(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-23
(45)【発行日】2025-07-01
(54)【発明の名称】情報処理装置、特徴量抽出方法、教師データ生成方法、推定モデル生成方法、ストレス度の推定方法、および、特徴量抽出プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20250624BHJP
【FI】
A61B5/16 110
(21)【出願番号】P 2023512615
(86)(22)【出願日】2021-04-08
(86)【国際出願番号】 JP2021014959
(87)【国際公開番号】W WO2022215239
(87)【国際公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】中島 嘉樹
(72)【発明者】
【氏名】辻川 剛範
【審査官】後藤 昌夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-011720(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110025321(CN,A)
【文献】特開2017-213278(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0290147(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0328316(US,A1)
【文献】国際公開第2019/159252(WO,A1)
【文献】特開2012-143345(JP,A)
【文献】特開2018-037073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06- 5/22
A61B 5/02- 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者から所定の期間に亘って取得された生体信号において、慢性ストレス傾向が前記生体信号に顕著に表れる時間帯を注目時間帯として特定する特定手段と、
特定された前記注目時間帯に取得された生体信号から、ストレス度の推定モデルの機械学習または前記推定モデルを用いたストレス度の推定に用いる1つ以上の特徴量を抽出する抽出手段と、
前記生体信号に基づいて前記被験者が急性ストレス刺激に曝されている状態か否かを判定する判定手段と、を備え
、
前記特定手段は、前記被験者が急性ストレス刺激に曝されている状態であると判定されたストレス発生時間帯を参照して前記注目時間帯を特定する、情報処理装置。
【請求項2】
前記特定手段は、1日のうち前記生体信号が顕著な挙動を示す時間帯を前記注目時間帯として特定し、
前記抽出手段は、前記注目時間帯の開始時または終了時における前記生体信号の変化に基づいて前記特徴量を抽出する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記特定手段は、概日リズムに基づいて生体信号の所定の指標値がピークになる午前時刻の前後の所定時間帯を注目時間帯として特定する、請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記特定手段は、男性被験者について、1日のうち前記被験者の標準の昼食時間帯を注目時間帯として特定し、
前記抽出手段は、男性被験者について、特定された前記昼食時間帯に取得された生体信号から前記特徴量を抽出する、請求項1から3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記特定手段は、女性被験者について、1日のうち前記被験者の標準の昼食時間帯以外の時間帯を注目時間帯として特定し、
前記抽出手段は、女性被験者について、前記昼食時間帯以外の時間帯に取得された生体信号から前記特徴量を抽出する、請求項1から4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記特定手段は、女性被験者について、前記被験者が急性ストレス刺激に曝されている状態であると判定されたストレス発生時間帯を、前記注目時間帯として特定し、
前記抽出手段は、女性被験者について、特定された前記ストレス発生時間帯に取得された生体信号から前記特徴量を抽出する、請求項1から5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記特定手段は、男性被験者について、前記被験者が急性ストレス刺激に曝されている状態であると判定されたストレス発生時間帯以外の時間帯を、前記注目時間帯として特定し、
前記抽出手段は、男性被験者について、前記ストレス発生時間帯以外の時間帯に取得された生体信号から前記特徴量を抽出する、請求項1から6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
少なくとも1つのプロセッサが、
被験者から所定の期間に亘って取得された生体信号において、慢性ストレス傾向が前記生体信号に顕著に表れる時間帯を注目時間帯として特定することと、
特定された前記注目時間帯に取得された生体信号から、ストレス度の推定モデルの機械学習または前記推定モデルを用いたストレス度の推定に用いる1つ以上の特徴量を抽出することと、
前記生体信号に基づいて前記被験者が急性ストレス刺激に曝されている状態か否かを判定することと、を含
み、
前記特定することにおいては、前記被験者が急性ストレス刺激に曝されている状態であると判定されたストレス発生時間帯を参照して前記注目時間帯を特定する、特徴量抽出方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記特定することにおいて、1日のうち前記生体信号が顕著な挙動を示す時間帯を前記注目時間帯として特定し、
前記抽出することにおいて、前記注目時間帯の開始時または終了時における前記生体信号の変化に基づいて前記特徴量を抽出する、請求項8に記載の特徴量抽出方法。
【請求項10】
少なくとも1つのプロセッサが、
請求項8または9に記載の特徴量抽出方法により抽出された1つ以上の特徴量に対し、正解データとして被験者のストレス度を対応付けて、前記機械学習に用いる教師データを生成することを含む、教師データ生成方法。
【請求項11】
少なくとも1つのプロセッサが、
請求項10に記載の教師データ生成方法により生成された前記教師データを用いた機械学習により前記推定モデルを生成することを含む、推定モデル生成方法。
【請求項12】
少なくとも1つのプロセッサが、
請求項11に記載の推定モデル生成方法により生成された前記推定モデルを用いて被験者のストレス度を推定することを含む、ストレス度の推定方法。
【請求項13】
コンピュータを、
被験者から所定の期間に亘って取得された生体信号において、慢性ストレス傾向が前記生体信号に顕著に表れる時間帯を注目時間帯として特定する特定手段、および、
特定された前記注目時間帯に取得された生体信号から、ストレス度の推定モデルの機械学習または前記推定モデルを用いたストレス度の推定に用いる1つ以上の特徴量を抽出する抽出手段、
前記生体信号に基づいて前記被験者が急性ストレス刺激に曝されている状態か否かを判定する判定手段、として機能させ
、
前記特定手段は、前記被験者が急性ストレス刺激に曝されている状態であると判定されたストレス発生時間帯を参照して前記注目時間帯を特定する、特徴量抽出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレス度の推定モデルの機械学習または該推定モデルを用いたストレス度の推定に用いる特徴量を抽出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、職業性ストレスにより従業員が抑うつなどのメンタル不調をきたし、離職したり休職したりするケースが増加している。また、これに伴い、従業員を維持・確保する企業の負担増も問題となっている。このような背景から、ストレスのモニタリングについての研究が進められている。例えば、被験者の体動データや生体データ等の測定データを用いてストレス度の推定モデルを生成し、生成した推定モデルを用いて被験者のストレス度を推定する技術の研究も進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、生体信号を用いるストレス推定装置およびストレス推定方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開公報WO2019/159252A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ストレス推定装置においては、ストレス推定の精度を一層向上させることが求められる。機械学習およびストレス度の推定に用いる特徴量を適切なものとすることは、ストレス推定の精度を向上させることにつながる。
【0006】
本発明の一態様は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的の一例は、ストレス度の推定モデルの機械学習または該推定モデルを用いたストレス度の推定のために用いる妥当な特徴量を抽出する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る情報処理装置は、被験者から所定の期間に亘って取得された生体信号において、慢性ストレス傾向が前記生体信号に顕著に表れる時間帯を注目時間帯として特定する特定手段と、特定された前記注目時間帯に取得された生体信号から、ストレス度の推定モデルの機械学習または前記推定モデルを用いたストレス度の推定に用いる1つ以上の特徴量を抽出する抽出手段と、を備えている。
【0008】
本発明の一側面に係る特徴量抽出方法は、少なくとも1つのプロセッサが、被験者から所定の期間に亘って取得された生体信号において、慢性ストレス傾向が前記生体信号に顕著に表れる時間帯を注目時間帯として特定することと、特定された前記注目時間帯に取得された生体信号から、ストレス度の推定モデルの機械学習または前記推定モデルを用いたストレス度の推定に用いる1つ以上の特徴量を抽出することと、を含む。
【0009】
本発明の一側面に係る特徴量抽出プログラムは、被験者から所定の期間に亘って取得された生体信号において、慢性ストレス傾向が前記生体信号に顕著に表れる時間帯を注目時間帯として特定する特定処理と、特定された前記注目時間帯に取得された生体信号から、ストレス度の推定モデルの機械学習または前記推定モデルを用いたストレス度の推定に用いる1つ以上の特徴量を抽出する抽出処理と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、ストレス度の推定モデルの機械学習または当該推定モデルを用いたストレス度の推定に用いる妥当な特徴量を抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の例示的実施形態1に係る情報処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の例示的実施形態1に係る特徴量抽出方法の流れを示すフローチャートである。
【
図3】本発明の例示的実施形態2~5に係る情報処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の例示的実施形態2~3に係る、学習フェーズにおける情報処理方法の流れを示すフローチャートである。
【
図5】本発明の例示的実施形態2~3に係る、推論フェーズにおける情報処理方法の流れを示すフローチャートである。
【
図6】本発明の例示的実施形態4に係る、学習フェーズにおける情報処理方法の流れを示すフローチャートである。
【
図7】本発明の例示的実施形態4に係る、推論フェーズにおける情報処理方法の流れを示すフローチャートである。
【
図8】本発明の例示的実施形態5に係る、学習フェーズにおける情報処理方法の流れを示すフローチャートである。
【
図9】本発明の例示的実施形態5に係る、推論フェーズにおける情報処理方法の流れを示すフローチャートである。
【
図10】本発明の各例示的実施形態における情報処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔例示的実施形態1〕
本発明者らは、被験者から所定の期間に亘って取得された生体信号のうち、推定モデルの作成またはストレス推定に用いる生体信号を選択的に絞り込むことにより、ストレス推定の精度を向上させることに想到し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明者らは、被験者が特定の状態下にあることによってその生体信号において慢性ストレス傾向が顕著に表れる時間帯の生体信号に注目することに想到し、本発明を完成するに至った。以下では、本発明のいくつかの例示的実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
まず、本発明の第1の例示的実施形態について説明する。例示的実施形態1は、後述する各例示的実施形態の基本となる形態である。
【0014】
<情報処理装置の構成>
図1は、情報処理装置1の構成を示すブロック図である。図示のように、情報処理装置1は、特定部11および抽出部12を備えている構成である。本例示的実施形態において、特定部11は、特定手段を実現する構成である。本例示的実施形態において、抽出部12は、抽出手段を実現する構成である。
【0015】
特定部11は、被験者から所定の期間に亘って取得された生体信号において、慢性ストレス傾向が生体信号に顕著に表れる時間帯を注目時間帯として特定する。
【0016】
抽出部12は、特定部11によって特定された上述の注目時間帯に取得された生体信号から、ストレス度の推定モデルの機械学習または当該推定モデルを用いたストレス度の推定に用いる1つ以上の特徴量を抽出する。
【0017】
以上のように、本例示的実施形態に係る情報処理装置1においては、上述の特定部11および抽出部12を備える構成が採用されている。
【0018】
上述の構成によれば、まず、慢性ストレスに起因する特定の傾向が生体信号において顕著になる注目時間帯が特定される。そして、注目時間帯に取得された被験者の生体信号から特徴量が抽出される。結果として、ストレス度の推定モデルの機械学習または当該推定モデルを用いたストレス度の推定に用いる妥当な特徴量を抽出することができるという効果が得られる。
【0019】
そして、上述の構成により得られた慢性ストレスとの相関が高い特徴量は、例えば、当該特徴量に対応する慢性ストレス度を示す正解データと併せて、慢性ストレス度を推定する推定モデルの機械学習に用いる教師データを生成するために利用できる。結果として、慢性ストレスの推定精度が高い推定モデルを効率よく構築することが可能になる。
【0020】
また別の例では、上述の構成により得られた慢性ストレスとの相関が高い特徴量は、上述の推定モデルの入力値として利用することができ、結果として、慢性ストレスの推定を一層精度よく実施することが可能になる。
【0021】
情報処理装置1は、コンピュータおよび該コンピュータのプログラムによって実現されてもよい。上述のプログラムは、上述のコンピュータを、上述の特定部11および抽出部12として機能させる特徴量抽出プログラムである。この特徴量抽出プログラムによれば、上述の情報処理装置1と同様の効果を得られる。
【0022】
<特徴量抽出方法の流れ>
図2は、情報処理装置1が実行する特徴量抽出方法の流れを示すフローチャートである。
【0023】
ステップS11では、特定部11は、被験者から所定の期間に亘って取得された生体信号において、慢性ストレス傾向が生体信号に顕著に表れる時間帯を注目時間帯として特定する。
【0024】
ステップS12では、抽出部12は、特定部11によって特定された上述の注目時間帯に取得された生体信号から、ストレス度の推定モデルの機械学習または当該推定モデルを用いたストレス度の推定に用いる1つ以上の特徴量を抽出する。
【0025】
以上のように、本例示的実施形態に係る特徴量抽出方法においては、ステップS11およびステップS12を含む構成が採用されている。このため、本例示的実施形態に係る特徴量抽出方法によれば、上述した情報処理装置1と同様に、ストレス度の推定モデルの機械学習または当該推定モデルを用いたストレス度の推定に用いる妥当な特徴量を抽出することができるという効果が得られる。
【0026】
<変形例>
本例示的実施形態に係る抽出部12は、上述の注目時間帯に取得された生体信号と、該注目時間帯を基準とする別の所定の時間帯に取得された生体信号とを用いて特徴量を抽出してもよい。
【0027】
特定部11は、1日のうち生体信号が顕著な挙動を示す時間帯を注目時間帯として特定し、抽出部12は、特定された注目時間帯の開始時または終了時における上述の生体信号の変化に基づいて特徴量を抽出してもよい。
【0028】
また、上述のステップS11において、特定部11は、1日のうち生体信号が顕著な挙動を示す時間帯を注目時間帯として特定してもよい。また、上述のステップS12において、抽出部12は、注目時間帯の開始時または終了時における生体信号の変化に基づいて特徴量をさらに抽出してもよい。
【0029】
上述の構成および方法によれば、まず、慢性ストレス傾向が顕著になる時間帯として、1日のうち、少なくとも、生体信号が顕著な挙動を示す傾向にある時間帯に取得された生体信号から特徴量が抽出される。次に、抽出部12は、上述の特徴量に加えて、注目時間帯の前後に観測される上述の生体信号の変化に基づいて特徴量をさらに抽出する。
【0030】
注目時間帯には、慢性ストレスに起因する特定の傾向が生体信号において顕著に表れるため、注目時間帯の開始時または終了時における生体信号の変化にも、慢性ストレスに起因する特定の傾向が顕著に表れる。よって、注目時間帯の開始時または終了時における生体信号の変化に基づいて特徴量を抽出することは、慢性ストレスの推定精度を高めることにつながる。
【0031】
一例として、抽出部12は、注目時間帯の開始時または終了時に観測される、生体信号の所定の指標値の変化量を特徴量として抽出してもよい。ここで、生体信号の所定の指標値とは、生体信号自体(センサから出力される未加工のいわゆる生データ)であってもよいし、生体信号に基づいて算出された算出値であってもよい。
【0032】
注目時間帯の前後における生体信号の所定の指標値の変化量が、慢性ストレスと有意な相関がある、ということが予め分かっている場合に、上述の変化量が特徴量として抽出されることは、慢性ストレスの推定精度を高めることにつながる。
【0033】
なお、上述の「生体信号が顕著な挙動を示す時間帯」とは、生体信号の所定の指標値が、1日のうち比較的高い値を示す特異な時間帯であってもよい。所定の指標値とは、例えば、生体信号の時系列データから得られる指標、生体信号の周波数データから得られる指標、その他、慢性ストレスを予測する上で重要な指標などを示す値である。一例として、指標値は、生体信号から導出され得る、心拍数、発汗量、呼吸回数、脈波、および、体温などを表す値であってもよい。
【0034】
例えば、特定部11は、1日のうち心拍数が高くなる傾向にある時間帯を注目時間帯として特定してもよい。上述の構成によれば、慢性ストレス傾向が顕著になる時間帯として、1日のうち心拍数が高くなる傾向にある特定の時間帯に取得された生体信号から特徴量が抽出される。結果として、ストレス度の推定モデルの機械学習または当該推定モデルを用いたストレス度の推定に用いる妥当な特徴量を抽出することができるという効果が得られる。そして、慢性ストレスの推定精度が高い推定モデルを効率よく構築したり、慢性ストレスの推定を一層精度よく実施したりすることが可能となる。
【0035】
〔例示的実施形態2〕
本発明の第2の例示的実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、例示的実施形態1にて説明した構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0036】
本発明者らは、生体信号の所定の指標値(例えば、心拍数、発汗量など)が高めである時間帯において、慢性ストレス傾向が生体信号に顕著に表れることに想到した。そして、概日リズムに基づいて、生体信号の所定の指標値は、午前時刻(例えば、午前10時)ごろにピークを迎え、その前後の所定時間帯において、高めの傾向を有することが知られている。
【0037】
そこで、本例示的実施形態では、一例として、慢性ストレス傾向が生体信号に顕著に表れる注目時間帯として、概日リズムに基づいて生体信号の所定の指標値がピークになる午前時刻の前後の所定時間帯を特定する。
【0038】
<情報処理装置の構成>
図3は、情報処理装置4の構成を示すブロック図である。また、
図3には、生体信号を測定する装置の一例としてウェアラブル端末7についてもあわせて図示している。
【0039】
ウェアラブル端末7は、装着者の状態を測定し、出力値として生体信号を出力するものである。一例として、ウェアラブル端末7は、装着者の心拍数を検出する機能と、装着者の発汗を検出する機能を備えている。ウェアラブル端末7を被験者が装着することにより、被験者の心拍数を示す心拍データおよび被験者の発汗量を示す発汗データが、生体信号として生成される。これらの生体信号は、情報処理装置4に送信される。
【0040】
ウェアラブル端末7は、さらに、3軸の加速度センサを備えていてもよい。この加速度センサの出力値が生体信号としてウェアラブル端末7から情報処理装置4に送信されてもよい。ウェアラブル端末7を被験者が装着することにより、被験者の体動が加速度センサにより検出される。体動が被験者のストレス度と相関があることは分かっているから、加速度センサの出力値を生体信号としてストレス度の推定を行うことができる。なお、加速度センサは3軸のものに限られず、1軸や2軸のものであってもよい。また、加速度センサとしてのウェアラブル端末7の出力値により、被験者の身体活動を把握することができるので、計測している生体信号が、身体活動由来のものか否か、判別することもできる。
【0041】
以下では、説明を簡素にするため、被験者について取得される生体信号の全てを1台のウェアラブル端末7が計測し、情報処理装置4に送信する例を挙げている。しかし、情報処理装置4は、幾種類もの生体信号を、それぞれ別の機器から取得してもよい。
【0042】
情報処理装置4は、情報処理装置4の各部を統括して制御する制御部40と、情報処理装置4が使用する各種データを記憶する記憶部41を備えている。また、情報処理装置4は、情報処理装置4に対するデータの入力を受け付ける入力部42、情報処理装置4がデータを出力するための出力部43、および情報処理装置4が他の装置(例えばウェアラブル端末7)と通信するための通信部44を備えている。
【0043】
制御部40には、生体信号取得部401、アンケートデータ取得部402、ストレス度計算部403、特定部404、抽出部405、判定部406、教師データ生成部407、学習処理部408、および推定部409が含まれている。また、記憶部41には、生体信号411、アンケートデータ412、ストレス度データ413、特徴量データ414、教師データ415、推定モデル416、および推定結果データ417が記憶される。
【0044】
本例示的実施形態において、特定部404は、特定手段を実現する構成である。本例示的実施形態において、抽出部405は、抽出手段を実現する構成である。本例示的実施形態において、判定部406は、判定手段を実現する構成である。推定部409は、推定手段を実現する構成である。なお、本例示的実施形態では、判定部406は、省略されてもよい。判定部406については後述の例示的実施形態にて説明する。
【0045】
生体信号取得部401は、被験者の生体信号を取得し、取得した生体信号を記憶部41に記憶させる。記憶部41に記憶された生体信号が生体信号411である。生体信号411には、教師データ415の生成に用いられるものと、ストレス度の推定に用いられるものとが含まれ得る。
【0046】
アンケートデータ取得部402は、教師データ415を生成するための生体信号411が測定された期間における被験者のストレス度に関連するアンケートの結果を取得し、取得した結果を示すアンケートデータ412を記憶部41に記憶させる。このアンケートは、被験者のストレス度を算出するために、当該被験者に対して行ったアンケートである。このアンケートは、被験者のストレス度が反映されるような内容のものであればよく、例えばPSS(Perceived Stress Scale)のストレスアンケートであってもよい。PSSのストレスアンケートは、対象期間において、被験者がどのように感じ、どのようにふるまったかについての複数の質問のそれぞれに対し、複数の選択肢から該当するものを選択させる形式のアンケートである。
【0047】
ストレス度計算部403は、アンケートデータ412を用いて被験者のストレス度を算出し、算出したストレス度を示すストレス度データ413を記憶部41に記憶させる。ストレス度の算出方法としては任意のものを適用可能である。例えば、アンケートデータ412がPSSのストレスアンケートの結果を示すデータである場合、ストレス度計算部403はPSSスコアを算出する。
【0048】
特定部404は、被験者から所定の期間に亘って取得された生体信号において、慢性ストレス傾向が生体信号に顕著に表れる時間帯を注目時間帯として特定する。
【0049】
本例示的実施形態では、特定部404は、概日リズムに基づいて生体信号の所定の指標値がピークになる午前時刻の前後の所定時間帯を注目時間帯として特定する。
【0050】
一例として、所定の指標値は、心拍数であってもよい。本発明者らは、心拍数が高めである時間帯において、慢性ストレス傾向が生体信号に顕著に表れることに想到した。そして、概日リズムに基づいて、心拍数は、午前時刻(例えば、午前10時)ごろにピークを迎え、その前後の所定時間帯において、高めの傾向を有することが知られている。したがって、特定部404は、一例として、概日リズムに基づいて、心拍データが示す心拍数がピークになる10時前後の所定時間帯(例えば、午前7時から13時くらいの間の時間帯)を注目時間帯として特定するように構成されてもよい。
【0051】
発汗量などの心拍数とは別の生体信号の、概日リズムにおけるピーク時刻が予め分かっている場合には、特定部404は、発汗データが示す発汗量がピークになる時刻前後の、発汗量が多めの所定時間帯を注目時間帯として特定してもよい。
【0052】
他の例では、特定部404は、所定の期間に亘って取得された生体信号を分析し、生体信号において慢性ストレス傾向の推定に資する指標が顕著に表れ始めた時点Sと、当該顕著な慢性ストレス傾向の推定に資する指標が終息した時点Eとを特定してもよい。そして、特定部404は、特定した時点Sから時点Eまでの時間帯を注目時間帯として特定してもよい。生体信号において慢性ストレス傾向の推定に資する指標は、一例として、心拍数であってもよい。例えば、特定部404は、上述の指標の一例である心拍数の数値自体または心拍数から算出された慢性ストレス傾向に係る指標値などの値が所定閾値に到達した時点Sから、該値が所定閾値を下回った時点Eまでの時間帯を注目時間帯として特定してもよい。
【0053】
抽出部405は、特定された注目時間帯に取得された生体信号から、ストレス度の推定モデルの機械学習または当該推定モデルを用いたストレス度の推定に用いる1つ以上の特徴量を抽出する。例えば、抽出部405は、生体信号411から特徴量を算出し、算出した特徴量を記憶部41に記憶させてもよい。特徴量データ414は、抽出部405によって抽出され、記憶部41に記憶された、特徴量を示すデータである。特徴量データ414には、教師データ415の生成に用いられる特徴量が含まれ得る。以下では、教師データ415の生成に用いられる特徴量を学習用特徴量と呼ぶ。すなわち、学習用特徴量は、ストレス度の推定モデルの機械学習に用いられる特徴量である。
【0054】
また、特徴量データ414には、少なくとも注目時間帯の生体信号から抽出された1つ以上の特徴量が含まれ得る。つまり、特徴量データ414は、複数種類の特徴量を含んでいてよい。特徴量データ414は、注目時間帯以外の生体信号を加味して抽出された特徴量を含み得る。例えば、特徴量データ414は、注目時間帯の開始時または終了時における生体信号の変化に基づいて抽出された特徴量を含んでいてもよい。
【0055】
さらに、特徴量データ414には、ストレス度の推定に用いられる特徴量も含まれ得る。以下では、ストレス度の推定に用いられる特徴量を推定用特徴量と呼ぶ。推定用特徴量は、ストレス度の推定の対象となる被検者の、ストレス度を測定する対象となる所定の期間の生体信号から生成された特徴量である。
【0056】
教師データ生成部407は、抽出部405によって抽出された1つ以上の学習用特徴量の組み合わせに対して、ストレス度データ413に示されるストレス度を正解データとして対応付けて教師データを生成する。そして、教師データ生成部407は、生成した教師データを教師データ415として記憶部41に記憶させる。
【0057】
学習処理部408は、教師データ415を用いた学習により、抽出部405によって抽出された1つ以上の学習用特徴量を説明変数とし、ストレス度を目的変数とする推定モデルを生成する。そして、学習処理部408は、生成した推定モデルを推定モデル416として記憶部41に記憶させる。
【0058】
推定部409は、被験者の生体信号から生成された推定用特徴量を用いて当該被験者のストレス度を推定する。より詳細には、推定部409は、特徴量データ414に含まれる推定用特徴量を推定モデル416に入力することにより、ストレス度の推定値を算出する。そして、推定部409は、ストレス度の推定結果を示す推定結果データ417を記憶部41に記憶させる。
【0059】
<変形例>
慢性ストレスが生体信号に与える影響が、男女間で異なる場合がある。例えば、概日リズムに基づく心拍データにおいて、女性の場合、慢性ストレス下では心拍数が下がる傾向が見られる一方、男性の場合、慢性ストレス下では心拍数が上がる傾向が見られるということを報告している論文もある。
【0060】
そこで、推定モデル416は、男女別に生成されることが好ましい。具体的には、抽出部405は、男性用の推定モデルを生成するために、注目時間帯(例えば、午前7時から13時くらいの間の時間帯)に計測された男性の生体信号から男性の特徴量を抽出する。また、抽出部405は、女性用の推定モデルを生成するために、注目時間帯に計測された女性の生体信号から女性の特徴量を抽出する。教師データ生成部407は、男性の特徴量を用いて男性用の推定モデルを生成するための男性用教師データを生成し、女性の特徴量を用いて女性用の推定モデルを生成するための女性用教師データを生成する。こうして、学習処理部408は、男女別の教師データを用いて、推定モデル416を、男女別に生成することができる。そして、推定部409は、男性の被検者については男性用の推定モデルを用いてストレス度を推定し、女性の被検者については女性用の推定モデルを用いてストレス度を推定することができる。
【0061】
情報処理装置4が備える上述の各部は、複数台のコンピュータによって実現されてもよい。例えば、生体信号取得部401、特定部404、抽出部405および判定部406を含む制御部40と、生体信号411および特徴量データ414を記憶する記憶部41とを備える特徴量抽出装置が実現されてもよい。アンケートデータ取得部402、ストレス度計算部403および教師データ生成部407を含む制御部40と、アンケートデータ412、ストレス度データ413および教師データ415を記憶する記憶部41とを備える教師データ生成装置が実現されてもよい。学習処理部408を含む制御部40と、推定モデル416を記憶する記憶部41とを備える推定モデル生成装置が実現されてもよい。推定部409を含む制御部40と、推定結果データ417を記憶する記憶部41とを備える推定装置が実現されてもよい。推定装置は、特徴量抽出装置の構成要素、具体的には、特定部404および抽出部405を含むように構成されてもよい。そして、ウェアラブル端末7と、特徴量抽出装置と、教師データ生成装置と、推定モデル生成装置と、推定装置とが通信ネットワークを介して互いに通信可能に接続されて構成された情報処理システムも本発明の範疇に入る。
【0062】
<学習フェーズにおける情報処理方法の流れ>
図4は、本発明の例示的実施形態2に係る情報処理装置4が実行する、学習フェーズにおける情報処理方法の流れを示すフローチャートである。
図4に示す情報処理方法は、一例として、本発明の特徴量抽出方法と、教師データ生成方法と、推定モデル生成方法とを含む。本例示的実施形態において、ステップS32およびS33は特徴量抽出方法を実現する処理であり、ステップS35は、教師データ生成方法を実現する処理であり、ステップS35は、推定モデル生成方法を実現する処理である。
【0063】
上述の各処理はプログラムにより実現することもできる。つまり、ステップS32~S33の処理をコンピュータに実行させる特徴量抽出プログラムも本例示的実施形態の範疇に含まれる。同様に、ステップS33で抽出された特徴量を用いて教師データを生成するステップS35の処理をコンピュータに実行させる教師データ生成プログラムも本例示的実施形態の範疇に含まれる。そして、ステップS35で生成された教師データを用いて推定モデルを生成するステップS36の処理をコンピュータに実行させる推定モデル生成プログラムも本例示的実施形態の範疇に含まれる。
【0064】
なお、
図4に示す一連の情報処理方法が、情報処理装置4に代えて、上述の情報処理システムによって実行されてもよい。この場合、ステップS31~S33の実行主体は、上述の特徴量抽出装置であり、ステップS34~S35の実行主体は、上述の教師データ生成装置であり、ステップS36の実行主体は、上述の推定モデル生成装置である。
【0065】
以下では、ウェアラブル端末7で測定した、被験者の心拍データと、発汗データとを生体信号として推定モデルを生成する例を説明する。使用する生体信号は、一人の被検者の生体信号であってもよいし、複数の被検者の生体信号であってもよいが、ストレス度の推定対象の被験者とストレスに対する応答性が近い被験者の生体信号であることが好ましい。また、各被験者について、生体信号を測定した期間におけるストレス度を算出するためのアンケートを実施済みであり、その結果がアンケートデータ412として記憶部41に記憶されているとする。また、
図4における特徴量は何れも上述の学習用特徴量であるから、
図4の説明においては単に特徴量と呼ぶ。
【0066】
ステップS31では、生体信号取得部401が、推定モデルの生成に用いる生体信号を取得する。上述のように、ここで取得する生体信号は、ウェアラブル端末7で測定した被験者の心拍データおよび発汗データである。そして、生体信号取得部401は、取得した生体信号を生体信号411として記憶部41に記憶させる。
【0067】
ステップS32では、特定部404は、ステップS31で記録された生体信号411のうち、慢性ストレス傾向が前記生体信号に顕著に表れる時間帯を注目時間帯として特定する。本例示的実施形態では、一例として、1日のうち前記生体信号が顕著な挙動を示す時間帯を前記注目時間帯として特定する。本例示的実施形態では、より具体的には、概日リズムに基づいて生体信号の所定の指標値がピークになる午前時刻の前後の所定時間帯を注目時間帯として特定する。一例と挙げると、特定部404は、生体信号から得られる心拍数がピークになる10時前後の所定時間帯(例えば、7時から13時まで)を注目時間帯として特定してもよい。
【0068】
ステップS33では、抽出部405は、ステップS31で記憶された生体信号411のうち、ステップS32で特定された注目時間帯に測定された生体信号から特徴量を抽出する。具体的には、抽出部405は、心拍データおよび発汗データのそれぞれから複数種類の特徴量を抽出してもよい。抽出された特徴量は、特徴量データ414として記憶部41に記憶される。
【0069】
ステップS34では、ストレス度計算部403が、アンケートデータ412を用いて被験者のストレス度を算出する。そして、ストレス度計算部403は、算出したストレス度をストレス度データ413として記憶部41に記憶させる。なお、ステップS34の処理はステップS35より先に行えばよく、ステップS31より先に行ってもよいし、ステップS31~S33と同時並行で行ってもよい。
【0070】
ステップS35では、教師データ生成部407が、ステップS33で抽出された1つ以上の特徴量の組み合わせに対し、ストレス度データ413に示される、ステップS34で算出されたストレス度を正解データとして対応付けて教師データを生成する。そして、教師データ生成部407は、生成した教師データを教師データ415として記憶部41に記憶させる。
【0071】
ステップS36では、学習処理部408が、ステップS35で生成された教師データを用いた機械学習によりストレス度の推定モデルを生成する。なお、ステップS36には、複数の推定モデルを生成し、生成した各推定モデルの推定精度を評価し、その評価結果に基づいて最終的な推定モデルを選択する、という一連の処理が含まれていてもよい。そして、学習処理部408は、生成した推定モデルを推定モデル416として記憶部41に記憶させる。これにより、推定モデル生成方法は終了する。
【0072】
<推論フェーズにおける情報処理方法の流れ>
図5は、本発明の例示的実施形態2に係る情報処理装置4が実行する、推論フェーズにおける情報処理方法の流れを示すフローチャートである。
図5に示す情報処理方法は、一例として、本発明の特徴量抽出方法と、ストレス度の推定方法とを含む。本例示的実施形態において、ステップS42およびS43は特徴量抽出方法を実現する処理であり、ステップS44は、ストレス度の推定方法を実現する処理である。
【0073】
上述の各処理はプログラムにより実現することもできる。つまり、ステップS42~S43の処理をコンピュータに実行させる特徴量抽出プログラムも本例示的実施形態の範疇に含まれる。そして、ステップS36で生成された推定モデルにステップS43で抽出した特徴量を入力してストレス度を推定するステップS44の処理をコンピュータに実行させる、ストレス度推定プログラムも本例示的実施形態の範疇に含まれる。
【0074】
なお、
図5に示す一連の情報処理方法が、情報処理装置4に代えて、上述の情報処理システムによって実行される場合、ステップS41~S43の実行主体は、上述の特徴量抽出装置であり、ステップS43の実行主体は、上述の推定装置である。無論、ステップS41~S44の処理を上述の推定装置が実行する構成としてもよい。
【0075】
なお、以下では、ウェアラブル端末7で測定した1カ月分の心拍データおよび発汗データを生体信号として当該1カ月における被験者のストレス度を推定する例を説明するが、測定期間は1カ月未満であってもよいし、1カ月より長くてもよい。また、
図5に記載の「特徴量」は、何れも上述の推定用特徴量であるから、
図5の説明においては単に特徴量と呼ぶ。
【0076】
ステップS41では、生体信号取得部401が生体信号を取得する。上述のように、ここで取得する生体信号は、ウェアラブル端末7で測定した被験者の1カ月分の心拍データおよび発汗データである。そして、生体信号取得部401は、取得した生体信号を生体信号411として記憶部41に記憶させる。
【0077】
ステップS42では、特定部404は、注目時間帯を特定する。ステップS42において実行される注目時間帯を特定する処理は、上述の学習フェーズにおけるステップS32の特定する処理と同様である。すなわち、本例示的実施形態では、概日リズムに基づいて生体信号の所定の指標値がピークになる午前時刻の前後の所定時間帯(例えば、7時から13時まで)を注目時間帯として特定する。
【0078】
ステップS43では、抽出部405は、ステップS41で記憶された生体信号411のうち、ステップS42で特定された注目時間帯に測定された生体信号から特徴量を抽出する。抽出された特徴量は、特徴量データ414として記憶部41に記憶される。
【0079】
ステップS44では、推定部409が被験者のストレス度を推定する。具体的には、推定部409は、ステップS43で抽出された特徴量を、推定モデル416に入力する。この推定モデル416は、
図4のステップS36で生成されたものである。そして、推定部409は、推定モデル416の出力値を推定結果データ417として記憶部41に記憶させる。なお、推定部409は、推定したストレス度を出力部43に出力させてもよい。これにより、ストレス度の推定方法は終了する。
【0080】
以上のように、本例示的実施形態に係る情報処理装置4においては、上述の特定部404および抽出部405を備える構成が採用されており、特に、特定部404は、概日リズムに基づいて生体信号の所定の指標値がピークになる午前時刻の前後の所定時間帯を注目時間帯として特定するように構成されている。
【0081】
上述の構成によれば、1日のうち、生体信号の所定の指標値(例えば、心拍数)がピークになる時刻(例えば、10時ごろ)を含む、生体信号の所定の指標値が1日のうちで比較的高めになる所定時間帯(例えば、午前中)に取得された生体信号から特徴量が抽出される。本発明者らは、生体信号の所定の指標値(例えば、心拍数、発汗量など)が高めである時間帯において、慢性ストレス傾向が生体信号に顕著に表れることに想到した。そして、概日リズムに基づいて、生体信号の所定の指標値は、午前時刻(例えば、午前10時)ごろにピークを迎え、その前後の所定時間帯において、高めの傾向を有することが知られている。
【0082】
したがって、概日リズムに基づいて生体信号の所定の指標値がピークになる午前時刻の前後の所定時間帯における生体信号から特徴量が抽出される。これにより、ストレス度の推定モデルの機械学習または当該推定モデルを用いたストレス度の推定に用いる妥当な特徴量を抽出することができるという効果が得られる。そして、慢性ストレスの推定精度が高い推定モデルを効率よく構築したり、慢性ストレスの推定を一層精度よく実施したりすることが可能となる。
【0083】
以上のように、本例示的実施形態に係る教師データ生成方法においては、ステップS32~S33を含む特徴量抽出方法により抽出された1つ以上の特徴量に対し、正解データとして被験者のストレス度を対応付けて、機械学習に用いる教師データを生成するステップS35を含む構成が採用されている。このため、本例示的実施形態に係る教師データ生成方法によれば、慢性ストレスの推定精度が高い推定モデルを効率よく構築することが可能な教師データを生成できるという効果が得られる。
【0084】
以上のように、本例示的実施形態に係る推定モデル生成方法においては、ステップS35を含む教師データ生成方法により生成された教師データを用いた機械学習により推定モデルを生成するステップS36を含む構成が採用されている。このため、本例示的実施形態に係る推定モデル生成方法によれば、慢性ストレスの推定精度が高い推定モデルを生成できるという効果が得られる。
【0085】
以上のように、本例示的実施形態に係るストレス度の推定方法においては、ステップS36を含む推定モデル生成方法により生成された推定モデルを用いて被験者のストレス度を推定するステップS44を含む構成が採用されている。このため、本例示的実施形態に係る推定方法によれば、慢性ストレスに係るストレス度を精度よく推定することができるという効果が得られる。
【0086】
〔例示的実施形態3〕
本発明の第3の例示的実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、上述の各例示的実施形態にて説明した構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0087】
本例示的実施形態では、被験者の属性ごとに特徴量を抽出し、属性ごとに教師データを生成し、属性ごとに推定モデルを生成する。そして、被験者のストレス度の推定に際し、該被験者の属性に対応する推定モデルを用いて、該被験者のストレス度を推定する。被験者の属性は、一例として、性別であってもよい。
【0088】
本例示的実施形態では、一例として、慢性ストレス傾向が生体信号に顕著に表れる注目時間帯を、食事時間帯に基づいて特定する。
【0089】
一般に生体信号の所定の指標値(例えば、心拍数、発汗量など)は、食事に伴って高くなる傾向があり、更に、男性は慢性ストレス傾向にあるときに食事量が増える為、本発明者らは、食事時間帯において、生体信号の所定の指標に慢性ストレス傾向が顕著に表れることに着目した。そこで、本例示的実施形態では、一例として、男性被験者については、慢性ストレス傾向が生体信号に顕著に表れる注目時間帯として、標準的な昼食時間帯を特定する。
【0090】
また、本発明者らは、女性の生体信号の所定の指標値は、食事時間帯において低くなる傾向があり、慢性ストレス傾向の顕現が鈍化すると推測した。そこで、本例示的実施形態では、一例として、女性被験者については、標準的な昼食時間帯以外を、注目時間帯として特定する。例えば、例示的実施形態1または2に基づいて特定した注目時間帯から標準的な昼食時間帯を除いて最終的な注目時間帯を特定してもよい。
【0091】
なお、注目時間帯を、昼食時間帯に基づいて特定することは、とりわけ昼食時間帯が、人によって時間帯のばらつきが少ないことによる。なお、昼食時間帯は、勤務日に限れば更にばらつきが少なくなるので注目時間帯としてより好適である。
【0092】
<情報処理装置の構成>
本例示的実施形態では、特定部404は、予め定められた昼食時間帯に基づいて注目時間帯を特定するように構成される。一例として、被験者から昼食時間帯についてあらかじめアンケートをとり、最も標準的な時間帯(例えば、12時から13時)を昼食時間帯として定めてもよい。具体的には、特定部404は、男性被験者について、1日のうち上述の標準の昼食時間帯を注目時間帯として特定する。また、特定部404は、女性被験者について、1日のうち上述の標準の昼食時間帯以外の時間帯を注目時間帯として特定する。例えば、特定部404は、例示的実施形態1または例示的実施形態2に示す方法で注目時間帯を特定した後、その注目時間帯に上述の標準の昼食時間帯が含まれている場合には、当該標準の昼食時間帯を、上述の注目時間帯から除いてもよい。
【0093】
本例示的実施形態では、抽出部405は、性別ごとに特定部404によって特定された注目時間帯に基づいて、性別ごとに、特徴量を抽出する。
【0094】
具体的には、抽出部405は、男性被験者について、特定された昼食時間帯に取得された生体信号から特徴量を抽出する。以下では、昼食時間帯に取得された生体信号から抽出された、男性向けの特徴量を第1特徴量と称する。第1特徴量のうち、教師データ415の生成に用いられる特徴量は、第1学習用特徴量と称する。第1特徴量のうち、ストレス度の推定に用いられる特徴量を第1推定用特徴量と称する。
【0095】
具体的には、抽出部405は、女性被験者について、昼食時間帯以外の時間帯に取得された生体信号から特徴量を抽出する。以下では、昼食時間帯以外の時間帯に取得された生体信号から抽出された、女性向けの特徴量を第2特徴量と称する。第2特徴量のうち、教師データ415の生成に用いられる特徴量は、第2学習用特徴量と称する。第2特徴量のうち、ストレス度の推定に用いられる特徴量を第2推定用特徴量と称する。
【0096】
すなわち、本例示的実施形態では、特徴量データ414は、第1学習用特徴量、第1推定用特徴量、第2学習用特徴量、および、第2推定用特徴量を含む。
【0097】
本例示的実施形態では、教師データ生成部407は、1つ以上の第1学習用特徴量の組み合わせに対して、男性被験者のストレス度データ413に示されるストレス度を正解データとして対応付けて教師データを生成する。上述の第1学習用特徴量は、抽出部405によって男性被験者の生体信号から抽出されたものであり、上述のようにして生成された教師データは、男性向けの推定モデルを構築するための教師データとなる。以下では、男性向けの推定モデルを構築するための教師データを第1教師データと称する。
【0098】
また、教師データ生成部407は、1つ以上の第2学習用特徴量の組み合わせに対して、女性被験者のストレス度データ413に示されるストレス度を正解データとして対応付けて教師データを生成する。上述の第2学習用特徴量は、抽出部405によって女性被験者の生体信号から抽出されたものであり、上述のようにして生成された教師データは、女性向けの推定モデルを構築するための教師データとなる。以下では、女性向けの推定モデルを構築するための教師データを第2教師データと称する。
【0099】
すなわち、本例示的実施形態では、教師データ415は、第1教師データおよび第2教師データを含む。
【0100】
本例示的実施形態では、学習処理部408は、第1教師データを用いた学習により、抽出部405によって抽出された1つ以上の第1学習用特徴量を説明変数とし、男性被験者のストレス度を目的変数とする推定モデルを生成する。以下では、男性被験者のストレス度を推定するための上述の推定モデルを第1推定モデルと称する。
【0101】
また、学習処理部408は、第2教師データを用いた学習により、抽出部405によって抽出された1つ以上の第2学習用特徴量を説明変数とし、女性被験者のストレス度を目的変数とする推定モデルを生成する。以下では、女性被験者のストレス度を推定するための上述の推定モデルを第2推定モデルと称する。
【0102】
すなわち、本例示的実施形態では、推定モデル416は、第1推定モデルおよび第2推定モデルを含む。
【0103】
推定部409は、推定対象の被験者が男性である場合には、第1推定モデルを用い、推定対象の被験者が女性である場合には、第2推定モデルを用いて、被験者のストレス度を推定する。
【0104】
<学習フェーズにおける情報処理方法の流れ>
本発明の例示的実施形態3に係る情報処理装置4が実行する、学習フェーズにおける情報処理方法の流れは、
図4に基づいて説明される。例示的実施形態3の情報処理方法において、例示的実施形態2の情報処理方法と異なる点は、以下のとおりである。
【0105】
ステップS32では、特定部404は、ステップS31で取得された生体信号が、男性被験者の生体信号である場合、1日のうち標準の昼食時間帯を注目時間帯として特定する。特定部404は、ステップS31で取得された生体信号が、女性被験者の生体信号である場合、1日のうち標準の昼食時間帯以外の時間帯を注目時間帯として特定する。
【0106】
ステップS33では、抽出部405は、ステップS31で取得された生体信号が、男性被験者の生体信号である場合、特定された上述の昼食時間帯に取得された生体信号から第1学習用特徴量を抽出する。抽出部405は、ステップS31で取得された生体信号が、女性被験者の生体信号である場合、上述の昼食時間帯以外の時間帯に取得された生体信号から第2学習用特徴量を抽出する。
【0107】
ステップS35では、教師データ生成部407は、ステップS31で取得された生体信号が、男性被験者の生体信号である場合、第1教師データを生成する。第1教師データは、ステップS33で抽出された第1学習用特徴量の組み合わせに対し、ステップS34で算出されたストレス度が正解データとして対応付けられることにより生成される。教師データ生成部407は、ステップS31で取得された生体信号が、女性被験者の生体信号である場合、第2教師データを生成する。第2教師データは、ステップS33で抽出された第2学習用特徴量の組み合わせに対し、ステップS34で算出されたストレス度が正解データとして対応付けられることにより生成される。
【0108】
ステップS36では、学習処理部408は、ステップS31で取得された生体信号が、男性被験者の生体信号である場合、ステップS35で生成された第1教師データを用いた機械学習により男性被験者のストレス度を推定するための第1推定モデルを生成する。学習処理部408は、ステップS31で取得された生体信号が、女性被験者の生体信号である場合、ステップS35で生成された第2教師データを用いた機械学習により女性被験者のストレス度を推定するための第2推定モデルを生成する。
【0109】
<推論フェーズにおける情報処理方法の流れ>
本発明の例示的実施形態3に係る情報処理装置4が実行する、推論フェーズにおける情報処理方法の流れは、
図5に基づいて説明される。例示的実施形態3の情報処理方法において、例示的実施形態2の情報処理方法と異なる点は、以下のとおりである。
【0110】
ステップS42では、特定部404は、ステップS41で取得された生体信号が、男性被験者の生体信号である場合、1日のうち標準の昼食時間帯を注目時間帯として特定する。特定部404は、ステップS41で取得された生体信号が、女性被験者の生体信号である場合、1日のうち標準の昼食時間帯以外の時間帯を注目時間帯として特定する。
【0111】
ステップS43では、抽出部405は、ステップS41で取得された生体信号が、男性被験者の生体信号である場合、特定された上述の昼食時間帯に取得された生体信号から第1推定用特徴量を抽出する。抽出部405は、ステップS41で取得された生体信号が、女性被験者の生体信号である場合、上述の昼食時間帯以外の時間帯に取得された生体信号から第2推定用特徴量を抽出する。
【0112】
ステップS44では、推定部409は、ステップS41で取得された生体信号が、男性被験者の生体信号である場合、ステップS43で抽出された第1推定用特徴量を、ステップS36で生成された第1推定モデルに入力する。推定部409は、第1推定モデルの出力値を、上述の男性被験者の推定結果データ417として記憶部41に記憶させる。推定部409は、ステップS41で取得された生体信号が、女性被験者の生体信号である場合、ステップS43で抽出された第2推定用特徴量を、ステップS36で生成された第2推定モデルに入力する。推定部409は、第2推定モデルの出力値を、上述の女性被験者の推定結果データ417として記憶部41に記憶させる。
【0113】
以上のように、本例示的実施形態に係る情報処理装置4においては、上述の特定部404および抽出部405を備える構成が採用されている。特に、特定部404は、男性被験者について、1日のうち被験者の標準の昼食時間帯を注目時間帯として特定するように構成されている。また、特に、抽出部405は、男性被験者について、特定された昼食時間帯に取得された生体信号から特徴量を抽出するように構成されている。
【0114】
上述の構成によれば、1日のうち、男性に関して、生体信号の所定の指標値(例えば、心拍数、発汗量など)が比較的高くなる傾向にある食事時であって、特に人によって時間帯のばらつきが少ない昼食時間帯に取得された、男性被験者の生体信号から特徴量が抽出される。食事時間帯は、男性の生体信号において慢性ストレス傾向が顕著になる時間帯であると考えられている。したがって、特徴量を抽出する対象の生体信号を、昼食時間帯の生体信号に絞り込むことにより、男性の慢性ストレスの推定精度が高い推定モデルを効率よく構築したり、男性の慢性ストレスの推定を一層精度よく実施したりすることが可能になる。
【0115】
以上のように、本例示的実施形態に係る情報処理装置4においては、上述の特定部404および抽出部405を備える構成が採用されている。特に、特定部404は、女性被験者について、1日のうち被験者の標準の昼食時間帯以外の時間帯を注目時間帯として特定するように構成されている。また、特に、抽出部405は、女性被験者について、昼食時間帯以外の時間帯に取得された生体信号から特徴量を抽出するように構成されている。
【0116】
上述の構成によれば、1日のうち、女性に関して、生体信号の所定の指標値(例えば、心拍数、発汗量など)が比較的低くなる傾向にある食事時であって、特に人によって時間帯のばらつきが少ない昼食時間帯の生体信号を除いて特徴量が抽出される。女性は、慢性ストレス傾向にある時、食事量が低下するため、食事時間帯には食事に伴う生体信号が鈍化すると推定され得る。そこで、少なくとも昼食時間帯を注目時間帯から外して、特徴量を抽出する対象の生体信号を絞り込むことにより、女性の慢性ストレスの推定精度が改善された推定モデルを効率よく構築したり、女性の慢性ストレスの推定精度を改善したりすることが可能になる。
【0117】
〔例示的実施形態4〕
本発明の第4の例示的実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、上述の各例示的実施形態にて説明した構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0118】
本例示的実施形態では、被験者の属性ごとに特徴量を抽出し、属性ごとに教師データを生成し、属性ごとに推定モデルを生成する。そして、被験者のストレス度の推定に際し、該被験者の属性に対応する推定モデルを用いて、該被験者のストレス度を推定する。被験者の属性は、一例として、性別であってもよい。
【0119】
本例示的実施形態では、一例として、慢性ストレス傾向が生体信号に顕著に表れる注目時間帯を、被験者が急性ストレス刺激に曝されている時間帯に基づいて特定する。以下では、被験者が急性ストレス刺激に曝されている時間帯を、ストレス発生時間帯と称する。
【0120】
本発明者らは、女性の生体信号の所定の指標値(例えば、心拍数、発汗量など)は、急性のストレス発生時間帯において高くなる傾向があり、慢性ストレス傾向が顕著に表れ得ると推測した。そこで、本例示的実施形態では、一例として、女性被験者については、慢性ストレス傾向が生体信号に顕著に表れる注目時間帯として、上述のストレス発生時間帯を特定する。
【0121】
また、本発明者らは、慢性ストレス傾向にある男性の生体信号の所定の指標値は、急性のストレス発生時間帯においてその顕現が鈍化する傾向があり、したがって、生体信号によって推定され得る慢性ストレス傾向の顕現が鈍化することに着目した。そこで、本例示的実施形態では、一例として、男性被験者については、上述のストレス発生時間帯以外を、注目時間帯として特定する。例えば、例示的実施形態1~3の少なくともいずれかの構成に基づいて特定した注目時間帯からストレス発生時間帯を除いて最終的な注目時間帯を特定してもよい。
【0122】
<情報処理装置の構成>
本例示的実施形態では、
図3に示すとおり、制御部40には、判定部406が含まれている。判定部406は、生体信号に基づいて被験者が急性ストレス刺激に曝されている状態か否かを判定する。例えば、判定部406は、以下のように生体信号を解析して、ストレス発生時間帯を検出してもよい。
【0123】
例えば、判定部406は、被験者から得られた、心拍データが示す心拍数、および、発汗データが示す発汗量の少なくともいずれかを用いて、該被験者が急性ストレス刺激に曝されている状態か否かを判定する。
【0124】
例えば、心拍データが、単位時間ごとに計測された心拍数を時系列に並べたデータであるとき、判定部406は、単位時間ごとに心拍数と所定の閾値との比較を行って、急性ストレス刺激の曝露の有無を判定してもよい。例えば、判定部406は、心拍数が所定の閾値以上である場合にその時点において「急性ストレス刺激の曝露有り」と判定してもよい。判定部406は、「急性ストレス刺激の曝露有り」と判定した時点の集合を、ストレス発生時間帯として検出し、特定部404に対して出力してもよい。
【0125】
別の例では、判定部406は、心拍データのうち、単位時間あたりの心拍数の増加量が所定の閾値以上となる、心拍数の急峻な上昇時点SSと、そのように上昇した心拍数が下降し始めた時点EEとを検出し、時点SSから時点EEまでの時間帯をストレス発生時間帯として、特定部404に対して出力してもよい。
【0126】
また、判定部406は、複数種類の生体信号を用いて急性ストレス刺激の有無を判定し、ストレス発生時間帯を検出してもよい。例えば、心拍数の上昇および発汗量の増加が同時に観測された時点をストレス発生時間帯の開始時点と特定し、心拍数および発汗量の少なくとも何れかが平常レベルに低下した時点をストレス発生時間帯の終了時点と特定してもよい。また、例えば判定部406は、計測された生体信号の所定期間における変動のパターンが急性ストレス刺激に暴露された状態に特有のパターンに該当する期間を、ストレス発生時間帯として検出してもよい。
【0127】
特定部404は、女性被験者について、判定部406によって判定されたストレス発生時間帯を、注目時間帯として特定する。
【0128】
また、特定部404は、男性被験者について、判定部406によって判定されたストレス発生時間帯以外の時間帯を注目時間帯として特定する。例えば、特定部404は、例示的実施形態1~3の少なくともいずれかの構成によって特定した注目時間帯から上述のストレス発生時間帯を除いて、最終的な注目時間帯を特定してもよい。
【0129】
抽出部405は、例示的実施形態3と同様に、特定された注目時間帯に基づいて、属性別、すなわち、男女別に、特徴量を抽出する。特徴量データ414には、男性向けの第1学習用特徴量および第1推定用特徴量、ならびに、女性向けの第2学習用特徴量および第2推定用特徴量が含まれ得る。
【0130】
教師データ生成部407は、例示的実施形態3と同様に、男女別に、教師データを生成する。教師データ415には、男性向けの第1教師データおよび女性向けの第2教師データが含まれ得る。
【0131】
学習処理部408は、例示的実施形態3と同様に、男女別に、推定モデルを生成する。推定モデル416には、男性向けの第1推定モデルおよび女性向けの第2推定モデルが含まれ得る。
【0132】
推定部409は、例示的実施形態3と同様に、男女別に、ストレス度を推定する。
【0133】
<学習フェーズにおける情報処理方法の流れ>
図6は、本発明の例示的実施形態4に係る情報処理装置4が実行する、学習フェーズにおける情報処理方法の流れを示すフローチャートである。
図6に示す情報処理方法は、例示的実施形態2および3と同様に、本発明の特徴量抽出方法と、教師データ生成方法と、推定モデル生成方法とを含む。本例示的実施形態において、ステップS52~S54は特徴量抽出方法を実現する処理であり、ステップS56は、教師データ生成方法を実現する処理であり、ステップS57は、推定モデル生成方法を実現する処理である。
【0134】
上述の各処理はプログラムにより実現することもできる。つまり、ステップS52~S54の処理をコンピュータに実行させる特徴量抽出プログラムも本例示的実施形態の範疇に含まれる。同様に、ステップS54で抽出された特徴量を用いて教師データを生成するステップS56の処理をコンピュータに実行させる教師データ生成プログラムも本例示的実施形態の範疇に含まれる。そして、ステップS56で生成された教師データを用いて推定モデルを生成するステップS57の処理をコンピュータに実行させる推定モデル生成プログラムも本例示的実施形態の範疇に含まれる。
【0135】
なお、
図6に示す一連の情報処理方法が、情報処理装置4に代えて、上述の情報処理システムによって実行されてもよい。この場合、ステップS51~S54の実行主体は、上述の特徴量抽出装置であり、ステップS55~S56の実行主体は、上述の教師データ生成装置であり、ステップS57の実行主体は、上述の推定モデル生成装置である。
【0136】
以下では、例示的実施形態2および3と同様に、ウェアラブル端末7で測定した、被験者の心拍データと、発汗データとを生体信号として推定モデルを生成する例を説明する。以下では、例示的実施形態4の情報処理方法において、上述の各情報処理方法と共通する点は、「例示的実施形態~と同様に」または「ステップS~と同様に」などと説明し、同じ説明を繰り返さない。
【0137】
ステップS51では、生体信号取得部401は、ステップS31と同様に生体信号を取得する。
【0138】
ステップS52では、判定部406は、ステップS51で取得された生体信号に基づいて、被験者が急性ストレス刺激に曝されている状態か否かを判定する。例えば、判定部406は、上述したいくつかの具体的な判定方法を採用して、ストレス発生時間帯を検出してもよい。
【0139】
ステップS53では、特定部404は、ステップS51で取得された生体信号が、男性被験者の生体信号である場合、ストレス発生時間帯以外の時間帯を注目時間帯として特定する。特定部404は、S51で取得された生体信号が、女性被験者の生体信号である場合、ストレス発生時間帯を注目時間帯として特定する。
【0140】
ステップS54では、抽出部405は、ステップS51で取得された生体信号が、男性被験者の生体信号である場合、ストレス発生時間帯以外の時間帯に取得された生体信号から第1学習用特徴量を抽出する。抽出部405は、ステップS51で取得された生体信号が、女性被験者の生体信号である場合、ストレス発生時間帯に取得された生体信号から第2学習用特徴量を抽出する。
【0141】
ステップS55では、ストレス度計算部403は、ステップS34と同様に被験者のストレス度を算出する。
【0142】
ステップS56では、教師データ生成部407は、ステップS51で取得された生体信号が、男性被験者の生体信号である場合、第1教師データを生成する。第1教師データは、ステップS54で抽出された第1学習用特徴量の組み合わせに対し、ステップS55で算出されたストレス度が正解データとして対応付けられることにより生成される。教師データ生成部407は、ステップS51で取得された生体信号が、女性被験者の生体信号である場合、第2教師データを生成する。第2教師データは、ステップS54で抽出された第2学習用特徴量の組み合わせに対し、ステップS55で算出されたストレス度が正解データとして対応付けられることにより生成される。
【0143】
ステップS57では、学習処理部408は、ステップS51で取得された生体信号が、男性被験者の生体信号である場合、ステップS56で生成された第1教師データを用いた機械学習により男性被験者のストレス度を推定するための第1推定モデルを生成する。学習処理部408は、ステップS51で取得された生体信号が、女性被験者の生体信号である場合、ステップS56で生成された第2教師データを用いた機械学習により女性被験者のストレス度を推定するための第2推定モデルを生成する。
【0144】
<推論フェーズにおける情報処理方法の流れ>
図7は、本発明の例示的実施形態4に係る情報処理装置4が実行する、推論フェーズにおける情報処理方法の流れを示すフローチャートである。
図7に示す情報処理方法は、一例として、本発明の特徴量抽出方法と、ストレス度の推定方法とを含む。本例示的実施形態において、ステップS62~S64は特徴量抽出方法を実現する処理であり、ステップS65は、ストレス度の推定方法を実現する処理である。
【0145】
上述の各処理はプログラムにより実現することもできる。つまり、ステップS62~S64の処理をコンピュータに実行させる特徴量抽出プログラムも本例示的実施形態の範疇に含まれる。そして、ステップS57で生成された推定モデルを用いてストレス度を推定するステップS65の処理をコンピュータに実行させる、ストレス度推定プログラムも本例示的実施形態の範疇に含まれる。
【0146】
なお、
図7に示す一連の情報処理方法が、情報処理装置4に代えて、上述の情報処理システムによって実行される場合、ステップS61~S64の実行主体は、上述の特徴量抽出装置であり、ステップS65の実行主体は、上述の推定装置である。
【0147】
以下では、例示的実施形態2および3と同様に、ウェアラブル端末7で測定した1カ月分の心拍データおよび発汗データを生体信号として当該1カ月における被験者のストレス度を推定する例を説明する。以下では、例示的実施形態4の情報処理方法において、上述の各情報処理方法と共通する点は、「例示的実施形態~と同様に」または「ステップS~と同様に」などと説明し、同じ説明を繰り返さない。
【0148】
ステップS61では、生体信号取得部401は、ステップS41と同様に生体信号を取得する。
【0149】
ステップS62では、判定部406は、ステップS52と同様に、被験者が急性ストレス刺激に曝されている状態か否かを判定する。例えば、判定部406は、上述したいくつかの具体的な判定方法を採用して、ストレス発生時間帯を検出してもよい。
【0150】
ステップS63では、特定部404は、ステップS61で取得された生体信号が、男性被験者の生体信号である場合、ストレス発生時間帯以外の時間帯を注目時間帯として特定する。特定部404は、ステップS61で取得された生体信号が、女性被験者の生体信号である場合、ストレス発生時間帯を注目時間帯として特定する。
【0151】
ステップS64では、抽出部405は、ステップS61で取得された生体信号が、男性被験者の生体信号である場合、ストレス発生時間帯以外の時間帯に取得された生体信号から第1推定用特徴量を抽出する。抽出部405は、ステップS61で取得された生体信号が、女性被験者の生体信号である場合、ストレス発生時間帯に取得された生体信号から第2推定用特徴量を抽出する。
【0152】
ステップS65では、推定部409は、ステップS61で取得された生体信号が、男性被験者の生体信号である場合、ステップS64で抽出された第1推定用特徴量を、ステップS57で生成された第1推定モデルに入力する。推定部409は、第1推定モデルの出力値を、上述の男性被験者の推定結果データ417として記憶部41に記憶させる。推定部409は、ステップS61で取得された生体信号が、女性被験者の生体信号である場合、ステップS64で抽出された第2推定用特徴量を、ステップS57で生成された第2推定モデルに入力する。推定部409は、第2推定モデルの出力値を、上述の女性被験者の推定結果データ417として記憶部41に記憶させる。
【0153】
以上のように、本例示的実施形態に係る情報処理装置4においては、上述の判定部406、特定部404および抽出部405を備える構成が採用されている。判定部406は、生体信号に基づいて被験者が急性ストレス刺激に曝されている状態か否かを判定するように構成される。特定部404は、女性被験者について、被験者が急性ストレス刺激に曝されている状態であると判定されたストレス発生時間帯を、注目時間帯として特定するように構成される。抽出部405は、女性被験者について、特定されたストレス発生時間帯に取得された生体信号から特徴量を抽出するように構成される。
【0154】
急性のストレス発生時間帯は、女性において、生体信号における慢性ストレス傾向が顕著になると推測される。上述の構成によれば、女性被験者の生体信号のうち、ストレス発生時間帯に取得された生体信号から特徴量が抽出される。したがって、特徴量を抽出する対象の生体信号を、ストレス発生時間帯の生体信号に絞り込むことにより、女性の慢性ストレスの推定精度が高い推定モデルを効率よく構築したり、女性の慢性ストレスの推定を一層精度よく実施したりすることが可能になる。
【0155】
以上のように、本例示的実施形態に係る情報処理装置4においては、上述の判定部406、特定部404および抽出部405を備える構成が採用されている。判定部406は、生体信号に基づいて被験者が急性ストレス刺激に曝されている状態か否かを判定するように構成される。特定部404は、男性被験者について、被験者が急性ストレス刺激に曝されている状態であると判定されたストレス発生時間帯以外の時間帯を、注目時間帯として特定するように構成される。抽出部405は、男性被験者について、ストレス発生時間帯以外の時間帯に取得された生体信号から特徴量を抽出するように構成される。
【0156】
急性のストレス発生時間帯は、男性において、生体信号における慢性ストレス傾向の顕現が鈍化すると考えられる。上述の構成によれば、男性被験者の生体信号のうち、ストレス発生時間帯以外の時間帯に取得された生体信号から特徴量が抽出される。これにより、男性の慢性ストレスの推定精度が高い推定モデルを効率よく構築したり、男性の慢性ストレスの推定を一層精度よく実施したりすることが可能になる。
【0157】
〔例示的実施形態5〕
本発明の第5の例示的実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、上述の各例示的実施形態にて説明した構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0158】
本例示的実施形態では、取得された生体信号を提供した被験者の属性を判別し、判別した属性ごとに異なる情報処理が実行される。
【0159】
<情報処理装置の構成>
本例示的実施形態では、
図3に示す生体信号取得部401は、生体信号とともに、当該生体信号を提供する被験者の属性を示す属性情報を取得する。本例示的実施形態では、被験者の属性は一例として性別である。したがって、本例示的実施形態において、属性情報は、被験者の性別を示す情報である。
【0160】
<学習フェーズにおける情報処理方法の流れ>
図8は、本発明の例示的実施形態5に係る情報処理装置4が実行する、学習フェーズにおける情報処理方法の流れを示すフローチャートである。以下では、上述の各例示的実施形態と同様に、ウェアラブル端末7で測定した、被験者の心拍データと、発汗データとを生体信号として推定モデルを生成する例を説明する。以下では、例示的実施形態5の情報処理方法において、上述の各情報処理方法と共通する点は、「例示的実施形態~と同様に」または「ステップS~と同様に」などと説明し、同じ説明を繰り返さない。
【0161】
ステップS101では、生体信号取得部401は、推定モデルの生成に用いる生体信号と、該生体信号を提供する被験者の属性情報とを取得する。例えば、ウェアラブル端末7は、予め登録されているウェアラブル端末7の装着者の属性情報を、生体信号と併せて情報処理装置4に送信してもよい。
【0162】
ステップS102では、特定部404は、ステップS101で取得された属性情報が男性を示すか女性を示すかを判別する。属性情報が男性を示す場合、特定部404は、ステップS102のAからステップS103へ処理を進める。属性情報が女性を示す場合、特定部404は、ステップS102のBからステップS108へ処理を進める。
【0163】
ステップS103では、特定部404は、例示的実施形態3のステップS32と同様に、男性被験者の生体信号のうち、予め定められた標準の昼食時間帯を注目時間帯として特定する。
【0164】
ステップS104では、抽出部405は、例示的実施形態3のステップS33と同様に、昼食時間帯に取得された生体信号から第1学習用特徴量を抽出する。
【0165】
ステップS105では、ストレス度計算部403は、上述の各例示的実施形態のステップS34と同様に、ストレス度を算出する。
【0166】
ステップS106では、教師データ生成部407は、例示的実施形態3のステップS35と同様に、第1学習用特徴量にストレス度を対応付けて第1教師データを生成する。
【0167】
ステップS107では、学習処理部408は、例示的実施形態3のステップS36と同様に、第1教師データを用いた機械学習により第1推定モデルを生成する。
【0168】
ステップS108では、判定部406は、ステップS52と同様に、生体信号に基づいて、被験者が急性ストレス刺激に曝されている状態か否かを判定する。例えば、判定部406は、ストレス発生時間帯を検出してもよい。
【0169】
ステップS109では、特定部404は、ステップS53と同様に、ストレス発生時間帯を注目時間帯として特定する。
【0170】
ステップS110では、抽出部405は、ステップS54と同様に、ストレス発生時間帯に取得された生体信号から第2学習用特徴量を抽出する。
【0171】
ステップS111では、ストレス度計算部403は、上述の各例示的実施形態のステップS34およびS55と同様に、ストレス度を算出する。
【0172】
ステップS112では、教師データ生成部407は、ステップS56と同様に、第2学習用特徴量にストレス度を対応付けて第2教師データを生成する。
【0173】
ステップS113では、学習処理部408は、ステップS57と同様に、第2教師データを用いた機械学習により第2推定モデルを生成する。
【0174】
<推論フェーズにおける情報処理方法の流れ>
図9は、本発明の例示的実施形態5に係る情報処理装置4が実行する、推論フェーズにおける情報処理方法の流れを示すフローチャートである。以下では、上述の各例示的実施形態と同様に、ウェアラブル端末7で測定した1カ月分の心拍データおよび発汗データを生体信号として当該1カ月における被験者のストレス度を推定する例を説明する。また、以下では、例示的実施形態5の情報処理方法において、上述の各情報処理方法と共通する点は、「例示的実施形態~と同様に」または「ステップS~と同様に」などと説明し、同じ説明を繰り返さない。
【0175】
ステップS201では、生体信号取得部401は、被験者のストレス度の推定に用いる生体信号と、該生体信号を提供する上述の被験者の属性情報とを取得する。ステップS101と同様に、属性情報は、生体信号と併せてウェアラブル端末7から情報処理装置4に送信されてもよい。
【0176】
ステップS202では、特定部404は、ステップS102と同様に、属性情報が示す性別を判別する。属性情報が男性を示す場合、特定部404は、ステップS202のAからステップS203へ処理を進める。属性情報が女性を示す場合、特定部404は、ステップS202のBからステップS205へ処理を進める。
【0177】
ステップS203では、抽出部405は、ステップS103で特定された注目時間帯、すなわち、標準の昼食時間帯に取得された生体信号から第1推定用特徴量を抽出する。
【0178】
ステップS204では、推定部409は、ステップS65と同様に、ステップS107で生成された第1推定モデルを用いて、ステップS201で取得された生体信号の提供者である男性被験者のストレス度を推定する。具体的には、ステップS203で抽出された第1推定用特徴量を、ステップS107で生成された第1推定モデルに入力する。そして、推定部409は、第1推定モデルの出力値を、上述の男性被験者の推定結果データ417として記憶部41に記憶させる。
【0179】
ステップS205では、判定部406は、ステップS108と同様に、生体信号に基づいて、被験者が急性ストレス刺激に曝されている状態か否かを判定する。例えば、判定部406は、ストレス発生時間帯を検出してもよい。
【0180】
ステップS206では、特定部404は、ステップS109と同様に、ストレス発生時間帯を注目時間帯として特定する。
【0181】
ステップS207では、抽出部405は、ステップS64と同様に、ストレス発生時間帯に取得された生体信号から第2推定用特徴量を抽出する。
【0182】
ステップS208では、推定部409は、ステップS65と同様に、ステップS113で生成された第2推定モデルを用いて、ステップS201で取得された生体信号の提供者である女性被験者のストレス度を推定する。具体的には、ステップS207で抽出された第2推定用特徴量を、ステップS113で生成された第2推定モデルに入力する。そして、推定部409は、第2推定モデルの出力値を、上述の女性被験者の推定結果データ417として記憶部41に記憶させる。
【0183】
本例示的実施形態に係る各情報処理方法によれば、男性、女性のそれぞれについて、慢性ストレス傾向が顕著になる時間帯に絞って特徴量を抽出することができる。具体的には、男性に関しては、昼食時間帯に取得された生体信号から特徴量が抽出される。また、女性に関しては、ストレス発生時間帯に取得された生体信号から特徴量が抽出される。
【0184】
このように、性別に応じて、慢性ストレス傾向が顕著になる時間帯をより適切に絞り込むことにより、男女別に、慢性ストレスの推定精度が高い推定モデルを効率よく構築したり、慢性ストレスの推定を一層精度よく実施したりすることが可能になる。
【0185】
〔変形例〕
上述の各例示的実施形態では、被験者の属性が性別である例を説明したが、当該属性は慢性ストレス傾向が生体信号に顕著に表れる時間帯に関連した属性であればよく、性別に限られない。例えば、被験者の年齢層や職業等を被験者の属性として、それらの属性に応じた注目時間帯を特定してもよい。また、このようにして特定した注目時間帯に取得された生体信号から、被験者の年齢層や職業等の属性に応じた特徴量を抽出し、その特徴量を用いて被験者の年齢層や職業等の属性ごとの推定モデルを構築することもできる。そして、このようにして構築した推定モデルに、被験者の年齢層や職業等の属性に応じた特徴量を入力することにより、被験者の年齢層や職業等の属性に応じた高精度なストレス度の推定が可能になる。
【0186】
〔ソフトウェアによる実現例〕
情報処理装置(1、4)の一部又は全部の機能は、集積回路(ICチップ)等のハードウェアによって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0187】
後者の場合、上述の情報処理装置は、例えば、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータによって実現される。このようなコンピュータの一例(以下、コンピュータCと記載する)を
図10に示す。コンピュータCは、少なくとも1つのプロセッサC1と、少なくとも1つのメモリC2と、を備えている。メモリC2には、コンピュータCを上述の情報処理装置として動作させるためのプログラムPが記録されている。コンピュータCにおいて、プロセッサC1は、プログラムPをメモリC2から読み取って実行することにより、上述の情報処理装置の各機能が実現される。
【0188】
プロセッサC1としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、FPU(Floating point number Processing Unit)、PPU(Physics Processing Unit)、マイクロコントローラ、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。メモリC2としては、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。
【0189】
なお、コンピュータCは、プログラムPを実行時に展開したり、各種データを一時的に記憶したりするためのRAM(Random Access Memory)を更に備えていてもよい。また、コンピュータCは、他の装置との間でデータを送受信するための通信インタフェースを更に備えていてもよい。また、コンピュータCは、キーボードやマウス、ディスプレイやプリンタなどの入出力機器を接続するための入出力インタフェースを更に備えていてもよい。
【0190】
また、プログラムPは、コンピュータCが読み取り可能な、一時的でない有形の記録媒体Mに記録することができる。このような記録媒体Mとしては、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、又はプログラマブルな論理回路などを用いることができる。コンピュータCは、このような記録媒体Mを介してプログラムPを取得することができる。また、プログラムPは、伝送媒体を介して伝送することができる。このような伝送媒体としては、例えば、通信ネットワーク、又は放送波などを用いることができる。コンピュータCは、このような伝送媒体を介してプログラムPを取得することもできる。
【0191】
〔付記事項1〕
本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。例えば、上述した実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0192】
〔付記事項2〕
上述した実施形態の一部又は全部は、以下のようにも記載され得る。ただし、本発明は、以下の記載する態様に限定されるものではない。
【0193】
(付記1)
被験者から所定の期間に亘って取得された生体信号において、慢性ストレス傾向が前記生体信号に顕著に表れる時間帯を注目時間帯として特定する特定手段と、
特定された前記注目時間帯に取得された生体信号から、ストレス度の推定モデルの機械学習または前記推定モデルを用いたストレス度の推定に用いる1つ以上の特徴量を抽出する抽出手段と、を備える情報処理装置。
【0194】
上述の構成によれば、ストレス度の推定モデルの機械学習または当該推定モデルを用いたストレス度の推定に用いる妥当な特徴量を抽出することができるという効果が得られる。
【0195】
(付記2)
前記特定手段は、1日のうち前記生体信号が顕著な挙動を示す時間帯を前記注目時間帯として特定し、
前記抽出手段は、前記注目時間帯の開始時または終了時における前記生体信号の変化に基づいて前記特徴量を抽出する、付記1に記載の情報処理装置。
【0196】
上述の構成によれば、被験者が特定の状態下に移行したことなどに起因する生体信号の変化の態様が、慢性ストレスと有意な相関がある、ということが予め分かっている場合に、以下の効果を奏する。すなわち、上述の変化に基づく特徴量が抽出されることにより、慢性ストレスの推定精度を高めることができるという効果が得られる。
【0197】
(付記3)
前記特定手段は、概日リズムに基づいて生体信号の所定の指標値がピークになる午前時刻の前後の所定時間帯を注目時間帯として特定する、付記1または2に記載の情報処理装置。
【0198】
上述の構成によれば、概日リズムに基づいて上述の指標値がピークになる午前時刻の前後の所定時間帯における生体信号から特徴量を抽出される。そのため、ストレス度の推定モデルの機械学習または当該推定モデルを用いたストレス度の推定に用いる妥当な特徴量を抽出することができるという効果が得られる。
【0199】
(付記4)
前記特定手段は、男性被験者について、1日のうち前記被験者の標準の昼食時間帯を注目時間帯として特定し、
前記抽出手段は、男性被験者について、特定された前記昼食時間帯に取得された生体信号から前記特徴量を抽出する、付記1から3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【0200】
上述の構成によれば、特徴量を抽出する対象の生体信号を、昼食時間帯の生体信号に絞り込むことができる。結果として、男性の慢性ストレスの推定精度が高い推定モデルを効率よく構築したり、男性の慢性ストレスの推定を一層精度よく実施したりすることが可能になる。
【0201】
(付記5)
前記特定手段は、女性被験者について、1日のうち前記被験者の標準の昼食時間帯以外の時間帯を注目時間帯として特定し、
前記抽出手段は、女性被験者について、前記昼食時間帯以外の時間帯に取得された生体信号から前記特徴量を抽出する、付記1から4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【0202】
上述の構成によれば、少なくとも昼食時間帯を注目時間帯から外して、特徴量を抽出する対象の生体信号を絞り込むことができる。結果として、女性の慢性ストレスの推定精度が改善された推定モデルを効率よく構築したり、女性の慢性ストレスの推定精度を改善したりすることが可能になる。
【0203】
(付記6)
前記生体信号に基づいて前記被験者が急性ストレス刺激に曝されている状態か否かを判定する判定手段をさらに備え、
前記特定手段は、女性被験者について、前記被験者が急性ストレス刺激に曝されている状態であると判定されたストレス発生時間帯を、前記注目時間帯として特定し、
前記抽出手段は、女性被験者について、特定された前記ストレス発生時間帯に取得された生体信号から前記特徴量を抽出する、付記1から5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【0204】
上述の構成によれば、特徴量を抽出する対象の生体信号を、ストレス発生時間帯の生体信号に絞り込むことにより、女性の慢性ストレスの推定精度が高い推定モデルを効率よく構築したり、女性の慢性ストレスの推定を一層精度よく実施したりすることが可能になる。
【0205】
(付記7)
前記生体信号に基づいて前記被験者が急性ストレス刺激に曝されている状態か否かを判定する判定手段をさらに備え、
前記特定手段は、男性被験者について、前記被験者が急性ストレス刺激に曝されている状態であると判定されたストレス発生時間帯以外の時間帯を、前記注目時間帯として特定し、
前記抽出手段は、男性被験者について、前記ストレス発生時間帯以外の時間帯に取得された生体信号から前記特徴量を抽出する、付記1から6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【0206】
上述の構成によれば、ストレス発生時間帯以外の時間帯に取得された生体信号に絞り込んで特徴量が抽出される。これにより、男性の慢性ストレスの推定精度が高い推定モデルを効率よく構築したり、男性の慢性ストレスの推定を一層精度よく実施したりすることが可能になる。
【0207】
(付記8)
少なくとも1つのプロセッサが、
被験者から所定の期間に亘って取得された生体信号において、慢性ストレス傾向が前記生体信号に顕著に表れる時間帯を注目時間帯として特定することと、
特定された前記注目時間帯に取得された生体信号から、ストレス度の推定モデルの機械学習または前記推定モデルを用いたストレス度の推定に用いる1つ以上の特徴量を抽出することと、を含む特徴量抽出方法。
【0208】
上述の方法によれば、付記1の情報処理装置と同様の効果を奏する。
【0209】
(付記9)
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記特定することにおいて、1日のうち前記生体信号が顕著な挙動を示す時間帯を前記注目時間帯として特定し、
前記抽出することにおいて、前記注目時間帯の開始時または終了時における前記生体信号の変化に基づいて前記特徴量を抽出する、付記8に記載の特徴量抽出方法。
【0210】
上述の方法によれば、被験者が特定の状態下に移行したことなどに起因する生体信号の変化の態様が、慢性ストレスと有意な相関がある、ということが予め分かっている場合に、以下の効果を奏する。すなわち、上述の変化に基づく特徴量が抽出されることにより、慢性ストレスの推定精度を高めることができるという効果が得られる。
【0211】
(付記10)
少なくとも1つのプロセッサが、
付記8または9に記載の特徴量抽出方法により抽出された1つ以上の特徴量に対し、正解データとして被験者のストレス度を対応付けて、前記機械学習に用いる教師データを生成することを含む、教師データ生成方法。
【0212】
上述の方法によれば、慢性ストレスの推定精度が高い推定モデルを効率よく構築することが可能な教師データを生成できるという効果が得られる。
【0213】
(付記11)
少なくとも1つのプロセッサが、
付記10に記載の教師データ生成方法により生成された前記教師データを用いた機械学習により前記推定モデルを生成することを含む、推定モデル生成方法。
【0214】
上述の方法によれば、慢性ストレスの推定精度が高い推定モデルを生成できるという効果が得られる。
【0215】
(付記12)
少なくとも1つのプロセッサが、
付記11に記載の推定モデル生成方法により生成された前記推定モデルを用いて被験者のストレス度を推定することを含む、ストレス度の推定方法。
【0216】
上述の方法によれば、慢性ストレスに係るストレス度を精度よく推定することができるという効果が得られる。
【0217】
(付記13)
コンピュータを、
被験者から所定の期間に亘って取得された生体信号において、慢性ストレス傾向が前記生体信号に顕著に表れる時間帯を注目時間帯として特定する特定手段、および、
特定された前記注目時間帯に取得された生体信号から、ストレス度の推定モデルの機械学習または前記推定モデルを用いたストレス度の推定に用いる1つ以上の特徴量を抽出する抽出手段、として機能させる特徴量抽出プログラム。上述の構成によれば、付記1の情報処理装置と同様の効果を奏する。
【0218】
(付記14)
被験者から所定の期間に亘って取得された生体信号において、慢性ストレス傾向が前記生体信号に顕著に表れる時間帯を注目時間帯として特定する特定手段と、
特定された前記注目時間帯に取得された生体信号から、ストレス度の推定モデルを用いたストレス度の推定に用いる1つ以上の特徴量(推定用特徴量)を抽出する抽出手段と、
抽出された1つ以上の前記特徴量を前記推定モデルに入力して得られた出力値に基づいて、前記被験者のストレス度を推定する推定手段と、を備える推定装置。
【0219】
(付記15)
少なくとも1つのプロセッサが、
被験者から所定の期間に亘って取得された生体信号において、慢性ストレス傾向が前記生体信号に顕著に表れる時間帯を注目時間帯として特定することと、
特定された前記注目時間帯に取得された生体信号から、ストレス度の推定モデルを用いたストレス度の推定に用いる1つ以上の特徴量(推定用特徴量)を抽出することと、
抽出された1つ以上の前記特徴量を前記推定モデルに入力して得られた出力値に基づいて、前記被験者のストレス度を推定することと、を含む、ストレス度の推定方法。
【0220】
〔付記事項3〕
上述した実施形態の一部又は全部は、更に、以下のように表現することもできる。
【0221】
少なくとも1つのプロセッサを備え、前記プロセッサは、被験者から所定の期間に亘って取得された生体信号において、慢性ストレス傾向が前記生体信号に顕著に表れる時間帯を注目時間帯として特定する特定処理と、特定された前記注目時間帯に取得された生体信号から、ストレス度の推定モデルの機械学習または前記推定モデルを用いたストレス度の推定に用いる1つ以上の特徴量を抽出する抽出処理とを実行する情報処理装置。
【0222】
なお、この情報処理装置は、更にメモリを備えていてもよく、このメモリには、前記特定処理と、前記抽出処理とを前記プロセッサに実行させるためのプログラムが記憶されていてもよい。また、このプログラムは、コンピュータ読み取り可能な一時的でない有形の記録媒体に記録されていてもよい。
【符号の説明】
【0223】
1 情報処理装置
4 情報処理装置
7 ウェアラブル端末
11 特定部(特定手段)
12 抽出部(抽出手段)
404 特定部(特定手段)
405 抽出部(抽出手段)
406 判定部(判定手段)
409 推定部(推定手段)