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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-23
(45)【発行日】2025-07-01
(54)【発明の名称】物体検出システムおよび物体検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 15/931 20200101AFI20250624BHJP
【FI】
G01S15/931
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021113070
(22)【出願日】2021-07-07
(65)【公開番号】P2023009631
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2024-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅江 一平
(72)【発明者】
【氏名】井奈波 恒
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-215236(JP,A)
【文献】特開2020-056722(JP,A)
【文献】特開2019-066383(JP,A)
【文献】特表2020-505603(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0225345(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/64
G01S 13/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔を有して配列された複数の物体検出装置を備え、
前記複数の物体検出装置の各々は、
所定期間で所定値以上の振幅が得られる周波数パターンの初期信号に基づく周波数変調に続き、前記初期信号と異なる周波数パターンで変化する複数のチャープ信号として、周波数が単調に増加する第1チャープ信号と周波数が単調に減少する第2チャープ信号の組み合わせに基づく周波数変調が、隣接する前記物体検出装置を含めた相互で異なる態様になるように施された送信波を、他の前記物体検出装置と略同時に送信する所定範囲の指向性を有する送信部と、
前記所定範囲に送信した前記送信波のうち物体での反射に応じて戻ってきた前記送信波としての受信波を受信する指向性を有する受信部と、
前記送信波および前記受信波の送受信の結果として取得される情報に基づいて、前記物体に関する情報を検出する検出処理部と、
を備える、物体検出システム。
【請求項2】
前記送信部は、前記複数の物体検出装置のそれぞれが全て異なる周波数パターンで変化するように前記チャープ信号に基づく周波数変調を施す、請求項1に記載の物体検出システム。
【請求項3】
前記初期信号は、前記物体検出装置のマイクロフォンの共振周波数となる周波数変調を行う、請求項1または請求項2に記載の物体検出システム。
【請求項4】
所定期間で所定値以上の振幅が得られる周波数パターンの初期信号に基づく周波数変調に続き、前記初期信号と異なる周波数パターンで変化する複数のチャープ信号として、周波数が単調に増加する第1チャープ信号と周波数が単調に減少する第2チャープ信号の組み合わせに基づく周波数変調が、隣接する物体検出装置を含めた相互で異なる態様になるように施された送信波を、他の前記物体検出装置と略同時に送信する所定範囲の指向性を有する送信部と、
前記所定範囲に送信した前記送信波のうち物体での反射に応じて戻ってきた前記送信波としての受信波を受信する指向性を有する受信部と、
前記送信波および前記受信波の送受信の結果として取得される情報に基づいて、前記物体に関する情報を検出する検出処理部と、
を備える、物体検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物体検出システムおよび物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波を送信波として送信し、物体により反射されて戻ってきた送信波としての受信波を受信することで、例えば物体までの距離のような、物体に関する情報を検出する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開WO2019/065282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の技術においては、物体に関する情報を検出するための物体検出装置が複数設けられたシステムが実現されることがある。このようなシステムにおいては、物体に関する情報をより詳細に検出するために、複数の物体検出装置の各々から、送信波が略同時に(同時並行的に)送信されることがある。この場合、干渉などを抑制するために、送信波の識別性を高めることが望まれる。
【0005】
そこで、本開示の課題の一つは、送信波の識別性を高めることが可能な物体検出システムおよび物体検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一例としての物体検出システムは、所定間隔を有して配列された複数の物体検出装置を備え、複数の物体検出装置の各々は、所定期間で所定値以上の振幅が得られる周波数パターンの初期信号に基づく周波数変調に続き、初期信号と異なる周波数パターンで変化する複数のチャープ信号として、周波数が単調に増加する第1チャープ信号と周波数が単調に減少する第2チャープ信号の組み合わせに基づく周波数変調が、隣接する物体検出装置を含めた相互で異なる態様になるように施された送信波を、他の物体検出装置と略同時に送信する所定範囲の指向性を有する送信部と、所定範囲に送信した送信波のうち物体での反射に応じて戻ってきた送信波としての受信波を受信する指向性を有する受信部と、送信波および受信波の送受信の結果として取得される情報に基づいて、物体に関する情報を検出する検出処理部と、を備える。この構成によれば、例えば、送信波が所定振幅以上に変調された後に、チャープ信号に基づく変調が行われる。このとき、隣接する物体検出装置を含めた相互で、異なる態様の周波数変調が行われる。その結果、所定振幅以上に変調されることのより、受信波においてチャープ信号に基づく周波数変調のはじめから、チャープ信号に基づく識別効果を有効活用可能となり、SN比の改善ができる。また、隣接する物体検出装置を含めた相互で、異なる態様の周波数変調が行われることで、送信波(受信波)の識別性を高めることができる。また、例えば、簡素な波形の2つのチャープ信号により、送信波(受信波)の識別性を容易に高めることができる。
【0008】
また、上述の物体検出システムの送信部は、例えば、複数の物体検出装置の各々が全て異なる周波数パターンで変化するようにチャープ信号に基づく周波数変調を施すようにしてもよい。この構成によれば、例えば、複数の物体検出装置の識別性をさらに向上することができる。
【0009】
また、上述の物体検出システムの初期信号は、例えば、物体検出装置のマイクロフォンの共振周波数となる周波数変調を行うようにしてもよい。この構成によれば、例えば、送信波の振幅を効率的に大きくした状態でチャープ信号に基づく送信波を送信することが可能で、符号化利得によるSN比の改善を効果的に行うことができる。
【0010】
本開示の一例としての物体検出装置は、所定期間で所定値以上の振幅が得られる周波数パターンの初期信号に基づく周波数変調に続き、初期信号と異なる周波数パターンで変化する複数のチャープ信号として、周波数が単調に増加する第1チャープ信号と周波数が単調に減少する第2チャープ信号の組み合わせに基づく周波数変調が、隣接する物体検出装置を含めた相互で異なる態様になるように施された送信波を、他の物体検出装置と略同時に送信する所定範囲の指向性を有する送信部と、所定範囲に送信した前記送信波のうち物体での反射に応じて戻ってきた送信波としての受信波を受信する指向性を有する受信部と、送信波および受信波の送受信の結果として取得される情報に基づいて、物体に関する情報を検出する検出処理部と、を備える。この構成によれば、例えば、送信波が所定振幅以上に変調された後に、チャープ信号に基づく変調が行われる。このとき、隣接する物体検出装置を含めた相互で、異なる態様の周波数変調が行われる。その結果、所定振幅以上に変調されることのより、受信波においてチャープ信号に基づく周波数変調のはじめから、チャープ信号に基づく識別効果を有効活用可能となり、SN比の改善ができる。また、隣接する物体検出装置を含めた相互で、異なる態様の周波数変調が行われることで、送信波(受信波)の識別性を高めることができる。また、例えば、簡素な波形の2つのチャープ信号により、送信波(受信波)の識別性を容易に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態にかかる物体検出システムを備えた車両を上方から見た外観を示した例示的かつ模式的な図である。
図2図2は、実施形態にかかる物体検出システムのECU(電子制御装置)および物体検出装置の概略的なハードウェア構成を示した例示的かつ模式的なブロック図である。
図3図3は、実施形態にかかる物体検出装置が物体までの距離を検出するために利用する技術の概要を説明するための例示的かつ模式的な図である。
図4図4は、実施形態にかかる物体検出装置の詳細な構成を示した例示的かつ模式的なブロック図である。
図5図5は、実施形態にかかる物体検出システムの送信チャープ変調パターンを示した例示的かつ模式的な図である。
図6図6は、実施形態にかかる物体検出システムにおいて、複数の物体検出装置から同時に送信波を送信する場合に用いる、各々が異なる送信チャープ変調パターンを示した例示的かつ模式的な図である。
図7図7は、実施形態にかかる物体検出システムが物体までの距離を検出するために実行する一連の処理を示した例示的かつ模式的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態および変形例を図面に基づいて説明する。以下に記載する実施形態および変形例の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および効果は、あくまで一例であって、以下の記載内容に限られるものではない。
【0013】
図1は、実施形態にかかる物体検出システムを備えた車両1を上方から見た外観を示した例示的かつ模式的な図である。
【0014】
図1に示されるように、物体検出システムは、一対の前輪3Fと一対の後輪3Rとを含んだ四輪の車両1の内部に搭載されたECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)100と、車両1の外装に搭載された物体検出装置201~208と、を備えている。
【0015】
図1に示される例では、一例として、物体検出装置201~204が、車両1の外装としての車体2の後端の例えばリヤバンパにおいて、車幅方向に所定間隔で互いに異なる位置に設置(配列)されている。また、物体検出装置205~208が、車体2の前端の例えばフロントバンパにおいて、車幅方向に所定間隔で互いに異なる位置に設置(配列)されている。
【0016】
ここで、本実施形態において、物体検出装置201~208が有するハードウェア構成および機能は、それぞれ同一である。したがって、以下では、簡単化のため、物体検出装置201~208を総称して物体検出装置200と記載することがある。また、各物体検出装置200間の所定間隔は、バンパの形状等に応じて適宜調整可能であり、厳密に一致する必要はなくい。また、上下方向にずれていてもよい。
【0017】
また、本実施形態において、物体検出装置200の設置位置は、図1に示される例に限られるものではない。物体検出装置200は、リヤバンパとフロントバンパの少なくとも一方に加え、車体2の側面に設置されてもよい。また、物体検出装置200は、リヤバンパ、フロントバンパ、および側面のいずれかの位置に設置されてもよい。また、実施形態では、物体検出装置200の個数も、図1に示される例に限られるものではない。ただし、実施形態の技術は、物体検出装置200が複数存在する構成に有効である。
【0018】
本実施形態にかかる物体検出システムは、以下に説明するような構成に基づき、超音波の送受信を行い、当該送受信の時間差などを取得することで、周囲に存在する人間を含む物体(例えば後述する図2に示されるオブジェクトO)に関する情報を検出する。
【0019】
図2は、実施形態にかかる物体検出システムのECU100および物体検出装置200のハードウェア構成を示した例示的かつ模式的なブロック図である。
【0020】
図2に示されるように、ECU100は、通常のコンピュータと同様のハードウェア構成を備えている。より具体的に、ECU100は、入出力装置110と、記憶装置120と、プロセッサ130と、を備えている。
【0021】
入出力装置110は、ECU100と外部(図1に示される例では物体検出装置200)との間における情報の送受信を実現するためのインターフェースである。
【0022】
記憶装置120は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などといった主記憶装置、および/または、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などといった補助記憶装置を含んでいる。
【0023】
プロセッサ130は、ECU100において実行される各種の処理を司る。プロセッサ130は、例えばCPU(Central Processing Unit)などといった演算装置を含んでいる。プロセッサ130は、記憶装置120に記憶されたコンピュータプログラムを読み出して実行することで、例えば駐車支援などといった各種の機能を実現する。
【0024】
一方、図2に示されるように、物体検出装置200は、送受波器210と、制御部220と、を備えている。これらの構成により、物体検出装置200は、車両1の周囲に存在する物体までの距離を検出する車載センサの一例としての車載ソナーとして構成される。
【0025】
送受波器210は、圧電素子などの振動子211を有しており、当該振動子211により、超音波の送受信を実現する。
【0026】
より具体的に、送受波器210は、振動子211の振動に応じて発生する超音波を送信波として送信し、当該送信波として送信された超音波が外部に存在する物体で反射されて戻ってくることでもたらされる振動子211の振動を受信波として受信する。図2に示される例では、送受波器210からの超音波を反射しうる物体として、路面RSと、当該路面RS上に設置されたオブジェクトOが例示されている。
【0027】
なお、図2に示される例では、送信波の送信と受信波の受信との両方が単一の振動子211を有した単一の送受波器210により実現される構成が例示されている。しかしながら、実施形態の技術は、例えば、送信波の送信用の振動子と受信波の受信用の振動子とが別々に設けられた構成のような、送信側の構成と受信側の構成とが分離された構成にも当然に適用可能である。
【0028】
制御部220は、通常のコンピュータと同様のハードウェア構成を備えている。より具体的に、制御部220は、入出力装置221と、記憶装置222と、プロセッサ223と、を備えている。
【0029】
入出力装置221は、制御部220と外部(図1に示される例ではECU100および送受波器210)との間における情報の送受信を実現するためのインターフェースである。
【0030】
記憶装置222は、ROMやRAMなどといった主記憶装置、および/または、HDDやSSDなどといった補助記憶装置を含んでいる。
【0031】
プロセッサ223は、制御部220において実行される各種の処理を司る。プロセッサ223は、例えばCPUなどといった演算装置を含んでいる。プロセッサ223は、記憶装置222に記憶されたコンピュータプログラムを読み出して実行することで、各種の機能を実現する。
【0032】
ここで、実施形態にかかる物体検出装置200は、いわゆるTOF(Time Of Flight)法と呼ばれる技術により、物体に関する情報として、物体までの距離を検出する。以下に詳述するように、TOF法とは、送信波が送信された(より具体的には送信され始めた)タイミングと、受信波が受信された(より具体的には受信され始めた)タイミングとの差を考慮して、物体までの距離を算出する技術である。
【0033】
図3は、実施形態にかかる物体検出装置200が物体までの距離を検出するために利用する技術の概要を説明するための例示的かつ模式的な図である。
【0034】
図3に示される例では、実施形態にかかる物体検出装置200が送受信する超音波の信号レベル(例えば振幅)の時間変化がグラフ形式で表されている。図3に示されるグラフにおいて、横軸は、時間に対応し、縦軸は、物体検出装置200が送受波器210(振動子211)を介して送受信する信号の信号レベルに対応する。
【0035】
図3に示されるグラフにおいて、実線L11は、物体検出装置200が送受信する信号の信号レベル、つまり振動子211の振動の度合の時間変化を表す包絡線(エンベロープ波形)の一例を表している。この実線L11からは、振動子211がタイミングt0から時間Taだけ駆動されて振動することで、タイミングt1で送信波の送信が完了し、その後タイミングt2に至るまでの時間Tbの間は、慣性による振動子211の振動が減衰しながら継続する、ということが読み取れる。したがって、図3に示されるグラフにおいては、時間Tbが、いわゆる残響時間に対応する。
【0036】
実線L11は、送信波の送信が開始したタイミングt0から時間Tpだけ経過したタイミングt4で、振動子211の振動の度合が、一点鎖線L21で表される所定の閾値Th1を超えた(または以上の)ピークを迎える。この閾値Th1は、振動子211の振動が、検出対象の物体(例えば図2に示されるオブジェクトO)により反射されて戻ってきた送信波としての受信波の受信によってもたらされたものか、または、検出対象外の物体(例えば図2に示される路面RS)により反射されて戻ってきた送信波としての受信波の受信によってもたらされたものか、を識別するために予め設定された値である。
【0037】
なお、図3には、閾値Th1が時間経過によらず変化しない一定値として設定された例が示されているが、実施形態において、閾値Th1は、時間経過とともに変化する値として設定されてもよい。
【0038】
ここで、閾値Th1を超えた(または以上の)ピークを有する振動は、検出対象の物体により反射されて戻ってきた送信波としての受信波の受信によってもたらされたものだとみなすことができる。一方、閾値Th1以下の(または未満の)ピークを有する振動は、検出対象外の物体により反射されて戻ってきた送信波としての受信波の受信によってもたらされたものだとみなすことができる。
【0039】
したがって、実線L11からは、タイミングt4における振動子211の振動が、検出対象の物体により反射されて戻ってきた送信波としての受信波の受信によってもたらされたものである、ということが読み取れる。
【0040】
なお、実線L11においては、タイミングt4以降で、振動子211の振動が減衰している。したがって、タイミングt4は、検出対象の物体により反射されて戻ってきた送信波としての受信波の受信が完了したタイミング、換言すればタイミングt1で最後に送信された送信波が受信波として戻ってくるタイミング、に対応する。
【0041】
また、実線L11においては、タイミングt4におけるピークの開始点としてのタイミングt3は、検出対象の物体により反射されて戻ってきた送信波としての受信波の受信が開始したタイミング、換言すればタイミングt0で最初に送信された送信波が受信波として戻ってくるタイミング、に対応する。したがって、実線L11においては、タイミングt3とタイミングt4との間の時間ΔTが、送信波の送信時間としての時間Taと等しくなる。
【0042】
上記を踏まえて、TOF法により検出対象の物体までの距離を求めるためには、送信波が送信され始めたタイミングt0と、受信波が受信され始めたタイミングt3と、の間の時間Tfを求めることが必要となる。この時間Tfは、タイミングt0と、受信波の信号レベルが閾値Th1を超えたピークを迎えるタイミングt4と、の差分としての時間Tpから、送信波の送信時間としての時間Taに等しい時間ΔTを差し引くことで求めることができる。
【0043】
送信波が送信され始めたタイミングt0は、物体検出装置200が動作を開始したタイミングとして容易に特定することができ、送信波の送信時間としての時間Taは、設定などによって予め決められている。したがって、TOF法により検出対象の物体までの距離を求めるためには、結局のところ、受信波の信号レベルが閾値Th1を超えたピークを迎えるタイミングt4を特定することが重要となる。
【0044】
ところで、上述した実施形態のような、物体検出装置200が複数設けられた構成においては、周囲に存在する物体に関する情報をより詳細に検出するために、複数の物体検出装置200の各々から、送信波が略同時に(同時並行的に)送信されることがある。この場合、干渉などを抑制するために、送信波の識別性を高めることが望まれる。
【0045】
そこで、実施形態は、物体検出装置200を以下のように構成することで、送信波の識別性を高めることを実現する。
【0046】
図4は、実施形態にかかる物体検出装置200の詳細な構成を示した例示的かつ模式的なブロック図である。
【0047】
図4に示されるように、実施形態では、送信側の構成として、複数(一例として3つ)の送信部401,403,および送信部405が設けられているとともに、受信側の構成として、複数(一例として3つ)の受信部402,404,および受信部406が設けられている。
【0048】
ここで、図4には、送信側の構成と受信側の構成とが分離された状態で図示されているが、このような図示の態様は、あくまで説明の便宜のためのものである。したがって、図4に示される例では、例えば、送信部401と受信部402との組み合わせと、送信部403と受信部404との組み合わせと、送信部405と受信部406との組み合わせとが、それぞれ1つの物体検出装置200を構成する。ただし、前述の繰り返しになるが、実施形態の技術は、送信側の構成と受信側の構成とが分離された構成にも当然に適用可能である。
【0049】
また、図4には、送信側の構成と受信側の構成とがそれぞれ3つずつ図示されているが、実施形態では、図1に示される4つの物体検出装置200に対応するように、送信側の構成と受信側の構成とがさらに1つずつ設けられうる。
【0050】
なお、実施形態において、図4に示される構成のうち少なくとも一部は、ハードウェアとソフトウェアとの協働の結果、より具体的には、物体検出装置200のプロセッサ223が記憶装置222からコンピュータプログラムを読み出して実行した結果として実現される。ただし、実施形態では、図4に示される構成のうち少なくとも一部が、専用のハードウェア(回路:circuitry)によって実現されてもよい。
【0051】
まず、物体検出装置200の送信側の構成について説明する。
【0052】
図4に示されるように、送信部401は、送波器411と、搬送波出力部412と、変調パターン決定部413と、乗算器414と、増幅回路415と、を備えている。
【0053】
また、送信部403および405は、送波器411と同様の送波器431および送波器451をそれぞれ備えている。図4では、送波器431および送波器451以外の図示がスペースの都合で省略されているが、送信部403および送信部405は、送波器431および送波器451以外においても、送信部401と同様の構成を備えている。
【0054】
送波器411は、前述した振動子211によって構成され、当該振動子211により、増幅回路415から出力される(増幅後の)送信信号に応じた送信波を送信する。
【0055】
ここで、実施形態において、送波器411は、例えばECU100の制御のもとで、他の物体検出装置200の送波器431および送波器451と実質的に同時に送信波を送信するように構成される。したがって、実施形態では、受信波として戻ってきた送信波の送信元を特定可能にするために、送信波に識別情報を付与する必要がある。
【0056】
そこで、実施形態は、例えば正弦波のような搬送波を、送信波に付与すべき識別情報に対応した変調パターンで変調することで、識別情報を含むように符号化された送信波を生成する。
【0057】
より具体的に、搬送波出力部412は、送信波のもととなる、例えば正弦波のような搬送波を出力する。そして、変調パターン決定部413は、送信波に付与すべき識別情報に対応した、搬送波の変調パターンを決定する。そして、乗算器414は、変調パターン決定部413からの出力と、搬送波出力部412からの出力と、を乗算することで、搬送波を変調し、識別情報を含むように符号化された送信波を生成する。
【0058】
実施形態において、搬送波の変調パターンは、初期信号と、複数のチャープ信号(例えば、第1チャープ信号、第2チャープ信号)を用いて決定される。ここで、初期信号は、所定期間で所定値以上の振幅が得られるように周波数変調を施すことが可能な信号である。また、第1チャープ信号は、例えば、所定の期間において第1周波数から第2周波数まで単調に(より具体的には線形に)増加し周波数変調を施すことが可能な信号である。また、第2チャープ信号は、例えば、所定の期間において第2周波数から第1周波数まで単調に(より具体的には線形に)減少し周波数変調を施すことが可能な信号である。
【0059】
変調パターンで用いるチャープ信号野パターンは、例えば、第1チャープ信号に続いて、第2チャープ信号を用いるパターンや、逆に第2チャープ信号に続いて、第1チャープ信号を用いるパターンがある。また、他の変調パターンで用いるチャープ信号野パターンは、第1チャープ信号に続いて、再度第1チャープ信号を用いるパターンや、第2チャープ信号に続いて、再度第2チャープ信号を用いるパターン等がある。また、別の変調パターンで用いるチャープ信号のパターンは、3つ以上のチャープ信号を組み合わせてもよい。複数のチャープ信号を組み合わせる場合に、各チャープ信号の上限及び/または下限の周波数を変化させたり、持続時間を変化させたりした複数のチャープ信号を組み合わせてもよい。このように、複数のチャープ信号を組み合わせることにより、複数種類の変調パターンを容易に生成することができる。このような複数の変調パターンを用いて搬送波を変調することにより、異なる特性(識別性)を有する送信波を容易に生成することができる。
【0060】
ところで、送波器411で超音波を送波する場合、送波開始時の波動は振幅が小さく、例えば波動を何回も送波して位相を合わせることにより振幅を大きくしている。したがって、単純にチャープ信号を用いて変調する場合、波動の振幅が小さい期間(信号の弱い期間)の周波数を有効に活用できないためSN比が劣化し、送信波の識別性が低下してしまう場合があった。
【0061】
そこで、本実施形態では、初期信号とチャープ信号とに基づいて周波数変調を変則的に行って送信波を生成することで、符号化利得によるSN比の改善を行う。具体的には、送波器411(マイクロフォン)のインピーダンス特性に応じて、パルス圧縮による周波数変調(チャープ)を時間軸上で変則的に可変させる。例えば、送波器411の振動(振幅)が小さい場合にはチャープを開始せず、まず、例えば、所定期間で所定振幅以上の振幅が得られるような周波数パターンの初期信号に基づく周波数変調を行う。好適には、例えば、送波器411の共振周波数付近の周波数になるように周波数変調して送波を行う。そして、ある程度振動(振幅)が大きくなった後に、チャープを開始する。その結果、チャープ信号による変調の始めから波動を有効に活用でき、SN比の改善ができる。
【0062】
図5は、実施形態にかかる物体検出システムの送信チャープ変調パターン10を示した例示的かつ模式的な図である。
【0063】
図5において、fmは、送波器411(マイクロフォン)の共振周波数、f1は、送波器411に設定された固有の周波数帯域Fの下限周波数であり、f2は、周波数帯域Fの上限周波数である。
【0064】
上述したように、本実施形態では、初期信号とチャープ信号とに基づいて周波数変調を変則的に行って送信波を生成する。図5の場合、送信チャープ変調パターン10の一例であり、まず、共振周波数fm付近で周波数一定の周波数になるような初期信号Wで変調を行う。そして、ある程度、送信波の振動(振幅)が大きくなった後、下限周波数f1から上限周波数f2に単調に増加する第1チャープ信号W1(アップチャープ)で変調を実行し、続いて、上限周波数f2から下限周波数f1に単調に減少する第2チャープ信号W2(ダウンチャープ)による変調を実行する。このような送信チャープ変調パターン10で変調した送信波を送波することにより、チャープ信号による変調の開始時から波動を有効に活用できる。また、複数のチャープ信号を用いた変調を連続的に実施することにより、識別性の高い送信波を容易に生成することができる。
【0065】
図1に示すように、本実施形態の車両1の場合、車両1の後方端部に4つの物体検出装置200(201~204)、車両1の前方端部に4つの物体検出装置200(205~208)が配置されている。そして、物体検出装置201~204は車幅方向に所定間隔で接近した状態で配置されて、送受信動作を行う。同様に物体検出装置205~208は車幅方向に所定間隔で接近した状態で配置されて、送受信動作を行う。この場合、各物体検出装置200が、送信波の送波方向にオブジェクトO(物体)が存在するか否か、及びオブジェクトOが存在する場合は、オブジェクトOまでの距離を正確に検出するためには、受信した受信波がどの物体検出装置200から送波されたものかを正確に把握する必要がある。この場合、物体検出装置200から送信する送信波は、少なくとも隣接(両隣)の物体検出装置200で異なる特徴の送信波を送波する必要がある。
【0066】
例えば、単純に第1チャープ信号W1または第2チャープ信号W2による変調を用いて送信波(受信波)の識別を行う場合を考える。例えば、物体検出装置205が第1チャープ信号W1により変調された送信波を送波し、物体検出装置206が第2チャープ信号W2により変調された送信波を送波し、物体検出装置207が第1チャープ信号W1により変調された送信波を送波し、物体検出装置208が第2チャープ信号W2により変調された送信波を送波するとする。この場合、例えば、物体検出装置207が受信波を受信した場合、その受信波が、物体検出装置206が送波した送信波か、物体検出装置208が送信した送信波かの識別が困難になる。この構成で識別を可能にするためには、例えば、物体検出装置205で第1チャープ信号W1により変調された送信波を送波し、物体検出装置206が第2チャープ信号W2により変調された送信波を送波する。そのとき、物体検出装置207による第1チャープ信号W1により変調された送信波の送波と、物体検出装置208による第2チャープ信号W2により変調された送信波の送波は、休止して物体検出装置205と物体検出装置206による受信波の受信が完了してから、物体検出装置207で第1チャープ信号W1により変調された送信波を送波し、物体検出装置208で第2チャープ信号W2により変調された送信波を送波する必要がある。つまり、物体検出装置205と物体検出装置207で第1チャープ信号W1を同時に送波することができず、処理待ち時間が必要になる。
【0067】
一方、本実施形態のように、初期信号Wで共振周波数fm付近に変調した送信波の送波を行った後、複数のチャープ信号を用いた変調を連続的に実施することにより、識別性の高い送信波を、各物体検出装置200で全て異なる態様になるように容易に送信することができる。
【0068】
例えば、図6は、複数の物体検出装置200から同時に送信波を送信する場合に用いることができる、それぞれが異なる送信チャープ変調パターンを示した例示的かつ模式的な図である。
【0069】
図6の場合、実線で示す送信チャープ変調パターン12は、初期信号Wに続き、第1チャープ信号W1による変調、さらに再度第1チャープ信号W1による変調を実行するパターンである。また、破線で示す送信チャープ変調パターン14は、初期信号Wに続き、第1チャープ信号W1、第2チャープ信号W2による変調を実行するパターンである。また、一点鎖線で示す送信チャープ変調パターン16は、初期信号Wより僅かに周波数の低い初期信号WD1に続き、第2チャープ信号W2、第1チャープ信号W1による変調を実行するパターンである。また、二点鎖線で示す送信チャープ変調パターン18は、初期信号WD1より僅かに周波数の低い初期信号WD2に続き、第2チャープ信号W2による変調、さらに再度第2チャープ信号W2による変調、続いて第1チャープ信号W1による変調を実行するパターンである。
【0070】
このように、隣接する物体検出装置200は、上述のような異なるパターンの送信チャープ変調パターンを用いることで、容易かつ明確に識別可能な送信波を送信することができる。その結果、各物体検出装置200は一斉に送受信を行うことが可能になり、各物体検出装置200による測定周期を短くすることができる。超音波を用いたオブジェクトOの検出を行う場合、通常、オブジェクトOが存在する可能性がある場合、何度も送受信を繰り返し行い、オブジェクトOの有無の確認を行う。上述したように、本実施形態の構成に場合、各物体検出装置200が略同時に送信波(超音波)を送信できるので、オブジェクトOの確認時間が短縮することができる。
【0071】
図4に戻り、増幅回路415は、乗算器414から出力される送信信号を増幅し、増幅後の送信信号を送波器411に出力する。このようにして、実施形態において、物体検出装置200の送信側の構成は、送信チャープ変調パターンによる変調により、それぞれ異なる送信波を送信する。
【0072】
次に、物体検出装置200の受信側の構成について説明する。
【0073】
図4に示されるように、受信部402は、受波器421と、増幅回路422と、フィルタ処理部423と、識別部424と、複数(一例として3つ)の信号処理系統425A~425Cと、を備えている。
【0074】
また、受信部404および受信部406は、受波器421と同様の受波器441および受波器461をそれぞれ備えている。図4では、受波器441および受波器461以外の図示がスペースの都合で省略されているが、受信部404および受信部406は、受波器441および受波器461以外においても、受信部402と同様の構成を備えている。
【0075】
受波器421は、前述した振動子211によって構成され、当該振動子211により、物体により反射された送信波を受信波として受信する。
【0076】
増幅回路422は、受波器421が受信した受信波に応じた信号としての受信信号を増幅する。
【0077】
フィルタ処理部423は、増幅回路422により増幅された受信信号にフィルタリング処理を施す。このフィルタリング処理には、ノイズの抑制およびドップラーシフトの補正などが含まれる。
【0078】
ここで、実施形態では、前述したように、複数の送波器411,431、および送波器451から複数の識別可能な送信波が実質的に同時に送信されている。このため、受波器421により受信される受信波は、複数の送波器411,431、および送波器451から送信された複数の送信波に対応する複数の波動が少なくとも部分的に重畳されることで構成されている。
【0079】
そこで、実施形態では、送波器411,431、および送波器451の個数と同数の信号処理系統425A~425Cが設けられている。信号処理系統425A~425Cは、いずれも、相関処理部426と、包絡線処理部427と、閾値処理部428と、検出処理部429と、を備えている。これらの構成に基づき、信号処理系統425A~425CBは、受波器421を介して受信される受信波と送波器411,431、および送波器451を介して送信される複数の送信波との関係と特定する機能と、特定された当該関係に基づいて、物体に関する情報を検出する機能と、を実現する。
【0080】
相関処理部426は、送信側の構成から取得される送信信号と、フィルタ処理部423によるフィルタリング処理を経た受信信号と、に基づいて、送信波と受信波との識別情報の類似度に対応した相関値を取得する。相関値は、一般的によく知られた相関関数などに基づいて算出される。
【0081】
そして、包絡線処理部427は、相関処理部426により取得された相関値に対応した信号の波形の包絡線を求める。
【0082】
そして、閾値処理部428は、包絡線処理部427により求められた包絡線の値と、所定の閾値と、を比較し、比較結果に基づいて、送信波と受信波との識別情報が所定以上のレベルで類似するか否かを判定する。
【0083】
そして、検出処理部429は、閾値処理部428による処理結果に基づいて、送信波と受信波との識別情報の類似度が所定以上のレベルとなるタイミング、すなわち反射により戻ってきた送信波としての受信波の信号レベルが閾値を超えたピークを迎えるタイミング(例えば図2に示されるタイミングt4)を特定し、TOF法により、物体に関する情報として、物体までの距離を検出する。
【0084】
ここで、実施形態において、信号処理系統425Aの相関処理部426は、送信部401から取得される送信信号を利用して相関値を取得するように構成されている。このため、信号処理系統425Aの相関処理部426により取得される相関値は、送波器411から送信される送信波に対する類似性を反映した値となる。
【0085】
同様に、信号処理系統425Bの相関処理部426は、送信部403から取得される送信信号を利用して相関値を取得し、信号処理系統425Cの相関処理部426は、送信部405から取得される送信信号を利用して相関値を取得するように構成されている。このため、信号処理系統425Bの相関処理部426により取得される相関値は、送波器431から送信される送信波に対する類似性を反映した値となり、信号処理系統425Cの相関処理部426により取得される相関値は、送波器451から送信される送信波に対する類似性を反映した値となる。
【0086】
したがって、実施形態において、信号処理系統425Aの検出処理部429は、送波器411から送信された送信波が反射により戻ってくることで受波器421により受信された受信波の信号レベルが閾値を超えたピークを迎えるタイミングを特定する。また、信号処理系統425Bの検出処理部429は、送波器431から送信された反射により戻ってくることで受波器421により受信された受信波の信号レベルが閾値を超えたピークを迎えるタイミングを特定し、信号処理系統425Cの検出処理部429は、送波器451から送信された反射により戻ってくることで受波器421により受信された受信波の信号レベルが閾値を超えたピークを迎えるタイミングを特定する。
【0087】
このように、実施形態では、3つの信号処理系統425A~425Cを用いて、送波器411から送信された送信波が反射により戻ってくることで受波器421により受信されたタイミングと、送波器431から送信された送信波が反射により戻ってくることで受波器421により受信されたタイミングと、送波器451から送信された送信波が反射により戻ってくることで受波器421により受信されたタイミングと、が適切に特定される。そして、それぞれの送受信のタイミングの差に基づいて、物体までの距離が適切に検出される。
【0088】
以上の構成に基づき、実施形態にかかる物体検出システムは、次の図7に示されるような流れで処理を実行することで、物体(オブジェクトO)に関する情報を検出する。
【0089】
図7は、実施形態にかかる物体検出システムが物体までの距離を検出するために実行する一連の処理を示した例示的かつ模式的なフローチャートである。
【0090】
まず、物体検出システムの各物体検出装置200は、変調パターン決定部413により、マイクロフォン(送受波器210)の帯域よりパルス圧縮のパターンを決定する(S100)。
【0091】
続いて、各物体検出装置200に決定されたパルス圧縮のパターン(送信チャープ変調パターン)を割り当て(S102)、物体検出のための前処理を完了する。
【0092】
そして、各物体検出装置200は、送受波器210により、S100で決定されたパルス圧縮のパターンで搬送波が変調されることで生成される送信波を送信するとともに、送信波が物体での反射により戻ってきた結果としての受信波を受信する処理を実行する(S104)。
【0093】
そして、各物体検出装置200は、短時間FFTによる時間・周波数特性の解析あるいは、相関処理部426により、送信波と受信波との識別情報の類似度に対応した相関値を取得する相関処理を実行する(S106)。
【0094】
そして、各物体検出装置200は、包絡線処理部427において、相関処理部426により取得された相関値に対応した信号の波形の包絡線(波高値、振幅値)を算出する(S108)。
【0095】
そして、検出処理部429により、相関値(の包絡線)と閾値との比較結果に基づいて、物体検出装置200ごとに物体までの距離を検出する測距処理を実行する(S110)。そして、各物体検出装置200は、物体検出処理の終了を示す指令を受信していない場合(S112のNo)、S104の処理に戻り、所定の周期で、送信波(送信チャープ変調パターンで変調した波動)の送信処理、受信処理を実行し、以降の処理を繰り返し行う。また、S112で、物体検出処理の終了を示す指令を受信した場合(S112のYes)、例えば、車両1のイグニッションスイッチ等がOFFになった場合、一旦このフローの処理を終了する。
【0096】
上述したように、実施形態にかかる物体検出システムは、複数の物体検出装置200を備えている。したがって、複数の物体検出装置200は、それぞれ同一の構成を有し、図7のフローチャートにしたがう処理を略同時に実行する。
【0097】
例えば、実施形態において、複数の物体検出装置200のうちの1つは、送信部401と、受信部402と、検出処理部429と、を備えている。送信部401は、所定期間で所定値以上の振幅が得られる周波数パターンの初期信号Wに基づく周波数変調に続き、初期信号Wと異なる周波数パターンで変化する複数のチャープ信号(W1やW2)に基づく周波数変調が、隣接する物体検出装置200を含めた相互で異なる態様になるように施された送信波を、他の物体検出装置200と略同時に送信する。受信部402は、物体での反射に応じて戻ってきた送信波としての受信波を受信する。検出処理部429は、送信波および受信波の送受信の結果として取得される情報に基づいて、物体に関する情報を検出する。
【0098】
上述した構成によれば、例えば、送信波が所定振幅以上に変調された後に、チャープ信号に基づく変調が行われる。このとき、隣接する物体検出装置200を含めた相互で異なる態様の周波数変調が行われる。その結果、所定振幅以上に変調されることのより、受信波において、チャープ信号に基づく周波数変調のはじめから、チャープ信号に基づく識別効果を有効活用可能となり、SN比の改善ができる。また、隣接する物体検出装置200を含めた相互で、異なる態様の周波数変調が行われることで、送信波(受信波)の識別性を高めることができる。その結果、車両1の低速安全運転支援装置を利用する環境において、長距離からの衝突回避や、衝突直前における衝突回避が容易となる。また、周波数変調のみによる送受信となるため、他の変調方式との組み合わせよりも回路規模が小さく低コスト化が図れる。
【0099】
また、上述した初期信号と異なる周波数パターンで変化するチャープ信号は、図5に示されるように、例えば、周波数が単調に増加する第1チャープ信号W1であってもよいし、単調に減少する第2チャープ信号W2であってもよい。この構成によれば、例えば、簡素な波形の2つのチャープ信号により、送信波(受信波)の識別性を容易に高めることができる。
【0100】
また、上述した送信部401は、例えば、複数の物体検出装置200のそれぞれが全て異なる周波数パターンで変化するようにチャープ信号に基づく周波数変調を施すようにしてもよい。この構成によれば、例えば、複数の物体検出装置200の識別性をさらに向上することができる。なお、物体検出装置200の指向性調整を行い、例えば、図1において、物体検出装置205から送信された送信波の反射波(受信波)は、物体検出装置205及び物体検出装置206でのみ受信可能としてもよい。また、物体検出装置208から送信された送信波の反射波(受信波)は、物体検出装置207及び物体検出装置208でのみ受信可能としてもよい。この場合、物体検出装置205では、物体検出装置207の送信波は受信されない。同様に、物体検出装置208では、物体検出装置206の送信波は受信されない。このような場合、物体検出装置205と物体検出装置208は、同じ送信チャープ変調パターンに基づく変調による送信波を送信するようにしてもよい。この場合、全てを異なる送信チャープ変調パターンに基づく変調による送信波を送信する場合に比べ、バターン数の削減が可能になり、制御の簡略化に寄与することができる。
【0101】
また、上述の初期信号は、例えば、物体検出装置200の送信部401の共振周波数となる周波数変調を行うようにしてもよい。この構成によれば、例えば、送信波の振幅を効率的に大きくした状態でチャープ信号に基づき変調した送信波を送信可能となり、符号化利得によるSN比の改善を効果的に行うことができる。
【0102】
なお、上述した実施形態では、本開示の技術が、超音波の送受信によって物体に関する情報を検知する構成に適用されているが、本開示の技術は、超音波以外の波動としての、音波、ミリ波、または電磁波などの送受信によって物体に関する情報を検知する構成にも適用することが可能である。
【0103】
また、上述した実施形態では、物体に関する情報として物体までの距離を検出する構成が例示されているが、本開示の技術は、物体に関する情報として、物体の有無のみを検出する構成にも適用可能である。
【0104】
以上、本開示の実施形態および変形例を説明したが、上述した実施形態および変形例はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上述した新規な実施形態および変形例は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上述した実施形態および変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0105】
200、201、202、203、204 物体検出装置
401、403、405 送信部
402、404、406 受信部
426 相関処理部
429 検出処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7