(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-23
(45)【発行日】2025-07-01
(54)【発明の名称】樹脂組成物、樹脂膜、フィルム、フィルムセット、光導波路、光電気複合基板および電子部品
(51)【国際特許分類】
G02B 6/12 20060101AFI20250624BHJP
C08F 32/00 20060101ALI20250624BHJP
C08F 232/00 20060101ALI20250624BHJP
C08L 45/00 20060101ALI20250624BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20250624BHJP
【FI】
G02B6/12 371
C08F32/00
C08F232/00
C08L45/00
C08L63/00 A
(21)【出願番号】P 2024575182
(86)(22)【出願日】2024-08-22
(86)【国際出願番号】 JP2024029769
【審査請求日】2024-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2023166734
(32)【優先日】2023-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕馬
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-137426(JP,A)
【文献】特開2022-182542(JP,A)
【文献】特開2016-139030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12-6/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路クラッドに用いることが可能な樹脂組成物であって、
環状オレフィン樹脂(A)を含み、
前記環状オレフィン樹脂(A)は、構造単位(a)と、構造単位(b)と、を含み、
前記構造単位(a)は下記式(a-1)で示される構造単位であり、
前記構造単位(b)は下記式(b-1)で示される構造単位である、樹脂組成物。
【化1】
(式(a-1)中、R
1、R
2、R
3およびR
4はそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または炭素原子数1~30の有機基を表す。)
【化2】
(式(b-1)中、R
11は水素原子、水酸基または炭素原子数1~30の有機基を表す。)
【請求項2】
前記環状オレフィン樹脂(A)中の前記構造単位(a)の含有量は、前記環状オレフィン樹脂(A)中の全ての構造単位の合計を100モル%としたとき、10モル%以上70モル%以下である、請求項
1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記環状オレフィン樹脂(A)の屈折率が、1.45以上1.55以下である、請求項1
または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂組成物中の前記環状オレフィン樹脂(A)の含有量は、前記樹脂組成物中の樹脂成分の合計含有量を100質量部としたとき、20質量部以上80質量部以下である、請求項1
または2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
環状エーテル構造を有する化合物(B)をさらに含む、請求項1
または2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
環状エーテル構造を有する化合物(B)を含み、
前記環状エーテル構造を有する化合物(B)が、エポキシ化合物およびオキセタン化合物からなる群から選択される少なくとも一種または二種以上を含む、請求項1
または2に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
環状エーテル構造を有する化合物(B)を含み、
前記環状エーテル構造を有する化合物(B)が、分子内に脂環構造を含む、請求項1
または2に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
環状エーテル構造を有する化合物(B)を含み、
前記環状エーテル構造を有する化合物(B)が、分子内に2個以上の環状エーテル構造を含む、請求項1
または2に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
環状エーテル構造を有する化合物(B)を含み、
前記環状エーテル構造を有する化合物(B)が、23℃で液状である、請求項1
または2に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
環状エーテル構造を有する化合物(B)を含み、
前記環状エーテル構造を有する化合物(B)の屈折率が、1.45以上1.55以下である、請求項1
または2に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
環状エーテル構造を有する化合物(B)を含み、
前記樹脂組成物中の前記環状エーテル構造を有する化合物(B)の含有量は、前記樹脂組成物中の樹脂成分の合計含有量を100質量部としたとき、20質量部以上80質量部以下である、請求項1
または2に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
硬化剤(C)をさらに含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
硬化剤(C)を含み、
前記硬化剤(C)がカチオン重合開始剤を含む、請求項1
または2に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
硬化剤(C)を含み、
前記硬化剤(C)がカチオン重合開始剤を含み、
前記カチオン重合開始剤が光カチオン重合開始剤を含む、請求項1
または2に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
硬化剤(C)を含み、
前記硬化剤(C)がカチオン重合開始剤を含み、
前記カチオン重合開始剤が熱カチオン重合開始剤を含む、請求項1
または2に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
硬化剤(C)を含み、
前記硬化剤(C)がイミダゾール系化合物を含む、請求項1
または2に記載の樹脂組成物。
【請求項17】
硬化剤(C)を含み、
前記樹脂組成物中に含まれる前記硬化剤(C)の含有量は、前記樹脂組成物中の樹脂成分の合計含有量を100質量部としたとき、0.05質量部以上10.0質量部以下である、請求項1
または2に記載の樹脂組成物。
【請求項18】
前記樹脂組成物の屈折率が、1.47以上1.55以下である、請求項1
または2に記載の樹脂組成物。
【請求項19】
請求項1
または2に記載の樹脂組成物からなる樹脂膜であって、
前記樹脂膜は、850nmの波長に対する光線透過率が85%以上である、樹脂膜。
【請求項20】
前記樹脂膜は、厚みが1μm以上150μm以下である、請求項
19に記載の樹脂膜。
【請求項21】
光導波路クラッドに用いることが可能なフィルムであって、
請求項1
または2に記載の樹脂組成物により形成された樹脂層を備える、フィルム。
【請求項22】
さらに、基材フィルムを備え、
前記基材フィルム上に前記樹脂層を有する、請求項
21に記載のフィルム。
【請求項23】
前記基材フィルムを構成する樹脂が、ポリイミドおよびポリエチレンテレフタレートからなる群から選択される少なくとも一種または二種以上を含む、請求項
22に記載のフィルム。
【請求項24】
前記フィルムがドライフィルムである、請求項
21に記載のフィルム。
【請求項25】
光導波路クラッドに用いることが可能なフィルムセットであって、
第1のフィルムと、第2のフィルムとを含み、
前記第1のフィルム、および前記第2のフィルムの少なくとも一方が、請求項
21に記載のフィルムである、フィルムセット。
【請求項26】
第1のクラッド層と、コア層と、第2のクラッド層とが、この順で積層された光導波路であって、
前記第1のクラッド層、および前記第2のクラッド層の少なくとも一方が、請求項1
または2に記載の樹脂組成物を含む、光導波路。
【請求項27】
基板と、
前記基板上に設けられた請求項
26に記載の光導波路と、を備える、光電気複合基板。
【請求項28】
請求項
27に記載の光電気複合基板を備える、電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂組成物、樹脂膜、フィルム、フィルムセット、光導波路、光電気複合基板および電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信機器において、情報の大容量化、情報通信速度の高速化等の、より高度な情報通信を実現できる部材が求められており、そのような部材の一つとして光電気複合基板が検討されている。
【0003】
光電気複合基板は、例えば、基板上に光導波路が設けられたものが挙げられる。
光電気複合基板に関する技術としては、例えば、特許文献1および2に記載の技術が挙げられる。
【0004】
特許文献1には、絶縁層の表面に実装用パッドを有する電気配線が形成されているフレキシブル回路基板と、上記実装用パッドに実装された素子と、上記絶縁層の裏面側に積層された光導波路とを備えた光電気混載基板であって、上記フレキシブル回路基板が、絶縁層の裏面にも電気配線が形成されたフレキシブル両面回路基板であり、その裏面側の電気配線のうち、少なくとも上記実装用パッドに対応する部分に、金属製補強層がめっき形成され、その金属製補強層に、上記光導波路が当接した状態になっていることを特徴とする光電気混載基板が記載されている。
特許文献1に記載の光電気混載基板によれば、フレキシブル回路基板の絶縁層に、接着剤層を介することなく、金属製補強層が密着され、その金属製補強層により、素子実装時の押圧荷重による変形を抑制した状態で素子が適正に実装されている光電気混載基板が提供できることが記載されている。
【0005】
特許文献1には、ポリイミド等の樹脂からなる絶縁層1の表裏面に銅箔21が形成された基材を準備し、その基材に、光路用の貫通孔1aおよびビアホール1bを形成する点が記載されている(特許文献1の段落0023参照)。そして、金属製補強層Mを形成したフレキシブル両面回路基板Eが記載されている(特許文献1の段落0028参照)。フレキシブル両面回路基板Eには、上記基材が含まれる。
さらに、特許文献1には、フレキシブル両面回路基板Eの裏面側に、裏面側の電気配線2Bを被覆する金属製補強層Mに当接した状態で、アンダークラッド層6を形成することが記載されており、アンダークラッド層6の成形材料としては、例えば、感光性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる点が記載されている(特許文献1の段落0029参照)。特許文献1の
図4~
図6によれば、アンダークラッド層6の成形材料が、金属製補強層Mを形成したフレキシブル両面回路基板Eに形成されている凹部に充填されていることが理解できる。
【0006】
特許文献2には、基板の両面に導体回路と絶縁層とが積層形成されたリジッド部と、1つまたは複数の屈曲可能なフレックス部とが一体化してなる光電気配線板であって、前記リジッド部には、光学素子および/または光学素子を実装したパッケージ基板を搭載するための外部接続端子が形成されており、前記フレックス部の少なくとも1つには、光配線が形成されていることを特徴とする光電気配線板が記載されている。
特許文献2の光電気配線板によれば、配線板のサイズを大きくすることなく、大容量情報の処理や情報の高速処理を好適に行うことができると記載されている。
【0007】
特許文献2に記載のリジッド部は、光信号通過領域が形成されており、前記光信号通過領域は、その内部に樹脂組成物が充填されていることが記載されている(特許文献2の請求項4および請求項5参照)。さらに、光信号通過領域は、リジッド部を構成する全ての基板および絶縁層を貫通するように形成されていることが記載されている(特許文献2の請求項6参照)。
【0008】
さらに、特許文献2には、光導波路フィルム250と、その周囲の樹脂層(絶縁層)221aとからなる基板221が記載されており、樹脂層221aは光信号通過領域242a、242bの一部を構成する点が記載されている(特許文献2の段落0033参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2014-238455号公報
【文献】特開2006-140233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1および2に記載されているように、従来の光電気複合基板に関する技術において、基板に形成された凹部、基板に形成されたビアに対して、樹脂組成物を充填した光電気複合基板が知られている。
【0011】
光電気複合基板の製造工程として、例えば、ビアが形成された基板と、光導波路クラッド用のフィルムとを一体化する工程が挙げられる。この工程において、基板に形成されたビアを、光導波路クラッドによって埋め込む必要がある。すなわち、光導波路クラッドに用いることが可能な樹脂組成物には、ビアに上記樹脂組成物を十分に埋め込むことを可能とする特性が求められている(以下、「埋込性」とは、ビアに光導波路クラッドに用いることが可能な樹脂組成物をどの程度埋め込むことができるかの特性を意味する)。
【0012】
また、光導波路クラッドに用いることが可能な樹脂組成物は光線透過率が高いことも求められる。
【0013】
本発明は上記事情を鑑みなされたものであり、光線透過率の低下を抑制しつつ、埋込性を向上させることが可能な樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、以下に示す樹脂組成物、樹脂膜、フィルム、フィルムセット、光導波路、光電気複合基板および電子部品が提供される。
【0015】
[1]
光導波路クラッドに用いることが可能な樹脂組成物であって、
環状オレフィン樹脂(A)を含み、
前記環状オレフィン樹脂(A)は、構造単位(a)と、構造単位(b)と、を含み、
前記構造単位(a)は下記式(a-1)で示される構造単位であり、
前記構造単位(b)は下記式(b-1)で示される構造単位、下記式(b-2)で示される構造単位および下記式(b-3)で示される構造単位からなる群から選択される一種または二種以上である、樹脂組成物。
【化1】
(式(a-1)中、R
1、R
2、R
3およびR
4はそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または炭素原子数1~30の有機基を表す。)
【化2】
(式(b-1)中、R
11は水素原子、水酸基または炭素原子数1~30の有機基を表す。)
【化3】
【化4】
(式(b-3)中、R
21およびR
22は、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1~30の有機基を表す。)
[2]
前記環状オレフィン樹脂(A)中の前記構造単位(a)の含有量は、前記環状オレフィン樹脂(A)中の全ての構造単位の合計を100モル%としたとき、10モル%以上70モル%以下である、前記[1]に記載の樹脂組成物。
[3]
前記環状オレフィン樹脂(A)の屈折率が、1.45以上1.55以下である、前記[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
[4]
前記樹脂組成物中の前記環状オレフィン樹脂(A)の含有量は、前記樹脂組成物中の樹脂成分の合計含有量を100質量部としたとき、20質量部以上80質量部以下である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]
環状エーテル構造を有する化合物(B)をさらに含む、前記[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]
環状エーテル構造を有する化合物(B)が、エポキシ化合物およびオキセタン化合物からなる群から選択される少なくとも一種または二種以上を含む、前記[5]に記載の樹脂組成物。
[7]
前記環状エーテル構造を有する化合物(B)が、分子内に脂環構造を含む、前記[5]または[6]に記載の樹脂組成物。
[8]
前記環状エーテル構造を有する化合物(B)が、分子内に2個以上の環状エーテル構造を含む、前記[5]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9]
前記環状エーテル構造を有する化合物(B)が、23℃で液状である、前記[5]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10]
前記環状エーテル構造を有する化合物(B)の屈折率が、1.45以上1.55以下である、前記[5]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[11]
前記樹脂組成物中の前記環状エーテル構造を有する化合物(B)の含有量は、前記樹脂組成物中の樹脂成分の合計含有量を100質量部としたとき、20質量部以上80質量部以下である、前記[5]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[12]
硬化剤(C)をさらに含む、前記[1]~[11]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[13]
前記硬化剤(C)がカチオン重合開始剤を含む、前記[12]に記載の樹脂組成物。
[14]
前記カチオン重合開始剤が光カチオン重合開始剤を含む、前記[13]に記載の樹脂組成物。
[15]
前記カチオン重合開始剤が熱カチオン重合開始剤を含む、前記[13]または[14]に記載の樹脂組成物。
[16]
前記硬化剤(C)がイミダゾール系化合物を含む、前記[12]~[15]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[17]
前記樹脂組成物中に含まれる前記硬化剤(C)の含有量は、前記樹脂組成物中の樹脂成分の合計含有量を100質量部としたとき、0.05質量部以上10.0質量部以下である、前記[12]~[16]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[18]
前記樹脂組成物の屈折率が、1.47以上1.55以下である、前記[1]~[17]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[19]
前記[1]~[18]のいずれかに記載の樹脂組成物からなる樹脂膜であって、
前記樹脂膜は、850nmの波長に対する光線透過率が85%以上である、樹脂膜。
[20]
前記樹脂膜は、厚みが1μm以上150μm以下である、前記[19]に記載の樹脂膜。
[21]
光導波路クラッドに用いることが可能なフィルムであって、
前記[1]~[18]のいずれかに記載の樹脂組成物により形成された樹脂層を備える、フィルム。
[22]
さらに、基材フィルムを備え、
前記基材フィルム上に前記樹脂層を有する、前記[21]に記載のフィルム。
[23]
前記基材フィルムを構成する樹脂が、ポリイミドおよびポリエチレンテレフタレートからなる群から選択される少なくとも一種または二種以上を含む、前記[22]に記載のフィルム。
[24]
前記フィルムがドライフィルムである、前記[21]~[23]のいずれかに記載のフィルム。
[25]
光導波路クラッドに用いることが可能なフィルムセットであって、
第1のフィルムと、第2のフィルムとを含み、
前記第1のフィルム、および前記第2のフィルムの少なくとも一方が、前記[21]~[24]のいずれかに記載のフィルムである、フィルムセット。
[26]
第1のクラッド層と、コア層と、第2のクラッド層とが、この順で積層された光導波路であって、
前記第1のクラッド層、および前記第2のクラッド層の少なくとも一方が、前記[1]~[18]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む、光導波路。
[27]
基板と、
前記基板上に設けられた前記[26]に記載の光導波路と、を備える、光電気複合基板。
[28]
前記[27]に記載の光電気複合基板を備える、電子部品。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、光線透過率の低下を抑制しつつ、埋込性を向上させることが可能な樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態の光電気複合基板の構造の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、図面は簡略図で、実際の寸法比率とは一致していない。数値範囲の「A~B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。
【0019】
図1は、本実施形態の光電気複合基板の構造の一例を模式的に示した断面図である。
図1に示すように、光電気複合基板200は、基板110上に光導波路100が設けられる。光導波路100は、第1のクラッド層20と、コア層30と、第2のクラッド層40とが、この順で積層されている。光導波路100には、発光素子側のミラー50と、受光素子側のミラー60とが形成されている。基板110には、ビア140(140a、140b)が形成されている(なお、
図1に示すビア140は、第1のクラッド層20により埋め込まれている状態である)。基板110の光導波路100側とは反対側に、発光素子120と、受光素子130が設けられている。
【0020】
図1を用いて、光電気複合基板200における光の伝搬経路について具体的に説明する。発光素子120の発光部から出射した光は、基板110に形成されたビア140a内を通過し、発光素子側のミラー50に入射することによって、コア層30内を伝送した後、受光素子側のミラー60に入射し、基板110に形成されたビア140b内を通過し、受光素子130へと入射する。なお、
図1中の矢印は光の伝搬を模式的に記載したものである。
【0021】
基板110上に光導波路100を設けるとき、例えば、ビア140が形成された基板110と、第1のクラッド層20を形成するためのフィルムを積層し、加温、加圧によって一体化する工程を含む。一体化する工程において、ビア140を、第1のクラッド層20によって埋め込む必要がある。
【0022】
本発明者らの検討によれば、従来の光導波路クラッドを形成するための材料では、基板に形成されたビアに光導波路クラッドを十分に埋め込むことができず、光導波路クラッドの基板側とは反対側の面(すなわち、光導波路クラッドのコア層側)に凹みが生じたり、ビア内にボイドが発生したりする場合があることを見出した。そして、光電気複合基板に上述した凹みやボイドが発生すると、凹みやボイドの界面において光損失が発生することを見出した。
つまり、光導波路クラッドに用いることが可能な樹脂組成物には、ビアに上記樹脂組成物を十分に埋め込むことを可能とする特性が求められる。
【0023】
また、上述のとおり、ビア140に埋め込まれた第1のクラッド層20は光の伝搬経路となる。そのため、光導波路クラッドに用いることが可能な樹脂組成物には光線透過率(例えば、850nmの波長に対する光線透過率)が高いことも求められる。
【0024】
本発明は上記事情を鑑みなされたものであり、光線透過率の低下を抑制しつつ、埋込性を向上させることが可能な樹脂組成物を提供するものである。
【0025】
さらに、本発明によれば、伝搬損失を抑制することが可能な光電気複合基板を提供することができる。
【0026】
[樹脂組成物]
本実施形態の樹脂組成物は、光導波路クラッドに用いることが可能な樹脂組成物であって、環状オレフィン樹脂(A)を含み、環状オレフィン樹脂(A)は、構造単位(a)と、構造単位(b)と、を含み、構造単位(a)は式(a-1)で示される構造単位であり、構造単位(b)は式(b-1)で示される構造単位、式(b-2)で示される構造単位および式(b-3)で示される構造単位からなる群から選択される一種または二種以上である。
【0027】
【0028】
式(a-1)中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または炭素原子数1~30の有機基を表す。
【0029】
【0030】
式(b-1)中、R11は水素原子、水酸基または炭素原子数1~30の有機基を表す。
【0031】
【0032】
【0033】
式(b-3)中、R21およびR22は、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1~30の有機基を表す。
【0034】
本実施形態の樹脂組成物の屈折率は、光導波路の光伝搬効率をより向上させる観点から、好ましくは1.55以下、より好ましくは1.54以下、さらに好ましくは1.53以下、さらに好ましくは1.52以下であり、そして、下限値は特に限定されないが、例えば、1.47以上であってよく、1.48以上であってよい。
樹脂組成物の屈折率は、樹脂組成物からなる樹脂膜に対して、アッベ屈折率計を用いて、23℃、589nmの条件下で測定される屈折率を意味する。
樹脂組成物からなる樹脂膜は、例えば、実施例に記載の方法のように、基材フィルム上に、樹脂組成物を塗布、乾燥させることにより作製できる。
【0035】
本実施形態の樹脂組成物の850nmの波長に対する光線透過率は、光導波路の光伝搬効率をより向上させる観点から、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上である。
樹脂組成物の850nmの波長に対する光線透過率とは、厚み25μmの樹脂組成物からなる樹脂膜に対して、紫外可視分光光度計により測定される光線透過率の値を意味する。
厚み25μmの樹脂組成物からなる樹脂膜は、例えば、実施例に記載の方法のように、基材フィルム上に、樹脂組成物を塗布、乾燥させることにより作製できる。
【0036】
本実施形態の樹脂組成物の形状は特に限定されず、例えば、フィルム状、膜状、ワニス状、シート状等の形状が挙げられる。
【0037】
以下、本実施形態の樹脂組成物の各構成成分について説明する。
【0038】
<環状オレフィン樹脂(A)>
本実施形態の樹脂組成物は、環状オレフィン樹脂(A)を含む。
環状オレフィン樹脂(A)は、構造単位(a)と、構造単位(b)と、を含む。
【0039】
環状オレフィン樹脂(A)において、構造単位(a)は式(a-1)で示される構造単位である。
【0040】
【0041】
式(a-1)中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または炭素原子数1~30の有機基を表す。
式(a-1)中、炭素原子数1~30の有機基は、好ましくは炭素原子数1~25の有機基であり、より好ましくは炭素原子数1~20の有機基であり、さらに好ましくは炭素原子数1~15の有機基である。
【0042】
式(a-1)中、R1、R2、R3およびR4を構成する有機基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、カルボキシル基を有する有機基およびヘテロ環を有する有機基等からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、および、ドデシル基等からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
アルケニル基としては、例えば、アリル基、ペンテニル基およびビニル基等からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
アルキニル基としては、例えば、エチニル基等が挙げられる。
アルキリデン基としては、例えば、メチリデン基およびエチリデン基等からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基およびアントラセニル基等からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基およびフェネチル基等からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
アルカリル基としては、例えば、トリル基およびキシリル基等からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えば、アダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基およびシクロオクチル基等からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
ヘテロ環を有する有機基としては、例えば、エポキシ基、およびオキセタニル基を有する有機基が挙げられる。
【0043】
R1、R2、R3およびR4を構成する有機基において、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、カルボキシル基を有する有機基およびヘテロ環を有する有機基は、1以上の水素原子が、ハロゲン原子により置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素が挙げられる。
【0044】
樹脂組成物の成膜性をより向上させる観点から、R1、R2、R3およびR4からなる群から選択される少なくとも1つはアルキル基であることが好ましい。
また、樹脂組成物の硬化物の耐熱性および強度をより向上させる観点から、R1、R2、R3およびR4からなる群から選択される少なくとも1つは、カルボキシル基を有する有機基およびヘテロ環を有する有機基からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0045】
これらの中でも、式(a-1)中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立して、水素原子、カルボキシル基を有する有機基またはヘテロ環を有する有機基を表すことが好ましく、水素原子、カルボキシル基を有する有機基またはエポキシ基を有する有機基を表すことがより好ましく、水素原子、カルボキシル基を有する炭素原子数1~8の有機基またはエポキシ基を有する炭素原子数1~8の有機基を表すことがさらに好ましく、水素原子、カルボキシル基を有する炭素原子数1~4の有機基またはエポキシ基を有する炭素原子数1~4の有機基を表すことがさらに好ましい。
【0046】
環状オレフィン樹脂(A)において、構造単位(b)は式(b-1)で示される構造単位、式(b-2)で示される構造単位および式(b-3)で示される構造単位からなる群から選択される一種または二種以上である。
【0047】
式(b-1)で示される構造単位を以下に示す。
【0048】
【0049】
式(b-1)中、R11は水素原子、水酸基または炭素原子数1~30の有機基を表す。
式(b-1)中、炭素原子数1~30の有機基は、好ましくは炭素原子数1~25の有機基であり、より好ましくは炭素原子数1~20の有機基であり、さらに好ましくは炭素原子数1~15の有機基である。
【0050】
式(b-1)中、R11を構成する有機基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基およびシクロアルキル基等からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
R11を構成する有機基としてのアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基およびシクロアルキル基の具体例は、R1、R2、R3およびR4を構成する有機基において記載した具体例と同様である。
【0051】
R11を構成する有機基において、1以上の水素原子が、ハロゲン原子により置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素が挙げられる。
【0052】
これらの中でも、式(b-1)中、R11は水素原子、アルキル基またはシクロアルキル基を表すことが好ましく、R11は水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基または炭素原子数1~20のシクロアルキル基を表すことがより好ましく、水素原子、ドデシル基またはシクロヘキシル基を表すことがさらに好ましい。
【0053】
式(b-2)で示される構造単位を以下に示す。
【0054】
【0055】
式(b-3)で示される構造単位を以下に示す。
【0056】
【0057】
式(b-3)中、R21およびR22は、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1~30の有機基を表す。
式(b-3)中、炭素原子数1~30の有機基は、好ましくは炭素原子数1~25の有機基であり、より好ましくは炭素原子数1~20の有機基であり、さらに好ましくは炭素原子数1~15の有機基である。
【0058】
式(b-3)中、R21およびR22を構成する有機基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、アクリロイル基を有する基およびメタクリロイル基を有する基等からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
R21およびR22を構成する有機基としてのアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基およびシクロアルキル基の具体例は、R1、R2、R3およびR4を構成する有機基において記載した具体例と同様である。
【0059】
R21およびR22を構成する有機基において、1以上の水素原子が、ハロゲン原子により置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素が挙げられる。
【0060】
これらの中でも、式(b-3)中、R21およびR22は、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基を表すことが好ましく、水素原子またはn-ブチル基を表すことがより好ましい。
【0061】
式(b-3)は、R21が水素原子であり、R22が炭素原子数1~30の有機基であることが好ましく、R21が水素原子であり、R22がアルキル基であることがより好ましく、R21が水素原子であり、R22が炭素原子数1~10のアルキル基であることがさらに好ましく、R21が水素原子であり、R22がn-ブチル基であることがさらに好ましい。
【0062】
環状オレフィン樹脂(A)は、構造単位(a)と、構造単位(b)以外の構造単位を含んでもよい。
その他の構造単位としては、例えば、エチレン性二重結合を有する化合物に由来する構造単位が挙げられる。
エチレン性二重結合を有する化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等の炭素数2~20のα-オレフィン;1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン等の非共役ジエン;アクリル酸、メタクリル酸、α-エチルアクリル酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸等のアクリル酸類;マレイン酸、無水マレイン酸、ジメチルマレイン酸、ジエチルマレイン酸、ジブチルマレイン酸等のマレイン酸類;エチルオキセタンビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、アリルビニルエーテル等のビニルエーテル;等からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0063】
環状オレフィン樹脂(A)中の構造単位(a)の含有量は、環状オレフィン樹脂(A)中の全ての構造単位の合計を100モル%としたとき、好ましくは10モル%以上、より好ましくは15モル%以上、さらに好ましくは30モル%以上、さらに好ましくは35モル%以上、さらに好ましくは40モル%以上であり、そして、好ましくは70モル%以下、より好ましくは65モル%以下、さらに好ましくは60モル%以下である。
【0064】
環状オレフィン樹脂(A)中の構造単位(b)の含有量は、環状オレフィン樹脂(A)中の全ての構造単位の合計を100モル%としたとき、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、さらに好ましくは30モル%以上、さらに好ましくは35モル%以上、さらに好ましくは40モル%以上であり、そして、好ましくは70モル%以下、より好ましくは65モル%以下、さらに好ましくは60モル%以下である。
【0065】
環状オレフィン樹脂(A)中の構造単位(a)および構造単位(b)の合計含有量は、環状オレフィン樹脂(A)中の全ての構造単位の合計を100モル%としたとき、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは65モル%以上であり、そして、例えば、100モル%以下である。
【0066】
環状オレフィン樹脂(A)の屈折率は、光導波路の光伝搬効率をより向上させる観点から、好ましくは1.55以下、より好ましくは1.53以下、さらに好ましくは1.52以下であり、そして、下限値は特に限定されないが、例えば、1.45以上であってよく、1.48以上であってよい。
環状オレフィン樹脂(A)の屈折率は、アッベ屈折率計測定による23℃、589nmの条件下での屈折率を意味する。
【0067】
環状オレフィン樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは4,000以上、より好ましくは5,000以上、さらに好ましくは6,000以上であり、そして、有機溶剤への溶解性をより向上させる観点から、好ましくは20,000以下、より好ましくは18,000以下、さらに好ましくは16,000以下である。
環状オレフィン樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレンを標準物質として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めることができる。
【0068】
本実施形態の樹脂組成物中の環状オレフィン樹脂(A)の含有量は、樹脂組成物の樹脂成分の合計含有量を100質量部としたとき、光線透過率の低下を抑制しつつ、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは20質量部以上、より好ましくは23質量部以上、さらに好ましくは25質量部以上、さらに好ましくは28質量部以上であり、そして、光線透過率の低下を抑制しつつ、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、より好ましくは75質量部以下、さらに好ましくは70質量部以下、さらに好ましくは65質量部以下である。
【0069】
本実施形態の樹脂組成物中の環状オレフィン樹脂(A)の含有量は、樹脂組成物の全成分の合計含有量を100質量%としたとき、光線透過率の低下を抑制しつつ、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは28質量%以上であり、そして、光線透過率の低下を抑制しつつ、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは100質量%未満、より好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下である。
【0070】
環状オレフィン樹脂(A)は、例えば、公知の方法により製造することができ、より具体的には、各構造単位を形成することが可能なモノマーを任意の方法で重合することにより製造できる。
ここで、式(a-1)で示される構造単位を形成することが可能なモノマーとしては、例えば、2-ノルボルネン、メチルグリシジルエーテルノルボルネン、5-ノルボルネン-2-カルボン酸等が挙げられる。
式(b-1)で示される構造単位を形成することが可能なモノマーとしては、例えば、マレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
式(b-2)で示される構造単位を形成することが可能なモノマーとしては、例えば、無水マレイン酸が挙げられる。
式(b-3)で示される構造単位を形成することが可能なモノマーとしては、例えば、マレイン酸水素1-ブチル、マレイン酸水素エチル等が挙げられる。
【0071】
環状オレフィン樹脂(A)は、一種の環状オレフィン樹脂であってもよいし、二種以上の環状オレフィン樹脂を含んでいてもよい。
【0072】
<環状エーテル構造を有する化合物(B)>
本実施形態の樹脂組成物は、埋込性をより向上させる観点から、環状エーテル構造を有する化合物(B)をさらに含むことが好ましい。
ここで、本実施形態の環状エーテル構造を有する化合物(B)は、モノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量や分子構造は特に限定されないものとする。また、本明細書において、樹脂組成物中の樹脂成分には、環状エーテル構造を有する化合物(B)も含まれるものとする。
【0073】
環状エーテル構造を有する化合物(B)は、好ましくはエポキシ化合物およびオキセタン化合物からなる群から選択される少なくとも一種または二種以上を含む。
【0074】
環状エーテル構造を有する化合物(B)は、分子内に脂環構造を含むことが好ましい。ここで、環状エーテル構造を有する化合物(B)が分子内に脂環構造を含むとは、環状エーテル構造以外に脂環構造を含むことを意味する。ただし、本実施形態の脂環構造は、環状エーテルと脂肪族環とが縮合した縮合環構造、および環状エーテルと脂肪族環とがスピロ結合原子により結合したスピロ環構造を含むものとする。
脂環構造における、環の員数は特に限定されないが、4員環以上10員環以下が好ましく、4員環以上8員環以下がより好ましく、5員環または6員環がさらに好ましく、6員環がさらに好ましい。
【0075】
環状エーテル構造を有する化合物(B)は、分子内に2個以上の環状エーテル構造を含むことが好ましく、分子内に2個または3個の環状エーテル構造を含むことがより好ましい。
【0076】
環状エーテル構造を有する化合物(B)は、樹脂組成物を製造する際の取り扱い性の観点から、23℃で液状であることが好ましい。
【0077】
環状エーテル構造を有する化合物(B)の屈折率は、光導波路の光伝搬効率をより向上させる観点から、好ましくは1.55以下、より好ましくは1.53以下、さらに好ましくは1.52以下であり、そして、下限値は特に限定されないが、例えば、1.45以上であってもよく、1.48以上であってもよい。
環状エーテル構造を有する化合物(B)の屈折率は、アッベ屈折率計測定による23℃、589nmの条件下での屈折率を意味する。
【0078】
本実施形態の樹脂組成物中の環状エーテル構造を有する化合物(B)の含有量は、樹脂組成物中の樹脂成分の合計含有量を100質量部としたとき、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは20質量部以上、より好ましくは25質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは35質量部以上であり、そして、好ましくは80質量部以下、より好ましくは75質量部以下である。
【0079】
環状エーテル構造を有する化合物(B)は、一種の環状エーテル構造を有する化合物であってもよいし、二種以上の環状エーテル構造を有する化合物を含んでいてもよい。
【0080】
<硬化剤(C)>
本実施形態の樹脂組成物は、硬化剤(C)をさらに含むことが好ましい。
硬化剤(C)としては、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤、アミン系化合物等からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0081】
硬化剤(C)はカチオン重合開始剤を含むことが好ましい。
カチオン重合開始剤としては、例えば、光カチオン重合開始剤、熱カチオン重合開始剤等が挙げられる。
【0082】
硬化剤(C)はカチオン重合開始剤を含み、カチオン重合開始剤として光カチオン重合開始剤を含むことが好ましい。
光カチオン重合開始剤は、例えば、スルホニウム塩型重合開始剤、ヨードニウム塩型重合開始剤等を含み、好ましくはスルホニウム塩型重合開始剤を含み、より好ましくはトリアリールスルホニウム塩型重合開始剤を含み、さらに好ましくはトリフェニルスルホニウム塩型重合開始剤を含む。
【0083】
硬化剤(C)はカチオン重合開始剤を含み、カチオン重合開始剤として熱カチオン重合開始剤を含むことが好ましい。
熱カチオン重合開始剤は、例えば、スルホニウム塩型重合開始剤、ヨードニウム塩型重合開始剤等を含み、スルホニウム塩型重合開始剤を含むことが好ましい。
【0084】
硬化剤(C)は、イミダゾール系化合物を含むことが好ましい。イミダゾール系化合物とは、イミダゾール環構造を含む化合物を意味し、例えば、イミダゾールの水素が炭化水素基等に置換された化合物である。
【0085】
本実施形態の樹脂組成物中に含まれる硬化剤(C)の含有量は、樹脂組成物中の樹脂成分の合計含有量を100質量部としたとき、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.2質量部以上であり、そして、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは8.0質量部以下、さらに好ましくは6.0質量部以下である。
【0086】
硬化剤(C)が光カチオン重合開始剤および熱カチオン重合開始剤からなる群から選択される少なくとも一種を含む場合、本実施形態の樹脂組成物中に含まれる硬化剤(C)の含有量は、樹脂組成物中の樹脂成分の合計含有量を100質量部としたとき、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.2質量部以上であり、そして、好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.7質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以下である。
【0087】
硬化剤(C)がイミダゾール系化合物を含む場合、本実施形態の樹脂組成物中に含まれる硬化剤(C)の含有量は、樹脂組成物中の樹脂成分の合計含有量を100質量部としたとき、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは2.0質量部以上、さらに好ましくは4.0質量部以上であり、そして、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは8.0質量部以下、さらに好ましくは6.0質量部以下である。
【0088】
本実施形態の硬化剤(C)は、一種の硬化剤であってもよいし、二種以上の硬化剤を含んでいてもよい。
【0089】
<界面活性剤(D)>
本実施形態の樹脂組成物は、埋込性をより向上させる観点から、界面活性剤(D)をさらに含むことが好ましい。
界面活性剤(D)は、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等を含み、シリコーン系界面活性剤を含むことが好ましい。
本実施形態の界面活性剤(D)は、一種の界面活性剤でもよいし、二種以上の界面活性剤を含んでいてもよい。
【0090】
本実施形態の樹脂組成物中に含まれる界面活性剤(D)の含有量は、樹脂組成物中の樹脂成分の合計含有量を100質量部としたとき、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.07質量部以上であり、そして、好ましくは3.0質量部以下、より好ましくは1.0質量部以下、さらに好ましくは0.7質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以下、さらに好ましくは0.3質量部以下である。
【0091】
<有機溶剤(E)>
本実施形態の樹脂組成物は、有機溶剤(E)を含んでいてもよい。本実施形態の樹脂組成物が有機溶剤(E)を含むと、ワニス状の樹脂組成物とすることができる。
【0092】
本実施形態の有機溶剤(E)は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ベンジルアルコール、プロピレンカーボネート、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等が挙げられる。
本実施形態の有機溶剤(E)は、一種の有機溶剤でもよいし、二種以上の有機溶剤を含んでいてもよい。
【0093】
本実施形態の樹脂組成物が、有機溶剤(E)を含む場合、樹脂組成物中の全固形分(不揮発成分)の濃度が、樹脂組成物の粘度を適切に制御する観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上であり、そして、樹脂組成物中の各成分を十分に溶解させる観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0094】
<その他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、例えば、硬化助剤、レベリング剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、フィラー、無機粒子、劣化防止剤、濡れ性改良剤、帯電防止剤等をさらに含んでいてもよい。その他の成分の含有量は適宜量である。
【0095】
本実施形態の樹脂組成物中の環状オレフィン樹脂(A)および環状エーテル構造を有する化合物(B)の合計含有量は、樹脂組成物中の樹脂成分の合計含有量を100質量%としたとき、光線透過率の低下を抑制しつつ、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上であり、そして、前記合計含有量の上限値は特に限定されないが、例えば100質量%以下である。
本実施形態の樹脂組成物中の環状オレフィン樹脂(A)および環状エーテル構造を有する化合物(B)の合計含有量は、樹脂組成物中の全成分の合計含有量を100質量%としたとき、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは92質量%以上であり、そして、上限値は特に限定されないが、例えば100質量%未満であり、99質量%以下である。
【0096】
本実施形態の樹脂組成物中の環状オレフィン樹脂(A)、環状エーテル構造を有する化合物(B)および硬化剤(C)の合計含有量は、樹脂組成物中の全成分の合計含有量を100質量%としたとき、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、そして、上限値は特に限定されないが、例えば100質量%以下である。
【0097】
[樹脂組成物の製造方法]
本実施形態の樹脂組成物は、例えば、各成分を混合することにより得られる。
フィルム状の本実施形態の樹脂組成物は、例えば、ワニス状の樹脂組成物を、基材フィルム上に塗布、乾燥することにより得られる。
【0098】
[樹脂膜]
本実施形態の樹脂膜は、本実施形態の樹脂組成物からなる樹脂膜である。
本実施形態の樹脂膜は、樹脂膜単体だけでなく、基材フィルム上に形成された樹脂膜等も含む。
【0099】
本実施形態の樹脂膜の850nmの波長に対する光線透過率は、光導波路の光伝搬効率をより向上させる観点から、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上である。
樹脂膜の850nmの波長に対する光線透過率は紫外可視分光光度計により測定することができる。
【0100】
本実施形態の樹脂膜の厚みは、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上、さらに好ましくは8μm以上であり、そして、光導波路の光伝搬効率をより向上させる観点から、好ましくは150μm以下、より好ましくは130μm以下、さらに好ましくは100μm以下、さらに好ましくは70μm以下、さらに好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。
【0101】
本実施形態の樹脂膜は、例えば、ワニス状の本実施形態の樹脂組成物を原料として、公知の塗膜を形成する方法により得られる。
【0102】
[フィルム]
本実施形態のフィルムは、本実施形態の樹脂組成物により形成された樹脂層を備える。
本実施形態のフィルムは、好ましくはドライフィルムである。
【0103】
本実施形態のフィルムの厚みは、フィルムの取り扱い性をより向上させる観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは50μm以上、さらに好ましくは60μm以上、さらに好ましくは80μm以上であり、そして、好ましくは250μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下である。
【0104】
本実施形態の樹脂層の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上、さらに好ましくは8μm以上であり、そして、光導波路の光伝搬効率をより向上させる観点から、好ましくは150μm以下、より好ましくは130μm以下、さらに好ましくは100μm以下、さらに好ましくは70μm以下、さらに好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。
【0105】
本実施形態のフィルムは、さらに基材フィルムを備え、基材フィルム上に樹脂層が設けられることが好ましい。
基材フィルムとしては、例えば、樹脂フィルムを用いることができる。
基材フィルムを構成する樹脂は特に限定されないが、ポリイミド、およびポリエチレンテレフタレートからなる群から選択される少なくとも一種または二種以上を含むことが好ましい。
【0106】
本実施形態の基材フィルムの厚みは、フィルムの取り扱い性をより向上させる観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上であり、そして、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下、さらに好ましくは40μm以下である。
【0107】
本実施形態の基材フィルムは、帯電防止処理、離型処理等の表面処理がされていてもよい。
【0108】
本実施形態のフィルムは、さらにカバーフィルムを備えていてもよい。カバーフィルムは、樹脂層と直に接するように設けられていることが好ましい。
本実施形態のフィルムが基材フィルムを備える場合、カバーフィルムは、樹脂層の基材フィルムとは反対側の面に設けられていることが好ましい。
カバーフィルムは特に限定されないが、例えば、OPPカバーフィルムを用いることができる。
【0109】
本実施形態のフィルムは、例えば、本実施形態のワニス状の樹脂組成物を、基材フィルム上に塗布、乾燥することにより得られる。塗布する方法としては、例えば、ピンコーター、ダイコーター、コンマコーター、カーテンコーター等の各種コーター装置を用いて直接塗布する方法、スクリーン印刷等の印刷方法が挙げられる。
【0110】
[フィルムセット]
本実施形態のフィルムセットは、第1のフィルムと、第2のフィルムとを含み、第1のフィルム、および第2のフィルムの少なくとも一方が、本実施形態のフィルムである。
本実施形態のフィルムセットは、第1のフィルム、および第2のフィルムの両方が、本実施形態のフィルムであることが好ましい。
【0111】
[光導波路]
本実施形態の光導波路について、
図1を用いて説明する。
本実施形態の光導波路100は、第1のクラッド層20と、コア層30と、第2のクラッド層40とがこの順で積層された光導波路であって、第1のクラッド層20、および第2のクラッド層40の少なくとも一方が、本実施形態の樹脂組成物を含む。
本実施形態の光導波路は、第1のクラッド層20、および第2のクラッド層40の両方が、本実施形態の樹脂組成物を含むことが好ましい。
【0112】
光導波路100が、基板110上に設けられる場合、第1のクラッド層20が基板110側となることが好ましい。
第1のクラッド層20が基板110側となる場合、第1のクラッド層20および第2のクラッド層40の好ましい厚みは以下の通りである。
第1のクラッド層20の厚みは、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上、さらに好ましくは8μm以上、さらに好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上であり、そして、光導波路の光伝搬効率をより向上させる観点から、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは70μm以下、さらに好ましくは50μm以下、さらに好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。
第2のクラッド層40の厚みは、光導波路の熱収縮をより抑制させる観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上、さらに好ましくは8μm以上であり、そして、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは70μm以下、さらに好ましくは50μm以下、さらに好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。
【0113】
コア層30を形成する材料は、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物から形成される。
コア層30を形成するための樹脂は、例えば、公知の光導波路のコアに用いられる樹脂を用いることができるが、環状オレフィン系樹脂を含むことが好ましく、ノルボルネン系樹脂を含むことがより好ましい。
コア層30を形成するための樹脂組成物は、酸化防止剤、光カチオン重合開始剤等を含んでいてもよい。
【0114】
コア層30の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上であり、そして、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。
【0115】
コア層30は、導波路パターンが形成されていてもよい。導波路パターンを形成する方法としては、例えば、露光法、エッチング法、複製法等が挙げられる。
【0116】
光導波路100は、ミラーが形成されていてもよく、発光素子側のミラー50および受光素子側のミラー60が形成されていてもよい。ミラーを形成する方法は、例えば、レーザー加工等により傾斜面を形成する方法が挙げられる。
【0117】
光導波路100は、第1のクラッド層20、コア層30、および第2のクラッド層40以外に、光導波路100の良好な性能に影響を与えない範囲で、その他の層を備えていてもよい。
【0118】
[光電気複合基板]
本実施形態の光電気複合基板について、
図1を用いて説明する。
光電気複合基板200は、基板110と、基板110上に設けられた光導波路100と、を備える。
【0119】
基板110は、例えば、プリント基板、フレキシブル基板等が挙げられ、好ましくはフレキシブル基板である。
基板110は、ビア140が形成されていてもよい。
【0120】
光電気複合基板200は、第2のクラッド層40のコア層30とは反対側の面にポリイミド基材(不図示)をさらに備えていてもよい。
【0121】
光電気複合基板200は、発光素子120、受光素子130等を備えていてもよい。
【0122】
光電気複合基板200は、例えば、(i)基板110上に第1のクラッド層20を形成する、(ii)第1のクラッド層20上にコア層30を形成する、(iii)コア層30上に第2のクラッド層40を形成する、ことにより得られる。
各層を形成する方法としては、例えば、各層を形成するためのフィルムをロールラミネート、真空ロールラミネート、平板ラミネート、真空平板ラミネート、常圧プレス、真空プレス等によって、各層を順番に積層する方法が挙げられる。
【0123】
[電子部品]
本実施形態の電子部品は、本実施形態の光電気複合基板を備える。
本実施形態の電子部品は、例えば、携帯電話、ゲーム機、ルーター装置、WDM装置、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等の電子機器類中の電子部品が挙げられる。
【0124】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、前記以外の様々な構成を採用することもできる。
また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例】
【0125】
以下、本実施形態を、実施例および比較例に基づき詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0126】
[原料]
まず、実施例および比較例で使用した原料について説明する。
【0127】
<環状オレフィン樹脂の合成>
(環状オレフィン樹脂(A-1)の合成)
撹拌機および冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、2-ノルボルネン470.8g(5.0mol)、無水マレイン酸490.3g(5.0mol)およびジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)23.0g(0.10mol)を計量し、メチルエチルケトン1607gおよびトルエン689gに溶解させた。次いで、窒素バブリングにより系内の溶存酸素を除去したのち、容器を密閉し、70℃で16時間反応させた。得られた溶液を室温まで冷却した後、多量のヘプタンに再沈しポリマー沈殿物を得た。続いて吸引ろ過器でポリマーをろ別し、更に粉体をヘプタンで洗浄した後、乾燥機にて60℃で24時間乾燥し、環状オレフィン樹脂(A-1)を得た。
環状オレフィン樹脂(A-1)のGPC測定による重量平均分子量(Mw)は11,000であり、アッベ屈折率計測定による23℃、589nmの条件下での屈折率は1.51であった。
環状オレフィン樹脂(A-1)は、式(a-1)で示される構造単位と式(b-2)で示される構造単位とを含む樹脂である。
【0128】
(環状オレフィン樹脂(A-2)の合成)
撹拌機および冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、2-ノルボルネン470.8g(5.0mol)、マレイン酸水素1-ブチル860.9g(5.0mol)およびジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)23.0g(0.10mol)を計量し、メチルエチルケトン2213gおよびトルエン948gに溶解させた。次いで、窒素バブリングにより系内の溶存酸素を除去したのち、容器を密閉し、70℃で16時間反応させた。得られた溶液を室温まで冷却した後、多量のヘプタンに再沈しポリマー沈殿物を得た。続いて吸引ろ過器でポリマーをろ別し、更に粉体をヘプタンで洗浄した後、乾燥機にて60℃で24時間乾燥し、環状オレフィン樹脂(A-2)を得た。
環状オレフィン樹脂(A-2)のGPC測定による重量平均分子量(Mw)は12,000であり、アッベ屈折率計測定による23℃、589nmの条件下での屈折率は1.51であった。
環状オレフィン樹脂(A-2)は、式(a-1)で示される構造単位と式(b-3)で示される構造単位とを含む樹脂である。
【0129】
(環状オレフィン樹脂(A-3)の合成)
撹拌機および冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、メチルグリシジルエーテルノルボルネン450g(2.5mol)、2-ノルボルネン235g(2.5mol)、マレイン酸水素1-ブチル516.5g(3.0mol)、無水マレイン酸245g(2.5mol)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)23.0g(0.1mol)を計量し、メチルエチルケトン2401gおよびトルエン1029gに溶解させた。次いで、窒素バブリングにより系内の溶存酸素を除去したのち、容器を密閉し、70℃で16時間反応させた。得られた溶液を室温まで冷却した後、多量のヘプタンに再沈しポリマー沈殿物を得た。続いて吸引ろ過器でポリマーをろ別し、更に粉体をヘプタンで洗浄した後、乾燥機にて60℃で24時間乾燥し、環状オレフィン樹脂(A-3)の樹脂を得た。
環状オレフィン樹脂(A-3)のGPC測定による重量平均分子量(Mw)は6,300であり、アッベ屈折率計測定による23℃、589nmの条件下での屈折率は1.51であった。
環状オレフィン樹脂(A-3)は、式(a-1)で示される構造単位と、式(b-2)で示される構造単位と、式(b-3)で示される構造単位と、を含む樹脂である。
【0130】
(環状オレフィン樹脂(A-4)の合成)
撹拌機および冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、5-ノルボルネン-2-カルボン酸345.4g(2.5mol)、エチルオキセタンビニルエーテル355.0g(2.5mol)、マレイミド242.7g(2.5mol)、N-シクロヘキシルマレイミド448.1g(2.5mol)及びジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)23.0g(0.1mol)を計量し、メチルエチルケトン2310gおよびトルエン990gに溶解させた。次いで、窒素バブリングにより系内の溶存酸素を除去したのち、容器を密閉し、70℃で16時間反応させた。得られた溶液を室温まで冷却した後、多量のヘプタンに再沈しポリマー沈殿物を得た。続いて吸引ろ過器でポリマーをろ別し、更に粉体をヘプタンで洗浄した後、乾燥機にて60℃で24時間乾燥し、環状オレフィン樹脂(A-4)を得た。
環状オレフィン樹脂(A-4)のGPC測定による重量平均分子量(Mw)は11,500であり、環状オレフィン樹脂(A-4)のアッベ屈折率計測定による23℃、589nmの条件下での屈折率は1.51であった。
環状オレフィン樹脂(A-4)は、式(a-1)で示される構造単位と式(b-1)で示される構造単位とを含む樹脂である。
【0131】
(環状オレフィン樹脂(A-5)の合成)
撹拌機および冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、メチルグリシジルエーテルノルボルネン900g(5.0mol)、マレイミド242.7g(2.5mol)、N-シクロヘキシルマレイミド448.1g(2.5mol)及びジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)23.0g(0.1mol)を計量し、メチルエチルケトン2636gおよびトルエン1130gに溶解させた。次いで、窒素バブリングにより系内の溶存酸素を除去したのち、容器を密閉し、70℃で16時間反応させた。得られた溶液を室温まで冷却した後、多量のヘプタンに再沈しポリマー沈殿物を得た。続いて吸引ろ過器でポリマーをろ別し、更に粉体をヘプタンで洗浄した後、乾燥機にて60℃で24時間乾燥し、環状オレフィン樹脂(A-5)を得た。
環状オレフィン樹脂(A-5)のGPC測定による重量平均分子量(Mw)は8,500であり、環状オレフィン樹脂(A-5)のアッベ屈折率計測定による23℃、589nmの条件下での屈折率は1.51であった。
環状オレフィン樹脂(A-5)は、式(a-1)で示される構造単位と式(b-1)で示される構造単位とを含む樹脂である。
【0132】
(環状オレフィン樹脂(A-6)の合成)<比較例用>
撹拌機および冷却管を備えた反応容器内を最初に窒素で十分置換し、その後デシルノルボルネン164g(0.7mol)及びメチルグリシジルエーテルノルボルネン54.1g(0.3mol)およびトルエン800gを仕込み、撹拌しながらオイルバスにて50℃まで加温した。そこに、(トルエン)Ni(C6F5)26.9g(0.014mol)のトルエン溶液(5g)を加え更に50℃で3時間反応した。得られた溶液を多量のメタノールに再沈しポリマー沈殿物を得た後、吸引ろ過器でろ別しポリマーの粉体を得た。得られたポリマーを60℃にて16時間真空乾燥させ環状オレフィン樹脂(A-6)を得た。環状オレフィン樹脂(A-6)のGPC測定による重量平均分子量(Mw)は100,000であり、環状オレフィン樹脂(A-6)のアッベ屈折率計測定による23℃、589nmの条件下での屈折率は1.50であった。
環状オレフィン樹脂(A-6)は構造単位(a)を含むが、構造単位(b)を含まない樹脂である。
【0133】
(環状オレフィン樹脂(A-8)の合成)
撹拌機および冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、メチルグリシジルエーテルノルボルネン540g(3.0mol)、N-ドデシルマレイミド1855g(7.0mol)及びジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)23.0g(0.1mol)を計量し、メチルエチルケトン3949gおよびトルエン1693gに溶解させた。次いで、窒素バブリングにより系内の溶存酸素を除去したのち、容器を密閉し、70℃で16時間反応させた。得られた溶液を室温まで冷却した後、多量のヘプタンに再沈しポリマー沈殿物を得た。続いて吸引ろ過器でポリマーをろ別し、更に粉体をヘプタンで洗浄した後、乾燥機にて60℃で24時間乾燥し、環状オレフィン樹脂(A-8)を得た。
環状オレフィン樹脂(A-8)のGPC測定による重量平均分子量(Mw)は12,000であり、環状オレフィン樹脂(A-8)のアッベ屈折率計測定による23℃、589nmの条件下での屈折率は1.52であった。
環状オレフィン樹脂(A-8)は、式(a-1)で示される構造単位と式(b-1)で示される構造単位とを含む樹脂である。
【0134】
表1における各成分の原料の詳細は以下のとおりである。
【0135】
<樹脂(A)>
(A-1)上記で合成した環状オレフィン樹脂
(A-2)上記で合成した環状オレフィン樹脂
(A-3)上記で合成した環状オレフィン樹脂
(A-4)上記で合成した環状オレフィン樹脂
(A-5)上記で合成した環状オレフィン樹脂
(A-6)上記で合成した環状オレフィン樹脂 (比較例用)
(A-7)JER-1256(三菱ケミカル(株)製、芳香族フェノキシ樹脂) (比較例用)
(A-8)上記で合成した環状オレフィン樹脂
【0136】
【0137】
<環状エーテル構造を有する化合物(B)>
(B-1)セロキサイド2021P((株)ダイセル製、脂環構造を有するエポキシ化合物、23℃で液状、屈折率1.51)
(B-2)EHPE-3150((株)ダイセル製、脂環構造を有するエポキシ化合物、23℃で固体、屈折率1.51)
(B-3)エピコートYX-8000(三菱ケミカル(株)製、脂環構造を有するエポキシ化合物、23℃で液状、屈折率1.51)
(B-4)デナコールEX-321L(ナガセケムテックス(株)製、脂肪族エポキシ化合物、23℃で液状、屈折率1.50)
(B-5)OXT-221(東亞合成(株)製、オキセタン化合物、23℃で液状、屈折率1.50)
【0138】
【0139】
<硬化剤(C)>
(C-1)CPI-310B(サンアプロ(株)製、光カチオン重合開始剤)
(C-2)サンエイドSI-B5(三新化学工業(株)製、熱カチオン重合開始剤)
(C-3)キュアゾールC11z(四国化成(株)製、イミダゾール系化合物)
【0140】
<界面活性剤(D)>
(D-1)BYK-333(ビックケミージャパン(株)製、シリコーン系界面活性剤)
【0141】
<有機溶剤(E)>
(E-1)2-ブタノン
(E-2)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(E-3)プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0142】
[実施例1~10、21および比較例1~3]
(樹脂組成物の作製)
表1に従い配合された各原料を、室温下で原料が完全に溶解するまで撹拌し、溶液を得た。その後、その溶液を孔径0.2μmのPTFEフィルターで濾過することで、実施例1~10、21および比較例1~3のワニス状の樹脂組成物をそれぞれ得た。
【0143】
(フィルムの作製)
上記樹脂組成物の作製で得られた実施例1~10、21および比較例1~3の樹脂組成物を、厚み38μmの帯電防止処理をしたポリエチレンテレフタレート基材上に、乾燥後の厚みが表1に記載の樹脂層の厚みとなるようにアプリケーターを用いてワニス塗布した後、100℃で10分間乾燥を行い、最後にOPPカバーフィルムを樹脂組成物により形成された樹脂層側の表面に貼り付けてフィルムを作製し、実施例1~10、21および比較例1~3のフィルムをそれぞれ得た。
【0144】
[実施例11~20、22および比較例4、5]
(コア層形成用ポリマーの合成)
水分および酸素濃度がいずれも1ppm以下に制御され、乾燥窒素で満たされたグローブボックス中において、ヘキシルノルボルネン(HxNB)7.2g(40.1mmol)、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン12.9g(40.1mmol)を500mLバイアル瓶に計量し、脱水トルエン60gと酢酸エチル11gを加え、シリコーン製のシーラーを被せて上部を密栓した。
次に、100mLバイアルビン中にNi触媒1.56g(3.2mmol)と脱水トルエン10mLを計量し、スターラーチップを入れて密栓し、Ni触媒を十分に撹拌して完全に溶解させ、Ni触媒溶液を得た。Ni触媒溶液1mLをシリンジで正確に計量し、上記2種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶中に定量的に注入して室温で1時間撹拌したところ、著しい粘度上昇が確認された。この時点で栓を抜き、テトラヒドロフラン(THF)60gを加えて撹拌を行い、反応溶液を得た。
100mLビーカーに無水酢酸9.5g、過酸化水素水18g(濃度30%)、イオン交換水30gを加えて撹拌し、過酢酸水溶液を調製した。次に、過酢酸水溶液全量を上記反応溶液に加えて12時間撹拌して、Niの還元処理を行った。
次に、処理の完了した反応溶液を分液ロートに移し替え、下部の水層を除去した後、イソプロピルアルコールの30%水溶液を100mL加えて激しく撹拌を行った。静置して完全に二層分離が行われた後に水層を除去した。この水洗プロセスを合計で3回繰り返した後、油層を大過剰のアセトン中に滴下して生成したポリマーを再沈殿させ、ろ過によりろ液と分別した後、60℃に設定した真空乾燥機中で12時間加熱乾燥を行うことにより、コア層形成用ポリマーを得た。
【0145】
コア層形成用ポリマーの分子量は、GPC測定した結果、Mw=10万、Mn=4万であった。また、コア層形成用ポリマー中の各構造単位のモル比は、NMR測定による同定の結果、ヘキシルノルボルネン構造単位が50モル%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が50モル%であった。
【0146】
(コア層形成用樹脂組成物の調製)
精製した上記コア層形成用ポリマー10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメチルシクロヘキサン30g、オキセタン化合物(東亞合成(株)製、製品名:OXT-213)2.4g、エポキシ化合物((株)ダイセル製、製品名:セロキサイド2021P)0.8g、光カチオン重合開始剤(サンアプロ(株)製、製品名:CPI-310B)0.03g、酸化防止剤(BSF社製、製品名:Irganox1076)0.1gを加えて均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、コア層形成用樹脂組成物を得た。
【0147】
(コア層形成用ドライフィルムの作製)
得られたコア層形成用樹脂組成物を、離型処理を施したPETフィルム上にアプリケーターを用いて乾燥後の膜厚が40μmとなるように塗工した。塗工後、45℃の乾燥機に5分間投入し、溶媒を完全に除去して被膜とし、コア層形成用ドライフィルムを得た。
【0148】
(コア層の作製)
得られたコア層形成用ドライフィルム上に、直描型露光機(SCREEN(株)製、製品名:LI-9000)を用いて、露光量100mJ/cm2の紫外線を照射し、長さ9cm、露光部10μm、未露光部50μmのラインアンドスペースを20本作成した。続いて160℃のオーブンに1時間投入し、コア層を得た。得られたコア層には断面が矩形状をなす鮮明な導波路パターン(複数のコア部)が現れているのが確認された。
【0149】
(光電気複合基板の作製)
光電気複合基板の作製において、第1のクラッド層のフィルムおよび第2のクラッド層のフィルムは表2に記載のクラッドのフィルムをそれぞれ意味する。なお、表2に記載のクラッドの種類は、表1に記載のクラッドの種類を意味する。例えば、「クラッドA」は実施例1で得られたフィルムを意味する。
まず、ステンレス製の板の上に24cm×16cmにカットした両面銅張積層板を配置し、第1のクラッド層のフィルムのOPPカバーフィルムを剥離して、両面銅張積層板と第1のクラッド層とが接するように、真空ラミネータ機(ニッコー・マテリアルズ(株)製、製品名:CVP-300)を用いて、温度:140℃、圧力:0.5MPa、時間:120秒の条件でラミネートし、積層体を得た。第1のクラッド層のフィルム由来のPETフィルムを剥離後、直描型露光機(SCREEN(株)製、製品名:LI-9000)を用いて、露光量1000mJ/cm2の紫外線を全面に照射し、その後120℃のオーブンで1時間加熱し、層構成が「両面銅張積層板/第1のクラッド層」である積層体1を得た。
【0150】
上記(コア層の作製)の処理をした後のコア層形成用ドライフィルム中のコア層に酸素プラズマ処理を行った後、積層体1中の第1のクラッド層とコア層とが接するように、真空ラミネータ機を用いて積層体1のラミネート処理と同条件でラミネートした。コア層形成用ドライフィルム由来のPETフィルムを剥離し、層構成が「両面銅張積層板/第1のクラッド層/コア層」である積層体2を得た。
【0151】
次いで、積層体2のコア層に対して酸素プラズマ処理を行った後、第2のクラッド層のフィルムのカバーフィルムを剥離して、積層体2中のコア層と第2のクラッド層とが接するように、真空ラミネータ機を用いて積層体1のラミネート処理と同条件でラミネートした。第2のクラッド層のフィルム由来のPETフィルムを剥離し、層構成が「両面銅張積層板/第1のクラッド層/コア層/第2のクラッド層」である積層体3を得た。
【0152】
次いで、積層体3中の第2のクラッド層とポリイミド基材(UBE(株)製、製品名:ユーピレックス25S、厚み25μm)とが接するように、真空ラミネータ機を用いて積層体1のラミネート処理と同条件でラミネートし、層構成が「両面銅張積層板/第1のクラッド層/コア層/第2クラッド層/ポリイミド基材」である積層体4を得た。
【0153】
得られた積層体4をオーブンにて180℃、1時間の条件で熱処理し、実施例11~20、22および比較例4、5の光電気複合基板をそれぞれ得た。
【0154】
[評価]
以下、実施例および比較例に対する評価方法を記載する。
【0155】
<塗工性の評価>
実施例1~10、21および比較例1~3のフィルムについて外観を観察し、基準Bのような外観異常がないサンプルをA、外観異常(塗工ムラ、白濁、ハジキ、クラック等)が発生したサンプルをBとして評価した。
【0156】
<屈折率の評価>
実施例1~10、21および比較例1~3のフィルムに対して、OPPカバーフィルムを剥離し、アッベ屈折率計((株)アタゴ製、製品名:NAR-1T SOLID)を使用して23℃、589nmの条件下で屈折率を測定した。
屈折率はコア層との屈折率差を大きくする観点から低い方が好ましい。
【0157】
<850nmの波長に対する光線透過率の測定>
実施例1~10、21および比較例1~3のフィルムに対して、OPPカバーフィルムを剥離し、樹脂組成物により形成された樹脂層側がスライドガラス側にくるようにスライドガラス上に温度:100℃、圧力:0.5MPa、時間:2分の条件でラミネートした後、基材フィルムを剥離し、透過率測定用サンプル(樹脂組成物付きのスライドガラス)を得た。続いて、紫外可視分光光度計(日本分光(株)製、製品名:V-670)にてバックグラウンドスロット及びサンプルスロットの両方にスライドガラスを入れた状態で100%補正を実施し、測定スロット側のスライドガラスを透過率測定用サンプルに入れ替えて、透過率測定モードにて850nmの波長に対する光線透過率[%]を測定した。
【0158】
<埋込性評価>
100μmΦのビア穴が開いた厚さ50μmの両面銅張積層板(CCL)を用意した。実施例1~10、21および比較例1~3のフィルムのOPPカバーフィルムを剥離し、樹脂組成物により形成された樹脂層側がCCL側にくるように、CCL上に貼り付けた後、ラミネーターにて温度:100℃、圧力:5.0MPa、時間:2分の条件でラミネートした。得られた基板のビア穴について顕微鏡にて観察し、ボイドなく埋め込みできているサンプルをA、埋め込みが不十分なサンプルをB、埋め込み後に滲み等の埋め込み不良が発生したサンプルをCとして評価した。
【0159】
<光損失評価>
実施例11~20、22および比較例4、5の光電気複合基板に対して、パターン部の長さが7cmとなるように両側をダイシングにてカットし、光損失評価用サンプルを得た。
光損失評価用サンプルについて、「高分子光導波路の試験方法(JPCA-PE02-05-01S-2008)」の4.6.2.1カットバック方法に準拠して、伝搬損失を評価した。なお、測定には波長850nmの光を用いた。得られた結果より、伝搬損失が1dB未満のサンプルをA、伝搬損失が1dB~3dBのサンプルをB、伝搬損失が3dBを超えたサンプルをCとして評価した。
【0160】
各実施例および各比較例に対する評価結果を表1および表2にそれぞれ示す。
【0161】
【0162】
【0163】
表1より、実施例のフィルムはいずれも埋込性評価の評価結果が良好であった。また、実施例のフィルムは比較例2のフィルムのように850nmの波長に対する光線透過率が低下しなかった。すなわち、本実施形態の樹脂組成物によれば、光線透過率の低下を抑制しつつ、埋込性を向上できることが理解できる。
【0164】
表2より、実施例の光電気複合基板はいずれも光損失評価の評価結果が良好であった。すなわち、本実施形態の光電気複合基板によれば、伝搬損失を抑制できることが理解できる。
【0165】
この出願は、2023年9月28日に出願された日本出願特願2023-166734号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0166】
20 第1のクラッド層
30 コア層
40 第2のクラッド層
50 発光素子側のミラー
60 受光素子側のミラー
100 光導波路
110 基板
120 発光素子
130 受光素子
140a、140b ビア
200 光電気複合基板
【要約】
光導波路クラッドに用いることが可能な樹脂組成物であって、環状オレフィン樹脂(A)を含み、前記環状オレフィン樹脂(A)は、構造単位(a)と、構造単位(b)と、を含み、前記構造単位(a)は式(a-1)で示される構造単位であり、前記構造単位(b)は式(b-1)で示される構造単位、式(b-2)で示される構造単位および式(b-3)で示される構造単位からなる群から選択される一種または二種以上である、樹脂組成物。