し(ステップS35)、測定データを保存する(ステップS36)。
【0052】
外部量子効率測定ステップS04では、図13に示すように、まず、切替部31の設定を行う(ステップS41)。ここでは、切替部31の軸外し放物面ミラー42を駆動し、光検出器6に対して第2の検出光学系8を光学的に接続する。次に、励起光源2から励起光L1を出力して積分球4内の測定物Sに励起光L1を入射し(ステップS42)、光検出器6の露光時間の設定を行う(ステップS43)。光検出器6の露光時間を設定した後、励起光L1の照射によって積分球4の第2のポート25から出力される被測定光L2を第2の検出光学系8によって光検出器6に導光し、拡散反射光の測定を実施する(ステップS44)。測定終了後、励起光L1の出力を停止し(ステップS45)、積分球4から測定物Sを取り出す(ステップS46)。
【0053】
測定物Sを取り出した後、再び励起光L1の出力を開始し(ステップS46)、リファレンス測定を実施する(ステップS47)。リファレンス測定では、積分球4に測定物Sを配置しない状態で、積分球4の第2のポート25から出力される被測定光L2を第2の検出光学系8によって光検出器6に導光し、拡散反射光の測定を実施する(ステップS48)。測定終了後、励起光L1の出力を停止する(ステップS49)。その後、ステップS44の測定結果とステップS48の測定結果に基づいて、測定物Sで吸収された励起光L1のフォトン数に対する測定物Sの外部に放出された発光フォトン数の割合を算出する。これにより、測定物Sの外部量子効率を算出し(ステップS50)、算出データを保存する(ステップS51)。
【0054】
内部量子効率算出ステップS05では、図14に示すように、ステップS36で保存した標準PLスペクトル測定の測定データと、ステップS51で保存した外部量子効率の算出データとをそれぞれ読み込む(ステップS61)。次に、読み込みを行った標準PLスペクトル測定の測定データと、外部量子効率の算出データと、材料によって既知である測定物Sの光取出効率とに基づいて、測定物Sの内部量子効率を算出する(ステップS62)。算出データを保存し、処理が完了する(ステップS63)。
[測定装置の作用効果]
【0055】
以上説明したように、測定装置1では、照明光学系10に含まれる光透過部材45により、照明光L3が照射された測定物Sにおいて、中心スポット領域Lcの周りに第1の色とは異なる第2の色で周辺スポット領域Ldが形成される。したがって、励起光L1の照射スポットLaを照明光L3の中心スポット領域Lcに予め合わせておくことで、測定物Sに励起光L1を照射することなく視野内の測定物S上の励起光L1の照射スポットLaを観察できる。この構成では、測定時以外の測定物Sへの励起光L1の照射の機会を減らせるため、励起光L1が紫外光のような比較的高いエネルギーを有する光である場合であっても、励起光L1の照射による測定物Sの劣化を抑えることが可能となる。また、中心スポット領域Lcを囲む周辺スポット領域Ldが第1の色とは異なる第2の色で形成されるため、測定物Sの全体像の観察も容易となる。
【0056】
本実施形態では、光透過部材45は、中心領域51が開口する色付きピンホールによって構成されている。この場合、中心スポット領域Lcの寸法を小さくする場合でも、光透過部材の製造が容易となる。また、光透過部材45において、周辺領域52が中心領域51の周りに環状に設けられているため、測定物S上の励起光L1の照射スポットLaの視認性が高められる。
[変形例]
【0057】
本開示は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では、ODPL測定によって半導体ウェハの構造欠陥の分布及び欠陥の定量性を検査する測定装置1を例示したが、本開示は、測定物に向けて励起光を導光する励起光学系を備えた他の測定装置に対して適用することができる。他の測定装置は、必ずしも積分球を備えた装置に限られない。かかる他の測定装置としては、例えば蛍光顕微鏡、フォトルミネッセンス測定装置などが挙げられる。上記実施形態では、図8(a)に示したように、積分球4に向かう励起光L1の光軸が積分球4に向かう照明光L3の光軸と斜交する態様となっているが、他の測定装置では、例えば図15に示すように、ダイクロイックミラー55を用いることにより、測定物Sに向かう励起光L1の光軸と、測定物Sに向かう照明光L3の光軸とが一致していてもよい。
【0058】
測定物S上に中心スポット領域Lc及び周辺スポット領域Ldを形成する光透過部材45についても、種々の変形を採用し得る。例えば図7の例では、中心領域51が開口する色付きピンホール53によって光透過部材45が構成されているが、中心領域51がピンホールによる空間ではなく、例えば無色のアクリルによって形成されていてもよい。このような構成においても、測定物Sに励起光L1を照射することなく視野内の測定物S上の励起光L1の照射スポットLaを観察できる。
【0059】
光透過部材45の中心領域51及び周辺領域52の配置パターンも種々の変形を採用し得る。例えば図16(a)に示す光透過部材45Aのように、第1の色をなす円形の中心領域51の周囲に、第2の色をなす円環状の周辺領域52が配置されていてもよい。例えば図16(b)に示す光透過部材45Bのように、第1の色をなす円形の中心領域51の周囲に、当該中心領域51から径方向に延びる第2の色の周辺領域52が配置されていてもよい。図16(b)の例では、4つの帯状の周辺領域52が中心領域51の周囲に90°の位相角をもって配置されている。これらの構成によれば、視野内の測定物S上の励起光L1の照射スポットLaを観察するにあたって、照明光L3の照明スポットLbの視認性を十分に確保できる。
【0060】
また、例えば図16(c)に示す光透過部材45Cのように、第2の色とは異なる第3の色を有して周辺領域52を囲う周辺領域54を更に有していてもよい。この場合、周辺領域52の外側に周辺領域54が更に拡張されるため、測定物Sの全体像の観察が一層容易となる。周辺領域52に付与される第3の色は、第1の色と同じであってもよく、第1の色と異なっていてもよい。
【0061】
例えば図17(a)に示す光透過部材45Dのように、中心領域51及び周辺領域52の形状が、撮像部11の撮像領域の形状と一致していてもよい。図17(a)の例では、撮像部11の撮像領域(撮像部11を構成する撮像素子の画素領域)は、長方形となっている。これに対応して、中心領域51及び周辺領域52の形状がいずれも長方形となっている。このような構成によれば、中心領域51の形状が撮像部11での撮像画像の形状と同じとなるため、撮像領域の全体を観察することが容易となる。
【0062】
例えば図17(b)に示す光透過部材45Eのように、周辺領域52が中心領域51との境界部分のみに配置されていてもよい。また、例えば図17(c)に示す光透過部材45Fのように、中心領域51との境界部分に配置された周辺領域52が周方向に非連続となっていてもよい。図17(c)の例では、周辺領域52は、光透過部材45Fの周方向に4分割されている。これらの構成においても、視野内の測定物S上の励起光L1の照射スポットLaを観察するにあたって、照明光L3の照明スポットLbの視認性を十分に確保できる。
【符号の説明】
【0063】
1…測定装置、3…励起光学系、10…照明光学系、11…撮像部、45,45A~45F…光透過部材、51…中心領域、53…色付きピンホール、52,54…周辺領域、L1…励起光、La…照射スポット、Lb…照明スポット、Lc…中心スポット領域、Ld…周辺スポット領域、S…測定物。
図1
図2
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